説明

エレベータの乗場通知制御システムおよび方法

【課題】エレベータの乗場に設けられた通知装置を乗場の照度に応じて制御するシステムまたは方法を提供する。
【解決手段】エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ、乗りかごに関連する運転情報を表示する乗場インジケータ5と、乗場に設けられ乗場の照度を検出する乗場照度センサ7と、乗場照度センサ7から乗場照度データを受信するとともに乗場インジケータ5を制御する機能を有する制御部1とを備える。制御部1は、エレベータが設置されているビルの火災を検出する火災検知装置9から火災検知信号を受信したときに、エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替えるとともに、乗場照度データに応じて対応する乗場の乗場インジケータ5の表示輝度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火災等の非常事態の際に、エレベータの乗場に設けられた通知装置を制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所ビルあるいはショッピングセンタ等で火災が起きたときに、在館者はエレベータやエスカレータではなく階段で避難するように指導されている。実際、日本に限らず海外でも、エレベータ内やエレベータホールには、火災の時にはエレベータを使わずに階段を使うようにとの注意書きを目にすることが多い。しかし、過去の火災において、特に火災初期にはエレベータを用いて避難を行ったケースが少なからずあるのも事実である。一方、先進各国、特に、日本では高齢者の割合が急速に増加しつつある。このことは、ビル等における火災等の緊急避難時に階段利用が困難となる人々の数が、年々増えてゆくことを予想させる。避難にエレベータを利用する潜在的な要求は従来からあったが、高齢化やバリアフリー化の進展に伴って、近年、徐々に顕在的な要求として語られ始めている。とりわけ、2001年9月11日に発生した世界貿易センタービルの飛行機衝突による崩壊以降、米国ではたとえ超高層ビルであっても、従来の火災階近辺の部分避難に止まらず、スムーズな全館避難の要求が高まってきており、この機運と相まって米国ではエレベータの緊急時利用の議論も高まっている。
【0003】
我が国でも、2003年3月の「規制改革推進3カ年計画」において、「車椅子利用者等の身体障害者や高齢者等の被災時における安全かつ迅速な避難を確保するため、エレベータ周辺の待機場所等を含むエレベータの安全性に十分配慮した上で、身体障害者、高齢者等の避難手段としてのエレベータ利用についてソフト面も含めて検討する。」こととされている。
【0004】
このような背景から、近年、火災等の災害が発生した場合に、積極的にエレベータを利用して、迅速に在館者を避難階へ避難させることができるエレベータシステムを提供することが検討されている。
【0005】
火災が発生すると建物内に充満する大量の煙あるいは停電によってエレベータの乗場の視界が悪くなるために、エレベータを利用して避難しようとする在館者が、たとえエレベータの乗場近辺に居ても、エレベータの乗場インジケータや乗場呼び登録ボタン装置を見つけることが困難となる状況が考えられる。この場合、在館者の避難時間が長くなるために、在館者のリスクが高くなる等の問題点がある。
【0006】
特許文献1には、乗場インジケータの視認性を向上することを目的として、乗場インジケータ内にタイマを設けタイマによりエレベータの稼働時間を検出し、エレベータの稼働時間と乗場インジケータの表示素子の経年劣化による輝度変化から現在の表示文字の輝度を算出し、算出結果を基に乗場インジケータの駆動パルス幅を変化させることによって乗場インジケータに表示される文字の輝度を自動的に補正する技術が開示されている。この先行技術によれば、乗場インジケータの稼働時間に応じた表示素子の経年劣化による輝度変化を自動的に補正することはできるものの、乗場周囲の状況(視認性)の変化に応じた乗場インジケータの輝度調整は、まったく考慮されておらず、火災時の煙が充満している状況等の非常事態における乗場インジケータの輝度調整に関しては対策が講じられていない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−296141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、エレベータの乗場に設けられた通知装置を乗場の照度に応じて制御するシステムまたは方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるエレベータの乗場通知制御システムは、エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ、乗りかごに関連する運転情報を表示する乗場インジケータと、乗場に設けられ、乗場の照度を検出する乗場照度センサと、乗場照度センサから乗場照度データを受信するとともに乗場インジケータを制御する機能を有する制御手段とを備える。
【0010】
制御手段は、エレベータが設置されているビルの非常状態を検出する非常状態検知手段から非常状態検知信号を受信したときに、エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替えるとともに、乗場照度データに応じて対応する乗場の乗場インジケータの表示輝度を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図である。
【図2】一実施形態における制御部を説明するための機能ブロック図である。
【図3】実施形態における処理手順全体のフローチャートである。
【図4】図3に示した避難運転モードの際の乗場照度検出処理を表すフローチャートである。
【図5】図3に示した避難運転モードの際の乗場通知制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜、図面を参照しながら本発明の一例としての実施形態の説明を行う。本発明は、火災に起因する発煙、および火災によらない発煙、停電等の非常事態に適用可能であるが、本明細書においては説明を簡潔にするために非常事態は火災である場合を中心に述べる。しかし、本発明が適用される非常事態は火災に限定されるものではない。一実施形態の構成を図1および図2を参照しながら説明する。尚、図1、図2およびこれらの図に関する説明において、例としてエレベータの着床階の数を3として記載するが、本実施形態は、2以上の任意の正数の着床階が存在する場合にも実施可能であることは明らかである。図1は、一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図である。尚、この図は、本実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。エレベータシステムの運行を制御する制御部1は、エレベータ機械室あるいは昇降路内に設置され、乗りかご2を昇降させる巻上機3を制御する。エレベータの乗りかご2のそれぞれの着床階の乗場、例えば、乗場ドア4a、4bおよび4cの上部には、エレベータの乗場ごとに乗りかご2の位置等の運行情報あるいは管制運転等の乗りかご2に関連する運転情報を表示する乗場インジケータ5a、5bおよび5cが設けられている。乗場インジケータ5a、5bおよび5cは、それぞれ、乗場インジケータデータ伝送チャネル6a、6bおよび6cを介して、制御部1に接続されている。さらに、乗りかご2の各着床階の乗場の乗場ドア4a、4bおよび4cの近辺であって、例えば、床面に近い位置には、それぞれ乗場照度センサ7a、7bおよび7cが設けられている。乗場照度センサ7a、7bおよび7cは、例えば、対応する乗場ドア4a、4bおよび4cを含む領域の照度を検出する。また、乗場照度センサ7a、7bおよび7cは、それぞれ、乗場照度データ伝送チャネル8a、8bおよび8cを介して、制御部1に接続されており、検出した乗場照度を表す乗場照度データを制御部1に伝達する。後ほど述べるように、制御部1は、受信した乗場照度データに応じて、乗場インジケータ5a、5bおよび5cを制御する機能を有する。エレベータが設置されているビルの適切な場所にはビル内の火災の発生を検出し、火災の発生を検出したときには火災検知信号を発出する火災検知器9が設けられており、火災検知器9は、火災検知信号伝送チャネル10を介して、制御部1に接続されている。制御部1は、火災検知器9から火災検知信号を受信すると、エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替えるとともに、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度データに応じて、それぞれ対応する乗場の乗場インジケータ5a、5bおよび5cの表示輝度を制御する。例えば、制御部1は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信したそれぞれの乗場の照度を表す照度データと、制御部1に記憶されている基準輝度データとを照合する。制御部1は、照合結果に基づき、それぞれの乗場インジケータ5a、5bおよび5cに適切な輝度を表す乗場インジケータ輝度データを、それぞれ、乗場インジケータデータ伝送チャネル6a、6bおよび6cを介して、それぞれの乗場インジケータ5a、5bおよび5cに送信する。尚、制御部1は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信される照度データを、避難運転モードで動作中のみ、有効として扱う。
【0013】
乗場照度センサ7a、7bおよび7cを常に動作させておいても良いが、一実際形態においては、制御部1が避難運転モードで動作している間、制御部1は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cを動作させる。
【0014】
他の実施形態において、制御部1は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信したそれぞれの乗場の照度を表す照度データに応じて、さらに、予め定められ、乗場の照度に応じた案内表示を、それぞれの乗場インジケータ5a、5bおよび5cに表示するように制御する。
【0015】
エレベータの乗りかご2のそれぞれの着床階の乗場、通常、乗場ドア4a、4bおよび4cの横には、乗場呼びの登録を受け付ける乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cが設けられている。これらの乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cは、それぞれ、乗場呼び登録伝送チャネル12a、12bおよび12cを介して、制御部1に接続され、乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cが在館者によって押下されたときには、対応する乗場呼び登録伝送チャネル12a、12bおよび12cを介して、押下された信号を制御部1に送信する。また、これら乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cは、それぞれ、乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cが押下されたことを示す乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cを、それぞれ備える。他の実施形態において、乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cは、それぞれ、乗場呼び登録ボタン灯輝度伝送チャネル14a、14bおよび14cを介して、制御部1に接続されている。制御部1は、避難運転モードで動作中、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度データに応じて、さらに、それぞれ対応する乗場の乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cの表示輝度を表す輝度データを対応する乗場呼び登録ボタン灯に送信し、乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cそれぞれの表示輝度を制御する。
【0016】
別な実施形態において、制御部1は、避難運転モードで動作中、伝達された乗場照度データに対応する乗場照度が予め定められた値以下である場合には、さらに、乗場呼び登録ボタンが押下されていない乗場の乗場インジケータ(5a、5bまたは5c)および乗場呼び登録ボタン灯(13a、13bまたは13c)の少なくとも一方を点滅させる。
【0017】
さらなる実施形態において、制御部1は、避難運転モードで動作中、乗場インジケータ5a、5bおよび5cに、受信した乗場照度データに応じて、予め定められた内容を表示させる。
【0018】
さらに別な実施形態においては、各乗場の乗場ドア4a、4bおよび4cの周辺に、音声アナウンスを出力する乗場音声装置15a、15bおよび15cが、それぞれ、設けられている。乗場音声装置15a、15bおよび15cは、それぞれ、乗場アナウンスデータ伝送チャネル16a、16bおよび16cを介して、制御部1に接続されている。制御部1は、避難運転モードで動作中、乗場音声装置15a、15bおよび15cに、受信した乗場照度データに応じて、予め定められた内容の音声アナウンスに対応する音声アナウンスデータを送信し、音声アナウンスを出力させる。
【0019】
尚、図1には様々な伝送チャネルを示したが、これらは論理的な伝送チャネルであって、物理的にはバス状の1つの伝送路によって実装することもできる。
【0020】
図2に、一実施形態における制御部1を説明するための機能ブロック図を示す。尚、図2には制御部1の機能を説明するために、既に図1に示した機能構成要素も示しているが、これらの機能構成要素については、図2において同一の参照符号を付しており、説明は省略する。制御部1は、通常、マイクロコンピュータ、ROM、RAMまたは磁気記憶装置等のハードウェア資源と、エレベータ制御に必要なソフトウェアを含む、いわゆる組み込みシステムによって実装される。制御部1は、また、ハードウェアによって実装することもできる。
【0021】
制御部1は、運転モード切替制御部21と、表示制御部22と、輝度データ記憶部23を含む。運転モード切替制御部21には、火災検知信号伝送チャネル10を介して、火災検知器9が接続されている。火災検知器9から火災検知信号が出力され、運転モード切替制御部21に入力されると、運転モード切替制御部21は、エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替える。また、運転モード切替制御部21には、運転切替信号伝送チャネル24を介して、表示制御部22が接続されている。一実施形態において、運転モード切替制御部21から運転モード切替信号を受信すると、表示制御部22は乗場照度データ伝送チャネル8a、8bおよび8cを介して、各乗場に設置された乗場照度センサ7a、7bおよび7cを起動させる。乗場照度センサ7a、7bおよび7cは、常に動作させておいても良い。表示制御部22は、さらに、輝度記憶データ伝送チャネル25を介して、輝度データ記憶部23と接続されている。輝度データ記憶部23には、乗場照度データに対して適切な、乗場インジケータ5a、5bおよび5cの輝度を表す輝度データ、または乗場インジケータ5a、5bおよび5cおよび乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cの双方の輝度データが保存されている。表示制御部22は、乗場インジケータデータ伝送チャネル6a、6bおよび6cを介して、それぞれ乗場インジケータ5a、5bおよび5cとも接続されている。また、表示制御部22は、乗場呼び登録ボタン灯輝度伝送チャネル14a、14bおよび14cを介して、それぞれ乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cと接続されている。
【0022】
火災検知器9から出力された火災検知信号が運転モード切替制御部21に入力され、運転モード切替制御部21から出力される運転モード切替信号を表示制御部22が受信すると、表示制御部22は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度データに対して適切な乗場インジケータ5a、5bおよび5cの輝度データを、輝度データ記憶部23から読み出し、読み出したそれぞれの輝度データを、それぞれ乗場インジケータ5a、5bおよび5cに伝達する。表1に、輝度データ記憶部23に予め記憶され、乗場照度データに関連付けられた輝度データに対応する乗場インジケータの輝度である基準輝度の一例を示す。
【表1】

【0023】
基準輝度は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cによって検出される乗場照度に応じて適切に設定され、輝度データ記憶部23に記憶される。表示制御部22は、避難運転モードで動作中、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度に対応する基準輝度、または基準輝度以上の輝度で表示するように、乗場インジケータ5a、5bおよび5cに指示を伝達する。例えば、3階の乗場照度センサによって検出された照度が1200ルクスの場合、3階の乗場インジケータが500カンデラ、またはそれ以上の輝度で表示するように、表示制御部22から3階の乗場インジケータに指示を伝達する。尚、表1は乗場照度と乗場インジケータの基準輝度の対応関係の一例を示したものであって、異なる基準輝度を設定することもできる。さらに、適切な基準輝度の値は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cの設置位置、乗場インジケータ5a、5bおよび5cの出力指向性、乗場の壁面の色等によって異なるため、エレベータが設置される物件、乗場に応じた適切な基準輝度データを設定し、予め輝度データ記憶部23に記憶する。
【0024】
このように乗場インジケータの輝度を適切に制御することによって、火災に起因する煙等影響でエレベータの乗場が暗くなっても、エレベータを利用して避難する在館者にとって乗場インジケータの視認性が一定の範囲で確保され、より安全で迅速な避難を促すことができる。
【0025】
他の実施形態において、表示制御部22は、避難運転モードで動作中、さらに、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度データに対して適切な乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cの輝度データを、輝度データ記憶部23に記憶されたデータを基に選択し、選択した輝度データをそれぞれの乗場呼び登録ボタン灯13a、13bおよび13cに伝達する。乗場照度データに対して適切な、乗場呼び登録ボタン灯に関する輝度データに対応する基準輝度は、表1に示した乗場インジケータに関する輝度データに対応する基準輝度と同様であり、乗場呼び登録ボタン灯に関する基準輝度と同一であってもよいし、異なってもよい。乗場照度に対して適切な乗場呼び登録ボタン灯に関する基準輝度が、乗場インジケータに関する基準輝度と同一に設定され、輝度データ記憶部23に記憶されており、2階の乗場照度センサ7によって検出された照度が80ルクスの場合、表示制御部22は、2階の乗場呼びボタン灯に対して表示輝度を2000カンデラ、またはそれ以上にする指示を伝達する。尚、乗場インジケータの基準輝度に関して前述したように、適切な基準輝度の値は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cの設置位置、乗場呼びボタン灯13a、13bおよび13cに用いられる発光素子の出力指向性、乗場の壁面の色等によって異なるため、エレベータが設置される物件、乗場に応じた適切な基準輝度データを設定し、予め輝度データ記憶部23に記憶する。
【0026】
このように乗場呼び登録ボタン灯の輝度を適切に制御することによって、火災に起因する煙等影響でエレベータの乗場が暗くなっても、エレベータを利用して避難する在館者にとって乗場呼び登録ボタン灯の視認性が一定の範囲で確保され、より安全で迅速な避難を促すことができる。
【0027】
また、制御部1は乗場呼び登録制御部26を含み、乗場呼び登録制御部26は、乗場呼び登録伝送チャネル12a、12bおよび12cを介して、乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cに接続されている。乗場呼び登録制御部26は、また、乗場呼び登録データ伝送チャネル27を介して、表示制御部22に接続されている。各乗場に設置された乗場呼び登録ボタン11a、11bおよび11cで登録された乗場呼び情報は、乗場ごとの乗場呼び登録データとして、乗場呼び登録制御部26から表示制御部22に伝達される。表示制御部22は、避難運転モードで動作中、乗場呼び登録制御部26から伝達された各乗場の乗場呼び登録の有無に基づいて、乗場呼び登録が無い乗場であって乗場照度が予め定められた値以下である乗場の乗場インジケータ5a、5b、5cおよび乗場呼び登録ボタン灯13a、13b、13cの少なくとも一方を点滅させるよう指示する制御信号を表示制御部22から、乗場インジケータ5a、5b、5cおよび乗場呼び登録ボタン灯13a、13b、13cの少なくとも一方に出力する。
【0028】
このように乗場がある一定以下の照度である場合に、乗場インジケータまたは乗場呼びボタンを点滅させることによって、それらの視認性を高めることができる。
【0029】
他の実施形態において、制御部1は乗場メッセージデータ記憶部28を、さらに、含む。乗場メッセージデータ記憶部28には、乗場照度に応じた乗場メッセージを表す乗場メッセージデータが予め保存されている。表示制御部22は、避難運転モードで動作中に、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度データに応じた乗場メッセージデータを、乗場メッセージデータ伝送チャネル29を介して、乗場メッセージデータ記憶部28から読み出し、読み出したそれぞれの乗場メッセージデータを、それぞれ乗場インジケータ5a、5bおよび5cに伝達する。乗場インジケータ5a、5bおよび5cは、それぞれ受信した乗場メッセージデータに対応するメッセージ内容を、それぞれの乗場インジケータに搭載された液晶ディスプレイ等の表示部によって、それぞれの乗場で表示する。表2に、乗場メッセージデータ記憶部28に予め記憶され、乗場照度データに関連付けられた乗場メッセージデータに対応する表示内容の一例を示す。
【表2】

【0030】
表示内容は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cによって検出される乗場照度に応じて適切に設定され、乗場メッセージデータ記憶部28に記憶される。表示制御部22は、避難運転モードで動作中、乗場照度センサ7a、7bおよび7cから受信した乗場照度に適した乗場メッセージに対応する表示メッセージ内容を表示するように、乗場インジケータ5a、5bおよび5cに指示を伝達する。伝達された指示にしたがって、それぞれの乗場インジケータ5a、5bおよび5cは、搭載された液晶ディスプレイ等の表示部を介して、メッセージ内容を表示する。例えば、2階の乗場照度センサ7によって検出された照度が500ルクスである場合、2階の乗場では未だ避難に十分な照度が確保されていると考えられるため、エレベータが避難運転を行っている旨の表示メッセージ(表示内容)を乗場インジケータ5a、5bおよび5cに搭載された液晶ディスプレイ等の表示器に表示するよう乗場インジケータ5a、5bおよび5cに指示を伝達する。尚、表2は乗場照度と表示内容の対応関係の一例を示したものであって、異なる表示内容を設定することもできる。また、乗場照度の値や表示内容は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cの設置位置、乗場の壁面の色、乗場の形状や広さ等によって異なるため、エレベータが設置される物件、乗場に応じた適切なデータを設定し予め乗場メッセージデータ記憶部28に記憶する。さらに、異なる実施形態においては、表示メッセージを乗場インジケータに表示する代わりに、回転灯等を用いることもできる。
【0031】
このように乗場インジケータの表示内容を適切に制御することによって、避難する在館者に適切な情報を与え、より安全で迅速な避難を促すことができる。
【0032】
さらに別な実施形態において、制御部1は、音声アナウンス制御部30と音声アナウンスデータ記憶部31を含む。音声アナウンス制御部30は、乗場照度データ伝送チャネル32を介して、表示制御部22から乗場ごとの照度データを受信する。音声アナウンス制御部30は、避難運転モードで動作中に、表示制御部22から受信した乗場ごとの照度データに対応し、音声アナウンスデータ記憶部31に予め記憶されている音声アナウンスデータを、音声データ伝送チャネル33を介して、読み出し、読み出した音声アナウンスデータを、それぞれ乗場音声装置15a、15bおよび15cに伝達する。音声アナウンスデータをそれぞれ受け取った乗場音声装置15a、15bおよび15cは、受け取った音声アナウンスデータに対応する音声アナウンス内容をそれぞれの乗場に出力する。乗場照度と音声アナウンス内容の対応関係が表2に示したものと同一である場合、例えば、3階の乗場照度センサ7によって検出された照度が50ルクスの場合、3階の乗場は火災による煙の影響で在館者の避難がかなり困難な状況にあると考えられるため、在館者が安全かつ迅速にエレベータの乗場に到達できるよう誘導する音声アナウンスを表す音声アナウンスデータを、3階の乗場音声装置15に伝達する。尚、表2は乗場照度と音声アナウンス内容の対応関係の一例を示したものであって、乗場照度の値や音声アナウンス内容は、乗場照度センサ7a、7bおよび7cの設置位置、乗場の壁面の色、乗場の形状や広さ等によって異なるため、エレベータが設置される物件、乗場に応じた適切なデータを設定し予め音声アナウンスデータ記憶部31に記憶する。また、音声アナウンス内容と表示メッセージ内容は別な文言であってもよい。さらに、音声アナウンスの代わりに、ブザーやサイレン等の音を使ってもよい。
【0033】
このように音を用いた通知を適切に制御することによって、目が不自由な在館者にも乗場の場所あるいはビル内の状況を通知し、より安全で迅速な避難を促すことができる。
【0034】
次に、フローチャートを参照しながら、前述した実施形態における動作説明を行う。図3に実施形態における処理手順全体のフローチャートを示す。先ず、ステップS302で、火災検知信号が火災検知器9から制御部1に受信されたか否かが判断される。制御部1は火災検知信号が受信されたか否かを、常に監視している。ステップS302で、火災検知信号が受信されていると判断されると、運転モード切替制御部21は、ステップS304で、運転モードを平常運転モードから避難運転モードに切り替える。ステップS306で、表示制御部22は、運転モードが平常運転モードから避難運転モードに切り替えられたことを表す運転モード切替信号を、運転モード切替制御部21から受信する。
【0035】
表示制御部22は、運転モード切替信号を受信すると、例えば、ステップS308ないしステップS316に示すように、ビルのすべての着床階(総数:N)の乗場に関して以下の処理を実行する。ここで、各着床階には、それぞれ1ないしNの正数の番号が割り当てられている。ステップS308で、処理対象の最初の着床階の番号nを1(例えば、最下階)にセットする。次にステップS310で、後ほど図4を参照しながら説明する、n階についての乗場照度検出処理を行う。次いでステップS312で、後ほど図5を参照しながら詳細に説明を行う、n階についての乗場通知制御処理を行う。乗場通知制御処理を終えると、ステップS314に進み、別な着床階について処理を行うため、着床階の番号nをインクリメントし、ステップS316でnが着床階の総数Nを超えたか否かを判断する。nがNを超えていない場合、すなわち未だすべての着床階に関する処理が終わっていない場合には、S310に戻り前述した処理をすべての着床階について繰り返す。ステップS316でnがNを超えていると判断されると、すべての着床階に関する処理が終わっているため、ステップS302に戻る。
【0036】
ステップS302で、火災検知信号が受信されていないと判断された場合には、ステップS318に進み、平常運転モードを継続する。
【0037】
図4に、図3に示した、避難運転モードの際の乗場照度検出処理を表すフローチャートを示す。図4に示したフローチャートは、図3に示したフローチャートのステップS310における処理手順を示したものである。表示制御部22は、運転モード切替制御部21から運転モード切替信号を受信すると、一実施形態において、ステップS402で、乗場ごとに設けてある乗場照度センサ7a、7bおよび7cに起動信号を出力する。尚、前述したように、乗場照度センサを常に動作させている場合には、ステップS402はスキップされる。次にステップS404で、乗場照度センサ7a、7bおよび7cは、対応する乗場の照度データを検出し、検出した照度データを表示制御部22に伝達する。
【0038】
図5に、図3に示した、避難運転モードの際の乗場通知制御処理を表すフローチャートを示す。図5に示すフローチャートは、図3に示したフローチャートのステップS312における処理手順を詳細に示したものである。ステップS502で、表示制御部22は、n階の乗場の乗場照度センサ7からn階の乗場の照度データを受信する。次にステップS504で、表示制御部22は、受信した照度データを、例えば表1に示した、輝度データ記憶部23に記憶されている乗場照度と基準輝度の対応関係に基づいて、n階の乗場の照度データに対応するn階の基準輝度を特定する。
【0039】
次いで、表示制御部22は、ステップS504において特定した基準輝度と、n階乗場の乗場インジケータ5の現在の輝度の設定値とを比較し、現在の設定値が基準輝度より明るいか否かを、ステップS506で判断する。現在の設定値が基準輝度より明るい場合には、後述するステップS514に進む。一実施形態において、表示制御部22は、ステップS504において特定した基準輝度と、n階乗場の乗場呼び登録ボタン灯13の現在の現在の輝度の設定値の比較も行い、現在の設定値が基準輝度より明るいか否かも、ステップS506で判断する。現在の設定値が基準輝度より明るい場合には、後述するステップS514に進む。
【0040】
ステップS506において、n階乗場の乗場インジケータ5の現在の輝度の設定値がステップS504において特定した基準輝度より暗いと判断した場合は、ステップS508で、表示制御部22は、現在の輝度の設定値を、特定した基準輝度の値に変更する旨の輝度変更指示をn階乗場の乗場インジケータ5に送信する。一実施形態において、n階乗場の乗場呼び登録ボタン灯13の現在の輝度の設定値がステップS504において特定した基準輝度より暗いと判断した場合は、表示制御部22は、さらに、n階乗場の乗場呼び登録ボタン灯13の現在の輝度の設定値を、特定した基準輝度の値に変更する旨の輝度変更指示をn階乗場の乗場呼び登録ボタン灯13に送信する。
【0041】
続いてステップS510で、乗場呼び登録制御部26は、n階乗場の乗場呼び登録ボタン11が既に押下された、すなわち呼びが登録されたか否かを判断する。n階乗場の乗場呼び登録ボタン11が既に押下されていると、ステップS510で判断されると、処理はステップS514に進む。
【0042】
ステップS510において、乗場呼び登録制御部26で、n階の乗場呼び登録ボタン11が押下されてないと判断された場合には、乗場呼び登録制御部26は、その旨を表示制御部22に伝達する。伝達を受けた表示制御部22は、ステップS512で、n階の乗場インジケータ5および乗場呼び登録ボタン灯13の少なくとも一方を点滅させる。処理は、その後、ステップS514へ進む。
【0043】
ステップS514において、表示制御部22は、受信したn階の乗場の照度データを、乗場メッセージデータ記憶部28に記憶された、例えば表2に示した、対応表と、照合する。照合結果にしたがって、表示制御部22は、受信した照度データに応じた表示内容を、n階の乗場インジケータ5に表示する旨の指示を送信する。
【0044】
一実施形態において、処理は、さらに、ステップS516に進み、表示制御部22は、音声アナウンス制御部30に受信したn階の照度データを伝達する。音声アナウンス制御部30は、受信したn階の乗場の照度データに対応し、音声アナウンスデータ記憶部31に予め記憶されている音声アナウンスデータに対応するアナウンス内容を、n階の乗場音声装置15から出力する旨の指示を送信する。
【0045】
尚、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で開示した構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示した全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・制御部、 2・・・乗りかご、 3・・・巻上機、
4a、4b、4c・・・乗場ドア、 5a、5b、5c・・・乗場インジケータ、
6a、6b、6c・・・乗場インジケータデータ伝送チャネル、
7a、7b、7c・・・乗場照度センサ、
8a、8b、8c・・・乗場照度データ伝送チャネル、
9・・・火災検知器、 10・・・火災検知信号伝送チャネル、
11a、11b、11c・・・乗場呼び登録ボタン、
12a、12b、12c・・・乗場呼び登録伝送チャネル、
13a、13b、13c・・・乗場呼び登録ボタン灯、
14a、14b、14c・・・乗場呼び登録ボタン灯輝度伝送チャネル、
15a、15b、15c・・・乗場音声装置、
16a、16b、16c・・・乗場アナウンスデータ伝送チャネル、
21・・・運転モード切替制御部、 22・・・表示制御部、
23・・・輝度データ記憶部、 24・・・運転切替信号伝送チャネル、
25・・・輝度記憶データ伝送チャネル、 26・・・乗場呼び登録制御部、
27・・・乗場呼び登録データ伝送チャネル、
28・・・乗場メッセージデータ記憶部、
29・・・乗場メッセージデータ伝送チャネル、
30・・・音声アナウンス制御部、 31・・・音声アナウンスデータ記憶部、
32・・・乗場照度データ伝送チャネル、33・・・音声データ伝送チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ、前記乗りかごに関連する運転情報を表示する乗場インジケータと、
前記乗場に設けられ、前記乗場の照度を検出する乗場照度センサと、
この乗場照度センサから乗場照度データを受信するとともに、前記乗場インジケータを制御する機能を有する制御手段とを備え、
この制御手段は、前記エレベータが設置されているビルの非常状態を検出する非常状態検知手段から非常状態検知信号を受信したときに、前記エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替えるとともに、前記乗場照度データに応じて対応する乗場の前記乗場インジケータの表示輝度を制御することを特徴とするエレベータの乗場通知制御システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記避難運転モードで動作している間、前記乗場照度センサを動作させることを特徴とする請求項1に記載エレベータの乗場通知制御システム。
【請求項3】
前記システムは、
前記乗場に設けられた前記乗りかごを呼び出すための乗場呼び登録ボタン装置に設けられ、乗場呼びが登録されたことを示す乗場呼び登録ボタン灯を、さらに、備え、
前記制御手段は、前記避難運転モードで動作中に、さらに、前記乗場照度データに応じて対応する乗場の前記乗場呼び登録ボタン灯の表示輝度を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータの乗場通知制御システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記避難運転モードで動作中であって、前記乗場照度データに対応する乗場照度が予め定められた値以下である場合に、さらに、前記乗場呼び登録ボタン装置の乗場呼び登録ボタンが押下されていない乗場の前記乗場インジケータおよび前記乗場呼び登録ボタン灯の少なくとも一方を点滅させることを特徴とする請求項3に記載のエレベータの乗場通知制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記避難運転モードで動作中に、さらに、前記乗場インジケータに、前記乗場照度データに応じて予め定められた表示内容を表示させることを特徴とする請求項4に記載のエレベータの乗場通知制御システム。
【請求項6】
前記システムは、
前記乗場に音声アナウンスを出力する乗場音声装置を、さらに、備え、
前記制御手段は、前記避難運転モードで動作中に、さらに、前記乗場音声装置に、前記乗場照度データに応じて予め定められた内容の音声アナウンスを出力させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエレベータの乗場通知制御システム。
【請求項7】
エレベータが設置されているビルの非常状態を検出する非常状態検知装置から非常状態検知信号を受信するステップと、
前記非常状態検知信号を受信したときに、前記エレベータを平常運転モードから避難運転モードに切り替えるステップと、
前記エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ前記乗場の照度を検出する乗場照度センサから乗場照度データを受信するステップと、
前記それぞれの着床階の乗場に設けられ前記乗りかごに関連する運転情報を表示する乗場インジケータの表示輝度を、対応する前記乗場照度データに応じて制御するステップと
を含むことを特徴とするエレベータの乗場通知制御方法。
【請求項8】
前記乗場照度センサを、前記避難運転モードで動作している間、動作させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項7に記載エレベータの乗場通知制御方法。
【請求項9】
前記乗場に設けられた前記乗りかごを呼び出すための乗場呼び登録ボタン装置に設けられ乗場呼びが登録されたことを示す乗場呼び登録ボタン灯の表示輝度を、前記避難運転モードで動作中に、制御するステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータの乗場通知制御方法。
【請求項10】
前記避難運転モードで動作中であって、前記乗場照度データに対応する乗場照度が予め定められた値以下である場合に、前記乗場呼び登録ボタン装置の乗場呼び登録ボタンが押下されていない乗場の前記乗場インジケータおよび前記乗場呼び登録ボタン灯の少なくとも一方を点滅させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項9に記載のエレベータの乗場通知制御方法。
【請求項11】
前記乗場インジケータに、前記避難運転モードで動作中に、前記乗場照度データに応じて予め定められた表示内容を表示させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項10に記載のエレベータの乗場通知制御方法。
【請求項12】
前記乗場に設けられた音声アナウンスを出力する音声装置に、前記避難運転モードで動作中に、前記乗場照度データに応じて予め定められた内容の音声アナウンスを出力させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載のエレベータの乗場通知制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−12213(P2012−12213A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153149(P2010−153149)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】