説明

エポキシ樹脂のアダクト及びその製造方法

アダクトは、(i)エポキシ樹脂材料(A)と(ii)反応性化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含んでなる。前記エポキシ樹脂材料(A)はシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含み、前記反応性化合物(B)は分子当たり2個又はそれ以上の、エポキシ基と反応性である、反応性水素原子を有する化合物を含む。硬化性エポキシ樹脂組成物は前記アダクトを含んでなる。硬化エポキシ樹脂は前記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化プロセスによって製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むアダクト(又は付加物)及びそのアダクトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエポキシ樹脂アダクト及びその製造方法は種々の参考文献に記載されている。例えばジエチレントリアミンとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとのアダクトが非特許文献1に記載されている。D.E.H.(登録商標)52(The Dow Chemical Companyによって製造販売)は、ジエチレントリアミンとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとのアダクト生成物の市販品である。
【0003】
非特許文献2はエポキシ樹脂のアミンアダクトを記載している。エポキシ樹脂はビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラグリシジル4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、エポキシフェノール若しくはクレゾールノボラック、水素化されたビスフェノールAジグリシジルエーテル又はそれらの任意の組合せから選ばれる。アミンは脂肪族、脂環式、芳香族又はアルキル芳香族ジアミンから選ばれる。
【0004】
非特許文献3は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルと、アニリン、p−クロロアニリン、ベンジルアミン及びシクロヘキシルアミンを含む第一モノアミンとのアダクトの合成及び分析による特性決定を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Henry Lee and Kris Neville,Handbook of Epoxy Resins,McGraw Hill,Inc.,New York,(1967年)刊,7-15〜7-19頁
【非特許文献2】Daniel A. Scola,Developments in Reinforced Plastics 4,Elsevier Applied Science Publishers Ltd.,England,196-206頁(1984年)刊
【非特許文献3】J.Klee,et.al.,Crosslinked Epoxies,Walter de Gruyter and Co.,Berlin,47-54頁(1987年)刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先行技術においては、シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂を、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を含む反応性化合物と反応させることによって形成されるアダクトを教示する開示も示唆もされていない。先行技術においては、前記アダクトを含む硬化性エポキシ樹脂組成物又は前記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることによって製造される硬化エポキシ樹脂を教示する開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を含む化合物と反応するシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂を用いて、アダクトを製造する。得られたアダクトは、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂並びに、任意的に、硬化剤及び/又は触媒とブレンドして、硬化性エポキシ樹脂組成物を形成できる。この硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることによって、硬化エポキシ樹脂を得ることができる。
【0008】
本発明の一面は、(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)と(ii)分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む反応性化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含むアダクトに関する。
【0009】
本発明の別の面は、(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)、(ii)分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む反応性化合物(B)及び(iii)前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含むアダクトに関する。
【0010】
本発明の別の面は前記アダクトの製造方法に関する。
【0011】
本発明の更に別の面は(a)アダクト及び(b)樹脂化合物(D)を含む硬化性エポキシ樹脂組成物に関し、ここで前記アダクトは(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)、(ii)分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む反応性化合物(B)並びに、任意的に、前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含み、前記樹脂化合物(D)は、エポキシ樹脂材料(A)以外であり且つエポキシ樹脂化合物(C)以外である、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む。
【0012】
本発明の別の面は前記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法に関する。
【0013】
本発明の更なる面は前記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法によって製造される硬化エポキシ樹脂に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明において、本発明の具体的態様は、その好ましい態様と関連させて、記載する。しかし、以下の説明は、本発明の技術の特定の態様又は特定の用途に限定される限りにおいては、例示に過ぎず、典型的な態様についての簡潔な説明を単に提供するものとする。従って、本発明は、下記の具体的態様に限定するものではなく、添付した特許請求の範囲の真の範囲内に入る全ての選択肢、変更形態及び均等物を含む。
【0015】
特に断らない限り、材料、化合物又は成分への言及は、材料、化合物又は成分自体及びそれと他の材料、化合物又は成分との組合せ、例えば化合物の混合物又は組合せを含む。
【0016】
本明細書中で使用する単数形(a, an, the)は、前後関係からそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0017】
前述のように、本発明の一面は、(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)と(ii)分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子(この反応性水素原子はエポキシ基と反応性である)を有する化合物を含む反応性化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含む本発明のアダクトである。
【0018】
本明細書中で使用する用語「アダクト(adduct)」は、単一の反応生成物を生じる2種又はそれ以上の異なる分子の直接付加による生成物を意味する。得られる反応生成物又はアダクトは、反応体とは異なる分子種と考えられる。
【0019】
本明細書中で使用する用語「シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分」は、エポキシ樹脂内の構造、即ちエポキシ樹脂内の4種の幾何異性体、シス−1,3−シクロヘキサンジメチルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメチルエーテル構造、シス−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテルを含む化学構造のブレンドを意味する。これら4種の幾何異性体は下記構造:
【0020】
【化1】

【0021】
で示される。
【0022】
一般に、本発明のエポキシ樹脂材料(A)は、(a)シス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物(シス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールとも称する)を、(b)エピハロヒドリン及び(c)塩基性作用物質(basic acting substance)と反応させることを含んでなる方法(例えばエポキシ化反応プロセス)によって製造する。この方法は、任意的に、(d)溶媒及び/又は(e)触媒を含むことができる。この方法は、例えばスラリーエポキシ化方法、無水エポキシ化方法又はルイス酸触媒によるカップリング及びエポキシ化方法であることができる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂材料(A)の製造に使用するシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物は、制御された量のシス,トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、例えば混合物の総重量に基づき、約1〜約99重量%、好ましくは約15〜約85重量%、より好ましくは約40〜約60重量%のシス,トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールを含むことができる。
【0024】
シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂及びその製造方法についての詳細な説明は、同時係属出願である米国特許出願第 号(代理人整理番号64833)に示している。この特許出願を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0025】
同時係属出願である米国特許出願第 号(代理人整理番号64833)に開示すように、シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂は、シス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのみを含むエポキシ樹脂に比較して、室温で結晶化しない、粘度がより低いというような改善された性質を有することが判明した。これらの改善された性質は、より高い固形分を受容するように、エポキシ樹脂の能力を増大させる。更に、前記同時係属特許出願に開示したシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含む一部のエポキシ樹脂は、塩化物(イオン性塩化物、加水分解性塩化物及び総塩化物を含む)の含量が非常に低く且つジグリシジルエーテル含量が高い。そのため、これらのエポキシ樹脂は、従来のエポキシ樹脂硬化剤に対する反応性が増大し、潜在的腐蝕性(potential corrosivity)が低下し且つ電気的性質が改善される。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂材料(A)はシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含んでなる。好ましくはエポキシ樹脂材料(A)は以下のエポキシ樹脂:
(1)シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルとも称する)を含むエポキシ樹脂;
(2)シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル及びそれらの1種若しくはそれ以上のオリゴマーを含むエポキシ樹脂;
(3)シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂;又は
(4)シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びそれらの1種若しくはそれ以上のオリゴマーを含むエポキシ樹脂
の1つを含む。
【0027】
前記エポキシ樹脂(3)及び(4)は、制御された量のシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル(シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルとも称する)を含むことができる。例えばモノグリシジルエーテルの量は、エポキシ樹脂材料(A)の総重量に基づき、約0.1〜約90重量%;好ましくは約0.1〜約20重量%;より好ましくは約0.1〜約10重量%の範囲であることができる。
【0028】
エポキシ樹脂材料(A)中にオリゴマーに対して種々の量のシス,トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルを存在させて、本発明のアダクトの製造方法における反応体としてのエポキシ樹脂材料(A)の性質及びアダクト生成物の極限の性質の両者に影響を与えることができる。
【0029】
例えばエポキシ樹脂材料(A)のシス,トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテル含量がより高く且つオリゴマーを実質的に含まない場合には、エポキシ樹脂材料(A)は一般に液体の形態であって、粘度がより低い。このエポキシ樹脂材料(A)を含む反応体は、一般に、液体の形態でのアダクトの製造に有利であり、より低い粘度又はより低い軟化点若しくは融点を有する。
【0030】
エポキシ樹脂材料(A)中に各幾何異性体を種々の量で存在させて、本発明のアダクトの製造方法における反応体としてのエポキシ樹脂材料(A)の性質及びアダクト生成物の極限の性質の両者に影響を与えることもできる。
【0031】
例えばエポキシ樹脂材料(A)がより高いシス異性体含量を有する場合には、エポキシ樹脂材料(A)は一般に液体の形態であって、より低い粘度を有する。このエポキシ樹脂材料(A)を含む反応体は、一般に、液体の形態でのアダクトの製造に有利であり、より低い粘度又はより低い軟化点若しくは融点を有する。
【0032】
エポキシ樹脂材料(A)中に、シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルに対して種々の量のシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルを存在させて、本発明のアダクトの製造方法における反応体としてのエポキシ樹脂材料(A)の性質及びアダクト生成物の極限の性質の両者に影響を与えることもできる。
【0033】
例えばエポキシ樹脂材料(A)がより高いシス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル含量を有する場合には、エポキシ樹脂材料(A)はより官能価の低いアダクトの製造に有利である。アダクトの官能価は、アダクト中に存在する分子当たりの反応性水素原子の数を意味する。反応性水素原子は、エポキシ基との硬化反応において反応性である水素原子である。
【0034】
他の少量(miner)成分がエポキシ樹脂材料(A)中に存在できる。少量成分の量及び型は、エポキシ樹脂材料(A)中に存在する成分の個々の化学構造及びエポキシ樹脂材料(A)の製造に使用する方法によって、異なると考えられる。一般に、エポキシ樹脂材料(A)は、エポキシ樹脂材料(A)の総重量に基づき、約0.01%〜約10%未満、好ましくは0.01〜約5%の微量成分を含むことができる。微量成分の例としては、ジグリシジルエーテル(2−エポキシプロピルエーテル)、クロロヒドリン中間体及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0035】
エポキシ樹脂材料(A)と反応してアダクトを形成する本発明において使用する反応性化合物(B)は、分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含む。反応性水素原子は、エポキシ樹脂材料(A)中に含まれるエポキシ基のようなエポキシ基と反応性である。
【0036】
本明細書中で使用する用語「反応性水素原子」は、水素原子がエポキシ基と反応性であることを意味する。反応性水素原子は、アダクトを形成する反応においてはエポキシ基と非反応性であるが1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を用いてアダクトを硬化させる後のプロセスにおいてはエポキシ基と反応性であることができる水素原子を含む他の水素原子とは異なる。
【0037】
アダクトを形成する反応において、使用反応条件下でエポキシ基とはるかに反応性である他の官能基が存在する場合には、水素原子は、アダクトを形成するプロセスにおいてはエポキシ基と非反応性であるが、エポキシ樹脂を用いてアダクトを硬化させる後のプロセスにおいて反応性であることができる。例えば反応性化合物(B)は、使用反応条件下で一方の官能基が他方の官能基よりもエポキシ基と本質的に反応性である、それぞれが少なくとも1個の反応性水素原子を有する2個の異なる官能基を有することができる。このような反応条件としては、エポキシ基と一方の官能基の反応性水素原子との反応の方がエポキシ基と他方の官能基の反応性水素原子との反応よりも有利である触媒の使用が考えられる。
【0038】
他の非反応性水素原子としては、アダクトの製造プロセスにおけるエポキシド開環反応中に形成される第二のヒドロキシル基中の水素原子を挙げることもできる。
【0039】
分子当たり2個又はそれ以上の反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物を含む反応性化合物(B)は、反応性化合物(B)の構造内に、脂肪族、脂環式又は芳香族基を更に含むことができる。
【0040】
脂肪族基は分岐鎖でも非分岐鎖でもよい。脂肪族又は脂環式基は、飽和でも不飽和でもよく、反応体及び生成物を含む本発明のアダクトの製造プロセスに対して不活性の(反応性でない)1個又はそれ以上の置換基を含むこともできる。置換基は、置換基の化学構造によって、末端炭素原子に結合していてもよいし、2つの炭素原子の間に存在してもよい。このような不活性置換基の例としては、ハロゲン原子、好ましくは塩素若しくは臭素、ニトリル、アルキルオキシ、ケト、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)又は第三アミンが挙げられる。芳香環が反応性化合物(B)の構造内に存在する場合には、それはN、O、Sなどのような1つ又はそれ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0041】
反応性化合物(B)の例としては、(a)ジ−及びポリフェノール、(b)ジ−及びポリカルボン酸、(c)ジ−及びポリメルカプタン、(d)ジ−及びポリアミン、(e)第一モノアミン、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、(j)スルファニルアミドのような化合物及び(k)このような化合物の任意の2種又はそれ以上の任意の組合せなどが挙げられる。
【0042】
ジ−及びポリフェノール(a)の例としては、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA、4,4’−チオジフェノール、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’−ジメトキシビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメトキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブロモ−5−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−ニトロフェノール、1,3−ジヒドロキシ−4−シアノフェノール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジシクロペンタジエン又はそのオリゴマー及びフェノール又は置換フェノール縮合生成物並びにそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0043】
ジ−及びポリカルボン酸(b)の例としては、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、トリス(カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、3,3’、5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシ−α−メチルスチルベン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ジカルボキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−メトキシベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−ブロモベンゼン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0044】
ジ−及びポリメルカプタン(c)の例としては、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4,4’−ジメルカプトジフェニルメタン、4,4’−ジメルカプトジフェニルオキシド、4,4’−ジメルカプト−α−メチルスチルベン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニル、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、トリス(メルカプトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メルカプトフェニル)シクロヘキサン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0045】
ジ−及びポリアミン(d)の例としては、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノスチルベン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(アミノフェニル)メタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)エーテル、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0046】
第一モノアミン(e)の例としては、アニリン、4−クロロアニリン、4−メチルアニリン、4−メトキシアニリン、4−シアノアニリン、2,6−ジメチルアニリン、4−アミノジフェニルオキシド、4−アミノジフェニルメタン、4−アミノジフェニルスルフィド、4−アミノベンゾフェノン、4−アミノジフェニル、4−アミノスチルベン、4−アミノ−α−メチルスチルベン、メチルアミン、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノノルボルナン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0047】
第一モノアミンは、本発明の特殊な種類の反応性化合物(B)を表す。本発明によれば、第一モノアミンとエポキシ樹脂材料(A)、例えばシス及びトランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルとの反応では、アダクト中に存在する反応性水素原子(例えば第一モノアミンを反応性化合物(B)として使用する場合にはアミン水素原子)に関して実質的に二官能性であるアダクト(即ちアダクトが約2の官能価を有する)が生成される。この二官能性アダクトは、エポキシ樹脂を硬化させるための線状連鎖延長剤として使用できる。二官能性アダクトは、エポキシ樹脂構造を架橋せずに、エポキシ樹脂構造を線状に連鎖延長する。第二ジアミンのような他の種類の反応性化合物(B)も、エポキシ樹脂を硬化させるための線状連鎖延長剤として使用できる二官能性アダクトを形成するのに使用できる。
【0048】
本発明の好ましい態様の一般的な説明として、エポキシ樹脂(E−樹脂)は、分子当たり2個の反応性水素原子を有する化合物を含む二官能性アダクト(アダクトA1)と反応させることができる。アダクトA1はE−樹脂構造を線状に連鎖延長させる。アダクトA1によってもたらされる線状連鎖延長作用を用いて、硬化E−樹脂に靭性を与えることができる。更に、アダクトA1は、アダクトA1とは異なる別のアダクト(アダクトA2)、硬化剤又はそれらの任意の混合物によって架橋させることもできる。線状連鎖延長をもたらすアダクトA1は、E−樹脂と別個に反応させてから、アダクトA2、硬化剤又はその混合物によって架橋することができる。別法として、線状連鎖延長をもたらすアダクトA1をアダクトA2、硬化剤又はそれらの混合物と共にE−樹脂に添加して、E−樹脂構造の線状連鎖延長と架橋を同時に行うこともできる。
【0049】
例えばシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルと第一モノアミンから製造された第二ジアミンアダクトをE−樹脂と反応させて、E−樹脂を線状に連鎖延長させることができる。E−樹脂中の残りのエポキシ基は分子当たり2個超の反応性水素原子を有する硬化剤、例えばポリアルキレンポリアミンと反応させて、E−樹脂の架橋を引き起こすことができる。E−樹脂の線状連鎖延長及び架橋は別々でも同時でも実施できる。
【0050】
本発明のアダクトの形成におけるエポキシ樹脂材料(A)として、シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルがシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルと共に存在する場合には、形成されるアダクトは、アダクト中に存在する反応性水素原子に関して実質的に一官能性であると考えられ、従って、モノグリシジルエーテルはエポキシ樹脂の硬化又は線状連鎖延長プロセスにおいて連鎖停止剤の役割をする。一官能性は特に、モノグリシジルエーテルを第一モノアミン又は第二ジアミンと反応させる場合に生じる。
【0051】
アンモニアは、本発明の別の特殊な種類の反応性化合物(B)を表す。アンモニアは、液体アンモニア(NH3)又は水酸化アンモニウム(NH4OH)の形態で使用できる。
【0052】
スルホンアミド(f)の例としては、フェニルスルホンアミド、4−メトキシフェニルスルホンアミド、4−クロロフェニルスルホンアミド、4−ブロモフェニルスルホンアミド、4−メチルスルホンアミド、4−シアノスルホンアミド、2,6−ジメチルフェニルスルホンアミド、4−スルホンアミドジフェニルオキシド、4−スルホンアミドジフェニルメタン、4−スルホンアミドベンゾフェノン、4−スルホニルアミドジフェニル、4−スルホンアミドスチルベン、4−スルホンアミド−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0053】
アミノフェノール(g)の例としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−メトキシ−4−ヒドロキシアニリン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシアニリン、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシアニリン、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシアニリン、5−ブチル−4−ヒドロキシアニリン、3−フェニル−4−ヒドロキシアニリン、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)フェノール、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)フェノール、4−(4−アミノフェノキシ)フェノール、4−((4−アミノフェニル)チオ)フェノール、(4−アミノフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)フェノール、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、4−アミノ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4−ヒドロキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0054】
アミノカルボン酸(h)の例としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−アミノ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−アミノ安息香酸、5−ブチル−4−アミノ安息香酸、3−フェニル−4−アミノ安息香酸、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4−((4−アミノフェニル)チオ)安息香酸、(4−アミノフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、N−メチル−4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、グリシン、N−メチルグリシン、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノヘキサン酸、4−ピペリジンカルボン酸、5−アミノフタル酸及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0055】
カルボン酸(i)の例としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−フェニル−4−ヒドロキシ安息香酸、4−(1−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、4−((4−ヒドロキシフェニル)チオ)安息香酸、(4−ヒドロキシフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−ヒドロキシフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル−2−シクロヘキサンカルボン酸、4−ヒドロキシフェノキシ−2−プロパン酸及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0056】
スルファニルアミド(j)の例としては、o−スルファニルアミド、m−スルファニルアミド、p−スルファニルアミド、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、2,6−ジメチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−メチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、5−メチル−3−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−フェニル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、4−(1−(3−スルホンアミドフェニル)−1−メチルエチル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミドフェニル)エチル)アニリン、4−(4−スルホンアミドフェノキシ)アニリン、4−((4−スルホンアミドフェニル)チオ)アニリン、(4−スルホンアミドフェニル)(4−アミノフェニル)メタノン、4−((4−スルホンアミドフェニル)スルホニル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミド−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモアニリン、4−スルホンアミド−1−N−メチルアミノベンゼン、4−アミノ−4’−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、4−スルホンアミド−4’−アミノ−α−メチルスチルベン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0057】
本発明の別の態様において、本発明のアダクトは、(i)前記エポキシ樹脂材料(A)、(ii)前記反応性化合物(B)及び(iii)前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含むことができる。
【0058】
エポキシ樹脂材料(A)以外の樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂は、分子当たりの平均1個超のエポキシ基を有する任意のエポキシド含有化合物であることができる。エポキシ基は、任意の酸素、硫黄若しくは窒素原子又は−CO−O−基の炭素原子に結合した単結合酸素原子に結合することができる。酸素、硫黄、窒素原子又は−CO−O−基の炭素原子は、脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基に結合することができる。脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、臭素若しくは塩素;ニトロ基を含む(これらに限定するものではないが)任意の不活性置換基で置換されることもできるし;或いは脂肪族、脂環式、多脂環式又は芳香族炭化水素基は、平均で1個より多い−(O−CHRa−CHRat−基[式中、各Raは独立して水素原子又は1〜2個の炭素原子を含むアルキル若しくはハロアルキル基であり(但し、Ra基は1つだけがハロアルキル基であることができる)、tは1〜約100、好ましくは1〜約20、より好ましくは1〜約10、最も好ましくは1〜約5の値を有する]を含む化合物の末端炭素原子に結合することもできる。
【0059】
樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂のより具体的な例としては、
1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール);1,3−ジヒドロキシベンゼン(レソルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールA、4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;3,3’−5,5’−テトラクロロビスフェノールA;3,3’−ジメトキシビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;4,4’−ジヒドロキシスチルベン;4,4’−ジヒドロキシ−α−シアノスチルベン;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン;4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルアゾキシベンゼン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルアセチレン;4,4’−ジヒドロキシカルコン;4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート;ジプロピレングリコール、ポリ(プロピレングリコール)、チオジグリコール;トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル;フェノール又はアルキル若しくはハロゲン置換フェノール−アルデヒド酸触媒縮合生成物(ノボラック樹脂)のポリグリシジルエーテル;4,4’−ジアミノジフェニルメタン;4,4’−ジアミノスチルベン;N,N’−ジメチル−4,4’−ジアミノスチルベン;4,4’−ジアミノベンズアニリド;4,4’−ジアミノビフェニルのテトラグリシジルアミン;ジシクロペンタジエン若しくはそのオリゴマーとフェノール又はアルキル若しくはハロゲン置換フェノールとの縮合生成物のポリグリシジルエーテル;並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0060】
樹脂化合物(C)として使用できるエポキシ樹脂は、高度(advanced)エポキシ樹脂生成物を含むこともできる。高度エポキシ樹脂は芳香族ジ及びポリヒドロキシル又はカルボン酸含有化合物によるエポキシ樹脂の高度化反応(advanced reaction)の生成物であることができる。高度化反応に使用するエポキシ樹脂は、ジ又はポリグリシジルエーテルを含む樹脂化合物(B)に、適当な前記エポキシ樹脂の任意の1種又はそれ以上を含むことができる。
【0061】
芳香族ジ−及びポリヒドロキシル又はカルボン酸含有化合物の例としては、ヒドロキノン、レソルシノール、カテコール、2,4−ジメチルレソルシノール;4−クロロレソルシノール;テトラメチルヒドロキノン;ビスフェノールA;4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン;4,4’−チオジフェノール;4,4’−スルホニルジフェノール;2,2’−スルホニルジフェノール;4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン;4,4’−ビス(4(4−ヒドロキシフェノキシ)−フェニルスルホン)ジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド;3,3’,3,5’−テトラクロロ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’,3,5’−テトラブロモ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;3,3’−ジメトキシ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン;4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタレート;N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド;ビス(4’−ヒドロキシビフェニル)テレフタレート;4,4’−ジヒドロキシフェニルベンゾエート;ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジイミン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;フロログルシノール;ピロガロール;2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン;ジシクロペンタジエンジフェノール;トリシクロペンタジエンジフェノール;テレフタル酸;イソフタル酸;4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸;4,4’−フェニルベンゾエートジカルボン酸;4,4’−スチルベンジカルボン酸;アジピン酸;及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0062】
前記高度エポキシ樹脂生成物の製造は、既知の方法を用いて、例えば分子当たり平均1個超の反応性水素原子(反応性水素原子はエポキシ樹脂中のエポキシ基と反応性である)を有する1種又はそれ以上の適当な化合物によるエポキシ樹脂の高度化反応によって実施できる。
【0063】
エポキシ樹脂に対する、分子当たり平均1個超の反応性水素原子を有する化合物の比は、一般に約0.01:1〜約0.95:1、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、より好ましくは約0.10:1〜約0.5:1[(反応性水素原子の当量)対(エポキシ樹脂中のエポキシ基の当量)]である。
【0064】
前記ジヒドロキシ芳香族及びジカルボン酸化合物の他に、分子当たり平均1個超の反応性水素原子を有する化合物の例としては、ジチオール、ジスルホンアミド、或いは1個の第一アミン若しくはアミド基、2個の第二アミン基、1個の第二アミン基と1個のフェノール性ヒドロキシ基、1個の第二アミン基と1個のカルボン酸基、又は1個のフェノール性ヒドロキシ基と1個のカルボン酸基を含む化合物、及びそれらの任意の組合せも挙げられる。
【0065】
高度化反応は、加熱及び混合をしながら、溶媒の存在下又は不存在下で実施できる。高度化反応は、大気圧、過圧又は減圧下で、約20〜約260℃、好ましくは約80〜約240℃、より好ましくは約100〜約200℃の温度において実施できる。
【0066】
高度化反応を完了させるのに必要な時間は、使用温度、分子当たり1個超の反応性水素原子を有する使用化合物の化学構造及び使用エポキシ樹脂の化学構造のような要因によって異なる。温度が高いほど必要な反応時間を短縮でき、温度が低いほど必要な反応時間が長くなり得る。
【0067】
一般に、高度化反応完了のための時間は、約5分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、より好ましくは約30分〜約4時間の範囲であることができる。
【0068】
高度化反応には触媒も添加できる。触媒の例としては、ホスフィン類、第四アンモニウム化合物類、ホスホニウム化合物類及び第三アミン類が挙げられる。触媒は、エポキシ樹脂の総重量に基づき、約0.01〜約3重量%、好ましくは約0.03〜約1.5重量%、より好ましくは約0.05〜約1.5重量%の量で使用できる。
【0069】
本発明の樹脂化合物(B)のための高度エポキシ樹脂生成物の製造において有用な高度化反応に関する他の詳細は、米国特許第5,736,620号及びHandbook of Epoxy Resins,Henry Lee and Kris Nevilleに示されており、これらを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0070】
本発明のアダクトはエポキシ樹脂材料(A)、反応性化合物(B)及び任意的に樹脂化合物(C)の反応生成物である。
【0071】
本発明によれば、充分な量のエポキシ樹脂材料(A)及び樹脂化合物(C)(使用する場合)並びに過剰量の反応性化合物(B)を反応混合物中に供給して、本発明のアダクトを形成する。本発明のアダクトを形成するための反応(「付加反応」とも称する)の最後には、エポキシ樹脂材料(A)のエポキシ基の本質的に全てが反応性化合物(B)中の反応性水素原子と反応している。未反応の反応性化合物(B)は反応の最後に除去することもできるし、アダクト生成物の一部として残ることもできる。
【0072】
一般に、反応性化合物(B)とエポキシ樹脂材料(A)の比は、約2:1〜約100:1、好ましくは約3:1〜約60:1、より好ましくは約4:1〜約40:1[(反応性化合物(B)中の反応性水素原子の当量)対(エポキシ樹脂材料(A)及び樹脂化合物(C)(使用する場合)中のエポキシ基の当量)]である。
【0073】
本発明のアダクトの製造には、触媒を使用できる。触媒の例としては、ホスフィン類、第四アンモニウム化合物類、ホスホニウム化合物類、第三アミン類及びそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0074】
触媒を使用する場合には、その使用量は、アダクトの製造に使用する個々の反応体及び使用触媒の型によって異なる。一般に、触媒は、アダクトの総重量に基づき、約0.01〜約1.5重量%、好ましくは約0.03〜約0.75重量%の量で使用できる。
【0075】
本発明の付加反応においては、1種又はそれ以上の溶媒が存在できる。1種又はそれ以上の溶媒の存在は、反応体の溶解度を改善でき、又は反応体が固体の形態である場合には、他の反応体との混合を容易にするために固体反応体を溶解させることができる。溶媒の存在は、アダクト形成反応を減速するために、例えばアダクト形成反応によって発生する熱を制御するために、又はアダクト生成物の構造に同様に影響を及ぼす反応体の有効濃度を低下させる(例えばオリゴマー成分がより少ないアダクトを生成する)ために、反応体の濃度を稀釈することもできる。
【0076】
溶媒は、付加反応に実質的に不活性な(例えば反応体、中間生成物(存在する場合)及び最終生成物に不活性な)任意の溶媒であることができる。本発明において有用な適当な溶媒の例としては、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族及び脂環式炭化水素、脂肪族及び脂環式第二アルコール、脂肪族エーテル、脂肪族ニトリル、環状エーテル、グリコールエーテル、エステル、ケトン、アミド、スルホキシド及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0077】
溶媒の好ましい例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、二塩化エチレン、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、イソプロパノール及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0078】
溶媒は、付加反応の完了時に常法、例えば真空蒸留を用いて除去できる。或いは、溶媒は付加生成物中に残して、溶媒含有アダクトを生成することもでき、それは後で、例えばコーティング又はフィルムの作成に使用できる。
【0079】
アダクト形成反応の条件は、使用する反応体の型及び量、触媒を使用する場合には触媒の型及び量、溶媒を使用する場合には溶媒の型及び量、並びに使用する反応体の添加方法のような要因によって異なり得る。
【0080】
例えば付加反応は大気圧(例えば760mmHg)、過圧又は減圧下で約0〜約260℃、好ましくは約20〜約200℃、より好ましくは約35〜約160℃の温度において、実施できる。
【0081】
付加反応を完了させるのに必要な時間は、前述の要因だけでなく、使用温度によっても異なる。温度が高いほど必要な時間が短く、温度が低いほど必要な時間が長い。一般に、付加反応を完了させるための時間は、好ましくは約5分〜約1週間、より好ましくは約30分〜約72時間、最も好ましくは約60分〜48時間である。
【0082】
付加反応の時間及び温度は、本発明のアダクトの形成における成分の分布に多大な影響を及ぼす。例えばより高い反応温度、より長い反応時間を用い、且つ反応性化合物(B)が反応性水素原子を分子当たり2個だけ有する材料を含む場合には、付加反応は、オリゴマー成分をより多く含むアダクトの形成に有利である。アダクト反応は、反応性化合物(B)が分子当たり2個超の反応性水素原子を有する材料を含む場合には、分岐した又は架橋した成分をより多く含むアダクトの形成に有利である。
【0083】
アダクト形成反応を実施する際には、エポキシ樹脂材料(A)は、反応性化合物(B)と直接混ぜ合わせ、反応性化合物(B)にインクレメント的に(incremental stage)添加し、又は反応性化合物(B)に連続的に添加することができる。更に、1種又はそれ以上の溶媒を最初にエポキシ樹脂材料(A)及び/又は反応性化合物(B)に添加してから、エポキシ樹脂材料(A)と反応性化合物(B)を混合することもできる。
【0084】
エポキシ樹脂材料(A)のインクレメント的添加を用いる場合には、添加したインクレメントの全て又は一部を反応させてから、次のインクレメントを添加することができる。過剰量の反応性化合物(B)内で反応させるエポキシ樹脂材料(A)のインクレメント的添加は、一般に、オリゴマー成分の量がより少ないか又はオリゴマー成分を含まないアダクトの形成に有利である。
【0085】
1)アダクトの成分の分布(例えばシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ、ジグリシジルエーテル及び1種又はそれ以上のそれらのオリゴマーから形成されたアダクト中に存在する成分の量の分布)、2)アダクトの反応性並びに/又は3)アダクトの物理的性質を変更するために、種々の後処理を本発明のアダクトの製造方法に適用できる。
【0086】
例えばシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(エポキシ樹脂材料(A)として)とシクロヘキシルアミン(反応性化合物(B)として)との反応によって製造されるアダクトに関しては、シクロヘキシルアミンに由来する化学量論的大過剰量の第一アミン基がシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基と反応する場合には、反応はオリゴマー成分含量が少ないアダクトの形成をもたらす可能性がある。得られるアダクト生成物は、アダクト生成物の一部として、未反応反応性化合物(B)としての高濃度のシクロヘキシルアミンも含む可能性がある。従って、真空蒸留のようなアダクト生成物の後処理を用いて、未反応の反応性化合物(B)をストリップすることができる。
【0087】
アダクト成分の分布の変更には、他の後処理法、例えば再結晶、クロマトグラフ分離、抽出、ゾーン精製、結晶精製、流下膜式蒸留、薄膜蒸留(wiped film distillation)、単蒸留、選択的化学誘導体化(preferential chemical derivatization)及びアダクトの1種又はそれ以上の成分の除去並びにそれらの任意の組合せも使用できる。
【0088】
本発明によれば、本発明のアダクトを形成するためのエポキシ樹脂材料(A)と反応性化合物(B)との反応は開環反応を含む。開環反応の間に、エポキシ樹脂材料(A)中のエポキシ基が反応性化合物(B)中の反応性水素原子と反応して、エポキシ樹脂材料(A)の残基構造と反応性化合物(B)の残基構造との結合として特有の2−ヒドロキシルプロピル官能基を生じる。
【0089】
本発明のアダクトの一例は、シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(エポキシ樹脂材料(A)として)とシクロヘキシルアミン(反応性化合物(B)として)の反応生成物である。以下のアダクト構造は、エポキシ樹脂材料(A)の残基構造と反応性化合物(B)の残基構造との結合としての2−ヒドロキシルプロピル官能基を示す(幾何異性体及び置換は示していない):
【0090】
【化2】

【0091】
反応性化合物(B)は、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸及び(j)スルファニルアミドのような2つの官能基を有する化合物である可能性がある。これらの化合物は、エポキシ樹脂の硬化に対して異なる反応性を有する異なる官能基を有するアダクトを生成するのに使用できる。この型のアダクトの例は、アミノフェノール化合物、p−N−メチルアミノメチルフェノール(反応性化合物(B)として)とシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(エポキシ樹脂材料(A)として)との反応生成物である。この反応を(a)触媒を用いずに、(b)低温(例えば約25〜約50℃)において、(c)比較的長い反応時間、(d)化学量論的大過剰の反応性化合物(B)へのエポキシ樹脂材料(A)のインクレメント的添加又は低速の連続的添加を用いること且つ(e)エポキシ樹脂材料(A)及び反応性化合物(B)の両者を溶媒中に存在させることを含む緩和な条件下で行う場合には、フェノール性ヒドロキシル末端基を有するアダクトがもたらす。以下のアダクト構造は、フェノール性ヒドロキシル末端基を含むアダクトを示す(幾何異性体及び置換は示していない):
【0092】
【化3】

【0093】
1つの官能基がもう1つの官能基よりもエポキシ基に対して有利である触媒反応も使用できる。例えばそれぞれが少なくとも1つの反応性水素原子を有する少なくとも2つの異なる官能基を含む反応性化合物(B)を用いて本発明のアダクトを形成する場合には、一方の型の官能基の反応性水素原子とエポキシ基との反応の方が他方の型の官能基の反応性水素原子とエポキシ基との反応よりも有利である触媒を使用できる。
【0094】
アダクトは各エポキシ樹脂のエポキシ基の1つがそれぞれ反応性化合物(B)中の反応性水素原子と既に反応している少なくとも2つの異なるエポキシ樹脂分子からのエポキシ基の反応によって得られた少なくとも1種のオリゴマー成分も含む可能性がある。
【0095】
この型のアダクトの例はシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルとシクロヘキシルアミンとの反応生成物である。以下のアダクト構造は、オリゴマー成分が、エポキシ基の1つがそれぞれシクロヘキシルアミンと既に反応している2つの異なるシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルからの少なくとも2つのエポキシ基から導かれることを示している(幾何異性体及び置換は示していない):
【0096】
【化4】

【0097】
[式中、nは1又はそれ以上の値を有する]。
【0098】
アダクトは以下の反応:
(1)エポキシ樹脂の別のエポキシ基において既に付加されているエポキシ樹脂からのエポキシ基と、本発明のアダクトからの2−ヒドロキシプロピル結合のヒドロキシル基との反応;又は
(2)3つの異なるエポキシ樹脂分子と、本発明の反応性化合物(B)からの3つの反応性水素原子との反応
の任意の1つから導かれる少なくとも1つの分岐した又は架橋されたアダクト構造も含み得る。
【0099】
前記反応(1)の例は、シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルとシクロヘキシルアミンとのアダクトからのヒドロキシル基と、エポキシ基の1つにシクロヘキシルアミンが既に付加している第2のシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルからのエポキシ基との反応である。得られる反応生成物の化学構造は以下に示す通りである(幾何異性体及び置換は示していない):
【0100】
【化5】

【0101】
前記反応(2)の例はシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルとジエチレントリアミンとのアダクトのアミノ水素と、ジエチレントリアミン部分の別のアミノ水素と既に反応している第2のシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルからのエポキシ基との反応である。得られる反応生成物の化学構造は以下に示す通りである(各ジグリシジルエーテル分子の一端のみ示し、幾何異性体及び置換は示していない):
【0102】
【化6】

【0103】
更に、若干のマイナー構造、例えばエポキシ樹脂材料(A)中のエポキシ基の加水分解に由来する1,2−グリコール基又はエポキシ樹脂材料(A)の形成過程における中間体ハロヒドリン分子のヒドロキシル基へのエピハロヒドリンの付加に由来するハロメチル基が本発明のアダクト中に存在し得る。
【0104】
シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルのアダクト中の主鎖ヒドロキシル基の反応によって、他のマイナー構造が形成され得る。例えば第2のヒドロキシル基と一部の反応性化合物(B)中に存在するカルボン酸基との反応により、アダクト中に主鎖エステル結合が形成される。
【0105】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は(a)アダクトと(b)樹脂化合物(D)を含む。前記アダクトは、前述のように(ii)エポキシ樹脂材料(A)、(ii)反応性化合物(B)並びに、任意的に(iii)樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含む本発明のアダクトである。前記化合物(D)は、これも前述したように、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む。硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化時に、シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含む硬化エポキシ樹脂を生成する。
【0106】
用語「硬化性(curable)」(「熱硬化性(thermosettable)」とも称する)は、組成物が、組成物を硬化又は熱硬化状態(state or condition)にするであろう条件に供されることができることを意味する。
【0107】
用語「硬化(された)(cured)」又は「熱硬化(された)(thermoset)」は、L.R,Whittington[Whittington’s Dictionary of Plastics(1968),239頁]によって以下のように定義されている:「完成品としての最終状態で実質的に不融性且つ不溶性である樹脂及びプラスチック化合物。熱硬化性樹脂は多くの場合、その製造又は加工中のある段階で液体であり、熱、触媒作用又は他の何らかの化学的手段によって硬化される。完全に硬化された後、熱硬化性樹脂は熱によって再軟化されることができない。通常は熱可塑性である一部のプラスチックは、他の材料による架橋によって熱硬化性にされることができる。」
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明のアダクトと樹脂化合物(D)とを、使用する個々のアダクト及び樹脂化合物(D)によって量が異なるという認識のもとで、硬化性エポキシ樹脂組成物を効果的に硬化させる量で混合することによって製造する。
【0108】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に樹脂化合物(D)として使用できるエポキシ樹脂は、分子当たり平均1個超のエポキシ樹脂を有する任意のエポキシド含有化合物であることができる。このエポキシ樹脂の例には、前述の樹脂化合物(C)及びエポキシ樹脂材料(A)に適当なエポキシ樹脂が含まれる。
【0109】
一般に、本発明のアダクトと樹脂化合物(D)の比は、硬化に使用する条件において、約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1[(アダクト中に存在する反応性水素原子の当量)対(樹脂化合物(D)中のエポキシ基の当量)]である。
【0110】
本発明の好ましい硬化性エポキシ樹脂組成物は本発明のアダクトと樹脂化合物(D)を含んでなり、樹脂化合物(D)は前記エポキシ樹脂材料(A)に適当なエポキシ樹脂を含む1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む。例えば樹脂化合物(D)はシス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含む1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含むことができる。
【0111】
本発明の別の好ましい硬化性エポキシ樹脂組成物は(i)本発明のアダクト及び(ii)樹脂化合物(D)を含んでなり、樹脂化合物(D)は1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含み、アダクトはエポキシ樹脂材料(A)と反応性化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含む。反応性化合物(B)は例えば脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸又は脂肪族若しくは脂環式アミノカルボン酸、ジアミノカルボン酸、アミノジカルボン酸又はジアミノジカルボン酸或いはそれらの任意の組合せを含む。この硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化させると、芳香族基を含まない硬化エポキシ樹脂を生成する。
【0112】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法は、大気圧(例えば760mmHg)、過圧若しくは減圧下で、約0〜約300℃、好ましくは約25〜約250℃、より好ましくは約50〜約200℃の温度において実施できる。
【0113】
硬化を完了させるのに必要な時間は使用温度によって異なり得る。温度が高いほど必要な時間が一般に短く、温度が低いほど必要な時間が一般に長い。一般に、硬化を完了させるのに必要な時間は約1分〜約48時間、好ましくは約15分〜約24時間、より好ましくは約30分〜約12時間である。
【0114】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を部分硬化させてB段階生成物を形成し、続いてその後にB段階生成物を完全に硬化させることも実施可能である。
【0115】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は硬化剤及び/又は硬化触媒を含むこともできる。
【0116】
硬化性エポキシ樹脂組成物に有用な硬化剤及び/又は触媒の例としては、脂肪族、脂環式、多脂環式若しくは芳香族第一モノアミン類;脂肪族、脂環式、多脂環式若しくは芳香族第一及び第二ポリアミン類;カルボン酸類及びその無水物類;芳香族ヒドロキシル含有化合物類;イミダゾール類;グアニジン類;尿素−アルデヒド樹脂類;メラミン−アルデヒド樹脂類;アルコキシル化尿素−アルデヒド樹脂類;アルコキシル化メラミン−アルデヒド樹脂類;アミドアミン類;エポキシ樹脂アダクト類;又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0117】
硬化剤の特に好ましい例としては、メチレンジアニリン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メチロール化尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メチロール化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、スルファニルアミド、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ビス−4−アミノシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、トリス−3−アミノプロピルアミン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0118】
硬化触媒の特に好ましい例としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテル、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、四塩化珪素、塩化第二錫、四塩化チタン、三塩化アンチモン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、ピリジン−ボラン錯体、ジエタノールアミンボレート、フルオロホウ酸亜鉛、金属アシレート、例えばオクタン酸第一錫若しくはオクタン酸亜鉛、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0119】
硬化触媒は硬化性エポキシ樹脂組成物を効果的に硬化させるであろう量で使用できる。硬化触媒の量は硬化性エポキシ樹脂組成物中で使用する個々のアダクト、エポキシ樹脂及び硬化剤(使用する場合)によっても異なるであろう。
【0120】
一般に、硬化触媒は総硬化性エポキシ樹脂組成物の約0.001〜約2重量%の量で使用できる。更に、1種又はそれ以上の硬化触媒を用いて、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化プロセスを促進するか又は他の方法で変更することができる。
【0121】
硬化剤は硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させるためにアダクトと共に使用できる。硬化剤とアダクトの合計量は約0.60:1〜約1.50:1、好ましくは約0.95:1〜約1.05:1(硬化剤及びアダクト中に存在する反応性水素原子の総当量)である。
【0122】
硬化性エポキシ樹脂組成物は少なくとも1種の添加剤、例えば硬化促進剤、溶剤若しくは希釈剤、改質剤(例えば流れ調整剤及び/若しくは増粘剤)、強化剤、充填剤、顔料、染料、離型剤、湿潤剤、安定剤、難燃剤、界面活性剤又はそれらの任意の組合せとブレンドすることもできる。
【0123】
添加剤はアダクト又は樹脂化合物(D)とブレンドすることもできるし、或いは本発明の硬化性樹脂組成物の製造への使用前にアダクト及び樹脂化合物(D)の両者とブレンドすることもできる。
【0124】
これらの添加剤は、機能的に相当する量で添加でき、例えば顔料及び/又は染料は、組成物に所望の色を与えるであろう量で添加することができる。一般に、添加剤の量は、硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づき、約0〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約5重量%、より好ましくは約0.5〜約3重量%であることができる。
【0125】
本発明において使用できる硬化促進剤としては、例えばモノ、ジ、トリ及びテトラフェノール類;塩素化フェノール類;脂肪族又は脂環式モノ又はジカルボン酸類;芳香族カルボン酸類;ヒドロキシ安息香酸類;ハロゲン化サリチル酸類;ホウ酸類;芳香族スルホン酸類;イミダゾール類;第三アミン類;アミノアルコール類;アミノピリジン類;アミノフェノール類;メルカプトフェノール類;及びそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0126】
特に適当な硬化促進剤としては、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−メチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、4−ニトロフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、吉草酸、シュウ酸、安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、5−クロロサリチル酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ安息香酸、4−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、4−ジメチルアミノピリジン、4−アミノフェノール、2−アミノフェノール、4−ジメルカプトフェノール又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0127】
本発明において使用できる溶剤又は希釈剤の例としては、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、脂肪族エーテル類、脂肪族ニトリル類、環状エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0128】
特に適当な溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドフラン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、二塩化エチレン、メチルクロロホルム、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、スルホラン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0129】
増粘剤及び流れ調整剤のような改質剤は、硬化性エポキシ樹脂ブレンド組成物の総重量に基づき、0〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約6重量%、より好ましくは約0.5〜約4重量%の量で使用できる。
【0130】
本発明において使用できる強化剤としては、織物、マット、モノフィラメント、マルチフィラメント、一方向繊維、ロービング、ランダム繊維若しくはフィラメント、無機充填剤若しくはホイスカー、又は中空球の形態の天然及び合成繊維が挙げられる。他の適当な強化材としては、ガラス、炭素、セラミック、ナイロン、レーヨン、コットン、アラミド、グラファイト、ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0131】
本発明において使用できる充填剤としては、例えば無機酸化物、セラミック微小球、プラスチック微小球、ガラス微小球、無機ホイスカー、炭酸カルシウム及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0132】
充填剤は、硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量に基づき、約0〜約95重量%、好ましくは約10〜約80重量%、より好ましくは約40〜約60重量%の量で使用できる。
【0133】
本発明のアダクトは、完全に硬化された脂環式/脂肪族エポキシ樹脂(芳香環を含まない)の製造を含む、硬化エポキシ樹脂の製造のための脂環式硬化剤として有用であることができる。
【0134】
アダクトは、例えばコーティング、特に耐溶剤性、防湿性、耐摩耗性及び耐候性が優れた保護コーティング中に使用することもできる。本発明のアダクトの他の用途としては、例えば電気用又は構造用の積層体又は複合体、フィラメント巻き線、成形品、注型品、カプセル封入品などの作成が挙げられる。
【実施例】
【0135】
省略形
実施例及び比較実験において、以下の標準的な省略形を用いる:
GC=ガスクロマトグラフィー(クロマトグラフ)
GPC=ゲル透過クロマトグラフィー(クロマトグラフ)
EEW=エポキシ当量
AHEW=アミン水素当量
RSD=相対標準偏差
DI=脱イオン(された)
meq=ミリ当量
eq=当量
wt=重量
min=分
hr=時間
g=グラム
mL=ミリリットル
L=リットル
LPM=リットル/分
mm=ミリメートル
M=メートル
cp=センチポアズ
CHDM=シス,トランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール
CHDM MGE=1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル
CHDM DGE=1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル
EDA=1,2−ジアミノエタン(エチレンジアミン)
DETA=ジエチレントリアミン(D.E.H.(登録商標)20)
AEP=1−(2−アミノエチル)ピペラジン
DGE BPA=ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
MIBK=メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)
【0136】
以下の実施例及び比較実験において使用したCHDMは、商用グレード製品、UNOXOL(登録商標)Diol(The Dow Chemical Companyによって製造販売)である。CHDMのGC分析により、99.5%の面積%(4つの個々の異性体について、22.3、32.3、19.6及び25.3面積%)の存在が示され、残りの0.5面積%は単一の微量不純物であった。
【0137】
以下の実施例及び比較実験において使用したDGE BPAは、実施例11のパートDを除いて、商用グレード製品、D.E.R.(登録商標)331(The Dow Chemical Companyによって製造販売)であり、滴定によってエポキシドが23.38%(EEW184.02)であり、公称粘度が25℃において平均12,500cpである。実施例11のパートDにおいて使用したDGE BPAも商用グレード製品(The Dow Chemical Companyによって製造販売)であるが、EEWが186.605である。
【0138】
D.E.R.、D.E.H.及びUNOXOLは、The Dow Chemical Companyの登録商標である。
【0139】
分析装置及び方法
実施例及び比較実験においては、以下の標準的な分析装置及び方法を用いる:
ガスクロマトグラフ(GC)分析
Hewlett Packard 5890 Series II Plusガスクロマトグラフを使用し、DB−1キャピラリーカラム(61.4M×0.25mm,Agilent)を用いた。カラムをクロマトグラフ用オーブン中で50℃の初期温度に保持した。インジェクター入口及び炎イオン化検出器はいずれも300℃に保持した。カラムを通るヘリウムキャリヤーガス流は1.1mL/分に保持した。温度プログラムは、50℃において2分のホールド時間、300℃の最終温度まで10℃/分の加熱速度、及び300℃において15分のホールド時間を使用した。カラムから溶離しなかったオリゴマーを含むサンプルを分析する場合には、残留オリゴマーが「焼け尽きる」までクロマトグラフ用オーブンを300℃に保持してから、次のサンプルの分析を行った。以下の実施例及び比較実験においては、CHDMジグリシジルエーテルの4つの異性体の保持時間より長い保持期間を有する全ての成分をオリゴマーとした。ここで使用する用語「オリゴマー成分を含まない」又は「オリゴマー成分を実質的に含まない」は、オリゴマーが、エポキシ樹脂生成物の総重量に基づき、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0重量%で存在することを意味する。以下の実施例及び比較実験におけるGC分析は全て、面積%で測定し、従って所定の成分の定量的尺度ではない。
【0140】
GC分析用のサンプルは、エポキシ化プロセスからエポキシ樹脂生成物の0.5mLのアリコートを収集し、アセトニトリル1mLを含むバイアルに加えることによって調製した。アセトニトリル中の生成物の一部を混合してから、1mLシリンジ(Norm−Ject,全てポリプロピレン/ポリエチレン,Henke Sass Wolf GmbH)に装填し、シリンジフィルター(0.2μmPTFE膜を有するAcrodisc CR13,Pall Corporation,Gelman Laboratories)に通して任意の無機塩又はデブリ(debris)を除去した。
【0141】
I.C.I.コーンプレート粘度
粘度を、I.C.I.コーンプレート粘度計(モデルVR−4540)で25℃において測定した。0〜5ポアズのスピンドル(モデルVR−4105)を装着し且つ25℃に平衡化した粘度計を、ゼロに較正した。サンプルを粘度計に適用して2分間保持し、次いで粘度を確認して、15秒後に数値を読み取った。試験する個々の生成物の新鮮なアリコートを用いて、1回又はそれ以上の二重反復粘度試験を行った。個々の測定値を平均した。
【0142】
ゲル透過クロマトグラフ(GPC)分析
40℃に保持した1対のPL−ゲルMixed Eカラムを、示差屈折率検出器(Waters 410)と直列で用いた。溶離剤としてテトラヒドロフランを1mL/分の流速で用いた。注入容量は100mLとした。サンプルをテトラヒドロフラン中で0.45〜0.50%の濃度まで稀釈した。Polymer Laboratories Polyethylene Glycol Calibrants,PEG 10,Lot 16を用いて、較正を行った。Mn、Mw、Mw/Mn、Mp及びMzのRSDが4%未満であり、Mz+1のRSDが8%未満である、実施例9〜11を除いて、Mn、Mw、Mw/Mn、Mp及びMzのRSDは3%未満であり、Mz+1のRSDは6%未満であった。クロマトグラムは目視検査し、各ピークの個別の積分について異なるピークウィンドウを選択した。サンプルを二重反復試験で分析することよって、精度を測定した。Mp(ピークの頂点における分子量)及び面積%のRSDは、総面積の10%超のピークウィンドウの場合には1%未満であり、総面積の10%未満のピークウィンドウの場合には10%未満であった。こうして得られた面積パーセント及びピーク分子量を平均して、以下の実施例及び比較実験に示した結果を得た。
【0143】
加水分解性、イオン性及び総塩化物の分析
加水分解性塩化物は一般に、水酸化ナトリウムによる脱塩化水素化によって環化されずにエポキシ化プロセスにおいてエポキシド環を生成する、カップリング生成物(例えばクロロヒドリン中間体)から生じる。
【0144】
イオン性塩化物は、エポキシ樹脂生成物に同伴された、エポキシ化プロセスからの塩化ナトリウム副産物を含む。塩化ナトリウムは、水酸化ナトリウムによるクロロヒドリンの脱塩化水素化において共生成される。
【0145】
総塩化物はクロロメチル基の形態でエポキシ樹脂構造中に結合された塩化物を考慮に入れる。クロロメチル基は、クロロヒドリン中間体中の第二ヒドロキシル基とepiとのカップリング反応の結果として形成される。
【0146】
イオン性及び加水分解性塩化物並びに総塩化物は滴定法を用いて測定し、総塩化物はX線螢光分析によって測定した。
【0147】
エポキシド%/エポキシ当量(EEW)の分析
標準的な滴定法を用いて、種々のエポキシ樹脂中のエポキシド%を測定した。サンプルを秤量し(約0.1〜0.2gの範囲)、ジクロロメタン(15mL)中に溶解させた。酢酸中の臭化テトラエチルアンモニウム溶液(15mL)をサンプルに加えた。得られた溶液を3滴のクリスタルバイオレット溶液(酢酸中0.1%w/v)で処理し、Metrohm 665 Dosimat滴定装置(Brinkmann)上で酢酸中0.1N過塩素酸で滴定した。ジクロロメタン(15mL)及び酢酸中の臭化テトラエチルアンモニウム溶液(15mL)を含むブランクサンプルの滴定により、溶媒バックグラウンドに関する補正を行った。この滴定のための一般的な方法は、科学文献、例えばJay,R.R.,”Direct Titration of Epoxy Compound and Aziridines”,Analytical Chemistry,36,3,667-668(March,1964)に記載されている。
【0148】
示差走査熱量測定法(DSC)
DSC 2910 Modulated DSC(TA Instruments)を使用し、45cm3/分で流れる窒素流下において25℃から250℃まで7℃/分の加熱速度を用いた。具体的なサンプル重量は、以下の実施例及び比較実験中に示す。
【0149】
明澄な無充填注型品の作成
注型品の作成前に、エポキシ樹脂アダクト硬化剤とエポキシ樹脂との混合物をガラス鐘下に置き、真空下で気泡を全て除去した。50℃に予熱した金型中に脱ガス混合物を注入し、次いで脱ガス混合物を次の16時間、オーブン中で50℃に保持して、硬化生成物(注型品)を得た。使用した金型は6インチ×6インチの2枚のアルミニウム板を含んでなる。各板の面に、シロキサザンポリマーを塗布した6インチ×6インチのアルミニウムシートでカバーした。U形の1/8インチスペーサーフレーム及びU形の内部ガスケット(interior gasket)を、2枚のアルミニウム離型シートの間に配置した。ガスケットはシラスチックゴム管中に銅線を入れたものから形成した。金型を、1組の圧縮クランプによって一緒に保持した。50℃で硬化された注型品を、金型中で以下の手順を用いて後硬化させた:(a)オーブン温度設定値を100℃まで上昇させ(100℃に達するには16〜20分を要する)、(b)オーブン温度を100℃に60分間保持し、(c)100℃のオーブンから金型を取り出して、150℃に保たれたオーブン中に金型を入れ、(d)オーブン温度を150℃に60分間保持し、(e)金型を取り出して、室温まで冷却させ、(f)室温まで冷却されたら注型品を金型から取り出す。
【0150】
曲げ強度及び曲げ弾性率試験
後硬化された注型品を、ウェットソー(wet saw)(Micro-matic Precision Slicing and Dicing Machine,型番WMSA.1015;Digital Measuring Display Dynamics Research Coporitiaon,Model 700 12DOを装着)を用いてカットして、2.5インチ×0.5インチの曲げ試験片を5又は6枚作成した。試験前に、試験片を恒温恒湿室で73.4+/−3.6°F及び相対湿度50+/−5%に40時間に保持した。試験は、Instron 4505を用いてASTM D 790に従って行った。
【0151】
以下の実施例及び比較実験は、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲を限定すると解してはならない。
【0152】
実施例1
A.オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの特性決定
CHDM MGE及びCHDM DGEを含むエポキシ樹脂のGC分析により、エポキシ樹脂がCHDM MGE3.5面積%(4つの個々の異性体について、0.9、0.5、1.5及び0.6面積%)、CHDM DGE90.2面積%(4つの個々の異性体について、22.2、33.1、10.4及び24.5面積%)、オリゴマー(22種超の微量成分)5.4面積%を含み、残りは数種の微量不純物であることが示された。エポキシ樹脂のアリコートの滴定により、エポキシドが30.41%(EEW141.52)であることが示された。エポキシ樹脂のアリコートの粘度(25℃)は平均で76cpであった。イオン性塩化物及び加水分解性塩化物並びに総塩化物の分析により、以下の結果が得られた:加水分解性塩化物83ppm、イオン性塩化物8.156ppm、総塩化物0.2304%。GPC分析により、以下の結果が得られた:Mn=239、Mw=335、Mw/Mn=1.41、Mp=195、Mz=708、Mz+1=2010。各ピークのピークウィンドウの積分により、以下の結果が得られた:
【0153】
【表1】

【0154】
B.オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEとEDAとのアダクトの製造と特性決定
500mLの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でEDA(240.34g,4.0モル,アミン水素当量16)を装入した。使用したEDAは、純度規格値(purity specification)が99%の商用グレード製品(Aldrich Chemical Companyから入手)である。反応器に、凝縮器(−2℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及び電磁撹拌を更に装着した。前述の実施例1のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(28.30g,エポキシ当量0.20)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に、取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの滴加を開始した。1.9時間後、滴加を完了させた。得られたライトイエロー色の溶液を撹拌し、次の20.0時間、75℃に保持し、続いて回転蒸発によって過剰EDAの大部分を除去した。真空オーブン中で75℃において、得られた透明なライトアンバー色の液体アダクト生成物が40.23gの一定重量となるまで、溶液の更なる乾燥を行った。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、全てのCHDM MGE及びCHDM DGEの完全な反応が起こったことが示された。
【0155】
EDA反応体の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1N)を用いて滴定した。この滴定は、酢酸(25mL)のブランクの滴定補正後に、33.5323meq/gを示した。EDAに関しては理論値NH 66.5735meq/gが計算されたので、実験的に得られた33.5323meq/gはg当たりのNH2によるものであって、NHによるものではなかった。このデータを用いて、アダクト生成物の滴定に必要な補正係数(correction factor)を得た。
【0156】
アダクト生成物の一部(0.25g)を窒素下で無水酢酸(2.5mL)に加え、次いで75℃に2時間加熱した。真空オーブン中で125℃において16時間、更に乾燥させた。得られた溶液を回転蒸発させて過剰な酢酸及び無水酢酸を除去して、透明なライトアンバー色の液体アセチル化アダクト生成物を得た。アセチル化アダクト生成物の一部を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1N)を用いて滴定した。この滴定は、酢酸(25mL)のブランクの滴定補正後に、アダクト中に第三窒素が0.8114meq/g存在することを示した(アダクト中の第三アミン窒素は、エポキシ基と第一アミン水素との反応、その後の、第2のエポキシ基と同一窒素原子に結合した第二アミン水素とを反応させることによって生じる)。このデータを更に用いて、アダクト生成物の以下の滴定に必要な補正係数を得た。
【0157】
アダクト生成物の第2の部分を酢酸(25mL)に加え、次いで酢酸中の過塩素酸(0.1N)を用いて滴定した。この滴定は、10.1744meq/gの生値(raw value)を示した。滴定の繰り返しにより、10.2469meq/gの生値が示された。いずれの値も、酢酸(25mL)のブランクの滴定補正後の値である。NH2滴定をNHとして補正し且つ第三窒素を除去する補正を行った後、アダクト生成物は、計算により、NHが14.10meq/g、又はAHEWが70.92であることが示された。
【0158】
実施例2−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトによるDGE BPAの硬化
DGE BPA(2.5955g,エポキシ当量0.0141)と実施例1のパートBからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトの一部(1.0003g,アミン水素当量0.0141)との混合物を一緒に激しく撹拌して、濁りを帯びた(hazy)液体を生成した(室温で放置時にゆっくりと分離した)。濁りを帯びた液体の部分11.8mg及び13.1mgを用いて、DSC分析を行った。アダクト中の反応性水素原子とエポキシ基との反応による発熱転移が観察され、極大が90.51℃及び89.68℃(平均90.10℃)にあり、それぞれ356.2ジュール/g及び343.9ジュール/gのエンタルピー(平均350.1ジュール/g)を伴っていた。この発熱転移の開始温度はそれぞれ54.7℃及び53.7℃(平均54.2℃)であった。混合物の残りの部分を穏やかに加熱し、濁りを帯びた液体を透明なライトイエロー色の溶液に変えた。この溶液状態に達するとすぐに、硬化が開始した。硬化は室温(約25℃)で完了させ、続いて150℃に予熱されたオーブン中で1時間、後硬化させた。硬化生成物は硬質でライトイエロー色の透明固体であった。硬化生成物の部分33.7mg及び33.9mgを用いたDSC分析により、それぞれ、60.21℃+116.11℃及び65.53℃+113.83℃(平均62.87℃及び114.97℃)の2つのガラス転移温度が得られた。
【0159】
実施例3−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGE並びにオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトの硬化
実施例1のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(1.7792g,エポキシ当量0.0126)と実施例1のパートBからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトの一部(0.8916g,アミン水素当量0.0126)を一緒に激しく撹拌して、濁りを帯びた混合物を生成した(室温で放置時にゆっくりと分離した)。濁りを帯びた混合物の部分11.0mg及び10.4mgを用いて、DSC分析を行った。アダクト中の反応性水素原子とエポキシ基との反応による発熱転移が観察され、極大が106.68℃及び106.83℃(平均106.76℃)にあり、それぞれ、250.4ジュール/g及び295.6ジュール/gのエンタルピー(平均273.0ジュール/g)を伴っていた。この発熱転移の開始温度は、それぞれ、61.3℃及び60.9℃(平均61.1℃)であった。混合物の残りの部分を穏やかに加熱し、濁りを帯びた液体を透明なライトイエロー色の溶液に変えた。この溶液状態に達するとすぐに、硬化が開始した。硬化は室温で完了させ、続いて150℃に予熱されたオーブン中で1時間、後硬化させた。硬化生成物は硬質でライトイエロー色の透明固体であった。硬化生成物の部分32.5mg及び30.4mgを用いて行ったDSC分析により、それぞれ、56.93℃及び57.17℃(平均57.05℃)のガラス転移温度が得られた。
【0160】
比較実験A
A,商用グレードのシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルの特性決定
Aldrich Chemical Companyから入手した商用グレードの「工業用グレード」シス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(バッチ#22009TC)をGCによって分析することにより、シス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール1.6面積%(2つの個々の異性体について、0.3及び1.3面積%)、シス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールモノグリシジルエーテル7.8面積%(2つの個々の異性体について、4.7及び3.1面積%)、シス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル61.2面積%(2つの個々の異性体について、19.1及び42.1面積%)、オリゴマー29.2面積%(9つの個々の成分について、0.63、1.35、1.44、0.68、7.20、17.30、0.22、0.21及び0.20面積%)が示され、残りの0.2面積%は単一の未知成分であった。Aldrich Chemical製の製品を用いたGC分析からは、56.7%のシス及びトランス−1,4−異性体混合物が示された。この製品のアリコートの滴定は、エポキシド27.05%(EEW159.05)を示した。Aldrich Chemical製の製品を用いて得られたEEWは159であった。この製品のアリコートの25℃における粘度を、I.C.I.コーンプレート粘度計で測定した。エポキシ樹脂のアリコートの粘度(25℃)は平均69cpであった。Aldrich Chemical製の製品を用いて得られた粘度は25℃において71cpであった。イオン性塩化物、加水分解性塩化物及び総塩化物に関する分析から、以下の結果が得られた:加水分解性Cl=536ppm,イオン性Cl=21.60ppm,総Cl=2.356%。GPC分析から以下の結果が得られた:Mn=245,Mw=265,Mw/Mn=1.08,Mp=205,Mz=292,Mz+1=331。各ピークのピークウィンドウの積分から、以下の結果が得られた:
【0161】
【表2】

【0162】
B.オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルとEDAとのアダクトの製造及び特性決定
500mLの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でEDA(240.34g,4.0モル,アミン水素当量16)を装入した。使用したEDAは、実施例1のパートAに記載したものである。反応器に凝縮器(−2℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及び電磁撹拌を更に装着した。前述の比較実験のパートAからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルの一部(31.81g,エポキシ当量0.20)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、75℃の溶液を生成した。75℃の反応温度を保持しながら、オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルの滴加を開始した。1.9時間後、滴加を完了させた。得られたライトイエロー色の溶液を撹拌し、次の22.3時間、75℃に保持し、続いて回転蒸発によって過剰EDAの大部分を除去した。真空オーブン中で75℃において、透明なライトアンバー色の液体アダクト生成物が47.27gの一定重量となるまで、溶液の更なる乾燥を行った。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、全てのモノ及びジグリシジルエーテルの完全な反応が起こったことが示された。
【0163】
アダクト生成物の一部をアセチル化し、得られたアセチル化アダクトを実施例1のパートBの方法を用いて滴定した。この滴定は、アダクト中に第三窒素が0.8257meq/g存在することを示した。このデータを用いて、アダクト生成物の以下の滴定に必要な補正係数を得た。アダクト生成物の第2の部分を実施例1のパートBの方法を用いて滴定した。この滴定は、10.0192meq/gの生値を示した。NH2滴定をNHとして補正し(実施例1のパートBにおいて得られた)且つ第三窒素を除去する補正を行った後、アダクト生成物は、計算により、NHが13.79meq/g、又はAHEWが72.52であることが示された。
【0164】
比較実験B−オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDAアダクトによるDGE BPAの硬化
DGE BPA(2.5593g,エポキシ当量0.0139)と比較実験AのパートBからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDAアダクトの一部(1.0086g,アミン水素当量0.0139)とを一緒に激しく撹拌して、濁りを帯びた混合物を生成した。これは、撹拌を止めると直ちに相分離した。新たに撹拌した濁りを帯びた混合物の部分9.8mg及び10.9mgを用いて、DSC分析を行った。活性水素基とエポキシ基との反応による発熱転移が観察され、極大が98.3℃及び98.9℃(平均98.6℃)にあり、それぞれ242.8ジュール/g及び212.0ジュール/gのエンタルピー(平均227.4ジュール/g)を伴っていた。この発熱転移の開始温度はそれぞれ67.7℃及び69.3℃(平均68.5℃)であった。このDSC分析のいずれにおいても、発熱ピークはかなりのリーディング・エッジ・ショルダー(leading edge shoulder)を有していた(ピーク面積の約25%を構成していた)。混合物の残りの部分を穏やかに加熱し、濁りを帯びた液体を透明なライトイエロー色の溶液に変えた。この溶液状態に達するとすぐに、硬化が開始した。硬化は室温で完了させ、続いて150℃に予熱されたオーブン中で1時間、後硬化させた。硬化生成物は硬質でイエロー色の透明固体であった。硬化生成物の部分30.2mg及び30.8mgを用いて行ったDSCにより、それぞれ、34.99℃+51.52℃+113.84℃及び37.47℃+93.26℃の3つ又は2つのガラス転移温度が得られた。
【0165】
比較実験C−オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDAアダクトによる、オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルの硬化
比較実験AのパートAからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルの一部(2.2022g,エポキシ当量0.0139)と比較実験AのパートBからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDAアダクトの一部(1.0041g,アミン水素当量0.0139)を一緒に激しく撹拌したが、混ざらなかった。両成分をイエロー色の液体として溶解させるのに必要な温度まで穏やかに加熱した場合には、この溶液状態に達するとすぐに無制御の硬化が開始した。この無制御の硬化は、短期間に発熱によってエネルギーを多量に放出し、その結果、中央が黒く炭化したイエロー色の生成物を生じた。もう1回試みても、前記結果は再現された。
【0166】
実施例4−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGE並びにオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトを用いた明澄な無充填注型品の作成及び特性決定
50℃に予熱した、前記実施例1のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(25.00g,エポキシ当量0.1767)と、50℃に予熱した、実施例1のパートBからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのEDAアダクトの一部(12.53g,アミン水素当量0.1767)を、一緒に激しく撹拌して、わずかに濁りを帯びた溶液を生成した。これを用いて、明澄な無充填注型品を作成するための前述の手順に従って、明澄な無充填注型品を作成した。後硬化させた、目視によって均質な透明なライトアンバー色の注型品は、9096psi+/−146psiの曲げ強度及び331,990psi+/−6735psiの曲げ弾性率を示した。硬化注型品の部分28.0mg及び27.4mgを用いて行ったDSC分析は、それぞれ51.34℃及び51.43℃(平均51.39℃)のガラス転移温度が得られ、残留硬化エネルギーは観察されなかった。
【0167】
比較実験D−オリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテル並びにオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDAアダクトを用いた明澄な無充填注型品の作成の試み
50℃に予熱した、比較実験AのパートAからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルの一部(27.00g,エポキシ当量0.1698)と、50℃に予熱した、比較実験AのパートBからのオリゴマー成分を含むシス,トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノ及びジグリシジルエーテルのEDTAアダクトの一部(12.31g,アミン水素当量0.1698)を一緒に激しく撹拌した。前述の明澄な無充填注型品の作成に記載した手順に従って、この不均質な混合物を脱ガスし、金型に注入して、明澄な無充填注型品を作成した。しかし、この混合物は金型中で硬化しなかった。後硬化サイクルの完了後に金型を取り外すと、金型中の生成物は半分が液体で、半分がゼラチン状固体であった。
【0168】
実施例5
A.オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの特性決定
エポキシ樹脂のGC分析により、CHDM MGEが3.4面積%(1.02、0.60、1.12及び0.66面積%)、CHDM DGEが93.62面積%(24.16、33.49、10.52及び25.45面積%)、オリゴマー(25種超の微量成分)が2.1面積%であり、残りは数種の微量不純物であることが示された。エポキシ樹脂のアリコートの滴定により、エポキシドが30.37%(EEW141.71)であることが示された。エポキシ樹脂のアリコートの粘度(25℃)は平均で86cpであった。イオン性塩化物及び加水分解性塩化物並びに総塩化物を分析すると、加水分解性塩化物が112ppm、イオン性塩化物が13.9ppm、総塩化物が0.146%であった。GPC分析により、以下の結果が得られた:Mn=247、Mw=364、Mw/Mn=1.47、Mp=197、Mz=754、Mz+1=1602。各ピークのピークウィンドウの積分により、以下の結果が得られた:
【0169】
【表3】

【0170】
B.オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEとDETAとのアダクトの製造と特性決定
500mLの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でDETA(309.43g,3.0モル,アミン水素当量15)を装入した。使用したDETAは、The Dow Chemical Companyから入手した商用グレード製品(D.E.H.(登録商標)20)である。反応器に、凝縮器(−2℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及び電磁撹拌を更に装着した。前述の実施例5のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(21.26g,エポキシ当量0.15)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、40℃の溶液を生成した。40℃の反応温度を保持しながら、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの滴加を開始した。1.3時間後、滴加を完了させた。ライトイエロー色の撹拌溶液を、次の21.5時間、40℃に保持し、続いて回転蒸発によって、過剰DETAの大部分を除去した。真空オーブン中で125℃において、透明なライトイエロー色の液体アダクト生成物が36.07gの一定重量となるまで、更なる乾燥を行った。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、全てのモノ及びジグリシジルエーテルの完全な反応が起こったことが示された。実施例1のパートBの方法を用いたアダクト生成物の滴定により、70.79の平均AHEWが示された。
【0171】
実施例6−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGE並びにオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのDETAアダクトを用いた明澄な無充填注型品の作成
50℃に予熱した、実施例5のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(25.40g,エポキシ当量0.1792)と、50℃に予熱した、実施例5のパートBからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのDETAアダクトの一部(12.69g,アミン水素当量0.1792)を、一緒に激しく撹拌して、わずかに濁りを帯びた溶液を生成した。これを用いて、前述の明澄な無充填注型品の作成に記載された手順に従って、明澄な無充填注型品を作成した。後硬化させた、目視によって均質な透明なライトアンバー色の注型品は、9192psi+/−146psiの曲げ強度及び290,427psi+/−6213psiの曲げ弾性率を示した。硬化注型品の部分28.5mg及び31.7mgを用いて行ったDSC分析は、それぞれ62.48℃及び62.11℃(平均62.30℃)のガラス転移温度を示し、残留硬化エネルギーは観察されなかった。
【0172】
実施例7−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEとAEPとのアダクトの製造及び特性決定
500mLの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でAEP(387.6g,3.0モル,アミン水素当量9)を装入した。使用したAEPは、Aldrich Chemical Companyから入手した商用グレード製品(純度規格値99%)である。反応器に、凝縮器(−2℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及び電磁撹拌を更に装着した。実施例5のパートAからのオリゴマー成分を含むオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(21.26g,エポキシ当量0.15)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、40℃の溶液を生成した。40℃の反応温度を保持しながら、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの滴加を開始した。0.6時間後、滴加を完了させた。イエロー色の撹拌溶液を、次の23.3時間、40℃に保持し、続いて回転蒸発によって、過剰AEPの大部分を除去した。真空オーブン中で125℃において、透明なライトアンバー色の液体アダクト生成物が40.97gの一定重量となるまで、更なる乾燥を行った。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、全てのCHDM MGE及びCHDM DGEの完全な反応が起こったことが示された。実施例1のパートBの方法を用いたアダクト生成物の滴定により、157.51の平均AHEWが示された。
【0173】
実施例8−オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEを、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのAEPアダクトと共に用いた明澄な無充填注型品の作成
50℃に予熱した、実施例5のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(15.7372g,エポキシ当量0.1111)と、50℃に予熱した、実施例7からのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのAEPアダクトの一部(17.4919g,アミン水素当量0.1111)を、一緒に激しく撹拌して、透明な溶液を生成した。これを用いて、明澄な無充填注型品を作成するための前記方法に従って、明澄な無充填注型品を作成した。後硬化させた、目視によって均質な透明なライトアンバー色の注型品は、7551psi+/−110psiの曲げ強度及び238,685psi+/−5274psiの曲げ弾性率を示した。硬化注型品の27.4mg及び29.5mgの部分を用いて行ったDSC分析は、それぞれ49.74℃及び50.41℃(平均50.08℃)のガラス転移温度を示し、残留硬化エネルギーは観察されなかった。
【0174】
実施例9
A.高純度CHDM DGE(オリゴマー成分を含まない)の特性決定
蒸留したエポキシ樹脂のGC分析は、CHDM MGE 2.00面積%、CHDM DGE 96.35面積%(25.61、36.71、11.30及び22.73面積%)を示し、残りは4種の微量不純物であった。このエポキシ樹脂のアリコートの滴定は、エポキシド30.81%(EEW139.66)を示した。
【0175】
B.DETAと高純度CHDM DGEとのアダクトの製造及び特性決定
5Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でDETA(3341.4g,32.39モル,アミン水素当量161.94)を装入した。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)、及びスターラーアセンブリ(テフロン(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。実施例9のパートAからのオリゴマー成分を含まないCHDM DGEの一部(220.6g,エポキシ当量1.6194)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、40℃の溶液を生成した。40℃の反応温度を保持しながら、CHDM DGEの滴加を開始した。8.2時間後、滴加を完了させた。ライトイエロー色の撹拌溶液を、次の48時間、40℃に保持し、続いて回転蒸発によって、過剰DETAの大部分を除去した。140℃において2時間の回転蒸発を完了後、アダクト生成物(386.2g)がライトイエロー色の粘稠な液体として得られた。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、ジグリシジルエーテル(及び微量のモノグリシジルエーテル)の完全な反応が起こったことが示された。実施例1のパートBの方法を用いたアダクト生成物の滴定により、65.22の平均AHEWが示された。
【0176】
実施例10
A.高純度CHDM DGE(オリゴマー成分を含まない)の特性決定
蒸留したエポキシ樹脂のGC分析は、CHDM MGE 1.54面積%、CHDM DGE 96.55面積%(4つの個々の異性体について、28.28、33.54、11.12及び23.61面積%)を示し、残りは6種の微量不純物であった。このエポキシ樹脂のアリコートの滴定は、エポキシド31.58%(EEW136.24)を示した。
【0177】
B.n−ブチルアミンと高純度CHDM DGEとのアダクトの製造及び特性決定
2Lの3口丸底ガラス反応器に、窒素下でn−ブチルアミン(914.25g,12.5モル,アミン水素当量25)を装入した。使用したn−ブチルアミンはAldrich Chemical Companyから入手した商用グレード製品(純度規格値99.5%)である。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1 LPM N2を使用)及びスターラーアセンブリ(テフロン(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した。前述の実施例10のパートAからのオリゴマー成分を含まないCHDM DGEの一部(68.12g,エポキシ当量0.50)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌とサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、40℃の溶液を生成した。40℃の反応温度を保持しながら、CHDM DGEの滴加を開始した。15.6時間後、滴加を完了させた。ライトイエロー色の撹拌溶液を、次の24.4時間、40℃に保持し、続いて回転蒸発によって、過剰n−ブチルアミンの大部分を除去した。110℃において2時間の回転蒸発を完了後、アダクト生成物(104.08g)がライトイエロー色の液体として得られた。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、ジグリシジルエーテル(及び微量のモノグリシジルエーテル)の完全な反応が起こったことが示された。実施例1のパートBの方法を用いたアダクト生成物の滴定により、224.79の平均AHEWが示された。
【0178】
実施例11
A.ルイス酸触媒カップリング及びエポキシ化プロセスからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの特性決定
ルイス酸触媒カップリング及びエポキシ化プロセスからの、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEのGC分析によって、CHDM 0.12面積%、CHDM MGE 7.88面積%(4種の個々の異性体について、2.91、1.41、2.61及び0.95面積%)、CHDM DGE 50.48面積%(4種の個々の異性体について、10.07、18.16、5.35及び16.90面積%)、オリゴマー40.60面積%が示され、残りは微量不純物であった。このエポキシ樹脂のアリコートの滴定により、エポキシドが25.71%(EEW167.39)であることが示された。
【0179】
B.ルイス酸触媒カップリング及びエポキシ化プロセスからのアンモニアとオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEとのアダクトの製造及び特性決定
5リットルの3口丸底ガラス反応器に、窒素下で水酸化アンモニウム(1474.6g,アミン水素当量約75)及びイソプロパノール(1474.6g)を装入した。使用した水酸化アンモニウムは、%NH3としての純度規格値が28〜30の商用グレード製品(Aldrich Chemical Companyから入手)である。反応器に、凝縮器(0℃に保持)、温度計、クライゼンアダプター及びスターラーアセンブリ(テフロン(登録商標)パドル、ガラスシャフト、変速モーター)を更に装着した(注:反応は窒素下ではなく、空気下で行った)。実施例11のパートAからのオリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの一部(167.39g,エポキシ当量1.00)を、サイドアーム付きのベント式添加漏斗に加え、次いで反応器に取り付けた。撹拌及びサーモスタット制御加熱マントルを用いた加熱を開始して、35℃の溶液を生成した。35℃の反応温度を保持しながら、オリゴマー成分を含むCHDM MGE及びCHDM DGEの滴加を開始した。16.3時間後、滴加を完了させた。無色透明な撹拌溶液を次の48時間、35℃に保持し、続いて中間フリットのガラス漏斗に通して濾過し、次いで回転蒸発を行って、過剰水酸化アンモニウムの大部分を除去した。110℃及び1.9mmHgにおいて2時間の回転蒸発を完了させることによって、アダクト生成物(180.76g)が無色透明の液体として得られた。アダクト生成物のアリコートのGC分析から、ジグリシジルエーテル(及び微量のモノグリシジルエーテル)の完全な反応が起こったことが示された。
【0180】
C.DETAとアンモニアアダクトとのブレンドの調製
実施例11のパートBからのアンモニアアダクトを、回転蒸発から得られたまだ温かい状態で、DETA(61.33g,総ブレンドの25.33%)と合し、振盪して、室温への冷却後に均一な透明のペールイエロー色の液体ブレンドを得た。実施例1のパートBの方法を用いたブレンドの滴定により、52.38の平均AHEWが示された。
【0181】
D.DETAとアンモニアアダクトとのブレンドによるDGE BPAの硬化
DGE BPA(3.7614g,エポキシ当量0.02016)と実施例11のパートCからのDETAとアンモニアアダクトとのブレンドの一部(1.0558g、アミン水素当量0.02016)を、アルミニウムパン中で一緒に混合し、室温で硬化させた。後硬化を、100℃で2時間、150℃で2時間及び200℃で2時間行って、透明なアンバー色の硬質注型品を得た。この注型品の部分32.3mg及び33.4mgを用いて行ったDSC分析は、100.3℃及び100.9℃(平均100.6℃)のガラス転移温度を示した。181.21℃及び179.78℃(平均180.50℃)を起点とするわずかな発熱シフトが観察された。
【0182】
本発明の範囲から逸脱しなければ、前記方法において若干の変更が可能であることは、当業者に明らかであろう。従って、開示した本明細書中の事柄は全て、単なる実例であって、請求する保護範囲を制限するものではない。更に、本発明の方法は、前記具体例(具体例が参照する表を含む)によって制限すべきではない。むしろ、これらの例及びこれらの例が参照する表は、本発明の方法の説明に役立つ実例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)と(ii)分子当たり2個又はそれ以上の、エポキシ基と反応性である、反応性水素原子を有する化合物を含む反応性化合物(B)との少なくとも1種の反応生成物を含むアダクト。
【請求項2】
(i)前記エポキシ樹脂材料(A)がシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含むか;(ii)前記エポキシ樹脂材料(A)がシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル及びそれらの1種若しくはそれ以上のオリゴマーを含むか;(iii)前記エポキシ樹脂材料(A)がシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルを含むか;又は前記エポキシ樹脂材料(A)がシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、シス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びそれらの1種若しくはそれ以上のオリゴマーを含む請求項1に記載のアダクト。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂材料(A)が制御された量のシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルを含み;そして前記エポキシ樹脂材料(A)が、エポキシ樹脂材料(A)の総重量に基づき、約0.1〜約90重量%のシス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテル及びトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールのモノグリシジルエーテルを含む請求項2に記載のアダクト。
【請求項4】
前記反応性化合物(B)が(a)ジ−又はポリフェノール、(b)ジ−又はポリカルボン酸、(c)ジ−又はポリメルカプタン、(d)ジ−又はポリアミン、(e)第一モノアミン、(f)スルホンアミド、(g)アミノフェノール、(h)アミノカルボン酸、(i)フェノール性ヒドロキシル含有カルボン酸、(j)スルファニルアミド及び(k)それらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載のアダクト。
【請求項5】
前記反応性化合物(B)がアンモニアを含み;前記アンモニアが液体アンモニア(NH3)又は水酸化アンモニウム(NH4OH)であり;エポキシ樹脂材料(A)に対する反応性化合物(B)の比が約2:1〜約100:1[(反応性化合物(B)中の反応性水素原子の当量)対(エポキシ樹脂材料(A)中のエポキシ基の当量)]である請求項1に記載のアダクト。
【請求項6】
前記アダクトがオリゴマー構造を含むか、又は前記アダクトが分岐した又は架橋したオリゴマー構造を含む請求項1に記載のアダクト。
【請求項7】
(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)、(ii)分子当たり2個又はそれ以上の、エポキシ基と反応性である、反応性水素原子を有する化合物を含む反応性化合物(B)並びに(iii)前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む樹脂化合物(C)の少なくとも1種の反応生成物を含むアダクトの少なくとも1種の反応生成物を含むアダクト。
【請求項8】
(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含む少なくとも1種のエポキシ樹脂材料(A)と(ii)分子当たり2個又はそれ以上の、エポキシ基と反応性である、反応性水素原子を有する化合物を含む反応性化合物(B)とを反応させることを含んでなるアダクトの製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂材料(A)を、(i)反応性化合物(B)と直接一緒に混合するか;(ii)反応性化合物(B)にインクレメント段階で添加するか;又は(iii)反応性化合物(B)に連続的に添加する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂材料(A)が少なくとも1種の溶剤を更に含み;そして/又は反応性化合物(B)が少なくとも1種の溶剤を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(a)アダクト及び(b)樹脂化合物(D)を含んでなる硬化性エポキシ樹脂であって、前記アダクトが(i)シス,トランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメチルエーテル部分を含むエポキシ樹脂材料(A)の少なくとも1種の反応生成物と(ii)分子当たり2個又はそれ以上の、エポキシ基と反応性である、反応性水素原子を有する化合物を含む反応性化合物(B)を含み;前記樹脂化合物(D)が前記エポキシ樹脂材料(A)以外の1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を含む硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記アダクト中の反応性化合物(B)が脂肪族若しくは脂環式ジアミン、脂肪族若しくは脂環式ポリアミン、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸、脂肪族若しくは脂環式アミノカルボン酸、ジアミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、ジアミノジカルボン酸又はそれらの任意の組合せを含み;前記アダクトと前記樹脂化合物(D)の比が約0.60:1〜約1.50:1[(アダクト中の反応性水素原子の当量)対(樹脂化合物(D)中のエポキシ基の当量)]である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
硬化剤及び/又は硬化触媒を更に含み;そして/又は前記アダクトが線状連鎖延長剤を含む請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記線状連鎖延長剤が(i)シス及びトランス−1,3−及び−1,4−シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂材料(A)と(ii)第一モノアミン又は第二ジアミンを含む反応性化合物(B)との反応生成物である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項12に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法。
【請求項16】
前記方法が、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を部分硬化させてB段階生成物を形成し、続いてB段階生成物をその後に完全に硬化させることを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法によって製造された硬化性エポキシ樹脂。
【請求項18】
コーティング;電気用若しくは構造用の積層体;電気用若しくは構造用の複合体;フィラメント巻き線;成形品;注型品;及びカプセル封入品のうちの少なくとも1つである請求項17に記載の硬化エポキシ樹脂を含む物品。

【公表番号】特表2011−521073(P2011−521073A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510550(P2011−510550)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/042643
【国際公開番号】WO2009/142898
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】