説明

エレベータ遠隔監視システム

【課題】電波状態の良いPHS基地局と通信できる複数の遠隔監視装置が配置されているときでも、良好な電波状態において監視対象のエレベータの情報を送ることのできるエレベータ遠隔監視システムを提供する。
【解決手段】エレベータ遠隔監視システムは、複数のエレベータにそれぞれ付随して配置された遠隔監視装置と上記エレベータに対して遠隔地に配置された監視センターとの間にPHS網を用いて回線を確立し、上記複数のエレベータの情報を送受信し、上記エレベータの故障を上記監視センターにて遠隔監視するエレベータ遠隔監視システムにおいて、上記遠隔監視装置間を通信で接続し、他の上記遠隔監視装置が上記監視センターとの間で回線が確立している間、上記他の遠隔監視装置以外の遠隔監視装置はPHS網との間で回線を確立しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータを遠隔地から監視するためのエレベータ遠隔監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ遠隔監視システムは、被監視対象としてのエレベータを監視する遠隔監視装置と、遠隔監視装置とは離隔して設けられ、電話回線を介した遠隔監視装置からの情報に基づいてエレベータを遠隔監視する監視センターを備え、エレベータ制御盤に接続された遠隔監視装置からの情報をPHS(Personal HandyPhone System)網で伝送されるデジタル信号形式に変換し通信時にみなし音声モードとして発信するためのアダプターと、アダプターと接続されたPHS端末と、監視センターにアナログ電話回線を介して接続され、PHS端末とPHS網を介して通信するためのPHS基地局とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−20049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般のPHS端末または他の遠隔監視装置がPHS基地局との間で回線が確立しているとき、エレベータ制御盤から「発信要求」が送信され、遠隔監視装置のPHS端末通信部がもっとも電波状態の良いPHS基地局との間の回線を確立しようとしても、そのPHS基地局が一般のPHS端末または他の遠隔監視装置との通信で回線に空きがないときには、そのPHS基地局と当該遠隔監視装置との間の回線が確立できず、当該遠隔監視装置は、他の電波状態の悪いPHS基地局との間で回線が確立される。
また、非常に電波状態が悪いPHS基地局だけが空いているときは、PHS網との間に回線が確立できない場合がある。
【0005】
また、遠隔監視装置とPHS基地局との間の回線が確立され通信できるが、通信速度が高速接続(例えば64kbps)ではなく、低速接続(例えば32kbps)になる場合がある。これはPHS基地局に接続されているPHS端末の通信速度を落とす(例えば64kbpsから32kbpsに落とす)代わりに、接続できるPHS端末の台数を増やす(例えば2台から4台に増やす)仕組みがPHS基地局には備えられている。
【0006】
例えば、1つのビルに複数のエレベータが配置され、ビルが何らかの原因で停電し、エレベータが停止すると、全てのエレベータは遠隔監視装置に「発信要求」し、全ての遠隔監視装置は電波状態の最も良いPHS基地局との間の回線を確立しようとしても、電波状態の悪いPHS基地局との間の回線が確立されたり、PHS基地局との間の回線が確立されなかったり、通信速度が低速になったりするという問題がある。
【0007】
この発明の目的は、電波状態の良いPHS基地局と通信できる複数の遠隔監視装置が配置されているときでも、良好な電波状態において監視対象のエレベータの情報を送ることのできるエレベータ遠隔監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わるエレベータ遠隔監視システムは、複数のエレベータにそれぞれ付随して配置された遠隔監視装置と上記エレベータに対して遠隔地に配置された監視センターとの間にPHS網を用いて回線を確立し、上記複数のエレベータの情報を送受信し、上記エレベータの故障を上記監視センターにて遠隔監視するエレベータ遠隔監視システムにおいて、上記遠隔監視装置間を通信で接続し、他の上記遠隔監視装置が上記監視センターとの間で回線が確立している間、上記他の遠隔監視装置以外の遠隔監視装置はPHS網との間で回線を確立しない。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係わるエレベータ遠隔監視システムの効果は、電波状態の良いPHS基地局を介してPHS網と回線が確立している遠隔監視装置があるときには、その遠隔監視装置以外の遠隔監視装置がPHS網に接続の要求を行わず、電波状態の悪いPHS基地局に接続されないので、電波状態の悪い環境での通信を予防することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるエレベータ遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わるエレベータ遠隔監視システムは、図示しない近隣の3つのビルにそれぞれ設置した3つのエレベータ1a〜1cの運転状況を遠隔に配置した監視センター9で監視するシステムである。そして、各エレベータ1a〜1cと監視センター9との間で情報の送受信をPHS網8を用いて実行する。このとき、これらのビルの近隣に設置されているPHS基地局7aがこれらのエレベータ1a〜1cに対いて電波状態が良好であり、このPHS基地局7aの回線に空きがあるときにはエレベータ1a〜1cはこのPHS基地局7aとの間で回線が確立される。また、PHS網8にはこれらのエレベータ1a〜1cに対して電波状態は悪いが接続可能なPHS基地局7b、7cが設置されている。また、PHS基地局7a〜7cには一般PHS端末10からもアクセスがある。なお、ビル、エレベータ、PHS基地局の数は、説明のための例であり、これに限るものではない。
【0011】
この発明の実施の形態1に係わるエレベータ遠隔監視システムは、各エレベータ1a〜1のエレベータ制御盤2a〜2c、各エレベータ1a〜1cに対応して配置される遠隔監視装置3a〜3c、PHS基地局7a、PHS網8、監視センター9を備える。
各エレベータ制御盤2a〜2cは、監視対象のエレベータ1a〜1cが故障したとき、「発信要求」を送信し、監視センター9との間の情報の授受が完了したとき、「切断要求」を発信する。
【0012】
各遠隔監視装置3a〜3cは、「発信要求」を受信したとき監視センター9との間に回線を確立し、「切断要求」を受信したとき監視センター9との間の回線を切断する。
次に、遠隔監視装置3a〜3cについて詳しく説明するが、各遠隔監視装置3a〜3cは同様であるので、遠隔監視装置3aについて説明し、他の遠隔監視装置3b、3cについては説明を省略する。
遠隔監視装置3aは、エレベータ制御盤2aと接続されたエレベータ通信インターフェース回路(エレベータ通信I/F)4a、エレベータ通信インターフェース回路4aに接続された送受信制御部5a、送受信制御部5aに接続されたPHS端末通信部6a、送受信制御部5aに接続された遠隔監視装置間通信インターフェース回路(遠隔監視装置間通信I/F)11aを備える。
【0013】
エレベータ通信インターフェース回路4aは、エレベータ制御盤2aからの信号を受信して送受信制御部5aに送信し、逆に送受信制御部5aからの信号をエレベータ制御盤2aに送信する。
送受信制御部5aは、エレベータ制御盤2aからの「発信要求」を受信したとき、遠隔監視装置間通信インターフェース回路11aを経由して通信回線12により接続されている他の遠隔監視装置3b、3cの送受信制御部5b、5cにその遠隔監視装置3b、3cが通信中であるか否かを確認する。そして、他の遠隔監視装置3b、3cが通信中であることを確認したときには、所定の周期で通信中であるか否かの確認を行う。他の遠隔監視装置3b、3cが通信中でないことを確認したときには、PHS端末通信部6aを動作し、PHS端末通信部6aとPHS基地局7aとの間の回線を確立する。
【0014】
また、送受信制御部5aは、エレベータ制御盤2aからの「切断要求」を受信したとき、PHS端末通信部6aを停止し、PHS端末通信部6aとPHS基地局7aとの間の回線を切断する。PHS端末通信部6aとPHS基地局7aとの間の回線が切断されることにより、PHS網8経由する監視センター9との間の回線が切断される
【0015】
遠隔監視装置間通信インターフェース回路11aは、通信回線12に接続されている他の遠隔監視装置3b、3cとの間の通信を可能にする。
【0016】
図2は、エレベータ1aが故障したとき故障に関する情報をエレベータ制御盤2aから監視センター9に伝送するために実施の形態1に係わる遠隔監視装置3aが回線を制御する回線制御ルーチンを示すフローチャートである。
次に、エレベータ1aが故障したときに故障に関する情報をエレベータ制御盤2aから監視センター9に伝送する回線制御ルーチンの手順について図2を参照して説明する。この回線制御ルーチンは周期的に開始される。
ステップS1において、送受信制御部5aはエレベータ制御盤2aから「発信要求」を受信したか否かを判断し、「発信要求」を受信したときステップS2に進み、「発信要求」を受信していないとき回線制御ルーチンを終了する。
ステップS2において、送受信制御部5aは他の遠隔監視装置3b、3cに通信中か否かを確認し、通信中と確認したときステップS2を繰り返し、通信中でないと確認したときステップS3に進む。例えば、遠隔監視装置3bが監視センター9と通信中であれば、送受信制御部5aは周期的に遠隔監視装置3bに通信中であるか否かを確認する。
ステップS3において、送受信制御部5aはエレベータ制御盤2aと監視センター9との間の回線を確立し、ステップS4に進む。このようにエレベータ制御盤2aと監視センター9との間に回線が確立されると、エレベータ制御盤2aと監視センター9との間で故障に関する情報を送受信する。
ステップS4において、送受信制御部5aはエレベータ制御盤2aから「切断要求」を受信したか否かを判断し、「切断要求」を受信したときステップS5に進み、「切断要求」を受信していないときステップS4を繰り返す。
ステップS5において、送受信制御部5aはエレベータ制御盤2aと監視センター9との間の回線を切断し回線制御ルーチンを終了する。
【0017】
このように、例えば、電波状態の良いPHS基地局7aを介してPHS網8と回線が確立している遠隔監視装置3bがあるときには、その遠隔監視装置3b以外の遠隔監視装置3a、3cがPHS網8に接続の要求を行わず、電波状態の悪いPHS基地局7b、7cに接続されないので、電波状態の悪い環境での通信を予防することができる。
また、多数のエレベータが同時に故障した場合、電波状態の良いPHS基地局7aを介して順に故障に関する情報を監視センター9で収集できるので、全体の故障の状況を速やかに把握できる。
【0018】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係わるエレベータ遠隔監視システムは、実施の形態1に係わるエレベータ遠隔監視システムと遠隔監視装置が異なり、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる遠隔監視装置は、実施の形態1に係わる遠隔監視装置3a〜3cと送受信制御部が異なり、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0019】
実施の形態2に係わる送受信制御部は、エレベータ制御盤2aからの「発信要求」を受信したとき、遠隔監視装置間通信インターフェース回路11aを経由して通信回線12により接続されている他の遠隔監視装置3b、3cの送受信制御部5b、5cにその遠隔監視装置3b、3cが通信中であるか否かを確認する。そして、他の遠隔監視装置3b、3cが通信中であることを確認したときには、その通信速度が高速(例えば64kbps)か否かを確認する。通信速度が高速でなく低速(例えば32kbps)のとき、所定の周期で通信中であるか否かの確認を行う。他方、他の遠隔監視装置3b、3cが通信中でないまたは他の遠隔監視装置3b、3cが通信中であっても通信速度が高速であることを確認したときには、PHS端末通信部6aを動作し、PHS端末通信部6aとPHS基地局7aとの間の回線を確立する。
【0020】
図3は、エレベータ1aが故障したとき故障に関する情報をエレベータ制御盤2aから監視センター9に伝送するために実施の形態2に係わる遠隔監視装置が回線を制御する回線制御ルーチンを示すフローチャートである。
次に、エレベータ1aが故障したときに故障に関する情報を監視センター9に伝送する手順について図3を参照して説明する。この回線制御ルーチンは周期的に開始される。
ステップS11において、送受信制御部はエレベータ制御盤2aから「発信要求」を受信したか否かを判断し、「発信要求」を受信したときステップS2に進み、「発信要求」を受信していないとき回線制御ルーチンを終了する。
ステップS12において、送受信制御部は他の遠隔監視装置3b、3cに通信中か否かを確認し、通信中と確認したときステップS13に進み、通信中でないと確認したときステップS14に進む。
ステップS13において、送受信制御部は通信中の遠隔監視装置3b、3cの通信速度が高速か否かを確認し、通信速度が高速と確認したときステップS14に進み、通信速度が高速でないと確認したときステップS12に戻る。
ステップS14において、送受信制御部はエレベータ制御盤2aと監視センター9との間の回線を確立し、ステップS15に進む。このようにエレベータ制御盤2aと監視センター9との間に回線が確立されると、エレベータ制御盤2aと監視センター9との間で故障に関する情報を送受信する。
ステップS15において、送受信制御部はエレベータ制御盤2aから「切断要求」を受信したか否かを判断し、「切断要求」を受信したときステップS16に進み、「切断要求」を受信していないときステップS15を繰り返す。
ステップS16において、送受信制御部はエレベータ制御盤2aと監視センター9との間の回線を切断し回線制御ルーチンを終了する。
【0021】
この実施の形態2に係わる遠隔監視装置は、他の遠隔監視装置が電波状態の良いPHS基地局7aと高速で通信を行っているときには、新たに電波状態の良いPHS基地局7aと低速で通信を行うことができるので、新たに回線接続を必要とする遠隔監視装置の待機をなくすことができる。
また、他の遠隔監視装置が電波状態の良いPHS基地局7aと低速で通信を行っているときは、その通信が完了するまで待機するので、PHS基地局7aでの通信速度をさらに落とすことがなく、安定した通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるエレベータ遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】エレベータが故障したとき故障に関する情報をエレベータ制御盤から監視センターに伝送するために実施の形態1に係わる遠隔監視装置が回線を制御する回線制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】エレベータが故障したとき故障に関する情報をエレベータ制御盤から監視センターに伝送するために実施の形態2に係わる遠隔監視装置が回線を制御する回線制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1a〜1c エレベータ、2a〜2c エレベータ制御盤、3a〜3c 遠隔監視装置、4a〜4c エレベータ通信インターフェース回路(エレベータ通信I/F)、5a〜5c 送受信制御部、6a〜6c PHS端末通信部、7a〜7c PHS基地局、8 PHS網、9 監視センター、10 一般PHS端末、11a〜11a 遠隔監視装置間通信インターフェース回路(遠隔監視装置間通信I/F)、12 通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレベータにそれぞれ付随して配置された遠隔監視装置と上記エレベータに対して遠隔地に配置された監視センターとの間にPHS網を用いて回線を確立し、上記複数のエレベータの情報を送受信し、上記エレベータの故障を上記監視センターにて遠隔監視するエレベータ遠隔監視システムにおいて、
上記遠隔監視装置間を通信で接続し、他の上記遠隔監視装置が上記監視センターとの間で回線が確立している間、上記他の遠隔監視装置以外の遠隔監視装置はPHS網との間で回線を確立しないことを特徴とするエレベータ遠隔監視システム。
【請求項2】
複数のエレベータにそれぞれ付随して配置された遠隔監視装置と上記エレベータに対して遠隔地に配置された監視センターとの間にPHS網を用いて回線を確立し、上記複数のエレベータの情報を送受信し、上記エレベータの故障を上記監視センターにて遠隔監視するエレベータ遠隔監視システムにおいて、
上記遠隔監視装置間を通信で接続し、他の上記遠隔監視装置が上記監視センターとの間で回線が確立し、且つ高速の通信速度で通信しているとき、上記他の遠隔監視装置以外の遠隔監視装置はPHS網との間で回線を確立し、他の上記遠隔監視装置が上記監視センターとの間で回線が確立し、且つ低速の通信速度で通信しているとき、上記他の遠隔監視装置以外の遠隔監視装置はPHS網との間で回線を確立しないことを特徴とするエレベータ遠隔監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−105840(P2008−105840A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292405(P2006−292405)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】