エネルギー恒常性の調節に関与するタンパク質
本発明は、エネルギー恒常性および中性脂肪の代謝、および本発明において開示したタンパク質を同定およびをコード化するポリヌクレオチドの調節を行なう、PRL-1相同タンパク質を開示する。また、本発明は、代謝疾患および障害の診断、研究、予防、および治療における、これらの配列の使用法に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重調節、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患または機能障害、さらには、糖尿病、例を挙げると2型糖尿病のような関連障害に関連する疾患および障害の診断、研究、予防および治療における、哺乳動物のタンパク質チロシンホスファターゼ(Prl-1、Prl-2、またはPrl-3; PRL-1相同タンパク質と呼ばれる)をコードする核酸配列の使用法、およびそれによってコード化されたポリペプチドに関するものであり、またPrl-1、Prl-2、またはPrl-3の使用またはエフェクターに関するものでもある。
【0002】
エネルギー消費量に対して摂取熱量がアンバランスであるというエネルギー不均衡に関連するヒトおよび動物代謝のさまざまな代謝疾患、例えば肥満や体重の激減が存在する。肥満は世界に最も蔓延している代謝障害の1つであり、重大な健康問題として西側諸国にとってますます問題となっているヒトの疾病であるが、その本質は依然としてほとんど理解されていない。肥満とは、理想体重の20%以上を超える体重として定義され、多くの場合著しい健康障害をもたらす。肥満は、心血管疾病、高血圧、2型糖尿病、高脂血症のリスクの増大および高い死亡率に関連する。肥満に悩む個人は、病気にかかる深刻なリスクを抱えている上に、多くの場合、社会的に孤立している。
【0003】
肥満は、遺伝的要因、代謝因子、生化学的要因、心理学的要因、および行動要因によって影響を受け、そして非インスリン依存型糖尿病、中性脂肪の増加、炭水化物接合エネルギーの増加および低エネルギー消費のような異なる原因に起因し得る。そのような事情から、肥満は持続可能な好ましい臨床結果を達成するために、さまざまな分野で取り組まなくてはならない複合障害である。肥満は単一の障害として考慮されるべきではなく、(潜在的)複合原因による症状の混成群であると考慮されるべきであり、また、空腹時の血中インスリン値の上昇および経口グルコース摂取に対する過度のインスリン反応も特徴とする (Kolterman O.G. らの(1980) J. Clin. Invest 65: 1272-1284)。2型糖尿病における肥満症の明らかな関与が確認されている (Kopelman P.G.、(2000) Nature 404: 635-643)。
【0004】
高脂血症および遊離脂肪酸の上昇は、肥満症、インスリン耐性を始めとしたさまざまな疾患の連鎖として定義される代謝症候群と明確に相関する。これは多くの場合、同一患者において生じ、そして2型糖尿病および心疾患の発生の主要な危険因子である。脂質値および血糖値のコントロールが、2型糖尿病、心臓病、およびその他の代謝症候群を治療するために必要であることが示されている (例えば、Santomauro A. T.らの (1999) Diabetes、48: 1836-1841および Lakka H.M らの (2002) JAMA 288: 2709-2716 を参照)。
【0005】
膵臓β細胞は、血糖値に応答してインスリンを分泌する。他のホルモンの中でも、インスリンは特に燃料代謝の調節において重要な役割を演ずる。インスリンはグリコーゲンおよび中性脂肪の貯蔵およびタンパク質の合成につながる。グルコースの筋肉および脂肪細胞への流入はインスリンによって促進される。真性1型糖尿病または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)で苦しむ患者では、自己免疫性の発作のため、β細胞が破壊されている(Pozzilli & Di Marioの、(2001) Diabetes Care 8: 1460-1467)。 残存膵島細胞によって産生されるインスリンの量は低すぎるので、血糖値の上昇を結果としてもたらす(高血糖症)。2型糖尿病においては、肝臓および筋細胞の正常血中インスリン値に反応する能力が失われる(インスリン耐性)。 高血糖値は(さらには高血中脂質値も)、順次、β細胞機能の機能障害およびβ細胞アポトーシスの上昇の原因となる。
【0006】
糖尿病は身体に深刻な障害を引き起こす疾病である。その理由は、一般的な糖尿病の薬物では血糖値の昇降の発生を完全に防止するほど十分に制御することができないためである。正常範囲外の血糖値は有毒であり、例えば、腎臓病、網膜症、末梢神経障害および末梢性血管障害のような長期的な合併症の原因となる。また、糖尿病患者にとって発症の危険性が極めて高い肥満症、高血圧症、心臓病および高脂血症のような関連状態が多く存在している。
【0007】
糖尿病患者の低下したクオリティオブライフはもとより、糖尿病の治療とその長期的な合併症は医療制度にとって莫大な財政負担であり、その傾向は強まっている。このように1型および2型糖尿病の治療、さらには、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)のため、おいて、膵臓インスリン産出β細胞の再生を誘導する因子を同定することが当分野では強く要求されている。これらの因子は、内分泌機能が損なわれた膵臓の機能を正常に回復することができ、1型糖尿病、2型糖尿病、またはLADAの発生または進行を防止することさえできる。
【0008】
代謝症候群(症候群x、インスリン耐性症候群、死の四重奏) のコンセプトは、1966 年にCamus によって初めて記載され、1988年にReaven によって再導入された (Camus J.P. の (1966) Rev Rhum Mal Osteoartic 33: 10-14; Reaven G.M. らの (1988) Diabetes、37: 1595-1607)。今日、代謝症候群は、高血圧、腹部肥満、中性脂肪高値および空腹時血糖値、さらには、HDL コレステロール低値などの心血管系危険因子の集積として一般的に定義されている。インスリン耐性は代謝症候群の発生の危険を大幅に増加する (Reaven G.、(2002) Circulation 106: 286-288)。代謝症候群は多くの場合、2型糖尿病および心疾患の発生に先行する (前出の Lakka H.M.らの2002)。
【0009】
食物摂取と体重のバランスを調節する分子因子は完全に理解されていない。たとえ、レプチンまたはペルオキシソーム増殖活性の受容体ガンマ活性化補助因子のような体重/重量を調節する恒常性システムに影響を及ぼすはずの候補遺伝子についての記述がいくつかあるとしても、肥満調節または体重/重量調節に影響を及ぼす特有の分子機構および(または)分子は知られていない。しかも、マウスにおいて肥満症を結果としてもたらすさまざまな単一遺伝子の突然変異が記載されており、肥満症の病因における遺伝的な因子を意味づけている。(FriedmanおよびLeibelの1990、Cell 69: 217-220)。肥満マウスでは、単一遺伝子の突然変異(肥満)が、糖尿病を伴う深刻な肥満症を結果としてもたらす (Friedman J.M. らの(1991) Genomics 11: 1054-1062)。
【0010】
以上の点から、本発明の根底にある技術的問題は、体重調節および(または)エネルギー恒常性経路に影響を及ぼす(病理学的な)代謝状態の調節のための手段と方法を提供することにあった。当該技術的問題に対する解決は、請求項において特徴付けられた実施例を提供することによって達成する。
【0011】
従って、本発明は、体重調節における新規機能を有する遺伝子、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症に関連するものである。本発明では、体重、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症の調節、さらには、真性糖尿病、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症(異脂肪血症)、胆石症、および肝臓線維症のような関連疾患に関与する特定の遺伝子を開示する。特に本発明では、上述したそれらの条件に関与しているものとしてヒトPRL-1相同遺伝子を記述する。
【0012】
これまでは、本発明のタンパク質または相同タンパク質がエネルギー恒常性の調節および体重調節および関連障害に関与することは記載されておらず、従って上記のような代謝疾患および機能障害およびその他の疾患における機能は記述されていない。
【0013】
本タンパク質、ヌクレオチド配列、および方法について以下に説明するが、記載した特定の方法、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬によって本発明が限定されるものではなく、改変し得ることは当然のことながら共通認識とする。また、本詳細書で使用した用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求範囲のみに限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも当然のことながら共通認識とする。本明細書で使用した全ての専門用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有するものとする。本明細書中に記載した方法および材料に類似または等価な方法および材料は、本発明の実践または検査で用いることができるが、好適な方法、装置、および材料はここに記載する。本明細書で言及する全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物中で報告されている細胞株、ベクターおよび方法論について説明および開示する目的で、ここに引用することをもって本明細書の一部となす。本明細書のいかなる開示内容も、本発明がこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0014】
本発明は、Prl-1、Prl-2またはPrl-3のようなPRL-1(GadFly アクセッション番号CG4993) 相同タンパク質(本明細書中では「本発明のタンパク質」と呼ぶ)がエネルギー恒常性および脂肪代謝、特に中性脂肪、および本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドの代謝と保管を調節することを開示する。また、本発明は、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを作り出すためのベクター、宿主細胞、および組換え方法に関連するものでもある。また、本発明は、肥満症、糖尿病および(または)代謝症候群、を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の診断、研究、予防、および治療における、これらの化合物およびそのエフェクター/修飾因子、例えば、アンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイム、アプタマー、ペプチドまたは当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを認識する低分子量有機化合物のような抗体、生物活性核酸の使用法にも関するものである。
【0015】
タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)およびタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)によってそれぞれ触媒したタンパク質チロシンリン酸化および脱リン酸は、多くの重要な真核生物細胞シグナル伝達経路において重要なスイッチである。PTKおよびPTPasesの作用は、細胞タンパク質チロシンリン酸化のステータスを決定し、細胞増殖、分化、生存性および機能的活性化の調節に極めて重大な役割を果たす動的平衡状態にある。
【0016】
タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)は、タンパク質からリン酸基を除去することによりシグナル伝達経路において重要な調節コンポーネントとしての機能を果たす酵素の大ファミリーを形成する。PTP活性の不適当な調節は、多くのヒト疾患の発生に寄与する不適切なレベルのチロシンリン酸化につながる。例えば、限定するものではないが、PRL PRL-2、PRL-3、などのようなホスファターゼのPRLファミリーの高い発現は、いくつもの実験手法において発癌効果を持つことが明らかにされており、ヒトの悪性腫瘍の原因となっている可能性がある。また、PRLホスファターゼは、PTP (CAAX)またはPTP4Aとも表現される。チロシン残基のリン酸塩モノエステルを加水分解するPTPは、すべて共通の活性部位モチーフを共有し、3グループに分類される. それらのグループは、受容体様PTP、細胞内PTP、および二重特異性PTPであり、セリン残基およびトレオニン残基、さらには、チロシンにて脱リン酸することができる。
【0017】
第4クラスのメンバーとしての再生するラット肝臓から取り出したPTPは、PRL- I (再生肝臓-1のホスファターゼ)として、Diamond ら(Diamond R.H. らの、(1994) Mol Cell Biol. 14: 3752-3762)によって記載された。DiamondらによってPrl-1と命名された本遺伝子は、多くの前初期の遺伝子の1つであり、主に核において発現された。Prl-1は、ATF/CREBファミリーのメンバーに近縁のATF-7、ベーシックロイシンジッパーを試験管内で脱リン酸する(Peters C.S. らの、(2001) J. Biol Chem 276: 13718-13726)。
【0018】
試験管内プレニル化スクリーニングを用いて、Catesらは、哺乳動物のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ素によって試験管内でファルネシル化した、Prl-1ホモログをコードする2つのヒトcDNAを分離し、PTP(CAAX1)およびPTP(CAAX2)(Prl-2)と命名した。上皮細胞におけるこれらのPTP過剰発現は、培養細胞において形質転換した表現型を引き起こし、ヌードマウスにおける腫瘍成長の原因となった(Cates C.A.らの、(1996) Cancer Lett 110: 49-55)。MatterらはPTP4A3をコードするcDNAを同定し、Prl-3と名付けた。推定Prl-3タンパク質は、Prl-1(PTP4A1; 601585)と76%同一であり、マウスPrl-3と96%同一である(Matter W.F. らの、(2001) Biochem Biophys Res Commun. 283: 1061-1068)。成人組織においては、PRLは主に骨格筋に発現され、より低い発現レベルが脳(PRL-1)、肝臓(PRL-2)、心臓(PRL-3)および膵臓(PRL-3)において検出可能である。
【0019】
よって、PRL-1相同タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、本発明のタンパク質のヒトPRL-1ホモログをコードする核酸である(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)。
【0020】
本発明は、エネルギー恒常性および中性脂肪の代謝調節に寄与するポリペプチドをコードする核酸分子に特に関連するものであり、その点で、当該核酸分子は下記から成る。
(a) ショウジョウバエPRL-1、ヒトPRL-1ホモログ(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)のヌクレオチド配列、および(または)それに対して相補的な配列、
(b) 50℃にて、1 x SSC および 0.1% の SDS を含む溶液中で(a) の配列に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、
(c) 遺伝暗号の変性内における(a)または(b)の配列に対応する配列、
(d) ポリペプチドをコード化する配列であって、少なくとも85%、望ましくは少なくとも90%、より望ましくは少なくとも95%、より望ましくは少なくとも98%および最大で99,6%までの同一性を、PRL-1相同タンパク質、望ましくはヒトPRL-1ホモログ(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)のアミノ酸配列に対して持つ配列。
(e) 突然変異によって(a)〜(d) の核酸分子と異なる配列であり、コードされたポリペプチドにおいて当該突然変異が改変、削除、複製および(または)早期停止を引き起こす配列、または
(f) 長さが15〜25塩基、望ましくは25〜35塩基、より望ましくは35〜50塩基および最も望ましくは少なくとも50塩基長を有する(a)〜(e)の任意のヌクレオチド配列の部分的配列。
【0021】
本発明は、PRL-1相同タンパク質およびそれをコードするポリヌクレオチドが、中性脂肪保管の調節に関与し、よってエネルギー恒常性に関与するという知見に基づくものである。 本発明では、肥満症、真性糖尿病および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症または肝臓線維症のような関連障害の診断、研究、予防、または治療のためのPRL-1相同ポリペプチドおよびポリヌクレオチド、さらには、その修飾因子/エフェクターから成る組成物の使用法を記述する。
【0022】
従って、本発明は、体重調節、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症、当該遺伝子の断片、当該遺伝子またはその断片によってコードされたポリペプチドコード、および当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを認識するエフェクター、例えばアンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイム、アプタマー、ペプチドまたは低分子量有機化合物のような抗体、生物学的に活性な核酸において新規機能を有する遺伝子に関するものである。
【0023】
キイロショウジョウバエのようなモデル個体のゲノムを操作およびスクリーニングする能力は、遺伝子、細胞プロセス、および経路の有意な進化的保存に起因する、より複雑な脊椎動物個体に対する直接的な関連性を有する生物学的および生化学的プロセスを分析するための強力なツールを提供する(例えば、Adams M. D.らの、(2000) Science 287:2185-2195を参照)。モデル個体における新規遺伝子機能の同定は、哺乳動物(ヒト)における反応経路の解明、そしてその調整方法の解明に直接的に貢献する。病理モデル(例: 肥満症を始めとする代謝症候群の徴候としての中性脂肪値の変化)とハエ遺伝子の修飾発現との関係によって、ヒト相同分子種と特定のヒト疾病との関連を同定することができる。
【0024】
一実施例では、フォーワード遺伝子スクリーニングを、既知の遺伝子の異所性発現に起因する変異表現型を示すハエにおいて実施されている (St Johnston D.、(2002) Nat Rev Genet 3: 176-188; Rorth P.、(1996) Proc Natl Acad Sci U S A 93: 12418-12422を参照)。本発明において、発明者らは遺伝子スクリーニングを用いて、中性脂肪値の著しい変化が反映される体重の変化の原因となるPRL-1相同遺伝子の突然変異を同定した。
【0025】
肥満者は、主に中性脂肪含有量の著しい増加を示す。中性脂肪は細胞における最も効果的なエネルギー貯蔵場所である。エネルギー恒常性において機能をともなう遺伝子を分離するために、数千の専売的および公的に提供されているEPラインの中性脂肪含有量を長期にわたる摂食期間後に検査した(詳細は実施例および図を参照)。さらなる分析のための好ましい候補として中性脂肪含有量が顕著に変化したラインを選択した。遺伝子機能の損失に起因する中性脂肪含有量の変化は、中性脂肪として貯蔵されたエネルギー量を制御する用量依存的な態様で、エネルギー恒常性における遺伝子活性を示唆する。
【0026】
本発明において、同一遺伝子型を有するハエのプールの中性脂肪含有量を、6日間の食餌の後、中性脂肪測定法を使用して分析した。ショウジョウバエ系統HD-EP(2)20261のベクター統合に対してホモ接合性の雄バエを、これらのハエの中性脂肪含有量およびグリコーゲン含有量を測定するアッセイで分析し、その詳細を実施例部に図示した。中性脂肪およびグリコーゲン含有量の分析結果を図1に示す。
【0027】
EP ベクター (本明細書中ではHD-EP(2)20261) 統合に局在するゲノムDNA配列を分離した。それら分離したゲノム配列を用いて、Berkeleyショウジョウバエゲノムプロジェクト(GadFly; FlyBase (1999) Nucleic Acids Research 27:85-88も参照)のような公共データベースをスクリーニングし、それによってベクター統合部位、および実施例の項においてより詳細に記載した対応遺伝子を同定した。本遺伝子の分子構造を図2に示した。
【0028】
それによってコード化された、中性脂肪代謝の調節機能を有するPRL-1ショウジョウバエ遺伝子およびタンパク質は、公的に利用できる配列データベースで分析し (詳細は実施例を参照)、哺乳動物のホモログを同定した。
【0029】
エネルギー恒常性における哺乳動物ホモログの機能(作用)は、異なる組織における転写物の発現の分析、および脂肪細胞分化における役割の分析によって、本発明でさらに確証した。本発明の一実施例では、PRL-1遺伝子の哺乳動物ホモログがエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを明らかにした(詳細は実施例を参照)。
【0030】
脂肪細胞分化モデルを用いて、本発明者らは、細胞を過剰発現するPrl-1では、中性脂肪値が分化12日目に大幅に増加することを見出した(図5Aを参照)。また、この増加は、例えば、PPARガンマ-1のような脂質生成の既知の制御因子を用いた制御実験においても見られた。
【0031】
ヒトSGBS細胞では、Prl-1過剰発現は、分化した脂肪細胞への遊離脂肪酸およびグルコースの取り込みの著しい増加をもたらした遊離脂肪酸およびグルコースは、中性脂肪またはグリコーゲンのように脂肪細胞によって代謝および貯蔵され得る。
【0032】
細胞中のグリコーゲンレベルは、グリコーゲンの代謝回転が高いため、中性脂肪値に比べて可変性がある。グルコースは細胞によって急速に取り込み、そしてグリコーゲン形態において貯蔵する。このエネルギー貯蔵は、細胞の代謝要求に対する最初の迅速応答として使用される。脂肪細胞の分化12日目には、細胞内グリコーゲンレベルがPrl-1を過剰発現する細胞において大幅に増加された(図5Bを参照)。
【0033】
さらに、本発明者らは、Prl-1の機能低下(LOF)細胞では、インスリン刺激による脂質の合成レベルが、対照群と比較して、、分化の6日目に大幅に減少することを見出した(図6Aを参照)。脂肪細胞分化の12日目には、脂肪酸エステル化レベルは、Prl-1のLOF細胞における遊離脂肪酸の取り込み後、対照細胞と比較して、、上方制御される(図6Bを参照)。
【0034】
これらの知見は、Prl-1が細胞における中枢代謝経路に影響を及ぼすことを示す。
【0035】
マイクロアレイは、生体分析化学において日常的に用いられる分析ツールである。マイクロアレイは、固形担体の表面上に分布され、そして該表面に安定して関連する分子を持つ。用語「マイクロアレイ」は、基質上での複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、またはその他の化合物の配列構成を指す。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および(または)抗体のマイクロアレイが作り出されており、遺伝子発現の監視、薬剤の発見、遺伝子シーケンシング、遺伝子マッピング、細菌の同定、およびコンビナトリアルケミストリーのような種々の用途において使用されている。マイクロアレイがとりわけ使用される一領域は、遺伝子発現分析の領域である(実施例7を参照)。アレイ技術を用いて、単一の多型遺伝子または多数の関連遺伝子発現または無関係遺伝子発現プロファイルを研究することができる。単一遺伝子発現を検討する場合には、アレイを用いて特異的な遺伝子またはその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを検討する場合、アレイは、組織特異的であり、毒物試験法において検査する物質によって影響を受け、シグナル伝達カスケードの一部であり、ハウスキーピング機能を実行し、または特異的特定の遺伝的な素因、状態、疾病、または障害に関連する遺伝子を同定するためのプラットフォームを提供する。
【0036】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(例えば、Brennan T.M.、(1995) USA特許第US5474796号; Schena M. らの(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 10614-10619; Baldeschwieler らの(1995) PCT 出願第号WO9525116; Shalon T.D. and Brown P.O.、(1995) PCT 出願第WO9535505号; Heller R.A. らの(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 2150-2155; Heller M.J.およびTu E.、(1997) USA特許第US5605662号などを参照)。各種マイクロアレイは公知であり、Schena M.、ed. (1999);DNAMicroarrays: A Practical Approach、Oxford University Press、London において十分に記述されている。
【0037】
本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片は、マイクロアレイにおけるエレメントとして使用することができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。 これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退を監視し、疾病治療における薬剤の活性を開発及び監視することができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロファイルを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に有効的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0038】
マイクロアレイ分析によって判定されたように、タンパク質チロシンホスファターゼType-IVA、メンバー1(PRL-1)は、ヒト一次脂肪細胞において発現差異を示す。このように、PRL-1は、肥満症、糖尿病、(および)または代謝症候群のようなヒト代謝に関連する状態の治療のための医薬品組成物の製造および薬物に対する有力な候補である。
【0039】
また、本発明には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドが包含される。従って、本発明のタンパク質および相同タンパク質のアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列を用いて、本発明のタンパク質および相同タンパク質を発現する組換え分子を作成することができる。特定の実施形態では、本発明には、本明細書中で本発明のタンパク質と呼ぶ、ショウジョウバエPRL-1またはヒトPRL-1ホモログをコードする核酸が包含される。当業者にとっては当然のことながら、遺伝暗号の縮重の結果、そのタンパク質をコードする多数のヌクレオチド配列(一部は既知であり天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する) を作り出すことが可能である。本発明には、可能なコドン選択に基づく組合せの選択によって作り得るありとあらゆる種類のヌクレオチド配列変異体を網羅することができる。
【0040】
また、本発明に包含されるのは、請求項に記載のヌクレオチド配列にハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド配列、および特に、種々のストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのそれら配列である。ハイブリダイゼーション条件は、Wahl G.M. らの (1987: Methods Enzymol. 152: 399-407)および Kimmel A.R. (1987; Methods Enzymol. 152: 507-511) に記載されたように、核酸結合複合体またはプローブの溶解温度(Tm)に基づいており、明確なストリンジェントでの使用が可能である。望ましくは、ストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションとは、1時間 1x SSCおよび0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは65℃にて、特に1時間 0.2x SSCおよび0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中で 50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは65℃にて洗浄後、正のハイブリダイゼーションシグナルが認められることを意味する。本発明に包含されるそのタンパク質をコードする改造核酸配列には、異なるヌクレオチドの欠損、挿入または置換が含まれ、機能的に同一または等価なタンパク質をコード化するポリヌクレオチドを結果としてもたらす。
【0041】
また、コードされたタンパク質には、サイレント変化を作り出し、機能的に等価なタンパク質を結果としてもたらすアミノ酸残基の欠損、挿入または置換が含まれることもある。計画的アミノ酸代替は、タンパク質の生物学的活性が保持される限りにおいて、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および(または)両親媒性特性の類似性に基づいて行うことができる。さらには、本発明は、少なくとも4、望ましくは少なくとも6および最大で50長のアミノ酸を有する、タンパク質のペプチド断片、または例えば環状ペプチド、レトロ(レトロ-inverso)ペプチドまたはペプチド擬態のような該ペプチドの誘導体に関するものである。
【0042】
また本発明の範囲内には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子の対立遺伝子も含むものとする。本明細書で使用した「対立遺伝子」または「対立遺伝子配列」は、核酸配列において少なくとも1つの突然変異から生じ得る、遺伝子の別の形である。対立遺伝子は、構造または機能を改変し得るかどうかわからない変性 mRNA またはポリペプチドを結果としてもたらすことがある。任意の遺伝子には、対立遺伝子形態が含まれない場合も、1つ以上の対立遺伝子形態が含まれる場合もある。対立遺伝子を作り出す一般の突然変異変化は通常、ヌクレオチドの自然欠損、付加または置換に帰する。これらの各変化は、単独、またはその他の変化と共に、所定の配列内で 1回以上生じることがある。
【0043】
本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする核酸配列は、部分的ヌクレオチド配列を利用したり、当分野で周知の種々の方法を使用することによって伸長させ、プロモーターおよび調節要素等の上流配列を検出することが可能である。
【0044】
生物学的に活性なタンパク質を発現するために、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列または機能的等価物を好適な発現ベクター、すなわち、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入することが可能である。当業者に周知の方法を用いて、タンパク質をコードする配列、好適な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。調節エレメントには、例えばプロモーター、開始コドン、終止コドン、mRNA安定性調節エレメント、およびポリアデニル化信号が含まれる。ポリヌクレオチドの発現は、(i)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー領域のような構成型プロモーター、(ii)インスリンプロモーター( Soria B. らの、(2000) Diabetes 49: 157-162を参照)、SOX2遺伝子プロモーター(Li M. らの、(1998) Curr. Biol. 8: 971-974を参照)、Msi-1プロモーター(Sakakibara S. およびOkano H.の(1997) J. Neuroscience 17: 8300-8312を参照)、α-噴門ミオシン重鎖プロモーターまたはヒト心房性ナトリウム利尿因子プロモーター(Klug M.G. らの、(1996) J. Clin. Invest 98: 216-224; Wu J. らの、(1989) J. Biol. Chem. 264: 6472-6479)のような組織特定のプロモーター、または(iii) テトラサイクリン誘導型システムのような誘導型プロモーターよって保証することができる。また、発現ベクターには、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはピューロマイシン耐性遺伝子のような、抗生物質耐性を授与する選択薬剤またはマーカー遺伝子を含むことができる。これらの方法には、試験管内組換えDNA技術、合成技術、および生体内遺伝子組換え技術が含まれる。これらの技術は、Sambrook、J. らの(1989) Molecular Cloning、Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y. および Ausubel F. M. らの (1989) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、N.Y. に記載されている。
【0045】
本発明のさらに別の実施例によれば、天然の核酸配列、修飾核酸配列または本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする組換え核酸配列を異種配列に連結反応させ、融合タンパク質をコードすることが可能である。
【0046】
種々の発現ベクターと宿主系を利用して、タンパク質または融合タンパク質をコードする配列を保持および発現することが可能である。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴のウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、または動物細胞系などの微生物等が含まれているが、これらに限定されるものではない。
【0047】
試料における本発明のポリヌクレオチド配列の存在は、当該ポリヌクレオチドのプローブまたは部分または断片を用いて、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーションおよび/または増幅によって検出することが可能である。核酸増幅系アッセイには、対応タンパク質をコードするDNAまたはRNAを含んだ形質転換体を検出するために、その遺伝子に特異的な配列に基づいたオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの使用が含まれる。本明細書で使用した「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、少なくとも約10のヌクレオチド、そして約60もの数のヌクレオチド、望ましくは約15〜30ヌクレオチド、およびより望ましくは約20〜25のヌクレオチドの核酸配列を言及し、プローブまたはアンプライマーとして使用することが可能である。
【0048】
多岐にわたる標識技術および共役技術が当業者には周知であり、種々の核酸およびアミノ酸測定法において使用することが可能である。ポリヌクレオチド配列を検出するために標識化されたハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを産出する手段には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション法、RNAプローブの末端標識化、標識化されたヌクレオチドを用いたPCR増幅、または酵素性合成が含まれる。このような手順は、市販されている種々のキット(ミシガン州カラマズーのPharmacia & Upjohn社、Promega社 (ウィスコンシン州マディソン)、およびU.S. Biochemical Corp社 (オハイオ州クリーブランド)) を用いて実行することが可能である。
【0049】
試料における本発明のタンパク質の存在は、免疫学的な方法または活性測定によって確定することができる。タンパク質活性を判定するためのタンパク質または試薬に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用して、タンパク質の発現を検出および測定するための種々のプロトコルは当分野で周知である。実施例には、酵素免疫測定(吸着)法(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、および蛍光細胞分析分離装置(FACS)が含まれる。タンパク質上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナル系免疫測定法は好適ではあるが、競合結合実験を使用することも可能である。これらを含めた他のアッセイは、Hampton、R. らの (ミネソタ州セントポール市、1990; Ser ological Methods、Laboratory Manual、APS Press) およびMaddox、D. E. らの (1983; J. Exp. Med. 158:1211-1226) の諸所に記載されている。
【0050】
また、使用可能な好適レポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または発色剤のほかに、基質、補助因子、阻害剤、磁力粒子なども含まれる。
【0051】
本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、細胞培養からの当該タンパク質の発現および回収に好適な条件下で培養することが可能である。組換え細胞によって作り出されたタンパク質は、使用する配列および(または)ベクターにもよるが、分泌または細胞内含有させることが可能である。タンパク質をコード化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するタンパク質の分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。その他の組換え構造を用いて、本タンパク質をコードする配列を水溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に結合することが可能である。そのような精製を促進するドメインには、固定化金属上での精製を可能にするヒスチジントリプトファン分子などの金属キレートペプチド、固定化免疫グロブリン上の精製を可能にするタンパク質 A ドメイン、および FLAG 伸長・親和性精製システム(Immunex Corp.、Seattle、Wash.)で利用されるドメインなどが含まれるが、これらによって限定されるものではない。精製ドメインと所望のタンパク質との間にあるXA 因子またはエンテロキナーゼ(腸活素)(カリフォルニア州のサンディエゴ市のInvitrogen 社)に対して特異的であるような切断可能リンカー配列の包括を用いて精製を促進することが可能である。
【0052】
診断および治療
本発明において開示したデータは、本発明の核酸配列およびタンパク質およびその修飾因子/エフェクター分子が、関連する診断目的および治療目的、例えば、限定するものではないが、肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、真性糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎および(または)胆石症、または肝臓線維症のような関連障害において有用であることを明らかにする。従って、本発明のタンパク質核酸およびタンパク質の診断目的および治療目的は、例えば、これらに限定されるものではないが、次の通りである: (i)タンパク質療法、(ii)小分子薬剤標的、(iii)抗体標的(治療、診断、薬剤ターゲッティング/細胞毒性抗体)、(iv)診断および(または)予後マーカー、(v)遺伝子療法(遺伝子送達と遺伝子除去)、(vi)研究ツール、および(vii)試験管内および生体内における組織再生(これらの組織に由来する組織型および細胞型を構成する全ての組織型および細胞型の再生)。
【0053】
本発明の核酸とタンパク質およびそのエフェクターは、下記のように、種々の用途に関与する診断目的および治療目的において特に有用である。例えば、限定するものではないが、本発明のタンパク質をコードする相補 DNAおよび特にそのヒトホモログは、遺伝子療法において有用であり、また、本発明のタンパク質および特にそのヒトホモログは、それを必要とする被検体に投与されたときに有用であり得る。例証として、本発明の組成物は、例えば、限定するものではないが、上記のような代謝障害およびその他の疾患および障害に苦しむ患者の治療に対して有効性を有するであろう。
【0054】
本発明の核酸またはその断片は、核酸またはそのタンパク質の存在または量が評価される診断適用例においてもさらに有用であり得る。さらに、本発明の物質に対して免疫特異的に結合する抗体を治療または診断方法において使用することも可能である。
【0055】
例えば一実施態様によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特異な抗体は、直接的にはエフェクター、例を挙げるとアンタゴニストとして、または間接的にはタンパク質を発現する細胞または組織に薬剤をもたらすターゲッティングまたは輸送機構として用いることが可能である。その抗体は当分野で周知の方法を用いて作成することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体一本鎖、Fab 断片、および Fab 発現ライブラリによって産生された断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。中和抗体(すなわち、二量体形成を阻害する抗体)は特に治療用に望ましい。
【0056】
抗体産生のため、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒトなどを含む種々の宿主は、本ンパク質または免疫抗原性の特性を有する任意の断片またはそのオリゴペプチドを注入することによって免疫化することが可能である。 宿主の種類にもよるが、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることが可能である。本タンパク質に対する抗体を誘導するために用いるペプチド、断片またはオリゴペプチドは、少なくとも約5のアミノ酸からなり、より望ましくは少なくとも約10のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するものが望ましい。
【0057】
本タンパク質に対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を作り出す任意の技術を用いて作ることが可能である。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒト B 細胞ハイブリドーマ技術、EBVハイブリドーマ技術 (Khler G. および Milstein C. の (1975) Nature 256: 495-497; Kozbor D. らの (1985) J. Immunol. Methods 81: 31-42; Cote R.J. らの (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030; Cole S.P. らの (1984) Mol. Cell Biochem. 62: 109-120) が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
しかも、「キメラ抗体」を作り出すために開発された技術である、好適な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためにマウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子に対するスプライシングを使用することが可能である (Morrison S.L. らの (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855; Neuberger M.S. らの (1984) Nature 312: 604-608; Takeda S. らの (1985) Nature 314: 452-454)。あるいは、一本鎖抗体を作り出すために記述された技術を適用し、当分野で周知の方法を使用して、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特異的な一本鎖抗体を作り出すことが可能である。関連特異性を有するが、固有イディオタイプ組成物の一部でもある抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリからのチェーンシャフリングによって作成することが可能である (Kang A.S. らの (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:11120-11123)。抗体はまた、リンパ球集団における生体内産生を誘導することによって作り出すことが可能であり、または組換え免疫グロブリンライブラリまたは文献に開示されているような高特異結合試薬パネルのスクリーニングによって作り出すことも可能である (Orlandi R. らの (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837; Winter G. および Milstein C. の (1991) Nature 349: 293-299)。
【0059】
また、タンパク質に対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることが可能である。例えば、そのような断片には、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作り出すことができるF(ab')2断片、およびF(ab')2のスルフィド架橋を還元することによって作成できるFab断片が含まれる。あるいは、Fab 発現ライブラリを作製して、所望の特異性を有するモノクローナル Fab 断片の迅速かつ容易な同定することができる (Huse W.D. らの (1989) Science 246: 1275-1281)。
【0060】
種々の免疫測定法をスクリーニングに対して用い、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。既存の特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合結合および免疫放射定量測定法のための幾多のプロトコルは、当分野では周知である。通常このような免疫学的測定法には、タンパク質とその特異性抗体との間の複合体形成の計測が関与する。2つの非干渉性タンパク質エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナル系免疫測定法が望ましいが、競合結合実験を用いることも可能である(前出のMaddox)。
【0061】
本発明の別の実施例によれば、本発明のポリヌクレオチドまたはその断片またはアプタマー分子、アンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイムのような核酸修飾因子/エフェクター分子を治療目的のために使用することが可能である。一実施態様によれば、組み合わせ核酸ライブラリの使用を含んだ手順のスクリーニングおよび選択によって、アプタマー、すなわち、Prlタンパク質に対して結合し、その活性を調節する能力のある核酸分子を作成することが可能である。
【0062】
さらなる実施態様では、mRNAの転写を阻止することが望ましいような状況において、アンチセンス分子を使用することが可能である。具体的には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドに補遺的な配列を利用して細胞を形質転換することが可能である。このように、アンチセンス分子を用いて、タンパク質活性を調節すること、または遺伝子機能を調節することができる。今このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスのオリゴマーまたは大きな断片を、タンパク質をコードする配列のコード領域または制御領域に沿ったさまざまな位置から設計することが可能である。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクチニアウィルスまたは種々の細菌プラスミドに由来する発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団に送達することができる。当業者に公知の方法を用いて、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子のポリヌクレオチドに補遺的なアンチセンス分子を発現する組換えベクターを構築することが可能である。これらの技術は、Sambrook らの (前出) および Ausubel らの (前出) 両文献に記載されている。本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子は、本発明のタンパク質および相同タンパク質またはその断片をコード化する高レベルのポリヌクレオチドを発現する発現ベクターを有する細胞または組織の形質転換によってオフにすることができる。そのような構成物を用いて、翻訳不可能なセンス配列またはアンチセンス配列を細胞に導入することが可能である。DNA への組み込みが不在の場合でさえ、そのようなベクターは、RNA分子が内因性ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)によって使用不可能になるまで継続してRNA分子を転写することが可能である。一過性の発現は、非複製ベクターによって1ヶ月以上持続することが可能であり、さらに適切な複製要素がそのベクター系の一部である場合には、より一層長く持続することが可能である。
【0063】
上述したとおり、遺伝子発現の修飾は、アンチセンス分子、例えば、DNA、RNAまたはPNAのような核酸アナログを、本発明のタンパク質および相同タンパク質、すなわち、プロモーター、エンハンサー、およびイントロンをコードする遺伝子の制御領域に対してデザインすることによって得ることができる。転写開始部位(例えば始動部位から -10〜+10 の間) 由来のオリゴヌクレオチドが望ましい。同様に、「三重らせん」塩基対の形成方法を用いて抑制することもできる。三重らせん対合が有用であるのは、三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写調節因子または調節分子の結合に対して二重らせんが十分に開くような能力を阻害するためである。三重らせん DNA を用いる最近の治療における進歩は文献に記載されている (Gee J.E. らの (1994) Gene 149: 109-114; Huber B.E. および Carr B.I. の (1994) Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing 社、Mt. Kisco, N.Y.)。また、アンチセンスは、転写物のリボソームに対する結合を防止することによって、mRNAの翻訳を阻止する目的で設計することも可能である。
【0064】
酵素性RNA分子であるリボザイムは、RNAの特異的切断を触媒するために使用することが可能である。リボザイム作用のメカニズムには、内ヌクレオチド結合分解性の切断に先立つ相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションが含まれる。使用することが可能な実施例には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする配列の内ヌクレオチド結合分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。任意の潜在的RNA標的内の特異性リボザイム切断部位は、GUA、GUU、およびGUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子を走査することによって最初に同定する。ひとたび同定すると、標的遺伝子の領域に対応し、切断部位を含む15〜20リボヌクレオチド間の短いRNA配列は、オリゴヌクレオチドを機能不全にするような二次構造的特徴に対して評価することが可能となる。また、候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護試験法(ribonuclease protection assay)を用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの実施容易性を検査することによって行うことができる。
【0065】
核酸エフェクター分子、例えば本発明のアンチセンスおよびリボザイムは、核酸分子合成のために当分野で周知の任意の方法を用いて作ることが可能である。これらの方法には、固相フォスフォアミダイト化合合成のようなオリゴヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれる。あるいは、DNA配列の試験管内および生体内転写によってRNA分子を産出することも可能である。このようなDNA配列は、T7またはSP6のような好適なRNポリメラーゼプロモーターを用いて、種々のベクターに組み込むことが可能である。あるいは、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するこれら相補 DNA構成物は、細胞株、細胞または組織の内に導入することができる。RNA分子を修飾して、細胞内の安定性および半減期を向上することが可能である。可能な修飾には、本分子の 5' 末端および(または) 3' 末端でのフランキング配列の追加、または核酸塩基、砂糖および(または)リン酸塩部分、例えば分子の背骨連鎖内のホスホジエステラーゼ連鎖ではなく、ホスホロチオエートまたは 2'O-メチルの使用が含まれるが、それらに限定されるものではない。この概念は、PNAの作成に固有のものであり、例えばイノシン、クエオシン、ワイブトシンのほかに、アセチル系、メチル系、チオ系、および内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンに類似の修飾態様なども含めた非従来型塩基の抱合によって、これら全ての分子に適用することができる。
【0066】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が提供されており、それらの方法は生体内、試験管内および生体内外交通の使用に同程度に適している。生体内外交通治療では、ベクターは患者から採取した幹細胞内に導入し、同一患者に自家移植で戻すためにクローン増殖することが可能である。形質移入およびリポソーム注入による送達は、当分野で周知である方法を用いて行うことが可能である。上記の治療方法はいずれも、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も望ましくはヒトなどの哺乳動物を始めとする好適な被検体に適用することが可能である。
【0067】
本発明の追加実施例は、医薬用に許容できるキャリアと共に、上述の任意の治療効果のための医薬品組成物の投与に関するものである。そのような医薬品組成物は、核酸および本発明のタンパク質および相同核酸またはタンパク質、本発明のタンパク質および相同タンパク質に対する抗体、本発明のタンパク質および相同タンパク質または核酸の擬態、アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤で構成してもよい。本組成物は単独で投与することができるが、少なくとも 1つの安定化化合物のような他剤と共に投与することもでき、その場合には、例えば生理食塩水、緩衝生理食塩水、D 形グルコース(ブドウ糖)および水など(これらに限定されるものではない) の滅菌した生物学的に適合な医薬品キャリアを用いて投与することが可能である。本組成物は単独で患者に投与することができるが、他剤、薬剤またはホルモンと共に投与することも可能である。本発明に用いられる医薬品組成物は、幾つもの経路によって投与することができ、その経路には経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸があるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
その活性成分に加えて、これらの医薬品組成物は、医薬用に使用することができる、活性化合物の製剤への処理を促進する賦形剤および助剤を備えている好適な医薬用に許容できるキャリアを包含し得る。および投与に関する技術の詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences (ペンシルベニア州イーストンのMaack Publishing社) の最新版を参照。
【0069】
本発明に好適な医薬品組成物には、活性成分が所望の目的を達成するために有効な量で含有されているような成分が含まれる。有効投与量の定量は、当業者の能力の範囲内で行うものとする。任意の化合物の場合、細胞培養試験法、例えば前脂肪細胞の細胞株の細胞培養試験法おいて、または通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタなどの動物モデルのいずれかにおいて、治療に有効な投与量を初期に推定することができる。また、動物モデルを好適な濃度範囲および投与経路を決定するために使用することも可能である。次にはこのような情報を用いて、ヒトに対する有益な投与量および投与経路を決定することができる。治療に有効な投与量とは、活性成分、例えば、核酸または本発明のタンパク質またはその断片、本発明のタンパク質の抗体および相同タンパク質の、特定の状態を治療するために十分な量のことである。治療効力および毒性は、細胞培養または実験用動物における標準調剤手順、例えばED50 (50%の集団における治療に有効な用量: 50%有効量)およびLD50 (50%の集団に対して致死的な用量: 50%致死量)によって確定し得る。治療効果と毒性効果間の投与量の比は、治療指数、すなわちLD50/ED50比率として表すことができる。高い治療指数を示す医薬品組成物が望ましい。細胞培養試験法および動物実験から得たデータは、ヒト用のさまざまな投与量の製剤に使用する。そのような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど持たないED50 を含む循環濃度の範囲内にあることが望ましい。投与量は、投与量の使用元、患者の感受性、および投与の経路によって、本範囲内で変わる。正確な投与量は、治療を必要とする被検体に関する要因を考慮して、現場の医師が決定することになる。投与量および投与法は、十分なレベルの活性部を提供するため、または所望の効果を維持するために調節する。配慮されるべき要因には、疾患の重症度、患者の身体全体の健康状態、患者の年齢、患者の体重および性別、食習慣、投与の時間と頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する耐性と反応が含まれる。長時間効果のある医薬品組成物は、個別製剤の半減期およびクリアランス率にもよるが、3〜4日毎、1週間毎または2週間毎に1回の間隔で投与することが可能である。通常の投与量は、投与経路にもよるが、約0.1〜100,000マイクログラムと異なり、合計投与量は最大で約1グラムまでとする。特定の投与量および送達の方法に関する指針は文献に記載されており、通常、当分野の実務家に提供されている。当業者であれば、タンパク質または抑制剤とは異なったヌクレオチドの製剤を利用するであろう。さらにポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達も、個別の細胞、状態、位置などに対して特異的なものとなる。
【0070】
別の実施例では、本タンパク質に特異的に結合する抗体は、本発明のタンパク質および相同タンパク質の過剰発現または低発現に関連することを特徴とする状態または疾患の診断のため、または本発明のタンパク質および相同タンパク質、またはそのエフェクター、例えばアゴニスト(作用薬)、アンタゴニストまたは阻害(抑制)剤で治療を受けている患者を監視するための測定法において使用することが可能である。診断アッセイには、抗体および標識を利用してヒトの体液、または細胞や組織の抽出物にある本タンパク質を検出する方法が含まれる。抗体は、その修飾の有無に拘わらず使用することが可能であり、その抗体を共有的または非共有的のいずれかでレポーター分子と結合することによって標識化することが可能である。当分野で周知の種々のレポーター分子を用いることが可能であり、そのさまざまなレポーター分子を上述した。
【0071】
ELISA、RIA、およびFACSを始めとするタンパク質を測定するための種々のプロトコルは当分野では周知であり、改変または異常レベルの遺伝子発現を診断する基準を提供する。遺伝子発現の正常値または標準値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物である被検体、望ましくはヒトから採取した体液または細胞を本タンパク質に対する抗体と結合させることによって決定する。標準複合体の形成量は、種々の方法によって定量化することが可能であるが、測光的方法を用いることが望ましい。対照サンプルおよび疾患サンプル、例えば生検組織において発現したタンパク質の量を標準値と比較する。標準値と被検体値の偏差は、疾患を診断するためのパラメータを樹立する。
【0072】
本発明の別の実施例によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特定のポリヌクレオチドを診断のために用いることも可能である。使用可能なポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、アンチセンスRNA分子とDNA分子、およびPNAが含まれる。ポリヌクレオチドを用いて、検体における遺伝子発現が疾患と相関し得るような該検体における遺伝子発現を検出および定量することが可能である。診断アッセイを用いて、遺伝子発現の不在、存在および過剰を区別すること、および治療介入中のタンパク質レベルの調節を監視することが可能である。
【0073】
一実施形態によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質または近縁の分子をコードするゲノム配列を始めとするポリヌクレオチド配列を検出する能力を持つプローブを用いたハイブリダイゼーションを用いて、それぞれのタンパク質をコードする核酸配列を同定することが可能である。本発明のハイブリダイゼーションプローブはDNAまたはRNAであり、望ましくは本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に由来するか、またはプロモーター、エンハンサーエレメント、および天然遺伝子のイントロンを始めとしたゲノム配列に由来するものであり得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター集団によって標識することができ、その例としては 32P または 35S 等の放射性核種、またはアビジン結合系やビオチン結合系を介してプローブと共役したアルカリホスファターゼ等の酵素標識等が挙げられる。
【0074】
本発明のタンパク質および相同性を有する核酸に特異的なポリヌクレオチド配列は、タンパク質の発現に関連する状態または疾患の診断のために使用することが可能である。そのような状態または疾患の例には、肥満症および糖尿病を始めとする代謝疾患および障害が含まれるが、それらに限定されるものではない。本発明のタンパク質または相同タンパク質に特異的なポリヌクレオチド配列を用いて、肥満症および糖尿病を始めとする代謝の疾患と障害に対して治療を受けている患者の進渉状況を監視することができる。ポリヌクレオチド配列は、変性遺伝子発現を検出するために患者の生検から採取した体液または組織を利用して、定性アッセイまたは定量アッセイ、例えばサザン法、ノーザン法、ドットブロット法またはその他の膜系の技術、および PCR 法、またはディップスティック法、ピン ELISA 法またはチップアッセイにおいて使用することが可能である。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のタンパク質および相同核酸に特異的なヌクレオチド配列は、種々の代謝疾患または機能障害、例えば、肥満症、糖尿病、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症(異脂肪血症)、胆石症、または肝臓線維症の活性または誘発を検出するアッセイにおいて有用であり得る。ヌクレオチド配列は、標準法で標識化されることが可能であり、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液または組織の試料に添加することが可能である。好適なインキュベーション期間の後には、その試料を洗浄し、そしてそのシグナルを定量化して標準値と比較する。試料における本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするヌクレオチド配列の改変レベルの存在は、関連疾病の存在を示すものである。また、このようなアッセイを用いて、動物実験、臨床試験または個々の患者の治療監視において、特定の治療上療法の有効性を評価することも可能である。
【0076】
本発明のタンパク質および相同タンパク質の発現に関連する疾患の診断基準を提供するため、発現に対する正常プロフィールまたは標準プロフィールを樹立する。これは、ハイブリダイゼーションまたは増幅に好適な条件下で、動物またはヒトの正常な被検体から抽出した体液または細胞を、本発明のタンパク質および相同核酸をコードする核酸に特異的な配列またはその断片と結合させることによって達成し得る。標準ハイブリダイゼーションの定量化は、正常な被検体から得た値を、既知量の十分に精製したポリヌクレオチドを使用する実験から得た値に対して比較することによって行なうことができる。正常試料から得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得た試料から得た値と比較することが可能である。標準値と被検者値間の偏差を用いて疾病の存在を確定する。ひとたび疾患の存在を樹立して、治療プロトコルを開始した時点では、患者の発現レベルが正常患者において観察されるレベルに近づき始めるかどうかを評価するために、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返すことが可能である。連続アッセイから得た結果を用いて、数日〜数ヶ月の期間にわたる治療効果を明らかにすることができる。
【0077】
上記のような代謝疾患に関して、個人の生検組織における異常な量の転写物の存在は、疾患の発生に対する素因を示すか、または実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する手段を提供することが可能である。この種のより一層信頼のおける診断により、医療の専門家が予防措置または積極的な早期治療を施し、膵臓の疾病および障害の発生またはさらなる進行を防止することが可能となる。
【0078】
本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドの診断上での追加用途は、PCR法の使用に関与し得る。このオリゴマーは、化学的に合成しても良いし、酵素的に作成するか、または組換えソースから作り出しても良い。オリゴマーは望ましくは2つのヌクレオチド配列から成り、1つはセンス方向(5prime.fwdarw.3prime)を有し、別の1つアンチセンス方向(3prime.rarw.5prime)を有し、特定の遺伝子または条件を同定するために最適化された条件下で用いられる。オリゴマーのネスト化したセット、または縮重オリゴマーの集積である2つの同一オリゴマーを、あまりストリンジェントでない条件下で用いて、緊密に関連したDNA配列またはRNA配列の検出あるいは(または)定量化を行なうことができる。
【0079】
また、本発明の別の実施例によれば、核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするために有用であるハイブリダイゼーションプローブを作成することも可能である。その配列は、特定の染色体にマッピングするか、または周知の方法を用いて染色体の特異的な領域にマッピングすることが可能である。このような技術には、FISH、FACSまたは酵母人工染色体、細菌人工染色体、細菌P1構築または単一染色体cDNAライブラリのような人工染色構造があり、Price C.M.、(1993) Blood Rev. 7: 127-134、およびTrask B.J.、(1991) Trends Genet. 7: 149-154. FISH (Verma R.S.およびBabu A.の(1989) Human Chromosomes: A Manual of Basic Techniques、Pergamon Press、New York、N.Y.に記載されている)などの文献で論評されているように、その結果を他の物理的染色体のマッピング技術および遺伝地図データと相関させることが可能である。遺伝地図データの例は、1994 Genome issue of Science (265:1981f) にある。物理的染色体地図上の本発明のタンパク質をコードする遺伝子の位置と、特定の疾患または特定の疾患に対する素因との間にある相関性は、遺伝子の疾病に関連するDNAの領域を画定するのに役立ち得る。
【0080】
本発明のヌクレオチド配列を用いて、健常者、保有者、または感染者の三者間における遺伝子配列の相違を検出することが可能である。遺伝子多型、例えば単一ヌクレオチド遺伝子多型の分析を行うことが可能である。さらに、樹立した染色体マーカーを用いた染色体標本および結合分析などの物理的マッピング技術のin situハイブリダイゼーション法を用いて、遺伝地図を拡張することも可能である。マウスのような別の哺乳動物種の染色体上への遺伝子の配置は、多くの場合、特定のヒト染色体の数またはアームが未知の場合でさえも、関連するマーカーを明らかにすることが可能である。新配列は、物理的マッピングによって、染色体アーム、またはその部分に指定することができる。これによって、位置クローニングまたは他の遺伝子発見技術を用いて疾病遺伝子を探索する研究者にとって貴重な情報が提供される。一旦疾患または症候群が、特定のゲノム領域への遺伝子連鎖、例えばAT〜11q22-23 (Gatti R.A.らの、(1988) Nature 336:577-580)によって大まかに位置決めがされると、その領域にマッピングする全ての配列は、さらなる研究のための関連遺伝子または調節遺伝子に相当し得る。本発明のヌクレオチド配列を用いて、転座、反転などに起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を検出することが可能である。
【0081】
本発明の別の実施例によれば本発明のタンパク質、それらの触媒作用断片または免疫抗原断片またはそのオリゴペプチド、試験管内モデル、遺伝子操作を受けた細胞または動物を用いて、あらゆる薬剤スクリーニング技術を利用して化合物のライブラリをスクリーニングすることができる。1つ以上の本発明のタンパク質の作用に結合、乃至は該作用を調節または模倣するエフェクター、例えば受容体、酵素、タンパク質、リガンドまたは基質を同定することができる。このようなスクリーニングで用いたタンパク質またはその断片は、溶液中に遊離していても、固体支持物に付着していても、細胞表面上にあっても、または細胞内にあっても構わない。また、本発明のタンパク質と検査される薬剤間の結合複合物の形成を測定することも可能である。また、直接的または間接的に本発明のタンパク質の活性に影響を及ぼす薬剤を同定することもできる。例えば、本発明のタンパク質のホスファターゼ活性は、当技術分野で周知の人工基質、すなわち、限定するものではないが脱リンの際にフルオロフォアまたは発色団に変換されるDiFMUP (Molecular Probes社、Eugene、Oregon)を利用することによって、遺伝子組換え的に発現され精製されたPrl-1またはその断片を用いて試験管内(試験管内)で測定することができるのではないだろうか。あるいは、ホスファターゼの生理的基質の脱リン酸は、それらの生理的な基質のリン酸化状態の検出に好適な公知のスクリーニングテクノロジを利用して測定できるのではないだろうか。例えば、限定するものではないが、それらの生理的基質に由来するペプチドのリン酸化状態は、ホスホ側特異性抗体の結合によって監視することができ、複合体分極化の増加を結果としてもたらす。
【0082】
しかも、その生理的基質またはその誘導体に対するPRL-1相同タンパク質の活性は細胞系アッセイにおいて測定し得る。また、薬剤は、リン酸化および脱リン酸、ファルネシル化、パルミトイル化、アセチル化、アルキル化、ユビキチン結合、蛋白分解性処理、細胞内局在性および劣化のようなのようなタンパク質の翻訳後の修飾を妨害する可能性もある。その上、薬剤は、本発明のタンパク質の二量体化またはオリゴマー形成に影響し、または異種様式で、他のタンパク質、例えば、限定するものではないが、ドッキングタンパク質、酵素、受容体、または翻訳因子を備えた本発明のタンパク質の二量体化またはオリゴマー形成に影響を及ぼし得る。また、薬剤は、タンパク質機能(作用)、例えば、限定するものではないが、下流のシグナル伝達に必要とされる他のタンパク質を備えた本発明のタンパク質の物理的相互作用に作用する可能性がある。
【0083】
タンパク質間の相互作用を判定するための方法は当分野で周知である。例えば、結合タンパク質から本発明のタンパク質に(逆の場合もまた同様)派生する蛍光標識されたペプチドの結合は、極性化の変化によって検出することができる。結合相手は完全長タンパク質であっても、完全長タンパク質としての結合相手の1つであっても、単なるペプチドであってよいが、その両方の結合相手が共に蛍光標識される場合、その結合は、蛍光色素の他の蛍光色素への蛍光エネルギー転移(FRET)によって検出することができる。しかも、種々の市販されている、タンパク質間の相互作用の検出のために好適な測定法原理は当分野で公知であり、例えば、限定するものではないがAlphaScreen (PerkinElmer社)またはAmersham社によるシンチレーション近接測定法(SPA)が挙げられる。 あるいは、本発明のタンパク質の細胞タンパク質との相互作用は、両タンパク質が蛍光標識され、両タンパク質の相互作用が、限定するものではないが、例えばCellomics社またはEvotecOAI社の開発による細胞イメージング読取装置を用いて両タンパク質の同時転座分析によって検出される細胞を利用したスクリーニングアッセイの基盤であり得る。すべての場合において、2つの以上の結合相手は互いに異なるタンパク質であり、その結合相手の1つは本発明のタンパク質であるか、または二量体化および(または)オリゴマー形成の場合は本発明のタンパク質自体であることができる。1つ(唯一ではない)の対象標的機構がそのようなタンパク質/タンパク質相互作用である本発明のタンパク質は、PRL-1相同タンパク質である。
【0084】
特に興味深いのは、哺乳動物の細胞に対して低毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。本明細書で使用した用語「薬剤」とは、1つ以上の本発明のタンパク質の生理機能を改変または模倣する能力を有する任意の分子、例えばタンパク質または医薬品のことである。候補薬剤は、典型的には有機分子であり、望ましくは50〜約2,500ドルトンの分子量を有する小有機化合物であるが、幾多の化学的クラスを包含する。候補薬剤には、タンパク質、特に水素結合との構造上での相互作用に必要な機能グループが含まれ、そして典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、望ましくは少なくとも2つの機能化学グループが含まれる。候補薬剤には、多くの場合、炭素環式構造または複素環式構造、および(または)1つ以上の上記機能グループと置換された芳香族構造またはポリ芳香族構造が包含される。
【0085】
候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、核酸および誘導体、構造上の類似体またはその組み合わせを含んだ生体分子間に見出される。候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリを始めとするさまざまな原料から取得する。例えば、任意に抽出されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を始めとして、さまざまな有機化合物および生体分子のランダム合成および特異的合成のための多くの手段が提供されている。或いは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物形態の天然化合物のライブラリは入手可能であるか、または容易に作り出すことができる。その上、従来の化学的、物理的、および生化学的な手段を介して、天然または合成的に作り出したライブラリおよび化合物は容易に修飾でき、それらを用いて組み合わせライブラリを作り出すことが可能である。アシル化、アルキル化、エステル化、アミジン化(amidification)などのような公知の薬剤は、構造上での類似体を作り出すために、特異的またはランダムな化学的修飾の対象となり得る。スクリーニングアッセイが結合実験である場合、1つ以上の分子が標識に結合することが可能であり、その標識は直接的または間接的に検出可能な信号を提供する。
【0086】
使用可能な別の薬剤スクリーニング技術は、PCT出願公開番号WO84/03564に記載されているように、目的タンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物の高処理能力スクリーニングを提供する。この方法においては、本発明のタンパク質に対して適用されたように、多数の異なる小さな試験用化合物、例えばアプタマー、ペプチド、低分子量化合物などをプラスチックピンまたは他表面などの固体基質上で提供または合成する。試験用化合物は、タンパク質またはその断片と反応させ、洗浄した。次に、結合したタンパク質を、当分野で周知の方法で検出した。精製したタンパク質は、前記した薬剤スクリーニング技術で使用するプレート上で直接被覆することもできる。あるいは、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物上に固定することもできる。別の実施例によれば、タンパク質と結合可能な中和抗体がタンパク質と結合するため試験用化合物と特に競合し、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では抗体を用いて、タンパク質と1つ以上の抗原決定因子を共有する全てのペプチドの存在を検出することができる。
【0087】
本発明のタンパク質をコードする核酸を用いて、遺伝子導入動物または部位特定の遺伝子改変を細胞株において作成することができる。これらの遺伝子導入非ヒト動物は、生体内における本発明のタンパク質の機能および調節の研究において有用である。遺伝子導入動物、特に哺乳動物の遺伝子導入動物は、ヒトに共通する多くの発生プロセスおよび細胞プロセスの検討のためのモデル系として役立つことができる。代謝障害を有する種々の非ヒトモデルを用いて、本発明のタンパク質のエフェクター/修飾因子を検査することができる。本発明のタンパク質の異所性発現(例えば過剰発現または発現の欠如)、特定の摂食条件、および(または)生物学的活性化合物の投与により、代謝障害のモデルを作ることができる。
【0088】
本発明の一実施例によれば、そのようなアッセイでは、レプチン経路遺伝子においてノックアウトを保有しているマウスのようなインスリン耐性および(または)糖尿病のマウスモデルが使用される (例えば、ob (レプチン)またはdb (レプチン受容体)マウス)。糖尿病典型的な症状を呈するそのようなマウスは、肝脂質蓄積を示し、高い頻度で血漿脂質レベルを増加した(前出のBruning J.C. らの1998 を参照)。感受性の野生型マウス(例えばC57Bl/6)は、高脂肪食を与えた場合、類似の症状を示す。そのようなマウス菌株における本発明のタンパク質発現の検査に加えて(実施例セクションを参照)、これらのマウス用いて、候補エフェクター/修飾因子の投与が、例えば肝臓、血漿、または脂肪組織における脂質蓄積を改変するかどうかを、FPLC、比色法、血糖検査、インスリン耐性検査などおよびその他当技術分野で周知の標準アッセイなどを用いて検査することもできる。
【0089】
遺伝子導入動物は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の正常な遺伝子座が変化する場合、非ヒト胚幹細胞における相同組換えを介して作ることが可能である。別法としては、本発明のタンパク質をコードする核酸構成物を卵母細胞に注入し、ゲノムにランダムに統合する。安定した統合のベクターには、プラスミド、レトロウィルスなど動物ウィルス、酵母菌人工染色体(YACs)などが含まれる。修飾された細胞または動物は、本発明のタンパク質の機能および調節の研究において有用である。 例えば、一連の小欠損および(または)置換を、本発明のタンパク質をコードする遺伝子において行い、膵臓の分化などにおけるタンパク質の特定のドメイン、機能の役割を決定することが可能である。
【0090】
その上、所定の特異的構成物様の本発明の遺伝子変異体には、本発明のタンパク質発現または優性阻害型突然変異の発現を阻止するアンチセンス分子が含まれる。本発明の遺伝子発現の上方制御が表現型における変化の容易な検出を結果としてもたらす場合、例えば、lac-Z またはルシフェラーゼのような検出可能なマーカーを本発明の遺伝子の遺伝子座に導入することが可能である。
【0091】
また、通常には発現されない細胞や組織、または異常発生中の細胞や組織には、本発明の遺伝子発現またはその変異体を提供することも可能である。しかも、本発明のタンパク質発現を通常には産生されない細胞中に提供することによって、細胞行為の変化を誘引することが可能である。
【0092】
相同組換えDNA構成物には、所望の遺伝的な修飾を有する本発明の遺伝子の一部が少なくとも含まれており、標的遺伝子座に対するホモロジー領域も含まれる。ランダム統合のためのDNA構成物には、組換えを仲介するための相同領域が含まれる必要はない。都合よく、ポジティブ選択およびネガティブ選択用のマーカーを含む。ランダム統合のためのDNA構成物には、本発明のタンパク質、調節エレメント(プロモーター)、イントロンおよびポリアデニル化信号をコードする核酸から成る。相同組換えを通して標的遺伝子修飾を有する細胞を作成する方法は当分野で周知である。胚FoR胚 幹 (ES)細胞、an ES 細胞株 利用して〜することが可能である。,または胚 細胞 maybe obtaineD新たにから取り出した 宿主、例えばマウス、ラット、モルモット、etc. そのような細胞 are 増殖 on an 適切 fibroblast-feedeR層 およびare で育てた が存在する白血病抑制因子 (抑制因子)。
【0093】
非ヒトESまたは胚細胞または体細胞の多能性ヒト幹細胞を形質移入する場合、それらの細胞を用いて遺伝子導入動物を作り出すことが可能である。形質移入後、細胞を適切な培地の支持細胞層にプレーティングする。その構成物を含んでいる細胞は、選択培地を用いることによって選択することが可能である。コロニーを十分な時間をかけて増殖した後、コロニーを摘出し、相同組換えまたは構成物の統合の発生率を分析する。陽性反応を示すコロニーは、胚操作および桑実胚凝集に用いることが可能である。つまり、桑実胚を4〜6週間目の過排卵雌から取得し、透明帯を除去し、桑実胚を組織培養皿の小凹部に入れる。ES細胞をトリプシン処理し、そしてその修飾細胞は桑実胚に密接して凹部に置く。次の日には、凝集体を偽妊娠の雌の子宮角に移す。次に、雌に出産せしめる。キメラの子孫は、外殻の変化によって容易に検出することができ、引き続いて突然変異の次世代への伝達のためにスクリーニングする(F1世代)。F1-世代の子孫を修飾遺伝子の存在に対してスクリーニングし、修飾した雄および雌を交尾させ、ホモ接合性の子孫を作り出す。その遺伝子改変が成長の過程における死亡率の原因となる場合には、組織または器官は、同種間移植用または類遺伝子性移植用、または移植、または体外培養用として維持することができる。遺伝子導入動物は、動物モデル、家畜など、例えばマウス、ラット、モルモット、ヒツジ、ウシ、ブタなどのような任意の非ヒト哺乳動物であり得る。遺伝子導入動物は、機能的研究、薬物スクリーニングおよび他の用途において用いることが可能であり、そして生体内における本発明タンパク質の機能および調節の研究に有用である。
【0094】
また、最終的に、本発明は少なくとも下記の 1つから成るキットに関するものである。
(a) 本発明のタンパク質またはその機能的断片の核酸分子コーディング;
(b) 本発明のタンパク質または機能的断片またはそのアイソフォーム;
(c) (a) の核酸から成るベクター;
(d) (a) の核酸または(c) のベクターから成る宿主細胞;
(e) (a) の核酸によってコード化されたポリペプチド;
(f) (a) の核酸によってコード化された融合ポリペプチド;
(g) (a)の核酸、または(b)、(e)、または(f)のポリペプチドの抗体、アプタマーまたは別のエフェクター/修飾因子、および
(h) (a)の核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【0095】
本キットは、上述のように、診断用または治療用またはスクリーニング用に使用することが可能である。本キットには、さらに取扱説明書が含まれる場合がある。
各図が示すのは下記のとおりである:
図1は、ショウジョウバエPRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)変異体のエネルギー貯蔵代謝物(ESM; 中性脂肪(TG)およびグリコーゲン)含有量を示す。ここに示したのは、専売のEPコレクション(「HD対照(TG)」、列1)の2000以上のハエのラインを含有する対照群と80以上の非依存性アッセイ(「WT対照(TG)」列2と呼ばれる)において定量された野生型対照群と比較した、Pベクターの注釈付き転写ユニット(列3)への統合によって引き起こされるHD-EP(2)20261ハエの中性脂肪含有量の変化である。また、ここに示したのは、対照群(「対照(グリコーゲン)」列4と呼ばれる)と比較した、Pベクターの注釈付き転写ユニット(列5)への統合によって引き起こされるHD-EP(2)20261ハエのグリコーゲン含有量の変化である。
【0096】
図2は、変異型PRL-1(Gadflyアクセッション番号)遺伝子座の分子構造を示す。
【0097】
図3は、本発明のタンパク質の核酸およびアミノ酸配列を示す。
図3AはヒトPrl-1の核酸配列を示す(配列識別番号1)。
図3BはヒトPrl-1のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号2)。
図3Cは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型1を示す(配列識別番号3)。
図3Dは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(1文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号4)。
図3Eは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型2を示す(配列識別番号5)。
図3Fは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(2文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号6)。
図3Gは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型3を示す(配列識別番号7)。
図3Hは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(3文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号8)。
図3IはヒトPrl-3の核酸配列を示す(配列識別番号9)。
図3JはヒトPrl-3のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号10)。
【0098】
図4は、異なる哺乳動物モデルにおけるPrl-1の発現を示す。
図4Aは野生型マウス組織におけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。相対RNA発現はY軸に示し、テストした組織はX軸示した。(WAT = 白色脂肪組織、薄灰色列; BAT= 茶色脂肪組織、濃灰色列)
図4Bは、異なるマウスモデルにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Cは、3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Dは野生型マウス組織におけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Eは、異なるマウスモデルにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Fは、食餌制限マウスと比較した高脂肪食野生型マウスにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Gは、3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【0099】
図5は、Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値およびグリコーゲンレベルを定量するための試験管内っ試験法を示す
図5Aは、Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値の上昇を示す。Y軸は、細胞内中性脂肪(1mgタンパク質当たりの中性脂肪をμgで示した)値を示し、そしてX軸は、細胞分化の日数を示す。Prl-1を過剰発現する細胞からの測定値を濃灰色列として示し、対照細胞(空ベクター)を薄灰色列としてを示す。中性脂肪値および対照群は2つの異なる試料セットに対して示す。
図5Bは、Prl-1を過剰発現する細胞におけるグリコーゲンレベルの上昇を示す。Y軸は、グリコーゲンレベル(1mgのタンパク質当たりのグリコーゲンのμgとして示した)を示し、そしてX軸は、細胞分化の日数を示す。Prl-1を過剰発現する細胞からの測定値を濃灰色列として示し、対照細胞(空ベクター)を薄灰色列としてを示す。グリコーゲンレベルおよび対照群は2つの異なる試料セットに対して示す。
【0100】
図6は、Prl-1の機能低下(LOF)細胞における脂質合成と脂肪酸エステル化のレベルを定量するための試験管内試験法を示す。
図6Aは、Prl-1のLOF細胞における脂質合成のレベルの減少を示す。Y軸は、合成した脂質の量(1mgタンパク質当たりのdpmとして示した)を示し、X軸は対照群とPrl-1のLOF細胞を示す。インスリン刺激試料からの測定値は濃灰色列として示し、基本試料は薄灰色列として示した。脂質値および対照群は3つの異なる試料セットに対して示す。
図6Bは、Prl-1のLOF細胞における脂肪酸(FA)エステル化のレベルの上昇を示す。Y軸は、エステル化した脂肪酸の量(1mgタンパク質当たりのdpmとして示した)を示し、X軸は対照群とPrl-1のLOF細胞を示す。FAのエステル化レベルは3つの異なる試料セットに対して示す。
【0101】
図7は、哺乳動物(ヒト)組織におけるヒトPRL-1ホモログの発現を示す。
図7Aは、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の腹部由来の一次脂肪細胞におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
図7Bは、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のヒト脂肪細胞株におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【0102】
図8は、異なるヒト組織におけるPRL-1ホモログ発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Aは、ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Bは、異なるヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Cは、前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Dは、異なるヒト組織におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Eは、前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【0103】
図9は、Prl-1を過剰発現する脂肪細胞による遊離脂肪酸およびグルコースの取り込みを定量するための試験管内試験法を示す。
図9Aは、SGBS細胞を過剰発現するPrl-1による遊離脂肪酸取り込みの上昇を示す。Y軸は3Hオレイン酸の取り込み(dpm/mgタンパク質における放射能)を示し、X軸は、分析した細胞: 対照細胞(空ベクター)および細胞を過剰発現するPrl-1を示す。原形質膜を介した3Hオレイン酸の受動拡散は薄灰色列として示し、能動輸送は濃灰色列として示す。 3Hオレイン酸の取り込みは3つの異なる試料セットに対して示す。
図9Bは、SGBS細胞を過剰発現するPrl-1によるグルコースの取り込みの上昇を示す。Y軸は2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込み(dpm/mgタンパク質における放射能)を示し、X軸は、分析した細胞: 対照細胞(空ベクター)および細胞を過剰発現するPRL-1を示す。基底2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込みは薄灰色列として示し、インスリン刺激による取り込みは濃灰色列として示す。 2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込みは3つの異なる試料セットに対して示した。
【0104】
実施例は本発明を図解するものである:
実施例 1: ショウジョウバエにおけるエネルギー貯蔵代謝産物(ESM)含有量の測定
変異体ハエはハエ変異在庫コレクションから取得する。ハエは当業者であれば公知の標準条件下で増殖する。実験の過程で、追加給餌をパン酵母(サッカロミセスセレビジエ)とともに EP 系統HD-EP20261に与えた。EPベクターを生存能力のあるホモ接合性統合として含有するショウジョウバエの中性脂肪含有量およびグリコーゲン(本明細書中ではエネルギー貯蔵代謝物、ESMと呼ぶ)の平均変化を対照ハエ (図1を参照) とそれぞれ比較検討した。EMS含有量の定量のため、ハエを5分間、90℃ にて水溶性の緩衝液中において水浴を用いてインキュベートした後に熱抽出を行なった。さらなる5分間、90℃にてインキュベーションし、マイルドな遠心分離を行なった後、Sigma中性脂肪(INT 336-10または-20)アッセイを使用し、製造者のプロトコルに従って光学的な濃度における変化を測定することによって、ハエの中性脂肪含有率抽出を決定し、そしてハエ抽出のグリコーゲン含有量は、ロシュ((Starch UV-method Cat. No. 0207748)測定法を用いて、製造者のプロトコルに従って光学的な密度の変化を測定することによって確定した。基準としてBIO-RAD DCタンパク質アッセイを使用し、製造者のプロトコルに従って同一抽出のタンパク質含有量を測定した。この実験およびアッセイを何度か繰り返した。
【0105】
専売のEPコレクション(「HD-制御(TG)」と呼ばれる)の2108ハエのラインの平均中性脂肪値(μg 中性脂肪/μgタンパク質)として示した図1第1列に100%として示す。84の非依存性アッセイ(「WT-制御(TG)」と呼ばれる)において定量したショウジョウバエ野生型菌株オレゴンRハエの平均中性脂肪値(μg 中性脂肪/μgタンパク質)は、図1の第2列において102%として示した。2つの異なる野生型菌株とHD在庫コレクション(「対照(グリコーゲン)」と呼ばれる)の目立たないEPラインから成る内部アッセイの対照の平均グリコーゲンレベル(μg グリコーゲン/μgタンパク質)は図1の第4列に100%として示した。測定値の標準偏差は細いバーとして示した。HD-20261ホモ接合性ハエ(図1の列3、「HD-20261(TG)」)は、対照群と比べて、常に高い中性脂肪含有量(μg 中性脂肪/μgタンパク質)を示す。また、HD-20261ホモ接合性ハエ(図1の列5、「HD-20261(グリコーゲン)」)は、対照群と比べて、低いグリコーゲン含有量(μg グリコーゲン/μgタンパク質)を示す。以上の点から、遺伝子活性の減少は、エネルギー保管代謝産物の代謝における変化の原因となる。
【0106】
実施例2: 中性脂肪およびグリコーゲンレベルにおける変化に関与するショウジョウバエ遺伝子の同定
EP ベクター(本明細書中では HD-EP(2)20261) 統合に直接的に隣接して局在するゲノムDNA配列を分離した。Berkeleyショウジョウバエゲノムのような分離ゲノム配列の公共データベースを用いて、プロジェクト(GadFly)をスクリーニングし、それによってセンス方向における遺伝子PRL-1の転写物変異体CG4993-RBへの塩基対9 でのHD-EP(2)20261ベクターのホモ接合性生存統合部位を確認した。図2はこの遺伝子座の分子構造を示す。HD-EP(2)20261ベクター統合の染色体局在部位は、遺伝子座2L、35E2(Flybaseによる)または2L、35F1(Gadflyリリース3による)にある。図2では、ゲノムDNA配列を、HD-EP(2)20261の統合部位を含む図の中間における黒の矢印としてのアセンブリによって表した。チェックマークは、ゲノムDNA (チェックマークにつき1000 塩基対)の塩基対における長さに相当する。濃灰色線でつながった本図の下半分における濃灰色バーは、予測遺伝子のcDNAに相当する(Berkeleyショウジョウバエゲノムプロジェクト、GadFlyリリース3によって予測された通り)。本遺伝子PRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)のショウジョウバエcDNAの予測エキソンは、濃灰色バーとして示し、予測イントロンは、本図の下半分における灰色の細線として示し、そして標識化する。HD-EP20261の統合部位は、PRL-1遺伝子の予測cDNAの第1エキソン内の黒三角形で表示する。対応する発現配列タグ(EST)は、2つのcDNA転写物変異体下に薄灰色バーとして示す。以上の点から、PRL-1をコードする相補DNAの発現はHD-EP(2)20261系統のベクター統合によって影響され、エネルギー貯蔵中性脂肪量の変化につながり得る。
【0107】
表1は、本発明において代謝の調節に関与するものとして同定したショウジョウバエタンパク質の分子分析データをまとめたものである。
【0108】
【表1】
実施例3: ヒトPRL-1相同タンパク質の同定
よって、PRL-1相同タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、ショウジョウバエPRL-1またはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3およびホモログから成る核酸である。配列に対して相同を有するショウジョウバエのPRL-1は、公的に利用できる全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の非重複タンパク質データベースのプログラムBLASTP 2.2.3を用いて同定した(Altschulらの、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389-3402を参照)。表2は、ショウジョウバエPRL-1遺伝子のベストなヒトホモログを示す。
【0109】
【表2】
【0110】
本発明のポリペプチドをコードするマウス相同cDNAをGenBankアクセッション番号NM_011200、XM_123656、XM_135289、NM_008974、NM_008975として同定した。
【0111】
実施例 4: 哺乳動物組織におけるPRL-1相同mRNAの発現
実施例4: 哺乳動物(マウス)組織におけるPrl-1mRNA発現
哺乳動物組織における本発明で開示したPRL-1相同mRNAの発現を分析するため、さまざまなマウス菌株(望ましくは、標準モデル系における肥満症および糖尿病の研究であるマウス菌株RNA、C57Bl/6J、C57Bl/6J ob/obおよびC57Bl/KSdb/db)を、Harlan Winkelmann(33178 Borchen、Ger many)から購入し、一定の温度(望ましくは22℃)、湿度40パーセントおよび望ましくは14/10時間の明暗サイクル下に維持した。マウスには標準食を与えた(例えばssniff Spezialitaten有限責任会社、製品番号niff M-Z V1126-000)。絶食実験(「絶食野生型マウス」)に関しては、野生型マウスを食物を与えずに水のみを適時に与えるだけで48時間飢えさしめた。(例えばSchnetzler B.らの、(1993) J Clin Invest 92: 272-280、Mizuno T.M.らの、(1996) Proc Natl Acad Sci USA 93: 3434-3438を参照)。 さらなる実験では、野生型 (wt) マウスに制限食 (望ましくは Altromin C1057 mod 制御、4.5% の粗脂肪) または高脂肪食 (望ましくは Altromin C1057 mod. 高脂肪、23.5% の粗脂肪) を与えた。 動物は6〜8週間目に達した時点で屠殺した。動物組織は、当業者であれば既知の標準手順に従って単離し、液体窒素で簡易冷凍し、必要となるまで 零下80 ℃にて保管した。
【0112】
本発明において開示した試験管内分化におけるタンパク質の役割を分析するため、異なる哺乳動物細胞の培養細胞、前脂肪細胞の脂肪細胞への変換、哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞 (例えば、Green H.およびKehinde O.の、(1974) Cell 1: 113-116) をAmericanTissue Culture Collection (USAバージニア州ハナサスのATCC、; ATCC- CL 173) から入手した。3T3-L1細胞は線維芽細胞として維持し、従来技術に記述されているように脂肪細胞に分化した(例えば、Qiu. Z. らの、(2001) J. Biol. Chem. 276: 11988-11995; Slieker L.J. らの、(1998) BBRC 251: 225-229)。手短に言えば、細胞はDMEM/10% FCS (Invitrogen社、Karlsruhe、ドイツ)において50,000細胞/ウェルを6ウェル プラスチック皿に二通りにプレーティングし、5%の二酸化炭素、37℃の加湿環境において培養した。集密日(第0日目: d0として定義した)細胞は、DMEM/HamF12(3:1; Invitrogen社)、フェチュイン(300 μg/ml; Sigma社、Munich、ドイツ)、トランスフェリン(2μg/ml; Sigma社)、パントテン酸(17 μM; Sigma社)、ビオチン(1μM; Sigma社)、およびEGF (0.8 nM; Hoffmann-La Roche社、Basel、スイス)を含んだ無血清(SF)培地に移した。分化は、デキサメサゾン(DEX; 1μM; Sigma社)、3-メチル-イソブチル-1-メチルキサンチン(MIX; 0.5 mM; Sigma社)、およびウシインスリン(5 μg/ml; Invitrogen社)を添加することによって誘導した。集密日の4日間後(d4)には、分化が完了するまで、細胞をウシインスリン(5 μg/ml)を含んだSF培地中に保持した。分化手順の異なる時点、第0日目(密集日)を始めに、第2日目(ホルモン追加; 例えば、デキサメタゾンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチンの追加)、および10日間を最大とする分化中で、好適な細胞のアリコットを2日毎に採取した。
【0113】
RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を用いて、マウス組織または細胞の培養細胞から分離し、さらに、RNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共に、DNase-treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。全RNAを逆転写(望ましくはドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製のSuperscriptII RNaseH-逆転写酵素を用いる)し、望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix (ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社; このミックスには、製造者によれば、例えばAmpliTaq ゴールドDNポリメラーゼ、Amper ase UNG、dUTP を有するdNTP、Rox passive refer enceおよび最適化された緩衝液成分などが含まれている)を用いてTaqman分析をGeneAmp 5700配列検出システム(ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社製)上で行った。
【0114】
次のプライマー/プローブ対をTaqMan分析に使用した(マウスPrl-1配列のGenBankアクセッション番号U84411):
マウスPrl-1フォーワードプライマー(配列識別番号11):
5'- GCT GTA TTG CTG TCC ATT GTG TC -3';マウスPrl-1リバースプライマー(配列識別番号12):
5'- TCC ACC TTC AAT TAA TGCタグGG -3';マウスPrl-1Taqmanプローブ(配列識別番号13):
(5/6-FAM)- CAG GCC TTG GCA GAG CTC CGG -(5/6-TAMRA)。
【0115】
次のプライマー/プローブ対をTaqMan分析に使用した(マウスPrl-3配列のGenBankアクセッション番号NM_008975):
マウスPrl-3フォーワードプライマー(配列識別番号14): 5'- AGC TAC CGG CAC ATG CG -3'; マウスPrl-3リバースプライマー(配列識別番号15): 5'- ACG TGC TGA GGG TGG CA-3'; マウスPrl-3 Taqmanプローブ(配列識別番号16): (5/6-FAM)- TCC TCA TCA CCC ACA ACC CCA GC-(5/6-TAMRA)。
【0116】
図4 では相対RNA発現をX軸上に示す。図4A-Bおよび図4D-Fには、検査した組織はX軸上に示した。「WAT」は白色脂肪組織を参照し、「BAT」は茶色脂肪組織を参照する。 図4Cおよび図4Gでは、X軸は時間軸を表す。「d0」は第0(ゼロ)日目(実験開始日)を指し、「d2」〜「d12」は脂肪細胞分化の第2日目〜第12日目を指す。
【0117】
代謝における本発明のタンパク質の機能(作用)は、異なる組織における転写物の発現の分析、および脂肪細胞分化における役割の分析によって、本発明でさらに確証した。
【0118】
本発明のタンパク質発現を研究するため、レプチン経路に遺伝子ノックアウトを保有するマウスのような(例えば、ob/ob (レプチン) またはdb/db (レプチン受容体/リガンド) マウス) インスリン耐性および(または)糖尿病マウスモデルを使用した。 そのような糖尿病の典型的な症状を呈するマウスは肝脂質蓄積を示し、高い頻度で血漿脂質レベルを増加した(Bruning J.C. らの(1998) Mol. Cell. 2: 559-569 を参照)。
【0119】
さらに、本発明のタンパク質をコードする mRNA の発現も、高脂肪食を与えた場合に糖尿病、脂質蓄積、および血漿脂質高値の徴候を示す感受性の野生型マウス (例えば、C57Bl/6) において検討した。
【0120】
発現プロファイリングの研究は、哺乳動物におけるエネルギー代謝の制御因子としてのPRL-1相同タンパク質の特定の関連性を確認する。
Taqman分析により、Prl-1がいくつもの哺乳動物組織において発現され、その発現レベルは、野生型マウスの他の組織型と比較して茶色脂肪組織(BAT)において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、白色脂肪組織(WAT)、筋肉、肝臓、視床下部、脳、精巣、結腸、小腸、心臓、肺臓、脾臓、および腎臓においても高いことが分かっている。その上、図4Aに示したように、Prl-1は、野生型マウスの膵臓においても低いが強いレベルで発現される。 BATにおけるPrl-1の高発現により、脂質生成におけるPrl-1の重要な役割が確認される。
【0121】
例えば、Prl-1発現はWATにおいて下方制御され、野生型マウスと比較して、、絶食マウスの心臓および筋肉において上方制御される。さらに、Prl-1の発現は、野生型マウスと比較して遺伝的に誘発された肥満マウス(ob/ob)の視床下部において下方制御される(図4Bを参照)。本発明では(図4Cを参照)、Prl-1のmRNAが成熟脂肪細胞への分化中に発現されることを明らかにする。以上の点から、Prl-1タンパク質が脂質生成において役割を果たす可能性がある。
【0122】
野生型マウスの代謝活性組織における Prl-1の発現も、代謝障害を研究するために使用される異なる動物モデルにおける Prl-1の調節も、この遺伝子がエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを示唆する。この仮説は、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の発現によって支持される。
【0123】
Taqman分析により、Prl-3はいくつもの哺乳動物組織において発現されており、その発現レベルは筋肉において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、野生型マウスの心臓、脾臓、肺臓、および精巣においても高いことが分かっている。その上、Prl-3は、図4Dに記述したように、野生型マウスのWAT、BAT、肝臓、膵臓、視床下部、脳、結腸、小腸、および腎臓において低いが強いレベルで発現される。例えば、Prl-3の発現はWAT、BAT、および肝臓において上方制御され、野生型マウスと比較して、、遺伝的に誘導肥満したマウス(ob/ob)の筋肉および膵臓において、わずかながら下方制御されることを見出した。その上、Prl-3は、野生型マウスと比較して、、絶食マウスの精巣およびBATにおいて上方制御される(図4Eを参照)。高脂肪食を与えた野生型マウスでは、図4Fに示したように、Prl-3の発現はWATにおいて上方制御される。本発明では(図4Gを参照)、Prl-3のmRNAが成熟脂肪細胞への分化中に発現および上方制御されることを明らかにする。以上の点から、Prl-3 タンパク質が脂質生成において重要な役割を果たす可能性がある。
【0124】
代謝障害を研究するために使用される異なる動物モデルの代謝活性組織(例えばWATおよびBAT)において制御されたPrl-3の発現は、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の制御発現と共に、この遺伝子がエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを示唆する。
【0125】
実施例4B: 哺乳動物(ヒト)組織におけるPRL-1mRNA発現(図8)
ヒト初代脂肪細胞を(Hauner らの、(1989) J Clin Invest 84: 1663-1670)によって記載されたように成熟脂肪細胞分化した。簡潔に、細胞をDMEMと栄養素混合F12、1%のPenStrep、17μMのビオチン、33μMのパントテン酸(Pantothenat)、10%の熱不活化されていない胎児の子ウシ血清で育てた。分化の0日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12、1%のPen/Strep、17 μMのビオチン、33 μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、ヒドロコルチゾン、20 nMのヒトインスリン、0,2 nMのT3、25 nMのデキサメサゾン、250 μMのIBMX、3 μMのロシグリタゾンに変えた。分化の4日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12 1%のPen/Strep、17 μMのビオチン、33 μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、100 nMのヒドロコルチゾン、20 nMのトインスリン、0,2 nMのT3に変えた。分化手順のいくつかの時点、第0日目(密集日)および第4日目(ホルモン追加)を始めに、14日間を最大とする分化中には、好適な細胞のアリコットを採取した。RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を用いて、ヒト細胞から分離し、さらに、RNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共に、DNase-treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。
【0126】
異なるヒト組織から分離したRNAをから取得した。ドイツ・KarlsruheのInvitrogen社、オランダ・AmsterdamのStratagene社 、または米国、Ca, Palo AltoのBD Biosciences Clontech社。 (i) ヒト正常脳から取り出した全RNA(Invitrogen社、注文番号D6030-01); (ii) 成体骨格筋から取り出した全RNA(Stratagene社、注文番号735030); (iii) から取り出した全RNA成体肺臓 (Stratagene社、注文番号735020); (iv) ヒト正常脂肪組織から取り出した全RNA (Invitrogen社、注文番号D6005-01); (v) ヒト正常膵臓から取り出した全RNA (Invitrogen社、注文番号D6101-01);.(vi) 成体肝臓から取り出した全RNA (Stratagene社、注文番号735018); (vii) 成体精巣から取り出した全RNA (BD Biosciences Clontech社、注文番号64101-1); (viii) 成体胎盤から取り出した全RNA (Stratagene社、注文番号735026)。RNAをDNaseを用いて、製造者(例えば、ドイツのQiagen社)の指示および当業者であれば公知の方法に従って処理した。
【0127】
全RNAを逆転写し(望ましくはInvitrogen社、Karlsruhe、ドイツからのSuperscript II RNaseH-逆転写酵素)、Taqman分析を、望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix' (Biosystems社、Weiterstadt、ドイツ)を用いて行う。Taqman 2xPCR Master Mix には、製造者によれば、例えば AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、AmpErase UNG、UTP付きのdNTPd、GeneAmp 5700 配列検出システムのパッシブリファレンスRoxおよび最適化された緩衝剤成分(すべてBiosystems社、Weiterstadt、ドイツより取得)が含まれています。
【0128】
Taqman分析は、望ましくは下記のプライマー/プローブ ペアを用いて実施した:
ヒトPRL-1増幅用:
ヒトPRL-1フォーワードプライマー(配列識別番号17): 5'- TCG TGA AGA ACC TGG TTG TTG TA -3';ヒトPRL-1リバースプライマー(配列識別番号18): 5'- TTA ATG CTA GGG CAA CAA GTA CTG G -3';ヒトPRL-1Taqman プローブ (配列識別番号19): (5/6-FAM)- TGC TGT TCA TTG CGT TGC AGG CC -(5/6-TAMRA)。
【0129】
ヒトPRL-2増幅用:
ヒトPRL-2フォーワードプライマー(配列識別番号20): 5'- GGA GTG ACG 作用するTTG GTT CGA -3';ヒトPRL-2リバースプライマー(配列識別番号21): 5'- GCC AAT CTA GAA CGT GGA TTC CT -3';ヒトPRL-2Taqman プローブ (配列識別番号22): (5/6-FAM)- TTG TGA TGC TAC ATA TGA TAA AGC TCC AGT TGA AAA AG -(5/6-TAMRA)。
【0130】
ヒトPRL-3増幅用:
ヒトPRL-3フォーワードプライマー(配列識別番号23): 5'- AAG TAC GAG GAC GCC ATC CA -3';ヒトPRL-3リバースプライマー(配列識別番号24): 5'- CTG CTT GCT GTT GAT GGC TC -3';ヒトPRL-3 Taqman プローブ (配列識別番号25): (5/6-FAM)- TTC ATC CGC CAG AAG CGC CG -(5/6-TAMRA)。
【0131】
図8Aに示すように、ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、PRL-1が分析したすべての組織において発現されており、その発現レベルは肝臓および筋肉において最も高く、さらなる組織、 例を挙げると、肺臓、精巣、脳および胎盤において高いことを明らかにした。その上、PRL-1は、脂肪組織および膵臓において低いが強いレベルで発現される。
【0132】
代謝活性組織(肝臓および筋肉)におけるPRL-1の高発現は、を示唆するthatこの遺伝子がエネルギー恒常性において役割を果たしていることを示唆する。
【0133】
図8Bに示すように、ヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、PRL-2が分析したすべての組織において発現されており、その発現レベルは脳において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、精巣、脂肪組織、肺臓および筋肉において高いことを明らかにした。その上、PRL-2は、胎盤、肝臓および膵臓において低いが強いレベルで発現される。図8Cに示すように、PRL-2はヒト脂肪細胞の分化中に発現される。
【0134】
脂肪組織におけるPRL-2の高発現、および前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のPRL-2の発現は、この遺伝子がエネルギー恒常性において役割を演ずることを示唆する。
【0135】
図8Dに示すように、ヒト組織におけるPRL-3の発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、タンパク質が主に筋肉において発現されることを明らかにした。その上、PRL-3は、肺臓、脂肪組織、精巣、脳、胎盤、肝臓および膵臓において低いが強いレベルで発現される。図8Eに示すように、PRL-3はヒト脂肪細胞の分化中に上方制御される。
【0136】
代謝活性組織(筋肉)におけるPRL-3の高発現、および前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のPRL-3の上方制御は、この遺伝子がエネルギー恒常性において役割を演ずることを示唆する。
【0137】
実施例5: 代謝物を定量するのためのアッセイ
実施例5A: 中性脂肪とグリコーゲンの貯蔵を定量するためのアッセイ(図5)
前脂肪細胞のレトロウイルス性の感染
パッケージング細胞を、リン酸カルシウム法を用いて、マウスPrl-1導入遺伝子および選択マーカーを保有するレトロウイルス性のプラスミドpLPCXで形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しないpLPCXで感染せしめた。簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の1日前に、2mlのDMEM+10%FCSにおいて、6ウェルあたり350,000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの末端濃度)。250 μlの形質移入のための混合物は、5 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地を6ウェル当たり2mlのDMEM+10%のCSと交換した。形質移入の1日後、細胞を再び洗浄し、6ウェル当たり1mlのDMEM+10%のCS、32℃にて、5%のCO2において2日間(ウイルスコレクション)インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(末端濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて1週間選択した。その選択後、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光を用いて細胞における導入遺伝子発現を確認した。過剰発現細胞を分化のために播種した。
【0138】
3T3-L1細胞は線維芽細胞として保ち、従来の技術および前出の脂肪細胞に分化した。本発明で開示したタンパク質の役割を分析するため、中性脂肪の保管、合成および輸送を定量するための試験管内測定法を実施した。
【0139】
代謝物の分析のための細胞可溶化液の調製
集密日(D0)以来、細胞培地は48時間毎に変えた。細胞および培地は次のように培地交換に8時間先行して収穫した。培地を収集し、PBSにおいて2回洗浄した600 μlのHB-緩衝剤(0.5%ポリオキシエチレン10 tridecylethan、1mMのDTA、0.01MのNaH2PO4、pH 7.4)における溶解に先行して、細胞を2回洗浄した。70℃にて5分間の不活性化後、細胞可溶化液をBio 101系溶解マトリックスB (0.1mm シリカ ビーズ; Q-Biogene社、Carlsbad、USA)上で、2x 45秒間、4.5 (Fastprep FP120、Bio 101Ther mosavant社、Holbrock、USA)の速度で攪拌することによって調製した。溶解細胞の上澄みを、3000 rpmにて2分間の遠心分離後に収集し、後の分析のため、-80℃にてアリコットに貯蔵した。
脂質生成中の細胞の中性脂肪値における変化(図5A)
細胞可溶化液および培地のタンパク質および中性脂肪含有量の総量を、製造者の指示従って、Bio-Rad DCタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad社、Munich、ドイツ)および修飾酵素性中性脂肪キット(GPO-Trinder ; Sigma社)を用いて、6ウェルプレートにおいて同時に分析し、簡潔に、試薬の最終容量を次のように96ウェル形式に調節した: 10 μlの試料を200 μlの試薬Aを用いて5分間37℃でインキュベートした。グリセローム(初期の吸光度: 540 nm)の定量後、50 μl試薬Bを添加し、継いで、別のインキュベーションを5分間、37℃にて行った(最終吸光度: 540 nm)。グリセローム濃度および中性脂肪濃度を、標準曲線を各アッセイに含むためにグリセローム標準セット(Sigma社)を用いて計算した。
【0140】
図5Aに示すように、本発明者らは、細胞を過剰発現するPRL-1では、空ベクターで変換した対照細胞と比較して、、分化の12日目に細胞の中性脂肪値が増加することを見出した。これらの実験における約20%の中性脂肪値の増加は有意である。例えば、3T3-L1細胞におけるPPARガンマ-1のような脂質生成の既知の制御因子を過剰発現させると、対照細胞と比較して、中性脂肪含有量が20〜30%増加することが繰り返し観察される。
【0141】
その上、ヒトSGBS細胞におけるPRL-1の過剰発現(Wabitschらの、2001)により、空ベクターで変換した対照細胞と比較して、分化の12日目には細胞中の中性脂肪値にさらに顕著な表現型(増加)がもたらされた。
【0142】
脂質作成中の細胞の血糖値における変化(図5B)
細胞可溶化液および培地は、タンパク質およびグリコーゲン総含有量を96ウェルプレートにおいて製造者の指示に従ってBio-Rad DCタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad社、Munich、ドイツ)およびHoffmann-LARoche社(Basel、スイス)からの酵素性でんぷんキットを用いて同時に3通り分析した。10-μlの試料を、20-μlのアミログルコシダーゼ溶液を用いて、15分間、60℃にて、グリコーゲンをグルコースに消化するためにインキュベートした。そのグルコースを、100 μlの蒸留水および100 μlの酵素補助因子緩衝剤および12μlの酵素緩衝剤(ヘキソキナーゼおよびグルコースリン酸脱水素酵素)を用いてさらに代謝する。背景(基礎)血糖値を、アミログルコシダーゼを添加しない複製プレートから減算することによって決定する。最終吸光度は340 nmとした。HB-緩衝剤をブランクとして用い、そしてグリコーゲンの標準曲線(Hoffmann-LARoche社)を各アッセイの一部とした。試料中のグリコーゲン含有量は、標準曲線を用いて算出した。
【0143】
図5Bに示したように、発明者らは、細胞を過剰発現するPrl-1において、脂質生成の間中、細胞のグリコーゲンレベルが増加することを見出した。細胞中のグリコーゲンレベルは、グリコーゲンの代謝回転が高いため、中性脂肪値に比べて可変性がある。グルコースは細胞によって急速に取り込み、そしてグリコーゲン形態において貯蔵する。このエネルギー貯蔵は、細胞の代謝要求に対する最初の迅速応答として使用される。分化の12日目には、細胞内のグリコーゲンレベルには100%以上の増加が見られ、Prl-1が細胞の中枢代謝経路に影響を及ぼすことを示す。
【0144】
実施例5B: 遊離脂肪酸とグルコースの取り込みを定量するためのアッセイ
前脂肪細胞のレンチウイルス性感染
パッケージング細胞を、リン酸カルシウム法を用いて、マウスPrl-1導入遺伝子(マウスとヒトのアミノ酸配列間の100%同一性!)および選択マーカーを保有するレトロウイルス性のプラスミドpLenti6/V5-DESTで形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しないpレンチ6/V5-DESTで感染せしめた。簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の2日前に、8mlのDMEM + 10 % FCSにおいて、T75フラスコあたり2800000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの末端濃度)。2μlの形質移入のための混合物は、20 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地をT75フラスコ当たり8 mlのDMEM+10%のCSと交換した。ウイルスコレクションの細胞を、37°Cにて、5%CO2で2日間インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(末端濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(SGBS)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を、5 μg/mlのブラストサイジンを用いて、少なくとも2週間選択した。その選択後、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光を用いて細胞における導入遺伝子発現を確認した。過剰発現細胞を分化のために播種した。
【0145】
SGBS細胞は線維芽細胞として維持し、従来の技術に記載しかつ前出した脂肪細胞に分化した(Haunerらの、2001も参照)。本発明において開示したタンパク質の役割を分析するため、遊離脂肪酸、グルコースの取り込みおよび中性脂肪の貯蔵(上記を参照)を定量するための試験管内試験法を実施した。
【0146】
分化した脂肪細胞による細胞内の遊離脂肪酸取り込み(SGBS細胞); (図9A)
脂質生成(D12)の末端段階中、細胞の長鎖脂肪酸を血漿膜全域に輸送する能力を分析した。脂肪酸の細胞輸送のため、Abumradらの、((1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 6008-6012)の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。要約すれば、血清飢餓に先行して、細胞をPBSで3回洗浄した。これに継いで、0.1%のFCSで補充したKRBH緩衝剤において、2.5時間、37℃にてインキュベートした。外来性遊離脂肪酸の取り込みは、非放射性オレイン酸および5 mMのグルコース存在下で、1μCi/ウェル/mlの最終活性において血清アルブミンに対して複合型の(3H)オレイン酸(NEnLife Sciences社)を含んだ同位体の培地の追加により、30分間、室温(RT)にて開始した。血漿膜全域で能動輸送(AT)の不在下における、受動拡散(PD)の算出するため、グルコース遊離培地(Sigma社)における20 mMのフロレチンを30分間、室温(RT)にて添加した。すべてのアッセイは、二通りのウェルにおいて実施した。能動輸送を終結するため、グルコース遊離培地における20 mMのフロレチンを細胞に添加した。細胞を1ml 0.1NのNaOHに溶解し、そして標準Biuret方法(タンパク質アッセイ試薬; Bio-Rad社)を用いて各ウェルのタンパク質濃度を評価した。
【0147】
本発明者らは、PRL-1を過剰発現する細胞の原形質膜に渡って存在する外因性脂肪酸の能動輸送が、対照細胞と比較して、脂質生成の第9日目およびその他の日(d7およびd12; データ図示せず)で大幅に高まることを見出した(図9A)。これは、これらの細胞における中性脂肪含有量の増加と一致するものである(を参照上記)。
【0148】
分化した脂肪細胞による細胞グルコースの取り込み(SGBS 細胞); (図9B)
グルコース取り込みの定量に関しては、0.1%のBSAおよび0.5 mMのグルコースで補充したKrebs-Ringer-Bicarbonat-Hepes緩衝剤(KRBH; 134 mMのNaCl、3.5 mMのKCl、1.2 mMのKH2 PO4、0.5 mMのMgSO4、1.5 mMのCaCl2、5 mMのNaHCO3、10 mMのHepes、pH 7.4)、における2.5時間、37℃にての血清飢餓に先行して、PBSを用いて細胞を3回洗浄した。インスリン刺激グルコース取り込みに関しては、20nMのヒトインスリン(Sigma社; キャリア: 10 mM HCl; 1% BSA)を用いて45分間、37℃にて細胞をインキュベートした。基底グルコース取り込みはキャリアのみで決定した。0,4 μCi/ウェル/mlの最終活性における代謝不可能な2-デオキシ-3H-D-グルコース(NEN Life Science社、Boston、USA)を30分間、37℃にて添加した。背景放射能の算出対しては、25 μMのサイトカラシンB (Sigma社)を使用した。すべてのアッセイは、3通りのウェルにおいて実施した。反応を終結するため、細胞を氷のように冷たいPBSで3回洗浄し、320 μl、0.1NのNaOHにおいて溶解した。各ウェルのタンパク質濃度をBio-Rad DCタンパク質検定用試薬(Bio-Rad)を用いて評価し、そして細胞可溶化液のシンチレーションカウンティング(計数)を5 mlのUltima-gold反応混液(Packard Bioscience社、Groningen、Nether lands)中で実施した。
【0149】
図9Bに示すように、Prl-1を過剰発現するSGBS細胞のインスリン刺激グルコースの取り込みは、脂質生成中に約100%増加される。この効果は、分化する脂肪細胞(d9)において既に見ることができるが、完全に分化した脂肪細胞(d12、データ図示せず)にも当てはまる。このグルコースの増加、すなわち細胞のエネルギー取り込みの増加が、SGBS分化中の本発明者らがが観察した中性脂肪値の増加の理由である可能性が最も高い(上述)。Prl-1は、基底グルコースの取り込みに有意な影響を及ぼさないように見えるが、脂肪細胞のグルコース取り込みには明確に影響を及ぼす。
【0150】
総合すると、Prl-1の過剰発現は、SGBS細胞において実施したすべての3アッセイで、外因性遊離脂肪酸およびグルコース、さらには、中性脂肪の貯蔵の代謝上に効果のあることを示し、Prl-1が糖尿病および関連代謝障害の治療のための興味深い有望な薬物標的であることを示す。
【0151】
実施例6: Prl-1のLOF脂肪細胞の脂質貯蔵、合成および輸送を定量するためのアッセイ(図6)
RNAi技術による3T3-L1脂肪細胞の機能低下
Prl-1発現を安定して抑制するため、標的特異的短い干渉RNA (short interfering RNA)の構成物を発現することを目的として、BrummelkampらによるヒトhH1プロモーターの制御下で、3T3-L1前脂肪細胞をレトロウイルス性感染によって遺伝子操作した(Science 2002、Vol 296、p. 550-553)。 次のPrl-1特異的RNAi 配列を使用した: AGG ATT CCA ATG GTC ATA G (配列識別番号14)。
【0152】
前脂肪細胞のレトロウイルス性の感染
パッケージング細胞を、ヒトhH1プロモーターおよび選択マーカーの制御下、特異的RNAi構成物を保有するレトロウイルス性のプラスミドpLPCXで、リン酸カルシウム手法を用いて形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しない同じベクターで感染せしめた。
【0153】
簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の1日前に、2mlのDMEM+10%FCSにおいて、6ウェルあたり350,000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの最終濃度)。250 μlの形質移入のための混合物は、5 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地を6ウェル当たり2mlのDMEM+10%のCSと交換した。形質移入の1日後、細胞を再び洗浄し、6ウェル当たり1mlのDMEM+10%のCS、32℃にて、5%のCO2において2日間(ウイルスコレクション)インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(最終濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて1週間選択した。
【0154】
3T3-L1細胞は線維芽細胞として保ち、従来の技術および前出の脂肪細胞に分化した。発現の低下は、定量的rtPCR法による検証では分化中60%以上であった。本発明で開示したタンパク質の役割を分析するため、脂質の保管、合成および輸送を定量するための試験管内測定法を実施した。
【0155】
脂質生成中の脂質の合成(図6A)
脂質生成中(第6日目)、脂質を代謝する能力に関して細胞を分析した。脂質合成のため、Jensenらの、((2000) JBC 275: 40148)の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。細胞は、0.1%のFCSで補充したKrebs-Ringer -Bicarbonate-Hepes緩衝剤(KRBH; 134 nMのNaCl、3.5mMのKCl、1.2mMのKH2PO4、0.5mMのMgSO4、1.5mMのCaCl2、5mMのNaHCO3、10 mMのHepes、pH 7.4)における2.5時間、37℃にての血清飢餓に先行して、PBSで3回洗浄した。インスリン刺激脂質合成に関しては、細胞を1μMのウシインスリン(Sigma社; キャリア: 0.005 NのHCl)で45分間、37℃にてインキュベートした。基礎脂質合成は、キャリアのみを用いて確定した。 14C(U)-D-グルコース(NEN Life Sciences社) (1μCi/ウェル/mlの最終活性における)を5mMのグルコースの存在下で30分間37℃にて添加した。背景放射能の算出対しては、25 μMのサイトカラシンB (Sigma社)を使用した。すべてのアッセイは、3通りのウェルにおいて実施した。反応を終結するため、細胞を氷のように冷たいPBSで3回洗浄し、1ml 0.1NのNaOHにおいて溶解した。各ウェルのタンパク質濃度は、標準Biuret方法(タンパク質アッセイ試薬; Bio-Rad社)を用いて評価した。全脂質は、Insta-Fluorシンチレーション反応混液(Packard Bioscience社)において一晩抽出後に水溶性の位相から分離し、継いでシンチレーションカウンティングを行った。
【0156】
結果は、Prl-1のLOF細胞はインスリンで刺激されると、対照群と比較して、外因性グルコースからの脂質合成において効果の弱いことを明らかにする(図6A)。Prl-1のLOF細胞における脂肪酸エステルのレベルは、対照細胞と比較して、脂質生成の第12日目に相当に増加した(図6B)。
【0157】
実施例7: ヒト組織における本発明のタンパク質の転写物の発現差異の分析
実施例4 において記載したように、ヒト初代脂肪組織からのRNA調整を行った。ターゲット作成、ハイブリダイゼーションおよびスキャニング操作を製造者説明書の記載に従って実施した(Affymetrix社、Santa Clara、USAから取得したAffymetrix技術マニュアルを参照)。
【0158】
図7A〜7Bでは、X軸は時間軸に相当し、これらの図で示したのは、脂肪細胞分化の0日目および12日目である。Y軸は蛍光強度を表す。ヒト腹部由来の一次脂肪細胞分化およびヒト脂肪細胞株(SGBS)分化を用いたタンパク質チロシンホスファターゼType-IVA、メンバー1(PRL-1)遺伝子の発現分析(Affymetrix GeneChips を用いた) は、脂肪細胞におけるヒトPRL-1遺伝子の発現差異を明確に示す。さまざまな非依存性の実験を行った。さらに、本実験は、PRL-1転写物(図7A〜B を参照) が、分化中には12日目と比較して0日目に最も豊富なであることを示す。
【0159】
このように、前脂肪細胞が成熟脂肪細胞に分化するためには、PRL-1タンパク質が著しく減少される必要がある。以上の点から、前脂肪細胞におけるPRL-1には、脂肪質の分化を阻害する能力が備わっている。以上の点から、PRL-1タンパク質は、ヒト代謝の調節、特に脂質生成の調節において重要な役割を果たすことが可能であるので、これらのタンパク質は肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群において重要な役割を果たす可能性がある。
【0160】
実施例 8: Prl-1、Prl-2、またはPrl-3遺伝子導入マウスの作成および分析
遺伝子導入動物の作成
当業者であれば公知のような標準プロトコルを用いてマウスPrl-1、Prl-2、およびPrl-3 cDNAをマウス茶色脂肪組織(BAT)から分離した。RT-PCR により、cDNAを増幅し、そして点変異をcDNAに導入した。
【0161】
結果として得られた変異型cDNAをに好適な遺伝子導入発現ベクターにクローニングした。導入遺伝子を、受精したマウス胚(望ましくは菌株C57/BL6/CBAF1(Harlan Winkelmann))の雄性前核へ微量注入した。注入した胚は偽妊娠の仮親マウスへ移した。遺伝子導入創始者をPCR分析によって検出した。構成物を含んだ2つの非依存性遺伝子導入マウスラインを樹立し、C57/BL6の背景に保持した。手短に、分析用のF1マウスを作成するために、初代動物をC57/BL6マウスと戻し交配させた。遺伝子導入マウスをC57/Bl6背景上へ連続的に繁殖せしめた。本発明のタンパク質の発現は、上記のようにTaqman分析によって分析することができ、当業者であれば周知のように、マウスのさらなる分析を行うこともできる。
【0162】
本発明のために、当事者にとっては当然のことだが、本明細書の至る所で言及した任意の機能の任意の組み合わせをここに明示的に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】ショウジョウバエPRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)変異体のエネルギー貯蔵代謝物(ESM; 中性脂肪(TG)およびグリコーゲン)含有量を示す。
【図2】変異型PRL-1(Gadflyアクセッション番号)遺伝子座の分子構造を示す。
【図3A】ヒトPrl-1の核酸配列を示す(配列識別番号1)。
【図3B】ヒトPrl-1のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号2)。
【図3C】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型1を示す(配列識別番号3)。
【図3D】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(1文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号4)。
【図3E】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型2を示す(配列識別番号5)。
【図3F】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(2文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号6)。
【図3G】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型3を示す(配列識別番号7)。
【図3H】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(3文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号8)。
【図3I】ヒトPrl-3の核酸配列を示す(配列識別番号9)。
【図3J】ヒトPrl-3のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号10)。
【図4A】野生型マウス組織におけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4B】異なるマウスモデルにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4C】3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4D】野生型マウス組織におけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4E】異なるマウスモデルにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4F】食餌制限マウスと比較した高脂肪食野生型マウスにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4G】3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図5A】Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値の上昇を示す。
【図5B】Prl-1を過剰発現する細胞におけるグリコーゲンレベルの上昇を示す。
【図6A】Prl-1のLOF細胞における脂質合成のレベルの減少を示す。
【図6B】Prl-1のLOF細胞における脂肪酸(FA)エステル化のレベルの上昇を示す。
【図7A】前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の腹部由来の一次脂肪細胞におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【図7B】前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のヒト脂肪細胞株におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【図8A】ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8B】異なるヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8C】前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8D】異なるヒト組織におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8E】前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図9A】SGBS細胞を過剰発現するPrl-1による遊離脂肪酸取り込みの上昇を示す。
【図9B】SGBS細胞を過剰発現するPrl-1によるグルコースの取り込みの上昇を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重調節、例えば、限定するものではないが、肥満症のような代謝疾患または機能障害、さらには、糖尿病、例を挙げると2型糖尿病のような関連障害に関連する疾患および障害の診断、研究、予防および治療における、哺乳動物のタンパク質チロシンホスファターゼ(Prl-1、Prl-2、またはPrl-3; PRL-1相同タンパク質と呼ばれる)をコードする核酸配列の使用法、およびそれによってコード化されたポリペプチドに関するものであり、またPrl-1、Prl-2、またはPrl-3の使用またはエフェクターに関するものでもある。
【0002】
エネルギー消費量に対して摂取熱量がアンバランスであるというエネルギー不均衡に関連するヒトおよび動物代謝のさまざまな代謝疾患、例えば肥満や体重の激減が存在する。肥満は世界に最も蔓延している代謝障害の1つであり、重大な健康問題として西側諸国にとってますます問題となっているヒトの疾病であるが、その本質は依然としてほとんど理解されていない。肥満とは、理想体重の20%以上を超える体重として定義され、多くの場合著しい健康障害をもたらす。肥満は、心血管疾病、高血圧、2型糖尿病、高脂血症のリスクの増大および高い死亡率に関連する。肥満に悩む個人は、病気にかかる深刻なリスクを抱えている上に、多くの場合、社会的に孤立している。
【0003】
肥満は、遺伝的要因、代謝因子、生化学的要因、心理学的要因、および行動要因によって影響を受け、そして非インスリン依存型糖尿病、中性脂肪の増加、炭水化物接合エネルギーの増加および低エネルギー消費のような異なる原因に起因し得る。そのような事情から、肥満は持続可能な好ましい臨床結果を達成するために、さまざまな分野で取り組まなくてはならない複合障害である。肥満は単一の障害として考慮されるべきではなく、(潜在的)複合原因による症状の混成群であると考慮されるべきであり、また、空腹時の血中インスリン値の上昇および経口グルコース摂取に対する過度のインスリン反応も特徴とする (Kolterman O.G. らの(1980) J. Clin. Invest 65: 1272-1284)。2型糖尿病における肥満症の明らかな関与が確認されている (Kopelman P.G.、(2000) Nature 404: 635-643)。
【0004】
高脂血症および遊離脂肪酸の上昇は、肥満症、インスリン耐性を始めとしたさまざまな疾患の連鎖として定義される代謝症候群と明確に相関する。これは多くの場合、同一患者において生じ、そして2型糖尿病および心疾患の発生の主要な危険因子である。脂質値および血糖値のコントロールが、2型糖尿病、心臓病、およびその他の代謝症候群を治療するために必要であることが示されている (例えば、Santomauro A. T.らの (1999) Diabetes、48: 1836-1841および Lakka H.M らの (2002) JAMA 288: 2709-2716 を参照)。
【0005】
膵臓β細胞は、血糖値に応答してインスリンを分泌する。他のホルモンの中でも、インスリンは特に燃料代謝の調節において重要な役割を演ずる。インスリンはグリコーゲンおよび中性脂肪の貯蔵およびタンパク質の合成につながる。グルコースの筋肉および脂肪細胞への流入はインスリンによって促進される。真性1型糖尿病または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)で苦しむ患者では、自己免疫性の発作のため、β細胞が破壊されている(Pozzilli & Di Marioの、(2001) Diabetes Care 8: 1460-1467)。 残存膵島細胞によって産生されるインスリンの量は低すぎるので、血糖値の上昇を結果としてもたらす(高血糖症)。2型糖尿病においては、肝臓および筋細胞の正常血中インスリン値に反応する能力が失われる(インスリン耐性)。 高血糖値は(さらには高血中脂質値も)、順次、β細胞機能の機能障害およびβ細胞アポトーシスの上昇の原因となる。
【0006】
糖尿病は身体に深刻な障害を引き起こす疾病である。その理由は、一般的な糖尿病の薬物では血糖値の昇降の発生を完全に防止するほど十分に制御することができないためである。正常範囲外の血糖値は有毒であり、例えば、腎臓病、網膜症、末梢神経障害および末梢性血管障害のような長期的な合併症の原因となる。また、糖尿病患者にとって発症の危険性が極めて高い肥満症、高血圧症、心臓病および高脂血症のような関連状態が多く存在している。
【0007】
糖尿病患者の低下したクオリティオブライフはもとより、糖尿病の治療とその長期的な合併症は医療制度にとって莫大な財政負担であり、その傾向は強まっている。このように1型および2型糖尿病の治療、さらには、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)のため、おいて、膵臓インスリン産出β細胞の再生を誘導する因子を同定することが当分野では強く要求されている。これらの因子は、内分泌機能が損なわれた膵臓の機能を正常に回復することができ、1型糖尿病、2型糖尿病、またはLADAの発生または進行を防止することさえできる。
【0008】
代謝症候群(症候群x、インスリン耐性症候群、死の四重奏) のコンセプトは、1966 年にCamus によって初めて記載され、1988年にReaven によって再導入された (Camus J.P. の (1966) Rev Rhum Mal Osteoartic 33: 10-14; Reaven G.M. らの (1988) Diabetes、37: 1595-1607)。今日、代謝症候群は、高血圧、腹部肥満、中性脂肪高値および空腹時血糖値、さらには、HDL コレステロール低値などの心血管系危険因子の集積として一般的に定義されている。インスリン耐性は代謝症候群の発生の危険を大幅に増加する (Reaven G.、(2002) Circulation 106: 286-288)。代謝症候群は多くの場合、2型糖尿病および心疾患の発生に先行する (前出の Lakka H.M.らの2002)。
【0009】
食物摂取と体重のバランスを調節する分子因子は完全に理解されていない。たとえ、レプチンまたはペルオキシソーム増殖活性の受容体ガンマ活性化補助因子のような体重/重量を調節する恒常性システムに影響を及ぼすはずの候補遺伝子についての記述がいくつかあるとしても、肥満調節または体重/重量調節に影響を及ぼす特有の分子機構および(または)分子は知られていない。しかも、マウスにおいて肥満症を結果としてもたらすさまざまな単一遺伝子の突然変異が記載されており、肥満症の病因における遺伝的な因子を意味づけている。(FriedmanおよびLeibelの1990、Cell 69: 217-220)。肥満マウスでは、単一遺伝子の突然変異(肥満)が、糖尿病を伴う深刻な肥満症を結果としてもたらす (Friedman J.M. らの(1991) Genomics 11: 1054-1062)。
【0010】
以上の点から、本発明の根底にある技術的問題は、体重調節および(または)エネルギー恒常性経路に影響を及ぼす(病理学的な)代謝状態の調節のための手段と方法を提供することにあった。当該技術的問題に対する解決は、請求項において特徴付けられた実施例を提供することによって達成する。
【0011】
従って、本発明は、体重調節における新規機能を有する遺伝子、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症に関連するものである。本発明では、体重、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症の調節、さらには、真性糖尿病、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症(異脂肪血症)、胆石症、および肝臓線維症のような関連疾患に関与する特定の遺伝子を開示する。特に本発明では、上述したそれらの条件に関与しているものとしてヒトPRL-1相同遺伝子を記述する。
【0012】
これまでは、本発明のタンパク質または相同タンパク質がエネルギー恒常性の調節および体重調節および関連障害に関与することは記載されておらず、従って上記のような代謝疾患および機能障害およびその他の疾患における機能は記述されていない。
【0013】
本タンパク質、ヌクレオチド配列、および方法について以下に説明するが、記載した特定の方法、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬によって本発明が限定されるものではなく、改変し得ることは当然のことながら共通認識とする。また、本詳細書で使用した用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求範囲のみに限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも当然のことながら共通認識とする。本明細書で使用した全ての専門用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有するものとする。本明細書中に記載した方法および材料に類似または等価な方法および材料は、本発明の実践または検査で用いることができるが、好適な方法、装置、および材料はここに記載する。本明細書で言及する全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物中で報告されている細胞株、ベクターおよび方法論について説明および開示する目的で、ここに引用することをもって本明細書の一部となす。本明細書のいかなる開示内容も、本発明がこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0014】
本発明は、Prl-1、Prl-2またはPrl-3のようなPRL-1(GadFly アクセッション番号CG4993) 相同タンパク質(本明細書中では「本発明のタンパク質」と呼ぶ)がエネルギー恒常性および脂肪代謝、特に中性脂肪、および本発明において開示したタンパク質を同定およびコードするポリヌクレオチドの代謝と保管を調節することを開示する。また、本発明は、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを作り出すためのベクター、宿主細胞、および組換え方法に関連するものでもある。また、本発明は、肥満症、糖尿病および(または)代謝症候群、を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の診断、研究、予防、および治療における、これらの化合物およびそのエフェクター/修飾因子、例えば、アンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイム、アプタマー、ペプチドまたは当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを認識する低分子量有機化合物のような抗体、生物活性核酸の使用法にも関するものである。
【0015】
タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)およびタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)によってそれぞれ触媒したタンパク質チロシンリン酸化および脱リン酸は、多くの重要な真核生物細胞シグナル伝達経路において重要なスイッチである。PTKおよびPTPasesの作用は、細胞タンパク質チロシンリン酸化のステータスを決定し、細胞増殖、分化、生存性および機能的活性化の調節に極めて重大な役割を果たす動的平衡状態にある。
【0016】
タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)は、タンパク質からリン酸基を除去することによりシグナル伝達経路において重要な調節コンポーネントとしての機能を果たす酵素の大ファミリーを形成する。PTP活性の不適当な調節は、多くのヒト疾患の発生に寄与する不適切なレベルのチロシンリン酸化につながる。例えば、限定するものではないが、PRL PRL-2、PRL-3、などのようなホスファターゼのPRLファミリーの高い発現は、いくつもの実験手法において発癌効果を持つことが明らかにされており、ヒトの悪性腫瘍の原因となっている可能性がある。また、PRLホスファターゼは、PTP (CAAX)またはPTP4Aとも表現される。チロシン残基のリン酸塩モノエステルを加水分解するPTPは、すべて共通の活性部位モチーフを共有し、3グループに分類される. それらのグループは、受容体様PTP、細胞内PTP、および二重特異性PTPであり、セリン残基およびトレオニン残基、さらには、チロシンにて脱リン酸することができる。
【0017】
第4クラスのメンバーとしての再生するラット肝臓から取り出したPTPは、PRL- I (再生肝臓-1のホスファターゼ)として、Diamond ら(Diamond R.H. らの、(1994) Mol Cell Biol. 14: 3752-3762)によって記載された。DiamondらによってPrl-1と命名された本遺伝子は、多くの前初期の遺伝子の1つであり、主に核において発現された。Prl-1は、ATF/CREBファミリーのメンバーに近縁のATF-7、ベーシックロイシンジッパーを試験管内で脱リン酸する(Peters C.S. らの、(2001) J. Biol Chem 276: 13718-13726)。
【0018】
試験管内プレニル化スクリーニングを用いて、Catesらは、哺乳動物のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ素によって試験管内でファルネシル化した、Prl-1ホモログをコードする2つのヒトcDNAを分離し、PTP(CAAX1)およびPTP(CAAX2)(Prl-2)と命名した。上皮細胞におけるこれらのPTP過剰発現は、培養細胞において形質転換した表現型を引き起こし、ヌードマウスにおける腫瘍成長の原因となった(Cates C.A.らの、(1996) Cancer Lett 110: 49-55)。MatterらはPTP4A3をコードするcDNAを同定し、Prl-3と名付けた。推定Prl-3タンパク質は、Prl-1(PTP4A1; 601585)と76%同一であり、マウスPrl-3と96%同一である(Matter W.F. らの、(2001) Biochem Biophys Res Commun. 283: 1061-1068)。成人組織においては、PRLは主に骨格筋に発現され、より低い発現レベルが脳(PRL-1)、肝臓(PRL-2)、心臓(PRL-3)および膵臓(PRL-3)において検出可能である。
【0019】
よって、PRL-1相同タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、本発明のタンパク質のヒトPRL-1ホモログをコードする核酸である(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)。
【0020】
本発明は、エネルギー恒常性および中性脂肪の代謝調節に寄与するポリペプチドをコードする核酸分子に特に関連するものであり、その点で、当該核酸分子は下記から成る。
(a) ショウジョウバエPRL-1、ヒトPRL-1ホモログ(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)のヌクレオチド配列、および(または)それに対して相補的な配列、
(b) 50℃にて、1 x SSC および 0.1% の SDS を含む溶液中で(a) の配列に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、
(c) 遺伝暗号の変性内における(a)または(b)の配列に対応する配列、
(d) ポリペプチドをコード化する配列であって、少なくとも85%、望ましくは少なくとも90%、より望ましくは少なくとも95%、より望ましくは少なくとも98%および最大で99,6%までの同一性を、PRL-1相同タンパク質、望ましくはヒトPRL-1ホモログ(具体的にはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3アイソフォーム)のアミノ酸配列に対して持つ配列。
(e) 突然変異によって(a)〜(d) の核酸分子と異なる配列であり、コードされたポリペプチドにおいて当該突然変異が改変、削除、複製および(または)早期停止を引き起こす配列、または
(f) 長さが15〜25塩基、望ましくは25〜35塩基、より望ましくは35〜50塩基および最も望ましくは少なくとも50塩基長を有する(a)〜(e)の任意のヌクレオチド配列の部分的配列。
【0021】
本発明は、PRL-1相同タンパク質およびそれをコードするポリヌクレオチドが、中性脂肪保管の調節に関与し、よってエネルギー恒常性に関与するという知見に基づくものである。 本発明では、肥満症、真性糖尿病および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症または肝臓線維症のような関連障害の診断、研究、予防、または治療のためのPRL-1相同ポリペプチドおよびポリヌクレオチド、さらには、その修飾因子/エフェクターから成る組成物の使用法を記述する。
【0022】
従って、本発明は、体重調節、エネルギー恒常性、代謝、および肥満症、当該遺伝子の断片、当該遺伝子またはその断片によってコードされたポリペプチドコード、および当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを認識するエフェクター、例えばアンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイム、アプタマー、ペプチドまたは低分子量有機化合物のような抗体、生物学的に活性な核酸において新規機能を有する遺伝子に関するものである。
【0023】
キイロショウジョウバエのようなモデル個体のゲノムを操作およびスクリーニングする能力は、遺伝子、細胞プロセス、および経路の有意な進化的保存に起因する、より複雑な脊椎動物個体に対する直接的な関連性を有する生物学的および生化学的プロセスを分析するための強力なツールを提供する(例えば、Adams M. D.らの、(2000) Science 287:2185-2195を参照)。モデル個体における新規遺伝子機能の同定は、哺乳動物(ヒト)における反応経路の解明、そしてその調整方法の解明に直接的に貢献する。病理モデル(例: 肥満症を始めとする代謝症候群の徴候としての中性脂肪値の変化)とハエ遺伝子の修飾発現との関係によって、ヒト相同分子種と特定のヒト疾病との関連を同定することができる。
【0024】
一実施例では、フォーワード遺伝子スクリーニングを、既知の遺伝子の異所性発現に起因する変異表現型を示すハエにおいて実施されている (St Johnston D.、(2002) Nat Rev Genet 3: 176-188; Rorth P.、(1996) Proc Natl Acad Sci U S A 93: 12418-12422を参照)。本発明において、発明者らは遺伝子スクリーニングを用いて、中性脂肪値の著しい変化が反映される体重の変化の原因となるPRL-1相同遺伝子の突然変異を同定した。
【0025】
肥満者は、主に中性脂肪含有量の著しい増加を示す。中性脂肪は細胞における最も効果的なエネルギー貯蔵場所である。エネルギー恒常性において機能をともなう遺伝子を分離するために、数千の専売的および公的に提供されているEPラインの中性脂肪含有量を長期にわたる摂食期間後に検査した(詳細は実施例および図を参照)。さらなる分析のための好ましい候補として中性脂肪含有量が顕著に変化したラインを選択した。遺伝子機能の損失に起因する中性脂肪含有量の変化は、中性脂肪として貯蔵されたエネルギー量を制御する用量依存的な態様で、エネルギー恒常性における遺伝子活性を示唆する。
【0026】
本発明において、同一遺伝子型を有するハエのプールの中性脂肪含有量を、6日間の食餌の後、中性脂肪測定法を使用して分析した。ショウジョウバエ系統HD-EP(2)20261のベクター統合に対してホモ接合性の雄バエを、これらのハエの中性脂肪含有量およびグリコーゲン含有量を測定するアッセイで分析し、その詳細を実施例部に図示した。中性脂肪およびグリコーゲン含有量の分析結果を図1に示す。
【0027】
EP ベクター (本明細書中ではHD-EP(2)20261) 統合に局在するゲノムDNA配列を分離した。それら分離したゲノム配列を用いて、Berkeleyショウジョウバエゲノムプロジェクト(GadFly; FlyBase (1999) Nucleic Acids Research 27:85-88も参照)のような公共データベースをスクリーニングし、それによってベクター統合部位、および実施例の項においてより詳細に記載した対応遺伝子を同定した。本遺伝子の分子構造を図2に示した。
【0028】
それによってコード化された、中性脂肪代謝の調節機能を有するPRL-1ショウジョウバエ遺伝子およびタンパク質は、公的に利用できる配列データベースで分析し (詳細は実施例を参照)、哺乳動物のホモログを同定した。
【0029】
エネルギー恒常性における哺乳動物ホモログの機能(作用)は、異なる組織における転写物の発現の分析、および脂肪細胞分化における役割の分析によって、本発明でさらに確証した。本発明の一実施例では、PRL-1遺伝子の哺乳動物ホモログがエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを明らかにした(詳細は実施例を参照)。
【0030】
脂肪細胞分化モデルを用いて、本発明者らは、細胞を過剰発現するPrl-1では、中性脂肪値が分化12日目に大幅に増加することを見出した(図5Aを参照)。また、この増加は、例えば、PPARガンマ-1のような脂質生成の既知の制御因子を用いた制御実験においても見られた。
【0031】
ヒトSGBS細胞では、Prl-1過剰発現は、分化した脂肪細胞への遊離脂肪酸およびグルコースの取り込みの著しい増加をもたらした遊離脂肪酸およびグルコースは、中性脂肪またはグリコーゲンのように脂肪細胞によって代謝および貯蔵され得る。
【0032】
細胞中のグリコーゲンレベルは、グリコーゲンの代謝回転が高いため、中性脂肪値に比べて可変性がある。グルコースは細胞によって急速に取り込み、そしてグリコーゲン形態において貯蔵する。このエネルギー貯蔵は、細胞の代謝要求に対する最初の迅速応答として使用される。脂肪細胞の分化12日目には、細胞内グリコーゲンレベルがPrl-1を過剰発現する細胞において大幅に増加された(図5Bを参照)。
【0033】
さらに、本発明者らは、Prl-1の機能低下(LOF)細胞では、インスリン刺激による脂質の合成レベルが、対照群と比較して、、分化の6日目に大幅に減少することを見出した(図6Aを参照)。脂肪細胞分化の12日目には、脂肪酸エステル化レベルは、Prl-1のLOF細胞における遊離脂肪酸の取り込み後、対照細胞と比較して、、上方制御される(図6Bを参照)。
【0034】
これらの知見は、Prl-1が細胞における中枢代謝経路に影響を及ぼすことを示す。
【0035】
マイクロアレイは、生体分析化学において日常的に用いられる分析ツールである。マイクロアレイは、固形担体の表面上に分布され、そして該表面に安定して関連する分子を持つ。用語「マイクロアレイ」は、基質上での複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、またはその他の化合物の配列構成を指す。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および(または)抗体のマイクロアレイが作り出されており、遺伝子発現の監視、薬剤の発見、遺伝子シーケンシング、遺伝子マッピング、細菌の同定、およびコンビナトリアルケミストリーのような種々の用途において使用されている。マイクロアレイがとりわけ使用される一領域は、遺伝子発現分析の領域である(実施例7を参照)。アレイ技術を用いて、単一の多型遺伝子または多数の関連遺伝子発現または無関係遺伝子発現プロファイルを研究することができる。単一遺伝子発現を検討する場合には、アレイを用いて特異的な遺伝子またはその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを検討する場合、アレイは、組織特異的であり、毒物試験法において検査する物質によって影響を受け、シグナル伝達カスケードの一部であり、ハウスキーピング機能を実行し、または特異的特定の遺伝的な素因、状態、疾病、または障害に関連する遺伝子を同定するためのプラットフォームを提供する。
【0036】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(例えば、Brennan T.M.、(1995) USA特許第US5474796号; Schena M. らの(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 10614-10619; Baldeschwieler らの(1995) PCT 出願第号WO9525116; Shalon T.D. and Brown P.O.、(1995) PCT 出願第WO9535505号; Heller R.A. らの(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 2150-2155; Heller M.J.およびTu E.、(1997) USA特許第US5605662号などを参照)。各種マイクロアレイは公知であり、Schena M.、ed. (1999);DNAMicroarrays: A Practical Approach、Oxford University Press、London において十分に記述されている。
【0037】
本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片は、マイクロアレイにおけるエレメントとして使用することができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。 これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退を監視し、疾病治療における薬剤の活性を開発及び監視することができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロファイルを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に有効的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0038】
マイクロアレイ分析によって判定されたように、タンパク質チロシンホスファターゼType-IVA、メンバー1(PRL-1)は、ヒト一次脂肪細胞において発現差異を示す。このように、PRL-1は、肥満症、糖尿病、(および)または代謝症候群のようなヒト代謝に関連する状態の治療のための医薬品組成物の製造および薬物に対する有力な候補である。
【0039】
また、本発明には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドが包含される。従って、本発明のタンパク質および相同タンパク質のアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列を用いて、本発明のタンパク質および相同タンパク質を発現する組換え分子を作成することができる。特定の実施形態では、本発明には、本明細書中で本発明のタンパク質と呼ぶ、ショウジョウバエPRL-1またはヒトPRL-1ホモログをコードする核酸が包含される。当業者にとっては当然のことながら、遺伝暗号の縮重の結果、そのタンパク質をコードする多数のヌクレオチド配列(一部は既知であり天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する) を作り出すことが可能である。本発明には、可能なコドン選択に基づく組合せの選択によって作り得るありとあらゆる種類のヌクレオチド配列変異体を網羅することができる。
【0040】
また、本発明に包含されるのは、請求項に記載のヌクレオチド配列にハイブリダイズする能力のあるポリヌクレオチド配列、および特に、種々のストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのそれら配列である。ハイブリダイゼーション条件は、Wahl G.M. らの (1987: Methods Enzymol. 152: 399-407)および Kimmel A.R. (1987; Methods Enzymol. 152: 507-511) に記載されたように、核酸結合複合体またはプローブの溶解温度(Tm)に基づいており、明確なストリンジェントでの使用が可能である。望ましくは、ストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションとは、1時間 1x SSCおよび0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは65℃にて、特に1時間 0.2x SSCおよび0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中で 50℃にて、望ましくは55℃にて、より望ましくは62℃にて、および最も望ましくは65℃にて洗浄後、正のハイブリダイゼーションシグナルが認められることを意味する。本発明に包含されるそのタンパク質をコードする改造核酸配列には、異なるヌクレオチドの欠損、挿入または置換が含まれ、機能的に同一または等価なタンパク質をコード化するポリヌクレオチドを結果としてもたらす。
【0041】
また、コードされたタンパク質には、サイレント変化を作り出し、機能的に等価なタンパク質を結果としてもたらすアミノ酸残基の欠損、挿入または置換が含まれることもある。計画的アミノ酸代替は、タンパク質の生物学的活性が保持される限りにおいて、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および(または)両親媒性特性の類似性に基づいて行うことができる。さらには、本発明は、少なくとも4、望ましくは少なくとも6および最大で50長のアミノ酸を有する、タンパク質のペプチド断片、または例えば環状ペプチド、レトロ(レトロ-inverso)ペプチドまたはペプチド擬態のような該ペプチドの誘導体に関するものである。
【0042】
また本発明の範囲内には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子の対立遺伝子も含むものとする。本明細書で使用した「対立遺伝子」または「対立遺伝子配列」は、核酸配列において少なくとも1つの突然変異から生じ得る、遺伝子の別の形である。対立遺伝子は、構造または機能を改変し得るかどうかわからない変性 mRNA またはポリペプチドを結果としてもたらすことがある。任意の遺伝子には、対立遺伝子形態が含まれない場合も、1つ以上の対立遺伝子形態が含まれる場合もある。対立遺伝子を作り出す一般の突然変異変化は通常、ヌクレオチドの自然欠損、付加または置換に帰する。これらの各変化は、単独、またはその他の変化と共に、所定の配列内で 1回以上生じることがある。
【0043】
本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする核酸配列は、部分的ヌクレオチド配列を利用したり、当分野で周知の種々の方法を使用することによって伸長させ、プロモーターおよび調節要素等の上流配列を検出することが可能である。
【0044】
生物学的に活性なタンパク質を発現するために、該タンパク質をコードするヌクレオチド配列または機能的等価物を好適な発現ベクター、すなわち、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入することが可能である。当業者に周知の方法を用いて、タンパク質をコードする配列、好適な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。調節エレメントには、例えばプロモーター、開始コドン、終止コドン、mRNA安定性調節エレメント、およびポリアデニル化信号が含まれる。ポリヌクレオチドの発現は、(i)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー領域のような構成型プロモーター、(ii)インスリンプロモーター( Soria B. らの、(2000) Diabetes 49: 157-162を参照)、SOX2遺伝子プロモーター(Li M. らの、(1998) Curr. Biol. 8: 971-974を参照)、Msi-1プロモーター(Sakakibara S. およびOkano H.の(1997) J. Neuroscience 17: 8300-8312を参照)、α-噴門ミオシン重鎖プロモーターまたはヒト心房性ナトリウム利尿因子プロモーター(Klug M.G. らの、(1996) J. Clin. Invest 98: 216-224; Wu J. らの、(1989) J. Biol. Chem. 264: 6472-6479)のような組織特定のプロモーター、または(iii) テトラサイクリン誘導型システムのような誘導型プロモーターよって保証することができる。また、発現ベクターには、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはピューロマイシン耐性遺伝子のような、抗生物質耐性を授与する選択薬剤またはマーカー遺伝子を含むことができる。これらの方法には、試験管内組換えDNA技術、合成技術、および生体内遺伝子組換え技術が含まれる。これらの技術は、Sambrook、J. らの(1989) Molecular Cloning、Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y. および Ausubel F. M. らの (1989) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、N.Y. に記載されている。
【0045】
本発明のさらに別の実施例によれば、天然の核酸配列、修飾核酸配列または本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする組換え核酸配列を異種配列に連結反応させ、融合タンパク質をコードすることが可能である。
【0046】
種々の発現ベクターと宿主系を利用して、タンパク質または融合タンパク質をコードする配列を保持および発現することが可能である。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴のウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、または動物細胞系などの微生物等が含まれているが、これらに限定されるものではない。
【0047】
試料における本発明のポリヌクレオチド配列の存在は、当該ポリヌクレオチドのプローブまたは部分または断片を用いて、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーションおよび/または増幅によって検出することが可能である。核酸増幅系アッセイには、対応タンパク質をコードするDNAまたはRNAを含んだ形質転換体を検出するために、その遺伝子に特異的な配列に基づいたオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの使用が含まれる。本明細書で使用した「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、少なくとも約10のヌクレオチド、そして約60もの数のヌクレオチド、望ましくは約15〜30ヌクレオチド、およびより望ましくは約20〜25のヌクレオチドの核酸配列を言及し、プローブまたはアンプライマーとして使用することが可能である。
【0048】
多岐にわたる標識技術および共役技術が当業者には周知であり、種々の核酸およびアミノ酸測定法において使用することが可能である。ポリヌクレオチド配列を検出するために標識化されたハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを産出する手段には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション法、RNAプローブの末端標識化、標識化されたヌクレオチドを用いたPCR増幅、または酵素性合成が含まれる。このような手順は、市販されている種々のキット(ミシガン州カラマズーのPharmacia & Upjohn社、Promega社 (ウィスコンシン州マディソン)、およびU.S. Biochemical Corp社 (オハイオ州クリーブランド)) を用いて実行することが可能である。
【0049】
試料における本発明のタンパク質の存在は、免疫学的な方法または活性測定によって確定することができる。タンパク質活性を判定するためのタンパク質または試薬に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用して、タンパク質の発現を検出および測定するための種々のプロトコルは当分野で周知である。実施例には、酵素免疫測定(吸着)法(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、および蛍光細胞分析分離装置(FACS)が含まれる。タンパク質上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナル系免疫測定法は好適ではあるが、競合結合実験を使用することも可能である。これらを含めた他のアッセイは、Hampton、R. らの (ミネソタ州セントポール市、1990; Ser ological Methods、Laboratory Manual、APS Press) およびMaddox、D. E. らの (1983; J. Exp. Med. 158:1211-1226) の諸所に記載されている。
【0050】
また、使用可能な好適レポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または発色剤のほかに、基質、補助因子、阻害剤、磁力粒子なども含まれる。
【0051】
本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、細胞培養からの当該タンパク質の発現および回収に好適な条件下で培養することが可能である。組換え細胞によって作り出されたタンパク質は、使用する配列および(または)ベクターにもよるが、分泌または細胞内含有させることが可能である。タンパク質をコード化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するタンパク質の分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。その他の組換え構造を用いて、本タンパク質をコードする配列を水溶性タンパク質の精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に結合することが可能である。そのような精製を促進するドメインには、固定化金属上での精製を可能にするヒスチジントリプトファン分子などの金属キレートペプチド、固定化免疫グロブリン上の精製を可能にするタンパク質 A ドメイン、および FLAG 伸長・親和性精製システム(Immunex Corp.、Seattle、Wash.)で利用されるドメインなどが含まれるが、これらによって限定されるものではない。精製ドメインと所望のタンパク質との間にあるXA 因子またはエンテロキナーゼ(腸活素)(カリフォルニア州のサンディエゴ市のInvitrogen 社)に対して特異的であるような切断可能リンカー配列の包括を用いて精製を促進することが可能である。
【0052】
診断および治療
本発明において開示したデータは、本発明の核酸配列およびタンパク質およびその修飾因子/エフェクター分子が、関連する診断目的および治療目的、例えば、限定するものではないが、肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、真性糖尿病、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎および(または)胆石症、または肝臓線維症のような関連障害において有用であることを明らかにする。従って、本発明のタンパク質核酸およびタンパク質の診断目的および治療目的は、例えば、これらに限定されるものではないが、次の通りである: (i)タンパク質療法、(ii)小分子薬剤標的、(iii)抗体標的(治療、診断、薬剤ターゲッティング/細胞毒性抗体)、(iv)診断および(または)予後マーカー、(v)遺伝子療法(遺伝子送達と遺伝子除去)、(vi)研究ツール、および(vii)試験管内および生体内における組織再生(これらの組織に由来する組織型および細胞型を構成する全ての組織型および細胞型の再生)。
【0053】
本発明の核酸とタンパク質およびそのエフェクターは、下記のように、種々の用途に関与する診断目的および治療目的において特に有用である。例えば、限定するものではないが、本発明のタンパク質をコードする相補 DNAおよび特にそのヒトホモログは、遺伝子療法において有用であり、また、本発明のタンパク質および特にそのヒトホモログは、それを必要とする被検体に投与されたときに有用であり得る。例証として、本発明の組成物は、例えば、限定するものではないが、上記のような代謝障害およびその他の疾患および障害に苦しむ患者の治療に対して有効性を有するであろう。
【0054】
本発明の核酸またはその断片は、核酸またはそのタンパク質の存在または量が評価される診断適用例においてもさらに有用であり得る。さらに、本発明の物質に対して免疫特異的に結合する抗体を治療または診断方法において使用することも可能である。
【0055】
例えば一実施態様によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特異な抗体は、直接的にはエフェクター、例を挙げるとアンタゴニストとして、または間接的にはタンパク質を発現する細胞または組織に薬剤をもたらすターゲッティングまたは輸送機構として用いることが可能である。その抗体は当分野で周知の方法を用いて作成することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体一本鎖、Fab 断片、および Fab 発現ライブラリによって産生された断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。中和抗体(すなわち、二量体形成を阻害する抗体)は特に治療用に望ましい。
【0056】
抗体産生のため、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒトなどを含む種々の宿主は、本ンパク質または免疫抗原性の特性を有する任意の断片またはそのオリゴペプチドを注入することによって免疫化することが可能である。 宿主の種類にもよるが、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることが可能である。本タンパク質に対する抗体を誘導するために用いるペプチド、断片またはオリゴペプチドは、少なくとも約5のアミノ酸からなり、より望ましくは少なくとも約10のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するものが望ましい。
【0057】
本タンパク質に対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を作り出す任意の技術を用いて作ることが可能である。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒト B 細胞ハイブリドーマ技術、EBVハイブリドーマ技術 (Khler G. および Milstein C. の (1975) Nature 256: 495-497; Kozbor D. らの (1985) J. Immunol. Methods 81: 31-42; Cote R.J. らの (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030; Cole S.P. らの (1984) Mol. Cell Biochem. 62: 109-120) が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
しかも、「キメラ抗体」を作り出すために開発された技術である、好適な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためにマウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子に対するスプライシングを使用することが可能である (Morrison S.L. らの (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855; Neuberger M.S. らの (1984) Nature 312: 604-608; Takeda S. らの (1985) Nature 314: 452-454)。あるいは、一本鎖抗体を作り出すために記述された技術を適用し、当分野で周知の方法を使用して、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特異的な一本鎖抗体を作り出すことが可能である。関連特異性を有するが、固有イディオタイプ組成物の一部でもある抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリからのチェーンシャフリングによって作成することが可能である (Kang A.S. らの (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:11120-11123)。抗体はまた、リンパ球集団における生体内産生を誘導することによって作り出すことが可能であり、または組換え免疫グロブリンライブラリまたは文献に開示されているような高特異結合試薬パネルのスクリーニングによって作り出すことも可能である (Orlandi R. らの (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837; Winter G. および Milstein C. の (1991) Nature 349: 293-299)。
【0059】
また、タンパク質に対する特異的な結合部位を含む抗体断片も得ることが可能である。例えば、そのような断片には、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作り出すことができるF(ab')2断片、およびF(ab')2のスルフィド架橋を還元することによって作成できるFab断片が含まれる。あるいは、Fab 発現ライブラリを作製して、所望の特異性を有するモノクローナル Fab 断片の迅速かつ容易な同定することができる (Huse W.D. らの (1989) Science 246: 1275-1281)。
【0060】
種々の免疫測定法をスクリーニングに対して用い、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。既存の特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合結合および免疫放射定量測定法のための幾多のプロトコルは、当分野では周知である。通常このような免疫学的測定法には、タンパク質とその特異性抗体との間の複合体形成の計測が関与する。2つの非干渉性タンパク質エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナル系免疫測定法が望ましいが、競合結合実験を用いることも可能である(前出のMaddox)。
【0061】
本発明の別の実施例によれば、本発明のポリヌクレオチドまたはその断片またはアプタマー分子、アンチセンス分子、RNAi分子またはリボザイムのような核酸修飾因子/エフェクター分子を治療目的のために使用することが可能である。一実施態様によれば、組み合わせ核酸ライブラリの使用を含んだ手順のスクリーニングおよび選択によって、アプタマー、すなわち、Prlタンパク質に対して結合し、その活性を調節する能力のある核酸分子を作成することが可能である。
【0062】
さらなる実施態様では、mRNAの転写を阻止することが望ましいような状況において、アンチセンス分子を使用することが可能である。具体的には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドに補遺的な配列を利用して細胞を形質転換することが可能である。このように、アンチセンス分子を用いて、タンパク質活性を調節すること、または遺伝子機能を調節することができる。今このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスのオリゴマーまたは大きな断片を、タンパク質をコードする配列のコード領域または制御領域に沿ったさまざまな位置から設計することが可能である。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクチニアウィルスまたは種々の細菌プラスミドに由来する発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団に送達することができる。当業者に公知の方法を用いて、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子のポリヌクレオチドに補遺的なアンチセンス分子を発現する組換えベクターを構築することが可能である。これらの技術は、Sambrook らの (前出) および Ausubel らの (前出) 両文献に記載されている。本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする遺伝子は、本発明のタンパク質および相同タンパク質またはその断片をコード化する高レベルのポリヌクレオチドを発現する発現ベクターを有する細胞または組織の形質転換によってオフにすることができる。そのような構成物を用いて、翻訳不可能なセンス配列またはアンチセンス配列を細胞に導入することが可能である。DNA への組み込みが不在の場合でさえ、そのようなベクターは、RNA分子が内因性ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)によって使用不可能になるまで継続してRNA分子を転写することが可能である。一過性の発現は、非複製ベクターによって1ヶ月以上持続することが可能であり、さらに適切な複製要素がそのベクター系の一部である場合には、より一層長く持続することが可能である。
【0063】
上述したとおり、遺伝子発現の修飾は、アンチセンス分子、例えば、DNA、RNAまたはPNAのような核酸アナログを、本発明のタンパク質および相同タンパク質、すなわち、プロモーター、エンハンサー、およびイントロンをコードする遺伝子の制御領域に対してデザインすることによって得ることができる。転写開始部位(例えば始動部位から -10〜+10 の間) 由来のオリゴヌクレオチドが望ましい。同様に、「三重らせん」塩基対の形成方法を用いて抑制することもできる。三重らせん対合が有用であるのは、三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写調節因子または調節分子の結合に対して二重らせんが十分に開くような能力を阻害するためである。三重らせん DNA を用いる最近の治療における進歩は文献に記載されている (Gee J.E. らの (1994) Gene 149: 109-114; Huber B.E. および Carr B.I. の (1994) Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing 社、Mt. Kisco, N.Y.)。また、アンチセンスは、転写物のリボソームに対する結合を防止することによって、mRNAの翻訳を阻止する目的で設計することも可能である。
【0064】
酵素性RNA分子であるリボザイムは、RNAの特異的切断を触媒するために使用することが可能である。リボザイム作用のメカニズムには、内ヌクレオチド結合分解性の切断に先立つ相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションが含まれる。使用することが可能な実施例には、本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする配列の内ヌクレオチド結合分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒する組換え型のハンマーヘッド型リボザイム分子が含まれる。任意の潜在的RNA標的内の特異性リボザイム切断部位は、GUA、GUU、およびGUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子を走査することによって最初に同定する。ひとたび同定すると、標的遺伝子の領域に対応し、切断部位を含む15〜20リボヌクレオチド間の短いRNA配列は、オリゴヌクレオチドを機能不全にするような二次構造的特徴に対して評価することが可能となる。また、候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護試験法(ribonuclease protection assay)を用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの実施容易性を検査することによって行うことができる。
【0065】
核酸エフェクター分子、例えば本発明のアンチセンスおよびリボザイムは、核酸分子合成のために当分野で周知の任意の方法を用いて作ることが可能である。これらの方法には、固相フォスフォアミダイト化合合成のようなオリゴヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれる。あるいは、DNA配列の試験管内および生体内転写によってRNA分子を産出することも可能である。このようなDNA配列は、T7またはSP6のような好適なRNポリメラーゼプロモーターを用いて、種々のベクターに組み込むことが可能である。あるいは、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するこれら相補 DNA構成物は、細胞株、細胞または組織の内に導入することができる。RNA分子を修飾して、細胞内の安定性および半減期を向上することが可能である。可能な修飾には、本分子の 5' 末端および(または) 3' 末端でのフランキング配列の追加、または核酸塩基、砂糖および(または)リン酸塩部分、例えば分子の背骨連鎖内のホスホジエステラーゼ連鎖ではなく、ホスホロチオエートまたは 2'O-メチルの使用が含まれるが、それらに限定されるものではない。この概念は、PNAの作成に固有のものであり、例えばイノシン、クエオシン、ワイブトシンのほかに、アセチル系、メチル系、チオ系、および内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンに類似の修飾態様なども含めた非従来型塩基の抱合によって、これら全ての分子に適用することができる。
【0066】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が提供されており、それらの方法は生体内、試験管内および生体内外交通の使用に同程度に適している。生体内外交通治療では、ベクターは患者から採取した幹細胞内に導入し、同一患者に自家移植で戻すためにクローン増殖することが可能である。形質移入およびリポソーム注入による送達は、当分野で周知である方法を用いて行うことが可能である。上記の治療方法はいずれも、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も望ましくはヒトなどの哺乳動物を始めとする好適な被検体に適用することが可能である。
【0067】
本発明の追加実施例は、医薬用に許容できるキャリアと共に、上述の任意の治療効果のための医薬品組成物の投与に関するものである。そのような医薬品組成物は、核酸および本発明のタンパク質および相同核酸またはタンパク質、本発明のタンパク質および相同タンパク質に対する抗体、本発明のタンパク質および相同タンパク質または核酸の擬態、アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤で構成してもよい。本組成物は単独で投与することができるが、少なくとも 1つの安定化化合物のような他剤と共に投与することもでき、その場合には、例えば生理食塩水、緩衝生理食塩水、D 形グルコース(ブドウ糖)および水など(これらに限定されるものではない) の滅菌した生物学的に適合な医薬品キャリアを用いて投与することが可能である。本組成物は単独で患者に投与することができるが、他剤、薬剤またはホルモンと共に投与することも可能である。本発明に用いられる医薬品組成物は、幾つもの経路によって投与することができ、その経路には経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸があるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
その活性成分に加えて、これらの医薬品組成物は、医薬用に使用することができる、活性化合物の製剤への処理を促進する賦形剤および助剤を備えている好適な医薬用に許容できるキャリアを包含し得る。および投与に関する技術の詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences (ペンシルベニア州イーストンのMaack Publishing社) の最新版を参照。
【0069】
本発明に好適な医薬品組成物には、活性成分が所望の目的を達成するために有効な量で含有されているような成分が含まれる。有効投与量の定量は、当業者の能力の範囲内で行うものとする。任意の化合物の場合、細胞培養試験法、例えば前脂肪細胞の細胞株の細胞培養試験法おいて、または通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタなどの動物モデルのいずれかにおいて、治療に有効な投与量を初期に推定することができる。また、動物モデルを好適な濃度範囲および投与経路を決定するために使用することも可能である。次にはこのような情報を用いて、ヒトに対する有益な投与量および投与経路を決定することができる。治療に有効な投与量とは、活性成分、例えば、核酸または本発明のタンパク質またはその断片、本発明のタンパク質の抗体および相同タンパク質の、特定の状態を治療するために十分な量のことである。治療効力および毒性は、細胞培養または実験用動物における標準調剤手順、例えばED50 (50%の集団における治療に有効な用量: 50%有効量)およびLD50 (50%の集団に対して致死的な用量: 50%致死量)によって確定し得る。治療効果と毒性効果間の投与量の比は、治療指数、すなわちLD50/ED50比率として表すことができる。高い治療指数を示す医薬品組成物が望ましい。細胞培養試験法および動物実験から得たデータは、ヒト用のさまざまな投与量の製剤に使用する。そのような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど持たないED50 を含む循環濃度の範囲内にあることが望ましい。投与量は、投与量の使用元、患者の感受性、および投与の経路によって、本範囲内で変わる。正確な投与量は、治療を必要とする被検体に関する要因を考慮して、現場の医師が決定することになる。投与量および投与法は、十分なレベルの活性部を提供するため、または所望の効果を維持するために調節する。配慮されるべき要因には、疾患の重症度、患者の身体全体の健康状態、患者の年齢、患者の体重および性別、食習慣、投与の時間と頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する耐性と反応が含まれる。長時間効果のある医薬品組成物は、個別製剤の半減期およびクリアランス率にもよるが、3〜4日毎、1週間毎または2週間毎に1回の間隔で投与することが可能である。通常の投与量は、投与経路にもよるが、約0.1〜100,000マイクログラムと異なり、合計投与量は最大で約1グラムまでとする。特定の投与量および送達の方法に関する指針は文献に記載されており、通常、当分野の実務家に提供されている。当業者であれば、タンパク質または抑制剤とは異なったヌクレオチドの製剤を利用するであろう。さらにポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達も、個別の細胞、状態、位置などに対して特異的なものとなる。
【0070】
別の実施例では、本タンパク質に特異的に結合する抗体は、本発明のタンパク質および相同タンパク質の過剰発現または低発現に関連することを特徴とする状態または疾患の診断のため、または本発明のタンパク質および相同タンパク質、またはそのエフェクター、例えばアゴニスト(作用薬)、アンタゴニストまたは阻害(抑制)剤で治療を受けている患者を監視するための測定法において使用することが可能である。診断アッセイには、抗体および標識を利用してヒトの体液、または細胞や組織の抽出物にある本タンパク質を検出する方法が含まれる。抗体は、その修飾の有無に拘わらず使用することが可能であり、その抗体を共有的または非共有的のいずれかでレポーター分子と結合することによって標識化することが可能である。当分野で周知の種々のレポーター分子を用いることが可能であり、そのさまざまなレポーター分子を上述した。
【0071】
ELISA、RIA、およびFACSを始めとするタンパク質を測定するための種々のプロトコルは当分野では周知であり、改変または異常レベルの遺伝子発現を診断する基準を提供する。遺伝子発現の正常値または標準値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物である被検体、望ましくはヒトから採取した体液または細胞を本タンパク質に対する抗体と結合させることによって決定する。標準複合体の形成量は、種々の方法によって定量化することが可能であるが、測光的方法を用いることが望ましい。対照サンプルおよび疾患サンプル、例えば生検組織において発現したタンパク質の量を標準値と比較する。標準値と被検体値の偏差は、疾患を診断するためのパラメータを樹立する。
【0072】
本発明の別の実施例によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質に特定のポリヌクレオチドを診断のために用いることも可能である。使用可能なポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、アンチセンスRNA分子とDNA分子、およびPNAが含まれる。ポリヌクレオチドを用いて、検体における遺伝子発現が疾患と相関し得るような該検体における遺伝子発現を検出および定量することが可能である。診断アッセイを用いて、遺伝子発現の不在、存在および過剰を区別すること、および治療介入中のタンパク質レベルの調節を監視することが可能である。
【0073】
一実施形態によれば、本発明のタンパク質および相同タンパク質または近縁の分子をコードするゲノム配列を始めとするポリヌクレオチド配列を検出する能力を持つプローブを用いたハイブリダイゼーションを用いて、それぞれのタンパク質をコードする核酸配列を同定することが可能である。本発明のハイブリダイゼーションプローブはDNAまたはRNAであり、望ましくは本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に由来するか、またはプロモーター、エンハンサーエレメント、および天然遺伝子のイントロンを始めとしたゲノム配列に由来するものであり得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター集団によって標識することができ、その例としては 32P または 35S 等の放射性核種、またはアビジン結合系やビオチン結合系を介してプローブと共役したアルカリホスファターゼ等の酵素標識等が挙げられる。
【0074】
本発明のタンパク質および相同性を有する核酸に特異的なポリヌクレオチド配列は、タンパク質の発現に関連する状態または疾患の診断のために使用することが可能である。そのような状態または疾患の例には、肥満症および糖尿病を始めとする代謝疾患および障害が含まれるが、それらに限定されるものではない。本発明のタンパク質または相同タンパク質に特異的なポリヌクレオチド配列を用いて、肥満症および糖尿病を始めとする代謝の疾患と障害に対して治療を受けている患者の進渉状況を監視することができる。ポリヌクレオチド配列は、変性遺伝子発現を検出するために患者の生検から採取した体液または組織を利用して、定性アッセイまたは定量アッセイ、例えばサザン法、ノーザン法、ドットブロット法またはその他の膜系の技術、および PCR 法、またはディップスティック法、ピン ELISA 法またはチップアッセイにおいて使用することが可能である。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のタンパク質および相同核酸に特異的なヌクレオチド配列は、種々の代謝疾患または機能障害、例えば、肥満症、糖尿病、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症(異脂肪血症)、胆石症、または肝臓線維症の活性または誘発を検出するアッセイにおいて有用であり得る。ヌクレオチド配列は、標準法で標識化されることが可能であり、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液または組織の試料に添加することが可能である。好適なインキュベーション期間の後には、その試料を洗浄し、そしてそのシグナルを定量化して標準値と比較する。試料における本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードするヌクレオチド配列の改変レベルの存在は、関連疾病の存在を示すものである。また、このようなアッセイを用いて、動物実験、臨床試験または個々の患者の治療監視において、特定の治療上療法の有効性を評価することも可能である。
【0076】
本発明のタンパク質および相同タンパク質の発現に関連する疾患の診断基準を提供するため、発現に対する正常プロフィールまたは標準プロフィールを樹立する。これは、ハイブリダイゼーションまたは増幅に好適な条件下で、動物またはヒトの正常な被検体から抽出した体液または細胞を、本発明のタンパク質および相同核酸をコードする核酸に特異的な配列またはその断片と結合させることによって達成し得る。標準ハイブリダイゼーションの定量化は、正常な被検体から得た値を、既知量の十分に精製したポリヌクレオチドを使用する実験から得た値に対して比較することによって行なうことができる。正常試料から得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得た試料から得た値と比較することが可能である。標準値と被検者値間の偏差を用いて疾病の存在を確定する。ひとたび疾患の存在を樹立して、治療プロトコルを開始した時点では、患者の発現レベルが正常患者において観察されるレベルに近づき始めるかどうかを評価するために、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返すことが可能である。連続アッセイから得た結果を用いて、数日〜数ヶ月の期間にわたる治療効果を明らかにすることができる。
【0077】
上記のような代謝疾患に関して、個人の生検組織における異常な量の転写物の存在は、疾患の発生に対する素因を示すか、または実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する手段を提供することが可能である。この種のより一層信頼のおける診断により、医療の専門家が予防措置または積極的な早期治療を施し、膵臓の疾病および障害の発生またはさらなる進行を防止することが可能となる。
【0078】
本発明のタンパク質および相同タンパク質をコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドの診断上での追加用途は、PCR法の使用に関与し得る。このオリゴマーは、化学的に合成しても良いし、酵素的に作成するか、または組換えソースから作り出しても良い。オリゴマーは望ましくは2つのヌクレオチド配列から成り、1つはセンス方向(5prime.fwdarw.3prime)を有し、別の1つアンチセンス方向(3prime.rarw.5prime)を有し、特定の遺伝子または条件を同定するために最適化された条件下で用いられる。オリゴマーのネスト化したセット、または縮重オリゴマーの集積である2つの同一オリゴマーを、あまりストリンジェントでない条件下で用いて、緊密に関連したDNA配列またはRNA配列の検出あるいは(または)定量化を行なうことができる。
【0079】
また、本発明の別の実施例によれば、核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするために有用であるハイブリダイゼーションプローブを作成することも可能である。その配列は、特定の染色体にマッピングするか、または周知の方法を用いて染色体の特異的な領域にマッピングすることが可能である。このような技術には、FISH、FACSまたは酵母人工染色体、細菌人工染色体、細菌P1構築または単一染色体cDNAライブラリのような人工染色構造があり、Price C.M.、(1993) Blood Rev. 7: 127-134、およびTrask B.J.、(1991) Trends Genet. 7: 149-154. FISH (Verma R.S.およびBabu A.の(1989) Human Chromosomes: A Manual of Basic Techniques、Pergamon Press、New York、N.Y.に記載されている)などの文献で論評されているように、その結果を他の物理的染色体のマッピング技術および遺伝地図データと相関させることが可能である。遺伝地図データの例は、1994 Genome issue of Science (265:1981f) にある。物理的染色体地図上の本発明のタンパク質をコードする遺伝子の位置と、特定の疾患または特定の疾患に対する素因との間にある相関性は、遺伝子の疾病に関連するDNAの領域を画定するのに役立ち得る。
【0080】
本発明のヌクレオチド配列を用いて、健常者、保有者、または感染者の三者間における遺伝子配列の相違を検出することが可能である。遺伝子多型、例えば単一ヌクレオチド遺伝子多型の分析を行うことが可能である。さらに、樹立した染色体マーカーを用いた染色体標本および結合分析などの物理的マッピング技術のin situハイブリダイゼーション法を用いて、遺伝地図を拡張することも可能である。マウスのような別の哺乳動物種の染色体上への遺伝子の配置は、多くの場合、特定のヒト染色体の数またはアームが未知の場合でさえも、関連するマーカーを明らかにすることが可能である。新配列は、物理的マッピングによって、染色体アーム、またはその部分に指定することができる。これによって、位置クローニングまたは他の遺伝子発見技術を用いて疾病遺伝子を探索する研究者にとって貴重な情報が提供される。一旦疾患または症候群が、特定のゲノム領域への遺伝子連鎖、例えばAT〜11q22-23 (Gatti R.A.らの、(1988) Nature 336:577-580)によって大まかに位置決めがされると、その領域にマッピングする全ての配列は、さらなる研究のための関連遺伝子または調節遺伝子に相当し得る。本発明のヌクレオチド配列を用いて、転座、反転などに起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を検出することが可能である。
【0081】
本発明の別の実施例によれば本発明のタンパク質、それらの触媒作用断片または免疫抗原断片またはそのオリゴペプチド、試験管内モデル、遺伝子操作を受けた細胞または動物を用いて、あらゆる薬剤スクリーニング技術を利用して化合物のライブラリをスクリーニングすることができる。1つ以上の本発明のタンパク質の作用に結合、乃至は該作用を調節または模倣するエフェクター、例えば受容体、酵素、タンパク質、リガンドまたは基質を同定することができる。このようなスクリーニングで用いたタンパク質またはその断片は、溶液中に遊離していても、固体支持物に付着していても、細胞表面上にあっても、または細胞内にあっても構わない。また、本発明のタンパク質と検査される薬剤間の結合複合物の形成を測定することも可能である。また、直接的または間接的に本発明のタンパク質の活性に影響を及ぼす薬剤を同定することもできる。例えば、本発明のタンパク質のホスファターゼ活性は、当技術分野で周知の人工基質、すなわち、限定するものではないが脱リンの際にフルオロフォアまたは発色団に変換されるDiFMUP (Molecular Probes社、Eugene、Oregon)を利用することによって、遺伝子組換え的に発現され精製されたPrl-1またはその断片を用いて試験管内(試験管内)で測定することができるのではないだろうか。あるいは、ホスファターゼの生理的基質の脱リン酸は、それらの生理的な基質のリン酸化状態の検出に好適な公知のスクリーニングテクノロジを利用して測定できるのではないだろうか。例えば、限定するものではないが、それらの生理的基質に由来するペプチドのリン酸化状態は、ホスホ側特異性抗体の結合によって監視することができ、複合体分極化の増加を結果としてもたらす。
【0082】
しかも、その生理的基質またはその誘導体に対するPRL-1相同タンパク質の活性は細胞系アッセイにおいて測定し得る。また、薬剤は、リン酸化および脱リン酸、ファルネシル化、パルミトイル化、アセチル化、アルキル化、ユビキチン結合、蛋白分解性処理、細胞内局在性および劣化のようなのようなタンパク質の翻訳後の修飾を妨害する可能性もある。その上、薬剤は、本発明のタンパク質の二量体化またはオリゴマー形成に影響し、または異種様式で、他のタンパク質、例えば、限定するものではないが、ドッキングタンパク質、酵素、受容体、または翻訳因子を備えた本発明のタンパク質の二量体化またはオリゴマー形成に影響を及ぼし得る。また、薬剤は、タンパク質機能(作用)、例えば、限定するものではないが、下流のシグナル伝達に必要とされる他のタンパク質を備えた本発明のタンパク質の物理的相互作用に作用する可能性がある。
【0083】
タンパク質間の相互作用を判定するための方法は当分野で周知である。例えば、結合タンパク質から本発明のタンパク質に(逆の場合もまた同様)派生する蛍光標識されたペプチドの結合は、極性化の変化によって検出することができる。結合相手は完全長タンパク質であっても、完全長タンパク質としての結合相手の1つであっても、単なるペプチドであってよいが、その両方の結合相手が共に蛍光標識される場合、その結合は、蛍光色素の他の蛍光色素への蛍光エネルギー転移(FRET)によって検出することができる。しかも、種々の市販されている、タンパク質間の相互作用の検出のために好適な測定法原理は当分野で公知であり、例えば、限定するものではないがAlphaScreen (PerkinElmer社)またはAmersham社によるシンチレーション近接測定法(SPA)が挙げられる。 あるいは、本発明のタンパク質の細胞タンパク質との相互作用は、両タンパク質が蛍光標識され、両タンパク質の相互作用が、限定するものではないが、例えばCellomics社またはEvotecOAI社の開発による細胞イメージング読取装置を用いて両タンパク質の同時転座分析によって検出される細胞を利用したスクリーニングアッセイの基盤であり得る。すべての場合において、2つの以上の結合相手は互いに異なるタンパク質であり、その結合相手の1つは本発明のタンパク質であるか、または二量体化および(または)オリゴマー形成の場合は本発明のタンパク質自体であることができる。1つ(唯一ではない)の対象標的機構がそのようなタンパク質/タンパク質相互作用である本発明のタンパク質は、PRL-1相同タンパク質である。
【0084】
特に興味深いのは、哺乳動物の細胞に対して低毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。本明細書で使用した用語「薬剤」とは、1つ以上の本発明のタンパク質の生理機能を改変または模倣する能力を有する任意の分子、例えばタンパク質または医薬品のことである。候補薬剤は、典型的には有機分子であり、望ましくは50〜約2,500ドルトンの分子量を有する小有機化合物であるが、幾多の化学的クラスを包含する。候補薬剤には、タンパク質、特に水素結合との構造上での相互作用に必要な機能グループが含まれ、そして典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、望ましくは少なくとも2つの機能化学グループが含まれる。候補薬剤には、多くの場合、炭素環式構造または複素環式構造、および(または)1つ以上の上記機能グループと置換された芳香族構造またはポリ芳香族構造が包含される。
【0085】
候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、核酸および誘導体、構造上の類似体またはその組み合わせを含んだ生体分子間に見出される。候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリを始めとするさまざまな原料から取得する。例えば、任意に抽出されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を始めとして、さまざまな有機化合物および生体分子のランダム合成および特異的合成のための多くの手段が提供されている。或いは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物形態の天然化合物のライブラリは入手可能であるか、または容易に作り出すことができる。その上、従来の化学的、物理的、および生化学的な手段を介して、天然または合成的に作り出したライブラリおよび化合物は容易に修飾でき、それらを用いて組み合わせライブラリを作り出すことが可能である。アシル化、アルキル化、エステル化、アミジン化(amidification)などのような公知の薬剤は、構造上での類似体を作り出すために、特異的またはランダムな化学的修飾の対象となり得る。スクリーニングアッセイが結合実験である場合、1つ以上の分子が標識に結合することが可能であり、その標識は直接的または間接的に検出可能な信号を提供する。
【0086】
使用可能な別の薬剤スクリーニング技術は、PCT出願公開番号WO84/03564に記載されているように、目的タンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物の高処理能力スクリーニングを提供する。この方法においては、本発明のタンパク質に対して適用されたように、多数の異なる小さな試験用化合物、例えばアプタマー、ペプチド、低分子量化合物などをプラスチックピンまたは他表面などの固体基質上で提供または合成する。試験用化合物は、タンパク質またはその断片と反応させ、洗浄した。次に、結合したタンパク質を、当分野で周知の方法で検出した。精製したタンパク質は、前記した薬剤スクリーニング技術で使用するプレート上で直接被覆することもできる。あるいは、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物上に固定することもできる。別の実施例によれば、タンパク質と結合可能な中和抗体がタンパク質と結合するため試験用化合物と特に競合し、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では抗体を用いて、タンパク質と1つ以上の抗原決定因子を共有する全てのペプチドの存在を検出することができる。
【0087】
本発明のタンパク質をコードする核酸を用いて、遺伝子導入動物または部位特定の遺伝子改変を細胞株において作成することができる。これらの遺伝子導入非ヒト動物は、生体内における本発明のタンパク質の機能および調節の研究において有用である。遺伝子導入動物、特に哺乳動物の遺伝子導入動物は、ヒトに共通する多くの発生プロセスおよび細胞プロセスの検討のためのモデル系として役立つことができる。代謝障害を有する種々の非ヒトモデルを用いて、本発明のタンパク質のエフェクター/修飾因子を検査することができる。本発明のタンパク質の異所性発現(例えば過剰発現または発現の欠如)、特定の摂食条件、および(または)生物学的活性化合物の投与により、代謝障害のモデルを作ることができる。
【0088】
本発明の一実施例によれば、そのようなアッセイでは、レプチン経路遺伝子においてノックアウトを保有しているマウスのようなインスリン耐性および(または)糖尿病のマウスモデルが使用される (例えば、ob (レプチン)またはdb (レプチン受容体)マウス)。糖尿病典型的な症状を呈するそのようなマウスは、肝脂質蓄積を示し、高い頻度で血漿脂質レベルを増加した(前出のBruning J.C. らの1998 を参照)。感受性の野生型マウス(例えばC57Bl/6)は、高脂肪食を与えた場合、類似の症状を示す。そのようなマウス菌株における本発明のタンパク質発現の検査に加えて(実施例セクションを参照)、これらのマウス用いて、候補エフェクター/修飾因子の投与が、例えば肝臓、血漿、または脂肪組織における脂質蓄積を改変するかどうかを、FPLC、比色法、血糖検査、インスリン耐性検査などおよびその他当技術分野で周知の標準アッセイなどを用いて検査することもできる。
【0089】
遺伝子導入動物は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の正常な遺伝子座が変化する場合、非ヒト胚幹細胞における相同組換えを介して作ることが可能である。別法としては、本発明のタンパク質をコードする核酸構成物を卵母細胞に注入し、ゲノムにランダムに統合する。安定した統合のベクターには、プラスミド、レトロウィルスなど動物ウィルス、酵母菌人工染色体(YACs)などが含まれる。修飾された細胞または動物は、本発明のタンパク質の機能および調節の研究において有用である。 例えば、一連の小欠損および(または)置換を、本発明のタンパク質をコードする遺伝子において行い、膵臓の分化などにおけるタンパク質の特定のドメイン、機能の役割を決定することが可能である。
【0090】
その上、所定の特異的構成物様の本発明の遺伝子変異体には、本発明のタンパク質発現または優性阻害型突然変異の発現を阻止するアンチセンス分子が含まれる。本発明の遺伝子発現の上方制御が表現型における変化の容易な検出を結果としてもたらす場合、例えば、lac-Z またはルシフェラーゼのような検出可能なマーカーを本発明の遺伝子の遺伝子座に導入することが可能である。
【0091】
また、通常には発現されない細胞や組織、または異常発生中の細胞や組織には、本発明の遺伝子発現またはその変異体を提供することも可能である。しかも、本発明のタンパク質発現を通常には産生されない細胞中に提供することによって、細胞行為の変化を誘引することが可能である。
【0092】
相同組換えDNA構成物には、所望の遺伝的な修飾を有する本発明の遺伝子の一部が少なくとも含まれており、標的遺伝子座に対するホモロジー領域も含まれる。ランダム統合のためのDNA構成物には、組換えを仲介するための相同領域が含まれる必要はない。都合よく、ポジティブ選択およびネガティブ選択用のマーカーを含む。ランダム統合のためのDNA構成物には、本発明のタンパク質、調節エレメント(プロモーター)、イントロンおよびポリアデニル化信号をコードする核酸から成る。相同組換えを通して標的遺伝子修飾を有する細胞を作成する方法は当分野で周知である。胚FoR胚 幹 (ES)細胞、an ES 細胞株 利用して〜することが可能である。,または胚 細胞 maybe obtaineD新たにから取り出した 宿主、例えばマウス、ラット、モルモット、etc. そのような細胞 are 増殖 on an 適切 fibroblast-feedeR層 およびare で育てた が存在する白血病抑制因子 (抑制因子)。
【0093】
非ヒトESまたは胚細胞または体細胞の多能性ヒト幹細胞を形質移入する場合、それらの細胞を用いて遺伝子導入動物を作り出すことが可能である。形質移入後、細胞を適切な培地の支持細胞層にプレーティングする。その構成物を含んでいる細胞は、選択培地を用いることによって選択することが可能である。コロニーを十分な時間をかけて増殖した後、コロニーを摘出し、相同組換えまたは構成物の統合の発生率を分析する。陽性反応を示すコロニーは、胚操作および桑実胚凝集に用いることが可能である。つまり、桑実胚を4〜6週間目の過排卵雌から取得し、透明帯を除去し、桑実胚を組織培養皿の小凹部に入れる。ES細胞をトリプシン処理し、そしてその修飾細胞は桑実胚に密接して凹部に置く。次の日には、凝集体を偽妊娠の雌の子宮角に移す。次に、雌に出産せしめる。キメラの子孫は、外殻の変化によって容易に検出することができ、引き続いて突然変異の次世代への伝達のためにスクリーニングする(F1世代)。F1-世代の子孫を修飾遺伝子の存在に対してスクリーニングし、修飾した雄および雌を交尾させ、ホモ接合性の子孫を作り出す。その遺伝子改変が成長の過程における死亡率の原因となる場合には、組織または器官は、同種間移植用または類遺伝子性移植用、または移植、または体外培養用として維持することができる。遺伝子導入動物は、動物モデル、家畜など、例えばマウス、ラット、モルモット、ヒツジ、ウシ、ブタなどのような任意の非ヒト哺乳動物であり得る。遺伝子導入動物は、機能的研究、薬物スクリーニングおよび他の用途において用いることが可能であり、そして生体内における本発明タンパク質の機能および調節の研究に有用である。
【0094】
また、最終的に、本発明は少なくとも下記の 1つから成るキットに関するものである。
(a) 本発明のタンパク質またはその機能的断片の核酸分子コーディング;
(b) 本発明のタンパク質または機能的断片またはそのアイソフォーム;
(c) (a) の核酸から成るベクター;
(d) (a) の核酸または(c) のベクターから成る宿主細胞;
(e) (a) の核酸によってコード化されたポリペプチド;
(f) (a) の核酸によってコード化された融合ポリペプチド;
(g) (a)の核酸、または(b)、(e)、または(f)のポリペプチドの抗体、アプタマーまたは別のエフェクター/修飾因子、および
(h) (a)の核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【0095】
本キットは、上述のように、診断用または治療用またはスクリーニング用に使用することが可能である。本キットには、さらに取扱説明書が含まれる場合がある。
各図が示すのは下記のとおりである:
図1は、ショウジョウバエPRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)変異体のエネルギー貯蔵代謝物(ESM; 中性脂肪(TG)およびグリコーゲン)含有量を示す。ここに示したのは、専売のEPコレクション(「HD対照(TG)」、列1)の2000以上のハエのラインを含有する対照群と80以上の非依存性アッセイ(「WT対照(TG)」列2と呼ばれる)において定量された野生型対照群と比較した、Pベクターの注釈付き転写ユニット(列3)への統合によって引き起こされるHD-EP(2)20261ハエの中性脂肪含有量の変化である。また、ここに示したのは、対照群(「対照(グリコーゲン)」列4と呼ばれる)と比較した、Pベクターの注釈付き転写ユニット(列5)への統合によって引き起こされるHD-EP(2)20261ハエのグリコーゲン含有量の変化である。
【0096】
図2は、変異型PRL-1(Gadflyアクセッション番号)遺伝子座の分子構造を示す。
【0097】
図3は、本発明のタンパク質の核酸およびアミノ酸配列を示す。
図3AはヒトPrl-1の核酸配列を示す(配列識別番号1)。
図3BはヒトPrl-1のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号2)。
図3Cは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型1を示す(配列識別番号3)。
図3Dは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(1文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号4)。
図3Eは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型2を示す(配列識別番号5)。
図3Fは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(2文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号6)。
図3Gは、ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型3を示す(配列識別番号7)。
図3Hは、ヒトPrl-2のアミノ酸配列(3文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号8)。
図3IはヒトPrl-3の核酸配列を示す(配列識別番号9)。
図3JはヒトPrl-3のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号10)。
【0098】
図4は、異なる哺乳動物モデルにおけるPrl-1の発現を示す。
図4Aは野生型マウス組織におけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。相対RNA発現はY軸に示し、テストした組織はX軸示した。(WAT = 白色脂肪組織、薄灰色列; BAT= 茶色脂肪組織、濃灰色列)
図4Bは、異なるマウスモデルにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Cは、3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Dは野生型マウス組織におけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Eは、異なるマウスモデルにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Fは、食餌制限マウスと比較した高脂肪食野生型マウスにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図4Gは、3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【0099】
図5は、Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値およびグリコーゲンレベルを定量するための試験管内っ試験法を示す
図5Aは、Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値の上昇を示す。Y軸は、細胞内中性脂肪(1mgタンパク質当たりの中性脂肪をμgで示した)値を示し、そしてX軸は、細胞分化の日数を示す。Prl-1を過剰発現する細胞からの測定値を濃灰色列として示し、対照細胞(空ベクター)を薄灰色列としてを示す。中性脂肪値および対照群は2つの異なる試料セットに対して示す。
図5Bは、Prl-1を過剰発現する細胞におけるグリコーゲンレベルの上昇を示す。Y軸は、グリコーゲンレベル(1mgのタンパク質当たりのグリコーゲンのμgとして示した)を示し、そしてX軸は、細胞分化の日数を示す。Prl-1を過剰発現する細胞からの測定値を濃灰色列として示し、対照細胞(空ベクター)を薄灰色列としてを示す。グリコーゲンレベルおよび対照群は2つの異なる試料セットに対して示す。
【0100】
図6は、Prl-1の機能低下(LOF)細胞における脂質合成と脂肪酸エステル化のレベルを定量するための試験管内試験法を示す。
図6Aは、Prl-1のLOF細胞における脂質合成のレベルの減少を示す。Y軸は、合成した脂質の量(1mgタンパク質当たりのdpmとして示した)を示し、X軸は対照群とPrl-1のLOF細胞を示す。インスリン刺激試料からの測定値は濃灰色列として示し、基本試料は薄灰色列として示した。脂質値および対照群は3つの異なる試料セットに対して示す。
図6Bは、Prl-1のLOF細胞における脂肪酸(FA)エステル化のレベルの上昇を示す。Y軸は、エステル化した脂肪酸の量(1mgタンパク質当たりのdpmとして示した)を示し、X軸は対照群とPrl-1のLOF細胞を示す。FAのエステル化レベルは3つの異なる試料セットに対して示す。
【0101】
図7は、哺乳動物(ヒト)組織におけるヒトPRL-1ホモログの発現を示す。
図7Aは、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の腹部由来の一次脂肪細胞におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
図7Bは、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のヒト脂肪細胞株におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【0102】
図8は、異なるヒト組織におけるPRL-1ホモログ発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Aは、ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Bは、異なるヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Cは、前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Dは、異なるヒト組織におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
図8Eは、前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【0103】
図9は、Prl-1を過剰発現する脂肪細胞による遊離脂肪酸およびグルコースの取り込みを定量するための試験管内試験法を示す。
図9Aは、SGBS細胞を過剰発現するPrl-1による遊離脂肪酸取り込みの上昇を示す。Y軸は3Hオレイン酸の取り込み(dpm/mgタンパク質における放射能)を示し、X軸は、分析した細胞: 対照細胞(空ベクター)および細胞を過剰発現するPrl-1を示す。原形質膜を介した3Hオレイン酸の受動拡散は薄灰色列として示し、能動輸送は濃灰色列として示す。 3Hオレイン酸の取り込みは3つの異なる試料セットに対して示す。
図9Bは、SGBS細胞を過剰発現するPrl-1によるグルコースの取り込みの上昇を示す。Y軸は2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込み(dpm/mgタンパク質における放射能)を示し、X軸は、分析した細胞: 対照細胞(空ベクター)および細胞を過剰発現するPRL-1を示す。基底2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込みは薄灰色列として示し、インスリン刺激による取り込みは濃灰色列として示す。 2-デオキシ-3H-D-グルコースの取り込みは3つの異なる試料セットに対して示した。
【0104】
実施例は本発明を図解するものである:
実施例 1: ショウジョウバエにおけるエネルギー貯蔵代謝産物(ESM)含有量の測定
変異体ハエはハエ変異在庫コレクションから取得する。ハエは当業者であれば公知の標準条件下で増殖する。実験の過程で、追加給餌をパン酵母(サッカロミセスセレビジエ)とともに EP 系統HD-EP20261に与えた。EPベクターを生存能力のあるホモ接合性統合として含有するショウジョウバエの中性脂肪含有量およびグリコーゲン(本明細書中ではエネルギー貯蔵代謝物、ESMと呼ぶ)の平均変化を対照ハエ (図1を参照) とそれぞれ比較検討した。EMS含有量の定量のため、ハエを5分間、90℃ にて水溶性の緩衝液中において水浴を用いてインキュベートした後に熱抽出を行なった。さらなる5分間、90℃にてインキュベーションし、マイルドな遠心分離を行なった後、Sigma中性脂肪(INT 336-10または-20)アッセイを使用し、製造者のプロトコルに従って光学的な濃度における変化を測定することによって、ハエの中性脂肪含有率抽出を決定し、そしてハエ抽出のグリコーゲン含有量は、ロシュ((Starch UV-method Cat. No. 0207748)測定法を用いて、製造者のプロトコルに従って光学的な密度の変化を測定することによって確定した。基準としてBIO-RAD DCタンパク質アッセイを使用し、製造者のプロトコルに従って同一抽出のタンパク質含有量を測定した。この実験およびアッセイを何度か繰り返した。
【0105】
専売のEPコレクション(「HD-制御(TG)」と呼ばれる)の2108ハエのラインの平均中性脂肪値(μg 中性脂肪/μgタンパク質)として示した図1第1列に100%として示す。84の非依存性アッセイ(「WT-制御(TG)」と呼ばれる)において定量したショウジョウバエ野生型菌株オレゴンRハエの平均中性脂肪値(μg 中性脂肪/μgタンパク質)は、図1の第2列において102%として示した。2つの異なる野生型菌株とHD在庫コレクション(「対照(グリコーゲン)」と呼ばれる)の目立たないEPラインから成る内部アッセイの対照の平均グリコーゲンレベル(μg グリコーゲン/μgタンパク質)は図1の第4列に100%として示した。測定値の標準偏差は細いバーとして示した。HD-20261ホモ接合性ハエ(図1の列3、「HD-20261(TG)」)は、対照群と比べて、常に高い中性脂肪含有量(μg 中性脂肪/μgタンパク質)を示す。また、HD-20261ホモ接合性ハエ(図1の列5、「HD-20261(グリコーゲン)」)は、対照群と比べて、低いグリコーゲン含有量(μg グリコーゲン/μgタンパク質)を示す。以上の点から、遺伝子活性の減少は、エネルギー保管代謝産物の代謝における変化の原因となる。
【0106】
実施例2: 中性脂肪およびグリコーゲンレベルにおける変化に関与するショウジョウバエ遺伝子の同定
EP ベクター(本明細書中では HD-EP(2)20261) 統合に直接的に隣接して局在するゲノムDNA配列を分離した。Berkeleyショウジョウバエゲノムのような分離ゲノム配列の公共データベースを用いて、プロジェクト(GadFly)をスクリーニングし、それによってセンス方向における遺伝子PRL-1の転写物変異体CG4993-RBへの塩基対9 でのHD-EP(2)20261ベクターのホモ接合性生存統合部位を確認した。図2はこの遺伝子座の分子構造を示す。HD-EP(2)20261ベクター統合の染色体局在部位は、遺伝子座2L、35E2(Flybaseによる)または2L、35F1(Gadflyリリース3による)にある。図2では、ゲノムDNA配列を、HD-EP(2)20261の統合部位を含む図の中間における黒の矢印としてのアセンブリによって表した。チェックマークは、ゲノムDNA (チェックマークにつき1000 塩基対)の塩基対における長さに相当する。濃灰色線でつながった本図の下半分における濃灰色バーは、予測遺伝子のcDNAに相当する(Berkeleyショウジョウバエゲノムプロジェクト、GadFlyリリース3によって予測された通り)。本遺伝子PRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)のショウジョウバエcDNAの予測エキソンは、濃灰色バーとして示し、予測イントロンは、本図の下半分における灰色の細線として示し、そして標識化する。HD-EP20261の統合部位は、PRL-1遺伝子の予測cDNAの第1エキソン内の黒三角形で表示する。対応する発現配列タグ(EST)は、2つのcDNA転写物変異体下に薄灰色バーとして示す。以上の点から、PRL-1をコードする相補DNAの発現はHD-EP(2)20261系統のベクター統合によって影響され、エネルギー貯蔵中性脂肪量の変化につながり得る。
【0107】
表1は、本発明において代謝の調節に関与するものとして同定したショウジョウバエタンパク質の分子分析データをまとめたものである。
【0108】
【表1】
実施例3: ヒトPRL-1相同タンパク質の同定
よって、PRL-1相同タンパク質および核酸分子コーディングは、昆虫または脊椎動物各種、例えば、哺乳動物または鳥から入手可能である。特に好適なのは、ショウジョウバエPRL-1またはヒトPrl-1、Prl-2、およびPrl-3およびホモログから成る核酸である。配列に対して相同を有するショウジョウバエのPRL-1は、公的に利用できる全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の非重複タンパク質データベースのプログラムBLASTP 2.2.3を用いて同定した(Altschulらの、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389-3402を参照)。表2は、ショウジョウバエPRL-1遺伝子のベストなヒトホモログを示す。
【0109】
【表2】
【0110】
本発明のポリペプチドをコードするマウス相同cDNAをGenBankアクセッション番号NM_011200、XM_123656、XM_135289、NM_008974、NM_008975として同定した。
【0111】
実施例 4: 哺乳動物組織におけるPRL-1相同mRNAの発現
実施例4: 哺乳動物(マウス)組織におけるPrl-1mRNA発現
哺乳動物組織における本発明で開示したPRL-1相同mRNAの発現を分析するため、さまざまなマウス菌株(望ましくは、標準モデル系における肥満症および糖尿病の研究であるマウス菌株RNA、C57Bl/6J、C57Bl/6J ob/obおよびC57Bl/KSdb/db)を、Harlan Winkelmann(33178 Borchen、Ger many)から購入し、一定の温度(望ましくは22℃)、湿度40パーセントおよび望ましくは14/10時間の明暗サイクル下に維持した。マウスには標準食を与えた(例えばssniff Spezialitaten有限責任会社、製品番号niff M-Z V1126-000)。絶食実験(「絶食野生型マウス」)に関しては、野生型マウスを食物を与えずに水のみを適時に与えるだけで48時間飢えさしめた。(例えばSchnetzler B.らの、(1993) J Clin Invest 92: 272-280、Mizuno T.M.らの、(1996) Proc Natl Acad Sci USA 93: 3434-3438を参照)。 さらなる実験では、野生型 (wt) マウスに制限食 (望ましくは Altromin C1057 mod 制御、4.5% の粗脂肪) または高脂肪食 (望ましくは Altromin C1057 mod. 高脂肪、23.5% の粗脂肪) を与えた。 動物は6〜8週間目に達した時点で屠殺した。動物組織は、当業者であれば既知の標準手順に従って単離し、液体窒素で簡易冷凍し、必要となるまで 零下80 ℃にて保管した。
【0112】
本発明において開示した試験管内分化におけるタンパク質の役割を分析するため、異なる哺乳動物細胞の培養細胞、前脂肪細胞の脂肪細胞への変換、哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞 (例えば、Green H.およびKehinde O.の、(1974) Cell 1: 113-116) をAmericanTissue Culture Collection (USAバージニア州ハナサスのATCC、; ATCC- CL 173) から入手した。3T3-L1細胞は線維芽細胞として維持し、従来技術に記述されているように脂肪細胞に分化した(例えば、Qiu. Z. らの、(2001) J. Biol. Chem. 276: 11988-11995; Slieker L.J. らの、(1998) BBRC 251: 225-229)。手短に言えば、細胞はDMEM/10% FCS (Invitrogen社、Karlsruhe、ドイツ)において50,000細胞/ウェルを6ウェル プラスチック皿に二通りにプレーティングし、5%の二酸化炭素、37℃の加湿環境において培養した。集密日(第0日目: d0として定義した)細胞は、DMEM/HamF12(3:1; Invitrogen社)、フェチュイン(300 μg/ml; Sigma社、Munich、ドイツ)、トランスフェリン(2μg/ml; Sigma社)、パントテン酸(17 μM; Sigma社)、ビオチン(1μM; Sigma社)、およびEGF (0.8 nM; Hoffmann-La Roche社、Basel、スイス)を含んだ無血清(SF)培地に移した。分化は、デキサメサゾン(DEX; 1μM; Sigma社)、3-メチル-イソブチル-1-メチルキサンチン(MIX; 0.5 mM; Sigma社)、およびウシインスリン(5 μg/ml; Invitrogen社)を添加することによって誘導した。集密日の4日間後(d4)には、分化が完了するまで、細胞をウシインスリン(5 μg/ml)を含んだSF培地中に保持した。分化手順の異なる時点、第0日目(密集日)を始めに、第2日目(ホルモン追加; 例えば、デキサメタゾンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチンの追加)、および10日間を最大とする分化中で、好適な細胞のアリコットを2日毎に採取した。
【0113】
RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を用いて、マウス組織または細胞の培養細胞から分離し、さらに、RNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共に、DNase-treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。全RNAを逆転写(望ましくはドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製のSuperscriptII RNaseH-逆転写酵素を用いる)し、望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix (ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社; このミックスには、製造者によれば、例えばAmpliTaq ゴールドDNポリメラーゼ、Amper ase UNG、dUTP を有するdNTP、Rox passive refer enceおよび最適化された緩衝液成分などが含まれている)を用いてTaqman分析をGeneAmp 5700配列検出システム(ドイツ、WeiterstadtのApplied Biosystems社製)上で行った。
【0114】
次のプライマー/プローブ対をTaqMan分析に使用した(マウスPrl-1配列のGenBankアクセッション番号U84411):
マウスPrl-1フォーワードプライマー(配列識別番号11):
5'- GCT GTA TTG CTG TCC ATT GTG TC -3';マウスPrl-1リバースプライマー(配列識別番号12):
5'- TCC ACC TTC AAT TAA TGCタグGG -3';マウスPrl-1Taqmanプローブ(配列識別番号13):
(5/6-FAM)- CAG GCC TTG GCA GAG CTC CGG -(5/6-TAMRA)。
【0115】
次のプライマー/プローブ対をTaqMan分析に使用した(マウスPrl-3配列のGenBankアクセッション番号NM_008975):
マウスPrl-3フォーワードプライマー(配列識別番号14): 5'- AGC TAC CGG CAC ATG CG -3'; マウスPrl-3リバースプライマー(配列識別番号15): 5'- ACG TGC TGA GGG TGG CA-3'; マウスPrl-3 Taqmanプローブ(配列識別番号16): (5/6-FAM)- TCC TCA TCA CCC ACA ACC CCA GC-(5/6-TAMRA)。
【0116】
図4 では相対RNA発現をX軸上に示す。図4A-Bおよび図4D-Fには、検査した組織はX軸上に示した。「WAT」は白色脂肪組織を参照し、「BAT」は茶色脂肪組織を参照する。 図4Cおよび図4Gでは、X軸は時間軸を表す。「d0」は第0(ゼロ)日目(実験開始日)を指し、「d2」〜「d12」は脂肪細胞分化の第2日目〜第12日目を指す。
【0117】
代謝における本発明のタンパク質の機能(作用)は、異なる組織における転写物の発現の分析、および脂肪細胞分化における役割の分析によって、本発明でさらに確証した。
【0118】
本発明のタンパク質発現を研究するため、レプチン経路に遺伝子ノックアウトを保有するマウスのような(例えば、ob/ob (レプチン) またはdb/db (レプチン受容体/リガンド) マウス) インスリン耐性および(または)糖尿病マウスモデルを使用した。 そのような糖尿病の典型的な症状を呈するマウスは肝脂質蓄積を示し、高い頻度で血漿脂質レベルを増加した(Bruning J.C. らの(1998) Mol. Cell. 2: 559-569 を参照)。
【0119】
さらに、本発明のタンパク質をコードする mRNA の発現も、高脂肪食を与えた場合に糖尿病、脂質蓄積、および血漿脂質高値の徴候を示す感受性の野生型マウス (例えば、C57Bl/6) において検討した。
【0120】
発現プロファイリングの研究は、哺乳動物におけるエネルギー代謝の制御因子としてのPRL-1相同タンパク質の特定の関連性を確認する。
Taqman分析により、Prl-1がいくつもの哺乳動物組織において発現され、その発現レベルは、野生型マウスの他の組織型と比較して茶色脂肪組織(BAT)において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、白色脂肪組織(WAT)、筋肉、肝臓、視床下部、脳、精巣、結腸、小腸、心臓、肺臓、脾臓、および腎臓においても高いことが分かっている。その上、図4Aに示したように、Prl-1は、野生型マウスの膵臓においても低いが強いレベルで発現される。 BATにおけるPrl-1の高発現により、脂質生成におけるPrl-1の重要な役割が確認される。
【0121】
例えば、Prl-1発現はWATにおいて下方制御され、野生型マウスと比較して、、絶食マウスの心臓および筋肉において上方制御される。さらに、Prl-1の発現は、野生型マウスと比較して遺伝的に誘発された肥満マウス(ob/ob)の視床下部において下方制御される(図4Bを参照)。本発明では(図4Cを参照)、Prl-1のmRNAが成熟脂肪細胞への分化中に発現されることを明らかにする。以上の点から、Prl-1タンパク質が脂質生成において役割を果たす可能性がある。
【0122】
野生型マウスの代謝活性組織における Prl-1の発現も、代謝障害を研究するために使用される異なる動物モデルにおける Prl-1の調節も、この遺伝子がエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを示唆する。この仮説は、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の発現によって支持される。
【0123】
Taqman分析により、Prl-3はいくつもの哺乳動物組織において発現されており、その発現レベルは筋肉において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、野生型マウスの心臓、脾臓、肺臓、および精巣においても高いことが分かっている。その上、Prl-3は、図4Dに記述したように、野生型マウスのWAT、BAT、肝臓、膵臓、視床下部、脳、結腸、小腸、および腎臓において低いが強いレベルで発現される。例えば、Prl-3の発現はWAT、BAT、および肝臓において上方制御され、野生型マウスと比較して、、遺伝的に誘導肥満したマウス(ob/ob)の筋肉および膵臓において、わずかながら下方制御されることを見出した。その上、Prl-3は、野生型マウスと比較して、、絶食マウスの精巣およびBATにおいて上方制御される(図4Eを参照)。高脂肪食を与えた野生型マウスでは、図4Fに示したように、Prl-3の発現はWATにおいて上方制御される。本発明では(図4Gを参照)、Prl-3のmRNAが成熟脂肪細胞への分化中に発現および上方制御されることを明らかにする。以上の点から、Prl-3 タンパク質が脂質生成において重要な役割を果たす可能性がある。
【0124】
代謝障害を研究するために使用される異なる動物モデルの代謝活性組織(例えばWATおよびBAT)において制御されたPrl-3の発現は、前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の制御発現と共に、この遺伝子がエネルギー恒常性において中枢的な役割を果たすことを示唆する。
【0125】
実施例4B: 哺乳動物(ヒト)組織におけるPRL-1mRNA発現(図8)
ヒト初代脂肪細胞を(Hauner らの、(1989) J Clin Invest 84: 1663-1670)によって記載されたように成熟脂肪細胞分化した。簡潔に、細胞をDMEMと栄養素混合F12、1%のPenStrep、17μMのビオチン、33μMのパントテン酸(Pantothenat)、10%の熱不活化されていない胎児の子ウシ血清で育てた。分化の0日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12、1%のPen/Strep、17 μMのビオチン、33 μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、ヒドロコルチゾン、20 nMのヒトインスリン、0,2 nMのT3、25 nMのデキサメサゾン、250 μMのIBMX、3 μMのロシグリタゾンに変えた。分化の4日目には、培地をDMEM/栄養素混合F12 1%のPen/Strep、17 μMのビオチン、33 μMのパントテン酸(Pantothenat)、0,01mg/mlのトランスフェリン、100 nMのヒドロコルチゾン、20 nMのトインスリン、0,2 nMのT3に変えた。分化手順のいくつかの時点、第0日目(密集日)および第4日目(ホルモン追加)を始めに、14日間を最大とする分化中には、好適な細胞のアリコットを採取した。RNAをTrizol試薬(例えば、ドイツ、KarlsruheのInvitrogen社製)を用いて、ヒト細胞から分離し、さらに、RNeasyキット(例えば、ドイツ、Qiagen社製)と共に、DNase-treatmentを使用し、製造者の指示に従って当業者であれば公知の方法で精製した。
【0126】
異なるヒト組織から分離したRNAをから取得した。ドイツ・KarlsruheのInvitrogen社、オランダ・AmsterdamのStratagene社 、または米国、Ca, Palo AltoのBD Biosciences Clontech社。 (i) ヒト正常脳から取り出した全RNA(Invitrogen社、注文番号D6030-01); (ii) 成体骨格筋から取り出した全RNA(Stratagene社、注文番号735030); (iii) から取り出した全RNA成体肺臓 (Stratagene社、注文番号735020); (iv) ヒト正常脂肪組織から取り出した全RNA (Invitrogen社、注文番号D6005-01); (v) ヒト正常膵臓から取り出した全RNA (Invitrogen社、注文番号D6101-01);.(vi) 成体肝臓から取り出した全RNA (Stratagene社、注文番号735018); (vii) 成体精巣から取り出した全RNA (BD Biosciences Clontech社、注文番号64101-1); (viii) 成体胎盤から取り出した全RNA (Stratagene社、注文番号735026)。RNAをDNaseを用いて、製造者(例えば、ドイツのQiagen社)の指示および当業者であれば公知の方法に従って処理した。
【0127】
全RNAを逆転写し(望ましくはInvitrogen社、Karlsruhe、ドイツからのSuperscript II RNaseH-逆転写酵素)、Taqman分析を、望ましくはTaqman 2xPCR Master Mix' (Biosystems社、Weiterstadt、ドイツ)を用いて行う。Taqman 2xPCR Master Mix には、製造者によれば、例えば AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、AmpErase UNG、UTP付きのdNTPd、GeneAmp 5700 配列検出システムのパッシブリファレンスRoxおよび最適化された緩衝剤成分(すべてBiosystems社、Weiterstadt、ドイツより取得)が含まれています。
【0128】
Taqman分析は、望ましくは下記のプライマー/プローブ ペアを用いて実施した:
ヒトPRL-1増幅用:
ヒトPRL-1フォーワードプライマー(配列識別番号17): 5'- TCG TGA AGA ACC TGG TTG TTG TA -3';ヒトPRL-1リバースプライマー(配列識別番号18): 5'- TTA ATG CTA GGG CAA CAA GTA CTG G -3';ヒトPRL-1Taqman プローブ (配列識別番号19): (5/6-FAM)- TGC TGT TCA TTG CGT TGC AGG CC -(5/6-TAMRA)。
【0129】
ヒトPRL-2増幅用:
ヒトPRL-2フォーワードプライマー(配列識別番号20): 5'- GGA GTG ACG 作用するTTG GTT CGA -3';ヒトPRL-2リバースプライマー(配列識別番号21): 5'- GCC AAT CTA GAA CGT GGA TTC CT -3';ヒトPRL-2Taqman プローブ (配列識別番号22): (5/6-FAM)- TTG TGA TGC TAC ATA TGA TAA AGC TCC AGT TGA AAA AG -(5/6-TAMRA)。
【0130】
ヒトPRL-3増幅用:
ヒトPRL-3フォーワードプライマー(配列識別番号23): 5'- AAG TAC GAG GAC GCC ATC CA -3';ヒトPRL-3リバースプライマー(配列識別番号24): 5'- CTG CTT GCT GTT GAT GGC TC -3';ヒトPRL-3 Taqman プローブ (配列識別番号25): (5/6-FAM)- TTC ATC CGC CAG AAG CGC CG -(5/6-TAMRA)。
【0131】
図8Aに示すように、ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、PRL-1が分析したすべての組織において発現されており、その発現レベルは肝臓および筋肉において最も高く、さらなる組織、 例を挙げると、肺臓、精巣、脳および胎盤において高いことを明らかにした。その上、PRL-1は、脂肪組織および膵臓において低いが強いレベルで発現される。
【0132】
代謝活性組織(肝臓および筋肉)におけるPRL-1の高発現は、を示唆するthatこの遺伝子がエネルギー恒常性において役割を果たしていることを示唆する。
【0133】
図8Bに示すように、ヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、PRL-2が分析したすべての組織において発現されており、その発現レベルは脳において最も高く、さらなる組織、例を挙げると、精巣、脂肪組織、肺臓および筋肉において高いことを明らかにした。その上、PRL-2は、胎盤、肝臓および膵臓において低いが強いレベルで発現される。図8Cに示すように、PRL-2はヒト脂肪細胞の分化中に発現される。
【0134】
脂肪組織におけるPRL-2の高発現、および前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のPRL-2の発現は、この遺伝子がエネルギー恒常性において役割を演ずることを示唆する。
【0135】
図8Dに示すように、ヒト組織におけるPRL-3の発現のリアルタイムPCR法(Taqman)分析は、タンパク質が主に筋肉において発現されることを明らかにした。その上、PRL-3は、肺臓、脂肪組織、精巣、脳、胎盤、肝臓および膵臓において低いが強いレベルで発現される。図8Eに示すように、PRL-3はヒト脂肪細胞の分化中に上方制御される。
【0136】
代謝活性組織(筋肉)におけるPRL-3の高発現、および前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のPRL-3の上方制御は、この遺伝子がエネルギー恒常性において役割を演ずることを示唆する。
【0137】
実施例5: 代謝物を定量するのためのアッセイ
実施例5A: 中性脂肪とグリコーゲンの貯蔵を定量するためのアッセイ(図5)
前脂肪細胞のレトロウイルス性の感染
パッケージング細胞を、リン酸カルシウム法を用いて、マウスPrl-1導入遺伝子および選択マーカーを保有するレトロウイルス性のプラスミドpLPCXで形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しないpLPCXで感染せしめた。簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の1日前に、2mlのDMEM+10%FCSにおいて、6ウェルあたり350,000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの末端濃度)。250 μlの形質移入のための混合物は、5 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地を6ウェル当たり2mlのDMEM+10%のCSと交換した。形質移入の1日後、細胞を再び洗浄し、6ウェル当たり1mlのDMEM+10%のCS、32℃にて、5%のCO2において2日間(ウイルスコレクション)インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(末端濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて1週間選択した。その選択後、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光を用いて細胞における導入遺伝子発現を確認した。過剰発現細胞を分化のために播種した。
【0138】
3T3-L1細胞は線維芽細胞として保ち、従来の技術および前出の脂肪細胞に分化した。本発明で開示したタンパク質の役割を分析するため、中性脂肪の保管、合成および輸送を定量するための試験管内測定法を実施した。
【0139】
代謝物の分析のための細胞可溶化液の調製
集密日(D0)以来、細胞培地は48時間毎に変えた。細胞および培地は次のように培地交換に8時間先行して収穫した。培地を収集し、PBSにおいて2回洗浄した600 μlのHB-緩衝剤(0.5%ポリオキシエチレン10 tridecylethan、1mMのDTA、0.01MのNaH2PO4、pH 7.4)における溶解に先行して、細胞を2回洗浄した。70℃にて5分間の不活性化後、細胞可溶化液をBio 101系溶解マトリックスB (0.1mm シリカ ビーズ; Q-Biogene社、Carlsbad、USA)上で、2x 45秒間、4.5 (Fastprep FP120、Bio 101Ther mosavant社、Holbrock、USA)の速度で攪拌することによって調製した。溶解細胞の上澄みを、3000 rpmにて2分間の遠心分離後に収集し、後の分析のため、-80℃にてアリコットに貯蔵した。
脂質生成中の細胞の中性脂肪値における変化(図5A)
細胞可溶化液および培地のタンパク質および中性脂肪含有量の総量を、製造者の指示従って、Bio-Rad DCタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad社、Munich、ドイツ)および修飾酵素性中性脂肪キット(GPO-Trinder ; Sigma社)を用いて、6ウェルプレートにおいて同時に分析し、簡潔に、試薬の最終容量を次のように96ウェル形式に調節した: 10 μlの試料を200 μlの試薬Aを用いて5分間37℃でインキュベートした。グリセローム(初期の吸光度: 540 nm)の定量後、50 μl試薬Bを添加し、継いで、別のインキュベーションを5分間、37℃にて行った(最終吸光度: 540 nm)。グリセローム濃度および中性脂肪濃度を、標準曲線を各アッセイに含むためにグリセローム標準セット(Sigma社)を用いて計算した。
【0140】
図5Aに示すように、本発明者らは、細胞を過剰発現するPRL-1では、空ベクターで変換した対照細胞と比較して、、分化の12日目に細胞の中性脂肪値が増加することを見出した。これらの実験における約20%の中性脂肪値の増加は有意である。例えば、3T3-L1細胞におけるPPARガンマ-1のような脂質生成の既知の制御因子を過剰発現させると、対照細胞と比較して、中性脂肪含有量が20〜30%増加することが繰り返し観察される。
【0141】
その上、ヒトSGBS細胞におけるPRL-1の過剰発現(Wabitschらの、2001)により、空ベクターで変換した対照細胞と比較して、分化の12日目には細胞中の中性脂肪値にさらに顕著な表現型(増加)がもたらされた。
【0142】
脂質作成中の細胞の血糖値における変化(図5B)
細胞可溶化液および培地は、タンパク質およびグリコーゲン総含有量を96ウェルプレートにおいて製造者の指示に従ってBio-Rad DCタンパク質アッセイ試薬(Bio-Rad社、Munich、ドイツ)およびHoffmann-LARoche社(Basel、スイス)からの酵素性でんぷんキットを用いて同時に3通り分析した。10-μlの試料を、20-μlのアミログルコシダーゼ溶液を用いて、15分間、60℃にて、グリコーゲンをグルコースに消化するためにインキュベートした。そのグルコースを、100 μlの蒸留水および100 μlの酵素補助因子緩衝剤および12μlの酵素緩衝剤(ヘキソキナーゼおよびグルコースリン酸脱水素酵素)を用いてさらに代謝する。背景(基礎)血糖値を、アミログルコシダーゼを添加しない複製プレートから減算することによって決定する。最終吸光度は340 nmとした。HB-緩衝剤をブランクとして用い、そしてグリコーゲンの標準曲線(Hoffmann-LARoche社)を各アッセイの一部とした。試料中のグリコーゲン含有量は、標準曲線を用いて算出した。
【0143】
図5Bに示したように、発明者らは、細胞を過剰発現するPrl-1において、脂質生成の間中、細胞のグリコーゲンレベルが増加することを見出した。細胞中のグリコーゲンレベルは、グリコーゲンの代謝回転が高いため、中性脂肪値に比べて可変性がある。グルコースは細胞によって急速に取り込み、そしてグリコーゲン形態において貯蔵する。このエネルギー貯蔵は、細胞の代謝要求に対する最初の迅速応答として使用される。分化の12日目には、細胞内のグリコーゲンレベルには100%以上の増加が見られ、Prl-1が細胞の中枢代謝経路に影響を及ぼすことを示す。
【0144】
実施例5B: 遊離脂肪酸とグルコースの取り込みを定量するためのアッセイ
前脂肪細胞のレンチウイルス性感染
パッケージング細胞を、リン酸カルシウム法を用いて、マウスPrl-1導入遺伝子(マウスとヒトのアミノ酸配列間の100%同一性!)および選択マーカーを保有するレトロウイルス性のプラスミドpLenti6/V5-DESTで形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しないpレンチ6/V5-DESTで感染せしめた。簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の2日前に、8mlのDMEM + 10 % FCSにおいて、T75フラスコあたり2800000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの末端濃度)。2μlの形質移入のための混合物は、20 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地をT75フラスコ当たり8 mlのDMEM+10%のCSと交換した。ウイルスコレクションの細胞を、37°Cにて、5%CO2で2日間インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(末端濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(SGBS)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を、5 μg/mlのブラストサイジンを用いて、少なくとも2週間選択した。その選択後、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光を用いて細胞における導入遺伝子発現を確認した。過剰発現細胞を分化のために播種した。
【0145】
SGBS細胞は線維芽細胞として維持し、従来の技術に記載しかつ前出した脂肪細胞に分化した(Haunerらの、2001も参照)。本発明において開示したタンパク質の役割を分析するため、遊離脂肪酸、グルコースの取り込みおよび中性脂肪の貯蔵(上記を参照)を定量するための試験管内試験法を実施した。
【0146】
分化した脂肪細胞による細胞内の遊離脂肪酸取り込み(SGBS細胞); (図9A)
脂質生成(D12)の末端段階中、細胞の長鎖脂肪酸を血漿膜全域に輸送する能力を分析した。脂肪酸の細胞輸送のため、Abumradらの、((1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 6008-6012)の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。要約すれば、血清飢餓に先行して、細胞をPBSで3回洗浄した。これに継いで、0.1%のFCSで補充したKRBH緩衝剤において、2.5時間、37℃にてインキュベートした。外来性遊離脂肪酸の取り込みは、非放射性オレイン酸および5 mMのグルコース存在下で、1μCi/ウェル/mlの最終活性において血清アルブミンに対して複合型の(3H)オレイン酸(NEnLife Sciences社)を含んだ同位体の培地の追加により、30分間、室温(RT)にて開始した。血漿膜全域で能動輸送(AT)の不在下における、受動拡散(PD)の算出するため、グルコース遊離培地(Sigma社)における20 mMのフロレチンを30分間、室温(RT)にて添加した。すべてのアッセイは、二通りのウェルにおいて実施した。能動輸送を終結するため、グルコース遊離培地における20 mMのフロレチンを細胞に添加した。細胞を1ml 0.1NのNaOHに溶解し、そして標準Biuret方法(タンパク質アッセイ試薬; Bio-Rad社)を用いて各ウェルのタンパク質濃度を評価した。
【0147】
本発明者らは、PRL-1を過剰発現する細胞の原形質膜に渡って存在する外因性脂肪酸の能動輸送が、対照細胞と比較して、脂質生成の第9日目およびその他の日(d7およびd12; データ図示せず)で大幅に高まることを見出した(図9A)。これは、これらの細胞における中性脂肪含有量の増加と一致するものである(を参照上記)。
【0148】
分化した脂肪細胞による細胞グルコースの取り込み(SGBS 細胞); (図9B)
グルコース取り込みの定量に関しては、0.1%のBSAおよび0.5 mMのグルコースで補充したKrebs-Ringer-Bicarbonat-Hepes緩衝剤(KRBH; 134 mMのNaCl、3.5 mMのKCl、1.2 mMのKH2 PO4、0.5 mMのMgSO4、1.5 mMのCaCl2、5 mMのNaHCO3、10 mMのHepes、pH 7.4)、における2.5時間、37℃にての血清飢餓に先行して、PBSを用いて細胞を3回洗浄した。インスリン刺激グルコース取り込みに関しては、20nMのヒトインスリン(Sigma社; キャリア: 10 mM HCl; 1% BSA)を用いて45分間、37℃にて細胞をインキュベートした。基底グルコース取り込みはキャリアのみで決定した。0,4 μCi/ウェル/mlの最終活性における代謝不可能な2-デオキシ-3H-D-グルコース(NEN Life Science社、Boston、USA)を30分間、37℃にて添加した。背景放射能の算出対しては、25 μMのサイトカラシンB (Sigma社)を使用した。すべてのアッセイは、3通りのウェルにおいて実施した。反応を終結するため、細胞を氷のように冷たいPBSで3回洗浄し、320 μl、0.1NのNaOHにおいて溶解した。各ウェルのタンパク質濃度をBio-Rad DCタンパク質検定用試薬(Bio-Rad)を用いて評価し、そして細胞可溶化液のシンチレーションカウンティング(計数)を5 mlのUltima-gold反応混液(Packard Bioscience社、Groningen、Nether lands)中で実施した。
【0149】
図9Bに示すように、Prl-1を過剰発現するSGBS細胞のインスリン刺激グルコースの取り込みは、脂質生成中に約100%増加される。この効果は、分化する脂肪細胞(d9)において既に見ることができるが、完全に分化した脂肪細胞(d12、データ図示せず)にも当てはまる。このグルコースの増加、すなわち細胞のエネルギー取り込みの増加が、SGBS分化中の本発明者らがが観察した中性脂肪値の増加の理由である可能性が最も高い(上述)。Prl-1は、基底グルコースの取り込みに有意な影響を及ぼさないように見えるが、脂肪細胞のグルコース取り込みには明確に影響を及ぼす。
【0150】
総合すると、Prl-1の過剰発現は、SGBS細胞において実施したすべての3アッセイで、外因性遊離脂肪酸およびグルコース、さらには、中性脂肪の貯蔵の代謝上に効果のあることを示し、Prl-1が糖尿病および関連代謝障害の治療のための興味深い有望な薬物標的であることを示す。
【0151】
実施例6: Prl-1のLOF脂肪細胞の脂質貯蔵、合成および輸送を定量するためのアッセイ(図6)
RNAi技術による3T3-L1脂肪細胞の機能低下
Prl-1発現を安定して抑制するため、標的特異的短い干渉RNA (short interfering RNA)の構成物を発現することを目的として、BrummelkampらによるヒトhH1プロモーターの制御下で、3T3-L1前脂肪細胞をレトロウイルス性感染によって遺伝子操作した(Science 2002、Vol 296、p. 550-553)。 次のPrl-1特異的RNAi 配列を使用した: AGG ATT CCA ATG GTC ATA G (配列識別番号14)。
【0152】
前脂肪細胞のレトロウイルス性の感染
パッケージング細胞を、ヒトhH1プロモーターおよび選択マーカーの制御下、特異的RNAi構成物を保有するレトロウイルス性のプラスミドpLPCXで、リン酸カルシウム手法を用いて形質移入した。対照細胞は、導入遺伝子を保有しない同じベクターで感染せしめた。
【0153】
簡単に、指数関数的に成長するパッケージング細胞を、形質移入の1日前に、2mlのDMEM+10%FCSにおいて、6ウェルあたり350,000細胞の密度で播種した。形質移入の10分前に、クロロキンを表面を覆う培地に直接添加した(25 μMの最終濃度)。250 μlの形質移入のための混合物は、5 μgのプラスミド-DNA(候補: ヘルパーウイルス、比率1:1)および250 mMの塩化カルシウム(CaCl2)から成り、15 mlのプラスチック管において調製した。同一容量の2x HBS(280 μMのNaCl、50 μM のHEPES、1.5 mMのNa2HPO4、pH 7.06)を加えた後、気泡を混合物に15秒間注入した。形質移入混合物を滴下式でパッケージング細胞に添加および分布した後に、細胞を37℃にて、5%のCO2で6時間インキュベートした。細胞はPBSで洗浄した後、培地を6ウェル当たり2mlのDMEM+10%のCSと交換した。形質移入の1日後、細胞を再び洗浄し、6ウェル当たり1mlのDMEM+10%のCS、32℃にて、5%のCO2において2日間(ウイルスコレクション)インキュベートした。さらに、その上澄みを0.45 μmのセルロースアセテートフィルタを通してフィルターし、そしてポリブレン(最終濃度8 μg/ml)を添加した。半密集状態における哺乳動物の線維芽細胞(3T3-L1)細胞を調製したウイルスを含んだ培地で覆った。感染した細胞を2μg/mlのピューロマイシンを用いて1週間選択した。
【0154】
3T3-L1細胞は線維芽細胞として保ち、従来の技術および前出の脂肪細胞に分化した。発現の低下は、定量的rtPCR法による検証では分化中60%以上であった。本発明で開示したタンパク質の役割を分析するため、脂質の保管、合成および輸送を定量するための試験管内測定法を実施した。
【0155】
脂質生成中の脂質の合成(図6A)
脂質生成中(第6日目)、脂質を代謝する能力に関して細胞を分析した。脂質合成のため、Jensenらの、((2000) JBC 275: 40148)の方法に対する修飾プロトコルを樹立した。細胞は、0.1%のFCSで補充したKrebs-Ringer -Bicarbonate-Hepes緩衝剤(KRBH; 134 nMのNaCl、3.5mMのKCl、1.2mMのKH2PO4、0.5mMのMgSO4、1.5mMのCaCl2、5mMのNaHCO3、10 mMのHepes、pH 7.4)における2.5時間、37℃にての血清飢餓に先行して、PBSで3回洗浄した。インスリン刺激脂質合成に関しては、細胞を1μMのウシインスリン(Sigma社; キャリア: 0.005 NのHCl)で45分間、37℃にてインキュベートした。基礎脂質合成は、キャリアのみを用いて確定した。 14C(U)-D-グルコース(NEN Life Sciences社) (1μCi/ウェル/mlの最終活性における)を5mMのグルコースの存在下で30分間37℃にて添加した。背景放射能の算出対しては、25 μMのサイトカラシンB (Sigma社)を使用した。すべてのアッセイは、3通りのウェルにおいて実施した。反応を終結するため、細胞を氷のように冷たいPBSで3回洗浄し、1ml 0.1NのNaOHにおいて溶解した。各ウェルのタンパク質濃度は、標準Biuret方法(タンパク質アッセイ試薬; Bio-Rad社)を用いて評価した。全脂質は、Insta-Fluorシンチレーション反応混液(Packard Bioscience社)において一晩抽出後に水溶性の位相から分離し、継いでシンチレーションカウンティングを行った。
【0156】
結果は、Prl-1のLOF細胞はインスリンで刺激されると、対照群と比較して、外因性グルコースからの脂質合成において効果の弱いことを明らかにする(図6A)。Prl-1のLOF細胞における脂肪酸エステルのレベルは、対照細胞と比較して、脂質生成の第12日目に相当に増加した(図6B)。
【0157】
実施例7: ヒト組織における本発明のタンパク質の転写物の発現差異の分析
実施例4 において記載したように、ヒト初代脂肪組織からのRNA調整を行った。ターゲット作成、ハイブリダイゼーションおよびスキャニング操作を製造者説明書の記載に従って実施した(Affymetrix社、Santa Clara、USAから取得したAffymetrix技術マニュアルを参照)。
【0158】
図7A〜7Bでは、X軸は時間軸に相当し、これらの図で示したのは、脂肪細胞分化の0日目および12日目である。Y軸は蛍光強度を表す。ヒト腹部由来の一次脂肪細胞分化およびヒト脂肪細胞株(SGBS)分化を用いたタンパク質チロシンホスファターゼType-IVA、メンバー1(PRL-1)遺伝子の発現分析(Affymetrix GeneChips を用いた) は、脂肪細胞におけるヒトPRL-1遺伝子の発現差異を明確に示す。さまざまな非依存性の実験を行った。さらに、本実験は、PRL-1転写物(図7A〜B を参照) が、分化中には12日目と比較して0日目に最も豊富なであることを示す。
【0159】
このように、前脂肪細胞が成熟脂肪細胞に分化するためには、PRL-1タンパク質が著しく減少される必要がある。以上の点から、前脂肪細胞におけるPRL-1には、脂肪質の分化を阻害する能力が備わっている。以上の点から、PRL-1タンパク質は、ヒト代謝の調節、特に脂質生成の調節において重要な役割を果たすことが可能であるので、これらのタンパク質は肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群において重要な役割を果たす可能性がある。
【0160】
実施例 8: Prl-1、Prl-2、またはPrl-3遺伝子導入マウスの作成および分析
遺伝子導入動物の作成
当業者であれば公知のような標準プロトコルを用いてマウスPrl-1、Prl-2、およびPrl-3 cDNAをマウス茶色脂肪組織(BAT)から分離した。RT-PCR により、cDNAを増幅し、そして点変異をcDNAに導入した。
【0161】
結果として得られた変異型cDNAをに好適な遺伝子導入発現ベクターにクローニングした。導入遺伝子を、受精したマウス胚(望ましくは菌株C57/BL6/CBAF1(Harlan Winkelmann))の雄性前核へ微量注入した。注入した胚は偽妊娠の仮親マウスへ移した。遺伝子導入創始者をPCR分析によって検出した。構成物を含んだ2つの非依存性遺伝子導入マウスラインを樹立し、C57/BL6の背景に保持した。手短に、分析用のF1マウスを作成するために、初代動物をC57/BL6マウスと戻し交配させた。遺伝子導入マウスをC57/Bl6背景上へ連続的に繁殖せしめた。本発明のタンパク質の発現は、上記のようにTaqman分析によって分析することができ、当業者であれば周知のように、マウスのさらなる分析を行うこともできる。
【0162】
本発明のために、当事者にとっては当然のことだが、本明細書の至る所で言及した任意の機能の任意の組み合わせをここに明示的に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】ショウジョウバエPRL-1(GadFlyアクセッション番号CG4993)変異体のエネルギー貯蔵代謝物(ESM; 中性脂肪(TG)およびグリコーゲン)含有量を示す。
【図2】変異型PRL-1(Gadflyアクセッション番号)遺伝子座の分子構造を示す。
【図3A】ヒトPrl-1の核酸配列を示す(配列識別番号1)。
【図3B】ヒトPrl-1のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号2)。
【図3C】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型1を示す(配列識別番号3)。
【図3D】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(1文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号4)。
【図3E】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型2を示す(配列識別番号5)。
【図3F】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(2文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号6)。
【図3G】ヒトPrl-2の核酸配列、転写物変異型3を示す(配列識別番号7)。
【図3H】ヒトPrl-2のアミノ酸配列(3文字コード)、転写物変異型1を示す(配列識別番号8)。
【図3I】ヒトPrl-3の核酸配列を示す(配列識別番号9)。
【図3J】ヒトPrl-3のアミノ酸配列(1文字コード)を示す(配列識別番号10)。
【図4A】野生型マウス組織におけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4B】異なるマウスモデルにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4C】3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4D】野生型マウス組織におけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4E】異なるマウスモデルにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4F】食餌制限マウスと比較した高脂肪食野生型マウスにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図4G】3T3-L1細胞の前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のにおけるPrl-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図5A】Prl-1を過剰発現する細胞における中性脂肪値の上昇を示す。
【図5B】Prl-1を過剰発現する細胞におけるグリコーゲンレベルの上昇を示す。
【図6A】Prl-1のLOF細胞における脂質合成のレベルの減少を示す。
【図6B】Prl-1のLOF細胞における脂肪酸(FA)エステル化のレベルの上昇を示す。
【図7A】前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中の腹部由来の一次脂肪細胞におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【図7B】前脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化中のヒト脂肪細胞株におけるPRL-1発現のマイクロアレイ分析を示す。
【図8A】ヒト組織におけるPRL-1発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8B】異なるヒト組織におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8C】前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-2発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8D】異なるヒト組織におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図8E】前脂肪細胞分化中のヒト一次脂肪細胞におけるPRL-3発現のリアルタイムPCR分析を示す。
【図9A】SGBS細胞を過剰発現するPrl-1による遊離脂肪酸取り込みの上昇を示す。
【図9B】SGBS細胞を過剰発現するPrl-1によるグルコースの取り込みの上昇を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PRL-1相同タンパク質および(または)その機能的断片、PRL-1相同タンパク質をコードする核酸分子および(または)その機能的断片および(または)当該核酸分子の修飾因子/エフェクターおよび(または)タンパク質から成り、医薬用に許容できるキャリア、希釈液および(または)添加物と共に提供される医薬品組成物。
【請求項2】
核酸分子が脊椎動物または昆虫のPRL-1核酸、特にヒトPRL-1ホモログをコードする核酸(ヒトPrl-1、Prl-2、またはPrl-3タンパク質のような)、および(または)それに対して相補的またはその機能的な断片またはその変異型である核分子である、請求項1の組成物。
【請求項3】
当該核酸分子が下記から成る群から選択されるような請求項1または請求項2に記載の組成物:
(a) 表 1 に示したポリペプチドをコードする核酸分子、または(および)当該ポリペプチドのアイソフォーム、断片または(および)変異体;
(b) 表2に示した核酸分子から成る核酸分子か、または表1に示した核酸分子である核酸分子;
(c) 50℃にて、1x SSC および0.1% のSDSを含む溶液中で(a)または(b)の配列に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、
(d) (a)、(b)または(c)で定義した核酸配列に対する遺伝子暗号の結果として変性される核酸分子;
(e) ポリペプチドをコード化する核酸分子であり、少なくとも 85%、望ましくは少なくとも 90%、より望ましくは少なくとも 95%、より望ましくは少なくとも 98%、および最大で 99,6% までの同一性を、好ましくは表2に記載または請求項2において定義したヒトPRL-1相同タンパク質、または(a) において定義したポリペプチドに対して持つ核酸分子; および
(f) 当該突然変異がコード化されたポリペプチドにおいて改変、削除、重複または早期停止を引き起こす突然変異によって(a)〜(e)の核酸分子と異なる核酸分子。
(g) 長さが15〜25塩基、望ましくは25〜35塩基、より望ましくは35〜50塩基および最も望ましくは少なくとも50塩基長を有する(a)〜(e)の任意のヌクレオチド配列の部分的配列。
【請求項4】
核酸分子が DNA分子、特に相補DNAまたはゲノムDNAである請求項 1〜3 の任意の 1項の組成物。
【請求項5】
当該核酸がポリペプチドをコードし、エネルギー恒常性および(または)中性脂肪の代謝の調節に寄与する請求項1〜4の任意の1項の組成物。
【請求項6】
当該核酸分子が修飾核酸分子である請求項 1〜5 の任意の 1項の組成物。
【請求項7】
組換え核酸分子がベクター、特に発現ベクターである請求項 1〜6 の任意の 1項の組成物。
【請求項8】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである請求項 1〜5 の任意の 1項の組成物。
【請求項9】
当該修飾ポリペプチドが融合ポリペプチドである請求項 8 の組成物。
【請求項10】
当該核酸分子がハイブリダイゼーションプローブ、プライマーおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される請求項1〜7に記載の任意の1項の組成物。
【請求項11】
診断用組成物である請求項1〜10 の任意の 1項の組成物。
【請求項12】
治療用組成物である請求項1〜10 の任意の 1項の組成物。
【請求項13】
検出および(または)検証用、代謝症候群、肥満症および(または)糖尿病を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、細胞、細胞塊、器官臓器および(または)被検体における摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防用の薬剤の製造のための請求項1〜12の任意の1項の組成物。
【請求項14】
生体内で利用するための特許請求の範囲 1〜13 の任意の一項に記載の組成物
【請求項15】
試験管内で利用するための特許請求の範囲 1〜13 の任意の一項に記載の組成物
【請求項16】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群の治療用の医薬品製造のため、およびPRL-1相同ポリペプチドによって影響および(または)修飾される遺伝子および(または)遺伝子産物の機能を管理のためのPRL-1相同タンパク質またはアイソフォーム、機能的断片またはその変異体、具体的には表2に記載した核酸分子コードする核酸分子の使用法、特に請求項 3 による核酸分子(a)、(b)、または (c)、および(または)それによってコード化されたポリペプチドおよび(または)機能的断片および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの変異体および(または)当該核酸分子またはポリペプチドの修飾因子/エフェクターの使用法。
【請求項17】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項3に記載のポリペプチドと相互作用する能力のある物質を同定するための、PRL-1相同タンパク質またはアイソフォーム、機能的断片またはその変異体、具体的には表2に記載した核酸分子をコードする核酸分子の使用法、特に請求項 3 (a)、(b)、または(c)に記載の核酸分子、および(または)それによってコード化されたポリペプチドおよび(または)機能的断片および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの変異体および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの修飾因子/エフェクターの使用法。
【請求項18】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項3によるポリペプチドの修飾発現を示す非ヒト遺伝子導入動物。
【請求項19】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの発現が増加および(または)減少する請求項 18 に記載の動物。
【請求項20】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの修飾発現を示す組換え宿主細胞。
【請求項21】
ヒト細胞である請求項 20 に記載の細胞。
【請求項22】
哺乳動物におけるエネルギー恒常性および(または)中性脂肪の代謝に関与する(ポリ)ペプチドを同定する方法の手順は下記の通りである。
(a) 当該(ポリ)ペプチドの結合を可能にする条件下での、PRL-1 相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドまたはその機能的断片を用いた(ポリ)ペプチドの回収にコンタクトする手順;
(b) 結合しない(ポリ)ペプチドを除去するステップ、および
(c) 当該PRL-1相同なポリペプチドまたはその断片に結合する(ポリ)ペプチドを同定するステップ。
【請求項23】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチド結合標的/結合剤との相互作用を調節/影響する薬剤のための、下記の手順から成るスクリーニング方法
(a) 下記から成る混合物をインキュベートする手順。
(aa) PRL-1 相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドまたはその機能的断片;
(ab) 当該ポリペプチドまたはその機能的断片の結合標的および薬剤; および
(ac) 候補薬剤
下記参照の親和性にて当該ポリペプチドまたはその機能的断片が特異的に当該結合標的と薬剤に結合する条件下の候補薬剤;
(b) 薬剤の親和性を決定するため、当該結合標的に対する当該ポリペプチドまたはその機能的断片の結合親和性を検出する手順; および
(c) 薬剤の親和性と基準親和性間の差異を確定する手順。
【請求項24】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの活性を調節および影響する薬剤の、下記の手順から成るスクリーニングの方法。
(a) 下記から成る混合物をインキュベートする手順。
(aa) 当該ポリペプチドまたはその機能的断片および
(ab) 候補薬剤
当該ポリペプチドまたはその機能的断片が基準活性を持つ条件下の候補薬剤;
(b) 薬物の存在における活性を確定するための、当該ポリペプチドまたはその機能的断片の活性を検出する手順; および
(c) 本薬剤の存在下の活性と標準活性間の差を確定する手順
【請求項25】
医薬用に許容できるキャリア、希釈剤およびおよび(または)添加剤を有する請求項 22または 24 に記載の方法によって同定された(ポリ)ペプチド、または請求項23の方法によって同定された薬剤を含む組成物を作り出す方法。
【請求項26】
当該組成物が、肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の防止、軽減または(および)治療するための医薬品組成物である請求項25の方法。
【請求項27】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防用の医薬品組成物の調製ための、請求項 22の方法によって同定する(ポリ)ペプチドの使用法、または請求項 23 または 24 の方法によって同定する薬剤の使用法。
【請求項28】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 1〜6 または 10 の任意の項において定義した核酸分子の使用法。
【請求項29】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 1〜6、8 または 9 の任意の項において定義したポリペプチドの使用法。
【請求項30】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 7 において定義したベクターの使用法。
【請求項31】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 20 または 21において定義した宿主細胞の使用法。
【請求項32】
PRL-1相同遺伝子産物を過剰発現または低発現する非ヒト導入遺伝子動物の産生のための、PRL-1相同核酸分子の使用法または/およびその機能的断片の使用法。
【請求項33】
少なくとも下記の 1つを備えたキット。
(a) PRL-1相同核酸分子または/およびその機能的断片;
(b) PRL-1相同アミノ酸分子または/および機能的断片または/およびそのアイソフォーム;
(c) (a) の核酸から成るベクター;
(d) (a) の核酸または(c) のベクターから成る宿主細胞;
(e) (a) の核酸によってコード化されたポリペプチド;
(f) (a) の核酸によってコード化された融合ポリペプチド;
(g) (a) の核酸、および(または) (b)、(e)、および(または) (f) のポリペプチドの抗体、アプタマーおよび(または)別の修飾因子/エフェクター、および
(h) (a)の核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項1】
PRL-1相同タンパク質および(または)その機能的断片、PRL-1相同タンパク質をコードする核酸分子および(または)その機能的断片および(または)当該核酸分子の修飾因子/エフェクターおよび(または)タンパク質から成り、医薬用に許容できるキャリア、希釈液および(または)添加物と共に提供される医薬品組成物。
【請求項2】
核酸分子が脊椎動物または昆虫のPRL-1核酸、特にヒトPRL-1ホモログをコードする核酸(ヒトPrl-1、Prl-2、またはPrl-3タンパク質のような)、および(または)それに対して相補的またはその機能的な断片またはその変異型である核分子である、請求項1の組成物。
【請求項3】
当該核酸分子が下記から成る群から選択されるような請求項1または請求項2に記載の組成物:
(a) 表 1 に示したポリペプチドをコードする核酸分子、または(および)当該ポリペプチドのアイソフォーム、断片または(および)変異体;
(b) 表2に示した核酸分子から成る核酸分子か、または表1に示した核酸分子である核酸分子;
(c) 50℃にて、1x SSC および0.1% のSDSを含む溶液中で(a)または(b)の配列に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列、
(d) (a)、(b)または(c)で定義した核酸配列に対する遺伝子暗号の結果として変性される核酸分子;
(e) ポリペプチドをコード化する核酸分子であり、少なくとも 85%、望ましくは少なくとも 90%、より望ましくは少なくとも 95%、より望ましくは少なくとも 98%、および最大で 99,6% までの同一性を、好ましくは表2に記載または請求項2において定義したヒトPRL-1相同タンパク質、または(a) において定義したポリペプチドに対して持つ核酸分子; および
(f) 当該突然変異がコード化されたポリペプチドにおいて改変、削除、重複または早期停止を引き起こす突然変異によって(a)〜(e)の核酸分子と異なる核酸分子。
(g) 長さが15〜25塩基、望ましくは25〜35塩基、より望ましくは35〜50塩基および最も望ましくは少なくとも50塩基長を有する(a)〜(e)の任意のヌクレオチド配列の部分的配列。
【請求項4】
核酸分子が DNA分子、特に相補DNAまたはゲノムDNAである請求項 1〜3 の任意の 1項の組成物。
【請求項5】
当該核酸がポリペプチドをコードし、エネルギー恒常性および(または)中性脂肪の代謝の調節に寄与する請求項1〜4の任意の1項の組成物。
【請求項6】
当該核酸分子が修飾核酸分子である請求項 1〜5 の任意の 1項の組成物。
【請求項7】
組換え核酸分子がベクター、特に発現ベクターである請求項 1〜6 の任意の 1項の組成物。
【請求項8】
ポリペプチドが組換えポリペプチドである請求項 1〜5 の任意の 1項の組成物。
【請求項9】
当該修飾ポリペプチドが融合ポリペプチドである請求項 8 の組成物。
【請求項10】
当該核酸分子がハイブリダイゼーションプローブ、プライマーおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される請求項1〜7に記載の任意の1項の組成物。
【請求項11】
診断用組成物である請求項1〜10 の任意の 1項の組成物。
【請求項12】
治療用組成物である請求項1〜10 の任意の 1項の組成物。
【請求項13】
検出および(または)検証用、代謝症候群、肥満症および(または)糖尿病を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、細胞、細胞塊、器官臓器および(または)被検体における摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防用の薬剤の製造のための請求項1〜12の任意の1項の組成物。
【請求項14】
生体内で利用するための特許請求の範囲 1〜13 の任意の一項に記載の組成物
【請求項15】
試験管内で利用するための特許請求の範囲 1〜13 の任意の一項に記載の組成物
【請求項16】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群の治療用の医薬品製造のため、およびPRL-1相同ポリペプチドによって影響および(または)修飾される遺伝子および(または)遺伝子産物の機能を管理のためのPRL-1相同タンパク質またはアイソフォーム、機能的断片またはその変異体、具体的には表2に記載した核酸分子コードする核酸分子の使用法、特に請求項 3 による核酸分子(a)、(b)、または (c)、および(または)それによってコード化されたポリペプチドおよび(または)機能的断片および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの変異体および(または)当該核酸分子またはポリペプチドの修飾因子/エフェクターの使用法。
【請求項17】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項3に記載のポリペプチドと相互作用する能力のある物質を同定するための、PRL-1相同タンパク質またはアイソフォーム、機能的断片またはその変異体、具体的には表2に記載した核酸分子をコードする核酸分子の使用法、特に請求項 3 (a)、(b)、または(c)に記載の核酸分子、および(または)それによってコード化されたポリペプチドおよび(または)機能的断片および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの変異体および(または)当該核酸分子または当該ポリペプチドの修飾因子/エフェクターの使用法。
【請求項18】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項3によるポリペプチドの修飾発現を示す非ヒト遺伝子導入動物。
【請求項19】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの発現が増加および(または)減少する請求項 18 に記載の動物。
【請求項20】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの修飾発現を示す組換え宿主細胞。
【請求項21】
ヒト細胞である請求項 20 に記載の細胞。
【請求項22】
哺乳動物におけるエネルギー恒常性および(または)中性脂肪の代謝に関与する(ポリ)ペプチドを同定する方法の手順は下記の通りである。
(a) 当該(ポリ)ペプチドの結合を可能にする条件下での、PRL-1 相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドまたはその機能的断片を用いた(ポリ)ペプチドの回収にコンタクトする手順;
(b) 結合しない(ポリ)ペプチドを除去するステップ、および
(c) 当該PRL-1相同なポリペプチドまたはその断片に結合する(ポリ)ペプチドを同定するステップ。
【請求項23】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチド結合標的/結合剤との相互作用を調節/影響する薬剤のための、下記の手順から成るスクリーニング方法
(a) 下記から成る混合物をインキュベートする手順。
(aa) PRL-1 相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドまたはその機能的断片;
(ab) 当該ポリペプチドまたはその機能的断片の結合標的および薬剤; および
(ac) 候補薬剤
下記参照の親和性にて当該ポリペプチドまたはその機能的断片が特異的に当該結合標的と薬剤に結合する条件下の候補薬剤;
(b) 薬剤の親和性を決定するため、当該結合標的に対する当該ポリペプチドまたはその機能的断片の結合親和性を検出する手順; および
(c) 薬剤の親和性と基準親和性間の差異を確定する手順。
【請求項24】
PRL-1相同ポリペプチド、特に請求項 3 によるポリペプチドの活性を調節および影響する薬剤の、下記の手順から成るスクリーニングの方法。
(a) 下記から成る混合物をインキュベートする手順。
(aa) 当該ポリペプチドまたはその機能的断片および
(ab) 候補薬剤
当該ポリペプチドまたはその機能的断片が基準活性を持つ条件下の候補薬剤;
(b) 薬物の存在における活性を確定するための、当該ポリペプチドまたはその機能的断片の活性を検出する手順; および
(c) 本薬剤の存在下の活性と標準活性間の差を確定する手順
【請求項25】
医薬用に許容できるキャリア、希釈剤およびおよび(または)添加剤を有する請求項 22または 24 に記載の方法によって同定された(ポリ)ペプチド、または請求項23の方法によって同定された薬剤を含む組成物を作り出す方法。
【請求項26】
当該組成物が、肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の防止、軽減または(および)治療するための医薬品組成物である請求項25の方法。
【請求項27】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈性心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防用の医薬品組成物の調製ための、請求項 22の方法によって同定する(ポリ)ペプチドの使用法、または請求項 23 または 24 の方法によって同定する薬剤の使用法。
【請求項28】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 1〜6 または 10 の任意の項において定義した核酸分子の使用法。
【請求項29】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 1〜6、8 または 9 の任意の項において定義したポリペプチドの使用法。
【請求項30】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 7 において定義したベクターの使用法。
【請求項31】
肥満症、糖尿病、および(または)代謝症候群を始めとする代謝疾患または機能障害、さらには、摂食障害、悪質液、高血圧、冠動脈心疾患、高コレステロール血症、異脂肪血症、骨関節炎、または胆石症、または肝臓線維症のような関連障害の治療、軽減および(または)予防のための薬物の調整のための請求項 20 または 21において定義した宿主細胞の使用法。
【請求項32】
PRL-1相同遺伝子産物を過剰発現または低発現する非ヒト導入遺伝子動物の産生のための、PRL-1相同核酸分子の使用法または/およびその機能的断片の使用法。
【請求項33】
少なくとも下記の 1つを備えたキット。
(a) PRL-1相同核酸分子または/およびその機能的断片;
(b) PRL-1相同アミノ酸分子または/および機能的断片または/およびそのアイソフォーム;
(c) (a) の核酸から成るベクター;
(d) (a) の核酸または(c) のベクターから成る宿主細胞;
(e) (a) の核酸によってコード化されたポリペプチド;
(f) (a) の核酸によってコード化された融合ポリペプチド;
(g) (a) の核酸、および(または) (b)、(e)、および(または) (f) のポリペプチドの抗体、アプタマーおよび(または)別の修飾因子/エフェクター、および
(h) (a)の核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【図1】
【図2】
【図3A−1】
【図3A−2】
【図3B】
【図3C−1】
【図3C−2】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3A−1】
【図3A−2】
【図3B】
【図3C−1】
【図3C−2】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2006−519757(P2006−519757A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556282(P2004−556282)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013655
【国際公開番号】WO2004/050117
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502250581)デヴェロゲン アクチエンゲゼルシャフト フュア エントヴィックルングスビオローギッシェ フォルシュング (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013655
【国際公開番号】WO2004/050117
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502250581)デヴェロゲン アクチエンゲゼルシャフト フュア エントヴィックルングスビオローギッシェ フォルシュング (6)
【Fターム(参考)】
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