ウレタン発泡成形体、その製造方法、および磁気誘導発泡成形装置
【課題】 放射状に配向した磁性体を備えてなり、異方性を有するウレタン発泡成形体を提供する。また、その好適な製造方法、および磁気誘導発泡成形装置を提供する。
【解決手段】 ウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなる。磁気誘導発泡成形装置1は、内部に環状キャビティ43が区画されている発泡型4と、環状キャビティ43の軸部に配置されている芯棒磁石部41と、環状キャビティ43の周縁部に配置されているリング磁石部42U、42Dと、を備え、芯棒磁石部41とリング磁石部42U、42Dとの間に磁力線Lを発生させて発泡成形する。
【解決手段】 ウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなる。磁気誘導発泡成形装置1は、内部に環状キャビティ43が区画されている発泡型4と、環状キャビティ43の軸部に配置されている芯棒磁石部41と、環状キャビティ43の周縁部に配置されているリング磁石部42U、42Dと、を備え、芯棒磁石部41とリング磁石部42U、42Dとの間に磁力線Lを発生させて発泡成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吸音材や振動吸収材等として用いられるウレタン発泡成形体、その製造方法、およびウレタン発泡成形体の製造に好適な磁気誘導発泡成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン発泡成形体は、クッション材、吸音材、振動吸収材等として、日用品、自動車、建築等の様々な分野で多用されている。ウレタン発泡成形体は、通常、液状の発泡ウレタン樹脂原料を、発泡型のキャビティ内で発泡成形することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、サスペンションを車体に支持するためのアッパーサポートに使用する場合、ウレタン発泡成形体には、乗り心地という観点から車両上下方向の柔らかさが、操縦安定性の観点から水平方向の硬さが要求される。また、ウレタン発泡成形体は、内部に多数のセル(気泡)を有するため熱伝導率が低い。このため、発熱を伴うエンジン、モーター等の周囲に配置する場合には、熱の蓄積により不具合を生じないよう高い放熱性が要求される。このように、用途に応じて、ウレタン発泡成形体には多様な特性が求められている。
【特許文献1】特開2003−97645号公報
【特許文献2】特開2007−230544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ウレタン発泡成形体の特性は、セルの大きさ、形状、開口性等により異なる。しかし、従来より行われているセルの大きさ等の調整だけでは、一つのウレタン発泡成形体において、方向により異なる特性を発揮させることは難しい。つまり、異方性を付与することは難しい。このため、要求特性に応じて、ウレタン発泡成形体の形状を工夫したり、他の材料からなる部品をウレタン発泡成形体と組み合わせて対応しているのが現状である。この場合、形状によっては、圧縮時に形状を変えた部分に応力が集中し、亀裂等が発生するおそれがある。また、他部品を組み合わせる場合には、製造工程が煩雑になると共にコスト高となる。
【0005】
一方、特許文献2には、同一方向に配向した磁性体を有するウレタン発泡成形体が開示されている。このウレタン発泡成形体によると、熱伝導率の高い磁性体を配向させることにより、磁性体の配向方向における放熱性が向上する。ところで、吸音対象が発熱を伴う部品であって、その部品の全周を囲むようにウレタン発泡成形体を一体的に配置した場合には、全周に亘って速やかに放熱されることが望ましい。すなわち、熱源となる部品を中心にして、放射状に熱が伝達されることが望ましい。このような場合、磁性体が同一方向に直線上に配向されているウレタン発泡成形体では、充分に放熱させることができない。例えば、部品の周囲をいくつかの区間に分割し、区間ごとにウレタン発泡成形体を複数並べてもよいが、実用性に乏しい。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、放射状に配向した磁性体を備えてなり、異方性を有するウレタン発泡成形体を提供することを課題とする。また、その好適な製造方法、および磁気誘導発泡成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0008】
孔部は、ウレタン発泡成形体の一端面から他端面に貫通していてもよく、貫通していなくてもよい。また、必ずしもウレタン発泡成形体の中央部になくてもよい。磁性体は、孔部を略中心とする放射状に配向されている。換言すると、磁性体は、孔部を略中心として拡径方向に配向されている。これにより、例えば孔部の軸方向では、ウレタン発泡材料由来の特性により剛性が低いのに対し、孔部の軸方向と略垂直方向、すなわち磁性体の配向方向では、磁性体の配向特性により剛性が高い。また同様に、孔部の軸方向では放熱性が低いのに対し、磁性体の配向方向では放熱性が高い。このように、本発明のウレタン発泡成形体によると、孔部の軸方向と、磁性体の配向方向と、において異なる特性が発現される。つまり、本発明のウレタン発泡成形体は、異方性を有する。
【0009】
(2)また、本発明のウレタン発泡成形体の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称す)は、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する発泡原料調製工程と、該発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する発泡成形工程と、を有することを特徴とする(請求項4に対応)。
【0010】
本発明の製造方法では、環状のキャビティが区画された発泡型を使用する。また、発泡成形工程において、環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に形成された磁場中で発泡成形する。このため、本発明のウレタン発泡成形体の製造方法によると、孔部(環状キャビティの軸部に相当)を略中心とする放射状に磁性体が配向した上記本発明のウレタン発泡成形体を、容易に得ることができる。
【0011】
(3)また、本発明の磁気誘導発泡成形装置は、内部に環状キャビティが区画されている発泡型と、該環状キャビティの軸部に配置されている芯棒磁石部と、該環状キャビティの周縁部に配置されているリング磁石部と、を備え、該芯棒磁石部と該リング磁石部との間に磁力線を発生させて発泡成形することを特徴とする(請求項6に対応)。
【0012】
本発明の磁気誘導発泡成形装置において、発泡型の環状キャビティの軸部には芯棒磁石部が、周縁部にはリング磁石部が各々配置されている。芯棒磁石部とリング磁石部との間に磁力線を発生させると、軸部を略中心とする放射状の磁場が形成される。したがって、本発明の磁気誘導発泡成形装置によると、孔部(環状キャビティの軸部に相当)を略中心とする放射状に磁性体が配向した上記本発明のウレタン発泡成形体を、簡便に製造することができる。
【0013】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、強磁性体からなる芯部と、該芯部の外周面に配置されているコイル部と、を有する電磁石部を備え、前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、該電磁石部により互いに異なる磁極を持つよう磁化されている構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0014】
磁力源として電磁石を用いることにより、磁場形成のオン、オフを瞬時に切り替えることができる。また、形成された磁場の強さの制御も容易である。このため、発泡成形を制御しやすい。さらに、電流の向きも瞬時に切り替えることができるため、芯棒磁石部とリング磁石部との間の磁力線の向きを容易に反転させることができる。これについては後述する。また、芯棒磁石部とリング磁石部とは、互いに反対の磁極を有する。このため、芯棒磁石部とリング磁石部との間に、つまり軸部を略中心とする放射状に、安定した磁力線を発生させることができる。
【0015】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記電磁石部における前記芯部に接続され、前記環状キャビティを通る閉ループの磁路を形成するヨーク部を備える構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0016】
本構成によると、電磁石部における芯部と、芯棒磁石部と、環状キャビティと、リング磁石部と、ヨーク部と、から構成される磁気回路において、磁力線が閉ループを形成する。このため、磁力線の漏洩が抑制され、環状キャビティ内に安定した磁場を形成することができる。また、磁場の強さ等を制御しやすく、磁力線の漏洩による外部への影響も少ない。また、磁力線の漏洩が抑制されるため、磁力の無駄が少なく、装置自体を小型化することができる。
【0017】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、さらに、前記電磁石部の前記コイル部に流す電流の向きを切り替えて、前記芯棒磁石部と前記リング磁石部との間に発生させる磁力線の向きを反転させる磁場切替手段を備える構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0018】
上述したように、磁力源として電磁石を用いると、コイル部に流す電流の向きを切り替えることにより、磁力線の向きを瞬時に切り替えることができる。すなわち、コイル部に流す電流の向きを切り替えることにより、芯棒磁石部とリング磁石部との間の磁力線の向きを反転させることができる。発泡成形中に磁力線の向きを反転させると、発泡原料中の磁性体が振動し、分散しやすくなる。磁性体の分散性が向上すると、例えば磁束密度が大きい所への磁性体の偏在が少なくなる。したがって、磁場切替手段を備える本構成によると、磁性体の偏在が少なく、配向状態の良好なウレタン発泡成形体を得ることができる。また、このようなウレタン発泡成形体によると、磁性体の含有量が比較的少なくても、磁性体の配向効果を充分に発揮させることができる。
【0019】
(7)好ましくは、上記(3)ないし(6)のいずれかの構成において、前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、前記発泡型に組み込まれており、該発泡型の前記環状キャビティの内周面は該芯棒磁石部により、該環状キャビティの外周面は該リング磁石部により、各々形成されている構成とする方がよい(請求項10に対応)。
【0020】
本構成において、例えば、芯棒磁石部およびリング磁石部が、各々永久磁石の場合には、発泡型以外に別途磁力源を配置することなく、上記本発明のウレタン発泡成形体を簡便に製造することができる。また、これ以外の場合には、公知の磁場発生装置を利用して、上記本発明のウレタン発泡成形体を簡便に製造することができる。例えば、発泡型を磁場発生装置内に所定時間保持した後、順次移動させることにより、連続的な製造が可能になる。また、発泡型を変更するだけで、同じ磁場発生装置を使用して種々のウレタン発泡成形体を製造することができる。よって、汎用性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のウレタン発泡成形体、その製造方法、および磁気誘導発泡成形装置の実施形態について説明する。なお、本発明のウレタン発泡成形体、その製造方法、および磁気誘導発泡成形装置は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0022】
<ウレタン発泡成形体>
上述したように、本発明のウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなる。孔部の内部空間の形状は、特に限定されるものではない。例えば、円柱状、角柱状等、所望の形状にすればよい。また、有底状としてもよい。また、テーパを付けてもよい。
【0023】
磁性体は、いわゆる磁性材料であれば特に限定されるものではない。例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、ステンレス鋼等の強磁性体、MnO、Cr2O3、FeCl2、MnAs等の反強磁性体、およびそれらを用いた合金類が好適である。例えば、ウレタン発泡成形体の放熱性を向上させたい場合には、ステンレス鋼、銅鉄合金等が好適である。ここで、ステンレス鋼は、防錆性能に優れ、ポリウレタンフォームとの接合強度も高い。また、銅鉄合金は、銅および鉄の共晶合金であり、例えば特公平3−064583号公報に記載されているような半硬質磁性銅鉄合金が望ましい。このような銅鉄合金は、細かく粉砕しても銅と鉄の剥離を生じない。このため、銅が有する高い熱伝導率と鉄が有する磁性との2つの特徴を合わせ持つ。よって、同じ含有量であっても他の磁性体と比較して、より高い放熱効果を得ることができる。
【0024】
磁性体の大きさ、形状等は、特に限定されるものではない。例えば、磁性流体(Magnetic fluid;MF)を構成するナノサイズの粒子、磁気粘性流体(Magneto−Rheological流体;MR流体)を構成するミクロンサイズの粒子であってもよい。また、球状、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、水滴形状、柱状、薄板状、箔状、繊維状、針状等の種々の形状を有する磁性フィラーであってもよい。磁性フィラーの大きさ(最大長さ)は、分散性、配向性、製造するウレタン発泡成形体の大きさ等を考慮して決定すればよい。例えば、0.1mm以上5mm以下のものが入手しやすく好適である。
【0025】
例えば、磁性フィラーが球以外の形状をなす場合には、配向した磁性フィラー同士が、点ではなく、線および面の少なくとも一方で接触する。このため、点で接触する場合と比較して、磁性フィラー同士の接触面積が大きくなる。これにより、熱の伝達経路が確保されやすくなると共に、伝達される熱量も大きくなる。加えて、強度の向上効果も大きい。また、磁性フィラー自身が異方性を有すると共に、球状の磁性フィラーを同量配合した場合と比較して、配向方向に嵩高くなる。よって、少量であっても、配向効果を得やすい。
【0026】
球以外の形状をなす磁性フィラーを採用する場合、熱伝達性をより高くするという観点から、磁性フィラーのアスペクト比は2以上であることが望ましい。本明細書では、アスペクト比を次式(1)により定義する。
アスペクト比=b2/(a・a’)・・・式(1)
式(1)において、bは磁性フィラーの最大長さ、aは軸直方向断面横辺の長さ、a’は軸直方向断面縦辺の長さを示す。ここで、「軸直方向断面横辺の長さ」、「軸直方向断面縦辺の長さ」は次のようにして決定される。すなわち、磁性フィラーの最大長さbを軸として、当該軸と垂直な方向(軸直方向)の断面形状が内接する四角形を定め、この四角形を平面視した時の横方向の長さを「軸直方向断面横辺の長さa」とし、縦方向の長さを「軸直方向断面縦辺の長さa’」とする。以下、具体的な形状を挙げて、説明する。
【0027】
図1に、磁性フィラーの各形状における最大長さ、軸直方向断面横辺の長さ、軸直方向断面縦辺の長さを示す。図1において(a)は円柱状の場合を、(b)は薄板状の場合を、(c)は繊維状の場合を、各々示す。なお、図1(a)〜(c)に示した形状は例示にすぎず、磁性フィラーはこれらの形状に限定されるものではない。まず、(a)に示す円柱状の場合には、軸方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は円となる。当該円が内接する四角形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さが「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。次に、(b)に示す薄板状の場合には、長手方向が軸方向となり、長手方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は長方形となるため、この長方形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さ(厚さに相当)が「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。次に(c)に示す繊維状の場合には、軸方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は略楕円となる。しかしながら、(c)の繊維状の場合、長手方向中央部が大きく両端部が小さい「細長い樽」のような形状を呈している。このため、長手方向全長において、軸直方向断面の大きさが一定ではない。すなわち、位置αと位置βと位置γとでは、楕円の断面積が異なる。この場合は、断面積が最大となる位置βの楕円が内接する四角形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さが「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。
【0028】
磁性体の配合量は、所望の特性が得られるよう適宜決定すればよい。例えば、熱伝達性の向上効果を発現させるためには、磁性体の配合量を、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の0.1体積%以上とすることが望ましい。1体積%以上とするとより好適である。一方、磁性体の分散性、吸音特性への影響等を考慮して、磁性体の配合量を10体積%以下とすることが望ましい。また、磁性体の配合量が10体積%を超えると、発泡成形に悪い影響が生じ、良好なウレタン発泡成形体を得にくくなる。よって、磁性体の配合量を3体積%以下とするとより好適である。
【0029】
本発明のウレタン発泡成形体によると、磁性体が孔部を略中心とする放射状に配向されているため、孔部の軸方向と磁性体の配向方向とにおいて、発現される特性が異なる。例えば、本発明のウレタン発泡成形体における荷重−変位曲線から、磁性体の配向方向における静ばね定数が、孔部の軸方向における静ばね定数の2倍以上であることが望ましい。4倍以上であるとより好適である。なお、本発明における静ばね定数は、ウレタン発泡成形体から、孔部の軸方向を一辺とする立方体を切り出して試料とし、該試料を各々の方向へ10%圧縮した時の荷重を変位量で除して算出した値とする。
【0030】
ところで、発泡ウレタン樹脂原料を密閉された発泡型内で発泡成形すると、発泡ウレタン樹脂原料が発泡型の型面と接触し、発泡が抑制されることにより、密度の高いスキン層が形成される。スキン層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば20μm以下とすればよい。スキン層の形成の有無、厚さ等は、発泡型への発泡原料の充填量、発泡時間、発泡温度等により調整すればよい。次に、本発明のウレタン発泡成形体の好適な製造方法について詳述する。
【0031】
<ウレタン発泡成形体の製造方法>
本発明のウレタン発泡成形体の製造方法は、発泡原料調製工程と発泡成形工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0032】
(1)発泡原料調製工程
本工程は、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する工程である。発泡ウレタン樹脂原料は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分等の既に公知の原料から調製すればよい。ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、およびこれらの誘導体(例えばポリオール類との反応により得られるプレポリマー類、変成ポリイソシアネート類等)等の中から適宜選択すればよい。また、ポリオール成分としては、多価ヒドロキシ化合物、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類、ポリエーテルポリアミン類、ポリエステルポリアミン類、アルキレンポリオール類、ウレア分散ポリオール類、メラミン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、フェノール変性ポリオール類等の中から適宜選択すればよい。
【0033】
さらに、触媒、発泡剤、整泡剤、架橋剤、難燃剤、帯電防止剤、減粘剤、安定剤、充填剤、着色剤等を適宜配合してもよい。例えば、触媒としては、テトラエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン系触媒や、ラウリン酸錫、オクタン酸錫等の有機金属系触媒が挙げられる。また、発泡剤としては水が好適である。水以外には、塩化メチレン、フロン、CO2ガス等が挙げられる。また、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が、架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が好適である。
【0034】
上記発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料としては、以下の態様を採用することができる。例えば、磁性体として上述した磁性フィラーを用いる場合には、発泡原料を、発泡ウレタン樹脂原料と磁性フィラーとを混合した混合材料とすればよい。なお、磁性フィラーの種類、形状、アスペクト比、配合量等については、上述した通りであるためここでは説明を省略する。あるいは、発泡原料を、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体含有流体とを混合した混合材料としてもよい。ここで、「磁性体含有流体」は、広く「溶媒中に磁性体の微粒子が分散された流体」を意味する。したがって、「磁性体含有流体」には、ミクロンサイズの磁性体粒子を含有するMR流体、ナノサイズの磁性体粒子を含有するMF、MFにミクロンサイズの磁性体粒子を混合した磁気混合流体(Magnetic compound fluid;MCF)等が含まれる。ここでいう磁気混合流体(MCF)は、例えば特開2002−170791号公報に記載されている粒子分散型混合機能性流体のようなものである。本工程にて調製された発泡原料は、速やかに次の発泡成形工程に供される。
【0035】
(2)発泡成形工程
本工程は、上記発泡原料調製工程にて調製した発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する工程である。本工程では、内部に環状キャビティが区画された発泡型を使用する。環状キャビティの形状は、ウレタン発泡成形体の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0036】
発泡成形は、磁場を、環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に形成して行う。例えば、互いに反対の磁極を有する芯棒磁石部とリング磁石部とを用い、芯棒磁石部を環状キャビティの軸部に、リング磁石部を環状キャビティの周縁部に配置して、両者の間に磁力線を発生させて磁場を形成することができる。
【0037】
磁力線の向きは、環状キャビティの軸部から周縁部に向かう方向でもよく、反対に周縁部から軸部に向かう方向でもよい。また、磁場をかけている間、磁力線の向きは一定であってもよく、反転させてもよい。磁力線の向きを一定にして発泡成形を行うと、磁束密度の大きさの違い等により、磁性体が偏在するおそれがある。これは、例えば磁性体の配合量を増加することにより、解消することができる。しかし、磁性体の配合量が増加した分だけ、発泡成形への影響が大きくなる。その結果、吸音特性、断熱性、クッション性等の本来備えている特性が低下するおそれがある。また、ウレタン発泡成形体の重量が増加し、製造コストも大きくなる。一方、磁力線の向きを反転させながら発泡成形を行うと、磁性体が振動し、分散しやすくなる。これにより、磁束密度が大きい所への磁性体の偏在を少なくすることができる。したがって、発泡原料が固化する前に、磁力線の向きを反転させながら発泡成形することが望ましい。また、磁場強度に強弱をつけることによっても、磁力線の向きを反転させた場合と同様に、磁性体の偏在を抑制することができる。したがって、必要に応じて、磁力線の向きを反転させるか、磁場強度に強弱をつけるか、あるいはその両方を同時に行うかを適宜選択すればよい。
【0038】
磁場は、発泡原料の粘度が比較的低い間にかけられることが望ましい。発泡原料が増粘し、発泡成形がある程度終了した時に磁場をかけると、増粘した発泡原料により磁性体の動きが妨げられて、磁性体が配向しにくい。なお、発泡成形を行う時間のすべてに亘って磁場をかける必要はない。
【0039】
<磁気誘導発泡成形装置>
(1)第一実施形態
以下、本発明の磁気誘導発泡成形装置の第一実施形態について説明する。まず、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の構成について説明する。図2に、磁気誘導発泡成形装置の斜視図を示す。図3に、磁気誘導発泡成形装置の部分断面図を示す。図2、図3に示すように、磁気誘導発泡成形装置1は、一対の電磁石部2U、2Dと、ヨーク部3と、発泡型4と、交流電源装置5と、を備えている。交流電源装置5は、ファンクションジェネレータ(汎用発振器)とバイポーラ(正負両極性出力)電源とを備えている。交流電源装置5は、本発明における磁場切替手段に含まれる。
【0040】
電磁石部2Uは、芯部20Uとコイル部21Uとを備えている。芯部20Uは、強磁性体製であって、上下方向に延びる円柱状を呈している。コイル部21Uは、芯部20Uの外周面に配置されている。コイル部21Uは、芯部20Uの外周面に巻装された導線210Uにより形成されている。導線210Uは、交流電源装置5に接続されている。交流電源装置5により、導線210Uに流れる電流の大きさ、向きが制御されている。
【0041】
電磁石部2Dは、発泡型4を挟んで、上記電磁石部2Uの下方に配置されている。電磁石部2Dは、上記電磁石部2Uと同様の構成を備えている。すなわち、電磁石部2Dは、芯部20Dとコイル部21Dとを備えている。コイル部21Dは、芯部20Dの外周面に巻装された導線210Dにより、形成されている。導線210Dは、交流電源装置5に接続されている。交流電源装置5により、導線210Dに流れる電流の大きさ、向きが制御されている。
【0042】
ヨーク部3は、強磁性体製であって、C字状を呈している。ヨーク部3のC字上端は、電磁石部2Uの芯部20U上端に接続されている。一方、ヨーク部3のC字下端は、電磁石部2Dの芯部20D下端に接続されている。
【0043】
発泡型4は、上型40Uと下型40Dとを備えている。発泡型4は、電磁石部2Uの芯部20Uと電磁石部2Dの芯部20Dとの間に、介装されている。以下、発泡型4について詳しく説明する。図4に、発泡型の分解斜視断面図を示す。図5に発泡型の斜視断面図を示す。
【0044】
図4、図5に示すように、下型40Dは、アルミニウム製であって、角柱状を呈している。下型40Dの上面には、断面円形の凹部が形成されている。下型40Dは、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとを備えている。芯棒磁石部41は、凹部の中央に配置されている。芯棒磁石部41は、電磁石部2Dの芯部20Dと同じ強磁性体製であって、円柱状を呈している。芯棒磁石部41は、凹部底面を貫通し、下型40Dの下面に表出している。芯棒磁石部41の下底面は、電磁石部2Dの芯部20Dに当接している。リング磁石部42Dは、凹部の外周縁に沿って配置されている。リング磁石部42Dは、電磁石部2Uの芯部20Uと同じ強磁性体製であって、円筒状を呈している。リング磁石部42Dの上端面は、下型40Dの上面に表出している。
【0045】
上型40Uは、アルミニウム製であって、角柱状を呈している。上型40Uは、リング磁石部42Uを備えている。リング磁石部42Uは、下型40Dのリング磁石部42Dと対向するように、上型40Uに埋設されている。リング磁石部42Uは、電磁石部2Uの芯部20Uと同じ強磁性体製であって、円筒状を呈している。リング磁石部42Uの上端面は、上型40Uの上面に表出している。リング磁石部42Uの上端面は、電磁石部2Uの芯部20Uに当接している。リング磁石部42Uの下端面は、上型40Uの下面に表出している。
【0046】
上型40Uと下型40Dとは、リング磁石部42Uの下端面とリング磁石部42Dの上端面とが当接するように配置されている。上型40Uと下型40Dとの間には、下型40Dの凹部の開口部が上型40Uの下面で封止されることにより、環状キャビティ43が区画されている。すなわち、環状キャビティ43は、上型40Uの下面と、芯棒磁石部41の外周面と、リング磁石部42Dの内周面と、下型40Dの凹部の底面と、により区画されている。環状キャビティ43には、所定の発泡原料が充填されている。
【0047】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の動きについて説明する。交流電源装置5をオンにすると、電磁石部2Uの芯部20Uの上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部20Uに、下方から上方に向かって磁力線L(図3に点線で示す)が発生する。また、電磁石部2Dの芯部20Dの上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部20Dに、下方から上方に向かって磁力線Lが発生する。つまり、電磁石部2U、2Dの対向面(芯部20Uの下面、芯部20Dの上面)同士の磁極は互いに異なる。ここで、芯部20Uとリング磁石部42U、42Dとは、同じ強磁性体製である。よって、リング磁石部42U、42Dは、共に芯部20Uにより磁化される。つまり、芯部20U下端はS極であるため、リング磁石部42DはS極に磁化される。また、芯部20Dと芯棒磁石部41とは、同じ強磁性体製である。よって、芯棒磁石部41は、芯部20Dにより磁化される。つまり、芯部20D上端はN極であるため、芯棒磁石部41は、N極に磁化される。これにより、芯棒磁石部41からリング磁石部42Dに向かって磁力線Lが発生する。
【0048】
ここで、環状キャビティ43における磁力線Lの向きを図を用いて説明する。図6に、図3中のVI−VI断面図を示す。環状キャビティ43の内周面は芯棒磁石部41により、外周面はリング磁石部42Dにより、各々形成されている。上述したように、芯棒磁石部41はN極に磁化されており、リング磁石部42DはS極に磁化されている。したがって、図6に点線で示すように、環状キャビティ43内には、芯棒磁石部41からリング磁石部42Dに向かって磁力線Lが発生している。つまり、環状キャビティ43内には、中心から径方向外側に向かって放射状に磁力線Lが発生している。磁力線Lに沿って、発泡原料中の磁性体は配向する。
【0049】
リング磁石部42D、42Uを通って電磁石部2Uの芯部20U上端から放射された磁力線Lは、ヨーク部3を通って、電磁石部2Dの芯部20D下端に流入する。すなわち、芯部20U→ヨーク部3→芯部20D→芯棒磁石部41→環状キャビティ43→リング磁石部42D→リング磁石部42Uから構成される磁気回路において、磁力線Lは閉ループを形成している。
【0050】
一方、交流電源装置5により、導線210U、210Dに流す電流の向きを反対にすると、各部材は、それまでとは反対の磁極に磁化される。これにより、例えばリング磁石部42U、42Dは、N極に磁化される。また、芯棒磁石部41は、S極に磁化される。したがって、この場合は、リング磁石部42Dから芯棒磁石部41に向かって磁力線Lが発生する。つまり、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きが反転されて、環状キャビティ43内には、径方向内側に向かって磁力線Lが発生することになる。
【0051】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の作用効果について説明する。本実施形態によると、環状キャビティ43を区画する芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとにより、環状キャビティ43内に、軸部を略中心とする放射状に、安定した磁力線Lを発生させることができる。したがって、芯棒磁石部41を型面として形成された孔部を略中心とする放射状に磁性体が配向されたウレタン発泡成形体を、簡便に製造することができる。
【0052】
また、本実施形態では、芯棒磁石部41とリング磁石部42D、42Uとが、発泡型4に組み込まれている。このため、磁場発生装置自体は公知のものを利用することができ、汎用性が高い。また、発泡型4の構成を変更するだけで、同じ磁場発生装置を使用して種々のウレタン発泡成形体を製造することができる。
【0053】
また、本実施形態によると、交流電源装置5を構成するファンクションジェネレータ(汎用発振器)により、電磁石部2U、2Dの各々へ任意の波形にて電気信号の入力が可能である。これにより、磁場形成のオン、オフを瞬時に切り替えることができる。また、形成された磁場の強さの制御も容易である。さらに、電流の向きを瞬時に切り替え、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きを、容易に反転させることができる。その結果、発泡成形中の磁性体挙動を効果的に制御することができる。例えば、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きを反転させながら発泡成形を行うと、磁性体が振動し、分散しやすくなる。よって、磁性体の偏在が少なくなる。
【0054】
また、磁力線Lは閉ループを形成している。このため、磁力線Lの漏洩を抑制することができ、環状キャビティ43内に安定した磁場を形成することができる。また、磁力線Lの漏洩による外部への影響も少ない。また、磁力の無駄が少なく、装置自体の小型化が可能である。
【0055】
(2)第二実施形態
次に、本発明の磁気誘導発泡成形装置の第二実施形態について説明する。本実施形態と第一実施形態の相違点は、主に発泡型の両側に電磁石部を四つ並置した点である。よって、ここでは相違点を中心に説明する。
【0056】
まず、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の構成について説明する。図7に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図を示す。図8に、図7のVIII−VIII断面図を示す。図7、図8中、前出の図2、図3と対応する部材は同じ符号で示す。図7、図8に示すように、磁気誘導発泡成形装置1は、四つの電磁石部2a〜2dと、一対のヨーク部3U、3Dと、一対のポールピース30U、30Dと、発泡型4と、を備えている。
【0057】
一対のヨーク部3U、3Dは、各々、強磁性体製であって、矩形板状を呈している。一対のヨーク部3U、3Dは、上下方向に所定間隔だけ離間して配置されている。四つの電磁石部2a〜2dは、各々、第一実施形態の電磁石部2U、2Dと同様の構成を備えている。すなわち、四つの電磁石部2a〜2dは、各々、芯部と、その外周面に配置されたコイル部と、を備えている。コイル部は、芯部の外周面に巻装された導線により形成されている。導線は、各々、図示しない交流電源装置に接続されている。四つの電磁石部2a〜2dは、一対のヨーク部3U、3D間に介装されている。具体的には、四つの電磁石部2a〜2dは、一対のヨーク部3U、3Dの四隅に配置されている。四隅に配置された四つの電磁石部2a〜2dは、各々、支柱のように、一対のヨーク部3U、3D間を連結している。
【0058】
一対のポールピース30U、30Dは、各々、強磁性体製であって、矩形薄板状を呈している。一対のポールピース30U、30Dは、各々、一対のヨーク部3U、3Dの内面に装着されている。また、一対のポールピース30U、30Dは、四つの電磁石部2a〜2dよりも内側に配置されている。
【0059】
発泡型4は、一対のポールピース30U、30D間に介装されている。発泡型4は、上型40Uと下型40Dとを備えている。下型40Dの両側面上縁には、一対の被ガイド部44が突設されている。被ガイド部44は、水平方向に延在している。一対の被ガイド部44は、コンベア(図略)の一対のガイド部60上に搭載されている。一対のガイド部60が動くことにより、発泡型4は搬送される。
【0060】
下型40Dの上面には、断面円形の凹部が形成されている。凹部中央には、芯棒磁石部41が上下方向に貫通している。芯棒磁石部41は、下型40Dの下面に表出している。また、凹部の外周縁に沿って、リング磁石部42Dが埋設されている。リング磁石部42Dの上端面は、下型40Dの上面に表出している。
【0061】
上型40Uは、下型40Dの上方に配置されている。上型40Uには、リング磁石部42Uが埋設されている。上型40Uのリング磁石部42Uと下型40Dのリング磁石部42Dとは、上下方向に対向している。リング磁石部42Uの上端面は、上型40Uの上面に表出している。リング磁石部42Uの下端面は、上型40Uの下面に表出している。型締めにより、これら一対のリング磁石部42U、42Dは連結されている。そして、上型40Uの下面と、芯棒磁石部41の外周面と、リング磁石部42Dの内周面と、下型40Dの凹部の底面と、により環状キャビティ43が区画されている。
【0062】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の動きについて説明する。交流電源装置をオンにすると、四つの電磁石部2a〜2dの芯部の上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部に下方から上方に向かって磁力線L(図8に点線で示す)が発生する。これにより、四つの電磁石部2a〜2dと発泡型4との間には、各々、電磁石部2a〜2d→上方のヨーク部3U→上方のポールピース30U→発泡型4→下方のポールピース30D→下方のヨーク部3D→電磁石部2a〜2dという経路で閉ループの磁路が形成される。発泡型4において、芯棒磁石部41はS極に磁化されており、リング磁石部42DはN極に磁化されている。したがって、環状キャビティ43内には、リング磁石部42Dから芯棒磁石部41に向かって磁力線Lが発生している。つまり、環状キャビティ43内には、径方向外側から中心に向かって放射状に磁力線Lが発生している。磁力線Lに沿って、発泡原料中の磁性体は配向する。
【0063】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の作用効果について説明する。本実施形態の磁気誘導発泡成形装置は、構成が共通する部分については、第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置と同様の作用効果を有する。また、本実施形態では、四つの電磁石部2a〜2dを並置し、一対のヨーク部3U、3Dを介して、環状キャビティ43内(芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間)に磁力線Lを発生させた。このため、環状キャビティ43内の磁束密度を大きくしやすい。また、電磁石部2a〜2dの各々から発生した磁力線Lは、環状キャビティ43を通る閉ループの磁路を形成している。このため、磁力線Lの漏洩を抑制することができ、環状キャビティ43内に安定した磁場を形成することができる。また、本実施形態によると、コンベアを用いて発泡型4を順次移動させることができる。このため、本発明のウレタン発泡成形体を連続的に製造することができる。よって、本実施形態は、大量生産に好適である。
【0064】
(3)その他
以上、本発明の磁気誘導発泡成形装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。例えば、磁場の発生手段として、電磁石ではなく永久磁石を使用してもよい。電磁石を使用した場合でも、ヨーク部を備えていなくてもよい。また、上記第一実施形態では、一対の電磁石部を軸方向に所定間隔離間して対向して配置した。一方、上記第二実施形態では、四つの電磁石部を発泡型の両側に二本ずつ並列に配置した。このように、電磁石部の数や配置の仕方は、芯棒磁石部とリング磁石部との間に所望の磁場が形成されるよう、適宜決定すればよい。また、第一実施形態および第二実施形態のいずれにおいても、電磁石部の芯部を上下方向に延びる円柱状とした。しかし、芯部の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、角柱状等、種々の形状を採用することができる。
【0065】
また、交流電源装置(磁場切替手段)を使用しなくてもよい。つまり、発泡成形中に電流の向きを切り替えたり、磁場強度を変化させなくてもよい。磁場切替手段は、交流電源装置に限定されるものではなく、直流電源装置、または直流電源装置とその電流の向きを切り替えるスイッチ等から構成してもよい。
【0066】
上記実施形態では、芯棒磁石部とリング磁石部とを、発泡型に組み込んだ。しかし、芯棒磁石部とリング磁石部とを、各々発泡型とは別に配置してもよい。また、環状キャビティや芯棒磁石部の大きさ、形状等は、目的とするウレタン発泡成形体に応じて適宜決定すればよい。また、電磁石等の磁力源から発生する磁場に対する影響が少なく、磁場をコントロールしやすいという理由から、発泡型は、透磁率の低い材料、つまり非磁性の材料から製造されていることが望ましい。発泡型の材質として、上記アルミニウムの他、アルミニウム合金、非磁性ステンレス鋼(SUS303、304等)、樹脂、セラミックス等が好適である。
【0067】
上記第二実施形態では、発泡型をコンベアにより搬送可能にした。しかし、コンベアを用いずに、一対のポールピース間に発泡型を配置してもよい。ここで、ポールピースの形状は必ずしも矩形薄板状に限定されない。所望の磁場が形成されるよう、ポールピースの形状を適宜決定すればよい。また、ポールピースは必ずしも配置しなくてもよい。なお、磁気抵抗を小さくするという観点から、ヨーク部やポールピースと発泡型との隙間はできるだけ小さい方がよい。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0069】
(1)ウレタン発泡成形体の製造
磁性体として磁性フィラーを含有するウレタン発泡成形体を、上記第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置を用いて製造した。まず、発泡ウレタン樹脂原料を以下のように調製した。ポリオール成分のポリエーテルポリオール(住化バイエルウレタン社製「S−0248」、平均分子量6000、官能基数3、OH価28mgKOH/g)100重量部と、架橋剤のジエチレングリコール(三菱化学社製)2重量部と、発泡剤の水2重量部と、テトラエチレンジアミン系触媒(花王社製「No.31」)1重量部と、シリコーン系整泡剤(日本ユニカ社製「SZ−1313」)0.5重量部と、を配合し、プレミックスポリオールを調製した。調製したプレミックスポリオールに、ポリイソシアネート成分のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(BASFINOACポリウレタン社製「NE1320B」、NCO=44.8wt%)を加えて混合し、発泡ウレタン樹脂原料とした。ここで、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合比(PO:ISO)は、両者の合計重量を100%として、PO:ISO=78.5:21.5とした。
【0070】
次に、調製した発泡ウレタン樹脂原料に、磁性フィラーを混合して発泡原料とした。磁性フィラーには、ステンレスファイバー(虹技社製「KCメタルファイバー SUS430F」:直径約30μm、長さ約2mm)を使用した。このステンレスファイバーのアスペクト比を求めたところ、4444となった。磁性フィラーは、ポリオール成分のポリエーテルポリオール100重量部に対して121重量部配合した。
【0071】
その後、発泡原料を発泡型の環状キャビティ(前出図4、図5参照。径方向長さ30mm×軸方向長さ20mm)内に注入し、密閉した。続いて、発泡型を一対の電磁石部間に設置して、磁場中にて発泡成形を行った(前出図2、図3参照)。発泡成形は、最初の2分37秒間は磁場をかけて行い、続く約5分間は磁場をかけないで行った。磁場の形成は、電圧値が最大となるまでの37秒間は、適宜電流の向きを切り替えながら行い、続く約2分間は1秒ごとに電流の向きを切り替えて行った。
【0072】
発泡成形が終了した後、脱型して、中央に円柱状の孔部を備えるドーナツ状のウレタン発泡成形体を得た。このウレタン発泡成形体を実施例1の発泡成形体とした。実施例1の発泡成形体における磁性フィラーの配合量は、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の1体積%であった。
【0073】
また、上記同様の磁気誘導発泡成形装置を使用して、電流の切り替えを行わずに、つまり磁力線の向きを芯棒磁石部からリング磁石部方向へ一定にして、ウレタン発泡成形体を製造した。発泡原料は、上記実施例1の発泡成形体と同じものを使用した。得られたウレタン発泡成形体を実施例2の発泡成形体とした。
【0074】
実施例1の発泡成形体の写真を図9〜図11に示す。図9は、実施例1の発泡成形体の上面写真である。図10は、同発泡成形体の下面写真である。図11は、同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。また、実施例2の発泡成形体の写真を図12〜図14に示す。図12は、実施例2の発泡成形体の上面写真である。図13は、同発泡成形体の下面写真である。図14は、同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。なお、いずれの発泡成形体についても、孔部軸方向の断面を観察するため、同方向に切断した。このため、図9、図10、図12、図13に示した上面写真および下面写真は、各発泡成形体の切断された半分を撮影したものである。
【0075】
図9〜図11に示すように、実施例1の発泡成形体において、磁性フィラーは孔部から放射状に配向していた。また、図9、図11に示すように、上面付近の周縁部や孔部の周りに、若干、磁性体の集中が見られた。これは、環状キャビティを区画する芯棒磁石部およびリング磁石部の上端付近で、磁束密度が大きくなっていたためと考えられる。同様に、実施例2の発泡成形体についても、図12〜図14に示すように、磁性フィラーは孔部から放射状に配向していた。実施例2の発泡成形体では、図12、図14に示すように、上面付近の孔部の周りに、磁性体が多く配向していた。また、図13に示すように、下面の周縁部にも磁性体が多く配向していた。実施例2の発泡成形体の発泡成形は、磁力線の向きを一定にして行った。このため、実施例1の発泡成形体と比較して、磁性体が分散しにくく、磁束密度の大きな所に、より多くの磁性体が集中したと考えられる。
【0076】
(2)異方性試験
実施例1の発泡成形体について、異なる方向からの荷重に対する変位量を測定し、異方性を評価した。また、比較のため、以下の二種類のウレタン発泡成形体を製造し、これらについても、同様に異方性を評価した。一つ目は、磁性体を配合せずに上記発泡ウレタン樹脂原料のみを発泡成形した。得られたウレタン発泡成形体を、比較例1の発泡成形体とした。二つ目は、上記同様の発泡原料を磁場をかけずに発泡成形した。得られたウレタン発泡成形体を、比較例2の発泡成形体とした。比較例1、2の発泡成形体の形状、大きさは、実施例1の発泡成形体と同じである。
【0077】
(2−1)実施例1および比較例1、2の発泡成形体から、孔部の軸方向を上下方向の一辺とする20mm角の立方体を切り出して試料とした。まず、実施例1の発泡成形体について、孔部の軸方向における荷重−変位曲線を作成するため、試料の上面(20mm×20mm=4cm2)に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は孔部の軸方向)、荷重に対する変位量を測定した。次に、磁性体の配向方向における荷重−変位曲線を作成するため、試料の右面(20mm×20mm=4cm2)に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は磁性体の配向方向と略同じ)、荷重に対する変位量を測定した。同様に、比較例1、2の発泡成形体についても、試料の上面および右面に対して各々荷重を加え、荷重に対する変位量を測定した。図15〜図17に、各々の測定における荷重−変位曲線を示す。
【0078】
図15に示すように、実施例1の試料では、孔部の軸方向(試料の上下方向)に比べて、磁性体の配向方向(試料の左右方向)における剛性が高くなった。また、右面から圧縮した場合と、上面から圧縮した場合と、について変位量が2mmの時(圧縮率10%)における静ばね定数を比較したところ、前者は後者の6.62倍となった。一方、図16、図17に示すように、比較例1、2の試料では、圧縮方向の違いにより剛性にほとんど差はなかった。各々の試料について、実施例1と同様に、上面から圧縮した場合の静ばね定数と、右面から圧縮した場合の静ばね定数とを比較した。その結果、比較例1の試料では0.61倍、比較例2の試料では1.02倍であった。以上より、本発明のウレタン発泡成形体では、磁性体の配向方向における特性と、孔部の軸方向における特性と、が大きく異なることが確認された。
【0079】
(2−2)上記異方性の評価では、各々のウレタン発泡成形体から所定の大きさに切り出した試料を使用した。ここでは、実施例1および比較例1、2の発泡成形体をそのまま使用して、異なる方向からの荷重に対する変位量を測定した結果を示す。まず、孔部の軸方向における荷重−変位曲線を作成するため、各発泡成形体の上面に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は孔部の軸方向)、荷重に対する変位量を測定した。次に、各発泡成形体の外周部にリング部材を環装して固定すると共に、孔部に円柱状のジグを貫装した。ジグを外周部のリング部材側に押圧して孔部から径方向に荷重を加え(圧縮方向は磁性体の配向方向と略同じ)、荷重に対する変位量を測定した。図18〜図20に、各々の測定における荷重−変位曲線を示す。
【0080】
図19、図20に示すように、比較例1、2の発泡成形体では、孔部の軸方向(厚さ方向)と、径方向と、では荷重−変位曲線に大きな差は見られなかった。これに対して、実施例1の発泡成形体では、図18に示すように、孔部の軸方向(厚さ方向)と、磁性体の配向方向(径方向)と、では荷重−変位曲線が大きく異なった。したがって、本結果からも、実施例1の発泡成形体は、異方性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のウレタン発泡成形体は、自動車、電子機器、建築等の幅広い分野において用いることができる。特に、異方性が要求される用途、例えば車両のサスペンション用アッパーサポートのゴム部材、衝撃吸収用のバウンドストッパー等として好適である。また、放熱性が要求される用途、例えばエンジンの騒音を低減するために車両のエンジンルームに配置されるエンジンカバーやサイドカバー、OA(Office Automation)機器や家電製品のモーター用吸音材、パソコン等の電子機器の放熱性吸音材、家屋の内外壁用吸音材等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】磁性フィラーの各形状における最大長さ、軸直方向断面横辺の長さ、軸直方向断面縦辺の長さについての説明図である。
【図2】本発明の第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図である。
【図3】同磁気誘導発泡成形装置の部分断面図である。
【図4】発泡型の分解斜視断面図である。
【図5】発泡型の斜視断面図である。
【図6】図3中のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】実施例1の発泡成形体の上面写真である。
【図10】同発泡成形体の下面写真である。
【図11】同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。
【図12】実施例2の発泡成形体の上面写真である。
【図13】同発泡成形体の下面写真である。
【図14】同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。
【図15】実施例1の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図16】比較例1の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図17】比較例2の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図18】実施例1の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【図19】比較例1の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【図20】比較例2の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【符号の説明】
【0083】
1:磁気誘導発泡成形装置
2D、2U:電磁石部 2a〜2d:電磁石部 20D、20U:芯部
21D、21U:コイル部 210D、210U:導線
3:ヨーク部 3D、3U:ヨーク部 30D、30U:ポールピース
4:発泡型 40D:下型 40U:上型 41:芯棒磁石部
42D、42U:リング磁石部 43:環状キャビティ 44:被ガイド部
5:交流電源装置(磁場切替手段)
60:ガイド部
L:磁力線
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吸音材や振動吸収材等として用いられるウレタン発泡成形体、その製造方法、およびウレタン発泡成形体の製造に好適な磁気誘導発泡成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン発泡成形体は、クッション材、吸音材、振動吸収材等として、日用品、自動車、建築等の様々な分野で多用されている。ウレタン発泡成形体は、通常、液状の発泡ウレタン樹脂原料を、発泡型のキャビティ内で発泡成形することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、サスペンションを車体に支持するためのアッパーサポートに使用する場合、ウレタン発泡成形体には、乗り心地という観点から車両上下方向の柔らかさが、操縦安定性の観点から水平方向の硬さが要求される。また、ウレタン発泡成形体は、内部に多数のセル(気泡)を有するため熱伝導率が低い。このため、発熱を伴うエンジン、モーター等の周囲に配置する場合には、熱の蓄積により不具合を生じないよう高い放熱性が要求される。このように、用途に応じて、ウレタン発泡成形体には多様な特性が求められている。
【特許文献1】特開2003−97645号公報
【特許文献2】特開2007−230544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ウレタン発泡成形体の特性は、セルの大きさ、形状、開口性等により異なる。しかし、従来より行われているセルの大きさ等の調整だけでは、一つのウレタン発泡成形体において、方向により異なる特性を発揮させることは難しい。つまり、異方性を付与することは難しい。このため、要求特性に応じて、ウレタン発泡成形体の形状を工夫したり、他の材料からなる部品をウレタン発泡成形体と組み合わせて対応しているのが現状である。この場合、形状によっては、圧縮時に形状を変えた部分に応力が集中し、亀裂等が発生するおそれがある。また、他部品を組み合わせる場合には、製造工程が煩雑になると共にコスト高となる。
【0005】
一方、特許文献2には、同一方向に配向した磁性体を有するウレタン発泡成形体が開示されている。このウレタン発泡成形体によると、熱伝導率の高い磁性体を配向させることにより、磁性体の配向方向における放熱性が向上する。ところで、吸音対象が発熱を伴う部品であって、その部品の全周を囲むようにウレタン発泡成形体を一体的に配置した場合には、全周に亘って速やかに放熱されることが望ましい。すなわち、熱源となる部品を中心にして、放射状に熱が伝達されることが望ましい。このような場合、磁性体が同一方向に直線上に配向されているウレタン発泡成形体では、充分に放熱させることができない。例えば、部品の周囲をいくつかの区間に分割し、区間ごとにウレタン発泡成形体を複数並べてもよいが、実用性に乏しい。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、放射状に配向した磁性体を備えてなり、異方性を有するウレタン発泡成形体を提供することを課題とする。また、その好適な製造方法、および磁気誘導発泡成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0008】
孔部は、ウレタン発泡成形体の一端面から他端面に貫通していてもよく、貫通していなくてもよい。また、必ずしもウレタン発泡成形体の中央部になくてもよい。磁性体は、孔部を略中心とする放射状に配向されている。換言すると、磁性体は、孔部を略中心として拡径方向に配向されている。これにより、例えば孔部の軸方向では、ウレタン発泡材料由来の特性により剛性が低いのに対し、孔部の軸方向と略垂直方向、すなわち磁性体の配向方向では、磁性体の配向特性により剛性が高い。また同様に、孔部の軸方向では放熱性が低いのに対し、磁性体の配向方向では放熱性が高い。このように、本発明のウレタン発泡成形体によると、孔部の軸方向と、磁性体の配向方向と、において異なる特性が発現される。つまり、本発明のウレタン発泡成形体は、異方性を有する。
【0009】
(2)また、本発明のウレタン発泡成形体の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称す)は、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する発泡原料調製工程と、該発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する発泡成形工程と、を有することを特徴とする(請求項4に対応)。
【0010】
本発明の製造方法では、環状のキャビティが区画された発泡型を使用する。また、発泡成形工程において、環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に形成された磁場中で発泡成形する。このため、本発明のウレタン発泡成形体の製造方法によると、孔部(環状キャビティの軸部に相当)を略中心とする放射状に磁性体が配向した上記本発明のウレタン発泡成形体を、容易に得ることができる。
【0011】
(3)また、本発明の磁気誘導発泡成形装置は、内部に環状キャビティが区画されている発泡型と、該環状キャビティの軸部に配置されている芯棒磁石部と、該環状キャビティの周縁部に配置されているリング磁石部と、を備え、該芯棒磁石部と該リング磁石部との間に磁力線を発生させて発泡成形することを特徴とする(請求項6に対応)。
【0012】
本発明の磁気誘導発泡成形装置において、発泡型の環状キャビティの軸部には芯棒磁石部が、周縁部にはリング磁石部が各々配置されている。芯棒磁石部とリング磁石部との間に磁力線を発生させると、軸部を略中心とする放射状の磁場が形成される。したがって、本発明の磁気誘導発泡成形装置によると、孔部(環状キャビティの軸部に相当)を略中心とする放射状に磁性体が配向した上記本発明のウレタン発泡成形体を、簡便に製造することができる。
【0013】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、強磁性体からなる芯部と、該芯部の外周面に配置されているコイル部と、を有する電磁石部を備え、前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、該電磁石部により互いに異なる磁極を持つよう磁化されている構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0014】
磁力源として電磁石を用いることにより、磁場形成のオン、オフを瞬時に切り替えることができる。また、形成された磁場の強さの制御も容易である。このため、発泡成形を制御しやすい。さらに、電流の向きも瞬時に切り替えることができるため、芯棒磁石部とリング磁石部との間の磁力線の向きを容易に反転させることができる。これについては後述する。また、芯棒磁石部とリング磁石部とは、互いに反対の磁極を有する。このため、芯棒磁石部とリング磁石部との間に、つまり軸部を略中心とする放射状に、安定した磁力線を発生させることができる。
【0015】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記電磁石部における前記芯部に接続され、前記環状キャビティを通る閉ループの磁路を形成するヨーク部を備える構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0016】
本構成によると、電磁石部における芯部と、芯棒磁石部と、環状キャビティと、リング磁石部と、ヨーク部と、から構成される磁気回路において、磁力線が閉ループを形成する。このため、磁力線の漏洩が抑制され、環状キャビティ内に安定した磁場を形成することができる。また、磁場の強さ等を制御しやすく、磁力線の漏洩による外部への影響も少ない。また、磁力線の漏洩が抑制されるため、磁力の無駄が少なく、装置自体を小型化することができる。
【0017】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、さらに、前記電磁石部の前記コイル部に流す電流の向きを切り替えて、前記芯棒磁石部と前記リング磁石部との間に発生させる磁力線の向きを反転させる磁場切替手段を備える構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0018】
上述したように、磁力源として電磁石を用いると、コイル部に流す電流の向きを切り替えることにより、磁力線の向きを瞬時に切り替えることができる。すなわち、コイル部に流す電流の向きを切り替えることにより、芯棒磁石部とリング磁石部との間の磁力線の向きを反転させることができる。発泡成形中に磁力線の向きを反転させると、発泡原料中の磁性体が振動し、分散しやすくなる。磁性体の分散性が向上すると、例えば磁束密度が大きい所への磁性体の偏在が少なくなる。したがって、磁場切替手段を備える本構成によると、磁性体の偏在が少なく、配向状態の良好なウレタン発泡成形体を得ることができる。また、このようなウレタン発泡成形体によると、磁性体の含有量が比較的少なくても、磁性体の配向効果を充分に発揮させることができる。
【0019】
(7)好ましくは、上記(3)ないし(6)のいずれかの構成において、前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、前記発泡型に組み込まれており、該発泡型の前記環状キャビティの内周面は該芯棒磁石部により、該環状キャビティの外周面は該リング磁石部により、各々形成されている構成とする方がよい(請求項10に対応)。
【0020】
本構成において、例えば、芯棒磁石部およびリング磁石部が、各々永久磁石の場合には、発泡型以外に別途磁力源を配置することなく、上記本発明のウレタン発泡成形体を簡便に製造することができる。また、これ以外の場合には、公知の磁場発生装置を利用して、上記本発明のウレタン発泡成形体を簡便に製造することができる。例えば、発泡型を磁場発生装置内に所定時間保持した後、順次移動させることにより、連続的な製造が可能になる。また、発泡型を変更するだけで、同じ磁場発生装置を使用して種々のウレタン発泡成形体を製造することができる。よって、汎用性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のウレタン発泡成形体、その製造方法、および磁気誘導発泡成形装置の実施形態について説明する。なお、本発明のウレタン発泡成形体、その製造方法、および磁気誘導発泡成形装置は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0022】
<ウレタン発泡成形体>
上述したように、本発明のウレタン発泡成形体は、孔部と、該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、を備えてなる。孔部の内部空間の形状は、特に限定されるものではない。例えば、円柱状、角柱状等、所望の形状にすればよい。また、有底状としてもよい。また、テーパを付けてもよい。
【0023】
磁性体は、いわゆる磁性材料であれば特に限定されるものではない。例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、ステンレス鋼等の強磁性体、MnO、Cr2O3、FeCl2、MnAs等の反強磁性体、およびそれらを用いた合金類が好適である。例えば、ウレタン発泡成形体の放熱性を向上させたい場合には、ステンレス鋼、銅鉄合金等が好適である。ここで、ステンレス鋼は、防錆性能に優れ、ポリウレタンフォームとの接合強度も高い。また、銅鉄合金は、銅および鉄の共晶合金であり、例えば特公平3−064583号公報に記載されているような半硬質磁性銅鉄合金が望ましい。このような銅鉄合金は、細かく粉砕しても銅と鉄の剥離を生じない。このため、銅が有する高い熱伝導率と鉄が有する磁性との2つの特徴を合わせ持つ。よって、同じ含有量であっても他の磁性体と比較して、より高い放熱効果を得ることができる。
【0024】
磁性体の大きさ、形状等は、特に限定されるものではない。例えば、磁性流体(Magnetic fluid;MF)を構成するナノサイズの粒子、磁気粘性流体(Magneto−Rheological流体;MR流体)を構成するミクロンサイズの粒子であってもよい。また、球状、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、水滴形状、柱状、薄板状、箔状、繊維状、針状等の種々の形状を有する磁性フィラーであってもよい。磁性フィラーの大きさ(最大長さ)は、分散性、配向性、製造するウレタン発泡成形体の大きさ等を考慮して決定すればよい。例えば、0.1mm以上5mm以下のものが入手しやすく好適である。
【0025】
例えば、磁性フィラーが球以外の形状をなす場合には、配向した磁性フィラー同士が、点ではなく、線および面の少なくとも一方で接触する。このため、点で接触する場合と比較して、磁性フィラー同士の接触面積が大きくなる。これにより、熱の伝達経路が確保されやすくなると共に、伝達される熱量も大きくなる。加えて、強度の向上効果も大きい。また、磁性フィラー自身が異方性を有すると共に、球状の磁性フィラーを同量配合した場合と比較して、配向方向に嵩高くなる。よって、少量であっても、配向効果を得やすい。
【0026】
球以外の形状をなす磁性フィラーを採用する場合、熱伝達性をより高くするという観点から、磁性フィラーのアスペクト比は2以上であることが望ましい。本明細書では、アスペクト比を次式(1)により定義する。
アスペクト比=b2/(a・a’)・・・式(1)
式(1)において、bは磁性フィラーの最大長さ、aは軸直方向断面横辺の長さ、a’は軸直方向断面縦辺の長さを示す。ここで、「軸直方向断面横辺の長さ」、「軸直方向断面縦辺の長さ」は次のようにして決定される。すなわち、磁性フィラーの最大長さbを軸として、当該軸と垂直な方向(軸直方向)の断面形状が内接する四角形を定め、この四角形を平面視した時の横方向の長さを「軸直方向断面横辺の長さa」とし、縦方向の長さを「軸直方向断面縦辺の長さa’」とする。以下、具体的な形状を挙げて、説明する。
【0027】
図1に、磁性フィラーの各形状における最大長さ、軸直方向断面横辺の長さ、軸直方向断面縦辺の長さを示す。図1において(a)は円柱状の場合を、(b)は薄板状の場合を、(c)は繊維状の場合を、各々示す。なお、図1(a)〜(c)に示した形状は例示にすぎず、磁性フィラーはこれらの形状に限定されるものではない。まず、(a)に示す円柱状の場合には、軸方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は円となる。当該円が内接する四角形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さが「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。次に、(b)に示す薄板状の場合には、長手方向が軸方向となり、長手方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は長方形となるため、この長方形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さ(厚さに相当)が「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。次に(c)に示す繊維状の場合には、軸方向の長さが最大長さbとなる。軸直方向断面形状は略楕円となる。しかしながら、(c)の繊維状の場合、長手方向中央部が大きく両端部が小さい「細長い樽」のような形状を呈している。このため、長手方向全長において、軸直方向断面の大きさが一定ではない。すなわち、位置αと位置βと位置γとでは、楕円の断面積が異なる。この場合は、断面積が最大となる位置βの楕円が内接する四角形の横方向の長さが「軸直方向断面横辺の長さa」となり、縦方向の長さが「軸直方向断面縦辺の長さa’」となる。
【0028】
磁性体の配合量は、所望の特性が得られるよう適宜決定すればよい。例えば、熱伝達性の向上効果を発現させるためには、磁性体の配合量を、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の0.1体積%以上とすることが望ましい。1体積%以上とするとより好適である。一方、磁性体の分散性、吸音特性への影響等を考慮して、磁性体の配合量を10体積%以下とすることが望ましい。また、磁性体の配合量が10体積%を超えると、発泡成形に悪い影響が生じ、良好なウレタン発泡成形体を得にくくなる。よって、磁性体の配合量を3体積%以下とするとより好適である。
【0029】
本発明のウレタン発泡成形体によると、磁性体が孔部を略中心とする放射状に配向されているため、孔部の軸方向と磁性体の配向方向とにおいて、発現される特性が異なる。例えば、本発明のウレタン発泡成形体における荷重−変位曲線から、磁性体の配向方向における静ばね定数が、孔部の軸方向における静ばね定数の2倍以上であることが望ましい。4倍以上であるとより好適である。なお、本発明における静ばね定数は、ウレタン発泡成形体から、孔部の軸方向を一辺とする立方体を切り出して試料とし、該試料を各々の方向へ10%圧縮した時の荷重を変位量で除して算出した値とする。
【0030】
ところで、発泡ウレタン樹脂原料を密閉された発泡型内で発泡成形すると、発泡ウレタン樹脂原料が発泡型の型面と接触し、発泡が抑制されることにより、密度の高いスキン層が形成される。スキン層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば20μm以下とすればよい。スキン層の形成の有無、厚さ等は、発泡型への発泡原料の充填量、発泡時間、発泡温度等により調整すればよい。次に、本発明のウレタン発泡成形体の好適な製造方法について詳述する。
【0031】
<ウレタン発泡成形体の製造方法>
本発明のウレタン発泡成形体の製造方法は、発泡原料調製工程と発泡成形工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0032】
(1)発泡原料調製工程
本工程は、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する工程である。発泡ウレタン樹脂原料は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分等の既に公知の原料から調製すればよい。ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、およびこれらの誘導体(例えばポリオール類との反応により得られるプレポリマー類、変成ポリイソシアネート類等)等の中から適宜選択すればよい。また、ポリオール成分としては、多価ヒドロキシ化合物、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類、ポリエーテルポリアミン類、ポリエステルポリアミン類、アルキレンポリオール類、ウレア分散ポリオール類、メラミン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、フェノール変性ポリオール類等の中から適宜選択すればよい。
【0033】
さらに、触媒、発泡剤、整泡剤、架橋剤、難燃剤、帯電防止剤、減粘剤、安定剤、充填剤、着色剤等を適宜配合してもよい。例えば、触媒としては、テトラエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン系触媒や、ラウリン酸錫、オクタン酸錫等の有機金属系触媒が挙げられる。また、発泡剤としては水が好適である。水以外には、塩化メチレン、フロン、CO2ガス等が挙げられる。また、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が、架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が好適である。
【0034】
上記発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料としては、以下の態様を採用することができる。例えば、磁性体として上述した磁性フィラーを用いる場合には、発泡原料を、発泡ウレタン樹脂原料と磁性フィラーとを混合した混合材料とすればよい。なお、磁性フィラーの種類、形状、アスペクト比、配合量等については、上述した通りであるためここでは説明を省略する。あるいは、発泡原料を、発泡ウレタン樹脂原料と磁性体含有流体とを混合した混合材料としてもよい。ここで、「磁性体含有流体」は、広く「溶媒中に磁性体の微粒子が分散された流体」を意味する。したがって、「磁性体含有流体」には、ミクロンサイズの磁性体粒子を含有するMR流体、ナノサイズの磁性体粒子を含有するMF、MFにミクロンサイズの磁性体粒子を混合した磁気混合流体(Magnetic compound fluid;MCF)等が含まれる。ここでいう磁気混合流体(MCF)は、例えば特開2002−170791号公報に記載されている粒子分散型混合機能性流体のようなものである。本工程にて調製された発泡原料は、速やかに次の発泡成形工程に供される。
【0035】
(2)発泡成形工程
本工程は、上記発泡原料調製工程にて調製した発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する工程である。本工程では、内部に環状キャビティが区画された発泡型を使用する。環状キャビティの形状は、ウレタン発泡成形体の形状に応じて適宜決定すればよい。
【0036】
発泡成形は、磁場を、環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に形成して行う。例えば、互いに反対の磁極を有する芯棒磁石部とリング磁石部とを用い、芯棒磁石部を環状キャビティの軸部に、リング磁石部を環状キャビティの周縁部に配置して、両者の間に磁力線を発生させて磁場を形成することができる。
【0037】
磁力線の向きは、環状キャビティの軸部から周縁部に向かう方向でもよく、反対に周縁部から軸部に向かう方向でもよい。また、磁場をかけている間、磁力線の向きは一定であってもよく、反転させてもよい。磁力線の向きを一定にして発泡成形を行うと、磁束密度の大きさの違い等により、磁性体が偏在するおそれがある。これは、例えば磁性体の配合量を増加することにより、解消することができる。しかし、磁性体の配合量が増加した分だけ、発泡成形への影響が大きくなる。その結果、吸音特性、断熱性、クッション性等の本来備えている特性が低下するおそれがある。また、ウレタン発泡成形体の重量が増加し、製造コストも大きくなる。一方、磁力線の向きを反転させながら発泡成形を行うと、磁性体が振動し、分散しやすくなる。これにより、磁束密度が大きい所への磁性体の偏在を少なくすることができる。したがって、発泡原料が固化する前に、磁力線の向きを反転させながら発泡成形することが望ましい。また、磁場強度に強弱をつけることによっても、磁力線の向きを反転させた場合と同様に、磁性体の偏在を抑制することができる。したがって、必要に応じて、磁力線の向きを反転させるか、磁場強度に強弱をつけるか、あるいはその両方を同時に行うかを適宜選択すればよい。
【0038】
磁場は、発泡原料の粘度が比較的低い間にかけられることが望ましい。発泡原料が増粘し、発泡成形がある程度終了した時に磁場をかけると、増粘した発泡原料により磁性体の動きが妨げられて、磁性体が配向しにくい。なお、発泡成形を行う時間のすべてに亘って磁場をかける必要はない。
【0039】
<磁気誘導発泡成形装置>
(1)第一実施形態
以下、本発明の磁気誘導発泡成形装置の第一実施形態について説明する。まず、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の構成について説明する。図2に、磁気誘導発泡成形装置の斜視図を示す。図3に、磁気誘導発泡成形装置の部分断面図を示す。図2、図3に示すように、磁気誘導発泡成形装置1は、一対の電磁石部2U、2Dと、ヨーク部3と、発泡型4と、交流電源装置5と、を備えている。交流電源装置5は、ファンクションジェネレータ(汎用発振器)とバイポーラ(正負両極性出力)電源とを備えている。交流電源装置5は、本発明における磁場切替手段に含まれる。
【0040】
電磁石部2Uは、芯部20Uとコイル部21Uとを備えている。芯部20Uは、強磁性体製であって、上下方向に延びる円柱状を呈している。コイル部21Uは、芯部20Uの外周面に配置されている。コイル部21Uは、芯部20Uの外周面に巻装された導線210Uにより形成されている。導線210Uは、交流電源装置5に接続されている。交流電源装置5により、導線210Uに流れる電流の大きさ、向きが制御されている。
【0041】
電磁石部2Dは、発泡型4を挟んで、上記電磁石部2Uの下方に配置されている。電磁石部2Dは、上記電磁石部2Uと同様の構成を備えている。すなわち、電磁石部2Dは、芯部20Dとコイル部21Dとを備えている。コイル部21Dは、芯部20Dの外周面に巻装された導線210Dにより、形成されている。導線210Dは、交流電源装置5に接続されている。交流電源装置5により、導線210Dに流れる電流の大きさ、向きが制御されている。
【0042】
ヨーク部3は、強磁性体製であって、C字状を呈している。ヨーク部3のC字上端は、電磁石部2Uの芯部20U上端に接続されている。一方、ヨーク部3のC字下端は、電磁石部2Dの芯部20D下端に接続されている。
【0043】
発泡型4は、上型40Uと下型40Dとを備えている。発泡型4は、電磁石部2Uの芯部20Uと電磁石部2Dの芯部20Dとの間に、介装されている。以下、発泡型4について詳しく説明する。図4に、発泡型の分解斜視断面図を示す。図5に発泡型の斜視断面図を示す。
【0044】
図4、図5に示すように、下型40Dは、アルミニウム製であって、角柱状を呈している。下型40Dの上面には、断面円形の凹部が形成されている。下型40Dは、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとを備えている。芯棒磁石部41は、凹部の中央に配置されている。芯棒磁石部41は、電磁石部2Dの芯部20Dと同じ強磁性体製であって、円柱状を呈している。芯棒磁石部41は、凹部底面を貫通し、下型40Dの下面に表出している。芯棒磁石部41の下底面は、電磁石部2Dの芯部20Dに当接している。リング磁石部42Dは、凹部の外周縁に沿って配置されている。リング磁石部42Dは、電磁石部2Uの芯部20Uと同じ強磁性体製であって、円筒状を呈している。リング磁石部42Dの上端面は、下型40Dの上面に表出している。
【0045】
上型40Uは、アルミニウム製であって、角柱状を呈している。上型40Uは、リング磁石部42Uを備えている。リング磁石部42Uは、下型40Dのリング磁石部42Dと対向するように、上型40Uに埋設されている。リング磁石部42Uは、電磁石部2Uの芯部20Uと同じ強磁性体製であって、円筒状を呈している。リング磁石部42Uの上端面は、上型40Uの上面に表出している。リング磁石部42Uの上端面は、電磁石部2Uの芯部20Uに当接している。リング磁石部42Uの下端面は、上型40Uの下面に表出している。
【0046】
上型40Uと下型40Dとは、リング磁石部42Uの下端面とリング磁石部42Dの上端面とが当接するように配置されている。上型40Uと下型40Dとの間には、下型40Dの凹部の開口部が上型40Uの下面で封止されることにより、環状キャビティ43が区画されている。すなわち、環状キャビティ43は、上型40Uの下面と、芯棒磁石部41の外周面と、リング磁石部42Dの内周面と、下型40Dの凹部の底面と、により区画されている。環状キャビティ43には、所定の発泡原料が充填されている。
【0047】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の動きについて説明する。交流電源装置5をオンにすると、電磁石部2Uの芯部20Uの上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部20Uに、下方から上方に向かって磁力線L(図3に点線で示す)が発生する。また、電磁石部2Dの芯部20Dの上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部20Dに、下方から上方に向かって磁力線Lが発生する。つまり、電磁石部2U、2Dの対向面(芯部20Uの下面、芯部20Dの上面)同士の磁極は互いに異なる。ここで、芯部20Uとリング磁石部42U、42Dとは、同じ強磁性体製である。よって、リング磁石部42U、42Dは、共に芯部20Uにより磁化される。つまり、芯部20U下端はS極であるため、リング磁石部42DはS極に磁化される。また、芯部20Dと芯棒磁石部41とは、同じ強磁性体製である。よって、芯棒磁石部41は、芯部20Dにより磁化される。つまり、芯部20D上端はN極であるため、芯棒磁石部41は、N極に磁化される。これにより、芯棒磁石部41からリング磁石部42Dに向かって磁力線Lが発生する。
【0048】
ここで、環状キャビティ43における磁力線Lの向きを図を用いて説明する。図6に、図3中のVI−VI断面図を示す。環状キャビティ43の内周面は芯棒磁石部41により、外周面はリング磁石部42Dにより、各々形成されている。上述したように、芯棒磁石部41はN極に磁化されており、リング磁石部42DはS極に磁化されている。したがって、図6に点線で示すように、環状キャビティ43内には、芯棒磁石部41からリング磁石部42Dに向かって磁力線Lが発生している。つまり、環状キャビティ43内には、中心から径方向外側に向かって放射状に磁力線Lが発生している。磁力線Lに沿って、発泡原料中の磁性体は配向する。
【0049】
リング磁石部42D、42Uを通って電磁石部2Uの芯部20U上端から放射された磁力線Lは、ヨーク部3を通って、電磁石部2Dの芯部20D下端に流入する。すなわち、芯部20U→ヨーク部3→芯部20D→芯棒磁石部41→環状キャビティ43→リング磁石部42D→リング磁石部42Uから構成される磁気回路において、磁力線Lは閉ループを形成している。
【0050】
一方、交流電源装置5により、導線210U、210Dに流す電流の向きを反対にすると、各部材は、それまでとは反対の磁極に磁化される。これにより、例えばリング磁石部42U、42Dは、N極に磁化される。また、芯棒磁石部41は、S極に磁化される。したがって、この場合は、リング磁石部42Dから芯棒磁石部41に向かって磁力線Lが発生する。つまり、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きが反転されて、環状キャビティ43内には、径方向内側に向かって磁力線Lが発生することになる。
【0051】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の作用効果について説明する。本実施形態によると、環状キャビティ43を区画する芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとにより、環状キャビティ43内に、軸部を略中心とする放射状に、安定した磁力線Lを発生させることができる。したがって、芯棒磁石部41を型面として形成された孔部を略中心とする放射状に磁性体が配向されたウレタン発泡成形体を、簡便に製造することができる。
【0052】
また、本実施形態では、芯棒磁石部41とリング磁石部42D、42Uとが、発泡型4に組み込まれている。このため、磁場発生装置自体は公知のものを利用することができ、汎用性が高い。また、発泡型4の構成を変更するだけで、同じ磁場発生装置を使用して種々のウレタン発泡成形体を製造することができる。
【0053】
また、本実施形態によると、交流電源装置5を構成するファンクションジェネレータ(汎用発振器)により、電磁石部2U、2Dの各々へ任意の波形にて電気信号の入力が可能である。これにより、磁場形成のオン、オフを瞬時に切り替えることができる。また、形成された磁場の強さの制御も容易である。さらに、電流の向きを瞬時に切り替え、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きを、容易に反転させることができる。その結果、発泡成形中の磁性体挙動を効果的に制御することができる。例えば、芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間の磁力線の向きを反転させながら発泡成形を行うと、磁性体が振動し、分散しやすくなる。よって、磁性体の偏在が少なくなる。
【0054】
また、磁力線Lは閉ループを形成している。このため、磁力線Lの漏洩を抑制することができ、環状キャビティ43内に安定した磁場を形成することができる。また、磁力線Lの漏洩による外部への影響も少ない。また、磁力の無駄が少なく、装置自体の小型化が可能である。
【0055】
(2)第二実施形態
次に、本発明の磁気誘導発泡成形装置の第二実施形態について説明する。本実施形態と第一実施形態の相違点は、主に発泡型の両側に電磁石部を四つ並置した点である。よって、ここでは相違点を中心に説明する。
【0056】
まず、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の構成について説明する。図7に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図を示す。図8に、図7のVIII−VIII断面図を示す。図7、図8中、前出の図2、図3と対応する部材は同じ符号で示す。図7、図8に示すように、磁気誘導発泡成形装置1は、四つの電磁石部2a〜2dと、一対のヨーク部3U、3Dと、一対のポールピース30U、30Dと、発泡型4と、を備えている。
【0057】
一対のヨーク部3U、3Dは、各々、強磁性体製であって、矩形板状を呈している。一対のヨーク部3U、3Dは、上下方向に所定間隔だけ離間して配置されている。四つの電磁石部2a〜2dは、各々、第一実施形態の電磁石部2U、2Dと同様の構成を備えている。すなわち、四つの電磁石部2a〜2dは、各々、芯部と、その外周面に配置されたコイル部と、を備えている。コイル部は、芯部の外周面に巻装された導線により形成されている。導線は、各々、図示しない交流電源装置に接続されている。四つの電磁石部2a〜2dは、一対のヨーク部3U、3D間に介装されている。具体的には、四つの電磁石部2a〜2dは、一対のヨーク部3U、3Dの四隅に配置されている。四隅に配置された四つの電磁石部2a〜2dは、各々、支柱のように、一対のヨーク部3U、3D間を連結している。
【0058】
一対のポールピース30U、30Dは、各々、強磁性体製であって、矩形薄板状を呈している。一対のポールピース30U、30Dは、各々、一対のヨーク部3U、3Dの内面に装着されている。また、一対のポールピース30U、30Dは、四つの電磁石部2a〜2dよりも内側に配置されている。
【0059】
発泡型4は、一対のポールピース30U、30D間に介装されている。発泡型4は、上型40Uと下型40Dとを備えている。下型40Dの両側面上縁には、一対の被ガイド部44が突設されている。被ガイド部44は、水平方向に延在している。一対の被ガイド部44は、コンベア(図略)の一対のガイド部60上に搭載されている。一対のガイド部60が動くことにより、発泡型4は搬送される。
【0060】
下型40Dの上面には、断面円形の凹部が形成されている。凹部中央には、芯棒磁石部41が上下方向に貫通している。芯棒磁石部41は、下型40Dの下面に表出している。また、凹部の外周縁に沿って、リング磁石部42Dが埋設されている。リング磁石部42Dの上端面は、下型40Dの上面に表出している。
【0061】
上型40Uは、下型40Dの上方に配置されている。上型40Uには、リング磁石部42Uが埋設されている。上型40Uのリング磁石部42Uと下型40Dのリング磁石部42Dとは、上下方向に対向している。リング磁石部42Uの上端面は、上型40Uの上面に表出している。リング磁石部42Uの下端面は、上型40Uの下面に表出している。型締めにより、これら一対のリング磁石部42U、42Dは連結されている。そして、上型40Uの下面と、芯棒磁石部41の外周面と、リング磁石部42Dの内周面と、下型40Dの凹部の底面と、により環状キャビティ43が区画されている。
【0062】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の動きについて説明する。交流電源装置をオンにすると、四つの電磁石部2a〜2dの芯部の上端がN極に、下端がS極に磁化される。このため、芯部に下方から上方に向かって磁力線L(図8に点線で示す)が発生する。これにより、四つの電磁石部2a〜2dと発泡型4との間には、各々、電磁石部2a〜2d→上方のヨーク部3U→上方のポールピース30U→発泡型4→下方のポールピース30D→下方のヨーク部3D→電磁石部2a〜2dという経路で閉ループの磁路が形成される。発泡型4において、芯棒磁石部41はS極に磁化されており、リング磁石部42DはN極に磁化されている。したがって、環状キャビティ43内には、リング磁石部42Dから芯棒磁石部41に向かって磁力線Lが発生している。つまり、環状キャビティ43内には、径方向外側から中心に向かって放射状に磁力線Lが発生している。磁力線Lに沿って、発泡原料中の磁性体は配向する。
【0063】
次に、本実施形態の磁気誘導発泡成形装置の作用効果について説明する。本実施形態の磁気誘導発泡成形装置は、構成が共通する部分については、第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置と同様の作用効果を有する。また、本実施形態では、四つの電磁石部2a〜2dを並置し、一対のヨーク部3U、3Dを介して、環状キャビティ43内(芯棒磁石部41とリング磁石部42Dとの間)に磁力線Lを発生させた。このため、環状キャビティ43内の磁束密度を大きくしやすい。また、電磁石部2a〜2dの各々から発生した磁力線Lは、環状キャビティ43を通る閉ループの磁路を形成している。このため、磁力線Lの漏洩を抑制することができ、環状キャビティ43内に安定した磁場を形成することができる。また、本実施形態によると、コンベアを用いて発泡型4を順次移動させることができる。このため、本発明のウレタン発泡成形体を連続的に製造することができる。よって、本実施形態は、大量生産に好適である。
【0064】
(3)その他
以上、本発明の磁気誘導発泡成形装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。例えば、磁場の発生手段として、電磁石ではなく永久磁石を使用してもよい。電磁石を使用した場合でも、ヨーク部を備えていなくてもよい。また、上記第一実施形態では、一対の電磁石部を軸方向に所定間隔離間して対向して配置した。一方、上記第二実施形態では、四つの電磁石部を発泡型の両側に二本ずつ並列に配置した。このように、電磁石部の数や配置の仕方は、芯棒磁石部とリング磁石部との間に所望の磁場が形成されるよう、適宜決定すればよい。また、第一実施形態および第二実施形態のいずれにおいても、電磁石部の芯部を上下方向に延びる円柱状とした。しかし、芯部の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、角柱状等、種々の形状を採用することができる。
【0065】
また、交流電源装置(磁場切替手段)を使用しなくてもよい。つまり、発泡成形中に電流の向きを切り替えたり、磁場強度を変化させなくてもよい。磁場切替手段は、交流電源装置に限定されるものではなく、直流電源装置、または直流電源装置とその電流の向きを切り替えるスイッチ等から構成してもよい。
【0066】
上記実施形態では、芯棒磁石部とリング磁石部とを、発泡型に組み込んだ。しかし、芯棒磁石部とリング磁石部とを、各々発泡型とは別に配置してもよい。また、環状キャビティや芯棒磁石部の大きさ、形状等は、目的とするウレタン発泡成形体に応じて適宜決定すればよい。また、電磁石等の磁力源から発生する磁場に対する影響が少なく、磁場をコントロールしやすいという理由から、発泡型は、透磁率の低い材料、つまり非磁性の材料から製造されていることが望ましい。発泡型の材質として、上記アルミニウムの他、アルミニウム合金、非磁性ステンレス鋼(SUS303、304等)、樹脂、セラミックス等が好適である。
【0067】
上記第二実施形態では、発泡型をコンベアにより搬送可能にした。しかし、コンベアを用いずに、一対のポールピース間に発泡型を配置してもよい。ここで、ポールピースの形状は必ずしも矩形薄板状に限定されない。所望の磁場が形成されるよう、ポールピースの形状を適宜決定すればよい。また、ポールピースは必ずしも配置しなくてもよい。なお、磁気抵抗を小さくするという観点から、ヨーク部やポールピースと発泡型との隙間はできるだけ小さい方がよい。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0069】
(1)ウレタン発泡成形体の製造
磁性体として磁性フィラーを含有するウレタン発泡成形体を、上記第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置を用いて製造した。まず、発泡ウレタン樹脂原料を以下のように調製した。ポリオール成分のポリエーテルポリオール(住化バイエルウレタン社製「S−0248」、平均分子量6000、官能基数3、OH価28mgKOH/g)100重量部と、架橋剤のジエチレングリコール(三菱化学社製)2重量部と、発泡剤の水2重量部と、テトラエチレンジアミン系触媒(花王社製「No.31」)1重量部と、シリコーン系整泡剤(日本ユニカ社製「SZ−1313」)0.5重量部と、を配合し、プレミックスポリオールを調製した。調製したプレミックスポリオールに、ポリイソシアネート成分のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(BASFINOACポリウレタン社製「NE1320B」、NCO=44.8wt%)を加えて混合し、発泡ウレタン樹脂原料とした。ここで、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合比(PO:ISO)は、両者の合計重量を100%として、PO:ISO=78.5:21.5とした。
【0070】
次に、調製した発泡ウレタン樹脂原料に、磁性フィラーを混合して発泡原料とした。磁性フィラーには、ステンレスファイバー(虹技社製「KCメタルファイバー SUS430F」:直径約30μm、長さ約2mm)を使用した。このステンレスファイバーのアスペクト比を求めたところ、4444となった。磁性フィラーは、ポリオール成分のポリエーテルポリオール100重量部に対して121重量部配合した。
【0071】
その後、発泡原料を発泡型の環状キャビティ(前出図4、図5参照。径方向長さ30mm×軸方向長さ20mm)内に注入し、密閉した。続いて、発泡型を一対の電磁石部間に設置して、磁場中にて発泡成形を行った(前出図2、図3参照)。発泡成形は、最初の2分37秒間は磁場をかけて行い、続く約5分間は磁場をかけないで行った。磁場の形成は、電圧値が最大となるまでの37秒間は、適宜電流の向きを切り替えながら行い、続く約2分間は1秒ごとに電流の向きを切り替えて行った。
【0072】
発泡成形が終了した後、脱型して、中央に円柱状の孔部を備えるドーナツ状のウレタン発泡成形体を得た。このウレタン発泡成形体を実施例1の発泡成形体とした。実施例1の発泡成形体における磁性フィラーの配合量は、ウレタン発泡成形体の体積を100体積%とした場合の1体積%であった。
【0073】
また、上記同様の磁気誘導発泡成形装置を使用して、電流の切り替えを行わずに、つまり磁力線の向きを芯棒磁石部からリング磁石部方向へ一定にして、ウレタン発泡成形体を製造した。発泡原料は、上記実施例1の発泡成形体と同じものを使用した。得られたウレタン発泡成形体を実施例2の発泡成形体とした。
【0074】
実施例1の発泡成形体の写真を図9〜図11に示す。図9は、実施例1の発泡成形体の上面写真である。図10は、同発泡成形体の下面写真である。図11は、同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。また、実施例2の発泡成形体の写真を図12〜図14に示す。図12は、実施例2の発泡成形体の上面写真である。図13は、同発泡成形体の下面写真である。図14は、同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。なお、いずれの発泡成形体についても、孔部軸方向の断面を観察するため、同方向に切断した。このため、図9、図10、図12、図13に示した上面写真および下面写真は、各発泡成形体の切断された半分を撮影したものである。
【0075】
図9〜図11に示すように、実施例1の発泡成形体において、磁性フィラーは孔部から放射状に配向していた。また、図9、図11に示すように、上面付近の周縁部や孔部の周りに、若干、磁性体の集中が見られた。これは、環状キャビティを区画する芯棒磁石部およびリング磁石部の上端付近で、磁束密度が大きくなっていたためと考えられる。同様に、実施例2の発泡成形体についても、図12〜図14に示すように、磁性フィラーは孔部から放射状に配向していた。実施例2の発泡成形体では、図12、図14に示すように、上面付近の孔部の周りに、磁性体が多く配向していた。また、図13に示すように、下面の周縁部にも磁性体が多く配向していた。実施例2の発泡成形体の発泡成形は、磁力線の向きを一定にして行った。このため、実施例1の発泡成形体と比較して、磁性体が分散しにくく、磁束密度の大きな所に、より多くの磁性体が集中したと考えられる。
【0076】
(2)異方性試験
実施例1の発泡成形体について、異なる方向からの荷重に対する変位量を測定し、異方性を評価した。また、比較のため、以下の二種類のウレタン発泡成形体を製造し、これらについても、同様に異方性を評価した。一つ目は、磁性体を配合せずに上記発泡ウレタン樹脂原料のみを発泡成形した。得られたウレタン発泡成形体を、比較例1の発泡成形体とした。二つ目は、上記同様の発泡原料を磁場をかけずに発泡成形した。得られたウレタン発泡成形体を、比較例2の発泡成形体とした。比較例1、2の発泡成形体の形状、大きさは、実施例1の発泡成形体と同じである。
【0077】
(2−1)実施例1および比較例1、2の発泡成形体から、孔部の軸方向を上下方向の一辺とする20mm角の立方体を切り出して試料とした。まず、実施例1の発泡成形体について、孔部の軸方向における荷重−変位曲線を作成するため、試料の上面(20mm×20mm=4cm2)に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は孔部の軸方向)、荷重に対する変位量を測定した。次に、磁性体の配向方向における荷重−変位曲線を作成するため、試料の右面(20mm×20mm=4cm2)に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は磁性体の配向方向と略同じ)、荷重に対する変位量を測定した。同様に、比較例1、2の発泡成形体についても、試料の上面および右面に対して各々荷重を加え、荷重に対する変位量を測定した。図15〜図17に、各々の測定における荷重−変位曲線を示す。
【0078】
図15に示すように、実施例1の試料では、孔部の軸方向(試料の上下方向)に比べて、磁性体の配向方向(試料の左右方向)における剛性が高くなった。また、右面から圧縮した場合と、上面から圧縮した場合と、について変位量が2mmの時(圧縮率10%)における静ばね定数を比較したところ、前者は後者の6.62倍となった。一方、図16、図17に示すように、比較例1、2の試料では、圧縮方向の違いにより剛性にほとんど差はなかった。各々の試料について、実施例1と同様に、上面から圧縮した場合の静ばね定数と、右面から圧縮した場合の静ばね定数とを比較した。その結果、比較例1の試料では0.61倍、比較例2の試料では1.02倍であった。以上より、本発明のウレタン発泡成形体では、磁性体の配向方向における特性と、孔部の軸方向における特性と、が大きく異なることが確認された。
【0079】
(2−2)上記異方性の評価では、各々のウレタン発泡成形体から所定の大きさに切り出した試料を使用した。ここでは、実施例1および比較例1、2の発泡成形体をそのまま使用して、異なる方向からの荷重に対する変位量を測定した結果を示す。まず、孔部の軸方向における荷重−変位曲線を作成するため、各発泡成形体の上面に対して略垂直に荷重を加え(圧縮方向は孔部の軸方向)、荷重に対する変位量を測定した。次に、各発泡成形体の外周部にリング部材を環装して固定すると共に、孔部に円柱状のジグを貫装した。ジグを外周部のリング部材側に押圧して孔部から径方向に荷重を加え(圧縮方向は磁性体の配向方向と略同じ)、荷重に対する変位量を測定した。図18〜図20に、各々の測定における荷重−変位曲線を示す。
【0080】
図19、図20に示すように、比較例1、2の発泡成形体では、孔部の軸方向(厚さ方向)と、径方向と、では荷重−変位曲線に大きな差は見られなかった。これに対して、実施例1の発泡成形体では、図18に示すように、孔部の軸方向(厚さ方向)と、磁性体の配向方向(径方向)と、では荷重−変位曲線が大きく異なった。したがって、本結果からも、実施例1の発泡成形体は、異方性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のウレタン発泡成形体は、自動車、電子機器、建築等の幅広い分野において用いることができる。特に、異方性が要求される用途、例えば車両のサスペンション用アッパーサポートのゴム部材、衝撃吸収用のバウンドストッパー等として好適である。また、放熱性が要求される用途、例えばエンジンの騒音を低減するために車両のエンジンルームに配置されるエンジンカバーやサイドカバー、OA(Office Automation)機器や家電製品のモーター用吸音材、パソコン等の電子機器の放熱性吸音材、家屋の内外壁用吸音材等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】磁性フィラーの各形状における最大長さ、軸直方向断面横辺の長さ、軸直方向断面縦辺の長さについての説明図である。
【図2】本発明の第一実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図である。
【図3】同磁気誘導発泡成形装置の部分断面図である。
【図4】発泡型の分解斜視断面図である。
【図5】発泡型の斜視断面図である。
【図6】図3中のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態の磁気誘導発泡成形装置の斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】実施例1の発泡成形体の上面写真である。
【図10】同発泡成形体の下面写真である。
【図11】同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。
【図12】実施例2の発泡成形体の上面写真である。
【図13】同発泡成形体の下面写真である。
【図14】同発泡成形体の孔部軸方向断面写真である。
【図15】実施例1の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図16】比較例1の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図17】比較例2の発泡成形体から切り出した試料における荷重−変位曲線である。
【図18】実施例1の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【図19】比較例1の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【図20】比較例2の発泡成形体における荷重−変位曲線である。
【符号の説明】
【0083】
1:磁気誘導発泡成形装置
2D、2U:電磁石部 2a〜2d:電磁石部 20D、20U:芯部
21D、21U:コイル部 210D、210U:導線
3:ヨーク部 3D、3U:ヨーク部 30D、30U:ポールピース
4:発泡型 40D:下型 40U:上型 41:芯棒磁石部
42D、42U:リング磁石部 43:環状キャビティ 44:被ガイド部
5:交流電源装置(磁場切替手段)
60:ガイド部
L:磁力線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部と、
該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、
を備えてなることを特徴とするウレタン発泡成形体。
【請求項2】
前記磁性体の配向方向における静ばね定数は、前記孔部の軸方向における静ばね定数の2倍以上である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項3】
前記磁性体は、アスペクト比が2以上の磁性フィラーである請求項1または請求項2に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項4】
発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する発泡原料調製工程と、
該発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する発泡成形工程と、
を有することを特徴とするウレタン発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡成形工程において、前記発泡原料が固化する前に、前記磁力線の向きを反転させながら発泡成形する請求項4に記載のウレタン発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
内部に環状キャビティが区画されている発泡型と、
該環状キャビティの軸部に配置されている芯棒磁石部と、
該環状キャビティの周縁部に配置されているリング磁石部と、を備え、
該芯棒磁石部と該リング磁石部との間に磁力線を発生させて発泡成形することを特徴とする磁気誘導発泡成形装置。
【請求項7】
強磁性体からなる芯部と、該芯部の外周面に配置されているコイル部と、を有する電磁石部を備え、
前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、該電磁石部により互いに異なる磁極を持つよう磁化されている請求項6に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項8】
前記電磁石部における前記芯部に接続され、前記環状キャビティを通る閉ループの磁路を形成するヨーク部を備える請求項7に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項9】
さらに、前記電磁石部の前記コイル部に流す電流の向きを切り替えて、前記芯棒磁石部と前記リング磁石部との間に発生させる磁力線の向きを反転させる磁場切替手段を備える請求項7または請求項8に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項10】
前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、前記発泡型に組み込まれており、
該発泡型の前記環状キャビティの内周面は該芯棒磁石部により、該環状キャビティの外周面は該リング磁石部により、各々形成されている請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項1】
孔部と、
該孔部を略中心とする放射状に配向された磁性体と、
を備えてなることを特徴とするウレタン発泡成形体。
【請求項2】
前記磁性体の配向方向における静ばね定数は、前記孔部の軸方向における静ばね定数の2倍以上である請求項1に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項3】
前記磁性体は、アスペクト比が2以上の磁性フィラーである請求項1または請求項2に記載のウレタン発泡成形体。
【請求項4】
発泡ウレタン樹脂原料と磁性体とを含む発泡原料を調製する発泡原料調製工程と、
該発泡原料を発泡型の環状キャビティ内に注入し、該環状キャビティの軸部を略中心とする放射状に磁力線を発生させて磁場を形成し、該磁場中で発泡成形する発泡成形工程と、
を有することを特徴とするウレタン発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡成形工程において、前記発泡原料が固化する前に、前記磁力線の向きを反転させながら発泡成形する請求項4に記載のウレタン発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
内部に環状キャビティが区画されている発泡型と、
該環状キャビティの軸部に配置されている芯棒磁石部と、
該環状キャビティの周縁部に配置されているリング磁石部と、を備え、
該芯棒磁石部と該リング磁石部との間に磁力線を発生させて発泡成形することを特徴とする磁気誘導発泡成形装置。
【請求項7】
強磁性体からなる芯部と、該芯部の外周面に配置されているコイル部と、を有する電磁石部を備え、
前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、該電磁石部により互いに異なる磁極を持つよう磁化されている請求項6に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項8】
前記電磁石部における前記芯部に接続され、前記環状キャビティを通る閉ループの磁路を形成するヨーク部を備える請求項7に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項9】
さらに、前記電磁石部の前記コイル部に流す電流の向きを切り替えて、前記芯棒磁石部と前記リング磁石部との間に発生させる磁力線の向きを反転させる磁場切替手段を備える請求項7または請求項8に記載の磁気誘導発泡成形装置。
【請求項10】
前記芯棒磁石部および前記リング磁石部は、前記発泡型に組み込まれており、
該発泡型の前記環状キャビティの内周面は該芯棒磁石部により、該環状キャビティの外周面は該リング磁石部により、各々形成されている請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の磁気誘導発泡成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−196101(P2009−196101A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37125(P2008−37125)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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