説明

エレベータ

【課題】エレベータの乗りかごの乗客の種別に適した運転制御を行なう。
【解決手段】実施形態によれば、乗りかごの出入口の高さ方向に沿って複数設けられた、出入口を通る乗客を検出するセンサと、複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサおよびその検出タイミングを認識する認識手段と、認識結果をもとに、検出した乗客が乗車したか降車したかを判別する移動方向判別手段と、検出した乗客の種別を認識結果をもとに判別し、この判別した種別および移動方向判別手段による判別結果をもとに当該乗りかごに対して乗車または降車する乗客の種別を判別することで、乗りかご内に現在乗車している乗客の人数を種別ごとに判別する乗客種別判別手段と、乗りかごの着床時において、乗りかご内に乗車している乗客の種別が所定の種別の乗客である場合に、当該乗客に危険が及ばないように乗りかごの戸開閉を制御する運転制御手段とをもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗りかごの出入口を通る乗客を検出するセンサを有するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかごの出入口に当該出入口を通る物体の有無を検出するための例えば赤外線を用いたセンサを設置したものがある。
【0003】
このセンサは、乗りかごの出入口付近の障害物の有無を検出し、障害物があると検出した際に、戸閉動作を停止させることで、戸閉時に乗客または障害物がかごドアに挟まれるのを防止することに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29582号公報
【特許文献2】特開2007−241408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベータは、乗りかごの出入口のセンサを用いて、何かしらの物体が乗りかごの出入口にあるか否かを検出して戸閉動作を停止させることはできても、乗りかごの出入口を通る乗客の形態に適した運転制御を行なうことはできなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの乗客の種別に適した運転制御を行なうことが可能になるエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、乗りかごの出入口の高さ方向に沿って複数設けられた、前記出入口を通る乗客を検出するセンサと、前記複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサおよびその検出タイミングを認識する認識手段と、認識結果をもとに、前記検出した乗客が前記乗りかごに乗車したか前記乗りかごから降車したかを判別する移動方向判別手段と、認識結果をもとに前記検出した乗客の種別を判別し、この判別した種別および前記移動方向判別手段による判別結果をもとに当該乗りかごに対して乗車または降車する乗客の種別を判別することで、乗りかご内に現在乗車している乗客の人数を種別ごとに判別する乗客種別判別手段と、乗りかごの着床時において、前記乗りかご内に乗車している乗客の種別が所定の種別の乗客である場合に、当該乗客に危険が及ばないように前記乗りかごの戸開閉を制御する運転制御手段とをもつ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第1の例を示す平面図。
【図2】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの高さ方向の配置形態の一例を示す側面図。
【図3】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの高さ方向の配置形態の一例を示す側面図。
【図4】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第2の例を示す平面図。
【図5】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第3の例を示す平面図。
【図6】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第4の例を示す平面図。
【図7】第1の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図8】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図9】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の乗降方向の判別パターンの一例を示す図。
【図10】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が大人であることの判別パターンの一例を示す図。
【図11】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が子供であることの判別パターンの一例を示す図。
【図12】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が車椅子利用者であることの判別パターンの一例を示す図。
【図13】第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が荷物を運搬する乗客であることの判別パターンの一例を示す図。
【図14】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第1の例を示す平面図。
【図15】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第2の例を示す平面図。
【図16】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第3の例を示す平面図。
【図17】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第1の例を示す図。
【図18】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第2の例を示す図。
【図19】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第3の例を示す図。
【図20】第2の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図21】第2の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図22】第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の一例を示す図。
【図23】第3の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図24】第3の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図25】第4の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図26】第4の実施形態におけるエレベータによる乗客種別、乗降方向判別および満員判別のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第1の例を示す平面図である。
本実施形態におけるエレベータの乗りかごのかご室1のかごドアパネル3には、乗りかごの出入口の乗客を検出するための赤外線センサであるセンサ2が取り付けられる。センサ2は、例えばかご枠のバックアングルに取り付けてもよい。また、センサ2は、従来の障害物を検知するのに使用していたセンサと兼用してもよい。
【0010】
図2は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの高さ方向の配置形態の一例を示す正面図である。図3は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの高さ方向の配置形態の一例を示す図である。
図2は、乗りかご内より出入口を見た正面図である。図1乃至図3に示すように、センサ2a,2b,2c,2d,2e,2fでなる。センサ2a,2b,2c,2d,2eは、乗りかごのかご室1の高さ方向に沿って所定間隔ごとに、乗りかごの床面に近い高さからセンサ2a,2b,2c,2d,2eの順で設けられる。本実施形態では、乗りかごのかご室1の高さ方向に沿って5つのセンサを設ける例を説明するが、これに限らず、例えば50といった数十個のセンサを乗りかごのかご室1の高さ方向に沿って所定間隔ごとに設けるようにしてもよい。
【0011】
各センサ2は、赤外線の送信部と受信部でなり、出入口を隔てた一方と他方とで対向して設けられる。
センサ2aの送信部は、図2および図3に示した光軸4aを有する赤外線を受信部に送信する。センサ2bの送信部は、図2および図3に示した光軸4bを有する赤外線を受信部に送信する。センサ2cの送信部は、図2および図3に示した光軸4cを有する赤外線を受信部に送信する。センサ2dの送信部は、図2および図3に示した光軸4dを有する赤外線を受信部に送信する。センサ2eの送信部は、図1乃至図3に示した光軸4eを有する赤外線を受信部に送信する。各センサ2は、赤外線を対象物が遮った場合に、対象物の検出信号を出力する。
【0012】
また、かご室内からみたセンサ2aの取り付け箇所に対する、かご室1の乗降方向に沿って隣接し、かご室内からみて、センサ2aの取り付け箇所より外側の箇所にはセンサ2fが取り付けられる。センサ2fの送信部は、図1に示した光軸4fを有する赤外線を受信部に送信する。なお、センサ2fの取り付け箇所は、センサ2a以外の取り付け箇所に対する、かご室1の乗降方向に沿って隣接した箇所であってもよいが、身長が低い乗客や高さが低い荷物を検出できるように、例えばセンサ2a,2b,2cのいずれかの取り付け箇所に対する、かご室1の乗降方向に沿って隣接した箇所であることが望ましい。また、前述したような、乗降方向に沿って平行して取り付けるセンサの数は複数であってもよい。例えば、センサ2aの取り付け箇所に対する、かご室1の乗降方向に沿って隣接した箇所にセンサ2fを取り付けるとともに、センサ2bの取り付け箇所に対する、かご室1の乗降方向に沿って隣接した箇所に別のセンサを取り付けてもよい。
【0013】
センサ2fの取り付け箇所は、かご室内からみて、センサ2a〜2eの取り付け箇所より外側にある。したがって、乗客がかご室外からかご室内に乗車した場合には、外側のセンサ2fからの赤外線の光軸4fを先に遮って、内側のセンサ2a〜2eからの赤外線の光軸4a〜4eのいずれかを後に遮ることになる。
【0014】
また、乗客がかご室内からかご室外に降車した場合には、センサ2a〜2eからの赤外線の光軸4a〜4eのいずれかを先に遮って、センサ2fからの赤外線の光軸4fを後に遮ることになる。
【0015】
また、本実施形態では、乗りかごのかご室1は、図示しない巻上機の回転軸に設けられたシーブおよびそらせシーブに巻き掛けられたメインロープを介して吊り合い重りと連結される。かご室1は、巻上機の駆動によるシーブの回転に伴い、シーブとメインロープの間の摩擦力により吊り合い重りとともに昇降路内を互いに上下反対方向に昇降する。また、かご室1の昇降の方式は、上述のロープ吊り合い式に限らず、例えばロープ巻胴式や液圧式であってもよい。
【0016】
図4は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第2の例を示す平面図である。
図4に示した例では、センサ2a〜2eはドアパネル3の内部に組み込まれ、センサ2fは、かご室1のかごドアパネル3に取り付けられる。また、センサ2a〜2eはドアパネル3の端部のセーフティシューに組み込んでもよい。
【0017】
図5は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第3の例を示す平面図である。
図5に示した例では、センサ2a〜2eは乗りかご出入口柱5の内部に組み込まれ、センサ2fは、かご室1のかごドアパネル3に取り付けられる。
【0018】
図6は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第4の例を示す平面図である。
図6に示した例では、センサ2a〜2eは乗りかご出入口柱5の内部に組み込まれ、センサ2fは、ドアパネル3の内部に取り付けられる。
【0019】
図7は、第1の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態のエレベータのエレベータ制御装置20は、センサ検出信号入力部21a,21b,21c,21d,21e,21f、センサ検出有無認識部22、乗客種別判別部23、移動方向判別部24、運転制御部25、記憶装置26を有する。
【0020】
センサ検出信号入力部21aは、センサ2aからの検出信号を入力する。センサ検出信号入力部21bは、センサ2bからの検出信号を入力する。センサ検出信号入力部21cは、センサ2cからの検出信号を入力する。センサ検出信号入力部21dは、センサ2dからの検出信号を入力する。センサ検出信号入力部21eは、センサ2eからの検出信号を入力する。センサ検出信号入力部21fは、センサ2fからの検出信号を入力する。
【0021】
センサ検出有無認識部22は、センサ検出信号入力部21a〜21fのそれぞれによる検出信号の入力の有無を認識する。
移動方向判別部24は、センサ検出有無認識部22による認識結果をもとに乗りかごの出入口を通る乗客の移動方向が乗車であるか降車であるかを判別する。
【0022】
乗客種別判別部23は、センサ検出有無認識部22による認識結果および移動方向判別部24による判別結果をもとに乗りかごの出入口を通った乗客の種別およびその移動方向を判別して、当該乗りかごに対して乗車または降車する乗客の種別を判別することで、乗りかご内に現在乗車している乗客の人数を当該乗客の種別ごとに判別する。本実施形態では、乗客の種別とは、大人、子供、車椅子利用者、荷物を運搬する乗客に区分される。
【0023】
運転制御部25は、呼び登録にしたがって乗りかごの昇降制御を行なうとともに、乗客種別判別部23による、乗りかご内に現在乗車している乗客の人数の当該乗客の種別ごとの判別結果をもとに、この乗客種別に適したドア開閉制御を行なう。
【0024】
記憶装置26は、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、センサ検出信号入力部21a〜21f、センサ検出有無認識部22、乗客種別判別部23、移動方向判別部24、運転制御部25による処理動作のための制御プログラムを記憶する。
【0025】
次に、図1に示した構成のエレベータの動作について説明する。
図8は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
図9は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の乗降方向の判別パターンの一例を示す図である。
図10は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が大人であることの判別パターンの一例を示す図である。
図11は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が子供であることの判別パターンの一例を示す図である。
図12は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が車椅子利用者であることの判別パターンの一例を示す図である。
図13は、第1の実施形態におけるエレベータによる乗客の種別が荷物を運搬する乗客であることの判別パターンの一例を示す図である。
初期状態では、センサ2a〜2fは対象物を検出していないとする。センサ2a〜2fのうち、センサ2a〜2eのいずれかからの赤外線を乗客が遮ると(ステップS1)、送信している赤外線が遮られたセンサは、検出信号をエレベータ制御装置20に出力する。
【0026】
センサ検出有無認識部22が、センサ検出信号入力部21a〜21eのそれぞれによる検出信号の入力の有無を認識し、センサ検出信号入力部21a〜21eの全てが検出信号を入力していると認識した場合(ステップS2のYES)、乗客種別判別部23は、例えば図10に示すように、検出信号の入力の認識開始から認識終了までにわたって認識結果に変化がない、つまり乗客がセンサ2a〜2eからの赤外線の光軸の4a〜4eを全て遮っていた場合には(ステップS3のYES)、センサ2a〜2eからの赤外線を遮った乗客は大人であると判別する(ステップS4)。
【0027】
また、センサ検出有無認識部22が、センサ検出信号入力部21a〜21eの全てによる検出信号の入力の有無を認識した場合において(ステップS2のYES)、乗客種別判別部23は、認識開始から、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち少なくとも1つにより検出信号を入力しているとの認識を維持している状態で、検出信号の入力の認識開始から認識終了、つまり、センサ検出信号入力部21a〜21eの全てによる検出信号の入力がなされなくなるまでに他のセンサからの検出信号の認識結果に変化が生じた場合には(ステップS3のNO)、センサ2a〜2eからの赤外線を遮った乗客は、例えばキャリーバッグなどの荷物を運搬する大人であると判別する(ステップS5)。
【0028】
具体的には、ステップS3で「NO」と判別する場合とは、例えば、検出信号の入力の認識開始時は乗客がセンサ2a〜2eからの赤外線の光軸4a〜4eを全て遮ったが、認識開始後に、乗客がセンサ2a,2b,2d,2eからの赤外線の光軸4a,4b,4d,4eを遮らなくなった後、センサ2cからの赤外線の光軸4cを遮らなくなるとともに、センサ2bからの赤外線の光軸4bを再び遮った後、センサ2aからの赤外線の光軸4aを再び遮ることにより、センサ2a〜2eのいずれかからの検出信号の入力の認識が維持されている一方で、他のセンサの検出信号の入力の認識の有無が変化した場合である。
【0029】
また、センサ検出有無認識部22が、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち一部による検出信号を入力していると認識した場合(ステップS2のNO)、乗客種別判別部23は、例えば図11に示すように、検出信号の入力の認識開始から認識終了までにわたって認識結果に変化がない、つまり乗客がセンサ2a〜2cからの赤外線の光軸4a〜4cを遮り、その他のセンサからの赤外線を遮らない場合には(ステップS6のYES)、センサ2a〜2eの一部からの赤外線を遮った乗客は子供であると判別する(ステップS7)。
【0030】
また、センサ検出有無認識部22が、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち一部により検出信号を入力していると認識した場合で(ステップS2のNO)、乗客種別判別部23は、認識開始から、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち少なくとも1つにより検出信号を入力しているとの認識を維持している状態で、検出信号の入力の認識開始から認識終了、つまり検出信号の入力停止までに他のセンサからの検出信号の認識結果に変化が生じた場合には(ステップS6のNO)、センサ2a〜2eの一部からの赤外線を遮った乗客は車椅子利用者、またはショッピングカートなどの荷物を運ぶ乗客であると判別する(ステップS8)。
【0031】
ここで、乗客種別判別部23は、認識開始から、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち2つ以下により検出信号を入力しているとの認識を維持している状態で、この検出信号の入力の認識開始から認識終了までに他のセンサからの検出信号の認識結果に変化が生じた場合にはセンサ2a〜2eの一部からの赤外線を遮った乗客は車椅子利用者であると判別する。
【0032】
具体的には、乗客種別判別部23は、例えば図12に示すように、検出信号の入力の認識開始時は乗客がセンサ2a〜2bからの赤外線の光軸4a〜4bのみ遮ったが、認識開始後に、センサ2c〜2dからの赤外線の光軸4c〜4dをさらに遮るようになった場合には、乗客が車椅子利用者であると判別する。
【0033】
また、乗客種別判別部23は、認識開始から、センサ検出信号入力部21a〜21eのうち4つ以下により検出信号を入力しているとの認識を維持している状態で、この検出信号の入力の認識開始から認識終了までに他のセンサからの検出信号の認識結果に変化が生じた場合にはセンサ2a〜2eの一部からの赤外線を遮った乗客はショッピングカートなどの荷物を運ぶ乗客であると判別する。
【0034】
具体的には、乗客種別判別部23は、例えば図13に示すように、検出信号の入力の認識開始時は乗客がセンサ2a〜2cからの赤外線の光軸4a〜4cのみ遮ったが、認識開始後に、センサ2d〜2eからの赤外線の光軸4d〜4eをさらに遮るようになった場合には、乗客がショッピングカートなどの荷物を運ぶ乗客であると判別する。
【0035】
センサ検出有無認識部22は、センサ検出信号入力部21a〜21fのそれぞれによる検出信号の入力の開始のタイミングを認識する。
ステップS4,S5,S7,S8による判別後、図9に示すように、検出対象物6が、乗りかご内からみて外側のセンサ2fからの赤外線の光軸4fを先に遮ることで、センサ検出有無認識部22が、センサ2fに対応するセンサ検出信号入力部21fによる検出信号の入力が先になされたことを認識し、かつ、図9に示すように、この認識から、乗客がセンサ2fからの赤外線とセンサ2a〜2eのいずれかからの赤外線とを連続して通ったとみなせる所定時間内に、検出対象物6が、前述した内側のセンサ2a〜2eからの赤外線の光軸4a〜4eのいずれかを後に遮ることで、センサ2a〜2eに対応するセンサ検出信号入力部21a〜21eのいずれかによる検出信号の入力が後になされたことを認識した場合には(ステップS9のYES)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごに乗車した乗客であると判別する(ステップS10)。
【0036】
また、ステップS4,S5,S7,S8による判別後、センサ検出有無認識部22が、センサ検出信号入力部21a〜21eのいずれかによる検出信号の入力を先に認識し、この認識から、乗客がセンサ2a〜2eのいずれかからの赤外線とセンサ2fからの赤外線とを連続して通ったとみなせる所定時間内にセンサ検出信号入力部21fによる検出信号の入力を後に認識した場合には(ステップS9のNO)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごから降車した乗客であると判別する(ステップS11)。
【0037】
乗客種別判別部23は、乗りかごに乗客が乗車したとステップS10で判別された場合、または乗りかごから乗客が降車したとステップS11で判別された場合、乗車または降車前の判別結果である、乗りかご内における種別ごとの乗客人数に対して加算または減算を行なうことで、この乗車または降車後における乗りかご内の現在の乗車人数を種別ごとに判別し、この判別結果を記憶装置26に記憶する(ステップS12)。
【0038】
例えば、乗客種別判別部23は、乗りかごに乗客が1名乗車したとステップS10で判別された場合、この乗客の種別がステップS7で子供と判別されていた場合には、乗りかご内の子供の人数が1名増加したとして、記憶装置26に記憶される判別結果を、乗車後における乗りかご内の現在の乗車人数の種別ごとの判別結果に更新する。
【0039】
また、乗客種別判別部23は、乗りかごから乗客が1名降車したとステップS11で判別された場合、この乗客の種別がステップS7で子供と判別されていた場合には、乗りかご内の子供の人数が1名減少したとして、記憶装置26に記憶される判別結果を、降車後における乗りかご内の現在の乗車人数の種別ごとの判別結果に更新する。
【0040】
そして、乗りかごが行先階に着床した際、運転制御部25は、乗客種別判別部23による判別結果である、乗りかご内の現在の乗車人数の種別に応じて、乗りかごの戸開閉速度を制御したり戸開から戸閉開始までの待ち時間を制御したりする(ステップS13)。
【0041】
具体的には、乗りかごの着床時において、乗りかご内に1名以上の子供の乗客が現在乗車していると乗客種別判別部23が判別している事を示す判別結果が記憶装置26に記憶されている場合には、運転制御部25は、この子供が乗りかごから降車の際、当該子供に危険が及ばないように、通常の戸開閉速度より遅い戸開閉速度で戸開閉し、かつ戸閉開始までの通常の待ち時間が経過しても各種ボタンが押されない場合に戸閉するように戸開閉制御を行なう。
【0042】
また、乗りかごの着床時において、乗りかご内に1名以上の車椅子利用者もしくは荷物を運搬する1名以上の乗客が現在乗車していると乗客種別判別部23が判別している事を示す判別結果が記憶装置26に記憶されている場合には、運転制御部25は、これら乗車している乗客が乗りかごから降車の際、当該乗客がドアに挟まれたりする危険が及ばないように通常の戸開閉速度で戸開閉して、かつ、戸開から通常の待ち時間を延長した待ち時間とし、この待ち時間が経過しても乗りかご内の呼びボタンなどが押されない場合に戸閉するように戸開閉制御を行なう。
【0043】
また、乗りかごの着床時において、乗りかご内に1名以上の子供および1名以上の車椅子利用者の乗客がともに乗車していたり、乗りかご内に1名以上の子供および荷物を運搬する1名以上の乗客がともに乗車していたりする事を示す判別結果が記憶装置26に記憶されている場合、運転制御部25は、これらの乗客がともに乗りかごから降車の際、当該乗客に危険が及ばないように、通常の戸開閉速度より遅い戸開閉速度で戸開閉し、かつ、戸開から通常の待ち時間を延長した待ち時間とし、この待ち時間が経過しても乗りかご内の呼びボタンなどが押されない場合に戸閉するように戸開閉制御を行なう。
【0044】
また、前述のように乗りかごが着床してから発車するまでの間に乗りかご内の乗客の降車または乗りかごへの乗車がなされた場合には、乗客種別判別部23は、乗車または降車前の判別結果である、種別ごとの乗客人数に対して加算または減算を行なうことで、この乗車または降車後における乗りかご内の乗車人数を種別ごとに再度判別し、運転制御部25は、この判別結果に応じて、必要に応じて戸開閉制御を行なう。
【0045】
以上のように、第1の実施形態におけるエレベータでは、乗りかごの出入口のセンサからの赤外線を遮った乗客の種別を判別することで、乗りかご内の乗車人数を種別ごとに判別しておき、乗りかごが着床した際に、乗りかごに子供が乗っている場合には、通常の戸開閉速度より遅い第1の戸開閉速度で戸開閉するように戸開閉制御を行なうので、乗りかごのドアが開く際に、子供の手が戸袋に巻き込まれたり、ドアが閉じる際に子供の手がドアに挟まれたりする危険を減らすことができるので、出入口を子供が通る際の安全性および運行効率を向上させる事ができる。
【0046】
また、乗客が車椅子利用者や荷物を運搬する乗客である場合には、乗車または降車をスムーズにするために、戸閉開始までの待ち時間を長くする必要がある事から、本実施形態では、乗りかごの着床時に、乗りかご内に車椅子利用者や荷物を運搬する乗客が乗っている場合には、戸開から通常の待ち時間より延長した待ち時間とし、待ち時間が経過しても乗りかご内の呼びボタンなどが押されない場合に戸閉するように戸閉制御を行なうので、乗りかごの出入口を車椅子利用者や荷物を運搬する乗客が通る際の利便性および安全性を向上させる事ができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態におけるエレベータの構成のうち、第1の実施形態で説明したものと同一部分の説明は省略する。本実施形態では、1つのセンサによる検出結果と荷重検出を用いて乗客の移動方向を判別する。
図14は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第1の例を示す平面図である。
図14に示すように、本実施形態におけるエレベータの乗りかごのかご室1のかごドアパネル3には、第1の実施形態と同様に、乗りかごの出入口の乗客を検出するための赤外線センサであるセンサ2a〜2eが取り付けられる。また、本実施形態では、第1の実施形態と比較して、センサ2fを備えない。これらのセンサ2a〜2eは、例えばかご枠のバックアングルに取り付けてもよい。
【0048】
図15は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第2の例を示す平面図である。
図15に示した例では、センサ2a〜2eはドアパネル3の内部に組み込まれる。また、センサ2a〜2eはドアパネル3の端部のセーフティシューに組み込んでもよい。
【0049】
図16は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサの乗降方向の配置形態の第3の例を示す平面図である。
図16に示した例では、センサ2a〜2eは乗りかご出入口柱5の内部に組み込まれる。
【0050】
図17は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第1の例を示す図である。
本実施形態では、乗りかごのかご室1は、巻上機の回転軸に設けられたシーブ8およびそらせシーブに巻き掛けられたメインロープ10を介して吊り合い重り9と連結される。かご室1は、巻上機の駆動によるシーブ8の回転に伴い、シーブ8とメインロープ10の間の摩擦力により吊り合い重り9とともに昇降路内を互いに上下反対方向に昇降する。また、かご室1の昇降の方式は、上述のロープ吊り合い式に限らず、例えばロープ巻胴式や液圧式であってもよい。
【0051】
かご室1の出入口には、前述したようにセンサ2a〜2eでなるセンサ2が設けられる。また、かご室1の床下には、荷重の増減を検出するための荷重検出器7aが設けられる。荷重検出器7aはかご室1にかかる荷重の増減の検出信号を図示しないテールコードを介してエレベータ制御装置20に出力する。
【0052】
図18は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第2の例を示す図である。
図18に示した例では、荷重検出器7aの代わりに、乗りかご上のロープヒッチ部に荷重検出器7bを設ける。荷重検出器7bはかご室1にかかる荷重の増減に伴う、ロープヒッチ部にかかる荷重の増減の検出信号をエレベータ制御装置20に出力する。
【0053】
図19は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の第3の例を示す図である。
図19に示した例では、荷重検出器7aの代わりに、機械室もしくは昇降路内のロープヒッチ部に荷重検出器7cを設ける。荷重検出器7cはかご室1にかかる荷重の増減に伴う、ロープヒッチ部にかかる荷重の増減の検出信号をエレベータ制御装置20に出力する。以下、荷重検出器7a,7b,7cを総称して、単に荷重検出器7と称する。
【0054】
図20は、第2の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図20に示すように、本実施形態では、エレベータ制御装置20は、センサ検出信号入力部21fを備える代わりに、荷重検出信号入力部31を有する。荷重検出信号入力部31は、荷重検出器7からの検出信号を入力する。
【0055】
図21は、第2の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
初期状態では、センサ2a〜2eは対象物を検出していないとする。センサ2a〜2eいずれかからの赤外線を乗客が遮ると(ステップS21)、送信している赤外線が遮られたセンサは、検出信号をエレベータ制御装置20に出力する。
すると、第1の実施形態で説明したステップS2〜S8までの処理により、乗客の種別の判別がなされる。
【0056】
ステップS4,S5,S7,S8による判別後、荷重検出信号入力部31が、乗客がセンサ2からの赤外線を遮る前のタイミングから赤外線を遮った後のタイミングにかけて荷重検出器7から入力した信号を認識し、この信号が、乗りかご内の荷重の増加を示す信号であった場合には(ステップ22のYES)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごに乗車した乗客であると判別する(ステップS23)。
【0057】
また、ステップS4,S5,S7,S8による判別後、荷重検出信号入力部31が、乗客がセンサ2からの赤外線を遮る前のタイミングから赤外線を遮った後のタイミングにかけて荷重検出器7から入力した信号を認識し、この信号が、乗りかご内の荷重の減少を示す信号であった場合には(ステップS22のNO)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごから降車した乗客であると判別する(ステップS24)。
そして、第1の実施形態で説明したステップS12、S13の処理がなされる。
【0058】
以上のように、第2の実施形態におけるエレベータでは、センサによる検出結果と荷重検出を用いて乗客の移動方向を判別する。よって、第1の実施形態のようにセンサの2種類の検出結果を用いずとも乗客の移動方向を判別することができるので、第1の実施形態と同様に、乗客の安全性および利便性を向上させた上で、センサの設置数を減らすことができる。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図22は、第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごの乗客判別用のセンサおよび荷重検出器の配置形態の一例を示す図である。
かご室1の出入口には、前述したようにセンサ2a〜2eでなるセンサ2が設けられる。また、かご室1内にはかご室1内を撮影するかご内カメラ11が設けられる。
かご内カメラ11は、かご室1内の撮影画像を示す信号を図示しないテールコードを介してエレベータ制御装置20に出力する。
【0060】
図23は、第3の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図23に示すように、本実施形態では、エレベータ制御装置20は、第1の実施形態と比較して、センサ検出信号入力部21fを備える代わりに、撮影画像入力部41、画像解析部42を有する。
【0061】
撮影画像入力部41は、かご内カメラ11からの撮影画像を示す信号を入力する。撮影画像入力部41により入力した画像のうち現在から遡った所定時間以内に撮影された画像情報は記憶装置26に記憶されて、逐次上書き更新される。画像解析部42は、撮影画像入力部41により入力した画像を解析する。
【0062】
図24は、第3の実施形態におけるエレベータによる乗客種別および乗降方向判別のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
初期状態では、センサ2a〜2eは対象物を検出していないとする。センサ2a〜2eいずれかからの赤外線を乗客が遮ると(ステップS31のYES)、送信している赤外線が遮られたセンサは、検出信号をエレベータ制御装置20に出力する。
すると、第1の実施形態で説明したステップS2〜S8までの処理により、乗客の種別の判別がなされる。
【0063】
ステップS4,S5,S7,S8による判別後、画像解析部42は、記憶装置26に記憶された画像のうち、乗客がセンサ2からの赤外線を遮る前後の所定時間内に入力した画像を読み出して、この画像が、出入口を通る乗客がかご内に向かって移動する画像であるのか、かご外に向かって移動する画像であるのかを解析し、この解析結果を移動方向判別部24に出力する(ステップS32)。
【0064】
移動方向判別部24は、画像解析部42からの解析結果が、出入口を通る乗客がかご内に向かって移動する画像であるとの解析結果である場合には(ステップ33のYES)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごに乗車した乗客であると判別する(ステップS34)。
【0065】
また、移動方向判別部24は、画像解析部42からの解析結果が、出入口を通る乗客がかご外に向かって移動する画像であるとの解析結果である場合には(ステップ33のNO)、移動方向判別部24は、センサ2a〜2eの少なくとも一部からの赤外線を遮った乗客は乗りかごに乗車した乗客であると判別する(ステップS35)。
そして、第1の実施形態で説明したステップS12、S13の処理がなされる。
【0066】
以上のように、第3の実施形態におけるエレベータでは、センサによる検出結果と画像解析を用いて乗客の移動方向を判別する。よって、第1の実施形態のようにセンサの2種類の検出結果を用いずとも乗客の移動方向を判別することができるので、第1の実施形態と同様に、乗客の安全性および利便性を向上させた上で、センサの設置数を減らすことができる。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態では、乗客が出入口を通るごとに、かご室内が満員状態であるかを判別し、満員時に満員通過運転を行なうものである。
図25は、第4の実施形態におけるエレベータのエレベータ制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図25に示すように、本実施形態では、エレベータ制御装置20は、第1の実施形態と比較して、占有面積算出部51、満員判別部52をさらに備える。
【0068】
占有面積算出部51は、乗客種別判別部23により判別した、乗りかご内の現在の乗車人数および当該乗客のそれぞれの種別をもとに、かご室1内の床面積における乗客や荷物の占有面積を算出する。本実施形態では、乗客の種別に応じた1人あたりの占有面積の基準値を記憶装置26に記憶している。
【0069】
例えば、占有面積算出部51は、乗客種別判別部23による新たな判別結果が、乗りかごに大人が2名乗車しているといった判別結果である場合には、算出済みの現在の占有面積に対し、大人2人分に応じた占有面積を加算した占有面積を新たな占有面積として算出する。
【0070】
また、占有面積算出部51は、乗客種別判別部23による新たな判別結果が、車椅子利用者がかご室1から1名降車したといった判別結果である場合には、算出済みの現在の占有面積に対し、車椅子利用者1人分に応じた占有面積を減算した占有面積を新たな占有面積として算出する。
【0071】
満員判別部52は、かご室1内の所定の床面積に対する、占有面積算出部51により算出した占有面積をもとに、かご室1内が、これ以上乗客が乗車できない満員状態であるか否かを判別する。
【0072】
図26は、第4の実施形態におけるエレベータによる乗客種別、乗降方向判別および満員判別のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
まず、第1の実施形態で説明したステップS1〜S11までの処理により、乗客の種別の判別および移動方向の判別がなされる。
乗客種別判別部23は、乗りかごに乗客が乗車したとステップS10で判別された場合、または乗りかごから乗客が降車したとステップS11で判別された場合、乗車または降車前の判別結果である、乗りかご内における種別ごとの乗客人数に対して加算または減算を行なうことで、この乗車または降車後における乗りかご内の乗車人数を種別ごとに判別する(ステップS12)。
【0073】
そして、乗りかごが行先階に着床した際、運転制御部25は、乗客種別判別部23による判別結果である、乗りかご内の現在の乗車人数の種別に応じて、乗りかごの戸開閉速度を制御したり戸開から戸閉開始までの待ち時間を制御したりする(ステップS13)。
【0074】
占有面積算出部51は、乗客種別判別部23により判別した、乗りかご内の現在の乗車人数および、当該乗客の種別をもとに、かご室1内の床面積における乗客や荷物の占有面積の総数を算出する(ステップS41)。
【0075】
満員判別部52は、かご室1内の所定の床面積と、占有面積算出部51により算出した占有面積とを比較する(ステップS42)。満員判別部52は、この比較に基づいて、かご室1内の所定の床面積に対する占有面積の算出値の割合が所定の割合以上であるか否かを判別することで、かご室1内が満員状態であるか否かを判別する(ステップS43)。
【0076】
かご室1内の所定の床面積に対する占有面積の算出値の割合が所定の割合未満であって、かご室1内が満員状態でないと満員判別部52が判別した場合には(ステップS43のNO)、ステップS1に戻る。
【0077】
また、かご室1内の所定の床面積に対する占有面積の算出値の割合が所定の割合以上であって、かご室1内が満員状態であると満員判別部52が判別した場合には(ステップS43のYES)、運転制御部25は、次の目的階までの途中階での乗り場呼び登録がなされていても、乗りかごを応答させない満員通過運転を行なう(ステップS44)。
【0078】
以上説明したように、第4の実施形態におけるエレベータでは、乗客が出入口を通るごとに、かご室1内の所定の床面積に対する占有面積の算出値の割合が所定の割合以上である場合には、乗りかごの積載量が上限に達していない場合でも満員状態であると判別して、満員通過運転を行なう。よって、満員時の余分なかご応答を行なわないようにすることができるので、運行効率が向上する。
【0079】
本実施形態では、エレベータ制御装置20の満員判別部52は、かご室1内の所定の床面積に対する占有面積の算出値の割合が所定の割合以上であるか否かを判別することで、かご室1内が満員状態であるか否かを判別すると説明したが、これに限らず、例えば、かご室1内の乗客や荷物の占有面積の算出値をかご室1内の床面積の値から差し引き、この差し引き後の値が所定の値を下回るかゼロとなった場合にかご室1内が満員状態であると判別するようにしてもよい。
【0080】
なお、本実施形態では、第1の実施形態のように、センサ2の2種類の検出結果を用いて乗客の移動方向を判別する場合を説明したが、第2もしくは第3の実施形態で説明した方式で乗客の移動方向を判別する場合にも適用できるのはもちろんである。
【0081】
また、各実施形態におけるエレベータ制御装置20の運転制御部25は、乗りかご内の車椅子利用者専用操作盤で行先階登録ボタンや戸開閉ボタンが操作された場合は、戸閉開始までの待ち時間を延長するなどの制御を行なう。
【0082】
ただし、この操作以前の所定時間内に乗客種別判別部23が、センサ2からの赤外線を遮った車椅子利用者がいるとの判別を行なっていない場合には、車椅子利用者専用操作盤を健常者が操作したと判別し、戸閉開始までの待ち時間を延長するといった制御を行わず、通常の戸開閉制御を行なう。
【0083】
また、運転制御部25は、乗りかご内の現在の乗客が子供のみであると乗客種別判別部23が判別している場合、この子供に対する何らかの危険性が、大人などが共に乗車している場合と比較して増大すると予測されることから、建物内の管理者または乗り場の表示装置に対して、子供だけで乗車している事を報知して、建物の管理者または、エレベータ乗りかご外の利用者に注意を喚起する。
【0084】
これらの各実施形態によれば、乗りかごの乗客の種別に適した運転制御を行なうことが可能になるエレベータを提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…かご室、2a,2b,2c,2d,2e,2f…センサ、3…かごドアパネル、4a,4b,4c,4d,4e,4f…赤外線の光軸、5…かご出入口柱、6…検出対象物、7a,7b,7c…荷重検出装置、8…メインシーブ、9…吊り合い重り、10…メインロープ、11…かご内カメラ、20…エレベータ制御装置、21a,21b,21c,21d,21e,21f…センサ検出信号入力部、22…センサ検出有無認識部、23…乗客種別判別部、24…移動方向判別部、25…運転制御部、26…記憶装置、31…荷重検出信号入力部、41…撮影画像入力部、42…画像解析部、51…占有面積算出部、52…満員判別部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの出入口の高さ方向に沿って複数設けられた、前記出入口を通る乗客を検出するセンサと、
前記複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサおよびその検出タイミングを認識する認識手段と、
前記認識手段による認識結果をもとに、前記検出した乗客が前記乗りかごに乗車したか前記乗りかごから降車したかを判別する移動方向判別手段と、
前記認識手段による認識結果をもとに前記検出した乗客の種別を判別し、この判別した種別および前記移動方向判別手段による判別結果をもとに当該乗りかごに対して乗車または降車する乗客の種別を判別することで、乗りかご内に現在乗車している乗客の人数を種別ごとに判別する乗客種別判別手段と、
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に所定の種別の乗客が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、当該乗客に危険が及ばないように前記乗りかごの戸開閉を制御する運転制御手段とを備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記センサに対し乗りかごの乗降方向に沿って並列に設けられた、前記出入口を通る乗客を検出する第2のセンサをさらに備え、
前記移動方向判別手段は、
前記並列に設けられるセンサのうち、乗りかご内からみて外側および内側のセンサがともに前記乗客を検出して、前記外側のセンサが前記内側のセンサより先に前記乗客を検出した場合に、前記検出した乗客が前記乗りかごに乗車したと判別し、また、前記外側および内側のセンサがともに前記乗客を検出して、前記内側のセンサが前記外側のセンサより先に前記乗客を検出した場合に、前記検出した乗客が前記乗りかごから降車したと判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記乗客種別判別手段は、
前記高さ方向に沿った複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサの本数が所定の本数以下である場合に、前記検出した乗客が子供であると判別し、
前記運転制御手段は、
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に子供が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、戸開閉速度を遅くする制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記乗客種別判別手段は、
前記高さ方向に沿った複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサの本数が所定の本数以下で、かつ、前記複数のセンサのうちいずれかが前記乗客を検出してから少なくとも1つのセンサによる当該乗客の検出が維持された状態で、他のセンサによる検出状態が変化した場合に、前記検出した乗客が車椅子利用者であると判別し、
前記運転制御手段は、
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に車椅子利用者が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、戸閉開始までの待ち時間を延長する制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記乗客種別判別手段は、
前記高さ方向に沿った複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサの本数が所定の本数以下で、かつ、前記複数のセンサのうちいずれかが前記乗客を検出してから少なくとも1つのセンサによる当該乗客の検出が維持された状態で、他のセンサによる検出状態が変化した場合に、前記検出した乗客が荷物を運搬する乗客であると判別し、
前記運転制御手段は、
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に荷物を運搬する乗客が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、戸閉開始までの待ち時間を延長する制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記乗客種別判別手段は、
前記高さ方向に沿った複数のセンサのうち乗客を検出しているセンサの本数が所定の本数を超え、かつ、前記複数のセンサのうちいずれかが前記乗客を検出してから少なくとも1つのセンサによる当該乗客の検出が維持された状態で、他のセンサによる検出状態が変化した場合に、前記検出した乗客が荷物を運搬する乗客であると判別し、
前記運転制御手段は、
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に荷物を運搬する乗客が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、戸閉開始までの待ち時間を延長する制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項7】
乗りかごにかかる荷重値を検出する荷重検出器をさらに備え、
前記移動方向判別手段は、
前記センサが乗客を検出する前から後にかけて、前記荷重検出器により検出した荷重値が増加した場合には、前記検出した乗客は前記乗りかごに乗車したと判別し、前記センサが乗客を検出する前から後にかけて、前記荷重検出器により検出した荷重値が減少した場合には、前記検出した乗客は前記乗りかごから降車したと判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記乗りかご内を撮影する撮影装置をさらに備え、
前記移動方向判別手段は、
前記センサが乗客を検出する前後に前記撮影装置が撮影した画像に基づいて、前記検出した乗客が前記乗りかごに乗車したか前記乗りかごから降車したかを判別する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項9】
前記移動方向判別手段による判別結果をもとに、前記乗りかご内における占有面積を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した面積が所定の条件を満たす場合に、前記乗りかご内が満員であると判別する満員判別手段とをさらに備え、
前記運転制御手段は、
前記満員判別手段により前記乗りかご内が満員と判別した場合には当該乗りかごを新たな乗り場呼びに応答させない満員通過運転を行なう
ことを特徴とする請求項2、7、8のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項10】
前記乗りかごが着床した際に、前記乗りかご内に子供が現在乗車していると前記乗客種別判別手段により判別している場合に、前記乗りかご内に子供が現在乗車していることを外部に報知する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−193007(P2012−193007A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57081(P2011−57081)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】