エレベーターの地震時運転休止予測システム
【課題】地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができるエレベーターの地震時運転休止予測システムの提供。
【解決手段】地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の震度分布を予測する震度分布予測手段2と、予測された震度分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段7と、予測対象地域10内に設置され、地震動の波形を計測する地震計4と、計測された地震動の波形から、地震動の速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段5と、算出された速度・加速度比を用いて震度分布予測手段2によって予測された震度分布を補正する震度分布補正手段6とを備え、エレベーター休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有する。
【解決手段】地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の震度分布を予測する震度分布予測手段2と、予測された震度分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段7と、予測対象地域10内に設置され、地震動の波形を計測する地震計4と、計測された地震動の波形から、地震動の速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段5と、算出された速度・加速度比を用いて震度分布予測手段2によって予測された震度分布を補正する震度分布補正手段6とを備え、エレベーター休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの地震時の被害を予測するシステムに係り、特に地震で運転休止状態となるエレベーターの台数と分布を予測するエレベーターの地震時運転休止予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには地震感知器が備えられ、所定のレベル以上の揺れを感知すると運転を休止状態とし、保守員による点検の後に復旧する。休止状態となったエレベーター、すなわち休止エレベーターを迅速に復旧するためには、休止台数の規模や休止状態のエレベーターが集中している地域の早期把握が重要である。これらの情報を用いることで復旧要員の招集や応援要請の必要性等を即時に判断することができ、復旧態勢の早期立ち上げが可能となる。
【0003】
このような休止状態となったエレベーターを早期に把握する従来技術の1つとして、震源位置やマグニチュードの情報から休止エレベーターの台数や分布を予測するエレベーターの遠隔監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このエレベーターの遠隔監視システムは、地震発生の初期段階で入手可能な震源位置やマグニチュードの情報から、震度や加速度等の地面の揺れの大きさの分布を求め、これを基にエレベーターの休止台数の分布と総数を予測するものである。
【0004】
また、震源位置とマグニチュードから震度分布等を求める従来技術の1つとして、距離減衰式と揺れに対する地盤の増幅度を用いて求める地震被害予測システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。上述の距離減衰式は、震源位置からの距離に応じて揺れの大きさが減衰していく度合いを経験式として求めたものであり、上述の地盤の増幅度は、地面の表層地盤の特性に応じて揺れの大きさが増幅される度合いを示すものである。
【0005】
このように、特許文献1に開示された従来技術のエレベーターの遠隔監視システム、及び特許文献2に開示された従来技術の地震被害予測システムは、地震が発生したことによって休止状態となったエレベーターの休止台数の分布と総数を予測するものであるが、これらのエレベーターの休止台数の分布と総数は正確に予測される必要がある。そこで、地震の揺れの周波数成分の相違も考慮して高精度に被害を予測する従来技術の地震被害予測システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この地震被害予測システムは、地震の発生した地域と、その地域で発生した地震の揺れの周波数成分の傾向とをデータベース化しておき、これを用いて揺れの周波数成分までも考慮して被害を予測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2008−201575号公報
【特許文献2】特開平2003−287574号公報
【特許文献3】特開平2006−343578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に開示された従来技術の地震被害予測システムは、上述したように地震の揺れの周波数成分の傾向のデータベースを用いて揺れの周波数成分を予測しているので、データベースの構築に多くの地震データを必要とする。そのため、地震の発生が少ない地域については、データベースを構成することが難しくなっている。また、地震の発生した地域と揺れの周波数成分の間の関係性が低い地域については、周波数成分の予測精度が低くなることが懸念されている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができるエレベーターの地震時運転休止予測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明のエレベーターの地震時運転休止予測システムは、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えたエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、前記エレベーター休止台数予測手段によって前記エレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、この地震波形計測手段によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、この速度・加速度比算出手段によって算出された前記速度・加速度比を用いて前記強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布を補正する補正手段とを備え、前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布を用いて前記エレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、休止予測する地域に設置された地震波形計測手段が計測した地震波形から速度・加速度比算出手段によって地震動の速度と加速度の比を算出し、これを用いて補正手段によって地震の揺れの強さの分布を補正することにより、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、地震による前記エレベーターの揺れを感知する地震感知器を備え、前記強さ分布予測手段は、地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段を有し、前記速度・加速度比算出手段は、前記地震波形計測手段によって計測された地震波形から求めた計測震度と、前記地震感知器が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出することを特徴としている。このように構成すると、計測震度とエレベーターの地震感知器が感知する揺れの周波数成分に関する最大加速度応答の比で地震の震度の分布を補正することにより、エレベーターの地震感知器に影響する地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布の精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、地震の揺れの強さに応じて前記エレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段を備え、前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて前記エレベーターの休止台数を予測することを特徴としている。このように構成すると、地震の揺れの強さに応じたエレベーターの休止確率を考慮した上で、休止予測する地域内の各領域の休止状態となったエレベーターの休止台数を予測することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、前記エレベーターの休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて休止状態となった前記エレベーターの分布図を表示することを特徴としている。このように構成すると、休止予測する地域における休止状態となったエレベーターの分布を地震の揺れの周波数成分の相違を考慮して表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエレベーターの地震時運転休止予測システムは、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えている。また、本発明は、エレベーター休止台数予測手段によってエレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、算出された速度・加速度比を用いて強さ分布を補正する補正手段とを備えている。そして、エレベーター休止台数予測手段は、補正手段によって補正された強さ分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有している。そのため、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができ、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの休止台数や分布を高精度に予測することができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布に関して従来よりも信頼性のあるデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に備えられる地震感知器に震源から地震動が伝達する過程を説明する図である。
【図3】本実施形態に備えられる地盤増幅度データ記憶手段に記憶される地盤増幅度データの内容を説明する図である。
【図4】本実施形態に備えられる感知器作動率曲線データ記憶手段に記憶される感知器作動率曲線のデータの内容を説明する図である。
【図5】本実施形態に備えられる震度分布補正手段によって震度分布の補正が行われない場合におけるエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比と、各地震との関係を示す図である。
【図6】図5に示す地震C及び地震Dの速度応答スペクトルを示す図である。
【図7】図5に示す地震C及び地震Dの加速度応答スペクトルを示す図である。
【図8】図1に示す予測対象地域の震度加速度比と震度補正係数との関係を示す図である。
【図9】本実施形態に備えられるエレベーター休止台数予測手段によって予測されたエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比と、各地震との関係を示す図である。
【図10】本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本実施形態に備えられる表示手段によって表示される休止状態のエレベーターの分布図の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムの一実施形態は、地震の震源位置(深さも含む)とマグニチュードを含む地震情報を入力する地震情報入力手段1と、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段、例えば地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段2と、この震度分布予測手段2によって予測された強さ分布から、休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段7とを備えている。
【0018】
また、本実施形態は、震度分布予測手段2による震度分布の予測において用いる表層地盤の増幅度を記憶する地盤増幅度データ記憶手段3と、エレベーター休止台数予測手段7によってエレベーターの休止台数が予測される地域10(予測対象地域)内に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段、例えば地震計4と、この地震計4によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段5と、この速度・加速度比算出手段5によって算出された速度・加速度比を用いて震度分布予測手段2によって予測された地震の震度分布を補正する補正手段、すなわち震度分布補正手段6とを備えている。
【0019】
さらに、本実施形態は、地震の揺れの強さに応じてエレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段、例えば地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合(休止率)とから算出された感知器作動率曲線のデータを記憶する感知器作動率曲線データ記憶手段8と、エレベーター休止台数予測手段7によって算出されるエレベーターの休止台数や分布図を表示する表示手段9とを備えている。そして、エレベーター休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する図示しない補正予測手段を有している。
【0020】
具体的には、これらの図1に示す地震情報入力手段1、震度分布予測手段2、地盤増幅度データ記憶手段3、速度・加速度比算出手段5、震度分布補正手段6、エレベーター休止台数予測手段7、感知器作動率曲線データ記憶手段8、及び表示手段9は、例えばコンピュータシステムにおけるハードウェア及びソフトウェア、並びにデータとして構成されている。また、休止状態となったエレベーターが予測される地域10は、例えばエレベーターが多く存在する都道府県の主要都市の市街地のような地域であり、地震計4はこれらの地域毎に少なくとも1台、より望ましくは複数台、例えば3台程度設置されている。さらに、本実施形態は、図2に示すようにエレベーターが備えられる建物20内に設置され、地震によるエレベーターの揺れを感知する地震感知器21,22を備えている。
【0021】
次に、本実施形態におけるエレベーターの休止台数の予測について図2〜9を用いて説明する。
【0022】
図2に示すように、地震の震源となる地盤の内部には、地震波がほぼ一様な速度で伝達するとみなせる地層と、地盤を構成する堆積層等の性状によって地震波の伝達速度が大きく異なる地層とがあり、一般的に前者が地震基盤と呼ばれ、後者が表層地盤と呼ばれている。震源25から地震基盤と表層地盤の境界面24までの地震動の伝達26については公知の距離減衰式を用いて求められる。この距離減衰式は、震源25からの距離、マグニチュードと地震動の大きさの関係を示す経験式である。地震基盤と表層地盤の境界面24から地表面23までの地震動の伝達27では、表層地盤の性状によって地震波が増幅される倍率が異なる。そこで、図3に示すように地盤増幅度データ記憶手段3に記憶された地盤の増幅度のデータを用いて境界面24について求めた地震動に増幅度を乗じて地表面23における地震動の強さ(震度)を求める。図3に示す地盤増幅度のデータは、例えば500m間隔の緯度(X)、経度(Y)毎の地点についてボーリング調査や地形構造からの推定により求めた地盤増幅度である。
【0023】
次に、地表面23について求めた地震動(震度)から地震感知器21,22への地震動の伝達28及び地震感知器21,22の作動については、図4に示すように感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータを用いる。この感知器作動率曲線は、上述したように地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合(休止率)とから算出されたものであり、予め過去の地震に関するデータから求められる。
【0024】
なお、エレベーターでは、その機種によって地震感知器21,22の設置場所が異なる。例えば、図2に示す地震感知器22のようにエレベーター昇降路の最下部(ピット)に置かれる場合と、地震感知器21のようにエレベーター昇降路の最上部(機械室等)に置かれる場合がある。感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータは、このように設置場所の異なる各地震感知器21,22について求めておく。また、図示しない機械室等の昇降路の最上部に置かれた地震感知器21については、さらに建物20が高層ビルである場合、中低層ビルである場合について求めておく。これにより、地震感知器21,22の設置場所による地表面からの地震動の伝達特性の相違を加味できるようになっている。
【0025】
このように、予測対象地域10内の各地点における震度は、震源位置、マグニチュード、距離減衰式、表層地盤の増幅度を用いて求めることができる。これにより、震度の分布を求めることができる。また、各地点におけるエレベーターの休止確率は、上記で求めた震度と感知器作動率曲線を用いて求めることができる。よって、この休止確率に各地点におけるエレベーターの台数あるいは密度を乗ずることにより、各地点における休止状態となったエレベーターの台数、すなわち休止状態となったエレベーターの分布が求まり、これらを集計することで休止状態となったエレベーターの総台数を求めることができる。
【0026】
ここで、図5は、本実施形態に備えられる震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われない場合におけるエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比を、様々な地震A〜Gについて比較したものである。図5において、破線((予測台数/実測台数)=1)に近づくほど、予測値と実測値が一致することを示す。図5に示すように、地震Cのグラフのように予測値と実測値がほぼ一致する地震があるのに対して、地震D、地震E、及び地震Aのグラフのように予測値と実測値が大きく異なる地震が見られる。特に、地震Cと地震Dのグラフは、いずれも同程度の規模の地震であったにも拘らず、予測値と実測値の一致度合が大きく異なっている。これは、以下に述べるように地震の揺れの周波数成分の相違によるものである。
【0027】
図6は、図5における地震Cと地震Dについて同一地点で観測された地震動の速度応答スペクトルである。この地点では、二つの地震において同一の震度を観測している。地震Cの速度応答スペクトルを点線で、地震Dの速度応答スペクトルを実線で示す。地震Cの速度応答スペクトルは、周期0.4秒以下の成分が大きいのに対して、地震Dの速度応答スペクトルは、周期0.4秒以上の成分が大きくなっている。建物20の応答特性も含めた地震感知器21,22の感度特性は全ての周波数において同一ではないため、このように地震動の周波数成分が異なると地震感知器21,22の作動率も異なる。
【0028】
そこで、地震の速度波形V(t)を、卓越周波数成分の周期T0と振幅a0、及び非卓越周波数成分f(t)を用いて以下の数(1)のように表わす。このとき、速度波形V(t)に対応する加速度波形A(t)は数(2)のようになる。
【数1】
【数2】
【0029】
これにより、同程度の速度振幅を持つ地震波であった場合、卓越周波数成分の周期T0が長い地震波の方が、加速度振幅が相対的に小さくなる。よって、地震動の速度振幅と加速度振幅の比を求めることにより、地震動の周波数成分の相違を把握することができる。
【0030】
図7は、図6に示す速度応答スペクトルを得た観測点での加速度応答スペクトルである。地震Cの加速度応答スペクトルの最大値に対して、地震Dの加速度応答スペクトルの最大値は約0.6程度となっている。図6に示すように、速度応答スペクトルの最大値は同程度であるので、速度に対する加速度の比(速度/加速度)を求めると、地震Dの方が小さくなる。従って、震度分布予測手段2が算出した震度分布の大きさをこの速度・加速度比に応じて震度分布補正手段6で補正すると、地震Dの震度の方が相対的に小さくなり、予測されるエレベーターの休止台数も小さくなる。その結果、図5に示す地震Dのグラフは下方に修正され、予測値を実測値に近づけることができる。
【0031】
ここで、地震の周波数成分の相違は、主に震源となる断層の破壊メカニズム等の相違によるものとされており、表層地盤の伝達特性と無関係に生じる現象である。従って、上記で述べた速度・加速度比は、原理的に予測対象地域10内の一点について求めればよい。ただし、実際には表層地盤の影響の程度によっては、予測対象地域10内の数点の観測点より求めた値の平均値を用いるのが好ましい。
【0032】
地震動の速度と加速度比を用いた震度分布補正手段6による震度分布の補正は、より具体的には以下のようにして行われる。まず、震度は速度の対数と相関が高いことが知られているので、速度・加速度比も速度の対数と加速度の対数の比として求めることができる。速度の対数は、上記のように速度応答スペクトルの最大値(最大速度応答)の対数として求めてもよいが、本実施形態ではより精度を高めるために地震波形から求めた計測震度を速度の対数として用いる。一方、加速度の対数については、加速度応答スペクトルの最大値(最大加速度応答)の対数として求める。この最大加速度応答は、加速度応答スペクトルにおいて地震感知器21,22の感度がある周期0.1秒以上の帯域における最大値とする。以上により、震度を補正する補正倍率RIを数(3)により算出する。
【数3】
【0033】
ここで、PARは地震波形から求めた最大加速度応答、Iは同じく地震波形から求めた計測震度、kは以下のようにして求めた比例係数である。震度分布補正手段6は、震度分布予測手段2が算出した震度に上記の補正倍率RIを乗じることにより、震度分布を補正する。上述の比例係数kは、過去の地震における休止状態となったエレベーターの休止台数、計測震度、及び最大加速度応答の関係から算出しておく。
【0034】
まず、震度分布予測手段2が算出した震度分布にある倍率を乗じてエレベーターの休止台数を求めたとき、この休止台数が実際の値と最も近くなる倍率を各地震について震度補正係数として算出する。一方、各地震について求めた計測震度と最大加速度応答から震度加速度比(数(3)において比例係数kを除いた部分)を算出する。そして、これらを図8に示すように震度加速度比を横軸とし、震度補正係数を縦軸としてプロットすると、ほぼ原点を通る直線となる。これにより、比例係数kは図8に示す直線の傾きとして求められる。
【0035】
このようにして震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われ、エレベーターの休止台数予測手段7の補正予測手段が、休止状態となったエレベーターの休止台数を予測すると、図9に示すように全体的に予測値と実測値がよく一致した各地震における予測台数/実測台数のグラフが得られる。図9に示すように、図5に示す震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われなかった場合に予測値が実測値から大きく離れていた地震D、地震E、及び地震Aのグラフについても予測値と実測値がよく一致している。
【0036】
次に、本実施形態の動作を図10に基づいて説明する。
【0037】
図10に示すように、まず地震が発生した場合には、例えば気象庁の速報情報や緊急地震速報等の情報を用いて、地震情報入力手段1から地震の震源位置とマグニチュードの情報を入力する(S1)。震源位置とマグニチュードが入力されると、震度分布予測手段2は、入力された地震情報と地震増幅度データ記憶手段3に記憶された地盤増幅度のデータから、予測対象地域10内の震度分布を予測する(S2)。
【0038】
一方、予測対象地域10内に設置された地震計4は、地震情報の入力あるいは地震計4自体による揺れの感知等をトリガーとして地震波形の送信を開始し、速度・加速度比算出手段5は送信された地震波形のデータを受信して入手する(S3)。そして、速度・加速度比算出手段5は、地震計4から送られてきた地震波形のデータから、計測震度と最大加速度応答を算出し(S4)、速度・加速度比を算出する(S5)。
【0039】
S2において震度分布予測手段2によって予測対象地域10内の震度分布が予測され、さらにS5において速度・加速度比算出手段5によって速度・加速度比が算出されると、震度分布補正手段6は、補正倍率を震度分布予測手段2によって予測された震度分布に乗じて震度分布を補正する(S6)。エレベーター休止台数予測手段7の補正予測手段は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布と、感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータを用いて、エレベーターの休止台数と分布を算出する。そして、エレベーター休止台数予測手段7は、例えば図11に示すような形態でエレベーターの休止台数と分布図を表示手段9に表示する(S7)。
【0040】
図11に示すように、表示手段9によって表示される分布図では、黒点が休止状態となったエレベーターを表し、白点が休止状態となっていないエレベーターを表している。この分布図は、例えば以下のように表示することができる。
【0041】
エレベーター休止台数予測手段7によって予測対象地域10の各地点についてエレベーターの休止確率が求まる。そして、個々のエレベーターについて、0から1までの乱数を発生させる。この乱数が、エレベーターが設置されている位置における休止確率より大きな値である場合には白点として表示し、エレベーターが設置されている位置における休止確率より小さな値である場合には黒点として表示する。このように表示することにより、エレベーターの休止確率の分布に対応した形で、休止状態となったエレベーターの分布を表示することができる。
【0042】
このように構成した本実施形態によれば、S2において予測対象地域10内に設置された地震計4が計測した地震波形から、S5において速度・加速度比算出手段5によって地震動の速度・加速度比を算出し、S6において速度・加速度比を用いて震度分布補正手段6によって地震の震度分布を補正することにより、S7においてエレベーター休止台数予測手段7の補正予測手段が、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測するので、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができ、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができる。すなわち、地震の揺れの周波数成分の傾向のデータベースを用いることなく、地震の発生の少ない地域でも地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した高精度な予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布に関して信頼性のあるデータを得ることができる。
【0043】
また、本実施形態は、地震によるエレベーターの揺れを感知する地震感知器21,22を備え、S5において速度・加速度比算出手段5が、地震計4によって計測された地震波形から求めた計測震度と、地震感知器21,22が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出し、S6において計測震度とエレベーターの地震感知器21,22が感知する揺れの周波数成分に関する最大加速度応答の比で震度分布補正手段6が地震の震度分布を補正することにより、エレベーターの地震感知器21,22に影響する地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布の精度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態は、地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合とから算出された感知器作動率曲線のデータを記憶する感知器作動率曲線データ記憶手段8を備えており、S7においてエレベーター休止台数予測手段7が、震度分布補正手段6によって補正された震度分布から、エレベーターの休止台数が予測される予測対象地域10内の各領域における地震の震度に対応した感知器作動率曲線のデータを用いてエレベーターの休止台数を予測することにより、地震の震度に応じたエレベーターの休止確率を考慮した上で、予測対象地域10内の各領域の休止状態となったエレベーターの休止台数を予測することができる。
【0045】
また、本実施形態は、S7においてエレベーターの休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布から、エレベーターの休止台数が予測される予測対象地域10内の各領域における地震の震度に対応した感知器作動率曲線のデータを用いて休止状態となったエレベーターの分布図を表示することにより、予測対象地域10内の各領域の休止状態となったエレベーターの分布を地震の揺れの周波数成分の相違を考慮して表示手段9に表示することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態に限らず、本発明の技術的思想の範囲内において、種々の実施形態が可能である。上述した本実施形態では、速度・加速度比算出手段5は、計測震度と最大加速度応答の対数を算出した場合について説明したが、この場合に限らず速度・加速度比算出手段5は、最大速度応答の対数と最大加速度応答の対数を算出して、この比を速度・加速度比として出力するものであってもよい。
【0047】
さらに、速度・加速度比算出手段5は、地震計4により計測される地震波形から算出される計測震度の代わりに、震源位置とマグニチュードから地震計4の設置場所について距離減衰式と表層地盤の増幅度によって求めた震度を用いることにより、速度・加速度比を出力するものであってもよい。また、地震計4を予測対象地域10内に複数設置する場合には、それぞれの地震計4について速度・加速度比を算出し、これらの平均値として求めた速度・加速度比によって震度分布補正手段6が震度分布を補正する。これにより、表層地盤の影響を軽減し、高精度に予測することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 地震情報入力手段
2 震度分布予測手段(強さ分布予測手段)
3 地盤増幅度データ記憶手段
4 地震計(地震波形計測手段)
5 速度・加速度比算出手段
6 震度分布補正手段(補正手段)
7 エレベーター休止台数予測手段
8 感知器作動率曲線データ記憶手段(休止確率記憶手段)
9 表示手段
10 予測対象地域
20 建物
21,22 地震感知器
23 地表面
24 境界面
25 震源
26,27,28 地震波
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの地震時の被害を予測するシステムに係り、特に地震で運転休止状態となるエレベーターの台数と分布を予測するエレベーターの地震時運転休止予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには地震感知器が備えられ、所定のレベル以上の揺れを感知すると運転を休止状態とし、保守員による点検の後に復旧する。休止状態となったエレベーター、すなわち休止エレベーターを迅速に復旧するためには、休止台数の規模や休止状態のエレベーターが集中している地域の早期把握が重要である。これらの情報を用いることで復旧要員の招集や応援要請の必要性等を即時に判断することができ、復旧態勢の早期立ち上げが可能となる。
【0003】
このような休止状態となったエレベーターを早期に把握する従来技術の1つとして、震源位置やマグニチュードの情報から休止エレベーターの台数や分布を予測するエレベーターの遠隔監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このエレベーターの遠隔監視システムは、地震発生の初期段階で入手可能な震源位置やマグニチュードの情報から、震度や加速度等の地面の揺れの大きさの分布を求め、これを基にエレベーターの休止台数の分布と総数を予測するものである。
【0004】
また、震源位置とマグニチュードから震度分布等を求める従来技術の1つとして、距離減衰式と揺れに対する地盤の増幅度を用いて求める地震被害予測システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。上述の距離減衰式は、震源位置からの距離に応じて揺れの大きさが減衰していく度合いを経験式として求めたものであり、上述の地盤の増幅度は、地面の表層地盤の特性に応じて揺れの大きさが増幅される度合いを示すものである。
【0005】
このように、特許文献1に開示された従来技術のエレベーターの遠隔監視システム、及び特許文献2に開示された従来技術の地震被害予測システムは、地震が発生したことによって休止状態となったエレベーターの休止台数の分布と総数を予測するものであるが、これらのエレベーターの休止台数の分布と総数は正確に予測される必要がある。そこで、地震の揺れの周波数成分の相違も考慮して高精度に被害を予測する従来技術の地震被害予測システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この地震被害予測システムは、地震の発生した地域と、その地域で発生した地震の揺れの周波数成分の傾向とをデータベース化しておき、これを用いて揺れの周波数成分までも考慮して被害を予測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2008−201575号公報
【特許文献2】特開平2003−287574号公報
【特許文献3】特開平2006−343578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に開示された従来技術の地震被害予測システムは、上述したように地震の揺れの周波数成分の傾向のデータベースを用いて揺れの周波数成分を予測しているので、データベースの構築に多くの地震データを必要とする。そのため、地震の発生が少ない地域については、データベースを構成することが難しくなっている。また、地震の発生した地域と揺れの周波数成分の間の関係性が低い地域については、周波数成分の予測精度が低くなることが懸念されている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができるエレベーターの地震時運転休止予測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明のエレベーターの地震時運転休止予測システムは、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えたエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、前記エレベーター休止台数予測手段によって前記エレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、この地震波形計測手段によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、この速度・加速度比算出手段によって算出された前記速度・加速度比を用いて前記強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布を補正する補正手段とを備え、前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布を用いて前記エレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、休止予測する地域に設置された地震波形計測手段が計測した地震波形から速度・加速度比算出手段によって地震動の速度と加速度の比を算出し、これを用いて補正手段によって地震の揺れの強さの分布を補正することにより、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、地震による前記エレベーターの揺れを感知する地震感知器を備え、前記強さ分布予測手段は、地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段を有し、前記速度・加速度比算出手段は、前記地震波形計測手段によって計測された地震波形から求めた計測震度と、前記地震感知器が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出することを特徴としている。このように構成すると、計測震度とエレベーターの地震感知器が感知する揺れの周波数成分に関する最大加速度応答の比で地震の震度の分布を補正することにより、エレベーターの地震感知器に影響する地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布の精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、地震の揺れの強さに応じて前記エレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段を備え、前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて前記エレベーターの休止台数を予測することを特徴としている。このように構成すると、地震の揺れの強さに応じたエレベーターの休止確率を考慮した上で、休止予測する地域内の各領域の休止状態となったエレベーターの休止台数を予測することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムは、前記発明において、前記エレベーターの休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて休止状態となった前記エレベーターの分布図を表示することを特徴としている。このように構成すると、休止予測する地域における休止状態となったエレベーターの分布を地震の揺れの周波数成分の相違を考慮して表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエレベーターの地震時運転休止予測システムは、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えている。また、本発明は、エレベーター休止台数予測手段によってエレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、算出された速度・加速度比を用いて強さ分布を補正する補正手段とを備えている。そして、エレベーター休止台数予測手段は、補正手段によって補正された強さ分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有している。そのため、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができ、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの休止台数や分布を高精度に予測することができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布に関して従来よりも信頼性のあるデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に備えられる地震感知器に震源から地震動が伝達する過程を説明する図である。
【図3】本実施形態に備えられる地盤増幅度データ記憶手段に記憶される地盤増幅度データの内容を説明する図である。
【図4】本実施形態に備えられる感知器作動率曲線データ記憶手段に記憶される感知器作動率曲線のデータの内容を説明する図である。
【図5】本実施形態に備えられる震度分布補正手段によって震度分布の補正が行われない場合におけるエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比と、各地震との関係を示す図である。
【図6】図5に示す地震C及び地震Dの速度応答スペクトルを示す図である。
【図7】図5に示す地震C及び地震Dの加速度応答スペクトルを示す図である。
【図8】図1に示す予測対象地域の震度加速度比と震度補正係数との関係を示す図である。
【図9】本実施形態に備えられるエレベーター休止台数予測手段によって予測されたエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比と、各地震との関係を示す図である。
【図10】本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本実施形態に備えられる表示手段によって表示される休止状態のエレベーターの分布図の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るエレベーターの地震時運転休止予測システムの一実施形態は、地震の震源位置(深さも含む)とマグニチュードを含む地震情報を入力する地震情報入力手段1と、地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段、例えば地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段2と、この震度分布予測手段2によって予測された強さ分布から、休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段7とを備えている。
【0018】
また、本実施形態は、震度分布予測手段2による震度分布の予測において用いる表層地盤の増幅度を記憶する地盤増幅度データ記憶手段3と、エレベーター休止台数予測手段7によってエレベーターの休止台数が予測される地域10(予測対象地域)内に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段、例えば地震計4と、この地震計4によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段5と、この速度・加速度比算出手段5によって算出された速度・加速度比を用いて震度分布予測手段2によって予測された地震の震度分布を補正する補正手段、すなわち震度分布補正手段6とを備えている。
【0019】
さらに、本実施形態は、地震の揺れの強さに応じてエレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段、例えば地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合(休止率)とから算出された感知器作動率曲線のデータを記憶する感知器作動率曲線データ記憶手段8と、エレベーター休止台数予測手段7によって算出されるエレベーターの休止台数や分布図を表示する表示手段9とを備えている。そして、エレベーター休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測する図示しない補正予測手段を有している。
【0020】
具体的には、これらの図1に示す地震情報入力手段1、震度分布予測手段2、地盤増幅度データ記憶手段3、速度・加速度比算出手段5、震度分布補正手段6、エレベーター休止台数予測手段7、感知器作動率曲線データ記憶手段8、及び表示手段9は、例えばコンピュータシステムにおけるハードウェア及びソフトウェア、並びにデータとして構成されている。また、休止状態となったエレベーターが予測される地域10は、例えばエレベーターが多く存在する都道府県の主要都市の市街地のような地域であり、地震計4はこれらの地域毎に少なくとも1台、より望ましくは複数台、例えば3台程度設置されている。さらに、本実施形態は、図2に示すようにエレベーターが備えられる建物20内に設置され、地震によるエレベーターの揺れを感知する地震感知器21,22を備えている。
【0021】
次に、本実施形態におけるエレベーターの休止台数の予測について図2〜9を用いて説明する。
【0022】
図2に示すように、地震の震源となる地盤の内部には、地震波がほぼ一様な速度で伝達するとみなせる地層と、地盤を構成する堆積層等の性状によって地震波の伝達速度が大きく異なる地層とがあり、一般的に前者が地震基盤と呼ばれ、後者が表層地盤と呼ばれている。震源25から地震基盤と表層地盤の境界面24までの地震動の伝達26については公知の距離減衰式を用いて求められる。この距離減衰式は、震源25からの距離、マグニチュードと地震動の大きさの関係を示す経験式である。地震基盤と表層地盤の境界面24から地表面23までの地震動の伝達27では、表層地盤の性状によって地震波が増幅される倍率が異なる。そこで、図3に示すように地盤増幅度データ記憶手段3に記憶された地盤の増幅度のデータを用いて境界面24について求めた地震動に増幅度を乗じて地表面23における地震動の強さ(震度)を求める。図3に示す地盤増幅度のデータは、例えば500m間隔の緯度(X)、経度(Y)毎の地点についてボーリング調査や地形構造からの推定により求めた地盤増幅度である。
【0023】
次に、地表面23について求めた地震動(震度)から地震感知器21,22への地震動の伝達28及び地震感知器21,22の作動については、図4に示すように感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータを用いる。この感知器作動率曲線は、上述したように地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合(休止率)とから算出されたものであり、予め過去の地震に関するデータから求められる。
【0024】
なお、エレベーターでは、その機種によって地震感知器21,22の設置場所が異なる。例えば、図2に示す地震感知器22のようにエレベーター昇降路の最下部(ピット)に置かれる場合と、地震感知器21のようにエレベーター昇降路の最上部(機械室等)に置かれる場合がある。感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータは、このように設置場所の異なる各地震感知器21,22について求めておく。また、図示しない機械室等の昇降路の最上部に置かれた地震感知器21については、さらに建物20が高層ビルである場合、中低層ビルである場合について求めておく。これにより、地震感知器21,22の設置場所による地表面からの地震動の伝達特性の相違を加味できるようになっている。
【0025】
このように、予測対象地域10内の各地点における震度は、震源位置、マグニチュード、距離減衰式、表層地盤の増幅度を用いて求めることができる。これにより、震度の分布を求めることができる。また、各地点におけるエレベーターの休止確率は、上記で求めた震度と感知器作動率曲線を用いて求めることができる。よって、この休止確率に各地点におけるエレベーターの台数あるいは密度を乗ずることにより、各地点における休止状態となったエレベーターの台数、すなわち休止状態となったエレベーターの分布が求まり、これらを集計することで休止状態となったエレベーターの総台数を求めることができる。
【0026】
ここで、図5は、本実施形態に備えられる震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われない場合におけるエレベーターの休止台数の予測値と実際に休止状態となったエレベーターの休止台数の実測値との比を、様々な地震A〜Gについて比較したものである。図5において、破線((予測台数/実測台数)=1)に近づくほど、予測値と実測値が一致することを示す。図5に示すように、地震Cのグラフのように予測値と実測値がほぼ一致する地震があるのに対して、地震D、地震E、及び地震Aのグラフのように予測値と実測値が大きく異なる地震が見られる。特に、地震Cと地震Dのグラフは、いずれも同程度の規模の地震であったにも拘らず、予測値と実測値の一致度合が大きく異なっている。これは、以下に述べるように地震の揺れの周波数成分の相違によるものである。
【0027】
図6は、図5における地震Cと地震Dについて同一地点で観測された地震動の速度応答スペクトルである。この地点では、二つの地震において同一の震度を観測している。地震Cの速度応答スペクトルを点線で、地震Dの速度応答スペクトルを実線で示す。地震Cの速度応答スペクトルは、周期0.4秒以下の成分が大きいのに対して、地震Dの速度応答スペクトルは、周期0.4秒以上の成分が大きくなっている。建物20の応答特性も含めた地震感知器21,22の感度特性は全ての周波数において同一ではないため、このように地震動の周波数成分が異なると地震感知器21,22の作動率も異なる。
【0028】
そこで、地震の速度波形V(t)を、卓越周波数成分の周期T0と振幅a0、及び非卓越周波数成分f(t)を用いて以下の数(1)のように表わす。このとき、速度波形V(t)に対応する加速度波形A(t)は数(2)のようになる。
【数1】
【数2】
【0029】
これにより、同程度の速度振幅を持つ地震波であった場合、卓越周波数成分の周期T0が長い地震波の方が、加速度振幅が相対的に小さくなる。よって、地震動の速度振幅と加速度振幅の比を求めることにより、地震動の周波数成分の相違を把握することができる。
【0030】
図7は、図6に示す速度応答スペクトルを得た観測点での加速度応答スペクトルである。地震Cの加速度応答スペクトルの最大値に対して、地震Dの加速度応答スペクトルの最大値は約0.6程度となっている。図6に示すように、速度応答スペクトルの最大値は同程度であるので、速度に対する加速度の比(速度/加速度)を求めると、地震Dの方が小さくなる。従って、震度分布予測手段2が算出した震度分布の大きさをこの速度・加速度比に応じて震度分布補正手段6で補正すると、地震Dの震度の方が相対的に小さくなり、予測されるエレベーターの休止台数も小さくなる。その結果、図5に示す地震Dのグラフは下方に修正され、予測値を実測値に近づけることができる。
【0031】
ここで、地震の周波数成分の相違は、主に震源となる断層の破壊メカニズム等の相違によるものとされており、表層地盤の伝達特性と無関係に生じる現象である。従って、上記で述べた速度・加速度比は、原理的に予測対象地域10内の一点について求めればよい。ただし、実際には表層地盤の影響の程度によっては、予測対象地域10内の数点の観測点より求めた値の平均値を用いるのが好ましい。
【0032】
地震動の速度と加速度比を用いた震度分布補正手段6による震度分布の補正は、より具体的には以下のようにして行われる。まず、震度は速度の対数と相関が高いことが知られているので、速度・加速度比も速度の対数と加速度の対数の比として求めることができる。速度の対数は、上記のように速度応答スペクトルの最大値(最大速度応答)の対数として求めてもよいが、本実施形態ではより精度を高めるために地震波形から求めた計測震度を速度の対数として用いる。一方、加速度の対数については、加速度応答スペクトルの最大値(最大加速度応答)の対数として求める。この最大加速度応答は、加速度応答スペクトルにおいて地震感知器21,22の感度がある周期0.1秒以上の帯域における最大値とする。以上により、震度を補正する補正倍率RIを数(3)により算出する。
【数3】
【0033】
ここで、PARは地震波形から求めた最大加速度応答、Iは同じく地震波形から求めた計測震度、kは以下のようにして求めた比例係数である。震度分布補正手段6は、震度分布予測手段2が算出した震度に上記の補正倍率RIを乗じることにより、震度分布を補正する。上述の比例係数kは、過去の地震における休止状態となったエレベーターの休止台数、計測震度、及び最大加速度応答の関係から算出しておく。
【0034】
まず、震度分布予測手段2が算出した震度分布にある倍率を乗じてエレベーターの休止台数を求めたとき、この休止台数が実際の値と最も近くなる倍率を各地震について震度補正係数として算出する。一方、各地震について求めた計測震度と最大加速度応答から震度加速度比(数(3)において比例係数kを除いた部分)を算出する。そして、これらを図8に示すように震度加速度比を横軸とし、震度補正係数を縦軸としてプロットすると、ほぼ原点を通る直線となる。これにより、比例係数kは図8に示す直線の傾きとして求められる。
【0035】
このようにして震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われ、エレベーターの休止台数予測手段7の補正予測手段が、休止状態となったエレベーターの休止台数を予測すると、図9に示すように全体的に予測値と実測値がよく一致した各地震における予測台数/実測台数のグラフが得られる。図9に示すように、図5に示す震度分布補正手段6によって震度分布の補正が行われなかった場合に予測値が実測値から大きく離れていた地震D、地震E、及び地震Aのグラフについても予測値と実測値がよく一致している。
【0036】
次に、本実施形態の動作を図10に基づいて説明する。
【0037】
図10に示すように、まず地震が発生した場合には、例えば気象庁の速報情報や緊急地震速報等の情報を用いて、地震情報入力手段1から地震の震源位置とマグニチュードの情報を入力する(S1)。震源位置とマグニチュードが入力されると、震度分布予測手段2は、入力された地震情報と地震増幅度データ記憶手段3に記憶された地盤増幅度のデータから、予測対象地域10内の震度分布を予測する(S2)。
【0038】
一方、予測対象地域10内に設置された地震計4は、地震情報の入力あるいは地震計4自体による揺れの感知等をトリガーとして地震波形の送信を開始し、速度・加速度比算出手段5は送信された地震波形のデータを受信して入手する(S3)。そして、速度・加速度比算出手段5は、地震計4から送られてきた地震波形のデータから、計測震度と最大加速度応答を算出し(S4)、速度・加速度比を算出する(S5)。
【0039】
S2において震度分布予測手段2によって予測対象地域10内の震度分布が予測され、さらにS5において速度・加速度比算出手段5によって速度・加速度比が算出されると、震度分布補正手段6は、補正倍率を震度分布予測手段2によって予測された震度分布に乗じて震度分布を補正する(S6)。エレベーター休止台数予測手段7の補正予測手段は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布と、感知器作動率曲線データ記憶手段8に記憶された感知器作動率曲線のデータを用いて、エレベーターの休止台数と分布を算出する。そして、エレベーター休止台数予測手段7は、例えば図11に示すような形態でエレベーターの休止台数と分布図を表示手段9に表示する(S7)。
【0040】
図11に示すように、表示手段9によって表示される分布図では、黒点が休止状態となったエレベーターを表し、白点が休止状態となっていないエレベーターを表している。この分布図は、例えば以下のように表示することができる。
【0041】
エレベーター休止台数予測手段7によって予測対象地域10の各地点についてエレベーターの休止確率が求まる。そして、個々のエレベーターについて、0から1までの乱数を発生させる。この乱数が、エレベーターが設置されている位置における休止確率より大きな値である場合には白点として表示し、エレベーターが設置されている位置における休止確率より小さな値である場合には黒点として表示する。このように表示することにより、エレベーターの休止確率の分布に対応した形で、休止状態となったエレベーターの分布を表示することができる。
【0042】
このように構成した本実施形態によれば、S2において予測対象地域10内に設置された地震計4が計測した地震波形から、S5において速度・加速度比算出手段5によって地震動の速度・加速度比を算出し、S6において速度・加速度比を用いて震度分布補正手段6によって地震の震度分布を補正することにより、S7においてエレベーター休止台数予測手段7の補正予測手段が、震度分布補正手段6によって補正された震度分布を用いてエレベーターの休止台数を予測するので、地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができ、地震の発生した地域によらず休止状態となったエレベーターの台数や分布を高精度に予測することができる。すなわち、地震の揺れの周波数成分の傾向のデータベースを用いることなく、地震の発生の少ない地域でも地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した高精度な予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布に関して信頼性のあるデータを得ることができる。
【0043】
また、本実施形態は、地震によるエレベーターの揺れを感知する地震感知器21,22を備え、S5において速度・加速度比算出手段5が、地震計4によって計測された地震波形から求めた計測震度と、地震感知器21,22が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出し、S6において計測震度とエレベーターの地震感知器21,22が感知する揺れの周波数成分に関する最大加速度応答の比で震度分布補正手段6が地震の震度分布を補正することにより、エレベーターの地震感知器21,22に影響する地震の揺れの周波数成分の相違を考慮した予測結果を得ることができる。これにより、休止状態となったエレベーターの休止台数や分布の精度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態は、地震時に観測した震度と感知器作動により休止状態となったエレベーターの割合とから算出された感知器作動率曲線のデータを記憶する感知器作動率曲線データ記憶手段8を備えており、S7においてエレベーター休止台数予測手段7が、震度分布補正手段6によって補正された震度分布から、エレベーターの休止台数が予測される予測対象地域10内の各領域における地震の震度に対応した感知器作動率曲線のデータを用いてエレベーターの休止台数を予測することにより、地震の震度に応じたエレベーターの休止確率を考慮した上で、予測対象地域10内の各領域の休止状態となったエレベーターの休止台数を予測することができる。
【0045】
また、本実施形態は、S7においてエレベーターの休止台数予測手段7は、震度分布補正手段6によって補正された震度分布から、エレベーターの休止台数が予測される予測対象地域10内の各領域における地震の震度に対応した感知器作動率曲線のデータを用いて休止状態となったエレベーターの分布図を表示することにより、予測対象地域10内の各領域の休止状態となったエレベーターの分布を地震の揺れの周波数成分の相違を考慮して表示手段9に表示することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態に限らず、本発明の技術的思想の範囲内において、種々の実施形態が可能である。上述した本実施形態では、速度・加速度比算出手段5は、計測震度と最大加速度応答の対数を算出した場合について説明したが、この場合に限らず速度・加速度比算出手段5は、最大速度応答の対数と最大加速度応答の対数を算出して、この比を速度・加速度比として出力するものであってもよい。
【0047】
さらに、速度・加速度比算出手段5は、地震計4により計測される地震波形から算出される計測震度の代わりに、震源位置とマグニチュードから地震計4の設置場所について距離減衰式と表層地盤の増幅度によって求めた震度を用いることにより、速度・加速度比を出力するものであってもよい。また、地震計4を予測対象地域10内に複数設置する場合には、それぞれの地震計4について速度・加速度比を算出し、これらの平均値として求めた速度・加速度比によって震度分布補正手段6が震度分布を補正する。これにより、表層地盤の影響を軽減し、高精度に予測することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 地震情報入力手段
2 震度分布予測手段(強さ分布予測手段)
3 地盤増幅度データ記憶手段
4 地震計(地震波形計測手段)
5 速度・加速度比算出手段
6 震度分布補正手段(補正手段)
7 エレベーター休止台数予測手段
8 感知器作動率曲線データ記憶手段(休止確率記憶手段)
9 表示手段
10 予測対象地域
20 建物
21,22 地震感知器
23 地表面
24 境界面
25 震源
26,27,28 地震波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えたエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
前記エレベーター休止台数予測手段によって前記エレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、
この地震波形計測手段によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、
この速度・加速度比算出手段によって算出された前記速度・加速度比を用いて前記強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布を補正する補正手段とを備え、
前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布を用いて前記エレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
地震による前記エレベーターの揺れを感知する地震感知器を備え、
前記強さ分布予測手段は、地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段を有し、
前記速度・加速度比算出手段は、前記地震波形計測手段によって計測された地震波形から求めた計測震度と、前記地震感知器が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
地震の揺れの強さに応じて前記エレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段を備え、
前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて前記エレベーターの休止台数を予測することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
前記エレベーターの休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて休止状態となった前記エレベーターの分布図を表示することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項1】
地震の震源位置とマグニチュードに基づいて、地震の揺れの強さ分布を予測する強さ分布予測手段と、この強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布から休止状態となるエレベーターの休止台数を予測するエレベーター休止台数予測手段とを備えたエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
前記エレベーター休止台数予測手段によって前記エレベーターの休止台数が予測される地域に設置され、地震動の波形を計測する地震波形計測手段と、
この地震波形計測手段によって計測された地震動の波形から、地震動の速度と加速度との比を示す速度・加速度比を算出する速度・加速度比算出手段と、
この速度・加速度比算出手段によって算出された前記速度・加速度比を用いて前記強さ分布予測手段によって予測された前記強さ分布を補正する補正手段とを備え、
前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布を用いて前記エレベーターの休止台数を予測する補正予測手段を有することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
地震による前記エレベーターの揺れを感知する地震感知器を備え、
前記強さ分布予測手段は、地震の震度の分布を予測する震度分布予測手段を有し、
前記速度・加速度比算出手段は、前記地震波形計測手段によって計測された地震波形から求めた計測震度と、前記地震感知器が感知する地震の揺れの周波数成分に関する最大加速度応答との比を算出することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
地震の揺れの強さに応じて前記エレベーターが休止状態となる確率を示す休止確率を記憶する休止確率記憶手段を備え、
前記エレベーター休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて前記エレベーターの休止台数を予測することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーターの地震時運転休止予測システムにおいて、
前記エレベーターの休止台数予測手段は、前記補正手段によって補正された前記強さ分布から、前記エレベーターの休止台数が予測される地域内の各領域における地震の揺れの強さに対応した前記休止確率を用いて休止状態となった前記エレベーターの分布図を表示することを特徴とするエレベーターの地震時運転休止予測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−106805(P2012−106805A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254763(P2010−254763)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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