エトキシジフェニルエタン誘導体ならびにその製造方法および使用
本発明はエトキシジフェニルエタン誘導体ならびにその合成方法および使用を開示する。フェニルエタンB芳香環の4’位をエトキシによって化学的に修飾すると同時に、その3’位のヒドロキシをホスフェートのような水溶性プロドラッグに変性させ、同様に、アミノ酸側鎖を3’位のアミノに導入して式(I)として示される構造を有するアミノ酸アミド水溶性プロドラッグを形成する。
上記エトキシジフェニルエタン誘導体およびそのプロドラッグは、強力なチューブリン凝集阻害能力と、腫瘍血管のための明白な標的損傷効果とを含み、また腫瘍細胞に栄養および酸素が与えられない場合に腫瘍細胞を殺すまたは腫瘍転移を阻害する役割を果たすために腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を選択的に引き起こし、血管内皮細胞のアポトーシスを誘発する。
上記エトキシジフェニルエタン誘導体およびそのプロドラッグは、強力なチューブリン凝集阻害能力と、腫瘍血管のための明白な標的損傷効果とを含み、また腫瘍細胞に栄養および酸素が与えられない場合に腫瘍細胞を殺すまたは腫瘍転移を阻害する役割を果たすために腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を選択的に引き起こし、血管内皮細胞のアポトーシスを誘発する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤合成の分野に関するものであり、特にジフェニルエタン誘導体抗がん剤の合成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近発見された新しいチューブリン解重合(脱重合)因子は、MTDよりも低い投与量で血管閉塞を引き起こす恐れがある(Expert Opin Investig Drugs. 2004 Sep; 13(9) 1171-82参照)。2005年にロワンヴィンセントら(Loin Vincent et al.)は、血管標的薬剤(VTA)としてチューブリン骨格に損傷を与える可能性がある同様の属性を有する新しいチューブリン解重合因子を発見した。文献上のデータによると、この血管標的薬剤はVE‐カドヘリンシグナル経路を部分的に通って腫瘍血管の劣化を選択的に誘発する可能性がある。かかるチューブリン解重合因子は、腫瘍血管に選択的な損傷を引き起こす一方で、正常な血管系には影響を及ぼすことなく腫瘍の血管新生を防止する。一方、このチューブリン解重合因子は、腫瘍細胞に栄養および酸素が与えられない場合に腫瘍細胞を殺すまたは腫瘍転移を阻害する役割を果たすためにチューブリンの凝集を阻害し、腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を選択的に引き起こし、血管内皮細胞のアポトーシスを誘発することができる。
【0003】
2005年にギリアンM.トーザーら(Gillian M.Tozer et al.)は有力雑誌Nature Rev Cancerにおいて、そのような化合物が血管内皮細胞の増殖だけでなく内皮細胞の移動にも影響を及ぼし、それにより管内皮細胞の形態を更に急速に変化させ、結果的に内皮細胞のアポトーシスをもたらすとともに血管内皮細胞間の接続を絶ち、それによって腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を急速に引き起こすことを報告している。一般に、正常な血管はすべて平滑筋細胞によって支持されるので、平滑筋細胞によって支持されない血管にのみ作用する化合物は、腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を急速且つ選択的に引き起こすにあたって平滑筋によって支持される血管には影響を及ぼさず、そのため腫瘍細胞に更に選択的に作用し、正常な細胞に対する毒性を大幅に低減する(Nat rve Canaer.2005 Jun; 5(6) 423-35, J. Clin. Invest., Novenber 1,2005; 115(11): 2992-3006参照)。かかる薬剤は現在最も有望な抗腫瘍剤の1つと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/031333A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6054598号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Expert Opin Investig Drugs. 2004 Sep; 13(9) 1171-82
【非特許文献2】Nat rve Canaer.2005 Jun; 5(6) 423-35, J. Clin. Invest., Novenber 1,2005; 115(11): 2992-3006
【非特許文献3】Cushman, Mark et al., "Synthesis and evaluation of analogs of (Z)-1-(4-methoxyphenyl)-2-(3, 4, 5-trimethoxyphenyl)ethane as potential cytotoxic antimitotic agents", Journal of Medicinal Chemistry, 1992, Vol.35, No.12, 2293-306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、このような薬剤に関する国内外のすべての研究の中で臨床研究が進められているのはコンブレタスタチンA‐4ジフェニルエチレン化合物だけであり、国際公開第2008/031333A1号パンフレット(発明の名称:「ethoxycombretastatin and preparation and uses of prodrug thereof」)には、コンブレタスタチンA‐4のジフェニルエチレンB芳香環4’位のアルコキシを活性作用部位とし、ジフェニルエチレンB芳香環4’位の元のメチルをエチルに修飾して、3’位にヒドロキシ、アミノおよびその他の基を有する活性標的を形成することができ、したがってその腫瘍血管に関する標的活性を増強し得ることが開示されている。しかしながら、二重結合連結の故に、コンブレタスタチンのシス配列内のファミリーユニットは腫瘍血管に対して最も効果的な損傷を与える一方、トランス配列内のファミリー化合物は腫瘍に対して何ら阻害作用を及ぼさない。シス‐トランス異性化反応が存在するため、トランス配列はいくつかの毒作用および副作用を除いて何ら薬効をもたらさない。そのため、分離および精製技術の要件が高く、カラムクロマトグラフィが必要となり、原料の消費が大きく、技術的コストが高く、収率が低く、同時にジフェニルエチレン化合物は紫外照明に当たるとトランス配列に変換されるため、日光を避け低温で保管する必要がある。それ故、ジフェニルエチレン化合物の保管および実用は極めて困難である。
【0007】
文献(Cushman, Mark et al., "Synthesis and evaluation of analogs of (Z)-1-(4-methoxyphenyl)-2-(3, 4, 5-trimethoxyphenyl)ethane as potential cytotoxic and antimitotic agents", Journal of Medicinal Chemistry, 1992, Vol.35, No.12, 2293-306)には化合物、すなわち(Z)‐1‐(3,4,5‐トリメトキシ)フェニル‐2‐(4’‐エトキシ)フェニルエチレンが開示されているが、相乗作用的な活性標的を‐OHのような置換基として形成することができず、‐NH2が3’位に存在せず、抗がん剤効果は4’位の4’‐メトキシ、エトキシ、プロポキシから漸減する。また、米国特許SU第6054598号には、2‐メトキシエストラジオールを2‐エトキシエストラジオールに修飾するための合成方法が開示されており、2‐エトキシエストラジオールは2‐メトキシエストラジオールの1000倍程度のインビトロ抗がん活性を含む。更に、諸種の研究から、例えば、エトキシジフェニルエタン誘導体、4’位のエトキシ、および3’位のヒドロキシ、アミノは(ethoxydiphenylethane derivatives, 4’-ethoxy and 3’-hydroxy, amino)、同じ相乗効果を有し、抗がん効果を明白に高める可能性があるが、4’位をプロポキシで修飾するとその抗がん効果が著しく低下することが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の内容:
1.本発明は、式(I)として示される構造を有するエトキシジフェニルエタン誘導体を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Rはヒドロキシ、アミノ、ホスフェート、サルフェート、コリンホスフェート、またはアミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩である。
【0011】
前記Rは、好ましくは、ヒドロキシ、アミノ、ジナトリウムホスフェート塩、アンモニウムホスフェート塩、サルフェート塩、コリンホスフェート分子内塩、天然アミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]およびその水溶性アンモニウム塩である。
【0012】
好ましい実施形態において、前記Rは‐OH、‐NH2、‐OPO2Na2、‐NHCOCH2NH2または‐NHCOCHNH2CH2OHである。
【0013】
2.本発明は、式(I)による前記化合物中のヒドロキシエトキシジフェニルエタン誘導体の製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、次式の4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドをブロムエチルによってエトキシ化して次式の4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドIIIを形成するステップと、
【0014】
【化2】
【0015】
(2)メタ位のメチルをリチウムジフェニルホスフィドによって選択的に除去し、ヒドロキシに変換して次式の4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドIVを得るステップと、
【0016】
【化3】
【0017】
(3)前記4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドIVをベンジルクロライドによって次式の4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドVに調製するステップと、
【0018】
【化4】
【0019】
(4)3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミドテトラヒドロフラン溶液および4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドにカリウムtert‐ブトキシドを加えながらビニル基導入(vinylation addition)して、次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンVIを合成するステップと、
【0020】
【化5】
【0021】
(5)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンVIをパラジウム炭素下で水素化してオレフィン結合を水素化し、脱ベンジル化を実施して次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタンVII(以下、コード:ECB1と呼ぶ)を得るステップとを含み、
【0022】
【化6】
【0023】
(6)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化、リン酸エステル化および硫酸化を経てエトキシヒドロキシジフェニルエタン水溶性誘導体、すなわちジナトリウムホスフェート塩、サルフェート塩、アンモニウムホスフェート塩またはコリンホスフェート分子内塩を形成し、
(7)ECB1は、リン酸化剤オキシ塩化リンおよび2mol/LのNaOHの作用下で3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩VII(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)を形成し、
【0024】
【化7】
【0025】
(8)別の好ましいリン酸エステル化は、ECB1がジベンジルホスフェートと反応してベンジルホスフェートを形成し、ナトリウムメトキシド/無水メタノールをトリメチルブロモシラン(TMBS)下で加えて3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)を得ることを特徴とする、方法を開示する。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態は、式(I)による前記化合物中のアミノエトキシジフェニルエチレンの製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、次式のとおり4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドIXをブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドXを形成するステップと、
【0027】
【化8】
【0028】
(2)トリメトキシフェニルブロミドトリフェニルホスホニウムメチリドおよび前記4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドXをウィッティヒ反応させて次式の3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXIを生成するステップと、
【0029】
【化9】
【0030】
(3)前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXIをパラジウム炭素触媒/水素化ホウ素ナトリウム下で水素化還元して、ニトリルをアミノに還元し、オレフィン結合をエタン単結合に還元することにより次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXII(以下、コード:ECB1Nと呼ぶ)を得るステップとを含み、
【0031】
【化10】
【0032】
(4)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)およびアミノ酸誘導体を反応させて、下記のアミノ酸アミド側鎖:天然アミノ酸側鎖、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]を有するエトキシアミノジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体(ethoxyaminodiphenylethane amino acid amide derivative having the amino acid amide side chain as below: natural amino acid side chain, or -NH(COCHR’NH)m-H(wherein R’ is hydrogen, phenyl, and m represents an integer from 1 to 3) を形成し、
(5)ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド(DCC)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)またはベンゾトリアゾール‐1‐イル‐オキシ‐トリス(ジメチルアミノ)‐ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP剤)の触媒下で、前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIIをNa‐9‐フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸誘導体(Fmoc AA)と反応させ、3’位のアミノをFmoc‐アミノ酸アミドに変換し、Fmocを除去してECB1Nのアミノ酸アミドを生成し、前記ECB1Nは、それぞれ3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIII(以下、コード:ECB1GNと呼ぶ)および3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIV(以下、コード:ECB1SNと呼ぶ)であり、
【0033】
【化11】
【0034】
(6)前記アミノ酸アミド誘導体をメタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に溶解させ、当量の塩酸、硫酸もしくはリン酸および石油エーテルもしくはn‐へキサンを加えて前記誘導体を希釈して水溶性アンモニウム塩を形成する、製造方法を提供する。
【0035】
3.本発明の製剤の形態は、静注投与される凍結乾燥粉体、粉体、注射、リポソーム、エマルション、マイクロカプセル、懸濁液もしくは溶液、または経口投与される顆粒、錠剤、カプセルもしくはシロップ、または坐剤からなる群から選択される。
【0036】
4.チューブリン凝集阻害剤を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を提供する。
【0037】
5.抗腫瘍血管退化剤(anti-tumor angiolysis agent)として様々な腫瘍に関する血管標的効果を有する医薬を製造する際の式(I)による化合物の使用を提供する。様々な腫瘍は主に、肺癌、非小細胞肺癌、肝癌、膵癌、胃癌、骨癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、皮脂腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌腫(腺様嚢胞癌)(cystic adenoic carcinoma)、嚢胞癌(cystocarcinoma)、髄様癌、細気管支癌、骨細胞癌、上皮性癌腫、胆管癌、絨毛癌、胚性癌腫、精母細胞腫(spermatocytoma)、胎児性腺筋肉腫(embryonal adenomyosarcoma)、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血球母細胞腫、声帯神経腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、視神経芽細胞腫(opticneuroblastoma)、網膜芽細胞腫、神経線維腫、線維肉腫、線維芽細胞腫、線維腫、線維腺腫、線維軟骨腫、線維嚢腫、線維粘液腫、線維骨腫、線維粘液肉腫、線維乳頭腫、粘液肉腫、粘液嚢腫、粘液軟骨腫、粘液軟骨性肉腫、粘液軟骨線維肉腫、粘液腺腫、粘液芽細胞腫、脂肪肉腫、脂肪腫、脂肪腺腫、脂肪芽細胞腫、脂肪軟骨腫、脂肪線維腫、脂肪血管腫、粘液脂肪腫、軟骨性肉腫、軟骨腫、軟骨筋腫、脊索腫(notochordoma)、絨毛膜腺腫、絨毛上皮腫(chorionepithelioma)、絨毛上皮腫(chorionic epithelioma)、骨肉腫、骨芽細胞腫、骨軟骨線維腫、骨軟骨肉腫、骨軟骨腫、骨嚢腫、骨象牙質腫、線維骨腫、骨線維肉腫、血管肉腫、血管腫、血管脂肪腫、血管軟骨腫、血管芽腫、角化血管腫、血管神経膠腫、血管肉腫、血管線維腫、血管筋腫、血管脂肪腫、血管リンパ管腫、血管脂肪平滑筋腫、血管筋脂肪腫、血管筋神経腫、血管粘液腫、血管細網内皮腫(angioreticuloendothelioma)、リンパ管肉腫、リンパ肉芽腫、リンパ管腫、リンパ節腫、リンパ粘液腫、リンパ肉腫、リンパ管線維腫、リンパ細胞腫、リンパ上皮腫、リンパ芽細胞腫、内皮腫、内皮芽細胞腫(endoblastoma)、滑膜腫、滑膜肉腫、胎児性中皮腫、肥満細胞腫(mesocytoma)、ユーイング腫瘍、平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋線維腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、横紋筋粘液腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性疾患による細胞増多および赤血球増加症(chronic disease cytosis and erythrocytosis)、リンパ腫ならびに多発性骨髄腫からなる。
【0038】
6.異常な血管新生に起因する疾患を治療するための医薬を製造する際の式(I)による化合物の使用を提供する。これらの疾患は主に、リウマチ性関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児性網膜症、網膜静脈閉塞症、乾癬、酒さ、カポージ肉腫、特異反応性(specific reaction)角膜炎、流行性角結膜炎、血管新生緑内障、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペスウイルス感染症、帯状疱疹ヘルペスウイルス感染症、原虫感染症、マイコバクテリウム感染症、多発動脈炎、肉芽腫性病変(類肉腫)、強膜炎、ルベオーシス、ドライマウスおよびドライアイの兆候を伴う関節炎症候群、全身紅はん性エリテマトーデス、後天性免疫不全症候群ならびに梅毒からなる。
【0039】
7.式(I)による化合物の薬剤効果、安全性評価および陽性対照は下記のとおりである。
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐メトキシジフェニルエチレンXV(以下、コード:CA4と呼ぶ);
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐メトキシジフェニルエチレン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XVI(以下、コード:CA4Pと呼ぶ);
【0040】
【化12】
【0041】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐メトキシジフェニルエチレンXVII(以下、コード:CA4Nと呼ぶ);
【0042】
【化13】
【0043】
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐メトキシジフェニルエタンXVIII(以下、コード:CB1と呼ぶ)
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐メトキシジフェニルエタン3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XIV(以下、コード:CB1Pと呼ぶ);
【0044】
【化14】
【0045】
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐メトキシジフェニルエタンXX(以下、コード:CB1Nと呼ぶ)
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXXI(以下、コード:CB1GNと呼ぶ)
【0046】
【化15】
【0047】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXXII(以下、コード:ECA4と呼ぶ);
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XXIII(以下、コード:ECA4Pと呼ぶ);
【0048】
【化16】
【0049】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXXIV(以下、コード:ECA4Nと呼ぶ);
(Z)‐3、4、5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXXV(以下、コード:ECA4GNと呼ぶ)
【0050】
【化17】
【0051】
8.式(I)による化合物の薬剤効果および安全性評価結果は下記のように結論付けられる。
(1)インビトロ培養腫瘍細胞の抗腫瘍活性評価結果は、比較により、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1N、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4およびECA4Nは、複数のインビトロ培養腫瘍細胞に対して明白且つ基本的に等価な抗腫瘍活性を有し、それらの抗腫瘍活性は4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nのそれよりも顕著に(約10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1Nは4’位のメトキシ陽性対照CB1よりも約200倍強力となり、ECB1は陽性対照CB1よりも約100倍強力となる。
(2)固形腫瘍の成長は血管系に依存し、急速増殖下の腫瘍血管内皮細胞の一部は、完全な筋フィラメント構造の不足により完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高く、増殖性のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の急速増殖は、完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高い。したがって、通常は微小管が腫瘍血管内皮細胞のインビトロモデルとして使用され、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がエトキシジフェニルエタン誘導体の抗腫瘍血管特性を評価するための作用対象として使用される。6.8×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1Nおよび7.5×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1は、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖阻害効果を有し、そのため4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1N(4.8×10−3〜7.7×10−3のIC50を有する)よりも間違いなく強力なチューブリン凝集阻害剤を提供する。このことはエトキシジフェニルエタン誘導体が潜在的に非常に強力な腫瘍血管標的薬剤となることを示す。
(3)マウスのS180肉腫移植腫瘍に対するインビボ静注試験薬剤の腫瘍阻害率実験結果から、この投与提案によれば、すべての被検化合物がマウスのS180肉腫移植腫瘍の成長を明白に阻害することができ、薬剤投与後8日目前後に、比較により4’位のエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩は、どちらも薬剤投与群で腫瘍収縮の傾向を示し、50mg/kgの投与量では腫瘍阻害率が60%超に達し、それぞれ基本的に等価な治療効果を有する。これらの治療効果はメトキシ陽性対照CB1GN塩酸塩、CB1PおよびCA4Pの治療効果、すなわち100mg/kgの投与量で約40%の腫瘍阻害率よりも明らかに優れている。
(4)単回のマウス腹腔内注射投与の急性毒性試験では、高用量注射投与により40分後および1時間後にマウスが死ぬようにし、解剖後に明白な残留液体は確認されなかった。このことは薬剤の高速吸収を示す。他のマウスは主に投与後1〜2日目に死んだが、5日目以降はマウスの死は観察されなかった。死亡したマウスの心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓および他の器官の異常は解剖で発見されず、生存したマウスは重度でない下痢を起こした。このことは主に被検薬剤が明白な遅延毒性のない急性毒性反応をもたらすことを示す。したがって、この試験結果は、エトキシジフェニルエタン化合物ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩の投与群の毒性がエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩のそれよりも低いことを示している。
【0052】
9.本発明の研究から、エトキシジフェニルエタン化合物、すなわち式(I)による化合物は、ジフェニルエタンB芳香環4’位の元のメトキシをエトキシに修飾することにより、3’位にヒドロキシおよびアミノを有する活性標的を形成することができ、その腫瘍血管標的活性を、B芳香環4’位に元のメトキシ基を、3’位にヒドロキシ基およびアミノ基を有するメトキシジフェニルエタン化合物と比較して大幅に増強させ得ることが分かった。この実験は、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1Nがどちらも複数のインビボ培養腫瘍細胞に関する明白な抗腫瘍活性を有し、4’位のエトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nよりも顕著に(10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1Nは陽性対照CB1よりも約200倍強力であり、ECB1は陽性対照CB1よりも約100倍強力であることを示している。
【0053】
化合物がジフェニルエチレン化合物のコンブレタスタチンA‐4と異なる構造、配座、結合力および反転効果を有するように、且つシス‐トランス配列差が存在しないように2つのベンゼン環を単結合によって連結させる。また、毒性を低下させながら薬剤安定性を大幅に増加させることができ、製造技術をより良い形に簡略化することができる。また、カラムクロマトグラフィ分離が必要なくなり、技術収率が顕著に改善し、原料の消費が相当減少し、ユニット合成の技術的コストも大幅に削減され、薬剤安定性が増加し、光を避けた保管も必要なくなり、保管および実用の便宜性が大きく向上し、予想外の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ヒドロキシエトキシジフェニルエタン化合物およびその水溶性プロドラッグの合成経路を示す図である。
【図2】アミノエトキシジフェニルエタン化合物およびそのアミノ酸アミド誘導体の合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
[実施形態1]
4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドの調製:
【0056】
76グラムの4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(0.5mol)および500mLのイソプロパノールを4口フラスコに加え、次いで20分間攪拌し、定圧滴下漏斗を使用して6.5グラムの18‐クラウン‐6‐エーテルおよび133グラムの水酸化ナトリウムを含む150ミリリットルの水溶液をゆっくりと滴下し、攪拌を30分間行い、反応系を60℃まで加熱した。ここでは、TLC追跡を実施しながら85グラムのブロムエチルを反応のために5〜6時間滴下し、反応終了後に反応系を(15℃まで)冷却し、これに500mLの水を加えて反応を停止させ、生成物をエーテル(3×300mL)で抽出し、有機相を中性になるまで水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、エーテルを部分蒸留し、大量の石油エーテルを加えて粗生成物を沈殿させ、この粗生成物をエーテル/石油エーテルで再結晶化させ、83グラムの4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドを得た。収率は92%であった。
【0057】
[実施形態2]
4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドの調製
【0058】
ステップ1:アルゴン保護下で、54グラムの4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(0.3mol)を3口フラスコに加え、次いでこのフラスコに130グラムのエチレングリコール(2.1mol)および133グラムのオルトギ酸ジエチル(0.9mol)を加えて約100℃で還流させ、触媒として1mlの三フッ化ホウ素エーテル溶液を加えた。反応はTLC追跡を実施しながら24時間実施し、反応生成物を室温まで冷却し、200mlの15%水酸化ナトリウム水溶液を加え、その後300mlのエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エチレングリコールおよびオルトギ酸トリエチルの減圧蒸留を利用して黄色の油状物を得た。
【0059】
ステップ2:56グラムのアセタール(0.25mol)を200mlの1.28Mリチウムジフェニルホスフィドテトラヒドロフラン溶液にバッチ単位で加え、TLC追跡を実施しながら室温で3時間〜4時間攪拌を行い、水を加えて反応を停止させ、反応生成物に200mlの30%水酸化ナトリウム溶液を加え、次いで300mlのエーテルで抽出し、塩酸によって酸性化し、約3〜4までpH調整し、最後に500mlのエーテルで抽出し、エーテル抽出液を混合し、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒の減圧除去を利用して黄色の固体を得た。その後この固体をベンゼン/石油エーテルで再結晶化させて38.1グラムの黄色がかった結晶を得た。収率は76%であった。
【0060】
[実施形態3]
4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドの調製:
【0061】
16.6グラムの4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(100mmol)および200mlの無水エチルアルコールを3口フラスコに加え、次いで溶解させるために40℃まで加熱し、9グラムの炭酸カリウム(65.07mmol)を加え、15mlのベンジルクロライド(130.13mmol)を攪拌下で加え、加熱還流を1時間行い、TLCで完全反応が検出された後に反応生成物を50℃まで冷却し、次いでそれが熱いうちに濾過し、濾液を一晩冷蔵庫に入れて冷却し、結晶を分離し、ポンプ濾過にかけ、瀘過ケーキを30mLの無水エチルアルコールによって洗浄し、その後真空乾燥して21.5グラムの白色の針状結晶を得た。収率は83.9%であった。
【0062】
[実施形態4]
3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンの調製
【0063】
3口瓶に20グラムの3,4,5‐トリメトキシトリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミド(3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンホスホニウムブロミド)および150mlのテトラヒドロフランを加え、懸濁液を攪拌して10.5グラムの4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒド(41.0mmol)を70mlのテトラヒドロフラン中に溶解させ、そのテトラヒドロフランを容量100mlの滴下漏斗に入れ、7.5グラムの固体カリウムtert‐ブトキシド(66.5mmol)を反応フラスコに加え、反応系を血紅色(sanguine)に変化させ、室温で5分間攪拌を行い、4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドの溶液をゆっくり滴下し、再度室温で20分間攪拌を行い、TLCで完全反応が検出された後に反応生成物を容量500mlの分離漏斗に注入し、溶液に140mlの脱イオン水を加えて層化させ、その後抽出のために300ml×2のエーテルを加え、エーテル層を併合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、瀘過ケーキを50mLのエーテルで洗浄し、濾液を回転蒸発器の濃縮により乾燥させて25グラムの油状物を得た。この油状物に20mLの無水エチルアルコールを加え、その後ポンプ濾過にかけて14.1グラムの黄色がかった固体を得た。この黄色がかった固体を丸底フラスコに入れ、25mlの無水エチルアルコールを加え、その後加熱を利用して固体を部分的に溶解させ、室温で攪拌し、ポンプ濾過にかけ、瀘過ケーキを10mlの無水エチルアルコールで洗浄し、その後赤外線ランプで乾燥させて10.6グラムの純粋な3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン、すなわち黄色がかった粉末状固体を得た。収率は61.6%であった。
【0064】
[実施形態5]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1と呼ぶ)の調製
【0065】
ステップ1:10.6グラムの純粋な3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ベンジルオキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(25.8mmol)を3口フラスコに加え、200mlのエチルアセテートおよび120mlの無水エチルアルコール中に溶解させ、結果として得られた黄色がかった溶液に1.0グラムの5%パラジウム炭素を加え、水素を攪拌下で供給し、溶液を室温で1時間撹拌し、その後濾過して無水溶液を得た。この無水溶液を回転蒸発器の濃縮により乾燥させて8.06グラムの油状物、すなわち3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタンの粗生成物を得た。収率は96.8%であった。
【0066】
ステップ2:8.06グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタンの粗生成物を丸底フラスコに加え、40mlの無水エチルアルコール中に溶解させ、不溶物があればそれらを濾過によって除去し、溶液を室温で静置しながら結晶を析出させ、一晩静置して溶媒を完全に揮発させると、大量の白色結晶が析出した。これらの白色結晶を濾過し、瀘過ケーキをエタノールで洗浄して6.7グラムの白色結晶を得た。収率は83%であった。
【0067】
[実施形態6]
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)の調製(リン酸エステル化1)
【0068】
4.4mlのオキシ塩化リン(47.4mmol)および25mlのジクロロメタンを丸底フラスコに加え、10mlのジクロロメタン中5グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ヒドロキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(15.1mmol)から得られた溶液を滴下し、次いで攪拌を5分間行い、5mlのジクロロメタン中3.3mlのトリエチルアミン(23.8mmol)から得られた溶液を滴下し、その後室温で3時間攪拌し、TLC検出し、完全反応後に急冷のために100mlの冷水を加えた。十分な振動を利用して有機相を分離させ、50mL×2の水で洗浄し、ジクロロメタンで水相を抽出した後に有機相を併合し、適当な量の無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させ、ポンプ濾過にかけ、濾液を減圧蒸留にかけて溶媒の濃い液体を除去し、氷浴の冷却下で混合溶液のpHが8〜10に達するまで2mol/LのNaOH溶液を攪拌下で加え、攪拌を65℃で8時間行い、不溶物を濾過によって除去し、溶液の大部分を減圧蒸留にかけ、冷却によって結晶を析出させて白色固体、すなわち3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩の粗生成物を得た。この粗生成物を加熱によってエタノール中に溶解させ、生成物が溶解したエタノールを熱いうちに濾過して不溶性の固体を除去し、濾液を冷却して結晶を析出させ、約5.6グラムの白色結晶化生成物、すなわち純粋な生成物を得た。収率は81.6%であった。
1H‐NMR(ppm)δ:7.33(d、1H、2’‐H);6.89(d、1H、6’‐H);6.67(d、1H、5’‐H);6.58(s、2H、2、6H);4.18(2H、q;‐OCH2);3.80(s、3H、4‐OCH3);3.76(s、6H、3、5‐OCH3);2.82(d、1H、J=13.2Hz、la‐H);2.79(d、1H、J=13.3Hz、la’‐H);1.52(3H、t;‐CH3)。
13C NMR(ppm)δ:14.9、37.8、38.2、56.1、56.3、64.7、105.3、114.3、115.2、138.4、121.6、132.2、133.8、145.0、150.1、136.7。
【0069】
[実施形態7]
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)の調製(リン酸エステル化2)
【0070】
ステップ1:アルゴン雰囲気下で、4.2グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ヒドロキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(12.6mmol)を4口フラスコに加え、次いで40mLの乾燥アセトニトリルで溶解させ、−2.5℃まで冷却し、次いで6mlの四塩化炭素を加え、攪拌を5分間続けた後、4.7mlのジイソプロピルエチルアミンおよび0.15グラムの4‐ジメチルアミノピリジンを加え、1分後に4mlのジベンジルホスフェート(80%)をゆっくりと加え、温度を−10℃未満に保ち、TLC追跡を実施しながら3.5時間連続で反応させ、完全反応時に10mの10.5M KH2PO4を加え、その後温度を室温まで自然に上昇させ、酢酸エチルで抽出し、有機層を併合し、蒸留水および飽和食塩水で逐次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧蒸留にかけて濁った油状物を得た。この油状物を酢酸エチル‐n‐ヘキサンによって再結晶化させて6.6グラムの無色の針状結晶を得た。収率は88%であった。
【0071】
ステップ2:結果として得られた6.5グラムのベンジルホスフェート(10.8mmol)を4口フラスコに加え、25mlの乾燥無水アセトニトリルで溶解させ、15℃のアルゴン雰囲気下で攪拌を行い、4.5mlのトリメチルブロモシラン(TMBS)を急速に滴下し、5分後〜10分後に1.8グラムのナトリウムメトキシドを含有した7mlの無水メタノール溶液を加え、それにより反応系を乳白色の懸濁液に直ちに変化させ、30分後に3.6mlの無水メタノールおよび3.6mlのアセトンを加え、懸濁液を攪拌下で一晩置き、その後ポンプ濾過して白色固体を得た。この白色固体を無水メタノールおよびアセトンで洗浄し、その後真空乾燥させた。水/メタノール/アセトンによる再結晶化を利用して4.1グラムの白色粉体を得た。収率は83.6%であった。
【0072】
1H‐NMR(ppm)δ:7.34(d、1H、2’‐H);6.88(d、1H、6’‐H);6.68(d、1H、5’‐H);6.60(s、2H、2、6H);4.20(2H、q;‐OCH2);3.76(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.81(d、1H、J=13.6Hz、la‐H);2.79(d、1H、J=13.6Hz、la’‐H);1.54(3H、t;‐CH3)。
13C NMR(ppm)δ:14.8、37.8、38.3、56.1、56.3、64.6、105.5、114.6、115.3、138.3、121.7、132.4、133.8、145.1、150.1、136.7。
【0073】
[実施形態8]
4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドの調製
【0074】
83.5グラムの4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(0.5mol)、668mLのN,N‐ジメチルホルムアミド、167グラムの炭酸カリウムおよび8.35グラムの18‐クラウン‐6‐エーテルを4口フラスコに加え、55〜65℃の温度で攪拌し、TLC追跡を実施しながら約80グラムのブロムエチルを反応のために5〜6時間加え、反応終了時に反応生成物を40℃まで冷却し、反応を停止させるために600mlの純水を加え、反応生成物をエーテル(3×300mL)で抽出し、有機相を中性になるまで水で洗浄し、その後無水MgSO4で乾燥させ、エーテルを部分蒸留し、大量の石油エーテルを加えて粗生成物を沈殿させ、この粗生成物をエーテル/石油エーテルで再結晶化させ、80.9グラムの4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドを得た。収率は83%であった。
【0075】
[実施形態9]
3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンの調製
【0076】
アルゴン保護下で、15グラムのトリメトキシフェニルトリフェニルホスホニウムブロミドメチリド(trimethoxyphenyl bromide triphenylphosphonium methylide)(28.7mmol)を約−15℃の温度に冷却した300mlのTHF中で懸濁させ、22mlのn‐ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(1.6mol/L)を反応のために1時間滴下した。TLC追跡を実施しながら5.7グラムの4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(29mmol)を含有した24mlのTHF溶液を反応物中にゆっくりと滴下し、その後一晩攪拌し、反応温度を室温まで上昇させ、溶液の温度を−5℃まで下げ、反応を停止させるために飽和食塩水を加え、有機層を分離させ、溶媒の3/4を除去し、残りの母溶液の4倍程度の量の無水エチルアルコールを再結晶化のために0〜−5℃の温度で加え、濾過を利用して6.8グラムの黄色がかった物質を得た。収率は65%であった。
【0077】
[実施形態10]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1Nと呼ぶ)の調製
【0078】
100mlの水、0.5グラムの10%パラジウム炭素触媒、および150mlの水中に溶解させた8グラムの水素化ホウ素ナトリウムから得られた溶液を反応フラスコに加え、この反応フラスコに窒素を供給し、6.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ニトリル‐4‐エトキシジフェニルエチレン(16.6mmol)を攪拌下で滴下して250mlのNaOHから得た2mol/Lの溶液中に溶解させ、この滴下工程を約20分間続け、その後溶液を濾過し、濾液を2mol/LのHCLで酸性化して過剰な水素化ホウ素ナトリウムを分解し、次いで希釈NaOHで中和させ、最後にエーテル(100ml×4)で抽出し、エーテル抽出液体を混合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させてエーテルを蒸留し、n‐ヘキサン:酢酸エチルの約9:1の比率による再結晶化を利用して4.8グラムの無色の結晶を得た。収率は83%であった。
【0079】
1H‐NMR(ppm)δ:7.14(d、1H、2’‐H);6.88(d、1H、6’‐H);6.68(d、1H、5’‐H);6.60(s、2H、2、6−H);4.48(brs、2H、NH2);4.08(q、2H、‐CH2);3.77(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.85(d、1H、J=12.5Hz、la‐H);2.78(d、1H、J=12.5Hz、la’‐H);1.56(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):331(M+);高分解能質量分析法、計算値:331.1784、実測値:331.1753。
【0080】
[実施形態11]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIII(以下、コード:ECB1GNと呼ぶ)の調製
【0081】
ステップ1:4.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシフェニル‐ジフェニルエタン(14.5mmol)、5.27グラムのFmoc‐グリシン(17.8mmol)および25グラムのBOP試薬を100mlのDMF中に溶解させ、反応混合物を攪拌下で60℃まで加熱し、TLC追跡を実施しながら2時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように100mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えた。この混合物を120ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮を利用して6.6グラムの白色物質を得た。収率は75%であった。
【0082】
ステップ2:上記で得た6.6グラムの3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐Fmoc‐グリシンアミド(10.8mmol)を120mlのメタノール中に溶解させ、次いでTLC追跡を実施しながらこのメタノールに6mlの2N水酸化ナトリウム溶液を攪拌下で加え、これを3時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように60mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、この混合物を150ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、まず濾過を利用し次いで減圧濃縮を利用して3.2グラムの白色粉状物を得た。収率は77%であった。
【0083】
1H‐NMR(CDCl3、500M)δ:9.54(brs、1H、‐NH);7.04(d、1H、2’‐H);6.92(d、1H、6’‐H);6.78(d、1H、5’‐H);6.65(s、2H、2、6H);4.77(brs、2H、Cly‐NH2);4.20(brs、2H、G1 y‐CH2);4.02(q、2H、‐CH2);3.76(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.88(d、1H、J=12.8Hz、la‐H);2.78(d、1H、J=12.8Hz、la’‐H);1.55(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):338(M+);高分解能質量分析法、計算値:338.1998、実測値:338.1945。
【0084】
[実施形態12]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1SNと呼ぶ)の調製
【0085】
ステップ1:4.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシフェニル‐ジフェニルエタン(14.5mmol)、6.5グラムのFmoc‐セリン(17.8mmol)、3.7グラムのDCC(ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド)(17.8mmol)および2.7グラムのHOBt(1‐ヒドロキシ‐ベンゾ‐トリアゾール)を90mlのDMF中に溶解させ、TLC追跡を実施しながら反応混合物を室温で5時間攪拌下で反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように60mlの酢酸エチルを加え、この混合物を濾過し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮を利用して6.5グラムの白色物質を得た。収率は74%であった。
【0086】
ステップ2:上記で得た6.5グラムの物質を70mlのメタノールおよび70mlのジクロロメタンの混合溶媒中に溶解させ、この混合溶媒に12mlの2N水酸化ナトリウム溶液を攪拌下で加え、TLC追跡を実施しながら室温で24時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように670mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、この混合物を150ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、まず濾過を利用し次いで減圧濃縮を利用して3.3グラムの白色粉状物を得た。収率は79%であった。
【0087】
1H‐NMR(CDCl3、500M)δ:9.65(brs、1H、‐NH);7.06(d、1H、2’‐H);6.90(d、1H、6’‐H);6.76(d、1H、5’‐H);6.66(s、2H、2、6H);5.27(brs、2H、Ser‐NH2);4.50(brs、2H、Ser‐OH);4.19(q、2H、‐CH2);3.93(m、1H、Ser‐CH);3.86(s、3H、4‐OCH3);3.80(s、6H、3、5‐OCH3);2.92(d、1H、J=13.2Hz、la‐H);2.85(d、1H、J=13.2Hz、la’‐H);2.67(m、2H、Ser‐CH2);1.54(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):418(M+);高分解能質量分析法、計算値:418.2104、実測値:418.2114。
【0088】
[実施形態13](インビトロ培養腫瘍細胞に関する抗腫瘍活性評価)
【0089】
1.試験方法
200mL/Lのウシ胎児血清を含有するRPMI 1640培養液で細胞を終始対数期となるように培養し、96ウェルプレートに4〜8×104/mlの密度(HUVEC密度3×104/mL)で接種し、6つの濃度を有する薬剤の投与を37℃で48時間連続的に与え、薬剤毎に3つの二重ウェルがある場合は前培養後24時間連続的に与え、培養液を分離させ、空気乾燥し、各ウェルに500g/Lの濃度(最終的な濃度は100g/L)で50μLの冷たいトリクロロ酢酸を加え、その後60分間固定し、次いで脱イオン水で4〜5回洗浄し、最後に乾燥させ、各ウェルに4g/Lの濃度のSRBを100μL加えて30分間作用させ、その後10ml/Lの酢酸で優しく4回洗浄し、乾燥させ、各ウェルを均一に振り混ぜるために各ウェルに200μLのTrisベース(10mmol)を加え、平坦な振動子上で5分間振動させ、値AをELISA(enzyme linked immunosorbent assay:酵素結合免疫吸着法)リーダによって判定し、490nmの波長でブランクコントロールによりゼロセットし、腫瘍阻害率(%)=(薬剤なし細胞対照ウェル値Aの平均値−薬剤塗布ウェル値Aの平均値)/(薬剤なし細胞対照ウェル値Aの平均値)×100%、陽性対照をCA4、CB1およびCB1Nとし、ロジット法に基づいて、IC50を様々な濃度下の薬剤の細胞成長阻害率に従って計算した。
【0090】
2.試験結果:
比較により、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1N、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4およびECA4Nは、複数のインビトロ培養腫瘍細胞に対して明白且つ基本的に等価な抗腫瘍活性を有し、それらの抗腫瘍活性は4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nのそれよりも顕著に(約10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1NはCB1よりも約200倍強力となり、ECB1はCB1よりも約100倍強力となる。
【0091】
固形腫瘍の成長は血管系に依存し、急速増殖下の腫瘍血管内皮細胞の一部は、完全な筋フィラメント構造の不足により完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高く、増殖性のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の急速増殖は、完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高い。したがって、通常は微小管が腫瘍血管内皮細胞のインビトロモデルとして使用され、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がエトキシジフェニルエタン誘導体の抗腫瘍血管特性を評価するための作用対象として使用される。6.8×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1Nおよび7.5×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1は、4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1N(4.8×10−3〜7.7×10−3のIC50を有する)よりも明白に強力なヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖阻害効果を有する。このことはエトキシジフェニルエタン誘導体が潜在的に非常に強力な腫瘍血管標的薬剤となることを示す。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施形態14](マウスのS180肉腫移植腫瘍に対するインビボ静注試験薬剤の腫瘍阻害率実験)
【0094】
1.実験方法:
1週間の適応期間後、マウスにS180肉腫組織を皮下接種し、腫瘍が100〜300mm3程度の面積まで成長した後にマウスをランダムに分類し;すべての化合物を薬剤投与群では6匹のマウス、対照群では12匹のマウスに使用し、投与量はECB1P、ECB1GN塩酸塩、ECB1SN塩酸塩および陽性対照ECA4P、ECA4GN塩酸塩を25、50mg/kg、陽性対照CB1GA塩酸塩、CB1PおよびCA4Pを50、100mg/kgとし、d0日目、d2日目、d4日目、d6日目、d8日目、d10日目およびd12日目に合計7回静注投与を与え、腫瘍容積の測定、マウスの秤量およびデータの記録を週に3回実施し、マウスを接種後14日目に屠殺し、腫瘍組織を秤量して腫瘍阻害率を下記のとおり計算した。
腫瘍阻害率%=(1−治療群の平均腫瘍質量/対照群の平均腫瘍質量)×100%
【0095】
2.実験結果:
この投与提案によれば、上記のすべての化合物がマウスのS180肉腫移植腫瘍の成長を明白に阻害することができ、薬剤投与後8日目前後に、比較により4’位のエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩は、どちらも薬剤投与群で腫瘍収縮の傾向を示し、50mg/kgの投与量では腫瘍阻害率が60%超に達し、それぞれ基本的に等価な治療効果を有する。これらの治療効果はメトキシ陽性対照CB1GN塩酸塩、CB1PおよびCA4Pの治療効果、すなわち100mg/kgの投与量で約40%の腫瘍阻害率よりも明らかに優れている。
【0096】
【表2】
【0097】
[実施形態15](単回マウス腹腔内注射試験薬剤の急性毒性試験)
1.試験方法
昆明マウス(雌雄各半数、体重17〜22グラム)をそれぞれの体重に従ってランダムに分類し、試験ではマウスを0.9の比率に基づいて10の投与群に分け、各群はそれぞれ10匹のマウスを含み、最大投与量は1500mg/kgであり、1500、1350、1215、1093、984、885、797、717、645および581mg/kgの投与量をそれぞれ有する被検薬剤を単回腹腔内注射によって投与し、薬剤投与の0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後および24時間後にマウス診察および死亡率記録をそれぞれ一度実施し、その後毎日のマウス診察および死亡率記録を14日間続け、15日目の時点で死亡していないマウスを屠殺し、病理解剖にかけた。
【0098】
2.試験結果
単回の高用量腹腔内注射投与により40分後および1時間後にマウスが死ぬようにし、解剖後に明白な残留液体は確認されなかった。このことは薬剤の高速吸収を示す。他のマウスは主に投与後1〜2日目に死んだが、5日目以降はマウスの死は観察されなかった。死亡したマウスの心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓および他の器官の異常は解剖で発見されず、生存したマウスは重度でない下痢を起こした。このことは主に被検薬剤が明白な遅延毒性のない急性毒性反応をもたらすことを示す。したがって、この試験結果は、エトキシジフェニルエタン化合物ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩の投与群の毒性がエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩のそれよりも低いことを示している。
【0099】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤合成の分野に関するものであり、特にジフェニルエタン誘導体抗がん剤の合成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近発見された新しいチューブリン解重合(脱重合)因子は、MTDよりも低い投与量で血管閉塞を引き起こす恐れがある(Expert Opin Investig Drugs. 2004 Sep; 13(9) 1171-82参照)。2005年にロワンヴィンセントら(Loin Vincent et al.)は、血管標的薬剤(VTA)としてチューブリン骨格に損傷を与える可能性がある同様の属性を有する新しいチューブリン解重合因子を発見した。文献上のデータによると、この血管標的薬剤はVE‐カドヘリンシグナル経路を部分的に通って腫瘍血管の劣化を選択的に誘発する可能性がある。かかるチューブリン解重合因子は、腫瘍血管に選択的な損傷を引き起こす一方で、正常な血管系には影響を及ぼすことなく腫瘍の血管新生を防止する。一方、このチューブリン解重合因子は、腫瘍細胞に栄養および酸素が与えられない場合に腫瘍細胞を殺すまたは腫瘍転移を阻害する役割を果たすためにチューブリンの凝集を阻害し、腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を選択的に引き起こし、血管内皮細胞のアポトーシスを誘発することができる。
【0003】
2005年にギリアンM.トーザーら(Gillian M.Tozer et al.)は有力雑誌Nature Rev Cancerにおいて、そのような化合物が血管内皮細胞の増殖だけでなく内皮細胞の移動にも影響を及ぼし、それにより管内皮細胞の形態を更に急速に変化させ、結果的に内皮細胞のアポトーシスをもたらすとともに血管内皮細胞間の接続を絶ち、それによって腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を急速に引き起こすことを報告している。一般に、正常な血管はすべて平滑筋細胞によって支持されるので、平滑筋細胞によって支持されない血管にのみ作用する化合物は、腫瘍血管の機能不全および構造的損傷を急速且つ選択的に引き起こすにあたって平滑筋によって支持される血管には影響を及ぼさず、そのため腫瘍細胞に更に選択的に作用し、正常な細胞に対する毒性を大幅に低減する(Nat rve Canaer.2005 Jun; 5(6) 423-35, J. Clin. Invest., Novenber 1,2005; 115(11): 2992-3006参照)。かかる薬剤は現在最も有望な抗腫瘍剤の1つと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/031333A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6054598号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Expert Opin Investig Drugs. 2004 Sep; 13(9) 1171-82
【非特許文献2】Nat rve Canaer.2005 Jun; 5(6) 423-35, J. Clin. Invest., Novenber 1,2005; 115(11): 2992-3006
【非特許文献3】Cushman, Mark et al., "Synthesis and evaluation of analogs of (Z)-1-(4-methoxyphenyl)-2-(3, 4, 5-trimethoxyphenyl)ethane as potential cytotoxic antimitotic agents", Journal of Medicinal Chemistry, 1992, Vol.35, No.12, 2293-306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、このような薬剤に関する国内外のすべての研究の中で臨床研究が進められているのはコンブレタスタチンA‐4ジフェニルエチレン化合物だけであり、国際公開第2008/031333A1号パンフレット(発明の名称:「ethoxycombretastatin and preparation and uses of prodrug thereof」)には、コンブレタスタチンA‐4のジフェニルエチレンB芳香環4’位のアルコキシを活性作用部位とし、ジフェニルエチレンB芳香環4’位の元のメチルをエチルに修飾して、3’位にヒドロキシ、アミノおよびその他の基を有する活性標的を形成することができ、したがってその腫瘍血管に関する標的活性を増強し得ることが開示されている。しかしながら、二重結合連結の故に、コンブレタスタチンのシス配列内のファミリーユニットは腫瘍血管に対して最も効果的な損傷を与える一方、トランス配列内のファミリー化合物は腫瘍に対して何ら阻害作用を及ぼさない。シス‐トランス異性化反応が存在するため、トランス配列はいくつかの毒作用および副作用を除いて何ら薬効をもたらさない。そのため、分離および精製技術の要件が高く、カラムクロマトグラフィが必要となり、原料の消費が大きく、技術的コストが高く、収率が低く、同時にジフェニルエチレン化合物は紫外照明に当たるとトランス配列に変換されるため、日光を避け低温で保管する必要がある。それ故、ジフェニルエチレン化合物の保管および実用は極めて困難である。
【0007】
文献(Cushman, Mark et al., "Synthesis and evaluation of analogs of (Z)-1-(4-methoxyphenyl)-2-(3, 4, 5-trimethoxyphenyl)ethane as potential cytotoxic and antimitotic agents", Journal of Medicinal Chemistry, 1992, Vol.35, No.12, 2293-306)には化合物、すなわち(Z)‐1‐(3,4,5‐トリメトキシ)フェニル‐2‐(4’‐エトキシ)フェニルエチレンが開示されているが、相乗作用的な活性標的を‐OHのような置換基として形成することができず、‐NH2が3’位に存在せず、抗がん剤効果は4’位の4’‐メトキシ、エトキシ、プロポキシから漸減する。また、米国特許SU第6054598号には、2‐メトキシエストラジオールを2‐エトキシエストラジオールに修飾するための合成方法が開示されており、2‐エトキシエストラジオールは2‐メトキシエストラジオールの1000倍程度のインビトロ抗がん活性を含む。更に、諸種の研究から、例えば、エトキシジフェニルエタン誘導体、4’位のエトキシ、および3’位のヒドロキシ、アミノは(ethoxydiphenylethane derivatives, 4’-ethoxy and 3’-hydroxy, amino)、同じ相乗効果を有し、抗がん効果を明白に高める可能性があるが、4’位をプロポキシで修飾するとその抗がん効果が著しく低下することが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の内容:
1.本発明は、式(I)として示される構造を有するエトキシジフェニルエタン誘導体を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Rはヒドロキシ、アミノ、ホスフェート、サルフェート、コリンホスフェート、またはアミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩である。
【0011】
前記Rは、好ましくは、ヒドロキシ、アミノ、ジナトリウムホスフェート塩、アンモニウムホスフェート塩、サルフェート塩、コリンホスフェート分子内塩、天然アミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]およびその水溶性アンモニウム塩である。
【0012】
好ましい実施形態において、前記Rは‐OH、‐NH2、‐OPO2Na2、‐NHCOCH2NH2または‐NHCOCHNH2CH2OHである。
【0013】
2.本発明は、式(I)による前記化合物中のヒドロキシエトキシジフェニルエタン誘導体の製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、次式の4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドをブロムエチルによってエトキシ化して次式の4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドIIIを形成するステップと、
【0014】
【化2】
【0015】
(2)メタ位のメチルをリチウムジフェニルホスフィドによって選択的に除去し、ヒドロキシに変換して次式の4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドIVを得るステップと、
【0016】
【化3】
【0017】
(3)前記4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドIVをベンジルクロライドによって次式の4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドVに調製するステップと、
【0018】
【化4】
【0019】
(4)3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミドテトラヒドロフラン溶液および4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドにカリウムtert‐ブトキシドを加えながらビニル基導入(vinylation addition)して、次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンVIを合成するステップと、
【0020】
【化5】
【0021】
(5)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンVIをパラジウム炭素下で水素化してオレフィン結合を水素化し、脱ベンジル化を実施して次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタンVII(以下、コード:ECB1と呼ぶ)を得るステップとを含み、
【0022】
【化6】
【0023】
(6)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化、リン酸エステル化および硫酸化を経てエトキシヒドロキシジフェニルエタン水溶性誘導体、すなわちジナトリウムホスフェート塩、サルフェート塩、アンモニウムホスフェート塩またはコリンホスフェート分子内塩を形成し、
(7)ECB1は、リン酸化剤オキシ塩化リンおよび2mol/LのNaOHの作用下で3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩VII(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)を形成し、
【0024】
【化7】
【0025】
(8)別の好ましいリン酸エステル化は、ECB1がジベンジルホスフェートと反応してベンジルホスフェートを形成し、ナトリウムメトキシド/無水メタノールをトリメチルブロモシラン(TMBS)下で加えて3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)を得ることを特徴とする、方法を開示する。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態は、式(I)による前記化合物中のアミノエトキシジフェニルエチレンの製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、次式のとおり4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドIXをブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドXを形成するステップと、
【0027】
【化8】
【0028】
(2)トリメトキシフェニルブロミドトリフェニルホスホニウムメチリドおよび前記4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドXをウィッティヒ反応させて次式の3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXIを生成するステップと、
【0029】
【化9】
【0030】
(3)前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXIをパラジウム炭素触媒/水素化ホウ素ナトリウム下で水素化還元して、ニトリルをアミノに還元し、オレフィン結合をエタン単結合に還元することにより次式の3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXII(以下、コード:ECB1Nと呼ぶ)を得るステップとを含み、
【0031】
【化10】
【0032】
(4)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)およびアミノ酸誘導体を反応させて、下記のアミノ酸アミド側鎖:天然アミノ酸側鎖、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]を有するエトキシアミノジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体(ethoxyaminodiphenylethane amino acid amide derivative having the amino acid amide side chain as below: natural amino acid side chain, or -NH(COCHR’NH)m-H(wherein R’ is hydrogen, phenyl, and m represents an integer from 1 to 3) を形成し、
(5)ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド(DCC)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)またはベンゾトリアゾール‐1‐イル‐オキシ‐トリス(ジメチルアミノ)‐ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP剤)の触媒下で、前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIIをNa‐9‐フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸誘導体(Fmoc AA)と反応させ、3’位のアミノをFmoc‐アミノ酸アミドに変換し、Fmocを除去してECB1Nのアミノ酸アミドを生成し、前記ECB1Nは、それぞれ3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIII(以下、コード:ECB1GNと呼ぶ)および3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIV(以下、コード:ECB1SNと呼ぶ)であり、
【0033】
【化11】
【0034】
(6)前記アミノ酸アミド誘導体をメタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に溶解させ、当量の塩酸、硫酸もしくはリン酸および石油エーテルもしくはn‐へキサンを加えて前記誘導体を希釈して水溶性アンモニウム塩を形成する、製造方法を提供する。
【0035】
3.本発明の製剤の形態は、静注投与される凍結乾燥粉体、粉体、注射、リポソーム、エマルション、マイクロカプセル、懸濁液もしくは溶液、または経口投与される顆粒、錠剤、カプセルもしくはシロップ、または坐剤からなる群から選択される。
【0036】
4.チューブリン凝集阻害剤を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を提供する。
【0037】
5.抗腫瘍血管退化剤(anti-tumor angiolysis agent)として様々な腫瘍に関する血管標的効果を有する医薬を製造する際の式(I)による化合物の使用を提供する。様々な腫瘍は主に、肺癌、非小細胞肺癌、肝癌、膵癌、胃癌、骨癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、皮脂腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌腫(腺様嚢胞癌)(cystic adenoic carcinoma)、嚢胞癌(cystocarcinoma)、髄様癌、細気管支癌、骨細胞癌、上皮性癌腫、胆管癌、絨毛癌、胚性癌腫、精母細胞腫(spermatocytoma)、胎児性腺筋肉腫(embryonal adenomyosarcoma)、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血球母細胞腫、声帯神経腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、視神経芽細胞腫(opticneuroblastoma)、網膜芽細胞腫、神経線維腫、線維肉腫、線維芽細胞腫、線維腫、線維腺腫、線維軟骨腫、線維嚢腫、線維粘液腫、線維骨腫、線維粘液肉腫、線維乳頭腫、粘液肉腫、粘液嚢腫、粘液軟骨腫、粘液軟骨性肉腫、粘液軟骨線維肉腫、粘液腺腫、粘液芽細胞腫、脂肪肉腫、脂肪腫、脂肪腺腫、脂肪芽細胞腫、脂肪軟骨腫、脂肪線維腫、脂肪血管腫、粘液脂肪腫、軟骨性肉腫、軟骨腫、軟骨筋腫、脊索腫(notochordoma)、絨毛膜腺腫、絨毛上皮腫(chorionepithelioma)、絨毛上皮腫(chorionic epithelioma)、骨肉腫、骨芽細胞腫、骨軟骨線維腫、骨軟骨肉腫、骨軟骨腫、骨嚢腫、骨象牙質腫、線維骨腫、骨線維肉腫、血管肉腫、血管腫、血管脂肪腫、血管軟骨腫、血管芽腫、角化血管腫、血管神経膠腫、血管肉腫、血管線維腫、血管筋腫、血管脂肪腫、血管リンパ管腫、血管脂肪平滑筋腫、血管筋脂肪腫、血管筋神経腫、血管粘液腫、血管細網内皮腫(angioreticuloendothelioma)、リンパ管肉腫、リンパ肉芽腫、リンパ管腫、リンパ節腫、リンパ粘液腫、リンパ肉腫、リンパ管線維腫、リンパ細胞腫、リンパ上皮腫、リンパ芽細胞腫、内皮腫、内皮芽細胞腫(endoblastoma)、滑膜腫、滑膜肉腫、胎児性中皮腫、肥満細胞腫(mesocytoma)、ユーイング腫瘍、平滑筋腫、平滑筋肉腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋線維腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、横紋筋粘液腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性疾患による細胞増多および赤血球増加症(chronic disease cytosis and erythrocytosis)、リンパ腫ならびに多発性骨髄腫からなる。
【0038】
6.異常な血管新生に起因する疾患を治療するための医薬を製造する際の式(I)による化合物の使用を提供する。これらの疾患は主に、リウマチ性関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児性網膜症、網膜静脈閉塞症、乾癬、酒さ、カポージ肉腫、特異反応性(specific reaction)角膜炎、流行性角結膜炎、血管新生緑内障、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペスウイルス感染症、帯状疱疹ヘルペスウイルス感染症、原虫感染症、マイコバクテリウム感染症、多発動脈炎、肉芽腫性病変(類肉腫)、強膜炎、ルベオーシス、ドライマウスおよびドライアイの兆候を伴う関節炎症候群、全身紅はん性エリテマトーデス、後天性免疫不全症候群ならびに梅毒からなる。
【0039】
7.式(I)による化合物の薬剤効果、安全性評価および陽性対照は下記のとおりである。
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐メトキシジフェニルエチレンXV(以下、コード:CA4と呼ぶ);
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐メトキシジフェニルエチレン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XVI(以下、コード:CA4Pと呼ぶ);
【0040】
【化12】
【0041】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐メトキシジフェニルエチレンXVII(以下、コード:CA4Nと呼ぶ);
【0042】
【化13】
【0043】
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐メトキシジフェニルエタンXVIII(以下、コード:CB1と呼ぶ)
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐メトキシジフェニルエタン3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XIV(以下、コード:CB1Pと呼ぶ);
【0044】
【化14】
【0045】
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐メトキシジフェニルエタンXX(以下、コード:CB1Nと呼ぶ)
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXXI(以下、コード:CB1GNと呼ぶ)
【0046】
【化15】
【0047】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXXII(以下、コード:ECA4と呼ぶ);
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩XXIII(以下、コード:ECA4Pと呼ぶ);
【0048】
【化16】
【0049】
(Z)‐3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエチレンXXIV(以下、コード:ECA4Nと呼ぶ);
(Z)‐3、4、5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXXV(以下、コード:ECA4GNと呼ぶ)
【0050】
【化17】
【0051】
8.式(I)による化合物の薬剤効果および安全性評価結果は下記のように結論付けられる。
(1)インビトロ培養腫瘍細胞の抗腫瘍活性評価結果は、比較により、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1N、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4およびECA4Nは、複数のインビトロ培養腫瘍細胞に対して明白且つ基本的に等価な抗腫瘍活性を有し、それらの抗腫瘍活性は4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nのそれよりも顕著に(約10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1Nは4’位のメトキシ陽性対照CB1よりも約200倍強力となり、ECB1は陽性対照CB1よりも約100倍強力となる。
(2)固形腫瘍の成長は血管系に依存し、急速増殖下の腫瘍血管内皮細胞の一部は、完全な筋フィラメント構造の不足により完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高く、増殖性のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の急速増殖は、完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高い。したがって、通常は微小管が腫瘍血管内皮細胞のインビトロモデルとして使用され、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がエトキシジフェニルエタン誘導体の抗腫瘍血管特性を評価するための作用対象として使用される。6.8×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1Nおよび7.5×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1は、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖阻害効果を有し、そのため4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1N(4.8×10−3〜7.7×10−3のIC50を有する)よりも間違いなく強力なチューブリン凝集阻害剤を提供する。このことはエトキシジフェニルエタン誘導体が潜在的に非常に強力な腫瘍血管標的薬剤となることを示す。
(3)マウスのS180肉腫移植腫瘍に対するインビボ静注試験薬剤の腫瘍阻害率実験結果から、この投与提案によれば、すべての被検化合物がマウスのS180肉腫移植腫瘍の成長を明白に阻害することができ、薬剤投与後8日目前後に、比較により4’位のエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩は、どちらも薬剤投与群で腫瘍収縮の傾向を示し、50mg/kgの投与量では腫瘍阻害率が60%超に達し、それぞれ基本的に等価な治療効果を有する。これらの治療効果はメトキシ陽性対照CB1GN塩酸塩、CB1PおよびCA4Pの治療効果、すなわち100mg/kgの投与量で約40%の腫瘍阻害率よりも明らかに優れている。
(4)単回のマウス腹腔内注射投与の急性毒性試験では、高用量注射投与により40分後および1時間後にマウスが死ぬようにし、解剖後に明白な残留液体は確認されなかった。このことは薬剤の高速吸収を示す。他のマウスは主に投与後1〜2日目に死んだが、5日目以降はマウスの死は観察されなかった。死亡したマウスの心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓および他の器官の異常は解剖で発見されず、生存したマウスは重度でない下痢を起こした。このことは主に被検薬剤が明白な遅延毒性のない急性毒性反応をもたらすことを示す。したがって、この試験結果は、エトキシジフェニルエタン化合物ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩の投与群の毒性がエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩のそれよりも低いことを示している。
【0052】
9.本発明の研究から、エトキシジフェニルエタン化合物、すなわち式(I)による化合物は、ジフェニルエタンB芳香環4’位の元のメトキシをエトキシに修飾することにより、3’位にヒドロキシおよびアミノを有する活性標的を形成することができ、その腫瘍血管標的活性を、B芳香環4’位に元のメトキシ基を、3’位にヒドロキシ基およびアミノ基を有するメトキシジフェニルエタン化合物と比較して大幅に増強させ得ることが分かった。この実験は、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1Nがどちらも複数のインビボ培養腫瘍細胞に関する明白な抗腫瘍活性を有し、4’位のエトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nよりも顕著に(10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1Nは陽性対照CB1よりも約200倍強力であり、ECB1は陽性対照CB1よりも約100倍強力であることを示している。
【0053】
化合物がジフェニルエチレン化合物のコンブレタスタチンA‐4と異なる構造、配座、結合力および反転効果を有するように、且つシス‐トランス配列差が存在しないように2つのベンゼン環を単結合によって連結させる。また、毒性を低下させながら薬剤安定性を大幅に増加させることができ、製造技術をより良い形に簡略化することができる。また、カラムクロマトグラフィ分離が必要なくなり、技術収率が顕著に改善し、原料の消費が相当減少し、ユニット合成の技術的コストも大幅に削減され、薬剤安定性が増加し、光を避けた保管も必要なくなり、保管および実用の便宜性が大きく向上し、予想外の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ヒドロキシエトキシジフェニルエタン化合物およびその水溶性プロドラッグの合成経路を示す図である。
【図2】アミノエトキシジフェニルエタン化合物およびそのアミノ酸アミド誘導体の合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
[実施形態1]
4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドの調製:
【0056】
76グラムの4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(0.5mol)および500mLのイソプロパノールを4口フラスコに加え、次いで20分間攪拌し、定圧滴下漏斗を使用して6.5グラムの18‐クラウン‐6‐エーテルおよび133グラムの水酸化ナトリウムを含む150ミリリットルの水溶液をゆっくりと滴下し、攪拌を30分間行い、反応系を60℃まで加熱した。ここでは、TLC追跡を実施しながら85グラムのブロムエチルを反応のために5〜6時間滴下し、反応終了後に反応系を(15℃まで)冷却し、これに500mLの水を加えて反応を停止させ、生成物をエーテル(3×300mL)で抽出し、有機相を中性になるまで水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、エーテルを部分蒸留し、大量の石油エーテルを加えて粗生成物を沈殿させ、この粗生成物をエーテル/石油エーテルで再結晶化させ、83グラムの4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドを得た。収率は92%であった。
【0057】
[実施形態2]
4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒドの調製
【0058】
ステップ1:アルゴン保護下で、54グラムの4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(0.3mol)を3口フラスコに加え、次いでこのフラスコに130グラムのエチレングリコール(2.1mol)および133グラムのオルトギ酸ジエチル(0.9mol)を加えて約100℃で還流させ、触媒として1mlの三フッ化ホウ素エーテル溶液を加えた。反応はTLC追跡を実施しながら24時間実施し、反応生成物を室温まで冷却し、200mlの15%水酸化ナトリウム水溶液を加え、その後300mlのエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エチレングリコールおよびオルトギ酸トリエチルの減圧蒸留を利用して黄色の油状物を得た。
【0059】
ステップ2:56グラムのアセタール(0.25mol)を200mlの1.28Mリチウムジフェニルホスフィドテトラヒドロフラン溶液にバッチ単位で加え、TLC追跡を実施しながら室温で3時間〜4時間攪拌を行い、水を加えて反応を停止させ、反応生成物に200mlの30%水酸化ナトリウム溶液を加え、次いで300mlのエーテルで抽出し、塩酸によって酸性化し、約3〜4までpH調整し、最後に500mlのエーテルで抽出し、エーテル抽出液を混合し、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒の減圧除去を利用して黄色の固体を得た。その後この固体をベンゼン/石油エーテルで再結晶化させて38.1グラムの黄色がかった結晶を得た。収率は76%であった。
【0060】
[実施形態3]
4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドの調製:
【0061】
16.6グラムの4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(100mmol)および200mlの無水エチルアルコールを3口フラスコに加え、次いで溶解させるために40℃まで加熱し、9グラムの炭酸カリウム(65.07mmol)を加え、15mlのベンジルクロライド(130.13mmol)を攪拌下で加え、加熱還流を1時間行い、TLCで完全反応が検出された後に反応生成物を50℃まで冷却し、次いでそれが熱いうちに濾過し、濾液を一晩冷蔵庫に入れて冷却し、結晶を分離し、ポンプ濾過にかけ、瀘過ケーキを30mLの無水エチルアルコールによって洗浄し、その後真空乾燥して21.5グラムの白色の針状結晶を得た。収率は83.9%であった。
【0062】
[実施形態4]
3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレンの調製
【0063】
3口瓶に20グラムの3,4,5‐トリメトキシトリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミド(3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンホスホニウムブロミド)および150mlのテトラヒドロフランを加え、懸濁液を攪拌して10.5グラムの4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒド(41.0mmol)を70mlのテトラヒドロフラン中に溶解させ、そのテトラヒドロフランを容量100mlの滴下漏斗に入れ、7.5グラムの固体カリウムtert‐ブトキシド(66.5mmol)を反応フラスコに加え、反応系を血紅色(sanguine)に変化させ、室温で5分間攪拌を行い、4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドの溶液をゆっくり滴下し、再度室温で20分間攪拌を行い、TLCで完全反応が検出された後に反応生成物を容量500mlの分離漏斗に注入し、溶液に140mlの脱イオン水を加えて層化させ、その後抽出のために300ml×2のエーテルを加え、エーテル層を併合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、瀘過ケーキを50mLのエーテルで洗浄し、濾液を回転蒸発器の濃縮により乾燥させて25グラムの油状物を得た。この油状物に20mLの無水エチルアルコールを加え、その後ポンプ濾過にかけて14.1グラムの黄色がかった固体を得た。この黄色がかった固体を丸底フラスコに入れ、25mlの無水エチルアルコールを加え、その後加熱を利用して固体を部分的に溶解させ、室温で攪拌し、ポンプ濾過にかけ、瀘過ケーキを10mlの無水エチルアルコールで洗浄し、その後赤外線ランプで乾燥させて10.6グラムの純粋な3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン、すなわち黄色がかった粉末状固体を得た。収率は61.6%であった。
【0064】
[実施形態5]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1と呼ぶ)の調製
【0065】
ステップ1:10.6グラムの純粋な3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ベンジルオキシ‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(25.8mmol)を3口フラスコに加え、200mlのエチルアセテートおよび120mlの無水エチルアルコール中に溶解させ、結果として得られた黄色がかった溶液に1.0グラムの5%パラジウム炭素を加え、水素を攪拌下で供給し、溶液を室温で1時間撹拌し、その後濾過して無水溶液を得た。この無水溶液を回転蒸発器の濃縮により乾燥させて8.06グラムの油状物、すなわち3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタンの粗生成物を得た。収率は96.8%であった。
【0066】
ステップ2:8.06グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐ヒドロキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタンの粗生成物を丸底フラスコに加え、40mlの無水エチルアルコール中に溶解させ、不溶物があればそれらを濾過によって除去し、溶液を室温で静置しながら結晶を析出させ、一晩静置して溶媒を完全に揮発させると、大量の白色結晶が析出した。これらの白色結晶を濾過し、瀘過ケーキをエタノールで洗浄して6.7グラムの白色結晶を得た。収率は83%であった。
【0067】
[実施形態6]
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)の調製(リン酸エステル化1)
【0068】
4.4mlのオキシ塩化リン(47.4mmol)および25mlのジクロロメタンを丸底フラスコに加え、10mlのジクロロメタン中5グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ヒドロキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(15.1mmol)から得られた溶液を滴下し、次いで攪拌を5分間行い、5mlのジクロロメタン中3.3mlのトリエチルアミン(23.8mmol)から得られた溶液を滴下し、その後室温で3時間攪拌し、TLC検出し、完全反応後に急冷のために100mlの冷水を加えた。十分な振動を利用して有機相を分離させ、50mL×2の水で洗浄し、ジクロロメタンで水相を抽出した後に有機相を併合し、適当な量の無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させ、ポンプ濾過にかけ、濾液を減圧蒸留にかけて溶媒の濃い液体を除去し、氷浴の冷却下で混合溶液のpHが8〜10に達するまで2mol/LのNaOH溶液を攪拌下で加え、攪拌を65℃で8時間行い、不溶物を濾過によって除去し、溶液の大部分を減圧蒸留にかけ、冷却によって結晶を析出させて白色固体、すなわち3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩の粗生成物を得た。この粗生成物を加熱によってエタノール中に溶解させ、生成物が溶解したエタノールを熱いうちに濾過して不溶性の固体を除去し、濾液を冷却して結晶を析出させ、約5.6グラムの白色結晶化生成物、すなわち純粋な生成物を得た。収率は81.6%であった。
1H‐NMR(ppm)δ:7.33(d、1H、2’‐H);6.89(d、1H、6’‐H);6.67(d、1H、5’‐H);6.58(s、2H、2、6H);4.18(2H、q;‐OCH2);3.80(s、3H、4‐OCH3);3.76(s、6H、3、5‐OCH3);2.82(d、1H、J=13.2Hz、la‐H);2.79(d、1H、J=13.3Hz、la’‐H);1.52(3H、t;‐CH3)。
13C NMR(ppm)δ:14.9、37.8、38.2、56.1、56.3、64.7、105.3、114.3、115.2、138.4、121.6、132.2、133.8、145.0、150.1、136.7。
【0069】
[実施形態7]
3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(以下、コード:ECB1Pと呼ぶ)の調製(リン酸エステル化2)
【0070】
ステップ1:アルゴン雰囲気下で、4.2グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ヒドロキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(12.6mmol)を4口フラスコに加え、次いで40mLの乾燥アセトニトリルで溶解させ、−2.5℃まで冷却し、次いで6mlの四塩化炭素を加え、攪拌を5分間続けた後、4.7mlのジイソプロピルエチルアミンおよび0.15グラムの4‐ジメチルアミノピリジンを加え、1分後に4mlのジベンジルホスフェート(80%)をゆっくりと加え、温度を−10℃未満に保ち、TLC追跡を実施しながら3.5時間連続で反応させ、完全反応時に10mの10.5M KH2PO4を加え、その後温度を室温まで自然に上昇させ、酢酸エチルで抽出し、有機層を併合し、蒸留水および飽和食塩水で逐次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧蒸留にかけて濁った油状物を得た。この油状物を酢酸エチル‐n‐ヘキサンによって再結晶化させて6.6グラムの無色の針状結晶を得た。収率は88%であった。
【0071】
ステップ2:結果として得られた6.5グラムのベンジルホスフェート(10.8mmol)を4口フラスコに加え、25mlの乾燥無水アセトニトリルで溶解させ、15℃のアルゴン雰囲気下で攪拌を行い、4.5mlのトリメチルブロモシラン(TMBS)を急速に滴下し、5分後〜10分後に1.8グラムのナトリウムメトキシドを含有した7mlの無水メタノール溶液を加え、それにより反応系を乳白色の懸濁液に直ちに変化させ、30分後に3.6mlの無水メタノールおよび3.6mlのアセトンを加え、懸濁液を攪拌下で一晩置き、その後ポンプ濾過して白色固体を得た。この白色固体を無水メタノールおよびアセトンで洗浄し、その後真空乾燥させた。水/メタノール/アセトンによる再結晶化を利用して4.1グラムの白色粉体を得た。収率は83.6%であった。
【0072】
1H‐NMR(ppm)δ:7.34(d、1H、2’‐H);6.88(d、1H、6’‐H);6.68(d、1H、5’‐H);6.60(s、2H、2、6H);4.20(2H、q;‐OCH2);3.76(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.81(d、1H、J=13.6Hz、la‐H);2.79(d、1H、J=13.6Hz、la’‐H);1.54(3H、t;‐CH3)。
13C NMR(ppm)δ:14.8、37.8、38.3、56.1、56.3、64.6、105.5、114.6、115.3、138.3、121.7、132.4、133.8、145.1、150.1、136.7。
【0073】
[実施形態8]
4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドの調製
【0074】
83.5グラムの4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(0.5mol)、668mLのN,N‐ジメチルホルムアミド、167グラムの炭酸カリウムおよび8.35グラムの18‐クラウン‐6‐エーテルを4口フラスコに加え、55〜65℃の温度で攪拌し、TLC追跡を実施しながら約80グラムのブロムエチルを反応のために5〜6時間加え、反応終了時に反応生成物を40℃まで冷却し、反応を停止させるために600mlの純水を加え、反応生成物をエーテル(3×300mL)で抽出し、有機相を中性になるまで水で洗浄し、その後無水MgSO4で乾燥させ、エーテルを部分蒸留し、大量の石油エーテルを加えて粗生成物を沈殿させ、この粗生成物をエーテル/石油エーテルで再結晶化させ、80.9グラムの4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒドを得た。収率は83%であった。
【0075】
[実施形態9]
3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレンの調製
【0076】
アルゴン保護下で、15グラムのトリメトキシフェニルトリフェニルホスホニウムブロミドメチリド(trimethoxyphenyl bromide triphenylphosphonium methylide)(28.7mmol)を約−15℃の温度に冷却した300mlのTHF中で懸濁させ、22mlのn‐ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(1.6mol/L)を反応のために1時間滴下した。TLC追跡を実施しながら5.7グラムの4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(29mmol)を含有した24mlのTHF溶液を反応物中にゆっくりと滴下し、その後一晩攪拌し、反応温度を室温まで上昇させ、溶液の温度を−5℃まで下げ、反応を停止させるために飽和食塩水を加え、有機層を分離させ、溶媒の3/4を除去し、残りの母溶液の4倍程度の量の無水エチルアルコールを再結晶化のために0〜−5℃の温度で加え、濾過を利用して6.8グラムの黄色がかった物質を得た。収率は65%であった。
【0077】
[実施形態10]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1Nと呼ぶ)の調製
【0078】
100mlの水、0.5グラムの10%パラジウム炭素触媒、および150mlの水中に溶解させた8グラムの水素化ホウ素ナトリウムから得られた溶液を反応フラスコに加え、この反応フラスコに窒素を供給し、6.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ニトリル‐4‐エトキシジフェニルエチレン(16.6mmol)を攪拌下で滴下して250mlのNaOHから得た2mol/Lの溶液中に溶解させ、この滴下工程を約20分間続け、その後溶液を濾過し、濾液を2mol/LのHCLで酸性化して過剰な水素化ホウ素ナトリウムを分解し、次いで希釈NaOHで中和させ、最後にエーテル(100ml×4)で抽出し、エーテル抽出液体を混合し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させてエーテルを蒸留し、n‐ヘキサン:酢酸エチルの約9:1の比率による再結晶化を利用して4.8グラムの無色の結晶を得た。収率は83%であった。
【0079】
1H‐NMR(ppm)δ:7.14(d、1H、2’‐H);6.88(d、1H、6’‐H);6.68(d、1H、5’‐H);6.60(s、2H、2、6−H);4.48(brs、2H、NH2);4.08(q、2H、‐CH2);3.77(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.85(d、1H、J=12.5Hz、la‐H);2.78(d、1H、J=12.5Hz、la’‐H);1.56(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):331(M+);高分解能質量分析法、計算値:331.1784、実測値:331.1753。
【0080】
[実施形態11]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタンXIII(以下、コード:ECB1GNと呼ぶ)の調製
【0081】
ステップ1:4.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシフェニル‐ジフェニルエタン(14.5mmol)、5.27グラムのFmoc‐グリシン(17.8mmol)および25グラムのBOP試薬を100mlのDMF中に溶解させ、反応混合物を攪拌下で60℃まで加熱し、TLC追跡を実施しながら2時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように100mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えた。この混合物を120ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮を利用して6.6グラムの白色物質を得た。収率は75%であった。
【0082】
ステップ2:上記で得た6.6グラムの3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐Fmoc‐グリシンアミド(10.8mmol)を120mlのメタノール中に溶解させ、次いでTLC追跡を実施しながらこのメタノールに6mlの2N水酸化ナトリウム溶液を攪拌下で加え、これを3時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように60mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、この混合物を150ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、まず濾過を利用し次いで減圧濃縮を利用して3.2グラムの白色粉状物を得た。収率は77%であった。
【0083】
1H‐NMR(CDCl3、500M)δ:9.54(brs、1H、‐NH);7.04(d、1H、2’‐H);6.92(d、1H、6’‐H);6.78(d、1H、5’‐H);6.65(s、2H、2、6H);4.77(brs、2H、Cly‐NH2);4.20(brs、2H、G1 y‐CH2);4.02(q、2H、‐CH2);3.76(s、3H、4‐OCH3);3.75(s、6H、3、5‐OCH3);2.88(d、1H、J=12.8Hz、la‐H);2.78(d、1H、J=12.8Hz、la’‐H);1.55(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):338(M+);高分解能質量分析法、計算値:338.1998、実測値:338.1945。
【0084】
[実施形態12]
3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(以下、コード:ECB1SNと呼ぶ)の調製
【0085】
ステップ1:4.8グラムの3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシフェニル‐ジフェニルエタン(14.5mmol)、6.5グラムのFmoc‐セリン(17.8mmol)、3.7グラムのDCC(ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド)(17.8mmol)および2.7グラムのHOBt(1‐ヒドロキシ‐ベンゾ‐トリアゾール)を90mlのDMF中に溶解させ、TLC追跡を実施しながら反応混合物を室温で5時間攪拌下で反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように60mlの酢酸エチルを加え、この混合物を濾過し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮を利用して6.5グラムの白色物質を得た。収率は74%であった。
【0086】
ステップ2:上記で得た6.5グラムの物質を70mlのメタノールおよび70mlのジクロロメタンの混合溶媒中に溶解させ、この混合溶媒に12mlの2N水酸化ナトリウム溶液を攪拌下で加え、TLC追跡を実施しながら室温で24時間反応させ、反応終了時に反応生成物を冷却し、均一に混合されるように670mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、この混合物を150ml×3のジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、まず濾過を利用し次いで減圧濃縮を利用して3.3グラムの白色粉状物を得た。収率は79%であった。
【0087】
1H‐NMR(CDCl3、500M)δ:9.65(brs、1H、‐NH);7.06(d、1H、2’‐H);6.90(d、1H、6’‐H);6.76(d、1H、5’‐H);6.66(s、2H、2、6H);5.27(brs、2H、Ser‐NH2);4.50(brs、2H、Ser‐OH);4.19(q、2H、‐CH2);3.93(m、1H、Ser‐CH);3.86(s、3H、4‐OCH3);3.80(s、6H、3、5‐OCH3);2.92(d、1H、J=13.2Hz、la‐H);2.85(d、1H、J=13.2Hz、la’‐H);2.67(m、2H、Ser‐CH2);1.54(3H、t;‐CH3)。
MS(m/Z):418(M+);高分解能質量分析法、計算値:418.2104、実測値:418.2114。
【0088】
[実施形態13](インビトロ培養腫瘍細胞に関する抗腫瘍活性評価)
【0089】
1.試験方法
200mL/Lのウシ胎児血清を含有するRPMI 1640培養液で細胞を終始対数期となるように培養し、96ウェルプレートに4〜8×104/mlの密度(HUVEC密度3×104/mL)で接種し、6つの濃度を有する薬剤の投与を37℃で48時間連続的に与え、薬剤毎に3つの二重ウェルがある場合は前培養後24時間連続的に与え、培養液を分離させ、空気乾燥し、各ウェルに500g/Lの濃度(最終的な濃度は100g/L)で50μLの冷たいトリクロロ酢酸を加え、その後60分間固定し、次いで脱イオン水で4〜5回洗浄し、最後に乾燥させ、各ウェルに4g/Lの濃度のSRBを100μL加えて30分間作用させ、その後10ml/Lの酢酸で優しく4回洗浄し、乾燥させ、各ウェルを均一に振り混ぜるために各ウェルに200μLのTrisベース(10mmol)を加え、平坦な振動子上で5分間振動させ、値AをELISA(enzyme linked immunosorbent assay:酵素結合免疫吸着法)リーダによって判定し、490nmの波長でブランクコントロールによりゼロセットし、腫瘍阻害率(%)=(薬剤なし細胞対照ウェル値Aの平均値−薬剤塗布ウェル値Aの平均値)/(薬剤なし細胞対照ウェル値Aの平均値)×100%、陽性対照をCA4、CB1およびCB1Nとし、ロジット法に基づいて、IC50を様々な濃度下の薬剤の細胞成長阻害率に従って計算した。
【0090】
2.試験結果:
比較により、4’位のエトキシジフェニルエタン化合物ECB1およびECB1N、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4およびECA4Nは、複数のインビトロ培養腫瘍細胞に対して明白且つ基本的に等価な抗腫瘍活性を有し、それらの抗腫瘍活性は4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1Nのそれよりも顕著に(約10〜200倍)強力であり、結腸直腸癌HT‐29について言えば、ECB1NはCB1よりも約200倍強力となり、ECB1はCB1よりも約100倍強力となる。
【0091】
固形腫瘍の成長は血管系に依存し、急速増殖下の腫瘍血管内皮細胞の一部は、完全な筋フィラメント構造の不足により完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高く、増殖性のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の急速増殖は、完全な構造を維持する上で微小管への依存度が高い。したがって、通常は微小管が腫瘍血管内皮細胞のインビトロモデルとして使用され、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がエトキシジフェニルエタン誘導体の抗腫瘍血管特性を評価するための作用対象として使用される。6.8×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1Nおよび7.5×10−4μmol/LのIC50を有するエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1は、4’位のメトキシ陽性対照化合物CA4、CB1およびCB1N(4.8×10−3〜7.7×10−3のIC50を有する)よりも明白に強力なヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖阻害効果を有する。このことはエトキシジフェニルエタン誘導体が潜在的に非常に強力な腫瘍血管標的薬剤となることを示す。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施形態14](マウスのS180肉腫移植腫瘍に対するインビボ静注試験薬剤の腫瘍阻害率実験)
【0094】
1.実験方法:
1週間の適応期間後、マウスにS180肉腫組織を皮下接種し、腫瘍が100〜300mm3程度の面積まで成長した後にマウスをランダムに分類し;すべての化合物を薬剤投与群では6匹のマウス、対照群では12匹のマウスに使用し、投与量はECB1P、ECB1GN塩酸塩、ECB1SN塩酸塩および陽性対照ECA4P、ECA4GN塩酸塩を25、50mg/kg、陽性対照CB1GA塩酸塩、CB1PおよびCA4Pを50、100mg/kgとし、d0日目、d2日目、d4日目、d6日目、d8日目、d10日目およびd12日目に合計7回静注投与を与え、腫瘍容積の測定、マウスの秤量およびデータの記録を週に3回実施し、マウスを接種後14日目に屠殺し、腫瘍組織を秤量して腫瘍阻害率を下記のとおり計算した。
腫瘍阻害率%=(1−治療群の平均腫瘍質量/対照群の平均腫瘍質量)×100%
【0095】
2.実験結果:
この投与提案によれば、上記のすべての化合物がマウスのS180肉腫移植腫瘍の成長を明白に阻害することができ、薬剤投与後8日目前後に、比較により4’位のエトキシジフェニルエタン誘導体ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩、ならびに4’位のエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩は、どちらも薬剤投与群で腫瘍収縮の傾向を示し、50mg/kgの投与量では腫瘍阻害率が60%超に達し、それぞれ基本的に等価な治療効果を有する。これらの治療効果はメトキシ陽性対照CB1GN塩酸塩、CB1PおよびCA4Pの治療効果、すなわち100mg/kgの投与量で約40%の腫瘍阻害率よりも明らかに優れている。
【0096】
【表2】
【0097】
[実施形態15](単回マウス腹腔内注射試験薬剤の急性毒性試験)
1.試験方法
昆明マウス(雌雄各半数、体重17〜22グラム)をそれぞれの体重に従ってランダムに分類し、試験ではマウスを0.9の比率に基づいて10の投与群に分け、各群はそれぞれ10匹のマウスを含み、最大投与量は1500mg/kgであり、1500、1350、1215、1093、984、885、797、717、645および581mg/kgの投与量をそれぞれ有する被検薬剤を単回腹腔内注射によって投与し、薬剤投与の0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後および24時間後にマウス診察および死亡率記録をそれぞれ一度実施し、その後毎日のマウス診察および死亡率記録を14日間続け、15日目の時点で死亡していないマウスを屠殺し、病理解剖にかけた。
【0098】
2.試験結果
単回の高用量腹腔内注射投与により40分後および1時間後にマウスが死ぬようにし、解剖後に明白な残留液体は確認されなかった。このことは薬剤の高速吸収を示す。他のマウスは主に投与後1〜2日目に死んだが、5日目以降はマウスの死は観察されなかった。死亡したマウスの心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓および他の器官の異常は解剖で発見されず、生存したマウスは重度でない下痢を起こした。このことは主に被検薬剤が明白な遅延毒性のない急性毒性反応をもたらすことを示す。したがって、この試験結果は、エトキシジフェニルエタン化合物ECB1P、ECB1GN塩酸塩およびECB1SN塩酸塩の投与群の毒性がエトキシジフェニルエチレン陽性対照化合物ECA4PおよびECA4GN塩酸塩のそれよりも低いことを示している。
【0099】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エトキシジフェニルエタン誘導体であり、それ自体の構造が式(I)として示されることを特徴とするエトキシジフェニルエタン誘導体。
【化1】
[式中、Rはヒドロキシ、アミノ、ホスフェート、サルフェート、コリンホスフェート、またはアミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩である。]
【請求項2】
前記Rはヒドロキシ、アミノ、ジナトリウムホスフェート塩、アンモニウムホスフェート塩、サルフェート塩、コリンホスフェート分子内塩、天然アミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]およびその水溶性アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Rは‐OH、‐NH2、‐OPO2Na2、‐NHCOCH2NH2または‐NHCOCHNH2CH2OHであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物の製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、
4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(II)をブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(III)を形成するステップと、
(2)メタ位のメチルをリチウムジフェニルホスフィドによって選択的に除去し、ヒドロキシに変換して4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)を得るステップと、
(3)前記4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)をベンジルクロライドによって4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒド(V)に調製するステップと、
(4)3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミドテトラヒドロフラン溶液および4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドにカリウムtert‐ブトキシドを加えながらビニル基導入して、3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン(VI)を合成するステップと、
(5)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン(VI)をパラジウム炭素下で水素化してオレフィン結合を水素化し、脱ベンジル化を実施して3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)を得るステップとを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化、リン酸エステル化および硫酸化を経てエトキシヒドロキシジフェニルエタン水溶性誘導体、すなわちジナトリウムホスフェート塩、サルフェート塩、アンモニウムホスフェート塩またはコリンホスフェート分子内塩を形成することを特徴とする、請求項4に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化剤オキシ塩化リンおよび2mol/LのNaOHの作用下で3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(VII)を形成することを特徴とする、請求項5に記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、ジベンジルホスフェートと反応してベンジルホスフェートを形成し、ナトリウムメトキシド/無水メタノールをトリメチルブロモシラン(TMBS)下で加えて3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩を得ることを特徴とする、請求項5に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
(1)相間移動触媒下で、4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(IX)をブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(X)を形成するステップと、
(2)トリメトキシフェニルブロミドトリフェニルホスホニウムメチリドおよび前記4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(X)をウィッティヒ反応させて3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(XI)を生成するステップと、
(3)前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(XI)をパラジウム炭素触媒/水素化ホウ素ナトリウム下で水素化還元して、ニトリルをアミノに還元し、オレフィン結合をエタン単結合に還元することにより3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)を得るステップとを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)およびアミノ酸誘導体を反応させてアミノ酸アミド側鎖:天然アミノ酸側鎖、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]を有するエトキシアミノジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体を形成することを特徴とする、請求項8に記載の化合物の製造方法。
【請求項10】
ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド(DCC)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)またはベンゾトリアゾール‐1‐イル‐オキシ‐トリス(ジメチルアミノ)‐ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP剤)の触媒下で、前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)をNa‐9‐フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸誘導体(Fmoc AA)と反応させ、3’位のアミノをFmoc‐アミノ酸アミドに変換し、Fmocを除去してエトキシジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体を生成し、前記エトキシジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体は、それぞれ3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XIII)および3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XIV)であることを特徴とする、請求項9に記載の化合物の製造方法。
【請求項11】
前記アミノ酸アミド誘導体をメタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に溶解させ、当量の塩酸、硫酸もしくはリン酸および石油エーテルもしくはn‐へキサンを加えて前記誘導体を希釈して水溶性アンモニウム塩を形成することを特徴とする、請求項9または10に記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
前記化合物の製剤の形態は、静注投与される凍結乾燥粉体、粉体、注射、リポソーム、エマルション、マイクロカプセル、懸濁液もしくは溶液、または経口投与される顆粒、錠剤、カプセルもしくはシロップ、または坐剤からなる群から選択することができることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
チューブリン凝集阻害剤を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
抗腫瘍血管退化剤として様々な腫瘍に関する血管標的効果を有する医薬を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
異常な血管新生に起因する疾患を治療するための医薬を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項1】
エトキシジフェニルエタン誘導体であり、それ自体の構造が式(I)として示されることを特徴とするエトキシジフェニルエタン誘導体。
【化1】
[式中、Rはヒドロキシ、アミノ、ホスフェート、サルフェート、コリンホスフェート、またはアミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩である。]
【請求項2】
前記Rはヒドロキシ、アミノ、ジナトリウムホスフェート塩、アンモニウムホスフェート塩、サルフェート塩、コリンホスフェート分子内塩、天然アミノ酸側鎖およびその水溶性アンモニウム塩、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]およびその水溶性アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Rは‐OH、‐NH2、‐OPO2Na2、‐NHCOCH2NH2または‐NHCOCHNH2CH2OHであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物の製造方法であり、
(1)相間移動触媒下で、
4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(II)をブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド(III)を形成するステップと、
(2)メタ位のメチルをリチウムジフェニルホスフィドによって選択的に除去し、ヒドロキシに変換して4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)を得るステップと、
(3)前記4‐エトキシ‐3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(IV)をベンジルクロライドによって4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒド(V)に調製するステップと、
(4)3,4,5‐トリメトキシトリフェニルベンジリデンブロミドホスホニウムブロミドテトラヒドロフラン溶液および4‐エトキシ‐3‐ベンジルオキシベンズアルデヒドにカリウムtert‐ブトキシドを加えながらビニル基導入して、3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン(VI)を合成するステップと、
(5)前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエチレン(VI)をパラジウム炭素下で水素化してオレフィン結合を水素化し、脱ベンジル化を実施して3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)を得るステップとを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化、リン酸エステル化および硫酸化を経てエトキシヒドロキシジフェニルエタン水溶性誘導体、すなわちジナトリウムホスフェート塩、サルフェート塩、アンモニウムホスフェート塩またはコリンホスフェート分子内塩を形成することを特徴とする、請求項4に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、リン酸化剤オキシ塩化リンおよび2mol/LのNaOHの作用下で3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩(VII)を形成することを特徴とする、請求項5に記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐ベンジルオキシ‐4‐エトキシジフェニルエタン(VII)は、ジベンジルホスフェートと反応してベンジルホスフェートを形成し、ナトリウムメトキシド/無水メタノールをトリメチルブロモシラン(TMBS)下で加えて3,4,5‐トリメトキシ‐4’‐エトキシジフェニルエタン‐3’‐o‐ジナトリウムホスフェート塩を得ることを特徴とする、請求項5に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
(1)相間移動触媒下で、4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(IX)をブロムエチルによってエトキシ化して4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(X)を形成するステップと、
(2)トリメトキシフェニルブロミドトリフェニルホスホニウムメチリドおよび前記4‐エトキシ‐3‐ニトロベンズアルデヒド(X)をウィッティヒ反応させて3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(XI)を生成するステップと、
(3)前記3,4,5‐トリメトキシフェニル‐3’‐ニトリル‐4’‐エトキシジフェニルエチレン(XI)をパラジウム炭素触媒/水素化ホウ素ナトリウム下で水素化還元して、ニトリルをアミノに還元し、オレフィン結合をエタン単結合に還元することにより3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)を得るステップとを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
前記3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)およびアミノ酸誘導体を反応させてアミノ酸アミド側鎖:天然アミノ酸側鎖、または‐NH(COCHR’NH)m‐H[R’は水素、フェニルであり、mは1〜3の整数である]を有するエトキシアミノジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体を形成することを特徴とする、請求項8に記載の化合物の製造方法。
【請求項10】
ジシクロヘキシルカルボ‐ジイミド(DCC)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)またはベンゾトリアゾール‐1‐イル‐オキシ‐トリス(ジメチルアミノ)‐ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP剤)の触媒下で、前記3,4,5‐トリメトキシ‐3‐アミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XII)をNa‐9‐フルオレニルメトキシカルボニルアミノ酸誘導体(Fmoc AA)と反応させ、3’位のアミノをFmoc‐アミノ酸アミドに変換し、Fmocを除去してエトキシジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体を生成し、前記エトキシジフェニルエタンアミノ酸アミド誘導体は、それぞれ3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐グリシルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XIII)および3,4,5‐トリメトキシ‐3’‐セリルアミノ‐4’‐エトキシジフェニルエタン(XIV)であることを特徴とする、請求項9に記載の化合物の製造方法。
【請求項11】
前記アミノ酸アミド誘導体をメタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に溶解させ、当量の塩酸、硫酸もしくはリン酸および石油エーテルもしくはn‐へキサンを加えて前記誘導体を希釈して水溶性アンモニウム塩を形成することを特徴とする、請求項9または10に記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
前記化合物の製剤の形態は、静注投与される凍結乾燥粉体、粉体、注射、リポソーム、エマルション、マイクロカプセル、懸濁液もしくは溶液、または経口投与される顆粒、錠剤、カプセルもしくはシロップ、または坐剤からなる群から選択することができることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
チューブリン凝集阻害剤を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
抗腫瘍血管退化剤として様々な腫瘍に関する血管標的効果を有する医薬を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
異常な血管新生に起因する疾患を治療するための医薬を製造する際の式(I)による前記化合物の使用を特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図2】
【公表番号】特表2012−505841(P2012−505841A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531339(P2011−531339)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074474
【国際公開番号】WO2010/043180
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511094657)シャンハイ エクスト バイオメディスン コンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ECUST BIOMEDICINE CO., LTD
【出願人】(511094668)ゼァージャン ワイルド ウインド ファーマシュティカル コンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG WILD WIND PHARMACEUTICAL CO., LTD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074474
【国際公開番号】WO2010/043180
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511094657)シャンハイ エクスト バイオメディスン コンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ECUST BIOMEDICINE CO., LTD
【出願人】(511094668)ゼァージャン ワイルド ウインド ファーマシュティカル コンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG WILD WIND PHARMACEUTICAL CO., LTD
【Fターム(参考)】
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