エッジデフィニションを向上させた状態で粘性流体を小出しする流体ディスペンサ及び方法
【課題】エッジデフィニションを向上させた状態で基板の広い表面領域に粘性流体を塗布することができる流体ディスペンサ及び方法を提供する。
【解決手段】小出しヘッド16を多軸ステージ114,116によって静止状態の基板22に対して動かしながら、加圧流体を小出しヘッドノズルプレート18内に設けられたノズル80にパルスの状態で定期的に供給する。小滴をノズルから放出し、すると小滴は基板に当たる。小滴は、互いに合体して被膜を形成する。1つ又は2つ以上のノズル群からの放出を一時的に中断させて基板上の部品又は所与の領域の被覆を回避する一方で、これに隣接した領域が引き続き流体の小滴を受け入れることができるようにするのが良い。
【解決手段】小出しヘッド16を多軸ステージ114,116によって静止状態の基板22に対して動かしながら、加圧流体を小出しヘッドノズルプレート18内に設けられたノズル80にパルスの状態で定期的に供給する。小滴をノズルから放出し、すると小滴は基板に当たる。小滴は、互いに合体して被膜を形成する。1つ又は2つ以上のノズル群からの放出を一時的に中断させて基板上の部品又は所与の領域の被覆を回避する一方で、これに隣接した領域が引き続き流体の小滴を受け入れることができるようにするのが良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、粘性流体を小出しする流体ディスペンサに関し、特に、エッジデフィニション(edge definition、縁輪郭明確性)の精度を向上させた状態で粘性流体を基板上に小出しするよう構成された流体ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式流体ディスペンサは、微量の粘性物質を基板上に塗布するために用いられる場合が多い。例えば、非接触式流体ディスペンサは、種々の粘性物質を少量、プリント回路板(PCB)又は半導体キャリヤ若しくはウエーハのような電子基板に塗布するために用いられる。粘性物質を非接触式ディスペンサから基板上に小出しする多くの塗布方法が存在する。半導体パッケージ組立てでは、使用の中で、アンダーフィリング(underfilling)、BGA(ボールグリッドアレイ)におけるはんだボール補強、ダム及びフィル作業、チップエンキャプシュレーション、CSP(チップスケールパッケージ)のアンダーフィリング、キャビティ充填剤小出し、ダイ接着剤小出し、リッド密封剤小出し、無流量フローアンダーフィリング、フラックスジェッティング及び熱的化合物の小出しのための用途が存在する。表面実装技術によるPCB作製のため、表面実装用接着剤、はんだペースト、導電性接着剤及びはんだマスク材料が非接触式ディスペンサから小出しされる場合があり、選択的フラックスジェッティングについても同様である。また、非接触式ディスペンサを用いてコンフォーマルコーティングを選択的に施す場合がある。また、ディスクドライブ業界、医用エレクトロニクスのためのライフサイエンス用途及び一般に結合、密封、ガスケット形成、塗装及び潤滑のための工業上の利用分野における用途が存在する。
【0003】
従来型自動流体小出しシステムは、ロボットに取り付けられた非接触式流体ディスペンサを有し、ロボットは、ディスペンサを小出し先としての基板に対して動かす関節式アームを有している。このシステムは、所与の量の粘性材料を流体ディスペンサから高い再現性をもって正確に各基板上の標的場所に小出しするよう構成されている。従来型流体ディスペンサ中の流体の流量及び放出量は、弁組立体によって調節され、この弁組立体は、流体通路中に位置する弁座及び放出オリフィスへの材料の流れをそれぞれ可能にしたり中断させたりする互いに異なる開放条件及び閉鎖条件を提供するよう弁座に選択的に接触するよう動くことができる弁要素を有している。それ故、開放位置と閉鎖位置との間におけるサイクル運動により、製品又は製品包装材の表面上に流体のパターンを生じさせるのに必要な間欠的な流れの中断が生じる。
【0004】
従来型自動流体ディスペンサは、粘性流体をPCBのような電子基板上の広い表面領域上に塗布する種々の技術を利用している。基板の表面から突き出た物体との接触を避けるために、流体ディスペンサは、基板の上方に吊り下げられ、流体を小出ししながら基板に対して動かされる。1つの対策では、表面上の選択された領域をマスキングし、流体を表面全体に無秩序に吹き付ける。別の対策では、明確に規定されたファン幅を有する噴霧化スプレーを用いる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この対策は、膜厚さがファンスプレーのエッジ相互間の位置につれて変化する基板上の低粘性流体及び成膜(デポジット)に限定される。他の対策は、流体を明確に規定された幅を有するパターン(例えば、スワールパターン)で小出しすることができるノズルを用いること又はスロットノズルを用いることである。しかしながら、エッジデフィニションは、スプレーを噴霧化し又はパターン化された流体塗布に関しては不良である場合がある。
【0006】
したがって、エッジデフィニションの精度が向上すると共に塗布厚さが正確な状態で粘性流体を基板の広い表面領域上に塗布することができる流体ディスペンサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、静止状態の基板に加圧流体を塗布する装置が提供される。本装置は、少なくとも1つの流体ディスペンサ及び少なくとも1つの流体ディスペンサに機械的に結合された多軸ステージを有する。各流体ディスペンサは、アクチュエータ、加圧流体を収容した流体チャンバ、アクチュエータに結合された弁要素及び弁座のところで流体チャンバに連結された流体通路を有する。各流体ディスペンサのアクチュエータは、弁要素を弁座に対して、加圧流体が流体チャンバから流体通路内に流れることができるようにする開放位置と、弁要素が弁座に接触して流体チャンバと流体通路との間に流体シールを生じさせる閉鎖位置との間で動かすよう構成されている。多軸ステージは、1つ又は複数の流体ディスペンサを静止状態の基板に対して動かすよう構成されている。
【0008】
本装置は、複数個の流体ディスペンサの各々にそれぞれ機械的に結合された少なくとも1枚のノズルプレートを有する。各ノズルプレートは、流体通路に結合された流体キャビティ及び流体チャンバに結合された複数個のノズルを有する。各流体ディスペンサの弁要素が開放位置にあるとき、対応の流体キャビティは、複数個のノズルから放出可能に加圧流体を受け入れるよう構成されている。
【0009】
流体ディスペンサ及びノズルプレートは、多種多様な流体を小出しすることができると共に基板上の膜堆積又は厚さに対する厳密な制御を可能にする。流体ディスペンサ及びノズルプレートは、少なくとも1つには、ノズルアレイから小出しされ、流体ディスペンサを基板に対して動かしているときに、基板に塗布される流体のストリップとオーバーラップしてこれを画定する長方形又は台形のパターンにより、正確なエッジデフィニションを達成することができる。その結果、流体ディスペンサは、流体を基板上の高密度に実装された物体上に小出しすることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、加圧流体を静止状態の基板上に小出しして被膜を形成する方法が提供される。本方法は、加圧流体の第1の複数個の小滴を第1の複数個のノズルから静止状態の基板上に放出するステップと、加圧流体の第2の複数個の小滴を第2の複数個のノズルから静止状態の基板上に放出するステップとを有する。本方法は、第1の複数個の小滴及び第2の複数個の小滴を放出しながら第1の複数個のノズル及び第2の複数個のノズルを静止状態の基板に対して動かすステップを更に有する。
ノズルプレートの上述の構成により、高周波作動及び低いデューティサイクルと関連して、ノズルから噴出した流体は、各ノズル中の放出通路の中心線にほぼ平行な方向に動く。流体キャビティは、死空間を最小限に抑えると共に高周波作動を可能にするよう最適化された寸法形状を有する。
【0011】
添付の図面は、本発明の実施形態を示すと共に上記の本発明の一般的説明及び下記の実施形態についての詳細な説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。なお、添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部をなしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3を参照すると、複数個の流体ガン又はディスペンサ10,12,14が、単一の流体小出しヘッドとして構成されており、これらディスペンサは、種々の量の粘性流体を静止状態の基板120(図7)上に間欠的に小出しする流体小出し機又はシステム110(図7)に使用可能である。流体ディスペンサ10,12,14を用いると常温接着剤又はグルーを含む周囲温度の粘性流体及び例えばコンフォーマルコーティング、フラックス及びホットメルト接着剤のような加熱状態の粘性液を小出しすることができる。流体ディスペンサ10,12,14は、粘性流体を静止状態の基板120上に別々の量で間欠的に小出しするために公知の仕方で作動される。図1に示すように、流体ディスペンサ10,12,14は、スタックをなして互いに並んで位置決めされ又は流体小出しシステム110の小出しヘッドを構成するよう並置されると共にノズルプレート18と関連している。流体ディスペンサ10,12,14のコンパクトさ、具体的に言えば、流体ディスペンサ10,12,14の幅が狭いことにより、隣り合う流体ディスペンサ10,12,14相互間の間隔を最小限に抑えることができると共に並置状態の流体ディスペンサ10,12,14を高密度に実装することができる。
【0013】
流体ディスペンサ10,12,14は各々、実質的に互いに同一の構造を有する。それ故に、流体ディスペンサ10についての以下の説明は、そのまま流体ディスペンサ12,14に当てはまるものと理解されたい。変形実施形態では、追加の流体ディスペンサ(図示せず)を流体ディスペンサ10,12,14と組み合わせても良い。流体ディスペンサの総数は、小出し用途に応じて様々であろう。個々の流体ディスペンサ10,12,14は、多数のユニットが基板120の幅全体又は基板120の幅の一部分に及ぶ並置配列状態を有することができるよう幅が狭い(例えば、約0.33インチ(8.382mm))。
【0014】
図2及び図3を参照すると、流体ディスペンサ10は、モジュール本体16、流体チャンバ22及び流体チャンバ22を流体供給源25と連通した加熱式マニホルドに結合するよう構成された流体入口24を有している。流体供給源25から圧力下で供給された流体は、流体入口24を通って流体チャンバ22内に導入される。流体ディスペンサ10は、電磁アクチュエータを備え、この電磁アクチュエータは、可動アーマチュア26、長手方向軸線30に沿ってアーマチュア26と同軸に整列した静的磁極片28及び流体チャンバ22内に設けられていて、アーマチュア26を磁極片28から遠ざかる方向に付勢する戻しばね32を有している。一体形弁棒34が、アーマチュア26から軸方向に延びている。フランジ36が、弁棒34から半径方向外方に突き出ている。戻しばね32は、流体チャンバ22内に形成された肩38とフランジ36との間で圧縮状態に捕捉されている。
【0015】
ソレノイドコイル40が、アーマチュア26及び磁極片28が収納されたボアを有する管状アーマチュア(以下「アーマチュア管」という)41に円周方向に巻き付けられている。ソレノイドコイル40の巻線は、ドライバ54に電気的に結合されており、このドライバは、流体ディスペンサ10を作動させるようソレノイドコイル40を制御された仕方で付勢したり消勢したりする。U字形フラックス戻り部44とソレノイドコイル40との間に設けられたヒートシンク42が、付勢されたソレノイドコイル40により生じる熱を取り出す。互いに異なる流体ディスペンサ10,12,14のヒートシンク42は、熱をヒートシンク42相互間及び流体ディスペンサ10,12,14から熱を取り出し、それにより流体ディスペンサ10,12,14を冷却する比較的大きな熱容量を備えた別の物体(図示せず)に伝達することができるよう互いに接触状態にある。
【0016】
代表的な実施形態では、ソレノイドコイル40は、例えば電気絶縁バリヤ、例えば誘電体層43をソレノイドコイル40の巻線とアーマチュア管41の外面との間に設けることによりアーマチュア管41から電気的に絶縁される。誘電体層43は、ポリイミド層によって構成されるのが良い。他の適当なポリイミド層は、デュポン(DuPont(登録商標))社から市販されているKapton(登録商標)ポリイミド膜又はフィルムである。別の実施形態では、ソレノイドコイル40又はアーマチュア管41の外面は、薄い誘電体コーティングで被覆されるのが良い。さらに別の実施形態では、アーマチュア管41は、陽極酸化アルミニウムで構成されるのが良く、この場合、アーマチュア管41の陽極酸化外面は、アーマチュア管41とソレノイドコイル40との間の電気的絶縁バリヤとしての役目を果たす誘電体として働く。
【0017】
誘電体層43は、ソレノイドコイル40と関連したボビンの使用を不要にし、それにより、ソレノイドコイル40の巻線について太いワイヤを用いることができる。というのは、ボビンを省いた結果として広い実装空間が利用可能になるからである。太いワイヤは、コイル抵抗を減少させると共に付勢状態のソレノイドコイル40の熱発生を減少させることにより電磁アクチュエータの効率を高める。これは、ソレノイドコイル40の高周波作動と関連して有益な場合がある。
【0018】
弁棒34の自由端部のところに設けられた弁要素46は、ソレノイドコイル40の巻線がドライバ54により付勢されたり消勢されたりしているときにアーマチュア26及び弁棒34の運動と同時に動く。代表的な実施形態では球形又は半球形の形を呈するものとして示された弁要素46は、放出通路50の入口のところで弁座48に係合するよう構成されている。弁座48は、モジュール本体16とノズルプレート18との間に取り付けプレート51により固定された弁座部材49で支持されている。
【0019】
ソレノイドコイル40の巻線を通って流れる電流は、ソレノイドコイル40がドライバ54からの電力のパルスで付勢されると、電磁界を生じさせる。電磁界の磁力線は、アーマチュア26及び磁極片28並びにモジュール本体16及びフラックス戻り部44に局限されている。磁界強さは、ソレノイドコイル40の巻線を通って流れる電流の大きさにつれて変わる。適当な方向に流れる十分な電流によりソレノイドコイル40の巻線を付勢すると、電磁界は、戻しばね32によって生じる付勢力に打ち勝ち、可動アーマチュア26を静的磁極片28に向かって動かすのに十分な引き付け力を生じさせる。弁棒34は、アーマチュア26と一緒に、弁要素46が弁座48から離される開放位置に動く。開放位置では、流体は、圧力下で流体チャンバ22から、ノズルプレート18に通じる放出通路50内に流れることができる。
【0020】
流体チャンバ22から放出された粘性流体は、流体入口24を経て流体供給源25から流体チャンバ22内に流れる新たに供給された流体によって連続的に補給される。流体供給源25から流体入口24を通って導入された粘性流体も又、流体チャンバ22を加圧し、それにより流体チャンバ22から放出通路50内への流体の流れが促進される。流体供給源25は、1つ又は2つ以上の従来型加熱器例えば、カートリッジ型の抵抗加熱器により加熱され、又、抵抗器に供給される電力を調節する際に温度コントローラにより用いられるフィードバック信号をもたらす1つ又は2つ以上の従来型温度センサ、例えば抵抗温度検出器(RTD)、サーミスタ又は熱電対を備える流体マニホルドであるのが良い。
【0021】
流体ディスペンサ10が流体を小出ししている間、磁極片28に対するアーマチュア26の位置は、保持電流をソレノイドコイル40に連続的に送ることにより維持される。ソレノイドコイル40への電流が一定の場合、電磁界も同様に一定であり、時間により変化することはない。一定の電磁界は、アーマチュア26を戻して弁要素46を弁座48に接触させる方向に作用する戻しばね32の付勢力に抵抗するのに十分な引き付け力を維持する。
【0022】
ドライバ54からソレノイドコイル40の巻線に送られる電流を除くか減少させるかのいずれかを行うと、戻しばね32は、軸方向の力をアーマチュア26に及ぼし、この軸方向の力は、弁棒34を弁座48に向かって動かす。弁棒34を戻しばね32の作用により完全閉鎖位置に動かすと、弁要素46は、図2に示すように弁座48に接触する。流体チャンバ22から放出通路50内への流体の流れは、小出しシーケンスが開始されるまで中断される。流体ディスペンサ10のこの閉鎖条件では、流体チャンバ22を満たしている流体は、静的であり、加圧される。
【0023】
システムコントローラ52が、流体ディスペンサ10,12,14並びに流体ディスペンサ10,12,14を収容していて、運動及び作動を協調させる流体小出しシステム110(図7)の全体的制御を可能にする。システムコントローラ52は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)又はメモリに記憶されたソフトウェアを実行し、当業者には理解されるように本明細書において説明した機能を実行することができる中央処理装置(CPU)を備えた別のマイクロプロセッサ利用型コントローラであるのが良い。
【0024】
ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)装置126(図7)が、公知の仕方でシステムコントローラ52に作動的に接続されている。HMI装置126は、出力装置、例えば文字数字表示装置、タッチスクリーン及び他の視覚表示器、オペレータからの命令又は入力を受け取り、エンターされた入力をシステムコントローラ52の中央処理装置に送ることができる入力装置及び制御装置、例えば、文字数字キーボード、ポインティング装置、キーパッド、押しボタン、操作ノブ等を有するのが良い。システムコントローラ52は又、制御パネル130(図7)に接続されるのが良く、この制御パネルは、セットアップ、キャリブレート及び流体材料装填中、或る特定の機能の手動開始のための押しボタンを有するのが良い。
【0025】
図2〜図6を参照すると、ディスペンサ10,12,14に結合されたノズルプレート18は、モジュール本体16の方に向いた上流側の表面60及び流体が流体ディスペンサ10から小出しされる製品の方に向いた下流側の表面62を有する。上流側表面60と下流側表面62との間にはボルト穴が延びており、これらのうちボルト穴64が代表的である。ボルト穴64を通って締結具が突き出ており、これらのうち締結具19,20(図2)が代表的であり、締結具19,20の頭は、ボルト穴64の皿座ぐり領域内に受け入れられ、これらの頭は、下流側表面62の平面を越えて突き出ることがないようになっている。取り付けプレート51も又、ボルト穴64及びディスペンサ10,12,14の各々のモジュール本体16に設けられていて、締結具19,20の先端部を受け入れるねじ山付き開口部と位置が符合した開口部を有している。
【0026】
キャビティ67,68,69の形態をしたノズルチャンバ又はプレナムが、本体58の上流側表面60に凹んだ状態で設けられている。キャビティ67は、流体ディスペンサ10の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合されている。これと同様に、キャビティ68は、流体ディスペンサ12の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合され、キャビティ69は、流体ディスペンサ14の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合されている。シム71は、ディスペンサ10,12,14の取り付けプレート51とノズルプレート18の上流側表面60との間に捕捉されている。ステンレス鋼で構成されるのが良いシム71は、互いに異なる流体ディスペンサ10,12,14の放出出口50と位置が符合した開口部を有している。加うるに、密封部材73、例えばOリングが、流体ディスペンサ10,12,14の各々の放出口50を包囲した環状キャビティ内に設けられていて、かかる密封部材は、シム71と対応のモジュール本体16との間で圧縮されている。別の密封部材75、例えばOリングが、各取り付けプレート51の外周部に設けられた溝内に設けられていて、この密封部材は、各取り付けプレート51と流体ディスペンサ10,12,14の対応した各々のモジュール本体16との間で圧縮されている。
【0027】
キャビティ67,68,69は、平べったくて薄く且つ全体として長方形であり、これらは実質的に同一の構造を有している。それ故に、ノズルプレート18の本体58のキャビティ67に関する以下の説明は、キャビティ68,69にそのまま当てはまることは理解されたい。キャビティ67は、床面70及び床面70と上流側表面60との間に延びる側壁72を有している。放出通路50の出口は、互いに異なるチャネル74へのバランスの取れた流体分布が行われるようにキャビティ67の幾何学的中心のところ又はその近くでキャビティ67と交差するよう位置決めされている。チャネル74は、ノズルプレート18の厚さを貫通して延びて下流側表面62と交差している。各チャネル74は、床面70の近くに位置する第1の領域76及び第1の領域76よりも直径の大きな第2の領域78を有している。各チャネル74の第1の領域76は、ノズルプレート18の材料から成る側壁によって境界づけられている。各チャネル74の第2の領域78は、本体58の下流側表面62と交差している。粒子状物質がキャビティ67,68,69に入る前に粒子状物質を小出しされた流体から除去して詰まりを阻止するためにフィルタスクリーン(図示せず)をチャネル74の上方でキャビティ67,68,69の各々の中に設けるのが良い。粒子を流体から除去するために追加のフィルタを他の場所に設けるのが良い。
【0028】
一般に、キャビティ67の容積は、ノズルプレート18内における加圧流体のための死空間を最小限に抑え、キャビティ67の加圧が短時間で生じるようにするために最小限に抑えられている。例えば、キャビティ67は、約0.5mm(約0.01969インチ)の深さ、約1.8mm(約0.07087インチ)の長さ及び約7mm(約0.2756インチ)の幅を有するのが良く、結果として、容積は、約6.3mm3である。しかしながら、本発明は、このように数値限定されることはない。キャビティ67の容積の最適化により、比較的高い周波数でのディスペンサ10の作動が促進される場合があり、かかる比較的高い周波数とは、約30Hzよりも著しく高い周波数であると考えられる。
【0029】
ノズルプレート18は、流体をキャビティ67から受け入れる複数個のノズル80を更に有している。ノズル80のうちの1つが、チャネル74の各々の第2の領域78に設けられている。ノズル80は各々、対応のチャネル74の第1の領域76の直径にほぼ等しい直径を有することを特徴とする第1の通路82及び流体を放出させる幅の狭い第2の通路84を有している。第1の通路82は、各チャネル74の第1の領域76と第2の通路84との間に設けられている。
【0030】
ノズル80は、密な実装を促進するために互い違いの列又はライン85a,85bのアレイの状態に配列されていて、これらノズルは、ノズルプレート18の下流側表面62を越えて基板120に向かって突き出ている。ノズル80は、ノズルプレート18の幅全体にわたってほぼ等しい間隔で配置されている。一実施形態では、ライン85aの隣り合うノズル80とライン85bの隣り合うノズル80は、約1.528mm(約0.06016インチ)の間隔sだけ離れているのが良く、ノズル80の2つのライン85a,85b相互間に垂直の方向における間隔xは、約0.764mm(約0.03008インチ)であるのが良い。
【0031】
ノズル80は、チャネル74内に接着されたサファイヤ製のノズルから成るのが良く、これらサファイヤ製ノズルは、各チャネル74の第2の領域78の内径よりも幾分小さな外径を有するよう寸法決めされる。変形実施形態では、ノズル80は、チタン又はチタン合金、例えばTi−6Al−4V合金で作られても良く、そして、各チャネル74の第2の領域78の内側に接着されても良い。かかるノズル80を高精度で形成する一技術は、ノズル80を旋削するスイススクリュー機械(Swiss screw machine)を利用する。ただし、本発明はこれには限定されない。
【0032】
図6に最も良く示されているように、ノズル80の各々の第2の通路84は、高さ又は長さh及び内径dの直円柱として形作られるのが良い。一実施形態では、長さhと内径dの比は、少なくとも3:1である。別の実施形態では、長さhと内径dの比は、約6:1である。これら範囲のうちの1つの比を選択することにより、噴出した流体の流れが、比較的真っ直ぐな経路をなして第2の通路84から外れることができ、このことは、ノズル80が基板120よりも比較的高い高さ位置で下方に流体を噴いている場合に重要なことがある。
【0033】
代表的には、各ノズル80の第2の通路84の内径dは、約6mil以下である。特定の一実施形態では、第2の通路84の内径dは、約5milであるのが良い。別の特定の実施形態では、第2の通路84の内径dは、約4milであるのが良い。さらに別の特定の実施形態では、第2の通路84の内径dは、約1milであるのが良く、これは、流体の噴出小滴のサイズが小さいということがつきものであるために基板120(図6)上における堆積膜が比較的薄いことを特徴とする材料の塗布が可能である。
【0034】
小出し中、システムコントローラ52により、ドライバ54は、流体ディスペンサ10のソレノイドコイル40の巻線を付勢して弁要素46を弁座48に対して動かし(即ち、アーマチュア26を磁極片28に対して動かし)、新たな量の流体を圧力下でキャビティ67内に導入する。弁要素46が弁座48から持ち上げられると、新たな量の加圧流体は、放出通路50を通ってキャビティ67内に流れる。この到来する量の加圧流体は、キャビティ67内に存在する流体の塊をチャネル74内に押し退ける。弁要素46が弁座48に接触すると、キャビティ67内に存在する流体は、もはや加圧されず、キャビティ68からチャネル74内への流れは生じない。それと同時に、流体は、システムコントローラ52が流体ディスペンサ10に命令を出して所与の量の加圧流体をキャビティ67に導入させると、ノズル80の全ての第2の通路84から排出される。キャビティ67内に導入された各流体量により、これに対応した全ての量の流体をキャビティ67と連通状態にある互いに異なるチャネル74相互間に分配する。分配された各量は、ノズル80の1つから流体の小滴として噴出する。
【0035】
噴出した流体小滴は、互いにほぼ等しいサイズのものであり、これら流体小滴は、ノズル80と基板120との間の開いた移動空間中を軌道を描いて動く。基板120に当たる流体小滴の相対的衝突場所は、ノズルプレート18上におけるノズル80の配置状態に似ている。流体小滴は、一緒に流れて基板120上で合体(即ち、融合)し、流体の長方形又は台形ストリップを形成する。流体ディスペンサ10を基板120に対して動かしているときに、流体ディスペンサ10を連続的に作動させて連続した流体小滴群をオーバーラップ状態のストリップとして小出しし、かかるオーバーラップ状態のストリップは、凝集体の状態では、小出しされた流体のストリップの外観を有する。合体した流体小滴は、基板120上で自動的に水平になって比較的一様な厚さのコーティング又は膜を形成する。
【0036】
同じ様な考察が、加圧流体をキャビティ68及びキャビティ69にそれぞれ供給する他の流体ディスペンサ12,14について同様に当てはまる。システムコントローラ52により、ドライバ54は、ディスペンサ12,14のそれぞれのソレノイドコイル40の巻線を互いに独立に、更に、流体ディスペンサ10と関連したソレノイドコイル40とは独立して付勢する。このように、ディスペンサ10,12,14の各々を別個独立に制御することができる。
【0037】
キャビティ67,68,69の各々と関連したノズル80の個数は、小出し用途に応じて様々であろう。一実施形態では、ノズルプレート18のキャビティ67,68,69の各々は、9つのノズル80を有するのが良く、各ノズル80の第2の通路84の直径は、約4milであるのが良い。別の実施形態では、ノズルプレート18のキャビティ67,68,69の各々は、8つのノズル80を有するのが良く、各ノズル80の第2の通路84の直径は、約5milであるのが良い。
【0038】
一実施形態では、単一の流体キャビティを備えたノズルプレート108(図10)と構造がほぼ同じノズルプレートを、幅の狭い流体材料ストリップを基板120上に被着させる単一のディスペンサ、例えばディスペンサ10に用いることができる。この構造は、例えば、コンフォーマルコーティング材料を幅の狭い基板120に正確に塗布するのに適切である場合がある。
【0039】
ドライバ54は、電流制御出力信号をソレノイドコイル40の巻線に与える電力スイッチング回路を有する。各流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40は、一実施形態では、ドライバ54から送られた電流制御出力信号のパルス幅変調(PWM)方式を用いるシステムコントローラ52によって独立して作動される。そのために、ドライバ54は、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40の巻線に送られる電流のデューティサイクルを変調する。基板120に被着された膜の堆積厚さは、出力信号のデューティサイクルを変更することにより変化させることができる。
【0040】
流体ディスペンサ10,12,14の各々に関し、ドライバ54及びシステムコントローラ52は、引込み電流の印加、流体が放出される開き状態を生じさせるための引込み電流後の保持電流の印加及び閉じ状態を生じさせるためのソレノイドコイル40からの引込み電流の除去を正確に調節すると共に制御するために用いられる。このために、ドライバ54は、高速引込み電流を各ソレノイドコイル40に印加してそれぞれの弁要素46を迅速に動かし、これを小出しサイクルの開始時に、対応の弁座48との接触状態を解く。加うるに、ドライバ54は、弁要素46を開き位置に保持する減少した保持電流を維持する一方で、小出し中、ソレノイドコイル40の巻線中の熱の発生量を最小限に抑える。最後に、ドライバ54は、ソレノイドコイル40の迅速な減磁を可能にして、それぞれの弁要素46を迅速に動かしてこれをその弁座48に接触させ、それにより小出しサイクルの完了時に閉じ条件を確立するようにする。かかるドライバは、共通所有者の米国特許第6,978,978号明細書、同第6.318,599号明細書、同第5,812,355号明細書及び同第4,467,182号明細書に開示されており、これら米国特許を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0041】
システムコントローラ52の制御下でドライバ54から各ソレノイドコイル40に送られた電流制御出力信号のPWMにより、それぞれのアーマチュア26は、磁極片28に対して周期的に且つ繰り返し動く。これにより、それぞれの弁要素46は、対応の弁座48に対してその開き位置と閉じ位置との間で定期的に往復動し、それにより、ディスペンサ10,12,14の各々が受け持つノズル80からの小滴の放出又は噴出を制御する。一群の小滴が、対応の弁要素46が開閉される度に、ディスペンサ10,12,14の各々が受け持つノズル80から噴出される。ソレノイドコイル40に送られる電流制御出力信号のデューティサイクルを交番させることにより、種々の量の流体をキャビティ67,68,69に供給し、その後各々がデューティサイクルに関連したサイズを有する一群の小滴としてノズル80から放出することができる。パルス幅は、小滴サイズを決定する際の一要因となる。というのは、弁要素46の1回のサイクル中、ノズルから放出される流体の量は、正にパルス幅で決まるからである。他の要因、例えば流体温度、流体圧力等も、小滴サイズに影響を及ぼす場合がある。
【0042】
ドライバ54は、PWM出力信号のデューティサイクルを0パーセントから100パーセントまで変化させることができる。一実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、50パーセント未満であるのが良く、別の実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、約40パーセント(即ち、オンタイムには40パーセント、オフタイムには60パーセント)であるのが良い。この点に関し、50パーセント未満のデューティサイクルの利用は、流体の放出流れのための真っ直ぐな移動経路を促進することができる。パルスをソレノイドコイル40に送る周波数は、最高200Hz〜400Hzまでのオーダーであるのが良い。
【0043】
電流制御出力信号を比較的高い周波数で且つ比較的低いデューティサイクルでドライバ54からソレノイドコイル40に送るためにPWMを利用することにより、ノズル80から噴出する流体の流れのための真っ直ぐな移動経路の実現が助長される。その結果、流体の流れは、基板120の意図した場所に小滴として当たる可能性が高くなり、それにより、ノズル80に関する小出し高さを従来型小出しシステムと比較して高くすることができる場合がある。これは、ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに、基板120よりも比較的高い高さのところに突き出た物体又はコンポーネントに当たらないようにする上で有益な場合がある。例えば、電流制御出力信号のデューティサイクルが50パーセント未満であり、その周波数が200Hz以上である場合、少なくとも1つの流体ディスペンサを多軸ステージで吊り下げて複数個のノズルが静的基板よりも0.25インチ(6.35mm)以上上方の高さ位置のところに配置されるようにする。
【0044】
変形例として、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40は、ドライバ54から送られた電流制御出力信号の周波数変調方式を用いるシステムコントローラ52によって別個独立に作動される。そのために、ドライバ54は、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40の巻線に送られた電流の周波数を変調する。周波数変調は、ノズル80からの小滴の連続した放出相互間の時間を変化させ、それにより、小出しヘッドが一定の速度で動いていると仮定すると、同一のノズル80から噴出した連続状態の小滴の基板120上における衝突箇所相互間の間隔が効果的に変化する。本発明の一実施形態では、周波数変調を電流制御出力信号のPWMと組み合わせて利用するのが良い。
【0045】
図7を参照すると、流体小出しシステム110が、パネルによって部分的に覆われている相互に連結された水平ビームと垂直ビームのフレームワークから成るキャビネット112を有している。流体ディスペンサ10,12,14は、流体小出しシステム110の多軸ステージに取り付けられており、この多軸ステージは、キャビネット112により支持されたX−Yステージポジショナ116及びX−Yポジション116から吊り下げられたZ軸ポジショナ114を有している。X−Yポジショナ116は、1対の独立して制御可能な軸駆動装置(図示せず)によって作動する。同様に、Z軸ポジショナ114は、別の独立して制御可能な軸駆動装置(図示せず)によって作動する。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14のための3本の実質的に垂直な動作軸線を提供する。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、実際には、多種多様な従来型電気機械的装置及び(又は)機械的装置のうちの任意のものから成っていても良い。
【0046】
基板120が、流体の小出し量を受け取るようになっており、これら基板は、コンベヤ128によって流体ディスペンサ10,12,14の下の静止位置に運ばれる。ただし、他の運搬機構体を用いても良い。X−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を基板120、例えばプリント回路基板の対向した表面に対してシステムコントローラ52によって統合された高精度協調位置制御方式でX−Y平面内において群として迅速に動かすことができる。Z軸ポジショナ114は、流体ディスペンサ10,12,14をX−Y平面に垂直な方向に昇降させて運動に関する3次元デカルト座標系を定める。Z軸ポジショナ114は、ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに基板120から突き出た物体に接触しないように基板120よりも上方に流体材料の小出し高さを設定するために用いられる。代表的には、Z軸ポジショナ114は、流体ディスペンサ10,12,14を基板120よりも上方に位置していて、基板120から突き出た物体に当たらない一定の高さ位置に配置するために用いられる。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を動かすために電気機械的コンポーネント、例えばモータ(例えば、サーボモータ)及び駆動回路を有する。しかしながら、流体ディスペンサ10,12,14を単一の固定された高さ位置のところに吊り下げた状態で流体を小出しすることができる。
【0047】
運動コントローラ124(図2)が、システムコントローラ52、X−Yポジショナ116及びZ軸ポジショナ114に電気的に結合されており、この運動コントローラは、流体ディスペンサ10,12,14の3次元運動を制御する。システムコントローラ52は、代表的には、運動コントローラ124に命令を出して流体ディスペンサ10,12,14を一連の基板120について繰り返されるスクリプト作製方式で動かすようX−Yポジショナ116及びZ軸ポジショナ114を作動させる。一実施形態では、X−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を最高毎秒約40インチ(毎秒約1メートル)の速度で動かすことができる。
【0048】
使用にあたり、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40をシステムコントローラ52の制御下でドライバ54からの電流制御出力信号によって別個独立に制御する。それと同時に、流体ディスペンサ10,12,14を静止基板120を含む平面よりも上方の所与の高さ位置でX−Yポジショナ116により群として動かす。これにより、流体の長方形又は台形ストリップが基板120上に被着される。基板120の表面上の物体又は特徴部に遭遇すると、プログラムされたコーティングパターンに従って、システムコントローラ52は、ドライバ54からの出力パルスの流れを中断させることにより流体ディスペンサ10,12,14のうちの1つ又は2つ以上を作動不能にし、それにより、流体ディスペンサ10,12,14の全てよりは少ない数の流体ディスペンサを作動させることができる。流体は、アイドル状態の流体ディスペンサ10,12,14からは放出されない。その結果、流体ディスペンサ10,12,14を基板120の表面上の或る特定の物体、特徴部又は領域が流体で被覆されないように選択的に作動させることができる。これにより、流体ディスペンサ10,12,14は、流体ディスペンサ10,12,14の運動方向を変えないで、流体を基板120上のところどころの領域に選択的に小出しすることができる。
【0049】
例えば、基板120上のコンポーネント又は他の特徴部は、流体ディスペンサのうちの1つ、例えば流体ディスペンサ12のノズルプレート18の幅方向における端から端までの間のノズル80の対応の広がりよりも小さな幅を有するのが良い。流体ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに、システムコントローラ52は、ドライバ54に命令を出して流体ディスペンサ12への出力信号の流れを中断させ、流体ディスペンサ10,12,14が特徴部上を且つこれを横切って動かしている間、流体ディスペンサ12が閉鎖状態のままであり、その結果、特徴部が非被覆状態のままであるようにする。流体ディスペンサ10,14は、流体を特徴部に隣接して位置する基板120上の場所に引き続き小出しする。流体ディスペンサ12は、特徴部に遭遇する前に閉鎖され、特徴部を通過した後、流体を基板120のコーティングのために放出させる制御信号が再び流体ディスペンサに送られる。
【0050】
流体小出しシステム110は、多数のノズルを備えた静止状態の小出しヘッドに対して基板を直線経路で並進させる従来型コーティングシステムの多くの欠点を解決している。例えば、かかる従来型コーティングシステムは、基板の幅とノズルのアレイの幅に合わせなければならない。もしそうでなければ、基板は単一の方向に並進されるが側方運動は許容されないので、基板全体をコーティングすることができない。加うるに、この従来型小出し方式では、コーティングされないことが意図された基板上の領域の周りをトレースすることができない。
【0051】
一般に、従来型小出し方式は、基板を静止小出しヘッドに対して並進させることができる速度(毎秒5インチ(12.7cm)以下)に関して制限され、比較的広い放出通路(0.0155インチ(0.3937mm)以上)を備えたノズルを必要とする場合がある。これとは対照的に、流体小出しシステム110の多軸ステージは、小出しヘッドを毎秒約40インチ(毎秒約1メートル)の速度で基板120に対して動かすことができ、この速度は、数ある要因の中で、流体ディスペンサ10,12,14の高周波数作動のために可能である。従来型コーティングシステムは、これらの作動周波数が、一般に30Hz未満の周波数に制限されており、これは、流体小出しシステム110の或る特定の実施形態によって解決できる欠点である。従来型コーティングシステムは、比較的広い流体キャビティを備えたノズルプレート及びノズルプレート18をディスペンサ10,12,14に直接結合しないで、流体キャビティをディスペンサに結合する1本の管を有する場合があり、この場合、中間の数本の管は設けられず、流体キャビティの容積が最小限に抑えられる。
【0052】
変形実施形態では、流体小出しシステム110は、流体ディスペンサを基板120に対して動かす別の形式の機構体を有しても良い。例えば、多軸ステージに代えて、ディスペンサ10,12,14と共に小出しヘッドを支持した関節式アームを有するプログラム可能な機械式ロボット(図示せず)を用いても良い。プログラム可能な機械式ロボットは、当業者には理解される任意の共通の形態を有して良く、かかる形態としては、直角座標ロボット形態及びSCARA(選択機能組立てロボットアーム)形態が挙げられるが、これらには限定されない。プログラム可能機械式ロボットは、関節式アーム及び小出しヘッドの所要の多軸運動を実施するための種々の運動コントローラ及び電子システム装置、例えばリミットスイッチ、センサ、入出力端子、増幅器、空気圧弁、継手、ソレノイド、電力供給源、プログラマブルコントローラ、サーボモータ及びベルトプーリ駆動装置を有する。
【0053】
図8〜図10を参照すると(図中、同一の参照符号は、図1〜図7の同一の特徴を示している)、本発明の変形実施形態によれば、流体ディスペンサ10,12,14(図1〜図7)のうちの1つ又は2つ以上に代えて用いることができる流体ディスペンサ85が示されている。流体ディスペンサ85は、ノズルプレート18(図1〜図7)に類似したノズルプレート108を有しているが、電磁アクチュエータに代えて、流体ディスペンサ85は、圧電アクチュエータ86の形態を有するトルクモータを用いて動作するよう構成されている。圧電アクチュエータ86は、従来構造のものであり、レバーアーム89によってシャフト又は弁棒88に機械的に結合されている。弁棒88は、レバーアーム89に対して全体として直角に突き出ている。弁要素90が、弁棒88の自由端部のところに設けられており、この弁要素は、圧電アクチュエータ86の作動により、弁座部材92で支持された弁座91に対して動く。弁座部材92及び弁要素90は、当業者には理解される組成を有するセラミック材料で構成されるのが良い。
【0054】
弁座部材92は、モジュール本体94に結合され、このモジュール本体は、圧電アクチュエータ86を収容した内部キャビティを有する。弁座91は、放出通路95と流体チャンバ96との間に位置していて、流体入口98により流体供給源25(図2)に結合される接合手段を構成している。圧力下で流体供給源25から供給される流体は、流体入口98を通って流体チャンバ96内に導入される。密封部材97,98,99が、弁座部材92、モジュール本体94及びノズルプレート108のための流体密シールを構成する。モジュール本体94は、従来型加熱器(図示せず)、例えばカートリッジ型抵抗加熱器によって占められた細長いキャビティ100を有する。モジュール本体94は、加熱器に送られる電力を調整する際に温度コントローラによる使用のためのフィードバック信号をもたらす従来型温度センサ(図示せず)、例えばRTD、サーミスタ又は熱電対を更に備えている。
【0055】
圧電アクチュエータ86は、絶縁ワイヤ102,104,106によってドライバ54に電気的に結合され、このドライバは、ソレノイドコイル40に供給される電力に関して上述したように、電流制限出力信号をパルス幅変調方式、周波数変調方式又はこれらの組み合わせでアクチュエータ86に送る。絶縁ワイヤ102は、電気的接地用導体に電気的に接続されている。絶縁ワイヤ104は、圧電アクチュエータ86の上半分に電気的に接続され、絶縁ワイヤ106は、圧電アクチュエータ86の下半分に電気的に接続されている。電力が絶縁ワイヤ106によりドライバ54から圧電アクチュエータ86の下半分に供給されると、電界が生じ、この電界は、アクチュエータ86の寸法を変化させてレバーアーム89を上方に旋回させる。これ又レバーアーム89の運動によって機械的に増幅される圧電アクチュエータ86の上方運動により、弁要素90が弁座91から持ち上げられて加圧流体が流体チャンバ96から放出通路95内に流れることができるようになっている。電力が絶縁ワイヤ104によりドライバ54から圧電アクチュエータ86の上半分に供給されると、電界が生じ、この電界は、アクチュエータ86の寸法を変化させてレバーアーム89が下方に旋回されるようになっている。レバーアーム89の運動により機械的に増幅される下方運動により、弁棒88は、下方に動いて弁要素90を弁座91に接触させる。
【0056】
圧電作動式ディスペンサの他の形式をノズルプレート108と関連して用いることができる。例えば、圧電作動式ディスペンサは、圧電アクチュエータの出力駆動力を米国特許第6,157,115号明細書に記載されているようにアクチュエータの比較的僅かな出力変位よりも実質的に大きい弁棒88の有用な変位に変換する機械式増幅器を有するのが良い。なお、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0057】
図10に最も良く示されているように、ノズルプレート108は、構造及び機能が流体キャビティ67,68,69とほぼ同じ流体キャビティ107を1つだけ有している。キャビティ107は、ノズルプレート18及びキャビティ67,68,69に関して上述したように、放出出口95をノズル80のアレイに流体連通関係をなして結合している。ノズルプレート108の互いに反対側の側縁部には、シールド部材109a,109bが取り付けられており、これらシールド部材は、ディスペンサ85が多軸ステージによって基板120に対してX−Y平面内で動かされている間、ノズル80を接触しないように保護する。ノズル80は、シールド部材109a,109b相互間の空間に配置されている。シールド部材109a,109bは、ノズル80よりもノズルプレート108から長い距離にわたり突き出ており、これによっても、ディスペンサ85をZ方向に沿って基板120に対して動かしているとき、基板120上のコンポーネント又は物体とノズル80の接触が阻止される。
【0058】
システムコントローラ52のドライバ54は、圧電要素86に送られるPWM出力信号のデューティサイクルを0パーセントから100パーセントまで変化させることができる。一実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、50パーセント未満であるのが良く、別の実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、約25パーセント(即ち、オンタイムでは25パーセント、オフタイムでは75パーセント)であるのが良い。パルスをソレノイドコイル40に送る周波数は、200Hz〜400Hzのオーダーであるのが良く、或いは、変形例として、最高約1kHz以上であっても良い。ディスペンサ85は又、システムコントローラ52のドライバ54から送られる周波数変調出力信号又はPWMと周波数変調出力信号の組合せを用いて作動可能である。
【0059】
図11及び図12を参照すると(図中、同一の参照符号は、図1〜図7の同一の特徴を示している)、本発明の変形実施形態によれば、ノズルプレート18(図1〜図7)とほぼ同じノズルプレート134が、ノズルプレート134を流体ディスペンサ10から離隔させる延長部136と関連して用いられている。延長部136は、一端部に設けられていて、ディスペンサ10のモジュール本体16に流体密状態で結合された取り付けプレート138、反対側の端部に設けられた別の取り付けプレート140及び取り付けプレート138,140を互いに連結するステム142を有している。ノズルプレート134は、構造及び機能が本体58(図1〜図7)とほぼ同じ本体144及び構造及び機能がノズル80(図1〜図7)と同じノズル146を有している。一実施形態では、ノズルプレート134の本体144は、ディスペンサ10から見て最も遠くに位置する延長部136の自由端部のところで取り付けプレート140にレーザ溶接されるのが良い。
【0060】
延長部136の内側の中央に設けられた中央ボア149が、ディスペンサ10の流体チャンバ22の延長部をなしている。中央ボア149は、弁座152のところで放出通路150に隣接し、この弁座は、弁座部材154に設けられている。弁棒34とほぼ同じ弁棒156が、アーマチュア26から中央ボア149内に突き出ている。ソレノイドコイル40の巻線をシステムコントローラ52の電力供給源により付勢したり消勢したりすると、アーマチュア26及び弁棒156が動く。弁座152は、閉鎖状態において弁棒156の自由端部のところの弁要素46に接触する。
【0061】
放出通路150は、ノズルプレート134内に設けられた流体キャビティ158と連通している。ノズルは、ディスペンサ10を作動させたとき、過剰量の加圧流体を流体キャビティ158から放出する。比較的幅の狭いプロフィールを有する延長部136は、ノズルプレート134をディスペンサ10により提供された大きなプロフィールから離隔させている。これにより、ノズルプレート134を基板120上の隣り合う高いプロフィールのコンポーネント相互間に配置することができ、それにより、流体をかかる高プロフィールコンポーネント相互間に小出しする際、基板120の上方のノズル146の高さが効果的に減少する。これは、基板120上への流体のより正確な小出しが促進される場合がある。
【0062】
説明の目的上、例えば「上方」、「垂直」、「水平」、「右」、「左」等の方向を表わす用語は、内容を分かりやすくする目的で図面と関連して用いられている。周知のように、液体小出し装置を実質的に任意の向きに向けることができ、従って、これら方向を表わす用語は、本発明に係る装置について任意特定の絶対的な方向を意味するために用いられているわけではない。
【0063】
本発明を種々の実施形態によって説明すると共にこれら実施形態をかなり詳細に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲をかかる細部に限定し又は制限することは、本出願人の意図するところではない。追加の利点及び改造例は、当業者には容易に明らかになろう。したがって、本発明はその広い観点において特定の細部、代表的な方法及び図示されていると共に説明した例示の実施例には限定されない。したがって、本出願人の考える本発明の技術的思想の精神又は範囲から逸脱することなく、かかる細部の変形例を想到できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態による互いに並置された空間関係をなす複数個のディスペンサの斜視図である。
【図2】図1の2−2線矢視断面図であり、ディスペンサを閉鎖条件で示す図である。
【図3】図1の3−3線矢視断面図であり、ディスペンサを閉鎖条件で示す図である。
【図4】図1のディスペンサ用のノズルプレートの一部分の斜視図であり、ノズルプレートをディスペンサから取り外した状態で示す図である。
【図5】図4のノズルプレートの底面図である。
【図6】図2の一部分の拡大図である。
【図7】本発明の実施形態による図1〜図6の流体ディスペンサを有する流体小出しシステムの略図である。
【図8】変形実施形態としてのディスペンサ及びノズルプレートの部分切除側面図である。
【図9】図8のディスペンサ及びノズルプレートの部分切除端面図である。
【図10】図8のディスペンサ用のノズルプレートの斜視図であり、ノズルプレートをディスペンサから取り外した状態で示す図である。
【図11】ノズルプレートをディスペンサから離隔させる延長部を有する別の変形実施形態としてのディスペンサ及びノズルプレートの一部分の斜視図である。
【図12】図11の12−12線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10,12,14 流体ディスペンサ
16 モジュール本体
18 ノズルプレート
26 アーマチュア
28 磁極片
46 弁要素
52 システムコントローラ
54 ドライバ
80 ノズル
110 流体小出し機
112 キャビネット
114 Z軸ポジショナ
116 X−Y軸ポジショナ
120 基板
126 ヒューマンマシンインターフェイス
128 コンベヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、粘性流体を小出しする流体ディスペンサに関し、特に、エッジデフィニション(edge definition、縁輪郭明確性)の精度を向上させた状態で粘性流体を基板上に小出しするよう構成された流体ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式流体ディスペンサは、微量の粘性物質を基板上に塗布するために用いられる場合が多い。例えば、非接触式流体ディスペンサは、種々の粘性物質を少量、プリント回路板(PCB)又は半導体キャリヤ若しくはウエーハのような電子基板に塗布するために用いられる。粘性物質を非接触式ディスペンサから基板上に小出しする多くの塗布方法が存在する。半導体パッケージ組立てでは、使用の中で、アンダーフィリング(underfilling)、BGA(ボールグリッドアレイ)におけるはんだボール補強、ダム及びフィル作業、チップエンキャプシュレーション、CSP(チップスケールパッケージ)のアンダーフィリング、キャビティ充填剤小出し、ダイ接着剤小出し、リッド密封剤小出し、無流量フローアンダーフィリング、フラックスジェッティング及び熱的化合物の小出しのための用途が存在する。表面実装技術によるPCB作製のため、表面実装用接着剤、はんだペースト、導電性接着剤及びはんだマスク材料が非接触式ディスペンサから小出しされる場合があり、選択的フラックスジェッティングについても同様である。また、非接触式ディスペンサを用いてコンフォーマルコーティングを選択的に施す場合がある。また、ディスクドライブ業界、医用エレクトロニクスのためのライフサイエンス用途及び一般に結合、密封、ガスケット形成、塗装及び潤滑のための工業上の利用分野における用途が存在する。
【0003】
従来型自動流体小出しシステムは、ロボットに取り付けられた非接触式流体ディスペンサを有し、ロボットは、ディスペンサを小出し先としての基板に対して動かす関節式アームを有している。このシステムは、所与の量の粘性材料を流体ディスペンサから高い再現性をもって正確に各基板上の標的場所に小出しするよう構成されている。従来型流体ディスペンサ中の流体の流量及び放出量は、弁組立体によって調節され、この弁組立体は、流体通路中に位置する弁座及び放出オリフィスへの材料の流れをそれぞれ可能にしたり中断させたりする互いに異なる開放条件及び閉鎖条件を提供するよう弁座に選択的に接触するよう動くことができる弁要素を有している。それ故、開放位置と閉鎖位置との間におけるサイクル運動により、製品又は製品包装材の表面上に流体のパターンを生じさせるのに必要な間欠的な流れの中断が生じる。
【0004】
従来型自動流体ディスペンサは、粘性流体をPCBのような電子基板上の広い表面領域上に塗布する種々の技術を利用している。基板の表面から突き出た物体との接触を避けるために、流体ディスペンサは、基板の上方に吊り下げられ、流体を小出ししながら基板に対して動かされる。1つの対策では、表面上の選択された領域をマスキングし、流体を表面全体に無秩序に吹き付ける。別の対策では、明確に規定されたファン幅を有する噴霧化スプレーを用いる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この対策は、膜厚さがファンスプレーのエッジ相互間の位置につれて変化する基板上の低粘性流体及び成膜(デポジット)に限定される。他の対策は、流体を明確に規定された幅を有するパターン(例えば、スワールパターン)で小出しすることができるノズルを用いること又はスロットノズルを用いることである。しかしながら、エッジデフィニションは、スプレーを噴霧化し又はパターン化された流体塗布に関しては不良である場合がある。
【0006】
したがって、エッジデフィニションの精度が向上すると共に塗布厚さが正確な状態で粘性流体を基板の広い表面領域上に塗布することができる流体ディスペンサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、静止状態の基板に加圧流体を塗布する装置が提供される。本装置は、少なくとも1つの流体ディスペンサ及び少なくとも1つの流体ディスペンサに機械的に結合された多軸ステージを有する。各流体ディスペンサは、アクチュエータ、加圧流体を収容した流体チャンバ、アクチュエータに結合された弁要素及び弁座のところで流体チャンバに連結された流体通路を有する。各流体ディスペンサのアクチュエータは、弁要素を弁座に対して、加圧流体が流体チャンバから流体通路内に流れることができるようにする開放位置と、弁要素が弁座に接触して流体チャンバと流体通路との間に流体シールを生じさせる閉鎖位置との間で動かすよう構成されている。多軸ステージは、1つ又は複数の流体ディスペンサを静止状態の基板に対して動かすよう構成されている。
【0008】
本装置は、複数個の流体ディスペンサの各々にそれぞれ機械的に結合された少なくとも1枚のノズルプレートを有する。各ノズルプレートは、流体通路に結合された流体キャビティ及び流体チャンバに結合された複数個のノズルを有する。各流体ディスペンサの弁要素が開放位置にあるとき、対応の流体キャビティは、複数個のノズルから放出可能に加圧流体を受け入れるよう構成されている。
【0009】
流体ディスペンサ及びノズルプレートは、多種多様な流体を小出しすることができると共に基板上の膜堆積又は厚さに対する厳密な制御を可能にする。流体ディスペンサ及びノズルプレートは、少なくとも1つには、ノズルアレイから小出しされ、流体ディスペンサを基板に対して動かしているときに、基板に塗布される流体のストリップとオーバーラップしてこれを画定する長方形又は台形のパターンにより、正確なエッジデフィニションを達成することができる。その結果、流体ディスペンサは、流体を基板上の高密度に実装された物体上に小出しすることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、加圧流体を静止状態の基板上に小出しして被膜を形成する方法が提供される。本方法は、加圧流体の第1の複数個の小滴を第1の複数個のノズルから静止状態の基板上に放出するステップと、加圧流体の第2の複数個の小滴を第2の複数個のノズルから静止状態の基板上に放出するステップとを有する。本方法は、第1の複数個の小滴及び第2の複数個の小滴を放出しながら第1の複数個のノズル及び第2の複数個のノズルを静止状態の基板に対して動かすステップを更に有する。
ノズルプレートの上述の構成により、高周波作動及び低いデューティサイクルと関連して、ノズルから噴出した流体は、各ノズル中の放出通路の中心線にほぼ平行な方向に動く。流体キャビティは、死空間を最小限に抑えると共に高周波作動を可能にするよう最適化された寸法形状を有する。
【0011】
添付の図面は、本発明の実施形態を示すと共に上記の本発明の一般的説明及び下記の実施形態についての詳細な説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。なお、添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部をなしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3を参照すると、複数個の流体ガン又はディスペンサ10,12,14が、単一の流体小出しヘッドとして構成されており、これらディスペンサは、種々の量の粘性流体を静止状態の基板120(図7)上に間欠的に小出しする流体小出し機又はシステム110(図7)に使用可能である。流体ディスペンサ10,12,14を用いると常温接着剤又はグルーを含む周囲温度の粘性流体及び例えばコンフォーマルコーティング、フラックス及びホットメルト接着剤のような加熱状態の粘性液を小出しすることができる。流体ディスペンサ10,12,14は、粘性流体を静止状態の基板120上に別々の量で間欠的に小出しするために公知の仕方で作動される。図1に示すように、流体ディスペンサ10,12,14は、スタックをなして互いに並んで位置決めされ又は流体小出しシステム110の小出しヘッドを構成するよう並置されると共にノズルプレート18と関連している。流体ディスペンサ10,12,14のコンパクトさ、具体的に言えば、流体ディスペンサ10,12,14の幅が狭いことにより、隣り合う流体ディスペンサ10,12,14相互間の間隔を最小限に抑えることができると共に並置状態の流体ディスペンサ10,12,14を高密度に実装することができる。
【0013】
流体ディスペンサ10,12,14は各々、実質的に互いに同一の構造を有する。それ故に、流体ディスペンサ10についての以下の説明は、そのまま流体ディスペンサ12,14に当てはまるものと理解されたい。変形実施形態では、追加の流体ディスペンサ(図示せず)を流体ディスペンサ10,12,14と組み合わせても良い。流体ディスペンサの総数は、小出し用途に応じて様々であろう。個々の流体ディスペンサ10,12,14は、多数のユニットが基板120の幅全体又は基板120の幅の一部分に及ぶ並置配列状態を有することができるよう幅が狭い(例えば、約0.33インチ(8.382mm))。
【0014】
図2及び図3を参照すると、流体ディスペンサ10は、モジュール本体16、流体チャンバ22及び流体チャンバ22を流体供給源25と連通した加熱式マニホルドに結合するよう構成された流体入口24を有している。流体供給源25から圧力下で供給された流体は、流体入口24を通って流体チャンバ22内に導入される。流体ディスペンサ10は、電磁アクチュエータを備え、この電磁アクチュエータは、可動アーマチュア26、長手方向軸線30に沿ってアーマチュア26と同軸に整列した静的磁極片28及び流体チャンバ22内に設けられていて、アーマチュア26を磁極片28から遠ざかる方向に付勢する戻しばね32を有している。一体形弁棒34が、アーマチュア26から軸方向に延びている。フランジ36が、弁棒34から半径方向外方に突き出ている。戻しばね32は、流体チャンバ22内に形成された肩38とフランジ36との間で圧縮状態に捕捉されている。
【0015】
ソレノイドコイル40が、アーマチュア26及び磁極片28が収納されたボアを有する管状アーマチュア(以下「アーマチュア管」という)41に円周方向に巻き付けられている。ソレノイドコイル40の巻線は、ドライバ54に電気的に結合されており、このドライバは、流体ディスペンサ10を作動させるようソレノイドコイル40を制御された仕方で付勢したり消勢したりする。U字形フラックス戻り部44とソレノイドコイル40との間に設けられたヒートシンク42が、付勢されたソレノイドコイル40により生じる熱を取り出す。互いに異なる流体ディスペンサ10,12,14のヒートシンク42は、熱をヒートシンク42相互間及び流体ディスペンサ10,12,14から熱を取り出し、それにより流体ディスペンサ10,12,14を冷却する比較的大きな熱容量を備えた別の物体(図示せず)に伝達することができるよう互いに接触状態にある。
【0016】
代表的な実施形態では、ソレノイドコイル40は、例えば電気絶縁バリヤ、例えば誘電体層43をソレノイドコイル40の巻線とアーマチュア管41の外面との間に設けることによりアーマチュア管41から電気的に絶縁される。誘電体層43は、ポリイミド層によって構成されるのが良い。他の適当なポリイミド層は、デュポン(DuPont(登録商標))社から市販されているKapton(登録商標)ポリイミド膜又はフィルムである。別の実施形態では、ソレノイドコイル40又はアーマチュア管41の外面は、薄い誘電体コーティングで被覆されるのが良い。さらに別の実施形態では、アーマチュア管41は、陽極酸化アルミニウムで構成されるのが良く、この場合、アーマチュア管41の陽極酸化外面は、アーマチュア管41とソレノイドコイル40との間の電気的絶縁バリヤとしての役目を果たす誘電体として働く。
【0017】
誘電体層43は、ソレノイドコイル40と関連したボビンの使用を不要にし、それにより、ソレノイドコイル40の巻線について太いワイヤを用いることができる。というのは、ボビンを省いた結果として広い実装空間が利用可能になるからである。太いワイヤは、コイル抵抗を減少させると共に付勢状態のソレノイドコイル40の熱発生を減少させることにより電磁アクチュエータの効率を高める。これは、ソレノイドコイル40の高周波作動と関連して有益な場合がある。
【0018】
弁棒34の自由端部のところに設けられた弁要素46は、ソレノイドコイル40の巻線がドライバ54により付勢されたり消勢されたりしているときにアーマチュア26及び弁棒34の運動と同時に動く。代表的な実施形態では球形又は半球形の形を呈するものとして示された弁要素46は、放出通路50の入口のところで弁座48に係合するよう構成されている。弁座48は、モジュール本体16とノズルプレート18との間に取り付けプレート51により固定された弁座部材49で支持されている。
【0019】
ソレノイドコイル40の巻線を通って流れる電流は、ソレノイドコイル40がドライバ54からの電力のパルスで付勢されると、電磁界を生じさせる。電磁界の磁力線は、アーマチュア26及び磁極片28並びにモジュール本体16及びフラックス戻り部44に局限されている。磁界強さは、ソレノイドコイル40の巻線を通って流れる電流の大きさにつれて変わる。適当な方向に流れる十分な電流によりソレノイドコイル40の巻線を付勢すると、電磁界は、戻しばね32によって生じる付勢力に打ち勝ち、可動アーマチュア26を静的磁極片28に向かって動かすのに十分な引き付け力を生じさせる。弁棒34は、アーマチュア26と一緒に、弁要素46が弁座48から離される開放位置に動く。開放位置では、流体は、圧力下で流体チャンバ22から、ノズルプレート18に通じる放出通路50内に流れることができる。
【0020】
流体チャンバ22から放出された粘性流体は、流体入口24を経て流体供給源25から流体チャンバ22内に流れる新たに供給された流体によって連続的に補給される。流体供給源25から流体入口24を通って導入された粘性流体も又、流体チャンバ22を加圧し、それにより流体チャンバ22から放出通路50内への流体の流れが促進される。流体供給源25は、1つ又は2つ以上の従来型加熱器例えば、カートリッジ型の抵抗加熱器により加熱され、又、抵抗器に供給される電力を調節する際に温度コントローラにより用いられるフィードバック信号をもたらす1つ又は2つ以上の従来型温度センサ、例えば抵抗温度検出器(RTD)、サーミスタ又は熱電対を備える流体マニホルドであるのが良い。
【0021】
流体ディスペンサ10が流体を小出ししている間、磁極片28に対するアーマチュア26の位置は、保持電流をソレノイドコイル40に連続的に送ることにより維持される。ソレノイドコイル40への電流が一定の場合、電磁界も同様に一定であり、時間により変化することはない。一定の電磁界は、アーマチュア26を戻して弁要素46を弁座48に接触させる方向に作用する戻しばね32の付勢力に抵抗するのに十分な引き付け力を維持する。
【0022】
ドライバ54からソレノイドコイル40の巻線に送られる電流を除くか減少させるかのいずれかを行うと、戻しばね32は、軸方向の力をアーマチュア26に及ぼし、この軸方向の力は、弁棒34を弁座48に向かって動かす。弁棒34を戻しばね32の作用により完全閉鎖位置に動かすと、弁要素46は、図2に示すように弁座48に接触する。流体チャンバ22から放出通路50内への流体の流れは、小出しシーケンスが開始されるまで中断される。流体ディスペンサ10のこの閉鎖条件では、流体チャンバ22を満たしている流体は、静的であり、加圧される。
【0023】
システムコントローラ52が、流体ディスペンサ10,12,14並びに流体ディスペンサ10,12,14を収容していて、運動及び作動を協調させる流体小出しシステム110(図7)の全体的制御を可能にする。システムコントローラ52は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)又はメモリに記憶されたソフトウェアを実行し、当業者には理解されるように本明細書において説明した機能を実行することができる中央処理装置(CPU)を備えた別のマイクロプロセッサ利用型コントローラであるのが良い。
【0024】
ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)装置126(図7)が、公知の仕方でシステムコントローラ52に作動的に接続されている。HMI装置126は、出力装置、例えば文字数字表示装置、タッチスクリーン及び他の視覚表示器、オペレータからの命令又は入力を受け取り、エンターされた入力をシステムコントローラ52の中央処理装置に送ることができる入力装置及び制御装置、例えば、文字数字キーボード、ポインティング装置、キーパッド、押しボタン、操作ノブ等を有するのが良い。システムコントローラ52は又、制御パネル130(図7)に接続されるのが良く、この制御パネルは、セットアップ、キャリブレート及び流体材料装填中、或る特定の機能の手動開始のための押しボタンを有するのが良い。
【0025】
図2〜図6を参照すると、ディスペンサ10,12,14に結合されたノズルプレート18は、モジュール本体16の方に向いた上流側の表面60及び流体が流体ディスペンサ10から小出しされる製品の方に向いた下流側の表面62を有する。上流側表面60と下流側表面62との間にはボルト穴が延びており、これらのうちボルト穴64が代表的である。ボルト穴64を通って締結具が突き出ており、これらのうち締結具19,20(図2)が代表的であり、締結具19,20の頭は、ボルト穴64の皿座ぐり領域内に受け入れられ、これらの頭は、下流側表面62の平面を越えて突き出ることがないようになっている。取り付けプレート51も又、ボルト穴64及びディスペンサ10,12,14の各々のモジュール本体16に設けられていて、締結具19,20の先端部を受け入れるねじ山付き開口部と位置が符合した開口部を有している。
【0026】
キャビティ67,68,69の形態をしたノズルチャンバ又はプレナムが、本体58の上流側表面60に凹んだ状態で設けられている。キャビティ67は、流体ディスペンサ10の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合されている。これと同様に、キャビティ68は、流体ディスペンサ12の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合され、キャビティ69は、流体ディスペンサ14の放出通路50の出口と流体連通関係をなして結合されている。シム71は、ディスペンサ10,12,14の取り付けプレート51とノズルプレート18の上流側表面60との間に捕捉されている。ステンレス鋼で構成されるのが良いシム71は、互いに異なる流体ディスペンサ10,12,14の放出出口50と位置が符合した開口部を有している。加うるに、密封部材73、例えばOリングが、流体ディスペンサ10,12,14の各々の放出口50を包囲した環状キャビティ内に設けられていて、かかる密封部材は、シム71と対応のモジュール本体16との間で圧縮されている。別の密封部材75、例えばOリングが、各取り付けプレート51の外周部に設けられた溝内に設けられていて、この密封部材は、各取り付けプレート51と流体ディスペンサ10,12,14の対応した各々のモジュール本体16との間で圧縮されている。
【0027】
キャビティ67,68,69は、平べったくて薄く且つ全体として長方形であり、これらは実質的に同一の構造を有している。それ故に、ノズルプレート18の本体58のキャビティ67に関する以下の説明は、キャビティ68,69にそのまま当てはまることは理解されたい。キャビティ67は、床面70及び床面70と上流側表面60との間に延びる側壁72を有している。放出通路50の出口は、互いに異なるチャネル74へのバランスの取れた流体分布が行われるようにキャビティ67の幾何学的中心のところ又はその近くでキャビティ67と交差するよう位置決めされている。チャネル74は、ノズルプレート18の厚さを貫通して延びて下流側表面62と交差している。各チャネル74は、床面70の近くに位置する第1の領域76及び第1の領域76よりも直径の大きな第2の領域78を有している。各チャネル74の第1の領域76は、ノズルプレート18の材料から成る側壁によって境界づけられている。各チャネル74の第2の領域78は、本体58の下流側表面62と交差している。粒子状物質がキャビティ67,68,69に入る前に粒子状物質を小出しされた流体から除去して詰まりを阻止するためにフィルタスクリーン(図示せず)をチャネル74の上方でキャビティ67,68,69の各々の中に設けるのが良い。粒子を流体から除去するために追加のフィルタを他の場所に設けるのが良い。
【0028】
一般に、キャビティ67の容積は、ノズルプレート18内における加圧流体のための死空間を最小限に抑え、キャビティ67の加圧が短時間で生じるようにするために最小限に抑えられている。例えば、キャビティ67は、約0.5mm(約0.01969インチ)の深さ、約1.8mm(約0.07087インチ)の長さ及び約7mm(約0.2756インチ)の幅を有するのが良く、結果として、容積は、約6.3mm3である。しかしながら、本発明は、このように数値限定されることはない。キャビティ67の容積の最適化により、比較的高い周波数でのディスペンサ10の作動が促進される場合があり、かかる比較的高い周波数とは、約30Hzよりも著しく高い周波数であると考えられる。
【0029】
ノズルプレート18は、流体をキャビティ67から受け入れる複数個のノズル80を更に有している。ノズル80のうちの1つが、チャネル74の各々の第2の領域78に設けられている。ノズル80は各々、対応のチャネル74の第1の領域76の直径にほぼ等しい直径を有することを特徴とする第1の通路82及び流体を放出させる幅の狭い第2の通路84を有している。第1の通路82は、各チャネル74の第1の領域76と第2の通路84との間に設けられている。
【0030】
ノズル80は、密な実装を促進するために互い違いの列又はライン85a,85bのアレイの状態に配列されていて、これらノズルは、ノズルプレート18の下流側表面62を越えて基板120に向かって突き出ている。ノズル80は、ノズルプレート18の幅全体にわたってほぼ等しい間隔で配置されている。一実施形態では、ライン85aの隣り合うノズル80とライン85bの隣り合うノズル80は、約1.528mm(約0.06016インチ)の間隔sだけ離れているのが良く、ノズル80の2つのライン85a,85b相互間に垂直の方向における間隔xは、約0.764mm(約0.03008インチ)であるのが良い。
【0031】
ノズル80は、チャネル74内に接着されたサファイヤ製のノズルから成るのが良く、これらサファイヤ製ノズルは、各チャネル74の第2の領域78の内径よりも幾分小さな外径を有するよう寸法決めされる。変形実施形態では、ノズル80は、チタン又はチタン合金、例えばTi−6Al−4V合金で作られても良く、そして、各チャネル74の第2の領域78の内側に接着されても良い。かかるノズル80を高精度で形成する一技術は、ノズル80を旋削するスイススクリュー機械(Swiss screw machine)を利用する。ただし、本発明はこれには限定されない。
【0032】
図6に最も良く示されているように、ノズル80の各々の第2の通路84は、高さ又は長さh及び内径dの直円柱として形作られるのが良い。一実施形態では、長さhと内径dの比は、少なくとも3:1である。別の実施形態では、長さhと内径dの比は、約6:1である。これら範囲のうちの1つの比を選択することにより、噴出した流体の流れが、比較的真っ直ぐな経路をなして第2の通路84から外れることができ、このことは、ノズル80が基板120よりも比較的高い高さ位置で下方に流体を噴いている場合に重要なことがある。
【0033】
代表的には、各ノズル80の第2の通路84の内径dは、約6mil以下である。特定の一実施形態では、第2の通路84の内径dは、約5milであるのが良い。別の特定の実施形態では、第2の通路84の内径dは、約4milであるのが良い。さらに別の特定の実施形態では、第2の通路84の内径dは、約1milであるのが良く、これは、流体の噴出小滴のサイズが小さいということがつきものであるために基板120(図6)上における堆積膜が比較的薄いことを特徴とする材料の塗布が可能である。
【0034】
小出し中、システムコントローラ52により、ドライバ54は、流体ディスペンサ10のソレノイドコイル40の巻線を付勢して弁要素46を弁座48に対して動かし(即ち、アーマチュア26を磁極片28に対して動かし)、新たな量の流体を圧力下でキャビティ67内に導入する。弁要素46が弁座48から持ち上げられると、新たな量の加圧流体は、放出通路50を通ってキャビティ67内に流れる。この到来する量の加圧流体は、キャビティ67内に存在する流体の塊をチャネル74内に押し退ける。弁要素46が弁座48に接触すると、キャビティ67内に存在する流体は、もはや加圧されず、キャビティ68からチャネル74内への流れは生じない。それと同時に、流体は、システムコントローラ52が流体ディスペンサ10に命令を出して所与の量の加圧流体をキャビティ67に導入させると、ノズル80の全ての第2の通路84から排出される。キャビティ67内に導入された各流体量により、これに対応した全ての量の流体をキャビティ67と連通状態にある互いに異なるチャネル74相互間に分配する。分配された各量は、ノズル80の1つから流体の小滴として噴出する。
【0035】
噴出した流体小滴は、互いにほぼ等しいサイズのものであり、これら流体小滴は、ノズル80と基板120との間の開いた移動空間中を軌道を描いて動く。基板120に当たる流体小滴の相対的衝突場所は、ノズルプレート18上におけるノズル80の配置状態に似ている。流体小滴は、一緒に流れて基板120上で合体(即ち、融合)し、流体の長方形又は台形ストリップを形成する。流体ディスペンサ10を基板120に対して動かしているときに、流体ディスペンサ10を連続的に作動させて連続した流体小滴群をオーバーラップ状態のストリップとして小出しし、かかるオーバーラップ状態のストリップは、凝集体の状態では、小出しされた流体のストリップの外観を有する。合体した流体小滴は、基板120上で自動的に水平になって比較的一様な厚さのコーティング又は膜を形成する。
【0036】
同じ様な考察が、加圧流体をキャビティ68及びキャビティ69にそれぞれ供給する他の流体ディスペンサ12,14について同様に当てはまる。システムコントローラ52により、ドライバ54は、ディスペンサ12,14のそれぞれのソレノイドコイル40の巻線を互いに独立に、更に、流体ディスペンサ10と関連したソレノイドコイル40とは独立して付勢する。このように、ディスペンサ10,12,14の各々を別個独立に制御することができる。
【0037】
キャビティ67,68,69の各々と関連したノズル80の個数は、小出し用途に応じて様々であろう。一実施形態では、ノズルプレート18のキャビティ67,68,69の各々は、9つのノズル80を有するのが良く、各ノズル80の第2の通路84の直径は、約4milであるのが良い。別の実施形態では、ノズルプレート18のキャビティ67,68,69の各々は、8つのノズル80を有するのが良く、各ノズル80の第2の通路84の直径は、約5milであるのが良い。
【0038】
一実施形態では、単一の流体キャビティを備えたノズルプレート108(図10)と構造がほぼ同じノズルプレートを、幅の狭い流体材料ストリップを基板120上に被着させる単一のディスペンサ、例えばディスペンサ10に用いることができる。この構造は、例えば、コンフォーマルコーティング材料を幅の狭い基板120に正確に塗布するのに適切である場合がある。
【0039】
ドライバ54は、電流制御出力信号をソレノイドコイル40の巻線に与える電力スイッチング回路を有する。各流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40は、一実施形態では、ドライバ54から送られた電流制御出力信号のパルス幅変調(PWM)方式を用いるシステムコントローラ52によって独立して作動される。そのために、ドライバ54は、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40の巻線に送られる電流のデューティサイクルを変調する。基板120に被着された膜の堆積厚さは、出力信号のデューティサイクルを変更することにより変化させることができる。
【0040】
流体ディスペンサ10,12,14の各々に関し、ドライバ54及びシステムコントローラ52は、引込み電流の印加、流体が放出される開き状態を生じさせるための引込み電流後の保持電流の印加及び閉じ状態を生じさせるためのソレノイドコイル40からの引込み電流の除去を正確に調節すると共に制御するために用いられる。このために、ドライバ54は、高速引込み電流を各ソレノイドコイル40に印加してそれぞれの弁要素46を迅速に動かし、これを小出しサイクルの開始時に、対応の弁座48との接触状態を解く。加うるに、ドライバ54は、弁要素46を開き位置に保持する減少した保持電流を維持する一方で、小出し中、ソレノイドコイル40の巻線中の熱の発生量を最小限に抑える。最後に、ドライバ54は、ソレノイドコイル40の迅速な減磁を可能にして、それぞれの弁要素46を迅速に動かしてこれをその弁座48に接触させ、それにより小出しサイクルの完了時に閉じ条件を確立するようにする。かかるドライバは、共通所有者の米国特許第6,978,978号明細書、同第6.318,599号明細書、同第5,812,355号明細書及び同第4,467,182号明細書に開示されており、これら米国特許を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0041】
システムコントローラ52の制御下でドライバ54から各ソレノイドコイル40に送られた電流制御出力信号のPWMにより、それぞれのアーマチュア26は、磁極片28に対して周期的に且つ繰り返し動く。これにより、それぞれの弁要素46は、対応の弁座48に対してその開き位置と閉じ位置との間で定期的に往復動し、それにより、ディスペンサ10,12,14の各々が受け持つノズル80からの小滴の放出又は噴出を制御する。一群の小滴が、対応の弁要素46が開閉される度に、ディスペンサ10,12,14の各々が受け持つノズル80から噴出される。ソレノイドコイル40に送られる電流制御出力信号のデューティサイクルを交番させることにより、種々の量の流体をキャビティ67,68,69に供給し、その後各々がデューティサイクルに関連したサイズを有する一群の小滴としてノズル80から放出することができる。パルス幅は、小滴サイズを決定する際の一要因となる。というのは、弁要素46の1回のサイクル中、ノズルから放出される流体の量は、正にパルス幅で決まるからである。他の要因、例えば流体温度、流体圧力等も、小滴サイズに影響を及ぼす場合がある。
【0042】
ドライバ54は、PWM出力信号のデューティサイクルを0パーセントから100パーセントまで変化させることができる。一実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、50パーセント未満であるのが良く、別の実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、約40パーセント(即ち、オンタイムには40パーセント、オフタイムには60パーセント)であるのが良い。この点に関し、50パーセント未満のデューティサイクルの利用は、流体の放出流れのための真っ直ぐな移動経路を促進することができる。パルスをソレノイドコイル40に送る周波数は、最高200Hz〜400Hzまでのオーダーであるのが良い。
【0043】
電流制御出力信号を比較的高い周波数で且つ比較的低いデューティサイクルでドライバ54からソレノイドコイル40に送るためにPWMを利用することにより、ノズル80から噴出する流体の流れのための真っ直ぐな移動経路の実現が助長される。その結果、流体の流れは、基板120の意図した場所に小滴として当たる可能性が高くなり、それにより、ノズル80に関する小出し高さを従来型小出しシステムと比較して高くすることができる場合がある。これは、ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに、基板120よりも比較的高い高さのところに突き出た物体又はコンポーネントに当たらないようにする上で有益な場合がある。例えば、電流制御出力信号のデューティサイクルが50パーセント未満であり、その周波数が200Hz以上である場合、少なくとも1つの流体ディスペンサを多軸ステージで吊り下げて複数個のノズルが静的基板よりも0.25インチ(6.35mm)以上上方の高さ位置のところに配置されるようにする。
【0044】
変形例として、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40は、ドライバ54から送られた電流制御出力信号の周波数変調方式を用いるシステムコントローラ52によって別個独立に作動される。そのために、ドライバ54は、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40の巻線に送られた電流の周波数を変調する。周波数変調は、ノズル80からの小滴の連続した放出相互間の時間を変化させ、それにより、小出しヘッドが一定の速度で動いていると仮定すると、同一のノズル80から噴出した連続状態の小滴の基板120上における衝突箇所相互間の間隔が効果的に変化する。本発明の一実施形態では、周波数変調を電流制御出力信号のPWMと組み合わせて利用するのが良い。
【0045】
図7を参照すると、流体小出しシステム110が、パネルによって部分的に覆われている相互に連結された水平ビームと垂直ビームのフレームワークから成るキャビネット112を有している。流体ディスペンサ10,12,14は、流体小出しシステム110の多軸ステージに取り付けられており、この多軸ステージは、キャビネット112により支持されたX−Yステージポジショナ116及びX−Yポジション116から吊り下げられたZ軸ポジショナ114を有している。X−Yポジショナ116は、1対の独立して制御可能な軸駆動装置(図示せず)によって作動する。同様に、Z軸ポジショナ114は、別の独立して制御可能な軸駆動装置(図示せず)によって作動する。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14のための3本の実質的に垂直な動作軸線を提供する。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、実際には、多種多様な従来型電気機械的装置及び(又は)機械的装置のうちの任意のものから成っていても良い。
【0046】
基板120が、流体の小出し量を受け取るようになっており、これら基板は、コンベヤ128によって流体ディスペンサ10,12,14の下の静止位置に運ばれる。ただし、他の運搬機構体を用いても良い。X−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を基板120、例えばプリント回路基板の対向した表面に対してシステムコントローラ52によって統合された高精度協調位置制御方式でX−Y平面内において群として迅速に動かすことができる。Z軸ポジショナ114は、流体ディスペンサ10,12,14をX−Y平面に垂直な方向に昇降させて運動に関する3次元デカルト座標系を定める。Z軸ポジショナ114は、ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに基板120から突き出た物体に接触しないように基板120よりも上方に流体材料の小出し高さを設定するために用いられる。代表的には、Z軸ポジショナ114は、流体ディスペンサ10,12,14を基板120よりも上方に位置していて、基板120から突き出た物体に当たらない一定の高さ位置に配置するために用いられる。Z軸ポジショナ114及びX−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を動かすために電気機械的コンポーネント、例えばモータ(例えば、サーボモータ)及び駆動回路を有する。しかしながら、流体ディスペンサ10,12,14を単一の固定された高さ位置のところに吊り下げた状態で流体を小出しすることができる。
【0047】
運動コントローラ124(図2)が、システムコントローラ52、X−Yポジショナ116及びZ軸ポジショナ114に電気的に結合されており、この運動コントローラは、流体ディスペンサ10,12,14の3次元運動を制御する。システムコントローラ52は、代表的には、運動コントローラ124に命令を出して流体ディスペンサ10,12,14を一連の基板120について繰り返されるスクリプト作製方式で動かすようX−Yポジショナ116及びZ軸ポジショナ114を作動させる。一実施形態では、X−Yポジショナ116は、流体ディスペンサ10,12,14を最高毎秒約40インチ(毎秒約1メートル)の速度で動かすことができる。
【0048】
使用にあたり、流体ディスペンサ10,12,14の各々のソレノイドコイル40をシステムコントローラ52の制御下でドライバ54からの電流制御出力信号によって別個独立に制御する。それと同時に、流体ディスペンサ10,12,14を静止基板120を含む平面よりも上方の所与の高さ位置でX−Yポジショナ116により群として動かす。これにより、流体の長方形又は台形ストリップが基板120上に被着される。基板120の表面上の物体又は特徴部に遭遇すると、プログラムされたコーティングパターンに従って、システムコントローラ52は、ドライバ54からの出力パルスの流れを中断させることにより流体ディスペンサ10,12,14のうちの1つ又は2つ以上を作動不能にし、それにより、流体ディスペンサ10,12,14の全てよりは少ない数の流体ディスペンサを作動させることができる。流体は、アイドル状態の流体ディスペンサ10,12,14からは放出されない。その結果、流体ディスペンサ10,12,14を基板120の表面上の或る特定の物体、特徴部又は領域が流体で被覆されないように選択的に作動させることができる。これにより、流体ディスペンサ10,12,14は、流体ディスペンサ10,12,14の運動方向を変えないで、流体を基板120上のところどころの領域に選択的に小出しすることができる。
【0049】
例えば、基板120上のコンポーネント又は他の特徴部は、流体ディスペンサのうちの1つ、例えば流体ディスペンサ12のノズルプレート18の幅方向における端から端までの間のノズル80の対応の広がりよりも小さな幅を有するのが良い。流体ディスペンサ10,12,14を基板120に対して動かしているときに、システムコントローラ52は、ドライバ54に命令を出して流体ディスペンサ12への出力信号の流れを中断させ、流体ディスペンサ10,12,14が特徴部上を且つこれを横切って動かしている間、流体ディスペンサ12が閉鎖状態のままであり、その結果、特徴部が非被覆状態のままであるようにする。流体ディスペンサ10,14は、流体を特徴部に隣接して位置する基板120上の場所に引き続き小出しする。流体ディスペンサ12は、特徴部に遭遇する前に閉鎖され、特徴部を通過した後、流体を基板120のコーティングのために放出させる制御信号が再び流体ディスペンサに送られる。
【0050】
流体小出しシステム110は、多数のノズルを備えた静止状態の小出しヘッドに対して基板を直線経路で並進させる従来型コーティングシステムの多くの欠点を解決している。例えば、かかる従来型コーティングシステムは、基板の幅とノズルのアレイの幅に合わせなければならない。もしそうでなければ、基板は単一の方向に並進されるが側方運動は許容されないので、基板全体をコーティングすることができない。加うるに、この従来型小出し方式では、コーティングされないことが意図された基板上の領域の周りをトレースすることができない。
【0051】
一般に、従来型小出し方式は、基板を静止小出しヘッドに対して並進させることができる速度(毎秒5インチ(12.7cm)以下)に関して制限され、比較的広い放出通路(0.0155インチ(0.3937mm)以上)を備えたノズルを必要とする場合がある。これとは対照的に、流体小出しシステム110の多軸ステージは、小出しヘッドを毎秒約40インチ(毎秒約1メートル)の速度で基板120に対して動かすことができ、この速度は、数ある要因の中で、流体ディスペンサ10,12,14の高周波数作動のために可能である。従来型コーティングシステムは、これらの作動周波数が、一般に30Hz未満の周波数に制限されており、これは、流体小出しシステム110の或る特定の実施形態によって解決できる欠点である。従来型コーティングシステムは、比較的広い流体キャビティを備えたノズルプレート及びノズルプレート18をディスペンサ10,12,14に直接結合しないで、流体キャビティをディスペンサに結合する1本の管を有する場合があり、この場合、中間の数本の管は設けられず、流体キャビティの容積が最小限に抑えられる。
【0052】
変形実施形態では、流体小出しシステム110は、流体ディスペンサを基板120に対して動かす別の形式の機構体を有しても良い。例えば、多軸ステージに代えて、ディスペンサ10,12,14と共に小出しヘッドを支持した関節式アームを有するプログラム可能な機械式ロボット(図示せず)を用いても良い。プログラム可能な機械式ロボットは、当業者には理解される任意の共通の形態を有して良く、かかる形態としては、直角座標ロボット形態及びSCARA(選択機能組立てロボットアーム)形態が挙げられるが、これらには限定されない。プログラム可能機械式ロボットは、関節式アーム及び小出しヘッドの所要の多軸運動を実施するための種々の運動コントローラ及び電子システム装置、例えばリミットスイッチ、センサ、入出力端子、増幅器、空気圧弁、継手、ソレノイド、電力供給源、プログラマブルコントローラ、サーボモータ及びベルトプーリ駆動装置を有する。
【0053】
図8〜図10を参照すると(図中、同一の参照符号は、図1〜図7の同一の特徴を示している)、本発明の変形実施形態によれば、流体ディスペンサ10,12,14(図1〜図7)のうちの1つ又は2つ以上に代えて用いることができる流体ディスペンサ85が示されている。流体ディスペンサ85は、ノズルプレート18(図1〜図7)に類似したノズルプレート108を有しているが、電磁アクチュエータに代えて、流体ディスペンサ85は、圧電アクチュエータ86の形態を有するトルクモータを用いて動作するよう構成されている。圧電アクチュエータ86は、従来構造のものであり、レバーアーム89によってシャフト又は弁棒88に機械的に結合されている。弁棒88は、レバーアーム89に対して全体として直角に突き出ている。弁要素90が、弁棒88の自由端部のところに設けられており、この弁要素は、圧電アクチュエータ86の作動により、弁座部材92で支持された弁座91に対して動く。弁座部材92及び弁要素90は、当業者には理解される組成を有するセラミック材料で構成されるのが良い。
【0054】
弁座部材92は、モジュール本体94に結合され、このモジュール本体は、圧電アクチュエータ86を収容した内部キャビティを有する。弁座91は、放出通路95と流体チャンバ96との間に位置していて、流体入口98により流体供給源25(図2)に結合される接合手段を構成している。圧力下で流体供給源25から供給される流体は、流体入口98を通って流体チャンバ96内に導入される。密封部材97,98,99が、弁座部材92、モジュール本体94及びノズルプレート108のための流体密シールを構成する。モジュール本体94は、従来型加熱器(図示せず)、例えばカートリッジ型抵抗加熱器によって占められた細長いキャビティ100を有する。モジュール本体94は、加熱器に送られる電力を調整する際に温度コントローラによる使用のためのフィードバック信号をもたらす従来型温度センサ(図示せず)、例えばRTD、サーミスタ又は熱電対を更に備えている。
【0055】
圧電アクチュエータ86は、絶縁ワイヤ102,104,106によってドライバ54に電気的に結合され、このドライバは、ソレノイドコイル40に供給される電力に関して上述したように、電流制限出力信号をパルス幅変調方式、周波数変調方式又はこれらの組み合わせでアクチュエータ86に送る。絶縁ワイヤ102は、電気的接地用導体に電気的に接続されている。絶縁ワイヤ104は、圧電アクチュエータ86の上半分に電気的に接続され、絶縁ワイヤ106は、圧電アクチュエータ86の下半分に電気的に接続されている。電力が絶縁ワイヤ106によりドライバ54から圧電アクチュエータ86の下半分に供給されると、電界が生じ、この電界は、アクチュエータ86の寸法を変化させてレバーアーム89を上方に旋回させる。これ又レバーアーム89の運動によって機械的に増幅される圧電アクチュエータ86の上方運動により、弁要素90が弁座91から持ち上げられて加圧流体が流体チャンバ96から放出通路95内に流れることができるようになっている。電力が絶縁ワイヤ104によりドライバ54から圧電アクチュエータ86の上半分に供給されると、電界が生じ、この電界は、アクチュエータ86の寸法を変化させてレバーアーム89が下方に旋回されるようになっている。レバーアーム89の運動により機械的に増幅される下方運動により、弁棒88は、下方に動いて弁要素90を弁座91に接触させる。
【0056】
圧電作動式ディスペンサの他の形式をノズルプレート108と関連して用いることができる。例えば、圧電作動式ディスペンサは、圧電アクチュエータの出力駆動力を米国特許第6,157,115号明細書に記載されているようにアクチュエータの比較的僅かな出力変位よりも実質的に大きい弁棒88の有用な変位に変換する機械式増幅器を有するのが良い。なお、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0057】
図10に最も良く示されているように、ノズルプレート108は、構造及び機能が流体キャビティ67,68,69とほぼ同じ流体キャビティ107を1つだけ有している。キャビティ107は、ノズルプレート18及びキャビティ67,68,69に関して上述したように、放出出口95をノズル80のアレイに流体連通関係をなして結合している。ノズルプレート108の互いに反対側の側縁部には、シールド部材109a,109bが取り付けられており、これらシールド部材は、ディスペンサ85が多軸ステージによって基板120に対してX−Y平面内で動かされている間、ノズル80を接触しないように保護する。ノズル80は、シールド部材109a,109b相互間の空間に配置されている。シールド部材109a,109bは、ノズル80よりもノズルプレート108から長い距離にわたり突き出ており、これによっても、ディスペンサ85をZ方向に沿って基板120に対して動かしているとき、基板120上のコンポーネント又は物体とノズル80の接触が阻止される。
【0058】
システムコントローラ52のドライバ54は、圧電要素86に送られるPWM出力信号のデューティサイクルを0パーセントから100パーセントまで変化させることができる。一実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、50パーセント未満であるのが良く、別の実施形態では、PWM出力信号のデューティサイクルは、約25パーセント(即ち、オンタイムでは25パーセント、オフタイムでは75パーセント)であるのが良い。パルスをソレノイドコイル40に送る周波数は、200Hz〜400Hzのオーダーであるのが良く、或いは、変形例として、最高約1kHz以上であっても良い。ディスペンサ85は又、システムコントローラ52のドライバ54から送られる周波数変調出力信号又はPWMと周波数変調出力信号の組合せを用いて作動可能である。
【0059】
図11及び図12を参照すると(図中、同一の参照符号は、図1〜図7の同一の特徴を示している)、本発明の変形実施形態によれば、ノズルプレート18(図1〜図7)とほぼ同じノズルプレート134が、ノズルプレート134を流体ディスペンサ10から離隔させる延長部136と関連して用いられている。延長部136は、一端部に設けられていて、ディスペンサ10のモジュール本体16に流体密状態で結合された取り付けプレート138、反対側の端部に設けられた別の取り付けプレート140及び取り付けプレート138,140を互いに連結するステム142を有している。ノズルプレート134は、構造及び機能が本体58(図1〜図7)とほぼ同じ本体144及び構造及び機能がノズル80(図1〜図7)と同じノズル146を有している。一実施形態では、ノズルプレート134の本体144は、ディスペンサ10から見て最も遠くに位置する延長部136の自由端部のところで取り付けプレート140にレーザ溶接されるのが良い。
【0060】
延長部136の内側の中央に設けられた中央ボア149が、ディスペンサ10の流体チャンバ22の延長部をなしている。中央ボア149は、弁座152のところで放出通路150に隣接し、この弁座は、弁座部材154に設けられている。弁棒34とほぼ同じ弁棒156が、アーマチュア26から中央ボア149内に突き出ている。ソレノイドコイル40の巻線をシステムコントローラ52の電力供給源により付勢したり消勢したりすると、アーマチュア26及び弁棒156が動く。弁座152は、閉鎖状態において弁棒156の自由端部のところの弁要素46に接触する。
【0061】
放出通路150は、ノズルプレート134内に設けられた流体キャビティ158と連通している。ノズルは、ディスペンサ10を作動させたとき、過剰量の加圧流体を流体キャビティ158から放出する。比較的幅の狭いプロフィールを有する延長部136は、ノズルプレート134をディスペンサ10により提供された大きなプロフィールから離隔させている。これにより、ノズルプレート134を基板120上の隣り合う高いプロフィールのコンポーネント相互間に配置することができ、それにより、流体をかかる高プロフィールコンポーネント相互間に小出しする際、基板120の上方のノズル146の高さが効果的に減少する。これは、基板120上への流体のより正確な小出しが促進される場合がある。
【0062】
説明の目的上、例えば「上方」、「垂直」、「水平」、「右」、「左」等の方向を表わす用語は、内容を分かりやすくする目的で図面と関連して用いられている。周知のように、液体小出し装置を実質的に任意の向きに向けることができ、従って、これら方向を表わす用語は、本発明に係る装置について任意特定の絶対的な方向を意味するために用いられているわけではない。
【0063】
本発明を種々の実施形態によって説明すると共にこれら実施形態をかなり詳細に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲をかかる細部に限定し又は制限することは、本出願人の意図するところではない。追加の利点及び改造例は、当業者には容易に明らかになろう。したがって、本発明はその広い観点において特定の細部、代表的な方法及び図示されていると共に説明した例示の実施例には限定されない。したがって、本出願人の考える本発明の技術的思想の精神又は範囲から逸脱することなく、かかる細部の変形例を想到できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態による互いに並置された空間関係をなす複数個のディスペンサの斜視図である。
【図2】図1の2−2線矢視断面図であり、ディスペンサを閉鎖条件で示す図である。
【図3】図1の3−3線矢視断面図であり、ディスペンサを閉鎖条件で示す図である。
【図4】図1のディスペンサ用のノズルプレートの一部分の斜視図であり、ノズルプレートをディスペンサから取り外した状態で示す図である。
【図5】図4のノズルプレートの底面図である。
【図6】図2の一部分の拡大図である。
【図7】本発明の実施形態による図1〜図6の流体ディスペンサを有する流体小出しシステムの略図である。
【図8】変形実施形態としてのディスペンサ及びノズルプレートの部分切除側面図である。
【図9】図8のディスペンサ及びノズルプレートの部分切除端面図である。
【図10】図8のディスペンサ用のノズルプレートの斜視図であり、ノズルプレートをディスペンサから取り外した状態で示す図である。
【図11】ノズルプレートをディスペンサから離隔させる延長部を有する別の変形実施形態としてのディスペンサ及びノズルプレートの一部分の斜視図である。
【図12】図11の12−12線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10,12,14 流体ディスペンサ
16 モジュール本体
18 ノズルプレート
26 アーマチュア
28 磁極片
46 弁要素
52 システムコントローラ
54 ドライバ
80 ノズル
110 流体小出し機
112 キャビネット
114 Z軸ポジショナ
116 X−Y軸ポジショナ
120 基板
126 ヒューマンマシンインターフェイス
128 コンベヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止状態の基板に加圧流体を塗布する装置であって、
アクチュエータ、前記加圧流体を収容した流体チャンバ、前記アクチュエータに結合された弁要素、流体通路、及び前記流体チャンバと前記流体通路との間に設けられた弁座を有する少なくとも1つの流体ディスペンサを有し、前記アクチュエータは、前記弁要素を前記弁座に対して、前記加圧流体が前記流体チャンバから前記流体通路内に流れることができるようにする開放位置と、前記弁要素が前記弁座に接触して前記流体チャンバと前記流体通路との間に流体シールを生じさせる閉鎖位置との間で動かすよう構成されており、
前記少なくとも1つの流体ディスペンサに機械的に結合された多軸ステージを有し、前記多軸ステージは、前記少なくとも1つの流体ディスペンサを前記静止状態の基板に対して動かすよう構成されており、
複数個の前記流体ディスペンサの各々にそれぞれ機械的に結合された少なくとも1枚のノズルプレートを有し、前記少なくとも1枚のノズルプレートは、前記流体通路に結合された流体キャビティ及び前記流体チャンバに結合された複数個のノズルを有し、前記流体キャビティは、前記少なくとも1つの流体ディスペンサの前記弁要素が前記開放位置にあるとき、前記複数個のノズルから放出可能に前記加圧流体を前記少なくとも1つの流体ディスペンサから受け入れるよう構成されている、装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記弁要素を支持した弁棒、少なくとも1つの圧電アクチュエータ、及び前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを前記弁棒に結合するレバーアームを有し、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータは、前記レバーアームを偏向させ、それにより前記弁棒を動かして前記弁座に対する前記弁要素の前記開放位置及び前記閉鎖位置をもたらすために選択的に付勢される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータに電気的に結合されたドライバを更に有し、前記駆動回路は、電流制限出力信号を、前記開放位置と前記閉鎖位置との間における前記弁要素の運動を調整するためにパルス幅変調される前記少なくとも1つの流体ディスペンサの前記アクチュエータに送るよう構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記アクチュエータに電気的に結合されたドライバを更に有し、前記ドライバは、電流制限出力信号を、前記開放位置と前記閉鎖位置との間における前記弁要素の運動を調整するために周波数変調される前記流体ディスペンサの各々の前記アクチュエータに送るよう構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ノズルプレートと前記ディスペンサとの間に設けられた延長部を更に有し、前記延長部は、前記ノズルプレートを前記ディスペンサから離隔させ、前記延長部は、前記流体キャビティを前記流体通路に結合するボアを有する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
加圧流体を静止状態の基板上に小出しして被膜を形成する方法であって、
前記加圧流体の複数個の小滴を複数個のノズルから前記静止状態の基板上に放出するステップと、
前記小滴を放出しながら前記ノズルを前記静止状態の基板に対して動かすステップとを有する、方法。
【請求項7】
前記小滴を放出する前記ステップは、パルス幅変調された出力信号を前記流体ディスペンサのアクチュエータに送るステップを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記小滴を放出する前記ステップは、周波数変調された出力信号を前記流体ディスペンサのアクチュエータに送るステップを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記加圧流体を第1の流体ディスペンサから前記ノズルのうちの第1の部分に供給するステップと、
前記第1のノズル群に供給される前記加圧流体とは別個独立に、前記加圧流体を第2の流体ディスペンサから前記ノズルのうちの第2の部分に供給するステップとを更に有する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記小滴のサイズを調節して前記小滴が前記基板上で互いに合体して前記被膜を形成する連続層を形成するようにするステップを更に有する、請求項6記載の方法。
【請求項1】
静止状態の基板に加圧流体を塗布する装置であって、
アクチュエータ、前記加圧流体を収容した流体チャンバ、前記アクチュエータに結合された弁要素、流体通路、及び前記流体チャンバと前記流体通路との間に設けられた弁座を有する少なくとも1つの流体ディスペンサを有し、前記アクチュエータは、前記弁要素を前記弁座に対して、前記加圧流体が前記流体チャンバから前記流体通路内に流れることができるようにする開放位置と、前記弁要素が前記弁座に接触して前記流体チャンバと前記流体通路との間に流体シールを生じさせる閉鎖位置との間で動かすよう構成されており、
前記少なくとも1つの流体ディスペンサに機械的に結合された多軸ステージを有し、前記多軸ステージは、前記少なくとも1つの流体ディスペンサを前記静止状態の基板に対して動かすよう構成されており、
複数個の前記流体ディスペンサの各々にそれぞれ機械的に結合された少なくとも1枚のノズルプレートを有し、前記少なくとも1枚のノズルプレートは、前記流体通路に結合された流体キャビティ及び前記流体チャンバに結合された複数個のノズルを有し、前記流体キャビティは、前記少なくとも1つの流体ディスペンサの前記弁要素が前記開放位置にあるとき、前記複数個のノズルから放出可能に前記加圧流体を前記少なくとも1つの流体ディスペンサから受け入れるよう構成されている、装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記弁要素を支持した弁棒、少なくとも1つの圧電アクチュエータ、及び前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを前記弁棒に結合するレバーアームを有し、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータは、前記レバーアームを偏向させ、それにより前記弁棒を動かして前記弁座に対する前記弁要素の前記開放位置及び前記閉鎖位置をもたらすために選択的に付勢される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータに電気的に結合されたドライバを更に有し、前記駆動回路は、電流制限出力信号を、前記開放位置と前記閉鎖位置との間における前記弁要素の運動を調整するためにパルス幅変調される前記少なくとも1つの流体ディスペンサの前記アクチュエータに送るよう構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記アクチュエータに電気的に結合されたドライバを更に有し、前記ドライバは、電流制限出力信号を、前記開放位置と前記閉鎖位置との間における前記弁要素の運動を調整するために周波数変調される前記流体ディスペンサの各々の前記アクチュエータに送るよう構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ノズルプレートと前記ディスペンサとの間に設けられた延長部を更に有し、前記延長部は、前記ノズルプレートを前記ディスペンサから離隔させ、前記延長部は、前記流体キャビティを前記流体通路に結合するボアを有する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
加圧流体を静止状態の基板上に小出しして被膜を形成する方法であって、
前記加圧流体の複数個の小滴を複数個のノズルから前記静止状態の基板上に放出するステップと、
前記小滴を放出しながら前記ノズルを前記静止状態の基板に対して動かすステップとを有する、方法。
【請求項7】
前記小滴を放出する前記ステップは、パルス幅変調された出力信号を前記流体ディスペンサのアクチュエータに送るステップを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記小滴を放出する前記ステップは、周波数変調された出力信号を前記流体ディスペンサのアクチュエータに送るステップを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記加圧流体を第1の流体ディスペンサから前記ノズルのうちの第1の部分に供給するステップと、
前記第1のノズル群に供給される前記加圧流体とは別個独立に、前記加圧流体を第2の流体ディスペンサから前記ノズルのうちの第2の部分に供給するステップとを更に有する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記小滴のサイズを調節して前記小滴が前記基板上で互いに合体して前記被膜を形成する連続層を形成するようにするステップを更に有する、請求項6記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−106934(P2009−106934A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276911(P2008−276911)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(399018677)ノードソン コーポレイション (15)
【氏名又は名称原語表記】Nordson Corporation
【住所又は居所原語表記】28601 Clemens Road Westlake Ohio 44145−1119 USA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(399018677)ノードソン コーポレイション (15)
【氏名又は名称原語表記】Nordson Corporation
【住所又は居所原語表記】28601 Clemens Road Westlake Ohio 44145−1119 USA
【Fターム(参考)】
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