説明

エレベータシステム

【課題】敷居間隙から昇降路内への物の落下を確実に防止でき、拾得パネル上の落下物の拾得時間を十分に確保する等乗客の利便性をさらに向上させることが可能なエレベータシステムを提供することである。
【解決手段】エレベータシステム10は、かご12の走行中は格納され、エレベータドア(かごドア16及び乗場ドア17)の開扉と連動して延出されてかご敷居20と乗場敷居21との間の間隙である敷居間隙を塞ぐ拾得パネル22と、拾得パネル22の格納を検知する格納検知部29と、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続するシステム制御部とを備える。かご敷居20の下部に、拾得パネル22の格納空間を有する拾得パネル格納部25と、拾得パネル22を乗場13の方向に延出させる電動モータブロック26とを備える。なお、システム制御部は、エレベータ制御装置18の一部として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特にかご敷居と乗場敷居との間の間隙から鍵やカードなど乗客の所持品が昇降路内(ピット)に落下することを防止できるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータのかご敷居及び乗場敷居の間には、数cm程度の間隙が設けられている。ここで敷居とは、エレベータドア(かごドア及び乗場ドアを意味する。以下同様。)のガイドレールが設けられる部分であり、エレベータの乗り降りの際に乗客が必ず跨ぐ部分である。かご敷居及び乗場敷居の間の間隙(以下、敷居間隙とする)は、エレベータかごがエレベータ乗場等に接触することを防止するため、また、かごドア及び乗場ドアの開閉装置の設置スペースを確保するために設けられる。
【0003】
上記のように、敷居間隙はエレベータの乗り降りの際に乗客が通る位置に存在するため、敷居間隙から昇降路内に乗客の所持品が誤って落下することがあり、その場合には、ピットまで落下するので専門業者による取り出し作業が必要になる。このような状況は乗客及び専門業者にとって不便であるが、敷居間隙は上記のような観点から設けられるものであるため、それを無くすことはできない。そこで、敷居間隙から昇降路内への物の落下を防止する装置等が幾つか開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、敷居間隙を塞ぐために間隙内に配置され、エレベータの乗客が誤って落としたものが間隙から昇降路内に落下するのを防止する閉塞部と、閉塞部に設けられ、閉塞部をかご側、乗場側のどちらか一方に取り付けるための取り付け部と、を備えたエレベータの敷居間隙閉塞板において、乗客が落とした物が閉塞部上でころがるのを防止するとともに、落下物が閉塞部の上面に当たったときに、落下物をかご又は乗場の方向へ跳ね返すため三角波状の凹凸が、閉塞部の上面に付けられているエレベータ敷居間隙閉塞板が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、エレベータのかご下に設けられ、かごドアの開扉と連動して突出し、敷居間隙からの落下物を受け、かごドアの閉扉に連動してかご下に格納されるエレベータの落下物受け止め装置において、かご下側に煙感知器とこの煙感知器の作動で出水する水タンクを設けたエレベータの落下物受け止め装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、敷居間隙を閉塞する閉塞状態及び鉛直方向下方を向き敷居間隙を開放する開放状態の2状態をとるように回動可能に取り付けられた閉塞帯と、閉塞帯を開放状態から閉塞状態をとる方向に回動させるように付勢する戻りバネと、閉塞帯に当接して開放状態から閉塞状態をとる方向の回動動作を規制し、閉塞状態を維持する第1のストッパと、一側の駆動腕がかごドア側に延出し、かつ、他側の従動腕が閉塞帯側に延出する曲臂形状に構成され、従動腕が閉塞帯と係合して閉塞帯を回動させる押し下げレバーと、開放状態から閉塞状態をとる方向に回動するように押し下げレバーを回動させるように付勢する引きバネと、従動腕に当接して押し下げレバーの回動動作を規制し、閉塞帯が閉塞状態をとるように押し下げレバーを維持する第2のストッパと、かごドアが全閉状態にあるときに駆動腕に係合して閉塞帯が開放状態をとるように押し下げレバーを維持し、かつ、かごドアが開閉途中の状態と全開状態との間にあるときに駆動腕との係合が解除されて、引きバネの付勢力により従動腕を第2のストッパに当接させるレバー作動片とを備えたエレベータ用敷居隙間閉塞装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、かご床の下に設けられた第1の駆動部と、この第1の駆動部に設けられ第1の駆動部の駆動により横方向に往復移動する第1の可動部と、この第1の可動部に設けられた第2の駆動部と、この第2の駆動部に設けられ第2の駆動部の駆動により縦方向に往復移動する第2の可動部と、この第2の可動部の先端部に取り付けられ乗場ドア及びかごドアが開かれたときに第2の可動部の上動により敷居間隙を塞ぐ塞ぎ部とを備えたエレベータ敷居間隙塞ぎ装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−278976号公報
【特許文献2】特開平5−43176号公報
【特許文献3】特開平10−250962号公報
【特許文献4】特開平10−87244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜4に記載の装置等によれば、敷居間隙から昇降路内への物の落下を抑制することはできるが、さらなる落下防止性能の向上や乗客の利便性向上等の観点から改良の余地が多分に存在する。
【0010】
特許文献1の拾得パネルは、エレベータかごの走行中に格納されないので敷居間隙を完全に塞ぐことはできず、物の落下防止機能を十分に発揮することができない。一方、特許文献2〜4の装置によれば、拾得パネルはエレベータかごの走行中には格納され、エレベータドアの開扉時には敷居間隙を完全に塞ぐことができる。
【0011】
しかしながら、特許文献2〜4の装置では、拾得パネル上に落下物が存在する状態においてもエレベータドアの閉扉が実行されるため、乗客が落下物を拾うための時間を十分に確保できない場合がある。また、特許文献2の装置では、拾得パネルが深みのある受皿であり、水タンクからの出水を行うためにかご床下に長く延びた構造であるため、乗客が落下物を拾い上げることは極めて困難である。さらに、特許文献3及び4の装置では、拾得パネルの駆動機構上、エレベータドアの閉扉により拾得パネル上に存在する落下物は昇降路内に落下することになり、乗客及び専門業者の不便を十分に解消することができない。
【0012】
本発明の目的は、敷居間隙から昇降路内への物の落下を確実に防止でき、拾得パネル上の落下物の拾得時間を十分に確保する等乗客の利便性をさらに向上させることが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエレベータシステムは、エレベータかごの走行中は格納され、エレベータかごの停止又はエレベータドアの開扉と連動して延出又は展開されてかご敷居と乗場敷居との間の間隙を塞ぐ拾得パネルと、拾得パネルの格納を検知する格納検知部と、格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、かご敷居の下部に、拾得パネルの格納空間を有する拾得パネル格納部と、拾得パネルをエレベータ乗場の方向に延出させる駆動アクチュエータと、を備え、拾得パネルは、エレベータ乗場側に位置する端部に上方に延びた拾得パネル壁部を有する平板形状から構成されることが好ましい。
【0015】
また、格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、拾得パネルが格納されない状態を知らせる警告手段を有することが好ましい。
【0016】
また、拾得パネル格納部のエレベータ乗場側端部に、拾得パネルとの間に所定の隙間をもって設置され、拾得パネル壁部に当接して拾得パネルを所定の位置に格納するためのストッパを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエレベータシステムによれば、エレベータかごの走行中は格納され、エレベータかごの停止又はエレベータドアの開扉と連動して延出又は展開されてかご敷居と乗場敷居との間の間隙を塞ぐ拾得パネルを備えるので、エレベータドアの開扉時には敷居間隙を完全に塞ぐことができ、敷居間隙から昇降路内に物が落下することを確実に防止することが可能になる。
【0018】
さらに、拾得パネルの格納を検知する格納検知部と、格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続する制御部とを備えるので、乗客が拾得パネル上の落下物を拾得する時間を十分に確保することができ、エレベータドアの閉扉によって拾得パネル上に存在する落下物が昇降路内に落下することがない。従って、敷居間隙から昇降路内への物の落下を確実に防止でき、乗客の利便性をさらに向上させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明において、かご敷居の下部に、拾得パネルの格納空間を有する拾得パネル格納部と、拾得パネルをエレベータ乗場の方向に延出させる駆動アクチュエータと、を備え、拾得パネルは、エレベータ乗場側に位置する端部に上方に延びた拾得パネル壁部を有する平板形状から構成されるので、乗客は落下物を拾い易く、且つ拾得パネルに捕捉された落下物がパネルの格納の際等にパネルから落ちることがない。また、拾得パネル上の塵埃の堆積を大幅に低減することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明において、格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、拾得パネルが格納されない状態を知らせる警告手段を有するので、例えば、拾得パネル上に落下物が存在してパネルが格納されない場合に、落下物の存在を乗客が容易に認識することができ、乗客の利便性をさらに向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明において、拾得パネル格納部のエレベータ乗場側端部に、拾得パネルとの間に所定の隙間をもって設置され、拾得パネル壁部に当接して拾得パネルを所定の位置に格納するためのストッパを有するので、拾得パネルが拾得パネル格納部の内部に入り過ぎることを容易に防止して、拾得パネル格納部の所定の位置、例えば、拾得パネルが拾得パネル格納部からはみ出さない適切な格納位置に拾得パネルを格納することができる。また、拾得パネルとの間に所定の隙間を調整することにより、拾得パネルが格納される場合の拾得パネルの状態を決定することができる。即ち、厚みの薄いコインやカード等が拾得パネル上に横たわって存在する場合にも、拾得パネルの格納を停止させる構成とすることができ、乗客の利便性を大幅に向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態につき図面を用いて以下詳細に説明する。図1は、エレベータシステム10及びエレベータシステム10が適用されるエレベータ11の全体構成を示す模式図である。図2は、エレベータシステム10の要部断面を示す模式図であり、拾得パネル22が延出した状態を示す図である。
【0023】
図1は、エレベータシステム10が適用されるエレベータ11、具体的には、エレベータかご12(以下、かご12とする)が、エレベータ乗場13(以下、乗場13とする)に停止した状態を示している。かご12は、上部機械室に設置された巻き上げ機14によって昇降路15を昇降して各乗場13の間を移動する。かご12にはかごドア16が、乗場13には乗場ドア17が設置され、かご12の停止と連動して、図示しないドア開閉装置によってかごドア16及び乗場ドア17が開閉される。かご12の走行やエレベータドア(かごドア16及び乗場ドア17を意味する。以下同様。)の開閉等エレベータ11の運転全般を制御する装置がエレベータ制御装置18であり、上部機械室に設置されている。また、昇降路15の下部には、図示しない緩衝器等が設置されたピット19が設けられる。なお、エレベータシステム10は、上部機械室や巻き上げ機14を備えるエレベータ11に限られず、機械レスエレベータや油圧式エレベータにも適用することができる。
【0024】
図1及び図2に示すように、かご敷居20及び乗場敷居21の間には、間隙(以下、敷居間隙とする)が設けられる。敷居間隙は、かご12が昇降路15内を走行中に乗場13等の壁に接触することを防止するため、また、図示しないエレベータドアの開閉装置の設置スペースを確保するために形成され、数cm程度の長さを有する。かご敷居20及び乗場敷居21とは、かごドアガイドレール32、乗場ドアガイドレール33が設けられる部分であり、エレベータ11の乗り降りの際に乗客が必ず跨ぐ部分である。従って、敷居間隙から乗客の所持品が昇降路15内に誤って落下することがあり、その場合には、ピット19まで落下するので専門業者による取り出し作業が必要になる。
【0025】
エレベータシステム10は、かご敷居20と乗場敷居21との間の間隙である敷居間隙から鍵やカードなど乗客の所持品が昇降路15内(ピット19)に落下することを防止するためのシステムである。エレベータシステム10は、敷居間隙を塞ぐ拾得パネル22を主要構成要素として備え、拾得パネル22を含む構成要素の大部分は、図1等に示すように、かご床23の下部に設置される。拾得パネル22は、エレベータドアの開扉時に敷居間隙を塞いで、敷居間隙から昇降路15内への物の落下を防止するための部材であり、敷居間隙から落下した物は拾得パネル22によって捕捉することができる。
【0026】
拾得パネル22の設置位置としては、かご敷居20及び乗場敷居21の下方であり、乗客が拾得パネル22上の落下物を容易に拾得できるようにするため、図2に示すように、敷居のすぐ下に設けることが好ましい。また、拾得パネル22は、乗場13側に設置することもできるが、導入コストやメンテナンスコスト削減等の観点から、かご12側に設置することが好ましい。
【0027】
拾得パネル22のサイズとしては、かごドア16の開閉方向に沿った長さ(以下、横幅とする)は、少なくともかごドア16の開口幅(出入り口の幅)と同等であることが好ましく、かごドア16の開口幅よりやや長めであることがより好ましい。かごドア16面に直交する方向に沿った長さ(以下、縦幅とする)は、敷居間隙を完全に塞ぐことができる長さであることが好ましい。即ち、図2に示すように、拾得パネル22が延出した状態において、乗場13の壁と拾得パネル22は接触することが好ましい。
【0028】
拾得パネル22は、乗場13の壁と接触して敷居間隙を塞ぐことが好ましいため、拾得パネル22の傷つきを防止するため、乗場13側の端部にゴム材料等の弾性部材を設置することができる。拾得パネル22自体を構成する材料としては、後述する駆動アクチュエータや格納検知部29の種類によっても異なるが、ステンレス(SUS)等の金属やプラスチックを使用することができる。
【0029】
拾得パネル22の形状としては、敷居間隙を完全に塞ぐことができる形状であれば、特に限定されないが、拾得パネル22は上記のようなサイズであることが好ましいため、横幅が長い矩形形状であることが好ましい。また、凹凸のあるパネルや深さの深いパネルも使用することはできるが、拾得パネル22に捕捉された落下物を拾得し易くする等乗客の利便性向上の観点から、平板形状のパネルを使用することが好ましい。さらに、平板形状の拾得パネル22から捕捉物(敷居間隙から落下して拾得パネル22の上に存在する落下物を意味する。以下同様。)が落下しないように、拾得パネル22の乗場13側に位置する端部に上方に延びた拾得パネル壁部24を有することが好ましい。拾得パネル壁部24は、捕捉物の落下を防止するだけではなく、後述するように、拾得パネル22上に落下物が存在することを検知する際にも重要な役割を果たす。なお、拾得パネル壁部24と同様の壁部を拾得パネル22の左右端部にも形成することができる。
【0030】
拾得パネル22は、かご12の走行中は、乗場13等の壁や図示しないエレベータドア開閉装置に接触しないように格納される必要がある。ここで拾得パネル22が格納された状態とは、敷居間隙が閉塞されない状態であり、かご12の面に沿って拾得パネル22が折り畳まれた状態や後述するように拾得パネル格納部25を備え拾得パネル22がその内部に収納された状態等が挙げられる。拾得パネル22が折り畳まれる構成としては、拾得パネル22の一端に横幅方向に沿った回転軸を備え、パネルが回動可能にその一端がかご12に結合された構成等が挙げられる。回転軸の端部に回転式電動モータ等の駆動アクチュエータを設置すれば、かご12の状況に応じて拾得パネル22を回動させることが可能となり、かご12の走行中はかご12の面に沿って格納しておくことができる。
【0031】
拾得パネル22への塵埃の堆積を防止する等の観点から、図3等に示すように、拾得パネル22は、かご12の走行中において、かご敷居20の下方に形成された拾得パネル格納部25に格納されることが好ましい。拾得パネル格納部25は、拾得パネル22の縦幅方向に沿った空洞部を有し、その空洞部が拾得パネル22を格納する格納空間となる。
【0032】
拾得パネル格納部25には、拾得パネル22を乗場13の方向に延出させる電動モータブロック26(以下、電動モータ26とも称する)が設置される。電動モータブロック26は、拾得パネル22を駆動する駆動アクチュエータであり、減速機を含んで構成されることが好ましい。図2に示すように、電動モータブロック26の回転軸(駆動プーリ)及び従動プーリ31には駆動ベルト27が設置され、駆動ベルト27には、拾得パネル22の一部が結合される。従って、電動モータ26の回転運動が駆動ベルト27を介して拾得パネル22に伝達され、拾得パネル22は敷居間隙を塞ぐように延出できる。なお、拾得パネル22の移動をスムーズに行うため、図2に示すように、拾得パネル格納部25の両端部には、拾得パネル22を移動可能に固定するガイドレール28(1点鎖線で示す)を設置することが好ましい。電動モータブロック26は、ガイドレール28と同様に、拾得パネル格納部25の両端部に設置されることが好ましい。
【0033】
図3は、図2において、拾得パネル22が格納された状態を示す図であり、かご12の走行状態においては、拾得パネル22は拾得パネル格納部25に格納されている。拾得パネル22を格納する場合には、拾得パネル22を延出させる場合とは逆に電動モータ26を回転させる。拾得パネル格納部25の乗場13側の端部には、拾得パネル22の行き過ぎを防止して、拾得パネル格納部25の所定の位置に拾得パネル22を格納するために、ゴム製等のストッパ30を設置することができる。図3に示すように、ストッパ30は、拾得パネル壁部24に当接する位置に設置することが好ましく、このような構成とすれば、拾得パネル22の行き過ぎを容易に防止して、拾得パネル格納部25の所定の位置、例えば、拾得パネル22が拾得パネル格納部25からはみ出さない適切な格納位置に拾得パネル22を格納することができる。
【0034】
拾得パネル22を延出及び格納する駆動アクチュエータとしては、回転式の電動モータ26の他に、油圧式モータ等の公知の駆動アクチュエータを使用することができる。また、駆動ベルト27を使用する駆動系の他にも、ラックとピニオンなど公知の駆動系を適用することができる。例えば、図4に示すように、駆動アクチュエータとして電磁コイル34を使用することもできる。電磁コイル34を使用する駆動方法としては、ソレノイドなど公知の方法を適用することができる。電磁コイル34を励磁することにより、図4に示すように、拾得パネル22の端部に設置された戻りバネ35の付勢力に逆らって拾得パネル22は延出され、電磁コイル34の励磁を停止することにより、戻りバネ35の付勢力に従って拾得パネル22は格納される。
【0035】
拾得パネル格納部25には、拾得パネル22の格納を検知する格納検知部29が設置される。格納検知部29は、拾得パネル22の格納を検知でき、拾得パネル格納部25に設置できる装置であれば、種々の検出方式のセンサを使用することができる。格納検知部29に適用できるセンサとしては、例えば、タッチスイッチ、近接センサ、光電センサなどが挙げられる。タッチスイッチは、接触式のスイッチであり、拾得パネル22の一部がスイッチ部に触れることによりスイッチが入り、拾得パネル22を検知することが可能である。一方、近接センサや光電センサは、非接触式のセンサであり、エレベータ11の使用頻度が高い場合には、消耗し難い非接触式のセンサを使用することが好ましい。
【0036】
近接センサとは、動作原理の違いにより、電磁誘導を利用した高周波発振型、磁石を用いた磁気型、静電容量の変化を利用した静電容量型の三つのタイプに大別される。いずれの方式のセンサを使用しても、拾得パネル22を検知することが可能である。例えば、高周波発振型の近接センサを適用した場合には、検出コイルより発生した高周波磁界に検出物体(金属)である拾得パネル22が近づくと、電磁誘導により拾得パネル22に誘導電流(渦電流)が流れ、この電流によって検出コイルのインピーダンスが変化することにより拾得パネル22が検知される。光電センサによる拾得パネル22の検知は、可視光線や赤外線等を投光部から信号光として発射し、拾得パネル22によって反射される光を受光部で検出することにより行われる。金属製の拾得パネル22を使用する場合には、コスト削減等の観点から近接センサを使用することが好ましい。
【0037】
格納検知部29は、拾得パネル22が拾得パネル格納部25の格納されるべき適切な格納位置に格納されたか否かを検知するための装置であるから、図3に示すように、拾得パネル22が格納された状態で拾得パネル22のかご12側の端部、即ち、拾得パネル壁部24が形成された端部と反対側の端部が位置する部分に設置されることが好ましい。従って、格納検知部29を設置する位置は、拾得パネル22の縦幅やストッパ30の設置位置等によって変更することが好ましい。なお、格納レベルを厳格に設定しすぎると、例えば、拾得パネル22とストッパ30との間に塵埃が挟まって僅かに隙間が開いた場合にも拾得パネル22が格納されていないと判定され、後述するように、エレベータ11の運転が規制される。このような状態は好ましくはないので、乗客の利便性やエレベータ11の走行安全性等を十分に考慮して、格納検知部29の設置位置や検知範囲を決定する必要がある。例えば、エレベータ11の走行安全性等を満足する場合、格納検知部29を図3等に示す位置よりも乗場13側に設置して、拾得パネル22が完全に格納されない、即ち拾得パネル22の一部が拾得パネル格納部25から延出した状態で拾得パネル22を検知する構成とすることもできる。
【0038】
また、ストッパ30の上下方向の長さ、即ち、ストッパ30と拾得パネル22との間の隙間を調整することにより、拾得パネル22が格納される場合の拾得パネル22の状態を決定することができる。即ち、ストッパ30は、拾得パネル22との間に所定の隙間をもって設置されているが、図2等に示すように、所定の隙間がほとんど無く、両者が極めて近接して設置される場合には、例えば、カードやコイン等の厚みの薄い捕捉物が横たわって存在するときにも、捕捉物がストッパ30に引っ掛かり拾得パネル22が格納されないようにすることができる。電動モータ26に所定値以上のトルクが加わると、電動モータ26の駆動を停止する或いは拾得パネル22を延出する方向に駆動する等の制御設定を設けることもできる。ここで所定値を小さく設定すれば、コイン等の小さな捕捉物がストッパ30に引っ掛かった場合にも拾得パネル22の格納を停止し、後述するように、エレベータドアの開扉状態を継続することができる。
【0039】
一方、図5に示すように、拾得パネル22上に、厚みがありストッパ30と同等以上の長さを有する落下物が存在する場合には、ストッパ30と拾得パネル壁部24との間、或いはかご敷居20と拾得パネル壁部24との間に落下物が挟まれて、拾得パネル22の格納が停止される。
【0040】
エレベータシステム10は、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続するシステム制御部を備える。システム制御部は、エレベータシステム10の各構成要素の作動を統一的に制御する機能を有する装置であり、後述するように、エレベータドアの開扉と連動して拾得パネル22を延出させる機能等も備える。統一的に制御される各構成要素とは、電動モータブロック26、格納検知部29、後述する音声警告装置等の装置であり、これらの装置はシステム制御部による制御指令を受けて所定の操作を行う。
【0041】
システム制御部は、CPUと、後述の各手段の機能を実行する際に使用される制御パラメータ等の入力に用いられる入力装置と、入力した制御パラメータ、制御プログラムなどを記憶する記録装置と、入出力ポートなどを備える装置であって、専用の制御装置或いはコンピュータによって構成することができる。後述の各手段の機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することにより実現できる。なお、システム制御部による制御は、エレベータ11の運転と密接に関係するため、エレベータ制御装置18の一部として構成されることが好ましい。
【0042】
エレベータ制御装置18の一部として構成されるシステム制御部は、エレベータドアの開扉と連動して電動モータ26を駆動することにより拾得パネル22を延出させる拾得パネル延出手段と、エレベータ制御装置18によるエレベータドアを閉扉する制御信号を図示しないエレベータドア開閉装置よりも早く認識して、エレベータドアが閉扉される前に拾得パネル22を格納する拾得パネル格納手段と、格納検知部29による拾得パネル22の検知情報を取得してエレベータドアの開扉を継続させる走行規制手段と、後述する警告手段とを有する。
【0043】
警告手段とは、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されない場合に、図示しないかご内操作盤等に設置される音声警告装置等から拾得パネル22が格納されない状態を知らせるアナウンスを行う機能を有する。拾得パネル22が格納されない状態としては、図5に示すように、パネル上に落下物が存在する場合が考えられる。従って、警告手段によって拾得パネル22上に落下物が存在する等のアナウンスを行うことにより、乗客は落下物の存在を容易に認識して拾得することができる。一方、電動モータ26等の故障により拾得パネル22が格納されない場合も発生し得るので、その場合には、専門業者に連絡する等の処理が必要になる。
【0044】
上記構成のエレベータシステム10の作用について、図6を加えて以下詳細に説明する。図6は、エレベータシステム10の制御手順を示すフローチャートである。
【0045】
エレベータ11は、上記のように、エレベータ制御装置18によって、その運転が統一的に制御されている。エレベータ制御装置18の機能により、かご12が特定の乗場13に停止すると、図示しないドア開閉装置によりかごドア16及び乗場ドア17が開扉される。エレベータ制御装置18の一部として構成されるシステム制御部は、エレベータドアを開扉する制御信号を認識して、エレベータドアの開扉と同時或いはエレベータドアが開扉する前に、電動モータ26を駆動して拾得パネル22を延出させる(S10)。拾得パネル22が拾得パネル格納部25から延出して敷居間隙を塞ぐことにより、キーやカードなど乗客の所持品が敷居間隙から昇降路15内に落下することを防止することができる。この手順は、システム制御部の拾得パネル延出手段の機能によって実行される。
【0046】
エレベータドアが開扉された状態においては、拾得パネル22が延出され敷居間隙が閉塞された状態が継続される。エレベータ制御装置18からのエレベータドアを閉扉する制御信号をエレベータドア開閉装置よりも早く認識して、エレベータドアが閉扉される前に、電動モータ26を延出時と逆方向に回転駆動させて拾得パネル22を格納する(S11)。この手順は、システム制御部の拾得パネル格納手段の機能により実行される。
【0047】
S11により拾得パネル22の格納操作が実行された場合には、拾得パネル22が拾得パネル格納部25の適切な格納位置に格納されたか否かを確認する(S12)。図5に示すように、拾得パネル22上に落下物が存在する場合には、拾得パネル22を格納することができず、拾得パネル格納部25の奥に設置された格納検知部29によって拾得パネル22は検知されない。即ち、S11により拾得パネル22の格納操作が実行された場合であって、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されないときは、拾得パネル22は格納されていないと判定される。一方、拾得パネル22上に落下物が存在する等の事情が無く、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されたときには、システム制御部の制御手順は終了し、エレベータ制御装置18の制御指令に基づいてエレベータドアが閉扉される(S16)。S12の手順は、制御部の格納検知手段の機能により実行される。
【0048】
拾得パネル22の格納が検知されない場合には、エレベータドアの開扉を継続する(S13)。即ち、エレベータ制御装置18にエレベータドアの閉扉を禁止する制御指令を与える。この場合には、乗客が拾得パネル22上の落下物を拾得し易くするために、拾得パネル22をS10における延出状態に戻すように、電動モータ26の駆動を制御することが好ましい。従って、乗客が拾得パネル22上の落下物を拾得する時間を十分に確保することができる。
【0049】
次に、エレベータドアの開扉を継続した状態で、図示しない音声警告装置により拾得パネル22が格納されない状態を知らせるアナウンスを行う(S14)。拾得パネル22が格納されない状態としては、図5に示すように、パネル上に落下物が存在する場合が考えられるので、アナウンスによって、乗客は落下物の存在を容易に認識して拾得することができる。従って、エレベータ11の運行規制を最小限に抑えることが可能になる。
【0050】
アナウンスを行った後、所定時間経過後に、再度拾得パネル22の格納操作を実行し、拾得パネル22が格納されたか否かを確認する(S15)。拾得パネル22上に落下物が存在する等の事情が無く、拾得パネル22が適切な位置に格納されたときには、システム制御部の制御手順は終了し、エレベータ制御装置18の制御指令に基づいてエレベータドアが閉扉される(S16)。
【0051】
以上のように、エレベータシステム10によれば、かご12の走行中は格納され、かご12の停止と連動して延出されてかご敷居20と乗場敷居21との間の間隙である敷居間隙を塞ぐ拾得パネル22を備えるので、エレベータドアの開扉時には敷居間隙を完全に塞ぐことができ、敷居間隙から昇降路15内に物が落下することを確実に防止することが可能になる。
【0052】
さらに、拾得パネル22の格納を検知する格納検知部29と、格納検知部29により拾得パネル22の格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続するシステム制御部とを備えるので、乗客が拾得パネル22上の落下物を拾得する時間を十分に確保することができ、エレベータドアの閉扉によって拾得パネル22上に存在する落下物が昇降路15内に落下することがない。従って、敷居間隙から昇降路15内への物の落下を確実に防止でき、乗客の利便性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】エレベータシステム及びエレベータシステムが適用されるエレベータの全体構成を示す模式図である。
【図2】エレベータシステムの要部断面を示す模式図であり、拾得パネルが延出した状態を示す図である。
【図3】図2において、拾得パネルが格納された状態を示す図である。
【図4】図2に示す構成の変形例を示す図である。
【図5】図2において、拾得パネル上に落下物が存在して、拾得パネルが格納されない様子を示す図である。
【図6】エレベータシステムの制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
10 エレベータシステム、11 エレベータ、12 エレベータかご、13 エレベータ乗場、14 巻き上げ機、15 昇降路、16 かごドア、17 乗場ドア、18 エレベータ制御装置、19 ピット、20 かご敷居、21 乗場敷居、22 拾得パネル、23 かご床、24 拾得パネル壁部、25 拾得パネル格納部、26 電動モータブロック、27 駆動ベルト、28 ガイドレール、29 格納検知部、30 ストッパ31 従動プーリ、32 かごドアガイドレール、33 乗場ドアガイドレール、34 電磁コイル、35 戻りバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごの走行中は格納され、エレベータかごの停止又はエレベータドアの開扉と連動して延出又は展開されてかご敷居と乗場敷居との間の間隙を塞ぐ拾得パネルと、
拾得パネルの格納を検知する格納検知部と、
格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、エレベータドアの開扉を継続する制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
かご敷居の下部に、
拾得パネルの格納空間を有する拾得パネル格納部と、
拾得パネルをエレベータ乗場の方向に延出させる駆動アクチュエータと、
を備え、
拾得パネルは、エレベータ乗場側に位置する端部に上方に延びた拾得パネル壁部を有する平板形状から構成されることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータシステムにおいて、
格納検知部により拾得パネルの格納が検知されない場合に、拾得パネルが格納されない状態を知らせる警告手段を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
拾得パネル格納部のエレベータ乗場側端部に、拾得パネルとの間に所定の隙間をもって設置され、拾得パネル壁部に当接して拾得パネルを所定の位置に格納するためのストッパを有することを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−286504(P2009−286504A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137458(P2008−137458)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】