エネルギーおよび生体活性物質の有向送達
治療効果を達成するためにエネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムおよび方法が開示されている。バルーン部および複数の電極を有するバルーンカテーテルシステムは、エネルギー、生体活性材料、またはその組合せを内腔の周囲に位置する組織をはじめとする標的組織に選択的に送達するよう、通電され得る。エネルギーを適用し、組織インピーダンス解析を行ない、かつコントローラを用いてエネルギー源を使用することにより、電極にさらに選択的に通電することによって、組織を標的とし得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)項の下、2009年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/177,744号(代理人整理番号021830−004200US)の恩典を主張し、この文献の開示全体は、本明細書の出発点となる。
【0002】
本出願の主題は、2008年11月14日に出願された仮特許出願第61/114,958号(代理人整理番号021830−001500US)および2009年11月11日に出願された米国特許出願第12/616,720号(代理人整理番号021830−001510US)の主題に関連し、これらの文献の開示全体を念頭に入れ、本明細書を理解するべきである。
【0003】
本発明は一般に、医療装置、システム、および方法に関する。特に、本発明は、最も好ましくは、カテーテルに基づく治療システムを用いて、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に送達することによって、エネルギーおよび/または生体活性材料(すなわち、生体活性物質)を体内組織に送達するための方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0004】
医師は、身体の内部組織、特に、血管などの身体内腔内にアクセスし、それを修復するためにカテーテルを使用する。例えば、アテローム性動脈硬化症のために狭隘化した動脈を開口させるために、バルーン血管形成カテーテルや他のカテーテルが使用されることが多い。バルーン血管形成は、閉塞した血管を開口させるときに有効であるが、バルーン拡張に伴う外傷が重大な損傷をもたらす可能性があるため、バルーン拡張の利益は時間的に制限される場合がある。
【0005】
バルーン拡張と連携したステント留置手順は、アテローム性動脈硬化症についての好ましい治療であることが多い。ステント留置では、折畳まれた金属枠体が、身体内に導入されるバルーンカテーテルに取り付けられる。ステントは、閉塞部位に入るよう操作され、下層のバルーンの拡張によって所定位置で膨張するか、または自己拡張型ステントの例では、カテーテルによって制約が解除されたときに、ステントスキャフォールドが開く。ステント留置は広く受け入れられており、また、多くの事例において一般に許容される結果をもたらしている。血管(特に、冠動脈)の治療とともに、ステントは、生殖管閉塞、消化管状閉塞、および肺閉塞の治療など、身体内の多くの他の管状閉塞を治療するときに、使用することもできる。ステント留置後の再狭窄または身体内腔の事後狭隘化は、かなりの数の事例で起こっている。
【0006】
しばしば、バルーン血管形成および/またはステント留置と組み合わせて、血管内放射、低温治療、超音波エネルギーなどを含む、種々の修正再狭窄治療または再狭窄防止治療モダリティも提案されている。これらのおよび異なる手法は、血管形成およびステント留置に続く血流の事後低下の低減について様々な程度の有望さを示すが、血管形成によって組織に最初にもたらされる外傷は問題のまま残っている。
【0007】
狭窄した動脈を開口させるための、ステント留置およびバルーン血管形成に対するいくつかの代替法も提案されている。例えば、多種多様なアテローム切除装置および技法が開示され、試みられている。血管形成およびステント留置に欠点および制限があるにもかかわらず、アテローム切除は、拡張に基づく手法の幅広い使用および成功率を獲得していない。より最近では、拡張のなおさらなる欠点が明らかになった。これらは、心筋梗塞または心臓発作を引き起こすことがある物質を破裂させ、放出する可能性がある不安定プラークの存在を含む。
【0008】
より最近では、薬物コーティングステント(例えば、Johnson and Johnsonのサイファーステント、関連薬物はシロリムスを含む)は、著しく減少した再狭窄率を示しており、また、他のステントは、開発中および商品化中の代替の薬物溶出ステントである。薬物溶出ステントは、多くの患者のアテローム性動脈硬化症の治療にかなり有望であるように思われるが、ステントが使用できないかまたはステントが重大な欠点を示す多くの事例が依然として存在する。一般に、ステント留置は、身体内にインプラントを残す。こうしたインプラントは、特にインプラントの除去が難しくかつ侵襲的手術を必要とするときに、機械的疲労、腐食、血栓形成などを含むリスクを呈する可能性がある。ステント留置は、びまん性動脈疾患を治療する場合、分岐部を治療する場合、押しつぶしを受けやすい身体部分を治療する場合、ならびにねじれ、屈曲、伸長および短縮を受ける動脈を治療する場合、さらなる欠点を有する場合がある。
【0009】
提案されているアテローム性動脈硬化症の治療と関連する可能性がある情報を、例えば、米国特許第5,102,402号;同第5,304,121号;同第5,304,171号;同第5,306,250号;同第5,380,319号;同第5,588,962号;同第5,693,029号;同第6,389,314号;同第6,477,426号;同第6,623,453号;同第6,695,830号;同第6,706,011号;同第6,723,064号;同第6,788,977号;同第6,991,617号;同第6,958,075号;同第7,008,667号;同第7,066,904号;同第7,291,146号;および同第7,407,671号に見出すことができる。さらなる情報を、米国特許出願公開第2003/0069619号;同第2003/0229384号;同第2004/0062852号;同第2004/0243199号;同第2005/0203498号;同第2005/0251116号;同第2005/0283195号;同第2006/0235286号;同第2007/0278103号;同第2008/0125772号;同第2008/0140002号;同第2008/0161801号;同第2008/0188912号;同第2008/0188913号;同第2008/0262489号および同第2009/0074828号ならびに欧州特許出願EP1622531号およびPCT特許公報WO2005/007000号およびWO2009/121017号に見出すことができる。Scheller et al.,“Potential Solutions to the Current Problem:Coated Balloon”, EuroIntervention,2008 Aug;4 Suppl C:C63−66およびTepe et al.,“Local Delivery of Paclitaxel to Inhibit Restenosis During Angioplasty of the Leg”, N Engl J Med,2008 Feb 14;358(7):689−699にも関連情報が含まれている可能性がある。
【0010】
それゆえ、罹患組織に治療的治療を送達するための新しいおよび/または改善された方法およびシステムを提供することが有利であろう。理想的には、これらの改善された技術は、処置を簡素化し得るか、時間を短縮し得るか、治療結果を改善し得るか、または任意のそれらの組合せがもたらされるように、標的とされる組織に温度変化および/または生体活性物質を導入することによって、治療される組織を選択的に標的とすることを容易にするであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、治療効果を達成するためにエネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的とされた組織を治療することに関する。最も好ましい実施形態では、バルーン部を有し、さらに複数の電極から構成されている、バルーンカテーテルシステムは、標的とされた組織にエネルギー、生体活性物質、またはその組合せを選択的に送達するよう、通電され得る。エネルギーを適用し、組織インピーダンス解析を行ない、かつコントローラを用いてエネルギー源を使用して電極にさらに選択的に通電することによって、組織を標的とし得る。
【0012】
好ましい実施形態では、エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーン上にエネルギー送達表面を有する。放出可能な生体活性材料を有する熱的に変化しやすいコーティングがバルーンに連結されている。熱的に変化しやすいコーティングは、バルーンが拡張したときに、標的組織に働きかけるように配向されている。エネルギー源は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、標的組織に生体活性材料を放出するよう、エネルギー送達表面に通電するために、カテーテルに動作可能に連結されている。
【0013】
別の実施形態では、エネルギー送達表面は、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の間隔の開いた電極を含む。エネルギー源は、電極対間の熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、標的組織に生体活性材料を放出するよう、電極対に選択的に通電するために、複数の電極に動作可能に連結されている。
【0014】
例示的な実施形態では、電極は、絶縁材料でコーティングされている。
【0015】
さらに別の実施形態では、バルーンは、複数の円周方向に配置された電極で覆われた選択的に透過可能な膜で被包されている。
【0016】
別の実施形態では、バルーンは、生体活性材料を含む膨張媒体を受容するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、組織分析装置は、体内組織を特徴付けるように構成されている。
【0018】
他の実施形態では、電極送達部は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、特徴付けられた体内組織に応答して生体活性材料を放出するよう、通電される。
【0019】
別の実施形態では、電極送達部は、生体活性材料を送達する前、送達している間および/または送達した後に、体内組織を加熱するよう、通電される。
【0020】
別の実施形態では、熱的に変化しやすいコーティングは、2以上の放出可能な生体活性材料を含む。各材料は、異なる相変化温度を有してもよい。
【0021】
別の実施形態では、生体活性材料は、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、化学溶媒、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、抗マクロファージ物質または上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0022】
さらに別の実施形態では、生体活性材料は、リポソームの一部に付着している。
【0023】
別の実施形態では、熱的に変化しやすいコーティングは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリレートまたは上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0024】
他の実施形態では、エネルギー源はRFエネルギー源であり、送達部は、RFエネルギーを伝達して、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化するように構成されている。
【0025】
他の実施形態では、エネルギー源は光エネルギー源であり、送達部は、光エネルギーを伝達して、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化するように構成されている。
【0026】
例示的な実施形態では、放出可能な生体活性材料を選択的に送達するための方法は、カテーテルのバルーンを放射状に拡張することによって、内腔の周囲に位置する体内組織を熱的に変化しやすいコーティングと関連させることを含む。熱的に変化しやすいコーティングは、バルーン表面に配置されている。バルーンの表面は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱するよう、通電される。生体活性材料は、熱に応答して、熱的に変化しやすいコーティングから体内組織に放出される。
【0027】
別の実施形態では、送達部は、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の電極を含み、セレクト電極対は、電極対間にある熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、液化するよう、通電される。
【0028】
さらに別の実施形態では、内腔の体内組織は罹患部を含む。セレクト電極対は、罹患部に近接した熱的に変化しやすいコーティングを加熱するよう、通電される。
【0029】
別の実施形態では、組織を特徴付けて、治療すべき体内組織を特定する。熱的に変化しやすいコーティングの部分を選択的に加熱して、特徴付けられた体内組織に応答して生体活性材料を放出させ、特定された体内組織を治療する。
【0030】
別の実施形態では、生体活性材料を送達する前、送達している間および/または送達した後に、体内組織を加熱する。生体活性材料は、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、固着することなくより高い温度を可能にするための潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐ電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0031】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、RFエネルギーで通電される。
【0032】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、レーザーエネルギーで通電される。
【0033】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、超音波エネルギーで通電される。
【0034】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、マイクロ波エネルギーで通電される。
【0035】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に生体活性材料を送達するためのカテーテルシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーンに近接した、エネルギーを伝達するためのエネルギー送達表面を有する。複数の生体分子は、熱的に放出可能な薬物部とバルーンに共有結合した不活性部とを有する。エネルギー源は、生体分子を加熱して、体内組織に生体活性材料を放出するよう、送達部に選択的に通電するために、コントローラに動作可能に連結されている。
【0036】
例示的な実施形態では、内腔に生体活性材料を送達する方法は、内腔の周囲に位置する体内組織を複数の生体分子と関連させることを含む。拡張可能なバルーンが拡張するときに、熱的に放出可能な薬物部と不活性部とは、カテーテルの遠位端近くのバルーンに共有結合される。バルーンに近接したカテーテルの電極送達部は、生体分子を加熱し、生体分子の加熱に応答して生体分子から体内組織に薬物部を放出するよう、通電される。
【0037】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムは、細長い可撓性カテーテル本体を含む。本体は、近位端および遠位端を有する。放射状に拡張可能な構造は、カテーテル本体の遠位端の近くにある。複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造により拡張可能であるが、これらの流体送達チャンネルは、熱的に変化しやすい材料で最初に遮断される。エネルギー源は、熱的に変化しやすい材料を加熱し、液化して、流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数を開口させ、流体を放出させるよう、流体送達チャンネルに動作可能に連結されている。
【0038】
別の実施形態では、複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造から突き出て、内腔の体内組織に入り込んでいる。
【0039】
別の実施形態では、組織分析装置は、体内組織を特徴付けるように構成されている。
【0040】
さらに別の実施形態では、流体送達チャンネルは、特徴付けられた体内組織に応答して1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させるよう、選択的に通電されることができる。
【0041】
別の実施形態では、放射状に拡張可能な構造はバルーンを含み、流体送達チャンネルは、バルーンの周囲に取り付けられている。さらに別の実施形態では、放射状に拡張可能な構造は拡張可能なバスケットを含み、流体送達チャンネルは、バスケットの周囲に取り付けられている。
【0042】
別の実施形態では、内腔の体内組織は罹患部を含む。セレクト電極は、罹患部に近接した1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させるよう、通電される。
【0043】
別の実施形態では、セレクト電極は、体内組織を加熱するとともに、内腔に流体を放出するよう、通電される。
【0044】
他の実施形態では、流体は、セラミド、スラミン、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、ゾタロリムス、エベロリムス、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、(固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐための電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0045】
好ましい実施形態では、体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムは、内腔の周囲に位置する。このシステムは、近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体を含む。放射状に拡張可能な構造は、カテーテル本体の遠位端の近くにある。複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造が拡張したときに、内腔の体内組織に働きかけるように配向されている。複数の微小電気機械システム(MEMS)は、1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させ、内腔に流体を放出するよう、流体送達チャンネルに連結されている。
【0046】
別の実施形態では、内腔に選択的に流体を送達するための方法は、内腔の内側の構造を放射状に拡張させることによって、内腔の周囲に位置する体内組織を複数の流体送達チャンネルと関連させることを含む。流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数が選択的に開口し、セレクト流体送達チャンネルから内腔に流体を放出する。
【0047】
別の実施形態では、1以上の流体送達チャンネルは、流体送達チャンネルを選択的に開口させるおよび/または閉口させるように流体送達チャンネルに連結された複数の微小電気機械システム(MEMS)を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に薬物を送達するためのカテーテルアセンブリは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。放射状に拡張可能な多孔性バルーンは、内面および外面を有する。バルーンは、エネルギーを伝達するためのバルーンに近接したエネルギー送達表面を有するカテーテルの遠位端の近くに位置している。内面および外面を有する選択的多孔性膜は、バルーン表面を覆っている。バルーンを膨張媒体で膨張させたとき、バルーンを膨張させるための、薬物を含む膨張媒体は、多孔性バルーンの外面と膜の内面の間に導入される。エネルギー源は、エネルギー送達表面にエネルギーを送達すると同時に、バルーンが内腔の内側で拡張して、バルーンの外面から膜を通して体内組織に薬物を送達するよう、カテーテルの近位端に連結されている。
【0049】
別の実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するためのカテーテルシステムは、近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体を含む。カテーテル本体の遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンは、内面および外面を有する。外面は、生体適合性マトリックスと、マトリックス表面の可溶性の生体活性材料のコーティングとから構成されている。この材料は、バルーンが組織を広げながら拡張し、流体圧が浸透圧を超えたときに、水分によって生体活性材料が可溶化されて、この生体活性材料がマトリックスから放出されるよう、組織の湿った表面に配向されている。
【0050】
他の実施形態では、エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーン上にエネルギー送達表面を有する。放出可能な生体活性材料を有する変化しやすいコーティングはバルーンに連結されている。変化しやすいコーティングは、バルーンが拡張したときに、標的組織に働きかけるように配向されている。 エネルギー源は、変化しやすいコーティングを変化させ、標的組織に生体活性材料を放出するよう、エネルギー送達表面に通電するように、カテーテルに動作可能に連結されている。
【0051】
多くの例示的な実施形態では、バルーン部は、エネルギーの適用、インビボ環境への曝露、またはその組合せによって組織に向けられる1種の生体活性物質または複数種の生体活性物質を含有する1以上の表面コーティングまたは層をさらに含んでもよい。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、バルーンカテーテルの表面は、潤滑剤、導電性化合物、組織の層を通って移動して、エネルギーを間質層に運ぶことを意図した化合物、または任意のその組合せをさらに含んでもよい。
【0053】
他の例示的な実施形態では、バルーン部は、電極に最も近接した部分へのエネルギーの直接的伝達を回避することが好ましい絶縁部をさらに含んでもよい。
【0054】
さらに他の例示的な実施形態では、バルーン部は、バルーンの表面に直接付着した生体活性物質から構成されてもよい。
【0055】
さらに他の例示的な実施形態では、バルーンカテーテルシステムは、生体活性物質の放出、生体活性物質の活性化、またはその組合せに使用し得る光エネルギー伝達手段からさらに構成されている。
【0056】
さらに他の代わりの例示的な実施形態では、バルーンは、生体活性物質の送達を助ける、送達チャンネル、または多孔性材料、またはマトリックス、またはその組合せから構成されてもよい。
【0057】
本発明の好ましい実施形態は、組織内で生物学的効果を達成するための治療的処置において使用し得る。本発明を、血管形成処置の前、その間、および/またはその後の任意の時点およびタイミングで使用し得ることが最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に生体活性物質を送達するためのコーティングを有するカテーテルシステムの一実施形態を模式的に示す。
【図2】図1のカテーテルシステムで使用される膨張可能バルーンの一実施形態を模式的に示す。
【図3A】図2のバルーンの断面図を模式的に示す。
【図3B】図2のバルーンの拡大図である。
【図3C】図3Aのバルーン表面の層状コーティングを模式的に示す。
【図4A】電極を被覆するコーティングを模式的に示す。
【図4B】電極を被覆するコーティングを模式的に示す。
【図4C】組織の治療に使用される被覆電極を模式的に示す。
【図5】組織の治療におけるアプタマーの使用を模式的に示す。
【図6】組織解析に使用される電極対の配置と、生体活性物質を送達する前、送達している間、および/または送達した後の選択的エネルギー処理とを模式的に示す。
【図7】内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するための流体送達チャンネルを有するカテーテルシステムの別の実施形態を模式的に示す。
【図8A】図7のバルーンの断面図を模式的に示す。
【図8B】バルーンの表面に取り付けられた電極に連結されたバルーンを貫通する流体送達チャンネルを示す、図7のバルーンの拡大断面である。
【図8C】流体送達チャンネルと、組織に埋め込まれた図8Aおよび8Bの電極とを示す拡大断面図である。
【図9A】バルーン表面への結合によって連結された熱的に放出可能な活性部および不活性部を有する生体活性分子を用いた組織治療を示す断面図を模式的に示す。
【図9B】バルーン表面への結合によって連結された熱的に放出可能な活性部および不活性部を有する生体活性分子を用いた組織治療を示す断面図を模式的に示す。
【図10A】標的とされた組織に放出されるバルーン表面の生体活性物質を模式的に示す。
【図10B】標的とされた組織に放出されるバルーン表面の生体活性物質を模式的に示す。
【図11A】複数の生体活性物質を含むリポソームを模式的に示す。
【図11B】リン脂質二重層の拡大断面図である。
【図11C】バルーンからのリポソームの放出を模式的に示す。
【図11D】リポソームの組織取込みの拡大模式図である。
【図12】組織病変に向けられたバルーンからのエネルギーおよび生体活性物質の放出を模式的に示す。
【図13A】図1のカテーテルシステムで使用されるバルーンの別の実施形態を模式的に示す。
【図13B】図13Aの拡大断面図である。
【図13C】エネルギーが図13Bに適用されたときの生体活性物質の放出を模式的に示す。
【図13D】生体活性物質がバルーンの膨張媒体を含む場合の、図13Aの別の実施形態を模式的に示す。
【図14A】図14Aは、図1のカテーテルシステムで使用されるバルーンのさらに別の実施形態を模式的に示す。
【図14B】生体活性物質を組織に放出する図14Aのバルーンを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の実施形態は、治療効果を達成するためにエネルギーおよび生体活性材料を有向送達することによって、標的とされた組織を治療することに関する。好ましくは、標的組織は内腔組織であり、この内腔組織はさらに、罹患組織(例えば、動脈疾患に見られる罹患組織)を含んでもよい。しかしながら、エネルギーの有向送達および/または生体活性剤の送達を含む治療のために任意の組織を標的とし得る。エネルギーの有向送達は、組織の治療、生体活性物質の送達の補助、生体活性物質の組織取込みの補助、または任意のそれらの組合せのために使用され得る。
【0060】
本発明によって想定される生体活性物質は、単独でまたは組み合わせて送達され得る。生体活性物質の例は、巨大分子または小分子であってもよく、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、および抗マクロファージ物質を含み得るが、これらに限定されない。
【0061】
標的とされた組織を選択的に治療するために、バルーンカテーテル表面のコーティングに生体活性物質を組み込んでもよく、エネルギーを1回内腔の内側に有向適用することによって放出し得る。本発明のいくつかの実施形態は、加熱を用いて生体活性コーティングを放出する。他の実施形態は、組織に送達する前に、送達している間に、および/または送達した後に、生体活性物質の送達を標的組織加熱と組み合わせる。RF(すなわち、ラジオ周波数)エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギーおよびレーザーエネルギーを用いて組織を加熱するための装置は、米国特許出願第11/975,474号、同第11/975,383号、同第11/122,263号、および米国仮特許出願第61/099,155号に開示されており、これらの文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。バルーンカテーテルに基づくエネルギー送達システムの模式図を図1および図7に示す。
【0062】
薬物送達コーティング
図1は、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するための放出可能なコーティングを有するカテーテルシステム10の一実施形態を示す。カテーテルシステム10は、近位端16および遠位端18を有するカテーテル本体14を有するバルーンカテーテル12を含む。カテーテル本体14は可撓性があり、カテーテル軸15を規定し、ガイドワイヤ内腔22および膨張内腔24などの1以上の内腔を含んでもよい。カテーテル12は、遠位端18に隣接する膨張可能バルーン20および近位端16に隣接するハウジング29を含む。ハウジング29は、ガイドワイヤ内腔22と連通する第1のコネクタ26および膨張内腔24と流体連通する第2のコネクタ28を含む。膨張内腔24は、バルーン20と第2のコネクタ28の間に延在する。第1と第2の両方のコネクタ26、28は、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0063】
ハウジング29は電気コネクタ38も収容する。コネクタ38は、各々導体36を介して電極34に電気結合される、複数の電気接続部を含む。これにより、電極34は易に通電され、電極は、多くの場合、コントローラ40およびRFエネルギーなどの動力源42によって通電される。一実施形態では、電気コネクタ38は、コントローラ40を介してRF発生器に連結され、コントローラ40は、エネルギーが電極34に選択的に向けられることを可能にする。RFエネルギーが開示されているが、各々、所望のエネルギーを送達するように構成されたエネルギー送達表面を有する、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、またはレーザーエネルギーなどの、他の好適なエネルギー源を使用してもよい。2008年9月22日に出願された同時係属の米国仮特許出願第61/099,155号(代理人整理番号021830−002400US)を参照されたく、この文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、コントローラ40は治療を制御もしくは記録するためにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。プロセッサは、通常、コンピュータハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み、これらは、多くの場合、1以上の本明細書に記載の方法の一部もしくは全てを実装するための機械可読のプログラム命令またはコードを実行する1以上のプログラム可能なプロセッサユニットを含む。コードは、多くの場合、メモリ(任意で、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリなど)および/または記録媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、CD、DVD、不揮発性固体メモリカードなど)などの有形的表現媒体において具現化される。コードならびに/または関連するデータおよび信号を、ネットワーク接続(例えば、ワイヤレスネットワーク、イーサネット(登録商標)、インターネット、イントラネットなど)を介して、プロセッサに送信するかまたはプロセッサから送信することもでき、かつコードの一部もしくは全てを、1以上のバスを介して、カテーテルシステム10の構成要素間でおよびプロセッサ内で送信することもでき、また、適当な標準的なまたは独自仕様の通信カード、コネクタ、ケーブルなどは、多くの場合、プロセッサに含まれている。プロセッサは、少なくとも一部は、単一のプログラム、一連の個別的なサブルーチンまたは関連プログラムなどとして記載され得るソフトウェアコードを用いてプロセッサをプログラムすることにより、本明細書に記載の計算および信号送信工程を行なうように構成されていることが多い。プロセッサは、標準的なまたは独自仕様のデジタルおよび/またはアナログ信号処理ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームフェアを含んでもよく、かつ通常、患者を治療している間に本明細書に記載の計算を行なうのに十分な処理能力を有しており、このプロセッサは、任意で、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、独自仕様のプロセシングユニット、またはその組合せを含む。現代のコンピュータシステムに付随する標準的なまたは独自仕様の入力装置(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、ジョイスティックなど)および出力装置(例えば、プリンタ、スピーカー、ディスプレイなど)も含まれてよく、かつ複数のプロセシングユニットを有するプロセッサを(または別々のコンピュータも)、広範な集中データ処理アーキテクチャまたは分散データ処理アーキテクチャにおいて利用してもよい。
【0065】
バルーン20は、図2でより詳細に図示されている。バルーン20は通常、膨張内腔24に連結された近位部30およびガイドワイヤ内腔22に連結された遠位部32を含む。バルーン20は、流体または気体で膨張させたとき、放射状に拡張する。いくつかの実施形態では、流体または気体は非導電性であってもよく、かつ/または冷却されてもよい。いくつかの実施形態では、バルーン20は、加圧されて動脈組織に接触する低圧バルーンであってもよい。他の実施形態では、バルーン20は、より高い圧力をかけて、動脈組織を加熱すると同時に、動脈内腔の拡張することもできる血管形成バルーンである。バルーン20は、特に、使用後に取り出すために、放射状に拡張した、膨張した形状から扁平な形状へのバルーンの再構成を容易にするらせん状のひだを有するコンプライアントバルーンまたはノンコンプライアントバルーンを含んでもよい。
【0066】
電極34はバルーン20の表面に取り付けられており、関連導体36は電極から近位に伸びている。電極34は、バルーン20表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。システムは、エネルギーの単極適用または双極適用のために使用されてもよい。双極エネルギーの送達では、隣接電極は軸方向に相殺されて、双極エネルギーが隣接する円周状の(軸方向に相殺された)電極間に向けられる。他の実施形態では、電極は、双極エネルギーが隣接する遠位電極と近位電極の間に向けられるように、バルーン周囲に帯状に配置されてもよい。
【0067】
コーティング35はバルーン20に連結されており、例えば、図3Aおよび3Bに示すような、電極34間に位置している。コーティング35は、標的とされた組織に送達されるべき流体または薬物を含む。コーティングは熱的に活性化され、かつ体温を上回る(37℃よりも高い)温度でバルーン表面から放出されるように構成されていることが想定される。エネルギーを送達するかまたは加熱して、コーティング化合物の相を固体から液体に変化させ、薬物を放出させることがその狙いである。この温度上昇は、RFエネルギーを用いて電極34を活性化させることに関わる。エネルギーが増大するとともに、電極34間のコーティング35が加熱され、局所組織48に熱的に放出される。コーティング35は、分離または剥離することなくバルーン20に包み込むことができる程度に耐久性があるかまたは可撓性がある。このメカニズムによって、小さいまたは大きい分子薬物または医薬品が放出され得る。薬物は固体ゲル形態であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、バルーン20表面のコーティング35bの層には、各々異なる物理的特性(例えば、相変化温度)を有する2以上の生体活性物質、流体、またはコーティング層(図3C)を組み込んでもよい。例えば、概略位置に神経がある可能性がある場合、麻酔薬を、より高い温度の特定の治療の前に、より低い融解温度で投与することができる。図3Cに示すような、いくつかの実施形態では、例えば、積層することによって、異なる材料のコーティングを使用してもよい。例えば、第1の層は、第2の層中の第2の生体活性物質35cに対する受容体として働く、標的組織48に付着している第1の生体活性物質35bを含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング35Aを用いて、例えば、図4Aに示す、電極34を被覆してもよい。第2のコーティング35Aは、電極34表面の絶縁コーティングであってもよい。第2のコーティング35Aは、内腔内の金属体(例えば、ステント)の内側を治療する場合に使用されるが、それは、例えば、電極34が金属に接触することになれば、ショートして、治療を終わらせる可能性があるからである。電極が金属体でショートし得ないような電気特性を有する材料で電極34がコーティングされていれば、金属体と接触した場合でも治療を継続することができる。このため、カテーテルシステム10によりステントのような物体の内側を治療することができる。第2のコーティング35Aは、電極34を図4Bに示すような組織48から絶縁するように働くこともでき、それによって、組織48を通るエネルギーの流れが停止/禁止され、コーティング35を通じてエネルギーが送られ、電極34間のコーティング35だけが加熱され、薬物が組織48に放出される。第2のコーティング35Aはまた、コーティング35とは異なる薬物を含んでもよい。
【0070】
例として、図4Cに示すように、内腔内の金属体(例えば、ステント内再狭窄90が存在するステント)の内側または近くを治療する場合、絶縁コーティングを用いることが好ましいが、それは、電極が金属に接触することになれば、ショートする可能性があり、治療が終わることになるからである。それゆえ、いくつかの実施形態では、金属などの導電性物体(図4C)と近接したときにショートを回避し、それにより、そのような状況下で治療を継続することができるように、電極を絶縁することが好ましい。電極を組織から絶縁するように働くこともでき、それによって、エネルギーがバルーン表面の選択された場所に向けられると同時に、エネルギーが組織部位に直接流れるのを防ぐことができる。
【0071】
多くの種類の薬物がコーティングに含まれてもよい。例えば、コーティングは、シロリムス(サイファー(商標)ステントで使用される)、パクリタキセル(タクサス(商標)ステントで使用される)、ゾタロリムス(エンデバー(商標)ステントで使用される)およびエベロリムス(ザイエンスV(商標)ステントで使用される)などの、薬物溶出ステントの中で現在使用されている薬物を含んでもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態は、加熱されたときに(例えば、RFエネルギー源が活性化されたときに)、容易に分解する基質を用いてバルーン20にコーティングされたアプタマー52を含んでもよい。アプタマーは、特異的な標的分子に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子である。アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸などの様々な分子標的、さらには細胞、組織および生物体に極めて特異的に結合するように人工的に作製することができる。アプタマー52は、内腔または動脈内の標的されるべき所望の組織48(例えば、プラーク)との結合54が生じるように合成することができる。
【0073】
カテーテルシステム10に動力が供給されず、バルーン20がしぼんでいる間、アプタマー52を含むコーティング35は、バルーン20表面にとどまっている。ひとたびバルーン20が膨張し、エネルギーユニットがオンになれば、コーティングが放出され、例えば、アプタマー52が、図5に示す所望の組織に結合する。いくつかの実施形態では、アプタマー52は、カテーテルシステム10によって放出されるエネルギー58(例えば、RFエネルギー)を受け入れる力が大きい微小ビーズ56にコンジュゲートされている。ビーズ56は、アプタマー52が接触している組織に直接、そして、アプタマー52が接触している組織に対してのみ、RFエネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0074】
アプタマーは、抗体とほとんど同じように分子の表面に結合する核酸である。アプタマーと抗体の1つの重要な違いは、アプタマーは化学合成で産生できるのに対し、抗体は、まず動物、次に、培養または発現系で、生物学的に産生されるということである。もう1つの重要な違いは、アプタマーは非常に安定であり、温度をはじめとする周囲環境に影響を受けないということである。
【0075】
いくつかの実施形態では、コーティング35は、プラーク軟化特性を有する化学溶媒を含んでもよい。エーテル、クロロホルム、ベンゼン、およびアセトンは、脂質溶媒であることが知られている。さらに、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、および核酸は、これらの溶媒中では、ほぼ不溶性である。組織加熱とともに溶媒が使用される場合、組織治療は、より短い時間にあまり多くのエネルギーを必要とせず、健康組織に対する損傷の可能性を軽減することができる。組織がカルシウム沈着を含む場合、脂質溶媒をプラークに送達するために使用されるものと同じプロセスを用いて、カルシウム溶媒を石灰化部位に送達することができる。カルシウムは、種々の有機溶媒に極めてよく溶ける。どちらの場合も、溶媒は、熱もしくはRFエネルギーの適用によってまたはバルーンが膨張したときに分解するコーティングとともにバルーンの表面に連結されることになる。
【0076】
いくつかの実施形態では、コーティングは、各々異なる相変化温度を有する、本明細書に記載の2以上の薬物、薬剤、または流体を内部に組み込んでもよい。例えば、概略位置に神経がある可能性がある場合、麻酔薬を、より高い温度の特定の治療の前に、より低い融解温度で投与することができる。いくつかの実施形態では、例えば、積層することによって、異なる材料の2つのコーティングを使用してもよい。例えば、第1の層は、標的組織に付着している第1の薬物を含み、第2の層中の第2の薬物に対する受容体として働くことができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、電極間の電気ショートを減少または消失させるために非導電性である。
【0077】
いくつかの実施形態では、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定することができる。内腔内の放射状に間隔の開いた電極34を用いるインピーダンス測定を用いて、組織を解析することができる。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示す。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0078】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、「Q10則」を利用する「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的薬物送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、流体または薬物治療をさらに強化してもよい。Q10則の下では、温度を10℃増加させると、生化学的反応速度が通常2倍になることがよく知られている。
【0079】
図6に示すように、電極34は、バルーン20の周囲に円周方向に位置している。RFエネルギー43は、隣接電極対の34Aと34C、または34Aと34D、または34A〜34Dの任意の組合せの電極に向けられ、健康組織45と内腔50の内部のアテローム動脈硬化性物質48の両方を治療する。この配置によって、組織を通るエネルギー路43が作り出され、特定の治療域または治療部分におけるエネルギーまたは熱(「組織再構築エネルギー」)が、特定の深さの電極対間に容量を有する電極対間の動脈組織(「再構築域」)に送達される。様々な組合せの電極対を使用することで、重複する対を用いて、再構築域間のギャップを減少または消失させ得る。双極エネルギーを有する電極対を用いることで、単極手法のいくつかの潜在的な問題を回避し得る。罹患動脈組織48は、健康な動脈組織よりも高い電気抵抗率を有する。双極システムで、電極34A、34Bの対を用いることによって、組織再構築エネルギーは、再構築域の電極対間の健康組織、罹患組織、または健康組織と罹患組織の両方の組合せを通り抜ける。任意の数の電極対を異なるパターンまたは配列で用いて、いくつかの再構築域を作り出し得る。コントローラは、定電力、定電流、または定電圧のいずれかの最も大きな利点があるものを適用し得る。
【0080】
コントローラ40は、1〜180秒間に約0.25〜5ワットの平均電力で、または約4〜45ジュールで電極に通電し得る。より高エネルギーの治療は、0.5ワットで90秒間または0.25ワットで180秒間などの、より低い電力およびより長い持続時間で行なわれる。2〜4ワット範囲の大半の治療は、1〜4秒のうちに行なわれる。より幅広い電極間隔を用いるならば、治療の電力および持続時間を拡大することが適切であり、その場合、平均電力は、5ワットよりも高くなる可能性があり、総エネルギーは、45ジュールを超える可能性がある。同様に、より短いまたはより小さい電極対を用いるならば、平均電力を縮小する必要があり、総エネルギーは、4ジュール未満になる可能性がある。電力および持続時間は、重度の損傷を引き起こさない程度に、特に血管内の罹患組織48を焼灼しない程度に調整される。
【0081】
いくつかの実施形態では、薬物および穏やかな熱の送達は、標準的な非加熱血管形成膨張圧またはそれよりも著しく低い膨張圧で動脈を再構築するために穏やかな膨張を用いるバルーン血管形成を伴ってもよい。10〜16気圧のバルーン膨張圧が、例えば、特定の病変の標準的な血管形成膨張に適している可能性がある場合、本明細書に記載されている(バルーン表面の可撓性回路電極、バルーン構造に直接蒸着された電極などを通る)適切な電位と組み合わせた修正した膨張治療は、10〜16気圧を使用してもよいし、または6気圧未満、場合によっては、わずか1〜2気圧の圧力で達成されてもよい。そのような中程度の膨張圧を、組織特徴付け、同調エネルギー、偏心治療、および末梢血管系の疾患の治療のために本明細書に記載されている他の治療態様のうちの1つまたは複数の態様と組み合わせてもよい(または組み合わせなくてもよい)。
【0082】
共有結合した生体分子
過形成性新生内膜を予防するかまたは恒久的に除去するための現在の血管内療法は、完全に有効というわけではない。そのような組織の除去は、複数のそのような療法によって達成されるが、組織の再増殖が頻繁に起こり、再狭窄および血流機能不全をもたらす。薬物溶出ステントは、再狭窄の頻度を抑えることができるが、持続的なインプラント、すなわち、ステントが存在するために、血管機能の完全回復にはほど遠くなる。
【0083】
つい最近では、薬物凝固バルーンが、薬物溶出ステントよりもさらに大きく再狭窄の頻度を低下させることを示し、このバルーンは、治療後に除去されるが、抗増殖性/抗炎症性生体分子を任意で送達するために高圧膨張が必要となる。これらの分子は、炎症性細胞の流入(走化性)や細胞増殖を防ぐことによって、再狭窄を予防するように機能し得る。これらの分子はまた、構造的な支持体を提供し、それにより内腔直径を「定める」ことによって、IELマトリックスを安定化するように機能し得る。
【0084】
さて、図9Aおよび9Bに移ると、体内組織248に薬物を送達するためのカテーテルシステム200の別の実施形態が図示されている。システム200は、バルーン20に連結された生体分子235をコーティングの代わりに使用していることを除いて、上記のシステム10と類似している。生体分子235は、バルーン20表面に共有結合で連結された熱的に放出可能な活性部235aおよび不活性部235bを含む。活性部または分子235bは、所望の組織248を治療することができ、これは、温度または圧力で強化し得る。生体分子の不活性部235aはバルーン表面にとどまる。本明細書に記載の実施形態は、低圧膨張とバルーンからアテローム性動脈硬化病変へのエネルギー送達とによって、バルーンに共有結合している生体分子の活性部を高温で放出する高周波血管内バルーンカテーテルを利用し、それにより分子の活性部を標的とされた組織に送達する。エネルギーには、超音波放出エネルギーが含まれてもよい。活性分子235bは、限定するものではないが、細胞分裂停止(有糸分裂の防止)、受容体成熟(すなわち、過形成性組織形成を促進する浸潤細胞に付着する/そのような細胞に走化性のある標的とされた組織の細胞における/細胞の表面の受容体)をはじめとする任意の手段によって、過形成性組織の産生を予防するように機能する。
【0085】
分子の生体活性部235bは、局所的な高温環境を誘導する(例えば、電極34からの)エネルギーの送達によって、無傷の生体分子235から放出される。分子は、高温条件下で安定である。分子は、以下の機能:1)細胞増殖;2)細胞機能;3)受容体−リガンド結合;4)炎症性細胞の標的組織への走化性;および5)ネイティブ動脈層の細胞の罹患組織への移動のうちの1つまたは全てを防ぐことができる。
【0086】
分子235bの罹患組織48への流入は、エネルギーを介する低体温によって促進および/または加速される、すなわち、無傷の生体分子からの切断、罹患組織中への移動、および多孔性の増大による罹患組織における在留は全て、高温によって加速される。本発明は、1)低温加速により、より速い速度で、2)罹患組織を分子に対してより受容的/多孔性にすることにより、より完全に、かつ/または3)生体分子の不活性断片を伴わずに(すなわち、不活性断片がバルーン表面にとどまるので、活性化に必要なポリマー、不活性タンパク質配列/断片、もしくは共因子は治療部位に残らない)、生体活性分子を罹患組織内に独特に送達する。
【0087】
プラークを減少させ、ステント留置部位またはステント非留置部位における再狭窄を予防するように臨床的な適用および使用を設計し、また、積極的な非インプラント型血管内処置およびステントインプラントに対する補助的な治療として使用してもよい。
【0088】
流体送達チャンネル
図7は、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するための流体送達チャンネルを有するカテーテルシステム100の別の実施形態を示している。カテーテルシステム100は、近位端116および遠位端118を有するカテーテル本体114を有するバルーンカテーテル112を含む。カテーテル本体114は可撓性があり、カテーテル軸115を規定し、ガイドワイヤ内腔122および膨張内腔124などの1以上の内腔を含んでもよい。カテーテル112は、遠位端118に隣接する膨張可能バルーン120および近位端116に隣接するハウジング129を含む。ハウジング129は、ガイドワイヤ内腔122と連通する第1のコネクタ126および膨張内腔124と流体連通する第2のコネクタ128を含む。膨張内腔124は、バルーン120と第2のコネクタ128の間に延在する。第1と第2の両方のコネクタ126、128は、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0089】
ハウジング129は電気コネクタ138も収容する。コネクタ138は、各々導体136を介して電極134に電気結合される、複数の電気接続部を含む。これにより、電極134は容易に通電され、電極は、コントローラ140およびRFエネルギーなどの動力源142によって通電されることが多い。一実施形態では、電気コネクタ138は、コントローラ140を介してRF発生器に連結され、コントローラ140は、エネルギーが電極134または電極対に選択的に向けられることを可能にする。コントローラ140は、プロセッサを含んでもよく、または治療を制御もしくは記録するためにプロセッサに連結されてもよい。
【0090】
図8Aはバルーン120の断面図を示し、図8Bは、バルーン120の表面に取り付けられた電極134に連結されたバルーン120を貫通する流体送達チャンネル160を示す拡大断面を示す。電極134は、電極から近位に伸びた関連導体を含む。電極134および流体送達チャンネル160は、バルーン120表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。流体送達チャンネル160は、流体152を保持する流体貯留層または内腔162に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、膨張媒体は、送達すべき流体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、バルーン120を貫通するチャンネル160に、チャンネルを開口させるために熱的に放出することができるワックス状材料164(または放出することができる任意の他の材料)を充填してもよい。他の実施形態では、電極134は、フラップを開閉させて、流体を放出してもよい。
【0091】
送達チャンネル160は、内腔の体内組織に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。いくつかの実施形態では、電極が体内組織に入り込んでもよい。
【0092】
カテーテルシステム100はまた、体内組織を特徴付けるように構成されている組織分析装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極134は、電気インピーダンストモグラフィーを用いて治療すべきまたは治療すべきでない領域を特定するために組織を特徴付けるのを助けることができる、上で論じたような検出電極であってもよい。例えば、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。電極134は、特徴付けられた体内組織に応答して通電されてもよい。
【0093】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、上で論じたように、「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的流体送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、流体送達または治療をさらに強化してもよい。
【0094】
電極134は、流体送達チャンネル160を開閉させて、組織を治療するよう、選択的に通電され得る。1つの方法は、それ以外の場合にはチャンネルを遮断する材料164が、固体から液体へと相変化するように、電極を選択的に加熱することによって(ジュール加熱または隣接領域に上昇した温度を誘導し、それにより熱伝導で電極を加熱することを含む、他の手段によって)流体送達チャンネル160を開口させることを含む。別の考えられる方法は、MEMS(微小な電気機械システム)を用いて、チャンネル160を選択的に開口させるおよび/または閉口させることを含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、電極(灌流電極)を貫通するビアであってもよい。ビアまたは小さな穴を用いて、流体を電極に近接する動脈組織に送達してもよい。穴は直径1μm未満であってもよく、かつレーザーまたはイオンビームを用いて作ってもよい。穴は、電極およびバルーンの中に作られてもよい。一例では、可撓性回路上の電極パッドは、めっきしたビアを有するように設計される。可撓性回路をバルーン表面に取り付け、レーザーまたはイオンビームを用いて、可撓性基板およびバルーンに穴を作る。あらゆる電極パッドについて可撓体/バルーンに数個の穴があってもよい。その後、バルーンに標準的な灌流バルーン機器または特殊な機器を用いて灌流させてもよい。この灌流手法は、固着を取り除くこと、熱を取り除くこと、または電気機器のインピーダンスを調節することなどの、流体送達以外の追加の利点も提供し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、マイクロレベルの流体送達チャンネルを有し、熱を加えることによってセレクト分子を通過させることができる、多孔性バルーンを使用してもよい。多孔性バルーンは、内層、多孔性の外層または膜、層(すなわち、貯留層)と外層に連結された電極との間に位置する薬物または流体分子を有してもよい。低圧では、分子は貯留層内部にとどまる。熱を加えると、分子は多孔性の層を通過し得るが、これは、様々な方法でなされ得る。例えば、熱を加えると、薬物分子が流出するようになり、多孔性の外層を通過するのに十分な力が生じ得る。別の例では、バルーンに熱を加えると、孔が拡大し、薬物分子が多孔性の層を通過することが可能になる。分子はまた、熱とともに浸透圧によって、多孔性の層または膜を通過し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療は、薬物、および/または熱、および/または小分子もしくは巨大分子の注入、および/またはRF、および/またはバルーン拡張、および/または高温を含んでもよい。
【0098】
他の実施形態では、当技術分野で公知の電気機械的または機械的手段を利用して、流体を放出させてもよく、これらの手段の例として、コントローラで駆動されるフラップまたは微小流体型装置165を挙げることができる。図8Cに示すように、送達チャンネル234は、体内組織48(例えば、内腔組織)に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。
【0099】
本明細書に開示されている装置、システム、および方法では、放射状に拡張可能な構造としてのバルーンが論じられているが、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる2007年10月18に出願された米国特許出願第11/975,651号(代理人整理番号021830−000540US)に記載されているような、他の拡張可能な構造も使用し得る。
【0100】
熱的に励起された浸透圧
いくつかの実施形態では、膜にマイクロレベルの流体送達チャンネルを有し、圧力および熱を加えることによって分子を通り抜けさせることができる、多孔性バルーンを使用してもよい。この概念では、逆浸透とほとんど同じように、流体または薬物を膜に通すことによって、流体または薬物が特定の部位に送達される。逆浸透では、圧力を用いて、水などの液体を膜に通すが、通路が非常に小さいので、適切な分子しか通過することができない。この実施形態では、膜バリアによって、パクリタキセルのような薬物は保持される。低圧では、薬物分子は膜を通過することができない。膜を通して薬物を放出するために、バルーンを用いて薬物分子に圧力をかけ、電極対または単極電極によって局所的にエネルギーを適用することによって、薬物の放出を加速させる。
【0101】
多くの実施形態では、エネルギー送達表面は、複数の間隔の開いた電極(例えば、図3A、3B、3C、4A、4B、6、8A、8B、10A、10B、11C、12、13A、13B、13C、13D、および14Bに示したような電極)を含む。図1および図7に示すようなエネルギー源は、選択された電極に選択的に通電するように、複数の電極に動作可能に連結される。エネルギーは、変化しやすいコーティングの部分を加熱して(加熱される部分は、任意で、電極間にある)、生体活性物質50を、図3B、3C、4B、5、9A、9B、10A、10B、11C、12、13C、14A、および14Bに示すような標的組織に直接的にまたは間接的に放出し得る。多くの実施形態では、組織は、内腔の罹患部を含んでもよく、セレクト電極は、罹患部に近接する熱的に変化しやすいコーティングを選択的に加熱するよう、通電される。
【0102】
多くの実施形態では、エネルギー送達表面は、バルーンが内腔の内側で拡張したときに標的組織中に複数の再構築域を規定するよう、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の電極を含む。図6に示すように、電極は好ましくは組織と連結しており、エネルギーは、生物学的応答を開始するよう、電極と組織の間で伝達され得る。バルーンは、通常、バルーンカテーテルの遠位端を含み、バルーン表面のエネルギー送達表面には、一般に、カテーテルの近位端に連結されたエネルギー源を用いて通電される。エネルギー管は、近位端とバルーンの間をカテーテル本体に沿って延在し、このエネルギー管は、導電体(RFエネルギーなどを適用するため)、導光体(例えば、レーザーまたは他の光エネルギーを伝導するための、カテーテル本体の中を内腔に沿って走る光ファイバー繊維)などを含むことが多い。
【0103】
いくつかの実施形態では、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定してもよい。内腔内の円周方向に配置された電極(例えば、図6に示す電極)を用いるインピーダンス測定を用いて、組織を解析してもよい。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示し得る。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0104】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、「Q10則」を利用する「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的な生体活性物質の送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、生体活性物質治療をさらに強化してもよい。Q10則の下では、温度を10℃増加させると、生化学的反応速度が通常2倍になる。
【0105】
いくつかの実施形態では、電極は、バルーンの周囲に円周方向に離れており、RFエネルギーは、選択された電極または任意の選択された電極の組合せに向けられ得る。エネルギーを受容する電極を選択することにより、コントローラ(例えば、図1および図7に示すコントローラ)は、生体活性物質(図3B、3C、4B、5、8B、9B、10B、11C、12、13C、14B)の放出、生体活性物質の組織取込みの補助、またはその組合せのために、エネルギーを組織に適用する目的で罹患組織部位に向けてエネルギーを有向適用し得る(図6)。
【0106】
いくつかの実施形態では、バルーンカテーテルまたは他のカテーテルシステム表面のコーティングはまた、ポリマー(単数または複数)(図3A、3B、3C、4B、10A、10B、12、13A、13B、14A、14B)、(例えば、固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐ電気絶縁化合物(図4A)、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物(図5)、または任意のその組合せから構成されてもよい。
【0107】
バルーンを含む実施形態では、バルーンはまた、当技術でよく知られているような、コンプライアント材料またはノンコンプライアント材料(それらの組合せを含む)から構成されてもよい。
【0108】
組織検出およびエネルギーの選択的方向付け
エネルギーを選択的に方向付けるとき、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定してもよく、このインピーダンス測定は、図6に示すような、内腔内の間隔の開いた電極、例えば、円周方向に配置された電極を用いて、組織を解析することによって行なってもよい。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示し得る。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、コントローラ(例えば、図1および図7に示すコントローラ)は治療を制御もしくは記録するためにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。プロセッサは、通常、コンピュータハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み、これらは、多くの場合、1以上の本明細書に記載の方法の一部もしくは全てを実装するための機械可読のプログラム命令またはコードを実行する1以上のプログラム可能なプロセッサユニットを含む。コードは、多くの場合、メモリ(任意で、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリなど)および/または記録媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードドライブ、CD、DVD、不揮発性固体メモリカードなど)などの有形的表現媒体において具現化される。コードならびに/または関連するデータおよび信号を、ネットワーク接続(例えば、ワイヤレスネットワーク、イーサネット、インターネット、イントラネットなど)を介して、プロセッサに送信するかまたはプロセッサから送信することもでき、かつコードの一部もしくは全てを、1以上のバスを介して、カテーテルシステムの構成要素間でおよびプロセッサ内で送信することもでき、また、適当な標準的なまたは独自仕様の通信カード、コネクタ、ケーブルなどは、多くの場合、プロセッサに含まれている。プロセッサは、少なくとも一部は、単一のプログラム、一連の個別的なサブルーチンまたは関連プログラムなどとして記載され得るソフトウェアコードを用いてプロセッサをプログラムすることにより、本明細書に記載の計算および信号送信工程を行なうように構成されていることが多い。プロセッサは、標準的なまたは独自仕様のデジタルおよび/またはアナログ信号処理ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームフェアを含んでもよく、かつ通常、患者を治療している間に本明細書に記載の計算を行なうのに十分な処理能力を有しており、このプロセッサは、任意で、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、独自仕様のプロセシングユニット、またはその組合せを含む。現代のコンピュータシステムに付随する標準的なまたは独自仕様の入力装置(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、ジョイスティックなど)および出力装置(例えば、プリンタ、スピーカー、ディスプレイなど)も含まれてよく、かつ複数のプロセシングユニットを有するプロセッサを(または別々のコンピュータも)、広範な集中データ処理アーキテクチャまたは分散データ処理アーキテクチャにおいて利用してもよい。
【0110】
コントローラは、1〜180秒間に約0.25〜5ワットの平均電力で、または約4〜45ジュールで電極に選択的に通電し得る。より高エネルギーの治療は、0.5ワットで90秒間または0.25ワットで180秒間などの、より低い電力およびより長い持続時間で行なわれる。2〜4ワット範囲の大半の治療は、1〜4秒のうちに行なわれる。より幅広い電極間隔を用いるならば、治療の電力および持続時間を拡大することが適切であり、その場合、平均電力は、5ワットよりも高くなる可能性があり、総エネルギーは、45ジュールを超える可能性がある。同様に、より短いまたはより小さい電極対を用いるならば、平均電力の縮小から恩恵を受けることになり、総エネルギーは、4ジュール未満になる可能性がある。電力および持続時間は、重度の損傷を引き起こさない程度に、特に血管内の罹患組織を焼灼しない程度に調整される。
【0111】
さらに、Q10則によって、生体活性物質の放出と組織取込みを、罹患組織に向けたエネルギーの有向送達と組み合わせる可能性が提供される。
【0112】
標的組織へのエネルギーおよび生体活性物質の選択的送達
好ましい実施形態では、バルーンカテーテルのバルーン部(図2)は、複数の円周方向に配置された電極を含むように構成される(図3A、3B、3C、4A、4B、4C、6、8A、8B、10A、10B、11C、12、13A、13B、13C、13D、14A、14B)。電極間で、複数の生体活性物質から構成される組成物は、バルーンの表面の少なくとも一部に存在する(図3A、3B、3C、4B、9A、10A、10B、11C、12、13B、13C、14A、14B)。複数の生体活性物質を含む組成物はさらに、他の材料(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)から構成されてもよい。バルーンコーティングは、浸け込み、噴霧、蒸着などを用いて塗布されてもよい。例えば、生体活性物質は、約37℃のヒト血液中で安定なポリマーマトリックスであって、選択された電極にエネルギーを適用したときに、選択された電極に隣接するバルーンコーティングを局所的に加熱し、その組成物の成分を放出するポリマーマトリックスから構成されるバルーンコーティング中に担持されてもよい。
【0113】
例として、図10B、図11C、および図12に示す放出は、少なくとも一部は、約37℃を超える温度でのコーティング分解または溶解によって引き起こされ得る。高い温度でより速やかに分解し、それにより、典型的なヒトの体温(約37℃)で保持された場合よりも速やかに生体活性剤を放出するように、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメタクリレートポリマーのような生分解性ポリマーを製剤化することができる。
【0114】
別の例として、放出は、少なくとも一部は、コーティングが局所的に約37℃よりも高く加熱されたときに、コーティングの液化によって引き起こされ得るが、その場合、コーティングは、約37℃未満の温度では固体またはゲル状であり得る。さらに別の例では、コーティングは、例えば、バルーン外面を血液などの体液と接触させたときのpHの変化によって分解し得る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメタクリレートポリマーは、pHの変化によって有用な生体活性化合物を速やかに放出することが知られている。局所での電圧の変化によって誘発されるガルバニック活性を用いて、通電された電極のすぐ近くにあるこれらの化合物を放出させてもよい。PEG化化合物、pNIPAハイドロゲル、キトサンハイドロゲル、キトサンおよびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)から構成される櫛形グラフトハイドロゲル、ならびにポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ポリ(ビニルアルコール)ハイドロゲルは、生体活性物質を含有し、かつ温度、pH、または両方の変化によって生体活性物質を放出するための手段として使用し得る既知のハイドロゲルの例である。
【0115】
エネルギーは、治療のために標的とされる罹患組織の解析および選択に基づいて、図1および図7のコントローラによって、図6に示すような電極のうちのいくつかに選択的に向けられることが最も好ましく、その場合、これらの電極によって、バルーンコーティング(図5、9B、10B、11C、12)または通電された電極に隣接する外層(図13C)が局所的に加熱され、それにより、バルーンから通電された電極と接触した組織中に生体活性物質が放出される。放出される生体活性物質の用量は、バルーンコーティングまたは外層における生体活性物質の濃度レベルによって、および罹患組織に向けられるエネルギーの量によって調節され得る。電極と接触した組織に適用されるエネルギーの調節(図6)、バルーンコーティングもしくは通電された電極に隣接する外層を加熱する間の生体活性物質の放出の調節、またはその組合せのために、図1および図7に示すコントローラを使用してもよい。さらに、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用することがさらに好ましい場合がある。
【0116】
図5に示すように、本発明のいくつかの実施形態は、加熱されるかまたは記載および開示されたようなインビボ環境(図3B、3C、5、9B、10B、11C、12、13C)に曝露されたときに分解する基質を用いてバルーンにコーティングされた生体活性アプタマーを含んでもよい。アプタマーは、抗体とほぼ同じ様式で分子の表面に結合する核酸である。「アプタマー」という用語は、ラテン語のaptus(「嵌る(to fit)」)に由来しており、アプタマーとその結合パートナーの間の鍵と鍵穴の結合関係を強調するために選ばれた。分子の形状には膨大な多様性が存在するので、幅広い分子標的についてアプタマーを得ることができ、これら分子標的としては、例えば、小分子、ほとんど全ての種類のタンパク質(酵素、膜タンパク質、ウイルスタンパク質、サイトカインおよび増殖因子、免疫グロブリンを含む)、さらには細胞、組織および生物が挙げられる。例えば、アプタマーを、罹患した内腔または動脈に見られるプラークと結合するように合成し得る。完全に試験管内で操作することができ、化学合成ですぐに生成され、望ましい貯蔵特性を有し、かつ治療的適用においてほとんどまたは全く免疫原性を示さないので、アプタマーには、その微細な違いを見分ける認識の他に、抗体に優る利点がある。
【0117】
生体活性アプタマーから構成されたバルーンコーティング(例えば、図3B、3C、4B、9A、10A、11C、12に示したバルーンコーティングのうちのいずれか)は、無傷でかつ貯蔵、展開、および膨張の間、バルーンに付着し続けることが好ましい。生体活性アプタマーは、複数の電極に通電されたときに放出され得る。ひとたび放出されると、生体活性アプタマーは所望の組織に結合し得、この組織は、その後、生物学的応答を促進し得る。図5に示すような、いくつかの実施形態では、生体活性アプタマーは、カテーテルシステムによって放出されたエネルギー(例えば、RFエネルギー)、および本明細書に開示された他の形態のエネルギーを受け入れる力が大きいことが好ましい微小ビーズにコンジュゲートされてもよい。その後、コンジュゲートされたビーズは、エネルギー(例えば、RFエネルギー)を熱エネルギーに変換し、生体活性物質の選択された組織部位への集中的適用を可能にし得る。さらに、いくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性アプタマーの取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0118】
図11Aおよび図11Cに示すように、本発明のいくつかの実施形態は、加熱されるかまたは本明細書に記載および開示されたようなインビボ環境に曝露されたときに分解する基質を用いてバルーンにコーティングされたリポソーム70(図11A)を含んでもよい。例えば、リポソーム70を、ポリマーもしくはゲルマトリックス(図11C)に組み込んでもよいし、またはバルーンの外面に直接付着させてもよい。熱を加えるか、またはインビボ環境に曝露させると、リポソーム70は活性化され、バルーンの外面から放出され得る(図11C)。図11Bに示すように、リポソーム70は、1つの疎水性末端74と1つの親水性末端73とを有して極性があり、かつ細胞膜に見られる物質から構成される。
【0119】
リポソーム、およびその関連逆ミセルは、水性溶液72のコアを含有していてもよく(図11A)、リポソーム70が図11Dに示すような細胞壁を含む脂質膜への通路を作り出すことができるので、このコアを用いて、他の生体活性物質を細胞に送達し得る。細胞膜は、通常、頭部基と尾部基を有する分子であるリン脂質でできている。頭部は、水に引き付けられ(すなわち、親水性)、長い炭化水素鎖でできた尾部は、水にはじかれる(すなわち、疎水性)。
【0120】
天然では、リン脂質は、図11Bに示すような2つの層(すなわち、リン脂質二重層71)から構成された安定な膜に見られる。水が存在すると、頭部は水に引き付けられ、水と向かい合う表面を形成するように並ぶ。尾部は水にはじかれ、水から遠ざかる表面を形成するように並ぶ。リポソーム50cのコア内部の生体活性物質50の他に、生体活性物質をリン脂質頭部50a、リン脂質尾部50b、または任意のそれらの組合せにも付着させ得る(図11A)。細胞内で、頭部の1つの層は、細胞の外側に面し、その環境中の水に引き付けられる。頭部のもう1つの層は、細胞の内側に面し、細胞内の水に引き付けられる。一方の層の炭化水素尾部は、もう一方の層の炭化水素尾部に面し、その組み合わされた構造は、二重層を形成する。
【0121】
膜リン脂質が乱された場合、それらは再集合して、二重層かまたは単層かのいずれかの、通常の細胞よりも小さい、小球になることができる。二重層構造はリポソーム70である。単層構造はミセルと呼ばれる。
【0122】
形質膜中の脂質は主に、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンのようなリン脂質である。リン脂質は両親媒性であり、分子の炭化水素尾部が疎水性で、その極性のある頭部が親水性である。形質膜は両側で水溶液に面しているので、そのリン脂質は、疎水性尾部を互いに向け合ったリン脂質二重層を形成することによって、これに順応している。
【0123】
さらに、リポソームを含むいくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則を用いて決定され、かつ/またはQ10則に従って、およびシステムコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、複数の電極を用いて標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、カテーテルシステムの他の表面に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、バルーンコーティングは、図12に示すようなプラーク軟化特性を有する化学溶媒を含んでもよい。例として、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、およびアセトンは、既知の脂質溶媒である。さらに、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、および核酸は、これらの溶媒中では、ほぼ不溶性である。組織加熱とともに溶媒が使用される場合(図6)、組織治療は、より短い時間にあまり多くのエネルギーを必要とせず、健康組織に対する損傷の可能性を軽減することができる。組織がカルシウム沈着51を含む場合、脂質溶媒をプラークに送達するために使用されるものと同じプロセスを用いて、カルシウム溶媒を石灰化部位に送達することができる。カルシウムは、種々の有機溶媒に極めてよく溶けることが周知である。図12は、バルーン20表面にコーティングされたカルシウム溶媒300を含む生体活性物質を示す。どちらの場合も、溶媒をコーティングとともにバルーンの表面に連結することができ、このコーティングは、本明細書に記載および開示されたようなエネルギー(例えば、熱もしくはRFエネルギー)の適用によって分解し得るか(図12)、またはバルーンコーティングは、バルーンが膨張したときに、コーティングの分解などによって溶媒を放出し得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、光エネルギーを動力源(例えば、コントローラ)からシステムのバルーン部へ伝導するための手段を含むように、バルーンカテーテルシステム(図1、7)がさらに含まれてもよい。光エネルギーを伝導するための手段は、カテーテル本体内の内腔の内側に位置する細い1本の可撓性の光ファイバー繊維であってもよい。光エネルギーの送達は、生体活性物質を放出および/または活性化するための代替のまたは追加のエネルギー源であり得る。例えば、紫外線(UV)光源を用いて、バルーンの外部表面の複数の生体活性物質を分解しながら、同時に、バルーンがインビボの所望の場所に位置した場合にのみ生体活性物質の所望の特徴を活性化し得る。そのような光エネルギー手段の多くの利点を想定することができ、そのような利点としては、(特に、持続的治療または反復治療の状況における)組織加熱への依存が減ること、(例えば、金属ステントインプラントの近くで作用する場合に)電流の送信が回避されること、(貯蔵によるまたは標的組織部位へのナビゲーションの間の)所望の放出時間よりも前の生体活性効果の損失が防止されること、送達に利用可能な生体活性物質の種類が増えることなどが挙げられる。
【0126】
バルーンカテーテルシステムの別の好ましい実施形態では、生体活性材料から構成される流体を内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に送達するための、流体送達チャンネル(例えば、図8Aに示すもの)を含むように、バルーン部(図2)がさらに含まれる。カテーテルシステムは、近位端および遠位端を有するカテーテル本体を有するバルーンカテーテル(例えば、図7に示すもの)を含む。カテーテル本体は可撓性があり、カテーテル軸を規定し、ガイドワイヤ内腔および膨張内腔などの1以上の内腔を含んでもよい(図7)。カテーテルは、遠位端に隣接する膨張可能バルーンおよび近位端に隣接するハウジングを含む。いくつかの実施形態では、ハウジングは、ガイドワイヤ内腔と連通する第1のコネクタおよび膨張内腔と流体連通する第2のコネクタを含む(図7)。膨張内腔は、バルーンと第2のコネクタの間に延在する。第1と第2の両方のコネクタは、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。さらに、遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0127】
ハウジングはまた、各々導体を介して電極に電気結合される、複数の電気接続部を含み得ることが好ましい電気コネクタを収容してもよい(図8A)。図7に示すような、この配置により、電極に容易に通電され、電極は、多くの場合、コントローラ、およびRFエネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、または当技術分野で公知の他のそのような好適なエネルギー源などの動力源によって通電される。1つのそのような実施形態では、電気コネクタは、エネルギーが電極(図6、8A)に選択的に向けられることを可能にし得ることが好ましいコントローラ(図7)を介してRF発生器に連結される。コントローラは治療を制御もしくは記録するために、さらにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。
【0128】
図8Bに示すように、流体送達チャンネルはバルーンを貫通し、かつバルーンカテーテルシステムのバルーン部の表面に取り付けられた電極に連結されることが好ましい。電極は、電極から近位に伸びた関連導体を含む。電極および流体送達チャンネルは、バルーン表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、生体活性材料から構成される流体を保持する流体貯留層または内腔に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、膨張媒体は、送達すべき流体を含んでもよい(図8B、8C)。いくつかの実施形態では、バルーンを貫通するチャンネルに、加熱されると十分に液化または分解する材料(例えば、ワックス状材料、ゲル状材料、ポリマーなど)を充填してもよく、選択した電極にエネルギーを適用したときに、この材料の分解によって、流体がチャンネルを通過することが可能になる(図8B)。例として、1つの方法は、それ以外の場合にはチャンネルを遮断する材料が、固体から液体へと相変化するように、複数の電極を選択的に加熱することによって(ジュール加熱または隣接領域に上昇した温度を誘導し、それにより熱伝導で複数の選択した電極を加熱し得ることを含む、他の手段によって)流体送達チャンネルを開口させることを含む(図8B)。選択した電極への通電は、組織インピーダンス解析(例えば、本明細書に記載したような組織インピーダンス解析)に基づくことが好ましい場合がある(図6)。他の実施形態では、当技術分野で公知の電気機械的または機械的手段を利用して、流体を放出させてもよく、これらの手段の例として、コントローラで駆動されるフラップ165または微小流体装置を挙げることができる(図8C)。
【0130】
図8Cに示すように、送達チャンネルは、体内組織(例えば、内腔組織)に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。
【0131】
カテーテルシステムはまた、体内組織を特徴付けるように構成された組織分析装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極は、電気インピーダンストモグラフィーを用いて治療すべきまたは治療すべきでない領域を特定するために組織を特徴付けるのを助け得る、本明細書に記載および開示されたもののような、検出電極であってもよい(図6)。例えば、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付け手段を用いて、治療すべき領域を特定してもよい。電極は、特徴付けられた体内組織に応答して通電されてもよい。
【0132】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、上記のように、「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的流体送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、使用流体治療をさらに強化してもよい。
【0133】
図8Bおよび図8Cに示すような、いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、電極(すなわち、灌流電極)を通る通路であってもよい。通路または小さな穴を用いて、生体活性材料から構成される流体を電極に近接する動脈組織に送達してもよい。通路は直径1μm未満であってもよく、かつレーザーまたはイオンビームなどの方法を用いて作ってもよい。通路は、電極およびバルーンの中に作られてもよい。例として、可撓性回路上の電極パッドは、めっきした通路を有するように設計される。可撓性回路をバルーン表面に取り付け、レーザーもしくはイオンビーム、または当技術分野で公知の他の手段を用いて、可撓性基板およびバルーンに通路を作る。あらゆる電極パッドについて可撓性基板/バルーンにいくつかの通路があってもよい。その後、標準的な灌流バルーン機器または特殊な機器を用いてバルーンに灌流させてもよい。灌流電極の使用は、固着を取り除くこと、熱を取り除くこと、または通電された電気機器のインピーダンスを調節することなどの、流体送達以外の追加の利点も提供し得る。
【0134】
いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0135】
機械装置におけるエネルギー誘発性の生体活性材料放出の別の実施形態は、不活性な生分解性物質とともに活性材料を圧縮することによるものである。この2成分混合物は、必要な時に必要な所で、超音波エネルギーなどの機械的振動に曝露されることによって分解される。振動が表面張力を破壊し、その後、速やかに混合および分解されたとき、半固体圧縮によって流体の侵入が可能になる。この液化プロセスは、エネルギーを適用しなくても長い期間にわたって起こり得るが、エネルギーの適用によって大いに強化される。
【0136】
図13Aに示す本発明のさらに別の好ましい実施形態では、バルーンカテーテルのバルーン部は、図13Bに示すような複数の円周方向に配置された電極で覆われた選択的多孔性膜80に被包されたバルーンを含むように構成される。バルーンは、当技術分野で周知の材料から選択され得る無孔性のノンコンプライアント材料から構成されることが最も好ましい。生体活性材料から構成される流体は、バルーンの外面と選択的多孔性膜80の内面の間に位置することが好ましい(図13B)。バルーンを内腔組織の内面と接触させるのに十分な圧力、約20気圧以下、最も好ましくは約4気圧〜約6気圧の圧力まで、バルーンを加圧してもよい(図13B)。
【0137】
エネルギーは、治療のために標的とされる罹患組織の解析および選択に基づいて、コントローラによって、電極のうちのいくつかに選択的に向けられることが最も好ましく(図6)、その場合、選択的に通電された電極は、通電された電極のすぐ近傍で、バルーン表面に重層された選択的多孔性膜の局所的加熱を引き起こす。図13Cに示すように、その後、好ましくは膨張バルーン圧と組み合わせた、選択的多孔性膜80’に対する局所的加熱効果は、生体活性材料から構成される流体の分子が孔を通り抜けて、標的とされた組織(例えば、罹患した動脈内腔の組織)に入ることができる大きさに膜の孔が拡張することをさらに可能にし得る。放出される生体活性物質の用量は、流体中の生体活性物質の濃度レベルによって、通電された電極によって引き起こされる局所的な膜加熱の量によって、バルーンの膨張圧によって、罹患組織に向けられるエネルギーの量によって、および任意のそれらの組合せによって調節され得る(図13C)。さらに、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用することがさらに好ましい場合がある。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0138】
いくつかの代替の実施形態では、バルーンの膨張媒体が、図13Dに示すような、生体活性物質50から構成される流体となり、その結果、バルーンを圧力「P」まで膨張させたときに、生体活性材料から構成される流体がバルーンの外面と選択的多孔性膜80の内面に導入されるように、バルーンが構成されてもよい。バルーンの壁を通る流体連通を任意の数の方法で達成し得るが、その例としては、多孔性、複数の通路などが挙げられ得る(図13D)。そのような代替実施形態の利点としては、生体活性物質から構成される流体の濃度および組成を罹患組織の性質に合わせられることが挙げられる。さらに、治療的処置の実施までの傷みやすい生体活性物質の貯蔵をなくすことで、バルーンカテーテルの保存期間が延びる可能性がある。他の代替の実施形態では、バルーンは、種々の既知のコンプライアント材料のいずれか、またはカスタマイズされたバルーン形状を達成するためのバルーンコンプライアンスの組合せから構成されてもよい。
【0139】
その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,383,873号において、Hoeyらは、インビボで薬物を送達するための手段としての浸透圧ポンピングの使用を記載している。図14Aおよび図14Bに示すまた別の実施形態では、「浸透圧ポンピング」の原理を、本明細書に記載および開示されたバルーン実施形態などの生体活性物質送達手段の組成、構造、および使用に応用し得る。生体活性物質送達の速度は、浸透圧性放出システムのメカニズムによって決定され、pHなどの局所的な微小環境とは比較的無関係である。送達手段は、バルーンカテーテルの技術分野で公知の種類の生体適合性ポリマーマトリックス(図14A)から構成されるバルーンを含んでもよく、または任意で、可撓性マトリックスの上張りがバルーンの外面に置かれてもよく、その場合、上張りは、シリコーンマトリックスであることが好ましい。複数の生体活性物質50は、バルーン構造を含むように生体適合性ポリマーマトリックス85と組み合わせてもよい(図14A、14B)。バルーン構造は、当技術分野で公知の手段のいずれかを用いて形成し得る。例えば、バルーンを型にはめて、固化し、それを固める鋳型の形態の生体活性物質/ポリマーマトリックス85構築物を作り出してもよい。バルーンの部分は、生体活性物質の放出が起こり得る領域、表面(単数)、または表面(複数)を選択し得るように、ポリエチレンなどの不透過性生体適合性物質86でさらに被覆されてもよい(図14A)。バルーンを内腔の組織などの湿った表面に適用した場合、流体は、マトリックスの隙間に侵入し、生体活性物質を可溶化する(図14B)。流体がさらに取り込まれると、流体圧「Pf」が、生体活性物質/ポリマーマトリックス中の浸透圧「P0」を超えたときに、生体活性物質がマトリックスから追い出され、バルーン/内腔界面で流体の薄膜を越えて拡散する。「ポンピング」効果は、流体圧が解放されるときに達成される。流体取込みの浸透圧は、十分な流体圧が作り上げられるまで再度広まり、「ポンピング」効果が繰り返される。生体活性物質は、ポリマーマトリックスから近接組織に向けて運ばれ、全身濃度に著しい影響を与えることなく局所濃度が達成される(図14B)。本明細書で開示および記載したように、バルーンは、組織治療部位においてさらなる効果を与えるために選択的に通電され得る複数の電極をさらに含んでもよい。(図14A、14B)。
【0140】
図9Aに示す本発明のまた別の好ましい実施形態では、バルーンカテーテルシステムのバルーン部(図2)は、コーティングの代わりに、またはコーティングとともに、バルーンに連結された生体活性分子の使用を利用し得る。生体活性物質の分子は、結合、最も好ましくは共有結合でバルーン表面に連結された熱的に放出可能な活性部と不活性部とを含んでもよい。活性部または分子は、標的とされた組織を治療することができ、これは、選択的電極通電による温度(図6)、バルーン膨張圧、またはその組合せを用いて強化し得る。図9Bに示すように、生体活性分子の不活性部はバルーン表面にとどまる。バルーンカテーテルシステム(例えば、図1に示すバルーンカテーテルシステム)を利用することが最も好ましく、その場合、バルーンの低圧膨張によって、バルーンの外面の周囲に円周方向に位置する複数の電極が、アテローム性動脈硬化病変などの罹患組織と接触する。図9Bに示すような生体活性分子の活性部の高温放出を引き起こすために、本明細書に開示および記載されたように、罹患組織を標的とするように、電極に選択的に通電し得る(図6)。生体活性分子は、バルーンに共有結合していることが最も好ましく、その場合、エネルギーの選択的適用によって共有結合が壊され、それにより、分子の活性部が標的とされた組織に選択的に送達される。分子の生体活性部は、最も好ましくは約37℃よりも高い、局所的な高温環境を誘発するエネルギーの送達によって、バルーンに連結された部分から(例えば、複数の電極)から放出される(図3A、4A)。電極に供給されるエネルギーとして、超音波放出エネルギーを挙げることもできる。
【0141】
最も好ましい実施形態は、高温条件下で安定な生体活性分子を利用する。生体活性分子は、細胞増殖、細胞機能、受容体−リガンド結合、炎症性細胞の標的組織への走化性、ネイティブ動脈層の細胞の罹患組織への移動、または任意のそれらの組合せを妨げるように選択し得る。生体活性分子の活性部は、罹患組織を治療するように機能する。例として、動脈アテロームでは、生体活性物質は、限定するものではないが、細胞分裂停止(有糸分裂の防止)、過形成性組織形成を促進する標的とされた組織の細胞におけるまたはそのような細胞表面の受容体の受容体成熟をはじめとする任意の手段によって、過形成性組織の産生を予防し得る。
【0142】
生体活性分子の罹患組織への流入は、エネルギーを介する温熱療法、すなわち、無傷の生体活性分子からの切断(図9B)、罹患組織内への移動、および多孔性の増大による罹患組織における在留によって促進および/または加速される
【0143】
さらに、いくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0144】
標的組織への生体活性物質の選択的送達
いくつかの実施形態では、絶縁コーティング(例えば、図4Aおよび図4Bに示す絶縁コーティング)を用いて、バルーンカテーテルシステムのバルーンの表面周囲に分配された複数の電極を被覆してもよい。このコーティングは、電極を周囲のインビボ環境から絶縁するために使用されてもよく、かつ絶縁特性を有する周知の生体適合性材料のいずれかから構成されてもよく、また、周知の幅広い方法のいずれかを用いて塗布されてもよく、その例としては、電極の表面の一部に対するコーティングパリレンの噴霧または電極の表面の一部に対するシリコーンバリアの形成を挙げることができる。例として、図4Cに示すように、絶縁コーティングは、内腔内の金属体(例えば、ステント内再狭窄が存在するステント)の内側または付近を治療する場合に使用されることが好ましいが、それは、電極が金属に接触することになれば、ショートして、治療を終わらせる可能性があるからである。それゆえ、いくつかの実施形態では、金属などの導電性物体(図4C)と近接したときにショートを回避し、それにより、そのような状況下で治療を継続することができるように、電極を絶縁することが好ましい。絶縁コーティングは、電極を組織から絶縁するように働くこともでき、それによって、エネルギーがバルーン表面の選択された場所に向けられると同時に、エネルギーが組織部位に直接流れるのを防ぐことができる。例えば、罹患組織部位の緩和治療において、繰返しのまたは持続的な組織加熱を回避しながら、電極に選択的に通電し、局所的なバルーン加熱を作り出し、かつ方向性のある様式で組織部位に生体活性物質を送達する能力を保持することが好ましい場合がある。絶縁コーティングは、追加のまたはバルーンの他の領域とは異なる生体活性物質をさらに含んでもよい(図4B)。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0145】
血管形成処置中に有向送達されるエネルギーおよび生体活性物質
本発明のいくつかの実施形態は、血管形成処置中の加熱と組み合わせて、内腔に生体活性物質を送達するためのシステムおよび方法を提供する。血管形成は、狭窄病変を横断して開口させるための十分に確立された臨床的方法であり(図4C)、ここで、狭窄は、部分的または全体的、びまん性または限局性であり得る。狭窄病変を横断して開口させるために、様々な周知のおよび定評のある技術が使用され、膨張可能な血管形成バルーンはその重要な態様を含む。病変の組織を加熱すると、追加の利益が得られる可能性がある。例えば、加熱によって、病変を軟化および収縮させることができ、これはさらに、病変内のプラークをバルーンの周囲で容易に再形成させ、それにより血管の伸縮を避け、ひいては血管の損傷を避けることができる。さらなる追加の利益は、血管形成処置および加熱プロセスの間に生体活性物質を放出することによって得られる可能性がある。血管形成処置中に生体活性物質を選択的に送達するための方法は、以下の工程のいずれかから構成されてもよく、これらの工程は、種々の順番でさらに並べられてもよい。
【0146】
圧力−内腔を開口させるためのバルーンによるもの。圧力(例えば、図13Dに示す圧力「P」)は、10〜16気圧の標準的な血管形成膨張圧であってもよいし、または6気圧未満、場合によってはわずか1〜2気圧のより穏やかな膨張圧であってもよい。バルーン圧を工程毎に徐々に増やして用いてもよい。例えば、バルーンを、高度に狭窄した病変を横断し、部分的に開口させるための最初の過程の一部として使用してもよいし、またはバルーンを、血管形成の後にステントが適所に配置された後に、病変を事後的に拡張するために使用してもよい。エネルギーおよび/または生体活性物質の選択的送達をこの処置の間の任意の時点で利用してもよいし、またはそのような送達を、例えば、血管疾患の治療に伴う一般的な問題であるステント内再狭窄(図4C)を治療するための処置の後のある時点で行なってもよい。
【0147】
加熱−病変の組織を軟化および収縮させ得る適用されたエネルギーによるもの(図6)。加熱は、Q10則との関係、バルーンカテーテルシステムからの生体活性物質の放出で論じたような、および本明細書に記載および開示された実施形態の多くで論じたような生体活性物質の送達に関する他の利益も有し得る。
【0148】
生体活性物質−そのうちの複数は処置の間に放出され得る(図3B、3C、4B、9B、10B、11C、12、13C、14B)。生体活性物質は、生物学的応答を生じさせ得る任意の材料から構成されてもよい。生体活性物質の例は、巨大分子または小分子であってもよく、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、および抗マクロファージ物質を含み得るが、これらに限定されない。
【0149】
いくつかの好ましい実施形態は、例えば、平滑筋細胞(SMC)の増殖および/または中膜から内膜への移動を抑制するかまたは低下させることができる任意の分子:セラミド、スラミン、ラパマイシンおよびパクリタキセルを含む。組織の加熱には、薬物を病変または組織に、そしてより深く中膜に送達する手助けをするという重要な役割がある場合がある。
【0150】
他の好ましい実施形態は、タンパク質、例えば、抗炎症性タンパク質、抗体および病変内部の炎症を軽減および治癒させることができるか、またはSMCの増殖および移動を抑制するかもしくは低下させることができる他の種類のタンパク質を含む。いくつかの実施形態は、細胞のアポトーシスまたは腫瘍症を誘導するタンパク質を含み得る。加熱には、治療の間にこれらのタンパク質を活性化するという重要な役割がある場合があり、処置の間に素早く加熱すれば、組織をこれらのタンパク質に最大限の時間曝露させることができる。処置の間にタンパク質が活性化されるのを確実にするためには、タンパク質の半減期を考慮すべきである。タンパク質の半減期とは、その特定のタンパク質のタンパク質プールの任意の半分がなおも存在しかつ機能的である間の時間のことである。ヒトタンパク質の半減期は、多くの要因によって決まるが、特に、温度をはじめとする環境要因によって決まる。非常に高い温度(約50℃を超える)での半減期は秒単位であり得るのに対し、中程度に高い温度(約42℃〜約45℃)は、数時間の範囲の半減期をもたらし得る。タンパク質溶出バルーンについては、半減期の時間を延長する貯蔵環境でタンパク質を維持することが好ましい。バルーンの表面のタンパク質は、インビボ環境とエネルギーの適用とに曝露されるまでその生体活性能を保持するために、約0℃〜約37℃の温度で安定であることが最も好ましい。タンパク質のいくつかをアデノシン−5’−三リン酸(ATP)という名の分子と組み合わせてもよい。ATPは、細胞内エネルギー移動の「分子通貨」として重要な多機能ヌクレオチドである。一例では、バルーンをタンパク質で被覆し、電極をATPで被覆して(またはその反対)、タンパク質がバルーン膨張によって放出され、エネルギーが電極から放出されたときにATPが放出される(またはその反対)。
【0151】
さらに他の実施形態は、処置の間に近接組織(例えば、病変組織)に移動し得る細胞(例えば、内皮、または任意の他の種類の細胞)を含むバルーンを含み得、その近接組織では、細胞が、タンパク質または抗体を放出して、炎症の治癒を助けるかまたはSMCの増殖および移動を抑制し得る。処置の間に細胞を活性化するのを助けるために、熱を適用し、使用し得る。
【0152】
さらに他の実施形態は、熱ショックタンパク質(HSP)に付着したときに付着し得るかまたは活性化されるようになり得る分子またはタンパク質を含む。HSPは、細胞が上昇した温度または他のストレスに曝露されたときにその発現が増大する一群のタンパク質である。例えば、HSP27は、平滑筋細胞(SMC)の移動において機能を果たす。RFエネルギーの適用および加熱によって、SMC内のHSP27が亢進し、それにより、抗HSP27抗体を用いてSMCに直接送るために、任意の生体活性物質(例えば、タンパク質)を使用することが可能になり得る。熱および熱の結果は、再狭窄を予防するために、他の分子またはタンパク質を用いて、病変および中膜における他のタンパク質もしくは細胞に結合させるか、これらを分解するか、阻害するかまたは活性化することを促進または増進し得る。
【0153】
多くの実施形態では、評価方法(例えば、組織インピーダンス測定(図6)、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなど)を用いて、罹患組織に接近し、これを調べて、治療すべき領域を特定する。血管形成処置において、治療する組織の特定は、血管形成処置で使用される既知の工程の前、そのような工程の間、またはそのような工程の後のどの時点で行なわれてもよい。
【0154】
多くの実施形態では、エネルギーは複数の通電された電極に向けられ(図6)、これらの通電された電極は、コントローラの使用によってさらに調節され得る(図1、7)。熱の発生を罹患組織(例えば、動脈病変の罹患組織)を治療するための方法として使用してもよく、その場合、熱の発生は、バルーンを含むバルーンカテーテルシステムにおける場所に由来する。
【0155】
いくつかの実施形態では、複数の電極への通電を用いて、罹患組織を治療するための生体活性物質を放出させてもよく、この生体活性物質は、例えば、血管疾患の治療に用いられるバルーンカテーテルシステムに由来するものであってもよく、その場合、そのような生体活性物質の放出は、バルーンを含むシステムにおける場所に由来するものであり得る(図3B、3C、4B、9B、10B、11C、12、13C、14B)。生体活性物質の放出は、血管形成処置のどの時点でなされてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、複数の電極を絶縁して、バルーンカテーテルシステムからこのシステムのバルーン部に近接する組織または導電性物体へのエネルギーの伝達を妨害する(図4A、4B、4C)。そのような実施形態は、血管形成および/またはステント留置処置の前、その間、またはその後のどの時点で使用されてもよい。
【0157】
バルーン(例えば、図3B、3C、4B、9A、10A、11C、12、14Aに示すバルーンのいずれか)およびバルーン電極(図4A、4C)に塗布されるコーティングまたは層は、材料を表面または表面全体に置くために用いられる任意の種々の確立された方法を用いて塗布されてもよく、これらの方法には、噴霧、浸漬、焼付け、蒸着、イオン移行などが含まれ得る。
【0158】
本明細書に開示された装置、システム、および方法を用いて、エネルギーおよび/または生体活性物質を、血管系における任意の動脈または部位、例えば、大腿動脈、膝窩動脈、冠動脈および/または頸動脈の中に選択的に送達し得る。本開示は、血管系における技術の使用に焦点を当てているが、この技術は、任意の内腔の閉塞にも有用であろう。本発明が使用されてもよい他の解剖学的構造は、食道、口腔、鼻咽頭腔、耳管および鼓室、脳の洞、動脈系、静脈系、心臓、喉頭、気管、気管支、胃、十二指腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、射精管、精管、尿道、子宮腔、膣管、ならびに頚管である。さらに、他の組織を本発明によって治療してもよく、その場合、侵襲性の低いカテーテルまたは内視鏡技術が好ましい。
【0159】
参照番号が、添付の図と、仮特許出願第61/114,958号(代理人整理番号021830−001500US)および米国特許出願第12/616,720号(代理人整理番号021830−001510US)の対応する図の両方に現われる場合、それらの参照番号は、通常、対応する構造を特定するものである。しかしながら、下記の表1の参照番号は、列挙した要素を特定するものである。
【0160】
【表1】
【0161】
例としておよび理解を明確にするために、例示的な実施形態が少し詳しく記載されているが、当業者であれば、種々の修正、適合、および変更を利用し得ることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)項の下、2009年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/177,744号(代理人整理番号021830−004200US)の恩典を主張し、この文献の開示全体は、本明細書の出発点となる。
【0002】
本出願の主題は、2008年11月14日に出願された仮特許出願第61/114,958号(代理人整理番号021830−001500US)および2009年11月11日に出願された米国特許出願第12/616,720号(代理人整理番号021830−001510US)の主題に関連し、これらの文献の開示全体を念頭に入れ、本明細書を理解するべきである。
【0003】
本発明は一般に、医療装置、システム、および方法に関する。特に、本発明は、最も好ましくは、カテーテルに基づく治療システムを用いて、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に送達することによって、エネルギーおよび/または生体活性材料(すなわち、生体活性物質)を体内組織に送達するための方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0004】
医師は、身体の内部組織、特に、血管などの身体内腔内にアクセスし、それを修復するためにカテーテルを使用する。例えば、アテローム性動脈硬化症のために狭隘化した動脈を開口させるために、バルーン血管形成カテーテルや他のカテーテルが使用されることが多い。バルーン血管形成は、閉塞した血管を開口させるときに有効であるが、バルーン拡張に伴う外傷が重大な損傷をもたらす可能性があるため、バルーン拡張の利益は時間的に制限される場合がある。
【0005】
バルーン拡張と連携したステント留置手順は、アテローム性動脈硬化症についての好ましい治療であることが多い。ステント留置では、折畳まれた金属枠体が、身体内に導入されるバルーンカテーテルに取り付けられる。ステントは、閉塞部位に入るよう操作され、下層のバルーンの拡張によって所定位置で膨張するか、または自己拡張型ステントの例では、カテーテルによって制約が解除されたときに、ステントスキャフォールドが開く。ステント留置は広く受け入れられており、また、多くの事例において一般に許容される結果をもたらしている。血管(特に、冠動脈)の治療とともに、ステントは、生殖管閉塞、消化管状閉塞、および肺閉塞の治療など、身体内の多くの他の管状閉塞を治療するときに、使用することもできる。ステント留置後の再狭窄または身体内腔の事後狭隘化は、かなりの数の事例で起こっている。
【0006】
しばしば、バルーン血管形成および/またはステント留置と組み合わせて、血管内放射、低温治療、超音波エネルギーなどを含む、種々の修正再狭窄治療または再狭窄防止治療モダリティも提案されている。これらのおよび異なる手法は、血管形成およびステント留置に続く血流の事後低下の低減について様々な程度の有望さを示すが、血管形成によって組織に最初にもたらされる外傷は問題のまま残っている。
【0007】
狭窄した動脈を開口させるための、ステント留置およびバルーン血管形成に対するいくつかの代替法も提案されている。例えば、多種多様なアテローム切除装置および技法が開示され、試みられている。血管形成およびステント留置に欠点および制限があるにもかかわらず、アテローム切除は、拡張に基づく手法の幅広い使用および成功率を獲得していない。より最近では、拡張のなおさらなる欠点が明らかになった。これらは、心筋梗塞または心臓発作を引き起こすことがある物質を破裂させ、放出する可能性がある不安定プラークの存在を含む。
【0008】
より最近では、薬物コーティングステント(例えば、Johnson and Johnsonのサイファーステント、関連薬物はシロリムスを含む)は、著しく減少した再狭窄率を示しており、また、他のステントは、開発中および商品化中の代替の薬物溶出ステントである。薬物溶出ステントは、多くの患者のアテローム性動脈硬化症の治療にかなり有望であるように思われるが、ステントが使用できないかまたはステントが重大な欠点を示す多くの事例が依然として存在する。一般に、ステント留置は、身体内にインプラントを残す。こうしたインプラントは、特にインプラントの除去が難しくかつ侵襲的手術を必要とするときに、機械的疲労、腐食、血栓形成などを含むリスクを呈する可能性がある。ステント留置は、びまん性動脈疾患を治療する場合、分岐部を治療する場合、押しつぶしを受けやすい身体部分を治療する場合、ならびにねじれ、屈曲、伸長および短縮を受ける動脈を治療する場合、さらなる欠点を有する場合がある。
【0009】
提案されているアテローム性動脈硬化症の治療と関連する可能性がある情報を、例えば、米国特許第5,102,402号;同第5,304,121号;同第5,304,171号;同第5,306,250号;同第5,380,319号;同第5,588,962号;同第5,693,029号;同第6,389,314号;同第6,477,426号;同第6,623,453号;同第6,695,830号;同第6,706,011号;同第6,723,064号;同第6,788,977号;同第6,991,617号;同第6,958,075号;同第7,008,667号;同第7,066,904号;同第7,291,146号;および同第7,407,671号に見出すことができる。さらなる情報を、米国特許出願公開第2003/0069619号;同第2003/0229384号;同第2004/0062852号;同第2004/0243199号;同第2005/0203498号;同第2005/0251116号;同第2005/0283195号;同第2006/0235286号;同第2007/0278103号;同第2008/0125772号;同第2008/0140002号;同第2008/0161801号;同第2008/0188912号;同第2008/0188913号;同第2008/0262489号および同第2009/0074828号ならびに欧州特許出願EP1622531号およびPCT特許公報WO2005/007000号およびWO2009/121017号に見出すことができる。Scheller et al.,“Potential Solutions to the Current Problem:Coated Balloon”, EuroIntervention,2008 Aug;4 Suppl C:C63−66およびTepe et al.,“Local Delivery of Paclitaxel to Inhibit Restenosis During Angioplasty of the Leg”, N Engl J Med,2008 Feb 14;358(7):689−699にも関連情報が含まれている可能性がある。
【0010】
それゆえ、罹患組織に治療的治療を送達するための新しいおよび/または改善された方法およびシステムを提供することが有利であろう。理想的には、これらの改善された技術は、処置を簡素化し得るか、時間を短縮し得るか、治療結果を改善し得るか、または任意のそれらの組合せがもたらされるように、標的とされる組織に温度変化および/または生体活性物質を導入することによって、治療される組織を選択的に標的とすることを容易にするであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、治療効果を達成するためにエネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的とされた組織を治療することに関する。最も好ましい実施形態では、バルーン部を有し、さらに複数の電極から構成されている、バルーンカテーテルシステムは、標的とされた組織にエネルギー、生体活性物質、またはその組合せを選択的に送達するよう、通電され得る。エネルギーを適用し、組織インピーダンス解析を行ない、かつコントローラを用いてエネルギー源を使用して電極にさらに選択的に通電することによって、組織を標的とし得る。
【0012】
好ましい実施形態では、エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーン上にエネルギー送達表面を有する。放出可能な生体活性材料を有する熱的に変化しやすいコーティングがバルーンに連結されている。熱的に変化しやすいコーティングは、バルーンが拡張したときに、標的組織に働きかけるように配向されている。エネルギー源は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、標的組織に生体活性材料を放出するよう、エネルギー送達表面に通電するために、カテーテルに動作可能に連結されている。
【0013】
別の実施形態では、エネルギー送達表面は、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の間隔の開いた電極を含む。エネルギー源は、電極対間の熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、標的組織に生体活性材料を放出するよう、電極対に選択的に通電するために、複数の電極に動作可能に連結されている。
【0014】
例示的な実施形態では、電極は、絶縁材料でコーティングされている。
【0015】
さらに別の実施形態では、バルーンは、複数の円周方向に配置された電極で覆われた選択的に透過可能な膜で被包されている。
【0016】
別の実施形態では、バルーンは、生体活性材料を含む膨張媒体を受容するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、組織分析装置は、体内組織を特徴付けるように構成されている。
【0018】
他の実施形態では、電極送達部は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、特徴付けられた体内組織に応答して生体活性材料を放出するよう、通電される。
【0019】
別の実施形態では、電極送達部は、生体活性材料を送達する前、送達している間および/または送達した後に、体内組織を加熱するよう、通電される。
【0020】
別の実施形態では、熱的に変化しやすいコーティングは、2以上の放出可能な生体活性材料を含む。各材料は、異なる相変化温度を有してもよい。
【0021】
別の実施形態では、生体活性材料は、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、化学溶媒、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、抗マクロファージ物質または上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0022】
さらに別の実施形態では、生体活性材料は、リポソームの一部に付着している。
【0023】
別の実施形態では、熱的に変化しやすいコーティングは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリレートまたは上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0024】
他の実施形態では、エネルギー源はRFエネルギー源であり、送達部は、RFエネルギーを伝達して、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化するように構成されている。
【0025】
他の実施形態では、エネルギー源は光エネルギー源であり、送達部は、光エネルギーを伝達して、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化するように構成されている。
【0026】
例示的な実施形態では、放出可能な生体活性材料を選択的に送達するための方法は、カテーテルのバルーンを放射状に拡張することによって、内腔の周囲に位置する体内組織を熱的に変化しやすいコーティングと関連させることを含む。熱的に変化しやすいコーティングは、バルーン表面に配置されている。バルーンの表面は、熱的に変化しやすいコーティングを加熱するよう、通電される。生体活性材料は、熱に応答して、熱的に変化しやすいコーティングから体内組織に放出される。
【0027】
別の実施形態では、送達部は、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の電極を含み、セレクト電極対は、電極対間にある熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、液化するよう、通電される。
【0028】
さらに別の実施形態では、内腔の体内組織は罹患部を含む。セレクト電極対は、罹患部に近接した熱的に変化しやすいコーティングを加熱するよう、通電される。
【0029】
別の実施形態では、組織を特徴付けて、治療すべき体内組織を特定する。熱的に変化しやすいコーティングの部分を選択的に加熱して、特徴付けられた体内組織に応答して生体活性材料を放出させ、特定された体内組織を治療する。
【0030】
別の実施形態では、生体活性材料を送達する前、送達している間および/または送達した後に、体内組織を加熱する。生体活性材料は、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、固着することなくより高い温度を可能にするための潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐ電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0031】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、RFエネルギーで通電される。
【0032】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、レーザーエネルギーで通電される。
【0033】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、超音波エネルギーで通電される。
【0034】
別の実施形態では、送達部は、少なくとも1つの生体活性材料を放出および/または活性化させるよう、マイクロ波エネルギーで通電される。
【0035】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に生体活性材料を送達するためのカテーテルシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーンに近接した、エネルギーを伝達するためのエネルギー送達表面を有する。複数の生体分子は、熱的に放出可能な薬物部とバルーンに共有結合した不活性部とを有する。エネルギー源は、生体分子を加熱して、体内組織に生体活性材料を放出するよう、送達部に選択的に通電するために、コントローラに動作可能に連結されている。
【0036】
例示的な実施形態では、内腔に生体活性材料を送達する方法は、内腔の周囲に位置する体内組織を複数の生体分子と関連させることを含む。拡張可能なバルーンが拡張するときに、熱的に放出可能な薬物部と不活性部とは、カテーテルの遠位端近くのバルーンに共有結合される。バルーンに近接したカテーテルの電極送達部は、生体分子を加熱し、生体分子の加熱に応答して生体分子から体内組織に薬物部を放出するよう、通電される。
【0037】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムは、細長い可撓性カテーテル本体を含む。本体は、近位端および遠位端を有する。放射状に拡張可能な構造は、カテーテル本体の遠位端の近くにある。複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造により拡張可能であるが、これらの流体送達チャンネルは、熱的に変化しやすい材料で最初に遮断される。エネルギー源は、熱的に変化しやすい材料を加熱し、液化して、流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数を開口させ、流体を放出させるよう、流体送達チャンネルに動作可能に連結されている。
【0038】
別の実施形態では、複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造から突き出て、内腔の体内組織に入り込んでいる。
【0039】
別の実施形態では、組織分析装置は、体内組織を特徴付けるように構成されている。
【0040】
さらに別の実施形態では、流体送達チャンネルは、特徴付けられた体内組織に応答して1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させるよう、選択的に通電されることができる。
【0041】
別の実施形態では、放射状に拡張可能な構造はバルーンを含み、流体送達チャンネルは、バルーンの周囲に取り付けられている。さらに別の実施形態では、放射状に拡張可能な構造は拡張可能なバスケットを含み、流体送達チャンネルは、バスケットの周囲に取り付けられている。
【0042】
別の実施形態では、内腔の体内組織は罹患部を含む。セレクト電極は、罹患部に近接した1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させるよう、通電される。
【0043】
別の実施形態では、セレクト電極は、体内組織を加熱するとともに、内腔に流体を放出するよう、通電される。
【0044】
他の実施形態では、流体は、セラミド、スラミン、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、ゾタロリムス、エベロリムス、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、(固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐための電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される。
【0045】
好ましい実施形態では、体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムは、内腔の周囲に位置する。このシステムは、近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体を含む。放射状に拡張可能な構造は、カテーテル本体の遠位端の近くにある。複数の流体送達チャンネルは、拡張可能な構造が拡張したときに、内腔の体内組織に働きかけるように配向されている。複数の微小電気機械システム(MEMS)は、1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させ、内腔に流体を放出するよう、流体送達チャンネルに連結されている。
【0046】
別の実施形態では、内腔に選択的に流体を送達するための方法は、内腔の内側の構造を放射状に拡張させることによって、内腔の周囲に位置する体内組織を複数の流体送達チャンネルと関連させることを含む。流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数が選択的に開口し、セレクト流体送達チャンネルから内腔に流体を放出する。
【0047】
別の実施形態では、1以上の流体送達チャンネルは、流体送達チャンネルを選択的に開口させるおよび/または閉口させるように流体送達チャンネルに連結された複数の微小電気機械システム(MEMS)を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に薬物を送達するためのカテーテルアセンブリは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。放射状に拡張可能な多孔性バルーンは、内面および外面を有する。バルーンは、エネルギーを伝達するためのバルーンに近接したエネルギー送達表面を有するカテーテルの遠位端の近くに位置している。内面および外面を有する選択的多孔性膜は、バルーン表面を覆っている。バルーンを膨張媒体で膨張させたとき、バルーンを膨張させるための、薬物を含む膨張媒体は、多孔性バルーンの外面と膜の内面の間に導入される。エネルギー源は、エネルギー送達表面にエネルギーを送達すると同時に、バルーンが内腔の内側で拡張して、バルーンの外面から膜を通して体内組織に薬物を送達するよう、カテーテルの近位端に連結されている。
【0049】
別の実施形態では、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するためのカテーテルシステムは、近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体を含む。カテーテル本体の遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンは、内面および外面を有する。外面は、生体適合性マトリックスと、マトリックス表面の可溶性の生体活性材料のコーティングとから構成されている。この材料は、バルーンが組織を広げながら拡張し、流体圧が浸透圧を超えたときに、水分によって生体活性材料が可溶化されて、この生体活性材料がマトリックスから放出されるよう、組織の湿った表面に配向されている。
【0050】
他の実施形態では、エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムは、近位端および遠位端を有し、かつ、近位端と遠位端の間に軸を有する、細長いカテーテルを含む。カテーテルは、遠位端の近くに放射状に拡張可能なバルーンと、バルーン上にエネルギー送達表面を有する。放出可能な生体活性材料を有する変化しやすいコーティングはバルーンに連結されている。変化しやすいコーティングは、バルーンが拡張したときに、標的組織に働きかけるように配向されている。 エネルギー源は、変化しやすいコーティングを変化させ、標的組織に生体活性材料を放出するよう、エネルギー送達表面に通電するように、カテーテルに動作可能に連結されている。
【0051】
多くの例示的な実施形態では、バルーン部は、エネルギーの適用、インビボ環境への曝露、またはその組合せによって組織に向けられる1種の生体活性物質または複数種の生体活性物質を含有する1以上の表面コーティングまたは層をさらに含んでもよい。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、バルーンカテーテルの表面は、潤滑剤、導電性化合物、組織の層を通って移動して、エネルギーを間質層に運ぶことを意図した化合物、または任意のその組合せをさらに含んでもよい。
【0053】
他の例示的な実施形態では、バルーン部は、電極に最も近接した部分へのエネルギーの直接的伝達を回避することが好ましい絶縁部をさらに含んでもよい。
【0054】
さらに他の例示的な実施形態では、バルーン部は、バルーンの表面に直接付着した生体活性物質から構成されてもよい。
【0055】
さらに他の例示的な実施形態では、バルーンカテーテルシステムは、生体活性物質の放出、生体活性物質の活性化、またはその組合せに使用し得る光エネルギー伝達手段からさらに構成されている。
【0056】
さらに他の代わりの例示的な実施形態では、バルーンは、生体活性物質の送達を助ける、送達チャンネル、または多孔性材料、またはマトリックス、またはその組合せから構成されてもよい。
【0057】
本発明の好ましい実施形態は、組織内で生物学的効果を達成するための治療的処置において使用し得る。本発明を、血管形成処置の前、その間、および/またはその後の任意の時点およびタイミングで使用し得ることが最も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に生体活性物質を送達するためのコーティングを有するカテーテルシステムの一実施形態を模式的に示す。
【図2】図1のカテーテルシステムで使用される膨張可能バルーンの一実施形態を模式的に示す。
【図3A】図2のバルーンの断面図を模式的に示す。
【図3B】図2のバルーンの拡大図である。
【図3C】図3Aのバルーン表面の層状コーティングを模式的に示す。
【図4A】電極を被覆するコーティングを模式的に示す。
【図4B】電極を被覆するコーティングを模式的に示す。
【図4C】組織の治療に使用される被覆電極を模式的に示す。
【図5】組織の治療におけるアプタマーの使用を模式的に示す。
【図6】組織解析に使用される電極対の配置と、生体活性物質を送達する前、送達している間、および/または送達した後の選択的エネルギー処理とを模式的に示す。
【図7】内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するための流体送達チャンネルを有するカテーテルシステムの別の実施形態を模式的に示す。
【図8A】図7のバルーンの断面図を模式的に示す。
【図8B】バルーンの表面に取り付けられた電極に連結されたバルーンを貫通する流体送達チャンネルを示す、図7のバルーンの拡大断面である。
【図8C】流体送達チャンネルと、組織に埋め込まれた図8Aおよび8Bの電極とを示す拡大断面図である。
【図9A】バルーン表面への結合によって連結された熱的に放出可能な活性部および不活性部を有する生体活性分子を用いた組織治療を示す断面図を模式的に示す。
【図9B】バルーン表面への結合によって連結された熱的に放出可能な活性部および不活性部を有する生体活性分子を用いた組織治療を示す断面図を模式的に示す。
【図10A】標的とされた組織に放出されるバルーン表面の生体活性物質を模式的に示す。
【図10B】標的とされた組織に放出されるバルーン表面の生体活性物質を模式的に示す。
【図11A】複数の生体活性物質を含むリポソームを模式的に示す。
【図11B】リン脂質二重層の拡大断面図である。
【図11C】バルーンからのリポソームの放出を模式的に示す。
【図11D】リポソームの組織取込みの拡大模式図である。
【図12】組織病変に向けられたバルーンからのエネルギーおよび生体活性物質の放出を模式的に示す。
【図13A】図1のカテーテルシステムで使用されるバルーンの別の実施形態を模式的に示す。
【図13B】図13Aの拡大断面図である。
【図13C】エネルギーが図13Bに適用されたときの生体活性物質の放出を模式的に示す。
【図13D】生体活性物質がバルーンの膨張媒体を含む場合の、図13Aの別の実施形態を模式的に示す。
【図14A】図14Aは、図1のカテーテルシステムで使用されるバルーンのさらに別の実施形態を模式的に示す。
【図14B】生体活性物質を組織に放出する図14Aのバルーンを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の実施形態は、治療効果を達成するためにエネルギーおよび生体活性材料を有向送達することによって、標的とされた組織を治療することに関する。好ましくは、標的組織は内腔組織であり、この内腔組織はさらに、罹患組織(例えば、動脈疾患に見られる罹患組織)を含んでもよい。しかしながら、エネルギーの有向送達および/または生体活性剤の送達を含む治療のために任意の組織を標的とし得る。エネルギーの有向送達は、組織の治療、生体活性物質の送達の補助、生体活性物質の組織取込みの補助、または任意のそれらの組合せのために使用され得る。
【0060】
本発明によって想定される生体活性物質は、単独でまたは組み合わせて送達され得る。生体活性物質の例は、巨大分子または小分子であってもよく、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、および抗マクロファージ物質を含み得るが、これらに限定されない。
【0061】
標的とされた組織を選択的に治療するために、バルーンカテーテル表面のコーティングに生体活性物質を組み込んでもよく、エネルギーを1回内腔の内側に有向適用することによって放出し得る。本発明のいくつかの実施形態は、加熱を用いて生体活性コーティングを放出する。他の実施形態は、組織に送達する前に、送達している間に、および/または送達した後に、生体活性物質の送達を標的組織加熱と組み合わせる。RF(すなわち、ラジオ周波数)エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギーおよびレーザーエネルギーを用いて組織を加熱するための装置は、米国特許出願第11/975,474号、同第11/975,383号、同第11/122,263号、および米国仮特許出願第61/099,155号に開示されており、これらの文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。バルーンカテーテルに基づくエネルギー送達システムの模式図を図1および図7に示す。
【0062】
薬物送達コーティング
図1は、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するための放出可能なコーティングを有するカテーテルシステム10の一実施形態を示す。カテーテルシステム10は、近位端16および遠位端18を有するカテーテル本体14を有するバルーンカテーテル12を含む。カテーテル本体14は可撓性があり、カテーテル軸15を規定し、ガイドワイヤ内腔22および膨張内腔24などの1以上の内腔を含んでもよい。カテーテル12は、遠位端18に隣接する膨張可能バルーン20および近位端16に隣接するハウジング29を含む。ハウジング29は、ガイドワイヤ内腔22と連通する第1のコネクタ26および膨張内腔24と流体連通する第2のコネクタ28を含む。膨張内腔24は、バルーン20と第2のコネクタ28の間に延在する。第1と第2の両方のコネクタ26、28は、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0063】
ハウジング29は電気コネクタ38も収容する。コネクタ38は、各々導体36を介して電極34に電気結合される、複数の電気接続部を含む。これにより、電極34は易に通電され、電極は、多くの場合、コントローラ40およびRFエネルギーなどの動力源42によって通電される。一実施形態では、電気コネクタ38は、コントローラ40を介してRF発生器に連結され、コントローラ40は、エネルギーが電極34に選択的に向けられることを可能にする。RFエネルギーが開示されているが、各々、所望のエネルギーを送達するように構成されたエネルギー送達表面を有する、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、またはレーザーエネルギーなどの、他の好適なエネルギー源を使用してもよい。2008年9月22日に出願された同時係属の米国仮特許出願第61/099,155号(代理人整理番号021830−002400US)を参照されたく、この文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、コントローラ40は治療を制御もしくは記録するためにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。プロセッサは、通常、コンピュータハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み、これらは、多くの場合、1以上の本明細書に記載の方法の一部もしくは全てを実装するための機械可読のプログラム命令またはコードを実行する1以上のプログラム可能なプロセッサユニットを含む。コードは、多くの場合、メモリ(任意で、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリなど)および/または記録媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、CD、DVD、不揮発性固体メモリカードなど)などの有形的表現媒体において具現化される。コードならびに/または関連するデータおよび信号を、ネットワーク接続(例えば、ワイヤレスネットワーク、イーサネット(登録商標)、インターネット、イントラネットなど)を介して、プロセッサに送信するかまたはプロセッサから送信することもでき、かつコードの一部もしくは全てを、1以上のバスを介して、カテーテルシステム10の構成要素間でおよびプロセッサ内で送信することもでき、また、適当な標準的なまたは独自仕様の通信カード、コネクタ、ケーブルなどは、多くの場合、プロセッサに含まれている。プロセッサは、少なくとも一部は、単一のプログラム、一連の個別的なサブルーチンまたは関連プログラムなどとして記載され得るソフトウェアコードを用いてプロセッサをプログラムすることにより、本明細書に記載の計算および信号送信工程を行なうように構成されていることが多い。プロセッサは、標準的なまたは独自仕様のデジタルおよび/またはアナログ信号処理ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームフェアを含んでもよく、かつ通常、患者を治療している間に本明細書に記載の計算を行なうのに十分な処理能力を有しており、このプロセッサは、任意で、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、独自仕様のプロセシングユニット、またはその組合せを含む。現代のコンピュータシステムに付随する標準的なまたは独自仕様の入力装置(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、ジョイスティックなど)および出力装置(例えば、プリンタ、スピーカー、ディスプレイなど)も含まれてよく、かつ複数のプロセシングユニットを有するプロセッサを(または別々のコンピュータも)、広範な集中データ処理アーキテクチャまたは分散データ処理アーキテクチャにおいて利用してもよい。
【0065】
バルーン20は、図2でより詳細に図示されている。バルーン20は通常、膨張内腔24に連結された近位部30およびガイドワイヤ内腔22に連結された遠位部32を含む。バルーン20は、流体または気体で膨張させたとき、放射状に拡張する。いくつかの実施形態では、流体または気体は非導電性であってもよく、かつ/または冷却されてもよい。いくつかの実施形態では、バルーン20は、加圧されて動脈組織に接触する低圧バルーンであってもよい。他の実施形態では、バルーン20は、より高い圧力をかけて、動脈組織を加熱すると同時に、動脈内腔の拡張することもできる血管形成バルーンである。バルーン20は、特に、使用後に取り出すために、放射状に拡張した、膨張した形状から扁平な形状へのバルーンの再構成を容易にするらせん状のひだを有するコンプライアントバルーンまたはノンコンプライアントバルーンを含んでもよい。
【0066】
電極34はバルーン20の表面に取り付けられており、関連導体36は電極から近位に伸びている。電極34は、バルーン20表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。システムは、エネルギーの単極適用または双極適用のために使用されてもよい。双極エネルギーの送達では、隣接電極は軸方向に相殺されて、双極エネルギーが隣接する円周状の(軸方向に相殺された)電極間に向けられる。他の実施形態では、電極は、双極エネルギーが隣接する遠位電極と近位電極の間に向けられるように、バルーン周囲に帯状に配置されてもよい。
【0067】
コーティング35はバルーン20に連結されており、例えば、図3Aおよび3Bに示すような、電極34間に位置している。コーティング35は、標的とされた組織に送達されるべき流体または薬物を含む。コーティングは熱的に活性化され、かつ体温を上回る(37℃よりも高い)温度でバルーン表面から放出されるように構成されていることが想定される。エネルギーを送達するかまたは加熱して、コーティング化合物の相を固体から液体に変化させ、薬物を放出させることがその狙いである。この温度上昇は、RFエネルギーを用いて電極34を活性化させることに関わる。エネルギーが増大するとともに、電極34間のコーティング35が加熱され、局所組織48に熱的に放出される。コーティング35は、分離または剥離することなくバルーン20に包み込むことができる程度に耐久性があるかまたは可撓性がある。このメカニズムによって、小さいまたは大きい分子薬物または医薬品が放出され得る。薬物は固体ゲル形態であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、バルーン20表面のコーティング35bの層には、各々異なる物理的特性(例えば、相変化温度)を有する2以上の生体活性物質、流体、またはコーティング層(図3C)を組み込んでもよい。例えば、概略位置に神経がある可能性がある場合、麻酔薬を、より高い温度の特定の治療の前に、より低い融解温度で投与することができる。図3Cに示すような、いくつかの実施形態では、例えば、積層することによって、異なる材料のコーティングを使用してもよい。例えば、第1の層は、第2の層中の第2の生体活性物質35cに対する受容体として働く、標的組織48に付着している第1の生体活性物質35bを含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング35Aを用いて、例えば、図4Aに示す、電極34を被覆してもよい。第2のコーティング35Aは、電極34表面の絶縁コーティングであってもよい。第2のコーティング35Aは、内腔内の金属体(例えば、ステント)の内側を治療する場合に使用されるが、それは、例えば、電極34が金属に接触することになれば、ショートして、治療を終わらせる可能性があるからである。電極が金属体でショートし得ないような電気特性を有する材料で電極34がコーティングされていれば、金属体と接触した場合でも治療を継続することができる。このため、カテーテルシステム10によりステントのような物体の内側を治療することができる。第2のコーティング35Aは、電極34を図4Bに示すような組織48から絶縁するように働くこともでき、それによって、組織48を通るエネルギーの流れが停止/禁止され、コーティング35を通じてエネルギーが送られ、電極34間のコーティング35だけが加熱され、薬物が組織48に放出される。第2のコーティング35Aはまた、コーティング35とは異なる薬物を含んでもよい。
【0070】
例として、図4Cに示すように、内腔内の金属体(例えば、ステント内再狭窄90が存在するステント)の内側または近くを治療する場合、絶縁コーティングを用いることが好ましいが、それは、電極が金属に接触することになれば、ショートする可能性があり、治療が終わることになるからである。それゆえ、いくつかの実施形態では、金属などの導電性物体(図4C)と近接したときにショートを回避し、それにより、そのような状況下で治療を継続することができるように、電極を絶縁することが好ましい。電極を組織から絶縁するように働くこともでき、それによって、エネルギーがバルーン表面の選択された場所に向けられると同時に、エネルギーが組織部位に直接流れるのを防ぐことができる。
【0071】
多くの種類の薬物がコーティングに含まれてもよい。例えば、コーティングは、シロリムス(サイファー(商標)ステントで使用される)、パクリタキセル(タクサス(商標)ステントで使用される)、ゾタロリムス(エンデバー(商標)ステントで使用される)およびエベロリムス(ザイエンスV(商標)ステントで使用される)などの、薬物溶出ステントの中で現在使用されている薬物を含んでもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態は、加熱されたときに(例えば、RFエネルギー源が活性化されたときに)、容易に分解する基質を用いてバルーン20にコーティングされたアプタマー52を含んでもよい。アプタマーは、特異的な標的分子に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子である。アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸などの様々な分子標的、さらには細胞、組織および生物体に極めて特異的に結合するように人工的に作製することができる。アプタマー52は、内腔または動脈内の標的されるべき所望の組織48(例えば、プラーク)との結合54が生じるように合成することができる。
【0073】
カテーテルシステム10に動力が供給されず、バルーン20がしぼんでいる間、アプタマー52を含むコーティング35は、バルーン20表面にとどまっている。ひとたびバルーン20が膨張し、エネルギーユニットがオンになれば、コーティングが放出され、例えば、アプタマー52が、図5に示す所望の組織に結合する。いくつかの実施形態では、アプタマー52は、カテーテルシステム10によって放出されるエネルギー58(例えば、RFエネルギー)を受け入れる力が大きい微小ビーズ56にコンジュゲートされている。ビーズ56は、アプタマー52が接触している組織に直接、そして、アプタマー52が接触している組織に対してのみ、RFエネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0074】
アプタマーは、抗体とほとんど同じように分子の表面に結合する核酸である。アプタマーと抗体の1つの重要な違いは、アプタマーは化学合成で産生できるのに対し、抗体は、まず動物、次に、培養または発現系で、生物学的に産生されるということである。もう1つの重要な違いは、アプタマーは非常に安定であり、温度をはじめとする周囲環境に影響を受けないということである。
【0075】
いくつかの実施形態では、コーティング35は、プラーク軟化特性を有する化学溶媒を含んでもよい。エーテル、クロロホルム、ベンゼン、およびアセトンは、脂質溶媒であることが知られている。さらに、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、および核酸は、これらの溶媒中では、ほぼ不溶性である。組織加熱とともに溶媒が使用される場合、組織治療は、より短い時間にあまり多くのエネルギーを必要とせず、健康組織に対する損傷の可能性を軽減することができる。組織がカルシウム沈着を含む場合、脂質溶媒をプラークに送達するために使用されるものと同じプロセスを用いて、カルシウム溶媒を石灰化部位に送達することができる。カルシウムは、種々の有機溶媒に極めてよく溶ける。どちらの場合も、溶媒は、熱もしくはRFエネルギーの適用によってまたはバルーンが膨張したときに分解するコーティングとともにバルーンの表面に連結されることになる。
【0076】
いくつかの実施形態では、コーティングは、各々異なる相変化温度を有する、本明細書に記載の2以上の薬物、薬剤、または流体を内部に組み込んでもよい。例えば、概略位置に神経がある可能性がある場合、麻酔薬を、より高い温度の特定の治療の前に、より低い融解温度で投与することができる。いくつかの実施形態では、例えば、積層することによって、異なる材料の2つのコーティングを使用してもよい。例えば、第1の層は、標的組織に付着している第1の薬物を含み、第2の層中の第2の薬物に対する受容体として働くことができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、電極間の電気ショートを減少または消失させるために非導電性である。
【0077】
いくつかの実施形態では、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定することができる。内腔内の放射状に間隔の開いた電極34を用いるインピーダンス測定を用いて、組織を解析することができる。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示す。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0078】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、「Q10則」を利用する「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的薬物送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、流体または薬物治療をさらに強化してもよい。Q10則の下では、温度を10℃増加させると、生化学的反応速度が通常2倍になることがよく知られている。
【0079】
図6に示すように、電極34は、バルーン20の周囲に円周方向に位置している。RFエネルギー43は、隣接電極対の34Aと34C、または34Aと34D、または34A〜34Dの任意の組合せの電極に向けられ、健康組織45と内腔50の内部のアテローム動脈硬化性物質48の両方を治療する。この配置によって、組織を通るエネルギー路43が作り出され、特定の治療域または治療部分におけるエネルギーまたは熱(「組織再構築エネルギー」)が、特定の深さの電極対間に容量を有する電極対間の動脈組織(「再構築域」)に送達される。様々な組合せの電極対を使用することで、重複する対を用いて、再構築域間のギャップを減少または消失させ得る。双極エネルギーを有する電極対を用いることで、単極手法のいくつかの潜在的な問題を回避し得る。罹患動脈組織48は、健康な動脈組織よりも高い電気抵抗率を有する。双極システムで、電極34A、34Bの対を用いることによって、組織再構築エネルギーは、再構築域の電極対間の健康組織、罹患組織、または健康組織と罹患組織の両方の組合せを通り抜ける。任意の数の電極対を異なるパターンまたは配列で用いて、いくつかの再構築域を作り出し得る。コントローラは、定電力、定電流、または定電圧のいずれかの最も大きな利点があるものを適用し得る。
【0080】
コントローラ40は、1〜180秒間に約0.25〜5ワットの平均電力で、または約4〜45ジュールで電極に通電し得る。より高エネルギーの治療は、0.5ワットで90秒間または0.25ワットで180秒間などの、より低い電力およびより長い持続時間で行なわれる。2〜4ワット範囲の大半の治療は、1〜4秒のうちに行なわれる。より幅広い電極間隔を用いるならば、治療の電力および持続時間を拡大することが適切であり、その場合、平均電力は、5ワットよりも高くなる可能性があり、総エネルギーは、45ジュールを超える可能性がある。同様に、より短いまたはより小さい電極対を用いるならば、平均電力を縮小する必要があり、総エネルギーは、4ジュール未満になる可能性がある。電力および持続時間は、重度の損傷を引き起こさない程度に、特に血管内の罹患組織48を焼灼しない程度に調整される。
【0081】
いくつかの実施形態では、薬物および穏やかな熱の送達は、標準的な非加熱血管形成膨張圧またはそれよりも著しく低い膨張圧で動脈を再構築するために穏やかな膨張を用いるバルーン血管形成を伴ってもよい。10〜16気圧のバルーン膨張圧が、例えば、特定の病変の標準的な血管形成膨張に適している可能性がある場合、本明細書に記載されている(バルーン表面の可撓性回路電極、バルーン構造に直接蒸着された電極などを通る)適切な電位と組み合わせた修正した膨張治療は、10〜16気圧を使用してもよいし、または6気圧未満、場合によっては、わずか1〜2気圧の圧力で達成されてもよい。そのような中程度の膨張圧を、組織特徴付け、同調エネルギー、偏心治療、および末梢血管系の疾患の治療のために本明細書に記載されている他の治療態様のうちの1つまたは複数の態様と組み合わせてもよい(または組み合わせなくてもよい)。
【0082】
共有結合した生体分子
過形成性新生内膜を予防するかまたは恒久的に除去するための現在の血管内療法は、完全に有効というわけではない。そのような組織の除去は、複数のそのような療法によって達成されるが、組織の再増殖が頻繁に起こり、再狭窄および血流機能不全をもたらす。薬物溶出ステントは、再狭窄の頻度を抑えることができるが、持続的なインプラント、すなわち、ステントが存在するために、血管機能の完全回復にはほど遠くなる。
【0083】
つい最近では、薬物凝固バルーンが、薬物溶出ステントよりもさらに大きく再狭窄の頻度を低下させることを示し、このバルーンは、治療後に除去されるが、抗増殖性/抗炎症性生体分子を任意で送達するために高圧膨張が必要となる。これらの分子は、炎症性細胞の流入(走化性)や細胞増殖を防ぐことによって、再狭窄を予防するように機能し得る。これらの分子はまた、構造的な支持体を提供し、それにより内腔直径を「定める」ことによって、IELマトリックスを安定化するように機能し得る。
【0084】
さて、図9Aおよび9Bに移ると、体内組織248に薬物を送達するためのカテーテルシステム200の別の実施形態が図示されている。システム200は、バルーン20に連結された生体分子235をコーティングの代わりに使用していることを除いて、上記のシステム10と類似している。生体分子235は、バルーン20表面に共有結合で連結された熱的に放出可能な活性部235aおよび不活性部235bを含む。活性部または分子235bは、所望の組織248を治療することができ、これは、温度または圧力で強化し得る。生体分子の不活性部235aはバルーン表面にとどまる。本明細書に記載の実施形態は、低圧膨張とバルーンからアテローム性動脈硬化病変へのエネルギー送達とによって、バルーンに共有結合している生体分子の活性部を高温で放出する高周波血管内バルーンカテーテルを利用し、それにより分子の活性部を標的とされた組織に送達する。エネルギーには、超音波放出エネルギーが含まれてもよい。活性分子235bは、限定するものではないが、細胞分裂停止(有糸分裂の防止)、受容体成熟(すなわち、過形成性組織形成を促進する浸潤細胞に付着する/そのような細胞に走化性のある標的とされた組織の細胞における/細胞の表面の受容体)をはじめとする任意の手段によって、過形成性組織の産生を予防するように機能する。
【0085】
分子の生体活性部235bは、局所的な高温環境を誘導する(例えば、電極34からの)エネルギーの送達によって、無傷の生体分子235から放出される。分子は、高温条件下で安定である。分子は、以下の機能:1)細胞増殖;2)細胞機能;3)受容体−リガンド結合;4)炎症性細胞の標的組織への走化性;および5)ネイティブ動脈層の細胞の罹患組織への移動のうちの1つまたは全てを防ぐことができる。
【0086】
分子235bの罹患組織48への流入は、エネルギーを介する低体温によって促進および/または加速される、すなわち、無傷の生体分子からの切断、罹患組織中への移動、および多孔性の増大による罹患組織における在留は全て、高温によって加速される。本発明は、1)低温加速により、より速い速度で、2)罹患組織を分子に対してより受容的/多孔性にすることにより、より完全に、かつ/または3)生体分子の不活性断片を伴わずに(すなわち、不活性断片がバルーン表面にとどまるので、活性化に必要なポリマー、不活性タンパク質配列/断片、もしくは共因子は治療部位に残らない)、生体活性分子を罹患組織内に独特に送達する。
【0087】
プラークを減少させ、ステント留置部位またはステント非留置部位における再狭窄を予防するように臨床的な適用および使用を設計し、また、積極的な非インプラント型血管内処置およびステントインプラントに対する補助的な治療として使用してもよい。
【0088】
流体送達チャンネル
図7は、内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するための流体送達チャンネルを有するカテーテルシステム100の別の実施形態を示している。カテーテルシステム100は、近位端116および遠位端118を有するカテーテル本体114を有するバルーンカテーテル112を含む。カテーテル本体114は可撓性があり、カテーテル軸115を規定し、ガイドワイヤ内腔122および膨張内腔124などの1以上の内腔を含んでもよい。カテーテル112は、遠位端118に隣接する膨張可能バルーン120および近位端116に隣接するハウジング129を含む。ハウジング129は、ガイドワイヤ内腔122と連通する第1のコネクタ126および膨張内腔124と流体連通する第2のコネクタ128を含む。膨張内腔124は、バルーン120と第2のコネクタ128の間に延在する。第1と第2の両方のコネクタ126、128は、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0089】
ハウジング129は電気コネクタ138も収容する。コネクタ138は、各々導体136を介して電極134に電気結合される、複数の電気接続部を含む。これにより、電極134は容易に通電され、電極は、コントローラ140およびRFエネルギーなどの動力源142によって通電されることが多い。一実施形態では、電気コネクタ138は、コントローラ140を介してRF発生器に連結され、コントローラ140は、エネルギーが電極134または電極対に選択的に向けられることを可能にする。コントローラ140は、プロセッサを含んでもよく、または治療を制御もしくは記録するためにプロセッサに連結されてもよい。
【0090】
図8Aはバルーン120の断面図を示し、図8Bは、バルーン120の表面に取り付けられた電極134に連結されたバルーン120を貫通する流体送達チャンネル160を示す拡大断面を示す。電極134は、電極から近位に伸びた関連導体を含む。電極134および流体送達チャンネル160は、バルーン120表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。流体送達チャンネル160は、流体152を保持する流体貯留層または内腔162に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、膨張媒体は、送達すべき流体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、バルーン120を貫通するチャンネル160に、チャンネルを開口させるために熱的に放出することができるワックス状材料164(または放出することができる任意の他の材料)を充填してもよい。他の実施形態では、電極134は、フラップを開閉させて、流体を放出してもよい。
【0091】
送達チャンネル160は、内腔の体内組織に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。いくつかの実施形態では、電極が体内組織に入り込んでもよい。
【0092】
カテーテルシステム100はまた、体内組織を特徴付けるように構成されている組織分析装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極134は、電気インピーダンストモグラフィーを用いて治療すべきまたは治療すべきでない領域を特定するために組織を特徴付けるのを助けることができる、上で論じたような検出電極であってもよい。例えば、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。電極134は、特徴付けられた体内組織に応答して通電されてもよい。
【0093】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、上で論じたように、「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的流体送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、流体送達または治療をさらに強化してもよい。
【0094】
電極134は、流体送達チャンネル160を開閉させて、組織を治療するよう、選択的に通電され得る。1つの方法は、それ以外の場合にはチャンネルを遮断する材料164が、固体から液体へと相変化するように、電極を選択的に加熱することによって(ジュール加熱または隣接領域に上昇した温度を誘導し、それにより熱伝導で電極を加熱することを含む、他の手段によって)流体送達チャンネル160を開口させることを含む。別の考えられる方法は、MEMS(微小な電気機械システム)を用いて、チャンネル160を選択的に開口させるおよび/または閉口させることを含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、電極(灌流電極)を貫通するビアであってもよい。ビアまたは小さな穴を用いて、流体を電極に近接する動脈組織に送達してもよい。穴は直径1μm未満であってもよく、かつレーザーまたはイオンビームを用いて作ってもよい。穴は、電極およびバルーンの中に作られてもよい。一例では、可撓性回路上の電極パッドは、めっきしたビアを有するように設計される。可撓性回路をバルーン表面に取り付け、レーザーまたはイオンビームを用いて、可撓性基板およびバルーンに穴を作る。あらゆる電極パッドについて可撓体/バルーンに数個の穴があってもよい。その後、バルーンに標準的な灌流バルーン機器または特殊な機器を用いて灌流させてもよい。この灌流手法は、固着を取り除くこと、熱を取り除くこと、または電気機器のインピーダンスを調節することなどの、流体送達以外の追加の利点も提供し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、マイクロレベルの流体送達チャンネルを有し、熱を加えることによってセレクト分子を通過させることができる、多孔性バルーンを使用してもよい。多孔性バルーンは、内層、多孔性の外層または膜、層(すなわち、貯留層)と外層に連結された電極との間に位置する薬物または流体分子を有してもよい。低圧では、分子は貯留層内部にとどまる。熱を加えると、分子は多孔性の層を通過し得るが、これは、様々な方法でなされ得る。例えば、熱を加えると、薬物分子が流出するようになり、多孔性の外層を通過するのに十分な力が生じ得る。別の例では、バルーンに熱を加えると、孔が拡大し、薬物分子が多孔性の層を通過することが可能になる。分子はまた、熱とともに浸透圧によって、多孔性の層または膜を通過し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療は、薬物、および/または熱、および/または小分子もしくは巨大分子の注入、および/またはRF、および/またはバルーン拡張、および/または高温を含んでもよい。
【0098】
他の実施形態では、当技術分野で公知の電気機械的または機械的手段を利用して、流体を放出させてもよく、これらの手段の例として、コントローラで駆動されるフラップまたは微小流体型装置165を挙げることができる。図8Cに示すように、送達チャンネル234は、体内組織48(例えば、内腔組織)に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。
【0099】
本明細書に開示されている装置、システム、および方法では、放射状に拡張可能な構造としてのバルーンが論じられているが、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる2007年10月18に出願された米国特許出願第11/975,651号(代理人整理番号021830−000540US)に記載されているような、他の拡張可能な構造も使用し得る。
【0100】
熱的に励起された浸透圧
いくつかの実施形態では、膜にマイクロレベルの流体送達チャンネルを有し、圧力および熱を加えることによって分子を通り抜けさせることができる、多孔性バルーンを使用してもよい。この概念では、逆浸透とほとんど同じように、流体または薬物を膜に通すことによって、流体または薬物が特定の部位に送達される。逆浸透では、圧力を用いて、水などの液体を膜に通すが、通路が非常に小さいので、適切な分子しか通過することができない。この実施形態では、膜バリアによって、パクリタキセルのような薬物は保持される。低圧では、薬物分子は膜を通過することができない。膜を通して薬物を放出するために、バルーンを用いて薬物分子に圧力をかけ、電極対または単極電極によって局所的にエネルギーを適用することによって、薬物の放出を加速させる。
【0101】
多くの実施形態では、エネルギー送達表面は、複数の間隔の開いた電極(例えば、図3A、3B、3C、4A、4B、6、8A、8B、10A、10B、11C、12、13A、13B、13C、13D、および14Bに示したような電極)を含む。図1および図7に示すようなエネルギー源は、選択された電極に選択的に通電するように、複数の電極に動作可能に連結される。エネルギーは、変化しやすいコーティングの部分を加熱して(加熱される部分は、任意で、電極間にある)、生体活性物質50を、図3B、3C、4B、5、9A、9B、10A、10B、11C、12、13C、14A、および14Bに示すような標的組織に直接的にまたは間接的に放出し得る。多くの実施形態では、組織は、内腔の罹患部を含んでもよく、セレクト電極は、罹患部に近接する熱的に変化しやすいコーティングを選択的に加熱するよう、通電される。
【0102】
多くの実施形態では、エネルギー送達表面は、バルーンが内腔の内側で拡張したときに標的組織中に複数の再構築域を規定するよう、拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の電極を含む。図6に示すように、電極は好ましくは組織と連結しており、エネルギーは、生物学的応答を開始するよう、電極と組織の間で伝達され得る。バルーンは、通常、バルーンカテーテルの遠位端を含み、バルーン表面のエネルギー送達表面には、一般に、カテーテルの近位端に連結されたエネルギー源を用いて通電される。エネルギー管は、近位端とバルーンの間をカテーテル本体に沿って延在し、このエネルギー管は、導電体(RFエネルギーなどを適用するため)、導光体(例えば、レーザーまたは他の光エネルギーを伝導するための、カテーテル本体の中を内腔に沿って走る光ファイバー繊維)などを含むことが多い。
【0103】
いくつかの実施形態では、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定してもよい。内腔内の円周方向に配置された電極(例えば、図6に示す電極)を用いるインピーダンス測定を用いて、組織を解析してもよい。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示し得る。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0104】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、「Q10則」を利用する「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的な生体活性物質の送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、生体活性物質治療をさらに強化してもよい。Q10則の下では、温度を10℃増加させると、生化学的反応速度が通常2倍になる。
【0105】
いくつかの実施形態では、電極は、バルーンの周囲に円周方向に離れており、RFエネルギーは、選択された電極または任意の選択された電極の組合せに向けられ得る。エネルギーを受容する電極を選択することにより、コントローラ(例えば、図1および図7に示すコントローラ)は、生体活性物質(図3B、3C、4B、5、8B、9B、10B、11C、12、13C、14B)の放出、生体活性物質の組織取込みの補助、またはその組合せのために、エネルギーを組織に適用する目的で罹患組織部位に向けてエネルギーを有向適用し得る(図6)。
【0106】
いくつかの実施形態では、バルーンカテーテルまたは他のカテーテルシステム表面のコーティングはまた、ポリマー(単数または複数)(図3A、3B、3C、4B、10A、10B、12、13A、13B、14A、14B)、(例えば、固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐ電気絶縁化合物(図4A)、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物(図5)、または任意のその組合せから構成されてもよい。
【0107】
バルーンを含む実施形態では、バルーンはまた、当技術でよく知られているような、コンプライアント材料またはノンコンプライアント材料(それらの組合せを含む)から構成されてもよい。
【0108】
組織検出およびエネルギーの選択的方向付け
エネルギーを選択的に方向付けるとき、組織シグニチャーを用いて、インピーダンス測定を利用して組織治療領域を特定してもよく、このインピーダンス測定は、図6に示すような、内腔内の間隔の開いた電極、例えば、円周方向に配置された電極を用いて、組織を解析することによって行なってもよい。隣接電極対間の(および/または分離電極対間の)インピーダンス測定は、電流路が罹患組織を通る場合と、電流路が内腔壁の健康組織を通る場合とで異なる可能性がある。したがって、罹患組織の両側の電極間のインピーダンス測定が病変を示し得る一方で、他の隣接電極対間の測定値は健康組織を示し得る。血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付けを用いて、治療すべき領域を特定してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、コントローラ(例えば、図1および図7に示すコントローラ)は治療を制御もしくは記録するためにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。プロセッサは、通常、コンピュータハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み、これらは、多くの場合、1以上の本明細書に記載の方法の一部もしくは全てを実装するための機械可読のプログラム命令またはコードを実行する1以上のプログラム可能なプロセッサユニットを含む。コードは、多くの場合、メモリ(任意で、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリなど)および/または記録媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードドライブ、CD、DVD、不揮発性固体メモリカードなど)などの有形的表現媒体において具現化される。コードならびに/または関連するデータおよび信号を、ネットワーク接続(例えば、ワイヤレスネットワーク、イーサネット、インターネット、イントラネットなど)を介して、プロセッサに送信するかまたはプロセッサから送信することもでき、かつコードの一部もしくは全てを、1以上のバスを介して、カテーテルシステムの構成要素間でおよびプロセッサ内で送信することもでき、また、適当な標準的なまたは独自仕様の通信カード、コネクタ、ケーブルなどは、多くの場合、プロセッサに含まれている。プロセッサは、少なくとも一部は、単一のプログラム、一連の個別的なサブルーチンまたは関連プログラムなどとして記載され得るソフトウェアコードを用いてプロセッサをプログラムすることにより、本明細書に記載の計算および信号送信工程を行なうように構成されていることが多い。プロセッサは、標準的なまたは独自仕様のデジタルおよび/またはアナログ信号処理ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームフェアを含んでもよく、かつ通常、患者を治療している間に本明細書に記載の計算を行なうのに十分な処理能力を有しており、このプロセッサは、任意で、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、独自仕様のプロセシングユニット、またはその組合せを含む。現代のコンピュータシステムに付随する標準的なまたは独自仕様の入力装置(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、ジョイスティックなど)および出力装置(例えば、プリンタ、スピーカー、ディスプレイなど)も含まれてよく、かつ複数のプロセシングユニットを有するプロセッサを(または別々のコンピュータも)、広範な集中データ処理アーキテクチャまたは分散データ処理アーキテクチャにおいて利用してもよい。
【0110】
コントローラは、1〜180秒間に約0.25〜5ワットの平均電力で、または約4〜45ジュールで電極に選択的に通電し得る。より高エネルギーの治療は、0.5ワットで90秒間または0.25ワットで180秒間などの、より低い電力およびより長い持続時間で行なわれる。2〜4ワット範囲の大半の治療は、1〜4秒のうちに行なわれる。より幅広い電極間隔を用いるならば、治療の電力および持続時間を拡大することが適切であり、その場合、平均電力は、5ワットよりも高くなる可能性があり、総エネルギーは、45ジュールを超える可能性がある。同様に、より短いまたはより小さい電極対を用いるならば、平均電力の縮小から恩恵を受けることになり、総エネルギーは、4ジュール未満になる可能性がある。電力および持続時間は、重度の損傷を引き起こさない程度に、特に血管内の罹患組織を焼灼しない程度に調整される。
【0111】
さらに、Q10則によって、生体活性物質の放出と組織取込みを、罹患組織に向けたエネルギーの有向送達と組み合わせる可能性が提供される。
【0112】
標的組織へのエネルギーおよび生体活性物質の選択的送達
好ましい実施形態では、バルーンカテーテルのバルーン部(図2)は、複数の円周方向に配置された電極を含むように構成される(図3A、3B、3C、4A、4B、4C、6、8A、8B、10A、10B、11C、12、13A、13B、13C、13D、14A、14B)。電極間で、複数の生体活性物質から構成される組成物は、バルーンの表面の少なくとも一部に存在する(図3A、3B、3C、4B、9A、10A、10B、11C、12、13B、13C、14A、14B)。複数の生体活性物質を含む組成物はさらに、他の材料(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)から構成されてもよい。バルーンコーティングは、浸け込み、噴霧、蒸着などを用いて塗布されてもよい。例えば、生体活性物質は、約37℃のヒト血液中で安定なポリマーマトリックスであって、選択された電極にエネルギーを適用したときに、選択された電極に隣接するバルーンコーティングを局所的に加熱し、その組成物の成分を放出するポリマーマトリックスから構成されるバルーンコーティング中に担持されてもよい。
【0113】
例として、図10B、図11C、および図12に示す放出は、少なくとも一部は、約37℃を超える温度でのコーティング分解または溶解によって引き起こされ得る。高い温度でより速やかに分解し、それにより、典型的なヒトの体温(約37℃)で保持された場合よりも速やかに生体活性剤を放出するように、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメタクリレートポリマーのような生分解性ポリマーを製剤化することができる。
【0114】
別の例として、放出は、少なくとも一部は、コーティングが局所的に約37℃よりも高く加熱されたときに、コーティングの液化によって引き起こされ得るが、その場合、コーティングは、約37℃未満の温度では固体またはゲル状であり得る。さらに別の例では、コーティングは、例えば、バルーン外面を血液などの体液と接触させたときのpHの変化によって分解し得る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメタクリレートポリマーは、pHの変化によって有用な生体活性化合物を速やかに放出することが知られている。局所での電圧の変化によって誘発されるガルバニック活性を用いて、通電された電極のすぐ近くにあるこれらの化合物を放出させてもよい。PEG化化合物、pNIPAハイドロゲル、キトサンハイドロゲル、キトサンおよびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)から構成される櫛形グラフトハイドロゲル、ならびにポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ポリ(ビニルアルコール)ハイドロゲルは、生体活性物質を含有し、かつ温度、pH、または両方の変化によって生体活性物質を放出するための手段として使用し得る既知のハイドロゲルの例である。
【0115】
エネルギーは、治療のために標的とされる罹患組織の解析および選択に基づいて、図1および図7のコントローラによって、図6に示すような電極のうちのいくつかに選択的に向けられることが最も好ましく、その場合、これらの電極によって、バルーンコーティング(図5、9B、10B、11C、12)または通電された電極に隣接する外層(図13C)が局所的に加熱され、それにより、バルーンから通電された電極と接触した組織中に生体活性物質が放出される。放出される生体活性物質の用量は、バルーンコーティングまたは外層における生体活性物質の濃度レベルによって、および罹患組織に向けられるエネルギーの量によって調節され得る。電極と接触した組織に適用されるエネルギーの調節(図6)、バルーンコーティングもしくは通電された電極に隣接する外層を加熱する間の生体活性物質の放出の調節、またはその組合せのために、図1および図7に示すコントローラを使用してもよい。さらに、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用することがさらに好ましい場合がある。
【0116】
図5に示すように、本発明のいくつかの実施形態は、加熱されるかまたは記載および開示されたようなインビボ環境(図3B、3C、5、9B、10B、11C、12、13C)に曝露されたときに分解する基質を用いてバルーンにコーティングされた生体活性アプタマーを含んでもよい。アプタマーは、抗体とほぼ同じ様式で分子の表面に結合する核酸である。「アプタマー」という用語は、ラテン語のaptus(「嵌る(to fit)」)に由来しており、アプタマーとその結合パートナーの間の鍵と鍵穴の結合関係を強調するために選ばれた。分子の形状には膨大な多様性が存在するので、幅広い分子標的についてアプタマーを得ることができ、これら分子標的としては、例えば、小分子、ほとんど全ての種類のタンパク質(酵素、膜タンパク質、ウイルスタンパク質、サイトカインおよび増殖因子、免疫グロブリンを含む)、さらには細胞、組織および生物が挙げられる。例えば、アプタマーを、罹患した内腔または動脈に見られるプラークと結合するように合成し得る。完全に試験管内で操作することができ、化学合成ですぐに生成され、望ましい貯蔵特性を有し、かつ治療的適用においてほとんどまたは全く免疫原性を示さないので、アプタマーには、その微細な違いを見分ける認識の他に、抗体に優る利点がある。
【0117】
生体活性アプタマーから構成されたバルーンコーティング(例えば、図3B、3C、4B、9A、10A、11C、12に示したバルーンコーティングのうちのいずれか)は、無傷でかつ貯蔵、展開、および膨張の間、バルーンに付着し続けることが好ましい。生体活性アプタマーは、複数の電極に通電されたときに放出され得る。ひとたび放出されると、生体活性アプタマーは所望の組織に結合し得、この組織は、その後、生物学的応答を促進し得る。図5に示すような、いくつかの実施形態では、生体活性アプタマーは、カテーテルシステムによって放出されたエネルギー(例えば、RFエネルギー)、および本明細書に開示された他の形態のエネルギーを受け入れる力が大きいことが好ましい微小ビーズにコンジュゲートされてもよい。その後、コンジュゲートされたビーズは、エネルギー(例えば、RFエネルギー)を熱エネルギーに変換し、生体活性物質の選択された組織部位への集中的適用を可能にし得る。さらに、いくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性アプタマーの取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0118】
図11Aおよび図11Cに示すように、本発明のいくつかの実施形態は、加熱されるかまたは本明細書に記載および開示されたようなインビボ環境に曝露されたときに分解する基質を用いてバルーンにコーティングされたリポソーム70(図11A)を含んでもよい。例えば、リポソーム70を、ポリマーもしくはゲルマトリックス(図11C)に組み込んでもよいし、またはバルーンの外面に直接付着させてもよい。熱を加えるか、またはインビボ環境に曝露させると、リポソーム70は活性化され、バルーンの外面から放出され得る(図11C)。図11Bに示すように、リポソーム70は、1つの疎水性末端74と1つの親水性末端73とを有して極性があり、かつ細胞膜に見られる物質から構成される。
【0119】
リポソーム、およびその関連逆ミセルは、水性溶液72のコアを含有していてもよく(図11A)、リポソーム70が図11Dに示すような細胞壁を含む脂質膜への通路を作り出すことができるので、このコアを用いて、他の生体活性物質を細胞に送達し得る。細胞膜は、通常、頭部基と尾部基を有する分子であるリン脂質でできている。頭部は、水に引き付けられ(すなわち、親水性)、長い炭化水素鎖でできた尾部は、水にはじかれる(すなわち、疎水性)。
【0120】
天然では、リン脂質は、図11Bに示すような2つの層(すなわち、リン脂質二重層71)から構成された安定な膜に見られる。水が存在すると、頭部は水に引き付けられ、水と向かい合う表面を形成するように並ぶ。尾部は水にはじかれ、水から遠ざかる表面を形成するように並ぶ。リポソーム50cのコア内部の生体活性物質50の他に、生体活性物質をリン脂質頭部50a、リン脂質尾部50b、または任意のそれらの組合せにも付着させ得る(図11A)。細胞内で、頭部の1つの層は、細胞の外側に面し、その環境中の水に引き付けられる。頭部のもう1つの層は、細胞の内側に面し、細胞内の水に引き付けられる。一方の層の炭化水素尾部は、もう一方の層の炭化水素尾部に面し、その組み合わされた構造は、二重層を形成する。
【0121】
膜リン脂質が乱された場合、それらは再集合して、二重層かまたは単層かのいずれかの、通常の細胞よりも小さい、小球になることができる。二重層構造はリポソーム70である。単層構造はミセルと呼ばれる。
【0122】
形質膜中の脂質は主に、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンのようなリン脂質である。リン脂質は両親媒性であり、分子の炭化水素尾部が疎水性で、その極性のある頭部が親水性である。形質膜は両側で水溶液に面しているので、そのリン脂質は、疎水性尾部を互いに向け合ったリン脂質二重層を形成することによって、これに順応している。
【0123】
さらに、リポソームを含むいくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則を用いて決定され、かつ/またはQ10則に従って、およびシステムコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、複数の電極を用いて標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、カテーテルシステムの他の表面に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、バルーンコーティングは、図12に示すようなプラーク軟化特性を有する化学溶媒を含んでもよい。例として、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、およびアセトンは、既知の脂質溶媒である。さらに、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、および核酸は、これらの溶媒中では、ほぼ不溶性である。組織加熱とともに溶媒が使用される場合(図6)、組織治療は、より短い時間にあまり多くのエネルギーを必要とせず、健康組織に対する損傷の可能性を軽減することができる。組織がカルシウム沈着51を含む場合、脂質溶媒をプラークに送達するために使用されるものと同じプロセスを用いて、カルシウム溶媒を石灰化部位に送達することができる。カルシウムは、種々の有機溶媒に極めてよく溶けることが周知である。図12は、バルーン20表面にコーティングされたカルシウム溶媒300を含む生体活性物質を示す。どちらの場合も、溶媒をコーティングとともにバルーンの表面に連結することができ、このコーティングは、本明細書に記載および開示されたようなエネルギー(例えば、熱もしくはRFエネルギー)の適用によって分解し得るか(図12)、またはバルーンコーティングは、バルーンが膨張したときに、コーティングの分解などによって溶媒を放出し得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、光エネルギーを動力源(例えば、コントローラ)からシステムのバルーン部へ伝導するための手段を含むように、バルーンカテーテルシステム(図1、7)がさらに含まれてもよい。光エネルギーを伝導するための手段は、カテーテル本体内の内腔の内側に位置する細い1本の可撓性の光ファイバー繊維であってもよい。光エネルギーの送達は、生体活性物質を放出および/または活性化するための代替のまたは追加のエネルギー源であり得る。例えば、紫外線(UV)光源を用いて、バルーンの外部表面の複数の生体活性物質を分解しながら、同時に、バルーンがインビボの所望の場所に位置した場合にのみ生体活性物質の所望の特徴を活性化し得る。そのような光エネルギー手段の多くの利点を想定することができ、そのような利点としては、(特に、持続的治療または反復治療の状況における)組織加熱への依存が減ること、(例えば、金属ステントインプラントの近くで作用する場合に)電流の送信が回避されること、(貯蔵によるまたは標的組織部位へのナビゲーションの間の)所望の放出時間よりも前の生体活性効果の損失が防止されること、送達に利用可能な生体活性物質の種類が増えることなどが挙げられる。
【0126】
バルーンカテーテルシステムの別の好ましい実施形態では、生体活性材料から構成される流体を内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に送達するための、流体送達チャンネル(例えば、図8Aに示すもの)を含むように、バルーン部(図2)がさらに含まれる。カテーテルシステムは、近位端および遠位端を有するカテーテル本体を有するバルーンカテーテル(例えば、図7に示すもの)を含む。カテーテル本体は可撓性があり、カテーテル軸を規定し、ガイドワイヤ内腔および膨張内腔などの1以上の内腔を含んでもよい(図7)。カテーテルは、遠位端に隣接する膨張可能バルーンおよび近位端に隣接するハウジングを含む。いくつかの実施形態では、ハウジングは、ガイドワイヤ内腔と連通する第1のコネクタおよび膨張内腔と流体連通する第2のコネクタを含む(図7)。膨張内腔は、バルーンと第2のコネクタの間に延在する。第1と第2の両方のコネクタは、任意で、Luer−Loc(商標)コネクタなどの標準的なコネクタを含んでもよい。さらに、遠位先端は、ガイドワイヤなどの通過を可能にする統合先端弁を含んでもよい。
【0127】
ハウジングはまた、各々導体を介して電極に電気結合される、複数の電気接続部を含み得ることが好ましい電気コネクタを収容してもよい(図8A)。図7に示すような、この配置により、電極に容易に通電され、電極は、多くの場合、コントローラ、およびRFエネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、または当技術分野で公知の他のそのような好適なエネルギー源などの動力源によって通電される。1つのそのような実施形態では、電気コネクタは、エネルギーが電極(図6、8A)に選択的に向けられることを可能にし得ることが好ましいコントローラ(図7)を介してRF発生器に連結される。コントローラは治療を制御もしくは記録するために、さらにプロセッサを含んでもよく、またはプロセッサに連結されてもよい。
【0128】
図8Bに示すように、流体送達チャンネルはバルーンを貫通し、かつバルーンカテーテルシステムのバルーン部の表面に取り付けられた電極に連結されることが好ましい。電極は、電極から近位に伸びた関連導体を含む。電極および流体送達チャンネルは、バルーン表面に様々なパターンまたは配列で配置されてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、生体活性材料から構成される流体を保持する流体貯留層または内腔に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、膨張媒体は、送達すべき流体を含んでもよい(図8B、8C)。いくつかの実施形態では、バルーンを貫通するチャンネルに、加熱されると十分に液化または分解する材料(例えば、ワックス状材料、ゲル状材料、ポリマーなど)を充填してもよく、選択した電極にエネルギーを適用したときに、この材料の分解によって、流体がチャンネルを通過することが可能になる(図8B)。例として、1つの方法は、それ以外の場合にはチャンネルを遮断する材料が、固体から液体へと相変化するように、複数の電極を選択的に加熱することによって(ジュール加熱または隣接領域に上昇した温度を誘導し、それにより熱伝導で複数の選択した電極を加熱し得ることを含む、他の手段によって)流体送達チャンネルを開口させることを含む(図8B)。選択した電極への通電は、組織インピーダンス解析(例えば、本明細書に記載したような組織インピーダンス解析)に基づくことが好ましい場合がある(図6)。他の実施形態では、当技術分野で公知の電気機械的または機械的手段を利用して、流体を放出させてもよく、これらの手段の例として、コントローラで駆動されるフラップ165または微小流体装置を挙げることができる(図8C)。
【0130】
図8Cに示すように、送達チャンネルは、体内組織(例えば、内腔組織)に入り込むことができるように、バルーン表面から突き出ていてもよい。
【0131】
カテーテルシステムはまた、体内組織を特徴付けるように構成された組織分析装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極は、電気インピーダンストモグラフィーを用いて治療すべきまたは治療すべきでない領域を特定するために組織を特徴付けるのを助け得る、本明細書に記載および開示されたもののような、検出電極であってもよい(図6)。例えば、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなどの他の特徴付け手段を用いて、治療すべき領域を特定してもよい。電極は、特徴付けられた体内組織に応答して通電されてもよい。
【0132】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を用いて、上記のように、「穏やかな加熱」と組み合わせた選択的流体送達によってアテローム性動脈硬化症を治療して、使用流体治療をさらに強化してもよい。
【0133】
図8Bおよび図8Cに示すような、いくつかの実施形態では、流体送達チャンネルは、電極(すなわち、灌流電極)を通る通路であってもよい。通路または小さな穴を用いて、生体活性材料から構成される流体を電極に近接する動脈組織に送達してもよい。通路は直径1μm未満であってもよく、かつレーザーまたはイオンビームなどの方法を用いて作ってもよい。通路は、電極およびバルーンの中に作られてもよい。例として、可撓性回路上の電極パッドは、めっきした通路を有するように設計される。可撓性回路をバルーン表面に取り付け、レーザーもしくはイオンビーム、または当技術分野で公知の他の手段を用いて、可撓性基板およびバルーンに通路を作る。あらゆる電極パッドについて可撓性基板/バルーンにいくつかの通路があってもよい。その後、標準的な灌流バルーン機器または特殊な機器を用いてバルーンに灌流させてもよい。灌流電極の使用は、固着を取り除くこと、熱を取り除くこと、または通電された電気機器のインピーダンスを調節することなどの、流体送達以外の追加の利点も提供し得る。
【0134】
いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0135】
機械装置におけるエネルギー誘発性の生体活性材料放出の別の実施形態は、不活性な生分解性物質とともに活性材料を圧縮することによるものである。この2成分混合物は、必要な時に必要な所で、超音波エネルギーなどの機械的振動に曝露されることによって分解される。振動が表面張力を破壊し、その後、速やかに混合および分解されたとき、半固体圧縮によって流体の侵入が可能になる。この液化プロセスは、エネルギーを適用しなくても長い期間にわたって起こり得るが、エネルギーの適用によって大いに強化される。
【0136】
図13Aに示す本発明のさらに別の好ましい実施形態では、バルーンカテーテルのバルーン部は、図13Bに示すような複数の円周方向に配置された電極で覆われた選択的多孔性膜80に被包されたバルーンを含むように構成される。バルーンは、当技術分野で周知の材料から選択され得る無孔性のノンコンプライアント材料から構成されることが最も好ましい。生体活性材料から構成される流体は、バルーンの外面と選択的多孔性膜80の内面の間に位置することが好ましい(図13B)。バルーンを内腔組織の内面と接触させるのに十分な圧力、約20気圧以下、最も好ましくは約4気圧〜約6気圧の圧力まで、バルーンを加圧してもよい(図13B)。
【0137】
エネルギーは、治療のために標的とされる罹患組織の解析および選択に基づいて、コントローラによって、電極のうちのいくつかに選択的に向けられることが最も好ましく(図6)、その場合、選択的に通電された電極は、通電された電極のすぐ近傍で、バルーン表面に重層された選択的多孔性膜の局所的加熱を引き起こす。図13Cに示すように、その後、好ましくは膨張バルーン圧と組み合わせた、選択的多孔性膜80’に対する局所的加熱効果は、生体活性材料から構成される流体の分子が孔を通り抜けて、標的とされた組織(例えば、罹患した動脈内腔の組織)に入ることができる大きさに膜の孔が拡張することをさらに可能にし得る。放出される生体活性物質の用量は、流体中の生体活性物質の濃度レベルによって、通電された電極によって引き起こされる局所的な膜加熱の量によって、バルーンの膨張圧によって、罹患組織に向けられるエネルギーの量によって、および任意のそれらの組合せによって調節され得る(図13C)。さらに、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用することがさらに好ましい場合がある。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0138】
いくつかの代替の実施形態では、バルーンの膨張媒体が、図13Dに示すような、生体活性物質50から構成される流体となり、その結果、バルーンを圧力「P」まで膨張させたときに、生体活性材料から構成される流体がバルーンの外面と選択的多孔性膜80の内面に導入されるように、バルーンが構成されてもよい。バルーンの壁を通る流体連通を任意の数の方法で達成し得るが、その例としては、多孔性、複数の通路などが挙げられ得る(図13D)。そのような代替実施形態の利点としては、生体活性物質から構成される流体の濃度および組成を罹患組織の性質に合わせられることが挙げられる。さらに、治療的処置の実施までの傷みやすい生体活性物質の貯蔵をなくすことで、バルーンカテーテルの保存期間が延びる可能性がある。他の代替の実施形態では、バルーンは、種々の既知のコンプライアント材料のいずれか、またはカスタマイズされたバルーン形状を達成するためのバルーンコンプライアンスの組合せから構成されてもよい。
【0139】
その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,383,873号において、Hoeyらは、インビボで薬物を送達するための手段としての浸透圧ポンピングの使用を記載している。図14Aおよび図14Bに示すまた別の実施形態では、「浸透圧ポンピング」の原理を、本明細書に記載および開示されたバルーン実施形態などの生体活性物質送達手段の組成、構造、および使用に応用し得る。生体活性物質送達の速度は、浸透圧性放出システムのメカニズムによって決定され、pHなどの局所的な微小環境とは比較的無関係である。送達手段は、バルーンカテーテルの技術分野で公知の種類の生体適合性ポリマーマトリックス(図14A)から構成されるバルーンを含んでもよく、または任意で、可撓性マトリックスの上張りがバルーンの外面に置かれてもよく、その場合、上張りは、シリコーンマトリックスであることが好ましい。複数の生体活性物質50は、バルーン構造を含むように生体適合性ポリマーマトリックス85と組み合わせてもよい(図14A、14B)。バルーン構造は、当技術分野で公知の手段のいずれかを用いて形成し得る。例えば、バルーンを型にはめて、固化し、それを固める鋳型の形態の生体活性物質/ポリマーマトリックス85構築物を作り出してもよい。バルーンの部分は、生体活性物質の放出が起こり得る領域、表面(単数)、または表面(複数)を選択し得るように、ポリエチレンなどの不透過性生体適合性物質86でさらに被覆されてもよい(図14A)。バルーンを内腔の組織などの湿った表面に適用した場合、流体は、マトリックスの隙間に侵入し、生体活性物質を可溶化する(図14B)。流体がさらに取り込まれると、流体圧「Pf」が、生体活性物質/ポリマーマトリックス中の浸透圧「P0」を超えたときに、生体活性物質がマトリックスから追い出され、バルーン/内腔界面で流体の薄膜を越えて拡散する。「ポンピング」効果は、流体圧が解放されるときに達成される。流体取込みの浸透圧は、十分な流体圧が作り上げられるまで再度広まり、「ポンピング」効果が繰り返される。生体活性物質は、ポリマーマトリックスから近接組織に向けて運ばれ、全身濃度に著しい影響を与えることなく局所濃度が達成される(図14B)。本明細書で開示および記載したように、バルーンは、組織治療部位においてさらなる効果を与えるために選択的に通電され得る複数の電極をさらに含んでもよい。(図14A、14B)。
【0140】
図9Aに示す本発明のまた別の好ましい実施形態では、バルーンカテーテルシステムのバルーン部(図2)は、コーティングの代わりに、またはコーティングとともに、バルーンに連結された生体活性分子の使用を利用し得る。生体活性物質の分子は、結合、最も好ましくは共有結合でバルーン表面に連結された熱的に放出可能な活性部と不活性部とを含んでもよい。活性部または分子は、標的とされた組織を治療することができ、これは、選択的電極通電による温度(図6)、バルーン膨張圧、またはその組合せを用いて強化し得る。図9Bに示すように、生体活性分子の不活性部はバルーン表面にとどまる。バルーンカテーテルシステム(例えば、図1に示すバルーンカテーテルシステム)を利用することが最も好ましく、その場合、バルーンの低圧膨張によって、バルーンの外面の周囲に円周方向に位置する複数の電極が、アテローム性動脈硬化病変などの罹患組織と接触する。図9Bに示すような生体活性分子の活性部の高温放出を引き起こすために、本明細書に開示および記載されたように、罹患組織を標的とするように、電極に選択的に通電し得る(図6)。生体活性分子は、バルーンに共有結合していることが最も好ましく、その場合、エネルギーの選択的適用によって共有結合が壊され、それにより、分子の活性部が標的とされた組織に選択的に送達される。分子の生体活性部は、最も好ましくは約37℃よりも高い、局所的な高温環境を誘発するエネルギーの送達によって、バルーンに連結された部分から(例えば、複数の電極)から放出される(図3A、4A)。電極に供給されるエネルギーとして、超音波放出エネルギーを挙げることもできる。
【0141】
最も好ましい実施形態は、高温条件下で安定な生体活性分子を利用する。生体活性分子は、細胞増殖、細胞機能、受容体−リガンド結合、炎症性細胞の標的組織への走化性、ネイティブ動脈層の細胞の罹患組織への移動、または任意のそれらの組合せを妨げるように選択し得る。生体活性分子の活性部は、罹患組織を治療するように機能する。例として、動脈アテロームでは、生体活性物質は、限定するものではないが、細胞分裂停止(有糸分裂の防止)、過形成性組織形成を促進する標的とされた組織の細胞におけるまたはそのような細胞表面の受容体の受容体成熟をはじめとする任意の手段によって、過形成性組織の産生を予防し得る。
【0142】
生体活性分子の罹患組織への流入は、エネルギーを介する温熱療法、すなわち、無傷の生体活性分子からの切断(図9B)、罹患組織内への移動、および多孔性の増大による罹患組織における在留によって促進および/または加速される
【0143】
さらに、いくつかの実施形態は、標的組織中への生体活性物質の取込みが、Q10則に従って、およびコントローラにより設定される総エネルギー限度内で最適化されるように、標的組織にエネルギーを適用し得る。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0144】
標的組織への生体活性物質の選択的送達
いくつかの実施形態では、絶縁コーティング(例えば、図4Aおよび図4Bに示す絶縁コーティング)を用いて、バルーンカテーテルシステムのバルーンの表面周囲に分配された複数の電極を被覆してもよい。このコーティングは、電極を周囲のインビボ環境から絶縁するために使用されてもよく、かつ絶縁特性を有する周知の生体適合性材料のいずれかから構成されてもよく、また、周知の幅広い方法のいずれかを用いて塗布されてもよく、その例としては、電極の表面の一部に対するコーティングパリレンの噴霧または電極の表面の一部に対するシリコーンバリアの形成を挙げることができる。例として、図4Cに示すように、絶縁コーティングは、内腔内の金属体(例えば、ステント内再狭窄が存在するステント)の内側または付近を治療する場合に使用されることが好ましいが、それは、電極が金属に接触することになれば、ショートして、治療を終わらせる可能性があるからである。それゆえ、いくつかの実施形態では、金属などの導電性物体(図4C)と近接したときにショートを回避し、それにより、そのような状況下で治療を継続することができるように、電極を絶縁することが好ましい。絶縁コーティングは、電極を組織から絶縁するように働くこともでき、それによって、エネルギーがバルーン表面の選択された場所に向けられると同時に、エネルギーが組織部位に直接流れるのを防ぐことができる。例えば、罹患組織部位の緩和治療において、繰返しのまたは持続的な組織加熱を回避しながら、電極に選択的に通電し、局所的なバルーン加熱を作り出し、かつ方向性のある様式で組織部位に生体活性物質を送達する能力を保持することが好ましい場合がある。絶縁コーティングは、追加のまたはバルーンの他の領域とは異なる生体活性物質をさらに含んでもよい(図4B)。いくつかの実施形態は、表面(例えば、バルーン表面またはカテーテルシステムの他の表面)に、コーティング(例えば、ポリマー、ゲル、潤滑剤、導電性材料または非導電性材料など)をさらに含んでもよい。
【0145】
血管形成処置中に有向送達されるエネルギーおよび生体活性物質
本発明のいくつかの実施形態は、血管形成処置中の加熱と組み合わせて、内腔に生体活性物質を送達するためのシステムおよび方法を提供する。血管形成は、狭窄病変を横断して開口させるための十分に確立された臨床的方法であり(図4C)、ここで、狭窄は、部分的または全体的、びまん性または限局性であり得る。狭窄病変を横断して開口させるために、様々な周知のおよび定評のある技術が使用され、膨張可能な血管形成バルーンはその重要な態様を含む。病変の組織を加熱すると、追加の利益が得られる可能性がある。例えば、加熱によって、病変を軟化および収縮させることができ、これはさらに、病変内のプラークをバルーンの周囲で容易に再形成させ、それにより血管の伸縮を避け、ひいては血管の損傷を避けることができる。さらなる追加の利益は、血管形成処置および加熱プロセスの間に生体活性物質を放出することによって得られる可能性がある。血管形成処置中に生体活性物質を選択的に送達するための方法は、以下の工程のいずれかから構成されてもよく、これらの工程は、種々の順番でさらに並べられてもよい。
【0146】
圧力−内腔を開口させるためのバルーンによるもの。圧力(例えば、図13Dに示す圧力「P」)は、10〜16気圧の標準的な血管形成膨張圧であってもよいし、または6気圧未満、場合によってはわずか1〜2気圧のより穏やかな膨張圧であってもよい。バルーン圧を工程毎に徐々に増やして用いてもよい。例えば、バルーンを、高度に狭窄した病変を横断し、部分的に開口させるための最初の過程の一部として使用してもよいし、またはバルーンを、血管形成の後にステントが適所に配置された後に、病変を事後的に拡張するために使用してもよい。エネルギーおよび/または生体活性物質の選択的送達をこの処置の間の任意の時点で利用してもよいし、またはそのような送達を、例えば、血管疾患の治療に伴う一般的な問題であるステント内再狭窄(図4C)を治療するための処置の後のある時点で行なってもよい。
【0147】
加熱−病変の組織を軟化および収縮させ得る適用されたエネルギーによるもの(図6)。加熱は、Q10則との関係、バルーンカテーテルシステムからの生体活性物質の放出で論じたような、および本明細書に記載および開示された実施形態の多くで論じたような生体活性物質の送達に関する他の利益も有し得る。
【0148】
生体活性物質−そのうちの複数は処置の間に放出され得る(図3B、3C、4B、9B、10B、11C、12、13C、14B)。生体活性物質は、生物学的応答を生じさせ得る任意の材料から構成されてもよい。生体活性物質の例は、巨大分子または小分子であってもよく、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、および抗マクロファージ物質を含み得るが、これらに限定されない。
【0149】
いくつかの好ましい実施形態は、例えば、平滑筋細胞(SMC)の増殖および/または中膜から内膜への移動を抑制するかまたは低下させることができる任意の分子:セラミド、スラミン、ラパマイシンおよびパクリタキセルを含む。組織の加熱には、薬物を病変または組織に、そしてより深く中膜に送達する手助けをするという重要な役割がある場合がある。
【0150】
他の好ましい実施形態は、タンパク質、例えば、抗炎症性タンパク質、抗体および病変内部の炎症を軽減および治癒させることができるか、またはSMCの増殖および移動を抑制するかもしくは低下させることができる他の種類のタンパク質を含む。いくつかの実施形態は、細胞のアポトーシスまたは腫瘍症を誘導するタンパク質を含み得る。加熱には、治療の間にこれらのタンパク質を活性化するという重要な役割がある場合があり、処置の間に素早く加熱すれば、組織をこれらのタンパク質に最大限の時間曝露させることができる。処置の間にタンパク質が活性化されるのを確実にするためには、タンパク質の半減期を考慮すべきである。タンパク質の半減期とは、その特定のタンパク質のタンパク質プールの任意の半分がなおも存在しかつ機能的である間の時間のことである。ヒトタンパク質の半減期は、多くの要因によって決まるが、特に、温度をはじめとする環境要因によって決まる。非常に高い温度(約50℃を超える)での半減期は秒単位であり得るのに対し、中程度に高い温度(約42℃〜約45℃)は、数時間の範囲の半減期をもたらし得る。タンパク質溶出バルーンについては、半減期の時間を延長する貯蔵環境でタンパク質を維持することが好ましい。バルーンの表面のタンパク質は、インビボ環境とエネルギーの適用とに曝露されるまでその生体活性能を保持するために、約0℃〜約37℃の温度で安定であることが最も好ましい。タンパク質のいくつかをアデノシン−5’−三リン酸(ATP)という名の分子と組み合わせてもよい。ATPは、細胞内エネルギー移動の「分子通貨」として重要な多機能ヌクレオチドである。一例では、バルーンをタンパク質で被覆し、電極をATPで被覆して(またはその反対)、タンパク質がバルーン膨張によって放出され、エネルギーが電極から放出されたときにATPが放出される(またはその反対)。
【0151】
さらに他の実施形態は、処置の間に近接組織(例えば、病変組織)に移動し得る細胞(例えば、内皮、または任意の他の種類の細胞)を含むバルーンを含み得、その近接組織では、細胞が、タンパク質または抗体を放出して、炎症の治癒を助けるかまたはSMCの増殖および移動を抑制し得る。処置の間に細胞を活性化するのを助けるために、熱を適用し、使用し得る。
【0152】
さらに他の実施形態は、熱ショックタンパク質(HSP)に付着したときに付着し得るかまたは活性化されるようになり得る分子またはタンパク質を含む。HSPは、細胞が上昇した温度または他のストレスに曝露されたときにその発現が増大する一群のタンパク質である。例えば、HSP27は、平滑筋細胞(SMC)の移動において機能を果たす。RFエネルギーの適用および加熱によって、SMC内のHSP27が亢進し、それにより、抗HSP27抗体を用いてSMCに直接送るために、任意の生体活性物質(例えば、タンパク質)を使用することが可能になり得る。熱および熱の結果は、再狭窄を予防するために、他の分子またはタンパク質を用いて、病変および中膜における他のタンパク質もしくは細胞に結合させるか、これらを分解するか、阻害するかまたは活性化することを促進または増進し得る。
【0153】
多くの実施形態では、評価方法(例えば、組織インピーダンス測定(図6)、血管内超音波、光コヒーレンストモグラフィーなど)を用いて、罹患組織に接近し、これを調べて、治療すべき領域を特定する。血管形成処置において、治療する組織の特定は、血管形成処置で使用される既知の工程の前、そのような工程の間、またはそのような工程の後のどの時点で行なわれてもよい。
【0154】
多くの実施形態では、エネルギーは複数の通電された電極に向けられ(図6)、これらの通電された電極は、コントローラの使用によってさらに調節され得る(図1、7)。熱の発生を罹患組織(例えば、動脈病変の罹患組織)を治療するための方法として使用してもよく、その場合、熱の発生は、バルーンを含むバルーンカテーテルシステムにおける場所に由来する。
【0155】
いくつかの実施形態では、複数の電極への通電を用いて、罹患組織を治療するための生体活性物質を放出させてもよく、この生体活性物質は、例えば、血管疾患の治療に用いられるバルーンカテーテルシステムに由来するものであってもよく、その場合、そのような生体活性物質の放出は、バルーンを含むシステムにおける場所に由来するものであり得る(図3B、3C、4B、9B、10B、11C、12、13C、14B)。生体活性物質の放出は、血管形成処置のどの時点でなされてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、複数の電極を絶縁して、バルーンカテーテルシステムからこのシステムのバルーン部に近接する組織または導電性物体へのエネルギーの伝達を妨害する(図4A、4B、4C)。そのような実施形態は、血管形成および/またはステント留置処置の前、その間、またはその後のどの時点で使用されてもよい。
【0157】
バルーン(例えば、図3B、3C、4B、9A、10A、11C、12、14Aに示すバルーンのいずれか)およびバルーン電極(図4A、4C)に塗布されるコーティングまたは層は、材料を表面または表面全体に置くために用いられる任意の種々の確立された方法を用いて塗布されてもよく、これらの方法には、噴霧、浸漬、焼付け、蒸着、イオン移行などが含まれ得る。
【0158】
本明細書に開示された装置、システム、および方法を用いて、エネルギーおよび/または生体活性物質を、血管系における任意の動脈または部位、例えば、大腿動脈、膝窩動脈、冠動脈および/または頸動脈の中に選択的に送達し得る。本開示は、血管系における技術の使用に焦点を当てているが、この技術は、任意の内腔の閉塞にも有用であろう。本発明が使用されてもよい他の解剖学的構造は、食道、口腔、鼻咽頭腔、耳管および鼓室、脳の洞、動脈系、静脈系、心臓、喉頭、気管、気管支、胃、十二指腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、射精管、精管、尿道、子宮腔、膣管、ならびに頚管である。さらに、他の組織を本発明によって治療してもよく、その場合、侵襲性の低いカテーテルまたは内視鏡技術が好ましい。
【0159】
参照番号が、添付の図と、仮特許出願第61/114,958号(代理人整理番号021830−001500US)および米国特許出願第12/616,720号(代理人整理番号021830−001510US)の対応する図の両方に現われる場合、それらの参照番号は、通常、対応する構造を特定するものである。しかしながら、下記の表1の参照番号は、列挙した要素を特定するものである。
【0160】
【表1】
【0161】
例としておよび理解を明確にするために、例示的な実施形態が少し詳しく記載されているが、当業者であれば、種々の修正、適合、および変更を利用し得ることを認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有し、近位端と遠位端の間に軸を有し、前記遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンおよび前記バルーン表面のエネルギー送達表面を有する細長いカテーテルと、
放出可能な生体活性材料を有し、前記バルーンに連結され、前記バルーンが拡張したときに、前記標的組織に働きかけるように配向されている、熱的に変化しやすいコーティングと、
前記熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、前記標的組織に前記生体活性材料を放出するよう、前記エネルギー送達表面に通電するように、前記カテーテルに動作可能に連結されているエネルギー源と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記エネルギー送達表面は、前記拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の間隔の開いた電極を含み、前記エネルギー源は、前記電極対間の前記熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、前記標的組織に前記生体活性材料を放出するよう、電極対に選択的に通電するように、前記複数の電極に動作可能に連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
電極は絶縁材料でおおわれている、請求項2のシステム。
【請求項4】
バルーンは、複数の円周上に間隔を置かれた電極によって覆われる選択的に浸透性膜によってカプセル化される、請求項1のシステム。
【請求項5】
バルーンは、生理活性素材から成っている膨張メディアを受信するように構成される、請求項4のシステム。
【請求項6】
体組織を特徴づけるように構成される組織アナライザから更に成る、請求項1のシステム。
【請求項7】
電極送出部は、特徴づけられた体組織に応答して生理活性素材を解除するために熱的に可変のコーティングを加熱するためにエネルギーを与えられる、請求項6のシステム。
【請求項8】
電極送出部は、生理活性素材の伝達の前に、の間、および/またはの後、体組織を加熱するためにエネルギーを与えられる、請求項1のシステム。
【請求項9】
熱的に可変のコーティングは複数の剥離可能な生理活性素材を含む。そこにおいて、各素材は異なる位相変化温度を有することになる、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記生体活性材料は、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、化学溶媒、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、抗マクロファージ物質または上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
生理活性素材は、一部のリポソームに付着する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱的に変化しやすいコーティングは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリレートまたは上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
エネルギー源はRFエネルギー源で、伝達部は少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するためにRFエネルギーを伝導するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
エネルギー源は軽いエネルギー源である、そして、伝達部は少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために光エネルギーを伝導するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
放射状にカテーテル(バルーンに配置されている熱的に可変のコーティング)のバルーンを膨張することによって熱的に可変のコーティングを有するルーメンについて配置される体組織を係合し;
熱的に可変のコーティングを加熱するためにバルーン上の表層にエネルギーを与え;
加熱に応答して体組織に熱的に可変のコーティングから生理活性素材を解除する、
剥離可能な生理活性素材の選択的な伝達のための方法。
【請求項16】
伝達部は拡張可能なバルーンについて配置されている複数の電極から成る、そして、選択された電極対は熱に付勢されて、電極対との間に熱的に可変のコーティングの部分を液化する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ルーメンの体組織は病気にかかった部分を含み、選択された電極対は、熱的に可変のコーティングすぐ近くの病気にかかった部分を加熱するために通電される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
確認された体組織を扱うために特徴づけられた体組織に応答して生理活性素材を解除する熱的に可変のコーティングの扱われて選択的に加熱部分である体組織を確認するために体組織を特徴づけることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
生理活性素材の伝達の前に、および/またはその間、および/またはその後、体組織を加熱することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
生理活性素材は、治療的な流体、麻酔剤、治療薬、小分子、遺伝子治療的な合成物、反血栓溶解剤、刺さることのないより高い温度を許容する潤滑油、電極でインピーダンスを低下させる電気伝導合成物、処理を必要としない組織に処理を防止する電気絶縁合成物、エネルギーを間隙層へ担送するために組織の内皮層によって移動することを目的とする電気伝導合成物のうち少なくとも一つか、または上記のいずれかの組合せから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、RFエネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、レーザー・エネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、超音波エネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、マイクロ波エネルギによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
ルーメンについて配置されている体組織に対する生理活性の素材伝達のカテーテル・システムであり、
近端部およびその間で軸を有する末端を有する細長いカテーテル、末端およびすぐ近くのエネルギー伝達面の近くの放射状に拡張可能な風船を有するカテーテル・エネルギーの伝達のためにバルーン;
熱的に解放可能な薬部を有する複数の生体分子およびバルーンに共有結合した不活発な部分;
体組織に生理活性素材を解除するために生体分子を加熱するために選択的に配達部にエネルギーを与えるために有効にコントローラに連結するエネルギー源、
から成るシステム。
【請求項26】
拡張可能なバルーンが膨張するときに、体組織を係合することはカテーテルの末端の近くで熱的に解放可能な薬部を有する複数の生体分子およびバルーンに共有結合した不活発な部分を有するルーメンについて配置し;
バルーン近くのカテーテルの電極伝達部分に通電して生体分子を加熱し;
生体分子の加熱に応答して体組織に生体分子から薬部を解除する、
ルーメンの生理活性素材を排出する方法。
【請求項27】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端の近くにある放射状に拡張可能な構造と、
前記拡張可能な構造により拡張可能な、熱的に変化しやすい材料で最初に遮断される複数の流体送達チャンネルと、
前記熱的に変化しやすい材料を加熱し、液化して、前記流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数を開口させ、流体を放出するよう、前記流体送達チャンネルに動作可能に連結されているエネルギー源と、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項28】
前記複数の流体送達チャンネルは、前記拡張可能な構造から突き出て、前記内腔の体内組織に入り込んでいる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
体組織を特徴づけるように構成される組織アナライザから成る、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
流体伝達チャネルは、特徴づけられた体組織に応答して選択的に一つ以上の流体伝達チャネルを開くために、選択的に通電されることができる、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
放射状に拡張可能な構造にバルーンが設けられ、流体伝達チャネルは、バルーンの円周に載置する、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
放射状に拡張可能な構造に拡張可能なバスケットが設けられ、流体伝達チャネルは、バスケットの円周に載置する、請求項27に記載のシステム。
【請求項33】
ルーメンの体組織は病気にかかった部分を含み、選択された電極は、病気にかかった部分のすぐ近くの流体伝達チャネルの一つ以上を開くべく通電される、請求項27に記載のシステム。
【請求項34】
選択された電極は、ルーメンの流体の発散に関連して体組織を加熱するために通電される、請求項27に記載のシステム。
【請求項35】
前記流体は、セラミド、スラミン、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、ゾタロリムス、エベロリムス、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、(固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐための電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端の近くにある放射状に拡張可能な構造と、
前記拡張可能な構造が拡張したときに、前記内腔の体内組織に働きかけるように配向されている複数の流体送達チャンネルと、
1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させ、前記内腔に流体を放出するよう、前記流体送達チャンネルに連結されている複数の微小電気機械システム(MEMS)と、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項37】
ルーメンの選択的な流体伝達のための方法であり;
放射状に膨張しているルーメンの中で構造による複数の流体伝達チャネルを有するルーメンについて配置されている体組織に係合し;
流体伝達チャネルの一つ以上を選択的に開き;
ルーメンに選択された流体配達チャネルから流体を解除する、方法。
【請求項38】
選択的に一つ以上の流体伝達チャネルを開くことに、選択的に流体伝達通信路を開いておよび/または閉鎖するために流体伝達チャネルに連結する複数のマイクロ電気機械システム(MEMS)が設けられている、請求項37の方法。
【請求項39】
内腔の周囲に位置する体内組織に薬物を送達するためのカテーテルアセンブリであって、
近位端および遠位端を有し、近位端と遠位端の間に軸を有する細長いカテーテルと、
内面および外面を有する放射状に拡張可能な多孔性バルーンであって、エネルギーを伝達するための前記バルーンに近接したエネルギー送達表面を有するカテーテルの遠位端の近くに位置している、前記バルーンと、
内面および外面を有する選択的多孔性膜であって、前記バルーン表面を覆っている、前記膜と、
前記バルーンを膨張させるための膨張媒体であって、前記バルーンを膨張媒体で膨張させたときに、前記薬物が前記多孔性バルーンの外面と前記膜の内面の間に導入されるように薬物を含む、前記媒体と、
前記エネルギー送達表面にエネルギーを送達すると同時に、前記バルーンの外面から前記膜を通して前記体内組織に前記薬物を送達するために、前記バルーンが前記内腔の内側で拡張するよう、前記カテーテルの近位端に連結されているエネルギー源と、
を含む、カテーテルアセンブリ。
【請求項40】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
内面および生体適合性マトリックスから構成されたバルーン外面を有する前記カテーテル本体の遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンと、
前記バルーンは前記組織を広げながら拡張し、流体圧が浸透圧を超えたときに、水分によって前記生体活性材料が可溶化されて、それが前記マトリックスから放出されるように、前記組織の湿った表面に配向されている、マトリックス表面の可溶性の生体活性材料のコーティングと、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項41】
方向的にエネルギーを排出することによる目標組織および/または生理活性素材の処理のためのシステムで、
近端部および軸を有する末端を有する細長い、末端およびバルーン上のエネルギー伝達面に近い放射状に拡張可能なバルーンを有するカテーテルと;
剥離可能な生理活性素材を有していて、バルーンに連結する可変のコーティングで、バルーンが膨張するときに、目標組織に対して勧められるために正しい位置に置かれている可変のコーティングと;
可変のコーティングを変えて、目標組織に生理活性素材を解除するためにエネルギー伝達面に通電するために有効にカテーテルに連結するエネルギー源を有するシステム。
【請求項1】
エネルギーおよび/または生体活性材料を有向送達することによって標的組織を治療するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有し、近位端と遠位端の間に軸を有し、前記遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンおよび前記バルーン表面のエネルギー送達表面を有する細長いカテーテルと、
放出可能な生体活性材料を有し、前記バルーンに連結され、前記バルーンが拡張したときに、前記標的組織に働きかけるように配向されている、熱的に変化しやすいコーティングと、
前記熱的に変化しやすいコーティングを加熱し、前記標的組織に前記生体活性材料を放出するよう、前記エネルギー送達表面に通電するように、前記カテーテルに動作可能に連結されているエネルギー源と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記エネルギー送達表面は、前記拡張可能なバルーンの周囲に位置する複数の間隔の開いた電極を含み、前記エネルギー源は、前記電極対間の前記熱的に変化しやすいコーティングの部分を加熱し、前記標的組織に前記生体活性材料を放出するよう、電極対に選択的に通電するように、前記複数の電極に動作可能に連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
電極は絶縁材料でおおわれている、請求項2のシステム。
【請求項4】
バルーンは、複数の円周上に間隔を置かれた電極によって覆われる選択的に浸透性膜によってカプセル化される、請求項1のシステム。
【請求項5】
バルーンは、生理活性素材から成っている膨張メディアを受信するように構成される、請求項4のシステム。
【請求項6】
体組織を特徴づけるように構成される組織アナライザから更に成る、請求項1のシステム。
【請求項7】
電極送出部は、特徴づけられた体組織に応答して生理活性素材を解除するために熱的に可変のコーティングを加熱するためにエネルギーを与えられる、請求項6のシステム。
【請求項8】
電極送出部は、生理活性素材の伝達の前に、の間、および/またはの後、体組織を加熱するためにエネルギーを与えられる、請求項1のシステム。
【請求項9】
熱的に可変のコーティングは複数の剥離可能な生理活性素材を含む。そこにおいて、各素材は異なる位相変化温度を有することになる、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記生体活性材料は、抗増殖剤、抗トロンビン、免疫抑制剤、脂質、抗脂質、リポソーム、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成剤、抗血管形成剤、ビタミン、アプタマー、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗硬化剤、血管作用薬、増殖因子、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウム拮抗薬、レチノイド、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、タンパク質、タンパク質薬、酵素、遺伝物質、細胞、化学溶媒、エネルギー活性化剤、抗リンパ球、抗マクロファージ物質または上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
生理活性素材は、一部のリポソームに付着する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱的に変化しやすいコーティングは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリレートまたは上記のいずれかの組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
エネルギー源はRFエネルギー源で、伝達部は少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するためにRFエネルギーを伝導するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
エネルギー源は軽いエネルギー源である、そして、伝達部は少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために光エネルギーを伝導するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
放射状にカテーテル(バルーンに配置されている熱的に可変のコーティング)のバルーンを膨張することによって熱的に可変のコーティングを有するルーメンについて配置される体組織を係合し;
熱的に可変のコーティングを加熱するためにバルーン上の表層にエネルギーを与え;
加熱に応答して体組織に熱的に可変のコーティングから生理活性素材を解除する、
剥離可能な生理活性素材の選択的な伝達のための方法。
【請求項16】
伝達部は拡張可能なバルーンについて配置されている複数の電極から成る、そして、選択された電極対は熱に付勢されて、電極対との間に熱的に可変のコーティングの部分を液化する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ルーメンの体組織は病気にかかった部分を含み、選択された電極対は、熱的に可変のコーティングすぐ近くの病気にかかった部分を加熱するために通電される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
確認された体組織を扱うために特徴づけられた体組織に応答して生理活性素材を解除する熱的に可変のコーティングの扱われて選択的に加熱部分である体組織を確認するために体組織を特徴づけることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
生理活性素材の伝達の前に、および/またはその間、および/またはその後、体組織を加熱することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
生理活性素材は、治療的な流体、麻酔剤、治療薬、小分子、遺伝子治療的な合成物、反血栓溶解剤、刺さることのないより高い温度を許容する潤滑油、電極でインピーダンスを低下させる電気伝導合成物、処理を必要としない組織に処理を防止する電気絶縁合成物、エネルギーを間隙層へ担送するために組織の内皮層によって移動することを目的とする電気伝導合成物のうち少なくとも一つか、または上記のいずれかの組合せから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、RFエネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、レーザー・エネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、超音波エネルギーによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
伝達部は、少なくとも一つの生理活性素材を解除しておよび/または活性化するために、マイクロ波エネルギによって作動される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
ルーメンについて配置されている体組織に対する生理活性の素材伝達のカテーテル・システムであり、
近端部およびその間で軸を有する末端を有する細長いカテーテル、末端およびすぐ近くのエネルギー伝達面の近くの放射状に拡張可能な風船を有するカテーテル・エネルギーの伝達のためにバルーン;
熱的に解放可能な薬部を有する複数の生体分子およびバルーンに共有結合した不活発な部分;
体組織に生理活性素材を解除するために生体分子を加熱するために選択的に配達部にエネルギーを与えるために有効にコントローラに連結するエネルギー源、
から成るシステム。
【請求項26】
拡張可能なバルーンが膨張するときに、体組織を係合することはカテーテルの末端の近くで熱的に解放可能な薬部を有する複数の生体分子およびバルーンに共有結合した不活発な部分を有するルーメンについて配置し;
バルーン近くのカテーテルの電極伝達部分に通電して生体分子を加熱し;
生体分子の加熱に応答して体組織に生体分子から薬部を解除する、
ルーメンの生理活性素材を排出する方法。
【請求項27】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端の近くにある放射状に拡張可能な構造と、
前記拡張可能な構造により拡張可能な、熱的に変化しやすい材料で最初に遮断される複数の流体送達チャンネルと、
前記熱的に変化しやすい材料を加熱し、液化して、前記流体送達チャンネルのうちの1つまたは複数を開口させ、流体を放出するよう、前記流体送達チャンネルに動作可能に連結されているエネルギー源と、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項28】
前記複数の流体送達チャンネルは、前記拡張可能な構造から突き出て、前記内腔の体内組織に入り込んでいる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
体組織を特徴づけるように構成される組織アナライザから成る、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
流体伝達チャネルは、特徴づけられた体組織に応答して選択的に一つ以上の流体伝達チャネルを開くために、選択的に通電されることができる、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
放射状に拡張可能な構造にバルーンが設けられ、流体伝達チャネルは、バルーンの円周に載置する、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
放射状に拡張可能な構造に拡張可能なバスケットが設けられ、流体伝達チャネルは、バスケットの円周に載置する、請求項27に記載のシステム。
【請求項33】
ルーメンの体組織は病気にかかった部分を含み、選択された電極は、病気にかかった部分のすぐ近くの流体伝達チャネルの一つ以上を開くべく通電される、請求項27に記載のシステム。
【請求項34】
選択された電極は、ルーメンの流体の発散に関連して体組織を加熱するために通電される、請求項27に記載のシステム。
【請求項35】
前記流体は、セラミド、スラミン、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、ゾタロリムス、エベロリムス、治療的流体、麻酔薬、治療薬、小分子、遺伝子治療化合物、抗血栓溶解剤、(固着することなくより高い温度を可能にするための)潤滑剤、電極におけるインピーダンスを低下させるための導電性化合物、治療する必要がない組織の治療を防ぐための電気絶縁化合物、組織の内皮層を通って移動して、間質層にエネルギーを運ぶことを意図した導電性化合物、または上記の組合せのうちの少なくとも1つから選択される、請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に流体を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端の近くにある放射状に拡張可能な構造と、
前記拡張可能な構造が拡張したときに、前記内腔の体内組織に働きかけるように配向されている複数の流体送達チャンネルと、
1以上の流体送達チャンネルを選択的に開口させ、前記内腔に流体を放出するよう、前記流体送達チャンネルに連結されている複数の微小電気機械システム(MEMS)と、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項37】
ルーメンの選択的な流体伝達のための方法であり;
放射状に膨張しているルーメンの中で構造による複数の流体伝達チャネルを有するルーメンについて配置されている体組織に係合し;
流体伝達チャネルの一つ以上を選択的に開き;
ルーメンに選択された流体配達チャネルから流体を解除する、方法。
【請求項38】
選択的に一つ以上の流体伝達チャネルを開くことに、選択的に流体伝達通信路を開いておよび/または閉鎖するために流体伝達チャネルに連結する複数のマイクロ電気機械システム(MEMS)が設けられている、請求項37の方法。
【請求項39】
内腔の周囲に位置する体内組織に薬物を送達するためのカテーテルアセンブリであって、
近位端および遠位端を有し、近位端と遠位端の間に軸を有する細長いカテーテルと、
内面および外面を有する放射状に拡張可能な多孔性バルーンであって、エネルギーを伝達するための前記バルーンに近接したエネルギー送達表面を有するカテーテルの遠位端の近くに位置している、前記バルーンと、
内面および外面を有する選択的多孔性膜であって、前記バルーン表面を覆っている、前記膜と、
前記バルーンを膨張させるための膨張媒体であって、前記バルーンを膨張媒体で膨張させたときに、前記薬物が前記多孔性バルーンの外面と前記膜の内面の間に導入されるように薬物を含む、前記媒体と、
前記エネルギー送達表面にエネルギーを送達すると同時に、前記バルーンの外面から前記膜を通して前記体内組織に前記薬物を送達するために、前記バルーンが前記内腔の内側で拡張するよう、前記カテーテルの近位端に連結されているエネルギー源と、
を含む、カテーテルアセンブリ。
【請求項40】
内腔の周囲に位置する体内組織に選択的に薬物を送達するためのカテーテルシステムであって、
近位端および遠位端を有する細長い可撓性カテーテル本体と、
内面および生体適合性マトリックスから構成されたバルーン外面を有する前記カテーテル本体の遠位端の近くの放射状に拡張可能なバルーンと、
前記バルーンは前記組織を広げながら拡張し、流体圧が浸透圧を超えたときに、水分によって前記生体活性材料が可溶化されて、それが前記マトリックスから放出されるように、前記組織の湿った表面に配向されている、マトリックス表面の可溶性の生体活性材料のコーティングと、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項41】
方向的にエネルギーを排出することによる目標組織および/または生理活性素材の処理のためのシステムで、
近端部および軸を有する末端を有する細長い、末端およびバルーン上のエネルギー伝達面に近い放射状に拡張可能なバルーンを有するカテーテルと;
剥離可能な生理活性素材を有していて、バルーンに連結する可変のコーティングで、バルーンが膨張するときに、目標組織に対して勧められるために正しい位置に置かれている可変のコーティングと;
可変のコーティングを変えて、目標組織に生理活性素材を解除するためにエネルギー伝達面に通電するために有効にカテーテルに連結するエネルギー源を有するシステム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C−11D】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C−11D】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2012−526635(P2012−526635A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511022(P2012−511022)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034789
【国際公開番号】WO2010/132703
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511275865)べシックス・バスキュラー・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034789
【国際公開番号】WO2010/132703
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511275865)べシックス・バスキュラー・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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