説明

エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料

【課題】ハロゲン系難燃材、赤リン、リン酸エステルを含有せずに優れた難燃性を有する複合材料を提供するエポキシ樹脂組成物、ならびに該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。該エポキシ樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。該プリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化複合材料の難燃化方法としては、複合材料のマトリックス樹脂に臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤を配合する方法が広く用いられてきたが、燃焼時に発生するガス等の問題があることから、その代替技術が検討され、採用されるようになっている。
臭素化エポキシ樹脂を代替する難燃化方法として、赤リンやリン酸エステル化合物をエポキシ樹脂に添加する方法(特許文献1)が主流となってきた。
しかし、この方法は、以下の問題が依然として残っていた。
1)機械的強度が低下する。
2)貯蔵安定性が不良である。
3)長期間に亘って赤リンやリン酸エステル化合物が徐々に染み出す。
4)赤リンやリン酸エステル化合物が容易に加水分解されるため、絶縁性や耐水性が高く求められるプリント配線基板や電子材料などでの採用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/082982号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ハロゲン系難燃剤、赤リン、リン酸エステルを含有せずに優れた難燃性を有する複合材料を提供するエポキシ樹脂組成物、ならびに該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【0006】
【化1】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【0007】
【化2】

【0008】
[2]下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
下記式(b)で示される化合物(b)からなるリン含有エポキシ樹脂(B)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とし、
前記(B)と前記(C)の質量比が2:8〜7:3であるエポキシ樹脂組成物。
【0009】
【化3】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【0010】
【化4】

【0011】
【化5】

[式中、X’、X’は、それぞれ独立して、前記式(I)、(II)または(III)で示される基である。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全X’、X’のうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Zは−CH−、−C(CH−または−SO−である。]
【0012】
[3]下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【0013】
【化6】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【0014】
【化7】

【0015】
[4]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、10〜50質量%である[1]〜[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、19〜50質量%である[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、19〜31質量%である[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、15〜30質量%である[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、17〜25質量%である[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[9]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、35〜60質量%である[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、15〜40質量%である[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[11]前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、17〜31質量%である[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[12]炭素繊維に[1]〜[11]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグ。
[13]炭素繊維に[1]〜[11]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料。
[14]炭素繊維に[1]〜[11]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、0.6mm厚の成形板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0である繊維強化複合材料。
[15]炭素繊維に[1]〜[11]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、2mm厚の樹脂板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0またはV−1である繊維強化複合材料。
[16]炭素繊維に[1]〜[11]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、2mm厚の樹脂板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0である繊維強化複合材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料は、ハロゲン系難燃剤、赤リン、リン酸エステルを含有せずに優れた難燃性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、詳細に説明する。
≪第一の態様のエポキシ樹脂組成物≫
本発明の第一の態様のエポキシ樹脂組成物は、以下のリン含有エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とする。
本明細書および特許請求の範囲において、「エポキシ樹脂」は、エポキシ基を1個以上有する化合物である。
【0018】
<リン含有エポキシ樹脂(A)>
リン含有エポキシ樹脂(A)は、下記式(a)で示される化合物(a)からなる。
【0019】
【化8】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【0020】
【化9】

【0021】
式(a)中、nは1以上の整数であり、1〜10の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましい。10以下であれば耐熱性と流動性のバランスに優れる。
リン含有エポキシ樹脂(A)は、式(a)中の(n+2)個のXのうちの一部が前記式(I)または(II)で示される基であり、一部が前記式(III)で示される基である化合物のみから構成されてもよく、式(a)中の(n+2)個のXのうちの一部または全部が前記式(I)または(II)で示される基である化合物と、全部が前記式(III)で示される基である化合物との混合物であってもよい。
リン含有エポキシ樹脂(A)のリン含有率は、1〜8質量%が好ましい。該リン含有率が高いほど、得られる樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。該リン含有率が低いほど、得られる樹脂組成物の耐熱性が向上する。
【0022】
リン含有エポキシ樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、公知の製造方法により合成したものを用いてもよい。
市販品としては、たとえば東都化成株式会社製FX−289FAが挙げられる。
リン含有エポキシ樹脂(A)の製造方法としては、たとえば、式(a)中の(n+2)個のXのすべてが式(III)で示される基であるエポキシ樹脂(たとえばフェノールノボラック型エポキシ樹脂またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)に、下記式(c)で表される化合物(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、DOPOということがある。))を高温・触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。このとき、DOPOの使用量は、反応後、原料のエポキシ樹脂中のエポキシ基の一部が残存する量とする。
【0023】
【化10】

【0024】
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるリン含有エポキシ樹脂(A)は1種でも2種以上でもよい。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、10〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、19〜50質量%がさらに好ましく、19〜31質量%が特に好ましい。10質量%以上とすることでエポキシ樹脂組成物のリン含有率が高まり、充分な難燃性を付与することができる。50質量%以下であればエポキシ樹脂組成物に適度な粘性、取扱性を付与することができる。
エポキシ樹脂組成物のリン含有率は、0.5〜3質量%が好ましく、1〜2.5質量%がより好ましい。
また、本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂(後述するノボラック型エポキシ樹脂(C)、その他のエポキシ樹脂等)の合計量100質量%に対し、35〜60質量%が好ましく、35〜50質量%がより好ましい。この範囲内であると、樹脂硬化物の靭性と耐熱性と難燃性を高度にそれぞれ達成できる。
【0025】
<ノボラック型エポキシ樹脂(C)>
ノボラック型エポキシ樹脂(C)としては、リンを含有しないものであればよく、特に限定されないが、化学構造上、難燃性に優れるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種が好適である。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるノボラック型エポキシ樹脂(C)は1種でも2種以上でもよい。
【0026】
<その他のエポキシ樹脂(G)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記リン含有エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、および後述するリン含有エポキシ樹脂(B)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)以外の他のエポキシ樹脂(G)を含有することができる。
このようなエポキシ樹脂(G)として、たとえばビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。中でもビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0027】
<エポキシ樹脂用硬化剤(D)>
エポキシ樹脂用硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよく、公知の硬化剤が使用可能である。具体例として、アミン、酸無水物、ノボラック樹脂、フェノール、メルカプタン、ルイス酸アミン錯体、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、アミン型の硬化剤が好ましい。アミン型の硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミンなど、およびそれらの異性体、変成体を用いることができる。これらのなかでもジシアンジアミドは、プリプレグの保存性に優れるため特に好ましい。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂用硬化剤(D)の配合量は、エポキシ樹脂用硬化剤(D)以外のエポキシ樹脂組成物のエポキシ当量に対する当該エポキシ樹脂用硬化剤(D)の活性水素当量の比が0.5〜1となる量が好ましい。該比は0.6〜0.8がより好ましい。0.5以上にすることで充分に硬化することができる。1以下にすることで硬化物の靭性を高くできる。
【0028】
<硬化促進剤(E)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤(E)を含有してもよい。硬化促進剤(E)としては、使用するエポキシ樹脂硬化剤(D)による硬化反応を促進する効果を有するものであればよく、特に制限するものではない。このような硬化促進剤(E)として、たとえばエポキシ樹脂用硬化剤(D)がジシアンジアミドである場合、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン等の尿素誘導体が好ましい。また、エポキシ樹脂用硬化剤(D)が酸無水物やノボラック樹脂である場合、三級アミンが好ましい。また、エポキシ樹脂用硬化剤(D)がジアミノジフェニルスルホンである場合、イミダゾール化合物、フェニルジメチルウレア(PDMU)等のウレア化合物、三フッ化モノエチルアミン、三塩化アミン錯体等のアミン錯体が好ましい。これらの中でもジシアンジアミドとDCMUの組み合わせが特に好ましい。
【0029】
<熱可塑性樹脂>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂を含有してもよい。
熱可塑性樹脂の種類については特に限定されず、たとえばポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ABS、AES、ASA、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフォルマール等が挙げられる。中でも硬化物の耐熱性、靭性に優れる点から、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルフォルマールから選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0030】
<添加剤>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の様々な添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、たとえば、シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン類等の離型剤、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤等を使用することができる。
【0031】
≪第二の態様のエポキシ樹脂組成物≫
本発明の第二の態様のエポキシ樹脂組成物は、以下のリン含有エポキシ樹脂(A)、リン含有エポキシ樹脂(B)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とし、前記(B)と前記(C)の質量比が2:8〜7:3である。
【0032】
<リン含有エポキシ樹脂(A)>
本態様に用いられるリン含有エポキシ樹脂(A)としては、前記第一の態様で挙げたリン含有エポキシ樹脂(A)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるリン含有エポキシ樹脂(A)は1種でも2種以上でもよい。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、10〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、19〜50質量%がさらに好ましく、19〜31質量%が特に好ましい。10質量%以上とすることでエポキシ樹脂組成物のリン含有率が高まり、充分な難燃性を付与することができる。50質量%以下であればエポキシ樹脂組成物に適度な粘性、取扱性を付与することができる。
エポキシ樹脂組成物のリン含有率は、0.5〜3質量%が好ましく、2〜2.8質量%がより好ましい。
また、本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂(後述するリン含有エポキシ樹脂(B)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、その他のエポキシ樹脂等)の合計量100質量%に対し、35〜60質量%が好ましく、35〜50質量%がより好ましい。この範囲内であると、樹脂硬化物の靭性と耐熱性と難燃性を高度にそれぞれ達成できる。
【0033】
<リン含有エポキシ樹脂(B)>
リン含有エポキシ樹脂(B)は、下記式(b)で示される化合物(b)からなる。
【0034】
【化11】

[式中、X’、X’は、それぞれ独立して、前記式(I)、(II)または(III)で示される基である。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全X’、X’のうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Zは−CH−、−C(CH−または−SO−である。]
【0035】
リン含有エポキシ樹脂(B)は、X’、X’のうちの一方が前記式(I)または(II)で示される基であり、他方が式(III)で表される化合物のみから構成されてもよく、X’、X’のうちの一方または両方が前記式(I)または(II)で示される基である化合物と、両方が前記式(III)で示される基である化合物との混合物であってもよい。
リン含有エポキシ樹脂(B)は、市販品を用いてもよく、公知の製造方法により合成したものを用いてもよい。
市販品としては、たとえば東都化成株式会社製FX−289Z−1が挙げられる。
リン含有エポキシ樹脂(B)の製造方法としては、たとえば、式(b)中のX’、X’の両方が式(III)で示される基であるエポキシ樹脂(たとえばビスフェノール型エポキシ樹脂)に、前記式(c)で表される化合物(DOPO)を高温・触媒存在下で反応させる方法が挙げられる。このとき、DOPOの使用量は、反応後、原料のエポキシ樹脂中のエポキシ基の一部が残存する量とする。
【0036】
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるリン含有エポキシ樹脂(B)は1種でも2種以上でもよい。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(B)の配合量は、当該リン含有エポキシ樹脂(B)と後述するノボラック型エポキシ樹脂(C)の質量比((B):(C))が2:8〜7:3の範囲内となる量である。リン含有エポキシ樹脂(B)を、該質量比が2:8となるより多く配合することで、エポキシ樹脂組成物に適度な粘性を付与することができる。逆に、リン含有エポキシ樹脂(B)を、該質量比が7:3となるより少なく配合することで、エポキシ樹脂組成物を成形して得られる複合材料の機械強度の低下を防ぐことができる。
【0037】
<ノボラック型エポキシ樹脂(C)>
本態様に用いられるノボラック型エポキシ樹脂(C)としては、前記第一の態様で挙げたノボラック型エポキシ樹脂(C)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるノボラック型エポキシ樹脂(C)は1種でも2種以上でもよい。
【0038】
<その他のエポキシ樹脂(G)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記リン含有エポキシ樹脂(A)、リン含有エポキシ樹脂(B)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、および後述するトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)以外の他のエポキシ樹脂(G)を含有することができる。
このようなエポキシ樹脂(G)としては、前記第一の態様で挙げたエポキシ樹脂(G)と同様のものが挙げられる。
【0039】
<エポキシ樹脂用硬化剤(D)>
エポキシ樹脂用硬化剤(D)としては、前記第一の態様で挙げたエポキシ樹脂硬化剤(D)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂用硬化剤(D)の配合量は、エポキシ樹脂用硬化剤(D)以外のエポキシ樹脂組成物のエポキシ当量に対する当該エポキシ樹脂用硬化剤(D)の活性水素当量の比が0.5〜1となる量が好ましい。該比は0.6〜0.8がより好ましい。0.5以上にすることで充分に硬化することができる。1以下にすることで硬化物の靭性を高くできる。
【0040】
<硬化促進剤(E)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤(E)を含有してもよい。硬化促進剤(E)としては、前記第一の態様で挙げた硬化促進剤(E)と同様のものが挙げられる。
【0041】
<熱可塑性樹脂>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂を含有してもよい。
熱可塑性樹脂の種類については特に限定されず、たとえば、前記第一の態様で挙げた熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
【0042】
<添加剤>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の様々な添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、たとえば、前記第一の態様で挙げた添加剤と同様のものが挙げられる。
【0043】
≪第三の態様のエポキシ樹脂組成物≫
本発明の第三の態様のエポキシ樹脂組成物は、以下のリン含有エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とする。
【0044】
<リン含有エポキシ樹脂(A)>
本態様に用いられるリン含有エポキシ樹脂(A)としては、前記第一の態様で挙げたリン含有エポキシ樹脂(A)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるリン含有エポキシ樹脂(A)は1種でも2種以上でもよい。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、10〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましく、17〜25質量%が特に好ましい。10質量%以上とすることでエポキシ樹脂組成物のリン含有率が高まり、充分な難燃性を付与することができる。50質量%以下であればエポキシ樹脂組成物に適度な粘性、取扱性を付与することができる。
エポキシ樹脂組成物のリン含有率は、0.5〜3質量%が好ましく、1〜2質量%がより好ましい。
また、本態様のエポキシ樹脂組成物中、リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量は、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂(後述するノボラック型エポキシ樹脂(C)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)、その他のエポキシ樹脂等)の合計量100質量%に対し、15〜40質量%が好ましく、17〜31質量%がより好ましい。この範囲内であると、樹脂硬化物の靭性と耐熱性と難燃性とをそれぞれ高度に達成できる。
【0045】
<ノボラック型エポキシ樹脂(C)>
本態様に用いられるノボラック型エポキシ樹脂(C)としては、前記第一の態様で挙げたノボラック型エポキシ樹脂(C)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるノボラック型エポキシ樹脂(C)は1種でも2種以上でもよい。
【0046】
<トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)>
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)としては、たとえば、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのグリシジルエーテル等が挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中に含まれるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)は1種でも2種以上でもよい。
【0047】
<その他のエポキシ樹脂(G)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記リン含有エポキシ樹脂(A)、リン含有エポキシ樹脂(B)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)およびトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)以外の他のエポキシ樹脂(G)を含有することができる。
このようなエポキシ樹脂(G)としては、前記第一の態様で挙げたエポキシ樹脂(G)と同様のものが挙げられる。
【0048】
<エポキシ樹脂用硬化剤(D)>
エポキシ樹脂用硬化剤(D)としては、前記第一の態様で挙げたエポキシ樹脂硬化剤(D)と同様のものが挙げられる。
本態様のエポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂用硬化剤(D)の配合量は、エポキシ樹脂用硬化剤(D)以外のエポキシ樹脂組成物のエポキシ当量に対する当該エポキシ樹脂用硬化剤(D)の活性水素当量の比が0.5〜1となる量が好ましい。該比は0.6〜0.8がより好ましい。0.5以上にすることで充分に硬化することができる。1以下にすることで硬化物の靭性を高くできる。
【0049】
<硬化促進剤(E)>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤(E)を含有してもよい。硬化促進剤(E)としては、前記第一の態様で挙げた硬化促進剤(E)と同様のものが挙げられる。
【0050】
<熱可塑性樹脂>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂を含有してもよい。
熱可塑性樹脂の種類については特に限定されず、たとえば、前記第一の態様で挙げた熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
【0051】
<添加剤>
本態様のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の様々な添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、たとえば、前記第一の態様で挙げた添加剤と同様のものが挙げられる。
【0052】
≪エポキシ樹脂組成物の調製方法≫
前記第一〜第三の態様のエポキシ樹脂組成物は、それぞれ、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法としては、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、万能かくはん機、ホモジナイザー、ホモディスパーなどの混合機を用いる方法が挙げられる。
【0053】
≪プリプレグ≫
前記第一〜第三の態様のエポキシ樹脂組成物は、それぞれ、強化繊維に含浸させてプリプレグとして使用することができる。
強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、高強度ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維などの各種の無機繊維または有機繊維を用いることができる。中でも難燃性の観点から、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維が好ましく、比強度および比弾性に優れる点から炭素繊維が特に好ましい。
強化繊維の形態としては、一方向に引き揃えてもよく、織物、またノンクリンプファブリックでもよい。
プリプレグは、前記第一〜第三のいずれか一態様のエポキシ樹脂組成物と前記強化繊維とを用いて、公知の方法で製造することができる。
【0054】
≪繊維強化複合材料≫
繊維強化複合材料は、前記プリプレグを硬化して得られる。
本発明において、繊維強化複合材料は、強化繊維として炭素繊維を含む炭素繊維強化複合材料であることが好ましい。
該炭素繊維強化複合材料によれば、優れた難燃性(たとえば0.6mm厚の繊維強化複合材料成形板としたときの難燃性がUL−94VでV−0)と機械特性とを両立できる。
【実施例】
【0055】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
以下の各例で使用した原料(樹脂等)、評価方法を以下に示す。
<原料(樹脂等)>
リン含有エポキシ樹脂(A)、リン含有エポキシ樹脂(B)、ノボラック型エポキシ樹脂(C)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)、その他のエポキシ樹脂(G)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)、硬化促進剤(E)として、表1に記載の製品を用意した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示す原料のうち、エポキシ樹脂(A−1、B−1、C−1〜C−3、F−1、G−1)のエポキシ当量(g/eq)、リン含有率(質量%)はそれぞれ以下の通りのものを用意した。
A−1:エポキシ当量7740g/eq、リン含有率7.4質量%。
B−1:エポキシ当量227g/eq、リン含有率2.0質量%。
C−1:エポキシ当量177g/eq、リン含有率0質量%。
C−2:エポキシ当量188g/eq、リン含有率0質量%。
C−3:エポキシ当量172g/eq、リン含有率0質量%。
F−1:エポキシ当量169g/eq、リン含有率0質量%。
G−1:エポキシ当量189g/eq、リン含有率0質量%。
また、D−1の活性水素当量は、分子式中の水素数と分子量から21g/eqと計算された。
【0058】
<評価>
(1)ガラス転移温度Tgの測定:
測定機器はTAインスツルメント社製ARES−RDSを用いた。
2mm厚の樹脂板を試験片(長さ55mm×幅12.7mm)に加工し、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、貯蔵弾性率G’を温度に対して対数プロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点から求まる温度をガラス転移温度(G’−Tg)として記録した。
【0059】
(2)樹脂板の曲げ物性の測定:
2mm厚の樹脂板を試験片(長さ60mm×幅8mm)に加工し、3点曲げ治具(圧子、サポートとも3.2mmR、サポート間距離32mm)を設置したインストロン社製万能試験機を用い、クロスヘッドスピード2mm/分の条件で曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率、最大荷重時伸度、破断伸度)を測定した。
【0060】
(3)UL−94V燃焼試験(樹脂板):
2mm厚の樹脂板を試験片(長さ127mm×幅12.7mm)に加工し、スガ試験機製燃焼試験機を用いてUL−94V規格に従って燃焼試験を実施した。総燃焼時間[秒]と判定結果[V−0、V−1またはV−2]を記録した。
【0061】
(4)UL−94V燃焼試験(炭素繊維複合材料板):
0.6mm厚の炭素繊維複合材料板([0/90]s)を試験片(長さ127mm×幅12.7mm)に加工し、スガ試験機製燃焼試験機を用いてUL−94V規格に従って燃焼試験を実施した。総燃焼時間[秒]と判定結果[V−0、V−1またはV−2]を記録した。
【0062】
(実施例1)
C−1の17.5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の60質量部、C−1の82.5質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。
【0063】
得られたエポキシ樹脂組成物を2mm厚のポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注入、130℃×2時間、昇温速度2℃/分の硬化条件で加熱硬化し、2mm厚の樹脂板を得た。
【0064】
得られたエポキシ樹脂組成物を、(株)ヒラノテクシード製M−500コンマコーターでフィルム状にし、40g/mのレジンフィルムを作製した。このレジンフィルムと三菱レイヨン(株)製炭素繊維TR50S15Lを用い、ドラムワインド方式によって繊維目付150g/m、樹脂含有率35質量%の炭素繊維プリプレグを得た。
得られた炭素繊維プリプレグを200mm×200mmの大きさにカットし、繊維方向が[0°/90°]s=0°/90°/90°/0°となるように4枚積み重ね、130℃×90分、昇温速度2℃/分、圧力0.6MPaの条件でオートクレーブにて硬化し0.6mm厚の炭素繊維複合材料板([0/90]s)を得た。
【0065】
得られた樹脂板、炭素繊維複合材料板について、(1)ガラス転移温度Tgの測定、(2)樹脂板の曲げ物性の測定、(3)UL−94V燃焼試験(樹脂板)、(4)UL−94V燃焼試験(炭素繊維複合材料板)を実施した。結果を表2に合わせて示した。
【0066】
(実施例2、3)
組成比を表2に示すように替えた他は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調整した。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例1と同様に行った。表2に評価結果を合わせて示した。
【0067】
(実施例4)
C−1の17.5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の50質量部、C−1の67.5質量部、G−1の15質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例1と同様に行った。表2に評価結果を合わせて示した。
【0068】
(実施例5)
C−1をC−3に替え、組成比を表2に示すように替えた他は実施例4と同様にして、エポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例1と同様に行った。表2に評価結果を合わせて示した。
【0069】
(実施例6)
C−3の17.5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の32質量部、C−3の50.5質量部、F−1の17質量部、G−1の15質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例1と同様に行った。表2に評価結果を合わせて示した。
【0070】
(実施例7、8)
組成比を表2に示すように替えた他は実施例6と同様にして、エポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例1と同様に行った。表2に評価結果を合わせて示した。
これらのうち、実施例8の樹脂板は、総燃焼時間はV−0の規定を満たしていたが、5片の試験片それぞれの燃焼時間うち、最大の燃焼時間が12秒であったため、V−1と判定された。表2中の※(maxが12秒)は、最大の燃焼時間が12秒であったことを示す。
【0071】
(実施例9)
C−1の17.5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の35質量部とB−1の50質量部、C−1の10質量部、C−2の22.5質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物得た。
【0072】
得られたエポキシ樹脂組成物を2mm厚のポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注入、130℃×2時間、昇温速度2℃/分の硬化条件で加熱硬化し、2mm厚の樹脂板を得た。
【0073】
得られたエポキシ樹脂組成物を、(株)ヒラノテクシード製M−500コンマコーターでフィルム状にし、40g/mのレジンフィルムを作製した。このレジンフィルムと三菱レイヨン(株)製炭素繊維TR50S15Lを用い、ドラムワインド方式によって繊維目付150g/m2、樹脂含有率35質量%の炭素繊維プリプレグを得た。
得られた炭素繊維プリプレグを200mm×200mmの大きさにカットし、繊維方向が[0°/90°]s=0°/90°/90°/0°となるように4枚積み重ね、130℃×90分、昇温速度2℃/分、圧力0.6MPaの条件でオートクレーブにて硬化し0.6mm厚の炭素繊維複合材料板([0/90]s)を得た。
【0074】
得られた樹脂板、炭素繊維複合材料板について、(1)ガラス転移温度Tgの測定、(2)樹脂板の曲げ物性の測定、(3)UL−94V燃焼試験(樹脂板)、(4)UL−94V燃焼試験(炭素繊維複合材料板)を実施した。結果を表3に合わせて示した。
【0075】
(実施例10)
C−1の12.5質量部、G−1の5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の35質量部とB−1の50質量部、C−2の22.5質量部、G−1の10質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例9と同様に行った。表3に評価結果を合わせて示した。
【0076】
(実施例11〜13)
組成比を表3に示すように替えた他は実施例9と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例9と同様に行った。表3に評価結果を合わせて示した。
【0077】
(比較例1〜3)
組成比を表3に示すように替えた他は実施例9と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。ただし、A−1を含まない組成では、混合温度を90℃にした。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例9と同様に行った。表3に評価結果を合わせて示した。
【0078】
(比較例4)
B−1の17.5質量部、D−1の7.5質量部、E−1の5質量部を容器に計量し攪拌、混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合し、硬化剤マスターバッチを得た。
A−1の35質量部とB−1の82.5質量部をフラスコに計量し、オイルバスを用いて150℃に加熱し溶解混合した。その後60℃程度まで冷却し、前記硬化剤マスターバッチを攪拌混合することによりエポキシ樹脂組成物を得た。樹脂板の作製、プリプレグの作製、炭素繊維複合材料板の作製およびそれらの評価は実施例9と同様に行った。表3に評価結果を合わせて示した。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグによれば、ハロゲン系難燃剤、赤リン、リン酸エステルを含有せずに優れた難燃性を有する複合材料を提供できる。
本発明の繊維強化複合材料によれば、優れた難燃性(たとえば0.6mm厚の繊維強化複合材料成形板としたときの難燃性がUL−94VでV−0)と機械特性とを両立できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【化2】

【請求項2】
下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
下記式(b)で示される化合物(b)からなるリン含有エポキシ樹脂(B)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とし、
前記(B)と前記(C)の質量比が2:8〜7:3であるエポキシ樹脂組成物。
【化3】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【化4】

【化5】

[式中、X’、X’は、それぞれ独立して、前記式(I)、(II)または(III)で示される基である。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全X’、X’のうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Zは−CH−、−C(CH−または−SO−である。]
【請求項3】
下記式(a)で示される化合物(a)からなるリン含有エポキシ樹脂(A)、
ノボラック型エポキシ樹脂(C)、
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(F)、
エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【化6】

[式中、nは1以上の整数である。Xは下記式(I)、(II)または(III)で示される基であり、式中の(n+2)個のXはそれぞれ同じであっても異なってもよい。ただし、当該エポキシ樹脂組成物中の全Xのうちの少なくとも1つは前記式(I)または(II)で示される基であり、少なくとも1つは前記式(III)で示される基である。Yは−Hまたは−CHであり、式中の(n+2)個のYはそれぞれ同じであっても異なってもよい。]
【化7】

【請求項4】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、10〜50質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、19〜50質量%である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、19〜31質量%である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、15〜30質量%である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物の総質量に対し、17〜25質量%である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、35〜60質量%である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、15〜40質量%である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記リン含有エポキシ樹脂(A)の配合量が、当該エポキシ樹脂組成物中に含まれる、該リン含有エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂の合計量100質量%に対し、17〜31質量%である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
炭素繊維に請求項1〜11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグ。
【請求項13】
炭素繊維に請求項1〜11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料。
【請求項14】
炭素繊維に請求項1〜11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、0.6mm厚の成形板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0である繊維強化複合材料。
【請求項15】
炭素繊維に請求項1〜11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、2mm厚の樹脂板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0またはV−1である繊維強化複合材料。
【請求項16】
炭素繊維に請求項1〜11のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化して得られ、2mm厚の樹脂板としたときの難燃性が、UL−94VでV−0である繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2011−26554(P2011−26554A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123147(P2010−123147)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】