説明

エチレンを経由して酢酸から酢酸ビニルを製造するための統合プロセス

本発明は、気相中で酢酸から酢酸ビニルモノマー(VAM)を製造するための統合された2段階の経済的なプロセスを提供する。第1に、単一の反応器区域内か、又は中間体水素化生成物に脱水及び/又はクラッキングのいずれかを行ってエチレンを形成する2重反応器区域内のいずれかにおいて、酢酸を水素化触媒組成物上で選択的に水素化してエチレンを形成する。続く第2段階においては、かくして形成されるエチレンを、好適な触媒上で分子状酸素及び酢酸と反応させてVAMを形成する。本発明の一態様においては、水素化触媒上での酢酸と水素との反応及び脱水触媒上でのその後の反応によってエチレンを選択的に製造し、これを更に酢酸及び分子状酸素と混合し、担持パラジウム/金/カリウム触媒上で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月14日出願の同じ表題の米国特許出願12/291,949(その全部を参照として包含する)に対する優先権を主張する。
本発明は、概して、酢酸とエチレンの反応から酢酸ビニルモノマー(VAM)を製造するための統合プロセスに関する。より詳しくは、本発明は、第1の反応区域内において酢酸をエチレンに転化させ、他の反応区域内においてエチレンを追加の酢酸と更に反応させてVAMを形成する統合プロセスに関する。本発明はまた、第1の反応区域内において第1の触媒組成物を用いて酢酸を水素化し、第2の反応区域内において第2の触媒を用いて水素化中間体を脱水又はクラッキングしてエチレンを形成することを含む統合プロセスにも関する。第2の反応区域からのエチレンは、第3の反応区域内において追加の酢酸と反応させてVAMを形成する。
【背景技術】
【0002】
独立して調達されるエチレンを用いずに酢酸からVAMを製造する経済的に採算の合うプロセスに関する必要性が長い間感じられている。VAMは、重要な用途の中でもとりわけ、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコール製品の製造における重要なモノマーである。従来製造されている石油又は天然ガスを源とするエチレン(これはVAMの製造において用いられる重要な供給原料である)のコストの変動の一因である天然ガス及び原油の価格の変動のために、VAMを製造するためのエチレンの別のコスト的に有効な源に関する必要性がますます大きくなっている。
【0003】
ここで、独立して調達されるエチレンを用いずにVAMを製造することができることが見出された。例えば、合成ガスをメタノールへ還元することができることが周知であり、これは実際にメタノールを製造する1つの好ましい方法である。かくして形成されるメタノールは、次に接触カルボニル化条件下で酢酸に選択的に転化させることができ、これは酢酸の製造のための好ましいプロセスである。かくして形成される酢酸は、次に好適な触媒条件下でエチレンに選択的に転化させることができる。かかる転化のための公知の好ましいプロセスは存在しないが、従来技術はかかる酢酸のエチレンへの転化のための幾つかのプロセスを与えている。しかしながら、これは低い転化率及び収率なので工業的には不適当である。
【0004】
例えば、気相中150〜300℃の温度範囲において、ゼオライト触媒上で種々のエチルエステルからエチレンを製造することができることが報告されている。用いることのできるエチルエステルのタイプとしては、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸のエチルエステルが挙げられる。例えば、Cognionらの米国特許4,620,050を参照。ここでは選択率が許容できるものであると報告されている。
【0005】
Kniftonの米国特許4,270,015においては、一酸化炭素と水素の混合物(合成ガス(シンガス)として通常的に知られている)を、2〜4個の炭素原子を含むカルボン酸と反応させてかかるカルボン酸の対応するエチルエステルを形成し、これを次に、石英反応器内において、約200℃〜600℃の範囲の昇温温度で熱分解してエチレンを得る2工程プロセスによってエチレンを得ることが記載されている。
【0006】
Schreckの米国特許4,399,305においては、E.I. DuPont de Nemours & Co.によってNAFION(登録商標)の商標で市販されているペルフルオロスルホン酸樹脂から構成されるクラッキング触媒を用いて酢酸エチルから高純度のエチレンを得ることが記載されている。
【0007】
エチレンが製造されたら、Herzogらの米国特許6,696,596(その全部を参照として本明細書中に包含する:これにおいては、気相中、固定床触媒上において酢酸及び酸素又は酸素含有ガスと反応させてVAMを製造することが周知であることが示されている)において示されているように、VAMへ転化させるためには酢酸による更なる処理が必要である。
【0008】
エチレン及び酢酸からのVAMの製造の更なる例が、Jobsonらの米国特許6,040,474(これにおいては、第1の反応区域が酢酸へ酸化するためにエチレン及び/又はエタンを含み、第2の反応区域が酢酸及びエチレンを含み、生成物流をその後に分離して、それによって酢酸ビニルを製造する2つの反応区域を用いる酢酸及び/又は酢酸ビニルの製造が記載されている)において示されている。Ellisらの米国特許6,476,261(これにおいては、アルケン及びカルボン酸、例えばエチレン及び酢酸を製造し、これを反応させて酢酸ビニルを形成する酸化プロセスが記載されており、1つより多い反応区域を用いて酢酸ビニルを形成することができることが示されている)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4,620,050
【特許文献2】米国特許4,270,015
【特許文献3】米国特許4,399,305
【特許文献4】米国特許6,696,596
【特許文献5】米国特許6,040,474
【特許文献6】米国特許6,476,261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から、既存のプロセスはエチレンへの必要な選択性を有しないか、或いは既存の技術は高価な酢酸以外の出発物質を示さず及び/又はエチレン以外の生成物を製造することを意図していることが明らかである。
【0011】
本発明は、統合プロセスにおいて酢酸から誘導されるエチレンを用いてVAMを製造して、よりコスト的に有効な製造のために用いることができる他の合成経路を与える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで驚くべきことに、エチレンを酢酸から高い選択率及び収率で製造し、続く工程でこれをVAMに転化させる統合プロセスによって、VAMを工業規模で製造することができることが見出された。VAMの形成は以下においては便宜上「段階2」と呼び、一方、エチレンの製造は「段階1」と呼ぶ。これらの段階のそれぞれ、特に段階1は、以下の議論から明らかとなるように、所望の場合には1つより多い反応器内で行うことができる。
【0013】
ここでは、VAMを唯一のC供給材料としての酢酸から2段階で経済的に、高い選択率及び収率で製造することができる。したがって、本発明の一態様においては、単一の反応区域内において酢酸をエチレンに直接転化させ、他の反応区域内においてエチレンを追加の酢酸と更に反応させてVAMを形成する統合プロセスが提供される。本発明の他の態様においては、第1の反応区域内において第1の触媒組成物を用いて酢酸を水素化し、第2の反応区域内において第2の触媒を用いて水素化中間体を脱水又はクラッキングして高い選択率でエチレンを形成し、次に第3の反応区域内においてエチレンを酢酸と反応させてVAMを製造することを含む統合プロセスも提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例証及び例示のみの目的の複数の態様を参照して本発明を以下において詳細に説明する。特許請求の範囲において示す本発明の精神及び範囲内の特定の態様に対する修正は、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0015】
下記においてより具体的に定義しない限りにおいて、ここで用いる用語はその通常の意味で与える。%などの用語は他に示さない限りにおいてモル%を指す。
「転化率」は、供給流中の酢酸を基準とするモル%として表す。酢酸(AcOH)の転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから下式:
【0016】
【化1】

【0017】
を用いて計算する。
「選択率」は、転化した酢酸を基準とするモル%として表す。例えば、転化率が50モル%であり、転化した酢酸の50モル%がエチレンに転化している場合には、本発明者らはエチレン選択率を50%と言う。選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次のようにして計算する。
【0018】
【化2】

【0019】
段階1:酢酸からのエチレンの形成
便宜上の目的で、本発明者らはここでは、酢酸からのエチレンの形成を、この形態のプロセスを1つの反応区域内で行うか又はここで記載するように一連の反応区域内で行うかにかかわらず本発明方法の「段階1」と呼ぶ。
【0020】
理論に縛られることは意図しないが、本発明方法の段階1にしたがう酢酸のエチレンへの転化は、次の化学式の1以上に従って進行すると考えられる。
工程1a:酢酸のエチレンへの水素化:
【0021】
【化3】

【0022】
工程1b:酢酸のエタノールへの水素化:
【0023】
【化4】

【0024】
工程1c:酢酸の酢酸エチルへの水素化:
【0025】
【化5】

【0026】
工程2a:酢酸エチルのエチレン及び酢酸へのクラッキング:
【0027】
【化6】

【0028】
工程2b:エタノールのエチレンへの脱水:
【0029】
【化7】

【0030】
工程c:酢酸をエチレンへ酸化付加してVAMを形成する段階:
【0031】
【化8】

【0032】
VAMに更に転化させるためのエチレンを製造することに関する本発明の一態様によれば、酢酸のエチレンへの転化は、例えば単一の固定床であってよい単一の反応区域内で行う。固定床には、異なる触媒粒子の混合物、又は複数の触媒を含む触媒粒子を含ませることができる。通常は、反応区域内に少なくとも水素化触媒を含ませ、場合によっては更に脱水及び/又はクラッキング触媒を含ませる。
【0033】
本発明方法の第1工程における酢酸のエタノールへの水素化においては、当業者に公知の種々の水素化触媒を用いることができる。好適な水素化触媒は、好適な担体上の金属触媒であるものである。上述したように、限定なしに以下の触媒:銅、コバルト、ルテニウム、ニッケル、アルミニウム、クロム、亜鉛、パラジウム、及びこれらの混合物:を言及することができる。通常は、好適な担体上の単一の金属、2元金属触媒、又は3元金属触媒を水素化触媒として用いることができる。したがって、単独か、或いはアルミニウム、クロム、又は亜鉛と組み合わせた銅が特に好ましい。同様に、単独か又はルテニウムと組み合わせたコバルトが好ましい。第2又は第3の金属としてコバルトと共に用いることができる追加の金属の例としては、限定なしに以下のもの:白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、クロム、銅、スズ、モリブデン、タングステン、及びバナジウム:が挙げられる。
【0034】
当該技術において公知の種々の触媒担体を用いて本発明の触媒を担持することができる。かかる担体の例としては、限定なしに、ゼオライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭素、黒鉛、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい担体は、H−ZSM−5、酸化鉄、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭素、又は黒鉛である。また、シリカの純度がより高いと、本発明における担体としてより好ましいことに留意することも重要である。
【0035】
担持水素化触媒の具体例としては、ゼオライト、例えばH−ZSM−5、酸化鉄、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭素、黒鉛、及びこれらの混合物が挙げられる。特に、上述したように、酸化鉄上に担持されている銅、銅−アルミニウム触媒、H−ZSM−5上に担持されているコバルト、シリカ上に担持されている2元金属ルテニウム−コバルト触媒、炭素上に担持されているコバルトが好ましい。
【0036】
商業的に入手できる触媒の幾つかとしては以下のもの:Sud ChemieによってT-4489の名称で販売されている銅−アルミニウム触媒;T-2130、T-4427、及びT-4492の名称で販売されている銅−亜鉛触媒;T-4419及びG-99Bの名称で販売されている銅−クロム触媒;並びにNiSAT 310、C47-7-04、G-49、及びG-69の名称で販売されているニッケル触媒(これらは全てSud Chemieによって販売されている):が挙げられる。T-4489の名称で販売されている銅−アルミニウム触媒が特に好ましい。
【0037】
本発明においては担体上の金属装填量はあまり重要ではなく、約3重量%〜約10重量%の範囲で変化させることができる。担体の重量を基準として約4重量%〜約6重量%の金属装填量が特に好ましい。したがって、例えば酸化鉄上に担持されている4〜6重量%の銅が特に好ましい触媒である。
【0038】
金属の含浸は、当該技術において公知の任意の方法を用いて行うことができる。通常は、含浸の前に、担体を120℃において乾燥し、約0.2〜0.4mmの範囲の寸法分布を有する粒子に成形する。場合によっては、担体をプレスし、粉砕し、所望の寸法分布に篩別することができる。担体材料を所望の寸法分布に成形する任意の公知の方法を用いることができる。
【0039】
例えばα−アルミナ又は酸化鉄のような低い表面積を有する担体に関しては、所望の金属装填量が得られるように、完全な湿潤又は過剰の液体含浸が得られるまで金属溶液を過剰に加える。
【0040】
上述したように、幾つかの水素化触媒は2元金属のものである。一般にかかる場合においては、1つの金属が促進剤金属として作用し、他の金属が主金属である。例えば、銅、ニッケル、コバルト、及び鉄は、本発明の水素化触媒を製造するための主金属であると考えられる。主金属は、タングステン、バナジウム、モリブデン、クロム、又は亜鉛のような促進剤金属と組み合わせることができる。しかしながら、時には主金属を促進剤金属として作用させることもでき、その逆も成り立つことを留意すべきである。例えば、鉄を主金属として用いる場合には、ニッケルを促進剤金属として用いることができる。同様に、クロムは、銅と組み合わせて主金属として用いることができ(即ち、主2元金属としてCu−Cr)、これはセリウム、マグネシウム、又は亜鉛のような促進剤金属と更に組み合わせることができる。
【0041】
2元金属触媒は一般に2工程で含侵させる。まず「促進剤」金属を、次に「主」金属を加える。それぞれの含侵工程の後に乾燥及びカ焼を行う。2元金属触媒はまた、共含侵によって製造することもできる。上記に記載のような3元金属Cu/Cr含有触媒の場合には、「促進剤」金属の添加から開始する逐次含侵を用いることができる。第2の含侵工程には、2つの主金属、即ちCu及びCrの共含侵を含ませることができる。例えば、SiO上のCu−Cr−Ceは、まず硝酸セリウムを含侵させ、次に銅及びクロムの硝酸塩を共含侵させることによって製造することができる。ここでも、それぞれの含侵の後に乾燥及びカ焼を行う。殆どの場合においては、含侵は金属硝酸塩溶液を用いて行うことができる。しかしながら、カ焼によって金属イオンを放出する種々の他の可溶性塩を用いることもできる。含侵のために好適な他の金属塩の例としては、金属水酸化物、金属酸化物、金属酢酸塩、アンモニウム金属酸化物、例えば7モリブデン酸アンモニウム6水和物、金属酸、例えば過レニウム酸溶液、金属シュウ酸塩などが挙げられる。
【0042】
上述したように、任意の公知のゼオライトを担体触媒として用いることができる。合成及び天然を含む広範囲のゼオライト触媒が当該技術において公知であり、これらは全て本発明において担体触媒として用いることができる。より詳しくは、少なくとも約0.6nmの孔径を有する任意のゼオライトを用いることができるが、かかるゼオライトの中で、モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される触媒が好ましく用いられる。
【0043】
大孔モルデナイトの製造は、例えばPlummerの米国特許4,018,514、及びD. DOMINE及びJ. QUOBEXのMol. Sieves Pap. Conf., 1967, 78, Soc. Chem. Ind. Londonに記載されている。
【0044】
ゼオライトXは例えばMiltonの米国特許2,882,244に、ゼオライトYはBreckの米国特許3,130,007に記載されている。
種々のゼオライト及びゼオライトタイプの材料が、化学反応を触媒することに関して当該技術において公知である。例えば、Argauerの米国特許3,702,886においては、種々の炭化水素転化プロセスを触媒するのに有効である「ゼオライトZSM−5」と示される種類の合成ゼオライトが開示されている。
【0045】
本発明の手順のために好適なゼオライトは、塩基性形態、部分的か又は完全に酸性化した形態、或いは部分的に脱アルミニウム化した形態であってよい。
他の形態においては、任意の公知の脱水触媒を本発明方法の反応区域において用いることができる。通常は、脱水触媒としてゼオライト触媒を用い、これは脱水素触媒を担持することができる。少なくとも約0.6nmの孔径を有する任意のゼオライトを用いることができるが、かかるゼオライトの中で、モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される脱水触媒が好ましく用いられる。
【0046】
「H−ZSM−5」又は「H−モルデナイト」ゼオライトとして示される活性脱水触媒は、対応する「ZSM−5」ゼオライト又は「モルデナイト」ゼオライトから、当該技術において周知の技術を用いて後者のゼオライトのカチオンの殆ど、一般には少なくとも約80%を水素イオンで置換することによって製造される。例えば、H−モルデナイトゼオライトは、アンモニウム形態のモルデナイトを500〜550℃で4〜8時間カ焼することによって製造された。ナトリウム形態のモルデナイトを前駆体として用いる場合には、カ焼の前にナトリウムモルデナイトをアンモニウム形態にイオン交換する。
【0047】
これらのゼオライト触媒は、実質的に結晶質のアルミノシリケートであるか、或いは中性形態で明確な結晶構造のシリカとアルミナの組み合わせである。本発明の目的のために特に好ましい種類のゼオライト触媒においては、これらのゼオライトにおけるAlに対するSiOのモル比は約10〜60の比の範囲内である。
【0048】
上述したように、エチレンは、脱水、並びに酢酸エチルをエチレン及び酢酸に分解又は「クラッキング」することによって製造される。これは、単純に昇温温度における熱クラッキングとして行うことができ、或いは所望の場合にはクラッキング触媒を用いる触媒反応であってよい。好適なクラッキング触媒としては、上述のSchreckの米国特許4,399,305(その開示事項は参照として包含する)に開示されているペルフルオロスルホン酸樹脂のようなスルホン酸樹脂が挙げられる。また、Cognionらの米国特許4,620,050(その開示事項も参照として包含する)に記載されているように、ゼオライトもまたクラッキング触媒として好適である。したがって、本発明の高効率プロセスにおいて、ゼオライト触媒を用いて、同時にエタノールをエチレンに脱水し且つ酢酸エチルをエチレンに分解することができる。
【0049】
酢酸のエチレンへの選択率は、好適には10%より大きく、例えば少なくとも20%、又は少なくともおよそ25%であり、通常の場合においては約40%以下である。副生成物の混合比によって、中程度の選択率で運転し、アセトアルデヒドのような生成物を更に水素化及び脱水するために再循環することが望ましい可能性があるが、但しCOのような望ましくない生成物への選択率は低く保持する。
【0050】
好ましくは、本発明方法の目的のためには、好適な水素化触媒は、酸化鉄上の銅か、或いはSud ChemieによってT-4489の商品名で販売されている銅−アルミニウム触媒、H−ZSM−5上に担持されているコバルト、2元金属触媒、シリカ上に担持されているルテニウム及びコバルト、並びに炭素上に担持されているコバルトのいずれかである。本発明方法のこの態様においては、酸化鉄担体上又は2元金属銅−アルミニウム触媒中の銅の装填量は、通常は約3重量%〜約10重量%の範囲であり、好ましくは、これは約4重量%〜約6重量%の範囲である。同様に、H−ZSM−5又はシリカ又は炭素上のコバルトの装填量は通常は約5重量%である。2元金属触媒中のルテニウムの量も約5重量%である。
【0051】
更に、酢酸の水素化及び脱水は、触媒床を横切る圧力損失を克服するのに丁度十分な圧力において行う。
反応は、気体状態又は液体状態において、広範囲の条件下で行うことができる。好ましくは、反応は気相中で行う。例えば約200℃〜約375℃、好ましくは約250℃〜約350℃の範囲の反応温度を用いることができる。圧力は一般に反応に対して重要ではなく、大気圧以下、大気圧、又は大気圧以上の圧力を用いることができる。しかしながら、殆どの場合においては、反応圧は約1〜30絶対気圧の範囲である。
【0052】
反応は、1モルのエチレンを製造するために酢酸1モルあたり2モルの水素を消費するが、供給流中の酢酸と水素との実際のモル比は広範囲の限界値の間、例えば約100:1〜1:100の間で変化させることができる。しかしながら、この比は約1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。
【0053】
メタノールのカルボニル化、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、酸化発酵、及び嫌気発酵などによって酢酸を製造することは周知である。石油及び天然ガスはより高価になってきているので、代替の炭素源から酢酸並びにメタノール及び一酸化炭素のような中間体を製造する方法により興味が持たれている。
【0054】
任意の好適な炭素源から誘導することができる合成ガス(シンガス)からの酢酸の製造が特に興味深い。例えば、Vidalinの米国特許6,232,352(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)においては、酢酸を製造するためにメタノールプラントを改造する方法が教示されている。メタノールプラントを改造することによって、新しい酢酸プラントのためのCO製造に関連する大きな設備コストが大きく減少するか又は大きく排除される。シンガスの全部又は一部をメタノール合成ループから迂回させ、分離器ユニットに供給してCO及び水素を回収し、これを次に酢酸を製造するために用いる。酢酸に加えて、このプロセスを用いて本発明に関して用いられる水素を製造することもできる。
【0055】
Steinbergらの米国特許RE35,377(これも参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が与えられている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを追加の天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを形成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。この方法では更に、上述のように本発明に関して用いることができる水素が生成する。Gradyらの米国特許5,821,111(ガス化によって廃バイオマスを合成ガスに転化させる方法が開示されている)、及びKindigらの米国特許6,685,754(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)も参照。
【0056】
酢酸は、反応温度において気化させて、次に、非希釈状態か、或いは窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのような比較的不活性のキャリアガスで希釈した状態で、水素と一緒に供給することができる。
【0057】
或いは、Scatesらの米国特許6,657,078(その開示事項は参照として包含する)に記載されている種類のメタノールカルボニル化ユニットのフラッシュ容器からの粗生成物として、蒸気形態の酢酸を直接回収することができる。粗蒸気生成物は、酢酸及び軽質留分を凝縮するか又は水を除去する必要なしに本発明の反応区域に直接供給することができ、これによって全体の処理コストが節約される。
【0058】
接触又は滞留時間も、酢酸の量、触媒、反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも気相反応に関しては約0.5〜100秒の間である。
【0059】
通常は、触媒は、例えば、通常は蒸気形態の反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過する細長いパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。所望の場合には、流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、触媒床をガラスウールのような不活性材料と組み合わせて用いて、触媒床を通る反応物質流の圧力損失、及び反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することが有利である。
【0060】
1つの例においては、酢酸及び水素の供給流を、約250℃〜350℃の範囲の温度において、酸化鉄上に担持されている銅、銅−アルミニウム触媒、H−ZSM−5上に担持されているコバルト、シリカ上に担持されているルテニウム−コバルト、又は炭素上に担持されているコバルトから選択される触媒と接触させてエチレンを形成することを含む、酢酸からエチレンを選択的に形成する方法が提供される。
【0061】
この例においては、好ましい触媒は、酸化鉄上5重量%銅、H−ZSM−5上5重量%コバルト、シリカ上5重量%コバルト/5重量%ルテニウム、或いは炭素上5重量%コバルトである。本発明方法のこの態様においては、反応を、気相中、触媒床を充填した管状反応器内で、約250℃〜350℃の範囲の温度及び約1〜30絶対気圧の範囲の圧力において行い、反応物質の接触時間を約0.5〜100秒の範囲にすることが好ましい。
【0062】
段階2:エチレン及び追加量の酢酸を含む気体生成物流からのVAMの形成
上述したように、便宜的な目的のために、本発明者らは、段階1において形成されるエチレンと追加の酢酸及び酸素とを反応させてVAMを形成することを、2より多い特定のプロセス工程が転化に含まれるか否かにかかわらず、ここでは本発明方法の「段階2」と呼ぶ。
【0063】
第2(又はエチレンを含む生成物流の形成のために用いるプロセスパラメーターによって第3)の反応器区域内において、水素化反応器からの気体生成物流を、触媒、並びに分子状酸素及び追加量の酢酸を含む第2の供給流と更に接触させる。等モル比のエチレン及び酢酸をこの反応器区域中に供給することが好ましい。
【0064】
例えばGB−1559540、米国特許5,185,308;5,691,267;6,114,571;並びにWO−99/08791(米国特許6,603,038に対応);に記載されているような、酢酸によってエチレンを酸化反応させてVAMを形成するための公知の任意の触媒を本発明方法の段階2において用いることができる。EP−A−0330853においては、金に代わる追加の促進剤としてパラジウム、カリウム、マンガン、及びカドミウムを含む、VAMを製造するための含侵触媒が記載されている。米国特許6,852,877も参照。直ぐ上で言及した参考文献は全て、エチレン、酢酸、及び酸素からVAMを形成することに関するものとして、その全部を参照として本明細書中に包含する。
【0065】
GB−1559540においては、本発明方法の工程(d)において用いるような、エチレン、酢酸、及び酸素の反応によるVAMの製造において用いることができる好適な触媒が記載されている。この触媒は、(1)3〜7mmの粒径及び約0.2〜1.5mL/gの孔容積を有する触媒担体の約3.0〜9.0のpHを有する10重量%水懸濁液;(2)担体の表面から0.5mm未満伸長している触媒担体の表面層中に分配されており、合金中のパラジウムが触媒1Lあたり約1.5〜5.0gの量で存在し、金が触媒1Lあたり約0.5〜2.25gの量で存在しているパラジウム−金合金;並びに(3)触媒1Lあたり5〜60gのアルカリ金属酢酸塩;から構成される。
【0066】
Bartleyらの米国特許5,185,308においては、(1)約3〜約7mmの粒径及び0.2〜1.5mL/gの孔容積を有する触媒担体;(2)触媒担体粒子の厚さ1.0mmの最も外側の層中に分配されているパラジウム及び金;並びに(3)約3.5〜約9.5重量%の酢酸カリウム;から実質的に構成され、触媒中のパラジウムに対する金の重量比が0.6〜1.25の範囲である、エチレン、酢酸、及び酸素含有ガスからのVAMの製造に関して活性のシェル含侵触媒が記載されている。
【0067】
Nicolauらの米国特許5,691,267においては、エチレン、酸素、及び酢酸の反応からのVAMの気相形成において用いる触媒のための2工程金添加法が記載されている。この触媒は、(1)触媒担体に、水溶性パラジウム塩、及びナトリウム−パラジウム塩化物及び塩化第2金のような第1の量の水溶性金化合物の水溶液を含侵させ;(2)パラジウム及び金化合物と反応して担体表面上にパラジウム及び金の水酸化物を形成する水酸化ナトリウム水溶液のような反応性塩基性溶液による含侵担体の処理によって水不溶性のパラジウム及び金化合物を沈殿させることによって担体上に貴金属を固定し;(3)水で洗浄して塩化物イオン(又は他のアニオン)を除去し;そして(4)全ての貴金属水酸化物を還元してパラジウム及び金を遊離化する:ことによって形成され、改良点は、(5)第1の量の水溶性金試薬を固定した後に、担体に第2の量の水溶性金化合物を含侵させ;そして(6)第2の量の水溶性金化合物を固定する;ことを含む。
【0068】
Abelらの米国特許6,114,571においては、担体上のパラジウム、金、ホウ素、及びアルカリ金属化合物を含む、エチレン、酢酸、及び酸素又は酸素含有ガスから酢酸ビニルを気相中で形成するための触媒が記載されている。この触媒は、(a)担体に可溶性パラジウム及び金化合物を含侵し;(b)担体上の可溶性パラジウム及び金化合物をアルカリ性溶液によって不溶の化合物に転化させ;(c)担体上の不溶のパラジウム及び金化合物を、液相中で還元剤によって還元し;(d)担体を洗浄し、次に乾燥し;(e)担体に可溶性アルカリ金属化合物を含侵し;そして(f)最後に担体を最高で1500℃において乾燥し;最終乾燥の前にホウ素又はホウ素化合物を触媒に施す;ことによって製造される。
【0069】
Hagemeyerらの米国特許6,603,038に対応するWO−99/08791においては、特にエチレン及び酢酸を気相酸化してVAMを形成するための、多孔質担体上に金属ナノ粒子を含む触媒を製造する方法が記載されている。この発明は、多孔質担体粒子上に周期律表Ib及びVIIIb亜族を含む金属の群からの1種類又は複数の金属を含む触媒を製造する方法であって、周期律表のIb及びVIIIb亜族からの金属の化合物の群からの1種類又は複数の前駆体を多孔質担体に施す第1工程、及びそれに少なくとも1種類の前駆体を施した多孔質、好ましくはナノ多孔質の担体を少なくとも1種類の還元剤で処理してかかる担体の孔内にその場で製造された金属ナノ粒子を得る第2工程を有することを特徴とする方法に関する。
【0070】
通常は、本発明方法のVAMの形成は不均一で行い、反応物質は気相中に存在させる。
本発明方法におけるVAMの形成において用いる分子状酸素含有ガスには、窒素のような他の不活性ガスを含ませることができる。好ましくは、VAMの形成において用いる分子状酸素は空気である。
【0071】
本発明方法の段階2は、約140℃〜220℃の範囲の温度において好適に行うことができる。本発明方法の段階2は、約1〜100絶対気圧の範囲の圧力において好適に行うことができる。本発明方法の段階2は、適当な方法で反応熱を除去することができる任意の好適な反応器デザインで行うことができる。好ましい技術的解決法は、ここで記載するような固定床又は流動床反応器である。
【0072】
本発明方法の段階2において、約5〜50%の範囲の酢酸転化率を達成することができる。本発明方法の段階2において、約20〜100%の範囲の酸素転化率を達成することができる。本発明方法の段階2において、触媒は好適には時間あたり触媒1Lあたり約100〜2000gの酢酸ビニルの範囲の生産性(空時収率、STY)を有するが、時間あたり触媒1Lあたり>10000gの酢酸ビニルもまた好適である。
【0073】
既に上述したように、本方法の段階2からの気体生成物流は、VAM及び水、並びに場合によっては未反応の酢酸、エチレン、酢酸エチル、エタン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、及び場合によっては微量の他の副生成物も含む。本発明方法の段階2とVAM分離工程との間の中間において、存在する場合にはエチレン及びエタン、一酸化炭素及び二酸化炭素を、生成物流から好ましくはスクラビングカラムからの塔頂気体フラクションとして取り出すことが好ましく、酢酸ビニル、水、及び酢酸を含む液体フラクションは塔底から取り出す。
【0074】
段階2からの生成物流は、VAM、水、及び酢酸を含み、中間スクラビング工程を用いるか又は用いずに、最終工程において蒸留によって、酢酸ビニル及び水を含む塔頂共沸フラクション及び酢酸を含む塔底フラクションに分離する。
【0075】
VAMは、本発明の段階2のプロセス工程において分離される共沸フラクションから、好適には例えばデカンテーションによって回収する。回収されたVAMは、所望の場合には公知の方法で更に精製することができる。段階2において分離される酢酸を含む塔底フラクションは、好ましくは、更なる精製を行うか又は好ましくは行わないで、本方法の段階1又は所望の場合には段階2へ再循環する。
【実施例】
【0076】
以下の実施例によって、本発明方法において用いる種々の触媒を製造するために用いた手順を記載する。
実施例A
酸化鉄上5重量%銅の製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した酸化鉄(95g)を、オーブン内、窒素雰囲気下で120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、蒸留水(100mL)中の硝酸銅(17g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。
【0077】
実施例B
H−モルデナイトゼオライトの製造:
アンモニウム形態のモルデナイトを500〜550℃において4〜8時間カ焼することによってH−モルデナイトゼオライトを製造した。ナトリウム形態のモルデナイトを前駆体として用いる場合には、カ焼の前にナトリウムモルデナイトをアンモニウム形態にイオン交換した。
【0078】
実施例C
H−ZSM−5上5重量%コバルトの製造:
金属塩として適当量の硝酸コバルト6水和物、及び担体触媒としてH−ZSM−5を用いた他は実施例Aを実質的に繰り返して、H−ZSM−5上に担持されている5重量%コバルトを製造した。
【0079】
実施例D
シリカ上5重量%コバルト/5重量%ルテニウムの製造:
金属塩として適当量の硝酸コバルト6水和物及び硝酸ニトロシルルテニウム、並びに担体触媒としてシリカを用いた他は実施例Aを実質的に繰り返して、シリカ上に担持されている5重量%コバルト/5重量%ルテニウムを製造した。
【0080】
実施例E
炭素上5重量%コバルトの製造:
金属塩として適当量の硝酸コバルト6水和物、及び担体触媒として炭素を用いた他は実施例Aを実質的に繰り返して、炭素上に担持されている5重量%コバルトを製造した。
【0081】
実施例F
概して以下のようにして、エチレン、酢酸、及び酸素をVAMに転化させるためのK,Pd,Au/TiO触媒を製造した。
【0082】
2.11gの酢酸パラジウム(Aldrich)及び1.32gの酢酸金を30mLの酢酸中に溶解した。用いた酢酸金の製造は、例えばWarren, Jr.らの米国特許4,933,204に記載されている。100mLのTiO担体(P25ペレット、Degussa, Hanau)をパラジウム及び金の酢酸塩の溶液に加えた。次に、ロータリーエバポレーターを用いて70℃において酢酸の大部分を蒸発させ、次に残りを、油ポンプを用いて60℃において、最後に真空乾燥室内において60℃で14時間蒸発させた。
【0083】
得られたペレットを、直接ペレットを通してガス(40L/時)を通しながら、窒素中10体積%の水素の気体混合物を用いて500℃及び1barにおいて1時間還元した。カリウムイオンを装填するために、混合装置内において、還元したペレットを30mLの水中に4gの酢酸カリウムを含む溶液に15分かけて加えた。
【0084】
次に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸発させた。ペレットを100℃において14時間乾燥した。
実施例G
Pd及びAuの製造:
概して以下のようにして、エチレン、酸素又は空気、及び酢酸を含む気体流をVAMに転化させるためのPd及びAuを含む酢酸ビニル触媒を製造した。
【0085】
約5mmの直径を有する球状シリカ担体(SudChemie)上で触媒を製造した。触媒がそれぞれ約7g/Lのパラジウム金属及び約7g/Lの金金属を有するような十分な量のナトリウムパラジウム四塩素酸塩及びナトリウムテトラクロロ金酸塩を含む水溶液をシリカ担体に含侵させた。
【0086】
含侵の後、担体をロータリーエバポレーター内に配置し、真空を用いないで、283mLの50%w/w水酸化ナトリウム水溶液で処理した。熱水浴中で回転させることによって、担体を70℃の温度の水酸化ナトリウム溶液中において約5rpmで約2.5時間回転させた。得られた触媒を、窒素中5%のエチレンの気体ブレンド中において、約150℃の温度、約0.5SCFH(標準立方フィート/時)の流速において、大気圧で約5時間還元して、金属塩を金属に還元した。
【0087】
次に、触媒にナトリウムテトラクロロ金酸塩の水溶液及び1.65gの50%w/w水酸化ナトリウム固定水溶液を再び含侵させた。得られた触媒を、窒素中5%のエチレンの気体ブレンド中において、約150℃の温度、約0.5SCFH(標準立方フィート/時)の流速において、大気圧で約5時間還元して、金塩を金金属に還元した。
【0088】
実施例H
Pd,Au,及びKの製造:
概して以下のようにして、エチレン、酢酸、及び酸素又は酸素含有ガスから酢酸ビニルを気相中で製造するための触媒を製造した。
【0089】
7.3mmの直径を有する250mLの二酸化ケイ素球状触媒担体(Sud Chemie)に、4.6gのNaPdCl及び1.4gのNaAuClを含む85mLの水溶液を含侵させた。17gのホウ砂の水溶液283mLを加えることによって不溶の金属化合物を沈殿させた。次に、容器を直ちに、真空を用いないでロータリーエバポレーターによって5rpmで2.5時間回転させた。20mLの水中の7mLのヒドラジン水和物を加え、容器を直ちに5rpmで1時間回転させることによって還元を行った。
【0090】
かくして得られたペレットを1000℃において1時間乾燥した。還元された触媒に、10gの酢酸カリウムを含み、乾燥担体材料の吸収容量に対応する体積を有する水溶液を含侵させた。次に触媒を再び乾燥した。
【0091】
実施例I
Pd,Au,及びBの製造:
以下のようにして、エチレン及び酢酸を気相酸化して酢酸ビニルを与えるための多孔質担体上のナノサイズの金属粒子を含む触媒を製造した。
【0092】
被覆ユニット内において、300m/gのBET表面積を有する200gのSiO担体(Siliperl AF125, Engelhard)に、500mLの水中の3.33g(18.8ミリモル)の塩化パラジウム及び1.85g(4.7ミリモル)の金酸の塩酸溶液を、30〜32℃の温度において35分間かけて断続的に噴霧した。
【0093】
次に、担体球状体を乾燥し、200mLの水中に溶解した20gのクエン酸三カリウム水和物を25分間かけて噴霧した。10rpmのドラム回転速度において、噴霧を1barにおいて断続的に行った。入口温度(温空気温度)は60℃であり、生成物の温度は32〜30℃であった。これにより、400μmのシェル厚を有する均一に含侵された被覆触媒が得られた。TEMによってナノサイズ粒子の直径を求めた。平均粒径は30nmであった。
【0094】
生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析:
オンラインGCによって生成物の分析を行った。1つの炎イオン化検出器(FID)及び2つの熱伝導度型検出器(TCD)を備えた3チャンネルの小型GCを用いて、反応物質及び生成物を分析した。フロントチャンネルには、FID及びCP-Sil 5(20m)+WaxFFap(5m)カラムを取り付け、これを用いて
アセトアルデヒド;
エタノール;
アセトン;
酢酸メチル;
酢酸ビニル;
酢酸エチル;
酢酸;
エチレングリコールジアセテート;
エチレングリコール;
エチリデンジアセテート;
パラアルデヒド;
を定量した。
【0095】
ミドルチャンネルには、TCD及びPorabond Qカラムを取り付け、これを用いて
CO
エチレン;
エタン;
を定量した。
【0096】
バックチャンネルには、TCD及びMolsieve 5Aカラムを取り付け、これを用いて
ヘリウム;
水素;
窒素;
メタン;
一酸化炭素;
を定量した。
【0097】
反応の前に、個々の化合物をスパイクすることによって異なる成分の保持時間を求め、公知の組成の較正用ガス又は公知の組成の液体溶液のいずれかを用いてGCを較正した。これによって、種々の成分に関する応答係数を決定することができた。
【0098】
実施例1及び2は、本発明方法の段階1において、水素化触媒及び脱水触媒の2種類の触媒を用いて二重反応区域内でエチレンを形成することを示す。
実施例1
用いた触媒は、酸化鉄上銅触媒、Sud Chemieから購入したT-4489、及びPlummerの米国特許4,018,514にしたがって製造したナトリウムアルミノシリケートモルデナイト触媒中のゼオライトの重量を基準として500ppm以外のナトリウムイオンを水素イオンで置換することによって製造したH−モルデナイトゼオライト、或いはシリカとアルミナとの比が好ましくは約15:1〜約100:1の範囲である同等物であった。好適な触媒は、約20:1のシリカとアルミナとの比を有するZeolyst Internationalから入手できるCBV21Aであった。
【0099】
30mmの内径を有し、制御された温度に昇温することができるステンレススチール製の管状反応器内に、最上層として30mLの酸化鉄上5重量%銅触媒、及び底層として20mLのH−モルデナイトを配置した。充填後の合計の触媒床の長さは約70mmであった。
【0100】
供給液は実質的に酢酸から構成されていた。反応供給液を蒸発させ、水素及びキャリアガスとしてヘリウムと一緒に、2500hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)で、300℃の温度及び100psigの圧力において反応器に充填した。供給流は、約6.1モル%〜約7.3モル%の酢酸、及び約54.3モル%〜約61.5モル%の水素を含んでいた。供給流を、まず水素化触媒(最上)層に供給して、水素化された酢酸の中間体を有する流れが次に脱水触媒層と接触するようにした。反応器からの蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。酢酸の転化率は65%であり、エチレン選択率は85%であった。アセトンへの選択率は3%であり、酢酸エチルへの選択率は2%であり、エタノールへの選択率は0.6%であった。二酸化炭素は比較的低く、転化した酢酸のCOへの測定された選択率は4%であった。
【0101】
実施例2
用いた触媒は、実施例Aの手順にしたがって製造した酸化鉄上5重量%銅、及び実施例1において上述したようにナトリウムアルミノシリケートモルデナイト触媒中のゼオライトの重量を基準として500ppm以外のナトリウムイオンを水素イオンで置換することによって製造したH−モルデナイトゼオライトであった。
【0102】
2,500hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)の気化酢酸、水素、及びヘリウムの供給流を用いて、350℃の温度及び100psigの圧力において、実施例1に示す手順を実質的に繰り返した。得られた供給流は、約7.3モル%の酢酸及び約54.3モル%の水素を含んでいた。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。酢酸の転化率は8%であり、エチレン選択率は18%であった。
【0103】
一般的に言えば、およそ10%より高いエチレンへの選択率が非常に望ましく、エタノール又は酢酸エチルのような他の副生成物は未反応の酢酸と一緒に反応器に再循環することができ、更に他の副生成物は再処理するか、又は燃料価のために用いることができると認められる。10%未満、好ましくは5%未満のCOへの選択率が望ましい。
【0104】
比較例1A〜5A
これらの例は、エチレンが形成されなかったか及び/又は非常に低いレベルのエチレンが検出された種々の触媒上での酢酸と水素の反応を示す。
【0105】
これらの例の全てにおいて、表1に示す異なる触媒を用いた他は実施例1に示す手順に実質的にしたがった。表1に要約するように、これらの比較例の全てにおいては、1つの単一の触媒層のみを用いた。反応温度、及びエチレンへの選択率も表1にまとめる。
【0106】
【表1】

【0107】
これらの例においては、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸エチル、エタン、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、イソプロパノール、アセトン、及び水などの種々の他の生成物が検出された。
【0108】
実施例3〜6は、本発明方法の段階1における単一の反応器内でのエチレンの形成を示す。
実施例3
用いた触媒は、実施例Aの手順に従って製造した酸化鉄上5重量%銅であった。
【0109】
30mmの内径を有し、制御された温度に昇温することができるステンレススチール製の管状反応器内に、50mLの酸化鉄上5重量%銅触媒を配置した。充填後の触媒床の長さは約70mmであった。
【0110】
供給液は、実質的に酢酸から構成されていた。反応供給液を蒸発させ、水素及びキャリアガスとしてヘリウムと一緒に、約2500hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)で、約350℃の温度及び100psigの圧力において反応器に充填した。得られた供給流は、約4.4モル%〜約13.8モル%の酢酸、及び約14モル%〜約77モル%の水素を含んでいた。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。結果を表2に示す。エチレンへの選択率は16%であり、酢酸の転化率は100%であった。
【0111】
実施例4
用いた触媒は、実施例Cの手順にしたがって製造したH−ZSM−5上5重量%コバルトであった。
【0112】
10,000hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)の気化酢酸、水素、及びヘリウムの供給流を用いて、250℃の温度及び1barの圧力において、実施例3に示す手順を実質的に繰り返した。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。結果を表2に示す。酢酸の転化率は3%であり、エチレン選択率は28%であった。
【0113】
実施例5
用いた触媒は、実施例Dの手順にしたがって製造したシリカ上に担持されている5重量%のコバルト及び5重量%のルテニウムを含む2元金属触媒であった。
【0114】
2,500hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)の気化酢酸、水素、及びヘリウムの供給流を用いて、350℃の温度及び1barの圧力において、実施例1に示す手順を実質的に繰り返した。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。結果を表2に示す。酢酸の転化率は4%であり、エチレン選択率は14%であった。
【0115】
実施例6
用いた触媒は、実施例Eの手順にしたがって製造した炭素上に担持されている5重量%のコバルトであった。
【0116】
2,500hr−1の平均合計気体空間速度(GHSV)の気化酢酸、水素、及びヘリウムの供給流を用いて、350℃の温度及び1barの圧力において、実施例1に示す手順を実質的に繰り返した。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。結果を表2に示す。酢酸の転化率は2%であり、エチレン選択率は12%であった。
【0117】
一般的に言えば、およそ10%より高いエチレンへの選択率が非常に望ましく、エタノール又は酢酸エチルのような他の副生成物は未反応の酢酸と一緒に反応器に再循環することができ、更に他の副生成物は再加工するか、又は燃料価のために用いることができると認められる。10%未満、好ましくは5%以下のCOへの選択率が望ましい。
【0118】
【表2】

【0119】
比較例6A〜10A
これらの例は、エチレンが形成されなかったか及び/又は非常に低いレベルのエチレンが検出された種々の触媒上での酢酸と水素の反応を示す。
【0120】
これらの例の全てにおいて、表3に示す異なる触媒を用いた他は実施例3に示す手順に実質的にしたがった。反応温度及びエチレンへの選択率も表3にまとめる。
【0121】
【表3】

【0122】
これらの例においては、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸エチル、エタン、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、イソプロパノール、アセトン、及び水などの種々の他の生成物が検出された。
【0123】
実施例7
エチレン、酢酸、及び酸素をVAMに転化させるために用いた触媒は、上記の実施例Fの手順に従って製造したK,Pd,Au/TiOであった。Zeyssらの米国特許6,852,877に示す手順を用い、本発明方法の段階1である実施例1〜6からの供給流の1つ、及び分子状酸素を化学量論量の酢酸と共に用いて、本発明方法の段階2を行った。
【0124】
段階2に関する代表的な反応条件及び選択率を下表4に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
実施例8
エチレン、酸素、及び酢酸をVAMに転化させるために用いた触媒は、上記の実施例Gの手順に従って製造したPd/Auであった。Nicolauらの米国特許5,691,267に示す手順を用い、本発明方法の段階1である実施例1〜6からの供給流の1つ、及び分子状酸素を化学量論量の酢酸と共に用いて、本発明方法の段階2を行った。
【0127】
実施例9
エチレン、酸素、及び酢酸をVAMに転化させるために用いた触媒は、上記の実施例Hの手順に従って製造したPd/Auであった。Abelらの米国特許6,114,571に示す手順を用い、本発明方法の段階1である実施例1〜6からの供給流の1つ、及び分子状酸素を化学量論量の酢酸と共に用いて、本発明方法の段階2を行った。
【0128】
実施例10
エチレン、酸素、及び酢酸をVAMに転化させるために用いた触媒は、上記の実施例Iの手順に従って製造した多孔質担体上の金属含有ナノ粒子であった。Hagemeyerらの米国特許6,603,038に示す手順を用い、本発明方法の段階1である実施例1〜6からの供給流の1つを用いて本発明方法の段階2を行った。
【0129】
VAMを製造するために酢酸をエチレンと反応させることは公知であるが、ここで予期しなかったことに、エチレンを工業的スケールで高い選択率及び収率で酢酸から直接製造することができることが見出された。上記の実施例から示されるように、VAM及びエチレンから製造される他の生成物を製造するために、エチレンをコスト的に有効に経済的に製造することができる。
【0130】
本発明を詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内の修正は当業者には容易に明らかとなるであろう。上述の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景技術及び詳細な説明に関連して上記で議論した参考文献(その開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる説明は不要であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)場合によっては脱水触媒又はクラッキング触媒を含む第1の反応区域内において、酢酸及び水素を含む供給流を昇温温度において好適な水素化触媒と接触させてエチレンを形成して、エチレンを含む第1の気体生成物流を形成し;
(b)かかる第1の気体生成物流を少なくとも50%までエチレン富化し;
(c)第2の反応区域内において、工程(b)で得られるかかる気体生成物流を、酢酸及び分子状酸素を含む第2の供給流と触媒の存在下で接触させて、酢酸ビニルを含む第2の気体生成物流を形成し;そして
(d)かかる第2の気体生成物流から酢酸ビニルを分離する;
ことを含む、酢酸から酢酸ビニルを製造する方法。
【請求項2】
水素化触媒が、酸化鉄上に担持されている銅、銅−アルミニウム触媒、銅−亜鉛触媒、銅−クロム触媒、及びニッケル触媒からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱水触媒が、H−モルデナイト、ZSM−5、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の気体生成物流を少なくとも80%までエチレン富化する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)における反応物質が約100:1〜1:100の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約250℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)における反応物質が約1:20〜1:2の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約300℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)における水素化触媒が酸化鉄上5重量%銅である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)における水素化触媒がH−ZSM−5上5重量%コバルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)における触媒がパラジウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)における触媒が金及びカリウムの酢酸塩を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
パラジウムが、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される触媒担体上に担持されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
エチレンと分子状酸素とのモル比が約4:1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において分子状酸素を空気の形態で加える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(a)第1の反応区域内において、酢酸及び水素を含む供給流を、昇温温度において、好適な水素化触媒を含む第1の触媒組成物と接触させて中間体水素化混合物を形成し;
(b)第2の反応区域内において、かかる中間体混合物を、好適な脱水触媒及び場合によってはクラッキング触媒を含む第2の触媒組成物上で反応させて、エチレンを含む第1の気体生成物流を形成し;
(c)かかる第1の気体生成物流を少なくとも50%までエチレン富化し;
(d)第3の反応区域内において、工程(c)で得られるかかる気体生成物流を、酢酸及び分子状酸素を含む第2の供給流と触媒の存在下で接触させて、酢酸ビニルを含む第2の気体生成物流を形成し;そして
(e)かかる第2の気体生成物流から酢酸ビニルを分離する;
ことを含む、酢酸から酢酸ビニルを製造する方法。
【請求項15】
水素化を、担体上の、銅、コバルト、ルテニウム、ニッケル、アルミニウム、クロム、亜鉛、パラジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される水素化触媒上で行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
担体が、酸化鉄、ゼオライト、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ケイ酸カルシウム、炭素、黒鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水素化触媒が、酸化鉄上に担持されている銅、銅−アルミニウム触媒、銅−亜鉛触媒、銅−クロム触媒、H−ZSM−5上に担持されているコバルト、シリカ上に担持されているルテニウム−コバルト、炭素上に担持されているコバルト、及びニッケル触媒からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)における水素化を、触媒床を横切る圧力降下を克服するのに丁度十分な圧力で行う、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)における反応物質が約100:1〜1:100の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約250℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲であり、反応物質と触媒との接触時間が約0.5〜100秒間の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)における反応物質が約1:20〜1:2の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約300℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲であり、反応物質と触媒との接触時間が約0.5〜100秒間の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
かかる中間体混合物がエタノール及び酢酸エチルを含み、かかる第2の触媒組成物がクラッキング触媒を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
工程(d)における触媒がパラジウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
工程(d)における触媒が金及びカリウムの酢酸塩を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
パラジウムが、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される触媒担体上に担持されている、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
エチレンと分子状酸素とのモル比が約4:1以下である、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
工程(c)において分子状酸素を空気の形態で加える、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
(a)第1の反応区域内において、酢酸及び水素を含む供給流を、昇温温度において、好適な水素化触媒を含み、酸化鉄上に担持されている銅又は銅−アルミニウム触媒から選択される第1の触媒組成物と接触させて、エタノール及び酢酸エチルの混合物を含む第1の気体生成物を形成し;
(b)第2の反応区域内において、かかる第1の気体生成物を、H−モルデナイト、H−ZSM−5、ゼオライトX、又はゼオライトYから選択される好適な脱水触媒及び場合によってはクラッキング触媒を含む第2の触媒組成物上で反応させて、エチレンを含む第2の気体生成物流を形成し;
(c)かかる第2の気体生成物流を少なくとも50%までエチレン富化し;
(d)第3の反応区域内において、工程(c)において得られるかかる富化された第2の気体生成物流を、酢酸及び分子状酸素を含む第2の供給流と、担持パラジウム触媒の存在下で接触させて、酢酸ビニルを含む第2の気体生成物流を形成し;そして
(e)かかる第2の気体生成物流から酢酸ビニルを分離する;
ことを含む、酢酸から酢酸ビニルを製造する方法。
【請求項28】
水素化触媒が、銅の装填量が約3重量%〜約10重量%の範囲である酸化鉄上に担持されている銅又は銅−アルミニウム触媒である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
第1及び第2の反応区域がそれぞれ、固定床内の第1の触媒組成物の第1の層及び第2の触媒組成物の第2の層を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
第1及び第2の反応区域が別々の容器内である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
消費された酢酸を基準とするエチレンへの選択率が少なくとも約80%である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
工程(a)における反応物質が約100:1〜1:100の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約250℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
工程(a)における反応物質が約1:20〜1:2の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約300℃〜350℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
工程(d)における触媒が金及びカリウムの酢酸塩を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
パラジウムが、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、及びジルコニアからなる群から選択される触媒担体上に担持されている、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
エチレンと分子状酸素とのモル比が約4:1以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
工程(d)において分子状酸素を空気の形態で加える、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508736(P2012−508736A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536313(P2011−536313)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/006016
【国際公開番号】WO2010/056299
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】