エアバッグ装置
【課題】袋体を展開するためのガスを放出するディフューザパイプ内への水の浸入を阻止する。
【解決手段】折り畳まれた袋体19と、袋体19を展開させるためのガスを発生させるインフレータ18と、インフレータ18に接続されインフレータ18で発生したガスを袋体19内に放出する中空筒状のディフューザパイプ22と、を備えたエアバッグ装置であって、ディフューザパイプ22は、少なくとも一部が袋体19の内部に挿入され、袋体19内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔22bが開口しており、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bを外側から閉塞するとともに、インフレータ18から供給されるガス圧によって閉塞を解除するシールテープ28がディフューザパイプ22に取り付けられている。
【解決手段】折り畳まれた袋体19と、袋体19を展開させるためのガスを発生させるインフレータ18と、インフレータ18に接続されインフレータ18で発生したガスを袋体19内に放出する中空筒状のディフューザパイプ22と、を備えたエアバッグ装置であって、ディフューザパイプ22は、少なくとも一部が袋体19の内部に挿入され、袋体19内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔22bが開口しており、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bを外側から閉塞するとともに、インフレータ18から供給されるガス圧によって閉塞を解除するシールテープ28がディフューザパイプ22に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝撃の入力時にガス圧によって袋体を展開させるエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用エアバッグ装置として、衝撃入力時にガス圧によって展開する袋体が棒状に長尺に折り畳まれ、その袋体が、袋体の車室内側の外側域を覆うバッグカバーとともに車体側部に取り付けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエアバッグ装置は、ルーフが開閉可能または着脱可能なオープンルーフタイプの車両のサイドドアの車内側面に配置され、側突時等においてドアと乗員との間に展開して乗員を保護するエアバッグ装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−213621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オープンルーフタイプの車両では、ルーフを開いての走行中に降雨となる場合や、ルーフを開いての駐車中に雨天となる場合が想定され、このような場合には内装部分が被水する可能性がある。
サイドドアの車内側面に設置される前記エアバッグ装置においては、袋体等の主要部はバッグカバーで覆われており、前記主要部に直接に雨等が降りかかることはない。
【0006】
しかしながら、バッグカバーが被水するとなると、何らかの原因でエアバッグ装置の内部に水が浸入する可能性が全くないとは言えない。このような水の浸入はエアバッグ装置にとって好ましい環境ではない。
そこで、この発明は、袋体を展開するためのガスを放出するディフューザパイプ内への水の浸入を阻止することができるエアバッグ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエアバッグ装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、折り畳まれた袋体(例えば、後述する実施例における袋体19)と、前記袋体を展開させるためのガスを発生させるインフレータ(例えば、後述する実施例におけるインフレータ18)と、前記インフレータに接続され該インフレータで発生したガスを前記袋体内に放出する中空筒状のディフューザパイプ(例えば、後述する実施例におけるディフューザパイプ22)と、を備えたエアバッグ装置(例えば、後述する実施例におけるエアバッグモジュール9)であって、前記ディフューザパイプは、少なくとも一部が前記袋体の内部に挿入され、袋体内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔(例えば、後述する実施例におけるガス放出孔22b)が開口しており、前記ディフューザパイプの前記ガス放出孔を外側から閉塞するとともに、前記インフレータから供給されるガス圧によって前記閉塞を解除するシール部材(例えば、後述する実施例におけるシールテープ28)が前記ディフューザパイプに取り付けられていることを特徴とするエアバッグ装置である。
このように構成することにより、衝撃入力前のエアバッグ装置非作動時には、ディフューザパイプのガス放出孔がシール材により閉塞されているので、ディフューザパイプの外側から内側へ水が浸入するのを防止することができる。一方、衝撃入力時には、インフレータから供給されるガス圧によって、シール材で閉塞されていたガス放出孔の閉塞が解除されるので、ガス放出孔から袋体へガス圧を供給することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記袋体は上方に向けて展開するように配置され、前記ガス放出孔が上方に向けて設けられていることを特徴とする。
このように構成することにより、ガス放出孔が上方に向けて設けられていても、ガス放出孔がシール材で閉塞されているので、ディフューザパイプ内に水が浸入するのを防止することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記袋体を覆うカバー体(例えば、後述する実施例におけるバッグカバー21)を備え、前記カバー体は該カバー体内側への水の浸入を阻止するとともに阻止した水を前記ディフューザパイプの開口に被水させない位置に導く流路(例えば、後述する実施例における排水路86)を備えることを特徴とする。
このように構成することにより、ディフューザパイプ内への水の浸入を、より確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エアバッグ装置の非作動時には、ディフューザパイプ内への水の浸入を防止することができ、エアバッグ装置の作動時には、ディフューザパイプのガス放出孔から袋体へガス圧を供給することができる。
請求項2に係る発明によれば、ガス放出孔が上方に向けて設けられていても、ディフューザパイプ内への水の浸入を防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、ディフューザパイプ内への水の浸入を、より確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るエアバッグ装置を搭載した車両用ドアを車室内側から見た正面図である。
【図2】前記エアバッグ装置の取付状態を示す車両用ドアの車室内側から見た正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】前記エアバッグ装置の分解斜視図である。
【図5】前記エアバッグ装置の背面図である。
【図6】前記エアバッグ装置においてバッグカバーを透視して見た斜視図である。
【図7】前記エアバッグ装置におけるインフレータとディフューザパイプの斜視図である。
【図8】前記エアバッグ装置におけるインフレータとディフューザパイプの取り付け角度を説明する図である。
【図9】前記エアバッグ装置のバッグカバーの斜視図である。
【図10】前記エアバッグ装置の前部側の部分を若干斜め上から見た斜視図である。
【図11】前記エアバッグ装置の前部側を前方斜め上方から見た斜視図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【図13】(A)は図10のC−C断面図であり、(B)は水の浸入経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係るエアバッグ装置の実施例を図1から図13の図面を参照して説明する。なお、図面において、車両の上側と前側はそれぞれ矢印UPとFRで示すものとする。
【0013】
図1は、車両の進行方向右側のフロントサイドドア1を車室内側から見た図であり、図2は、図1のフロントサイドドア1からドアライニング2等の一部の部材を取り去った図、図3は、図1のA−A断面に対応する断面図である。
この実施例における車両は、ルーフが開閉可能または着脱可能なオープンルーフタイプの車両である。この車両のフロントサイドドア1は、窓枠部を持たないいわゆるサッシュレスタイプのドアであり、ドア本体3にはドアガラス4が昇降自在に保持されている。ドア本体3は、ドア骨格部5と、ドア骨格部5の車外側に取り付けられるドアスキン6(図3参照)等によって構成されている。
【0014】
図2に示すように、ドア本体3の前部上端側には図示しないドアミラーを取り付けるためのミラーベース8が一体に設けられ、ドア本体3の車室内側の上縁部には、モジュール化されたエアバッグ装置9(以下「エアバッグモジュール9」と呼ぶ。)を取り付けるための取付ブラケット10が設けられている。
【0015】
取付ブラケット10は、図2に示すように、ドア本体3の上端部に沿うように車体前後方向に延出する平板状のベースプレート部11を備え、ベースプレート部11の上縁部には、エアバッグ締結片12Aと、3つのエアバッグ係止爪13A,13B,13Cが上方に向かって延設されている。エアバッグ締結片12Aはベースプレート部11の車体前部寄り位置に配設され、エアバッグ係止爪13A,13B,13Cはベースプレート部11の車体中央領域にほぼ等間隔に配設されている。また、ベースプレート部11の車体前部寄りの下縁部にはエアバッグ締結片12B,12Cが延設されている。
【0016】
また、取付ブラケット10は、図3に示すように、ドア骨格部5の上部に接した状態でドア本体3に固定されており、エアバッグ係止爪13A,13B,13Cは、その状態においてドア骨格部5から離間して上方に突出している。また、ドア骨格部5の上縁に形成されたフランジ部15aには、ドアガラス4の車内側面に摺動自在に密接する車内側のウエザーストリップ16が取り付けられている。なお、図3において符号17は、ドアスキン6の上端部に取り付けられてドアガラス4の車外側面に摺動自在に密接する車外側のウエザーストリップである。
【0017】
図4は、エアバッグモジュール9を分解した状態を示す斜視図であり、図5は、エアバッグモジュール9の背面図である。
これらの図にも示すように、エアバッグモジュール9は、図示しないセンサによって衝撃が検知されたときに高圧ガスを発生する筒状のインフレータ18と、インフレータ18で発生したガス圧を受けて展開する折り畳まれた袋体19(図2,図3参照)と、インフレータ18と袋体19を保持する金属製のリテーナ20と、折り畳まれた袋体19の車室内側の外側域を覆い、袋体19の展開時に一部が開口することによって袋体19の展開を許容するバッグカバー21と、を備えている。
【0018】
図6は、バッグカバー21を透視して示すエアバッグモジュール9の斜視図であり、インフレータ18にはディフューザパイプ22が連結され、このディフューザパイプ22が、折り畳まれた袋体19の底部を貫通している。図7に示すように、ディフューザパイプ22は、先端部22aが閉塞されており、途中の外周面に複数のガス放出孔22bが形成されている。ガス放出孔22bはディフューザパイプ22の内外に連通し上方に向けて開口しており、ディフューザパイプ22は全てのガス放出孔22bが袋体19内に位置するように配置されている。また、各ガス放出孔22bを含むその周囲におけるディフューザパイプ22の外周面には、各ガス放出孔22bを閉塞するシールテープ(シール部材)28が貼り付けられている。シールテープ28は、液体を透過させない非透水性の紙や樹脂等で形成されていて、このシールテープ28によってガス放出孔22bが塞がれているので、ディフューザパイプ22の外側から内側へ水が浸入するのが阻止される。また、このシールテープ28は、インフレータ18で発生させたガスがディフューザパイプ22に供給されたときには、そのガス圧によってディフューザパイプ22の外周面から剥離するか、あるいは、ガス圧によって開裂されるように構成されている。この実施例において、インフレータ18とディフューザパイプ22はガス供給部を構成する。
なお、ディフューザパイプ22が袋体19を貫通する部分は、袋体19の上から図示しないバンド等で締め付けるなど適宜の手段によりシールされている。
袋体19は前後の縁部を折り返した状態で上下方向に畳まれ、ディフューザパイプ22の長手方向に沿うように長尺物状に配置されている。
【0019】
リテーナ20は、車体前後方向に長いほぼ平板状のベースプレート23と、ベースプレート23の車室内側に一体に結合されて、ディフューザパイプ22と袋体19の車室内側の側方と底部側を抱持する断面略L字状の抱持プレート24とによって構成されている。インフレータ18とディフューザパイプ22はベースプレート23の車内側の面に結合され、抱持プレート24は、図4に示すように、ベースプレート23と結合する前にバッグカバー21の内側部に一体に結合される。ベースプレート23と抱持プレート24は、インフレータ18や袋体19をベースプレート23に結合した組付体(以下、「ベースプレート側ユニット23U」と呼ぶ。)にバッグカバー21を最終的に組み付けるときに、ボルト結合やリベット止め等によって相互に結合される。
【0020】
インフレータ18とディフューザパイプ22のベースプレート23への結合について詳述すると、図4,図6に示すように、インフレータ18には、インフレータ18の外周面を抱持するブラケット30が取り付けられ、そのブラケット30に延設された下部アーム31がベースプレート23の前端部側にボルト固定されている。ブラケット30には上方側に延出する上部アーム32が設けられ、その上部アーム32が取付ブラケット10のエアバッグ締結片12Aにボルト固定されるようになっている。また、ディフューザパイプ22の先端部22aはブラケット29を介してベースプレート23の後端部側にボルト固定されている。つまり、インフレータ18とディフューザパイプ22によって構成されるガス供給部は、ベースプレート23の前端部側と後端部側に固定されている。
【0021】
また、インフレータ18とディフューザパイプ22の取り付け角度は、図8に示すように、いずれの軸心G1,G2共、車体における水平線Hに対して傾斜しており、双方の軸心G1,G2同士も互いに交差するように配置されている。詳述すると、インフレータ18の軸心G1は車体の水平線Hに対し車体前方に向かって上り傾斜に配置されており、一方、ディフューザパイプ22の軸心G2は車体の水平線Hに対し車体後方に向かって上り傾斜に配置されていて、インフレータ18とディフューザパイプ22の接続部34が最も低いレベルとなっている。これにより、結露など何らかの理由によりインフレータ18やディフューザパイプ22の外表面に水滴が付着した場合に、その水滴はインフレータ18やディフューザパイプ22の下面を伝わって、最もレベルの低い接続部34に集合し、この接続部34から落下するようになる。
【0022】
なお、図4,図6において、符号33aは、上部アーム32をエアバッグ締結片12Aにボルト締結するためのボルト孔であり、符号33b,33cは、ベースプレート23の前部側下縁を取付ブラケット10のエアバッグ締結片12B,12Cにボルト締結するためのボルト孔である。また、ベースプレート23の後端部はボルト孔33dを通して取付ブラケット10にボルト締結されている。
【0023】
また、抱持プレート24の長手方向(車体前後方向)の各端部には、略L字状の基本断面部の内側領域を閉塞するように端部壁25が延設され、その端部壁25に連設された接合フランジ25aがベースプレート23に対して最終的にリベット固定されるようになっている。ベースプレート23に抱持プレート24が結合されて構成されるリテーナ20は袋体19の収容部の上方が略長方形状に開口し、上方側を除く面が袋体19の周域をほぼ取り囲んでいる。
【0024】
また、ベースプレート23のドア本体3側の上縁部には、波形の板部材26が複数箇所で固定され、板部材26の固定部間に鞘状の爪受部27A,27B,27Cが形成されている。この爪受部27A,27B,27Cは下方側に開口し、エアバッグモジュール9を取付ブラケット10に対して上方から被せることによって対応するエアバッグ係止爪13A,13B,13Cに嵌合し得るようになっている。
【0025】
図9は、バッグカバー21を車外側斜め下方から見た状態を示す図である。この図にも示すように、バッグカバー21は、ドアライニング2(図1参照)とともにフロントサイドドア1の車室内側の意匠面を形成するカバーアウタ35と、カバーアウタ35の内側面に溶着固定されてバッグカバー21上の各部の剛性調整や他部品との連結機能を担うカバーインナ36と、を備えている。
【0026】
カバーアウタ35は、図3に示すように、比較的硬質な樹脂材料から成る基材35aの外側に軟質樹脂から成る表皮材35bが一体に接合された2層構造とされている。また、カバーアウタ35は、リテーナ20の開口の上方側を覆う上壁37に、リテーナ20の車室内側を覆う側壁38が滑らかに連続して形成されている。側壁38は、図1,図2に示すように、側面視で上辺が略水平な略五角形状を呈するように形成されている。なお、ベースプレート側ユニット23Uにバッグカバー21が最終的に取り付けられた状態では、インフレータ18とベースプレート23の前端部分はカバーアウター35の前方に突出する(図2参照)。また、上壁37のドア本体3側の端部には下方に略L字状に屈曲する屈曲壁39が設けられている。この屈曲壁39は、エアバッグモジュール9がドア本体3に取り付けられた状態において、図3に示すように車室内側のウエザーストリップ16の近傍部まで延出し、その外側面にウエザーストリップ16の外側リップ16aが密接するようになっている。
【0027】
カバーアウタ35の上壁37と屈曲壁39には、図4,図5,図9に示すように、袋体19の展開を許容する開口40を形成するための破断誘導部41が設けられている。破断誘導部41は、例えば、カバーアウタ35の基材35aの裏面にV字溝を形成することにより構成される。また、破断誘導部41は、折り畳まれた袋体19の前後位置に対応して設けられ、袋体19の展開時には、カバーアウタ35上の破断誘導部41によって囲まれた領域が袋体19に押圧されて蓋状に跳ね上がるようになっている。この袋体19の展開時に蓋状に跳ね上がるカバーアウタ35上の略長方形状の領域を、以下ではリッド領域42と呼ぶものとする。リッド領域42の基部側の辺は、その前後の端縁を除く中央領域がリッド領域42の回動起点となる曲げ基線部44(ヒンジ部)とされる。この実施形態の場合、リッド領域42の前後の破断誘導部41はリッド領域42の基部側の辺の一部まで略L字状に回り込んで設けられている。
【0028】
カバーインナ36は、比較的硬質な樹脂材料から成り、図3,図9に示すように、カバーアウタ35の上壁37と側壁38にそれぞれ溶着固定される上壁45と側壁46を備えている。上壁45には車体前後方向に細長い略コ字状をなす点線状の切欠き部47(図9参照)が設けられ、その切欠き部47内に、カバーアウタ35のリッド領域42に対応する略長方形状のリッド壁48が配置されている。リッド壁48はカバーアウタ35のリッド領域42の裏面に一体に溶着固定されている。
【0029】
また、側壁46の下縁には複数の隆起部49が設けられ、その各隆起部49に係止孔50が設けられている。各係止孔50には、図3に示すように、リテーナ20の抱持プレート24に延設された係止フック51が挿入係合されるようになっている。したがって、カバーインナ36の側壁46はリテーナ20に係止され、リテーナ20を介してドア本体3側に支持される支持部とされている。なお、図3,図9に示すように、カバーアウタ35の側壁38の裏面にはカバーインナ36とは別に樹脂製の締結ブロック52が溶着固定され、抱持プレート24はこの締結ブロック52に対してビス止め固定されている。
【0030】
リッド壁48は、切欠き部47の非連続部に形成された複数の帯状片53・・・を介して側壁46の上部に一体に連結されている。各帯状片53は下方側に膨出するように円弧状に湾曲し、カバーアウタ35に対して溶着されずに離間している。これらの帯状片53・・・は、リッド壁48が跳ね上げ回動するときのヒンジ部として機能する。
【0031】
ここで、この実施形態のバッグカバー21では、カバーアウタ35とカバーインナ36が一体に溶着された状態において、カバーアウタ35側のリッド領域42とカバーインナ36側のリッド壁48が袋体19の展開時に開口40を開くリッド部を構成し、カバーアウタ35側の曲げ基線部44とカバーインナ36側の帯状片53…がリッド部の回動支点となるヒンジ部を構成している。
【0032】
また、図9に示すように、カバーインナ36の切欠き部47の前後方向の外側位置には、上壁45と側壁46とに跨るフランジ壁54,54が夫々突設され、これらのフランジ壁54がリテーナ20の抱持プレート24の端部壁25,25に対してボルト55(図4参照)によって結合されるようになっている。
【0033】
また、カバーインナ36のリッド壁48において帯状片53・・・から離間する自由端部側の下面には、破断可能壁60が下方に向けて延設されている。破断可能壁60の基部には破断促進部61が形成され、破断促進部61よりも先端側に、複数の連結片57が所定間隔に設けられている。破断促進部61は薄肉に形成されるとともに、長手方向に沿って多数の長孔62・・・が一列に並んで設けられている。
各連結片57はリテーナ20のベースプレート23にリベット固定されている。この連結片57のリベット固定は、例えば、ベースプレート側ユニット23Uにバッグカバー21を最終的に組み付けるときに、波形の板部材26とともにベースプレート23に固定するようにしても良い。
【0034】
図10はエアバッグモジュール9の前部側の部分を車内側の若干斜め上から見た斜視図であり、図11はカバーアウタ35の前端部からインフレータ18が突出する部分を前方斜め上から見た斜視図である。
図1,図2,図10に示すように、カバーアウタ35の前縁上半部分35Aと前縁下半部分35Bは車体後方に進むにしたがって下がっており、一方、カバーアウタ35の後側下縁35Cは車体前方に進むにしたがって下がっていて、前縁下半部分35Bと後側下縁35Cとの接続部が最下部35Dとなっている。
【0035】
図10,図11に示すように、カバーアウタ35は、その前縁上半部分35Aに、表皮材35bに被覆されず基材35aを露出させた庇部80を備えている。庇部80は、基材35aが表皮材35bに被覆されて車室内側の意匠面となる部分(以下、意匠面部35dと称す)よりも下方に凹設されているとともに外方へ張り出して形成されており、車室内側に進むにしたがって下っていく傾斜面に形成されている。また、庇部80は、インフレータ18の後部側上方に配置され、ドア本体3に取り付けられた状態ではドアライニング2に覆われる位置に配置されている。この意匠面部35dと庇部80との間に形成される段差面94に対して、ドアライニング2の縁部が対向配置されることとなる。
【0036】
庇部80は、起立壁81によって前側庇部82と後側庇部83に区画されている。前側庇部82の車外側には、クリップ孔84aを備えた保持部84が設けられており、図12に示すように、このクリップ孔84aに嵌合するクリップ85を介して、ドアライニング2に設けられた脚部101が締結されるようになっている。前側庇部82の車室内側の端部82aは下方に屈曲しており、該端部82aの先端はインフレータ18の外周面にほぼ接している。なお、図12において符号108はガーニッシュである。
【0037】
後側庇部83は、万が一、ドアライニング2とカバーアウタ35との間から水が浸入した場合に、その水を後側庇部83で受けることにより水がインフレータ18に降りかからないようにするもので、後側庇部83の車室内側の端部は、車室内側に向かって若干上り傾斜の傾斜面からなる樋部83aとなっていて、後側庇部83で受けた水を樋部83aから外に溢さずに後側庇部83の後端まで導くことができるように構成されている。また、樋部83aの車室内側の縁部からは下方に延出する下延壁83bが連設されている。
【0038】
また、カバーアウタ35の前縁下半部分35Bには、ドアライニング2と隣り合うカバーアウタ35の縁部に沿って排水路86が設けられている。詳述すると、図13(A)に示すように、カバーアウタ35の縁部には、意匠面部35dから車外側へ凹設された溝部87が設けられている。溝部87は、意匠面部35dに連なり車外側に向かって下り傾斜する上壁88と、上壁88の先端から略直角に屈曲形成された端壁89と、端壁89の下端から車室内側へ略直角に屈曲形成され上壁88とほぼ平行をなす底壁90とを備えており、この溝部87の内部が排水路86となっている。上壁88と底壁90との間には車室内側に向かって開口する開口92が形成されており、底壁90は開口に向かって上り傾斜の傾斜面で構成されている。また、底壁90の車室内側の端部には下方に延出する下延壁91が連設されており、図10に示すように、下延壁91には、ドアライニング2を締結するための保持部91a,91aが連設されている。ドアライニング2を保持部91a,91aに締結する手段は、庇部80における保持部84への締結手段と同じクリップである。
なお、溝部87において表皮材35bに被覆されているのは、溝部87における上壁88までであり、端壁89,底壁90,下延壁91は基材35aが露出している。この上壁88に対してドアライニング2の縁部が対向配置される。
【0039】
また、後側庇部83の樋部83aは溝部87の底壁90に一体的に繋がり、後側庇部83の下延壁83bは前縁下半部分35Bの下延壁91に一体的に繋がっており、庇部80の溝部87の端壁89は車体前方に進むにしたがって車室内側にせり上がってくるように形成されていいて、最終的に後側庇部83に連なっている。また、溝部87の上壁88は、前縁上半部分35Aにおける段差面94に繋がっている。
【0040】
この溝部87には、図13(A)に示すように、ドアライニング2の縁部が嵌合している。詳述すると、ドアライニング2は、比較的硬質な樹脂材料から成る基材2aの外側に軟質樹脂から成る表皮材2bが一体に接合された2層構造とされている。ドアライニング2において車室内側の意匠面となる部分(以下、意匠面部2cと称す)は、カバーアウタ35の意匠面部35dとほぼ面一となるように配置されている。ドアライニング2においてバッグカバー21と隣り合う縁部には、車外側に向かって斜め下方に突出する係合凸部102が設けられている。係合凸部102は先端側が徐々に細く形成されていて、その上面103のみが表皮材2bに被覆されている。この係合凸部102はカバーアウタ35の溝部87に挿入され、係合凸部102の先端面104が溝部87の端壁89と対向し、係合凸部102の下面105が溝部87の底壁90と対向する。係合凸部102の先端面104には複数のリブ106・・・が適宜の間隔で設けられ、係合凸部102の下面105にも複数のリブ107がリブ106と前後方向に位置をずらして適宜の間隔で設けられている。係合凸部102にこれらリブ106,107を設けたことにより、溝部87の端壁89と底壁90とが交差する隅部に水が流れる流路109が確保される。
【0041】
排水路86は、カバーアウタ35の後側下縁35Cにも設けられており、前縁下半部分35Bの排水路86と後側下縁35Cの排水路86は最下部35Dにおいて接続され、この最下部35Dにおける底壁90の端壁89寄りに、流路109に連通する排水孔93が形成されている。なお、最下部35Dは、インフレータ18や袋体19よりも下方に位置している。
そして、係合凸部102がカバーアウタ35の溝部87に挿入された状態において、係合凸部102の上面103における表皮材2bが、溝部87の上壁88における表皮材35bに密接するように構成されている。
【0042】
以上のように構成されたエアバッグモジュール9をドア本体3に取り付ける場合には、ドア本体3の上部に取付ブラケット10を予め取り付けておき、その状態で取付ブラケット10のエアバッグ係止爪13A,13B,13Cにエアバッグモジュール9の爪受部27A,27B,27Cを上方から嵌合することにより、エアバッグモジュール9をドア本体3に対して仮止めする。
この後、エアバッグモジュール9をドア本体3に対して正確に位置決めし、エアバッグモジュール9のリテーナ20(ベースプレート23)を取付ブラケット10に対してボルト結合する。したがって、バッグカバー21のカバーインナ36における破断可能壁60は、袋体19の展開前においては車体側に結合されることとなる。
そしてこの後、ドア本体3の車室内側に、エアバッグモジュール9のバッグカバー21と付き合わせるようにしてドアライニング2を取り付ける。なお、ドアライニング2のドア本体3への固定方法は従来と同じであるので説明を省略する。
【0043】
前述のようにエアバッグモジュール9がドア本体3に取り付けられると、インフレータ18や袋体19はリテーナ20を介してドア本体3に固定され、袋体19の上方側はバッグカバー21のリッド部(リッド領域42とリッド壁48)によって覆われることになる。
また、このとき、バッグカバー21の屈曲壁39は、ドアガラス4の車室内側面に微小隙間をもって対峙し、屈曲壁39の外側面には、ドア本体3側のウェザーストリップ16の外側リップ16aが密接する。したがって、バッグカバー21の上端部は、屈曲壁39部分で充分な高さ方向の幅をもってドア本体3の上部に対向するとともに、屈曲壁39にウェザーストリップ16が密接することによって両者の間の隙間が埋められる。また、このバッグカバー21では、上壁37のドア本体3側の端部に略L字状の屈曲壁39が連設されているため、上壁37の端部の剛性が充分に高く維持されている。したがって、このバッグカバー21を採用することにより、外観品質を含む商品性を高めることができる。
【0044】
車両に大きな衝撃が入力されてエアバッグモジュール9が作動する場合には、インフレータ18から袋体19へのガス圧の導入によって袋体19が展開を開始し、袋体19がリテーナ20から上方に飛び出そうとする。このとき、袋体19がバッグカバー21のリッド部(リッド壁48及びリッド領域42)を裏面側から押圧すると、カバーインナ36の破断促進部61がその長手方向に沿って開裂し破断可能壁60を車体側に残してリッド壁48の端部が破断可能壁60から分離し、また、カバーアウタ35が破断誘導部41で破断して、カバーインナ36のリッド壁48とカバーアウタ35のリッド領域42が一体となって車内側に押し開かれ、さらに前記ヒンジ部を回転中心として車内側へ回転する。これにより、バッグカバー21の上壁37に開口40が形成され、開口40から車室内の上方に袋体19が展開することになる。
【0045】
ところで、オープンルーフタイプの車両では、ルーフを開いての走行中に降雨となる場合や、ルーフを開いての駐車中に雨天となる場合が想定され、このような場合には、フロントサイドドア1において車室内側に配置されたエアバッグモジュール9のカバーアウタ35やドアライニング2も被水する。そして、カバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入する虞がある。
【0046】
しかしながら、このエアバッグモジュール9においては、カバーアウタ35に庇部80と排水路86が設けられているので、万が一にカバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入することがあっても、この水がインフレータ18や袋体19等のエアバッグモジュール9の主要部に降りかかることがない。
【0047】
詳述すると、例えば、カバーアウタ35の前縁上半部分35Aとドアライニング2との間から水が浸入した場合、この水は後側庇部83の上に落ち、後側庇部83の上を樋部83aに向かって流れ落ちながら車体後方に向かって流れていき、最終的に前縁下半部分35Bの排水路86へと流れる。ここで、樋部83aは車室内側に向かって上り傾斜しているので、樋部83aの車室内側の端部から水が溢れることはない。
【0048】
また、カバーアウタ35の前縁下半部分35Bとドアライニング2との間から水が浸入した場合、図13(B)に示すように、水Wは、カバーアウタ35の溝部87の上壁88とドアライニング2の係合凸部102の上面103との間を通って溝部87内に浸入し、排水路86に至る。排水路86に至った水は、排水路86を最下部35Dに向かって流れていき、最下部35Dの溝部87に設けられた排水孔93から排出され、落下する。
カバーアウタ35の後側下縁35Cとドアライニング2との間から水が浸入した場合も同様であり、浸入した水は後側下縁35Cに設けられた排水路86に集水され、排水孔93から排出され、落下する。
【0049】
前述したように、排水孔93が設けられている最下部35Dはインフレータ18や袋体19よりも下方に位置しているので、排水孔93から水を落下させても、この水がインフレータ18や袋体19などに降りかかることはない。したがって、カバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入することがあったとしても、浸入した水を予め設定した排水位置である排水孔93に誘導し排水することができるので、インフレータ18や袋体19等が被水するのを確実に防止することができ、エアバッグモジュール9にとって好ましくない環境となるのを回避することができる。
【0050】
また、排水路86を構成する溝部87の底壁90が排水路86の開口92に向かって上り傾斜しているので、排水路86から水が溢れることがなく、浸入した水を排水路86から溢さず確実に排水孔93に誘導することができる。
また、庇部80と排水路86の存在により、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bへの被水を確実に防止することができる。
【0051】
また、結露や予期せず事象によりインフレータ18やディフューザパイプ22の外周面に水滴が付着した場合にも、インフレータ18とディフューザパイプ22の軸心G1,G2が交差して配置されていて、その接続部34が最も低いレベル(最下点)となっているので、インフレータ18やディフューザパイプ22の外表面に付着した水滴は、インフレータ18やディフューザパイプ22の下面を伝わって、最もレベルの低い接続部34に誘導することができ、この接続部34から落下させることができる。
【0052】
また、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bは、袋体19内に収容されており、ディフューザパイプ22が袋体19を貫通する部分は閉じられており、袋体19は水を通さないので、ガス放出孔22bは水から隔離された空間に配置されている。しかしながら、袋体19内で結露が生じたり、予期されない何らかの原因で袋体19内に水が浸入する場合を考えたとき、このエアバッグモジュール9においてはディフューザパイプ22のガス放出孔22bがシールテープ28により閉塞されているので、衝撃入力前のエアバッグモジュール9の非作動時にディフューザパイプ22の外側から内側へ水が浸入するのを防止することができる。その結果、ディフューザパイプ22やこのディフューザパイプ22に連結されたインフレータ18の内部等が錆びるのを防止することができる。一方、衝撃入力時には、インフレータ18から供給されるガス圧によって、シールテープ28で閉塞されていたガス放出孔22bの閉塞が解除されるので、ガス放出孔22bから袋体19へガス圧を供給することができ、エアバッグモジュール9を適正に作動させることができる。
【符号の説明】
【0053】
9 エアバッグモジュール(エアバッグ装置)
18 インフレータ
19 袋体
21 バッグカバー
22 ディフューザパイプ
22b ガス放出孔
28 シールテープ(シール部材)
86 排水路
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝撃の入力時にガス圧によって袋体を展開させるエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用エアバッグ装置として、衝撃入力時にガス圧によって展開する袋体が棒状に長尺に折り畳まれ、その袋体が、袋体の車室内側の外側域を覆うバッグカバーとともに車体側部に取り付けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエアバッグ装置は、ルーフが開閉可能または着脱可能なオープンルーフタイプの車両のサイドドアの車内側面に配置され、側突時等においてドアと乗員との間に展開して乗員を保護するエアバッグ装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−213621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オープンルーフタイプの車両では、ルーフを開いての走行中に降雨となる場合や、ルーフを開いての駐車中に雨天となる場合が想定され、このような場合には内装部分が被水する可能性がある。
サイドドアの車内側面に設置される前記エアバッグ装置においては、袋体等の主要部はバッグカバーで覆われており、前記主要部に直接に雨等が降りかかることはない。
【0006】
しかしながら、バッグカバーが被水するとなると、何らかの原因でエアバッグ装置の内部に水が浸入する可能性が全くないとは言えない。このような水の浸入はエアバッグ装置にとって好ましい環境ではない。
そこで、この発明は、袋体を展開するためのガスを放出するディフューザパイプ内への水の浸入を阻止することができるエアバッグ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエアバッグ装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、折り畳まれた袋体(例えば、後述する実施例における袋体19)と、前記袋体を展開させるためのガスを発生させるインフレータ(例えば、後述する実施例におけるインフレータ18)と、前記インフレータに接続され該インフレータで発生したガスを前記袋体内に放出する中空筒状のディフューザパイプ(例えば、後述する実施例におけるディフューザパイプ22)と、を備えたエアバッグ装置(例えば、後述する実施例におけるエアバッグモジュール9)であって、前記ディフューザパイプは、少なくとも一部が前記袋体の内部に挿入され、袋体内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔(例えば、後述する実施例におけるガス放出孔22b)が開口しており、前記ディフューザパイプの前記ガス放出孔を外側から閉塞するとともに、前記インフレータから供給されるガス圧によって前記閉塞を解除するシール部材(例えば、後述する実施例におけるシールテープ28)が前記ディフューザパイプに取り付けられていることを特徴とするエアバッグ装置である。
このように構成することにより、衝撃入力前のエアバッグ装置非作動時には、ディフューザパイプのガス放出孔がシール材により閉塞されているので、ディフューザパイプの外側から内側へ水が浸入するのを防止することができる。一方、衝撃入力時には、インフレータから供給されるガス圧によって、シール材で閉塞されていたガス放出孔の閉塞が解除されるので、ガス放出孔から袋体へガス圧を供給することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記袋体は上方に向けて展開するように配置され、前記ガス放出孔が上方に向けて設けられていることを特徴とする。
このように構成することにより、ガス放出孔が上方に向けて設けられていても、ガス放出孔がシール材で閉塞されているので、ディフューザパイプ内に水が浸入するのを防止することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記袋体を覆うカバー体(例えば、後述する実施例におけるバッグカバー21)を備え、前記カバー体は該カバー体内側への水の浸入を阻止するとともに阻止した水を前記ディフューザパイプの開口に被水させない位置に導く流路(例えば、後述する実施例における排水路86)を備えることを特徴とする。
このように構成することにより、ディフューザパイプ内への水の浸入を、より確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エアバッグ装置の非作動時には、ディフューザパイプ内への水の浸入を防止することができ、エアバッグ装置の作動時には、ディフューザパイプのガス放出孔から袋体へガス圧を供給することができる。
請求項2に係る発明によれば、ガス放出孔が上方に向けて設けられていても、ディフューザパイプ内への水の浸入を防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、ディフューザパイプ内への水の浸入を、より確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るエアバッグ装置を搭載した車両用ドアを車室内側から見た正面図である。
【図2】前記エアバッグ装置の取付状態を示す車両用ドアの車室内側から見た正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】前記エアバッグ装置の分解斜視図である。
【図5】前記エアバッグ装置の背面図である。
【図6】前記エアバッグ装置においてバッグカバーを透視して見た斜視図である。
【図7】前記エアバッグ装置におけるインフレータとディフューザパイプの斜視図である。
【図8】前記エアバッグ装置におけるインフレータとディフューザパイプの取り付け角度を説明する図である。
【図9】前記エアバッグ装置のバッグカバーの斜視図である。
【図10】前記エアバッグ装置の前部側の部分を若干斜め上から見た斜視図である。
【図11】前記エアバッグ装置の前部側を前方斜め上方から見た斜視図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【図13】(A)は図10のC−C断面図であり、(B)は水の浸入経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係るエアバッグ装置の実施例を図1から図13の図面を参照して説明する。なお、図面において、車両の上側と前側はそれぞれ矢印UPとFRで示すものとする。
【0013】
図1は、車両の進行方向右側のフロントサイドドア1を車室内側から見た図であり、図2は、図1のフロントサイドドア1からドアライニング2等の一部の部材を取り去った図、図3は、図1のA−A断面に対応する断面図である。
この実施例における車両は、ルーフが開閉可能または着脱可能なオープンルーフタイプの車両である。この車両のフロントサイドドア1は、窓枠部を持たないいわゆるサッシュレスタイプのドアであり、ドア本体3にはドアガラス4が昇降自在に保持されている。ドア本体3は、ドア骨格部5と、ドア骨格部5の車外側に取り付けられるドアスキン6(図3参照)等によって構成されている。
【0014】
図2に示すように、ドア本体3の前部上端側には図示しないドアミラーを取り付けるためのミラーベース8が一体に設けられ、ドア本体3の車室内側の上縁部には、モジュール化されたエアバッグ装置9(以下「エアバッグモジュール9」と呼ぶ。)を取り付けるための取付ブラケット10が設けられている。
【0015】
取付ブラケット10は、図2に示すように、ドア本体3の上端部に沿うように車体前後方向に延出する平板状のベースプレート部11を備え、ベースプレート部11の上縁部には、エアバッグ締結片12Aと、3つのエアバッグ係止爪13A,13B,13Cが上方に向かって延設されている。エアバッグ締結片12Aはベースプレート部11の車体前部寄り位置に配設され、エアバッグ係止爪13A,13B,13Cはベースプレート部11の車体中央領域にほぼ等間隔に配設されている。また、ベースプレート部11の車体前部寄りの下縁部にはエアバッグ締結片12B,12Cが延設されている。
【0016】
また、取付ブラケット10は、図3に示すように、ドア骨格部5の上部に接した状態でドア本体3に固定されており、エアバッグ係止爪13A,13B,13Cは、その状態においてドア骨格部5から離間して上方に突出している。また、ドア骨格部5の上縁に形成されたフランジ部15aには、ドアガラス4の車内側面に摺動自在に密接する車内側のウエザーストリップ16が取り付けられている。なお、図3において符号17は、ドアスキン6の上端部に取り付けられてドアガラス4の車外側面に摺動自在に密接する車外側のウエザーストリップである。
【0017】
図4は、エアバッグモジュール9を分解した状態を示す斜視図であり、図5は、エアバッグモジュール9の背面図である。
これらの図にも示すように、エアバッグモジュール9は、図示しないセンサによって衝撃が検知されたときに高圧ガスを発生する筒状のインフレータ18と、インフレータ18で発生したガス圧を受けて展開する折り畳まれた袋体19(図2,図3参照)と、インフレータ18と袋体19を保持する金属製のリテーナ20と、折り畳まれた袋体19の車室内側の外側域を覆い、袋体19の展開時に一部が開口することによって袋体19の展開を許容するバッグカバー21と、を備えている。
【0018】
図6は、バッグカバー21を透視して示すエアバッグモジュール9の斜視図であり、インフレータ18にはディフューザパイプ22が連結され、このディフューザパイプ22が、折り畳まれた袋体19の底部を貫通している。図7に示すように、ディフューザパイプ22は、先端部22aが閉塞されており、途中の外周面に複数のガス放出孔22bが形成されている。ガス放出孔22bはディフューザパイプ22の内外に連通し上方に向けて開口しており、ディフューザパイプ22は全てのガス放出孔22bが袋体19内に位置するように配置されている。また、各ガス放出孔22bを含むその周囲におけるディフューザパイプ22の外周面には、各ガス放出孔22bを閉塞するシールテープ(シール部材)28が貼り付けられている。シールテープ28は、液体を透過させない非透水性の紙や樹脂等で形成されていて、このシールテープ28によってガス放出孔22bが塞がれているので、ディフューザパイプ22の外側から内側へ水が浸入するのが阻止される。また、このシールテープ28は、インフレータ18で発生させたガスがディフューザパイプ22に供給されたときには、そのガス圧によってディフューザパイプ22の外周面から剥離するか、あるいは、ガス圧によって開裂されるように構成されている。この実施例において、インフレータ18とディフューザパイプ22はガス供給部を構成する。
なお、ディフューザパイプ22が袋体19を貫通する部分は、袋体19の上から図示しないバンド等で締め付けるなど適宜の手段によりシールされている。
袋体19は前後の縁部を折り返した状態で上下方向に畳まれ、ディフューザパイプ22の長手方向に沿うように長尺物状に配置されている。
【0019】
リテーナ20は、車体前後方向に長いほぼ平板状のベースプレート23と、ベースプレート23の車室内側に一体に結合されて、ディフューザパイプ22と袋体19の車室内側の側方と底部側を抱持する断面略L字状の抱持プレート24とによって構成されている。インフレータ18とディフューザパイプ22はベースプレート23の車内側の面に結合され、抱持プレート24は、図4に示すように、ベースプレート23と結合する前にバッグカバー21の内側部に一体に結合される。ベースプレート23と抱持プレート24は、インフレータ18や袋体19をベースプレート23に結合した組付体(以下、「ベースプレート側ユニット23U」と呼ぶ。)にバッグカバー21を最終的に組み付けるときに、ボルト結合やリベット止め等によって相互に結合される。
【0020】
インフレータ18とディフューザパイプ22のベースプレート23への結合について詳述すると、図4,図6に示すように、インフレータ18には、インフレータ18の外周面を抱持するブラケット30が取り付けられ、そのブラケット30に延設された下部アーム31がベースプレート23の前端部側にボルト固定されている。ブラケット30には上方側に延出する上部アーム32が設けられ、その上部アーム32が取付ブラケット10のエアバッグ締結片12Aにボルト固定されるようになっている。また、ディフューザパイプ22の先端部22aはブラケット29を介してベースプレート23の後端部側にボルト固定されている。つまり、インフレータ18とディフューザパイプ22によって構成されるガス供給部は、ベースプレート23の前端部側と後端部側に固定されている。
【0021】
また、インフレータ18とディフューザパイプ22の取り付け角度は、図8に示すように、いずれの軸心G1,G2共、車体における水平線Hに対して傾斜しており、双方の軸心G1,G2同士も互いに交差するように配置されている。詳述すると、インフレータ18の軸心G1は車体の水平線Hに対し車体前方に向かって上り傾斜に配置されており、一方、ディフューザパイプ22の軸心G2は車体の水平線Hに対し車体後方に向かって上り傾斜に配置されていて、インフレータ18とディフューザパイプ22の接続部34が最も低いレベルとなっている。これにより、結露など何らかの理由によりインフレータ18やディフューザパイプ22の外表面に水滴が付着した場合に、その水滴はインフレータ18やディフューザパイプ22の下面を伝わって、最もレベルの低い接続部34に集合し、この接続部34から落下するようになる。
【0022】
なお、図4,図6において、符号33aは、上部アーム32をエアバッグ締結片12Aにボルト締結するためのボルト孔であり、符号33b,33cは、ベースプレート23の前部側下縁を取付ブラケット10のエアバッグ締結片12B,12Cにボルト締結するためのボルト孔である。また、ベースプレート23の後端部はボルト孔33dを通して取付ブラケット10にボルト締結されている。
【0023】
また、抱持プレート24の長手方向(車体前後方向)の各端部には、略L字状の基本断面部の内側領域を閉塞するように端部壁25が延設され、その端部壁25に連設された接合フランジ25aがベースプレート23に対して最終的にリベット固定されるようになっている。ベースプレート23に抱持プレート24が結合されて構成されるリテーナ20は袋体19の収容部の上方が略長方形状に開口し、上方側を除く面が袋体19の周域をほぼ取り囲んでいる。
【0024】
また、ベースプレート23のドア本体3側の上縁部には、波形の板部材26が複数箇所で固定され、板部材26の固定部間に鞘状の爪受部27A,27B,27Cが形成されている。この爪受部27A,27B,27Cは下方側に開口し、エアバッグモジュール9を取付ブラケット10に対して上方から被せることによって対応するエアバッグ係止爪13A,13B,13Cに嵌合し得るようになっている。
【0025】
図9は、バッグカバー21を車外側斜め下方から見た状態を示す図である。この図にも示すように、バッグカバー21は、ドアライニング2(図1参照)とともにフロントサイドドア1の車室内側の意匠面を形成するカバーアウタ35と、カバーアウタ35の内側面に溶着固定されてバッグカバー21上の各部の剛性調整や他部品との連結機能を担うカバーインナ36と、を備えている。
【0026】
カバーアウタ35は、図3に示すように、比較的硬質な樹脂材料から成る基材35aの外側に軟質樹脂から成る表皮材35bが一体に接合された2層構造とされている。また、カバーアウタ35は、リテーナ20の開口の上方側を覆う上壁37に、リテーナ20の車室内側を覆う側壁38が滑らかに連続して形成されている。側壁38は、図1,図2に示すように、側面視で上辺が略水平な略五角形状を呈するように形成されている。なお、ベースプレート側ユニット23Uにバッグカバー21が最終的に取り付けられた状態では、インフレータ18とベースプレート23の前端部分はカバーアウター35の前方に突出する(図2参照)。また、上壁37のドア本体3側の端部には下方に略L字状に屈曲する屈曲壁39が設けられている。この屈曲壁39は、エアバッグモジュール9がドア本体3に取り付けられた状態において、図3に示すように車室内側のウエザーストリップ16の近傍部まで延出し、その外側面にウエザーストリップ16の外側リップ16aが密接するようになっている。
【0027】
カバーアウタ35の上壁37と屈曲壁39には、図4,図5,図9に示すように、袋体19の展開を許容する開口40を形成するための破断誘導部41が設けられている。破断誘導部41は、例えば、カバーアウタ35の基材35aの裏面にV字溝を形成することにより構成される。また、破断誘導部41は、折り畳まれた袋体19の前後位置に対応して設けられ、袋体19の展開時には、カバーアウタ35上の破断誘導部41によって囲まれた領域が袋体19に押圧されて蓋状に跳ね上がるようになっている。この袋体19の展開時に蓋状に跳ね上がるカバーアウタ35上の略長方形状の領域を、以下ではリッド領域42と呼ぶものとする。リッド領域42の基部側の辺は、その前後の端縁を除く中央領域がリッド領域42の回動起点となる曲げ基線部44(ヒンジ部)とされる。この実施形態の場合、リッド領域42の前後の破断誘導部41はリッド領域42の基部側の辺の一部まで略L字状に回り込んで設けられている。
【0028】
カバーインナ36は、比較的硬質な樹脂材料から成り、図3,図9に示すように、カバーアウタ35の上壁37と側壁38にそれぞれ溶着固定される上壁45と側壁46を備えている。上壁45には車体前後方向に細長い略コ字状をなす点線状の切欠き部47(図9参照)が設けられ、その切欠き部47内に、カバーアウタ35のリッド領域42に対応する略長方形状のリッド壁48が配置されている。リッド壁48はカバーアウタ35のリッド領域42の裏面に一体に溶着固定されている。
【0029】
また、側壁46の下縁には複数の隆起部49が設けられ、その各隆起部49に係止孔50が設けられている。各係止孔50には、図3に示すように、リテーナ20の抱持プレート24に延設された係止フック51が挿入係合されるようになっている。したがって、カバーインナ36の側壁46はリテーナ20に係止され、リテーナ20を介してドア本体3側に支持される支持部とされている。なお、図3,図9に示すように、カバーアウタ35の側壁38の裏面にはカバーインナ36とは別に樹脂製の締結ブロック52が溶着固定され、抱持プレート24はこの締結ブロック52に対してビス止め固定されている。
【0030】
リッド壁48は、切欠き部47の非連続部に形成された複数の帯状片53・・・を介して側壁46の上部に一体に連結されている。各帯状片53は下方側に膨出するように円弧状に湾曲し、カバーアウタ35に対して溶着されずに離間している。これらの帯状片53・・・は、リッド壁48が跳ね上げ回動するときのヒンジ部として機能する。
【0031】
ここで、この実施形態のバッグカバー21では、カバーアウタ35とカバーインナ36が一体に溶着された状態において、カバーアウタ35側のリッド領域42とカバーインナ36側のリッド壁48が袋体19の展開時に開口40を開くリッド部を構成し、カバーアウタ35側の曲げ基線部44とカバーインナ36側の帯状片53…がリッド部の回動支点となるヒンジ部を構成している。
【0032】
また、図9に示すように、カバーインナ36の切欠き部47の前後方向の外側位置には、上壁45と側壁46とに跨るフランジ壁54,54が夫々突設され、これらのフランジ壁54がリテーナ20の抱持プレート24の端部壁25,25に対してボルト55(図4参照)によって結合されるようになっている。
【0033】
また、カバーインナ36のリッド壁48において帯状片53・・・から離間する自由端部側の下面には、破断可能壁60が下方に向けて延設されている。破断可能壁60の基部には破断促進部61が形成され、破断促進部61よりも先端側に、複数の連結片57が所定間隔に設けられている。破断促進部61は薄肉に形成されるとともに、長手方向に沿って多数の長孔62・・・が一列に並んで設けられている。
各連結片57はリテーナ20のベースプレート23にリベット固定されている。この連結片57のリベット固定は、例えば、ベースプレート側ユニット23Uにバッグカバー21を最終的に組み付けるときに、波形の板部材26とともにベースプレート23に固定するようにしても良い。
【0034】
図10はエアバッグモジュール9の前部側の部分を車内側の若干斜め上から見た斜視図であり、図11はカバーアウタ35の前端部からインフレータ18が突出する部分を前方斜め上から見た斜視図である。
図1,図2,図10に示すように、カバーアウタ35の前縁上半部分35Aと前縁下半部分35Bは車体後方に進むにしたがって下がっており、一方、カバーアウタ35の後側下縁35Cは車体前方に進むにしたがって下がっていて、前縁下半部分35Bと後側下縁35Cとの接続部が最下部35Dとなっている。
【0035】
図10,図11に示すように、カバーアウタ35は、その前縁上半部分35Aに、表皮材35bに被覆されず基材35aを露出させた庇部80を備えている。庇部80は、基材35aが表皮材35bに被覆されて車室内側の意匠面となる部分(以下、意匠面部35dと称す)よりも下方に凹設されているとともに外方へ張り出して形成されており、車室内側に進むにしたがって下っていく傾斜面に形成されている。また、庇部80は、インフレータ18の後部側上方に配置され、ドア本体3に取り付けられた状態ではドアライニング2に覆われる位置に配置されている。この意匠面部35dと庇部80との間に形成される段差面94に対して、ドアライニング2の縁部が対向配置されることとなる。
【0036】
庇部80は、起立壁81によって前側庇部82と後側庇部83に区画されている。前側庇部82の車外側には、クリップ孔84aを備えた保持部84が設けられており、図12に示すように、このクリップ孔84aに嵌合するクリップ85を介して、ドアライニング2に設けられた脚部101が締結されるようになっている。前側庇部82の車室内側の端部82aは下方に屈曲しており、該端部82aの先端はインフレータ18の外周面にほぼ接している。なお、図12において符号108はガーニッシュである。
【0037】
後側庇部83は、万が一、ドアライニング2とカバーアウタ35との間から水が浸入した場合に、その水を後側庇部83で受けることにより水がインフレータ18に降りかからないようにするもので、後側庇部83の車室内側の端部は、車室内側に向かって若干上り傾斜の傾斜面からなる樋部83aとなっていて、後側庇部83で受けた水を樋部83aから外に溢さずに後側庇部83の後端まで導くことができるように構成されている。また、樋部83aの車室内側の縁部からは下方に延出する下延壁83bが連設されている。
【0038】
また、カバーアウタ35の前縁下半部分35Bには、ドアライニング2と隣り合うカバーアウタ35の縁部に沿って排水路86が設けられている。詳述すると、図13(A)に示すように、カバーアウタ35の縁部には、意匠面部35dから車外側へ凹設された溝部87が設けられている。溝部87は、意匠面部35dに連なり車外側に向かって下り傾斜する上壁88と、上壁88の先端から略直角に屈曲形成された端壁89と、端壁89の下端から車室内側へ略直角に屈曲形成され上壁88とほぼ平行をなす底壁90とを備えており、この溝部87の内部が排水路86となっている。上壁88と底壁90との間には車室内側に向かって開口する開口92が形成されており、底壁90は開口に向かって上り傾斜の傾斜面で構成されている。また、底壁90の車室内側の端部には下方に延出する下延壁91が連設されており、図10に示すように、下延壁91には、ドアライニング2を締結するための保持部91a,91aが連設されている。ドアライニング2を保持部91a,91aに締結する手段は、庇部80における保持部84への締結手段と同じクリップである。
なお、溝部87において表皮材35bに被覆されているのは、溝部87における上壁88までであり、端壁89,底壁90,下延壁91は基材35aが露出している。この上壁88に対してドアライニング2の縁部が対向配置される。
【0039】
また、後側庇部83の樋部83aは溝部87の底壁90に一体的に繋がり、後側庇部83の下延壁83bは前縁下半部分35Bの下延壁91に一体的に繋がっており、庇部80の溝部87の端壁89は車体前方に進むにしたがって車室内側にせり上がってくるように形成されていいて、最終的に後側庇部83に連なっている。また、溝部87の上壁88は、前縁上半部分35Aにおける段差面94に繋がっている。
【0040】
この溝部87には、図13(A)に示すように、ドアライニング2の縁部が嵌合している。詳述すると、ドアライニング2は、比較的硬質な樹脂材料から成る基材2aの外側に軟質樹脂から成る表皮材2bが一体に接合された2層構造とされている。ドアライニング2において車室内側の意匠面となる部分(以下、意匠面部2cと称す)は、カバーアウタ35の意匠面部35dとほぼ面一となるように配置されている。ドアライニング2においてバッグカバー21と隣り合う縁部には、車外側に向かって斜め下方に突出する係合凸部102が設けられている。係合凸部102は先端側が徐々に細く形成されていて、その上面103のみが表皮材2bに被覆されている。この係合凸部102はカバーアウタ35の溝部87に挿入され、係合凸部102の先端面104が溝部87の端壁89と対向し、係合凸部102の下面105が溝部87の底壁90と対向する。係合凸部102の先端面104には複数のリブ106・・・が適宜の間隔で設けられ、係合凸部102の下面105にも複数のリブ107がリブ106と前後方向に位置をずらして適宜の間隔で設けられている。係合凸部102にこれらリブ106,107を設けたことにより、溝部87の端壁89と底壁90とが交差する隅部に水が流れる流路109が確保される。
【0041】
排水路86は、カバーアウタ35の後側下縁35Cにも設けられており、前縁下半部分35Bの排水路86と後側下縁35Cの排水路86は最下部35Dにおいて接続され、この最下部35Dにおける底壁90の端壁89寄りに、流路109に連通する排水孔93が形成されている。なお、最下部35Dは、インフレータ18や袋体19よりも下方に位置している。
そして、係合凸部102がカバーアウタ35の溝部87に挿入された状態において、係合凸部102の上面103における表皮材2bが、溝部87の上壁88における表皮材35bに密接するように構成されている。
【0042】
以上のように構成されたエアバッグモジュール9をドア本体3に取り付ける場合には、ドア本体3の上部に取付ブラケット10を予め取り付けておき、その状態で取付ブラケット10のエアバッグ係止爪13A,13B,13Cにエアバッグモジュール9の爪受部27A,27B,27Cを上方から嵌合することにより、エアバッグモジュール9をドア本体3に対して仮止めする。
この後、エアバッグモジュール9をドア本体3に対して正確に位置決めし、エアバッグモジュール9のリテーナ20(ベースプレート23)を取付ブラケット10に対してボルト結合する。したがって、バッグカバー21のカバーインナ36における破断可能壁60は、袋体19の展開前においては車体側に結合されることとなる。
そしてこの後、ドア本体3の車室内側に、エアバッグモジュール9のバッグカバー21と付き合わせるようにしてドアライニング2を取り付ける。なお、ドアライニング2のドア本体3への固定方法は従来と同じであるので説明を省略する。
【0043】
前述のようにエアバッグモジュール9がドア本体3に取り付けられると、インフレータ18や袋体19はリテーナ20を介してドア本体3に固定され、袋体19の上方側はバッグカバー21のリッド部(リッド領域42とリッド壁48)によって覆われることになる。
また、このとき、バッグカバー21の屈曲壁39は、ドアガラス4の車室内側面に微小隙間をもって対峙し、屈曲壁39の外側面には、ドア本体3側のウェザーストリップ16の外側リップ16aが密接する。したがって、バッグカバー21の上端部は、屈曲壁39部分で充分な高さ方向の幅をもってドア本体3の上部に対向するとともに、屈曲壁39にウェザーストリップ16が密接することによって両者の間の隙間が埋められる。また、このバッグカバー21では、上壁37のドア本体3側の端部に略L字状の屈曲壁39が連設されているため、上壁37の端部の剛性が充分に高く維持されている。したがって、このバッグカバー21を採用することにより、外観品質を含む商品性を高めることができる。
【0044】
車両に大きな衝撃が入力されてエアバッグモジュール9が作動する場合には、インフレータ18から袋体19へのガス圧の導入によって袋体19が展開を開始し、袋体19がリテーナ20から上方に飛び出そうとする。このとき、袋体19がバッグカバー21のリッド部(リッド壁48及びリッド領域42)を裏面側から押圧すると、カバーインナ36の破断促進部61がその長手方向に沿って開裂し破断可能壁60を車体側に残してリッド壁48の端部が破断可能壁60から分離し、また、カバーアウタ35が破断誘導部41で破断して、カバーインナ36のリッド壁48とカバーアウタ35のリッド領域42が一体となって車内側に押し開かれ、さらに前記ヒンジ部を回転中心として車内側へ回転する。これにより、バッグカバー21の上壁37に開口40が形成され、開口40から車室内の上方に袋体19が展開することになる。
【0045】
ところで、オープンルーフタイプの車両では、ルーフを開いての走行中に降雨となる場合や、ルーフを開いての駐車中に雨天となる場合が想定され、このような場合には、フロントサイドドア1において車室内側に配置されたエアバッグモジュール9のカバーアウタ35やドアライニング2も被水する。そして、カバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入する虞がある。
【0046】
しかしながら、このエアバッグモジュール9においては、カバーアウタ35に庇部80と排水路86が設けられているので、万が一にカバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入することがあっても、この水がインフレータ18や袋体19等のエアバッグモジュール9の主要部に降りかかることがない。
【0047】
詳述すると、例えば、カバーアウタ35の前縁上半部分35Aとドアライニング2との間から水が浸入した場合、この水は後側庇部83の上に落ち、後側庇部83の上を樋部83aに向かって流れ落ちながら車体後方に向かって流れていき、最終的に前縁下半部分35Bの排水路86へと流れる。ここで、樋部83aは車室内側に向かって上り傾斜しているので、樋部83aの車室内側の端部から水が溢れることはない。
【0048】
また、カバーアウタ35の前縁下半部分35Bとドアライニング2との間から水が浸入した場合、図13(B)に示すように、水Wは、カバーアウタ35の溝部87の上壁88とドアライニング2の係合凸部102の上面103との間を通って溝部87内に浸入し、排水路86に至る。排水路86に至った水は、排水路86を最下部35Dに向かって流れていき、最下部35Dの溝部87に設けられた排水孔93から排出され、落下する。
カバーアウタ35の後側下縁35Cとドアライニング2との間から水が浸入した場合も同様であり、浸入した水は後側下縁35Cに設けられた排水路86に集水され、排水孔93から排出され、落下する。
【0049】
前述したように、排水孔93が設けられている最下部35Dはインフレータ18や袋体19よりも下方に位置しているので、排水孔93から水を落下させても、この水がインフレータ18や袋体19などに降りかかることはない。したがって、カバーアウタ35とドアライニング2との間から水が浸入することがあったとしても、浸入した水を予め設定した排水位置である排水孔93に誘導し排水することができるので、インフレータ18や袋体19等が被水するのを確実に防止することができ、エアバッグモジュール9にとって好ましくない環境となるのを回避することができる。
【0050】
また、排水路86を構成する溝部87の底壁90が排水路86の開口92に向かって上り傾斜しているので、排水路86から水が溢れることがなく、浸入した水を排水路86から溢さず確実に排水孔93に誘導することができる。
また、庇部80と排水路86の存在により、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bへの被水を確実に防止することができる。
【0051】
また、結露や予期せず事象によりインフレータ18やディフューザパイプ22の外周面に水滴が付着した場合にも、インフレータ18とディフューザパイプ22の軸心G1,G2が交差して配置されていて、その接続部34が最も低いレベル(最下点)となっているので、インフレータ18やディフューザパイプ22の外表面に付着した水滴は、インフレータ18やディフューザパイプ22の下面を伝わって、最もレベルの低い接続部34に誘導することができ、この接続部34から落下させることができる。
【0052】
また、ディフューザパイプ22のガス放出孔22bは、袋体19内に収容されており、ディフューザパイプ22が袋体19を貫通する部分は閉じられており、袋体19は水を通さないので、ガス放出孔22bは水から隔離された空間に配置されている。しかしながら、袋体19内で結露が生じたり、予期されない何らかの原因で袋体19内に水が浸入する場合を考えたとき、このエアバッグモジュール9においてはディフューザパイプ22のガス放出孔22bがシールテープ28により閉塞されているので、衝撃入力前のエアバッグモジュール9の非作動時にディフューザパイプ22の外側から内側へ水が浸入するのを防止することができる。その結果、ディフューザパイプ22やこのディフューザパイプ22に連結されたインフレータ18の内部等が錆びるのを防止することができる。一方、衝撃入力時には、インフレータ18から供給されるガス圧によって、シールテープ28で閉塞されていたガス放出孔22bの閉塞が解除されるので、ガス放出孔22bから袋体19へガス圧を供給することができ、エアバッグモジュール9を適正に作動させることができる。
【符号の説明】
【0053】
9 エアバッグモジュール(エアバッグ装置)
18 インフレータ
19 袋体
21 バッグカバー
22 ディフューザパイプ
22b ガス放出孔
28 シールテープ(シール部材)
86 排水路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた袋体と、前記袋体を展開させるためのガスを発生させるインフレータと、前記インフレータに接続され該インフレータで発生したガスを前記袋体内に放出する中空筒状のディフューザパイプと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記ディフューザパイプは、少なくとも一部が前記袋体の内部に挿入され、袋体内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔が開口しており、
前記ディフューザパイプの前記ガス放出孔を外側から閉塞するとともに、前記インフレータから供給されるガス圧によって前記閉塞を解除するシール部材が前記ディフューザパイプに取り付けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記袋体は上方に向けて展開するように配置され、前記ガス放出孔が上方に向けて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記袋体を覆うカバー体を備え、前記カバー体は該カバー体内側への水の浸入を阻止するとともに阻止した水を前記ディフューザパイプの開口に被水させない位置に導く流路を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
折り畳まれた袋体と、前記袋体を展開させるためのガスを発生させるインフレータと、前記インフレータに接続され該インフレータで発生したガスを前記袋体内に放出する中空筒状のディフューザパイプと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記ディフューザパイプは、少なくとも一部が前記袋体の内部に挿入され、袋体内に挿入された部位にパイプ内外に連通するガス放出孔が開口しており、
前記ディフューザパイプの前記ガス放出孔を外側から閉塞するとともに、前記インフレータから供給されるガス圧によって前記閉塞を解除するシール部材が前記ディフューザパイプに取り付けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記袋体は上方に向けて展開するように配置され、前記ガス放出孔が上方に向けて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記袋体を覆うカバー体を備え、前記カバー体は該カバー体内側への水の浸入を阻止するとともに阻止した水を前記ディフューザパイプの開口に被水させない位置に導く流路を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−999(P2011−999A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146603(P2009−146603)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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