エネルギー抽出位置演算装置、エネルギー抽出位置演算方法、エネルギー抽出位置演算プログラム、エネルギー抽出システム
【課題】実装置を用いて実際に測定するコストを回避して、効率よくエネルギーを抽出できる位置を求める。
【解決手段】入射エネルギーの伝播路に関する情報、伝播路偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する記憶部140、入射エネルギーの伝播路に関する情報、偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部121、出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部122、拡散領域と抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部130を有する。
【解決手段】入射エネルギーの伝播路に関する情報、伝播路偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する記憶部140、入射エネルギーの伝播路に関する情報、偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部121、出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部122、拡散領域と抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部130を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、入射エネルギーの伝播方向を変化させて出射エネルギーとする偏向面に対して、出射エネルギーの抽出位置を演算するためのエネルギー抽出位置演算技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射された特定のエネルギーの伝播方向を変化させ、そのエネルギーを抽出するための装置が存在する。たとえば、パラボラアンテナは、放物面を利用して、入射した電波を収斂させ、特定の位置に配置された抽出器(たとえば、フィードホーン)によって、電波エネルギーを抽出する器具である(特許文献1参照)。また、集光レンズは、屈折を利用して光を収斂させる器具である。この集光レンズによって光が収斂する焦点位置においては、高い熱エネルギーを抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−122929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エネルギーを抽出する位置(たとえば、抽出器の配置位置)は、できるだけエネルギー損失が少なくなる位置もしくは所望の量のエネルギーが得られる位置とすることが望ましい。従来は、かかる位置を求めるためには、実装置を用いて実際に測定する必要があった。しかし、この場合には、実装置の作製および測定という面倒な作業が必要となり、コストがかかる。
【0005】
このため、エネルギーを抽出すべき位置を、数理モデルを用いて効率よく求めることができれば、コストの低減につながる。そして、その際には、数理モデルの複雑さにかかわらず、解を求めることができ、演算量も少ないことが望ましい。
【0006】
さらに、例えば、パラボラアンテナにおいては、パラボロイド(回転放物面)回転軸と平行でない直進性エネルギーは、その焦点に収斂されない。この場合、直進性エネルギーは、入射角度に応じた空間に広がりをもって収斂されてしまう。このため、エネルギーを抽出すべき位置を、広がりを持った空間として算出できなければ、効率のよい抽出ができない。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、実装置を用いて実際に測定するコストを回避して、効率よくエネルギーを抽出できる位置を求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のエネルギー抽出位置演算装置は、コンピュータ又は電子回路が、指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する入射エネルギー伝播路記憶部と、前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する伝播路偏向面素記憶部と、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶するエネルギー抽出面記憶部と、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部と、前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部と、前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部と、を有することを特徴とする。
【0009】
なお、本発明は、エネルギー抽出位置演算方法およびエネルギー抽出位置演算プログラムの観点から捉えることもできる。
【0010】
以上のような発明では、偏向面を複数の偏向面素に仮想的に分割して捉え、各偏向面素に対する入射エネルギー伝播路から、出射エネルギーの伝播路を求める。そして、出射エネルギーの伝播路から、その拡散領域を求め、拡散領域と抽出面との交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する。このように、数理モデル化可能な情報を用いて探索することができるので、実装置を用いた測定が不要となる。したがって、所望のエネルギー抽出領域を効率よく求めることができる。
【0011】
他の態様では、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報には、少なくとも入射エネルギーの伝播方向が含まれ、前記偏向面素に関する情報には、少なくとも各偏向面素の偏向特性および配置位置が含まれることを特徴とする。
他の態様では、前記偏向面素の偏向特性および配置位置を設定する伝播路偏向面素設定部を有することを特徴とする。
【0012】
以上のような態様では、任意の伝播路偏向面および偏向形式について、入射エネルギーの伝播方向、複数の偏向面素の偏向特性および配置位置という数理モデルを設定するだけで、エネルギー抽出位置を効率よく求めることができる。
【0013】
他の態様では、前記偏向面に関する情報を記憶する伝播路偏向面記憶部を有し、前記偏向面に関する情報には、少なくとも偏向面の形状および偏向領域が含まれることを特徴とする。
【0014】
以上のような態様では、実際の偏向面を数理モデル化した偏向面の形状および偏向領域に基づいて、偏向面素を設定し、エネルギー抽出位置を効率よく求めることができる。
【0015】
他の態様では、前記拡散領域算出部は、エネルギー拡散関数に基づいて、前記拡散領域を算出することを特徴とする。
【0016】
以上のような態様では、出射エネルギーについて、断面積を持つ有限の拡散領域と抽出面との交差面を抽出対象とする。このため、抽出面において、断面積を持たない点の2次元的なエネルギー分布を求める場合に比べて、計算コストを抑えることができる。
【0017】
他の態様では、前記探索部による探索の疎密に関する情報である密度要素を記憶する密度要素記憶部と、前記密度要素を変更する密度要素変更部と、を有することを特徴とする。
【0018】
以上のような態様では、密度要素を変更して探索を繰り返す疎密探索を実行することにより、より効率よくエネルギー抽出領域を求めることができる。
【0019】
他の態様では、前記密度要素変更部による変更の基準となる疎密探索条件を記憶する疎密探索条件記憶部を有することを特徴とする。
【0020】
以上のような態様では、疎密探索条件を調節することにより、適切な計算コストを設定できる。
【0021】
他の態様では、前記密度要素には、拡散領域を算出するためのエネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出面に設定される複数の抽出点の疎密に関する情報、複数設定された抽出面の疎密に関する情報の少なくとも一つが含まれていることを特徴とする。
【0022】
以上のような態様では、エネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出点の疎密に関する情報、抽出面の疎密に関する情報を変更することにより、伝播路偏向面に応じた適切な密度の疎密探索を実行することができる。
【0023】
他の態様は、前記抽出面に関する情報には、抽出面に設定される複数の抽出点に関する情報が含まれ、前記探索部は、前記交差面に含まれる抽出点におけるエネルギー量に関する値を抽出する抽出点エネルギー抽出部と、前記抽出点におけるエネルギー量に関する値が、所定の条件となる抽出点を探索する抽出点探索部と、を有することを特徴とする。
【0024】
以上のような態様では、出射エネルギーの拡散領域と抽出面との交差面に含まれる有限の抽出点を対象とするので、エネルギー量を効率よく抽出できる。
【0025】
他の態様では、前記抽出面は複数設定され、複数の抽出面において、前記抽出点探索部により抽出された抽出点に基づいて、所定の条件となるエネルギー抽出領域を抽出する領域抽出部を有することを特徴とする。
【0026】
以上のような態様では、複数の抽出面を設定することにより、広がりを持った空間である抽出領域を、効率よく求めることができる。
【0027】
他の態様では、複数の前記抽出面の位置及び前記抽出点の間隔を設定する抽出面設定部を有することを特徴とする。
【0028】
以上のような態様では、抽出面の位置、抽出点の間隔等、スケーリングが容易な情報を用いるので、これらの情報を適宜変更することで、計算コストを適切に設定できる。
【0029】
他の態様では、前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が最大であることを含むことを特徴とする。
他の態様では、前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が所定の範囲内であることを含むことを特徴とする。
【0030】
以上のような態様では、所定の条件を所望の値に設定することにより、所望のエネルギー量が得られるエネルギー抽出位置を、効率よく求めることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、実装置を用いて実際に測定するコストを回避して、効率よくエネルギーを抽出できる位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のエネルギー抽出システムにおける伝播路偏向面、エネルギー抽出空間及びエネルギー抽出器の一例を示す簡略説明図である。
【図2】本発明のエネルギー抽出位置演算装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図3】伝播路偏向面を構成する伝播路偏向面素の一例を示す説明図である。
【図4】出射エネルギーの拡散領域の一例を示す説明図である。
【図5】エネルギー抽出面の一例を示す説明図である。
【図6】伝播路偏向面素に対する入射エネルギーの入射方向と出射エネルギーの出射方向との関係を示す説明図である。
【図7】エネルギー抽出面とエネルギー拡散領域との交差面を示す説明図である。
【図8】図2の実施形態によるエネルギー抽出位置演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=0上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図10】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=1上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図11】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=2上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図12】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=3上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[1.構成]
図1および図2に示すように、本実施形態は、伝播路偏向面1、エネルギー抽出空間2、エネルギー抽出器3、エネルギー抽出位置演算装置100等を有している。
【0034】
[伝播エネルギー]
まず、抽出の対象となるエネルギーを説明する。このエネルギーは、指向性を有し、任意の空間を伝播する。エネルギーの量は、その特性に応じて所望の物理量で観測および抽出できる。エネルギーの例としては、光や電波などの電磁波、音波、移動する物質などが挙げられる。ただし、上記特性を有するものであれば、これらには限定されない。なお、エネルギーが伝播する経路のうち、そのエネルギー量が最も保存される経路を、エネルギー伝播路と呼ぶ。
【0035】
[伝播路偏向面]
伝播路偏向面1は、エネルギーの伝播方向を変化させる特性をもつ3次元曲面である。伝播路偏向面1は、入射したエネルギーEの伝播方向を変化させ、新たな伝播方向にエネルギーPを出射させる。さらに、本実施形態における伝播路偏向面1は、出射エネルギーPを収斂させる作用を有する。伝播路偏向面1の例としては、パラボラアンテナの反射面などが挙げられる。以降の説明では、伝播路偏向面1の形状を、シンプルな回転曲面の一部として数理モデル化したものによって、説明を進める。
【0036】
なお、偏向面の形状および偏向領域(偏向に用いられる領域)は、入射エネルギーEの伝播方向を変化させて出射させることができ、数理モデル化可能な面であれば、上記には限定されない。たとえば、偏向面を、エネルギーを発散させる面としてもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、発明の本質を明確に説明するために、エネルギー伝播路における理想的なエネルギー変換を基本として考える。すなわち、エネルギー伝播路におけるエネルギー変換損失は、無いものと仮定する。
【0038】
ただし、定量化可能であれば、変換損失を考慮して、出射エネルギー量を求めてもよい。エネルギー偏向特性についても、数理モデル化可能であればよく、特定のものには限定されない。
【0039】
[エネルギー抽出空間]
エネルギー抽出空間2は、伝播路偏向面1からの出射エネルギーPが伝播する空間である。このエネルギー抽出空間2は、3次元座標系が導入された任意の空間である。エネルギー抽出空間2における任意の位置は、同座標系の3成分により特定される。
【0040】
また、発明の本質を明確に説明するために、伝播エネルギーの特性が許容する範囲内で、エネルギー抽出空間2を伝播するエネルギーの損失はないものと仮定する。ただし、定量化可能ならば、伝播損失を考慮して、抽出エネルギー量を求めてもよい。
【0041】
このエネルギー抽出空間2における任意の位置において、同位置を通過するエネルギーを抽出できる。さらに、後述するように、同位置においては、拡散関数値が有意な拡散距離(拡散領域)内にあるエネルギーを抽出可能である。
【0042】
[エネルギー抽出器]
エネルギー抽出器3は、伝播路偏向面1から出射されたエネルギーを、観測もしくは抽出する装置である。エネルギー抽出器3は、前述のエネルギー抽出空間2における任意の位置に配置される。そして、エネルギー抽出器3によるエネルギーの抽出位置は、エネルギー抽出空間2に導入された3次元座標系の3成分により特定される。なお、エネルギー抽出器3としては、たとえば、パラボラアンテナにおけるフィードホーンが考えられるが、本発明はこれには限定されない。
【0043】
[エネルギー抽出位置演算装置]
エネルギー抽出位置演算装置100は、エネルギー抽出空間2において、エネルギー抽出器3が配置されるべき位置を演算する装置である。かかるエネルギー抽出位置演算装置100は、設定部110、算出部120、探索部130、記憶部140等を有する。また、エネルギー抽出位置演算装置100には、入力部150、出力部160が接続されている。
【0044】
設定部110は、本実施形態に必要な情報を設定する処理部である。この設定部110は、伝播路偏向面設定部111、入射伝播路設定部112、伝播路偏向面素設定部113、探索条件設定部114、疎密探索条件設定部115等を有している。
【0045】
算出部120は、設定部110において設定された情報に基づいて、本実施形態に必要な情報を算出する処理部である。この算出部120は、出射伝播路算出部121、拡散領域算出部122等を有している。
【0046】
探索部130は、設定部110による設定および算出部120による算出結果に基づいて、エネルギー抽出位置を探索する処理部である。この探索部130は、探索条件抽出部131、格子点エネルギー抽出部132、格子点探索部133、領域抽出部134、疎密探索判定部135、密度要素変更部136等を有している。記憶部140は、本実施形態の処理に必要な情報を記憶する記憶部である。なお、請求項の各記憶部(たとえば、伝播路偏向面記憶部、入射エネルギー伝播路記憶部、伝播路偏向面素記憶部、エネルギー抽出面記憶部、疎密探索条件記憶部、密度要素記憶部等)は、実際には、記憶部140において、それぞれに対応する情報の記憶領域により構成されるものとする。
【0047】
エネルギー抽出位置演算装置100は、たとえば、所定のプログラムによって、上記の各部の機能を実現できるコンピュータによって構成することができる。例えば、汎用のコンピュータやサーバ装置によって構成したり、各部の機能を実現するASICやCPU等のICチップやその他の周辺回路によって構成したり、複数の機能を集約したシステムLSIによって構成する等、種々考えられるものであり、特定のものには限定されない。
【0048】
また、記憶部140としては、たとえば、メモリ、ハードディスク、光ディスク等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を使用できる。さらに、記憶部140には、一時的な記憶領域として使用されるレジスタ、メモリ等も含まれる。したがって、キュー、スタック等も、記憶部140を利用して実現可能である。
【0049】
さらに、入力部150は、本実施形態の処理に必要な情報を入力する装置である。たとえば、マウス、キーボード、リモコン、スイッチ、ディスプレイ(タッチパネル)等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる装置を使用できる。
【0050】
出力部160は、本実施形態の処理に必要な情報を出力する装置である。たとえば、ディスプレイ、プリンタ等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる装置を使用できる。なお、上記の各部の機能の詳細は、後述する作用において、説明する。
【0051】
[2.エネルギー抽出原理]
上記のような装置構成を前提として、本実施形態のエネルギー抽出原理を説明する。
【0052】
[伝播路偏向面素]
伝播路偏向面素10は、図3に示すように、伝播路偏向面1を、多数の有限な部分曲面に、均質に分割したものである。この分割方法は、任意であるが、各伝播路偏向面素10は、すべて同一の大きさ(面積)とする(たとえば、図中の面積(A)=面積(B))。各伝播路偏向面素10の厳密な形状は規定されない。ただし、伝播路偏向面1の均質な分割を考慮すると、それぞれ類似した形状であることが望ましい。
【0053】
このような伝播路偏向面素10の面上に伝播路偏向点11が存在するものとする。伝播路偏向点11は、入射エネルギーEの伝播方向を変更し、新たな方向に出射エネルギーPとして伝播する点である。この伝播路偏向点11は、それ自体、伝播路偏向面素10の配置位置を示す情報となり得る。ただし、たとえば、伝播路偏向点11を、伝播路偏向面素10の中心等の特定位置とする場合、伝播路偏向面素10の位置情報から間接的に求めることもできる。
【0054】
伝播路偏向面素10を経由するエネルギー伝播路を、有向曲線と考える。すると、1つの伝播路偏向面素10には、入射エネルギーEの伝播路に対応する有向曲線が1つのみ入射し、その出射エネルギーPの伝播路に対応する有向曲線が1つのみ出射する。この有向曲線には、たとえば、重力や磁場などの影響で、実際に湾曲するエネルギー伝播路も含まれるが、直進するとみなせる平行光などの直線的なエネルギー伝播路も含まれる。
【0055】
これらにより各伝播路偏向面素10への入射エネルギーEの量が等しい場合、伝播路偏向面1上の任意領域において、単位面積当たりの出射エネルギーPの量はすべて等しいと考えることができる。そして、抽出量を評価される出射エネルギーPは、すべて伝播路偏向面素10を経由したものである。
【0056】
なお、入射エネルギーEの伝播方向および伝播路偏向面素10の偏向特性は、既知であり、数理モデル化されているものとする。ゆえに、入射エネルギーEの伝播方向に基づいて、出射エネルギーPの伝播方向を求めることができる。これらの数理モデルは、本実施形態においては、後述するように、入射伝播路設定部112、伝播路偏向面素設定部113によって設定され、記憶部140に記憶される。また、出射伝播路算出部121が、出射エネルギーPの伝播路を求める。
【0057】
[エネルギーの拡散領域]
出射エネルギーPは、図4に示すように、その伝播路上に抽出されるだけではなく、伝播路と直交する放射方向に拡散する。このように、拡散された出射エネルギーPも抽出可能である。
【0058】
数理モデルとしては、伝播路偏向点11を介したその近傍でのエネルギー伝播路の入射ベクトルと出射ベクトルの関係を求める問題となる。実際には、有限な面積をもつ伝播路偏向面素10から出射された有限な断面積をもつ領域を取り扱う必要がある。
【0059】
このように、本数理モデルは、伝播路と直交する拡散エネルギーとして、有限性を考慮する。したがって、エネルギー伝播路を断面積をもたない曲線とするモデルよりも現実に即している。
【0060】
さらに、この有限性とは別に、実際には伝播中は拡散しないが、観測もしくは抽出の際に、その境界面にて散乱等により拡散する特性を有するエネルギーも存在する。たとえば、コリメートされたレーザ光や運動する弾性体などがある。これらの場合にも、伝播するエネルギーは有限な面積を持っている。したがって、このようなエネルギーを取り扱う場合にも、エネルギー伝播路と拡散関数による本モデルは適している。
【0061】
このような拡散エネルギーの伝播特性は、エネルギー拡散関数D(f)により定義される。エネルギー拡散関数D(f)の形式は、基本的には、対象エネルギーの特性に即したものとする。ただし、エネルギー拡散関数D(f)は、後述の疎密探索において、適切な形式に変更され得る。
【0062】
たとえば、エネルギー拡散関数の形式を、D(r,θ,d)とし、この形式が出射エネルギーPの伝播路全域に亘り、同一であるとする。ここで、rは、エネルギー伝播路からの放射方向の距離を表す変数であり、その定義域は、0≦r≦∞である。この距離rをエネルギー拡散距離と呼ぶ。r=0は、エネルギー伝播路上を表す。θは、伝播路円周方向の角度を表す変数であり、その定義域は、0≦θ≦2πである。角度の基準θ=0は、任意とする。dは伝播路偏向点からの伝播路経路長を表す変数であり、その定義域は、0<dである。
【0063】
このようなエネルギー拡散関数D(r,θ,d)の最大値は1である。少なくともエネルギー伝播路上では、D(0,θ,d)=1である。すなわち、伝播路上のエネルギーも拡散エネルギーで表現することができる。
【0064】
ただし、現実的な指向性エネルギーの拡散を考えた場合、無限遠の拡散エネルギーを取り扱う必要性はない。抽出されるエネルギー量として、有意な距離Rまでを考慮すればよい。この距離Rをエネルギー拡散限界と呼ぶ。エネルギー拡散限界R以遠のエネルギー拡散関数値は、D(r,θ,d)|R<r=0となる。
【0065】
ここで、直線的なエネルギー伝播路上のある位置におけるエネルギー量をpとする。すると、同位置からエネルギー拡散距離rにおける拡散エネルギー量は、D(r,θ,d)・pと求めることができる。同伝播路が曲線である等、直線でない場合は、任意の位置で観測されるエネルギーは、その伝播路上、複数位置からの拡散エネルギー量を求めることが必要となる可能性がある。この場合、関与する経路での適切な線積分により、同位置でのエネルギー総量を求めることができる。
【0066】
なお、以上のような拡散領域は、後述するように、拡散領域算出部122によって算出される。また、算出に必要な拡散関数、拡散限界等については、あらかじめ記憶部140に記憶されているものとする。
【0067】
[出射エネルギーの抽出]
以上のことから、エネルギー抽出空間2において、任意の位置で抽出されるエネルギー量は、すべての伝播路偏向面素10よりの出射エネルギーPに関する拡散エネルギー量の総和として求めることができる。
【0068】
なお、以下の条件が、全ての伝播路偏向面素10に対応する出射エネルギーPに言えるとする。
・出射エネルギーPの伝播路が直線である
・同伝播路上のあらゆる位置でのエネルギー量が一定である
すると、エネルギー抽出空間2上の任意の位置でのエネルギー拡散関数値の総和を、既知の伝播路偏向面素10の数で除した相対値により、抽出エネルギー量を相対的に比較することができる。この相対値を相対抽出エネルギーと呼ぶ。
【0069】
つまり、伝播路偏向面1における伝播路偏向面素10の数は既知である。そして、拡散関数値の最大は1である。このため、抽出エネルギーに関する拡散関数値の総和を、総面素数で除することにより、正規化できる。なお、伝播エネルギーの性質を考慮して、変換面から抽出点までの距離に応じた重み付けを抽出エネルギーもしくは相対抽出エネルギーに付加することもできる。
【0070】
以上のような出射エネルギーPの抽出は、後述するように、格子点エネルギー抽出部132によって行われる。
【0071】
[最大エネルギー抽出領域]
効率的に伝播エネルギーを抽出するためには、抽出エネルギー量が最大となる位置を特定し、その位置において抽出すればよい。ただし、同位置は単一の点とは限らない。2次元的もしくは3次元的な広がりを有する領域かもしれない。かかる領域が単数もしくは複数であるかもしれない。このため、エネルギー抽出空間2の全域を隈なく探索し、各位置における抽出エネルギー量を評価することで、それが最大となるエネルギー抽出領域を特定できる。
【0072】
抽出エネルギー量が最大となる領域を探索することが目的であれば、絶対的なエネルギー量を知る必要はない。上記のとおり正規化された相対抽出エネルギーのエネルギー抽出空間2での分布は、絶対的な抽出エネルギー量の分布と同様である。したがって、相対抽出エネルギーを評価することによっても、最大エネルギー抽出領域を特定することができる。
【0073】
[効率的な最大エネルギー抽出方法]
しかし、領域を特定せずに、エネルギー抽出空間2の全域を探索するには、膨大な計算コストを費やすため、現実的ではない。このため、より効率的な探索を実現する戦略が必要となる。
【0074】
そこで、図5に示すように、エネルギー抽出空間2上に、法線ベクトルNが同一な複数の平面を考える。このとき、それぞれの平面上で出射エネルギーPを抽出し、最大量の評価を進める。これらの平面をエネルギー抽出面Fと呼ぶ。図中、Sは抽出エネルギーを示す。
【0075】
エネルギー抽出面F上には、それぞれ任意の2次元座標系が導入されているものとする。エネルギー抽出面F上の任意の位置は、導入された2次元座標系の2成分で表現することができる。なお、エネルギー抽出空間2の3次元座標系の3成分によって、エネルギー抽出面F上の任意の位置を表現することもできる。
【0076】
上記の2次元座標系の2成分をx,yとしたとき、それぞれの成分をdx,dy間隔で分割する格子点(抽出点)上でエネルギー抽出を試みる。このようなエネルギー抽出面F及び格子点を定義付ける情報は、探索条件設定部114によって設定され、探索条件として記憶部140に記憶される。このように、探索条件には、請求項の「抽出面に関する情報」が含まれており、その記憶領域は、「エネルギー抽出面記憶部」として機能する。
【0077】
一方、任意の出射エネルギーPの拡散領域については、たとえば、図4に示すように、エネルギー抽出空間上の仮想的な円筒形チューブを考える。この円筒形チューブは、エネルギー伝播路を中心軸として、エネルギー拡散限界Rを半径とする。すなわち、円筒型チューブの内部においては、その中心軸となる出射エネルギーPを抽出できる。
【0078】
図6に示すように、任意のエネルギー抽出面Fと任意の出射エネルギーPに対応する上記円筒形チューブとが交差する断面領域を想定する。この断面領域内のすべての上記格子点において、拡散エネルギーもしくはその相対値を抽出する。このような格子点エネルギーの抽出は、格子点エネルギー抽出部132が行う。
【0079】
このような抽出を、伝播路偏向面1上のすべての伝播路偏向面素10から出射する伝播エネルギーについて行う。この際、同一格子点上で、複数の伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出できる場合がある。その場合には、抽出したエネルギー量もしくはその相対値の総和(積算値)を同位置での抽出エネルギー量とする。
【0080】
出射エネルギーPを抽出した格子点数は有限である。このため、抽出エネルギー量もしくはその相対値が最大となる格子点群を、有限時間で効率よく求めることができる。なお、格子点群の探索は、後述するように、格子点探索部133によって行われる。
【0081】
このエネルギー抽出面F上の最大エネルギー格子点探索を、すべてのエネルギー抽出面Fに対して実施する。それらの探索結果を統合し、さらに探索の密度を変更して探索する疎密探索を行うことにより、広がりを持った最大エネルギー領域を特定することができる。なお、最大エネルギー領域の抽出は、後述するように、領域抽出部134によって行われる。
【0082】
疎密探索においては、密度要素変更部135が、たとえば、後述する疎密探索条件に従って、以下のような探索の密度を決定する要素(密度要素)を示すパラメータを適宜変更することにより、探索の疎密の度合いを変更する。
(1)エネルギー拡散関数の形式
(2)伝播路偏向面素の大きさ
(3)エネルギー抽出面上の格子点間隔
(4)エネルギー抽出面同士の間隔
【0083】
これらのパラメータの初期値は、たとえば、エネルギーを抽出する目的空間の理解度に応じて決定する。ただし、不明の場合には、全天球に準ずる初期値とする。ここで、「理解度」とは、たとえば、事前にどの程度の空間がエネルギー検出に妥当であるか、出射エネルギーPの伝播領域はどの程度であるか、などの最大エネルギー抽出に対する予備知識や予測をいう。具体的な一例としては、パラボラアンテナの場合、収斂位置はその焦点から大きくは逸れない、などが挙げられる。このような予備知識に基づいて、探索の空間を絞ることにより、計算量を節約できる。
【0084】
もし、予備知識が全くない場合、出射エネルギーPが伝播可能な全ての空間を探索の初期状態とする必要がある。そのような広大な空間に対して、偏向面は概ね平面とみなせる。その平面に対して、出射エネルギーPが伝播する方向側の半空間、すなわち「全天球」が、初期探索空間となる。現実的には、偏向面近傍の抽出空間での抽出結果を、予備知識として探索を進めることが望ましい。
【0085】
これらの密度要素は、探索条件に含まれる。このように、探索条件には、請求項の「密度要素」が含まれており、その記憶領域は、「密度要素記憶部」として機能する。本実施形態では、かかる疎密探索戦略を採用することによって、より効率的に最大エネルギー抽出領域を特定することができる。
【0086】
[3.作用]
本装置によるエネルギー抽出位置演算処理を、図3〜11を参照して説明する。
[処理の概要]
エネルギー抽出位置演算処理の概要を、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、あらかじめ入力部150からの入力に応じて、設定部110による初期値の設定が行われる。
【0087】
伝播路偏向面設定部111は、伝播路偏向面1を定義付ける数理モデル(たとえば、形状、偏向領域)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ801)。入射伝播路設定部112は、入射エネルギーEを定義付ける数理モデル(たとえば、伝播方向等を含む)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ802)。
【0088】
伝播路偏向面素設定部113は、伝播路偏向面素10を定義付ける数理モデル(たとえば、面素サイズ(大きさ)、偏向特性、各面素の配置位置等を含む)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ803)。なお、面素の「大きさ」には、面積そのものの場合も、方形の場合の辺長のように面積を求めることができる値も含まれる。
【0089】
なお、伝播路偏向面素設定部113が、上記の伝播路偏向面1を定義付ける数理モデルに基づいて、伝播路偏向面素10を定義付ける数理モデルを求める演算部を有していてもよい。たとえば、面素サイズ(均一)が決定すれば、伝播路偏向面1の形状および偏向領域に基づいて、各面素の配置位置等を求めることができる。逆に、各面素の配置位置が決まれば、伝播路偏向面1の形状および偏向領域に基づいて、面素サイズ(均一)を求めることができる。
【0090】
探索条件設定部114は、探索条件を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ804)。探索条件には、たとえば、エネルギー抽出面Fおよび格子点を定義付ける数理モデル(法線ベクトル、抽出面の配置位置(間隔、数等)、二次元座標系、格子点位置(間隔、数等))等が含まれている。
【0091】
さらに、疎密探索条件設定部115は、疎密探索の条件を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ805)。この疎密探索条件の記憶領域は、「疎密探索条件記憶部」として機能する。設定される疎密探索の条件としては、たとえば、以下のようなものが含まれている。
(α)密度の変更量
(β)探索対象の絞り込み条件
(γ)探索完了条件
【0092】
密度の変更量とは、初期値から密度を高めて探索を進めるために、上記の密度要素(2)〜(4)に対応するパラメータをどの程度小さく(密度が高く)なるように更新するかに関する情報である。これは、たとえば、パラメータに対する割合とすることが考えられる。一律の値(たとえば、1/2)としてもよいし、探索空間の大きさやエネルギー分布に応じて、適宜更新してもよい。ただし、パラメータは、拡散限界よりも小さくなるように更新する必要がある。かかる密度要素の変更は、密度要素変更部136によって行われる。
【0093】
探索対象の絞り込み条件とは、密度が高くなるに従って、探索対象とすべき空間を絞り込むための条件である。たとえば、探索対象とすべき空間を、前回の探索で特定された最大エネルギー抽出点のうち、各エネルギー抽出面Fにおける最外格子点位置の集合により特定される領域とすることが考えられる。かかる絞り込み条件は、格子点エネルギー抽出部132、格子点探索部133、領域抽出部134の処理対象の絞り込みとして反映される。
【0094】
探索完了条件とは、密度を高めて進める探索を完了させるための条件である。たとえば、初期値として設定される上記の密度要素(2)〜(4)のパラメータよりも、探索を終えるに適した小さな値とする。また、探索完了条件を、最大エネルギー抽出位置近傍の所定のエネルギー分布とすることも可能である。この探索完了条件を満たしているかどうかは、疎密探索判定部135によって判定される。
【0095】
なお、密度要素(1)の拡散関数形式は、本来動的には変わらないものである。しかし、探索の初期に高エネルギー密度領域を粗く求められるように、拡散限界を広げる目的で、密度が高くなるに従って、パラメータを変えることもできる。その場合、ある程度の密度に探索が進んだところで、本来の形式に固定する。すなわち、本発明においては、最大エネルギー抽出位置特定に対する計算量が最小となり、精度が最大となることが望ましい。しかし、両者はトレードオフの関係にある。そこで、たとえば、当初は拡散限界を拡大し、抽出エネルギーの最大値(極大値)を探索しやすくなるように設定する。この段階では、抽出できる格子点数も拡大するため、計算量は大きくなる。その後、計算量と精度に対する要求を満足するように、本来の関数形式へと漸次戻していく。
【0096】
なお、上記のように設定される情報(既知の情報)は、少なくとも、あらかじめ記憶部140に記憶されていればよい。このため、入力部150からの入力もしくは通信ネットワーク等を介した入力に従って、設定部110が設定する場合も含まれる。また、入力部150から入力された情報もしくは通信ネットワーク等を介して入力された情報が、そのまま記憶部140に記憶される場合も含まれる。さらに、あらかじめ情報が記憶された媒体が、装置に装着される場合も含まれる。
【0097】
次に、出射伝播路算出部121が、入射エネルギーEの伝播方向および伝播路偏向面素10の偏向特性等に基づいて、出射エネルギーPの伝播方向を算出する(ステップ806)。探索条件抽出部131は、最初に探索すべきエネルギー抽出面に対応する探索条件を抽出し、探索条件キューに挿入する(ステップ807)。格子点エネルギー抽出部132は、探索条件キューから探索条件を取り出す(ステップ808)。このとき、拡散領域算出部122は、拡散関数及び拡散限界に基づいて、出射エネルギーPの拡散領域を算出する(ステップ809)。
【0098】
ここでの拡散領域の算出は、抽出された探索条件におけるエネルギー抽出面Fとの交差領域のみを求めるのみでよい。なお、拡散領域の算出は、出射エネルギーPの伝播方向の算出後に、あらかじめその全体を算出しておくことも考えられる。しかし、上記の交差領域のみを求めることにより演算量を絞ることが、必要性と計算コストから考慮して、現実的といえる。したがって、請求項における拡散領域の算出は、全体の演算も、交差領域のみの演算も含まれる。
【0099】
そして、格子点エネルギー抽出部132は、当該交差領域における各格子点に対する全ての伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出し、その総和を記憶部140に記憶する(ステップ810)。これを、全ての格子点に対する伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出するまで繰り返す(ステップ810のNO、811)。
【0100】
全ての格子点に対する出射エネルギーPを抽出した後(ステップ810のYES)、格子点探索部133は、当該エネルギー抽出面Fにおける各格子点のうち、最大エネルギー量となる格子点(単一でもよいし、複数から成る格子点群でもよい)を抽出し、記憶部140に記憶する(ステップ812)。格子点が複数にわたり、二次元的な広がりを有する場合には、その重心を代表位置として記憶してもよい。なお、代表位置は、重心には限定されない。ただし、重心は領域の平均を示す位置であり、統計上は分散が最小となる性質を持っているので、空間的に広がりがある領域を代表するに相応しい。
【0101】
以上を、エネルギー抽出空間2における探索条件で設定された全てのエネルギー抽出面Fについて繰り返す(ステップ808〜814)。つまり、格子点エネルギー抽出部132が、抽出を終えたエネルギー抽出面Fに隣接するエネルギー抽出面Fが存在する場合(ステップ813のYES)、その探索条件を、探索条件キューに挿入し、これに基づいて、順次抽出を行っていく。
【0102】
全てのエネルギー抽出面Fについて抽出を終えた後(ステップ813のNO)、領域抽出部134は、全てのエネルギー抽出面Fにおける最大エネルギー格子点に基づいて、エネルギー抽出空間2における最大エネルギー領域を抽出し、記憶部140に記憶する(ステップ815)。つまり、隣接するエネルギー抽出面F間で、その距離が最短となる各平面F上の最大エネルギー抽出位置群が形成する曲線的な系列において、最大エネルギー量となる空間を抽出する。この領域は、単一もしくは複数となりうる。三次元的な広がりを有する領域について、その重心を代表位置として記憶してもよい。重心とする意味は、上記の通りである。
【0103】
そして、疎密探索判定部135は、現在の密度要素が探索完了条件に一致するかどうかを判定する(ステップ816)。一致しない場合(ステップ816のNO)、密度要素変更部136が、密度要素を、疎密探索条件に設定された密度の変更量に従って変更する(ステップ817)。そして、探索条件抽出部131は、最初に探索すべきエネルギー抽出面に対応する探索条件を抽出し、探索条件キューに挿入する(ステップ807)。
【0104】
その後、上記のステップ808〜815の処理を行う。つまり、キューからの探索条件の取り出し、疎密探索条件を満足する格子点上の出射エネルギー総和もしくは相対抽出エネルギー総和の算出が行われ、現条件での局所的な最大エネルギー抽出領域が探索される。これは、探索完了条件を満たすまで繰り返される(ステップ807〜816)。たとえば、密度要素変更部136が、格子点間隔、エネルギー抽出面Fの間隔を狭めるように変化させることにより、これに従って、疎から密へと探索が進んでいく。
【0105】
疎密探索判定部135が、密度要素(2)〜(4)もしくは各最大エネルギー抽出領域近傍のエネルギー分布等が探索完了条件を満たすと判定した場合には(ステップ816のYES)、密度要素変更部136による密度の変更、探索条件抽出部131による探索条件の探索条件キューへの挿入は行わない。そして、その時点で記憶されている抽出領域が、最大エネルギー抽出位置として、出力部160により出力される(ステップ818)。
【0106】
なお、複数の抽出位置(領域)が抽出されるとき、全てのエネルギー量もしくはその相対値が同一でない場合であっても、対象モデルの実形態に応じて有用となる可能性がある。このため、かかる場合に、複数の抽出位置の全部を出力するか、もしくはその一部を出力するかは自由である。
【0107】
[具体的な演算処理]
以上のような数理モデルおよび演算処理の具体例を説明する。本例では、対象となるエネルギーの伝播路は直線的である。伝播路偏向面の形状は、回転放物面の一部である。さらに、伝播路偏向面1、エネルギー抽出空間2およびエネルギー抽出器3が、パラボロイド反射器を有するパラボラアンテナである。
【0108】
[座標系の導入]
まず、エネルギー抽出空間2に、原点が同一な3次元直交座標系Σ0と円柱座標系ΣCを同時に導入する。Σ0の成分が(x,y,z)Tで、ΣCの成分が(r,θ,z)Tで表されるとき、両座標系には式(1)が成り立つものとする。
【0109】
すなわち、Σ0上の(0,0,1)Tと(1,0,0)Tが、ΣC上の(0,0,1)Tと(1,0,0)Tにそれぞれ一致するように、両座標系が導入されるものとする。
【0110】
【数1】
【0111】
[伝播路偏向面]
z軸を回転軸とし、焦点f=(0,0,f)Tを有するパラボロイド(回転放物面)の一部が、パラボロイド反射器の反射面であるとき、同反射面上のΣCにおける任意の位置Crは式(2)のとおり表される。
【0112】
【数2】
【0113】
[伝播路偏向面素]
次に、この反射面を構成する伝播路偏向面素10は、図3に示すように、同反射面を放射方向および円周方向に分割した曲面とする。このように、放射方向の区間[a,b]および円周方向の区間[c,d]に分割された曲面の面積A(a,b,c,d)は、式(3)のとおり求めることができる。
【0114】
【数3】
【0115】
上記のとおり、伝播路偏向面1を分割した部分曲面を、伝播路偏向面素10としたとき、式(3)のとおり表される面積A(a,b,c,d)は、どの部分曲面においても、一定であればよい。
【0116】
このように伝播路偏向面1を均質に分割するために、放射方向の分割は、各面素の放射方向の長さが同一となるように行う。この際、ΣCのr成分の区間[a,b]における同面素の放射方向の長さLr(a,b)は、式(4)のとおり求めることができる。
【0117】
【数4】
【0118】
放射方向が、区間[r0,rN]に亘ってN分割されるとする。このとき、それぞれの分割区間[rn−1,rn]における長さLr(rn−1,rn)が一定の値Δrとなるように、所望の放射方向初期位置r0から、順次rnを求める。ただし、放射方向の距離rが小さいほど、パラボロイドの円周長は小さい。このため、r0<r1<…<rn−1<rnとする。また、分割区間[rn−1,rn]を、放射分割区間nとする。
【0119】
放射分割区間lにおいて、円周方向が区間[θ−M,θM]に亘って均等に2Mに分割されるとする。このとき、各分割区間[θm−1,θm]における平面角Δθは、式(5)のとおり表される。また、分割区間[θm−1,θm]を円周分割区間mとし、θ−M<θ−M+1<…<θm−1<θm<…<θM−1<θMとする。
【0120】
【数5】
【0121】
同様に、放射分割区間nにおいても、円周方向が均等に2Mに分割されるとする。すなわち、円周方向の伝播路偏向面素10の数が2Mとする。すると、各面素の面積が一定という条件により、放射分割区間nにおける各円周分割区間の平面角Δθnは、式(6)のとおり求めることができる。
【0122】
【数6】
【0123】
以上より、放射分割区間nにおいては、円周方向は区間[−MΔθn,MΔθn]に亘って、均等に2Mに分割されることになる。
【0124】
このような伝播路偏向面素10の定義方法によれば、ΔrおよびΔθによって、伝播路偏向面素10の面積を制御可能となる。これは、疎密探索に望ましい形態となる。
【0125】
なお、上記の伝播路偏向面素10の定義方法は、パラボライド、すなわちz(r)=r2/4fに限定している。しかし、z(r)が任意の回転曲面にも適用できる。
【0126】
伝播路偏向面素10の面積や放射方向の長さが解析的に求まらないモデルや、数値計算により求めても、計算規模が大きく実用的でないモデルの場合も考えられる。そのような場合においては、それぞれ解析的に求めやすい微少な曲面の面積や曲線の長さとして、近似的に求めてもよい。
【0127】
[出射エネルギー伝播方向]
続いて、放射分割区間n、円周分割区間mにおける伝播路偏向面素10の伝播路偏向点11(ここでは、Crn,mで表す)は、式(7)のとおり、伝播路偏向面素10の中央とする。
【0128】
【数7】
【0129】
伝播路偏向点Crn,mにおける伝播路偏向面素10の法線ベクトルCnn,mは、式(8)のとおり求められる。
【0130】
【数8】
【0131】
ここで、図6に示すように、伝播路偏向点Crn,mに入射した伝播エネルギーのΣOにおける伝播方向をOin,mとする。Oin,mは、既知であるとする。
【0132】
上記法線ベクトルCnn,mが、ΣOにおいては、Onn,mと表される。このとき、伝播路偏向点Crn,mから出射する伝播エネルギーの伝播方向ベクトルOOn,mは、式(9)のとおり求めることができる。ただし、i・nは、iとnとの内積を表す。
【0133】
【数9】
【0134】
以上により、すべての伝播路偏向点における出射エネルギーPの伝播方向を求めて、エネルギー抽出空間2上の出射エネルギーPの分布を評価する。
【0135】
[エネルギー抽出面]
エネルギー抽出空間2上の任意の平面を式(10)のとおり関数F(n,d)で表す。ただし、nは平面の法線ベクトルである。よって、法線ベクトルがNである任意のエネルギー抽出面はF(N,d)と表すことができる。この際、同平面上に導入された2次元座標系をΣN,dと表す。
【0136】
【数10】
【0137】
また、ΣOにおける伝播路偏向点Orn,mを経由する出射エネルギーPの伝播方向がOOn,mであるとき、出射エネルギー伝播路Pn,mは式(11)のとおり表すことができる。
【0138】
【数11】
【0139】
エネルギー伝播路は直線である。このため、図4に示すように、前記円筒チューブは円柱となる。よって、図7に示すように、出射エネルギー伝播路Pn,mに基づく円柱とエネルギー抽出面F(N,d)との断面は、楕円となる(図中、エネルギー拡散限界の断面Qで示す)。この楕円の短径の1/2の長さがエネルギー拡散限界Rであり、長径の1/2の長さであるan,mは、式(12)のように表される。
【0140】
【数12】
【0141】
同平面上のΣN,dにおいて、Pn,mとF(N,d)との交点が、N,dcn,mであり、F(N,d)へのOrn,mの正射影が、N,drn,mであるとき、この楕円の焦点N,dfn,mは式(13)のとおり表される。
【0142】
【数13】
【0143】
[格子点エネルギーの抽出]
式(12)、(13)に基づく楕円領域内部のすべてのエネルギー抽出格子点について、エネルギー拡散関数D(r,θ,d)の値を求める。そして、同格子点での抽出エネルギー関連量として積算する。なお、エネルギー拡散関数の変数rは、各格子点のPn,mまでの距離である。
【0144】
ここで、伝播路偏向面1が、反射面でありパラボロイドの一部である場合の仕様例を、表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
この伝播路偏向面1に対して、パラボロイド回転軸から、2[deg]傾いた方向より入射する直線的な伝播エネルギーの、出射エネルギーPの分布を、図9〜12に示す。
【0147】
なお、各出射エネルギーPの分布は、法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=k(k=0,1,2,3)上における分布を表している。各エネルギー抽出面F上には、ΣOの原点を(k,0,100)Tへ並進変換した際のy−z平面と同等の2次元座標系が導入され、同平面上のエネルギー抽出位置をその成分により特定する。
【0148】
また、エネルギー拡散関数D(r,θ,d)を、エネルギー拡散限界Rとして、式(14)のとおりとして求めた。
【0149】
【数14】
【0150】
このように、すべてのエネルギー抽出面Fでの最大エネルギー抽出領域探索結果を統合することにより、最終的に、エネルギー抽出空間2上の最大エネルギー抽出領域を求めることができる。
【0151】
パラボロイド回転軸に平行入射したエネルギーは、すべてパラボライドの焦点に収斂される。しかし、上記の例では、最大エネルギー抽出領域が同焦点からずれていることがわかる。このため、同領域内部にエネルギー抽出器3を配置すれば、最も効率的な抽出を行うことができる。
【0152】
[4.効果]
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)実装置を用いた測定を行うことなく、装置の数理モデルを用いることにより、効率的なエネルギー抽出領域を求めることができる。
(2)数理モデル化可能であれば、任意の伝播路偏向面およびその偏向形式に適用することができる。
【0153】
(3)密度要素を変更して探索を繰り返す疎密探索を実行することにより、より効率よくエネルギー抽出領域を求めることができる。
(4)伝播路偏向面素の大きさ、抽出面の位置、抽出点の間隔などのスケーリングが容易な、疎密探索に適した情報を用いるので、これらの情報を調節することで、伝播路偏向面その他の状況に応じて、計算コストを適切に設定できる。
【0154】
(5)単位面積あたりの伝播路偏向面素数が、伝播路偏向面全面に亘り均一である。このため、異なる入射方向同士のエネルギー伝播路偏向による出射エネルギー分布を、正しく比較評価できる。
【0155】
(6)拡散エネルギーは存在せず、エネルギー伝播路を断面積を持たない曲線としたモデルとした場合には、エネルギー抽出面上で抽出されるエネルギーは面積を持たない点となる。すなわち、同平面上の最大エネルギー抽出問題は、2次元的に分布するエネルギー密度分布から、密度最大となる点を求める問題となる。これと比較して、本実施形態発明で採用するモデルでは、断面積を持つ有限の拡散領域と抽出面との交差面を抽出対象とするので、計算コストを小さくすることができる。
【0156】
(7)有限の抽出点を対象とするので、エネルギー量を効率よく抽出できる。
(8)複数のエネルギー抽出面を設定することにより、広がりを持った空間である抽出領域を効率よく求めることができる。
【0157】
[5.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態には限定されない。以下のような態様も本発明に含まれる。
【0158】
(1)伝播路偏向面は、パラボロイド以外の曲面であってもよい。また、伝播路偏向面は、伝播路偏向面素を定義できればよいので、回転曲面以外の自由曲面であってもよい。
【0159】
(2)偏向するエネルギーの作用は、収斂以外であってもよい。たとえば、伝播路偏向面を、エネルギーを発散させる凸面鏡としてもよい。この場合、エネルギー拡散の均質性評価や安全性評価に適用できる。平面鏡による均一な伝播路偏向にも適用可能である。つまり、伝播路偏向面は、エネルギーを偏向させることができれば、平面、曲面、その他の凹凸を有する面等であってもよい。
【0160】
(3)複数の伝播路偏向面を連携させた装置も構成可能である。たとえば、前段の出射エネルギーが、後段の入射エネルギーとして逐次伝播路偏向を進める装置を構成することもできる。
【0161】
(4)エネルギー伝播路の偏向形式は、反射以外の屈折や回折によるものであってもよい。たとえば、伝播路を屈折もしくは回折させる光学部材による偏向でもよい。つまり、偏向面とは、異なる物質間の境界面として捉えるべきであるので、反射のみならず、屈折の偏向形式も適用可能である。また、回折の場合には、回折点をすべて含む曲面が偏向面となる。
【0162】
(5)エネルギー抽出のために設定される抽出面は、平面には限定されず、曲面、その他の凹凸を有する面等であってもよい。たとえば、円筒表面の一部であってもよい。抽出面の数は、複数でも単数でもよい。
【0163】
(6)抽出エネルギーは、最大のものには限定されない。たとえば、最小もしくは所望の範囲のエネルギー分布領域を、探索することもできる。この場合、その抽出範囲(しきい値等)を、あらかじめ記憶部に設定しておくことが考えられる。最大、最小のものを抽出する場合も、ある値以上のものは全て最大とする場合、ある値以下のものは全て最小とする場合には、そのしきい値等をあらかじめ記憶部に設定しておくことが考えられる。なお、本発明においては、大小の判断処理において、しきい値を含む「以上」、「以下」とするか、しきい値を含まない「より大きい」、「より小さい」とするかは自由である。
【0164】
(7)本発明の演算により求められた抽出位置には、必ずしも抽出器が配置される必要はない。たとえば、抽出エネルギーを観測可能な器具が配置されてもよい。つまり、本発明により求められたエネルギーの抽出位置等の結果を、実際の装置においてどのように利用するかは限定されない。
【符号の説明】
【0165】
1…伝播路偏向面
2…エネルギー抽出空間
3…エネルギー抽出器
10…伝播路偏向面素
11…伝播路偏向点
100…エネルギー抽出位置演算装置
110…設定部
111…伝播路偏向面設定部
112…入射伝播路設定部
113…伝播路偏向面素設定部
114…探索条件設定部
115…疎密探索条件設定部
120…算出部
121…出射伝播路算出部
122…拡散領域算出部
130…探索部
131…探索条件抽出部
132…格子点エネルギー抽出部
133…格子点探索部
134…領域抽出部
135…疎密探索判定部
136…密度要素変更部
140…記憶部
150…入力部
160…出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、入射エネルギーの伝播方向を変化させて出射エネルギーとする偏向面に対して、出射エネルギーの抽出位置を演算するためのエネルギー抽出位置演算技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射された特定のエネルギーの伝播方向を変化させ、そのエネルギーを抽出するための装置が存在する。たとえば、パラボラアンテナは、放物面を利用して、入射した電波を収斂させ、特定の位置に配置された抽出器(たとえば、フィードホーン)によって、電波エネルギーを抽出する器具である(特許文献1参照)。また、集光レンズは、屈折を利用して光を収斂させる器具である。この集光レンズによって光が収斂する焦点位置においては、高い熱エネルギーを抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−122929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エネルギーを抽出する位置(たとえば、抽出器の配置位置)は、できるだけエネルギー損失が少なくなる位置もしくは所望の量のエネルギーが得られる位置とすることが望ましい。従来は、かかる位置を求めるためには、実装置を用いて実際に測定する必要があった。しかし、この場合には、実装置の作製および測定という面倒な作業が必要となり、コストがかかる。
【0005】
このため、エネルギーを抽出すべき位置を、数理モデルを用いて効率よく求めることができれば、コストの低減につながる。そして、その際には、数理モデルの複雑さにかかわらず、解を求めることができ、演算量も少ないことが望ましい。
【0006】
さらに、例えば、パラボラアンテナにおいては、パラボロイド(回転放物面)回転軸と平行でない直進性エネルギーは、その焦点に収斂されない。この場合、直進性エネルギーは、入射角度に応じた空間に広がりをもって収斂されてしまう。このため、エネルギーを抽出すべき位置を、広がりを持った空間として算出できなければ、効率のよい抽出ができない。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、実装置を用いて実際に測定するコストを回避して、効率よくエネルギーを抽出できる位置を求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のエネルギー抽出位置演算装置は、コンピュータ又は電子回路が、指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する入射エネルギー伝播路記憶部と、前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する伝播路偏向面素記憶部と、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶するエネルギー抽出面記憶部と、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部と、前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部と、前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部と、を有することを特徴とする。
【0009】
なお、本発明は、エネルギー抽出位置演算方法およびエネルギー抽出位置演算プログラムの観点から捉えることもできる。
【0010】
以上のような発明では、偏向面を複数の偏向面素に仮想的に分割して捉え、各偏向面素に対する入射エネルギー伝播路から、出射エネルギーの伝播路を求める。そして、出射エネルギーの伝播路から、その拡散領域を求め、拡散領域と抽出面との交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する。このように、数理モデル化可能な情報を用いて探索することができるので、実装置を用いた測定が不要となる。したがって、所望のエネルギー抽出領域を効率よく求めることができる。
【0011】
他の態様では、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報には、少なくとも入射エネルギーの伝播方向が含まれ、前記偏向面素に関する情報には、少なくとも各偏向面素の偏向特性および配置位置が含まれることを特徴とする。
他の態様では、前記偏向面素の偏向特性および配置位置を設定する伝播路偏向面素設定部を有することを特徴とする。
【0012】
以上のような態様では、任意の伝播路偏向面および偏向形式について、入射エネルギーの伝播方向、複数の偏向面素の偏向特性および配置位置という数理モデルを設定するだけで、エネルギー抽出位置を効率よく求めることができる。
【0013】
他の態様では、前記偏向面に関する情報を記憶する伝播路偏向面記憶部を有し、前記偏向面に関する情報には、少なくとも偏向面の形状および偏向領域が含まれることを特徴とする。
【0014】
以上のような態様では、実際の偏向面を数理モデル化した偏向面の形状および偏向領域に基づいて、偏向面素を設定し、エネルギー抽出位置を効率よく求めることができる。
【0015】
他の態様では、前記拡散領域算出部は、エネルギー拡散関数に基づいて、前記拡散領域を算出することを特徴とする。
【0016】
以上のような態様では、出射エネルギーについて、断面積を持つ有限の拡散領域と抽出面との交差面を抽出対象とする。このため、抽出面において、断面積を持たない点の2次元的なエネルギー分布を求める場合に比べて、計算コストを抑えることができる。
【0017】
他の態様では、前記探索部による探索の疎密に関する情報である密度要素を記憶する密度要素記憶部と、前記密度要素を変更する密度要素変更部と、を有することを特徴とする。
【0018】
以上のような態様では、密度要素を変更して探索を繰り返す疎密探索を実行することにより、より効率よくエネルギー抽出領域を求めることができる。
【0019】
他の態様では、前記密度要素変更部による変更の基準となる疎密探索条件を記憶する疎密探索条件記憶部を有することを特徴とする。
【0020】
以上のような態様では、疎密探索条件を調節することにより、適切な計算コストを設定できる。
【0021】
他の態様では、前記密度要素には、拡散領域を算出するためのエネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出面に設定される複数の抽出点の疎密に関する情報、複数設定された抽出面の疎密に関する情報の少なくとも一つが含まれていることを特徴とする。
【0022】
以上のような態様では、エネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出点の疎密に関する情報、抽出面の疎密に関する情報を変更することにより、伝播路偏向面に応じた適切な密度の疎密探索を実行することができる。
【0023】
他の態様は、前記抽出面に関する情報には、抽出面に設定される複数の抽出点に関する情報が含まれ、前記探索部は、前記交差面に含まれる抽出点におけるエネルギー量に関する値を抽出する抽出点エネルギー抽出部と、前記抽出点におけるエネルギー量に関する値が、所定の条件となる抽出点を探索する抽出点探索部と、を有することを特徴とする。
【0024】
以上のような態様では、出射エネルギーの拡散領域と抽出面との交差面に含まれる有限の抽出点を対象とするので、エネルギー量を効率よく抽出できる。
【0025】
他の態様では、前記抽出面は複数設定され、複数の抽出面において、前記抽出点探索部により抽出された抽出点に基づいて、所定の条件となるエネルギー抽出領域を抽出する領域抽出部を有することを特徴とする。
【0026】
以上のような態様では、複数の抽出面を設定することにより、広がりを持った空間である抽出領域を、効率よく求めることができる。
【0027】
他の態様では、複数の前記抽出面の位置及び前記抽出点の間隔を設定する抽出面設定部を有することを特徴とする。
【0028】
以上のような態様では、抽出面の位置、抽出点の間隔等、スケーリングが容易な情報を用いるので、これらの情報を適宜変更することで、計算コストを適切に設定できる。
【0029】
他の態様では、前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が最大であることを含むことを特徴とする。
他の態様では、前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が所定の範囲内であることを含むことを特徴とする。
【0030】
以上のような態様では、所定の条件を所望の値に設定することにより、所望のエネルギー量が得られるエネルギー抽出位置を、効率よく求めることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、実装置を用いて実際に測定するコストを回避して、効率よくエネルギーを抽出できる位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のエネルギー抽出システムにおける伝播路偏向面、エネルギー抽出空間及びエネルギー抽出器の一例を示す簡略説明図である。
【図2】本発明のエネルギー抽出位置演算装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図3】伝播路偏向面を構成する伝播路偏向面素の一例を示す説明図である。
【図4】出射エネルギーの拡散領域の一例を示す説明図である。
【図5】エネルギー抽出面の一例を示す説明図である。
【図6】伝播路偏向面素に対する入射エネルギーの入射方向と出射エネルギーの出射方向との関係を示す説明図である。
【図7】エネルギー抽出面とエネルギー拡散領域との交差面を示す説明図である。
【図8】図2の実施形態によるエネルギー抽出位置演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=0上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図10】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=1上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図11】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=2上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【図12】法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=3上における出射エネルギー分布の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[1.構成]
図1および図2に示すように、本実施形態は、伝播路偏向面1、エネルギー抽出空間2、エネルギー抽出器3、エネルギー抽出位置演算装置100等を有している。
【0034】
[伝播エネルギー]
まず、抽出の対象となるエネルギーを説明する。このエネルギーは、指向性を有し、任意の空間を伝播する。エネルギーの量は、その特性に応じて所望の物理量で観測および抽出できる。エネルギーの例としては、光や電波などの電磁波、音波、移動する物質などが挙げられる。ただし、上記特性を有するものであれば、これらには限定されない。なお、エネルギーが伝播する経路のうち、そのエネルギー量が最も保存される経路を、エネルギー伝播路と呼ぶ。
【0035】
[伝播路偏向面]
伝播路偏向面1は、エネルギーの伝播方向を変化させる特性をもつ3次元曲面である。伝播路偏向面1は、入射したエネルギーEの伝播方向を変化させ、新たな伝播方向にエネルギーPを出射させる。さらに、本実施形態における伝播路偏向面1は、出射エネルギーPを収斂させる作用を有する。伝播路偏向面1の例としては、パラボラアンテナの反射面などが挙げられる。以降の説明では、伝播路偏向面1の形状を、シンプルな回転曲面の一部として数理モデル化したものによって、説明を進める。
【0036】
なお、偏向面の形状および偏向領域(偏向に用いられる領域)は、入射エネルギーEの伝播方向を変化させて出射させることができ、数理モデル化可能な面であれば、上記には限定されない。たとえば、偏向面を、エネルギーを発散させる面としてもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、発明の本質を明確に説明するために、エネルギー伝播路における理想的なエネルギー変換を基本として考える。すなわち、エネルギー伝播路におけるエネルギー変換損失は、無いものと仮定する。
【0038】
ただし、定量化可能であれば、変換損失を考慮して、出射エネルギー量を求めてもよい。エネルギー偏向特性についても、数理モデル化可能であればよく、特定のものには限定されない。
【0039】
[エネルギー抽出空間]
エネルギー抽出空間2は、伝播路偏向面1からの出射エネルギーPが伝播する空間である。このエネルギー抽出空間2は、3次元座標系が導入された任意の空間である。エネルギー抽出空間2における任意の位置は、同座標系の3成分により特定される。
【0040】
また、発明の本質を明確に説明するために、伝播エネルギーの特性が許容する範囲内で、エネルギー抽出空間2を伝播するエネルギーの損失はないものと仮定する。ただし、定量化可能ならば、伝播損失を考慮して、抽出エネルギー量を求めてもよい。
【0041】
このエネルギー抽出空間2における任意の位置において、同位置を通過するエネルギーを抽出できる。さらに、後述するように、同位置においては、拡散関数値が有意な拡散距離(拡散領域)内にあるエネルギーを抽出可能である。
【0042】
[エネルギー抽出器]
エネルギー抽出器3は、伝播路偏向面1から出射されたエネルギーを、観測もしくは抽出する装置である。エネルギー抽出器3は、前述のエネルギー抽出空間2における任意の位置に配置される。そして、エネルギー抽出器3によるエネルギーの抽出位置は、エネルギー抽出空間2に導入された3次元座標系の3成分により特定される。なお、エネルギー抽出器3としては、たとえば、パラボラアンテナにおけるフィードホーンが考えられるが、本発明はこれには限定されない。
【0043】
[エネルギー抽出位置演算装置]
エネルギー抽出位置演算装置100は、エネルギー抽出空間2において、エネルギー抽出器3が配置されるべき位置を演算する装置である。かかるエネルギー抽出位置演算装置100は、設定部110、算出部120、探索部130、記憶部140等を有する。また、エネルギー抽出位置演算装置100には、入力部150、出力部160が接続されている。
【0044】
設定部110は、本実施形態に必要な情報を設定する処理部である。この設定部110は、伝播路偏向面設定部111、入射伝播路設定部112、伝播路偏向面素設定部113、探索条件設定部114、疎密探索条件設定部115等を有している。
【0045】
算出部120は、設定部110において設定された情報に基づいて、本実施形態に必要な情報を算出する処理部である。この算出部120は、出射伝播路算出部121、拡散領域算出部122等を有している。
【0046】
探索部130は、設定部110による設定および算出部120による算出結果に基づいて、エネルギー抽出位置を探索する処理部である。この探索部130は、探索条件抽出部131、格子点エネルギー抽出部132、格子点探索部133、領域抽出部134、疎密探索判定部135、密度要素変更部136等を有している。記憶部140は、本実施形態の処理に必要な情報を記憶する記憶部である。なお、請求項の各記憶部(たとえば、伝播路偏向面記憶部、入射エネルギー伝播路記憶部、伝播路偏向面素記憶部、エネルギー抽出面記憶部、疎密探索条件記憶部、密度要素記憶部等)は、実際には、記憶部140において、それぞれに対応する情報の記憶領域により構成されるものとする。
【0047】
エネルギー抽出位置演算装置100は、たとえば、所定のプログラムによって、上記の各部の機能を実現できるコンピュータによって構成することができる。例えば、汎用のコンピュータやサーバ装置によって構成したり、各部の機能を実現するASICやCPU等のICチップやその他の周辺回路によって構成したり、複数の機能を集約したシステムLSIによって構成する等、種々考えられるものであり、特定のものには限定されない。
【0048】
また、記憶部140としては、たとえば、メモリ、ハードディスク、光ディスク等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を使用できる。さらに、記憶部140には、一時的な記憶領域として使用されるレジスタ、メモリ等も含まれる。したがって、キュー、スタック等も、記憶部140を利用して実現可能である。
【0049】
さらに、入力部150は、本実施形態の処理に必要な情報を入力する装置である。たとえば、マウス、キーボード、リモコン、スイッチ、ディスプレイ(タッチパネル)等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる装置を使用できる。
【0050】
出力部160は、本実施形態の処理に必要な情報を出力する装置である。たとえば、ディスプレイ、プリンタ等の現在もしくは将来において利用可能なあらゆる装置を使用できる。なお、上記の各部の機能の詳細は、後述する作用において、説明する。
【0051】
[2.エネルギー抽出原理]
上記のような装置構成を前提として、本実施形態のエネルギー抽出原理を説明する。
【0052】
[伝播路偏向面素]
伝播路偏向面素10は、図3に示すように、伝播路偏向面1を、多数の有限な部分曲面に、均質に分割したものである。この分割方法は、任意であるが、各伝播路偏向面素10は、すべて同一の大きさ(面積)とする(たとえば、図中の面積(A)=面積(B))。各伝播路偏向面素10の厳密な形状は規定されない。ただし、伝播路偏向面1の均質な分割を考慮すると、それぞれ類似した形状であることが望ましい。
【0053】
このような伝播路偏向面素10の面上に伝播路偏向点11が存在するものとする。伝播路偏向点11は、入射エネルギーEの伝播方向を変更し、新たな方向に出射エネルギーPとして伝播する点である。この伝播路偏向点11は、それ自体、伝播路偏向面素10の配置位置を示す情報となり得る。ただし、たとえば、伝播路偏向点11を、伝播路偏向面素10の中心等の特定位置とする場合、伝播路偏向面素10の位置情報から間接的に求めることもできる。
【0054】
伝播路偏向面素10を経由するエネルギー伝播路を、有向曲線と考える。すると、1つの伝播路偏向面素10には、入射エネルギーEの伝播路に対応する有向曲線が1つのみ入射し、その出射エネルギーPの伝播路に対応する有向曲線が1つのみ出射する。この有向曲線には、たとえば、重力や磁場などの影響で、実際に湾曲するエネルギー伝播路も含まれるが、直進するとみなせる平行光などの直線的なエネルギー伝播路も含まれる。
【0055】
これらにより各伝播路偏向面素10への入射エネルギーEの量が等しい場合、伝播路偏向面1上の任意領域において、単位面積当たりの出射エネルギーPの量はすべて等しいと考えることができる。そして、抽出量を評価される出射エネルギーPは、すべて伝播路偏向面素10を経由したものである。
【0056】
なお、入射エネルギーEの伝播方向および伝播路偏向面素10の偏向特性は、既知であり、数理モデル化されているものとする。ゆえに、入射エネルギーEの伝播方向に基づいて、出射エネルギーPの伝播方向を求めることができる。これらの数理モデルは、本実施形態においては、後述するように、入射伝播路設定部112、伝播路偏向面素設定部113によって設定され、記憶部140に記憶される。また、出射伝播路算出部121が、出射エネルギーPの伝播路を求める。
【0057】
[エネルギーの拡散領域]
出射エネルギーPは、図4に示すように、その伝播路上に抽出されるだけではなく、伝播路と直交する放射方向に拡散する。このように、拡散された出射エネルギーPも抽出可能である。
【0058】
数理モデルとしては、伝播路偏向点11を介したその近傍でのエネルギー伝播路の入射ベクトルと出射ベクトルの関係を求める問題となる。実際には、有限な面積をもつ伝播路偏向面素10から出射された有限な断面積をもつ領域を取り扱う必要がある。
【0059】
このように、本数理モデルは、伝播路と直交する拡散エネルギーとして、有限性を考慮する。したがって、エネルギー伝播路を断面積をもたない曲線とするモデルよりも現実に即している。
【0060】
さらに、この有限性とは別に、実際には伝播中は拡散しないが、観測もしくは抽出の際に、その境界面にて散乱等により拡散する特性を有するエネルギーも存在する。たとえば、コリメートされたレーザ光や運動する弾性体などがある。これらの場合にも、伝播するエネルギーは有限な面積を持っている。したがって、このようなエネルギーを取り扱う場合にも、エネルギー伝播路と拡散関数による本モデルは適している。
【0061】
このような拡散エネルギーの伝播特性は、エネルギー拡散関数D(f)により定義される。エネルギー拡散関数D(f)の形式は、基本的には、対象エネルギーの特性に即したものとする。ただし、エネルギー拡散関数D(f)は、後述の疎密探索において、適切な形式に変更され得る。
【0062】
たとえば、エネルギー拡散関数の形式を、D(r,θ,d)とし、この形式が出射エネルギーPの伝播路全域に亘り、同一であるとする。ここで、rは、エネルギー伝播路からの放射方向の距離を表す変数であり、その定義域は、0≦r≦∞である。この距離rをエネルギー拡散距離と呼ぶ。r=0は、エネルギー伝播路上を表す。θは、伝播路円周方向の角度を表す変数であり、その定義域は、0≦θ≦2πである。角度の基準θ=0は、任意とする。dは伝播路偏向点からの伝播路経路長を表す変数であり、その定義域は、0<dである。
【0063】
このようなエネルギー拡散関数D(r,θ,d)の最大値は1である。少なくともエネルギー伝播路上では、D(0,θ,d)=1である。すなわち、伝播路上のエネルギーも拡散エネルギーで表現することができる。
【0064】
ただし、現実的な指向性エネルギーの拡散を考えた場合、無限遠の拡散エネルギーを取り扱う必要性はない。抽出されるエネルギー量として、有意な距離Rまでを考慮すればよい。この距離Rをエネルギー拡散限界と呼ぶ。エネルギー拡散限界R以遠のエネルギー拡散関数値は、D(r,θ,d)|R<r=0となる。
【0065】
ここで、直線的なエネルギー伝播路上のある位置におけるエネルギー量をpとする。すると、同位置からエネルギー拡散距離rにおける拡散エネルギー量は、D(r,θ,d)・pと求めることができる。同伝播路が曲線である等、直線でない場合は、任意の位置で観測されるエネルギーは、その伝播路上、複数位置からの拡散エネルギー量を求めることが必要となる可能性がある。この場合、関与する経路での適切な線積分により、同位置でのエネルギー総量を求めることができる。
【0066】
なお、以上のような拡散領域は、後述するように、拡散領域算出部122によって算出される。また、算出に必要な拡散関数、拡散限界等については、あらかじめ記憶部140に記憶されているものとする。
【0067】
[出射エネルギーの抽出]
以上のことから、エネルギー抽出空間2において、任意の位置で抽出されるエネルギー量は、すべての伝播路偏向面素10よりの出射エネルギーPに関する拡散エネルギー量の総和として求めることができる。
【0068】
なお、以下の条件が、全ての伝播路偏向面素10に対応する出射エネルギーPに言えるとする。
・出射エネルギーPの伝播路が直線である
・同伝播路上のあらゆる位置でのエネルギー量が一定である
すると、エネルギー抽出空間2上の任意の位置でのエネルギー拡散関数値の総和を、既知の伝播路偏向面素10の数で除した相対値により、抽出エネルギー量を相対的に比較することができる。この相対値を相対抽出エネルギーと呼ぶ。
【0069】
つまり、伝播路偏向面1における伝播路偏向面素10の数は既知である。そして、拡散関数値の最大は1である。このため、抽出エネルギーに関する拡散関数値の総和を、総面素数で除することにより、正規化できる。なお、伝播エネルギーの性質を考慮して、変換面から抽出点までの距離に応じた重み付けを抽出エネルギーもしくは相対抽出エネルギーに付加することもできる。
【0070】
以上のような出射エネルギーPの抽出は、後述するように、格子点エネルギー抽出部132によって行われる。
【0071】
[最大エネルギー抽出領域]
効率的に伝播エネルギーを抽出するためには、抽出エネルギー量が最大となる位置を特定し、その位置において抽出すればよい。ただし、同位置は単一の点とは限らない。2次元的もしくは3次元的な広がりを有する領域かもしれない。かかる領域が単数もしくは複数であるかもしれない。このため、エネルギー抽出空間2の全域を隈なく探索し、各位置における抽出エネルギー量を評価することで、それが最大となるエネルギー抽出領域を特定できる。
【0072】
抽出エネルギー量が最大となる領域を探索することが目的であれば、絶対的なエネルギー量を知る必要はない。上記のとおり正規化された相対抽出エネルギーのエネルギー抽出空間2での分布は、絶対的な抽出エネルギー量の分布と同様である。したがって、相対抽出エネルギーを評価することによっても、最大エネルギー抽出領域を特定することができる。
【0073】
[効率的な最大エネルギー抽出方法]
しかし、領域を特定せずに、エネルギー抽出空間2の全域を探索するには、膨大な計算コストを費やすため、現実的ではない。このため、より効率的な探索を実現する戦略が必要となる。
【0074】
そこで、図5に示すように、エネルギー抽出空間2上に、法線ベクトルNが同一な複数の平面を考える。このとき、それぞれの平面上で出射エネルギーPを抽出し、最大量の評価を進める。これらの平面をエネルギー抽出面Fと呼ぶ。図中、Sは抽出エネルギーを示す。
【0075】
エネルギー抽出面F上には、それぞれ任意の2次元座標系が導入されているものとする。エネルギー抽出面F上の任意の位置は、導入された2次元座標系の2成分で表現することができる。なお、エネルギー抽出空間2の3次元座標系の3成分によって、エネルギー抽出面F上の任意の位置を表現することもできる。
【0076】
上記の2次元座標系の2成分をx,yとしたとき、それぞれの成分をdx,dy間隔で分割する格子点(抽出点)上でエネルギー抽出を試みる。このようなエネルギー抽出面F及び格子点を定義付ける情報は、探索条件設定部114によって設定され、探索条件として記憶部140に記憶される。このように、探索条件には、請求項の「抽出面に関する情報」が含まれており、その記憶領域は、「エネルギー抽出面記憶部」として機能する。
【0077】
一方、任意の出射エネルギーPの拡散領域については、たとえば、図4に示すように、エネルギー抽出空間上の仮想的な円筒形チューブを考える。この円筒形チューブは、エネルギー伝播路を中心軸として、エネルギー拡散限界Rを半径とする。すなわち、円筒型チューブの内部においては、その中心軸となる出射エネルギーPを抽出できる。
【0078】
図6に示すように、任意のエネルギー抽出面Fと任意の出射エネルギーPに対応する上記円筒形チューブとが交差する断面領域を想定する。この断面領域内のすべての上記格子点において、拡散エネルギーもしくはその相対値を抽出する。このような格子点エネルギーの抽出は、格子点エネルギー抽出部132が行う。
【0079】
このような抽出を、伝播路偏向面1上のすべての伝播路偏向面素10から出射する伝播エネルギーについて行う。この際、同一格子点上で、複数の伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出できる場合がある。その場合には、抽出したエネルギー量もしくはその相対値の総和(積算値)を同位置での抽出エネルギー量とする。
【0080】
出射エネルギーPを抽出した格子点数は有限である。このため、抽出エネルギー量もしくはその相対値が最大となる格子点群を、有限時間で効率よく求めることができる。なお、格子点群の探索は、後述するように、格子点探索部133によって行われる。
【0081】
このエネルギー抽出面F上の最大エネルギー格子点探索を、すべてのエネルギー抽出面Fに対して実施する。それらの探索結果を統合し、さらに探索の密度を変更して探索する疎密探索を行うことにより、広がりを持った最大エネルギー領域を特定することができる。なお、最大エネルギー領域の抽出は、後述するように、領域抽出部134によって行われる。
【0082】
疎密探索においては、密度要素変更部135が、たとえば、後述する疎密探索条件に従って、以下のような探索の密度を決定する要素(密度要素)を示すパラメータを適宜変更することにより、探索の疎密の度合いを変更する。
(1)エネルギー拡散関数の形式
(2)伝播路偏向面素の大きさ
(3)エネルギー抽出面上の格子点間隔
(4)エネルギー抽出面同士の間隔
【0083】
これらのパラメータの初期値は、たとえば、エネルギーを抽出する目的空間の理解度に応じて決定する。ただし、不明の場合には、全天球に準ずる初期値とする。ここで、「理解度」とは、たとえば、事前にどの程度の空間がエネルギー検出に妥当であるか、出射エネルギーPの伝播領域はどの程度であるか、などの最大エネルギー抽出に対する予備知識や予測をいう。具体的な一例としては、パラボラアンテナの場合、収斂位置はその焦点から大きくは逸れない、などが挙げられる。このような予備知識に基づいて、探索の空間を絞ることにより、計算量を節約できる。
【0084】
もし、予備知識が全くない場合、出射エネルギーPが伝播可能な全ての空間を探索の初期状態とする必要がある。そのような広大な空間に対して、偏向面は概ね平面とみなせる。その平面に対して、出射エネルギーPが伝播する方向側の半空間、すなわち「全天球」が、初期探索空間となる。現実的には、偏向面近傍の抽出空間での抽出結果を、予備知識として探索を進めることが望ましい。
【0085】
これらの密度要素は、探索条件に含まれる。このように、探索条件には、請求項の「密度要素」が含まれており、その記憶領域は、「密度要素記憶部」として機能する。本実施形態では、かかる疎密探索戦略を採用することによって、より効率的に最大エネルギー抽出領域を特定することができる。
【0086】
[3.作用]
本装置によるエネルギー抽出位置演算処理を、図3〜11を参照して説明する。
[処理の概要]
エネルギー抽出位置演算処理の概要を、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、あらかじめ入力部150からの入力に応じて、設定部110による初期値の設定が行われる。
【0087】
伝播路偏向面設定部111は、伝播路偏向面1を定義付ける数理モデル(たとえば、形状、偏向領域)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ801)。入射伝播路設定部112は、入射エネルギーEを定義付ける数理モデル(たとえば、伝播方向等を含む)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ802)。
【0088】
伝播路偏向面素設定部113は、伝播路偏向面素10を定義付ける数理モデル(たとえば、面素サイズ(大きさ)、偏向特性、各面素の配置位置等を含む)を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ803)。なお、面素の「大きさ」には、面積そのものの場合も、方形の場合の辺長のように面積を求めることができる値も含まれる。
【0089】
なお、伝播路偏向面素設定部113が、上記の伝播路偏向面1を定義付ける数理モデルに基づいて、伝播路偏向面素10を定義付ける数理モデルを求める演算部を有していてもよい。たとえば、面素サイズ(均一)が決定すれば、伝播路偏向面1の形状および偏向領域に基づいて、各面素の配置位置等を求めることができる。逆に、各面素の配置位置が決まれば、伝播路偏向面1の形状および偏向領域に基づいて、面素サイズ(均一)を求めることができる。
【0090】
探索条件設定部114は、探索条件を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ804)。探索条件には、たとえば、エネルギー抽出面Fおよび格子点を定義付ける数理モデル(法線ベクトル、抽出面の配置位置(間隔、数等)、二次元座標系、格子点位置(間隔、数等))等が含まれている。
【0091】
さらに、疎密探索条件設定部115は、疎密探索の条件を設定し、記憶部140に記憶する(ステップ805)。この疎密探索条件の記憶領域は、「疎密探索条件記憶部」として機能する。設定される疎密探索の条件としては、たとえば、以下のようなものが含まれている。
(α)密度の変更量
(β)探索対象の絞り込み条件
(γ)探索完了条件
【0092】
密度の変更量とは、初期値から密度を高めて探索を進めるために、上記の密度要素(2)〜(4)に対応するパラメータをどの程度小さく(密度が高く)なるように更新するかに関する情報である。これは、たとえば、パラメータに対する割合とすることが考えられる。一律の値(たとえば、1/2)としてもよいし、探索空間の大きさやエネルギー分布に応じて、適宜更新してもよい。ただし、パラメータは、拡散限界よりも小さくなるように更新する必要がある。かかる密度要素の変更は、密度要素変更部136によって行われる。
【0093】
探索対象の絞り込み条件とは、密度が高くなるに従って、探索対象とすべき空間を絞り込むための条件である。たとえば、探索対象とすべき空間を、前回の探索で特定された最大エネルギー抽出点のうち、各エネルギー抽出面Fにおける最外格子点位置の集合により特定される領域とすることが考えられる。かかる絞り込み条件は、格子点エネルギー抽出部132、格子点探索部133、領域抽出部134の処理対象の絞り込みとして反映される。
【0094】
探索完了条件とは、密度を高めて進める探索を完了させるための条件である。たとえば、初期値として設定される上記の密度要素(2)〜(4)のパラメータよりも、探索を終えるに適した小さな値とする。また、探索完了条件を、最大エネルギー抽出位置近傍の所定のエネルギー分布とすることも可能である。この探索完了条件を満たしているかどうかは、疎密探索判定部135によって判定される。
【0095】
なお、密度要素(1)の拡散関数形式は、本来動的には変わらないものである。しかし、探索の初期に高エネルギー密度領域を粗く求められるように、拡散限界を広げる目的で、密度が高くなるに従って、パラメータを変えることもできる。その場合、ある程度の密度に探索が進んだところで、本来の形式に固定する。すなわち、本発明においては、最大エネルギー抽出位置特定に対する計算量が最小となり、精度が最大となることが望ましい。しかし、両者はトレードオフの関係にある。そこで、たとえば、当初は拡散限界を拡大し、抽出エネルギーの最大値(極大値)を探索しやすくなるように設定する。この段階では、抽出できる格子点数も拡大するため、計算量は大きくなる。その後、計算量と精度に対する要求を満足するように、本来の関数形式へと漸次戻していく。
【0096】
なお、上記のように設定される情報(既知の情報)は、少なくとも、あらかじめ記憶部140に記憶されていればよい。このため、入力部150からの入力もしくは通信ネットワーク等を介した入力に従って、設定部110が設定する場合も含まれる。また、入力部150から入力された情報もしくは通信ネットワーク等を介して入力された情報が、そのまま記憶部140に記憶される場合も含まれる。さらに、あらかじめ情報が記憶された媒体が、装置に装着される場合も含まれる。
【0097】
次に、出射伝播路算出部121が、入射エネルギーEの伝播方向および伝播路偏向面素10の偏向特性等に基づいて、出射エネルギーPの伝播方向を算出する(ステップ806)。探索条件抽出部131は、最初に探索すべきエネルギー抽出面に対応する探索条件を抽出し、探索条件キューに挿入する(ステップ807)。格子点エネルギー抽出部132は、探索条件キューから探索条件を取り出す(ステップ808)。このとき、拡散領域算出部122は、拡散関数及び拡散限界に基づいて、出射エネルギーPの拡散領域を算出する(ステップ809)。
【0098】
ここでの拡散領域の算出は、抽出された探索条件におけるエネルギー抽出面Fとの交差領域のみを求めるのみでよい。なお、拡散領域の算出は、出射エネルギーPの伝播方向の算出後に、あらかじめその全体を算出しておくことも考えられる。しかし、上記の交差領域のみを求めることにより演算量を絞ることが、必要性と計算コストから考慮して、現実的といえる。したがって、請求項における拡散領域の算出は、全体の演算も、交差領域のみの演算も含まれる。
【0099】
そして、格子点エネルギー抽出部132は、当該交差領域における各格子点に対する全ての伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出し、その総和を記憶部140に記憶する(ステップ810)。これを、全ての格子点に対する伝播路偏向面素10からの出射エネルギーPを抽出するまで繰り返す(ステップ810のNO、811)。
【0100】
全ての格子点に対する出射エネルギーPを抽出した後(ステップ810のYES)、格子点探索部133は、当該エネルギー抽出面Fにおける各格子点のうち、最大エネルギー量となる格子点(単一でもよいし、複数から成る格子点群でもよい)を抽出し、記憶部140に記憶する(ステップ812)。格子点が複数にわたり、二次元的な広がりを有する場合には、その重心を代表位置として記憶してもよい。なお、代表位置は、重心には限定されない。ただし、重心は領域の平均を示す位置であり、統計上は分散が最小となる性質を持っているので、空間的に広がりがある領域を代表するに相応しい。
【0101】
以上を、エネルギー抽出空間2における探索条件で設定された全てのエネルギー抽出面Fについて繰り返す(ステップ808〜814)。つまり、格子点エネルギー抽出部132が、抽出を終えたエネルギー抽出面Fに隣接するエネルギー抽出面Fが存在する場合(ステップ813のYES)、その探索条件を、探索条件キューに挿入し、これに基づいて、順次抽出を行っていく。
【0102】
全てのエネルギー抽出面Fについて抽出を終えた後(ステップ813のNO)、領域抽出部134は、全てのエネルギー抽出面Fにおける最大エネルギー格子点に基づいて、エネルギー抽出空間2における最大エネルギー領域を抽出し、記憶部140に記憶する(ステップ815)。つまり、隣接するエネルギー抽出面F間で、その距離が最短となる各平面F上の最大エネルギー抽出位置群が形成する曲線的な系列において、最大エネルギー量となる空間を抽出する。この領域は、単一もしくは複数となりうる。三次元的な広がりを有する領域について、その重心を代表位置として記憶してもよい。重心とする意味は、上記の通りである。
【0103】
そして、疎密探索判定部135は、現在の密度要素が探索完了条件に一致するかどうかを判定する(ステップ816)。一致しない場合(ステップ816のNO)、密度要素変更部136が、密度要素を、疎密探索条件に設定された密度の変更量に従って変更する(ステップ817)。そして、探索条件抽出部131は、最初に探索すべきエネルギー抽出面に対応する探索条件を抽出し、探索条件キューに挿入する(ステップ807)。
【0104】
その後、上記のステップ808〜815の処理を行う。つまり、キューからの探索条件の取り出し、疎密探索条件を満足する格子点上の出射エネルギー総和もしくは相対抽出エネルギー総和の算出が行われ、現条件での局所的な最大エネルギー抽出領域が探索される。これは、探索完了条件を満たすまで繰り返される(ステップ807〜816)。たとえば、密度要素変更部136が、格子点間隔、エネルギー抽出面Fの間隔を狭めるように変化させることにより、これに従って、疎から密へと探索が進んでいく。
【0105】
疎密探索判定部135が、密度要素(2)〜(4)もしくは各最大エネルギー抽出領域近傍のエネルギー分布等が探索完了条件を満たすと判定した場合には(ステップ816のYES)、密度要素変更部136による密度の変更、探索条件抽出部131による探索条件の探索条件キューへの挿入は行わない。そして、その時点で記憶されている抽出領域が、最大エネルギー抽出位置として、出力部160により出力される(ステップ818)。
【0106】
なお、複数の抽出位置(領域)が抽出されるとき、全てのエネルギー量もしくはその相対値が同一でない場合であっても、対象モデルの実形態に応じて有用となる可能性がある。このため、かかる場合に、複数の抽出位置の全部を出力するか、もしくはその一部を出力するかは自由である。
【0107】
[具体的な演算処理]
以上のような数理モデルおよび演算処理の具体例を説明する。本例では、対象となるエネルギーの伝播路は直線的である。伝播路偏向面の形状は、回転放物面の一部である。さらに、伝播路偏向面1、エネルギー抽出空間2およびエネルギー抽出器3が、パラボロイド反射器を有するパラボラアンテナである。
【0108】
[座標系の導入]
まず、エネルギー抽出空間2に、原点が同一な3次元直交座標系Σ0と円柱座標系ΣCを同時に導入する。Σ0の成分が(x,y,z)Tで、ΣCの成分が(r,θ,z)Tで表されるとき、両座標系には式(1)が成り立つものとする。
【0109】
すなわち、Σ0上の(0,0,1)Tと(1,0,0)Tが、ΣC上の(0,0,1)Tと(1,0,0)Tにそれぞれ一致するように、両座標系が導入されるものとする。
【0110】
【数1】
【0111】
[伝播路偏向面]
z軸を回転軸とし、焦点f=(0,0,f)Tを有するパラボロイド(回転放物面)の一部が、パラボロイド反射器の反射面であるとき、同反射面上のΣCにおける任意の位置Crは式(2)のとおり表される。
【0112】
【数2】
【0113】
[伝播路偏向面素]
次に、この反射面を構成する伝播路偏向面素10は、図3に示すように、同反射面を放射方向および円周方向に分割した曲面とする。このように、放射方向の区間[a,b]および円周方向の区間[c,d]に分割された曲面の面積A(a,b,c,d)は、式(3)のとおり求めることができる。
【0114】
【数3】
【0115】
上記のとおり、伝播路偏向面1を分割した部分曲面を、伝播路偏向面素10としたとき、式(3)のとおり表される面積A(a,b,c,d)は、どの部分曲面においても、一定であればよい。
【0116】
このように伝播路偏向面1を均質に分割するために、放射方向の分割は、各面素の放射方向の長さが同一となるように行う。この際、ΣCのr成分の区間[a,b]における同面素の放射方向の長さLr(a,b)は、式(4)のとおり求めることができる。
【0117】
【数4】
【0118】
放射方向が、区間[r0,rN]に亘ってN分割されるとする。このとき、それぞれの分割区間[rn−1,rn]における長さLr(rn−1,rn)が一定の値Δrとなるように、所望の放射方向初期位置r0から、順次rnを求める。ただし、放射方向の距離rが小さいほど、パラボロイドの円周長は小さい。このため、r0<r1<…<rn−1<rnとする。また、分割区間[rn−1,rn]を、放射分割区間nとする。
【0119】
放射分割区間lにおいて、円周方向が区間[θ−M,θM]に亘って均等に2Mに分割されるとする。このとき、各分割区間[θm−1,θm]における平面角Δθは、式(5)のとおり表される。また、分割区間[θm−1,θm]を円周分割区間mとし、θ−M<θ−M+1<…<θm−1<θm<…<θM−1<θMとする。
【0120】
【数5】
【0121】
同様に、放射分割区間nにおいても、円周方向が均等に2Mに分割されるとする。すなわち、円周方向の伝播路偏向面素10の数が2Mとする。すると、各面素の面積が一定という条件により、放射分割区間nにおける各円周分割区間の平面角Δθnは、式(6)のとおり求めることができる。
【0122】
【数6】
【0123】
以上より、放射分割区間nにおいては、円周方向は区間[−MΔθn,MΔθn]に亘って、均等に2Mに分割されることになる。
【0124】
このような伝播路偏向面素10の定義方法によれば、ΔrおよびΔθによって、伝播路偏向面素10の面積を制御可能となる。これは、疎密探索に望ましい形態となる。
【0125】
なお、上記の伝播路偏向面素10の定義方法は、パラボライド、すなわちz(r)=r2/4fに限定している。しかし、z(r)が任意の回転曲面にも適用できる。
【0126】
伝播路偏向面素10の面積や放射方向の長さが解析的に求まらないモデルや、数値計算により求めても、計算規模が大きく実用的でないモデルの場合も考えられる。そのような場合においては、それぞれ解析的に求めやすい微少な曲面の面積や曲線の長さとして、近似的に求めてもよい。
【0127】
[出射エネルギー伝播方向]
続いて、放射分割区間n、円周分割区間mにおける伝播路偏向面素10の伝播路偏向点11(ここでは、Crn,mで表す)は、式(7)のとおり、伝播路偏向面素10の中央とする。
【0128】
【数7】
【0129】
伝播路偏向点Crn,mにおける伝播路偏向面素10の法線ベクトルCnn,mは、式(8)のとおり求められる。
【0130】
【数8】
【0131】
ここで、図6に示すように、伝播路偏向点Crn,mに入射した伝播エネルギーのΣOにおける伝播方向をOin,mとする。Oin,mは、既知であるとする。
【0132】
上記法線ベクトルCnn,mが、ΣOにおいては、Onn,mと表される。このとき、伝播路偏向点Crn,mから出射する伝播エネルギーの伝播方向ベクトルOOn,mは、式(9)のとおり求めることができる。ただし、i・nは、iとnとの内積を表す。
【0133】
【数9】
【0134】
以上により、すべての伝播路偏向点における出射エネルギーPの伝播方向を求めて、エネルギー抽出空間2上の出射エネルギーPの分布を評価する。
【0135】
[エネルギー抽出面]
エネルギー抽出空間2上の任意の平面を式(10)のとおり関数F(n,d)で表す。ただし、nは平面の法線ベクトルである。よって、法線ベクトルがNである任意のエネルギー抽出面はF(N,d)と表すことができる。この際、同平面上に導入された2次元座標系をΣN,dと表す。
【0136】
【数10】
【0137】
また、ΣOにおける伝播路偏向点Orn,mを経由する出射エネルギーPの伝播方向がOOn,mであるとき、出射エネルギー伝播路Pn,mは式(11)のとおり表すことができる。
【0138】
【数11】
【0139】
エネルギー伝播路は直線である。このため、図4に示すように、前記円筒チューブは円柱となる。よって、図7に示すように、出射エネルギー伝播路Pn,mに基づく円柱とエネルギー抽出面F(N,d)との断面は、楕円となる(図中、エネルギー拡散限界の断面Qで示す)。この楕円の短径の1/2の長さがエネルギー拡散限界Rであり、長径の1/2の長さであるan,mは、式(12)のように表される。
【0140】
【数12】
【0141】
同平面上のΣN,dにおいて、Pn,mとF(N,d)との交点が、N,dcn,mであり、F(N,d)へのOrn,mの正射影が、N,drn,mであるとき、この楕円の焦点N,dfn,mは式(13)のとおり表される。
【0142】
【数13】
【0143】
[格子点エネルギーの抽出]
式(12)、(13)に基づく楕円領域内部のすべてのエネルギー抽出格子点について、エネルギー拡散関数D(r,θ,d)の値を求める。そして、同格子点での抽出エネルギー関連量として積算する。なお、エネルギー拡散関数の変数rは、各格子点のPn,mまでの距離である。
【0144】
ここで、伝播路偏向面1が、反射面でありパラボロイドの一部である場合の仕様例を、表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
この伝播路偏向面1に対して、パラボロイド回転軸から、2[deg]傾いた方向より入射する直線的な伝播エネルギーの、出射エネルギーPの分布を、図9〜12に示す。
【0147】
なお、各出射エネルギーPの分布は、法線ベクトルが(1,0,0)Tであるエネルギー抽出面x=k(k=0,1,2,3)上における分布を表している。各エネルギー抽出面F上には、ΣOの原点を(k,0,100)Tへ並進変換した際のy−z平面と同等の2次元座標系が導入され、同平面上のエネルギー抽出位置をその成分により特定する。
【0148】
また、エネルギー拡散関数D(r,θ,d)を、エネルギー拡散限界Rとして、式(14)のとおりとして求めた。
【0149】
【数14】
【0150】
このように、すべてのエネルギー抽出面Fでの最大エネルギー抽出領域探索結果を統合することにより、最終的に、エネルギー抽出空間2上の最大エネルギー抽出領域を求めることができる。
【0151】
パラボロイド回転軸に平行入射したエネルギーは、すべてパラボライドの焦点に収斂される。しかし、上記の例では、最大エネルギー抽出領域が同焦点からずれていることがわかる。このため、同領域内部にエネルギー抽出器3を配置すれば、最も効率的な抽出を行うことができる。
【0152】
[4.効果]
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)実装置を用いた測定を行うことなく、装置の数理モデルを用いることにより、効率的なエネルギー抽出領域を求めることができる。
(2)数理モデル化可能であれば、任意の伝播路偏向面およびその偏向形式に適用することができる。
【0153】
(3)密度要素を変更して探索を繰り返す疎密探索を実行することにより、より効率よくエネルギー抽出領域を求めることができる。
(4)伝播路偏向面素の大きさ、抽出面の位置、抽出点の間隔などのスケーリングが容易な、疎密探索に適した情報を用いるので、これらの情報を調節することで、伝播路偏向面その他の状況に応じて、計算コストを適切に設定できる。
【0154】
(5)単位面積あたりの伝播路偏向面素数が、伝播路偏向面全面に亘り均一である。このため、異なる入射方向同士のエネルギー伝播路偏向による出射エネルギー分布を、正しく比較評価できる。
【0155】
(6)拡散エネルギーは存在せず、エネルギー伝播路を断面積を持たない曲線としたモデルとした場合には、エネルギー抽出面上で抽出されるエネルギーは面積を持たない点となる。すなわち、同平面上の最大エネルギー抽出問題は、2次元的に分布するエネルギー密度分布から、密度最大となる点を求める問題となる。これと比較して、本実施形態発明で採用するモデルでは、断面積を持つ有限の拡散領域と抽出面との交差面を抽出対象とするので、計算コストを小さくすることができる。
【0156】
(7)有限の抽出点を対象とするので、エネルギー量を効率よく抽出できる。
(8)複数のエネルギー抽出面を設定することにより、広がりを持った空間である抽出領域を効率よく求めることができる。
【0157】
[5.他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態には限定されない。以下のような態様も本発明に含まれる。
【0158】
(1)伝播路偏向面は、パラボロイド以外の曲面であってもよい。また、伝播路偏向面は、伝播路偏向面素を定義できればよいので、回転曲面以外の自由曲面であってもよい。
【0159】
(2)偏向するエネルギーの作用は、収斂以外であってもよい。たとえば、伝播路偏向面を、エネルギーを発散させる凸面鏡としてもよい。この場合、エネルギー拡散の均質性評価や安全性評価に適用できる。平面鏡による均一な伝播路偏向にも適用可能である。つまり、伝播路偏向面は、エネルギーを偏向させることができれば、平面、曲面、その他の凹凸を有する面等であってもよい。
【0160】
(3)複数の伝播路偏向面を連携させた装置も構成可能である。たとえば、前段の出射エネルギーが、後段の入射エネルギーとして逐次伝播路偏向を進める装置を構成することもできる。
【0161】
(4)エネルギー伝播路の偏向形式は、反射以外の屈折や回折によるものであってもよい。たとえば、伝播路を屈折もしくは回折させる光学部材による偏向でもよい。つまり、偏向面とは、異なる物質間の境界面として捉えるべきであるので、反射のみならず、屈折の偏向形式も適用可能である。また、回折の場合には、回折点をすべて含む曲面が偏向面となる。
【0162】
(5)エネルギー抽出のために設定される抽出面は、平面には限定されず、曲面、その他の凹凸を有する面等であってもよい。たとえば、円筒表面の一部であってもよい。抽出面の数は、複数でも単数でもよい。
【0163】
(6)抽出エネルギーは、最大のものには限定されない。たとえば、最小もしくは所望の範囲のエネルギー分布領域を、探索することもできる。この場合、その抽出範囲(しきい値等)を、あらかじめ記憶部に設定しておくことが考えられる。最大、最小のものを抽出する場合も、ある値以上のものは全て最大とする場合、ある値以下のものは全て最小とする場合には、そのしきい値等をあらかじめ記憶部に設定しておくことが考えられる。なお、本発明においては、大小の判断処理において、しきい値を含む「以上」、「以下」とするか、しきい値を含まない「より大きい」、「より小さい」とするかは自由である。
【0164】
(7)本発明の演算により求められた抽出位置には、必ずしも抽出器が配置される必要はない。たとえば、抽出エネルギーを観測可能な器具が配置されてもよい。つまり、本発明により求められたエネルギーの抽出位置等の結果を、実際の装置においてどのように利用するかは限定されない。
【符号の説明】
【0165】
1…伝播路偏向面
2…エネルギー抽出空間
3…エネルギー抽出器
10…伝播路偏向面素
11…伝播路偏向点
100…エネルギー抽出位置演算装置
110…設定部
111…伝播路偏向面設定部
112…入射伝播路設定部
113…伝播路偏向面素設定部
114…探索条件設定部
115…疎密探索条件設定部
120…算出部
121…出射伝播路算出部
122…拡散領域算出部
130…探索部
131…探索条件抽出部
132…格子点エネルギー抽出部
133…格子点探索部
134…領域抽出部
135…疎密探索判定部
136…密度要素変更部
140…記憶部
150…入力部
160…出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ又は電子回路が、
指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する入射エネルギー伝播路記憶部と、
前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する伝播路偏向面素記憶部と、
出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶するエネルギー抽出面記憶部と、
前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部と、
前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部と、
前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項2】
前記入射エネルギーの伝播路に関する情報には、少なくとも入射エネルギーの伝播方向が含まれ、
前記偏向面素に関する情報には、少なくとも各偏向面素の偏向特性および配置位置が含まれることを特徴とする請求項1記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項3】
前記偏向面素の偏向特性および配置位置を設定する伝播路偏向面素設定部を有することを特徴とする請求項2に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項4】
前記偏向面に関する情報を記憶する伝播路偏向面記憶部を有し、
前記偏向面に関する情報には、少なくとも偏向面の形状および偏向領域が含まれることを特徴とする請求項3記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項5】
前記拡散領域算出部は、エネルギー拡散関数に基づいて、前記拡散領域を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項6】
前記探索部による探索の疎密に関する情報である密度要素を記憶する密度要素記憶部と、
前記密度要素を変更する密度要素変更部と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項7】
前記密度要素変更部による変更の基準となる疎密探索条件を記憶する疎密探索条件記憶部を有することを特徴とする請求項6記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項8】
前記密度要素には、拡散領域を算出するためのエネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出面に設定される複数の抽出点の疎密に関する情報、複数設定された抽出面の疎密に関する情報の少なくとも一つが含まれていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項9】
前記抽出面に関する情報には、抽出面に設定される複数の抽出点に関する情報が含まれ、
前記探索部は、
前記交差面に含まれる抽出点におけるエネルギー量に関する値を抽出する抽出点エネルギー抽出部と、
前記抽出点におけるエネルギー量に関する値が、所定の条件となる抽出点を探索する抽出点探索部と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項10】
前記抽出面は複数設定され、
複数の抽出面において、前記抽出点探索部により抽出された抽出点に基づいて、所定の条件となるエネルギー抽出領域を抽出する領域抽出部を有することを特徴とする請求項9記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項11】
前記抽出面の位置および前記抽出点の間隔を設定する抽出面設定部を有することを特徴とする請求項8又は請求項9記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項12】
前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が最大であることを含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項13】
前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が所定の範囲内であることを含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項14】
コンピュータ又は電子回路が、入射エネルギー伝播路記憶部、伝播路偏向面素記憶部、エネルギー抽出面記憶部、出射伝播路算出部、拡散領域算出部、探索部を有し、
前記入射エネルギー伝播路記憶部が、指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する処理と、
前記伝播路偏向面素記憶部が、前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する処理と、
前記エネルギー抽出面記憶部が、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する処理と、
前記出射伝播路算出部が、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する処理と、
前記拡散領域算出部が、前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する処理と、
探索部が、前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する処理と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出位置演算方法。
【請求項15】
コンピュータに、
指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する処理と、
入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する処理と、
出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する処理と、
入射エネルギーの伝播路に関する情報と偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する処理と、
出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する処理と、
拡散領域と抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する処理と、
を実行させることを特徴とするエネルギー抽出位置演算プログラム。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置と、
前記偏向面と、
前記偏向面からの出射エネルギーを抽出するエネルギー抽出器と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出システム。
【請求項1】
コンピュータ又は電子回路が、
指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する入射エネルギー伝播路記憶部と、
前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する伝播路偏向面素記憶部と、
出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶するエネルギー抽出面記憶部と、
前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する出射伝播路算出部と、
前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する拡散領域算出部と、
前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する探索部と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項2】
前記入射エネルギーの伝播路に関する情報には、少なくとも入射エネルギーの伝播方向が含まれ、
前記偏向面素に関する情報には、少なくとも各偏向面素の偏向特性および配置位置が含まれることを特徴とする請求項1記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項3】
前記偏向面素の偏向特性および配置位置を設定する伝播路偏向面素設定部を有することを特徴とする請求項2に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項4】
前記偏向面に関する情報を記憶する伝播路偏向面記憶部を有し、
前記偏向面に関する情報には、少なくとも偏向面の形状および偏向領域が含まれることを特徴とする請求項3記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項5】
前記拡散領域算出部は、エネルギー拡散関数に基づいて、前記拡散領域を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項6】
前記探索部による探索の疎密に関する情報である密度要素を記憶する密度要素記憶部と、
前記密度要素を変更する密度要素変更部と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項7】
前記密度要素変更部による変更の基準となる疎密探索条件を記憶する疎密探索条件記憶部を有することを特徴とする請求項6記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項8】
前記密度要素には、拡散領域を算出するためのエネルギー拡散関数、偏向面素の大きさ、抽出面に設定される複数の抽出点の疎密に関する情報、複数設定された抽出面の疎密に関する情報の少なくとも一つが含まれていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項9】
前記抽出面に関する情報には、抽出面に設定される複数の抽出点に関する情報が含まれ、
前記探索部は、
前記交差面に含まれる抽出点におけるエネルギー量に関する値を抽出する抽出点エネルギー抽出部と、
前記抽出点におけるエネルギー量に関する値が、所定の条件となる抽出点を探索する抽出点探索部と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項10】
前記抽出面は複数設定され、
複数の抽出面において、前記抽出点探索部により抽出された抽出点に基づいて、所定の条件となるエネルギー抽出領域を抽出する領域抽出部を有することを特徴とする請求項9記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項11】
前記抽出面の位置および前記抽出点の間隔を設定する抽出面設定部を有することを特徴とする請求項8又は請求項9記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項12】
前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が最大であることを含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項13】
前記所定の条件には、エネルギー量もしくはその相対値が所定の範囲内であることを含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置。
【請求項14】
コンピュータ又は電子回路が、入射エネルギー伝播路記憶部、伝播路偏向面素記憶部、エネルギー抽出面記憶部、出射伝播路算出部、拡散領域算出部、探索部を有し、
前記入射エネルギー伝播路記憶部が、指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する処理と、
前記伝播路偏向面素記憶部が、前記入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する処理と、
前記エネルギー抽出面記憶部が、出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する処理と、
前記出射伝播路算出部が、前記入射エネルギーの伝播路に関する情報と前記偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する処理と、
前記拡散領域算出部が、前記出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する処理と、
探索部が、前記拡散領域と前記抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する処理と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出位置演算方法。
【請求項15】
コンピュータに、
指向性を持つ入射エネルギーの伝播路に関する情報を記憶する処理と、
入射エネルギーを偏向させて出射エネルギーとする偏向面について、当該偏向面を構成する複数の偏向面素に関する情報を記憶する処理と、
出射エネルギーの抽出面に関する情報を記憶する処理と、
入射エネルギーの伝播路に関する情報と偏向面素に関する情報に基づいて、出射エネルギーの伝播路を算出する処理と、
出射エネルギーの伝播路に基づいて、出射エネルギーの拡散領域を算出する処理と、
拡散領域と抽出面とが交差する交差面に基づいて、出射エネルギーの抽出位置を探索する処理と、
を実行させることを特徴とするエネルギー抽出位置演算プログラム。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のエネルギー抽出位置演算装置と、
前記偏向面と、
前記偏向面からの出射エネルギーを抽出するエネルギー抽出器と、
を有することを特徴とするエネルギー抽出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−94074(P2012−94074A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242741(P2010−242741)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
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