説明

エストロゲンリガンドとしての四環式化合物

本発明は、構造(I):


[式中、R1、R2、R3、R4、Q、n、R8、R9、R10及びR11が明細書に定義されている。]
を有するエストロゲン受容体モジュレータ、又はその薬学的に許容される塩を提供する。更に本発明は、前記化合物の製造方法及び使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン剤として有用な四環式化合物、その化合物の製造方法、及びその化合物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の組織におけるエストロゲンの多面的効果は、十分に実証されてきた(Dey, M., Lyttle, C.R., Pickar, J. H. Maturitas (2000), 34(S2): S25-S33, Speroff, L., Ann. N. Y. Acad. Sci. (2000), 900, 26-36, Nozaki, M., Ernst Schering Res. Found. Workshop (2000), Suppl. 4, 115-125)。エストロゲン受容体(ER)は核ホルモンERファミリーの一員であり、そのコアクチベーター及びコリプレッサー(まとめてコレギュレーターと称する)を含む大多数のタンパク質との相互作用、並びにエストロゲン応答配列(ERE)によって転写を調節する。EREによる細胞の転写機構に影響を及ぼす能力に加え、ERは、ERのDNAとの直接相互作用に関係なく、転写過程に影響を及ぼすことも可能である。例えば、17β−エストラジオールがIL−6プロモーター活性を抑制可能であることが明らかにされた。この抑制では、ERに結合する17β−エストラジオールを必要とするが、機能的なDNA結合ドメインを有しているのかどうかには左右されない(Ray, A., Profontaine, K. E., Ray, P. J., J. Biol. Chem. (1994), 269: 12940)。リガンドが結合していないERが、特にERのABドメインを含むAF−1において、セリン残基のリン酸化反応後の転写過程に影響を及ぼす場合さえある。
【0003】
近年、17β−エストラジオールに関して高い親和性を有する第2のER(ERβ)が同定された。ERβの物理的な構造と最初に同定されたER(ERα)との比較において、ERβの長さは短いものの(530AA対595AA)、同一の機能ドメインを含んでいることが明らかとなった。ERβのABドメインは、ERαに対して少々切り取られており(148AA対180AA)、そして、驚くべきことではないが、2種のER間でAF−1活性化能力が異なっている(Mclnerney, E. M., Weis, K. E., Sun, J., Mosselman, S., Katzenellenbogen, B. S., Endocrinology (1998), 139(11): 4513-4522)。Cドメイン(DNA結合ドメイン)は、2種類のER(96%)間の顕著な相同性を示しており、更に、かかる2種類のERは、所定のEREに対して類似の親和性を持って結合することが期待されるであろう。しかしながら、2種類のERがEREのビトジェネリン(vitogenellin)、c−fos、c−jun、pS2、カテプシンD、及びアセチルコリントランスフェラーゼに結合することが示されたとはいえ、2種類のERは、同一の親和性を持って結合する必要があるわけではない(Hyder, S. M., Chiappetta, C., Stancel, G. M., Biochem. Pharmacol. (1999) 57: 597-601)。対照的に、2種類のERのEドメイン(リガンド結合ドメイン又はLBD)は、60%の相同性を共有しているにすぎない。しかしながら、2種類のERの構造分析により、リガンド接触領域における残基が極めて類似することが示され、2残基だけが異なっている(ERα421(Met)ERβ373(IIe);ERα384(Leu)ERβ336(Met))。更に、2種類のERの全体的な配列の差異により、サブタイプと、ER転写機構を有効にするか又は修正する種々のコレギュレータータンパク質との間で異なる相互作用をもたらす場合がある。実際、予備的な研究により、コレギュレーターSRC−3がERβよりERαとより強く相互作用することが示唆されている(Suen, C. S., Berrodin, T. J., Mastroeni, R., Cheskis, B. J., Lyttle, C. R., Frail, D., J. Biol. Chem. (1998), 273(42): 27645-27653)。
【0004】
2種類のERと種々のコレギュレータータンパク質との異なる相互作用の他に、2種類のERは、同一の広がりを持っていない組織分布も有している。両方のERが共発現する所定の組織内においてでさえ、所定の細胞型において、ERの一方の局在化が生じることもある。例えば、ヒトの卵巣において、ERαとERβの両方のRNA発現を検出可能である。免疫染色により、ERβが、小、中、そして大の卵胞(follicles)、膜(theca)及び黄体(corpora lutea)において顆粒膜細胞を含む多様な細胞型に存在し、一方、ERαが顆粒膜細胞の核においてだけでなく、膜又は黄体において弱く発現することが実証されている(Taylor, A. H., Al-Azzawi, F., J. Mol. Endocrinol. (2000), 24(1): 145-155)。子宮内膜において、免疫染色は、管腔上皮細胞と間質細胞の核におけるERα及びERβの両方を示すものの、驚くべきことに、ERβは子宮内膜の腺上皮から弱く現れるか、又は現れない(Taylor等)。前立腺、尿路上皮及び膀胱の筋層を含む殆どの雄の組織の上皮細胞、並びに睾丸のセルトリ細胞についても、ERβに関して免疫陽性である。重要なERβ免疫反応性は、海馬、すなわちERαだけに関して陽性に染色される組織を除いて脳の殆どの領域において検出された(同書)。
【0005】
エストロゲンは、循環系に対してプラスの作用を及ぼすことが示され、これは閉経後に観察される心血管疾患のリスクの増大を説明するのに役立つ場合がある。LDL ERのアップレギュレーションにより肝臓においてエストロゲンの作用により循環系にプラスとなることがあり(従って、LDLレベルを低下させる、推定上のER仲介応答)、一方、動脈壁に対する直接作用が役割を持つこともあり得る。血管損傷後(ネズミの動脈の表皮剥離)、内皮細胞におけるERβメッセージはERαのメッセージの40倍もアップレギュレートすることが明らかとなった(Makela, S., Savolainen, H., Aavik, E., Myllarniemi, M., Strauss, L., Taskinen, E., Gustafsson, J. A., Hayry, P. (1999), 96(12): 7077-7082)。更に、このような同一の応答は、ERβノックアウトマウスにおいても抑制されるものの、17β−エストラジオールは、ERαノックアウトマウスにおいて血管損傷応答を抑制することが可能であった(Lafrati, M. D., Karas, R, H., Aronovitz, M., Kim, S., Sullivan, Jr., T. R., Lubahn, D. B., O'Donnell, Jr., T. F., Korach, K. S., Mendelsohn, M. E., Nat. Med. (N. Y.) (1997), 3(5): 545-548; Karas, R. H., Hodgin, J. B., Kwoun, M., Krege, J. H., Aronovitz, M., Mackey, W., Gustafsson, J. A., Korach, K. S., Smithies, O., Mendelsohn, M. E., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (1999), 96(26): 15133-15136)。もし、その応答がまだ特定できないERにより抑制されないとすれば、損傷応答を、2種類のERの一方に対して選択的であるリガンドによって抑制することが可能であるだろう。
【0006】
一般的なエストロゲンがERと結合する場合、ERは、HSP90並びに他の分子シャペロンから分離し、そして別のERと二量体になる。このような活性化の機構を両方のERで共有するため、ERの両方が発現する組織でヘテロ二量化が生じる可能性がある。実際に、ERαとERβのヘテロ二量体は、DNAと、ERαホモ二量体に等しく、ERβホモ二量体より大きな親和性で結合する(Cowley, S. M., Hoare, S., Mosselman, S., Parker, M. G., J. Biol. Chem. (1997), 272(32): 19858-19862)。
【0007】
ERサブタイプのシグナリングの効果に関して、膨大な研究がこれまで行われてきたにもかかわらず、なすべきことが依然として残っているのは明らかである。これまで知られている古典的なエストロゲン作用薬による患者の治療は、患者に対して極めて価値があり且つ必要な場合もあるのに、そのダウンサイドリスクなしに行われていないことが知られている。従って、より多くの治療法の選択肢を患者集団に提供する新規なエストロゲン様物質に関して、当該技術における要求を殆ど満たしていない。サブタイプ選択的なエストロゲンは、まさにそうした代わりの選択肢を提供し、本発明において提供される。
【発明の開示】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、ERαとERβの両方に対して明確な親和性を有する化合物を提供する。更に本発明は、その化合物の製造方法、及びそのための使用法を提供する。ある実施形態において、化合物は、式I:
【化21】

[式中、Qが、構造II、III又はIV:
【化22】

を有し、
1、R4、R5、R6、R7、R7'、R8及びR11がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−OR20、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、NR2021、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
nが0又は1であり、
20及びR21がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−CF3、ベンジル、−CO2(C1〜C6アルキル)及び−CO(C1〜C6アルキル)からなる群から選択され、ただし、
a)R2又はR3の一方が−OR20であり、
b)R9又はR10の一方が−OR20であり、
c)R2が−OR20である場合、R1及びR3が独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
d)R3が−OR20である場合、R2及びR4が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
e)R9が−OR20である場合、R8及びR10が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
f)R10が−OR20である場合、R9及びR11が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、そして
g)Qが構造IVを有し、R7、R7'、R8、R9、R11がそれぞれHであり、nが0である場合、R10がOR20ではない。]
又は式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を有する。
【0009】
ある実施形態において、Qは構造IIを有する。かかる実施形態において、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であることもある。さらなるこのような実施形態において、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0010】
Qが構造IIを有し、そしてR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である実施形態において、R1、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。かかる実施形態において、nは0であることもある。かかる実施形態において、nは1であることもある。
【0011】
ある実施形態において、Qは構造IIIを有する。かかる実施形態において、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であることもある。さらなるこのような実施形態において、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0012】
Qが構造IIIを有し、そしてR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である実施形態において、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。かかる実施形態において、nは0であることもある。さらなるこのような実施形態において、nは1である。
【0013】
ある実施形態において、Qは構造IVを有する。かかる実施形態において、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であることもある。さらなるこのような実施形態において、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。さらなるこのような実施形態において、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0014】
Qが構造IVを有し、そしてR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である実施形態において、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。かかる実施形態において、nは0であることもある。さらなるこのような実施形態において、nは1である。
【0015】
更に本発明は、以下の構造:
【化23】

【化24】

を有する化合物又は各々の化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、骨粗鬆症を治療若しくは抑制する方法、又は骨の無機質脱落を抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性直腸炎又は結腸炎を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0018】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳ガン、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣ガン、メラノーマ、前立腺ガン、結腸ガン、グリオーム又はアスティオブラストミア(astioblastomia)を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、コレステロール、トリグリセリド、Lp(a)若しくはLDLレベルを低下させる方法、又は高コレステロール血症、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄若しくは血管痙攣を抑制若しくは治療する方法、又は血管損傷を抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0020】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、認知力の強化若しくは神経保護する方法、又は老年性認知症、アルツハイマー病、認識衰退、脳卒中、不安又は神経変性障害を治療若しくは抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、フリーラジカル誘導病状を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0022】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、膣若しくは外陰部萎縮、萎縮性膣炎、膣の乾燥、掻痒症、性交疼痛症、排尿困難、頻尿、尿失禁、又は尿路感染を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、血管運動症状を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0024】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、避妊する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0025】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、関節リウマチ、変形性関節症又は脊椎関節症を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0026】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、関節鏡視下又は外科的処置による続発性の関節障害を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0027】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、受胎能を処理又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0028】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物において、虚血、再かん流障害、喘息、胸膜炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、ブドウ膜炎、敗血症、出血性ショック又はII型糖尿病を治療又は抑制する方法であって、有効量の、本発明の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする方法を提供する。
【0029】
本発明によれば、更に、本発明の1以上の化合物及び1以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態において、医薬組成物は、1以上の5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、5−ブロモ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−12−オキサ−ジベンゾ[a,e]アズレン−11−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,8−ジヒドロキシ−5,5−ジメチル−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−10−カルボニトリル、10−ブロモ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、2,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−ベンゾニトリル、2,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル及び1以上の薬学的に許容される担体を含む。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、以下の工程:
a)式V:
【化25】

[式中、XがCl、Br又はIであり、Pが保護基であり、そして他の構成変数は上述した通りである。]
で表される化合物を、式VI:
【化26】

[式中、Mが金属であり、Lが配位子であり、P’がH又は保護基であり、n’が0〜5の整数であり、そして他の構成変数は上述した通りである。]
で表される化合物とカップリングさせて、式VII:
【化27】

で表される化合物を形成する工程、及び
b)基P及びP’を除去し、得られる脱保護化合物を環化して、式I:
【化28】

で表される化合物を形成する工程を含む、本発明の化合物の製造方法を提供する。
【0031】
ある実施形態において、PがSi(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、CO2ベンジル又はC1〜C6アルキルであり、各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルであり、そしてP’がH、Si(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル又はC1〜C6アルキルであり、ここで各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルである。
【0032】
ある実施形態において、PがCOC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル又はCO2ベンジルであり、P’がC1〜C6アルキルであり、そしてa)MがBであり、Lが(OH)又は(OC1〜C6アルキル)であり、n’が2であるか、又はb)MがSnであり、Lが(C1〜C6アルキル)であり、n’が3である。かかる実施形態において、工程b)におけるPが有機又は無機水酸化物を用いて除去され、工程b)におけるP’が三臭化ホウ素、ヨウ化水素酸、ピリジンヒドロクロリド又はピリジンヒドロブロミドを用いて除去されることもある。上述の実施形態において、環化は、P’の除去中に生じることもある。
【0033】
[発明の詳細な説明]
ある実施形態において、本発明は、式I:
【化29】

[式中、Qが、構造II、III又はIV:
【化30】

を有し、
1、R4、R5、R6、R7、R7'、R8及びR11がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−OR20、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、NR2021、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
nが0又は1であり、
20及びR21がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−CF3、ベンジル、−CO2(C1〜C6アルキル)及び−CO(C1〜C6アルキル)からなる群から選択され、ただし、
a)R2又はR3の一方が−OR20であり、
b)R9又はR10の一方が−OR20であり、
c)R2が−OR20である場合、R1及びR3が独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
d)R3が−OR20である場合、R2及びR4が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
e)R9が−OR20である場合、R8及びR10が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
f)R10が−OR20である場合、R9及びR11が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、そして
g)Qが構造IVを有し、R7、R7'、R8、R9、R11がそれぞれHであり、nが0である場合、R10がOR20ではない。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0034】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qは構造IIを有する。
【0035】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IIを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。式Iで表される化合物の他の実施形態において、Qが構造IIを有し、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。更に他の実施形態において、Qが構造IIを有し、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。更に他の実施形態において、Qが構造IIを有し、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0036】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IIを有し、且つR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R1、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、そしてR11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。
【0037】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IIを有し、且つR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R1、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、nが0である。
【0038】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IIを有し、且つR3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R1、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、nが1である。
【0039】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qは構造IIIを有する。ある実施形態において、Qが構造IIIを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。ある実施形態において、Qが構造IIIを有し、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。更に他の実施形態において、Qが構造IIIを有し、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。他の実施形態において、Qが構造IIIを有し、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0040】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IIIを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、そしてR11がCN、ハロゲン、OCH3、メチル(Me)、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。ある実施形態において、Qが構造IIIを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、そしてnが0である。ある実施形態において、Qが構造IIIを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、そしてnが1である。
【0041】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qは構造IVを有する。ある実施形態において、Qが構造IVを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。ある実施形態において、Qが構造IVを有し、R3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。更に他の実施形態において、Qが構造IVを有し、R2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である。他の実施形態において、Qが構造IVを有し、R2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である。
【0042】
式Iで表される化合物のある実施形態において、Qが構造IVを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、そしてR11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルである。ある実施形態において、Qが構造IVを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、そしてnが0である。ある実施形態において、Qが構造IVを有し、R3及びR9がそれぞれ独立して、OR20であり、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R11がCN、ハロゲン、OCH3、CH2CN、NO2又はC1〜C6アルキルであり、そしてnが1である。
【0043】
ある実施形態において、本発明は、以下の構造:
【化31】

【化32】

【化33】

を有する化合物又は各々の化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【0044】
本発明の化合物は、エストロゲン剤を含み、エストロゲン剤に関し、又はエストロゲン剤により影響を及ぼされる、哺乳動物における種々の病気及び疾患の症状の治療又は抑制に有用である。かかる病気及び疾患の非限定例としては、骨粗鬆症、骨の無機質脱落、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性直腸炎、結腸炎、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳ガン、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣ガン、メラノーマ、前立腺ガン、結腸ガン、グリオーム、astioblastomia、高コレステロール血症、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄、血管痙攣及び血管損傷の治療又は抑制である。
【0045】
更に本発明の化合物は、認知力を強化又は神経保護させ、哺乳動物における老年性認知症、アルツハイマー病、認識衰退、脳卒中、不安又は神経変性障害を治療又は抑制し、哺乳動物において、フリーラジカル誘導病状を治療又は抑制し、哺乳動物において、膣若しくは外陰部萎縮、萎縮性膣炎、膣の乾燥、掻痒症、性交疼痛症、排尿困難、頻尿、尿失禁及び尿路感染を治療又は抑制し、そして哺乳動物において、血管運動症状を治療又は抑制する場合での使用法を見出した。
【0046】
更に本発明の化合物は、避妊し、哺乳動物において、関節リウマチ、変形性関節症又は脊椎関節症を治療又は抑制し、哺乳動物において、関節鏡視下又は外科的処置による続発性の関節障害を治療又は抑制し、哺乳動物において、受胎能を処理又は抑制し、哺乳動物において、虚血、再かん流障害、喘息、胸膜炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、ブドウ膜炎、敗血症、出血性ショック又はII型糖尿病を治療又は抑制し、そして哺乳動物において、コレステロール、トリグリセリド、Lp(a)又はLDLレベルを低下させる場合に有用である。
【0047】
更に本発明は、本発明の1以上の化合物及び1以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態において、医薬組成物は、1以上の5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、5−ブロモ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−12−オキサ−ジベンゾ[a,e]アズレン−11−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、3,8−ジヒドロキシ−5,5−ジメチル−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−10−カルボニトリル、10−ブロモ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、2,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−ベンゾニトリル、2,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル及び1以上の薬学的に許容される担体を含む。
【0048】
本発明の化合物は、式V:
【化34】

[式中、XがCl、Br又はIであり、Pが保護基である。]
で表される化合物を、式VI:
【化35】

[式中、Mが金属であり、Lが配位子であり、n’が0〜5の整数であり、P’がH又は保護基である。]
で表される化合物とカップリングさせて、式VII:
【化36】

で表される化合物を形成し、そして
b)基P及びP’を除去し、得られる脱保護化合物を環化して、式I:
【化37】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Q、n、R7、R7'、R8、R9、R10、R11は上記で定義されるとおりである。]
で表される化合物を形成することによって調製され得る。
【0049】
上述した方法のある実施形態において、PがSi(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、CO2ベンジル、又はC1〜C6アルキルであり、各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルであり、そしてP’がH、Si(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、又はC1〜C6アルキルであり、ここで、各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルである。上述した方法の他の実施形態において、PがCOC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル又はCO2ベンジルであり、P’がC1〜C6アルキルであり、そしてa)MがBであり、Lが(OH)又は(OC1〜C6アルキル)であり、n’が2であるか、又はb)MがSnであり、Lが(C1〜C6アルキル)であり、n’が3である。かかる実施形態において、工程b)におけるPが有機又は無機水酸化物を用いて除去され、工程b)におけるP’が三臭化ホウ素、ヨウ化水素酸、ピリジンヒドロクロリド又はピリジンヒドロブロミドを用いて除去されることもある。上述の実施形態において、環化は、P’の除去中に生じることもある。
【0050】
本発明の化合物は、その化合物の薬学的に許容される塩を含むが、ここで、本発明の化合物が塩基部分を含む場合は、該薬学的に許容される塩は、有機及び無機酸から形成することが可能である:例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、及び同様に知られている許容される酸。本発明の化合物が酸性部分を含む場合、塩は、有機及び無機塩基から形成されても良い:例えば、アルカリ金属塩(例:ナトリウム、リチウム又はカリウム)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、1〜6個の炭素原子を含むアルキルアンモニウム塩又は各アルキル基に1〜6個の炭素原子を含むジアルキルアンモニウム塩、及び各アルキル基に1〜6個の炭素原子を含むトリアルキルアンモニウム塩。
【0051】
本明細書で用いられるアルキルなる用語は、直鎖、分岐及び環式炭化水素を含む炭化水素基を意味する目的で使用され、非限定例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。本明細書において、アルキルなる用語は、非環式炭化水素基及び環式炭化水素基の両方を包含する意図で使用されると理解すべきである。本発明による化合物のある実施形態において、アルキル基は非環式である。他の実施形態において、アルキル基は環式であり、そして他の実施形態において、アルキル基は、環式と非環式の両方である。
【0052】
本発明の化合物及び方法におけるアルキル基は、1個のハロゲンから最大で過ハロゲン化で任意に置換されていても良い。ある実施形態において、ペルフルオロ基が好ましい。ハロゲンで任意に置換されたアルキル基の例は、CF3、CH2CF3、CCl3、CH2CH2CF3CH3、CH(CF32及び(CH26−CF2CCl3である。
【0053】
本発明の化合物の置換基は、本明細書の種々の位置で群又は範囲で開示している。本発明は、かかる群及び範囲の構成をそれぞれ、及び各々のサブコンビネーションで含むことを特に意図している。例えば、“C1〜C6アルキル”なる用語は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル等を個々に開示する意図で用いられている。本発明で用いられるハロゲンなる用語は、F、Cl、Br及びIを含む、第VII族元素の通常の意味を有している。
【0054】
本発明の方法における化合物が1個以上の非対称原子含むことにより、光学異性体(エナンチオマー)及びジアステレオマーを生じさせ得る場合、本発明の方法は、全てのかかる光学異性体(エナンチオマー)及びジアステレオマー(幾何異性体);並びにラセミ体で且つ分解され、鏡像異性的に純粋なR及びS立体異性体;並びにR及びS立体異性体の他の混合物又はこれらの薬学的に許容される塩を含む。光学異性体を、当業者等に知られている標準的な手法によって純粋な形で得ることができ、限定するものではないが、例えば、ジアステレオマー塩の形成、速度論的分割、及び不斉合成が挙げられる。本発明は、全ての考え得る位置異性体、及びその混合物を包含すると理解され、これを、当業者等に知られている標準的な分離処手法によって純粋な形で得ることができ、限定するものではないが、例えば、カラムクロマトグラフィ、薄膜クロマトグラフィ及び高速液体クロマトグラフィが挙げられる。
【0055】
本発明に含まれる化合物又は物質を供給することに関し、本発明により使用される“供給”なる用語は、かかる化合物又は物質を直接投与すること、或いは有効量の化合物又は物質を体内で形成するであろうプロドラッグ、誘導体又は類似体を投与することを意味する。
【0056】
以下に記載される標準的な薬理試験の手法から明らかとなるように、本発明の化合物は、エストロゲン欠乏又は過剰によって少なくとも部分的に仲介されるか、或いはエストロゲン剤の使用により治療又は抑制されても良い症状、疾患又は病状の治療又は抑制において有用なERモジュレーターである。本発明の化合物は、産生される内因性エストロゲンの水準が大きく減少している近閉経、閉経又は閉経後の患者の治療において特に有用である。閉経は、最後の自然月経期間として定義されるのが一般的であり、そして血流中おける循環エストロゲンを実質的に低減させる卵巣機能の停止という特徴を有している。本明細書で用いられるように、閉経は、外科的に又は化学的に生じ得るか、或いは卵巣機能の早期縮小又は停止をもたらす病状により生じるエストロゲン産生の減少状態も含む。
【0057】
従って、本発明の化合物は、骨粗鬆症の治療又は抑制、及び新しい骨組織の個々の形成と古い組織の吸収におけるバランスの悪さから生じ、これにより骨の純損失をもたらすこともある骨の無機質脱落の抑制において有用である。かかる骨の減少は、所定の範囲の個体、特に閉経後の女性、両側卵巣摘出を受けた女性、長期間のコルチステロイド療法を受けている若しくは受けた女性、性器異常発育を経験している女性、及びクッシング症候群を経験している女性にもたらされる。歯及び口腔の骨を含む骨置換への特定の要求について、骨折、欠陥骨格を有する個体、及び骨関連の手術及び/又は人工器官の移植を受けている個体において、上記の化合物を用いて対処することも可能である。上述したような課題に加えて、本発明の化合物を、変形性関節症、低カルシウム血症、高カルシウム血症、パジェット病、骨軟化症、骨石灰脱失症、多発性骨髄腫及び骨組織に対して悪影響を与える他の形態のガンの治療又は抑制において用いることが可能である。
【0058】
本発明の化合物は、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳ガン、子宮内膜症、子宮内膜ガン、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣ガン、メラノーマ、前立腺ガン、結腸ガン、及びグリオーム又はastioblastomia等のCNSガンを含む良性又は悪性の異常組織の成長を治療又は抑制する場合についても有用である。
【0059】
本発明の化合物は、心臓保護作用を示し、コレステロール、トリグリセリド、Lp(a)、及びLDLレベルを低下させる場合に有用であり;高コレステロール血症、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄及び血管痙攣を抑制若しくは治療し、そして免疫介在性血管損傷を誘導する細胞イベントによる血管損傷を抑制する場合に有用である。このような心臓血管保護特性は、閉経後の患者をエストロゲンで治療して骨粗鬆症を抑制する場合、及びエストロゲン療法を必要としている男性に対して非常に重要である。
【0060】
本発明の化合物は、抗酸化物質でもあるので、フリーラジカル誘導病状を治療又は抑制するのに有用である。抗酸化物質療法を必要と保証する特定の状況は、中枢神経系障害、アルツハイマー病、骨疾患、老化、炎症性疾患、末梢血管疾患、関節リウマチ、自己免疫疾患、呼吸困難、肺気腫、再かん流障害の予防、ウィルス性肝炎、慢性活動性肝炎、結核、乾癬、全身性紅斑性狼瘡、成人呼吸窮迫症候群、中枢神経系の外傷及び脳卒中が原因である。
【0061】
本発明の化合物は、認知力の強化において、及び老年性認知症、アルツハイマー病、認識衰退、神経変性障害の治療又は抑制において、神経保護作用又は認知力の強化の提供において有用でもある。
【0062】
本発明の化合物は、炎症性腸疾患、潰瘍性直腸炎、クローン病、結腸炎、及び更年期関連症状、例えば、顔面潮紅を含む血管運動症状、膣若しくは外陰部萎縮、萎縮性膣炎、膣の乾燥、掻痒症、性交疼痛症、排尿困難、頻尿、尿失禁、尿路感染、血管運動症状(例えば顔面潮紅、筋肉痛、関節痛、不眠症、被刺激性等)、並びに男性型禿頭症、皮膚萎縮、アクネ、II型糖尿病、不正子宮出血、及び不妊症を治療又は抑制するのに有用でもある。
【0063】
本発明の化合物は、無月経が有利である病状、例えば白血病、子宮内膜除去、慢性腎疾患若しくは慢性肝疾患又は凝固病若しくは凝固障害に有用である。
【0064】
本発明の化合物は、特にプロゲスチンと結合された場合に避妊薬として使用可能である。
【0065】
本発明の医薬組成物との関連で有効成分なる用語は、薬学的な利益を提供しないとして一般に認識されるであろう非活性成分と対照的に、主要な薬学的利益を提供する医薬組成物の成分を意味するように意図される。医薬組成物なる用語は、少なくとも1の有効成分、及び少なくとも1の有効成分ではない成分(非限定例、フィラー、色素又は持続放出に用いられる機構)を含む組成物を意味するよう意図され、これにより、組成物は、哺乳動物(非限定例、人間)において特定の有効な成果のために使用にすることができる。
【0066】
特定の病状又は障害の治療又は抑制に対して投与する場合、有効な投薬量は、利用される特定の化合物、投与の方式、症状、及びその重症性、治療される症状の重症性、並びに治療される個体に関連する種々の物理的要因に応じて変更可能である。本発明の化合物は、約0.1mg/日〜約1000mg/日の経口量で有効に投与され得る。単回投与又は2回以上の分割投与で、約10mg/日〜約600mg/日の投与が好ましく、更に好ましくは約50mg/日〜約600mg/日であろう。計画された1日の投与量は、投与経路により変更されるであろう。
【0067】
本発明の有効化合物を受け手の血流に対して導くのに有用な任意の手法、例えば経口で、移植を介して、非経口で(静脈注射、腹腔内投与及び皮下注射を含む)、直腸内に、鼻腔内に、経膣的に、及び経皮的にてかかる投与量を投与しても良い。
【0068】
本発明の有効化合物を含む経口製剤は、従来から用いられている任意の経口剤形、例えばタブレット、カプセル、口腔形、トローチ、ロゼンジ(lozenges)及び経口液体、懸濁液又は溶液を含んでいても良い。カプセルは、活性化合物と、不活性フィラー及び/又は希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末状セルロース、例えば結晶性及び微結晶性セルロース、小麦粉、ゼラチン、ガム等との混合物を含んでいても良い。有用なタブレット製剤は、一般的な圧縮、湿式造粒又は乾式造粒法によって作製されても良く、そして薬学的に許容される希釈剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、表面変性剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤又は安定剤(これを限定するものではないが、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンゴム、クエン酸ナトリウム、錯体シリケート、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプン及び粉砂糖)を利用してもよい。好ましい表面変性剤は、非イオン性及びアニオン性の表面変性剤が含まれる。表面変性剤の代表例は、これを限定するものではないが、ポロキサマー(poloxamer)188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアール(cetostearl)アルコール、セトマクロゴール乳化ワックス(cetomacrogol emulsifying wax)、ソルビタンエステル、コロイド状の二酸化ケイ素、ホスフェート、ナトリウムドデシルスルフェート、マグネシウムアルミニウムシリケート、及びトリエタノールアミンが含まれる。本発明における経口製剤は、標準的な遅延又は持続放出製剤を利用して、活性化合物の吸収性を変更することが可能である。経口製剤は、水又は果汁において投与用有効成分から構成されていても良く、必要により適当な可溶化剤又は乳化剤を含んでいても良い。
【0069】
化合物をエアロゾルの剤形で直接気道に投与するのが望ましい場合もある。
【0070】
本発明の化合物を、非経口的に又は腹腔内に投与することも可能である。遊離塩基又は薬学的に許容される塩としての活性化合物の溶液又は懸濁液を、ヒドロキシ−プロピルセルロース等の界面活性剤と適当に混合された水中において調製することが可能である。分散液をグリセロール、液体のポリエチレングリコール及び油中におけるこれらの混合物において調製することも可能である。保存及び使用の通常の条件下、かかる製剤は、微生物の成長を抑制するための防腐剤を含んでいる。
【0071】
注入可能な使用に好適な医薬剤形は、注入可能な無菌溶液又は分散液の即時調製のための無菌の水溶液又は分散液及び無菌粉末を含む。全ての場合において、剤形は、無菌である必要があり且つ簡易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動性である必要がある。製造及び保存条件下で安定である必要があり且つバクテリア及び菌類等の微生物の汚染作用に対して腐敗しないように保存する必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例:グリセロール、プロピレングリコール及び液体のポリエチレングリコール)、これらの好適な混合物及び植物油を含む溶剤又は分散媒体であっても良い。
【0072】
このような開示目的において、経皮投与は、体の表面並びに上皮組織及び粘膜組織を含む身体上の通路の内層を通過する全ての投与を含むと理解される。かかる投与は、ローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液、及び座薬(直腸及び膣)における本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩を用いて行われても良い。
【0073】
経皮投与は、活性化合物、及び該活性化合物に対して不活性であり、皮膚に対して無毒であり、そして皮膚を介して血流中に体内吸収用の薬剤の運搬を可能にする担体を含む経皮パッチを用いて達成することができる。担体は、クリーム及び軟膏、ペースト、ゲル、並びに閉塞手段等の多くの形態を取ることが可能である。クリーム及び軟膏は、水中油型又は油中水型の粘稠液又は半固体エマルジョンであっても良い。有効成分を含む石油又は親水性石油に分散される吸収性粉末より構成されるペーストも適当である。種々の閉鎖手段を使用して、有効成分を血流中に放出することが可能であり、例えば、担体を伴う有効成分若しくは担体を伴わないい有効成分を含む容器を覆う半透膜、又は有効成分を含むマトリックスが挙げられる。他の閉鎖手段は文献に知られている。
【0074】
座薬製剤は、カカオバター(ワックスを添加して、又はワックスを添加せず座薬の融点を変更する)及びグリセリンを含む一般的な材料から作製されても良い。水溶性の座薬基体、例えば種々の分子量のポリエチレングリコールを用いることも可能である。
【0075】
明確にするために別個の実施形態で記載されている本発明の所定の特徴を、単一の実施形態での組み合わせで提供可能でもあることは認識される。逆に言えば、明確にするために個々の実施形態で記載されている本発明の種々の特徴を、別個に又は好適なサブコンビネーションで提供することも可能である。
【0076】
本発明の明細書に記載されている化合物、組成物及び方法のある実施形態において、化合物、組成物及び方法は、3,8−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリルを除外する。
【0077】
本発明を、特定の実施例に基づき更に詳細に説明する。以下の実施例は、説明目的のために提供されているものであり、いかなる手法で本発明を限定する意図で用いられているものではない。当業者等は、本質的に同一の結果を得るために変更又は修正され得る種々の重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0078】
[実施例の化合物の合成]
以下の実施例に記載の化合物の合成を、以下のスキーム1〜9に記載した。本明細書に記載の化学的な製造法は、当該技術で知られている任意の好適な方法によりモニターすることが可能であった。例えば、生成物の形成は、核磁気共鳴分光法(例、1H又は13C)、赤外分光法、分光光度法(例、UV−可視)、及び質量分光法等の分光光度手段、或いは高速液体クロマトグラフィ(HPCL)又は薄膜クロマトグラフィ等のクロマトグラフィによりモニター可能であった。
【0079】
【化38】

【0080】
【化39】

【0081】
【化40】

【0082】
【化41】

【0083】
【化42】

【0084】
本発明の代表的な調製例を、以下に記載する。化合物の命名は、構造をChemDraw(登録商標)5又はChemDraw(登録商標)Ultraに入力し、そして構造から名称への変換ツールにより名称を生成して作成した。
【0085】
[実施例1、2及び3の調製](スキーム1より)
2−ブロモ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(3)
6−メトキシ−1−テトラロン1(100g、0.567モル)をエチルエーテル(2L(リットル))に溶解させ、そして1時間でBr2(30ml、0.59モル)を滴下し、処理した。溶液を更に2時間撹拌し、その後、10%のNa2SO3溶液、NaHCO3及びブライン(brine)で洗浄した。この溶液を一晩放置し、次の日、30gの結晶をろ別した。残りの溶液を濃縮して、更に98gの生成物を得た。所望の生成物を集めた収量は、128g(88%)であった。材料を“そのまま(as is)”次の反応に使用した。
【0086】
酢酸2−ブロモ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル(5)
3(80g、0.325モル)をTHF(200mL)に溶解した溶液を−78℃に冷却し、0.65リットルの、THFにおける0.53モルのLiHMDSをゆっくり添加して処理した。反応物を−78℃で更に15分間撹拌し、THF(200mL)中における無水酢酸(100g、0.98モル)を迅速に添加して処理した。反応物を0℃で30分間撹拌し、反応混合物をエチルエーテルで希釈し、そしてHCl(1N)、飽和NaHCO3、水及びブラインで洗浄した。MgSO4で乾燥した後、反応物をろ過し、濃縮して、83gの、放置した時に最終的に固化される暗色油を得た。融点:38〜42℃;
【化43】

【0087】
2−(2,4−ジメトキシ−フェニル)−6−メトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(7)
化合物5(4.0g、0.014モル)及び2,4−ジメトキシベンゼンボロン酸(3.0g、0.016モル)の溶液、KF(4.0g、0.069モル)及びPd(PPh34(0.75g、0.0007モル)を、ジオキサン(100mL)中において還流下で一晩加熱した。粗反応生成物(室温まで冷却後)を、50%NaOH(30mL、水溶液)溶液で処理し、室温条件下、TCLにより酢酸エノールの加水分解が終了ことを示すまで撹拌した。塩基性溶液を2NのHClで中和し、減圧下にジオキサンを除去した。これにより得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、NaHCO3、ブラインで洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。ろ過し、濃縮し、シリカゲルでクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン−勾配)して、白色固体として7を得た(2.9g、71%)。融点:116〜118℃。
【化44】

【0088】
5,6−ジヒドロ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−3,9−ジオール(実施例1)
Pyr−HCl中における化合物7(1.5g、0.0048モル)を200℃で1時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、EtOAc及び2NのHCl間に分配した。EtOAc層をNaHCO3、ブラインで洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。溶液をろ過し、濃縮し、そしてシリカゲルでクロマトグラフィ処理(EtOAc/ヘキサン;3:7〜6:4)した。生成物(実施例1)を、約12%の完全酸化物質(実施例2)で汚染した:融点=219〜220℃;MS m/z253(M+H)+
【0089】
ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−3,9−ジオール(実施例2)
実施例1(0.22g、0.00087モル(純度88%の物質に対して))を、DDQ(0.24g、0.001モル)で処理し、そしてジオキサン(20mL)中で30分間還流加熱した。反応混合物をシリカゲルで濃縮し、クロマトグラフィ処理して(EtOAc/ヘキサン;3:7)、実施例2(0.1g、46%)を得た。融点:250〜260℃。
【化45】

【0090】
5−ブロモ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−3,9−ジオール(実施例3)
実施例2(0.25g、1.0ミリモル)及びピリジン(0.79g、10ミリモル)を塩化メチレン(10ml)に溶解した溶液を、無水酢酸(0.50g、5.0ミリモル)で処理した。2時間後、反応物を、2NのHClで洗浄し、乾燥し、そして濃縮して、ビス−アセチル化中間体を白色固体として得た(0.28g、85%)。ビス−アセテート(0.28g、0.84ミリモル)を塩化メチレン(10ml)に溶解した溶液を、Br2(0.15g、0.92ミリモル)で処理した。1時間後、反応物を10%亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥し、そして濃縮した。粗生成物をTHF(10ml)/MeOH(2ml)に溶解させ、2NのNaOH(1ml)を添加した。1時間後、反応物を2NのHClに注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を乾燥し、そして濃縮して、固体を得て、これをCH2Cl2と一緒に粉末にし、その後、ろ過して、実施例3を固体として得た(0.13g、47%)。融点:197〜200℃。
【化46】

【0091】
[実施例4及び5の調製](スキーム1及び2より)
6−ブロモ−2−メトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−ベンゾシクロヘプテン−5−オン(4)
2−メトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−ベンゾシクロヘプテン−5−オン2(0.5g、2.62ミリモル)を、酢酸エチル及びクロロホルムの1:1混合物(10mL)に取り込み、その後、CuBr2(1.17g、5.26ミリモル)を添加し、そして反応物を75℃で1時間加熱した。反応物をろ過し、そして濃縮した。これにより得られた材料を、Et2Oに取り込み、水(2回)、飽和NaHCO3(2回)及びブライン(1回)で洗浄した。エーテル層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、そして濃縮して、0.139g(98.5%)の生成物4を粘稠液として得た。
【化47】

【0092】
酢酸6−ブロモ−2−メトキシ−8,9−ジヒドロ−7H−ベンゾシクロヘプテン−5−イルエステル(6)
LiHMDS(9.98mLの、THF中における1M溶液、9.98ミリモル)を、THF(10mL)に取り込み、−78℃に冷却した。その後、THF(10mL)中における6−ブロモ−2−メトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−ベンゾシクロヘプテン−5−オン4(2.44g、9.07ミリモル)を滴下し、20分間撹拌した。THF(2mL)中におけるAc2Oを添加し、0℃で1時間撹拌した。反応物をエーテルで希釈し、その後、1NのHCl(2回)、希NaHCO3及びブラインで洗浄し、そしてMgSO4で乾燥し、ろ過し、そして濃縮して、3.0gの生成物6を黄色の粘稠液として得た。
【化48】

【0093】
2,5−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル(14)
窒素下に酢酸2−ブロモ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル5(5.6g、19ミリモル)及び2,5ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル13(7.0g、21ミリモル)をジオキサンに溶解した溶液に対して、臭化銅(0.15g、1.1ミリモル)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.74g、1.1ミリモル)を添加し、そしてこの混合物を4時間還流した。その後、反応物を冷却し、そして2NのNaOH及びメタノールを添加した。反応物を約40℃に暖め、数時間撹拌した。反応物を再び冷却し、その後、2NのHClでpH2に酸性化した。溶剤を減圧下に除去し、そして残留物に酢酸エチルを添加した。この混合物を飽和炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、そして、酢酸エチル/ヘキサン(1:9〜3:7)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィ処理して、生成物を黄褐色の固体として溶出した(1.2g)。
【化49】

【0094】
2,5−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−5−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−6−イル)ベンゾニトリル(15)
酢酸6−ブロモ−2−メトキシ−8,9−ジヒドロ−7H−ベンゾシクロヘプテン−5−イルエステル6(1.0g、3.21ミリモル)を、CuI(0.061g、0.321ミリモル)、Pd(PPh34(0.296g、0.257ミリモル)及び必要量の1/3の2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(合計1.15gに対して〜0.383g、合計3.35ミリモル)と一緒にジオキサン(15mL)に取り込んだ。残りの2/3の2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(0.767g)をジオキサン(10mL)に溶解し、そして滴下漏斗に導入した。反応物を還流下で30分間加熱し、その後、5mLのスタンナン/ジオキサン混合物を添加し、更に30分間還流した。したがって、残りの5mLのスタンナン/ジオキサン混合物を添加し、反応物を一晩還流を続けた。TCLにより、出発材料が依然として存在していることが示された。その後、更にCuI(0.03g)及びPd(PPh34(0.074g)を添加し、更に3時間還流した。アセテートを加水分解するために、同体積の2NのNaOHを、THF及びMeOHと一緒に添加し、反応物を50℃で1時間加熱した。2NのHClを添加して、pH1を得た。反応混合物を濃縮し、これにより得られた材料をEtOAcに取り込み、飽和NaHCO3(2回)、ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、Florisil(登録商標)で濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィした(EtOAC/ヘキサン;1:9〜1:7)。生成物を、0.306gの、黄色固体の生成物として単離し、そしてこの材料の0.130gを、PrepHPLC(Luna(登録商標)C18(Phenomenex, Torrance, California);1:1AcCN/H2O〜95:5AcCN/H2O)により更に精製した。
【化50】

【0095】
3,8−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−カルボニトリル(実施例4)
2,5−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル14(0.5g、1.48ミリモル)をジクロロメタンに溶解した溶液に対して、1.0Mの三臭化ホウ素(10mL、10ミリモル)を添加し、これを48時間撹拌した。反応物を2NのHClでクエンチングし、減圧下に溶剤を除去し、そして残留物を酢酸エチルと2NのHClの間に分配した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濃縮した。残留物を、メタノール/ジクロロメタン(2:98〜3:97)を用い、Biotage(登録商標)フラッシュ精製系(Uppsala, Sweden)でクロマトグラフィした。生成物画分を集め、濃縮し、これにより黄色固体の沈殿を得た(0.16g)。融点:355〜358℃。
【化51】

【0096】
3,9−ジヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−12−オキサ−ジベンゾ[A,E]アズレン−11−カルボニトリル(実施例5)
2,5−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−5−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾシクロヘプテン−6−イル)−ベンゾニトリル15(0.122g、0.347ミリモル)を、ピリジンヒドロクロリドと一緒に丸底フラスコに導入し、200℃で1時間加熱した。室温に冷却後、固体をEtOAc/2NのHCl混合物に取り込んだ。層を分離し、EtOAc層を2NのHCl(2回)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。生成物を、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン;1:3〜EtOAc/ヘキサン;1:2)によって精製して、0.048gの、依然として不純物を含んでいた生成物を得た。更にこの材料を、HPLC(5:95のACN/H2O〜95:5のACN/H2O)によって精製して、0.0127gの純粋な生成物を得た。
【化52】

【0097】
スタンナン13の調製(スキーム3より)
3−ブロモ−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル(8)
5−メトキシサリチル酸メチルエステル(20mL、0.13モル)をクロロホルムに溶解した溶液に対して、臭素を15分間で滴下した。この混合物を室温で一晩撹拌した。溶剤を減圧下に除去して、8を黄色固体として得た(35g)。生成物を更に精製することなく次の工程で使用した。
【化53】

【0098】
3−ブロモ−2,5−ジメトキシ安息香酸メチルエステル(9)
3−ブロモ−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−安息香酸メチルエステル8(〜35g、0.13モル)をアセトンに溶解した溶液に対して、ヨウ化メチル(22.1g、0.156モル)及び炭酸カリウム(36g、0.26モル)を添加した。この混合物を還流下に4時間加熱し、その後、室温条件下で一晩撹拌した。反応物を水(500mL)に注ぎ、エーテル中で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濃縮して、9を固体生成物として得た(31.6g)。
【化54】

【0099】
3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−安息香酸(10)
3−ブロモ−2,5−ジメトキシ安息香酸メチルエステル9(31.6g、115ミリモル)をTHF−メタノールに溶解した溶液に対して、50%のNaOH(10mL)を添加し、この混合物を還流下で4時間加熱し、その後、反応物を室温に冷却して、一晩撹拌した。溶剤を減圧下に除去し、2NのHClをpH1になるまで添加して、そして混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、10を白色固体として提供した(27.8g)。
【化55】

【0100】
3−ブロモ−2,5−ジメトキシベンズアミド(11)
3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−安息香酸10(27.7g、0.106モル)を塩化チオニル(155mL、2.12モル)に溶解させ、この溶液を少量のDMF(0.25mL)に添加した。この混合物を還流下で2時間加熱し、その後、室温条件下で一晩撹拌した。塩化チオニルを減圧下に除去し、THFと交換した。その後、トリエチルアミン(15mL、0.107モル)を添加し、反応物を氷浴中で冷却した。アンモニアを混合物中で約8分間泡立てた。冷却浴を取り除き、反応物を室温条件下で一晩撹拌した。溶剤を減圧下に除去し、残留物を酢酸エチルと2NのHClの間に分配した。有機層を2NのHClで1回、その後、飽和炭酸水素ナトリウムで、最後にブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、粗生成物11を得た(27g)。
【化56】

【0101】
3−ブロモ−2,5−ジメトキシベンゾニトリル(12)
3−ブロモ−2,5−ジメトキシベンズアミド11(26.7g、0.103モル)をTHFに溶解した溶液に対して、オキシ塩化リン(14mL、0.15モル)を添加し、そしてこの混合物を還流下に一晩加熱した。溶剤を減圧下に除去し、残留物を酢酸エチルと水の間に分配した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濃縮した。残留物をメタノールと一緒に粉末にし、オフホワイトの生成物を得た(19.6g)。
【化57】

【0102】
2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(13)
3−ブロモ−2,5−ジメトキシベンゾニトリル12(12.3g、51ミリモル)をジオキサンに溶解した溶液に対して、ヘキサメチルジチン(20g、61ミリモル)を添加し、この混合物を窒素でパージ処理した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3g、2.6ミリモル)を添加し、反応物を還流下に6時間加熱し、その後、室温に冷却して、一晩撹拌した。溶剤を減圧下に除去し、残留物を、酢酸エチル/ヘキサン(3:97)を用いてシリカゲルにおいてクロマトグラフィ処理し、13を白色固体として溶出した(11.9g)。融点:74〜76℃。
【化58】

【0103】
[実施例6及び7の調製](スキーム4より)
3−ブロモ−2,6−ジメトキシ−ベンゾニトリル(16)
2,6−ジメトキシベンゾニトリル(5g、31ミリモル)をジクロロメタンに溶解した溶液に対して、ジクロロメタン中における臭素を1時間で滴下した。反応物を室温条件下で一晩撹拌した。溶剤を減圧下に除去して、生成物16を白色固体として得た(8.0g)。融点:113〜115℃。この材料を更に精製することなく使用した。
【化59】

【0104】
2,6−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(17)
窒素下に3−ブロモ−2,6−ジメトキシ−ベンゾニトリル16(5.8g、24ミリモル)をジオキサンに溶解した溶液に対して、ヘキサメチルジチン(10.0g、30.5ミリモル)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.39g、1.2ミリモル)を添加し、そしてこの混合物を24時間還流した。反応物を濃縮し、そして酢酸エチル/ヘキサン(1:9)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィ処理して、生成物17を溶出した(4.84g)。
【化60】

【0105】
2,6−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)ベンゾニトリル(18)
窒素下に酢酸2−ブロモ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル(4.0g、13.5ミリモル)及び2,6−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(4.84g、14.8ミリモル)をジオキサンに溶解した溶液に対して、臭化銅(106mg、0.74ミリモル)及びジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(520mg、0.74ミリモル)を添加し、この混合物を2時間還流した。その後、反応物に対して、メタノール(10mL)中における2NのNaOH(13.5mL、27ミリモル)を添加し、1時間撹拌した。その後、反応物を、2NのHClによりpH6に酸性化し、そして溶剤を減圧下に除去し、酢酸エチルと交換した。この混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、メタノール/ジクロロメタン(2:98)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィ処理して、生成物18を溶出した。
【化61】

【0106】
3,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−カルボニトリル(実施例6)
2,6−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)ベンゾニトリル(0.51g、1.5ミリモル)をジクロロメタンに溶解した溶液に対して、1.0MのBBr3(7.6mL、7.6ミリモル)を添加し、この混合物を室温条件下で4時間撹拌した。この反応物を2NのHClでクエンチングし、そして溶剤を減圧下に除去し、酢酸エチルと交換した。この混合物を2NのHClで2回、その後ブラインで1回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、メタノール/ジクロロメタン(1:99)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィ処理して、実施例6を黄褐色の固体として溶出した(0.135g)。融点:300℃を超える。
【化62】

【0107】
3,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−カルボニトリル(実施例7)
3,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル(実施例6(51mg、0.19ミリモル))をジオキサンに溶解した溶液に対して、DDQ(50mg、0.22ミリモル)を添加し、この混合物を1時間還流した。反応物を濃縮して、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を用いてシリカゲルでクロマトグラフィ処理して、実施例7を白色固体として溶出した(18mg)。融点:300℃を超える。
【化63】

【0108】
[実施例8の調製](スキーム5より)
酢酸2−ブロモ−6−メトキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル(19)
6−メトキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(3.8g、18.8ミリモル)をエーテル(50ml)に溶解した冷却溶液に対して、臭素(0.96ml、18.6ミリモル)を滴下した。1時間後、反応物を10%の亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、そして濃縮して、臭化物を白色固体として得て(4.5g)、粗製で使用した。これにより得られた臭化物の一部(1.5g、5.3ミリモル)をTHF(30ml)に溶解させ、−78℃に冷却し、そしてLHMDS(5.5mlの1M)を滴下して処理した。20分後、無水酢酸(1.6ml、15.9ミリモル)を滴下し、反応物を0℃で1時間撹拌した。水を添加し、EtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮し、そして生成物を、シリカゲルにおいてカラムクロマトグラフィによって精製し(EtOAc/ヘキサン;1:19)、19を油として得た(1.1g)。
【0109】
2,5−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−4,4−ジメチル−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル(20)
ジオキサン(50ml)中における酢酸2−ブロモ−6−メトキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル19(1g、3.1ミリモル)、2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(1g、3.1ミリモル)、Pd(PPh34(0.3g)及びCuI(50mg)を18時間加熱した。その後、反応物を冷却し、1NのNaOH(5ml)を添加し、反応物を1時間撹拌し、水に注ぎ、そしてEtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製し(EtOAc/ヘキサン;3:7)、20を黄色油として得た(0.25g、22%)。
【0110】
3,8−ジヒドロキシ−5,5−ジメチル−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−カルボニトリル(実施例8)
2,5−ジメトキシ−3−(6−メトキシ−4,4−ジメチル−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル20(0.2g、0.55ミリモル)とピリジンHCl(15g)の混合物を200℃に加熱した。1時間後、反応物を冷却し、2NのHClで希釈し、EtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、固体を得て、これをカラムクロマトグラフィによって精製して(EtOAc/ヘキサン;1:4)、実施例8を白色固体として得た(35mg、21%)。融点:321〜323℃。
【化64】

【0111】
[実施例9及び10の調製](スキーム6より)
3−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−7−メトキシ−クロメン−4−オン(21)
3−ブロモ−7−メトキシ−クロメン−4−オン(2.5g、10ミリモル)、2,5−ジメトキシフェニルボロン酸(2.73g、15ミリモル)、2MのNa2CO3(30ml)及びPd(PPh34(0.30g、0.3ミリモル)をトルエン(40ml)及びEtOH(5ml)に溶解した溶液を加熱還流した。3時間後、反応物を冷却し、そして有機層を分離し、乾燥し、濃縮して、油性の固体を得て、これをMeOHで粉末にし、ろ過して、21を白色固体として得た(1.5g、51%)。
【0112】
2,5−ジメトキシ−3−(7−メトキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)−ベンゾニトリル(22)
3−ブロモ−7−メトキシ−クロメン−4−オン(1.8g、7.1ミリモル)、2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(2.3g、7.1ミリモル)、Pd(PPh34(0.5g)及びCuI(0.1g)を50mLのジオキサンに溶解した溶液を加熱還流した。6時間後、反応物を冷却し、そして濃縮して、生成物を、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;1:4)、22を固体として得た(0.9g、38%)。
【0113】
3−(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロマン(chroman)−4−オン(23)
3−(2,5−ジメトキシフェニル)−7−メトキシ−クロメン−4−オン21(1.5g、4.8ミリモル)をCH2Cl2(30ml)に溶解した溶液に対して、BBr3(25mlの1M)を滴下した。20時間撹拌した後、反応物を冷却し、MeOHで注意してクエンチングした。溶液をEtOAcで希釈し、2NのHClで洗浄した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、固体を得て(1.1g)、これをアセトンに取り込み、10psi条件下にPtO2(0.18g)で水素化した。3時間後、反応物をCelite(登録商標)に通過させてろ過し、濃縮して、フォームを得た。このフォームを、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;1:4)、23をフォームとして得た(0.4g、31%)。
【0114】
2,5−ジヒドロキシ−3−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−クロマン−3−イル)−ベンゾニトリル(24)
2,5−ジメトキシ−3−(7−メトキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)−ベンゾニトリル22(0.90g、2.7ミリモル)とピリジンHCl(15g)の混合物を200℃に加熱した。1時間後、反応物を冷却し、2NのHClで希釈した。その後、酸性層をEtOAcで抽出し、乾燥し、濃縮し、そして生成物を、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;3:2)、固体を得て(300mg)、これをアセトンに取り込み、10psi条件下にPtO2で水素化した。1.5時間後、反応物をろ過し、濃縮して、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して、24をフォームとして得た(0.15g、19%)。
【0115】
6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−C]クロメン−3,8−ジオール(実施例9)
3−(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロマン−4−オン23(0.35g、1.25ミリモル)を飽和HCl/MeOH(20ml)に溶解させた溶液を加熱還流した。1時間後、反応物を冷却し、濃縮し、そして生成物を、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;3:7)、実施例9を固体として得た(80mg、25%)。融点:238〜240℃。
【化65】

【0116】
3,8−ジヒドロキシ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−C]クロメン−10−カルボニトリル(実施例10)
2,5−ジヒドロキシ−3−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−クロマン−3−イル)−ベンゾニトリル24(0.14g、0.47ミリモル)を飽和HCl/MeOH(10ml)に溶解させた溶液を加熱還流した。1時間後、反応物を冷却し、固体が結晶化し、これをろ過によって集めて、実施例10を固体として得た(60mg、43%)。融点:300℃を超える。
【化66】

【0117】
[実施例11の調製](スキーム7より)
2−(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−エタノン(31)
(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−酢酸30(10g、36ミリモル)及びレゾルシノール(6.0g、54ミリモル)をBF3−エテレート(etherate)(75ml)に溶解させた溶液を85℃に加熱した。4時間後、反応物を冷却し、氷に注いだ。その後、水性層をEtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、31を橙色の油として得て(15g)、これを次の工程に粗製として使用した。
【0118】
3−(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロメン−4−オン(32)
2−(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシ)
−エタノン31(15gの粗製)、トリエチルオルトホルメート(40ml)、及びモルホリン(40ml)の混合物を加熱還流した。2時間後、反応物を冷却し、2NのHClに注ぎ、そしてEtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、これにより得られた生成物を、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;3:7)、32を固体として得た(4g、2工程に対して30%)。
【0119】
3−(3−ブロモ−2,5−ジヒドロキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロメン−4−オン(33)
3−(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロメン−4−オン32(4g、10.6ミリモル)をCH2Cl2(100ml)に溶解させた溶液に対して、BBr3(30ml、1M)を滴下した。2時間後、反応物を0℃に冷却し、MeOHで注意してクエンチングした。反応物をEtOAcで希釈し、2NのHClで洗浄した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、暗色固体を得て、これをMeOHで粉末にし、ろ過して、33を固体として得た(2.7g、73%)。融点:253〜255℃。
【化67】

【0120】
3−(3−ブロモ−2,5−ジヒドロキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロマン−4−オン(34)
33(1.5g、4.3ミリモル)をアセトン(40ml)に溶解させた溶液を、10psi条件下にPtO2(0.25g)で水素化した。3時間後、反応物をCelite(登録商標)に通過させてろ過し、濃縮して、フォームを得て、このフォームを、シリカゲルでカラムクロマトグラフィ処理によって精製して(EtOAc/ヘキサン;1:3)、34をフォームとして得た(1g、66%)。
【0121】
10−ブロモ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−C]クロメン−3,8−ジオール(実施例11)
飽和HCl/MeOH中における3−(3−ブロモ−2,5−ジヒドロキシ−フェニル)−7−ヒドロキシ−クロマン−4−オン34(0.95g、2.7ミリモル)を加熱還流した。30分後、反応物を濃縮し、EtOAcに取り込み、飽和NaHCO3で洗浄した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、油性の固体を得て、これをCH2Cl2で粉末にし、ろ過して、実施例11を固体として得た(0.6g、66%)。融点:222〜225℃。
【化68】

【0122】
前駆体30の調製(スキーム8より)
3−ブロモ−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンズアルデヒド(25)
4−メトキシサリチル酸メチル(30g、200ミリモル)をクロロホルム(500ml)に溶解し、0℃に冷却した溶液に対して、臭素(32g、200ミリモル)を添加し、そして反応物を室温で5時間撹拌した。その後、反応物を10%の亜硫酸ナトリウムで洗浄し、乾燥し、濃縮して、固体を得た。固体を、ヘキサンで粉末にし、ろ過して、25を黄色の固体として得た(14g、35%)。融点:107〜110℃。
【0123】
3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−ベンズアルデヒド(26)
25(10g、43ミリモル)、ヨウ化メチル(7.3g、52ミリモル)、及びK2CO3(12g、86ミリモル)をアセトン(200ml)に溶解した溶液を加熱還流した。4時間後、反応物を冷却し、水に注ぎ、そしてエーテルで抽出した。エーテル層を乾燥し、濃縮して、生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して(10%EtOAc/ヘキサン)、26を固体として得た(7.0g、67%)。融点:62〜64℃。
【化69】

【0124】
(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−メタノール(27)
26(8.0g、33ミリモル)をTHF(100ml)に溶解し、冷却(0℃)した溶液に対して、LiAlH4(15mlの、THFにおける1.0M)を滴下した。15分後、反応物を2NのHClでクエンチングし、水性層をEtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥し、濃縮して、27を固体として得た(7.5g、93%)。融点:65〜67℃。
【化70】

【0125】
1−ブロモ−3−クロロメチル−2,5−ジメトキシ−ベンゼン(28)
27(7.5g、30ミリモル)及びZnCl2(1g)をTHF(100ml)に溶解した溶液に対して、SOCl2(5.31g、45ミリモル)を滴下した。室温条件下で1時間後、反応物を水に注ぎ、エーテルで抽出した。エーテルを乾燥し、濃縮して、生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して(10%EtOAc/ヘキサン)、28を油として得た(5.5g、75%)。
【化71】

【0126】
(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−アセトニトリル(29)
1−ブロモ−3−クロロメチル−2,5−ジメトキシ−ベンゼン28(7.0g、26.4ミリモル)及びKCN(1,7g、26.4ミリモル)をDMSO(50ml)に溶解した溶液を、75℃に加熱した。2時間後、反応物を冷却し、水に注いだ。水性層をEtOAcで抽出し、有機層を乾燥し、そして濃縮した。生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して(20%EtOAc/ヘキサン)、29を油として得た(5.2g、77%)。
【化72】

【0127】
(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−酢酸(30)
(3−ブロモ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−アセトニトリル29(5.2g、20.4ミリモル)を水(10ml)、濃H2SO4(10ml)及びAcOH(30ml)に溶解した溶液を100℃に加熱した。3時間後、反応物を冷却し、水に注いだ。水性層をEtOAcで抽出し、その後、MgSO4で乾燥し、ろ過し、そして濃縮した。生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィによって精製して(50%EtOAc/ヘキサン)、30を固体として得た(2.8g、55%)。融点:62〜65℃。
【化73】

【0128】
[実施例12及び13の調製](スキーム9より)
2−ブロモ−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(35)
7−メトキシ−1−テトラロン(50g、0.28モル)をエーテルに溶解した溶液に対して、臭素(15mL、0.29モル)を2時間で滴下した。この溶液を更に2時間撹拌し、その後、10%の亜硫酸ナトリウム、飽和炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、白色の結晶性生成物35が沈殿するまで濃縮し、これを吸引ろ過によって集めた(60.5g)。
【化74】

【0129】
酢酸2−ブロモ−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル(36)
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(50mL、50ミリモル)をTHFに溶解した溶液を、窒素下に−78℃に冷却し、この溶液に対して、THFに溶解させた2−ブロモ−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン35(11.6g、45ミリモル)を30分で滴下した。この混合物を30分間撹拌し、その後、無水酢酸(12.8mL、135ミリモル)を10〜15分で滴下した。冷却用ドライアイス−アセトン(dry ice-acetone cooling)を取り除き、氷浴と交換し、そして反応物を0℃で1時間撹拌した。反応物をエーテルで希釈し、1NのHCl(3×25ml)で洗浄し、その後希炭酸水素ナトリウム、水及びブラインで1回ずつ洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮して、36を粘稠性の液体として得た(13.2g)。
【化75】

【0130】
2,5−ジメトキシ−3−(7−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル(37)
酢酸2−ブロモ−7−メトキシ−3,4−ジヒドロ−ナフタレン−1−イルエステル36(2.5g、8.4ミリモル)及び2,5−ジメトキシ−3−トリメチルスタンニル−ベンゾニトリル(3.0g、9.3ミリモル)をジオキサンに溶解した溶液に対して、臭化銅(0.16g、0.84ミリモル)を添加し、そしてこの混合物を一晩還流した。反応物を冷却し、そして反応物に対して、メタノール中における2NのNaOH(8.4mL、16.8ミリモル)を添加し、これを40℃で約1時間暖めて、アセテートの加水分解を完了させた(次に、TLC)。反応混合物を、2NのHClにより酸性化し、溶剤を減圧下に除去し、酢酸エチルを添加した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、酢酸エチル/ヘキサン(5:95〜1:9)を用いてシリカゲルでのクロマトグラフィにより、37を溶出した(0.6g)。
【化76】

【0131】
2,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−ベンゾニトリル(実施例12)
窒素下に2,5−ジメトキシ−3−(7−メトキシ−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イル)−ベンゾニトリル37(0.27g、0.8ミリモル)をジクロロメタンに溶解した溶液に対して、1.0MのBBr3(4.0mL、4ミリモル)を添加し、この混合物を室温条件下で一晩撹拌した。反応物を、2NのHClでクエンチングし、溶剤を減圧下に除去し、残留物を酢酸エチルと2NのHClの間に分配した。有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、酢酸エチル/ヘキサン(1:3)を用いてシリカゲルでのクロマトグラフィにより、生成物をオフホワイトの固体として溶出した(115mg)。融点:277〜279℃。
【化77】

【0132】
2,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[B]ナフト[2,1−D]フラン−10−カルボニトリル(実施例13)
2,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−ベンゾニトリル(実施例12(95mg、0.34ミリモル))をジオキサンに溶解した溶液に対して、DDQ(93mg、0.41ミリモル)を添加し、この混合物を4時間還流した。溶剤を減圧下に除去し、残留物をメタノール/ジクロロメタン(1:4)を用いてシリカゲルでのクロマトグラフィ処理することにより、生成物を褐色固体として溶出した(0.073g)。融点:291〜295℃。
【化78】

【0133】
[本発明の化合物の評価]
本発明の代表的な実施例を、ERα及びERβの両方への17β−エストラジオールに対する競合能に関して評価した。この試験手法により、特定の化合物がERに結合するのか(従って、“エストロゲン様”であるのか)どうか、及びERα又はERβに対して選択性があるのかどうかを決定するための方法論が提供される。値を、以下の表に示し、IC50として記録した。17β−エストラジオールは、比較用の標準的基準として含まれる。用いられる手順を以下に簡単に示す。ヒトのERα又はERβのERリガンド結合ドメイン(D、E&F)を発現する大腸菌の粗溶解物を調製した。ERと化合物の両方を、1mMのEDTAを添加した1Xのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で希釈した。高結合マスク化マイクロタイタープレートを使用して、100μLのER(1uG/ウェル)を、2nM[3H]−17β−エストラジオール及び種々の濃度の化合物と結合させた。室温条件下で5〜15時間後、プレートをDPBS/1mMのEDTAで洗浄し、液体シンチレーション計測法によって結合した放射活性が測定された。IC50を、17β−エストラジオール結合の合計を50%低減させる化合物の濃度として定義する。これにより得られた結果を以下の表1に記載する。
【0134】
【表1】

【0135】
標準的な薬理試験方法で得られた結果により、本発明の化合物はエストロゲン様化合物であり、一部は、ERβに対して優先的な親和性を有しているものの、その他は、依然としてERαに対して著しい結合親和力を有していることが示されている。従って、本発明の化合物は、少なくとも部分的には、ER親和性の選択的なプロフィールに基づく活性の範囲に及ぶであろう。更に、各々の新規なERリガンド錯体が他に類を見ないものであるので、つまり、その種々のコレギュラトリー(コレギュレーター)タンパク質との相互作用が比類のないものであるという理由から、本発明の化合物は、ERリガンド錯体を有する細胞の状況に応じて異なる調節特性を示すであろう。例えば、幾つかの細胞型において、化合物は、エストロゲン作用薬として振る舞い、一方、他の組織において、拮抗薬として振る舞うことが可能である。かかる活性を有する化合物は、SERMs(選択性ERモジュレーター)と称されることもあった。しかしながら、多くのエストロゲンと異なり、多くのSERMsは子宮の湿質量の増大を引き起こさない。このような化合物は、子宮において抗エストロゲン様であり、子宮の組織においてエストロゲン作用薬の栄養作用を完全に拮抗することが可能である。しかしながら、これらの化合物は、骨及び循環系においてエストロゲン作用薬として主として作用することが可能である。これらの化合物の組織選択性により、本発明の化合物は、哺乳動物において、エストロゲン欠乏(所定の組織、例えば骨又は心血管において)又はエストロゲンの過剰(子宮又は乳腺において)により引き起こされるか、又はこれらに結びつく病状又は症候群の治療又は抑制に有用である。
このような細胞−特異的制御の他にさらに、本発明の化合物は、一方のER型に対する作用薬として振る舞うと共に、他方に対して拮抗薬として振る舞うための潜在力をも有している。例えば、化合物は、ERβに対して拮抗薬であっても良く、一方、ERαに対して作用薬であっても良いことが実証された(Meyers, M. J., Sun, J., Carlson, K. E., Katzenellenbogen, B. S., Katzenellenbogen, J. A., J. Med. Chem. (1999), 42(13): 2456-2468)。このようなERSAA(ER選択的作用薬拮抗薬)活性により、本一連の化合物における薬学的に顕著なエストロゲン活性が提供される。
【0136】
標準的な薬理試験手法は、所定の被検化合物の活性プロフィールを決定するのに容易に利用可能である。以下に、数種類の代表的な試験手順を短くまとめる。SERMsに関する標準的な薬理試験手法は、米国特許番号第4418068号及び第5998402号にも記載されており、参照することによりこれらの全部は本明細書に取り込まれる。
【0137】
[ラットの子宮栄養性/抗栄養性試験手順]
化合物のエストロゲン及び抗エストロゲン特性を、未成熟ラットの子宮栄養試験において測定した(4日間、L. J. Black and R. L. Goode, Life Sciences, 26, 1453 (1980)を参照されたい)。Sprague-Dawley未成熟ラット(メス、18日齢)を6個の群で試験した。動物は、10μGの化合物、100μGの化合物、100μGの化合物+1μGの17β−エストラジオール(抗エストロゲン性を調べるため)及び1Gの17β−エストラジオールを注入媒体である50%のDMSO/50%生理食塩水と共に毎日腹腔内注射することにより処理した。4日目で、動物をCO2窒息で犠牲にし、その子宮を取り除き、過剰の脂質を取り除き、そして体液を除去して、湿質量を計測した。所定の角(horn)の小切片を組織学用に取り出し、残りを用いて、全RNAを単離し、補体成分3(complement component 3)の遺伝子発現を評価した。
【0138】
6週卵巣除去ラット試験手順−骨及び心臓保護
メスのSprague Dawley CDラットのovx又は偽ovxをTaconic Farm(Germantown, New York)から手術後1日で得る(体重範囲240〜275g)。これらを、12/12(明/暗)のスケジュールで3又は4匹のラット/ケージで室内に収容し、食料(Purina(登録商標)5K96C、ラット用の食事)及び水を自由に与える。全ての検討のための処理は、動物が到着した1日後に開始し、表示されたように6週間、一週間に7日服用した。処理を受けていない年齢適合偽手術ラット群は、各検討において、無傷の、エストロゲンを十分備えた対照群として役立つ。
【0139】
全ての処理を、所定の濃度条件下の生理食塩水中の1%Tween(登録商標)80で調製し、処理体積が0.1mL/100g体重とする。17β−エストラジオールをトウモロコシ油(20μg/mL)に溶解させ、そして0.1mL/ラットで皮下に供給する。全ての投与量を、体重測定の群平均に従い3週間の間隔で調整する。
【0140】
処理の開始5週間及び検討の終了前1週間において、各々のラットを骨ミネラル密度(BMD)に関して評価する。頸骨近位端(proximal tibia)の合計及びトラベキュラー(trabecular)密度を、XCT−960M(pQCT; Stratec Medizintechnik, Pforzheim, Germany)を用いて麻酔をかけたラットにおいて評価する。測定を以下のように行う:スキャン前の15分、各ラットは、45mg/kgのケタミン、8.5mg/kgのキシラジン及び1.5mg/kgのアセプロマジンを腹腔内投与で麻酔する。
【0141】
右の後肢を、直径25mmのポリカーボネート管に通過させ、足関節を90°で及び膝関節を180°でアクリルフレームにテープではる。ポリカーボネート管を、pQCTの開口に対して垂直に維持するスライディングプラットフォームに取り付ける。このプラットフォームを調節することにより、大腿骨遠位骨端と頸骨近位骨端は、スキャン領域に入るだろう。2次元スカウトビュー(scout view)は、10mmの長さ及び0.2mmのライン分解に対して実行する。スカウトビューをモニターに表示した後、頸骨近位骨端の位置を確認する。pQCTスキャンを、この箇所から3.4mmの末端で開始した。pQCTスキャンは1mmの厚さであり、0.140mmのボクセル(3次元ピクセル)寸法を有し、そして薄片を通過する145個の投影から構成される。
【0142】
pQCTスキャンの完了後、画像をモニターに表示する。腓骨を除いて頸骨を含む興味のある領域の概要をまとめる。軟組織は、反復アルゴリズムを用いて自動的に取り除かれる。残りの骨の密度(合計密度)をmg/cm3単位で示す。骨の外側55%は、同心のらせん形ではがされる。残りの骨の密度(トラベキュラー密度)をmg/cm3単位で示す。BMD評価の1週間後、ラットを二酸化炭素窒息により安楽死させ、コレステロール定量のために血液を回収する。子宮を取り除き、質量を計る。合計コレステロールは、Cholesterol/HP kitを使用するBoehringer-Mannheim Hitachi 911臨床分析機器(Ingelheim, Germany)により測定する。統計は、ダネットテストを用いるone-way分散分析により比較した。
【0143】
MCF−7/ERE増殖抑制試験の手順
試験化合物のストック溶液(通常、0.1M)を、DMSO中で調製し、そしてDMSOで10〜100倍に希釈して、1〜10mMの作業溶液を作製する。DMSOストックを、4℃(0.1M)又は−20℃(<0.1M)にて保存する。MCF−7細胞を、成長培地を用いて1週間に2回継代する[10%(v/v)加熱非働化ウシ胎仔血清、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン、及び2mM glutaMax-1を含むD−MEM/F−12培地]。細胞を、5%CO2/95%加湿空気のインキュベーターの内側において37℃のベント型フラスコ中で保持する。処理の1日前に、細胞を96ウェルのプレートに25000/ウェルで成長培地で播種し、そして37℃で一晩培養する。
【0144】
細胞を、実験用培地において50μ/ウェルのアデノウイルス5−ERE−tk−発光酵素の1:10希釈で37℃にて2時間感染させる[実験用培地:10%(v/v)加熱非働化木炭除去(charcoal-stripped)ウシ胎仔血清、1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM glutaMax-1、1mMピルビン酸ナトリウムを含むフェノールレッド非含有D−MEM/F−12培地]。その後、ウェルを150μLの実験用培地で1回洗浄する。最後に、細胞を、150μL/ウェルのビークル(0.1%v/v以下のDMSO)での処理又は実験用培地に1000倍以上で希釈される化合物での処理あたり、繰り返しの(in replicates)8ウェルで、37℃で24時間処理する。
【0145】
試験化合物の最初のスクリーニングを、1μMの試験化合物のみ(作用薬モード)、又は0.1nMの17β−エストラジオールと組み合わせる1μMの試験化合物(EC80;拮抗薬モード)の単一用量で行う。各96ウェルプレートは、ビークル対照群(0.1%v/vDMSO)及び作用薬対照群(0.1又は1nMの17β−エストラジオール)も含む。用量反応実験を、対数的に10-14から10-5Mまで増加する濃度の活性化合物において、作用薬モード及び/又は拮抗薬モードにて行う。この用量反応曲線から、EC50及びIC50値をそれぞれ得る。各処理群における最終ウェルは、ER拮抗対照として、5μLの3×10-5MのICI−182780(10-6Mの最終濃度)を含む。
【0146】
処理後、細胞を、25μL/ウェルの1X細胞培養溶解試薬(Promega Corporation, Madison, Wisconsin)で15分間シェーカー上で溶解する。細胞溶解液(20μL)を、96ウェルルミノメータープレートに移し、そしてルシフェラーゼ活性を、100μL/ウェルのルシフェラーゼ基質(Promega Corporation)を使用して、MicroLumat LB 96 Pルミノメーター(EG & G Berthold, Wildbad, Germany)において測定する。基質の注入前に、1秒バックグラウンド測定を、各ウェルに対して作製する。基質の注入後、ルシフェラーゼ活性を1秒遅らせた後、10秒間測定する。データをルミノメーターからマッキントッシュのパーソナルコンピュータに移し、そしてJMPソフトウェアを用いて解析する(SAS Institute, Cary, North Carolina);このプログラムは、各ウェルのルシフェラーゼ測定から読めるバックグラウンドを差し引き、その後、各処理に対する平均及び標準偏差を決定する。
【0147】
ルシフェラーゼデータを、対数で変換し、そしてHuber M−エスティメーターを使用して、変換された異常値の重み付けを軽くする(down-weight)。JMPソフトウェアを用いて、変換され且つ重み付けされたデータをone-wayANOVAに関して解析する(ダネットテスト)。化合物の処理を、作動薬モードにおけるビークル対照の結果、又は拮抗薬モードのポジティブ作用薬対照の結果(0.1nM17β−エストラジオール)と対比する。最初の単回用量実験の場合、化合物の処理結果が、適当な対照から有意な差を有するときには(p<0.05)、結果を、17β−エストラジオール対照に対するパーセントとして示す[すなわち、((化合物−ビークル対照)/(17β−エストラジオール対照−ビークル対照))×100]。更に、JMPソフトウェアを使用して、非線形用量反応曲線からEC50及び/又はIC50値も決定する。
【0148】
LDL酸化の抑制−抗酸化剤の活性
ブタの大動脈を食肉処理場から得て、洗浄し、冷却したPBSで運搬し、そして大動脈内皮細胞を採取する。細胞を採取するために、大動脈の肋間血管を縛り、大動脈の一端をクランプする。新鮮で、フィルター滅菌した0.2%のコラゲナーゼ(シグマタイプI)を血管に導入し、その後、血管の他端をクランプして、閉鎖系を形成する。大動脈を、37℃で15〜20分間培養し、その後、コラゲナーゼ溶液を回収し、2000×gにて5分間遠心する。各ペレットを、木炭除去FBS(5%)、NuSerum(5%)、L−グルタミン(4mM)、ペニシリン−ストレプトマイシン(1000U/ml、100μg/ml)及びゲンタマイシン(75μg/ml)が追加されたフェノールレッド非含有DMEM/Ham’sF−12培地からなる7mLの内皮細胞培養培地に懸濁させ、100mmのペトリ皿に播種し、そして5%のCO2において37℃で培養する。20分後、細胞をPBSで濯ぎ、新鮮な培地を添加し、これを24時間で再び繰り返した。約1週間後、細胞はコンフルエントである。内皮細胞を定期的に1週間に2回フィードし、そしてコンフルエントの場合、トリプシン処理し、そして1:7の割合で播種する。細胞を介した12.5μg/mL LDLの酸化は、評価化合物(5μM)の存在下、37℃で4時間に亘って進行可能である。結果を、遊離アルデヒドの分析用のTBARS(チオバルビツール酸反応性物質)方法によって測定される酸化処理の抑制の割合として示す(Yagi K., Biochem Med 15: 212-216 (1976))。
【0149】
D12視床下部細胞試験の手順
D12ラットの視床下部細胞を、RCF17親細胞系からサブクローンし、冷凍保存する。これは、DMEM:F12(1:1)、glutaMax−1(2mM)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100mg/ml)、並びに10%のウシ胎仔血清(FBS)中で規定通りに成長する。細胞を、サブコンフルエント密度(1〜4×106細胞/150mmディッシュ)で、2〜10%の木炭除去FBSを含むフェノール非含有培地(DMEM:F12、glutaMax、ペニシリン−ストレプトマイシン)に播種する。24時間後、細胞に2%の裸血清(stripped serum)を含む培地を再供給する。作動薬活性を試験するために、細胞を、10nMの17β−エストラジオール又は種々の用量の試験化合物(1mM又は1pM〜1mMの範囲)で処理する。アンタゴニスト活性を試験するために、細胞を、種々の用量の試験化合物(100pM〜1mM)の不存在下又は存在下、0.1nMの17β−エストラジオールで処理する。対照皿についても、ネガティブ対照としてのDMSOで処理する。ホルモンを添加してから48時間後、細胞を溶解し、そして結合試験手法を行う。
【0150】
各々の結合試験手法では、100〜150mgのタンパク質を、150mlの体積の10nMの3H−R5020+100倍過剰のR5020で培養する。トリプリケートの反応(R5020で3回、R5020無しで3回)を、96ウェルプレートにおいて調製する。タンパク質抽出物を最初に添加し、その後、3H−R5020又は3H−R5020+100×非標識R5020を添加する。反応を室温条件下で1〜2時間行う。100mlの低温の5%木炭(Norit, SX-4, EM Science, Gibbstown, New Jersey)、TE pH7.4の0.5%のデキストラン69K(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を添加して、反応を停止させる。室温で5分後、結合又は非結合リガンドを、遠心によって分離する(5分、1000RCF、4℃)。上澄み液(〜150ml)を除去し、シンチュレーションバイアルに移す。シンチュレーション液(Beckman Ready Protein+, Fullerton, California)を添加した後、サンプルをシンチュレーションカウンターにおいて1分間に亘ってカウントする。
【0151】
CNS視索前野でのプロゲステロンER
60日齢のメスのSprague-Dawleyラットを卵巣切除する。動物を、12時間明、12時間暗の光周期で且つ水道水と齧歯動物の食物に対してフリーアクセスの動物保育設備に収容する。
【0152】
卵巣除去動物を、ビークル(50%のDMSO、40%のPBS、10%のエタノールのビークル)、17β−エストラジオール(200ng/kg)又は試験される化合物が注入される群に無作為に分ける。17β−エストラジオールを注入する1時間前に、試験化合物を追加の動物に注入して、化合物の拮抗薬特性を評価する。皮下注入して6時間後、致死量のCO2で動物を安楽死させ、その脳を回収し、冷凍する。
【0153】
動物から回収した組織を、−16℃でクライオスタットにおいて裁断し、シランコートした顕微鏡用スライドに回収する。その後、切片包埋スライドを、42℃で保持されたスライド加湿器において乾燥し、そして−80℃で、乾燥したスライドボックス中で保存する。処理する前に、乾燥スライドボックスを室温にゆっくり暖めて(−20℃で12〜16時間;4℃で2時間;室温で1時間)、スライド上の凝縮物の形成を除去することで、組織及びRNAの分解を最小限にする。乾燥スライドを金属ラックに配置し、4%のパラホルムアルデヒド(pH9.0)中で5分間に亘って後固定し、そして上述したように処理する。
【0154】
ラットのPRcDNA9(リガンド結合ドメイン)の815bpフラグメントを含むプラスミドを線形化し、これを使用して、ラットのPRmRNAの一部に対して相補的なS35−UTP標識プローブを生成する。処理された切片包埋スライドを、リボプローブ(4〜6×106のDPM/スライド)及び50%のホルムアミドを含む20mlのハイブリダイゼーションミックスでハイブリダイズし、そして55℃の加湿チャンバーにおいて一晩培養する。午前中に、スライドを、2×SSC(0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに漬けた金属ラックに置く。全てのラックを大きな容器に移し、そして、室温で2×SSC/10mM DTT中において15分間に亘って穏やかに撹拌しつつ洗浄する。その後、スライドをRNase緩衝液中において37℃にて30分間洗浄し、37℃で30分間に亘ってRNase A(2mg/ml)で処理し、そして室温で、1×SSCで15分間洗浄する。次に、スライドを65℃において、0.1×SSCで洗浄して(2×30分)、非特異性の標識を取り除き、その後、室温で、0.1×SSCで15分間濯ぎ、そして、段階系のアルコール:酢酸アンモニウム(70%、95%及び100%)で脱水処理する。空気乾燥スライドを、エックス線フィルムに3日間露光し、その後、写真用に処理する。全動物から得られたスライドをハイブリダイズし、洗浄し、露光し、そして写真用の処理をして、アッセイ間の条件の変動に起因する差異を取り除く。
【0155】
ラットの顔面潮紅−CNS効果
60日齢のメスの卵巣除去Sprague-Dawleyラットを、以下の外科手術により得る。外科手術は、最初の処理の少なくとも8日前に行われる。動物を、12時間明/暗周期の条件下、個々に収容し、そして齧歯動物用の食事及び水を自由に与える。
【0156】
2種類の対照群を、各検討において包含させる。用量は、ゴマ油中における10%DMSO(皮下(sc)検討)又は生理食塩水中における1.0%Tween(登録商標)80(経口(po)検討)中でmg/kg平均群体重に基づき準備する。動物に対して、0.01〜10gm/kgの平均群体重の範囲の用量で試験化合物を投与する。ビークル及びエチニルエストラジオール(EE)対照(0.1mg/kgのsc又は0.3mg/kgのpo)の対照群を各々の検討に包含させる。化合物をその阻害薬活性に関して試験する場合、EEを、sc又はpo検討に対して、それぞれ0.1又は0.3mg/kgで共投与した。一日の尾皮膚の温度が測定されるまで、試験化合物を投与する。
【0157】
4日間の順応期間後、動物を、興味のある試験化合物で1日1回処理する。10種類の動物/処理群が存在する。化合物は、襟首において0.1mlのsc注入又は0.5mlの体積でpoにより投与される。3日目の処理で、モルフィンのペレット(75mgの硫酸モルフィン)を皮下に移植する。5日目の処理で、更に1又は2モルフィンペレットを移植する。8日目に、動物の約半分に、ケタミン(80mg/kg、筋肉注射)を注入し、そしてMacLabデータ取得システム(API Insturments, Milfold, MA)に連結された熱電温度計を、尾の根元から約1インチの尾の位置にテープ止めする。かかるシステムにより、尾皮膚の温度を連続的に測定可能となる。基準温度を15分間測定し、その後、ナロキソン(1.0mg/kg)をsc付与して(0.2ml)、モルフィンの作用を阻止し、その後、尾皮膚の温度を1時間測定する。9日目に、残りの動物を設定し、同様に解析する。
【0158】
単離したラットの大動脈リングにおける血管運動機能
Sprague Dawleyラット(240〜260グラム)を4群に分ける:
1. 卵巣除去されていない正常動物(無傷)
2. ビークル処理された卵巣除去動物(オベックス)
3. 17β−エストラジオール処理された卵巣除去動物(1mg/kg/日)
4. 試験化合物で処理された卵巣除去動物(すなわち、1mg/kg/日)。
【0159】
動物を、処理の約3週間前に卵巣除去する。各々の動物は、胃の胃管栄養法により脱イオン化蒸留水中において1%のTween(登録商標)80で懸濁させた1mg/kg/日の17β−エストラジオールスルフェート又は試験化合物を受け取る。ビークル処理動物は、薬剤処理群で用いられたビークルの適量を受け取った。
【0160】
動物を、CO2吸入及び放血によって安楽死させる。その胸部大動脈を迅速に除去し、そして最終的なpHを7.4とするために95%/5%のCO2−O2でガス処理された、以下の組成(mM)を有する37℃生理溶液中に置く:すなわち、NaCl(54.7)、KCl(5.0)、NaHCO3(25.0)、MgCl22H2O(2.5)、D−グルコース(11.8)及びCaCl2(0.2)。外膜を外表面から取り除き、そして血管を、2〜3mm幅のリングに裁断する。リングを、10mLの組織浴に吊し、一端は、浴の底部に接続され、他端は、力変換器に接続される。1gの静止張力を輪に対して施す。リングを、1時間平衡化し、そしてシグナルを捉え、分析する。
【0161】
平衡化後、リングを増加濃度のフェニレフリン(10-8〜10-4M)に曝し、そして張力を記録する。その後、浴を、新鮮な緩衝液で3回濯ぐ。洗浄後、200mMのL−NAMEを組織浴に添加し、30分間に亘って平衡化する。フェニレフリンの濃度反応曲線を繰り返す。
【0162】
8アームの放射状アーム迷路−認知強化
生存時に200〜250gの重さのオスのSprague-DawleyのCDラット(Charles River, Kingston, NY)を用いる。1週間に亘って、ラットを、一つのケージに対して6匹収容し、標準的な実験用食料及び水を自由に入手可能にする。ハウジングは、午前6時の時点で12時間の明/暗の光周期を有する22℃で保持されたコロニー室内にある。施設に慣らした後、動物を個々に収容し、そして85%の自由摂取体重(free-feeding weight)にて保持する。安定した体重が得られた後、ラットを8アームの放射状迷路に順応させる。
【0163】
迷路の構造は、Peele and Baronの構造を適応する(Pharmacology, Biochemistry, and Behavior, 29: 143-150, (1988))。迷路は75.5cmの高さまで持ち上げられ、中心から放射状の、相互に等距離にある8つのアームで包囲された円形領域から構成されている。各々のアームは、長さ58cm×高さ13cmである。透明なプレキシガラスシリンダーをおろして、各々のセッションの開始前、迷路の中心部分で動物を包囲する。迷路の各アームは、データ収集装置にインターフェース接続されている3組のフォトセルを具備しており、このデータ収集装置は同様にコンピュータにインターフェース接続されている。フォトセルを使用して、迷路におけるラットの動きを追跡する。ペレット供給器を、各アームの端部においてフードキャップの上側に配置し、アームの外側のフォトセルが所定のセッション中に最初に活性化される場合、45mgのチョコレートペレットを分配する。迷路を、視覚的合図として働く白黒の幾何学的ポスターを各々の壁に有する試験室に配置する。全ての訓練及び試験処理中、害のない(white)ノイズが聞き取れる(〜70db)。
【0164】
訓練の手順は、5つの相から構成され、それぞれ毎日のセッションで5〜10分続ける。10秒の遅延が、ラットが迷路の中心に配置される時間と、シリンダーを上げてセッションを開始するときの間に強制的に組み込まれる。相1中、食料制限のラットの組を、迷路に10分間に亘って置き、45mgのチョコレートペレットを、8アームの迷路の間中に散乱させる。相II中、各々のラットを、10分間に亘って迷路に個々に置き、ペレットを、中央のフォトセルから各アームのフードキャップに対して散乱させる。相III中、各々のラットを、10分間に亘って迷路に置き、食料ペレットを、各アームのフードキャップの中と周囲にだけ配置する。相IV中、各々のラットを10分間各アームから2つのペレットを集めるようにさせる。アームへのリエントリーは、エラーと見なす。このような手法で、ラットを日々訓練するが、これは、ラットが、3日間連続の訓練で合計二回以下のエラーで基準の動作を達成するまで行われる。慣れ及び訓練の合計時間は、約3週間である。
【0165】
試験化合物を、リン酸緩衝生理食塩水中で調製し、そして1ml/kgの体積で投与する。スコポラミンHBr(0.3mg/kgのs.c.)は、障害剤として働き、エラー割合の増大(記憶喪失)を生じた。試験化合物を、所定の試験日に初めて迷路に触れる30分前に、スコポラミンと同時に腹腔内に付与する。
【0166】
試験化合物を評価するために、繰り返しの計測に用いる8×8の平均のとれたラテン方陣を設計して、最小量の動物を用いて高い実験効果を達成するようにする。1週間で2回に亘って8種類の実験セッションを、各々セッション内でランダム化された8回の処理で実施する(ビークル、スコポラミン、スコポラミンと組み合わせた3用量の試験化合物)。各処理は同じ回数の他の各処理に続けて行った。従って、各処理の残存効果を評価可能となり、そしてこれを直接処理効果から取り除く。ANOVA後、調節された方法でダネットの両側テストにより多重比較を行う。
【0167】
最初に迷路に置いた間、5分内で4回正確な選択をしないか、或いは2回目に迷路に置いた最後に、合計8回の選択をしない動物を、そのセッションに対して“タイミングはずれ(timed-out)”と見なす。試験化合物を2回以上投与後に“タイミングはずれ”の動物は、解析から除外する。
【0168】
神経保護作用
初代皮質ニューロン培養物における細胞の時間依存死の抑制
初代皮質ニューロンを、Monyer等によるBrain Reserach ((1989), 483: 347-354)に記載されている種々の方法を用いてき0〜1日齢のラットの脳から作製した。分散された脳組織を、DMEM/10%PDHS(妊娠ドナーウマ血清)中で3日間培養し、その後、シトシンアラビノシド(ARC)で2日間処理して、汚染グリア細胞を取り除いた。5日目に、ARC培地を取り除き、そしてDMEM/10%PDHSで置換した。神経細胞を、使用前に更に4〜7日間培養した。
【0169】
対照の初代皮質ニューロン培養物は、培養中12〜18日の間に進行性細胞死を示す。12種の培養物を、9日目に、試験化合物を、DMEM及び10%のPDHSにおいて保持されている6種の培養物に添加する一方、対照として残りの培養物培地を保持した後、乳酸脱水素酵素(LD)の酵素レベルについて12日目と16日に評価した。LDを、Wroblewski等によるProc. Soc. Exp. Biol. Med. ((1995) 90: 210-213)の種々の方法を用いて評価した。LDは、組織の生存能力を測定するための臨床及び基礎研究の両方で一般的に用いられる細胞質内酵素である。培地中のLDの増加は、細胞死に直接関連している。
【0170】
低血糖により誘導される細胞毒性に対する神経保護作用
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得られるC6グリオーマ細胞を、FALCON(商標)の25cm2組織培養フラスコに、1×106細胞/mlの濃度でFBS含有RPMI培地中に播種した。低血糖の始まる4時間前、維持培地を除き、単層を適当な培地中で2回洗浄し、その後、血清非含有か、又は血清非含有で且つ試験化合物中、37℃で4時間培養した。クレブスリンガーホスフェート緩衝液を使用して、単層を2回洗浄してから、適当なグルコース処置を追加した。RPMI培地は、2mgのグルコース/mlを含む。フラスコを、6個の群に分け、各々は、100%のグルコース(2mg/ml)、80%のグルコース(1.6mg/ml)、60%のグルコース(1.2mg/ml)又は0%のグルコース(緩衝液)を受け入れたか、或いは試験化合物で補足された。全てのフラスコを20時間培養し、その後、トリパンブルーを利用して、生死細胞数の合計を評価した。
【0171】
興奮毒性アミノ酸に対する神経保護作用
SK−N−SH神経芽腫細胞を含む5種類の培養ディッシュを試験化合物で処理し、そして5種類の培養ディッシュをRPMI培地で処理した。4時間後、全ての細胞をNMDA(500μM)で5分間処理した。その後、生死細胞の合計を計測した。
【0172】
酸素−グルコース欠乏に対する神経保護作用
アポトーシスを測定するためのピクノーゼの核の分析
皮質ニューロンを、E18ラットの胎仔から調製し、そして、100000細胞/ウェルの密度でポリ−D−リシン(10ng/ml)及び血清でプレコートされた8ウェルのチャンバースライドに播種する。細胞を、10%のFCSを含む高グルコースDMEM中に播種し、そして10%CO2/90%空気で37℃のインキュベーター中に保持する。翌日、培養培地をB27で補足した高グルコースDMEMに置換することによって血清を取り除き、そして細胞を、更なる培地の交換無しに、実験の日までインキュベーター中に保持する。6日目、スライドを2種類の群、すなわち対照群と酸素−グルコース欠乏(OGD)群に分ける。対照群における細胞は、グルコース及びカスタムB27(抗酸化剤無し)を有するDMEMを受けとる。OGD群における細胞は、カスタムB27を有するグルコースDMEMを受け取らず、真空下で15分間脱気する。細胞を、密閉チャンバー中において90%N2/10%CO2で10分間フラッシュし、そして37℃で6時間培養する。6時間後、対照及びOGD細胞の両方を、カスタムB27を有するグルコース含有DMEMにおいてビークル(DMSO)又は試験化合物を含む培地と交換する。細胞を37℃の正常酸素圧のインキュベーターに戻す。24時間後、細胞を4℃で、4%のPFAに10分間固定し、そしてTo−Pro(蛍光性の核結合色素)で染色する。レーザー走査血球計算器を用いてピクノーゼの核を測定することにより、アポトーシスを評価する。
【0173】
細胞死の指標としての乳酸脱水素酵素(LDH)放出の測定
皮質ニューロンを、E18ラットの胎仔から調製し、そして、150000細胞/ウェルの密度でポリ−D−リシン(10ng/ml)及び血清でプレコートされた48ウェルの培養プレート中に播種する。細胞を、10%のFCSを含む高グルコースDMEM中に播種し、そして10%CO2/90%空気で37℃のインキュベーター中に保持する。翌日、培養培地をB27で補足した高グルコースDMEMに置換することによって血清を取り除く。6日目、細胞を2種類の群、すなわち対照群とOGD群に分ける。対照群における細胞は、グルコース及びカスタムB27(抗酸化剤無し)を有するDMEMを受け取る。OGD群における細胞は、カスタムB27を有するグルコースDMEMを受け取らず、真空下で15分間脱気する。細胞を、密閉チャンバー中において90%N2/10%CO2で10分間フラッシュし、そして37℃で6時間培養する。6時間後、対照及びOGD細胞の両方を、カスタムB27を有するグルコース含有DMEMにおいてビークル(DMSO)又は試験化合物を含む培地と交換する。細胞を37℃の正常酸素圧のインキュベーターに戻す。24時間後、培養培地へのLDH(乳酸脱水素酵素)の細胞放出を計測することによって、細胞死を評価する。LDHアッセイでは、50μLアリコートの培養培地を、96ウェルのプレートに移す。140μLの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)及び100μLの0.2mg/mlNADHを添加した後、プレートを室温下に、暗所に20分間置く。10μLのピルビン酸ナトリウムを添加することによって反応を開始させる。Thermomax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, California)において、プレートは、340nMにて直ぐに読み出される。吸光度、すなわちNADH濃度の指標を5秒毎に5分間に亘って記録し、NADH消失速度を示す勾配を用いて、LDH活性を計算する。
LDH活性(U/ml)=(A/分)(TCF)(20)(0.0833)/(.78)
[式中、0.0833=比例定数であり、0.78=機器の光路長(cm)である。]。
【0174】
HLAラット試験の手順−クローン病及び炎症性腸疾患
オスのHLA−B27ラットは、Taconic Farm(Germantown, NewYork)から入手し、そして食料(PMI Lab Diet(登録商標)5001)及び水に対して自由にアクセスさせる。検討の開始時、ラットは22〜26週齢である。
【0175】
ラットに、以下に列挙されるいずれかの製剤を7日間1日1回皮下投与する。各群5匹のラットであり、最後の投薬を安楽死の2時間前に投与する。
【0176】
製剤:
・ビークル(50%DMSO/50%ダルベッコのPBS)
・17α−エチニル−17β−エストラジオール(10μg/kg)
・試験化合物。
【0177】
糞の質を日々観察し、そして以下の等級にしたがい格付けする:下痢=3;軟らかい糞=2;正常の糞=1。試験手順の最後に、血清を回収し、−70℃にて保存する。結腸の切片を組織学的分析用に作製し、そして更なるセグメントを、ミエロペルオキシダーゼ活性用に分析する。
【0178】
以下の方法を用いて、ミエロペルオキシダーゼ活性を測定する。結腸の組織を採取し、そして液体窒素中で急速冷凍する。結腸全体の代表的なサンプルを用いて、サンプル間の整合性を保証する。使用するまで組織を−80℃にて保存する。次に、組織を秤量し(約500mg)、そして1:15w/vの5mMのH2KPO4(pH6)洗浄緩衝液中でホモジナイズする。組織を、2〜8℃で、Sorvall(登録商標)RC5B遠心器中で20000×gにて45分間遠沈させる。その後、上澄み液を廃棄する。組織を再懸濁させ、そして10mM EDTA及び0.5%ヘキサアンモニウムブロミドを含有する2.5ml(1:5w/v)の50mM H2KPO4中でホモジナイズして、細胞内のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の溶解を促進させる。組織を液体窒素中で冷凍し、37℃の水浴中で解凍し、そして15秒間超音波処理して、確実に膜を溶解する。この手順を3回繰り返す。その後、サンプルを氷上に20分保持し、そして2〜8℃で、12000×gにて15分間遠心する。上澄み液を以下の工程にて分析する。
【0179】
2.9mlの50mMのH2KPO4を0.0005%のH22を含む0.167O−ジアニシジン/mlと一緒に反応チューブに添加することによって試験混合物を調製する。過酸化水素を分解させた場合、O−ジアニシジンを酸化し、そして濃度依存的に460nmで吸収する。混合物を25℃に加熱する。100μLの組織上澄み液を反応チューブに添加し、25℃で1分間培養し、その後、1mlを使い捨てのプラスチック製キュベットに移す。光学密度(OD)を、2.9mlの反応混合物及び100μLの0.5%アンモニウムブロミド溶液を含むブランクに対して、460nmにて2分の反応時間毎に測定する。
【0180】
酵素活性単位を、460nmにおける吸光度を、精製したヒトのMPO(31.1units/vial)を用いて作製された標準曲線に対して対比することによって定量化する。MPOを再構成されており、そして10mMのEDTA及び0.5%のヘキサアンモニウムブロミドを含む50mMのH2KPO4を用いて、4種類の公知の濃度に連続的に希釈する。サンプルの吸光度をこの曲線に対して対比して、活性を決定する。
【0181】
組織学的分析を以下のように行う。結腸の組織を10%の中性緩衝ホルマリンに浸漬する。結腸の各試験片を、評価のために4種類のサンプルに分離する。ホルマリン固定組織を、パラフィン包埋用の真空浸透処理機において加工処理する。サンプルを5μmにて切片に切り分け、その後、バウトン−スミスの後に修正されたスコアを用いる盲式組織学的評価のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する(Boughton-Smith, N. K., Wallace, J. L., Morris, G. P., Whittle, B, J., Br. J. Pharmacol. (1988), 94: 65-72)。スコア化が完了した後、サンプルを非盲検化し、そしてデータを表にして、多重平均比較(multiple mean comparison)を用いるANOVA線形モデルによって分析する。
【0182】
本明細書において述べた各々の特許、出願及び書籍を含む刊行物は、これらの全体を参照して本明細書に取り込まれるものと意図される。本発明は、2004年7月1日に出願された米国仮出願第60/584516号の優先権の利益を主張し、その全体を参照することにより本発明に組み込まれる。
【0183】
当業者等によって十分に理解されるように、本発明の要旨を逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に大きな変更及び修正をしても良い。このような変更は全て、本発明の範囲内に在ることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、Qが、構造II、III又はIV:
【化2】

を有し、
1、R4、R5、R6、R7、R7'、R8及びR11がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−OR20、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、NR2021、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
nが0又は1であり、
20及びR21がそれぞれ独立して、水素、C1〜C6アルキル、−CF3、ベンジル、−CO2(C1〜C6アルキル)及び−CO(C1〜C6アルキル)からなる群から選択され、ただし、
a)R2又はR3の一方が−OR20であり、
b)R9又はR10の一方が−OR20であり、
c)R2が−OR20である場合、R1及びR3が独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
d)R3が−OR20である場合、R2及びR4が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
e)R9が−OR20である場合、R8及びR10が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、
f)R10が−OR20である場合、R9及びR11が独立して、水素、C1〜C6アルキル、ハロゲン、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−SR20、−CN、−CH2CN、−CH2CH2CN、−CH=CHCN、−NO2、−CH2NO2、−CH2CH2NO2、−CH=CHNO2及び−COR20からなる群から選択され、そして
g)Qが構造IVを有し、R7、R7'、R8、R9、R11がそれぞれHであり、nが0である場合、R10がOR20ではない。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Qが構造IIを有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1、R2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素及びハロゲンからなる群から選択され、かつ、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2及びC1〜C6アルキルからなる群から選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが構造IIIを有する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素及びハロゲンからなる群から選択され、かつ、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2及びC1〜C6アルキルからなる群から選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Qが構造IVを有する請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
2、R4、R8及びR10がそれぞれ独立して、水素及びハロゲンからなる群から選択され、かつ、R11がCN、ハロゲン、メトキシ、CH2CN、NO2及びC1〜C6アルキルからなる群から選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
3及びR9がそれぞれ独立して、OR20である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
3及びR10がそれぞれ独立して、OR20である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
2及びR9がそれぞれ独立して、OR20である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
2及びR10がそれぞれ独立して、OR20である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
nが0である請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
nが1である請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
以下の構造:
【化3】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
以下の構造:
【化4】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
以下の構造:
【化5】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
以下の構造:
【化6】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
以下の構造:
【化7】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
以下の構造:
【化8】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
以下の構造:
【化9】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
以下の構造:
【化10】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
以下の構造:
【化11】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
以下の構造:
【化12】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
以下の構造:
【化13】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
以下の構造:
【化14】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
以下の構造:
【化15】

を有する請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
哺乳動物において、骨粗鬆症を治療若しくは抑制する方法、又は骨の無機質脱落を抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項28】
哺乳動物において、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性直腸炎又は結腸炎を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項29】
哺乳動物において、前立腺肥大、子宮平滑筋腫、乳ガン、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣ガン、メラノーマ、前立腺ガン、結腸ガン、グリオーム又はアスティオブラストミア(astioblastomia)を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項30】
哺乳動物において、コレステロール、トリグリセリド、Lp(a)若しくはLDLレベルを低下させる方法、又は高コレステロール血症、高脂血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、再狭窄若しくは血管痙攣を抑制若しくは治療する方法、又は血管損傷を抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項31】
哺乳動物において、認知力を強化若しくは神経保護する方法、又は老年性認知症、アルツハイマー病、認識衰退、脳卒中、不安若しくは神経変性障害を治療若しくは抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項32】
哺乳動物において、フリーラジカル誘導病状を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項33】
哺乳動物において、膣若しくは外陰部萎縮、萎縮性膣炎、膣の乾燥、掻痒症、性交疼痛症、排尿困難、頻尿、尿失禁、又は尿路感染を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項34】
哺乳動物において、血管運動症状を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項35】
哺乳動物において、避妊する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項36】
哺乳動物において、関節リウマチ、変形性関節症又は脊椎関節症を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項37】
哺乳動物において、関節鏡視下又は外科的処置による続発性の関節障害を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項38】
哺乳動物において、受胎能を処理又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項39】
哺乳動物において、虚血、再かん流障害、喘息、胸膜炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、ブドウ膜炎、敗血症、出血性ショック又はII型糖尿病を治療又は抑制する方法であって、有効量の、請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項40】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の化合物又はその組み合わせ、及び1以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項41】
1以上の以下の化合物:
a)5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、
b)ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、
c)5−ブロモ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−3,9−ジオール、
d)3,8−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、
e)3,9−ジヒドロキシ−6,7−ジヒドロ−5H−12−オキサ−ジベンゾ[a,e]アズレン−11−カルボニトリル、
f)3,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、
g)3,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、
h)3,8−ジヒドロキシ−5,5−ジメチル−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル、
i)6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、
j)3,8−ジヒドロキシ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−10−カルボニトリル、
k)10−ブロモ−6H−ベンゾ[4,5]フロ[3,2−c]クロメン−3,8−ジオール、
l)2,9−ジヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−ベンゾニトリル、
m)2,9−ジヒドロキシ−ベンゾ[b]ナフト[2,1−d]フラン−10−カルボニトリル又はその薬学的に許容される塩及び1以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項42】
以下の工程:
a)式V:
【化16】

[式中、XがCl、Br又はIであり、
Pが保護基である。]
で表される化合物を、式VI:
【化17】

[式中、Mが金属であり、
Lが配位子であり、
P’がH又は保護基であり、
n’が0〜5の整数である。]
で表される化合物とカップリングさせて、式VII:
【化18】

で表される化合物を形成する工程、及び
b)基P及びP’を除去し、得られる脱保護化合物を環化して、式I:
【化19】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Q、n、R7、R7'、R8、R9、R10、R11は請求項1で定義されるとおりである。]
で表される化合物を形成する工程を含む、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項43】
PがSi(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、CO2ベンジル、C1〜C6アルキルであり、且つ各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルであり、そして
P’がH、Si(R’)3、COC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、C1〜C6アルキルであり、ここで各R’が独立して、C1〜C6アルキル又はフェニルからなる群から選択される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
PがCOC1〜C6アルキル、COOC1〜C6アルキル、COベンジル、CO2ベンジルであり、
P’がC1〜C6アルキルであり、及び
MがBであり、
Lが(OH)若しくは(OC1〜C6アルキル)であり、n’が2であるか、又は
MがSnであり、
Lが(C1〜C6アルキル)であり、n’が3である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
工程b)におけるPが有機又は無機水酸化物を用いて除去され、工程b)におけるP’が三臭化ホウ素、ヨウ化水素酸、ピリジンヒドロクロリド又はピリジンヒドロブロミドを用いて除去される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
環化がP’の除去中に生じる請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項42〜46のいずれか記載の方法により製造される化合物。
【請求項48】
下式:
【化20】

[式中、n、R1〜R4及びR8〜R11は請求項1で定義されるとおりである。]
で表される化合物を環化して、式Iで表される化合物を形成する工程、及び式Iで表される化合物を、その薬学的に許容される塩として単離する任意の工程を含む請求項1に記載の式Iで表される化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−505095(P2008−505095A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519381(P2007−519381)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023044
【国際公開番号】WO2006/007503
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】