説明

エネルギー分解コンピュータ断層撮影

干渉散乱コンピュータ断層撮影では、回転平面のライン上にあるオブジェクトポイントからの散乱角度は、検出装置ローのファン角度の非線形関数として可変とされる。本発明の実施例によると、同一の散乱角度の下で円弧上のオブジェクトポイントからの散乱したフォトンを測定するCSCTデータ取得のためのシングルラインエネルギー分解検出装置が利用される。これは、パラレルリビニング検出装置上でのデカルトqサンプリングを自動的にもたらす。効果的には、これは、パラレルリビニングフィルタリングバックプロジェクション再構成前のq補間を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ断層撮影の分野に関する。特に、本発明は、対象オブジェクトの検査のためのコンピュータ断層撮影装置、放射検出装置、コンピュータ断層撮影装置における対象オブジェクトの検査方法及びコンピュータ段操作杖装置における対象オブジェクトの検査を実行するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年間に、特定タイプの物質を自動認識可能なより高度な自動システムに対するオペレータによるやりとりに完全に依存したシンプルなX線イメージングシステムから、X線手荷物検査又は医療アプリケーションが進化してきた。検査システムは、検査対象となる手荷物から検出装置から散乱又は透過するX線を放射するX線放射ソースを利用している。
【0003】
干渉散乱したX線フォトンに基づくイメージング技術は、いわゆる“干渉散乱コンピュータ断層撮影(Coherent Scatter Computer Tomography(CSCT))”である。CSCTは、対象オブジェクトの低角度散乱特性のイメージを生成する技術である。これらは、当該オブジェクトの分子構造に依存し、各コンポーネントの物質固有のマップを生成することを可能にする。低角度散乱の主要なコンポーネントは、干渉散乱である。干渉散乱スペクトルは散乱サンプルの原子構成に依存するため、干渉散乱コンピュータ断層撮影は、2次元のオブジェクトの断面の生物学的組織又は手荷物の分子構造の空間変位をイメージングするための精密な技術である。
【0004】
CSCTシステムは、オブジェクトの1つのスライスを照射するX線チューブと、検出システムとから構成され、これらが対象オブジェクトの周囲を回転する。検出システムは、オフプレーン(off−plane)散乱したフォトンを測定する2次元検出装置又は散乱したフォトンのエネルギー分解測定を実行するシングルロー(single−row)検出装置であってもよい。測定されたプロテクションデータから、プライマリ放射の平面における2つの空間的次元(x,y)により規定される3次元ボリュームが再構成される。3次元は、散乱したフォトンの運動量移動qによりパラメータ化される。回転の平面から一定の距離Hのエネルギー分解フォーカスセンター(focus−centred)シングルロー検出システムが利用される場合、回転平面の中心ビームに垂直のラインにあるオブジェクトポイントからの散乱角度は、検出装置のローのファン角度βの非線形関数として変化する。
【0005】
従って、典型的には、フィルタリングされるバックプロジェクション再構成の前のq補間が実行される必要があり、このことは、さらなる計算処理を酔うし、qの分解能を低減し、画質を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、より向上したオブジェクトを検査するための構成が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例によると、対象オブジェクトの検査のためのコンピュータ断層撮影装置であって、対象オブジェクトに電磁放射ビームを放射する回転電磁放射ソースと、第1散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第1検出素子と、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第2検出素子とを有し、前記対象オブジェクトの前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部であるコンピュータ断層撮影装置が提供される。
【0008】
効果的には、本発明の当該実施例によると、第1検出素子により検出された散乱放射は、第2オブジェクトポイントから散乱され、第2検出素子により検出される散乱放射と同一の散乱角度の下で、第1オブジェクトポイントから散乱される。このため、同一の散乱角度の下でのデータが、第1及び第2検出素子により取得され、CSCT再構成における運動量移動の分解能及び計算効率性を向上させる。
【0009】
本発明の他の実施例によると、前記第1検出素子と前記回転電磁放射ソースの回転平面との間の第1距離は、中心光線と前記ソースから前記第1オブジェクトポイントに放射される光線との間の第1ファン角度の所定の関数であり、前記第2検出素子と前記回転平面との間の第2距離は、前記中心光線と前記ソースから前記第2オブジェクトポイントに放射される光線との間の第2ファン角度の所定の関数である。
【0010】
効果的には、検出素子と回転平面との間の距離はファン角度(及び回転平面(x,y平面)における各検出素子のポジション)の関数であるため、測定開始前にシングルロー検出装置が特定の関数に従って構成されてもよい。
【0011】
本発明の他の実施例によると、当該コンピュータ断層撮影装置は、各検出素子に対するエネルギーのリニアサンプリングと、前記ビームのパラレルビームジオメトリへのパラレルビームリビニングを適用し、補間することなく各検出素子について検出された放射の運号量移動における等距離サンプリングを生じさせる処理とを実行するよう構成されるデータプロセッサをさらに有する。
【0012】
本発明の当該実施例によると、所定の関数により規定される湾曲による検出装置を利用して、エネルギーのリニアサンプリングが利用され、パラレルビームリビニングに対するファンビームが適用されるとき、q方向の等距離サンプリングが自動的に得られる。
【0013】
本発明の他の実施例によると、前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、放射検出装置の一部であり、前記放射検出装置は、フォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置と、プラナーシングルローエネルギー分解検出装置との1つである。
【0014】
効果的には、フォーカスセンター又はプラナーシングルライン検出装置の利用は、q方向の補間が実行されないため、q方向の分解能のロスを低減するかもしれない。
【0015】
本発明の他の実施例によると、前記電磁放射ソースは、多色性X線ソースであり、前記ソースは、前記対象オブジェクトの周囲の螺旋状パスに沿って移動し、前記ビームは、ファンビームジオメトリを有する。
【0016】
多色性X線は良好な画像解像度を容易に生成及び提供するため、多色性X線ソースの適用は効果的である。
【0017】
コンピュータ断層撮影装置は、干渉散乱コンピュータ断層撮影装置(CSCT)として構成されてもよく、すなわち、コンピュータ断層撮影装置は、上述したCSCT技術に従って構成及び動作するようにしてもよい。
【0018】
コリメータが、X線ソースと第1及び第2検出素子との間に配置されてもよく、コリメータは、ファンビームを形成するため、X線ソースによって放射されたX線ビームをコリメートするよう構成される。ファンビームは、CSCT技術の好適なビーム形状である。このような延長されたスリットを好ましくは有するコリメータを実現することによって、適切に整形されたコリメータは任意のタイプのプライマリX線ビームジオメトリからファンビームを生成するため、ほとんど任意の所望のX線ソースを利用することが可能であるかもしれない。
【0019】
第1検出素子と第2検出素子とは、共通のケーシングに設けられてもよい。これは、装置の大変コンパクトな構成を可能にするかもしれない。
【0020】
本発明によるX線断層撮影装置は、手荷物検査装置、医療用装置、物質検査装置及び物性解析装置からなる群の1つとして構成されてもよい。しかしながら、本発明の最も好適な適用分野は、本発明の機能が対象オブジェクトのセキュアかつ確実な解析を可能にするため、手荷物検査又は医療アプリケーションである。
【0021】
本発明の他の実施例によると、回転電磁放射ソースから放射され、第1散乱角度の下で対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第1検出素子と、前記ソースから放射され、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第2検出素子とを有する放射検出装置であって、前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部である、放射検出装置が提供される。
【0022】
本発明の当該実施例によると、向上した空間分解能、計算コストの低減及び向上した画質によって、手荷物検査又は医療アプリケーションのためのエネルギー分解干渉散乱コンピュータ断層撮影を可能にする放射検出装置が提供される。
【0023】
以下において、コンピュータ断層撮影装置による対象オブジェクトの検査方法の好適な実施例が説明される。しかしながら、これらの実施例はまた、本発明のコンピュータ断層撮影装置に適用される。
【0024】
本発明の方法はさらに、電磁放射ソースを回転するステップと、前記ソースから対象オブジェクトへの電磁放射ビームを放射するステップと、第1検出素子によって、第1散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するステップと、第2検出素子によって、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するステップとを有し、前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部であってもよい。
【0025】
本発明はまた、イメージプロセッサなどのプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムに関する。このようなコンピュータプログラムは、例えば、CSCTスキャナシステムの一部であってもよい。コンピュータプログラムは、好ましくは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。データプロセッサが、本発明の方法の実施例を実行するよう設けられる。コンピュータプログラムは、C++などの何れか適切なプログラミング言語により記述され、CD−ROMなどのコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。また、これらのコンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブなどのネットワークから利用可能とされてもよく、そこからイメージ処理ユニット若しくはプロセッサ又は何れか適切なコンピュータにダウンロードされてもよい。
【0026】
本発明の一特徴は、同一の散乱角度の下でライン上のオブジェクトポイントからの散乱されたフォトンを測定するCSCTデータ取得のためのシングルラインエネルギー分解検出装置が利用されるということである。これは、パラレルリビニング検出装置上でのデカルトqサンプリングを導く。効果的には、これは、パラレルリビニングフィルタリングバックプロジェクション再構成の前のq補間を回避するかもしれない。
【0027】
本発明の上述した特徴とさらなる特徴は、以降に記載される実施例から明らかであり、これらの実施例を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下において、図1を参照するに、エネルギー分解CSCTを実現するコンピュータ断層撮影装置が説明される。
【0029】
本実施例を参照するに、本発明は、医療用イメージングのアプリケーションについて説明される。しかしながら、本発明は医療用イメージングの分野におけるアプリケーションに限定されず、手荷物に関して爆発物などの危険物質を検出するための手荷物検査や物質検査などの他の産業用途などのアプリケーションにおいて利用可能であるということに留意すべきである。
【0030】
図1に示されるスキャナは、ファンビームCTスキャナである。図1に示されるCTスキャナは、回転軸2の周りを回転可能なガントリー(gantry)1を有する。ガントリー1は、モータ3により駆動される。参照番号4は、本発明の特徴による多色性(polychromatic)放射ビームを放射するX線ソースなどの放射ソースを示す。
【0031】
参照番号5は、放射ソースからコーン形状の放射ビーム6に放射される照射ビームを形成するアパーチャ(aperture)システムを示す。コーン形状の放射ビーム6を放射した後、ビームはスリットコリメータ(図1には図示せず)に誘導され、オブジェクト領域にあるオブジェクト7に入射するプライマリファンビームを形成するようにしてもよい。
【0032】
ここでは、ファンビーム6(図1では、誇張されて表されているが、実際には、それのパスを介し散乱されない場合、検出素子の中心ローにのみ衝突するようにしてもよい)は、それがガントリー1の中央に、すなわちCSCTスキャナの検査領域に配置された対象オブジェクト7を通過し、検出装置8に衝突するように方向付けされる。図1から理解されるように、検出装置8は、それの表面がファンビーム6によりカバーされるように、放射ソース4と対向してガントリー1上に配置される。図1に示される検出装置8は、複数の検出素子を有する。
【0033】
対象オブジェクト7のスキャン中、放射ソース4、アパーチャシステム5及び検出装置8は、矢印16により示される方向にガントリー1に沿って回転される。放射ソース4、アパーチャシステム5及び検出装置8を有するガントリー1の回転のため、モータ3がモータ制御ユニット17に接続され、モータ制御ユニット17が計算ユニット18に接続される。
【0034】
スキャン中、放射検出装置8は、所定の時間間隔によりサンプリングされる。放射検出装置8から読まれたサンプリング結果は、以下においてプロジェクション(projection)と呼ばれる電気信号、すなわち、電気データである。対象オブジェクトのスキャン全体のデータセット全体は、複数のプロジェクションから構成され、そのプロジェクション数は、放射検出装置8がサンプリングされる時間間隔に対応する。複数のプロジェクションはまた、一緒になってボリュームデータと呼ばれるかもしれない。さらに、ボリュームデータはまた、心電図データから構成されてもよい。
【0035】
図1において、対象オブジェクトはコンベヤベルト19に配置される。対象オブジェクトのスキャン中、ガントリー1は患者7の周りを回転しながら、コンベアベルト19はガントリー1の回転軸2に平行な方向に対象オブジェクト7を表示する。これによって、対象オブジェクト7は螺旋状のスキャンパスに沿ってスキャンされる。コンベアベルト19はまた、スキャン中に停止されるかもしれない。コンベアベルト19を設ける代わりに、例えば、対象オブジェクト7が患者である医療用アプリケーションでは、可動テーブルが利用されてもよい。しかしながら、記載されるすべてのケースにおいて、円形スキャンを実行することが可能であり、ここでは、回転軸2に平行な方向への位置ずれはなく、回転軸2の周りのガントリー1の回転のみ行われることに留意すべきである。
【0036】
検出装置8は、計算ユニット18に接続される。計算ユニット18は、検出結果、すなわち、検出装置8の検出素子からの読み出しを受け付け、この読み出しに基づきスキャン結果を決定する。検出装置8の検出素子は、対象オブジェクト7によりファンビーム6に生じた減衰、又は特定のエネルギー区間内のエネルギーによる対象オブジェクト7の対象ポイントから干渉散乱したX線のエネルギー及び強度を測定するよう構成されてもよい。さらに、計算ユニット18は、モータ3及び20又はコンベアベルト19とガントリー1の動きを協働させるため、モータ制御ユニット17と通信する。
【0037】
計算ユニット18は、検出装置8の読み出しからイメージを再構成するよう構成されてもよい。計算ユニット18により生成されるイメージは、インタフェース22を介しディスプレイ(図1には図示せず)に出力されてもよい。
【0038】
データプロセッサにより実現される計算ユニット18はまた、回転平面において回転する電磁放射の回転ソースによって取得されるデータセットをロードし、対象オブジェクトに電磁放射ビームを放射するステップを含む、対象オブジェクトの検査を実行するよう構成されてもよい。データセットは、第1検出素子により検出されるデータと、第2検出素子により検出されるデータとを有し、第1検出素子によって検出されるデータは、第1散乱角度の下で対象オブジェクトの第1対象ポイントから干渉散乱される電磁放射に対応し、第2検出素子によって検出されるデータは、同一の散乱角度の下で対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射に対応する。
【0039】
さらに、図1から理解されるように、計算ユニット18は、例えば、アラームを自動出力するため、ラウドスピーカー21に接続されてもよい。
【0040】
図2は、本発明の実施例による回転軸に沿ったCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す(リビニング(rebinning)の後)。図2に示される取得ジオメトリは、同一の散乱角度の下でデータを取得する第1検出素子42と第2検出素子43とを有するシングルローエネルギー分解検出システム37を有する。検出システム37は、図2に示される実施例によると、xy平面においてフォーカスセンターシステムの形式により構成される。しかしながら、検出システム37は、より多くのシングル検出素子を有してもよいが、簡単化のため、検出素子42と43のみが(概略)表示されることに留意すべきである。
【0041】
多色性X線ソース4は、回転平面41において回転軸40について回転し、丸印44により記号化される対象オブジェクトにX線ビームを放射する。対象オブジェクト44は、複数のオブジェクトポイント31〜35を有する。対象オブジェクト44の通過中、電磁放射は対象オブジェクト31〜35において散乱される。リビニング後、これらのオブジェクトポイントは、ビームの中心線45に垂直なライン36に沿って配置される。
【0042】
第1放射線46は、ソースポジション412に対応し、第1検出素子42に向かって第1散乱角度の下で第1対象ポイント34において散乱する。さらに、第2放射線47は、ソースポジション413に対応し、第2検出素子43に向かって第2散乱角度の下で第2オブジェクトポイントから干渉散乱する。さらに、ソースポジション411に対応する第3放射線45は、第3散乱角度の下で第3対象ポイント33において散乱する。
【0043】
図3は、本発明による検出装置ジオメトリを決定するため、ファンビームジオメトリにおける図2のCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す。垂直ライン36(図2の)は、ソース411と回転軸40との間のそれの中心中間であって、ソースパスの半径に等しい直径を有する円形の弧50に対応する。
【0044】
第1放射線46は、第1ファン角度391の下で放射され、ファンビームジオメトリにおいて円弧50上に位置する第1オブジェクトポイント341において散乱する。第2放射線47は、第2ファン角度392の下で放射され、ファンビームジオメトリにおいて円弧50上に位置する第2オブジェクトポイント351において散乱する。
【0045】
図4は、回転軸40に垂直である図2のCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す。図4から理解されるように、検出装置アレイ37は、回転平面だけでなく回転平面に垂直な平面上において湾曲される(図2を参照されたい)。このため、第1検出素子42と回転平面41との間の距離は、第2検出素子43と回転平面41との間の距離49と異なる。効果的には、この距離は、回転平面41における各検出素子のポジションと、各自のファン角度とに依存する。すなわち、検出装置アレイ37の形状は、放射検出装置37がフォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置又はプラナーシングルローエネルギー分解検出装置であるかに応じて、2つの方向に湾曲される。オブジェクトポイント31〜35により散乱される放射の散乱角度のすべてが等しくなるように、二重の湾曲となる。
【0046】
これは、以降のパラレルリビニング検出装置上におけるデカルトqサンプリングを自動的に導く。従って、フィルタリングされるバックプロジェクション再構成前のq補間が回避される。
【0047】
干渉散乱コンピュータ断層撮影のためのフィルタリングされたバックプロジェクション再構成の基本的方法は、参照することによりここに含まれる、U.van Stevendaal、J.P.Schlomka、A.Harding及びM.Grassによる“A reconstruction algorithm for coherent scatter computed tomography based on filtered back−projection”(Med.Phys.30(9)(2003)pp.2465−2474に記載されている。
【0048】
図5は、本発明による方法の実施例のフローチャートを示す。本方法は、ステップ1においてプロジェクションデータセットの取得によりスタートする。これは、例えば、適切なCSCTスキャナシステムを用いて、又はストレージからプロジェクションデータを読み出すことによって実行されてもよい。その後、ステップS2において、第1検出素子により第1散乱角度の下で対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱された電磁放射が検出される。同時に、又はその前後において、第2散乱角度の下で対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱された電磁放射が第2検出素子により検出される。第1散乱角度と第2散乱角度が等しくなるように、第1及び第2検出素子が配置され、第1オブジェクトポイントと第2オブジェクトポイントは、電磁放射の中心ビーム線に垂直なライン上に配置される。第1及び第2検出素子は、例えば、フォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置又はプラナーシングルローエネルギー分解検出装置などのシングルロー放射検出装置の一部であってもよい。回転平面と第1又は第2検出素子との間の距離は、それぞれ中心線とソースから第1オブジェクトポイントに放射される光線との間の第1ファン角度の所定の関数と、中心線とソースから第2オブジェクトポイントに放射される光線との間の第2ファン角度の関数である。
【0049】
さらなるステップでは、各検出装置のエネルギーにおけるリニアサンプリングが実行され、補間ナシに各検出素子に対する検出された放射の運動量移動における等距離サンプリングを生じさせるパラレルビームジオメトリへのビームのパラレルビームリビニングが適用される。
【0050】
これは、以下により明らかになるかもしれない。
【0051】
散乱したフォトンのエネルギー分解測定を実行するシングルロー検出装置を有するCSCTシステムのケースにおいて、当該ローの各検出素子が回転平面と同一の距離を有する場合、対象オブジェクト(ファンの中心線に垂直な)を介し同一ラインから到来するフォトンが異なる散乱角度の下で測定される。この効果を補償するため、本発明によると、回転平面に関する検出素子の可変的距離H(β)によるシングルロー検出装置が利用されてもよい。これは、パラレルにリビニングされた検出装置上のデカルトqサンプリングを自動的に導き、再構成中のq補間を回避する。エネルギー分解フォーカスセンターシングルロー検出システムが利用されるケースでは(図2及び3に示されるように)、ライン上の(回転平面におけるX線の中心ビームに垂直な)オブジェクトポイントからの散乱角度Θは、
【数1】

に従ってファン角度β(区間[−β;+β]内にある)により変化する。ここで、GとSはそれぞれ、ソースから検出装置への距離とソースから回転中心への距離となる。運動量移動qは、
【数2】

に従って散乱角度とフォトンエネルギーに関連付けされる。
【0052】
Eはフォトンのエネルギーであり、hとcはPlanckの定数と光の速度を表す。
【0053】
この結果、シングルロー検出装置のそれの回転平面からの距離H(β)に関する湾曲は、対象となるΘの値とフォーカスセンター検出装置について、
【数3】

とならねばならない。この2方向の湾曲を有する検出装置を用いて、エネルギーEによるリニアサンプリングが利用され、パラレルビームリビニングへのファンビームが適用されるとき、q方向の等距離サンプリングが自動的に行われる。プラナーシングルラインエネルギー分解検出装置については、散乱角度Θとファン角度βとの間の関係は、
【数4】

となり、同一の効果を実現するため、回転平面との距離における必要とされる湾曲は、
【数5】

として得られる。
【0054】
異なる形状のシングルライン検出装置に対して、この技術はまた、補間q方向による空間分解能のロスを低減するため、適用されてもよい。
【0055】
すなわち、エネルギー分解干渉散乱CTでは、検出装置の形状は、等距離qサンプリングを求めるため最適化される。一般に、1次元エネルギー分解測定が、角度とq値を可変とするq次元検出装置アレイについて再計算される。このため、形状の変更は、等距離エネルギーサンプリング検出装置により1次元アレイを変形することによって、2次元測定空間の最適な形状をもたらす。これにより、1次元検出装置の形状は、最適なサンプル2次元測定空間を実現するため、変更される。
【0056】
効果的には、検出装置は、それのフルエネルギー範囲において使用される。ファン角度の関数として、エネルギーの上限及び下限は利用されない。
【0057】
図6は、本発明による方法の実施例を実行するための本発明によるデータ処理装置の実施例を示す。図6に示されるデータ処理装置は、対象オブジェクトを示すイメージを格納するメモリ152に接続される中央処理ユニット又はイメージプロセッサ151を有する。データプロセッサ151は、CSCT装置などの複数の入出力ネットワーク又は診断装置に接続されてもよい。データプロセッサはさらに、データプロセッサ151において計算又は構成される情報又はイメージを表示するため、コンピュータモニタなどの表示装置154に接続されてもよい。オペレータ又はユーザは、図6には示されないキーボード155及び/又は他の出力装置を介しデータプロセッサ151とやりとりするようにしてもよい。
【0058】
さらに、バスシステム153を介し、イメージ処理制御プロセッサ151と、対象オブジェクトの動きをモニタする動きモニタなどとを接続することが可能であるかもしれない。例えば、患者の肺がイメージングされる場合、モニタセンサは呼気センサであるかもしれない。
【0059】
本発明による取得ジオメトリは、再構成の前処理中に補間が実行される必要がないため、CSCT再構成における空間分解能及び計算効率性を向上させる。本発明の開示は、医療用アプリケーション及び手荷物検査(新規ビジネス)の干渉散乱コンピュータ断層撮影について重要である。
【0060】
“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものでなく、“ある”という用語は複数を排除するものでなく、また単一のプロセッサ又はシステムが請求項に記載される複数の手段の各機能を実現可能であるということに留意すべきである。異なる実施例に関して説明される要素が組み合わされてもよい。
【0061】
請求項の参照符号は、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないということがまた留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明によるコンピュータ断層撮影スキャナの実施例の簡単化された概略表示を示す。
【図2】図2は、本発明の実施例による回転軸に沿ったCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す。
【図3】図3は、ファンビームジオメトリにおける図2のCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す。
【図4】図4は、回転軸に垂直な軸に沿った図2のCSCT取得ジオメトリの概略表示を示す。
【図5】図5は、本発明による方法の実施例のフローチャートを示す。
【図6】図6は、本発明による方法の実施例を実行する本発明によるイメージ処理装置の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象オブジェクトの検査のためのコンピュータ断層撮影装置であって、
対象オブジェクトに電磁放射ビームを放射する回転電磁放射ソースと、
第1散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第1検出素子と、
第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第2検出素子と、
を有し、
前記対象オブジェクトの前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、
前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部である、コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記第1検出素子と前記回転電磁放射ソースの回転平面との間の第1距離は、中心光線と前記ソースから前記第1オブジェクトポイントに放射される光線との間の第1ファン角度の所定の関数であり、
前記第2検出素子と前記回転平面との間の第2距離は、前記中心光線と前記ソースから前記第2オブジェクトポイントに放射される光線との間の第2ファン角度の所定の関数である、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
各検出素子に対するエネルギーのリニアサンプリングと、前記ビームのパラレルビームジオメトリへのパラレルビームリビニングを適用し、補間することなく各検出素子について検出された放射の運号量移動における等距離サンプリングを生じさせる処理とを実行するよう構成されるデータプロセッサをさらに有する、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、放射検出装置の一部であり、
前記放射検出装置は、フォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置と、プラナーシングルローエネルギー分解検出装置との1つである、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記電磁放射ソースは、多色性X線ソースであり、
前記ソースは、前記対象オブジェクトの周囲の螺旋状パスに沿って移動し、
前記ビームは、ファンビームジオメトリを有する、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
干渉散乱コンピュータ断層撮影装置として構成される、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
手荷物検査装置、医療用装置、物質検査装置及び物性解析装置からなる群の1つとして構成される、請求項1記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
回転電磁放射ソースから放射され、第1散乱角度の下で対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第1検出素子と、
前記ソースから放射され、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するよう構成される第2検出素子と、
を有する放射検出装置であって、
前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、
前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部である、放射検出装置。
【請求項9】
前記第1検出素子と前記回転電磁放射ソースの回転平面との間の第1距離は、中心光線と前記ソースから前記第1オブジェクトポイントに放射される光線との間の第1ファン角度の所定の関数であり、
前記第2検出素子と前記回転平面との間の第2距離は、前記中心光線と前記ソースから前記第2オブジェクトポイントに放射される光線との間の第2ファン角度の所定の関数である、請求項8記載の放射検出装置。
【請求項10】
各検出素子に対するエネルギーのリニアサンプリングと、前記ビームのパラレルビームジオメトリへのパラレルビームリビニングを適用とは、補間することなく各検出素子について検出された放射の運号量移動の等距離サンプリングを生じさせる、請求項8記載の放射検出装置。
【請求項11】
当該放射検出装置は、フォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置と、プラナーシングルローエネルギー分解検出装置との1つである、請求項8記載の放射検出装置。
【請求項12】
コンピュータ断層撮影装置における対象オブジェクトの検査方法であって、
電磁放射ソースを回転するステップと、
前記ソースから対象オブジェクトへの電磁放射ビームを放射するステップと、
第1検出素子によって、第1散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するステップと、
第2検出素子によって、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射を検出するステップと、
を有し、
前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、
前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部である、方法。
【請求項13】
前記第1検出素子と前記回転電磁放射ソースの回転平面との間の第1距離は、中心光線と前記ソースから前記第1オブジェクトポイントに放射される光線との間の第1ファン角度の所定の関数であり、
前記第2検出素子と前記回転平面との間の第2距離は、前記中心光線と前記ソースから前記第2オブジェクトポイントに放射される光線との間の第2ファン角度の所定の関数であり、
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、放射検出装置の一部であり、
前記放射検出装置は、フォーカスセンターシングルローエネルギー分解検出装置と、プラナーシングルローエネルギー分解検出装置との1つである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
各検出素子に対するエネルギーにおいてリニアサンプリングするステップと、
前記ビームのパラレルビームジオメトリへのパラレルビームリビニングを適用し、補完することなく各検出素子について検出された放射の運動量移動における等距離サンプリングを生じさせるステップと、
をさらに有する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ断層撮影装置において対象オブジェクトの検査を実行するコンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されると、
電磁放射ビームを対象オブジェクトに放射する回転電磁放射ソースにより取得されるデータセットをロードする処理を前記プロセッサに実行させ、
前記データセットは、
第1検出素子により検出され、第1散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第1オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射に対応する第1データと、
第2検出素子により検出され、第2散乱角度の下で前記対象オブジェクトの第2オブジェクトポイントから干渉散乱される電磁放射に対応する第2データと、
を有し、
前記第1オブジェクトポイントと前記第2オブジェクトポイントとは、円弧上に配置され、
前記第1散乱角度は、前記第2散乱角度に等しく、
前記第1検出素子と前記第2検出素子とは、シングルローエネルギー分解検出装置の一部である、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−519975(P2008−519975A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540762(P2007−540762)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053564
【国際公開番号】WO2006/051442
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】