説明

エネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法

【課題】ステップ応答制御においてエネルギー使用量が一定値を大幅に超えないように、かつ設定値への追従特性が損なわれないようにする。
【解決手段】電力総和抑制制御装置は、各制御ループの操作量を特定の値にした場合の昇温時間を推定する昇温時間推定部(12)と、各制御ループの制御量を昇温時間の間に設定値変更に応じた量だけ変化させるのに必要な出力を推定し、使用電力総量が割当総電力を超えない必要出力を各制御ループの操作量出力上限値とする電力抑制部(16〜18)と、昇温時間が最大限度時間以内でない場合に、各制御ループの必要出力を、各制御ループの制御量を最大限度時間の間に設定値変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力を各制御ループの操作量出力上限値として再設定する補正設定部(21)と、制御部(23−i)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に係り、特にステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を大幅に超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
特に複数の電気ヒータを備える加熱装置では、立ち上げ時(複数の電気ヒータが設置されている領域の一斉昇温時)に同時供給される総電力を抑制するために、以下のような手法が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたリフロー装置では、立ち上げ時の消費電流を低減するために、ヒータの近傍が熱的に飽和してから次のヒータを立ち上げるようにして、立ち上げ時間帯をずらすようにしていた。
特許文献2に開示された半導体ウエハの処理装置では、装置立ち上げ時に一時に大電力が消費されないように、各ヒータに対して時間的にずらしながら電力を供給するようにしていた。
【0004】
特許文献3に開示された基板処理装置では、電力供給部から同時に供給される最大電力を小さくするために、所定の立ち上げ順序に従って、各熱処理部を1台ずつ順次立ち上げていくようにしていた。
特許文献4に開示された加熱装置では、装置立ち上げ時の過度の消費電流による電力障害を防止するために、まずコンベアより下方に位置するヒータに対し必要とする電力を供給し、かつコンベアより上方に位置するヒータへ供給される電力を制限して、合計消費電力を一定値以下に制御し、炉体内の温度の上昇に伴って温度を切換パラメータとして、コンベアより下方に位置するヒータへの供給電力を減少させるように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2885047号公報
【特許文献2】特開平11−126743号公報
【特許文献3】特開平11−204412号公報
【特許文献4】特許第4426155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献4に開示された技術は、いずれも複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する方式であるため、昇温効率が悪くなる、すなわちステップ応答時における制御量PV(温度)の設定値SPへの追従特性が悪くなるという問題点があった。
【0007】
製造装置では、複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する場合、装置の立ち上げに要する時間や立ち上げに要する電力には多少のばらつきが必ずあるため、余裕のある時間差を与えて立ち上げの切換判断をする必要がある。したがって、例えば4系統の加熱制御系を備える加熱装置を立ち上げる(昇温する)場合に、加熱制御系を別々に順次立ち上げていくと、結果的に1系統の立ち上げ時間を単純に4倍した時間以上の時間が使われることになる。
【0008】
また、立ち上げの切換判断を行ないやすくするために、特許文献4に開示された技術のように特定の位置のヒータに対して決められた順序で電力を供給していくような工夫が考えられる。しかし、特許文献4に開示された技術は、全く同じパターンの立ち上げ時においてのみ通用する方法であり、製造条件などに応じて昇温要求が変化する場合には適用できない。複数のヒータに同時に電力を供給する通常の同時昇温という最も効率的な方法から乖離した方法になればなるほど、昇温効率が低下するか、適用対象が限られるかの、いずれかの問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の制御系に関し、ステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を大幅に超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができるエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、前記制御量変化時間の最大限度時間の情報を受信する最大限度時間入力手段と、前記制御量変化時間推定手段が推定した制御量変化時間が前記最大限度時間以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、前記昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を受信する最大限度時間入力手段と、前記昇温時間算出手段が算出した昇温時間TLが前記最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電力総和抑制制御装置の1構成例は、さらに、前記補正設定手段が前記操作量出力上限値OHiを再設定したときに、最大限度時間TM以内になる昇温時間TLが得られなかったことを警報としてオペレータに通知する補正通知手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電力総和抑制制御装置の1構成例は、さらに、昇温開始時点からの昇温の進捗状況を監視する監視手段と、各制御ループLiのうち少なくともいずれか1つの昇温の進捗状況が前記最大限度時間TMに基づく指標よりも下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電力総和抑制制御装置の1構成例は、さらに、昇温開始時点からの経過時間TSを計測する経過時間計測手段と、前記制御量PViの変更量ΔPViに対して昇温が進んだ進捗率Siを制御ループLi毎に算出する昇温進捗率算出手段と、前記経過時間TSと前記最大限度時間TMとから昇温の適切な進捗率指標Sxを算出する指標算出手段と、各制御ループLiの進捗率Siのうち少なくとも1つが前記進捗率指標Sxよりも予め規定された程度だけ下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のエネルギー総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、前記制御量変化時間の最大限度時間の情報を受信する最大限度時間入力ステップと、前記制御量変化時間推定ステップで推定した制御量変化時間が前記最大限度時間以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、前記昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を受信する最大限度時間入力ステップと、前記昇温時間算出ステップで算出した昇温時間TLが前記最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定し、各制御ループLiの制御量PViを制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が割当総エネルギーを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御(設定値SPiのステップ変更が行なわれ、制御量PViの設定値SPiへの追従のために制御機能が利用されている状態)においてエネルギー使用量が割当総エネルギーを大幅に超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、制御量変化時間推定手段が推定した制御量変化時間が最大限度時間以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを最大限度時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定することにより、電力デマンドへの対応(特定時間内の電力使用量の抑制)が原因で、昇温完了までに消費する総エネルギー使用量が大きくなり過ぎることを回避できる。
【0016】
また、本発明では、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の昇温時間TLを推定し、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを大幅に超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、昇温時間算出手段が算出した昇温時間TLが最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定することにより、電力デマンドへの対応(特定時間内の電力使用量の抑制)が原因で、昇温完了までに消費する総電力使用量が大きくなり過ぎることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る制御系のブロック線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置において最大限度時間入力部と補正設定部と補正通知部を設けない場合の動作例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の原理]
例として加熱装置を取り上げて説明する。例えば複数の加熱制御系に時間差を設けて順次立ち上げると、結果的に電力に余裕のある時間帯が生じることは避けられないので、その電力の余裕が装置の立ち上げ完了を遅らせる非効率分になることに、発明者は着眼した。単純に言えば、設定値SPのステップ変更が行なわれた際に、制御量PVの設定値SPへの追従制御が行なわれていない状態を多く発生させていることになる。
【0019】
また、制御ループ間の干渉がある加熱制御系では、先に立ち上げ完了した制御ループに、後から立ち上がる制御ループからの干渉による昇温外乱が発生するので、制御の整定までに余計な時間がかかり非効率になる。したがって、使用する総電力を一定値以内に抑えて各制御ループの同時昇温をしながら、各制御ループが極力同時に昇温を完了するように「完了のタイミング」を合わせることが、最も効率的な装置の立ち上げ方になる。
【0020】
そこで、制御ループの代表的な昇温能力(例えば最大出力時の昇温レート)を予め記憶しておき、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定し、昇温完了までの推定時間と操作量出力上限に対応する使用電力とを簡易的に求める。あるいは、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定する推定式を実験データに基づいて求め、その比較的高精度な推定式を備えるようにしてもよい。
各制御ループの昇温完了時間が概ね等しくなり、かつ使用電力の合計が割当総電力以内で最大になる操作量出力上限の組み合わせを、前記昇温完了までの推定時間を適宜修正しながら求めれば、最も効率的な立ち上げ方に近づけることができる。
【0021】
小型の調節計では、アルゴリズム記憶容量や1制御周期当りの演算量も限られている。したがって、各制御ループにおける最大出力時(操作量MViが最大値の時)の昇温時間をまず算出し、算出した各ループの昇温時間から最大のものを抽出し、その昇温時間近傍を所要時間とした場合に各ループの出力上限を低くできる度合を求め、合計が割当総電力以内になるかどうかを判定し、割当総電力を超える場合は、前記所要時間を数パーセント程度大きくして、各ループの出力上限を低くできる度合を再度求めるという演算手順が好ましい。以上が本発明の基本原理である。
【0022】
ただし、基本原理の技術は、特定時間内の総電力を抑えると、昇温完了までに消費する総エネルギー使用量が大きくなりすぎるケースがある。一方、総電力を抑えずに昇温時間を短くすると、電力デマンドに対応できないばかりでなく、高温待機時間を不要に長くして総エネルギー使用量が不利になるケースがある。
【0023】
エネルギー管理には、電力デマンド管理という側面と、総エネルギー使用量管理という側面がある。電力デマンドレスポンスとして特定時間内の総電力を抑制すれば、その特定時間を含む特定期間内の総エネルギー使用量も抑制される可能性もあるが、加熱装置では必ずしも両立する方向にあるとは限らない。保温性の高い加熱系でないならば、総電力を抑えて昇温時間を犠牲にすると、その分だけ昇温中の放熱累積が顕著に大きくなる。
発明者はこのような問題点が発生することを見出し、電力デマンドレスポンス機能が最悪な状態になることを回避する最悪値管理機能を備えるべきであることと、その具体的な実現方法に想到した。
【0024】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態では、昇温推定時間が長くなり過ぎるケースを排除するために、昇温推定時間に許容範囲を定め、電力抑制を妥協する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、被加熱物を加熱するための加熱処理炉1と、加熱処理炉1の内部に設置された複数の制御アクチュエータであるヒータH1〜H4と、それぞれヒータH1〜H4によって加熱される加熱処理炉1内の制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを測定する複数の温度センサS1〜S4と、ヒータH1〜H4に出力する操作量MV1〜MV4を算出する電力総和抑制制御装置2と、電力総和抑制制御装置2から出力された操作量MV1〜MV4に応じた電力をそれぞれヒータH1〜H4に供給する電力調整器3−1〜3−4とから構成される。この図2に示した加熱装置においては、電力総和抑制制御装置2が制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを制御する制御ループが、4個形成されていることになる。
【0026】
図2は電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。電力総和抑制制御装置2は、上位PC4から割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力部10と、昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を受信する最大限度時間入力部11と、各制御ループLi(i=1〜nであり、nは2以上の整数、図1の例ではn=4)の操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを推定する昇温時間推定部12と、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定部16と、各制御ループLiの必要出力MUiと最大出力時電力値CTmiとから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部17と、使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部18と、昇温時間推定部12が算出した昇温時間TLが最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定部21と、補正設定部21が操作量出力上限値OHiを再設定したときに、最大限度時間TM以内になる昇温時間TLが得られなかったことを警報としてオペレータに通知する補正通知部22と、制御ループLi毎に設けられた制御部23−iとから構成される。
【0027】
昇温時間推定部12は、制御量PVi変更量算出部13と、制御量PVi変化レート算出部14と、昇温時間算出部15とから構成される。この昇温時間推定部12は、制御量変化時間推定手段を構成している。
探索処理部18は、昇温時間設定部19と、割当総電力判定部20とから構成される。必要出力推定部15と使用電力合計算出部16と探索処理部18とは、電力抑制手段を構成している。
【0028】
制御部23−iは、設定値SPi入力部24−iと、制御量PVi入力部25−iと、PID制御演算部26−iと、出力上限処理部27−iと、操作量MVi出力部28−iとから構成される。
【0029】
図3は本実施の形態の制御系のブロック線図である。各制御ループLiは、制御部23−iと、制御対象Piとから構成される。後述のように、制御部23−iは、設定値SPiと制御量PViとから操作量MViを算出して、この操作量MViを制御対象Piに出力する。図1の例では、制御対象PiはヒータHiが加熱する加熱処理炉1であるが、操作量MViの実際の出力先は電力調整器3−iであり、操作量MViに応じた電力が電力調整器3−iからヒータHiに供給される。
【0030】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図4、図5は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。なお、図4のA,Bは、それぞれ図5のA,Bと接続されていることは言うまでもない。
割当総電力入力部10は、電力を管理する電力デマンド管理システムのコンピュータである上位PC4から、ヒータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する(図4ステップS100)。
【0031】
探索処理部18の昇温時間設定部19は、加熱装置のオペレータ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS101においてYES)、操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0032】
まず、昇温時間推定部12の制御量PVi変更量算出部13は、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとを取得して、各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS102)。
ΔPVi=SPi−PVi ・・・(1)
【0033】
制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御部23−iに入力される。なお、設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS102よりも後ろのステップで行われるので、制御部23−iに入力される制御量PViをステップS102の時点で取得すれば、この制御量PViは設定値変更前の制御量となる。
【0034】
続いて、昇温時間推定部12の制御量PVi変化レート算出部14は、各制御ループLiの制御部23−iから設定値変更前の操作量MViを取得し、設定値SPiの変更に伴う制御量PViの変化のレート(速度)THiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS103)。
THi=THoi{100.0/(100.0−MVi)} ・・・(2)
【0035】
設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS103よりも後ろのステップで行われるので、制御部23−iから出力されている操作量MViをステップS103の時点で取得すれば、この操作量MViは設定値変更前の操作量となる。式(2)において、THoiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MVi=0.0%の状態から最大出力MVi=100.0%にしたとき(すなわち操作量上昇幅が100.0%のとき)の制御量PViの変化レート値である。つまり、式(2)は、変化レート値THoiを操作量上昇幅(100.0−MVi)で換算する数式である。本実施の形態では加熱装置の例で説明しているので、制御量PViの変化レートTHiは昇温レート[sec./℃]である。
【0036】
次に、昇温時間推定部12の昇温時間算出部15は、各制御ループLiの制御量PViをΔPViだけ変化させるのに必要な制御量変化時間である昇温時間TLiを、制御量PViの変化レートTHiと変更量ΔPViとから次式により制御ループLi毎に推定する(ステップS104)。
TLi=THiΔPVi ・・・(3)
【0037】
そして、昇温時間算出部15は、各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを選出する(ステップS105)。
TL=max(TLi) ・・・(4)
式(4)において、max( )は最大値選出演算関数である。以上のステップS102〜S105の処理により、昇温時間TLを推定することができる。
【0038】
次に、探索処理部18の割当総電力判定部20は、制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させる場合の全ヒータの使用電力TWを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0039】
まず、必要出力推定部16は、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViを取得し、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS106)。
MUi={100.0THoi/(TL/ΔPVi)}+MVi ・・・(5)
式(5)は、式(2)において、分母の100.0をMUiに置換し、THiをTL/ΔPViに置換して、MUiについて解くことにより得られる数式である。
【0040】
続いて、使用電力合計算出部17は、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(ステップS107)。
【0041】
【数1】

【0042】
式(6)において、CTmiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MViが最大値100.0%の場合のヒータHiの使用電力値である。
探索処理部18の割当総電力判定部20は、TW≦PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない場合は(ステップS108においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(ステップS109)。
【0043】
また、割当総電力判定部20は、TW>PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超える場合は、昇温時間設定部19に指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(ステップS110)、ステップS106に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PW以下になるまで、ステップS106〜S108,S110の処理が繰り返される。
【0044】
次に、最大限度時間入力部11は、昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を例えば上位PC4から受信する(ステップS111)。
補正設定部21は、探索処理部18で必要出力MUiを最終的に決定したときの昇温時間TL、すなわち必要出力MUiを操作量出力上限値OHiとして設定したときの昇温時間TLが、最大限度時間TM以内になっているか否かを判定する(ステップS112)。TL≦TM、すなわち昇温時間TLが最大限度時間TM以内の場合(ステップS112においてYES)、ステップS116に進む。また、補正設定部21は、TL>TM、すなわち昇温時間TLが最大限度時間TM以内でない場合は、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを最大限度時間TMの間に変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量として次式のように計算し直す(ステップS113)。
MUi={100.0THoi/(TM/ΔPVi)}+MVi ・・・(7)
【0045】
式(7)は、式(5)の昇温時間TLの代わりに最大限度時間TMを用いたものである。そして、補正設定部21は、ステップS113で計算した各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する(ステップS114)。
補正通知部22は、補正設定部21が操作量出力上限値OHiを再設定したときに、最大限度時間TM以内になる昇温時間TLが得られなかったことを警報としてオペレータに通知する(ステップS115)。
【0046】
次に、制御部23−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。各制御ループLiの設定値SPiは、加熱装置のオペレータによって設定され、設定値SPi入力部24−iを介してPID制御演算部26−iに入力される(図5ステップS116)。
各制御ループLiの制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御量PVi入力部25−iを介してPID制御演算部26−iに入力される(ステップS117)。
【0047】
PID制御演算部26−iは、設定値SPiと制御量PViに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MViを算出する(ステップS118)。
MVi=(100/PBi){1+(1/TIis)+TDis}(SPi−PVi)
・・・(8)
PBiは比例帯、TIiは積分時間、TDiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0048】
出力上限処理部27−iは、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS119)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(9)
すなわち、出力上限処理部27−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行う。
【0049】
操作量MVi出力部28−iは、出力上限処理部27−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は電力調整器3−i)に出力する(ステップS120)。制御部23−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS116〜S120の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS101〜S120の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(ステップS121においてYES)、一定時間毎に行う。なお、ステップS102〜S115の処理は、各制御ループLiの設定値SPiのうち少なくとも1つが変更されたときに行われる。
【0050】
3ループの制御系で、割当総電力PWを300Wとするシミュレーション結果を図6、図7に示す。図中の左軸は設定値SP1,SP2,SP3、制御量PV1,PV2,PV3および操作量MV1,MV2,MV3であり、右軸は割当総電力PWおよび各制御ループLiの消費電力値(具体的にはヒータHiの消費電力値)の総和である使用電力PR、横軸は時間である。なお、ここでは操作量MV1,MV2,MV3だけでなく、設定値SP1,SP2,SP3および制御量PV1,PV2,PV3も%単位で表示している。
【0051】
図6、図7の例では、40sec.の時点で設定値SP1,SP2,SP3を0%から20%に変更して昇温を開始し、さらに500sec.の時点で設定値SP1,SP2,SP3を20%から46%に変更している。図6の例は、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2において最大限度時間入力部11と補正設定部21と補正通知部22を設けない場合(ステップS111〜S115の処理を実施しない場合)のステップ応答を示している。この図6の例では、40sec.から始まる前半のステップ応答時、500sec.から始まる後半のステップ応答時ともに、実際の使用電力PRは割当総電力PW以下で効率よく配分されている。つまり、3ループがほぼ同じ昇温時間で昇温している。ただし、後半のステップ応答の所要時間(昇温時間)は約220sec.であり、前半のステップ応答の所要時間約140sec.に比べ著しく大きくなっている。また、この後半のステップ応答時において使用電力PRが295Wで最大になっている状態は、184.5sec.継続しており、この間の累積使用電力量は54428Wになる。
【0052】
図7の例は、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2によるステップ応答を示している。ここでは、最大限度時間TMを180sec.に設定している。40sec.から始まる前半のステップ応答時の使用電力PRは割当総電力PW以下で効率よく配分され、かつステップ応答の所要時間も最大限度時間TM以内の約140sec.になっている。したがって、前半のステップ応答は、図6の場合と同じになる。一方、500sec.から始まる後半のステップ応答時は最大限度時間TMの180sec.で昇温するために、実際の使用電力PRが割当総電力PWの300Wを上回る368Wになる。また、この後半のステップ応答時において使用電力PRが368Wで最大になっている状態は、130.7sec.継続しており、この間の累積使用電力量は48098Wになる。
【0053】
累積使用電力量は、図6の後半のステップ応答に比べて図7の後半のステップ応答では小さい。総電力を抑えて昇温時間を犠牲にすると、その分だけ昇温中の放熱累積が大きくなるわけであり、本実施の形態のように最大限度時間TMを設定しておくことの意義と言える。ただし、本実施の形態では、後半のステップ応答開始時に補正通知部22からオペレータに警報が通知される。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを大幅に超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。
また、本実施の形態では、電力デマンドへの対応(特定時間内の電力使用量の抑制)が原因で、昇温完了までに消費する総電力使用量が大きくなり過ぎることを回避できる。
【0055】
また、本実施の形態では、操作量MVi自体を直接的に変化させるのではなく、操作量出力上限値OHiを変化させるので、操作量MViには無意味な上下動は発生しない。すなわち、PID制御演算への悪影響が発生することがなく、不自然さのない制御応答波形を得ることができる。
【0056】
本実施の形態の電力総和抑制制御装置2における処理の順序は図4、図5に示したとおりでなくてもよいことは言うまでもない。また、図4、図5の例では、割当総電力PWの情報を1回だけ受信するようになっているが、上位PC4は必要に応じて情報を送信し、これにより割当総電力PWの値が随時更新されるようになっていてもよい。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、昇温時間TLに許容範囲を定めていることになるが、上限付近の推定時間という意味になり、上限に対して臨界的な昇温ペースが発生するはずである。すなわち、昇温開始時には昇温時間が最大限度時間TM以内になることを想定していても、ぎりぎりの想定であれば実際には昇温時間が最大限度時間TMを超える可能性はもともと高い。したがって、実際の昇温時にも監視が必要になる。本実施の形態では、昇温開始後の動作を追加する。本実施の形態においても加熱装置全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0058】
図8は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電力総和抑制制御装置2は、割当総電力入力部10と、最大限度時間入力部11と、昇温時間推定部12と、必要出力推定部16と、使用電力合計算出部17と、探索処理部18と、補正設定部21と、補正通知部22と、制御ループLi毎に設けられた制御部23−iと、昇温開始時点からの昇温の進捗状況を監視する監視部29と、各制御ループLiのうち少なくともいずれか1つの昇温の進捗状況が最大限度時間TMに基づく指標よりも下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知部30とから構成される。
【0059】
監視部29は、昇温開始時点からの経過時間TSを計測する経過時間計測部31と、制御量PViの変更量ΔPViに対して昇温が進んだ進捗率Siを制御ループLi毎に算出する昇温進捗率算出部32と、経過時間TSと最大限度時間TMとから昇温の適切な進捗率指標Sxを算出する指標算出部33とから構成される。
【0060】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図9は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。図9のA,Bは、それぞれ図4のA,Bと接続されている。割当総電力入力部10の処理(図4のステップS100)、昇温時間推定部12の制御量PVi変更量算出部13の処理(ステップS102)、昇温時間推定部12の制御量PVi変化レート算出部14の処理(ステップS103)、昇温時間推定部12の昇温時間算出部15の処理(ステップS104,S105)、必要出力推定部16の処理(ステップS106)、使用電力合計算出部17の処理(ステップS107)、探索処理部18の割当総電力判定部20の処理(ステップS108,S109)、探索処理部18の昇温時間設定部19の処理(ステップS110)、最大限度時間入力部11の処理(ステップS111)、補正設定部21の処理(ステップS112〜S114)、および補正通知部22の処理(ステップS115)は、第1の実施の形態と同じなので、説明は省略する。
【0061】
設定値SPi入力部24−iの処理(ステップS116)、制御量PVi入力部25−iの処理(ステップS117)、PID制御演算部26−iの処理(ステップS118)、出力上限処理部27−iの処理(ステップS119)、および操作量MVi出力部28−iの処理(ステップS120)も、第1の実施の形態と同じなので、説明は省略する。
【0062】
経過時間計測部31は、昇温開始時点(設定値SPiが変更され操作量出力上限値OHiが設定された時点)からの経過時間TSを計測する(ステップS122)。
昇温進捗率算出部32は、経過時間計測部31が経過時間TSを計測した現時点における各制御ループLiの制御量PViを取得し、昇温時間推定部12の制御量PVi変更量算出部13が算出した制御量PViの変更量ΔPViに対して昇温が進んだ進捗率Siを、取得した制御量PViを用いて次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS123)。
Si=1.0−{(SPi−PVi)/ΔPVi} ・・・(10)
【0063】
指標算出部33は、経過時間計測部31が計測した経過時間TSと最大限度時間TMとから、昇温の適切な進捗率指標Sxを次式により算出する(ステップS124)。
Sx=TS/TM ・・・(11)
【0064】
過度抑制通知部30は、各制御ループLiの進捗率Siが進捗率指標Sxよりも予め規定された程度ΔSだけ下回っているか否かを判定する(ステップS125)。過度抑制通知部30は、各制御ループLiの進捗率Siのうち少なくとも1つが進捗率指標Sxよりも予め規定された程度ΔSだけ下回っている場合(ステップS125においてYES)、電力の過度な抑制になっていることを警報としてオペレータに通知する(ステップS126)。すなわち、過度抑制通知部30は、次式のような処理を行う。
IF Si<SX−ΔS THEN 警報通知 ・・・(12)
【0065】
なお、ΔSは適宜設定すればよいが、最も単純にはΔS=0.0でよい。電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS101〜S120,S122〜S126の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(ステップS127においてYES)、一定時間毎に行う。
こうして、本実施の形態では、最大限度時間TMの設定が低過ぎて電力の過度な抑制になっている場合に、警報を発生してオペレータに通知することができる。
【0066】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、電力量に基づいて操作量出力上限値OHiの設定および再設定などの処理を行っているが、これに限るものではなく、例えば燃料使用量などのエネルギー量に基づいて処理を行うようにしてもよい。すなわち、本発明は、第1、第2の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を、「エネルギー」あるいは「パワー」に置き換えた形態を権利範囲に含む。
【0067】
第1の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図10に示し、第2の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図11に示す。
【0068】
図10のエネルギー総和抑制制御装置は、最大限度時間入力部11と、昇温時間推定部12と、必要出力推定部16と、補正設定部21と、補正通知部22と、制御部23−iと、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部117と、探索処理部118とから構成される。探索処理部118は、昇温時間設定部19と、割当総エネルギー判定部120とから構成される。必要出力推定部16と使用エネルギー合計算出部117と割当総エネルギー判定部120とは、エネルギー抑制手段を構成している。図10に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第1の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0069】
図11のエネルギー総和抑制制御装置は、最大限度時間入力部11と、昇温時間推定部12と、必要出力推定部16と、補正設定部21と、補正通知部22と、制御部23−iと、監視部29と、過度抑制通知部30と、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部117と、探索処理部118とから構成される。図11に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第2の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0070】
なお、本発明は、加熱制御に限らず、例えば冷却装置による冷却温度制御や、換気風量による環境制御(有害物質VOC(Volatile Organic Compounas)や細菌などの制御)の電力総和抑制、エネルギー総和抑制にも適用することができる。
【0071】
第1〜第3の実施の形態で説明した電力総和抑制制御装置とエネルギー総和抑制制御装置とは、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…加熱処理炉、2…電力総和抑制制御装置、3−1〜3−4…電力調整器、10…割当総電力入力部、11…最大限度時間入力部、12…昇温時間推定部、13…制御量PVi変更量算出部、14…制御量PVi変化レート算出部、15…昇温時間算出部、16…必要出力推定部、17…使用電力合計算出部、18…探索処理部、19…昇温時間設定部、20…割当総電力判定部、21…補正設定部、22…補正通知部、23−i…制御部、24−i…設定値SPi入力部、25−i…制御量PVi入力部、26−i…PID制御演算部、27−i…出力上限処理部、28−i…操作量MVi出力部、29…監視部、30…過度抑制通知部、31…経過時間計測部、32…昇温進捗率算出部、33…指標算出部、110…割当総エネルギー入力部、117…使用エネルギー合計算出部、118…探索処理部、120…割当総エネルギー判定部、H1〜H4…ヒータ、S1〜S4…温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、
前記制御量変化時間の最大限度時間の情報を受信する最大限度時間入力手段と、
前記制御量変化時間推定手段が推定した制御量変化時間が前記最大限度時間以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御装置。
【請求項2】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
前記昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を受信する最大限度時間入力手段と、
前記昇温時間算出手段が算出した昇温時間TLが前記最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の電力総和抑制制御装置において、
さらに、前記補正設定手段が前記操作量出力上限値OHiを再設定したときに、最大限度時間TM以内になる昇温時間TLが得られなかったことを警報としてオペレータに通知する補正通知手段を備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の電力総和抑制制御装置において、
さらに、昇温開始時点からの昇温の進捗状況を監視する監視手段と、
各制御ループLiのうち少なくともいずれか1つの昇温の進捗状況が前記最大限度時間TMに基づく指標よりも下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項5】
請求項2または3記載の電力総和抑制制御装置において、
さらに、昇温開始時点からの経過時間TSを計測する経過時間計測手段と、
前記制御量PViの変更量ΔPViに対して昇温が進んだ進捗率Siを制御ループLi毎に算出する昇温進捗率算出手段と、
前記経過時間TSと前記最大限度時間TMとから昇温の適切な進捗率指標Sxを算出する指標算出手段と、
各制御ループLiの進捗率Siのうち少なくとも1つが前記進捗率指標Sxよりも予め規定された程度だけ下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項6】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、
前記制御量変化時間の最大限度時間の情報を受信する最大限度時間入力ステップと、
前記制御量変化時間推定ステップで推定した制御量変化時間が前記最大限度時間以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御方法。
【請求項7】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
前記昇温時間TLの最大限度時間TMの情報を受信する最大限度時間入力ステップと、
前記昇温時間算出ステップで算出した昇温時間TLが前記最大限度時間TM以内でない場合に、各制御ループLiの必要出力MUiを、各制御ループLiの制御量PViを前記最大限度時間TMの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量として計算し直し、この必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして再設定する補正設定ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の電力総和抑制制御方法において、
さらに、前記補正設定ステップで前記操作量出力上限値OHiを再設定したときに、最大限度時間TM以内になる昇温時間TLが得られなかったことを警報としてオペレータに通知する補正通知ステップを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の電力総和抑制制御方法において、
さらに、昇温開始時点からの昇温の進捗状況を監視する監視ステップと、
各制御ループLiのうち少なくともいずれか1つの昇温の進捗状況が前記最大限度時間TMに基づく指標よりも下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項10】
請求項7または8記載の電力総和抑制制御方法において、
さらに、昇温開始時点からの経過時間TSを計測する経過時間計測ステップと、
前記制御量PViの変更量ΔPViに対して昇温が進んだ進捗率Siを制御ループLi毎に算出する昇温進捗率算出ステップと、
前記経過時間TSと前記最大限度時間TMとから昇温の適切な進捗率指標Sxを算出する指標算出ステップと、
各制御ループLiの進捗率Siのうち少なくとも1つが前記進捗率指標Sxよりも予め規定された程度だけ下回っている場合に、電力の過度な抑制になっている可能性があることを警報としてオペレータに通知する過度抑制通知ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−61902(P2013−61902A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201414(P2011−201414)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】