説明

エポキシ化触媒の調製方法およびエポキシドの調製方法

(a)重量平均粒径が0.1から2ミリメートルのシリカゲル担体を200℃超から300℃の温度で乾燥する工程と、(b)工程(a)で得られた担体をハロゲン化チタンを含むガス流に接触させて含浸担体を得る工程とを含むエポキシ化触媒の調製方法、および酸化アルキレンの調製におけるこのような触媒の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ化触媒の調製およびこのような触媒を用いて酸化アルキレンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化触媒は、エポキシ基含有化合物を製造する際に触媒の働きをする触媒であると理解されている。よく知られた方法は、有機ヒドロペルオキシドおよびアルケンを不均一エポキシ化触媒に接触させる工程と酸化アルキレンおよびアルコールを含む生成物流を抜き取る工程を含んでいる。
【0003】
エポキシ基含有化合物の製造用触媒はよく知られている。欧州特許出願第345856号が、ケイ素化合物に、好ましくは不活性ガスを含むガス状の四塩化チタンの流れを含浸させることを含むこのような触媒の調製について記述している。その例においては、乾燥シリカを用いることを記述している。
【0004】
米国特許出願第6114552号は、エポキシ化触媒の調製において表面積が1100m/g超の大表面積シリカ担体等の使用を教示している。この大表面積固体には、非酸素化炭化水素溶媒にハロゲン化チタンを溶解した溶液か四塩化チタンのガス流のどちらかを含浸させている。含浸前に、たとえば少なくとも200から700℃の温度で数時間加熱することによってこのシリカ担体を乾燥させることが望ましいと記述されている。例として示された、ガス状の四塩化チタンを含浸させるシリカ担体は、大気中、450℃で乾燥された。
【0005】
米国特許出願第5932751号は、シリカ上にチタン成分を堆積させる前にシリカを洗浄するチタン担持シリカ触媒の調製について記述している。チタン成分を堆積させるのに溶液が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にはエポキシ化触媒の、さらに具体的に述べると酸化アルキレン調製用触媒の選択性の向上への関心が継続的にある。これを達成する簡単で魅力的な方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、シリカゲル担体を含浸させる前の乾燥のやり方によってエポキシ化触媒の選択性が左右されることがわかった。乾燥工程に関する先行技術の唯一の情報は、十分な乾燥を得るためにこの工程を行うというものである。ガスによる含浸の前の乾燥状態を変えることによってエポキシ化触媒の選択性を向上することができるという教示やヒントはまったくない。驚くべきことに、ガス状塩化チタンとの接触前に特定温度でシリカ担体から水分を除去した場合、より選択的な触媒が得られることを発見した。なんらかの理論と結びつけるつもりはないが、この特定温度で乾燥することによってガス状チタン化合物との反応後に選択性が向上した表面部位が作られていると考えられる。
【0008】
したがって、本発明は、(a)0.1から2ミリメートルの重量平均粒径を有するシリカゲル担体を200℃超から300℃の温度で乾燥する工程と、(b)工程(a)で得られた担体をハロゲン化チタンを含むガス流に接触させて含浸担体を得る工程とを含むエポキシ化触媒の調製方法に関する。
【0009】
比較的低い温度で乾燥する利点は、これによってエポキシ化触媒の調製に必要な時間が低減されることにある。本発明は、乾燥温度が低いことの利益および確認された選択性の向上を考慮すると非常に驚くべきものである。
【0010】
好ましい調製方法は、上記乾燥工程(a)が上記含浸工程(b)が行われる温度よりも高い温度で行われることをさらに含む。このような乾燥工程によって、シリカゲル担体のハロゲン化チタンへの含浸時にかなりの量の水が存在することがないことを確実なものになる。これは、かなりの量のハロゲン化チタンが水と反応することを防止する。ハロゲン化チタンと水の反応は、エポキシ化反応での触媒の働きに寄与しない酸化チタン等のチタン化合物が形成される原因となる。
【0011】
さらに好ましい実施形態は、工程(b)において、添加されるハロゲン化チタンの上記担体中に存在するケイ素に対するモル比が0.050から0.063となるような量のハロゲン化チタンを供給することを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の触媒は、シリカゲル担体を乾燥させ、その後担体を含浸させることによって得られる。基本的に、どのようなシリカゲル担体でも本発明による調製方法で使用するのに適している。
【0013】
汚染物質が最終触媒の性能に影響を及ぼす可能性があることが知られている。シリカ担体が含むナトリウムが1200ppm以下、とりわけ1000ppm以下であると、本発明によるガス相含浸によって特に良好な結果が得られることを見いだした。さらに、このシリカ担体は、500ppm以下のアルミニウム、500ppm以下のカルシウム、200ppm以下のカリウム、100ppm以下のマグネシウムおよび100ppm以下の鉄を含むことが好ましい。
【0014】
本発明で使用するシリカゲル担体は、ゲルを含むケイ素から得られたどのような担体でも基本的に可能である。一般に、シリカゲルは、その微孔性とドロキシル化された表面によってその他の含水酸化ケイ素と区別される固体で非晶質形態の含水酸化ケイ素である。シリカゲルは通常、コロイダルサイズのシリカ粒子が集合した三次元網状組織を含んでいる。これらは一般に、ケイ酸ナトリウム水溶液を無機質の強酸と合せて11未満のpHに酸性化することにより作製される。この酸性化は一ケイ酸(Si(OH))を形成させ、この一ケイ酸が重合して内部にシロキサン架橋を外部にシラノール基を持つ粒子になる。あるpHにおいてこの重合体粒子が集合し、これによって鎖状組織を形成し、最終的にゲルの網状組織を形成する。ケイ酸塩の濃度、温度、pHおよび凝集剤の添加がゲル化時間、および密度、強度、硬度、表面積および細孔容積等の最終的なゲル特性に影響を及ぼす。得られたヒドロゲルは一般に洗浄されて電解質が無くなり、乾燥され活性化される。Grace Davison社から市販されているシリカ担体V432およびDAVICAT P−732等が好適なシリカゲル担体であろう。
【0015】
本発明で使用するシリカゲル担体は、好ましくは表面積が1000m/g以下であり、より好ましくは800m/g以下、最も好ましくは500m/g以下である。一般に、表面積は10m/g以上になり、とりわけ20m/g以上になる。特に好適であることがわかっているシリカゲル担体は、300m/gの表面積を有する。
【0016】
実質的に2ミリメートルを超える重量平均粒径を有するシリカG57 ex Grace等のシリカゲル担体は、本発明で使用するのに適さないことがわかった。特に好適であることがわかった粒径は、0.2から1.8ミリメートル、よりとりわけ0.4から1.6ミリメートル、最もとりわけ0.6から1.4ミリメートルの重量平均粒径であった。
【0017】
このケイ素含有担体を、ケイ素含有担体を焼成する工程とその後得られた担体を加水分解する工程とを含む予備処理にかけると、さらに向上することが認められた。加水分解は水または水蒸気で担体を処理する工程を含んでいる。この加水分解は水蒸気で行うことが好ましい。あるいは、この加水分解処理は、無機質酸の水溶液、アンモニウム塩の水溶液またはそれらの組み合わせを使用する洗浄処理を含んでいてもよい。加水分解の後に依然として存在する水はどれも担体をさらに処理する前に除去することが好ましい。水は、乾燥によって除去することが好ましい。焼成は比較的高温で行うことが好ましい。この好ましい高温焼成処理は、(a)シリカゲル担体を少なくとも400℃の温度で焼成する工程と、(b)上記焼成されたシリカゲル担体を加水分解する工程と、(c)工程(b)で得られた上記加水分解された担体にチタン含有含浸剤を含浸させる工程と、(d)上記含浸された担体を焼成する工程とをさらに含む。工程(a)の焼成は450から800℃の温度で行うことが好ましく、500から700℃の温度がより好ましい。このような高温焼成処理を行うと、焼成および加水分解された担体上で本発明による乾燥処理が行われる。
【0018】
本発明による乾燥処理は、ケイ素含有担体を200℃超から300℃の温度にさらすことを含んでいる。乾燥が行われる時間は、使用されるシリカゲルの種類およびシリカゲルの予備処理に強く依存する。しかしながら、この乾燥は一般に15分間から最高10時間にわたって行われ、より詳細には1から8時間、さらに詳細には1から5時間行われる。さらに詳細に述べると、この乾燥は少なくとも210℃、好ましくは210℃超、より好ましくは少なくとも220℃、さらに好ましくは少なくとも225℃の温度で行われる。乾燥温度はさらに300℃未満の温度で行われることが好ましく、290℃以下の温度がより好ましく、290℃未満の温度がさらに好ましく、280℃以下の温度がさらに好ましく、275℃以下の温度が最も好ましい。乾燥温度は約250℃であることが最も好ましい。
【0019】
このやり方で乾燥されたシリカゲル担体は、ガス状ハロゲン化チタンを用いた含浸で優れた触媒を提供する表面の種類を有することがわかった。
【0020】
この乾燥工程(a)は、含浸工程(b)が行われる温度よりも高い温度で行われるとさらに向上することが認められた。この含浸温度は、ガス状ハロゲン化チタンに接触させる前のシリカ担体の温度である。シリカ担体がハロゲン化チタンと反応している場合、反応の発熱性のために担体の温度が上昇する。
【0021】
さらに、工程(b)で供給されるハロゲン化チタンの量が、チタンの、担体のケイ素に対するモル比が0.050から0.063となるような量である場合に、特に有利であることがわかった。このようなモル比は、乾燥された担体が上記範囲より多いハロゲン化チタンかまたは少ないハロゲン化チタンのどちらかと接触した同様の触媒より、より選択的な触媒を与えることがわかった。なんらかの理論と結びつけるつもりはないが、この特定のモル比は、触媒の選択性にとって特に有利なチタン化合物の結合を与えると考えられる。
【0022】
一般に、ケイ素含有担体は、0.1から10時間、より詳細には0.5から6時間にわたってハロゲン化チタンに接触させられる。このチタンの少なくとも30重量%は含浸時間の初め50%の間に添加されることが好ましい。この含浸時間は、ケイ素含有担体がガス状ハロゲン化チタンに接触させられる時間とされる。ケイ素含有担体は、含浸の全時間中同量のハロゲン化チタンに接触させられることが最も好ましい。しかしながら、含浸の開始時、含浸の終了時および含浸中の比較的短い期間などにおいてこの条件から外れることが許容されることは当業者に明白であろう。
【0023】
使用できるハロゲン化チタンは、1個から4個のハロゲン化物の置換基を有し、残りの置換基は、もしあれば、アルコキシド基かアミノ基である3置換および4置換のチタン錯体を含む。このハロゲン化チタンは、ハロゲン化チタン化合物単体でも複数のハロゲン化チタン化合物の混合物でもよい。このハロゲン化チタンは、四塩化チタンを少なくとも50重量%含むことが好ましく、四塩化チタンを少なくとも70重量%含むことがより好ましい。このハロゲン化チタンが四塩化チタンであることが最も好ましい。
【0024】
本発明はハロゲン化チタンを含むガス流の使用を含む。このガス流は、場合によって不活性ガスと一緒になったハロゲン化チタンからなっていることが好ましい。不活性ガスが存在する場合、この不活性ガスは窒素であることが好ましい。特に選択的な触媒は、ハロゲン化チタン単独でなるガス流を使用して得られることがわかった。このような方法において、触媒作製はキャリアガス無しで行われる。しかしながら、ケイ素含有担体とガス状ハロゲン化チタンの接触時に限られた量の別のガス状化合物が存在しても構わない。含浸時に担体と接触しているガスは、好ましくは少なくとも70重量%がハロゲン化チタンからなり、より詳細には少なくとも80重量%が、さらに詳細には少なくとも90重量%が、最も詳細には少なくとも95重量%がハロゲン化チタンからなる。具体的な好ましい方法は、欧州特許出願第02258296.9号の優先権を主張する同時係属の特許出願で説明されている。
【0025】
ガス状ハロゲン化チタンは当業者に知られたどんな方法でも作製することができる。簡単かつ容易なやり方として、ハロゲン化チタンを含む容器をガス状ハロゲン化チタンが得られるような温度に加熱することが挙げられる。不活性ガスが存在しなければならない場合、この不活性ガスは加熱されたハロゲン化チタン上に導くことができる。
【0026】
一般に、含浸後の担体は焼成され、その後加水分解され、触媒として使用される前に場合によってシリル化される。したがって、本発明はさらに、(c)工程(a)で得られた上記含浸担体を焼成する工程と、(d)上記焼成された含浸担体を加水分解する工程と、場合によっては、(e)工程(d)で得られた上記担体をシリル化剤に接触させる工程とをさらに含む方法に関する。
【0027】
焼成によって、ハロゲン化水素、より具体的に述べるとハロゲン化チタンとケイ素含有担体の表面上に存在するケイ素化合物とが反応して形成される塩化水素が除去されると考えられる。
【0028】
場合によって行う含浸された担体の焼成は、一般には含浸担体を少なくとも500℃、より詳細には少なくとも600℃の温度にさらすことを含んでいる。本発明の焼成は少なくとも650℃の温度で行うことが好ましい。実用的な観点から、適用される焼成温度は1000℃以下であることが好ましい。
【0029】
含浸され焼成された担体を加水分解することによってチタン−ハロゲン化物結合を取り除くことができる。含浸担体の加水分解は一般に、含浸前に場合によって行う担体の加水分解よりも多少条件が厳しくなる。したがって、この含浸担体の加水分解は、150から400℃の範囲の温度において水蒸気で行うのが適している。
【0030】
加水分解された含浸担体はその後シリル化することが好ましい。シリル化は、好ましくは100から425℃の温度で、加水分解された含浸担体をシリル化剤に接触させることによって行うことができる。好適なシリル化剤としては、C1〜C3ヒドロカルビル置換基を持つ4置換シラン等のオルガノシランがある。非常に好適なシリル化剤はヘキサメチルジシラザンである。好適なシリル化方法およびシリル化剤の例は、たとえば、米国特許出願第6011162号および欧州特許出願734764号において参照している米国特許出願第3829392号および米国特許第3923843号に記述されている。
【0031】
チタン(金属チタンとしての)の量は、触媒の総重量に基づき通常0.1から10重量%、好適には1から5重量%の範囲になる。チタンまたは塩もしくは酸化物等のチタン化合物は、存在する唯一の金属および/または金属化合物である。
【0032】
上で説明したように、過酸化水素等のヒドロペルオキシドまたは有機ヒドロペルオキシドを酸素源として使用して対応するオレフィンをエポキシ化して酸化プロピレン等の酸化アルキレンを製造することはこの分野でよく知られている。このヒドロペルオキシドは、過酸化水素でもあるいはtert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびエチルベンゼンヒドロペルオキシド等の任意の有機ヒドロペルオキシドでも可能である。このアルケンは一般に、酸化アルキレンとして酸化プロピレンを与えるプロペンである。本発明によって作製された触媒は、このようなプロセスで特に良好な結果を与えることがわかった。したがって、本発明はさらに、ヒドロペルオキシドおよびアルケンを不均一エポキシ化触媒に接触させる工程と酸化アルキレンおよびアルコールおよび/または水を含む生成物流を抜き取る工程を含み、その触媒は本発明によるものである、酸化アルキレンの調製方法に関する。
【0033】
有機ヒドロペルオキシドの具体的なものはエチルベンゼンヒドロペルオキシドであり、この場合、得られるアルコールは1−フェニルエタノールである。この1−フェニルエタノールは通常脱水によってさらに転化されてスチレンを得る。
【0034】
酸化プロピレンを製造する別の方法は、イソブタンおよびプロペンから出発する酸化プロピレンとメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)の同時生成である。この方法はこの分野でよく知られており、前の項で説明したスチレン/酸化プロピレンの製造方法として類似の反応段階を含んでいる。エポキシ化工程において、tert−ブチルヒドロペルオキシドはプロペンと反応して酸化プロピレンとtert−ブタノールを生成する。tert−ブタノールはその後エーテル化されてMTBEになる。
【0035】
さらに別の方法としてクメンを用いる酸化プロピレンの製造がある。この方法では、クメンは酸素または空気と反応してクメンヒドロペルオキシドを生成する。このようにして得られたクメンヒドロペルオキシドは、エポキシ化触媒の存在下でプロペンと反応して酸化プロピレンと2−フェニルプロパノールを生じる。後者のものは不均一触媒および水素を使用してクメンに転化することができる。好適な方法の詳細は、たとえば国際特許第02/48126に記述されている。
【0036】
本発明によるエポキシ化反応の条件は従来適用されたものである。エチルベンゼンヒドロペルオキシドを使用したプロペンのエポキシ化反応については、代表的な反応条件として、反応媒体が液相であって50から140℃、好適には75から125℃の温度および最高80バールの圧力が挙げられる。
【0037】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
【0038】
(実施例1および2)
実施例で使用したシリカゲル担体は、表面積が300m/gで重量平均粒径が約1mmである。ほぼすべての粒子は粒径が0.6から1.4mmの間にある。
【0039】
このシリカゲル担体75gを異なった温度で2時間乾燥した。
【0040】
その後、このようにして得た乾燥シリカゲル担体を四塩化チタンからなるガス流に接触させた。このガス流は、電気加熱装置を使用して四塩化チタンを200℃に加熱することによって得た。含浸担体の合計量に対してチタンを3.63重量%含む含浸担体を得るようにこのシリカ担体に含浸させた。
【0041】
このようにして得た含浸触媒を600℃で7時間焼成した。その後、焼成された触媒を325℃で6時間蒸気に接触させた。この蒸気の流量は1時間当たり水3グラムと1時間当たり窒素1標準リットルからなっている。最後に触媒を、1時間当たり窒素流1.4標準リットル中の1時間当たり18グラムのヘキサメチルジシラザンに接触させることにより185℃で2時間シリル化した。
【0042】
このチタン触媒試料の触媒性能は、触媒15グラムを含む固定床反応器、供給原料180グラムを含む供給原料容器および循環ポンプからなるバッチ試験装置において80℃で測定した。オクテンとエチルベンゼン中の36重量%エチルベンゼンヒドロペルオキシドの混合物を触媒床を通して一定速度5kg/hrで循環させた。オクテンのエチルベンゼンヒドロペルオキシドに対するモル比は2であった。供給原料容器および触媒床の温度は循環オイルによって一定に保たれた。転化されたオクテンは圧力を制御したヘリウムで置換した。2時間後、オンラインの超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)によって反応混合物を分析し、エチルベンゼンヒドロペルオキシドのオクチレンオキシドに対する選択性を求めた。
【0043】
表1に、異なった温度で乾燥した担体から得られた触媒について選択性が示されている。この選択性は生成されたオクチレンオキシドの転化されたエチルベンゼンヒドロペルオキシドに対するモル比である。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例3および4)
実施例1および2で説明したようなシリカゲル担体を250℃で2時間乾燥した。
【0046】
その後、このようにして得た乾燥シリカゲル担体を四塩化チタンからなるガス流に接触させた。このガス流は、電気加熱装置を使用して四塩化チタンを200℃に加熱することによって得た。表2には、担体上に導かれた四塩化チタンの総量の担体内に存在するケイ素の量に対するモル比を記述している。さらに、得られた触媒のチタン配合量を表2に示している。このチタン配合量は蛍光X線法によって求めた。実質的に異なった量の塩化チタンを使用しているのに対してこの触媒は同じようなチタン含有率を有している。なんらかの理論と結びつけるつもりはないが、同じようなチタン含有率は、担体中で利用できるシラノール基の数が同じであることにより引き起こされたと考えられる。
【0047】
実施例1および2で説明したように含浸された触媒はさらに処理を施された。
【0048】
このようにして得られた触媒の選択性は、供給原料がオクテンの代わりにプロペンを含んでいたことを除けば実施例1および2で説明したようなエポキシ化方法で測定した。
【0049】
表2はこれらの触媒に対する分析および性能データを示す。
【0050】
【表2】

表2からチタン対ケイ素のモル比が0.061の触媒は、チタン対ケイ素のモル比が0.074の触媒よりも選択性が高い触媒を与えることが明白であろう。後者の触媒の作製においてはより多量の四塩化チタンが使用されたことを考えると、この結果は非常に驚くべきことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.1から2ミリメートルの重量平均粒径を有するシリカゲル担体を200℃超から300℃の温度で乾燥する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記担体をハロゲン化チタンを含むガス流に接触させて含浸担体を得る工程と
を含むエポキシ化触媒の調製方法。
【請求項2】
(a)前記含浸担体を焼成する工程と、
(b)前記焼成された含浸担体を加水分解する工程と、場合によって、
(c)工程(d)で得られた前記担体をシリル化剤に接触させる工程と
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥工程(a)が、前記含浸工程(b)が行われる温度よりも高い温度で行われる請求項1および/または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)で供給されるハロゲン化チタンの量が、添加されるハロゲン化チタンの前記担体中に存在するケイ素に対するモル比が0.050から0.063となるような量である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流がハロゲン化チタンからなる請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカゲル担体が、500m/g以下の表面積を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカゲル担体が1から8時間にわたって乾燥される請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロペルオキシドおよびアルケンを不均一エポキシ化触媒に接触させる工程と、酸化アルキレンおよびアルコールおよび/または水を含む生成物流を抜き取る工程を含み、前記触媒は請求項1から7のいずれか一項に記載のものである、酸化アルキレンの調製方法。
【請求項9】
前記アルケンがプロペンであり、前記酸化アルキレンが酸化プロピレンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロペルオキシドがエチルベンゼンヒドロペルオキシドであり、前記アルコールが1−フェニルエタノールである請求項8および/または9に記載の方法。
【請求項11】
1−フェニルエタノールを脱水してスチレンを得ることをさらに含む請求項10に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.1から2ミリメートルの重量平均粒径を有するシリカゲル担体を200℃超から300℃の温度で乾燥する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記担体をハロゲン化チタンを含むガス流に接触させて含浸担体を得る工程と
を含むエポキシ化触媒の調製方法。
【請求項2】
(a)前記含浸担体を焼成する工程と、
(b)前記焼成された含浸担体を加水分解する工程と、場合によって、
(c)工程(d)で得られた前記担体をシリル化剤に接触させる工程と
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥工程(a)が、前記含浸工程(b)が行われる温度よりも高い温度で行われる請求項1および/または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)で供給されるハロゲン化チタンの量が、添加されるハロゲン化チタンの前記担体中に存在するケイ素に対するモル比が0.050から0.063となるような量である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流がハロゲン化チタンからなる請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカゲル担体が、500m/g以下の表面積を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカゲル担体が1から8時間にわたって乾燥される請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法により得られるエポキシ化触媒。
【請求項9】
ヒドロペルオキシドおよびアルケンを不均一エポキシ化触媒に接触させる工程と、酸化アルキレンおよびアルコールおよび/または水を含む生成物流を抜き取る工程を含み、前記触媒は請求項1から8のいずれか一項に記載のものである、酸化アルキレンの調製方法。
【請求項10】
前記アルケンがプロペンであり、前記酸化アルキレンが酸化プロピレンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒドロペルオキシドがエチルベンゼンヒドロペルオキシドであり、前記アルコールが1−フェニルエタノールである請求項9および/または10に記載の方法。
【請求項12】
1−フェニルエタノールを脱水してスチレンを得ることをさらに含む請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2006−507933(P2006−507933A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556326(P2004−556326)
【出願日】平成15年11月24日(2003.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050877
【国際公開番号】WO2004/050241
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】