説明

エアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法

【課題】車両の燃費を容易に向上することができるエアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法を提供する。
【解決手段】車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサー1と、エアタンク5内の圧力が一定の範囲になるように、エアコンプレッサー1の吸入ポート9を空圧で開閉するエアガバナー10との間に、車両の制動時に開放されて外部へ連通する電磁弁12を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法に関し、更に詳しくは、車両の燃費を容易に向上することができるエアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に大型車では、車両重量が非常に大きいため、ブレーキやクラッチなどの操作力が大きくなる。そのため、圧縮空気の圧力を補助動力として、それらの機器を作動させることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。また、大型車の積載量に応じて乗心地性を確保できるように、エアサスペンションとして圧縮空気が利用されている。
【0003】
この圧縮空気は、例えば図2に示すような、車両に搭載されたエアコンプレッサーシステムにより生成される。エアコンプレッサー1は、図示しないエンジンの出力軸からプーリを介して直接駆動され、エアブレーキ等に圧縮空気2を供給するエアタンク5内の圧力が常に一定の範囲になるように、エアガバナー10によって作動と停止とが繰り返される。従って、エアコンプレッサー1が作動するとエンジンの出力が余分に消費されるため、車両の燃費が悪化するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するには、エアコンプレッサー専用の原動機などを新たに設けることが考えられるが、機器の構成が複雑になるととともに、車両重量が増加するので燃費を向上することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、車両の燃費を容易に向上することができるエアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のエアコンプレッサーシステムは、車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサーと、エアコンプレッサーの吐出ポートに連通するエアタンクと、前記エアタンクと前記エアコンプレッサーの吸入ポートとの間に設けられ、前記エアタンク内の圧力が一定の範囲になるように前記吸入ポートを空圧で開閉するエアガバナとを備えたエアコンプレッサーシステムにおいて、前記車両の制動時に開放して外部へ連通する電磁弁を、前記エアガバナと前記吸入ポートとの間に設置したことを特徴とするものである。
【0008】
上記のエアコンプレッサーシステムにおいて、電磁弁が車両のブレーキスイッチがオンのときに開放するようにすることで、車両の制動状態と連動させることができる。このブレーキスイッチとしては、エンジンブレーキの起動スイッチ、及びフットブレーキに連動するスイッチの少なくとも一方を用いることが適当である。
【0009】
また、電磁弁は、車両のアクセルスイッチがオフのときに開放するようにしてもよい。
【0010】
上記の目的を達成する本発明のエアコンプレッサー制御方法は、車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサーにより圧縮空気をエアタンクに蓄積し、前記エアタンク内の圧力が一定の範囲になるように、エアガバナーにより空圧を付加及び排気することで前記エアコンプレッサーをそれぞれ停止及び作動させるエアコンプレッサー制御方法において、前記車両の制動時に、前記空圧を外部へ排気して前記エアコンプレッサーを作動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
上記のエアコンプレッサー制御方法においては、空圧を車両の制動時に連動して開放する電磁弁を通じて外部へ排気することで、エアコンプレッサー制御方法を実施するシステムを簡易な構成にすることができる。
【0012】
本発明のエアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法は、車両のブレーキ及びクラッチの少なくとも一方の操作に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエアコンプレッサーシステム及びエアコンプレッサー制御方法によれば、車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサーと、エアタンク内の圧力が一定の範囲になるように、エアコンプレッサーの吸入ポートを空圧で開閉するエアガバナーとの間に、車両の制動時に開放されて外部へ連通する電磁弁を設置としたことにより、車両の制動時にエアコンプレッサーが確実に作動するようになるので、エンジンの制動動力を利用してエアコンプレッサーを動かすことができるため、車両の燃費を向上することができる。
【0014】
また、従来のエアコンプレッサーシステムに、車両の制動時と連動する電磁弁を追加するだけでよいので、システムの構成が簡易になるため容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態からなるエアコンプレッサーシステムの構成図である。
【図2】従来のエアコンプレッサーシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態からなるエアコンプレッサーシステムを示す。
【0018】
このエアコンプレッサーシステムは、車両のエアブレーキの操作に用いられており、エアコンプレッサー1で生成した圧縮空気2を、吐出ポート3につながる配管4を通じてエアタンク5に蓄積し、その圧縮空気2をブレーキペダルの踏力等に応じてブレーキチャンバー6に送ることにより制動力を得るようになっている。
【0019】
エアコンプレッサー1の回転軸7は、図示しないエンジンの出力軸にプーリを介して連結している。また、吐出ポート3とエアタンク5との間の配管4には、圧縮空気2に含まれる水分を分離するドライヤー8が取り付けられている。
【0020】
エアタンク5とエアコンプレッサー1の吸入ポート9との間には、エアタンク5内の圧力を一定の範囲に維持するエアガバナー10が設けられている。このエアガバナー10は、エアタンク5の圧力が所定値以上になると、吸入ポート9内に設置されたピストン11を空圧で押して吸入ポート9を開放することによりエアコンプレッサー1を停止させる。また、エアタンク5の圧力が所定値以下になると、ピストン11を押している空圧を排気して吸入ポート9を閉止することによりエアコンプレッサー1を作動させる。
【0021】
本発明のエアコンプレッサーシステムは、エアガバナー10とエアコンプレッサー1の吸入ポート9との間に、外部に連通する電磁弁12を設置するものである。この電磁弁12は、バッテリー13などを電圧源とし、車両のエンジンブレーキに連動するブレーキスイッチ14がオンのときに開放し、オフのときに閉止するように連動する。
【0022】
このブレーキスイッチ14としては、車両のエンジンブレーキ(排気ブレーキ)の作動時にオンとなるものであればよく、例えばエンジンブレーキの起動スイッチや、フットブレーキと連動するスイッチなどを、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。また、エンジンブレーキの作動時をより確実に検知するために、クラッチスイッチを組み合わせるようにしてよい。この場合には、フットブレーキの連動スイッチと、クラッチスイッチの両方がオンになったときに電磁弁12を開放する。
【0023】
このようなエアコンプレッサーシステムを用いたエアコンプレッサー制御方法は以下のようになる。
【0024】
エアタンク5の圧力が所定値以上になると、エアガバナー10が吸入ポート9内に設置されたピストン11に向けて空圧を加える。そして、車両が制動時でない場合には、ブレーキスイッチ14がオフとなって電磁弁12が閉止するので、空圧がピストン11に伝達されてエアコンプレッサー1が停止する。一方、車両が制動時である場合には、ブレーキスイッチ14がオンとなって電磁弁12が開放するので、空圧が抜けてピストン11に伝達されないため、エアコンプレッサー1が作動する。
【0025】
また、エアタンク5の圧力が所定値以下になると、ピストン11を押す空圧がエアガバナー10によって排気されるので、車両が制動時であるか否かにかかわらずエアコンプレッサー1が作動する。
【0026】
このように、エアガバナー10の作動条件とは別に、車両の制動時にエアコンプレッサー1が確実に作動するようになるので、エンジンの制動動力(車両慣性力)を利用してエアコンプレッサー1を動かすことができるため、車両の燃費を向上することができる。 また、従来のエアコンプレッサーシステムに、車両の制動時を示すブレーキスイッチ14と連動する電磁弁12を追加するだけでよいので、システムの構成が簡易になるため容易に実施することができる。
【0027】
上記の電磁弁12は、ブレーキスイッチ14の代わりにアクセルスイッチに連動するようにしてもよい。その場合には、アクセルスイッチがオフ及びオンのときに、電磁弁14がそれぞれ開放及び閉止するように連動させることになる。なお、このアクセルスイッチは、アクセルペダルの踏み込みが所定の位置になったときにオンとなり、それ以外の位置ではオフとなるように設定されている。
【0028】
上述した実施の形態においては、エアコンプレッサーシステムをエアブレーキの操作に適用しているが、大型車のクラッチ操作などの大きな操作力が必要とされる他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 エアコンプレッサー
2 圧縮空気
3 吐出ポート
4 配管
5 エアタンク
6 ブレーキチャンバー
7 回転軸
8 ドライヤー
9 吸入ポート
10 エアガバナー
11 ピストン
12 電磁弁
13 バッテリー
14 ブレーキスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサーと、エアコンプレッサーの吐出ポートに連通するエアタンクと、前記エアタンクと前記エアコンプレッサーの吸入ポートとの間に設けられ、前記エアタンク内の圧力が一定の範囲になるように前記吸入ポートを空圧で開閉するエアガバナとを備えたエアコンプレッサーシステムにおいて、
前記車両の制動時に開放して外部へ連通する電磁弁を、前記エアガバナと前記吸入ポートとの間に設置したことを特徴とするエアコンプレッサーシステム。
【請求項2】
前記電磁弁が、前記車両のエンジンブレーキに連動するブレーキスイッチがオンのときに開放する請求項1に記載のエアコンプレッサーシステム。
【請求項3】
前記ブレーキスイッチが、エンジンブレーキの起動スイッチ、及びフットブレーキに連動するスイッチの少なくとも一方である請求項2に記載のエアコンプレッサーシステム。
【請求項4】
前記電磁弁が、前記車両のアクセルスイッチがオフのときに開放する請求項1に記載のエアコンプレッサーシステム。
【請求項5】
前記エアタンクが、前記車両のブレーキ及びクラッチの少なくとも一方に連通する請求項1〜4のいずれかに記載のエアコンプレッサーシステム。
【請求項6】
車両のエンジンにより駆動されるエアコンプレッサーにより圧縮空気をエアタンクに蓄積し、前記エアタンク内の圧力が一定の範囲になるように、エアガバナーにより空圧を付加及び排気することで前記エアコンプレッサーをそれぞれ停止及び作動させるエアコンプレッサー制御方法において、
前記車両の制動時に、前記空圧を外部へ排気して前記エアコンプレッサーを作動させるようにしたことを特徴とするエアコンプレッサー制御方法。
【請求項7】
前記空圧を、前記車両の制動時に連動して開放する電磁弁を通じて外部へ排気するようにした請求項5に記載のエアコンプレッサー制御方法。
【請求項8】
前記エアタンクに蓄積された圧縮空気を、前記車両のブレーキ及びクラッチの少なくとも一方の操作に利用する請求項6又は7に記載のエアコンプレッサー制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254735(P2012−254735A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129411(P2011−129411)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】