説明

エレベータの制御装置

【課題】かご位置検出器の故障及び戸開検出器の故障の少なくとも一方を定期的に診断することができるエレベータの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータのかごがエレベータの乗り場から所定の距離以上離れていることを検出するかご位置検出器と、エレベータのドアが開いていることを検出する戸開検出器と、エレベータの運転を制御する運転制御装置と、かご位置検出器と戸開検出器との検出結果に基づいて、ドアを開いて停止中のかごが走行を開始したことが検出された場合や、かごの走行中にドアが開いたことが検出された場合に、かごを停止させる保護装置と、を備え、保護装置は、かごを乗り場から所定の距離以上離れさせてかご位置検出器の故障を診断するための走行要求及びドアを開かせて戸開検出器の故障を診断するための戸開要求の少なくとも一方を所定の周期で運転制御装置に対して出力する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、かご位置検出器が設けられる。かご位置検出器は、例えば、ドアゾーンセンサからなる。このかご位置検出器は、かごが乗り場から所定の距離の範囲内に配置されているときにON状態となり、かごが乗り場から所定の距離の範囲外に配置されているときにOFF状態となる。
【0003】
また、エレベータには、戸開検出器が設けられる。戸開検出器は、例えば、ドアスイッチ、ゲートスイッチからなる。この戸開検出器は、エレベータのドアやゲートが閉じているときにON状態となり、ドアが開いているときにOFF状態となる。
【0004】
かご位置検出器、戸開検出器の出力は、エレベータの運転を制御する運転制御装置とは独立した戸開走行保護装置に入力される。この戸開走行保護装置は、かご位置検出器、戸開検出器の出力に基づいて、戸開停止中のかごが走行を開始したと判断した場合や、かごの走行中にエレベータが戸開したと判断した場合に、かごを急停止させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−55691号公報
【0006】
上記戸開走行保護装置は、確実にかごを急停止させるために、機器の二重化や、定期的な診断の実施による機能失敗確率の低減が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かごがドアゾーン内で戸閉している状態を維持している場合、かご位置検出器、戸開検出器は、ON状態を維持する。この状態が継続すると、かご位置検出器、戸開検出器がON状態側に固着しているか否かを診断することができず、要求される機能失敗確率を保証することができなかった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、かご位置検出器の故障及び戸開検出器の故障の少なくとも一方を定期的に診断することができるエレベータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータのかごが前記エレベータの乗り場から所定の距離以上離れていることを検出するかご位置検出器と、前記エレベータのドアが開いていることを検出する戸開検出器と、前記エレベータの運転を制御する運転制御装置と、前記かご位置検出器と前記戸開検出器との検出結果に基づいて、前記ドアを開いて停止中の前記かごが走行を開始したことが検出された場合や、前記かごの走行中に前記ドアが開いたことが検出された場合に、前記かごを停止させる保護装置と、を備え、前記保護装置は、前記かごを前記乗り場から前記所定の距離以上離れさせて前記かご位置検出器の故障を診断するための走行要求及び前記ドアを開かせて前記戸開検出器の故障を診断するための戸開要求の少なくとも一方を所定の周期で前記運転制御装置に対して出力するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、かご位置検出器の故障及び戸開検出器の故障の少なくとも一方を定期的に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される切替装置の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される切替装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置の構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された診断走行管理処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドアゾーンセンサ診断要求管理処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドア/ゲートスイッチ診断要求管理処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された診断実施処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドアゾーンセンサON故障チェック処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドア/ゲートスイッチON故障チェック処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される切替装置の構成図である。
【0014】
図1において、1はエレベータの駆動装置である。この駆動装置1は、電源2、電力変換装置3、電動機4、綱車5、移動検出器6からなる。電源2は、例えば、商用交流電源からなる。この電源2の出力は、電力変換装置3の入力に接続される。この電力変換装置3の出力は、電動機4の入力に接続される。この電動機4の回転軸には、綱車5が取り付けられる。また、電動機4の回転量は、移動検出器6に検出される。
【0015】
綱車5の近傍には、ブレーキ装置7が設けられる。このブレーキ装置7は、綱車5を静止保持する機能を備える。このブレーキ装置7は、第1ブレーキライニング8、第1ブレーキコイル9、第1ブレーキチョッパ10、第2ブレーキライニング11、第2ブレーキコイル12、第2ブレーキチョッパ13、ブレーキ電源14からなる。
【0016】
第1ブレーキライニング8は、綱車5の直上に配置される。この第1ブレーキライニング8に対応して、第1ブレーキコイル9が設けられる。この第1ブレーキコイル9の一端と接地との間に、第1ブレーキチョッパ10が設けられる。第2ブレーキライニング11は、綱車5の直下に配置される。この第2ブレーキライニング11に対応して、第2ブレーキコイル12が設けられる。この第2ブレーキコイル12の一端と接地との間に、第2ブレーキチョッパ13が設けられる。そして、第1ブレーキコイル9の他端と第2ブレーキコイル12の他端とに、ブレーキ電源14が接続される。
【0017】
エレベータの昇降路(図示せず)内には、昇降路内機器15が設けられる。この昇降路内機器15は、かご16、釣合いおもり17、そらせ車18、主索19、ドアゾーン板20からなる。かご16と釣合いおもり17とは、水平投影面上で互いに重ならない位置に配置される。そして、かご16の上方に、そらせ車18が配置される。このそらせ車18に、主索19が巻き掛けられる。この主索19は、綱車5にも巻き掛けられる。主索19の一端には、かご16が連結される。一方、主索19の他端には、釣合いおもり17が連結される。そして、各乗り場近傍の昇降路壁には、ドアゾーン板20が配置される。
【0018】
かご16内には、かご内操作盤21が設けられる。かご16下部のドアゾーン板20側には、ドアゾーンセンサ22が配置される。このドアゾーンセンサ22は、かご位置検出器として機能する。すなわち、ドアゾーンセンサ22は、ドアゾーン板20を検出しているときに、ON状態となるように設けられる。つまり、ドアゾーンセンサ22は、かご16が乗り場から所定の距離の範囲内に配置されているときにON状態となり、かご16が乗り場から所定の距離の範囲外に配置されているときにOFF状態となるように設けられる。
【0019】
かご16の出入口には、ゲート23が設けられる。このゲート23に対応して、ゲートスイッチ24が配置される。このゲートスイッチ24は、戸開検出器として機能する。すなわち、ゲートスイッチ24は、ゲート23が閉じているときにON状態となり、ゲート23が開いているときにOFF状態となるように設けられる。
【0020】
各階のエレベータの乗り場(図示せず)には、乗り場機器25が設けられる。この乗り場機器25は、乗り場釦26、ドア27からなる。乗り場釦26は、乗り場の出入口の近傍に配置される。ドア27は、乗り場の出入口に配置される。このドア27は、ゲート23が対向している場合に、ゲート23の開閉に追従して開閉する。このドア27に対応して、ドアスイッチ28が設けられる。このドアスイッチ28は、戸開検出器として機能する。すなわち、ドアスイッチ28は、ドア27が閉じているときにON状態となり、ドア27が開いているときにOFF状態となるように設けられる。
【0021】
移動検出器6の出力、ドアゾーンセンサ22の出力、ゲートスイッチ24の出力、ドアスイッチ28の出力は、エレベータ運転制御装置29に入力される。これにより、エレベータ運転制御装置29は、かご16の位置やゲート23、ドア27の開閉状況を把握する。
【0022】
そして、エレベータ運転制御装置29は、電力変換装置3に対して駆動信号30を出力する。この駆動信号30によって、電動機4への電源供給が制御される。この電源供給の制御により、電動機4の回転が制御される。この回転の制御により、綱車5の回転が制御される。この回転の制御により、主索19の移動が制御される。この移動の制御により、かご16の昇降が制御される。また、エレベータ運転制御装置29は、ゲート23の開閉も制御する。
【0023】
上記構成のエレベータにおいては、電源2と電力変換装置3との間に、第1電磁接触器主接点31が設けられる。また、第1ブレーキコイル9及び第2ブレーキコイル12とブレーキ電源14との間に、第2電磁接触器主接点32が設けられる。これらの主接点31、32は、電磁コイル33が励磁されることにより閉成される。この電磁コイル33と接地との間には、トランジスタ素子34が設けられる。このトランジスタ素子34は、戸開走行保護装置35に動作を制御される。
【0024】
この戸開走行保護装置35は、エレベータ運転制御装置29とは独立して設けられる。戸開走行保護装置35には、移動検出器6の出力、ドアゾーンセンサ22の出力、ゲートスイッチ24の出力、ドアスイッチ28の出力が入力される。戸開走行保護装置35は、これらの出力に基づいて、戸開停止中のかご16が走行を開始したと判断した場合に、トランジスタ素子34に対して駆動電圧の印加を中止する。また、戸開走行保護装置35は、これらの出力に基づいて、かご16の走行中にエレベータが戸開したと判断した場合も、トランジスタ素子34に対して駆動電圧の印加を中止する。
【0025】
これらの駆動電圧の印加を中止により、電磁コイル33が消磁される。この消磁により、第1電磁接触器主接点31と第2電磁接触器主接点32とが開放する。この開放により、電動機4への電源供給が遮断される。また、第1ブレーキコイル9及び第2ブレーキコイル12への電源供給も遮断される。この電源供給の遮断により、第1ブレーキライニング8及び第2ブレーキライニング11が綱車5の回転を停止させる。この綱車5の回転の停止により、主索19が停止する。この停止により、かご16が停止する。
【0026】
本実施の形態においては、戸開走行保護装置35は、所定の周期で、自己診断走行要求を出力する。この自己診断走行要求には、自己診断戸開要求も含まれる。そして、自己診断走行要求は、切替装置36に入力される。図2に示すように、切替装置36には、かご内操作盤21から行き先階情報も入力される。また、切替装置36には、乗り場釦26からかご呼び情報も入力される。そして、切替装置36は、行き先階情報、かご呼び情報、自己診断走行要求に従った走行指令をエレベータ運転制御装置29に対して出力する。
【0027】
次に、図3を用いて、切替装置36の動作を具体的に説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される切替装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS1でかご呼び情報又は行き先階情報が入力されたか否かが判断される。かご呼び情報又は行き先階情報が入力された場合は、ステップS2に進む。ステップS2では、かご呼び情報又は行き先階情報に従って走行指令が出力され、動作が終了する。
【0029】
一方、ステップS1でかご呼び情報及び行き先階情報のいずれも入力されていない場合は、ステップS3に進む。ステップS3では、自己診断走行要求が入力されたか否かが判断される。自己診断走行要求が入力された場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、停止可能階への走行指令が出力される。なお、この走行指令には、停止可能階での戸開指令も含まれる。
【0030】
これに対し、ステップS3で自己診断走行要求が入力されていない場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、走行指令が解除される。
【0031】
次に、図4を用いて、戸開走行保護装置35を具体的に説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置の構成図である。
図4に示すように、戸開走行保護装置35は、戸開走行保護制御部37と自己診断制御部38とを備える。
【0032】
戸開走行保護制御部37は、移動検出器6の出力、ドアゾーンセンサ22の出力、ゲートスイッチ24の出力、ドアスイッチ28の出力に基づいて、トランジスタ素子34に対する駆動電圧の印加を制御する機能を備える。
【0033】
自己診断制御部38は、所定の周期で、自己診断走行要求を出力する機能を備える。また、自己診断制御部38は、かご16の走行時における移動検出器6の出力の変化、ドアゾーンセンサ22の出力の変化に基づいて、ドアゾーンセンサ22がON状態側に固着しているか否かを診断する機能を備える。さらに、自己診断制御部38は、ゲート23、ドア27の開動作時におけるゲートスイッチ24の出力の変化、ドアスイッチ28の出力の変化に基づいて、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28がON状態側に固着しているか否かを診断する機能を備える。
【0034】
上記戸開走行保護装置35においては、自己診断制御部38は、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28のいずれかがON状態側に固着していると判断した場合は、機器異常故障に関する情報を戸開走行保護制御部37に出力する。この場合、戸開走行保護制御部37は、トランジスタ素子34に対して駆動電圧の印加を中止する。
【0035】
ここで、自己診断走行要求を出力する周期は、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28に要求される機能失敗確率との関係で設定される。例えば、IEC61508「電気・電子・プログラマブル電子に関する機能安全規格」のPart.6 AnnexBによれば、1重系構成の場合、機能失敗確率PFDと自己診断周期Tとの間は、次の(1)式の関係が成立する。
【0036】
PFD=λDDMTTR+λDU(T/2+MTTR) (1)
ここで、λDDは故障時に検出できる危険側故障率、λDUは故障時には検出できず、定期診断により検出できる危険側故障率、MTTRは平均故障修理時間である。これらの値は、機器固有のものであり、適合表から取得することができる。
【0037】
本実施の形態においては、ドアゾーンセンサ22のON故障を診断するために、(1)式に基づいて、ドアゾーンセンサON故障タイマの時限T_dzss_failが設定される。また、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28のON故障を診断するために、(1)式に基づいて、ドア/ゲートスイッチON故障タイマの時限T_dgsw_failが設定される。
【0038】
そして、自己診断走行要求を出力する周期として、ドアゾーンセンサ診断タイマの時限T_dzss_diag、ドア/ゲートスイッチ診断タイマの時限T_dgsw_diagが設定される。これらの時限は、それぞれ、ドアゾーンセンサON故障タイマの時限T_dzss_fail、ドア/ゲートスイッチON故障タイマの時限T_dgsw_failから尤度を考慮して設定される。
【0039】
すなわち、ドアゾーンセンサ診断タイマの時限T_dzss_diag、ドア/ゲートスイッチ診断タイマの時限T_dgsw_diagは、それぞれ、ドアゾーンセンサON故障タイマの時限T_dzss_fail、ドア/ゲートスイッチON故障タイマの時限T_dgsw_failよりも小さい値に設定される。
【0040】
また、ドアゾーンセンサ22のON故障を診断するための走行距離の基準として、距離L_diagが設定される。この距離L_diagは、ドアゾーン検出距離に尤度を加えた値に設定される。
【0041】
次に、図5〜図11を用いて、戸開走行保護装置35の自己診断制御部38に設定された処理を具体的に説明する。
図5はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された処理の概要を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS11では、診断走行管理処理が実施される。その後、ステップS12では、診断実施処理が実施される。戸開走行保護装置35の自己診断制御部38は、これらの処理を繰り返す。
【0042】
次に、図6〜図8を用いて、図5の診断走行管理処理を説明する。
図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された診断走行管理処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS21では、ドアゾーンセンサ診断要求管理処理が実施され、ステップS22に進む。ステップS22では、ドアゾーンセンサ診断要求フラグdiag_dzss_reqがONか否かが判断される。ドアゾーンセンサ診断要求フラグdiag_dzss_reqがONでない場合は、ステップS23に進む。
【0044】
ステップS23では、ドア/ゲートスイッチ診断要求管理処理が実施され、ステップS24に進む。ステップS24では、ドア/ゲートスイッチ診断要求フラグdiag_dgsw_reqがONか否かが判断される。ドア/ゲートスイッチ診断要求フラグdiag_dgsw_reqがONでない場合は、ステップS25に進む。ステップS25では、自己診断走行要求が解除され、本処理が終了する。
【0045】
これに対し、ステップS22でドアゾーンセンサ診断要求フラグdiag_dzss_reqがONの場合や、ステップS24でドア/ゲートスイッチ診断要求フラグdiag_dgsw_reqがONの場合は、ステップS26に進む。ステップS26では、自己診断走行要求が出力され、本処理が終了する。
【0046】
図7はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドアゾーンセンサ診断要求管理処理を説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず、ステップS31では、ドアゾーンセンサ診断実施フラグdiag_dzss_finがONか否かが判断される。ドアゾーンセンサ診断実施フラグdiag_dzss_finがONでない場合は、ステップS32に進む。ステップS32では、ドアゾーンセンサ診断タイマの値が時限T_dzss_diagよりも大きいか否かが判断される。
【0048】
ドアゾーンセンサ診断タイマの値が時限T_dzss_diag以下の場合は、ステップS33に進む。ステップS33では、ドアゾーンセンサ診断タイマがインクリメントされ、本処理が終了する。一方、ステップS32でドアゾーンセンサ診断タイマの値が時限T_dzss_diagよりも大きい場合は、ステップS34に進む。ステップS34では、ドアゾーンセンサ診断要求フラグdiag_dzss_reqがONにされ、本処理が終了する。
【0049】
これに対し、ステップS31でドアゾーンセンサ診断実施フラグdiag_dzss_finがONの場合は、ステップS35に進む。ステップS35では、ドアゾーンセンサ診断実施フラグdiag_dzss_finがOFFにされ、ステップS36に進む。ステップS36では、ドアゾーンセンサ診断タイマがリセットされ、本処理が終了する。
【0050】
図8はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドア/ゲートスイッチ診断要求管理処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
まず、ステップS41では、ドア/ゲートスイッチ診断実施フラグdiag_dgsw_finがONか否かが判断される。ドア/ゲートスイッチ診断実施フラグdiag_dgsw_finがONでない場合は、ステップS42に進む。ステップS42では、ドア/ゲートスイッチ診断タイマの値が時限T_dgsw_diagよりも大きいか否かが判断される。
【0052】
ドア/ゲートスイッチ診断タイマの値が時限T_dgsw_diag以下の場合は、ステップS43に進む。ステップS43では、ドア/ゲートスイッチ診断タイマがインクリメントされ、本処理が終了する。一方、ステップS42でドア/ゲートスイッチ診断タイマの値が時限T_dgsw_diagよりも大きい場合は、ステップS44に進む。ステップS44では、ドア/ゲートスイッチ診断要求フラグdiag_dgsw_reqがONにされ、本処理が終了する。
【0053】
これに対し、ステップS41でドア/ゲートスイッチ診断実施フラグdiag_dgsw_finがONの場合は、ステップS45に進む。ステップS45では、ドア/ゲートスイッチ診断実施フラグdiag_dgsw_finがOFFにされ、ステップS46に進む。ステップS46では、ドア/ゲートスイッチ診断タイマがリセットされ、本処理が終了する。
【0054】
次に、図9〜図11を用いて、図5の診断実施処理を説明する。
図9はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定された診断実施処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【0055】
まず、ステップS51では、ドアゾーンセンサON故障チェック処理が実施され、ステップ52に進む。ステップS52では、ドアゾーンセンサON故障異常dzss_fail がONか否かが判断される。ドアゾーンセンサON故障異常dzss_failがONでない場合は、ステップS53に進む。
【0056】
ステップS53では、ドア/ゲートスイッチON故障チェック処理が実施され、ステップS54に進む。ステップS54では、ドア/ゲートスイッチON故障異常dgsw_failがONか否かが判断される。ドア/ゲートスイッチON故障異常dgsw_failがONでない場合は、ステップS55に進む。ステップS55では、機器故障正常が出力され、本処理が終了する。
【0057】
一方、ステップS52でドアゾーンセンサON故障異常dzss_failがONの場合や、ステップS54でドア/ゲートスイッチON故障異常dgsw_failがONの場合は、ステップS56に進む。ステップS56では、機器故障異常が出力され、本処理が終了する。
【0058】
図10はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドアゾーンセンサON故障チェック処理を説明するためのフローチャートである。
【0059】
まず、ステップS61では、移動検出器6の出力に基づいて、かご16が走行開始から距離L_diag以上走行したか否かが判断される。かご16が距離L_diag以上走行していない場合は、ステップS62に進む。ステップS62では、ドアゾーンセンサON故障タイマの値が時限T_dzss_failよりも大きいか否かが判断される。
【0060】
ドアゾーンセンサON故障タイマの値が時限T_dzss_fail以下の場合は、ステップS63に進む。ステップS63では、ドアゾーンセンサON故障タイマがインクリメントされ、本処理が終了する。
【0061】
一方、ステップS61でかご16が距離L_diag以上走行した場合は、ステップS64に進む。ステップS64では、ドアゾーンセンサ22の入力状態がOFFになったか否かが判断される。ドアゾーンセンサ22の入力状態がOFFになった場合は、ステップS65に進む。
【0062】
ステップS65では、ドアゾーンセンサON故障正常としてdzss_failがOFFにされ、ステップS66に進む。ステップS66では、ドアゾーンセンサON故障タイマがリセットされ、ステップS67に進む。ステップS67では、ドアゾーンセンサ診断実施フラグdiag_dzss_finがONにされ、本処理が終了する。
【0063】
これに対し、ステップS62でドアゾーンセンサ22の入力状態がOFFにならない場合や、ステップS64でドアゾーンセンサON故障タイマの値が時限T_dzss_failよりも大きい場合は、ステップS68に進む。ステップS68では、ドアゾーンセンサON故障異常としてdzss_failがONにされ、本処理が終了する。
【0064】
図11はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置に利用される戸開走行保護装置に設定されたドア/ゲートスイッチON故障チェック処理を説明するためのフローチャートである。
【0065】
まず、ステップS71では、ゲートスイッチ24の入力状態及びドアスイッチ28の入力状態がともにOFFであるか否かが判断される。ゲートスイッチ24の入力状態及びドアスイッチ28の入力状態のいずれかがOFFでない場合は、ステップS72に進む。ステップS72では、ドア/ゲートスイッチON故障タイマの値が時限T_dgsw_failよりも大きいか否かが判断される。ドア/ゲートスイッチON故障タイマの値が時限T_dgsw_fail以下の場合は、ステップS73に進む。ステップS73では、ドア/ゲートスイッチON故障タイマがインクリメントされ、本処理が終了する。
【0066】
一方、ステップS71でゲートスイッチ24の入力状態及びドアスイッチ28の入力状態がともにOFFである場合は、ステップS74に進む。ステップS74では、ドア/ゲートスイッチON故障正常としてdgsw_failがOFFにされ、ステップS75に進む。
【0067】
ステップS75では、ドア/ゲートスイッチON故障タイマがリセットされ、ステップS76に進む。ステップS76では、ドア/ゲートスイッチ診断実施フラグdiag_dgsw_finがONにされ、本処理が終了する。
【0068】
これに対し、ステップS72でドア/ゲートスイッチON故障タイマの値が時限T_dgsw_failよりも大きい場合は、ステップS77に進む。ステップS77では、ドア/ゲートスイッチON故障異常としてdgsw_failがONにされ、本処理が終了する。
【0069】
上述した各処理が設定された戸開走行保護装置35においては、ドアゾーンセンサ診断タイマの値が時限T_dzss_diagよりも大きい場合や、ドア/ゲートスイッチ診断タイマの値が時限T_dgsw_diagよりも大きい場合に、自己診断走行要求が出力される。この自己診断走行要求が出力されるたびに、かご16は異なる階まで走行して停止し、当該階でゲート23とドア27が開く。
【0070】
この際、時限T_dzss_fail内にドアゾーンセンサ22の状態がOFFになれば、ドアゾーンセンサON故障タイマがリセットされる。その後、時限T_dzss_fail内にドアゾーンセンサ22がOFFとなる状態が繰り返されれば、ドアゾーンセンサ22がON状態側に固着していないと診断される。
【0071】
しかしながら、時限T_dzss_fail内にドアゾーンセンサ22の状態がOFFとならない場合は、ドアゾーンセンサ22がON状態側に固着していないと診断することはできない。すなわち、ドアゾーンセンサ22がON状態側に固着している可能性があると診断される。この場合、機器故障異常が出力される。
【0072】
また、かご16が距離L_diag以上走行したのにもかかわらず、ドアゾーンセンサ22の状態がOFFにならない場合は、ON状態側に固着していると診断される。この場合も、機器故障異常が出力される。
【0073】
さらに、時限T_dgsw_fail内にゲートスイッチ24の入力状態及びドアスイッチ28の入力状態がともにOFFになれば、ドア/ゲートスイッチON故障タイマがリセットされる。その後、時限T_dgsw_fail内にゲートスイッチ24及びドアスイッチ28がともにOFFとなる状態が繰り返されれば、ゲートスイッチ24及びドアスイッチ28がON状態側に固着していないと診断される。
【0074】
しかしながら、時限T_dgsw_fail内にゲートスイッチ24及びドアスイッチ28の少なくとも一方がOFFにならない場合は、ゲートスイッチ24及びドアスイッチ28がON状態側に固着していないと診断することができない。この場合、機器故障異常が出力される。
【0075】
以上で説明した実施の形態1によれば、戸開走行保護装置35は、自己診断戸開要求を含む自己診断走行要求を所定の周期で出力する。そして、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の状態の変化に基づいて、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28がON状態側に固着しているか否かが判断される。このため、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の故障を定期的に診断することができる。
【0076】
ここで、自己診断走行要求が出力される周期は、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28に要求される機能失敗確率との関係で設定される。このため、戸開走行保護装置35全体としての機能失敗確率を所定の要求水準内で保証することができる。
【0077】
また、自己診断走行要求が出力されるたびに、かご16が異なる階に走行してドア27が開く。このため、複数の乗り場の各々に設けられた複数のドア27の故障を診断することができる。
【0078】
さらに、かご呼び情報及び行き先階情報の少なくとも一方の入力が、自己診断走行要求と重なったときは、入力されたかご呼び情報又は行き先階情報が優先される。このため、エレベータの運行効率を下げずに、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の故障を診断することができる。
【0079】
なお、実施の形態1においては、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28が故障しているか否かを所定の周期で判断する構成となっている。しかしながら、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の少なくとも一つが故障しているか否かを所定の周期で判断する構成としてもよい。
【0080】
また、診断する故障をON故障に限定する必要はない。診断する故障は、ドアゾーンセンサ22、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の設定に対応して選定すればよい。すなわち、ドアゾーンセンサ22の状態が乗り場から所定の距離の範囲内に配置されたかご16を検出する側に固着しているか否かを診断し、ゲートスイッチ24、ドアスイッチ28の状態がゲート23、ドア27の閉状態を検出する側に固着しているか否かを診断すればよい。この場合も、戸開走行保護装置35全体としての機能失敗確率を所定の要求水準内で保証することができる。
【0081】
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0082】
実施の形態1においては、エレベータ運転制御装置29、戸開走行保護装置35、切替装置36は、それぞれ独立して構成されていた。一方、実施の形態2においては、エレベータ運転制御装置29、戸開走行保護装置35、切替装置36に相当する動作を1つのエレベータ制御CPU39が行うようになっている。
【0083】
具体的には、エレベータ制御CPU39は、エレベータ運転制御装置29に相当するエレベータ運転制御プログラム40を備える。また、エレベータ制御CPU39は、戸開走行保護装置35に相当する戸開走行保護プログラム41を備える。さらにエレベータ制御CPU39は、切替装置36に相当する切替プログラム42を備える。なお、これらのプログラム40〜42は、共通メモリ(図示せず)を介して、信号の伝送を行うようになっている。
【0084】
以上で説明した実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータの構成図である。なお、実施の形態1又は実施の形態2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
実施の形態2においては、エレベータ運転制御プログラム40と切替プログラム42とは、別のプログラムとして実装されていた。一方、実施の形態3においては、エレベータ運転制御プログラム43には、切替プログラム42と同様の処理を行う切替処理44が実装されている。なお、エレベータ運転制御プログラム43と戸開走行保護プログラム41は、共通メモリ(図示せず)を介して、信号の伝送を行うようになっている。
【0087】
以上で説明した実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 駆動装置、 2 電源、 3 電力変換装置、 4 電動機、 5 綱車、
6 移動検出器、 7 ブレーキ装置、 8 第1ブレーキライニング、
9 第1ブレーキコイル、 10 第1ブレーキチョッパ、
11 第2ブレーキライニング、 12 第2ブレーキコイル、
13 第2ブレーキチョッパ、 14 ブレーキ電源、 15 昇降路内機器、
16 かご、 17 釣合いおもり、 18 そらせ車、 19 主索、
20 ドアゾーン板、 21 かご内操作盤、 22 ドアゾーンセンサ、
23 ゲート、 24 ゲートスイッチ、 25 乗り場機器、 26 乗り場釦、
27 ドア、 28 ドアスイッチ、 29 エレベータ運転制御装置、
30 駆動信号、 31 第1電磁接触器主接点、 32 第2電磁接触器主接点、
33 電磁コイル、 34 トランジスタ素子、 35 戸開走行保護装置、
36 切替装置、 37 戸開走行保護制御部、 38 自己診断制御部、
39 エレベータ制御CPU、 40 エレベータ運転制御プログラム、
41 戸開走行保護プログラム、 42 切替プログラム、
43 エレベータ運転制御プログラム、 44 切替処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごが前記エレベータの乗り場から所定の距離以上離れていることを検出するかご位置検出器と、
前記エレベータのドアが開いていることを検出する戸開検出器と、
前記エレベータの運転を制御する運転制御装置と、
前記かご位置検出器と前記戸開検出器との検出結果に基づいて、前記ドアを開いて停止中の前記かごが走行を開始したことが検出された場合や、前記かごの走行中に前記ドアが開いたことが検出された場合に、前記かごを停止させる保護装置と、
を備え、
前記保護装置は、前記かごを前記乗り場から前記所定の距離以上離れさせて前記かご位置検出器の故障を診断するための走行要求及び前記ドアを開かせて前記戸開検出器の故障を診断するための戸開要求の少なくとも一方を所定の周期で前記運転制御装置に対して出力することを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
前記保護装置は、前記かごの走行時における前記かご位置検出器の状態の変化に基づいて、前記かご位置検出器の状態が前記乗り場から前記所定の距離の範囲内に配置された前記かごを検出する側に固着しているか否かを診断することを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記保護装置は、前記ドアの開動作時における前記戸開検出器の状態の変化に基づいて、前記戸開検出器の状態が前記ドアの閉状態を検出する側に固着しているか否かを診断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
前記保護装置は、前記周期が経過するたびに前記かごが異なる階に走行して前記異なる階で前記ドアが開くように前記走行要求及び前記戸開要求を出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記運転制御装置は、前記乗り場に設けられた乗り場釦が出力したかご呼び情報及び前記かごに設けられたかご内操作盤が出力した行き先階情報の少なくとも一方の入力が、前記走行要求又は前記戸開要求の入力と重なったときは、入力されたかご呼び情報又は行き先階情報を優先して前記エレベータの運転を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−1361(P2012−1361A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140796(P2010−140796)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】