説明

エアバッグ装置

【課題】エアバッグに形成されたガス発生装置用の挿入口からのガス漏れを効果的に抑制できると共に、ガス発生装置の組付作業性を良好にすることができるエアバッグ装置を得る。
【解決手段】助手席用エアバッグ装置10では、インフレータ22の複数のガス噴出口の一部が、エアバッグ20におけるインフレータ用の挿入口50と対向して配置されている。また、エアバッグ20内に設けられた防炎布24は、上記複数のガス噴出口の一部と挿入口50との間に介在している。このため、インフレータ22が作動して複数のガス噴出口からガスGが噴出された際には、防炎布24がガスGの圧力によって挿入口50及びその周辺部に密着される。これにより、挿入口50を良好に閉塞することができるので、挿入口50を通してエアバッグ20内にインフレータ22を挿入した後で、防炎布24をエアバッグ20に縫製しなくても、ガス漏れ抑制効果を良好に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される乗員保護用のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたエアバッグ装置では、インフレータから噴出されるガスの熱によるバッグの損傷を防止するための補強布が、バッグ内に設けられている。この補強布には、バッグに形成されたインフレータ挿入用のスリットに対応したスリットが形成されており、これらのスリットを通してバッグ内にインフレータが挿入される構成になっている。また、バッグの外側には、閉塞布が設けられている。この閉塞布は、一端側が補強布と共にバッグに縫合され、他端側がインフレータの取付部(スタッドボルト)に係止される構成になっている。この閉塞布がバッグの外側に密着してバッグのスリットを覆うことにより、バッグからのガス漏れを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−115673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如きエアバッグ装置では、閉塞布とバッグの外側との密着状態が良好に確保されない場合には、インフレータ(ガス発生装置)から噴出される高圧のガスが、バッグ及び補強布の各スリット(ガス発生装置用の挿入口)、及びバッグと閉塞布の間を通って外部に漏れる可能性がある。これを防止するためには、ガス発生装置をバッグ内に挿入した後で、閉塞布の他端側等をバッグに縫製することが考えられるが、縫製作業が煩雑になり、ガス発生装置の組付作業性が悪化する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、エアバッグに形成されたガス発生装置用の挿入口からのガス漏れを効果的に抑制できると共に、ガス発生装置の組付作業性を良好にすることができるエアバッグ装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るエアバッグ装置は、エアバッグケースと、袋状に形成されると共に、ガス発生装置用の挿入口が形成されたエアバッグと、前記挿入口を通過可能に構成されて前記エアバッグ内に設けられ、前記エアバッグケースとの間に前記エアバッグにおける前記挿入口側を挟んだ状態で前記エアバッグケースに締結固定され、作動することにより複数のガス噴出口からガスを噴出すると共に、前記複数のガス噴出口の一部が前記挿入口と対向して配置されたガス発生装置と、前記エアバッグにおける前記挿入口側と共に前記ガス発生装置と前記エアバッグケースとの間に挟まれた状態で前記エアバッグ内に設けられ、前記複数のガス噴出口の一部と前記挿入口との間に介在すると共に、前記エアバッグにおける前記挿入口及びその周辺部を覆った防炎布と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のエアバッグ装置では、エアバッグにガス発生装置用の挿入口が形成されており、エアバッグ内に設けられたガス発生装置は、エアバッグケースとの間にエアバッグにおける挿入口側を挟んだ状態でエアバッグケースに締結固定されている。このガス発生装置は、複数のガス噴出口の一部が上記挿入口と対向して配置されている。また、エアバッグ内には、エアバッグの一部と共にガス発生装置とエアバッグケースとの間に挟まれた防炎布が設けられている。この防炎布は、上記複数のガス噴出口の一部と上記挿入口との間に介在しており、エアバッグにおける挿入口及びその周辺部を覆っている。このため、ガス発生装置が作動して複数のガス噴出口からガスが噴出された際には、複数のガス噴出口の一部から噴出されるガスの圧力によって、防炎布がエアバッグにおける挿入口及びその周辺部に密着される。これにより、挿入口を良好に閉塞することができるので、挿入口からのガス漏れを効果的に抑制することができる。しかも、上述の如く、ガス噴出口から噴出されるガスの圧力を利用して、防炎布をエアバッグに密着させる構成である。このため、エアバッグへのガス発生装置の組付に際し、挿入口を通してエアバッグ内にガス発生装置を挿入した後で、防炎布をエアバッグに縫製するなどの追加処理をしなくても、ガス漏れ抑制効果を良好に確保することができる。したがって、ガス発生装置の組付作業性を良好にすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るエアバッグ装置は、請求項1に記載のエアバッグ装置において、前記防炎布は、一端側が前記エアバッグに縫製され、他端が自由端とされている。
【0009】
請求項2に記載のエアバッグ装置では、一端側がエアバッグに縫製された防炎布は、他端が自由端とされているため、エアバッグの挿入口を通してエアバッグ内にガス発生装置を挿入する際には、防炎布の他端側を一端側の方へ捲ることにより、挿入口を開放することができる。しかも、防炎布の一端側がエアバッグに縫製されているため、ガス発生装置をエアバッグケースに締結固定する際等に、防炎布がエアバッグに対して不用意に位置ずれすることを防止できる。これにより、ガス発生装置の組付作業性をより一層良好にすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るエアバッグ装置は、請求項1又は請求項2に記載のエアバッグ装置において、前記ガス発生装置を前記エアバッグケースに締結固定した締結具が、前記エアバッグ及び前記防炎布を貫通している。
【0011】
請求項3に記載のエアバッグ装置では、ガス発生装置をエアバッグケースに締結固定した締結具がエアバッグ及び防炎布を貫通することにより、エアバッグ及び防炎布をエアバッグケース及びガス発生装置に良好に係止することができる。これにより、ガス発生装置のガス噴出口から噴出されるガスの圧力などによって、防炎布がエアバッグの挿入口に対して不用意に位置ずれすることを防止又は効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係るエアバッグ装置は、請求項2に記載のエアバッグ装置において、前記エアバッグケースは、車両の助手席の前方でインストルメントパネルの頂壁部の裏面側に設けられ、前記エアバッグは、前記ガス発生装置が作動した際に、前記頂壁部に設けられたエアバッグドアを展開させつつ助手席側へ膨張展開すると共に、前記挿入口が前記エアバッグケースの底壁部と対向して配置され、前記防炎布の一端側は、前記挿入口の車両前方側で前記エアバッグに縫製されている。
【0013】
請求項4に記載のエアバッグ装置では、エアバッグケースが、車両の助手席の前方でインストルメントパネルの頂壁部の裏面側に設けられている(所謂トップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置とされている)。このエアバッグケース内に折り畳み状態で収納されたエアバッグは、ガス発生装置用の挿入口がエアバッグケースの底壁と対向して配置されている。このエアバッグは、ガス発生装置が作動した際に、上記頂壁部に設けられたエアバッグドアを展開させつつ助手席側へ膨張展開する。このような構成の場合、エアバッグにおいて、挿入口の車両前方側からインストルメントパネルの上方を経由して助手席側へ至る部位(以下、上方部位という)よりも、挿入口の車両後方側からインストルメントパネルの後方へ延びて助手席側へ至る部位の方が強く伸張されることが多い。この点、本発明では、防炎布の一端側が、エアバッグにおける挿入口の車両前方側、すなわち上方部位の側に縫製されているため、エアバッグの膨張展開時に防炎布がエアバッグによって引っ張られることを抑制することができる。これにより、エアバッグの膨張展開時に、防炎布がエアバッグの挿入口に対して不用意に位置ずれすることを防止又は効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグに形成されたガス発生装置用の挿入口からのガス漏れを効果的に抑制できると共に、ガス発生装置の組付作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る助手席用エアバッグ装置が搭載された車両におけるインストルメントパネル周辺の概略的な構成を示す縦断面図である。
【図2】同助手席用エアバッグ装置の主要部の構成を示す拡大縦断面図である。
【図3】同助手席用エアバッグ装置の構成部材であるエアバッグ、インフレータ及び防炎布の構成を示す斜視図である。
【図4】同助手席用エアバッグ装置のエアバッグにインフレータが挿入される際の状況を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置としての助手席用エアバッグ装置10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0017】
<構成>
図1に示されるように、本実施形態に係る助手席用エアバッグ装置10は、所謂トップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置であり、インストルメントパネル12における頂壁部12Aの助手席側に配置されている。この助手席用エアバッグ装置10は、エアバッグケース14と、エアバッグドア16、18と、エアバッグ20と、ガス発生装置としてのインフレータ22と、防炎布24と、を有している。
【0018】
エアバッグケース14は、金属材料等からなる箱体(図2参照)であり、図示しない助手席の前方でインストルメントパネル12の裏面側に、車両上方側が開口側となるようにして配置されている。このエアバッグケース14は、図示しないインパネリインフォース等の強度部材にブラケットを介して支持されると共に、図示しないリテーナを介してインストルメントパネル12に連結されている。
【0019】
エアバッグケース14の上方でインストルメントパネル12の頂壁部12Aには、エアバッグドア16、18が設けられている。これらのエアバッグドア16、18は、エアバッグ20の膨張圧を受けて前後に展開し、頂壁部12Aにエアバッグ膨出用の開口部26を形成する構成になっている。なお、図1では、エアバッグドア16、18が展開した状態が図示されているが、これらのエアバッグドア16、18は、通常は脆弱なティアライン部(破断予定部)によって連結されており、バッグ膨張圧を受けた際に上記ティアライン部が破断する構成になっている。
【0020】
エアバッグ14は、図3に示される本体パネル28と左右一対の側面パネル30とが縫製されることにより袋状に形成されたものであり、通常は折り畳まれた状態でエアバッグケース14内に収納されている。このエアバッグ20は、インフレータ22から噴出されるガスの圧力によって膨張することにより、エアバッグドア16、18を前後に展開させつつ、助手席側へ膨張展開するように構成されている(図1図示状態)。このエアバッグ20は、膨張展開状態で車幅方向から見た場合には、前端側が窄まり後端側が車両上下方向に広がる形状を成している。
【0021】
インフレータ22は、上記エアバッグ20内に配設されている。このインフレータ22は、スタッドボルト付きシリンダ型のインフレータであり、円柱状に形成されている。また、このインフレータ22は、所謂デュアルステージインフレータであり、当該インフレータ22の軸線方向に並んで配設された2つのガス発生器32、34(図4参照)を備えている。このインフレータ22では、低速衝突時(予め定められた速度以下での衝突時)や近接乗員状態(予め定めた位置より車両前方側に助手席の乗員が位置する状態)での衝突時には、1段目のガス発生器32を作動後、所定時間経過後に2段目のガス発生器34を作動させることにより、エアバッグ20の展開速度を遅くすることができる。一方、高速衝突時等には、1段目と2段目のガス発生器32、34を同時に作動させることにより、エアバッグ20の展開速度を速くすることができる。これにより、低速衝突時、近接乗員状態での衝突時、及び高速衝突時の何れの場合においても、乗員を適切に保護することができる。
【0022】
このインフレータ22の軸線方向中央部付近には、1段目のガス発生器32に対応した複数のガス噴出口36と、2段目のガス発生器34に対応した複数のガス噴出口38とが形成されている。複数のガス噴出口36及び38は、何れもインフレータ22の周方向に並んで配置されていると共に、インフレータ22の軸線方向に並んで設けられている。このインフレータ22では、1段目のガス発生器32が作動した際には、複数のガス噴出口36からガスが噴出され、2段目のガス発生器34が作動した際には、複数のガス噴出口38からガスが噴出される。なお、以下の説明では2つのガス発生器32、34の作動タイミングについての説明は省略し、単にインフレータ22として説明する。
【0023】
インフレータ22の軸線方向両端側には、インフレータ22の半径方向外側へ突出した一対のスタッドボルト40が設けられている。これらのスタッドボルト40は、エアバッグ20の根元部20Aに形成された一対の取付孔42(図3参照)、及びエアバッグケース14の底壁部14Aに形成された一対の取付孔(図示せず)を貫通すると共に、ナット48に螺合している。これにより、インフレータ22がエアバッグケース14に締結固定されている。また、インフレータ22とエアバッグケース14との間には、エアバッグ20における根元部20Aの一部(後述する挿入口50側)が挟まれており、これにより、エアバッグ20の根元部20Aがエアバッグケース14に係止されている。
【0024】
エアバッグ20の根元部20Aには、エアバッグケース14の底壁部14Aと対向する部位に、上記インフレータ22用の挿入口50が形成されている。この挿入口50は、インフレータ22の直径と同等又は僅かに大径な円形状に形成されており、図3に示されるように、外周の一部にはスタッドボルト40を通過させるための切欠部50Aが形成されている。これにより、インフレータ22が挿入口50を通過可能とされている。この挿入口50には、インフレータ22の軸線方向中央部付近が上方側から重なっており、インフレータ22に設けられた複数のガス噴出口36、38のうちエアバッグケース14側を向いた一部が挿入口50と対向している。
【0025】
なお、図3に示されるように、エアバッグ20の左右の側面パネル30には、それぞれコネクタ用の開口52が形成されており、図示しないワイヤハーネスに設けられたコネクタが各開口52を介してインフレータ22の軸線方向両端部に接続される構成になっている。上記のワイヤハーネスは、エアバッグECUに接続されており、エアバッグECUは、衝突センサからの信号に基づいて車両の前面衝突を判定した際又は前面衝突を予測した際に、インフレータ22に対して作動電流を流すように構成されている。
【0026】
一方、防炎布24は、シリコンコートが施された矩形状の布材であり、インフレータ22と共にエアバッグ20内に設けられている。この防炎布24は、挿入口50よりも充分に大きく形成されており、エアバッグ20の根元部20Aとインフレータ22との間に配置されている。この防炎布24は、エアバッグ20における挿入口50及びその周辺を覆っており、中央側がインフレータ22と挿入口50との間に介在している。
【0027】
この防炎布24は、図1〜図3に示されるように、挿入口50の車両前方側に位置する一端24A側が縫製部Sにおいてエアバッグ20の本体パネル28に縫製されており、他端24Bが自由端とされている。また、この防炎布24には、インフレータ22における一対のスタッドボルト40が貫通した一対の取付孔54が形成されており、エアバッグケース14とインフレータ22との間にエアバッグ20の根元部20Aの一部と防炎布24の一部とが挟まれている。なお、防炎布24の形状は、矩形状に限らず適宜変更することができる。また、防炎布に施すコーティングは、シリコンコートに限らず、PETコート等の他の種類のコーティングであってもよい。
【0028】
上記構成の助手席用エアバッグ装置10が製造される際には、先ず、図4に示されるように、挿入口50を通してエアバッグ20内にインフレータ22が挿入される。次いで、インフレータ22のスタッドボルト40が、防炎布24の取付孔54及びエアバッグ20の取付孔42に差し込まれ、インフレータ22の軸線方向両端部にワイヤハーネスのコネクタが接続される。その後、エアバッグ20が所定の折り畳み方で折り畳まれ、エアバッグケース14内に収容される。このとき、インフレータ22のスタッドボルト40がエアバッグケース14の底壁部14Aの取付孔46に差し込まれ、スタッドボルト40にナット48が螺合される。その後、エアバッグケース14がリテーナを介してインストルメントパネル12に連結されると共にブラケットを介してインパネリインフォース等の強度部材に固定される。
【0029】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
上記構成の助手席用エアバッグ装置10では、エアバッグ20にインフレータ挿入用の挿入口50が形成されており、エアバッグ20内に設けられたインフレータ22は、エアバッグケース14との間にエアバッグ20における挿入口50側を挟んだ状態でエアバッグケース14に締結固定されている。このインフレータ22は、複数のガス噴出口36、38の一部が上記挿入口50と対向して配置されている。また、エアバッグ20内には、エアバッグ20の一部と共にインフレータ22とエアバッグケース14との間に挟まれた防炎布24が設けられている。この防炎布24は、上記複数のガス噴出口36、38の一部と挿入口50との間に介在しており、エアバッグ20の根元部20Aにおける挿入口50及びその周辺部を覆っている。
【0031】
このため、インフレータ22が作動して複数のガス噴出口36、38からガスG(図2参照)が噴出された際には、複数のガス噴出口36、38の一部から噴出されるガスGの圧力によって、防炎布24がエアバッグ20における挿入口50及びその周辺部に密着される(押し付けられる)。この際の反力は、エアバッグケース14の底壁部14Aによって支持される。これにより、挿入口50を良好に閉塞することができるので、挿入口50からのガス漏れを効果的に抑制することができる。
【0032】
しかも、上述の如く、ガス噴出口36、38から噴出されるガスGの圧力を利用して、防炎布24をエアバッグ20に密着させる構成である。このため、エアバッグ20へのインフレータ22の組付に際し、挿入口50を通してエアバッグ20内にインフレータ22を挿入した後で、防炎布24の他端24B側をエアバッグ20に縫製するなどの追加処理をしなくても、ガス漏れ抑制効果を良好に確保することができる。したがって、インフレータ22の組付作業性を良好にすることができる。
【0033】
また、本実施形態では、防炎布24の一端24A側が縫製部Sにおいてエアバッグ20に縫製され、防炎布24の他端24Bが自由端とされている。このため、エアバッグ20の挿入口50を通してエアバッグ20内にインフレータ22を挿入する際には、防炎布24の他端24B側を一端24A側の方へ捲ることにより、挿入口50を開放することができる。しかも、防炎布24の一端24A側がエアバッグ20に縫製されているため、インフレータ22をエアバッグケース14に締結固定する際等に、防炎布24がエアバッグ20に対して不用意に位置ずれすることを防止できる。これにより、インフレータ22の組付作業性をより一層良好にすることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、インフレータ22をエアバッグケース14に締結固定した一対のスタッドボルト40が、エアバッグ20の取付孔42及び防炎布24の取付孔24を貫通している。これにより、エアバッグ20及び防炎布24をエアバッグケース14及びインフレータ22に良好に係止することができるので、インフレータ22から噴出されるガスGの圧力などによって、防炎布24がエアバッグ20の挿入口50に対して不用意に位置ずれすることを防止又は効果的に抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、防炎布24の一端24A側が挿入口50の車両前方側でエアバッグ20に縫製されているため、エアバッグ20の膨張展開時に防炎布24がエアバッグ20に対して位置ずれすることを防止又は効果的に抑制することができる。つまり、トップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置10では、エアバッグ20において、図1に示される上方部位20U(挿入口50の車両前方側からインストルメントパネル12の上方を経由して助手席側へ至る部位)よりも、図1に示される下方部位20L(挿入口50の車両後方側からインストルメントパネル12の後方へ延びて助手席側へ至る部位)の方が強く伸張されることが多い。これは、一般に下方部位20Lの長さ寸法L2が上方部位20Uの長さ寸法L1よりも短く設定されるためである。この点、本実施形態では、防炎布24の一端24A側が、エアバッグ20における挿入口50よりも上方部位20Uの側に縫製されている。これにより、防炎布24がエアバッグ20の膨張展開時にエアバッグ20によって引っ張られることを抑制することができるので、防炎布24がエアバッグ20の挿入口50に対して不用意に位置ずれすることを防止又は効果的に抑制することができる。したがって、挿入口50からのガス漏れを良好に防止することができる。
【0036】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、防炎布24が挿入口50の車両前方側でエアバッグ20に縫製された構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、防炎布が挿入口の車両後方側でエアバッグに縫製された構成にしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、本発明がトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置10に対して適用された場合について説明したが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、本発明は、インストルメントパネルの上下方向中間部に配設されるミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置や、車両衝突時に乗員の膝を保護するニーエアバッグ装置などに対しても適用することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、インフレータ22(ガス発生装置)に設けられた一対のスタッドボルト40(締結具)がエアバッグ20及び防炎布24を貫通した構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、ガス発生装置をエアバッグケースに締結固定する締結具が、防炎布を貫通しない構成にしてもよい。この場合、防炎布は、単にエアバッグの一部と共にガス発生装置とエアバッグケースとの間に挟まれる構成になる。
【0039】
また、上記実施形態では、防炎布24の一端24A側がエアバッグ20に縫製され、防炎布24の他端24Bが自由端とされた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、防炎布が全くエアバッグに縫製されない構成にしてもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、ガス発生装置がインフレータ22のみによって構成された場合について説明したが、請求項1に係る発明はこれに限らず、ガス発生装置がリテーナを備えた構成にしてもよい。この場合、インフレータがリテーナに取り付けられると共に、リテーナに設けられたスタッドボルト等によりリテーナがエアバッグケースに固定される構成になる。
【0041】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 助手席用エアバッグ装置(エアバッグ装置)
12 インストルメントパネル
12A 頂壁部
14 エアバッグケース
14A 底壁部
20 エアバッグ
22 インフレータ(ガス発生装置)
24 防炎布
24A 一端
24B 他端
38 ガス噴出口
40 スタッドボルト(締結具)
50 挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグケースと、
袋状に形成されると共に、ガス発生装置用の挿入口が形成されたエアバッグと、
前記挿入口を通過可能に構成されて前記エアバッグ内に設けられ、前記エアバッグケースとの間に前記エアバッグにおける前記挿入口側を挟んだ状態で前記エアバッグケースに締結固定され、作動することにより複数のガス噴出口からガスを噴出すると共に、前記複数のガス噴出口の一部が前記挿入口と対向して配置されたガス発生装置と、
前記エアバッグにおける前記挿入口側と共に前記ガス発生装置と前記エアバッグケースとの間に挟まれた状態で前記エアバッグ内に設けられ、前記複数のガス噴出口の一部と前記挿入口との間に介在すると共に、前記エアバッグにおける前記挿入口及びその周辺部を覆った防炎布と、
を備えたエアバッグ装置。
【請求項2】
前記防炎布は、一端側が前記エアバッグに縫製され、他端が自由端とされている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガス発生装置を前記エアバッグケースに締結固定した締結具が、前記エアバッグ及び前記防炎布を貫通している請求項1又は請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグケースは、車両の助手席の前方でインストルメントパネルの頂壁部の裏面側に設けられ、前記エアバッグは、前記ガス発生装置が作動した際に、前記頂壁部に設けられたエアバッグドアを展開させつつ助手席側へ膨張展開すると共に、前記挿入口が前記エアバッグケースの底壁部と対向して配置され、前記防炎布の一端側は、前記挿入口の車両前方側で前記エアバッグに縫製されている請求項2に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82297(P2013−82297A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222877(P2011−222877)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】