説明

エチレン系ワックスの製造方法

【課題】高品質なエチレン系ワックスの高生産効率製造方法の提供。
【解決手段】下式で表される遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒による、140℃での溶融粘度が25000mPa・s以下のエチレン系ワックスの製造方法。


〔Mは第4族原子である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系ワックスの製造方法に関する。さらに詳しくは、分子量分布の狭いエチレン単独重合体ワックス、分子量分布および組成分布の狭いエチレン共重合体ワックスを高い生産効率で製造するエチレン系ワックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン系ワックスなどのオレフィン系低分子量重合体は、例えば、顔料分散剤、樹脂加工助剤、印刷インキ用添加剤、塗料用添加剤、ゴム加工助剤、繊維処理剤などの用途に用いられている。また、オレフィン系低分子量重合体は、トナー用離型剤にも用いられている。
【0003】
近年、省エネルギー化の観点から低温定着トナーが求められている。このため、低温での離型性のよいワックス、すなわち同一組成および同一分子量であっても、融点の低いワックスの出現が望まれている。
【0004】
従来、上記オレフィン系低分子量重合体を工業的に製造する際には、通常はチタン系触媒が使用されている。チタン系触媒は触媒単位重量当りの低分子量重合体の収量が大きく、高活性であるという利点を有する。しかしながら、重合系内の水素分圧を大きく維持する必要がある。その結果、アルカンの副生が多いという欠点がある。さらには、チタン系触媒を用いて得られた低分子量重合体の分子量分布は広く、特に分子量が1000以下の低分子量重合体はベタつきが大きいために、該低分子量重量体を除去しなければ上記用途(トナー用離型剤など)に使用することは困難である。
【0005】
これらの欠点を改善する方法として、特許文献1には、バナジウム系触媒を用いた低分子量重合体の製造方法が提案されている。前記文献には、チタン系触媒に代えてバナジウム系触媒を用いることにより、重合系内の水素分圧が小さい条件の下、分子量分布の狭い低分子量重合体を製造できると記載されている。しかしながら、前記方法により得られる低分子量重合体の分子量分布は依然として広く、必ずしも充分ではない。
【0006】
また、本願出願人は、特許文献2において、(A)周期表の第4族、第5族および第6族から選択される遷移金属の化合物と、(B)アルミノキサンとからなるメタロセン系触媒の存在下に、エチレン、またはエチレンとα−オレフィンとを重合させるエチレン系ワックスの製造方法を提案している。前記方法によると、分子量分布の狭いエチレン系ワックスを製造することが可能であるが、さらに生産効率に優れたエチレン系ワックスの製造方法が望まれている。
【0007】
さらに、特許文献3、特許文献4などには、メタロセンとアルミノキサンとからなるメタロセン系触媒を用いてエチレン系ワックスを製造することが記載されている。しかしながら、前記方法も生産効率が必ずしも充分ではない。例えば重合温度を高くすると重合熱の除熱が容易になり、生産効率を向上させることができるが、触媒単位重量当りの低分子量重合体の収量が低下するという問題がある。
【0008】
上記問題を解決する方法として、本願出願人は、すでに種々のシクロペンタジエニル骨格を有する第4族遷移金属化合物を含む触媒の存在下に、エチレンを(共)重合させるエチレン系ワックスの製造方法を提案している。例えば、特許文献5(ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド)、特許文献6(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレ
ニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド)、特許文献7(ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル)、特許文献8(エチレン(1−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(1−シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド)、特許文献9((tert−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド)などである。
【0009】
これらの方法によると、分子量分布の狭いエチレン系ワックスを高い生産効率で製造することが可能であるが、さらに高い生産効率で、品質に優れたエチレン系ワックスを製造する方法が望まれている。また、1−ブテンや4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンをコモノマーとしたエチレン共重合体を製造する場合、上記方法ではコモノマーの転化率が低いため、重合器に大量のコモノマーを供給しなければならないという問題もある。
【特許文献1】特開昭59−210905号公報
【特許文献2】特開昭61−236804号公報
【特許文献3】特開平01−203404号公報
【特許文献4】特開平06−049129号公報
【特許文献5】特開平08−239414号公報
【特許文献6】特開2003−147010号公報
【特許文献7】特開2003−286308号公報
【特許文献8】特開2004−149673号公報
【特許文献9】特開2004−026887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題は、高品質なエチレン系ワックスを高い生産効率で製造する方法を提供することである。具体的には、分子量分布および組成分布が狭く、触媒残渣の少ないエチレン系ワックスを製造する方法を提供することである。さらに、密度や融点の低いエチレン系ワックスを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、特定のオレフィン重合用触媒を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係るエチレン系ワックスの製造方法は、以下の[1]〜[3]に関する。
【0012】
[1](A)下記一般式[1]で表される遷移金属化合物と、(B)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と、(C)(C−1)周期表第2族金属または第12族金属を含む有機金属化合物、および(C−2)有機アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレン、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとを重合させることを特徴とする、140℃での溶融粘度が25000mPa・s以下のエチレン系ワックスの製造方法。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式[1]中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基で
あり、R1〜R12から選択される少なくとも1組の相互に隣り合う2つの基が結合して環
を形成していてもよい。R13およびR14はそれぞれ独立に置換アリール基であり、該置換アリール基はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭素水素基、酸素含有基、窒素含有基およびケイ素含有基から選択される少なくとも1つの原子または基を有する。MはTi、ZrまたはHfであり、Yは第14族原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数である。jが2以上のときは、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。〕
[2]前記遷移金属化合物(A)において、前記置換アリール基が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のハロゲン置換アルキル基から選択される少なくとも1つの基を有することを特徴とする前記[1]に記載のエチレン系ワックスの製造方法。
【0015】
[3]前記遷移金属化合物(A)において、R1〜R4が何れも水素原子であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のエチレン系ワックスの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高品質なエチレン系ワックスを高い生産効率で製造する方法が提供される。具体的には、重合活性の高い特定のオレフィン重合用触媒を用い、エチレン、またはエチレンとコモノマーとを重合させることにより、分子量分布および組成分布が狭く、触媒残渣の少ないエチレン系ワックスを製造する方法が提供される。
【0017】
さらに、本発明によれば、コモノマーの共重合能の高い特定のオレフィン重合用触媒を用いることにより、エチレン系ワックスを製造するにあたり、公知の方法よりも重合器へのコモノマーの供給量が少ない条件でエチレンとコモノマーとを重合させるにも拘らず、密度や融点の低いエチレン系ワックスを製造することができる。
【0018】
また、本発明によれば、製造装置の小型化や設備費の削減が可能となる。
さらに、本発明の製造方法により得られるエチレン系ワックスは、実用性に優れる(例えば、酸変性基により安定化された水性微粒子分散体を製造する際、該水性微粒子の凝集が生じ難く、優れた粒子形状を有する分散体が得られるなど)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るエチレン系ワックスの製造方法について具体的に説明する。なお、本発明において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用
いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがあり、これらを明示するため(共)重合、(共)重合体と記すこともある。また、本発明において「エチレン系ワックス」とは、エチレン系低分子量重合体を意味するものである。
【0020】
本発明に係る製造方法は、下記オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレン、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィン(以下、「コモノマー」ともいう。)とを重合させて、140℃での溶融粘度が特定の範囲にあるエチレン系ワックスを製造することを特徴とする。
【0021】
≪オレフィン重合用触媒≫
本発明で使用されるオレフィン重合用触媒は、(A)下記一般式[1]で表される遷移金属化合物と、(B)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と、(C)(C−1)周期表第2族金属または第12族金属を含む有機金属化合物、および(C−2)有機アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含む。また、前記オレフィン重合用触媒は、必要に応じて担体(D)を含んでいてもよい。
【0022】
〔遷移金属化合物(A)〕
本発明で使用される遷移金属化合物(A)は、下記一般式[1]で表される。
【0023】
【化2】

【0024】
式[1]中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基であ
り、R1〜R12から選択される少なくとも1組の相互に隣り合う2つの基が結合して環を
形成していてもよい。R13およびR14はそれぞれ独立に置換アリール基であり、該置換アリール基はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭素水素基、酸素含有基、窒素含有基およびケイ素含有基から選択される少なくとも1つの原子または基を有する。MはTi、ZrまたはHfであり、Yは第14族原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数である。jが2以上のときは、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。
【0025】
すなわち、遷移金属化合物(A)は、Y(R13)(R14)(以下、「架橋基」ともいう。)により、シクロペンタジエニル骨格とフルオレニル骨格とが架橋された構造の配位子を有する、遷移金属錯体である。
【0026】
《R1〜R12の説明》
1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基である。
炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアルキルアリール基を例示することが出来る。これらの炭化水素基は、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0027】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブ
チル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、メンチル基、ノルボルニル基が例示され;炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が例示され;炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基が例示され;炭素数7〜20のアルキルアリール基としては、トリル基、1−テトラヒドロナフチル基、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル基が例示される。
【0028】
ケイ素含有基としては、ケイ素置換炭化水素基が好ましい。ケイ素置換炭化水素基としては、ケイ素原子数1〜4かつ炭素数3〜20の、アルキルシリル基およびアリールシリル基が例示される。前記アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基が例示され;前記アリールシリル基としては、トリフェニルシリル基が例示される。
【0029】
上記一般式[1]において、シクロペンタジエニル環上のR1〜R4から選択される少なくとも1組の相互に隣り合う2つの基が結合して環を形成していてもよい。
1〜R4は、何れも水素原子であることが好ましい。
【0030】
5〜R12の少なくとも一つが炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましく、
6、R7、R10およびR11の少なくとも一つが炭化水素基またはケイ素含有基であることがより好ましい。炭化水素基およびケイ素含有基の中では、炭化水素基がより好ましい。
【0031】
さらに、R6、R7、R10およびR11から選択される任意の三つ以上の原子または基は同時に水素原子ではないことが好ましく、R6、R7、R10およびR11の何れも水素原子ではないことがより好ましく、R6、R7、R10およびR11の何れも炭化水素基であることが特に好ましい。
【0032】
5〜R12を有する(置換)フルオレン環は、その合成が容易であることから対称面を
有すること、すなわちR5とR12とが同一であり、R6とR11とが同一であり、R7とR10
とが同一であり、かつR8とR9とが同一であることが好ましい。このような対称面を有する(置換)フルオレン環の中でも、無置換フルオレン、2,7−二置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,3,6,7−四置換フルオレンがより好ましい。ここでフルオレン環上の2位、3位、6位、7位はそれぞれ上記一般式[1]におけるR6、R7、R10、R11に対応する。
【0033】
上記一般式[1]において、フルオレン環上のR5〜R12から選択される少なくとも1
組の相互に隣り合う2つの基が結合して環を形成していてもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルが例示される。
【0034】
特に、R6とR7とが互いに結合して環(1)を形成し、および/またはR10とR11とが
互いに結合して環(2)を形成していることが好ましく、R6とR7とが互いに結合して環(1)を形成し、かつR10とR11とが互いに結合して環(2)を形成していることが特に好ましい。環(1)および環(2)の環構造は相互に同一でも異なっていてもよいが、通常は配位子の合成が容易であることから、環(1)および環(2)の環構造は同一であることが好ましい。
【0035】
《R13およびR14の説明》
13およびR14はそれぞれ独立に置換アリール基であり、該置換アリール基はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭素水素基、酸素含有基、窒素含有基およびケイ素含有基から選択される少なくとも1つの原子または基(以下、該原子または基を「置換基(1)」ともいう。)を有する。すなわち、前記置換アリール基は芳香核上に置換基(1)を有する。R13が置換基(1)を二つ以上有する場合は、二つ以上の置換基(1)は相互に同一であっても異なっていてもよい。R14についても同様である。
【0036】
なお、本発明において、R13およびR14における「アリール基」とは、芳香核水素原子(但し、Yと結合するために置換された芳香核水素原子を除く。)が何れも置換基で置換されていない基として定義される。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が例示され、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0037】
芳香核水素原子が置換基(1)で置換される場合、全ての芳香核水素原子が置換基(1)で置換されていてもよく、特定数の芳香核水素原子が置換基(1)で置換されていてもよく、一つの芳香核水素原子が置換基(1)で置換されていてもよい。
【0038】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基、tert−アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などの分岐状炭化水素基などの炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル基;
ビニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基;アセチレン性の三重結合を有するアルキニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基などのアリール基で置換された飽和炭化水素基が例示される。
【0039】
ハロゲン置換炭素水素基としては、上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子で置換された基が例示され、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜10のハロゲン置換アルキル基である。このようなハロゲン置換炭化水素基としては、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基が例示される。
【0040】
酸素含有基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基が例示され;窒素含有基としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基が例示される。
【0041】
ケイ素含有基としては、上記炭素数1〜20の炭化水素基が有する少なくとも1つの炭素原子がケイ素原子で置換されたケイ素含有炭化水素基が例示される。前記ケイ素含有炭化水素基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのトリアルキルシリル基;該トリアルキルシリル基で置換された炭化水素基が例示される。前記トリアルキルシリル基で置換された炭化水素基としては、モノ(トリメチルシリル)メチル基、ジ(トリメチルシリル)メチル基が例示される。ケイ素含有基は、これに含まれるケイ素原子と上記芳香核炭素原子とが直接結合する置換基であることが好ましい。
【0042】
上記置換基(1)の中では、炭化水素基およびハロゲン置換炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のハロゲン置換アルキル基がより好ましい。置換アリール基の好ましい具体例としては、フェニル基の有する少なくとも1つの水素原子が、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換フェニル基、炭素数1〜10のハロゲン置換アルキル基で置換された置換フェニル基が例示される。
【0043】
このような特定の構造を有する架橋基で連結された配位子を有する遷移金属化合物は、後述するように高い重合活性を示しつつ、炭素数3以上のオレフィンも導入し易い(すなわち、コモノマーの共重合能に優れる。)という従来に無い特徴を有する。
【0044】
《M、YおよびQの説明》
MはTi、ZrまたはHfであり、好ましくはZrおよびHfであり、特に好ましくはZrである。Yは第14族原子であり、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、特に好ましくは炭素原子である。
【0045】
Qはハロゲン原子(Q)、炭化水素基(Q)、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数である。jが2以上のときは、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。
【0046】
ハロゲン原子(Q)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。炭化水素基(Q)としては、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンを好ましい例として挙げることが出来る。
【0047】
炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメ
チルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシルが例示される。
【0048】
炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3
−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−
ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−
またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,
4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが例示される。
【0049】
アニオン配位子としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基;アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基;メシレート、トシレートなどのスルホネート基が例示される。
【0050】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類が例示される。
【0051】
《遷移金属化合物(A)の具体例》
上記一般式[1]で表される遷移金属化合物(A)としては、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
ジ(p−n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0052】
ジ(p−n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
(p−トリル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0053】
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジメチル;
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−トリル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル;
(p−トリル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0054】
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジメチル;
(p−トリル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジメチル;
(p−tert−ブチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−tert−ブチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−tert−ブチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−tert−ブチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
(p−n−エチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
【0055】
(p−n−エチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−n−エチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−n−エチルフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
(4−ビフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(4−ビフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(4−ビフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(4−ビフェニル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド;
ジ(4−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(4−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(4−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(4−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが例示されるが、特にこれらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0056】
これらの中では、R6、R7、R10およびR11が水素原子以外の置換基、好ましくは炭化水素基であるメタロセン化合物が好ましく、R6とR7とが、および/またはR10とR11とが互いに結合して環構造を有する化合物がより好ましい。
【0057】
上記環構造を有する化合物としては、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(p−トリル)(フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチルが例示される。
【0058】
〔遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B)〕
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US5321106号公報などに記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が例示される。
【0059】
《ルイス酸》
ルイス酸としては、BR3(Rは、メチル基、イソブチル基などのアルキル基;フッ素
原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;フッ素原子である。)で示される化合物が例示される。
【0060】
具体的には、トリフェニルボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルボロン、トリイソブチルボロン;トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンなどのフッ素含有アリール基を有する化合物などのハロゲン含有アリール基を有する化合物;トリフルオロボロンが例示される。これらの中では、ハロゲン含有アリール基を有する化合物が好ましく、フッ素含有アリール基を有する化合物がより好ましく、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンが特に好ましい。
【0061】
《イオン性化合物》
イオン性化合物としては、下記一般式[2]で表される化合物が例示される。
【0062】
【化3】

【0063】
式[2]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アン
モニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが例示される。Rf、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立に有機基、好ましくはアリール基、ハロゲン含有アリール基などの置換アリール基、より好ましくはハロゲン含有アリール基、特に好ましくはフッ素含有アリール基である。
【0064】
上記カルベニウムカチオンとしては、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンが例示される。
【0065】
上記アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが例示される。
【0066】
上記例示のアンモニウムカチオンの中では、アリール基や高級アルキル基を有するアンモニウムカチオンが好ましい。具体的には、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが例示される。
【0067】
上記ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが例示される。
【0068】
e+としては、上記例示の中では、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルベニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0069】
1.Re+がカルベニウムカチオンの場合(カルベニウム塩)
カルベニウム塩としては、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4−
メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0070】
2.Re+がアンモニウムカチオンの場合(アンモニウム塩)
アンモニウム塩としては、トリアルキルアンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が例示される。
【0071】
トリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、
トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムが例示される。
【0072】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、具体的には、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、
N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0073】
ジアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが例示される。
【0074】
これらの中では、ペンタフルオロフェニル基を有する塩が好ましい。具体的には、
トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0075】
また、イオン性化合物において、フェロセニウムカチオンを含む化合物としては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを例示することが出来る
イオン性化合物としては、さらに、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式[3]または[4]で表されるボレート化合物、下記式[5]で表される活性水素を有するボレート化合物、下記式[6]で表されるシリル基を有するボレート化合物が例示される。
【0076】
【化4】

【0077】
式[3]中、Etはエチル基を示す。
【0078】
【化5】

【0079】
[BQn(Gq(TH)rz-+ ・・・[5]
式[5]中、Bはホウ素を表す。
Qとしては、ハイドライド、ハライド、ジアルキルアミドなどのジヒドロカルビルアミド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基が例示される。これらの中では、ジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基が好ましい。
【0080】
Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンとしては炭素数1〜20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4−ブタジエン、p−フェニレンメチレンが挙げられる。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは−TH基と結合する。
【0081】
−THで表される一価の基としては、−OH、−C(O)−OH、−SH、−C(S)−SH、−NRjH、−C(O)−NRjH、−PRjH、−C(O)−PRjHが例示され、−OH、−SH、−NRjH、−PRjHが好ましく、−OHが特に好ましい。
【0082】
jはヒドロカルバニルラジカル、トリヒドロカルバニルシリルラジカル、トリヒドロ
カルバニルゲルマニウムラジカルまたはハイドライドを表す。ここでRjは炭素数1〜1
8、好ましくは炭素数1〜10のヒドロカルビニルラジカルまたは水素である。好ましいRjグループはアルキル、シクロアルキル、アリル、アリルアルキルまたは炭素数1〜1
8を有するアルキルアリルである。
【0083】
qは1以上の整数、好ましくは1である。n+zは4である。
+はカチオンである。
上記式[5]の[BQn(Gq(TH)rz-としては、トリフェニル(ヒドロキシフ
ェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2, 4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)
ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシシクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)〔4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル〕ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートが例示される。これらの中では、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドキシフェニル)ボレートが特に好ましい。さらに上記ボレート化合物の−OH基を−NRjH(ここで、Rjはメチル、エチル、tert−ブチル)で置換したものも好ましい。
【0084】
ボレート化合物の対カチオンであるA+としては、カルボニウムカチオン、トロピルリ
ウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、還元されやすい金属の陽イオン、還元されやすい有機金属の陽イオンが例示される。
【0085】
ボレート化合物の対カチオンであるA+の具体例としては、トリフェニルカルボニウム
イオン、ジフェニルカルボニウムイオンなどのカルボニウムカチオン;シクロヘプタトリニウム、インデニウム;トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、N,N−ジメチルフェニルアンモニウム、N,N−ジエチルフェニルアンモニウム、N,N,2,4,6−ペンタメチルフェニルアンモニウムなどのアンモニウムカチオン;トリホスホニウム、トリジメチルフェニルホスホニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムなどのホスホニウムカチオン;トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウムなどのオキソニウムカチオン;
ピリニウム;銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジュウムイオン、水銀イオンなどの金属の陽イオン;フェロセニウムイオンなどの有機金属の陽イオンが例示される。これらの中ではアンモニウムイオンが好ましく、アリール基や高級アルキル基を有するアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0086】
[BQn(Gq(SiRklmrz-+ ・・・[6]
式[6]中、Bはホウ素を表す。
Qとしては、ハイドライド、ハライド、ジアルキルアミドなどのジヒドロカルビルアミド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基が例示される。これらの中では、ハライド、ジアルキルアミド、ヒドロカルビルオキシド、アルコキシド、アリルオキシド、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基が好ましく、ペンタフルオロベンジルラジカルが特に好ましい。
【0087】
Gは多結合性ヒドロカーボンラジカルを表し、好ましい多結合性ヒドロカーボンとしては炭素数1〜20を含むアルキレン、アリレン、エチレン、アルカリレンラジカルであり、Gの好ましい例としては、フェニレン、ビスフェニレン、ナフタレン、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4−ブタジエン、p−フェニレンメチレンが例示される。多結合性ラジカルGはr+1の結合、すなわち一つの結合はボレートアニオンと結合し、Gのその他の結合rは(SiRklm)基と結合する。
【0088】
上記一般式[6]中のRk、RlおよびRmはそれぞれ独立にヒドロカルバニルラジカル
、トリヒドロカルバニルシリルラジカル、トリヒドロカルバニルゲルマニウムラジカル、水素ラジカル、アルコキシラジカル、ヒドロキシラジカルまたはハロゲン化合物ラジカルを表す。
【0089】
qは1以上の整数、好ましくは1である。n+zは4である。
+はカチオンである。ボレート化合物の対カチオンであるA+は、上記式[5]中のA+と同じカチオンが例示され、好ましいカチオンも同様である。
【0090】
上記式[6]中の[BQn(Gq(SiRklmrz-としては、トリフェニル(4−ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(4−ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、トリフェニル(4−ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(4−トリエトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ジメチルクロロシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ジメチルメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−トリメトキシシリルフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ジメチルクロロシリル−2ナフチル)ボレートが例示される。
【0091】
《ボラン化合物》
ボラン化合物としては、具体的には、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハ
イドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩が例示
される。
【0092】
《カルボラン化合物》
カルボラン化合物としては、具体的には、4−カルバノナボラン(14)、1,3−ジカルバノナボラン(13)、6,9−ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン(13)、2,7−ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート(14)、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート(13)、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドラ
イド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモ
ニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカ
ルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(
ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n
−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8
−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)
アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタ
ハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔ト
リ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハ
イドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド
−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩が例示される。
【0093】
なお、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〔化合物(C)〕
本発明で使用される化合物(C)は、(C−1)周期表第2族金属または第12族金属を含む有機金属化合物、および(C−2)有機アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種の化合物である。これらの中では、有機アルミニウム化合物(C−2)を少なく
とも用いることが好ましい。
【0094】
《有機金属化合物(C−1)》
有機金属化合物(C−1)は、周期表第2族金属または第12族金属を含む。周期表第2族金属としては、Mgが例示され、周期表第12族金属としては、Zn、Cdが例示される。
【0095】
有機金属化合物(C−1)としては、下記一般式[7]で表される、周期表第2族金属または第12族金属のジアルキル化合物が例示される。有機金属化合物(C−1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
ab3 ・・・[7]
式[7]中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdを示す。
【0097】
《有機アルミニウム化合物(C−2)》
有機アルミニウム化合物(C−2)としては、下記一般式[8]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[9]で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、有機アルミニウムオキシ化合物が例示される。
【0098】
amAl(ORbnpq ・・・[8]
式[8]中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0099】
上記一般式[8]で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式[8a]、[8b]、[8c]または[8d]で表される化合物が例示される。
amAl(ORb3-m ・・・[8a]
式[8a]中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。
【0100】
amAlX3-m ・・・[8b]
式[8b]中、Raは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロ
ゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。
【0101】
amAlH3-m ・・・[8c]
式[8c]中、Raは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ま
しくは2≦m<3である。
【0102】
amAl(ORbnq ・・・[8d]
式[8d]中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。
【0103】
上記一般式[8a]、[8b]、[8c]または[8d]で表される有機アルミニウム化合物としては、より具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリ(n−アルキル)アルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(sec−ブチル)
アルミニウム、トリ(tert−ブチル)アルミニウム、トリ(2−メチルブチル)アルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(3−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(4−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(2−メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(3−メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
一般式(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式Ra2.5Al(ORb0.5(式中、RaおよびRbはそれぞれ上記一般式[8a]中のRaおよびRbと同義である。)などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが例示される。
【0104】
また、上記一般式[8]で表される有機アルミニウム化合物に類似する化合物も使用することができ、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物が例示される。このような化合物として、具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252が例示される。
【0105】
2AlRa4 ・・・[9]
式[9]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。複数あるRaは相互に同一でも異なっていてもよい。
【0106】
上記一般式[9]で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154が例示される。
また、重合系内で有機アルミニウム化合物(C−2)が形成されるような化合物、例え
ば、ハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、ハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを使用することもできる。
【0107】
上記一般式[8]で表される有機アルミニウム化合物、上記一般式[9]で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
有機アルミニウムオキシ化合物としては、特開2007−260946号公報などに開示されている公知の化合物を制限無く用いることが出来る。
〔担体(D)〕
本発明で使用されるオレフィン重合用触媒は、必要に応じて担体(D)を含んでいてもよい。担体(D)は、通常は無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0109】
上記無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物が例示される。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2などの酸化物;該酸化物を含む複合物または混合物が例示
される。前記複合物または混合物としては、天然または合成ゼオライト、SiO2−Mg
O、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、S
iO2−TiO2−MgOが例示される。
【0110】
≪エチレン系ワックスの製造条件≫
本発明に係るエチレン系ワックスの製造方法は、上記オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレン、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとを重合させて、140℃での溶融粘土が25000mPa・s以下のエチレン系ワックス(低分子量エチレン(共)重合体)を製造する。
【0111】
上記炭素数3以上のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数3〜20のα−オレフィンが例示される。これらの中では、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく、炭素数5以上のα−オレフィンがより好ましく、炭素数6以上のα−オレフィンが特に好ましい。炭素数の上限としては、入手容易性やワックスとしての使用目的なども考慮すると20、好ましくは18である。また、上記炭素数3以上のオレフィンは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0112】
エチレン系ワックスを製造するに際して、重合反応に供給される原料オレフィン中のエチレン含有量は、通常は70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%の範囲であり、炭素数3以上のオレフィンの含有量は、通常は0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%の範囲である。
【0113】
本発明では、重合反応は炭化水素中で実施することが好ましい。前記炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ガソリン、灯油、軽油などの石油留分が例示される。さらに、上記原料オレフィンや生成した低分子量エチレン(共)重合体を上記の炭化水素の代わりとすることもできる。
【0114】
遷移金属化合物(A)は、重合反応系内の遷移金属原子の濃度が通常は10-9〜10-3mol/リットル、好ましくは10-8〜10-4mol/リットルの範囲となる量で用いられる。
【0115】
化合物(B)は、化合物(B)と遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B)/M〕が、通常は1〜50、好ましくは1〜20となるような量で用いられる。
【0116】
化合物(C)として有機金属化合物(C−1)を用いる場合、該化合物(C−1)は、該化合物(C−1)と遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(C−1)/M〕が、通常は0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。
【0117】
化合物(C)として有機金属化合物(C−2)を用いる場合、該化合物(C−2)は、該化合物(C−2)と遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(C−2)/M〕が、通常は100〜25000、好ましくは500〜10000となるような量で用いられる。
【0118】
重合温度は、通常は20〜400℃、好ましくは30〜300℃、より好ましくは50〜300℃の範囲で行われる。後述する反応熱の除熱や熱回収の観点からは、好ましくは120〜300℃、より好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは130〜250℃、特に好ましくは140〜200℃の範囲で行われる。
【0119】
重合温度を特に120℃以上の上記のような範囲内にすると、(1)反応熱の除熱が容易であるため、除熱装置を小型化することができる。(2)同一の除熱装置においては、除熱効率が上がるため、生産効率を向上させることができる。(3)重合体濃度を高くしても溶液粘度があまり高くならない。これにより、攪拌動力を低減でき、また高濃度で重合することができるため、生産効率が向上する。
【0120】
上記(1)および(2)について補足する。エチレンを重合する場合には、重合温度を安定させるために、通常は溶媒などを循環して除熱が行われている。ここで用いられる除熱装置では、一般に除熱量が同じであれは重合温度が高いほど伝熱面積を小さくすることができ、その効果は、冷却媒体などの条件の選択によって変化する。例えば、冷却媒体として冷却水を用いた、単純な向流型の熱交換器を用いた場合には、重合温度が100℃であるときには、重合温度が70℃であるときに比べて、必要伝熱面積を約2分の1にすることも可能となる。このように重合温度を高くすると、必要伝熱面積を小さくすることができ、除熱装置を小型化することができるため、設備費を削減することができる。
【0121】
重合圧力は、通常は常圧〜10MPa−G(ゲージ圧)、好ましくは常圧〜5MPa−G、より好ましくは常圧〜4MPa−Gの条件下であり;重合反応は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0122】
本発明により製造されるエチレン系ワックスの分子量は、重合反応系に供給される水素量および/または重合温度により調節することができる。重合反応系に供給される水素量は、エチレンに対する水素のモル比としては、通常は0.05〜10、好ましくは0.1〜5の範囲である。本発明に係る製造方法を用いることにより、重合反応系に供給される水素量を大きくしても、分子量分布の狭い(すなわち、低分子量体の副生が少ない)エチレン系ワックスを得ることができる。
【0123】
本発明では、重合反応が終了した重合反応混合物を、常法によって処理することによりエチレン系ワックスが得られる。このようにして得られるエチレン系ワックスは、エチレンの単独重合体、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体、好ましくはエチレンと炭素数6〜20のオレフィンとの共重合体である。
【0124】
≪エチレン系ワックスの物性など≫
本発明に係るエチレン系ワックスの製造方法によれば、分子量分布の狭いエチレン(共)重合体を高い重合活性で製造することができる。このため、滞留時間(重合時間)を短くすることができる。また、炭素数3以上のオレフィンの転化率が高いため、該オレフィンの使用量が少なくても密度の低い(すなわち融点の低い)共重合体を製造するのに有利である。
【0125】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて得られるエチレン系ワックスは触媒残渣が少なく、実用性に優れる。例えば、前記エチレン系ワックスを用いて、酸変性基により安定化された水性微粒子分散体を製造する際、該水性微粒子の凝集が生じ難く、優れた粒子形状を有する分散体を得ることができる。
【0126】
エチレン系ワックスの具体的な物性などについて説明する。なお、以下の物性については、上記≪エチレン系ワックスの製造条件≫の欄に記載した条件を適切に選択することにより、調節することが可能である。
【0127】
本発明により製造されるエチレン系ワックスの140℃での溶融粘度は、25000mPa・s以下、好ましくは2〜20000mPa・s、より好ましくは5〜10000mPa・sの範囲である。前記溶融粘度の範囲のエチレン系ワックスは、トナーの離型剤などワックスとしての用途に好適に用いることが出来る。
【0128】
本発明により製造されるエチレン系ワックスにおいて、エチレン由来の構成単位の含有率は、通常は70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%の範囲であり、炭素数が3以上のオレフィン由来の構成単位の含有率は、通常は0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%の範囲である。
【0129】
本発明により製造されるエチレン系ワックスの密度は、通常は860〜980kg/m3、好ましくは870〜970kg/m3、特に好ましくは880〜960kg/m3であ
る。上記エチレン系ワックスにおいて、炭素数3以上のオレフィン由来の構成単位の含有率が高まると、あるいは上記オレフィンの炭素数が大きくなると、密度は低下する傾向にある。このため、エチレン系ワックスの組成の指標として、上記密度を使用することも可能である。
【0130】
本発明により製造されるエチレン系ワックスのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量(Mn)は、通常は500〜4000、好ましくは700〜3500、より好ましくは800〜3000である。分子量分布(Mw/Mn)は、通常は3以下、好ましくは2.5以下であり;融点(Tm)は、通常は132℃以下、好ましくは40〜130℃、より好ましくは50〜128℃の範囲である。
【0131】
数平均分子量が上記の範囲を下回ると例えばベタツキの観点から、また上記の範囲を上回ると流動性や離型性などの観点から、所望の性能を得られないことがある。
【実施例】
【0132】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、サンプル(エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体)の物性などは以下のようにして測定した。
【0133】
<Al−Ash量>
有機アルミニウム化合物(C−2)として使用したトリイソブチルアルミニウムに由来するアルミニウムの全てが、得られたエチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体に取り込まれるとして計算した値をAl−Ash量(灰分量)とした。
【0134】
<溶融粘度>
エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体の溶融粘度は、ブルックフィールド社製デジタル粘度計を使用し、サンプル量約8g、測定温度140℃で測定した。
【0135】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定から求めたものである。測定は以下の条件で行った。また、Mn、Mw、Mw/Mnは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて分子量を求めた。
装置 :ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤 :o−ジクロロベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速 :1.0mL/分
試料 :0.15mg/mL o−ジクロロベンゼン溶液
温度 :140℃
分子量換算:PE換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark−Houwink粘度式の係数を用いた。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4、 aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4、 aPE=0.70
<密度>
JIS K7112の密度勾配法に従って測定した。
【0136】
<酸価>
JIS K5902に従って測定した。
<水性分散液の物性測定>
ポリオレフィン組成物として、下記実施例および比較例で得られたエチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体69gと、Mn:1400、密度:930kg/m3、酸価:
40mg−KOH/gの無水マレイン酸グラフト共重合変性ポリエチレン6gとからなるポリエチレン組成物(全体の酸価:3.2mg−KOH/g)を準備した。なお、下記比較例では、必要とする量のエチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体が得られるまで、同様の重合を実施した。
【0137】
内容積500mLの耐圧ホモミキサーに、塩基性化合物含有水溶液として水酸化カリウム168mg(上記ポリエチレン組成物中のカルボキシル基に対して0.7当量に相当)の水溶液110mLを投入した。140℃に加熱して5000rpmで撹拌しながら、上記ポリエチレン組成物を170℃の溶融状態でギアーポンプにより1時間かけて供給した。さらに30分撹拌後、室温まで冷却した。これにより、水性分散液を得た。
【0138】
(1)粒子形状
水性分散液中の粒子の粒子形状は、電子顕微鏡を用いて観察した。
(2)平均粒子径
水性分散液中の粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法を用いて測定した。
【0139】
(3)乳化判定
乳化は、以下の基準により判定した。
○:粒子形状が球状であり、かつ平均粒子径が3μm以上5μm以下であるもの。
×:「粒子形状が球状でない」、「平均粒子径が3μm未満である」、「平均粒子径が5μmより大きい」の何れかであるもの。
【0140】
[実施例1]
−重合−
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン910mLと4−メチル−1−ペンテン90mLとを装入し、145℃まで昇温した。
【0141】
次いで、水素を2.03MPa圧入した後、トリイソブチルアルミニウム0.06mmol、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.15μmolおよびN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.6μmolをエチレンで圧入することにより重合を開始した。
【0142】
その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPa−Gに保ち、150℃で30分間重合を行った。少量のエタノールを重合反応系内に供給することにより重合を停止した後、未反応モノマーをパージした。得られたポリマー懸濁液よりヘプタンを除去した後、さらに120℃、減圧下で12時間乾燥した。
【0143】
その結果、140℃での溶融粘度:60mPa・s、密度:902kg/m3、Mn:
850、Mw/Mn:2.4である、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体ワックス:93.8gを得た。重合活性は625kg/(mmol−Zr)であった。Al−Ash量の計算値は17ppmであった。また、水性分散液中の粒子形状は球状であり、平均粒子径は4.2μmであった。また、乳化判定は○であった。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0144】
[実施例2、比較例1、2、4]
実施例1において、表1に記載のオレフィン重合用触媒および製造条件の下、エチレンと4−メチル−1−ペンテンとの重合を実施したこと以外は実施例1と同様にして、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体ワックスを製造した。評価結果を表1に示す。
【0145】
[比較例3]
実施例1において、ヘプタンおよび水素は使用せず、4−メチル−1−ペンテンの装入量を1000mLに代え、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドをビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルに替えたこと以外は実施例1と同様にして、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合ワックスを製造した。評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
上記実施例および比較例の結果から、本発明に係る製造方法を用いることにより、高い重合活性でエチレン系ワックスを製造できること、炭素数3以上のオレフィンの供給量を少量としても密度の低いエチレン系ワックスを製造できることが分かる。また、本発明に係る製造方法により得られたエチレン系ワックスは、粒子形状に優れ、乳化させやすい特性を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]で表される遷移金属化合物と、
(B)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と、
(C)(C−1)周期表第2族金属または第12族金属を含む有機金属化合物、および
(C−2)有機アルミニウム化合物
から選択される少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレン、またはエチレンと炭素数3以上のオレフィンとを重合させることを特徴とする、140℃での溶融粘度が25000mPa・s以下のエチレン系ワックスの製造方法。
【化1】

〔式[1]中、R1〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基で
あり、R1〜R12から選択される少なくとも1組の相互に隣り合う2つの基が結合して環
を形成していてもよい。R13およびR14はそれぞれ独立に置換アリール基であり、該置換アリール基はハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭素水素基、酸素含有基、窒素含有基およびケイ素含有基から選択される少なくとも1つの原子または基を有する。MはTi、ZrまたはHfであり、Yは第14族原子であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数である。jが2以上のときは、複数あるQは同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記遷移金属化合物(A)において、前記置換アリール基が炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のハロゲン置換アルキル基から選択される少なくとも1つの基を有することを特徴とする請求項1に記載のエチレン系ワックスの製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属化合物(A)において、R1〜R4が何れも水素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン系ワックスの製造方法。

【公開番号】特開2010−150334(P2010−150334A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328147(P2008−328147)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】