説明

エレベータ装置

【課題】
エレベータの非常停止に対しても、専用の絶対位置検出器等を用いることなく、位置検出用のポジテクタと遮蔽板を利用して信頼性の高い位置検出を可能とする。
【解決手段】
乗りかご1と、前記ロープ5を介して前記乗りかご3と対向して吊られる釣り合い錘3と、昇降路側の各階床に対応して設置された位置検出用の遮蔽板15と、前記乗りかご側に取付けられ前記遮蔽版15と対向して乗りかご位置を検出するポジテクタ14とを備え、エレベータの非常停止後に、前記乗りかご1を低速走行して得られる前記ポジテクタ出力を用いて乗りかごの位置を検出するものであって、前記ポジテクタ14で識別し得る異なる形状からなる2種類の遮蔽板15A,15Bを有し、かつ、この2種類の遮蔽板15A,15Bを昇降路側の階床に沿って交互に配置することで、非常停止時の一階床分以上の位置推定誤差を判別して位置検出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ装置に係り、特にエレベータが非常停止した際の位置検出に好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の形状を有する位置検出用の遮蔽板は、例えば形状が2種類であった場合、交互に設置する必要があり、取付け時の誤りなど人為的な設置異常が発生した場合には異常を検出する手段を有する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には第一のパルスと第二のパルスを交互にそれぞれ発生する位置検出装置を有し、前述のパルスの発生順番が異常となった場合にはエラーを検出し、パルスの発生を禁止する方法が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−150305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、位置検出用のパルス発生器を2つ用いて位置検出に対する信頼性を高め、異常と判断した場合にはパルスの発生を禁止する方式を採用している。しかし、エレベータの位置検出においては複数のパルス発生器を有することによって機器そのものの故障発生率が上昇することも懸念される。
【0006】
他方、エレベータ乗りかご側に位置検出用のポジテクタ、昇降路側の各階床位置に対応して位置検出用の遮蔽板を配置することで、エレベータ乗りかごの着床ゾーン及びドアゾーンを直接検出することも知られている。エレベータの異常または停電等により乗りかごが非常停止した際には、停止後の低速走行で、このポジテクタと遮蔽板を用いて最寄階床へ停止させることができる。
【0007】
ところで、エレベータを設置する建屋が高層化し、エレベータ速度が高速化すると、エレベータの非常停止時には、ロープとシーブ間の滑り及びロープ伸び等により、エレベータ乗りかごの実際位置が計算値より一階分の距離以上の誤差を生じるおそれがある。この場合、非常停止後の最寄階床が分からなくなり、乗りかご位置の計算値を重視すると最寄階床を誤って認識することになる。
【0008】
本発明の目的は、エレベータの異常または停電等による非常停止に対しても、専用の絶対位置検出器等を用いることなく、前記位置検出用のポジテクタと遮蔽板を利用して信頼性の高い位置検出を可能とし、もってエレベータ装置の信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、乗りかごと、前記乗りかごをロープを介して昇降させるためのモータと、
前記ロープを介して前記乗りかごと対向して吊られる釣り合い錘と、昇降路側の各階床に対応して設置された位置検出用の遮蔽板と、前記乗りかご側に取付けられ前記遮蔽版と対向して乗りかご位置を検出するポジテクタとを備え、エレベータの非常停止後に、前記乗りかごを走行して得られる前記ポジテクタ出力を用いて乗りかごの位置を検出するものにおいて、その特徴とするところは、前記ポジテクタで識別し得る異なる形状の遮蔽板を複数種類有し、かつ、この複数種類の遮蔽板を前記昇降路側の階床間で交互に配置することにある。これにより、遮蔽板の種類を識別することで、非常停止時に一階床分以上の誤差が生じたことを判別可能としている。
【0010】
本発明の他の特徴は、前記遮蔽板の種類を2種類とすることで経済的に実現しているが、それらについては以下の実施の形態で明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、停電や異常時に発生するエレベータ非常停止によって、乗りかごの実位置とエレベータ制御装置内の位置データとにずれが生じても、昇降路側に設置された種類の異なる遮蔽板を通過することによって、エレベータ乗りかごの絶対位置を検出することが可能となり、信頼性の高いエレベータ装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例におけるエレベータ装置の全体構成を示す概略図
【図2】本発明の一実施例におけるエレベータ制御装置の概略図
【図3】本発明の一実施例における遮蔽板の形状判別図
【図4】本発明の一実施例における停電発生時の位置検出フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明のエレベータ装置、図2は本発明のエレベータ制御装置の一実施例である。図1に示すように、エレベータの乗りかご1と、エレベータを駆動するモータ2と、乗りかご1と対向した箇所に設置されている釣り合い錘3があり、それぞれはプーリ4とロープ5を介して連結されている。また、モータ2にはエンコーダ6が取付けられており、モータ2が回転し、モータ2の回転に応じて発生するエンコーダ6のパルスを、制御装置7の内部を示す図2の入出力バッファ(I/O)8を経由して、マイクロコンピュータ(MPU)9内の位置検出部10に取り込んで乗りかごの位置を検出を、速度検出部11に取り込んで乗りかごの速度を検出する。
【0015】
また、乗りかご1には負荷量検出装置12が設置されており、負荷量検出装置12により検出したデータを制御装置7の内部にあるI/O8を経由して、MPU9内の負荷量検出部13に取り込み、乗りかご1の負荷量検出を行う。また、乗りかご1のかご上部分には、乗りかご1の位置を検出するポジテクタ14が取付けられており、ポジテクタ14に対応して、形状の異なる位置検出用の遮蔽板15A、15Bが昇降路側に設置されている。ポジテクタ14からの検出信号は、制御装置7の内部にあるI/O8を経由して、MPU9内の遮蔽板検出部16により検出される。
【0016】
図3は遮蔽板の形状判別図を示したものである。図3(a)に遮蔽板形状Aの例、図3(b)に遮蔽板形状Bの例を示す。ポジテクタ14は、図1に示す様に乗りかご1に取り付けられており、光1〜3は遮蔽板に向けて送受光される3つの光軸を示す。ポジテクタ14と遮蔽板15Aおよび15Bとの対向位置によって、光1〜3の光軸は図示するON/OFFの状態を取ることになる。両遮蔽板15A、15Bとも、中央の着床ゾーンで全て「ON」となるが、その前後のドアゾーンでは光軸1〜3の検出モードが異なる。このような2種類の遮蔽板形状を用いることで、遮蔽板15とポジテクタ14がUP方向、DN方向の何れの方向から噛み込みを開始した場合にも、ポジテクタ14のON/OFF信号から遮蔽板の種類及び方向を判別することができる。
【0017】
例えば、遮蔽板形状Aとポジテクタ14が下側から噛み込みを開始した場合、光軸のON/OFF状態は一定距離走行するまで光軸1から順にON・OFF・ONとなる。次に遮蔽板形状Bとポジテクタ14が下側から噛み込みを開始した場合、光軸のON/OFF状態は光軸1から順にON・OFF・OFFとなり、一定距離移動してから遮蔽板形状Aと同様の信号状態であるON・OFF・ONとなる。ポジテクタ14が遮蔽板15を噛み込み始めてから一定距離を走行するまでの光軸1〜3のON/OFF信号の相違を用いて、遮蔽板形状AまたはBを判別する。また、形状の変更量については、検出するまでの乗りかご1の移動速度とポジテクタ14の信号を取り込むMPU7の周期により決定する。
【0018】
図4に本発明の一実施例における停電発生時の位置検出フローチャートを示し、ここでは停電発生から乗りかご1の位置を検出し、最寄階床のドアゾーンに到着・停止するまでのフローチャートを示している。停電に限らず、異常等による非常停止の場合も同様に実施することが出来ることは言うまでもない。
【0019】
先ず、エレベータが走行開始(S1)し、その走行中に停電等が発生してエレベータが非常停止(S2)したとする。この時は、エレベータ制御装置のMPU9内の位置検出部10,速度検出部11,負荷量検出部13によりそれぞれ停止前のエレベータの位置、速度、負荷量を記憶し、停電発生前の各データを保存する(S3)。
【0020】
その後、エレベータが復電(S4)すると、保存しておいた停止前のエレベータの位置、方向、速度、負荷量より非常停止時のエレベータの停止位置を計算により推定する(S5)。続いて、最寄の階床のドアゾーンに向けて低速での走行を開始し(S6)、エンコーダ6からの走行パルスをカウントすることでかご位置の推定を継続する(S7)。
【0021】
遮蔽板を通過(S8)すると、通過した遮蔽板は形状Aか(S9)、形状Bか(S10)を判定する。判定の結果、どちらにも該当しないと判断した場合には、エレベータの現在位置を検出不可であり、絶対位置を検出可能な端階までエレベータを走行させ、運転終了する
(S11)。
【0022】
かごの推定位置(+許容範囲)にあるべき遮蔽板の形状と通過した遮蔽板の形状が一致することを判別した場合は、エレベータ制御装置7のかご位置検出部10は、かご位置をこの遮蔽板の示す位置に一致させる(S12)。従って、非常停止時のロープ滑り等によってかごの推定位置に一階床分の誤差が生じたとしても、遮蔽板の形状を判別することでかご位置を適正に検出することが可能となる。その後ドアゾーンにて停止し、運転終了する(S12)。
【0023】
ここで、非常停止時の位置推定精度が低く、2階床ないし3階床以上の誤差が心配される装置では、その心配される階床誤差分に合わせた数の遮蔽板の種類を準備し、
昇降路側の該当位置に交互に配置することで、対応する事が出来る。
【符号の説明】
【0024】
1…乗りかご、2…モータ、3…釣り合い錘、4…プーリ、5…ロープ、6…エンコーダ、7…制御装置、8…入出力バッファ(I/O)、9…MPU、10…位置検出部、11…速度検出部、12…負荷量検出装置、13…負荷量検出部、14…ポジテクタ、15A…遮蔽板 形状A、15B…遮蔽板 形状B、16…遮蔽板検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、前記乗りかごをロープを介して昇降させるためのモータと、前記ロープを介して前記乗りかごと対向して吊られる釣り合い錘と、昇降路側の各階床に対応して設置された位置検出用の遮蔽板と、前記乗りかご側に取付けられ前記遮蔽版と対向して乗りかご位置を検出するポジテクタと、を備え、エレベータの非常停止後に、前記乗りかごを走行して得られる前記ポジテクタ出力を用いて乗りかごの位置を検出するエレベータ装置において、前記ポジテクタで識別し得る異なる形状の遮蔽板を複数種類有し、かつ、当該複数種類の遮蔽板を前記昇降路側の階床間で交互に配置することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1記載において、前記ポジテクタで識別し得る異なる形状の遮蔽板を2種類とし、当該2種類の遮蔽板を前記昇降路側の階床間で交互に配置することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
請求項1記載において、前記エレベータの非常停止及びその後の前記走行による乗りかごの位置を推定し、乗りかごの前記走行時にポジテクタが作動した遮蔽板の種類と位置とを用いて乗りかごの現在の位置を検出する手段を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項4】
請求項3記載において、非常停止発生時の乗りかごの速度、位置及び負荷量を記憶する手段と、当該乗りかごの速度、位置及び負荷量から前記非常停止時の乗りかご停止位置を推定する手段とを備えることを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136322(P2012−136322A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289351(P2010−289351)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】