説明

エチレン系重合体および製造方法

【課題】本発明は熱安定剤無添加でも耐酸化性および熱安定性に優れたエチレン系重合体を提供することを課題としている。
【解決手段】エチレンユニットを50モル%以上99.9モル%以下含み、2−置換−1−オレフィンユニットを0.1モル%以上50モル%以下含むエチレン系重合体であり、分子量が5000以上500万以下であり、該エチレン系重合体に含まれる不飽和結合含有量が0.001個/100C以上0.4個/100C以下であることを特徴とする、エチレン系重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン系重合体に関する。さらに詳しくは、従来公知のものと比較して、熱安定性および耐酸化性に優れたエチレン系重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体は世界で最も広い用途に使用されている樹脂である。エチレン系重合体はプロピレン系樹脂と比較して耐酸化性に優れるといわれている。その原因は、ポリプロピレンの主鎖にはメチル分岐のために三級炭素が存在しており、この三級炭素に存在する炭素−水素結合の結合エネルギーが低いため、この結合が切断されてラジカルが発生する反応が起こり易いことであると非特許文献1に報告されている。
一方、エチレン系重合体は、α−オレフィンと共重合することにより該重合体の物性を制御することが一般に行われている。このエチレンとα−オレフィンとの共重合は物性の制御には非常に有効であるが、主鎖には三級炭素が発生する。このために、該エチレン系重合体の耐酸化性が悪化する。
【0003】
また、エチレン系重合体の重合末端には不飽和結合が存在することが知られている。この不飽和結合も耐酸化性を悪化させる重要な要因となることが知られている。
通常、エチレン系重合体の酸化を抑制するため、熱安定剤が添加されている。しかし、一部の食品や機能膜分野では安全性の見地から熱安定剤を使用できない用途があり、エチレン系重合体の耐酸化性を向上させて欲しいという要望があった。
ところで、エチレンと共重合させるコモノマーとして、2−置換−1−オレフィンは従来知られていた。しかし、この2−置換−1−オレフィンは二重結合周囲が立体的に込み合っているため、配位重合でエチレンと共重合させることが非常に困難であった。非特許文献2には1,1−二置換オレフィン類は単独で重合されず、かつ他のものオレフィンとは共重合されない、旨の記載がある。一方、カチオン重合では、2−置換−1−オレフィンは比較的容易に重合するが、エチレンが容易には重合しないため、共重合は困難であった。
【0004】
エチレンとイソブチレンとの共重合については、非特許文献3で配位重合による報告があった。しかし、この報告の重合における重合温度および重合活性が低いため、工業的に実施することは困難だった。また、得られた共重合体の物性に関する報告も無かった。
また、特許文献1においてエチレンとイソブチレンとの共重合技術が開示されている。しかし、該文献の重合における温度が極めて低く、また重合活性も低いため工業的に実施することは困難であった。また、得られた共重合体の物性に関する報告も無かった。
また、特許文献2において、エチレンと2−置換−1−オレフィンとの共重合体が開示されているが、2−置換−1−オレフィンが3.0モル%を超えて含むものであり、またこのポリマーには末端ビニリデン等の末端不飽和基が多量に含まれているため、この末端不飽和基を通じた官能基化による石油製品の添加剤用途には非常に有効ではあるが、該ポリマーの耐酸化性は極めて低いものであった。
【0005】
【非特許文献1】高分子材料の劣化・変色のメカニズムとその安定化技術、技術情報協会、2006年、P.21
【非特許文献2】Encycl. of Polym. Sci. and Eng.、米国、Wiley Interscience、1988年、8巻、P.175
【非特許文献3】「Isotactic Polymerization of Olefins With Homogeneous Zirconium Catalysts」、W.Kaminsky,A.Bark,R.Spiehl,N.Moeller−Lindenhof,S.Niedoba、Transition Metals and Organometallics as catalysts for Olefin Polymerization、ドイツ、Springer−Verlag、1988年、P.291
【特許文献1】特開平7−2919号公報
【特許文献2】特表2000−511226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術を鑑みてなされたものであり、熱安定剤無添加でも耐酸化性および熱安定性に優れたエチレン系重合体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の欠点を改良するため鋭意研究を重ねた結果、特定のコモノマーを所定量含み、分子量、密度、末端ビニル基含量および酸化誘導時間が特定の範囲にあるエチレン系重合体が耐酸化性に非常に優れていることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、
1)エチレンユニットを50モル%以上99.9モル%以下含み、2−置換−1−オレフィンユニットを0.1モル%以上50モル%以下含むエチレン系重合体であり、分子量が5000以上500万以下であり、該エチレン系重合体に含まれる不飽和結合含有量が0.001個/100C以上0.4個/100C以下であることを特徴とする、エチレン系重合体、
2)該2−置換−1−オレフィンユニットに含まれる炭素数が6以下であることを特徴とする、1)に記載のエチレン系重合体。
3)210℃での酸化誘導時間測定による重量平均分子量の保持率が、50%以上99.9%以下であることを特徴とする、1)または2)に記載のエチレン系重合体、
【0008】
4)少なくとも[A]実質的に水酸基を有しない固体成分、[B]下記の式(1)で表される可溶性遷移金属化合物、[C]該遷移金属化合物[B]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成する活性化剤化合物、とから形成されているオレフィン重合用固体触媒により製造されることを特徴とする、1)から3)のいずれかに記載のエチレン系重合体。
MXX’ (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
【0009】
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン
性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、
X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
【0010】
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、またはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)、
5)エチレン系重合体製造時に、反応器に10モルppm以上1モル%以下の濃度になるように水素を添加することを特徴とする、1)から4)のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐酸化性に優れ、かつ熱安定性に優れたエチレン系重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明におけるエチレン系重合体について説明する。本発明においては、エチレン系重合体とはエチレンを50モル%以上含む重合体のことである。
次に、本発明における2−置換−1−オレフィンについて説明する。本発明においては、2−置換−1−オレフィンとは、IUPAC命名法に従い決定され、2位の炭素に炭化水素基を有する1−オレフィンのことである。本発明においては、2−置換−1−オレフィンは次の一般式(2)で表されるものである。
【0013】
【化1】

式中、RおよびRは独立であり、少なくとも炭素原子1つを含む炭化水素基である。RおよびRは線状、分岐鎖状または環状の、置換または無置換の、炭素原子を1個以上30個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは6個以下を含む炭化水素基である。R1とR2とは結合し、環を形成しても良い。従って、2−置換−1−オレフィンは、2−メチルプロペン等のモノマー類と、上記のマクロマー類の両方を包含する。
およびRは本質的には炭化水素基であるが、炭素および水素以外の原子(酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素、ハロゲン、等)の包含は、その触媒による配位重合を妨げないように、かつ炭化水素溶媒に溶解するという本質的に炭化水素基の特徴を保持するために、二重結合から十分に離れているのであれば、許容される。
【0014】
本発明における2−置換−1−オレフィンとしては、2−メチルプロペン(慣用名イソブチレン)、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、α−メチルスチレン、3−トリメチルシリル−2−メチル−1−プロペン、6−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−ヘキセンが好ましい。
本発明において、エチレン系重合体に含まれる2−置換−1−オレフィンユニットの含量は、重合系内に存在するエチレンと2−置換−1−オレフィンとの割合を制御させることにより制御できる。具体的には、エチレンに対する2−置換−1−オレフィンの割合を増加させることにより、エチレン系重合体に取り込まれる2−置換−1−オレフィンの割合を増加させることができ、逆に、エチレンに対する2−置換−1−オレフィンの割合を低下させることにより、エチレン系重合体に取り込まれる2−置換−1−オレフィンの割合を低下させることが可能である。
【0015】
本発明においては、コモノマーとして2−置換−1−オレフィンを使用することにより、主鎖に三級炭素を発生させることなくエチレン系重合体の密度を制御して力学特性を制御することが可能になる。
次に、本発明におけるエチレン系重合体の密度について説明する。本発明においては、密度はJIS K7112−1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)で測定された値である。この密度はエチレン系重合体の2−置換−1−オレフィン含有量の尺度であり、2−置換−1−オレフィン含有量が多ければ多いほど、エチレン系重合体の密度が低くなる。本発明においては、エチレン系重合体の密度は重合条件により制御することが可能であり、例えば重合器内の2−置換−1−オレフィン濃度により制御することが可能である。具体的には、重合器内の2−置換−1−オレフィン濃度を高めることにより密度を低下させることが可能である。なお、本発明においては、重合器内の2−置換−1−オレフィン濃度とは、下記の式で表される、気相での濃度のことである。
2−置換−1−オレフィンの気相濃度(モル%)=
2−置換−1−オレフィンの気相濃度(モル/リットル)×100
/{2−置換−1−オレフィンの気相濃度(モル/リットル)+エチレンの気相濃度(モル/リットル)}
【0016】
本発明のエチレン系重合体の密度は940kg/m以上、980kg/m以下であり、好ましくは945kg/m以上、975kg/m以下であり、さらに好ましくは950kg/m以上、970kg/m以下である。本発明においては、エチレン系重合体の密度が940kg/m以上であれば溶剤に対する溶出物が少なく、また臭気の発生が抑制される。また、本発明においては、本発明のエチレン系重合体の密度が980kg/mを超えることは技術的に困難である。
次に、本発明における分子量について説明する。本発明においては、分子量とは、基本的にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)のことを示している。ただし、分子量が高くなり、測定試料が溶解しない等の不具合が生じてGPCでは測定できない場合には、試料の極限粘度を測定することにより算出される粘度平均分子量(Mv)を分子量と称する場合がある。本発明においては、エチレン系重合体のMvはデカリン中に超高分子量エチレン共重合体を異なる濃度で溶解し、135℃で求めた溶液粘度を濃度0に外挿して求めたη(dl/g)から、以下の数式1により求めることができる。
Mv=(5.34×104)×η1.49 ・・・数式1
次に、本発明における酸化誘導時間(OIP)について説明する。本発明においては、OIPはDSCを用いて測定された値である。まず、DSC測定用アルミパンに所定量の試料をいれた後に窒素雰囲気下で所定温度にし、この後所定温度のまま酸素雰囲気にしてサンプルが酸化される際に発生する熱量を測定する。この時、酸素雰囲気にしてから熱量
が発生し始めるまでの間の時間を計算することによりOIPが測定される。OIPは試料の熱安定性および耐酸化性と密接に関係があり、OIPが長いほうが熱安定性および耐酸化性に優れる。
【0017】
次に、本発明におけるエチレン系重合体に含まれる不飽和結合含有量について説明する。本発明においては、不飽和結合含有量とは赤外吸収スペクトルにより定量された末端ビニル基含量とビニリデン基含量とトランスビニル基含量との和である。具体的には、末端ビニル基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの910cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出される値である。また、ビニリデン基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの888cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出される値である。また、トランスビニル基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの963cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出される値である。
末端ビニル基含量(個/100C)=0.114×ΔA910/(t×d/1000)
ビニリデン基含量(個/100C)=0.109×ΔA888/(t×d/1000)
トランスビニル基含量(個/100C)=0.083×ΔA963/(t×d/1000)
{ただし、dは重合体の密度(kg/m)、ΔA910・ΔA888・ΔA963はそれぞれ910cm−1・888cm−1・963cm−1のピークの吸光度、tはフィルムの厚み(mm)、いずれの含量においても単位は主鎖に含まれる炭素100個あたりの置換基の個数である。}
【0018】
本発明においては、エチレン系重合体に含まれる不飽和結合含有量が0.001個/100C以上0.4個/100C以下であるが、少なければ少ないほど良く、0.2個/100C以下であることが更に好ましく、0.1個/100C以下であることが更に好ましい。本発明においては、エチレン系重合体に三級炭素が存在しないため、この不飽和結合量が0.4個/100C以下であれば耐酸化性が非常に優れる。もし、三級炭素が含まれるエチレン系重合体の場合には、たとえ不飽和結合量が0.4個/100C以下であっても耐酸化性が劣る。本発明においては、該エチレン系重合体に含まれる不総和結合含量は使用する触媒の種類と重合条件により制御できる。触媒の種類については、配位重合では重合しにくい2−置換−1−オレフィンをエチレンと共重合しなければならないため、いわゆるメタロセン触媒を用いて重合することが好ましい。
【0019】
本発明においては、末端ビニル基の分解が原因となるエチレン系重合体の酸化も抑制できる。
本発明においては、末端ビニル基の発生頻度の少ない触媒を選択して使用することにより、エチレン系重合体の末端ビニル基含有量を低下させることが好ましい。エチレンと2−置換−1−オレフィンとの共重合はいわゆるメタロセン触媒を用いて行われることが好ましいが、通常のメタロセン触媒は末端ビニル基の発生頻度が高いためエチレン系重合体の末端ビニル基濃度が高くなってしまう危険がある。そこで、メタロセン触媒の中でも末端ビニル基の発生頻度が低い触媒を使用することが好ましい。
【0020】
本発明においては、末端ビニル基の発生頻度が低い触媒として、少なくとも[A]実質的に水酸基を有しない固体成分、[B]下記の式(1)で表される可溶性遷移金属化合物、[C]該遷移金属化合物[B]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成する活性化剤化合物、とから形成されているオレフィン重合用固体触媒が好ましい。
MXX’ (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によ
っては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
【0021】
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、
X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
【0022】
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、またはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)。
【0023】
本発明において用いられる実質的に水酸基を有しない固体成分[A]は、固体材料[以下、「成分[A]の前駆体」という]を、成分[A]の前駆体の表面から水酸基を除去するための処理に付すことによって、得ることができる。
成分[A]の前駆体の例としては、多孔質高分子材料(但し、マトリックスはたとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンやその変性物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂等を含む)、周期表第2〜4、13または14族に属する元素の無機固体酸化物(たとえば、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、またはこれらの混合物もしくはこれらの複合酸化物)等が挙げられる。シリカを含有する複合酸化物の例としては、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ等の、シリカと周期表第2族または第13族に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物が挙げられる。本発明においては、成分[A]の前駆体は、シリカ,アルミナ、及びシリカと周期表第2族または第13族に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物から選ばれることが好ましい。これらの無機固体酸化物の中で、シリカが特に好ましい。
【0024】
成分[A]の前駆体として用いられるシリカ生成物の形状に関しては特に制限はなく、シリカは、顆粒状、球状、凝集状、ヒューム状など、いかなる形状であってもよい。市販のシリカ生成物の好ましい例としては、SD3216.30、SP−9−10046、デビソンサイロイドTM(Syloid TM)245、デビソン948またはデビソン952[以上全て、グレースデビソン社(W.R.デビソン社(米国)の支社)製]、アエロジル812[デグザAG社(ドイツ)製造]、ES70X[クロスフィールド社(米国)製]、P−6及びP−10[富士シリシア社(日本国)製]等が挙げられる。
本発明において用いられる成分[A]の、B.E.T.(Brunauer−Emmett−Teller)による窒素ガス吸着法で求められる比表面積は、好ましくは10〜1,000m/gであり、より好ましくは100〜600m/gである。このような高い比表面積を有する成分[A]の代表例の一つは、多くの細孔を有する多孔質材料を含む成分である。
【0025】
本発明において、窒素ガス吸着法で求められる成分[A]の細孔容積は、通常5cm3/g以下が好ましく、より好ましくは0.1〜3cm/gであり、さらに好ましくは0.2〜2cm/gである。
本発明において用いられる成分[A]の平均粒径に関しては、特に制限はない。成分[A]の平均粒径は、通常0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmであり、さらに好ましくは10〜100μmである。
本発明において、実質的に水酸基を有しない成分[A]は、成分[A]の前駆体を化学処理して成分[A]の前駆体の表面から水酸基を除去することによって得ることができる。
本発明において、「固体成分が実質的に水酸基を有しない」とは、次に述べる方法(i)や方法(ii)による測定では固体成分(成分[A])の表面に水酸基が検出されないことを意味する。
【0026】
方法(i)においては、成分[A]を溶媒中に分散させることによって得られるスラリーに所定の過剰量のジアルキルマグネシウムを添加して、成分[A]の表面水酸基をジアルキルマグネシウムと反応させ、次いで、成分[A]の表面水酸基と反応したジアルキルマグネシウムの量を求めるために、溶媒中に未反応のままで残っているジアルキルマグネシウムの量を公知の方法で測定してから、反応したジアルキルマグネシウムの量に基づいて成分[A]の表面水酸基の初期量を求める。この方法は、下記の反応式で表される、水酸基とジアルキルマグネシウムとの反応に基づくものである:
S−OH +MgR → S−OMgR + RH
(式中、Sは固体材料(成分[A])を表し、Rはアルキル基を表す)。
方法(i)より好ましい方法(ii)においては、ジアルキルマグネシウムの代わりにエトキシジエチルアルミニウムを用いる。具体的に言えば、方法(ii)では、エトキシジエチルアルミニウムを成分[A]の表面水酸基と反応させてエタンガスを発生させ、発生したエタンガスの量をガスビュレットを用いて測定してから、発生したエタンガスの量に基づいて成分[A]の表面水酸基の初期量を求める。
【0027】
さらに、本発明においては、成分[A]の前駆体を加熱処理して水(結晶水、吸着水等)を除去することが好ましい。成分[A]の前駆体の加熱処理は、たとえば、不活性雰囲気下または還元雰囲気下に、好ましくは150℃〜1,000℃、より好ましくは250℃〜800℃の温度で、1時間〜50時間の処理によって行うことができる。
本発明においては、加熱処理して脱水した後に、成分[A]の前駆体をさらに化学処理して成分[A]の前駆体の表面から全部水酸基を除去し、成分[A]を得ることが、さらに好ましい。
成分[A]の前駆体から水酸基の全部を除去するための化学処理に関しては、成分[A]の前駆体を有機金属化合物と接触させるという化学処理を行うことが推奨される。この
化学処理に用いられる有機金属化合物の例としては、周期表第2族〜第13族に属する元素の化合物等が挙げられる。これらの化合物の中で特に好ましいのは、有機アルミニウムまたは有機マグネシウムである。
【0028】
成分[A]の前駆体の化学処理に用いられる好ましい有機アルミニウム化合物の例として、下記の式(3)で表される化合物が挙げられる:
AlR3−n (3)
(式中、Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、
Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシド基を表し、
nは1、2または3である)。
上記式(3)で表される化合物は、単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
式(3)中の基Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
式(3)中の基Xとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0029】
成分[A]の前駆体の化学処理に用いられる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、及びこれらのトリアルキルアルミニウム化合物とアルコール(たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール)との反応生成物が挙げられる。
そのような反応生成物の例としては、メトキシジメチルアルミニウム、エトキシジエチルアルミニウム、ブトキシジブチルアルミニウム等が挙げられる。このような反応生成物を製造する場合、トリアルキルアルミニウムのアルコールに対する比は、Al/OHのモル比で、0.3〜20の範囲にあることが好ましく、0.5〜5の範囲にあることがより好ましく、0.8〜3の範囲にあることがさらに好ましい。
【0030】
またこの他に成分[C]の例として後述する有機アルミニウムオキシ化合物も、成分[A]の前駆体の化学処理に用いることができる。
成分[A]の前駆体の化学処理に用いられる好ましい有機マグネシウム化合物の例として、下記の式(4)で表される化合物が挙げられる。
MgR2−n (4)
(式中、Rは、各々独立して、炭素数1〜12の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、
Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1〜10のアルコキシド基を表し、
nは1または2である)。
上記式(4)で表される化合物は、単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
式(4)中の基Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
式(4)中の基Xの例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0031】
成分[A]の前駆体の化学処理に用いられる有機マグネシウム化合物の具体例としては
、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム等が挙げられる。
成分[A]の前駆体を化学処理する場合、上述の有機アルミニウム化合物または有機マグネシウム化合物は、これらを混合した状態で使用してもよい。
成分[A]の前駆体を化学処理して成分[A]を得る場合は、有機金属化合物は、成分[A]の前駆体の表面に存在する水酸基のモル量と同じまたはそれより多い量が用いられる。化学処理に用いられる有機金属化合物の上限は、通常は成分[A]の前駆体の表面に存在する水酸基のモル量の10倍量が好ましく、より好ましくは5倍量、さらに好ましくは2倍量、特に好ましくは1.5倍量、最も好ましくは1.3倍量である。
【0032】
また、本発明において、成分[A]は実質的に水酸基を有しないシリカであることが特に好ましい。該シリカは、好ましくは150℃以上、より好ましくは250℃以上の温度でシリカを加熱することにより、表面水酸基の量が好ましくはシリカ1g当たり0.05〜10ミリモルに前処理されたシリカを有機金属化合物で処理するという方法によって得られるものが好ましい。シリカ[成分[A]の前駆体]の処理のための有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物を使用することが好ましく、前記式(3)の有機アルミニウム化合物を使用することが特に好ましい。有機アルミニウム化合物の使用量は、前処理されたシリカの表面水酸基のモル量の1〜10倍が好ましい。
上記の前処理されたシリカの表面水酸基は、前処理されたシリカ1g当たり0.1〜5ミリモルであることがより好ましく、0.5〜2ミリモルであることが最も好ましい。
【0033】
次に、本発明において用いられる可溶性遷移金属化合物[B]について説明する。本発明において用いられる成分[B]は通常のメタロセン触媒であるが、下記の式(1)で表される化合物であることが好ましい。
MXX’ (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
【0034】
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、
X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
【0035】
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1〜
12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、またはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である。)
【0036】
上記式(1)の化合物中の配位子Xの例としては、ハライド、炭素数1〜60の炭化水素基、炭素数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜60のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜60のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1〜60のヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、これらの複合基等が挙げられる。
上記式(1)の化合物中の中性ルイス塩基配位性化合物X′の例としては、フォスフィン、エーテル、アミン、炭素数2〜40のオレフィン、炭素数1〜40のジエン、これらの化合物から誘導される2価の基等が挙げられる。
本発明において用いられる成分[B]の例としては、次に下記の式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基又は全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、RとRはたがいに結合して環を形成していてもよく、XおよびYは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、Mは、ニッケル又はパラジウムを示す。)で表される錯体化合物を挙げることができる。
【0038】
上記一般式(5)において、R及びRのうちの炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基など、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基の環上には低級アルキル基などの適当な置換差が導入されていてもよい。
また、全炭素数7〜20の環上に炭化水素基を有する芳香族基としては、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族環上に、炭素数1〜10の直鎖状,分岐状又は環状のアルキル基が1個以上導入された基などが挙げられる。このR及びRとしては、環上に炭化水素基を有する芳香族基が好ましく、特に2,6−ジイソプロピルフェニル基が好適である。R及びRは、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
また、R及びRのうちの炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基,炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基,炭素数7〜20のアラルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、前記R及びRのうちの炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,メチルナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基やフェネチル基などが挙げられる。
【0040】
このR及びRは、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、たがいに結合して環を形成していてもよい。一方、X及びYのうちのハロゲン原子としては、塩素,臭素またはヨウ素原子などが挙げられ、また、炭素数1〜20の炭化水素基は、上記R及びRにおける炭素数1〜20の炭化水素基について、説明したとおりである。このX及びYとしては、特に臭素原子またはメチル基が好ましい。また、XとYは、たがいに同一であってもよく異なっていてもよい。
本発明において、成分[B]としては、前記式(1)(ただし、j=1)で表される遷移金属化合物が好ましい。
前記式(1)(ただし、j=1)で表される化合物の好ましい例としては、下記の式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化3】

(式中、Mは、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し、
は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン原子及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、該置換基Rが炭素数1〜8の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの隣接する置換基Rが互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣接する該置換基Rにそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子間の結合と共働して環を形成し、
【0042】
X″は、各々独立して、ハライド、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミノ基、シリル基、炭素数1〜18のヒドロカルビルアミド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1〜18のヒドロカルビルスルフィド基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基を表し、但し、場合によっては2つの置換基X″が共働して炭素数4〜30の中性共役ジエンまたは2価の基を形成し、
Y´は、−O−、−S−、−NR−または−PR−を表し、但し、Rは、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロカルビルオキシ基、シリル基、
炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のハロゲン化アリール基、またはこれらの複合基を表し、
ZはSiR、CR、SiR−SiR、CR−CR、CR=CR、CR−SiRまたはGeRを表し、但し、Rは上で定義した通りであり、nは1、2または3である)。
【0043】
本発明において用いられる成分[B]の具体例としては、以下に示すような化合物が挙げられる。
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオペンチルジルコニウムハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジエチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジハイドライド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(6−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(7−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(2,3−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,7−ジメチル−1−インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス−(4,7−ジメトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−フェニルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η−インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(η−インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル等。
【0044】
本発明において用いられる成分[B]の具体例としては、さらに、成分[B]の具体例として上に挙げた各ジルコニウム及びチタン化合物の名称の「ジメチル」の部分(これは、各化合物の名称末尾の部分、すなわち「ジルコニウム」または「チタニウム」という部分の直後に現れているものであり、前記式(6)中のX″の部分に対応する名称である)を、以下に掲げる任意のものに替えてできる名称を持つ化合物も挙げられる。
「ジベンジル」、「2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジル」、「2−ブテン−1,4−ジイル」、「s−トランス−η−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η−3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η−2,4−ヘキサジエン」、「s−トランス−η−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η−3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η−2,4−ヘキサジエン」、「s−シス−η−1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」等。
【0045】
本発明において用いられる遷移金属化合物[B]は、一般に公知の方法で合成できる。本発明において成分[B]として用いられる遷移金属化合物の好ましい合成法の例としては、米国特許第5,491,246号明細書に開示された方法を挙げることができる。
本発明においてこれら遷移金属化合物成分[B]は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
次に本発明において、遷移金属化合物[B]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化剤化合物[C]について説明する。
成分[C]として例えば、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。本発明で用いられる好ましい有機アルミニウムオキシ化合物は、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0046】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお該有機アルミニウムオキシ化合物は、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記の有機アルミニウムオキシ化合物の溶液から、溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解または有機アルミニウムオキシ化合物の貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0047】
有機アルミニウムオキシ化合物を調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、
トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0048】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
このほかに成分[C]として例えば、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物があげられる。この場合、前記した式(3)で表される有機アルミニウム化合物が同時に用いられるのが好ましい。この際、トリアルキルアルミニウムが好ましく用いられる。
本発明で用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成されるのが好ましく、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であって含有するイオンが交換可能なものが好ましい。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0049】
このような粘土、粘土鉱物として具体的には、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO・HO、α−Zr(HPO、α−Zr(KPO・3HO、α−Ti(HPO、α−Ti(HAsO・HO、α−Sn(HPO・HO、γ−Zr(HPO、γ−Ti(HPO、γ−Ti(NHPO・HOなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
このような粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、重合活性の観点から、水銀圧入法で測定した半径2nm以上の細孔容積が0.1cm/g以上のものが好ましく、0.3〜5cm/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積の測定は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により細孔半径として2〜3×10nmの範囲で測定される。
【0050】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物は、化学処理を施すこともできる。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の結晶構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物を得ることもできる。ここで嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。また、層状物質の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。
【0051】
インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl、ZrClなどの陽イオン性無機化合物;Ti(OR)、Zr(OR)、PO(OR)、B(OR)、(Rは炭化水素基など)などの金属アルコラート;[Al13(OH)247+、[Zr(OH)142+、[FeO(OCOCHなどの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)、Al(OR)、Ge(OR)(Rは炭化水素基など)などの金属アルコラートなどを加水分解して得た重合物、SiOなどのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーの他の例としては上記水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよいし、ボールミルによる粉砕、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイトである。
【0052】
さらに成分[C]として例えば、以下の一般式(7)で定義される化合物が挙げられる。
[L−H]d+[Md− (7)
但し、式中[L−H]d+はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
また、式中[Md−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至第15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。また、mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、p−m=dである。
【0053】
本発明において、成分[C]の好ましい例としては以下の一般式(8)で表される。
[M(G(T−H)d− (8)
但し、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドである。Qは、一般式(7)に定義の通りであり、Gは硼素及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR、又はPRであり、ここでRはヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、または水素である。また、mは1〜7の整数であり、nは0〜7の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0〜3の整数であり、zは1〜8の整数であり、dは1〜7の整数であり、n+z−m=dである。本発明の成分[C]の更に好ましい例は、以下の一般式(9)で表される。
[L−H][BQQ] (9)
但し、式中[L−H]はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[BQQ’]は相溶性の非配位性アニオンであり、Qはペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ’は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。
【0054】
本発明の相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、例えば、テトラキスフェニルボレート、トリ(p−トリル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ナフチル)ボレート
、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、 トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等が挙げられ、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
【0055】
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHR基で置き換えられたボレートが挙げられる。ここで、Rは好ましくは、メチル基、エチル基またはt−ブチル基である。また、本発明のプロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム及びトリ(n−オクチル)アンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、また、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
さらに、ジ−(i−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム等のようなジアルキルアンモニウムカチオンも好適であり、トリフェニルフォスフォニウム、トリ(メチルフェニル)フォスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウム等のようなトリアリールフォスフォニウムカチオン、またはジメチルスルフォニウム、ジエチルフルフォニウム、ジフェニルスルフォニウム等も好適である。
【0056】
本発明においては、これら活性化剤化合物成分[C]を単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
本発明において、各成分の使用量、使用量の比も特に制限されないが、成分[B]が反応するのに十分な量の成分[C]を用いることが好ましい。
本発明において、成分[B]は成分[A]1gに対して好ましくは5×10−6〜10−2モル、より好ましくは10−5〜10−3モルの量で用いられる。
成分[A]、[B]及び[C]を接触させた場合、条件によっては反応溶媒中に一部未反応の成分[B]が存在することがあり、成分[B]が可溶な溶媒を用いて洗浄する方法や、加熱および/または減圧処理する方法等により未反応の成分[B]を除去することが行われる。
【0057】
また、エチレン系重合体の不飽和結合含有量は、重合条件により制御することが可能である。例えば、重合温度を低下させ、および/または重合器内の水素濃度を高めることにより、エチレン系重合体の不飽和結合含有量を低下させることが可能である。具体的には、重合温度が低いほうが分子量は増大し、かつ不飽和結合含有量は低下する。また、重合器内の水素濃度が高いほうが分子量は低下し、かつ不飽和結合含有量は低下する。そこで、同一の分子量のエチレン系重合体を製造する際に、重合温度を下げ、かつ水素濃度を上げて製造することにより不飽和結合含有量が低下し、重合温度を上げ、かつ水素濃度を下げて製造することにより不飽和結合含有量を増加できる。
本発明においては、重合器内の水素濃度は10モルppm以上1モル%以下の濃度でエチレン系重合体を製造することが好ましい。水素濃度を10モルppm以上であれば、工
業的に安定運転が可能であり、1モル%以下であれば適切な分子量領域のエチレン系重合体を製造可能である。
【0058】
本発明においては、重合温度については特に制限はないが、0℃以上200℃以下であることが好ましく、20℃以上130℃以下であることがさらに好ましく、40℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。0℃以上である場合には工業的に十分な重合活性を発現可能であり、かつ重合器の除熱も安定的に行うことが可能であり、200℃以下である場合には不飽和結合含量を制御することが可能である。重合温度を下げることにより、生成するエチレン系重合体の分子量を高めておき、ここで水素濃度を高めて分子量を適当な範囲に調節することが可能である。
次にエチレンの重合を本発明の触媒の存在下で行なう具体的な態様について説明する。
エチレンと2−置換−1−オレフィンとの共重合により、エチレン系重合体の密度や物性を制御可能である。本発明によるオレフィンの重合は、懸濁重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。懸濁重合法においては、懸濁重合の媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
かかる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0059】
このような、本発明のオレフィン重合用触媒を用いたエチレンの重合における触媒フィード量は、例えば1時間当たりに得られる重合体の重量に対して触媒が1wt%〜0. 001wt%となるように重合系中の触媒濃度を調整することが望ましい。また重合温度は、通常、0℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、且つ150℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜5MPa、さらに好ましくは0.5〜3MPaの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
さらに、例えば、DE3127133.2に記載されているように、得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度を変化させることによって調節することもできる。なお、本発明では、上記のオレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分を含むことができる。
次に、実施例および参考例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
[メルトフローレートの測定]
メルトフローレート(MFR)はJIS K7210−1999、コードDに準拠して測定を行った。
[密度の測定]
重合体の密度はJIS K7112−1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)で測定した。
[2−置換−1−オレフィンの含有量測定]
オレフィン含有率{x(モル%)}の測定はG.J.RayらのMacromolecules,10,773(1977)に開示された方法に準じて行われ、xは、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。使用した機器は日本電子製Lambda−400であった。使用した溶媒はo-オルトジクロロベンゼン−d、測定温度は140℃、観測周波数は100MHz(
C)、パルス幅45°(7.5μsec)、積算回数は10,000回であった。測定基準はPE(−eee−)シグナルであり29.9ppmとした。
【0061】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
測定に使用した装置はWaters社製GPC−2000であった。使用したカラムは、1本の昭和電工社製Shodex AT−807Sと2本の東ソー社製TSK−GELGMH−H(S)であり、まず1本のShodex AT−807Sを通り、次に2本のTSK−GELGMH−H(S)を通るように直列に接続して使用した。移動相溶媒として、10質量ppmのペンタエリスリチル テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを使用した。測定温度は140℃であった。移動相溶媒の流速は1.0ミリリットル/分であった。測定試料は、20mgのポリマーに対して1,2,4−トリクロロベンゼン20ミリリットルを添加し、145℃で2時間溶解させた後、0.5μmの焼結フィルターを通すことにより調製した。数平均分子量(Mn)は、標準物質として東ソー社製の単分散のポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗ずることにより算出した。重量平均分子量(Mw)は、標準物質として東ソー社製の単分散のポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗ずることにより算出した。
【0062】
[不飽和結合含量の測定]
重合体に含まれる不飽和結合含量は、下記の方法により測定した。
1gの重合体を0.2mmのアルミ板上に載せた縦×横×厚みが5cm×5cm×0.5mmの金型に入れ、アルミ板を載せて180℃でプレスしてフィルムを作成した。このフィルムの赤外吸収スペクトルを日本分光製FT−IR5300Aを用いて測定した。末端ビニル基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの910cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出した。また、ビニリデン基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの888cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出した。また、トランスビニル基含量は、重合体をプレスすることにより作成されたフィルムの963cm−1のピークの吸光度を測定し、下記の式にしたがって算出した。これら3つの官能基の含量の総和することにより、不飽和結合含有量とした。
末端ビニル基含量(個/100C)=0.114×ΔA910/(t×d/1000)
ビニリデン基含量(個/100C)=0.109×ΔA888/(t×d/1000)
トランスビニル基含量(個/100C)=0.083×ΔA963/(t×d/1000)
{ただし、dは重合体の密度(kg/m)、ΔA910・ΔA888・ΔA963はそれぞれ910cm−1・888cm−1・963cm−1のピークの吸光度、tはフィルムの厚み(mm)、いずれの含量においても単位は主鎖に含まれる炭素100個あたりの置換基の個数である。}
【0063】
[210℃での酸化誘導時間(OIP)測定後のMwおよびMw保持率の測定]
まず、210℃にてOIPを測定した。測定にはDSC−50(島津社製)を使用した。DSC測定用アルミパン(パーキンエルマー社製アルミニウムサンプルパンキット)に試料を10mgいれた。これをDSC−50の炉の右側にセットし、炉の左側には酸化アルミニウムを10mgいれたアルミパンをセットした。中蓋を閉めて保護カバーを下げ、炉内を窒素雰囲気にして5分間放置した。この後、測定温度を210℃に設定し、測定を開始した。昇温速度は99.9℃/分だった。測定時のサンプリング間隔は0.8秒に設定した。7分後に窒素を酸素に切替え、サンプルを酸化させた。窒素を酸素に切替えた時
のチャート上の点を通り、その点でのチャートの傾きを有する直線と、チャートが立ち上がり、最初のピークを通る前の変曲点を通り、その変曲点でのチャートの傾きを有する直線との交点の時間を計算することにより、OIPを測定した。
OIP測定後のサンプルを取り出し、前記のGPC測定と同様の操作により、OIP測定後のMwを測定した。Mw保持率はOIP測定後のMwをOIP測定前のMwで除することにより算出した。Mw保持率が高いほうが耐酸化性および熱安定性に優れると考えられる。
【0064】
[参考例1]
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.29ミリモル/g−SiOであった。内容量200リットルのステンレス製オートクレーブにこの脱水シリカ5kgをヘキサン100リットル中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながらトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)を7.5リットル加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基が反応している担体(A−1)を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー100リットルを得た。
【0065】
ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)457gをトルエン5リットルに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1Mヘキサン溶液400ミリリットルを25℃で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mMとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物(C−1)を得た。
【0066】
[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)400ミリモルをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の体炭化水素混合物の商品名]4リットルに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとブチルエチルマグネシウムより合成した一般式AlMg(C(n−Cの1Mヘキサン溶液を20ミリリットル加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1Mに調整し、遷移金属化合物(B−1)を得た。
ボレートを含むこの反応混合物(C−1)全量を、上で得られた、担体(A−1)のスラリーに15℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。
こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上で得られた遷移金属化合物(B−1)を全量加え、15℃で3時間攪拌し、(C−1)と(B−1)とを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されている固体触媒成分(1)を得た。
【0067】
[参考例2]
(1)担体の合成
充分に窒素置換された8リットルステンレス製オートクレーブに2モル/リットルのヒドロキシトリクロロシランヘキサン溶液1460ミリリットルを仕込み、80℃で攪拌しながら組成式AlMg(C11(OCで表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液3730ミリリットル(マグネシウム2.68モル相当)を4時間かけて滴下し、さらに80℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄
み液を除去し、2600ミリリットルのヘキサンで4回洗浄した。この固体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.43ミリモルであった。
【0068】
(2)固体触媒成分の調製
上記担体160gを含有するヘキサンスラリー2880ミリリットルに20℃で攪拌しながら1モル/リットルの四塩化チタンヘキサン溶液160ミリリットルと1モル/リットルの組成式AlMg(C11(OCで表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液160ミリリットルとを同時に1時間かけて添加した。添加後、20℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600ミリリットル除去し、ヘキサン1600ミリリットルで2回洗浄することにより、固体触媒成分(2)を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.98ミリモル、塩素量は14.9ミリモルであった。
【0069】
[参考例3]
助触媒成分の調整
200ミリリットルのフラスコに、ヘキサン40ミリリットルとAlMg6(C253(n−C4912で示される有機マグネシウム化合物をMg+Alとして37.8ミリモル加え、25℃でメチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス@25℃)2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ミリリットルを添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、助触媒成分を得た。
【0070】
[実施例1]
(重合)
内部を真空脱気し窒素置換した内容積1.5リットルのオートクレーブに脱水脱酸素したヘキサン0.8リットル入れ、オートクレーブの内部を70℃に昇温した。次いで、2−メチルプロペン50ミリリットルを入れ、上記助触媒成分を0.20ミリモルと固体触媒成分(1)を50mgを添加した。この後、エチレンを添加して全圧を0.8MPaとすることにより重合を開始した。エチレンとメルトフローレート(MFR)を2〜3g/10minにコントロールするに必要な水素を連続的に補給することにより全圧を0.8MPaに保ちつつ、70℃で60分間重合を行った。重合スラリーを抜き出しメタノールで脱活し、濾過後90℃で1時間乾燥させた。こうしてエチレン系重合体のポリマー収量は130gで、触媒1gあたりの重合活性は2600g/g−触媒であった。メルトフローレート(MFR)は2.6g/10min、密度は943kg/m、NMR測定での2−メチルプロペン含有量は0.8モル%であった。こうして得られたエチレン系重合体の210℃でのOIP測定の前後でのMwは、それぞれ59200、33400であり、Mw保持率は0.56であった。このエチレン系重合体の不飽和結合含量は0.143個/100Cであった。
【0071】
[比較例1]
(重合)
2−メチルプロペン50ミリリットルの代わりに、1−ブテン3.5ミリリットルを使用した以外は実施例1と同様に重合を行った。ポリマー収量は130gで、触媒1gあたりの重合活性は4000g/g−触媒であった。メルトフローレート(MFR)は2.6g/10min、密度は943kg/m、NMR測定での2−メチルプロペン含有量は0.6モル%であった。こうして得られたエチレン系重合体の210℃でのOIP測定の前後でのMwは、それぞれ59000、28400であり、Mw保持率は0.48であった。このエチレン系重合体の不飽和結合含量は0.051個/100Cであった。
【0072】
[比較例2]
(重合)
内部を真空脱気し窒素置換した内容積1.5リットルのオートクレーブに脱水脱酸素したヘキサン0.8リットル入れ、オートクレーブの内部を80℃に昇温した。次いで、2−メチルプロペン50ミリリットルを入れ、助触媒成分としてトリイソブチルアルミニウムを0.40ミリモルと固体触媒成分(2)を20mgを添加した。この後、水素を気相濃度でエチレンに対して40モル%添加し、エチレンを添加して全圧を0.5MPaとすることにより重合を開始した。エチレン連続的に補給することにより全圧を0.5MPaに保ちつつ、80℃で60分間重合を行った。重合スラリーを抜き出しメタノールで脱活し、濾過後90℃で1時間乾燥させた。こうしてエチレン系重合体のポリマー収量は230gで、触媒1gあたりの重合活性は12000g/g−触媒であった。メルトフローレート(MFR)は2.5g/10min、密度は967kg/mであったがエチレン単独重合体の密度と同等だった。NMR測定で2−メチルプロペンは検出されなかった。従って、この触媒では、エチレンと2−メチルプロペンは共重合しないと考えられる。
以上の結果から、実施例1に示された本願発明のエチレン系重合体は、比較例1のエチレン系重合体に比べ耐酸化性および熱安定性に優れることは明らかである。また、比較例2と比べ、実施例1で使用した触媒の有効性も明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、熱安定剤無添加でも耐酸化性および熱安定性に優れたエチレン系重合体を提供できる。提供されたエチレン系重合体は、熱安定剤無添加が必要な用途、例えば高純度薬品用容器や部材に好適である。また、不純物の混入を嫌う電子部品、精密部品、光学部材用包材や合紙にも特に好適に利用できる。また、半導体分野、IT分野、医療医薬分野、およびサニタリー分野において、クリーン性が必要とされる用途にも好適に使用され、特に前記分野の部品、部材用包材として、特に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンユニットを50モル%以上99.9モル%以下含み、2−置換−1−オレフィンユニットを0.1モル%以上50モル%以下含むエチレン系重合体であり、分子量が5000以上500万以下であり、該エチレン系重合体に含まれる不飽和結合含有量が0.001個/100C以上0.4個/100C以下であることを特徴とする、エチレン系重合体。
【請求項2】
該2−置換−1−オレフィンユニットに含まれる炭素数が6以下であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系重合体。
【請求項3】
210℃での酸化誘導時間測定による重量平均分子量の保持率が、50%以上99.9%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン系重合体。
【請求項4】
少なくとも[A]実質的に水酸基を有しない固体成分、[B]下記の式(1)で表される可溶性遷移金属化合物、[C]該遷移金属化合物[B]と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成する活性化剤化合物、とから形成されているオレフィン重合用固体触媒により製造されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエチレン系重合体。
MXX’ (1)
(式中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1〜8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1〜12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1〜12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1〜12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、
Mは、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη結合している遷移金属を表し、
Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、
Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、
X′は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、
jは1または2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1〜20のヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1〜12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、
kは0または1であり、
pは0、1または2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、またはLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、
qは0、1または2である)。
【請求項5】
エチレン系重合体製造時に、反応器に10モルppm以上1モル%以下の濃度になるように水素を添加することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のエチレン系重合体の製造方法

【公開番号】特開2009−120748(P2009−120748A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297390(P2007−297390)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】