説明

エレクトロルミネッセンス表示装置

表示する情報を規定するマスク(13)の後ろに装着される切換え可能なエレクトロルミネッセンス(EL)材料バックライト(16)を有するタイプのエレクトロルミネッセンス表示装置であって、マスクは、表示する情報を規定するために切換え可能な物理的に安定した液晶(LC)材料の層(14)として構成され、LCマスクおよびELバックライトは、単一物として構成される。LCマスクは、ELバックライト上に直接形成してもよいし、LCマスクとELバックライトの間に絶縁性層間層(10)があってもよい。LCマスクおよびELバックライトは1対の共通電極(11、20)の間に保持されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、エレクトロルミネッセンス表示装置に関し、より詳しくは、エレクトロルミネッセンス/液晶ハイブリッド表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス材料という材料が存在する。すなわち、その材料に電界が発生すると発光し、光るという材料である。最初に知られたエレクトロルミネッセンス材料は、硫化亜鉛などの無機微粒子物質であったが、最近発見されたエレクトロルミネッセンス材料は、有機発光ダイオード(OLED)として知られている多くの小分子有機発光体および発光ポリマー(LEP)として知られている数種のプラスチック(合成有機ポリマー物質)などである。無機微粒子は、ドープされカプセル化された形態で依然として用いられており、特に、バインダーと混合され、比較的厚い層として基板表面に適用されるときに用いられている。LEPは、バインダーマトリックス中の微粒子材料として、または、より好ましくは単独で比較的薄い連続膜としてのいずれでも用いることができる。
【0003】
このエレクトロルミネッセンス効果は、表示装置の構築において使われてきた。表示装置の中には、一般に、この場合、蛍光体と呼ばれているエレクトロルミネッセンス(EL)材料を大領域に備えた、表示装置に表示されるあらゆる文字を規定するマスクを通して見ることができるバックライトを形成するタイプのものもあれば、EL材料が個々の小領域に用いられているタイプもある。これらのタイプのいずれの表示装置も多くの応用があり、たとえば、単純なデジタル時間および日付表示装置(腕時計または置き時計に用いられる)、携帯電話表示装置、家電機器(食器洗浄機または洗濯機)の制御パネル、携帯用リモコン(テレビ、ビデオまたはDVDプレイヤー、デジボックス、ステレオまたはミュージックセンターもしくは類似の娯楽装置用)などである。
【0004】
上記のように、エレクトロルミネッセンス効果は、表示装置を規定するマスクを通して輝くことができるバックライトを生成するために用いることができる。このようなバックライトは、前面(見る側)から背面の順に、通常、以下のものからなる。
【0005】
基板として知られ、通常、ガラスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などのプラスチックからなる比較的厚い電気絶縁性透明前面保護膜;
基板の裏面の全面にわたる、インジウム錫酸化物(ITO)などの材料からなり、バックライトの一方の電極(前面電極)を形成する比較的薄い透明導電膜;
前面電極の裏面を覆った、エレクトロルミネッセンス蛍光材料(通常、バインダーマトリックス内の微粒子蛍光体)の比較的薄い層;
蛍光層の裏面にわたる、約50という比較的高い誘電率(比誘電率)を有する材料(通常セラミック)の比較的薄い電気絶縁層(この層は、たとえば、本発明のような応用では、光反射が顕著であるのが非常に望ましいが、応用によっては、低反射率が好ましい場合もある。);
電気絶縁層の裏面の全面を覆う、通常、不透明(かつ典型的には炭素または銀)の、バックライトの他方の電極(バック電極)を形成する連続導電膜。
【0006】
さらに、かなり繊細なバック電極層は、通常、たとえば、表示装置の後ろに搭載され得る電気回路のようないかなる装置構成要素との接触によっても損傷しないように、保護膜(ある応用では、通常、もう1層の同様のセラミック層であったり、また、別の応用では、本発明のように、柔軟なポリマー材料であることが好ましい場合もある)で覆われる。
【0007】
当業者に知られている種々の技術がこのような装置を構築するために用いられ得る。しかし、多様な層のそれぞれは、層の構成要素の形状、サイズおよび位置を規定するマスクを介して所定の位置にスクリーン印刷されるのが好ましい(但し、ITO前面電極を除く。この電極は通常、基板にスパッタリングされる)。スクリーン印刷は、適切なペーストを用い、次にこれを乾燥し、通常、適宜、熱または紫外光により凝固または硬化させてから、次の一層または複数の層を適用する。そして、エレクトロルミネッセンス表示装置においては、「比較的厚い」および「比較的薄い」という表現は、それぞれ、「比較的厚い」が30から300マイクロメートルの範囲の厚さを意味し、通常、約100マイクロメートル近傍、また、「比較的薄い」が50マイクロメートル、最も普通の場合、25マイクロメートル以下である。
【0008】
表示装置において、このようなバックライトは、一般的に、マスクの後方に配置されている。典型的には、このようなマスクは、不変の、すなわち、固定され、予め規定された透過領域および遮断領域を含んでいる。このような表示装置の切換えは、バックライトまたはその一部をオンまたはオフすることによって制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の態様においては、表示する情報を規定するマスクの後ろに装着される切換え可能なエレクトロルミネッセンス(EL)材料のバックライトを有するタイプのエレクトロルミネッセンス表示装置であって、
マスクは、表示する情報を規定するために切換え可能な物理的に安定した液晶(LC)材料の層として構成され、
LCマスクおよびELバックライトは、単一物として構成され、ELバックライトは、LC材料の層の上に直接/後ろに装着される層として形成されるエレクトロルミネッセンス表示装置。
【0010】
本発明は、本質的には、マスクおよび個々の小さな点灯領域という2つのアプローチを組み合わせ、以下にさらに詳細に説明するように、本発明は、マスクを規定するために用いられることができ、選択可能な領域を透明と不透明との間で任意に切り換えることができる、特定の物性を有する液晶(LC)と、ほとんどのバックライトとは違い、LCマスクの、その時透明である領域の下でのみ起動(発光)するELバックライトとの組み合わせである表示装置を提案する。
【0011】
LC材料とEL材料との組み合わせである、このような表示装置は、便宜上ここでは「ハイブリッド」表示装置と呼ぶ。より詳しくは、これは、1つの基板を用いて、まず、表示する情報を規定するマスクを形成するように切換え可能な物理的に安定したLC材料の層と、次に、LC層上に直接形成され、それを通して見ることができる、表示装置のためのバックライトとして作用するように切換え可能なEL材料層とを備えたものとして定義され得る。
【0012】
本発明が提案しているのは、マスク自体が、個々の領域において、オン/透明(従って、バックライトはそれを通して光っている)と、オフ/不透明(従って、バックライトの光はそれにより遮断されている)との間で切換え可能(switchable)であることである。さらに、本発明は、この切換え可能マスクが、上記のように透明または不透明になることができるLCD(液晶表示装置)であることを提案する。さらに、LCDマスクとELバックライトが、ハイブリッドとして、すなわち、両構成要素からなり、1つの基板上で一方が他方の後ろで支えられている単一物として作成され、ELバックライトは、LC材料の層の上に直接/後ろに装着されるエレクトロルミネッセンス材料層として形成されることが提案されている。このことから、LC材料は通常の「液」という用語において、この名称が暗示する形態である移動的というより、むしろ物理的に安定した形態を有するということが重要であると理解される。
【0013】
本発明の第2の態様においては、表示する情報を規定するマスクの後ろに装着される切換え可能なエレクトロルミネッセンス(EL)材料のバックライトを有するタイプのエレクトロルミネッセンス表示装置であって、
マスクは、表示する情報を規定するために切換え可能な物理的に安定した液晶(LC)材料の層として構成され、
LCマスクおよびELバックライトは、単一物として構成されるエレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
【0014】
LCマスクは、LC材料の層の上に直接/後ろに装着された層として作成することができるが、LCマスクとELバックライトとの間に典型的には絶縁ポリマーを含む絶縁性層間層を設けてもよい。
【0015】
層間層は、少なくともEL材料によって発せられる光の波長に対し実質的に光学的に透明であることが好ましく、電気絶縁性を有することが好ましい。この「連結」層は、必要に応じて、表示装置のこの2つの部分の間の接着力を増加させる働きがある。この層のさらなる利点は、その厚みを制御することによってLCおよびEL材料に印加する電圧を調整し、これによって表示装置の全体的な性能を最適化することができることである。EL、LC層と層間層材料の相対的な厚みと、それらの相対的な誘電率によって、各層間の電圧の降下の程度を制御することができる。
【0016】
次に説明する随意の要件も、特段に断りがない限り、本発明の第1または第2の態様にうまく適用され得る。いずれの態様の場合においても、ELおよびLC材料は、一緒に形成および駆動することができ、したがって、本発明の表示装置は、製造および操作が簡便である。
【0017】
さらに、光透過性のLC材料部分の後ろにあるEL材料領域しか点灯する必要がない。これによって、典型的に、いかなる時にも点灯に必要なEL材料の量を減らすことができるので、表示装置のエネルギー消費が減少する。
【0018】
上記で従来のELバックライトの構造を説明するために用いたのと同じ用語を用いて、本発明のハイブリッド表示装置の構造の、少なくとも、好ましい態様を、前面から背面の順に同様に説明する。
【0019】
比較的厚い電気絶縁性透明前面保護層(基板);
基板の裏面の少なくとも一部にわたる(領域規定パターンでもよい)、表示装置の一方の電極(前面電極)を形成する比較的薄い透明導電膜;
前面電極の裏面の少なくとも一部を覆う、表示情報を規定するマスクを形成するために切換え可能(透明と不透明間)な、物理的に安定した液晶材料の比較的薄い層;
任意の、液晶層上に直接形成され、液晶層の裏面を少なくとも一部覆う、構成物の2つの「アクティブ」部分間の界面となる、光学的に透明で電気絶縁性の比較的薄い層;
絶縁層上に直接形成され、絶縁層の裏面の少なくとも一部を覆うか、または絶縁層が存在しない場合には、液晶層上に直接形成され、液晶層の裏面を覆う、エレクトロルミネッセンス/蛍光体材料の比較的薄い層;
蛍光体層の裏面にわたる、比較的高誘電率材料の比較的薄い光反射性電気絶縁層;および
反射性電気絶縁層の裏面の少なくとも一部にわたり配置された、表示装置の他方の電極を形成する導電膜(領域規定パターンでもよい);
前面及び背面電極は協働して、オンまたはオフに切り換えるために選択し得る液晶層およびエレクトロルミネッセンス層の両層の領域を規定する。
【0020】
さらに、バック電極層は、保護膜で覆われていてもよい。
【0021】
本発明のハイブリッド表示装置は、いかなる目的に用いられるものであってもよく、目的のいくつかは、上記に例示したようなものである。
【0022】
LC材料マスク上に直接装着するということを除けば、表示装置のエレクトロルミネッセンス(EL)バックライトは、いかなる適切な方法、適切な材料ででも製造することができる。これについては、当該技術分野で公知であり、上に一般的に述べたので、ここでは説明を省略する。しかしながら、以下の最も好ましい実施形態における次の説明は有益であろう。
【0023】
EL材料として用いられる微粒子蛍光体は、微粒子状のLEPであり得るが、無機材料であるのが最も好ましい。典型的な無機微粒子蛍光体は、特にカプセル状の粒子(カプセル状であると、安定性および寿命が実質的に増加する)の形態の硫化亜鉛である。
【0024】
このタイプの特に便利な硫化亜鉛材料は、デュポン社によって製造された“ラックスプリント”系の蛍光体、またはエレクトラポリマー&ケミカルズ(Electra Polymers and Chemicals Ltd.)によって製造された“エレクトララックス”(Electralux)系の製品である。典型的には、デュポンの8154B(“ハイブライトグリーン”)またはエレクトラの“エレクトララックスELX−10”などの蛍光体ペーストをITO被覆のPET基板に塗布し、乾燥させて、厚さが約25マイクロメートルの層を得る。
【0025】
当該技術分野と同様に、この蛍光体層を絶縁層(これば、本発明では、光反射性セラミック材料で形成されるのが望ましい)で覆うか、または続いて重ねて印刷する。このような材料は多くの商業的な販売納入業者から入手することができ、熱または紫外線硬化のいずれかを行ってもよい。用いることができる典型的な材料は、デュポン“ラックスプリント8153”(熱硬化性誘電ペースト)、デュポン“ラックスプリント5018”(紫外線硬化性ペースト)、エレクトラ“エレクトララックスELX80”(熱硬化性ペースト)が含まれ、厚さが約10から15マイクロメートルの層として塗布される。
【0026】
それから、デュポン“ラックスプリント9145”(熱硬化性銀着色ペースト)、“ノーコート”(Norcote)ELG110(紫外線硬化性銀ペースト)、“エレクトララックスELX30”(熱硬化性銀ペースト)などの導電インクまたはペーストを堆積させることによって、必要に応じて、約20マイクロメートルの比較的薄い層として、バック電極をこの絶縁層の上に形成する。
【0027】
最後に、セラミックの薄膜(15マイクロメートル)絶縁層で表示装置の裏面を保護してもよい。この層を製造するのに用いられ得る材料は、上記のような“デュポン5018”、“コーツ(Coates)UV600G UVキュラブルカバーレイ(Curable Coverlay)”またはエレクトラの“エレクトララックスELX40”を含む。
【0028】
本発明の「ハイブリッド」表示装置において、情報規定マスクは、必要に応じて、バックライトによって出力された光を透過または遮断するように切り換えることができる、物理的に安定した液晶(LC)の層として構成される。LC材料として、ツイストネマチック、コステリック、またはカイラルネマチックなどのこのような材料の主なタイプのいずれでも構わないが、一般的に、吸収、反射および/または散乱プロセスによって、完全に透過的な場「オン」状態と、光学的に非透過性の基本場「オフ」状態との間の、偏光子のない高コントラストの電気光学シャッター動作を可能にする液晶を主体とする材料が必要である。カイラルネマチック材料が特に適切であると思われる。これらは、今説明したような、本発明の目的に非常によく合致した特別の特性を有している。このように、液晶技術において比較的最近の発展により、光学シャッタとして作用することができる材料(商品名NCAPとしてレイケム(Raychem)により製造されたようなネマチック曲線配向相(Nematic Curviliner Aligned Phase)液晶または染色カイラル・ネマチック(Dyed Chiral Nematic)液晶)が製造されている。これらは、ある状態において、入射光を吸収し、別の状態では透過する。
【0029】
このような材料を用いて、エレクトロルミネッセンス表示装置の前に液晶シャッタを組み合わせることによって、アクティブ時に光を発するだけでなく、アクティブ時に反射率をも変化させるハイブリッド表示装置になる。このタイプのハイブリッド表示装置は、真っ暗から完全な太陽光(典型的には周囲の光条件が最高であると考えられる)までの非常に大きな範囲の光条件において良好な可視性を有することができる。
【0030】
カイラルネマチック材料に関して別の重要な利点がある。電場が存在しないとき光を吸収し、電場が存在するとき光を透過する液晶材料を選択することによって、液晶材料を駆動するのに用いるのと同じ電場を用いて、エレクトロルミネッセンス材料を駆動することができる。電場が存在しない場合、液晶材料は、入射周囲光を吸収し、エレクトロルミネッセンスはいかなる光も生成しないので、表示要素は暗く見える。電場が印加されると、液晶は、入射周囲光を透過し、それから、光は、その後ろにあるエレクトロルミネッセンス層で反射して、エレクトロルミネッセンス層によって光が生成され、表示装置は明るく見える。
【0031】
したがって、LCおよびEL材料は、1対の共通電極によって制御することができる。これは、その簡易性から特に便利である。
【0032】
液晶シャッタ材料は、1−10kV/mm程度のAC電場を印加すると状態が変化(吸収から透過へ)する。エレクトロルミネッセンス材料の厚膜は、同様の電場の印加で光を発する。したがって、この2つの表示要素を印加された電場を有効に共有するように直列に接続することができる。表示要素のこの直列接続は、最も簡便には、第1の液晶材料の層を透明導電基板(ITO被覆PETまたはPEN)に適用し、次に、液晶の裏面にわたりエレクトロルミネッセンス材料の層を適用することによって行うことができる。得られた表示装置は、厚膜エレクトロルミネッセンス表示装置の場合と同様に可撓性を有し、非感圧であることが望ましい。
【0033】
このために、本発明のハイブリッド表示装置において、情報を規定するマスクは、物理的に安定した液晶(LC)材料(液晶材料は、これを適切な位置に保持するマトリックス構造内に分散または安定化されているのがよい)の層として構成される。このような安定した液晶は、通常、ポリマー分散液晶(PDLC)またはポリマー安定化液晶(PSLC)と呼ばれている。この目的で多くのポリマー材料が入手可能である。1つの適切な材料は、ゼラチンである。液晶材料を適切な溶媒および添加物とともにゼラチンと組み合わせて安定な乳濁液を生成し、それを基板(ITO被覆)に塗布またはスクリーン印刷し、次いで、乾燥することができる。それから、エレクトロルミネッセンス蛍光物質を乾燥したPDLC層の裏面に適用してから、上記の他の層を適用する。
【0034】
多くのポリマー材料(メルク社のMXM035またはSAM114など)と相溶性のある、その他の材料を用いて、典型的なプリントによる製造プロセスに好適な複合自己支持性膜を作成してもよい。支持マトリックスは、液晶が連続層(ポリマー安定化液晶(PSLC)、ケントディスプレイズ社(Kent Displays Incorporated)であるように作成してもよいし、または液晶をポリマー分散デバイス(ポリマー分散液晶(PDLC)、上記の“キシモックス(Xymox)NCAP”でのように別々の液滴にカプセル化してもよい。
【0035】
EL層の蛍光体はLC層へ直接適用(スクリーン印刷が好ましい)し、次いで、反射層および背面導電層をこの蛍光層の上に、ここでも好ましくはスクリーン印刷によって適用する。反射層は、チタン酸バリウム装填インクなどの高誘電率セラミックを用いて製造することができる。背面導電層は、銀または炭素装填インクであってもよい。また、1つの銀装填インク層を用いることによって、反射層および導電層の機能を組み合わせることができる。
【0036】
大体において、本発明のハイブリッド表示装置は、基板の裏面の実質的に全面に1つの(前面)電極を配置し、反射性電気絶縁層の裏面にわたり、液晶層とエレクトロルミネッセンス層の両層の「オン」または「オフ」に切り換えるために選択し得る領域を規定するパターン(背面)を配置することが最も簡便である。しかし、パターンの代わりに、前面電極をパターン形成し、1つの「全面」背面電極を形成することも可能である。さらに、両電極をパターン形成することもできる。これは、表示装置が、単に、どの領域を明るくし、どの領域を暗くするかを選択することによって、表示される像のいかなる形状および大きさをも可能にするような、多数の非常に小さな領域を任意に点灯できるマトリックス装置である場合に必要である。
【0037】
本発明のハイブリッド表示装置は、表示装置のバックライトとして作用する切換え可能なEL材料層の前面のマスクとして作用する切換え可能なLC材料の層を含んでいる。切換えは、前面および背面に位置する電極に印加される電圧を制御することにより行われる。基板の全裏面上の比較的薄い透明導電膜が、前面電極を形成し、反射性電気絶縁層の裏面にわたり配置された導電膜の領域のパターンが背面電極を形成する。この1対の前面/背面電極を用いて、LC材料(不透明から透明、後方)とEL材料(オフ/暗からオン/発光)の両方を切り換える。さらに、EL層が全面、「オン」または「オフ」(発光または暗)のいずれかである従来のELバックライトとは異なり、ハイブリッド表示装置では、EL材料は、「オン」(透明)に切り換えられたLC材料領域の後ろでのみ、「オン」に切り換わる。このEL層の部分アクティブ化により、大幅な電力節約が実現される。
【0038】
LC材料層とエレクトロルミネッセンス材料層、および絶縁性層間層(使用された場合)の相対的な膜厚および誘電率により、それらの層に印加される全電場(前面電極と背面電極との間の電圧)の程度が決まる。したがって、これらの膜厚は、種々の光条件において表示コントラスト率を最適にし、電力消費を最小限にするように制御することができる。典型的には、5から10マイクロメートルのPDLCなどのLC材料の層が、20から40マイクロメートルのエレクトロルミネッセンス材料の層と組み合わせて用いられる。
【0039】
本発明のハイブリッド表示装置において、EL材料がLC材料層(上記のように層間層が含まれる場合がある)の背面に直接適用されるが、この組み合わせには、一対のアクティブ用電極を有する1つの基板によって実現される。この単基板表示装置構造は、他の発光層のシャッター層との組み合わせよりも大きな利点がある。特に、同じ電子駆動回路を用いて発光EL層とマスク規定LCシャッター層を起動させることができるので、全体のコストが、別個のバックライトを必要とする通常の透反射型LCD表示装置より大幅に削減される。また、上記のように、区画化されたマトリックス型表示装置にとって、光が現れる必要がある区画部分のみを起動するのに対し、別個のバックライトを必要とする透反射型LCDでは、典型的に、適宜、光を遮断または透過させるLCDシャッターを有するバックライトによって、始終、表示装置の全領域が点灯されている。本発明にハイブリッドでは、その結果、他のこれらの表示装置に比べて、コントラストが向上し、電力消費が減少する。
【0040】
本発明の2つの実施形態を添付の図面を参照し例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態によるハイブリッドLC/EL表示装置の断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態によるハイブリッドLC/EL表示装置の断面図を示す。
【図3】図3は、第1または第2の実施形態によるハイブリッドLC/EL表示装置の平面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
添付の図面の図1に示す本発明の表示装置の第1の実施形態では、前から後ろの順番に以下の構成要素が見られる。
【0043】
比較的厚い電気絶縁性透明前面保護層(11;基板);
基板11の裏面にわたる、表示装置の前面電極を形成する比較的薄い透明導電膜(12);
前面電極12の裏面を覆う、支持マトリックス(15)内に分散されることにより物理的に安定したLC材料(14)の比較的薄い層(13);
液晶層13上に直接形成され、液晶層13の裏面を覆う、支持マトリックス(18)内に分散されたエレクトロルミネッセンス/蛍光体材料(17)の比較的薄い層(16);
蛍光体層16の裏面にわたる、比較的高誘電率材料の比較的薄い光反射性電気絶縁層(19)(この層は図面において蛍光体層16の境界のない延長部分として示されている);および
反射性電気絶縁層19の裏面にわたり配置された、表示装置の背面電極を形成する導電膜(20)。
【0044】
前面及び背面電極は協働して、オンまたはオフに切り換えるために選択し得る液晶層およびエレクトロルミネッセンス層の両層の領域を規定する。
【0045】
さらに、バック電極層は、保護膜(図示せず)で覆われていてもよい。
【0046】
添付の図2に示す別の実施形態では、EL材料およびLC材料は、互いに接して形成されるのではなく、絶縁層間膜10によって隔離されている。他のすべての点においては両実施例は同じであり、共通の参照番号が用いられる。
【0047】
層間層10がある場合とない場合のいずれにおいても、EL材料とLC材料が、共通電極対12、20を共有して、EL材料とLC材料とを共通にアクティブにすることができる。これを用いて、添付の図3に模式的に示すような、選択的に点灯可能な表示物の表示画面を生成することができる。これは、共通前面電極12と基板が複数の表示物21a、21bを支持している様子を示している。各表示物21a、21bは、添付の図1または図2に示された構造の残りの層、すなわちLC層13、任意の層間層10、EL層17、反射絶縁層18、および背面電極20を含む。これらの層は、使用者に表示を提供するよう点灯され得る選択的に点灯可能な要素を提供するよう構成されている。本実施例では、これらは、数字5および6であるが、どんな表示物でもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示する情報を規定するマスクの後ろに装着される切換え可能なエレクトロルミネッセンス(EL)材料のバックライトを有するタイプのエレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記マスクは、表示する情報を規定するために切換え可能な物理的に安定した液晶(LC)材料の層として構成され、
前記LCマスクおよび前記ELバックライトは、単一物として構成され、ELバックライトは、LC材料の層の上に直接/後ろに装着される層として形成されるエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
表示する情報を規定するマスクの後ろに装着される切換え可能なエレクトロルミネッセンス(EL)材料のバックライトを有するタイプのエレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記マスクは、表示する情報を規定するために切換え可能な物理的に安定した液晶(LC)材料の層として構成され、
前記LCマスクおよび前記ELバックライトは、単一物として構成されるエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記LCマスクおよび前記ELバックライトを形成する単一物は、LCマスクとELバックライトとの間に設けられる絶縁性層間層を含む請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記層間層は、実質的に光学的に透明である請求項3に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記層間層は、電気絶縁性を有する請求項3または4に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
バック電極層が、保護膜で覆われている先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記LCマスクは、偏光子を必要とすることなく、必要に応じて前記バックライトによって出力された光を透過または遮断するように切り換えることができるLC材料を含む先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
前記LCマスクは、カイラルネマチックLC材料を含む先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項9】
使用時、前記LCマスクが切り換わると反射率が変わる先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
前記LCマスクは、電場が存在しない場合、光を吸収し、電場が存在すると光を透過させるよう構成されたLC材料を含む先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項11】
前記表示装置は、少なくとも1対の電極を含み、各対の電極は、使用時、ELバックライトとLCマスクとの両方に電場を生成するように構成されている先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項12】
透明導電基板上に前記LCマスクを形成する液晶材料の第1の膜と、前記基板に隣接しない前記液晶の裏面の上のエレクトロルミネッセンス材料の層とを含む先行する請求項のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項13】
背面導電電極をさらに含む請求項12に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項14】
前記背面電極と前記エレクトロルミネッセンス材料との間に反射層が設けられている請求項13に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項15】
前記背面電極は、選択してオンまたはオフを切り換えることができる液晶層とエレクトロルミネッセンス層の両方の複数の領域を規定するようにバターン化されている、請求項13または14のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項16】
前記複数の領域が、前面電極としての透明導電電極のひとつの領域を共有する請求項15に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項17】
前記透明電極が、選択してオンまたはオフを切り換えることができる液晶層とエレクトロルミネッセンス層の両方の複数の領域を規定するようにバターン化されている、請求項16に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−502019(P2008−502019A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526550(P2007−526550)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002298
【国際公開番号】WO2005/121878
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】