説明

エレベータ用乗場表示装置

【課題】 太陽光パネルによる電力を利用したエレベータ乗場用表示装置は展望用エレベータでしか利用できていなかった。
【解決手段】 本願発明は、乗場に設けられかごの位置情報を表示する表示器、表示器の近傍に設けられた太陽電池パネル、太陽電池パネルの出力値に基づいて前記表示器の輝度を制御する表示制御部、太陽電池パネルが発電した電力を所定の電圧・周波数に変換し前記表示制御部に電力を供給するインバータユニット、を備えたことを特徴とするエレベータ乗場用表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ乗場において利用者にエレベータの状態を適切に表示するとともに省エネルギー化を図るエレベータ用乗場表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅のエレベータ乗場には採光のための窓が設けられることが多く、昼間は比較的明るく、夜間は暗いという環境にある。そのため、昼間の明るさに合わせてエレベータ用乗場の表示装置の輝度を調整すると夜間は明るすぎ、夜間の明るさに合わせて輝度を調整すると昼間は暗すぎて利用者に不快感を与えるといった問題がある。そのため、周囲の照度によってエレベータ用乗場の表示器具の輝度を調整する特開昭60-161869が開示されている。また、従来のエレベータ用表示装置の点灯や表示の切換などの動作には、商用電源を利用してきたが、最近の省エネルギー化の観点から、特開2004-277111ではエレベータかご内の照明電源としてかご外壁、かごドアまたはホールドアに太陽電池パネルを適用している。
【0003】
【特許文献1】特開昭60-161869
【特許文献2】特開2004-277111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開昭60-161869は、商用電源を利用して、エレベータ用乗場表示装置を点灯させるものであり、省エネルギーの観点から課題が生じる。
また、特開2004-277111を利用したかご内の表示装置は、かご外壁、かごドアまたはホールドアに太陽電池パネルを取り付けるため、昇降路に外光が射し込むガラス張りの展望用エレベータ(昇降路がガラス張りであり一般的にはホテルやショッピングセンタなどに利用される)などに適用が限定され、ガラス張りの展望用エレベータであっては、建築コストがアップするとともに昇降路内に熱がこもりやすく建物の外周に昇降路を配置するという建築のレイアウト上の制限や、機器にも温度対策が必要となるという問題がある。更に、かごドアやホールドアに太陽光電池パネルを取り付けた場合、ドアの厚さが嵩み、かご室の面積が狭くなるという問題も生じるとともに、ホールドアは利用客が触れやすく太陽光電池パネルの故障につながりやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、乗場に設けられ、かごの位置情報を表示する表示器、この表示器の近傍に設けられた太陽電池パネル、この太陽電池パネルの出力値に基づいて前記表示器の輝度を制御する表示制御部、前記太陽電池パネルが発電した電力を所定の電圧・周波数に変換し前記表示制御部に電力を供給するインバータユニット、を備えたことを特徴とするエレベータ乗場用表示装置である。
【0006】
また、本願発明は、太陽電池パネルが発電した電力を充電するバッテリー、表示制御部に供給する電力源を前記バッテリー又は商用電源から選択する切換器、を備えたことを特徴とするエレベータ乗場用表示装置である。
【0007】
また、本願発明は、太陽電池パネルが発電した電力を充電する非常用バッテリーを備え、表示制御部は商用電源からの電力供給の停止に基づいて、前記非常用バッテリーの電力を表示器に供給するとともに表示器にエレベータの利用ができないことを表示させることを特徴とするエレベータ乗場用表示装置である。
【0008】
また、本願発明は、太陽電池パネルは表示器の上方及び下方に設けられた
ことを特徴とするエレベータ乗場用表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、乗場に設けられ、かごの位置情報を表示する表示器、この表示器の近傍に設けられた太陽電池パネル、この太陽電池パネルの出力値に基づいて前記表示器の輝度を制御する表示制御部、前記太陽電池パネルが発電した電力を所定の電圧・周波数に変換し前記表示制御部に電力を供給するインバータユニットにより、展望用エレベータ以外の乗場に外光が当る一般的なエレベータにも利用できるとともにかご室の面積を狭めることなく省エネルギー化につながるエレベータ用乗場表示器具を提供することができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1の例を図1に示す。図1は建物の上方からかごを有する昇降路や乗場を含む下方を見た場合の図を示す。1は各階にある乗場の床、2は乗場の床1に立設された乗場壁、3はエレベータの乗場戸、4は乗場戸3の近くに設置されたエレベータの乗場表示装置である。5はエレベータの乗場近傍であって、乗場表示装置4と乗場を介して対向する位置にある壁5である。5aは壁5に埋め込まれた開口部であり、採光及び防犯の役割を果たす。
【0011】
壁5に埋め込まれた開口部5aは、例えば窓である。この場合、開口部5aを介して、乗場1は採光することができ、また、乗場1の換気を図ることができる。また窓のガラスを透明とすれば、建物外部から内部を見ることができ、犯罪抑止効果も期待できる。
【0012】
ここでは開口部5aは窓として説明したが、これに限られるものではない。乗場1を、マンションの開放廊下とした場合、壁5は床面からベランダの柵程度の高さ(例えば1.5m程度の建物外壁)、開口部は乗場壁上部の空間(ガラス等の覆うものはなし)としても良い。
【0013】
図2は、エレベータの乗場表示装置の詳細を示すものである。4は、エレベータの乗場表示装置の表板である。表板4にエレベータの運転方向や現在位置を示す表示器6及び太陽電池パネル7が組み込まれている。表示器6はLEDや液晶ディスプレイが使用される。表示器のうち、6aは「停電」「点検中」「休止中」などエレベータが使えない旨の表示をする。15は、エレベータの呼びボタンである。
【0014】
太陽電池パネル7は、表示器6の上方に太陽電池パネル7aを、表示器6の下方に太陽電池パネル7bを設け、各々は独立して発電する場合もあるし、一体として採光する場合もある。表示器6の上方および下方に太陽電池パネル7a、7bを設けることにより、表示部分が上下シンメトリーになり、意匠的に見栄えが良くなる。また、太陽電池パネル7a、7bが各々独立して採光することにより、太陽電池パネルを複数に分けることにより、どちらかが故障しても他方が動作するとともに、設置場所を分散することにより異なる時刻による太陽の位置により隣接する建物の影等により太陽光が当らなくなる可能性を低くできる。また、太陽電池パネル7は、表示器6の近傍に設置することにより、太陽電池パネルが採光した太陽電池パネル出力値は、表示器近傍の照度と相関があるために後述する表示制御部8により表示器6へ、表示器近傍の照度に対応した適切な表示制御をすることが可能となる。
【0015】
図3は、本実施例の構成図を示すものである。7は、太陽電池を複数枚、直列又は並列接続して電圧と電流とを発生させるパネル状の太陽電池パネルである。9は、太陽電池パネル7にて発電された電力を所定の電圧・周波数に変換するインバータユニットである。8は、エレベータ乗場の明るさによって変化する太陽電池パネル7の出力値が入力されるとともに、インバータユニット9から所定の電源が供給され、エレベータの明るさによって表示器6の明るさ(輝度)を制御する表示制御部である。
【0016】
図3をもとに、表示器6の表示制御方法について説明する。太陽電池パネル7の出力値は、太陽電池パネル7が採光した太陽光の強さと相関するために、この出力値をもとに表示制御部において、乗場の明るさである太陽光の強さを考慮して表示器の明るさを制御することができる。なお、太陽電池パネルは、表示制御部が太陽電池パネルの出力値(発電量)をもとに周囲照度相当(明るい-暗いを判断する)を算出する。
【0017】
表示制御部8では、エレベータの明るさによって表示器6の明るさ(輝度)を制御するが、太陽光が強く当れば、太陽電池パネルでの発電量(電流)が増える。例えば、太陽光が直接当る場合の表示器の明るさを1とした場合、夕方で周囲が暗い場合は半分程度の輝度、夜間で真っ暗な場合は消灯若しくは3分の1程度の輝度である。
【0018】
なお、太陽電池パネル7が表示器6の近傍に設置されるために、表示器6の周囲照度と太陽電池パネル出力値との相関が大きくなり、表示制御部6は太陽電池パネル出力値を参考に適切に表示器6を表示制御することができる。
【0019】
表示器6に用いるLEDや液晶ディスプレイの輝度は、一般的には駆動電流に比例し、駆動電流が小さいほど製品寿命を延ばすことができる。そのため、エレベータ乗場が明るい場合は表示を見やすくするため輝度を高く設定し、曇りの日や夕方、夜間など乗場が比較的暗い場合には周囲の明るさに合わせて表示器6の輝度を下げて、省エネと高寿命化を図ることが可能である。また、乗場の明るさに合わせて表示器6の輝度を調整することによって、視認性も向上する。
【0020】
実施の形態2.
図4に実施の形態2の構成図を示す。太陽電池パネル7には充放電制御部10が接続され、発電した電力はバッテリー11に蓄えられる。表示制御部8は、切換器13を介して商用電源14又はインバータユニット9から電源が供給される。なお、インバータユニット9は、太陽電池パネルからの電力、バッテリー11に蓄えられた電力を所定の電圧・周波数に変換する。
【0021】
太陽電池パネル7やバッテリー11からインバータユニット9を介して電源が供給可能な場合には、切換器13はインバータユニット9からの出力を表示制御部8に供給するが、夜間など太陽電池パネル7での発電ができない場合には商用電源14に切り替える。また、昼間は商用電源14から電源を供給し表示器6の輝度を低くする(表示器6での消費電力が少ない)、夜間はバッテリー11からの電源供給に切り替えてもよい。このように、太陽光発電を利用することにより省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
実施の形態3.
次に実施の形態3について説明する。本実施例では、図2に示すとおりエレベータ乗場表示装置4にはエレベータの呼びボタン15が設けられている。表示器6、6aは通常時消灯しており、呼びボタン15が押されたことを検出して、表示制御装置8が表示器6又は表示器6aを点灯させる。なお、表示器6aは、「停電」「点検中」「休止中」などエレベータの状態を示す。
【0023】
また、表示制御装置8はタイマー機能を備えており、当該乗場にエレベータが到着してから所定の時間経過するまで表示器6又は6aの点灯を継続させる。
【0024】
図5に本実施の形態の構成図を示す。図5に示すように、太陽電池パネル7で発電された電力は、充放電制御部10を介して通常時用のバッテリー11及び非常用バッテリー11aに蓄えられる。通常時は商用電源14又はバッテリー11に蓄えられた電力を利用して表示器6を点灯させる。
【0025】
停電やエレベータの点検・保守時などで商用電源14の供給が停止された場合には、非常用バッテリー11aに蓄えられた電力にて、所定の表示を表示器6aに点灯させる。ここで言う所定の表示とは「停電」「点検中」「休止中」などエレベータが使えない旨の表示のことである。
【0026】
なお、呼びボタン15と、非常用バッテリー11aが設けられているため、特に停電時で、呼びボタンが押された場合には通常時に使用するバッテリーとは別に非常用バッテリーに蓄えられた電力を使用して表示させ、停電時にも最低限の機能を満足させることができる。また、通常時のバッテリーには十分に充電されていない場合もあるが、非常用バッテリーは停電時以外は満充電としておく。
【0027】
このように、必要な時にのみ表示を行うことによって一層の省エネルギー化を図ることができる。また、停電時や保守時など商用電源の供給が停止した場合でも、利用者にエレベータの状態を表示するため、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】:建物の上方からかごや乗場を含む下方を見た場合の図
【図2】:エレベータの乗場表示装置を示す図
【図3】:実施の形態1の構成図
【図4】:実施の形態2の構成図
【図5】:実施の形態3の構成図
【符号の説明】
【0029】
1:各階にある乗場の床、2:乗場壁、3:エレベータの乗場戸、4:乗場表示装置、5:壁、6:表示器、6:開口部、7:太陽電池パネル、8:表示制御部、9:インバータユニット、10:充放電制御部、11:バッテリー、11a:非常用バッテリー、13:切換器、14:商用電源、15:呼びボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に設けられ、かごの位置情報を表示する表示器、
この表示器の近傍に設けられた太陽電池パネル、
この太陽電池パネルの出力値に基づいて前記表示器の輝度を制御する表示制御部、
前記太陽電池パネルが発電した電力を所定の電圧・周波数に変換し前記表示制御部に電力を供給するインバータユニット、
を備えたことを特徴とするエレベータ乗場用表示装置。
【請求項2】
太陽電池パネルが発電した電力を充電するバッテリー、
表示制御部に供給する電力源を前記バッテリー又は商用電源から選択する切換器、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータ乗場用表示装置。
【請求項3】
太陽電池パネルが発電した電力を充電する非常用バッテリーを備え、
表示制御部は商用電源からの電力供給の停止に基づいて、前記非常用バッテリーの電力を表示器に供給するとともに表示器にエレベータの利用ができないことを表示させる
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータ乗場用表示装置。
【請求項4】
太陽電池パネルは表示器の上方及び下方に設けられた
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のエレベータ乗場用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168385(P2011−168385A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36006(P2010−36006)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】