説明

エレベータ

【課題】マシンルームレスエレベータにおいて、手すりによって囲まれる作業スペースを広くとることが可能なエレベータを提供する。
【解決手段】昇降路2内を昇降するかご4と、かご4の背面18側を昇降するつり合いおもり19と、一側内壁面29に沿って前後方向に水平に延びる回転軸線Hのまわりに回転するトラクションシーブ26と、トラクションシーブ26と同軸に設けられ、トラクションシーブ26を回転軸線Hのまわりに回転駆動する駆動装置3と、それぞれ一側内壁面29の近傍に設けられ、左右方向に水平に延びる回転軸線のまわりに回転する2つのソラセシーブ33、34と、ロープ25とを備え、トラクションシーブ26は鉛直方向上方から見たときにかご4の背面と昇降路2の後内壁面44との間の空間に位置するように配置され、駆動装置3は鉛直方向上方から見たときにその一部がかご4と重なるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
マシンルームレスエレベータは、昇降路の上部に独立した機械室を持たない。この種のエレベータは、昇降路の上部に駆動装置を配置するためのスペースを確保する必要がある。
【0003】
従来、水平軸線によって枢持されて主索が巻掛けられた駆動綱車が設けられ、レールの上端部に支持されて下面がかご及びつり合おもりの最上昇位置よりも上方に配置され、水平投影面においてかごと重合して配置された巻上機を備えたエレベータ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
駆動装置本体が、垂直投影面でかごの後部のコーナー部と重なるように配置され、駆動装置は、トラクションシーブの軸線がかごの間口方向に対して斜めに延びるように配置され、昇降路内の上部には、トラクションシーブからかごへ主索を導く第1及び第2の返し車が水平方向に互いに間隔をおいて配置されているエレベータ装置も知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、駆動装置の一部が、かごをその昇降方向へ投影した領域内に配置されているエレベータ装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−80843号公報
【特許文献2】国際公開第WO/0218256号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO/0162654号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かごの上部には、作業員の作業スペースを確保するための手すりが立設されている。上述した従来技術では、モータシャフトの回転軸方向が、かごの間口方向に対して斜行するように駆動装置が昇降路の頂部付近に配置されている。このため、かごが最上方位置まで上昇したときに、駆動装置の下面が手すりの上面に干渉する。手すり及び頂部間の干渉を避けるためには、手すりによって囲まれる作業スペースの水平横断面の寸法を大きくとることができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、マシンルームレスエレベータにおいて、手すりによって囲まれる作業スペースを広くとることが可能なエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、昇降路と、この昇降路内を昇降するかごと、このかごの背面側を前記昇降路の後内壁面に沿って昇降するつり合いおもりと、前記昇降路の頂部に設けられ、前記昇降路の左右いずれか一方の一側内壁面に沿って前後方向に水平に延びる回転軸線のまわりに回転するトラクションシーブと、このトラクションシーブと同軸に設けられ、前記トラクションシーブを前記回転軸線のまわりに回転駆動する駆動装置と、それぞれ前記一側内壁面の近傍に設けられ、左右方向に水平に延びる回転軸線のまわりに回転する複数のソラセシーブと、これらのソラセシーブおよび前記トラクションシーブに巻き掛けられ、前記かごおよび前記つり合いおもりを吊下げるロープと、を備え、前記トラクションシーブは前記昇降路の上部において鉛直方向上方から見たときに前記かごの背面と前記昇降路の後内壁面との間の空間に位置するように配置され、前記駆動装置は鉛直方向上方から見たときにその一部が前記かごと重なるように配置されたことを特徴とするエレベータが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、昇降路の平面寸法をより小さくすることができ、また、かごの上部に設けられた手すりによって囲まれる作業スペースを広くとることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るエレベータを含むエレベータシステムの斜視図である。
【図2】図1のエレベータの平面図である。
【図3】乗り場ホールから昇降路側を見た駆動装置の支持梁の正面図である。
【図4】昇降路中心から昇降路の左内壁面を見たときのソラセシーブの正面図である。
【図5】エレベータのロープの配置関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の第1の変形例に係るエレベータのソラセシーブの正面図である。
【図7】本発明の一実施形態の第2の変形例に係るエレベータのソラセシーブの正面図である。
【図8】本発明の一実施形態の第3の変形例に係るエレベータのソラセシーブの正面図である。
【図9】本発明の一実施形態の第4の変形例に係るエレベータのソラセシーブの正面図である。
【図10】本発明の一実施形態の第5の変形例に係るエレベータのソラセシーブの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るエレベータについて、図1乃至図10を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。以下の説明では、鉛直方向を上下方向と言い、乗りかごに乗客が出入りする方向を前後方向と言い、乗りかごの出入口から見た間口方向を左右方向と言うことがある。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータを含むエレベータシステムの斜視図である。エレベータ1は昇降路2の頂部に巻上用の駆動装置3を有するマシンルームレスエレベータである。かご4の前面5にはかごドア6、7が設けられている。これらのかごドア6、7は、かご4の着床時、乗り場ホール8の出入口9を開閉するホールドア10、11と対面する。かご4は、左右一対のかごガイドレール12、13に案内されて昇降路2の内部を昇降する。
【0014】
かご4の下部には左右一対のかご下シーブ14、15が図示しないシーブ支持部材により支持されている。これらのかご下シーブ14、15は、前後方向に水平に延びる回転軸のまわりで回転自在になっている。かご4の左側面16及び右側面17にはそれぞれ図示しないガイドシューあるいはガイドローラが設けられており、各ガイドシューあるいは各ガイドローラがかごガイドレール12を摺動又は転動することによりかご4は上昇し及び下降する。
【0015】
かご4の背面18側にはつり合いおもり19が配置されている。つり合いおもり19の上部にはおもりシーブ20、21が設けられており、これらのおもりシーブ20、21は、いずれも、前後方向に水平に延びる回転軸のまわりで回転自在にされている。つり合いおもり19は、左右一対のつり合いおもりガイドレール22、23に案内されて昇降路2の内部を上昇及び下降する。この昇降路2の内部のうち、昇降路2を鉛直方向上方から見たときに昇降路2の後内壁面44(図2)と、かご4の背面18との間に形成される隙間をつり合いおもり19は昇降する。
【0016】
このつり合いおもりガイドレール22の上端部と、かごガイドレール12の上端部との間には支持梁24が水平に掛け渡されており、この支持梁24の上面に駆動装置3が固定支持されている。支持梁24は、エレベータ機器の荷重を支持する。駆動装置3は、支持梁24に固定された支持台と、いずれも細径金属製である複数本のロープ25が巻き回されるトラクションシーブ(駆動シーブ)26と、このトラクションシーブ26に連結された出力軸を有するモータ27とを有する。モータ27には長軸モータが用いられる。長軸モータは小径長軸のモータである。長軸モータでは、出力軸の軸方向寸法が出力軸の直径方向の寸法よりも大きい。
【0017】
つり合いおもりガイドレール23には、かご4の運転を制御する制御装置28が取付けられている。駆動装置3は、この制御装置28との間で回転駆動用の指令信号や制御用の信号を授受するようにしている。制御装置28はCPU、ROM、RAMからなる。
【0018】
図2は図1のエレベータ1の平面図である。同図下側、上側はそれぞれかご前面側、かご背面側である。同図で図1内に示される符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。前後方向に延びた水平な回転軸線Hのまわりをトラクションシーブ26が回転するように、駆動装置3は設けられる。
【0019】
支持梁24は、昇降路2を鉛直方向上方から見たときにこの支持梁24の領域がかご4の領域と重ならないようにかごガイドレール12の上端部に取付けられている。支持梁24の左右方向の幅は、かご4の左側面16と、昇降路2の左内壁面29とによって決まる隙間Wよりも小さい。一方、駆動装置3の領域とかご4の領域とは重なるように、この駆動装置3は配置されている。かご4の上部には作業員による作業のスペースを確保するための手すり30が設けられている。昇降路2の垂直投影面内において、手すり30の領域が駆動装置3の領域と重ならないように、この手すり30は設けられる。
【0020】
図3は前方、即ち乗り場ホール8から昇降路2側を見た支持梁24の正面図である。支持梁24は型鋼材を組み合わせて形成されている。この支持梁24の長手方向は前後方向に水平に延びる。かごガイドレール12及びつり合いおもりガイドレール22間に支持梁24は架け渡されている。支持梁24の両端部はそれぞれブラケット31によりこれらのレールに固定されている。かご4が図3(a)に示すかご位置に停止した状態では、昇降路2の頂部2aと、かご4の手すり30との間の上下方向のクリアランスを利用して作業員による作業が行えるようになっている。図3(b)に示すかご位置はかご4の最上方位置である。本実施形態に係るエレベータ1ではオーバーヘッド寸法が小さくなるようになっている。
【0021】
また、図1のかごガイドレール12と、つり合いおもりガイドレール22との間にはソラセシーブ梁32が水平に設けられている。このソラセシーブ梁32には、前後一対のソラセシーブ33、34がブラケット等により支持されている。これらのソラセシーブ33、34はそれぞれ左右方向に水平に延びる回転軸のまわりを回転自在になっている。第1及び第2のソラセシーブ33、34はトラクションシーブ26からかご4へロープ25を導く。これらのソラセシーブ33、34の回転軸は互いに略平行である。
【0022】
図4は昇降路中心から昇降路2の左内壁面29を見たときのソラセシーブ33、34の正面図である。ソラセシーブ33の径寸法と、ソラセシーブ34の径寸法とは等しい。ソラセシーブ33、34の各回転中心が昇降路2の高さ方向で同じ高さに保持されるように、これらのソラセシーブ33、34はソラセシーブ梁32に支持軸を介して回転自在に支持されている。昇降路2を鉛直方向上方から見たときに、駆勤装置3の左内壁面29側の側面は、ソラセシーブ33、34の左内壁面29側の側面と同じになるよう、これらのソラセシーブ33、34は配置される。なお、35は支持台を表す。
【0023】
図5はエレベータ1のロープ25の配置関係を示す図である。同図に示される符号のうちの上述した符号と同じ符号を有するものはそれらと同じ要素を表す。ロープ25のうちのかご4を懸架する部分は、トラクションシーブ26から下方に延びる部分、ソラセシーブ34の下方から上方に延びる部分、及びソラセシーブ33の上方からかご4の左側面16に近接して下方に延びる部分を有する。更にかご4を懸架するロープ25は、左右一対のかご下シーブ14、15の間で水平に延びる部分、かご下シーブ15の下方からかご4の右側面17に近接して上方に延びる部分、及びかごガイドレール13の上部に設けられたヒッチ部36に固定される部分を有する。
【0024】
ロープ25のうちのつり合いおもり19を懸架する部分は、トラクションシーブ26から下方に延びる部分、つり合いおもり19の一対のおもりシーブ20、21の間で水平に延びる部分、及びおもりシーブ21に巻回されてから上方に延びてヒッチ部37に固定される部分を有する。
【0025】
上述の構成の本実施形態に係るエレベータ1において、制御装置28はかご4の運転を開始すると、呼びやかご位置の情報から目的階を決定する演算を行い、駆動装置3に対して回転量を指令する信号を与える。駆動装置3は、トラクションシーブ26を回転させることによりロープ25を介してかご4及びつり合いおもり19を昇降させる。
【0026】
ロープ25のかご4側では、ロープ25のうちトラクションシーブ26、ソラセシーブ33、34を介してかご4側に垂下する部分が昇降する速度と、かご4が昇降する速度との比率が2:1である。ロープ25のつり合いおもり19側では、ロープ25のうちのトラクションシーブ26からつり合いおもり19側に垂下する部分が昇降する速度とつり合いおもり19が昇降する速度との比率が2:1である。エレベータ1は、かご4およびつり合いおもり19をそれぞれ2:1ローピングで懸架しているため、1:1ローピングで懸架する場合の例に比べて駆動装置3の出力トルクを減少させることができるようになっている。直径寸法より軸方向寸法が大きい小径長軸のモータ27を用いて昇降動作を行える。
【0027】
また、マシンルームが昇降路2の上部に設けられていないため、建物内の空間のうち、エレベータ設置用の空間容積が節減される。マシンルームの高さ分だけ昇降路2の頂部2aを低くすることができる。エレベータの設置スペースに要する建設費用を節減することができ、近隣の日照権を損なうといった不具合を解消することができる。
【0028】
このエレベータ1では、かご4が昇降路2の天井下面付近にまで上昇しても、かご4の手すり30の上部は、駆動装置3の下部に干渉しない。限られた昇降路長に対してかご4の昇降ストロークを大きくとることができる。
【0029】
また、駆動装置3の出力軸が、左内壁面29と平行に保持された状態でこの駆動装置3が設置されているため、手すり30によって囲まれる作業スペースの寸法を狭めずに、昇降路平面寸法を従来例の昇降路平面寸法よりも小さくすることができる。
【0030】
このエレベータ1では、昇降路2を鉛直方向上方から見たときに駆動装置3がかご4と重なるため、この昇降路2の昇降路長と同じ昇降路長を有する昇降路内にエレベータを設置した場合に比べて昇降路平面寸法を小さくすることができる。従来技術では、昇降路2の昇降路長と同じ昇降路長を有する昇降路内に、駆動装置3の回転駆動力と同等の回転駆動力を出力可能な駆動装置を、かごと昇降路左内壁との隙間に配置する場合、この駆動装置本体の左右方向の幅の分だけ、昇降路平面寸法が大きくなる。これに対して、エレベータ1では、駆動装置3をかご4の上部に配置して構成されているため、同等の回転駆動力を得るために要する昇降路平面寸法を、従来例の昇降路平面寸法よりも小さくすることができる。
【0031】
上記実施形態では、駆動装置3は長軸モータを用いているため、設置時に駆動装置3本体の高さが低く済む。駆動装置3とかご4とが昇降路面投影面内において重なっていたとしても、エレベータ設計時には昇降路2の高さ寸法を小さくできる。あるいは、昇降路が形成された状態の建屋にエレベータを設置する場合、限られた昇降路長に対して影響を与えずにエレベータ1を設けることができる。
【0032】
具体的には、扁平モータのトラクションシーブの厚みは長軸モータのトラクションシーブ26の厚みよりも薄い。扁平モータのトラクションシーブの径の大きさは、長軸モータのトラクションシーブの径の大きさよりも大きい。昇降路長に余裕を持たせることができ、かご4のストローク量に余裕を与えることができる。同等の回転駆動力を得るために必要な昇降路平面寸法を従来例よりも小さくすることに寄与する。昇降路平面寸法を従来例の昇降路平面寸法よりも小さくする効果を高めることができ、手すり30によって囲まれるスペースを一層確保することもできる。
【0033】
また、駆動装置3の出力軸は、かご4の左側面29に平行な面内で水平に保持された状態で回転するため、駆動装置3本体は昇降路2の中心側に出っ張らない。かご上の手すり30を投影面内で駆動装置3と重ならないよう手すり30を左側面29側に寄せることができる。かご上点検スペースを十分大きくとることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るエレベータ1では、昇降路2を上方から見たときに駆勤装置3の昇降路壁側の本体側面がソラセシーブ33、34の各昇降路壁側の本体側面と一致するように配置されている。これにより、昇降路寸法を広げずに、駆動装置3、ソラセシーブ33、34を配置することができる。
【0035】
換言すれば、駆動装置3の出力軸Hが、かご4の一側面に対して斜行する面内で回転する場合、駆動装置3と投影面内で重ならないようにかご上に手すり30を設置すると、かご上点検スペースが十分取れない。あるいは、投影面内で駆動装置3がかご上手すり30と重なる位置に配置されていると、昇降路2の高さ寸法を大きくしなければならない。これに対して、本実施形態に係るエレベータ1では、駆動装置3と支持梁24とが重なるため、駆動装置3を空間効率良く配置できる。
【0036】
また、ソラセシーブ33、34はかご4と左内壁面29との隙間に配置されている。ソラセシーブ梁32の高さは、かご4が最上方位置まで上昇したときのかご下シーブ14、15の高さとトラクションシーブ26の高さとの間の略中間に位置する。従って、かご4はソラセシーブ33、34の高さ位置まで上昇することができる。このため、昇降路2の高さ寸法を小さくすることに寄与することができる。
【0037】
また、かご下シーブ14及びソラセシーブ33間の距離と、トラクションシーブ26及びソラセシーブ34間の距離との両方を十分長くとることができるため、ロープ25のねじれ角を小さくでき、ロープ25や各シーブへの負荷を小さくすることができる。
【0038】
(第1の変形例)
上記実施形態では第1及び第2のソラセシーブ33、34の各回転軸は平行であり、このソラセシーブ33の回転中心とソラセシーブ34の回転中心とは、昇降路2の高さ方向で同じ高さに保持されていた。これらのソラセシーブ33、34の配置の仕方は種々変形可能である。
【0039】
図6は本発明の一実施形態の第1の変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の正面図である。同図に示される符号のうち既出のものはそれらと同じ要素を表す。ソラセシーブ梁38の両端部は、かごガイドレール12及びつり合いおもりガイドレール22に固定されており、このソラセシーブ梁38にソラセシーブ33、34が軸支されている。同図の視線高さにおいて昇降路中心側から昇降路2の左内壁面29側を見たときに、ソラセシーブ梁38は、かごガイドレール12及びつり合いおもりガイドレール22の各中心線に対して90度よりも小さい角度で傾斜した状態で配置される。ソラセシーブ梁38は、このソラセシーブ梁38の長手方向を水平線から傾けた状態で、かごガイドレール12及びつり合いおもりガイドレール22間を接続している。
【0040】
ソラセシーブ33の設置高さと、ソラセシーブ34の設置高さとは異なる。これらの設置高さを変えることで、これらのソラセシーブ33、34のシーブ間距離を長くとり、ロープ25の状態がS曲げの状態にならないようにされている。ロープ25の状態がS曲げの状態になったときに発生するロープ疲労が進行せず、ロープ寿命の長寿命化が図れるようになっている。ここで、ロープ25のS曲げの定義は、例えばEN81:Part2:1987 付属書Nに記載の安全率Sfが決められた値の範囲に入ることである。
【0041】
この変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の配置によれば、ロープ25のS曲げの定義(ロープ25と、ソラセシーブ33、34との2つの接点間の距離がロープ25のロープ径の20倍以下)にあてはまらなくなるので、ロープ安全率を下げることができる。
【0042】
また、この変形例に係るエレベータの荷重を支えるために要するロープ本数は、同じ荷重をS曲げの状態のロープを用いて支える場合に要するロープ本数よりも減らすことができる。
【0043】
ロープ25の一部がS曲げ状態のままこのロープ25がいずれか2つのシーブ間に巻き回されることを防ぐためには、一般にロープ25の強度を大きくしなければならない。ロープ本数を増やすこと、ロープ径を太くすること、及び接点間距離を長くすることなどの対策が必要になる。この変形例に係るエレベータによれば、ソラセシーブ梁38が水平線に対して斜めに配置されているため、ソラセシーブ33、34とロープ25との各接点間の距離を長くでき、ロープ25の状態はS曲げ状態になることが防がれる。ロープ25のロープ本数を減らすこともできる。
【0044】
(第2の変形例)
図7は本発明の一実施形態の第2の変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の正面図である。同図に示される符号のうち既出のものはそれらと同じ要素を表す。ソラセシーブ梁39の両端部のうち、かごガイドレール12側の端部が、つり合いおもりガイドレール22側の端部よりも高くなるようにして、このソラセシーブ梁39は設けられている。第1及び第2のソラセシーブ33、34がそれぞれ異なる高さ位置に配置されており、かご4側のソラセシーブ33が上に配置され、駆動装置3側のソラセシーブ34が下に配置されている。
【0045】
かご下シーブ14側のソラセシーブ33が上に、トラクションシーブ26側のソラセシーブ34が下に配置されていることにより、かご下シーブ14及びソラセシーブ33間の距離と、トラクションシーブ26及びソラセシーブ34間の距離とをより長くすることができる。ロープ25のうち、ソラセシーブ33とかご下シーブ14との間で延びる部分40のねじれ角度は90度である。図6、図7を比べると、ロープ25の部分40の長さは、図6においてロープ25が90度捻られている部分の長さよりも大きい。
【0046】
この変形例に係るエレベータによれば、ロープ25の捻られている部分の単位長さ当たりのねじれ角を小さくすることができ、ロープ25やシーブ33、34へかかる負荷を小さくすることができる。ロープ25のうちのソラセシーブ34とトラクションシーブ26との間で延びる部分41の長さも、図6の例より長い。これによって、ロープ25が捻られている部分の長さが短いことに起因するロープ25の痛みが発生することが防止される。
【0047】
(第3の変形例)
図8は本発明の一実施形態の第3の変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の正面図である。同図に示される符号のうち既出のものはそれらと同じ要素を表す。ソラセシーブ梁42、43は、いずれも、かごガイドレール12及びつり合いおもりガイドレール22の間を接続している。ソラセシーブ梁42、43はともに水平に延びている。ソラセシーブ梁42の設置高さは、ソラセシーブ梁43の設置高さよりも高い。ソラセシーブ33はソラセシーブ梁42に軸支されており、ソラセシーブ34はソラセシーブ梁43に軸支されている。
【0048】
2つのソラセシーブ33、34の設置高さが異なる状態で配置されているため、これらのソラセシーブ33、34のシーブ間距離が長くなる。この変形例に係るエレベータによれば、ロープ25の状態を、S曲げとして定義(接点間距離がロープ径の20倍以下)されている状態から外すことができるため、ロープ安全率を下げることができる。また、ロープ本数を減らすことができる。
【0049】
(第4の変形例)
図9は本発明の一実施形態の第4の変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の正面図である。同図に示される符号のうち既出のものはそれらと同じ要素を表す。
【0050】
図6から図8の各例では、かごガイドレール12とつり合いおもりガイドレール22との間にわたってソラセシーブ梁38、39、42、43が設けられ、ソラセシーブ梁38、39、42、43によってソラセシーブ33、34が軸支されていた。本変形例では、図9に示すように、ソラセシーブ梁38、39、42、43の代わりにソラセシーブ支持ブラケット45、46によってそれぞれソラセシーブ33、34が軸支されている。ソラセシーブ33、34はいずれも片持ち状態で各ソラセシーブ支持ブラケット45、46に軸支されている。
【0051】
ソラセシーブ支持ブラケット45は長手方向を水平にした状態で前後方向に延びている。ソラセシーブ支持ブラケット45の一端はかごガイドレール12に取付けられており、他端にはシーブ33が枢着されている。ソラセシーブ支持ブラケット46も長手方向を水平にした状態で前後方向に延びている。ソラセシーブ支持ブラケット46の一端はつり合いおもりガイドレール22に取付けられており、他端にはシーブ34が枢着されている。これらのシーブ33、34の支持構造は、ソラセシーブ支持ブラケット45、46が各レールからそれぞれ後向き、前向きに突出した構造であるため、シーブ33、34はそれぞれこれらのソラセ支持ブラケット45、46に片持ちの状態で支軸を介して回転自在に支持される。
【0052】
ソラセシーブ支持ブラケット45の設置高さがソラセシーブ支持ブラケット46の設置高さよりも高くなるようにして、これらのソラセシーブ支持ブラケット45、46が配置されているため、ソラセシーブ33、34のシーブ間距離が長くなる。
【0053】
この変形例に係るエレベータによれば、ロープ25の状態を、S曲げの状態から外すことができるため、ロープ安全率を下げることができる。また、ロープ本数を減らすことができる。
【0054】
(第5の変形例)
図10は本発明の一実施形態の第5の変形例に係るエレベータのソラセシーブ33、34の正面図である。同図に示される符号のうち既出のものはそれらと同じ要素を表す。
【0055】
本変形例では、レールではなく駆動装置3の支持梁24に、ソラセシーブ支持ブラケット47が設けられている。ソラセシーブ支持ブラケット47は、長手方向が鉛直になるようにして保持されている。ソラセシーブ支持ブラケット47の一端は支持梁24に取付けられており、他端にはシーブ33が枢着されている。ソラセシーブ支持ブラケット47は支持梁24から下向きに突出した状態で設けられており、シーブ33はこの支持梁24に片持ちの状態で支軸を介して回転自在に支持されている。
【0056】
この変形例に係るエレベータによれば、ソラセシーブ33、34のシーブ間距離が長くされるため、ロープ安全率を下げることができる。また、ロープ本数を減らすことができる。
【0057】
また、本発明の一実施形態に係るエレベータ1と、第1から第5の各変形例に係るエレベータとによれば、昇降路平面寸法を小さくすることができ、また、かご上手すり30を投影面内で駆動装置3と重ならないよう、駆動装置3よりも昇降路内側に配置したとしても、かご上点検スペースを十分大きくとることができる。
【0058】
昇降路2の天井下面の高さを下げるようなエレベータ設計が行われつつある。昇降路空間は割合広いため、従来、エレベータは大きい駆動装置を使っている。近年、昇降路の長さを短くした建物が増えている。昇降路の長さや幅に対する条件が厳しくなってきている。駆動装置も小型化してきている。昇降路2を鉛直上方から見たときの昇降路2の占有率に対してかご4の占有面積を大きくするように建物が設計されるようになってきている。このため、かご面と昇降路壁面との間のスペースも利用しにくくなってきている。これに対して、本実施形態に係るエレベータ1によれば、昇降路2の空間を効率良く利用することができるようになる。
【0059】
駆動装置3の外形寸法の長手方向が昇降路2の左内壁面29に沿って配置されていること、投影面内でこの駆動装置3の外形寸法がかご4と重なるように配置されていること、及び2つのソラセシーブ33、34シーブの各正面が左内壁面29に平行になるように配置されていることによって、かご4の左側面16を昇降路2の左内壁面29に寄せてかご4を配置することができる。
【0060】
投影面内において、仮に駆動装置3がソラセシーブ33、34の領域よりも外側に配置されていると、ロープ25を往復させるためのスペースを要し昇降路平面寸法を拡げる必要があるが、このエレベータ1では昇降路平面寸法を拡げずに、ロープ25を往復させることができる。
【0061】
駆動装置3がかご4の領域に重ねる度合いを大きくすると、駆動装置3が昇降路2の内側に寄るため、駆動装置3は今度は手すり30と重なる。本実施形態に係るエレベータ1によれば、駆動装置3を昇降路2の内側に大きくは寄せずに、昇降路2の外側及び内側の間の中間に配置することによって、効率的に空間を利用することができる。
【0062】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0063】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…エレベータ、2…昇降路、2a…頂部、3…駆動装置、4…かご、5…前面、6,7…かごドア、8…乗り場ホール、9…出入口、10,11…ホールドア、12,13…かごガイドレール、14,15…かご下シーブ、16…左側面、17…右側面、18…背面、19…つり合いおもり、20,21…おもりシーブ、22,23…つり合いおもりガイドレール、24…支持梁、25…ロープ、26…トラクションシーブ、27…モータ、28…制御装置、29…左内壁面、30…手すり、31…ブラケット、32,38,39,42,43…ソラセシーブ梁、33,34…ソラセシーブ、35…支持台、36,37…ヒッチ部、40,41…ロープの一部分、44…後内壁面、45…ソラセシーブ支持ブラケット(第1のブラケット)、46…ソラセシーブ支持ブラケット(第2のブラケット、第4のブラケット)、47…ソラセシーブ支持ブラケット(第3のブラケット)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、
この昇降路内を昇降するかごと、
このかごの背面側を前記昇降路の後内壁面に沿って昇降するつり合いおもりと、
前記昇降路の頂部に設けられ、前記昇降路の左右いずれか一方の一側内壁面に沿って前後方向に水平に延びる回転軸線のまわりに回転するトラクションシーブと、
このトラクションシーブと同軸に設けられ、前記トラクションシーブを前記回転軸線のまわりに回転駆動する駆動装置と、
それぞれ前記一側内壁面の近傍に設けられ、左右方向に水平に延びる回転軸線のまわりに回転する複数のソラセシーブと、
これらのソラセシーブおよび前記トラクションシーブに巻き掛けられ、前記かごおよび前記つり合いおもりを吊下げるロープと、を備え、
前記トラクションシーブは前記昇降路の上部において鉛直方向上方から見たときに前記かごの背面と前記昇降路の後内壁面との間の空間に位置するように配置され、前記駆動装置は鉛直方向上方から見たときにその一部が前記かごと重なるように配置されたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記駆動装置は、回転力の出力軸の径方向の寸法がこの出力軸の軸方向の寸法よりも小さい長軸モータを有することを特徴とする請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたかご案内レールと、それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたつり合いおもり案内レールと、前記左右一対設けられたかご案内レールの一方および前記左右一対設けられたつり合いおもり案内レールの一方の間にわたって設けられた支持梁と、この支持梁に固定された支持台と、を更に備え、
前記駆動装置はこの支持台に支持され、前記支持梁は鉛直方向上方から見たときに前記かごと重ならないように配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータ。
【請求項4】
鉛直方向上方から見たときに前記駆勤装置の前記昇降路の前記一側内壁面側の側面が前記複数のソラセシーブのこの一側内壁面側の側面と略一致することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項5】
前記複数のソラセシーブは、鉛直方向上方から見たときに前記かごと、前記昇降路の前記一側内壁面との間の隙間に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項6】
それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたかご案内レールと、それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたつり合いおもり案内レールと、前記左右一対設けられたかご案内レールの一方および前記左右一対設けられたつり合いおもり案内レールの一方の間にわたって設けられ、前記複数のソラセシーブを支軸を介して支持するソラセシーブ梁とを備え、
このソラセシーブ梁は、上下方向に傾斜したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項7】
前記複数のソラセシーブのうちの2つが互いに異なる高さ位置に配置され、前記かご側のソラセシーブを上に配置し、前記駆動装置側のソラセシーブを下に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項8】
それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたかご案内レールと、それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたつり合いおもり案内レールと、それぞれ前記左右一対設けられたかご案内レールの一方および前記左右一対設けられたつり合いおもり案内レールの一方の間にわたって設けられ、前記複数のソラセシーブを支軸を介して支持する複数のソラセシーブ梁とを備え、
これらのソラセシーブ梁は互いに異なる高さ位置に配置されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項9】
それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたかご案内レールと、それぞれ前記昇降路内に左右一対設けられたつり合いおもり案内レールと、前記左右一対設けられたかご案内レールの一方に取付けられた第1ブラケットと、前記左右一対設けられたつり合いおもり案内レールの一方に取付けられた第2のブラケットと、を備え、
2つのソラセシーブは前記第1のブラケットおよび前記第2のブラケットに支軸を介して片持ち状態で支持されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項10】
前記支持梁に取付けられた第3のブラケットと、前記左右一対設けられたつり合いおもり案内レールの一方に取付けられた第4のブラケットと、を更に備え、
2つのソラセシーブは前記第3のブラケットおよび前記第4のブラケットに支軸を介して片持ち状態で支持されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−184791(P2010−184791A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30877(P2009−30877)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】