説明

エレベータリモート点検システム

【課題】保守員の手間が少なくなり、点検時間が短縮されるエレベータリモート点検システムを提供する。
【解決手段】エレベータリモート点検システムは、予め点検対象の機器に付けられたカメラ位置決め用マークを含む比較用映像データと比較用映像データを撮影したときのかご位置が予め記憶され、点検対象の機器が指定されたとき点検対象の機器に対応するかご位置にかごが配車され、かご位置にかごが配車されたときに取り込まれた当該点検対象の機器の映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なるカメラワークの条件が求められ、取り込まれた映像データの当該点検機器のカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なったときに取り込まれた映像データを遠隔端末に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータを遠隔地から点検するエレベータリモート点検システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ監視装置は、ビルに設置されたエレベータを構成する機器に取り付けられ、画像を入力する撮像部と、映像信号を処理する信号処理部と映像データと制御データを送受信するデータ送受信部と、撮像部と信号処理部とデータ送受信部を制御する制御部を有する監視カメラ装置と、監視カメラからの映像データと監視カメラを操作する制御データを送受信する送受信部と、エレベータの情報を入力する入力部と、エレベータのかご位置とエレベータのつり合いおもりの位置を記憶するエレベータ稼動位置記憶部と、エレベータ稼動位置記憶部のデータからエレベータのつり合いおもりの稼動位置を算出する手段と、稼動位置と映像を表示する表示部を備えた携帯端末装置を有する。
【0003】
【特許文献1】特開2004−338862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエレベータ監視装置は、かごの着床階の位置により監視カメラの撮影範囲が決まるため、階床間の距離が異なっている場合、撮影範囲に入らない点検機器が残るという問題がある。
そこで、撮影範囲に入らない点検機器を撮影範囲に入れるためには、保守員が携帯端末の画像を見ながら、かごの位置を微調整する運転操作が発生し、手間が余分に掛かるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、保守員の手間が少なくなり、点検時間が短縮されるエレベータリモート点検システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるエレベータリモート点検システムは、エレベータを構成する機器に取り付けられるとともに点検対象の機器を撮影する撮像手段、上記エレベータおよび上記撮像手段を制御して上記点検対象の機器を点検するリモート点検装置および上記リモート点検装置と通信回線を介して接続され、上記リモート点検装置に上記点検対象の機器を指定するとともに上記点検対象の機器の映像データを受け取る遠隔端末を備えるエレベータリモート点検システムにおいて、上記リモート点検装置は、予め上記点検対象の機器に付けられたカメラ位置決め用マークを含む比較用映像データおよび上記比較用映像データを撮影したときの上記撮像手段が取り付けられた機器の位置が予め記憶される記憶部と、上記指定された点検対象の機器に対応する上記撮像手段が取り付けられた機器の位置に上記撮像手段が取り付けられた機器を移動するとともにカメラワークの条件に従って上記撮像手段を制御する制御部と、上記撮像手段が取り付けられた機器の位置に上記撮像手段が取り付けられた機器が移動されたときに取り込まれた当該点検対象の機器の映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検対象の機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なる上記カメラワークの条件を求めるとともに上記取り込まれた映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なったときに取り込まれた映像データを上記遠隔端末に送る解析部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わるエレベータリモート点検システムの効果は、予め点検対象の機器に付けられたカメラ位置決め用マークを含む比較用映像データと比較用映像データを撮影したときのかご位置が予め記憶され、点検対象の機器が指定されたとき点検対象の機器に対応するかご位置にかごが配車され、かご位置にかごが配車されたときに取り込まれた当該点検対象の機器の映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なるカメラワークの条件が求められ、取り込まれた映像データの当該点検機器のカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なったときに取り込まれた映像データを遠隔端末に送られるので、遠隔端末から点検対象の機器だけを指定すれば点検対象の機器の映像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムが配置されたエレベータの構成を示す構成図である。図2は、この発明の実施の形態1に係わるリモート点検装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムが点検するエレベータは、図1に示すように、顧客ビル1内に設けられた昇降路2、昇降路2内を昇降するかご3、かご3を昇降するロープ4、ロープ4の一端に接続された釣り合い錘5、ロープ4を巻回するシーブ6、シーブ6を回転する電動機7、電動機7を制御するエレベータ制御盤8を備える。
【0009】
この発明の実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムは、遠隔からズームイン/ズームアウト、パンニングまたはチルトなどのカメラワークが行われ、昇降路2内の点検対象の機器を撮影したり、音声を集音したりする撮像手段としての監視カメラ11、保守員10が遠隔地からエレベータおよび監視カメラ11を制御しながら監視カメラ11で撮影した映像や集音した音声を用いてエレベータを点検する遠隔端末12、遠隔端末12からの指令により、エレベータおよび監視カメラ11を制御するとともに、監視カメラ11から受信した映像データや音声データを遠隔端末12に送信するリモート点検装置14、リモート点検装置14と遠隔端末12を接続するブロードバンド回線15を有する。
以下の説明では監視カメラ11がかご3に取り付けられている例を用いるが、その他の機器、例えば釣り合い錘5に取り付けても良い。
【0010】
監視カメラ11は、かご3を移動することにより位置を移動することができるとともに、図示しない駆動機構を操作することによりパンニングやチルトなどのカメラワークを施すことができる。また、監視カメラ11の図示しないズーム機構を用いてズームイン/ズームアウトなどのカメラワークを行うことができる。
【0011】
リモート点検装置14は、図2に示すように、遠隔端末12からの指令および解析部23からの映像解析結果によるエレベータ制御盤8への制御信号、監視カメラ11をズームイン/ズームアウト、パンニング、チルトなどのカメラワークを行う制御部21、各点検機器のカメラ位置を決めたときの映像データおよびかご位置を記憶する記憶部22、監視カメラ11からの映像データと記憶部22の映像データを比較解析する解析部23、遠隔端末12との間でデータ送受信を制御する通信部24を有する。
【0012】
制御部21は、遠隔端末12から送信される指令に含まれる点検機器の指定に従って記憶部22から当該点検機器に対応するかご位置をエレベータ制御盤8に指令する。そして、エレベータ制御盤8はかご3をかご位置に配車する。
記憶部22に記憶されている映像データ(以下、「比較用映像データ」と称す)は、例えば図3に示す乗場ドア装置のトーガード27に付けられたカメラ位置決め用マーク28を含んだ図4(a)に示すような点検機器の映像データであり、点検機器毎に記憶されている。また、記憶部22には、図4(a)に示すような記憶されている映像データを撮影したときのかご位置が映像データに対応して記憶されている。
比較用映像データの他の例として図5(a)に吊り車29、図6(a)に巻上機30を例示する。
【0013】
解析部23は、かご3がかご位置に配車されたときに監視カメラ11により撮影されて入力される図4(b)に示すようなトーガード27の映像データ(以下、「現在映像データ」と称す)をトーガード27の比較用映像データと比較解析して、トーガード27の現在映像データのカメラ位置決め用マーク28がトーガード27の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28に重なるようにカメラワークの条件を求める。
制御部21は、解析部23からのカメラワークの条件を受信すると、監視カメラ11をカメラワークの条件に従って調整する。
解析部23は、トーガード27の現在映像データのカメラ位置決め用マーク28がトーガード27の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28に重なったとき、トーガード27の現在映像データと音声データを合わせて通信部24に送る。
【0014】
通信部24は、遠隔端末12にトーガード27の現在映像データと音声データを合わせて送信する。
なお、リモート点検装置14は、監視カメラ11を1台だけ制御しているが、複数台用いて点検しても良く、その場合、リモート点検装置14の制御部21に複数台の監視カメラ11が接続される。
遠隔端末12は、リモート点検装置14から送信される映像データおよび音声データを記憶する記憶部31を有する。
【0015】
次に、予め比較用映像データとかご位置を記憶する手順について説明する。
保守員10は、予め昇降路2内の各点検機器にカメラ位置決め用マーク28を付ける。
次に、保守員10は、監視カメラ11の映像を確認しながらカメラ位置を決定する。このときの点検機器のカメラ位置決め用マーク28を含む画像とかご位置をリモート点検装置14の記憶部22に記憶する。
このようにして、点検が必要な機器毎に比較用の映像データとかご位置のデータが記憶部22に記憶される。
【0016】
次回からの点検時には、保守員10は、先ず遠隔端末12から顧客ビル1のリモート点検装置14にアクセスし、遠隔端末12で点検したい機器を指定する。そうすると、遠隔端末12は、リモート点検装置14に点検指令を送信する。
リモート点検装置14の制御部21は、点検指令を受信すると、記憶部22に予め記憶されている当該点検機器のかご位置を取り込み、それを基づいてエレベータ制御盤8に制御信号を送信する。
エレベータ制御盤8は、指定されたかご位置にかご3を移動させる。
【0017】
次に、解析部23は、記憶部22に予め記録されているトーガード27の比較用画像データと監視カメラ11からのトーガード27の現在映像データを比較解析して、トーガード27に付けたカメラ位置決め用マーク28が重なるカメラワークの条件を求め制御部21に出力する。
制御部21は、解析部23からのカメラワークの条件に従って監視カメラ11をカメラワークする。例えば、図4(b)のようなトーガード27の現在映像データの場合、監視カメラ11をチルトダウンし、且つ左にパンニングすることにより、図4(a)に示すトーガード27の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28と重なることができる。
また、必要に応じて、エレベータ制御盤8に制御信号を送信してかご位置を微調整する。
【0018】
また、図5(b)のような吊り車29の場合も、監視カメラ11をチルトダウンし、且つ左にパンニングすることにより、図5(a)に示す吊り車29の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28と重なることができる。
また、図6(b)のような巻上機30の場合も、監視カメラ11をチルトアップし、且つ右にパンニングすることにより、図6(a)に示す巻上機30の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28と重なることができる。
【0019】
このようにして、常に同じカメラ位置、角度から点検機器を撮影することが可能である。上述の手順を繰り返すことにより、点検が必要な機器のすべてを点検することができる。
そして、点検中に採取した映像データおよび音声データを遠隔端末12の記憶部31に記憶し、前回点検時の映像データおよび音声データと比較する。
【0020】
この実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムは、予め点検対象の機器に付けられたカメラ位置決め用マーク28を含む比較用映像データと比較用映像データを撮影したときのかご位置が予め記憶され、点検対象の機器が指定されたとき点検対象の機器に対応するかご位置にかご3が配車され、かご位置にかご3が配車されたときに取り込まれた当該点検対象の機器の映像データのカメラ位置決め用マーク28が当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28と重なるカメラワークの条件が求められ、取り込まれた映像データの当該点検機器のカメラ位置決め用マーク28が当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マーク28と重なったときに取り込まれた映像データを遠隔端末12におくられるので、遠隔端末12から点検対象の機器だけを指定すれば点検対象の機器の映像データを得ることができる。
また、常に同じカメラ位置から点検機器を撮影することができるので、前回の点検時の映像データと現在の映像データを比較することにより微小な差異を検出することができ、高精度な点検結果を顧客に示すことができる。
【0021】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係わるリモート点検装置の機能ブロック図である。
この発明の実施の形態2に係わるエレベータリモート点検システムは、実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムとリモート点検装置14Bが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
実施の形態2に係わるリモート点検装置14Bは、図7に示すように、実施の形態1に係わるリモート点検装置14にスケジューラ33が追加されたことが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
スケジューラ33は、予め点検のスケジュールが登録されており、点検時期の到来した点検機器を制御部21と解析部23に指定する。
このように点検のスケジュールがリモート点検装置14Bに登録されているので、緊急に点検が必要になった場合を除いて遠隔端末12から点検機器を指定しなくても良く、遠隔端末12での操作が減少し、作業時間を短縮することができる。
また、保守員10は、リモート点検装置14Bが点検機器の画像データおよび音声データを採取している間、他の作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるエレベータリモート点検システムが配置されたエレベータの構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるリモート点検装置の機能ブロック図である。
【図3】点検機器の一例である乗場ドア装置にカメラ位置決め用マークが付けられた様子を示す図である。
【図4】カメラ位置決め用マークを含んで撮影されたトーガードの映像である。
【図5】カメラ位置決め用マークを含んで撮影された吊り車の映像である。
【図6】カメラ位置決め用マークを含んで撮影された巻上機の映像である。
【図7】この発明の実施の形態2に係わるリモート点検装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 顧客ビル、2 昇降路、3 かご、4 ロープ、5 釣り合い錘、6 シーブ、7 電動機、8 エレベータ制御盤、10 保守員、11 監視カメラ、12 遠隔端末、14、14B リモート点検装置、15 ブロードバンド回線、21 制御部、22 記憶部、23 解析部、24 通信部、27 トーガード、28 カメラ位置決め用マーク、29 吊り車、30 巻上機、31 記憶部、33 スケジューラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを構成する機器に取り付けられるとともに点検対象の機器を撮影する撮像手段、上記エレベータおよび上記撮像手段を制御して上記点検対象の機器を点検するリモート点検装置および上記リモート点検装置と通信回線を介して接続され、上記リモート点検装置に上記点検対象の機器を指定するとともに上記点検対象の機器の映像データを受け取る遠隔端末を備えるエレベータリモート点検システムにおいて、
上記リモート点検装置は、
予め上記点検対象の機器に付けられたカメラ位置決め用マークを含む比較用映像データおよび上記比較用映像データを撮影したときの上記撮像手段が取り付けられた機器の位置が予め記憶される記憶部と、
上記指定された点検対象の機器に対応する上記撮像手段が取り付けられた機器の位置に上記撮像手段が取り付けられた機器を移動するとともにカメラワークの条件に従って上記撮像手段を制御する制御部と、
上記撮像手段が取り付けられた機器の位置に上記撮像手段が取り付けられた機器が移動されたときに取り込まれた当該点検対象の機器の映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検対象の機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なる上記カメラワークの条件を求めるとともに上記取り込まれた映像データのカメラ位置決め用マークが当該点検機器の比較用映像データのカメラ位置決め用マークと重なったときに取り込まれた映像データを上記遠隔端末に送る解析部と、
を有することを特徴とするエレベータリモート点検システム。
【請求項2】
上記リモート点検装置は、格納されているスケジュールに従って点検対象の機器を指定するスケジューラを有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータリモート点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−162725(P2008−162725A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352044(P2006−352044)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】