説明

エポキシ化ナットシェルオイルを有する熱界面材料

熱界面材料は、ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂またはエポキシ化二量体脂肪酸、または両方、および実質的に添加鉛が欠けた可融性の金属粒子を含有する。所望により、TIMはエポキシ官能基に対する触媒を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本願は、2009年10月27日に出願された米国特許出願第61/255,306の利益を主張し、該文献の内容は、参照することにより本書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、発熱電子デバイスから、伝達される熱を吸収して放散するヒートシンクへと熱を伝達するのに使用される熱伝導性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体を含有する電子デバイスは、稼働する間にかなりの量の熱を発生する。発生する熱の程度は半導体の性能に関連し、より高性能のデバイスはより大きな程度の熱を生じる。適当な性能を得るために冷却されなければならない半導体を冷却するために、ヒートシンクがデバイスに装着される。稼働に際し、使用する間に発生した熱は、半導体から、熱が害を及ぼさずに放散されるヒートシンクへと伝達される。半導体からヒートシンクへの熱伝達を最大にするために、熱界面材料(thermal interface material:TIM)として既知の熱伝導性材料が使用されている。TIMは、ヒートシンクと半導体の間で密接な接触を理想的にもたらし、熱伝達を促進する。
【0004】
種々の種類のTIMが、半導体メーカーにより現在使用されているが、全てのものがそれ自身の利点と欠点を有している。著しく高い程度の熱を発生するこれらの半導体に対して、好ましい熱的解決は、ハンダ材料を使用することである。ハンダ材料の例は、純粋なインジウム、またはインジウムと銀の合金、またはスズ、銀および銅の合金、あるいはインジウム、スズ、およびビスマスの合金である。これらの材料は高い熱伝導率(30〜50W/m-K)をもたらすが、亀裂を生じ、応力下にて層間剥離を生じる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、扱いおよび施すことが容易であり、さらに高い熱伝導率と信頼できる性能をもたらす熱界面材料を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱発生時における、熱界面材料として使用するための組成物であり、半導体含有デバイスは、ハンダ材料、ナットオイルから誘導されるエポキシ樹脂および/またはエポキシ化二量体脂肪酸を含有する。1実施態様において、ハンダ材料は、純粋なインジウム、またはスズとビスマスの合金と純粋なインジウムの組合せから調製される。金属粒子は実質的に添加鉛を有していない。ナットオイルから誘導されるエポキシ樹脂および/またはエポキシ化二量体脂肪酸の存在は、組成物をより柔軟にするので、クラッキングを防ぎ、ヒートシンクと半導体との間の接触を増加させる。触媒はTIMの所望による成分である。
【0007】
別の実施態様において、本発明は、熱発生コンポーネント、ヒートシンクおよび上記記載による熱界面材料を含む電子デバイスである。
【0008】
ナットオイルから誘導されるエポキシ樹脂および/またはエポキシ化二量体脂肪酸の使用は、熱界面材料に関するモジュラスの最適範囲をもたらす。これらのエポキシは、組成物中で2つの機能を果たす:それらは、ハンダ粒子に対するフラックス剤(fluxing agent)として機能し、およびそれらは、結合したハンダ粒子を物理的に保持する粘着性集団またはゲル状の集団を形成する。これらの機能はいずれも、インサイチュ(in situ)でのハンダ合金の形成を可能とし、それが熱界面材料内の適所に残存することを補助するので、熱インピーダンスが長期に亘り安定することを維持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ヒートシンク、熱スプレッダ、および熱界面材料を有する電子部品の側面図である。
【図2】図2は、TIM組成物サンプルFの示差走査熱量測定トレースである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による熱界面材料は、熱放散が必要とされる任意の熱発生部品と共に使用でき、特に、半導体デバイスにおける熱発生部品に対して使用できる。このようなデバイスにおいて、熱界面材料は、熱発生部品とヒートシンクの間に層を形成し、および放散される熱をヒートシンクへ伝達する。熱界面材料は、熱スプレッダを含むデバイスにおいても使用できる。このようなデバイスにおいて、熱界面材料の層は、熱発生部品と熱スプレッダの間に配置され、熱界面材料の第2層は、熱スプレッダとヒートシンクの間に配置される。
【0011】
ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂は、以下の構造の1種または両方を含有する:
【0012】
【化1】

【0013】
これらの樹脂は、ニュージャージーのカードライト(Cardolite)社から商業的に入手できる。単官能エポキシまたは二官能エポキシあるいは任意の割合でのブレンドは、ハンダ粒子を相互に保持するゲル状集団の形成に関して、および本発明の範囲内のハンダ粒子の合金化に関するフラックス剤として同様に効果的である。
【0014】
エポキシ化二量体脂肪酸は、二量体脂肪酸とエピクロロヒドリンとの反応生成物である。一実施態様において、エポキシ化二量体脂肪酸は以下の構造を有し、式中、RはC3468として表わされる34個の炭素鎖である。
【0015】
【化2】

【0016】
それは、ニュージャージーのCVCケミカルから商業的に入手できる。
【0017】
ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂および/またはエポキシ化二量体脂肪酸は、金属粒子を含む組成物中に2〜30重量パーセントの範囲内で存在する。エポキシナットシェルとエポキシ二量体脂肪酸が共に存在する場合、エポキシ二量体脂肪酸に対するエポキシナットシェルの好ましい比率は、約9:1〜約1:1である。
【0018】
エポキシ官能基に対する触媒の使用は任意であるが、エポキシ官能基の硬化または重合に適当な当該技術分野において既知の任意の触媒を使用できる。適当な触媒の例には、過酸化物およびアミンが含まれる。存在する場合、触媒は効果的な量で使用される。1実施態様において、効果的な量は、組成物の0.2〜2重量%の範囲である。
【0019】
熱界面組成物における使用に適する金属粒子は、可融性の金属粒子、一般に、ハンダとして使用される金属合金または低融点金属である。このような金属の例には、ビスマス、スズおよびインジウムが含まれ、および銀、亜鉛、銅、アンチモンおよび銀被覆窒化ホウ素も含まれ得る。1実施態様において、金属粒子は、スズ、ビスマスまたは両方から選択される。別の実施態様において、インジウムが存在してもよい。上記金属の合金もまた、使用できる。
【0020】
好ましい実施態様において、金属粒子は、スズ、ビスマスおよびスズ:ビスマスの合金、インジウム、銀被覆窒化ホウ素ならびにそれらの混合物から選択される。金属粒子および/または合金は、総組成物の50〜95重量パーセントの範囲で組成物中に存在できる。
【0021】
更なる実施態様において、スズとビスマスの共晶合金粉末(融点138℃、ビスマスに対するスズの重量比はSn:Bi::48:52)を、インジウム粉末(融点158℃)と組合せて使用する(この場合、Sn:Bi合金と1:1の重量比でインジウムが存在する)。TIMに熱が施される場合、ポリマー樹脂は、フラックスとして機能し、60℃の融点を有するIn-Sn-Bi共晶合金の形成を促進する。ポリマー樹脂は軽度に架橋され、In-Sn-Bi合金内でソフトゲルマトリックスを形成する。60℃の融点を有するIn-Sn-Bi合金のインサイチュ形成の証拠が図2において示され、それは組成物サンプルFの示差走査熱量測定トレースである。運転1は、138℃と158℃の2つの異なるピークを示し、該ピークは、Sn-BiとInの融点にそれぞれ関係する。繰り返された熱サイクル(運転2および3)において、60℃にて極めて強いピークが観察され、一方、138℃と158℃でのピークはほとんど完全に消失している。60℃のピークは、In-Sn-Bi共晶合金の形成に関係する。
【0022】
図1において示される1実施態様において、熱界面材料製の2つの層を用いる電気部品10は、相互接続子14を介してシリコンダイ12へ取り付けられた基板11を含む。シリコンダイは熱を発生し、該熱は、該ダイの少なくとも片面に隣接した熱界面材料15を介して伝達される。熱スプレッダ16は、熱界面材料に隣接して配置され、第1熱界面材料層を通過する熱の一部を放散する役割をする。ヒートシンク17は、熱スプレッダに隣接して配置され、伝達された熱エネルギーを放散させる。熱界面材料18は、熱スプレッダとヒートシンクの間に位置する。熱界面材料18は、一般に、熱界面材料15よりも厚い。
【実施例】
【0023】
下記の表において示される重量パーセントで成分を含有するように組成物を調製した。本発明に係る組成物はE、F、G、およびJとして定義され、調剤に適する粘度を有する。それらはすべて、ポリマー樹脂と高融点ハンダ粉末の液状反応性混合物からなる。インジウム粉末は158℃の融点を有し、スズ-ビスマス合金粉末は、138℃の融点を有する。
【0024】
シリコンダイと銅支持板の間に配置されたTIM組成物内における抵抗を測定することにより、熱伝導率に関してTIM組成物を試験した。シリコンダイが加熱され、電圧および電流計の組合せを用いて熱入力を測定した。熱はTIMを介して銅支持板へ伝わり、銅支持板上における温度を熱電対により読み取った。抵抗を、これらの値から算出した。
【0025】
TIM材料が、加熱されたシリコンダイから銅支持板への熱伝達へ曝されるので、二量体脂肪酸ポリマーおよび/またはエポキシ化ナットシェルオイル樹脂は、ハンダ材料に対するフラックスとして機能し、In-Sn-Bi共晶合金の形成を促進する。この合金は、60℃の融点を示し、低い融点であると判断される。ポリマー樹脂は軽度に架橋が行われ、In-Sn-Bi合金内で柔軟なゲルマトリックスを形成する。約60℃から約100℃の範囲に融点を有する合金の形成は、半導体デバイスの効果的な熱ヒート伝達に特に有用であり、特に、約70〜100℃の温度範囲にこれらを作動させる場合に有用である。
【0026】
比較例サンプルはA、B、CおよびDであり、本発明によるサンプルと同じ方法で試験した。
【0027】
また、結果を表に記載し、十分な濃度で、ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂および/またはエポキシ化二量体脂肪酸を含有する本発明に係る組成物は、比較組成物と比べてより低い熱インピーダンスと安定性を示した。熱放散に関して、低い熱インピーダンスは必須であり、熱界面材料において望まれる性能である。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含有する熱界面材料:
(a)以下の構造により包含されるナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂
【化1】

または
(b)エポキシ化二量体脂肪酸
または
(c) (a)および(b)
および
(d)添加鉛が実質的に欠けている可融性の金属粒子;
ならびに
(e)所望による、エポキシ官能基に対する触媒。
【請求項2】
エポキシ化二量体脂肪酸が以下の構造を有する、請求項1に記載の熱界面材料
【化2】

【請求項3】
ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂が、総組成物の2〜30重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1または2に記載の熱界面材料。
【請求項4】
エポキシ化二量体脂肪酸が、総組成物の2〜30重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1または2に記載の熱界面材料。
【請求項5】
ナットシェルオイルから誘導されるエポキシ樹脂およびエポキシ化二量体脂肪酸が、エポキシ化二量体脂肪酸に対するエポキシ樹脂の重量比を1:1の状態で、総組成物の2〜30重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1または2に記載の熱界面材料。
【請求項6】
可融性の金属粒子が、総組成物の40〜95重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1または2に記載の熱界面材料。
【請求項7】
金属粒子がスズ、ビスマス、スズ:ビスマスの合金、インジウム、銀被覆窒化ホウ素、およびこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の熱界面材料。
【請求項8】
スズ:ビスマスの合金がSn:Bi::48:52の重量比を有する、請求項7に記載の熱界面材料。
【請求項9】
InがSn:Bi合金に対して1:1の重量比で存在する、Inをさらに含有する請求項8に記載の熱界面材料。
【請求項10】
半導体チップ、熱スプレッダ、およびそれらの間に請求項1または2に記載の熱界面材料を有するアッセンブリ。
【請求項11】
熱スプレッダ、ヒートシンク、およびそれらの間に請求項1または2に記載の熱界面材料を有するアッセンブリ。
【請求項12】
以下の工程から構成されるインサイチュでハンダ合金を形成する方法であって、
(a)2種以上のハンダ粉末とエポキシ樹脂を混合し、ただし、該エポキシ樹脂は、以下の構造により包含されるナットシェルオイルから誘導され:
【化3】

および
(b)少なくとも75℃の温度までハンダ粉末とエポキシのブレンドを曝し、
該ハンダ合金が約60℃にてインサイチュ溶融で形成されることを特徴とする該方法。
【請求項13】
ハンダ粉末が、1:1のモル比の状態の、スズとビスマスの混合物およびインジウムである、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−508532(P2013−508532A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536919(P2012−536919)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053929
【国際公開番号】WO2011/056499
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】