説明

エアばね付きダンパ

【課題】ダンパの経年劣化を容易に確認することができるエアばね付きダンパを提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、シリンダ2とシリンダ2内に挿通されるロッド3とを備えたダンパ本体Dと、ダンパ本体Dにおけるシリンダ2に固定されるピストンパイプ4と、ダンパ本体Dにおけるロッド3に固定されるエアチャンバ5と、筒状であって一端6aがエアチャンバ5に固定されるとともに他端6bがピストンパイプに固定されてダンパ本体Dの外周にエア室Gを形成するダイヤフラム6とを備えたエアばね付きダンパ1において、エアチャンバ5がロッド3に固定されるロッド側部材10とロッド側部材10に着脱自在であってダイヤフラム6の一端6aが固定されるダイヤフラム側部材11とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアばね付きダンパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両においては、車体と車軸との間に懸架ばねと称される車体を弾性支持するばねが介装されている。また、大型トラックのように運転室(キャビン)がシャーシ上に弾性支持されるものにあっては、キャビンとシャーシとの間にばねが介装されるものもある。そして、これらばねは、車両走行中における路面の凹凸による車輪振動の車体或いはキャビンへの伝達を妨げるようになっているが、ばねだけでは振動を減衰させることができず、また、振動周波数によっては共振してしまうため、これに並列してダンパを設置するようにしている。
【0003】
そして、近年では、乗り心地の更なる向上や車高調整を目的としてばねをエアばねとするエアサスペンション等が実用化されており、このようなエアサスペンション等では、ダンパ周りにエア室を設けてダンパとエアばねとを一体化したエアばね付きダンパが広く採用されるに到っている。
【0004】
エアばね付きダンパについて、詳しく説明すると、ダンパは、周知のようにシリンダとシリンダ内に挿通されるロッドとを備え、ダンパにおけるシリンダに筒状のピストンパイプを固定するとともに、ダンパにおけるロッドに筒状のエアチャンバを固定し、筒状であって一端が当該ピストンパイプに固定されるとともに他端がエアチャンバに固定されるローリングダイヤフラムを設け、これらピストンパイプ、エアチャンバおよびローリングダイヤフラムでダンパ周りに気体が封入されるエア室を画成している(たとえば、特許文献1,2,3参照)。
【0005】
そして、たとえば、エアばね付きダンパが車体と車軸との間に介装される場合、エア室内の気体圧力を増減させることで、ばね反力を調節して車高調整が可能となり、これを乗り心地に適したものとすることで車両における乗り心地を向上することができるようになっている。なお、エアばね付きダンパをキャビンとシャーシとの間に介装する場合も、キャビンの振動を効果的に抑制して乗り心地を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−250587号公報
【特許文献2】特開2000−185536号公報
【特許文献3】特開2003−42215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ダンパは、基本的には、シリンダ内には、ロッドに連結されてシリンダ内に挿入されるピストンによって仕切られる二つの部屋があり、これら部屋には作動油を充填してあって、伸縮時にピストンがシリンダ内で移動することによって部屋を行き交う作動油に抵抗を与えて減衰力を発生するようになっている。したがって、ダンパが性能を充分に発揮するには、シリンダ内の作動油が漏れることなく密封されている必要があり、シリンダに対して相対移動してシリンダ内に出入りロッドの外周をシリンダ側に固定した環状のオイルシールでシールするようにしている。
【0008】
しかしながら、ロッドがシリンダに対して相対移動する際に、オイルシールとロッドとの間に摩擦が生じ、ダンパをある程度長期間に亘って使用すると、経年劣化によってオイルシールが磨耗する。オイルシールは、ロッドがシリンダから外部へ突出する方向へ移動する際に、ロッド外周に付着した作動油を掻き落としてシリンダ内から作動油の漏れを防止し、シリンダ内を密封しているのであるが、上述のように磨耗すると作動油を掻き落とす機能と密封する機能が低下するため、ロッド外周に付着した作動油が許容される以上に外部へ漏れてしまってシリンダ内で作動油が不足気味となり、設定どおりの減衰力を発揮できなくなってしまう可能性があるだけでなく、漏れた作動油が他部品へ付着することで他部品へ悪影響を与える可能性もある。
【0009】
このような状況が生じているかどうかは、ロッドの外周に摺接するオイルシールやロッド周りに付着した作動油量を目視するなどで確認することができるのであるが、エアばね付きダンパにあっては、ローリングダイヤフラムがエアチャンバとピストンパイプに金属バンドで締付固定されていて、上記確認作業を行うには、金属バンドを切断するしかなく、ダンパにおけるシールの機能低下を簡単に確認することができない。また、確認作業が終了してダンパに問題が無い場合、再度、ローリングダイヤフラムを新しい金属バンドで締付固定する作業も必要となって、メンテナンス費用も嵩むことになる。
【0010】
そこで、本発明は上記した点を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、ダンパの経年劣化を容易に確認することができるエアばね付きダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、シリンダとシリンダ内に挿通されるロッドとを備えたダンパ本体と、ダンパ本体におけるシリンダに固定されるピストンパイプと、ダンパ本体におけるロッドに固定されるエアチャンバと、筒状であって一端がエアチャンバに固定されるとともに他端がピストンパイプに固定されてダンパ本体の外周にエア室を形成するダイヤフラムとを備えたエアばね付きダンパにおいて、エアチャンバがロッドに固定されるロッド側部材とロッド側部材に着脱自在であってダイヤフラムの一端が固定されるダイヤフラム側部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアばね付きダンパでは、エアチャンバがロッド側部材とこれに着脱自在に固定されるとともにダイヤフラムの一端が固定されるダイヤフラム側部材とで構成されているので、エアチャンバをロッド側部材とダイヤフラム側部材に分解することが可能である。
【0013】
このようにエアチャンバをロッド側部材とダイヤフラム側部材とに分解することによって、ロッドとシールの摺動部位およびロッド回りの作動液体の漏れを視認することができ、ダンパ本体のシールの機能低下を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるエアばね付きダンパの縦断面図である。
【図2】エアチャンバを分解した状態を示す本発明の一実施の形態におけるエアばね付きダンパの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した一実施の形態に基づいて本発明について説明する。一実施の形態におけるエアばね付きダンパ1は、図1に示すように、シリンダ2とシリンダ2内に挿通されるロッド3とを備えたダンパ本体Dと、ダンパ本体Dにおけるシリンダ2に固定されるピストンパイプ4と、ダンパ本体Dにおけるロッド3に固定されるエアチャンバ5と、筒状であって一端6aがエアチャンバ5に固定されるとともに他端6bがピストンパイプ4に固定されてダンパ本体Dの外周にエア室Gを形成するダイヤフラム6とを備えて構成されている。
【0016】
また、このエアばね付きダンパ1は、たとえば、シリンダ2の図1中下端に設けた取付部7を図示しない車両の車軸へ連結し、ロッド3を図示しない車両の車体へ連結することで、車体と車軸との間に介装されるようになっており、シリンダ2とロッド3の軸方向の相対移動、つまり、伸縮によってダンパ本体Dが減衰力を発揮して車体振動を抑制するようになっている。
【0017】
そして、ダンパ本体Dの外周に設けられたエア室Gに気体が充填されていて、内部圧力によってダンパ本体Dを伸長方向に附勢するエアばねとして機能し、ダンパ本体Dの伸縮に伴うエア室Gの容積変化に応じた弾発力を発揮するようになっている。それゆえ、エアばね付きダンパ1が車体と車軸との間に介装される場合、エアばね付きダンパ1におけるエアばねはダンパ本体Dに並列される懸架ばねとして機能することになる。なお、エアばね付きダンパ1の使用形態は、車両の車体と車軸との間に介装される使用形態に限られず、車両のシャーシとキャビンとの間に介装されて使用されてもよいし、その他、ばねとダンパ本体とを並列させて制振対象の振動を抑制する用途に使用可能であることは当然である。
【0018】
以下、各部について詳細に説明する。ダンパ本体Dは、周知であるので、詳しくは説明しないが、シリンダ2内に移動可能に収容されるとともにロッド3に連結される図外のピストンを備えており、当該ピストンによってシリンダ2内に二つの部屋が区画されている。そして、上記部屋内には、作動油等の作動液体が充填されており、シリンダ2に対してロッド3が相対移動する際に、上記ピストンがシリンダ2内で移動して、一方の部屋を圧縮し、他方の部屋を拡大せしめるようになっている。また、これら部屋同士を連通させる通路が設けてあって、当該通路を介して圧縮側の部屋から拡大側の部屋へ作動液体が移動する際に、この作動液体の流れに抵抗を与えて部屋間に差圧を生じさせるようになっており、当該差圧をピストンで受けてダンパ本体Dは、シリンダ2に対するロッド3の相対移動を抑制する減衰力を発揮するようになっている。
【0019】
なお、シリンダ2内に出入りするロッド3によってシリンダ2内の容積が変化し、また、作動液体が温度変化に応じて体積が変化するので、ダンパ本体Dでは、これらを補償する為に上記部屋の他に、気室や、気体と作動液体が充填されるリザーバを設ける構造を採用することになる。そして、ダンパ本体Dがリザーバを備える場合、ダンパ本体Dは、たとえば、シリンダ2内にピストンが収容されるインナーシリンダを設けて、シリンダ2とインナーシリンダとの間の環状隙間をリザーバとして用いる複筒型とされてもよい。また、シリンダ2内に直接にピストンを収容する場合、シリンダ2内に摺動自在にフリーピストンを挿入してシリンダ2内に気室を区画するようにして、ダンパ本体Dをいわゆる単筒型のダンパとしてもよい。上記したダンパ本体Dの構造は、一例であって、ダンパ本体Dは上記以外の構造を採用してもよいのは当然である。
【0020】
シリンダ2の上端には、環状のシール8が設けられていて、当該シール8は、ロッド3の外周に摺接して、シリンダ2内を密封し、ロッド3がシリンダ2内から突出する方向へ移動する際に、ロッド3の外周に付着した作動液体をシリンダ2内へ掻き落として、作動液体のシリンダ2内からの漏れを阻止している。
【0021】
そして、シリンダ2の外周には、筒状のピストンパイプ4が取り付けられている。具体的には、ピストンパイプ4は、図1中下端が縮径されていて、当該縮径部4aがシリンダ2の外周に嵌合して、当該縮径部4aをシリンダ2に溶接することによって、シリンダ2と一体化されている。なお、ダンパ本体Dが、シリンダ2に上述したピストンおよびフリーピストンが摺動自在に挿入される単筒型とされる場合には、シリンダ2におけるピストンおよびフリーピストンの摺動範囲に溶接歪が生じないように、シリンダ2の外周であって当該摺動範囲を避ける位置に縮径部4aを溶接するとよい。具体的には、たとえば、縮径部4aをシリンダ2の図1中下端に嵌合して溶接すればよい。また、ダンパ本体Dが複筒型に設定される場合には、シリンダ2に直接ピストンが摺接するのではなく、シリンダ2内に環状隙間を介して収容されるインナーシリンダにピストンが摺接する構造となるため、シリンダ2の任意の位置に縮径部4aを溶接することができる。
【0022】
さらに、ピストンパイプ4は、側部に給排孔4bを備えており、当該給排孔4bは、図外のコンプレッサから伸びる図示しないホースが接続されるようになっていて、当該給排孔4bを通じてエア室Gへ気体を給排することができるようになっている。図示したところでは、エアばね付きダンパ1の運搬や保管に当たり、エア室G内に埃などの侵入を防ぐため、給排孔4bをプラグ9にて閉塞しているが、車両に搭載する場合には、プラグ9を取り除き給排孔4bに上述の図外のホースを取り付けることになる。そして、エアばね付きダンパ1を車両における車体と車軸との間に介装して使用する場合には、当該給排孔4bを介してエア室G内へ気体を給排してエア室G内の圧力を調節することで、エアばねのバネ定数を変更し車高を調節することができる。なお、車高調整やバネ定数の変更が必要無い場合、給排孔4bをコンプレッサに接続せず、プラグ9で閉塞した状態でエアばね付きダンパ1を使用することも可能である。
【0023】
つづいて、エアチャンバ5は、ロッド3に固定されるロッド側部材10とロッド側部材10に着脱自在であってダイヤフラム6の一端が固定されるダイヤフラム側部材11とを備えて構成されている。
【0024】
詳しくは、ロッド側部材10は、円盤状のプレート部10aと、プレート部10aの外周に設けた筒部10bと、筒部10bの外周に設けた螺子部10cとを備えて構成されている。また、プレート部10aは、ダンパ本体側の中央にロッド3の先端に設けた雄螺子3aが螺合されるソケット10dを備えるとともに、反ダンパ本体側の中央に図示しない車両の車体への連結を可能とする軸部10eとを備えている。したがって、この場合、ロッド3は、車両の車体へロッド側部材10を介して取り付けることができるようになっている。
【0025】
なお、車両への取り付けをロッド側部材10で行わない場合、プレート部10aの中央にロッド3の挿通を許容する挿通孔を設けておき、プレート部10aをロッド3の外周に適宜の手段で固定するようにしてもよい。上記手段は、たとえば、ロッド3の上端を縮径して段部を形成し、プレート部10aを当該段部とロッド3の上端に螺合するナット等によって挟持して固定するなどとされればよい。
【0026】
また、筒部10bの螺子部10c形成部位よりダンパ本体側となる下方側が縮径されていて、当該縮径部位に環状溝10fが設けてあって、当該環状溝10f内にはシールリング12が装着されている。
【0027】
ダイヤフラム側部材11は、筒状であって、その内周にはロッド側部材10の筒部10bの外周に設けた螺子部10cに螺合可能なように螺子部11aを備えている。詳細には、ダイヤフラム側部材11の図1中上端側の内径が拡径されていて、当該拡径部位に螺子部11aが形成されている。なお、ロッド側部材10の軸部10eの基端外周形状は面取りされて二面幅形状とされ、他方のダイヤフラム側部材11の図1中上端外周の形状も同じく二面幅形状とされていて、工具でロッド側部材10の軸部10eの基端とダイヤフラム側部材11の図1中上端外周を工具で把持して、両者を螺子締結を容易に行うことができるようになっている。なお、工具を利用可能とするには、工具で把持する部位の外周形状を六角形等の円形以外の形状として上記二面幅形状以外の形状としてもよい。
【0028】
そして、このダイヤフラム側部材11をロッド側部材10の筒部10bに螺着すると、ロッド側部材10の筒部10bに形成の環状溝10f内に装着したシールリング12がダイヤフラム側部材11の内周に密着して、ダイヤフラム側部材11とロッド側部材10との間が密にシールされるようになっている。ダイヤフラム側部材11の上方の拡径された部位に螺子部11aが形成され、ロッド側部材10の筒部10bの拡径部位に螺子部10cを形成し、縮径部位に形成した環状溝10f内にシールリング12が装着されるようになっているので、このダイヤフラム側部材11とロッド側部材10とのネジ結合の際に、シールリング12を傷めてしまうことがない。ダイヤフラム側部材11の下方の縮径部位に螺子部11aを形成し、ロッド側部材10の筒部10bの拡径部位にシールリング12を装着する環状溝を形成し、拡径部位に螺子部を形成するようにしても、ダイヤフラム側部材11とロッド側部材10とのネジ結合の際に、シールリング12の損傷を回避することができる。
【0029】
なお、シールリング12は、ロッド側部材10によって保持されているが、ダイヤフラム側部材11に保持されるようにしてもよいし、また、筒部10bの上端に設けたフランジ10gとダイヤフラム側部材11の上端とでシールリングを挟持するなどして、ダイヤフラム側部材11とロッド側部材10との間を螺子部10cより反ダンパ本体側にてシールするようにしてもよい。
【0030】
また、ダイヤフラム側部材11の内周径は、この実施の形態の場合、ピストンパイプ4の外周に固定されるダイヤフラム6の他端6bと干渉しない径に設定されており、詳細には、ダイヤフラム6の他端6bとこれをピストンパイプ4に固定する金属バンド14の外周径より大きな径とされている。
【0031】
上述したように、エアチャンバ5は、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とで構成されており、これらロッド側部材10とダイヤフラム側部材11に分解することが可能となっている。また、この実施の形態では、シールリング12がロッド側部材10とダイヤフラム側部材11との間に介装される構造を採用しているため、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11の周方向の相対回転をシールリング12で抑制することができるため、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11の螺子締結部分における緩みを防止でき、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11の一体化に際して螺子締結を利用してもエアばね付きダンパ1を使用中においてロッド側部材10とダイヤフラム側部材11が分解される心配もない。
【0032】
なお、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とを双方に螺子部を設けるネジ締結によって着脱自在を実現しているが、これ以外の締結方向によってロッド側部材10とダイヤフラム側部材11を一体化と分離とを実現するとしてもよい。具体的には、たとえば、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とをボルト等の螺子部材で締結するようにしてもよい。また、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11の形状は、上記したところに限られるものではない。
【0033】
つづいて、ダイヤフラム6は、筒状であってその図1中上端となる一端6aがダイヤフラム側部材11の外周に固定され、他端側が内側に折り返された状態とされるとともにその他端6bがピストンパイプ4の図1中上端外周に固定されている。
【0034】
詳しくは、ダイヤフラム6の一端6aを下方へ向けつつダイヤフラム6の他端6bをピストンパイプ4の上端外周に被せ、その上から金属バンド14でピストンパイプ4へ締め付けることによって、ダイヤフラム6の他端6bは、ピストンパイプ4との間に隙間を生じさせることなく強固に固定される。
【0035】
つづいて、ダイヤフラム6の一端6aを折り返し、当該一端6aをエアチャンバ5におけるダイヤフラム側部材11の外周に被せつつ、その上から金属バンド13でダイヤフラム側部材11へ締め付けることにより、ダイヤフラム6の一端6aはダイヤフラム側部材11との間に隙間を生じさせることなく強固に固定される。このようにしてダイヤフラム6は、その他端側が内側に折り返された状態で、ピストンパイプ4およびダイヤフラム側部材11に固定される。このようにダイヤフラム6がピストンパイプ4およびエアチャンバ5に固定するとダンパ本体Dの伸縮に伴ってダイヤフラム6がピストンパイプ4の外周をローリングすることになる。したがって、本実施の形態では、ダイヤフラム6はローリングダイヤフラムとして構成されるが、ローリングダイヤフラムに限定されるものではない。
【0036】
このようにダイヤフラム6がピストンパイプ4とエアチャンバ5に固定されると、これらのダイヤフラム6、ピストンパイプ4およびエアチャンバ5でダンパ本体Dの外周にエア室Gが形成され、当該エア室Gには気体が充填されてエアばねとして機能する。なお、エアばねのバネ定数を変更する場合には、上述の給排孔4bにホースや配管を介して或いは直接に図外のコンプレッサを接続して気体をエア室Gに給排するようにすればよく、また、その必要が無い場合には、所定圧の気体を封入後プラグ9等で給排孔4bを閉塞してエア室Gを密封すればよい。
【0037】
なお、ダイヤフラム6の他端6bにおける終端6cは、ピストンパイプ4のエアチャンバ側終端となる上端4cよりピストンパイプ5側に突出させてあり、ダイヤフラム6の他端6bは、終端6cがピストンパイプ4の上端4cよりはみ出す余剰を持ってピストンパイプ4に固定されている。
【0038】
このように構成されることによって、エアばね付きダンパ1が最収縮した際に、ピストンパイプ4が直接エアチャンバ5に干渉せずに、上記ダイヤフラム6の終端6cがエアチャンバ5に当接して圧縮されるので、当該最収縮時にクッション効果を期待することができ、ピストンパイプ4やエアチャンバ5に別途クッションを設けることなく最収縮時の衝撃を緩和することができる。なお、クッション効果を得る必要が無い場合、ダイヤフラム6の他端6bにおける終端6cをピストンパイプ4の上端4cよりエアチャンバ5側に突出させる必要はない。
【0039】
さて、上記したように構成されたエアばね付きダンパ1では、上記したように、エアチャンバ5がロッド側部材10とこれに着脱自在に固定されるとともにダイヤフラム6の一端6aが固定されるダイヤフラム側部材11とで構成されているので、図2に示すように、エアチャンバ5をロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とに分解することが可能である。なお、当該分解に当たり、ロッド3は図外のピストンには相対回転できないように連結されているものの、シリンダ2に対しては周方向への相対回転が可能とされ、ピストンも同様にシリンダ2に対して周方向への相対回転可能とされているので、ロッド側部材10をロッド3もろともダイヤフラム側部材11に対して回転せしめて、両者を分解することが可能である。
【0040】
このようにエアチャンバ5をロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とに分解することによって、ロッド3とシール8の摺動部位およびロッド3回りの作動液体の漏れを視認することができ、ダンパ本体Dのシールの機能低下を容易に確認することができる。
【0041】
つまり、金属バンド13,14やダイヤフラムを切断することなく、エアチャンバ5をロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とに分解することによって、ロッド3の外周に摺接するシール8やロッド周りに付着した作動油量を目視することができるので、エアばね付きダンパ1の経年劣化を確認することができ、さらに、確認作業が終了してダンパ本体Dに問題が無い場合、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11を螺子締結して一体化することができるので、ダイヤフラム6を新しい金属バンド13,14で締付固定する作業も不用となるので、メンテナンス費用も嵩むこともない。
【0042】
また、ダンパ本体Dの作動液漏の確認作業を金属バンド13,14やダイヤフラムを切断することなく容易に行えることから、確認作業を頻繁に行うことが可能となって、ダンパ本体Dの劣化を早期発見することも可能となる。
【0043】
また、ダイヤフラム側部材11の内周径がピストンパイプ4の外周に固定されるダイヤフラム6の他端6bと干渉しない径に設定されているので、ロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とを分離した後には、ダイヤフラム6の一端6aが固定されたダイヤフラム側部材11を、図2に示すように、下方へ下げてピストンパイプ4の外周に配置させた状態とすることができるので、ダイヤフラム側部材11とダイヤフラム6の双方がロッド3とシール8の摺接部位の視認作業を邪魔することがなく、ダンパ本体Dの経年劣化の確認がより一層容易となる。
【0044】
なお、本実施の形態の場合、ピストンパイプ4のエアチャンバ側終端となる上端4cがシリンダ2のエアチャンバ側終端よりエアチャンバ側に突出しているので、ダイヤフラム側部材11の内周径がピストンパイプ4の外周に固定されるダイヤフラム6の他端6bと干渉しない径に設定することで、上記視認作業がより簡単となるが、シリンダ2のエアチャンバ側終端がピストンパイプ4のエアチャンバ側終端となる上端4cよりエアチャンバ側に突出している場合には、少なくともダイヤフラム側部材11の内周径がシリンダ2の外周径より大きく設定されていれば、ロッド3とシール8の摺動部位の視認作業が容易となる。
【0045】
また、この実施の形態の場合、ピストンパイプ4にエア室Gへの気体の給排を行う給排孔4bが設けられているので、外部に設置されるコンプレッサから延びるホースや配管は給排孔4bに接続されるので、エアチャンパ5をロッド側部材10とダイヤフラム側部材11とに分離する作業を行う際に、わざわざ、ホースや配管を給排孔4bから取外すことなく上記分離作業を行うことができるとともに、ホースや配管が当該分離作業の妨げになることもない。
【0046】
また、上記したところでは、エアチャンバ5がロッド側部材10とダイヤフラム側部材11との二つの部品に分解可能とされているが、少なくとも、ロッド3に固定されるロッド側部材と、ダイヤフラム6が固定されるダイヤフラム側部材とを備えていて、これらが着脱自在とされていればよいので、ロッド側部材とダイヤフラム側部材との間に何がしかの部材が介装されるような構成を採用することも可能であり、本発明の範囲に属する。
【0047】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、たとえば、車両等といった制振対象の振動を抑制するダンパに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 エアばね付きダンパ
2 シリンダ
3 ロッド
3a 雄螺子
4 ピストンパイプ
4a 縮径部
4b 給排孔
4c エアチャンバ側終端としての上端
5 エアチャンバ
6 ダイヤフラム
6a 一端
6b 他端
6c 他端終端
7 取付部
8 シール
9 プラグ
10 ロッド側部材
10a プレート部
10b 筒部
10c 螺子部
10d ソケット
10e 軸部
10f 環状溝
10g フランジ
11 ダイヤフラム側部材
11a 螺子部
12 シールリング
13,14 金属バンド
D ダンパ本体
G エア室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとシリンダ内に挿通されるロッドとを備えたダンパ本体と、ダンパ本体におけるシリンダに固定されるピストンパイプと、ダンパ本体におけるロッドに固定されるエアチャンバと、筒状であって一端がエアチャンバに固定されるとともに他端がピストンパイプに固定されてダンパ本体の外周にエア室を形成するダイヤフラムとを備えたエアばね付きダンパにおいて、エアチャンバがロッドに固定されるロッド側部材とロッド側部材に着脱自在であってダイヤフラムの一端が固定されるダイヤフラム側部材とを備えたことを特徴とするエアばね付きダンパ。
【請求項2】
ロッド側部材が螺子部を備えた筒部を備え、ダイヤフラム側部材が筒状であってロッド側部材の螺子部に螺合する螺子部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエアばね付きダンパ。
【請求項3】
ダイヤフラム側部材は筒状であって内周径が少なくともシリンダの外周径より大きな径に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のエアばね付きダンパ。
【請求項4】
エア室へ気体を給排するための給排孔をピストンパイプに設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエアばね付きダンパ。
【請求項5】
ピストンパイプが筒状であって、ダイヤフラムの他端終端がピストンパイプのエアチャンバ側終端よりロッド側へはみ出す余剰をもってダイヤフラムの他端がピストンパイプの外周に固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエアばね付きダンパ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−117490(P2011−117490A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273530(P2009−273530)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】