説明

エレベータ

【課題】輸送能力の向上を図り、構造の簡素化を図ることができるエレベータを得る。
【解決手段】各階の乗場ドア装置26には、乗場の戸53が戸閉位置にあるときと、乗場の戸53が戸閉位置から外れたときとで、導通状態と非導通状態とが切り替わる乗場ドアスイッチ64が設けられている。各乗場ドア装置26の乗場の戸53には、一対の乗場側導体片84を含む乗場側端子装置82が設けられている。各乗場側端子装置82は、かごの戸33に設けられたかご側導体片81への接触によりかご側導体片81を通して導通状態となりかご側導体片81から離れると非導通状態となる。かご側導体片81及び乗場側端子装置82は、かごの戸33及び乗場の戸53の係合により互いに接触する。制御装置14は、各乗場ドアスイッチ64及び各乗場側端子装置82のそれぞれの導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のかごが昇降路内の共通の経路を昇降するエレベータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のかごが共有の経路を昇降する従来の1シャフトマルチカーエレベータでは、エレベータの輸送能力の増大を図るために、互いに独立した複数の安全回路により各かごの移動を個別にブロックすることを可能とし、各安全回路にそれぞれ並列に接続されたブリッジ回路を設備制御部によって個別に制御することにより、一方のかごドアが開いた状態でも、これにより他方のかごが妨害されることなく移動を続けられるようにした構成が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−331397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来のエレベータでは、設備制御部の故障が生じると、各ブリッジ回路の制御を正常に行うことができず、昇降路ドアの開放に対して安全回路が正常に機能しなくなるおそれがある。従って、設備制御部やブリッジ回路を二重化するなどの対策が必要になり、構造が複雑になってしまう。
【0005】
また、ブリッジ回路では、スイッチング要素の接点溶着が生じるおそれがあるので、接点溶着に対する対策が必要になり、構造がさらに複雑になってしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、輸送能力の向上を図ることができるとともに、構造の簡素化を図ることができるエレベータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータは、かご出入口が設けられたかご本体と、かご出入口を開閉するかごの戸を含むかごドア装置とを有し、昇降路内の共通の経路を昇降する複数のかご、各階の乗場出入口に設けられ、乗場出入口に対応するドア開閉可能区間内にかごがあるときにかごの戸に係合されながら乗場出入口を開閉可能な乗場の戸を有する複数の乗場ドア装置、各乗場ドア装置に設けられ、乗場の戸が戸閉位置にあるときと、乗場の戸が戸閉位置から外れたときとで、導通状態と非導通状態とが切り替わる複数の乗場ドアスイッチ、各かごの戸に設けられた複数のかご側接点要素と、一対の乗場側接点要素を含み、各乗場ドア装置の乗場の戸に設けられ、かご側接点要素に接触することによりかご側接点要素を通して導通状態となりかご側接点要素から離れると非導通状態となる複数の乗場側端子装置とを有し、互いに係合しているときのかごの戸及び乗場の戸に設けられたかご側接点要素及び乗場側端子装置が互いに接触する係合スイッチ、及び
各乗場ドアスイッチ及び各乗場側端子装置のそれぞれの導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出する制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータでは、乗場の戸が戸閉位置にあるときと、乗場の戸が戸閉位置から外れたときとで、導通状態と非導通状態とが切り替わる乗場ドアスイッチが各乗場ドア装置に設けられ、かごの戸のかご側接点要素に接触することによりかご側接点要素を通して導通状態となりかご側接点要素から離れることにより非導通状態となる乗場側端子装置が各乗場ドア装置の乗場の戸に設けられているので、各乗場ドアスイッチ及び各乗場側端子装置のそれぞれの状態を検出することによって、乗場出入口の閉状態の有無と、かごの戸との係合の有無とを各乗場ドア装置について個別に検出することができる。これにより、乗場出入口が開いた場合であっても、乗場の戸に対するかごの戸の係合の有無によって、エレベータの異常の有無を判断することができる。従って、各かごのいずれかが乗場に着床している場合に、他のかごの移動が制限されることを防止することができ、エレベータの輸送能力の向上を図ることができる。また、かご側接点要素がかごの戸に設けられ、乗場側端子装置が乗場の戸に設けられているので、かご側接点要素と乗場側端子装置とが溶着した場合であっても、かごの移動によって強制的に溶着が外れることとなる。従って、スイッチの接点溶着に対する対策が不要となり、エレベータの構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータを示す正面図である。
【図2】図1のエレベータを示す側面図である。
【図3】図1のかごドア装置の上部を示す正面図である。
【図4】図3のかごドア装置が戸開動作を行っているときの状態を示す正面図である。
【図5】図1の乗場ドア装置の上部を示す正面図である。
【図6】図5の乗場ドア装置が戸開動作を行っているときの状態を示す正面図である。
【図7】図5の乗場の戸の上部を示す拡大図である。
【図8】図6の乗場の戸の上部を示す拡大図である。
【図9】図7のスイッチ用作動片を示す拡大図である。
【図10】図8のスイッチ用作動片を示す拡大図である。
【図11】図1の制御装置に電気的に接続された安全回路を示す回路図である。
【図12】図11の各乗場ドアスイッチのいずれかが非導通状態となっているときの安全回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータを示す正面図である。また、図2は、図1のエレベータを示す側面図である。図において、昇降路1内には、上かご2及び下かご3(複数のかご2,3)と、上かご用釣合おもり4及び下かご用釣合おもり5とが昇降可能に設けられている。
【0011】
上かご2及び下かご3は、昇降路1内に設置された共通のかごガイドレール(図示せず)に案内されながら昇降可能になっている。従って、上かご2及び下かご3は、上下方向に沿った共通の経路上を移動される。上かご用釣合おもり4及び下かご用釣合おもり5は、昇降路1内に設置された釣合おもりガイドレール(図示せず)に案内されながら昇降可能になっている。
【0012】
上かご2及び上かご用釣合おもり4は、第1の懸吊体(例えばロープやベルト等)6により昇降路1内に吊り下げられている。昇降路1の上部には、駆動シーブ7aを有する第1の巻上機7が設けられている。第1の懸吊体6は、駆動シーブ7aに巻き掛けられている。この例では、第1の懸吊体6の一端部が上かご2に接続され、第1の懸吊体6の他端部が上かご用釣合おもり4に接続されている。従って、この例では、第1の懸吊体6による上かご2及び上かご用釣合おもり4の吊り下げ方式が1:1ローピング方式とされている。上かご2及び上かご用釣合おもり4は、第1の巻上機7の駆動力による駆動シーブ7aの回転により昇降路1内を昇降される。
【0013】
下かご3及び下かご用釣合おもり5は、第2の懸吊体(例えばロープやベルト等)8により昇降路1内に吊り下げられている。昇降路1の上部には、駆動シーブ9aを有する第2の巻上機9、かご側綱止め装置10及びおもり側綱止め装置11が設けられている。下かご3の下部には一対のかご吊り車12が設けられ、下かご用釣合おもり5の上部には釣合おもり吊り車13が設けられている。
【0014】
第2の懸吊体8の一端部はかご側綱止め装置10に接続され、第2の懸吊体8の他端部はおもり側綱止め装置11に接続されている。第2の懸吊体8は、かご側綱止め装置10に接続された一端部から、各かご吊り車12、駆動シーブ9a及び釣合おもり吊り車13の順に巻き掛けられ、おもり側綱止め装置11に接続された他端部に達している。従って、この例では、第2の懸吊体8による下かご3及び下かご用釣合おもり5の吊り下げ方式が2:1ローピング方式とされている。下かご3及び下かご用釣合おもり5は、第2の巻上機9の駆動力による駆動シーブ9aの回転により昇降路1内を昇降される。
【0015】
なお、第1の懸吊体6による上かご2及び上かご用釣合おもり4の吊り下げ方式を2:1ローピング方式としてもよいし、第2の懸吊体8による下かご3及び下かご用釣合おもり5の吊り下げ方式を1:1ローピング方式としてもよい。
【0016】
上かご2及び下かご3は、エレベータの制御装置14による第1の巻上機7及び第2の巻上機9のそれぞれの制御により、互いに衝突することを避けて共通の経路上を個別に移動される。
【0017】
上かご2及び下かご3のそれぞれは、かご出入口21(図2)が設けられたかご本体22と、かご本体22に設けられ、かご出入口21を開閉可能なかごドア装置23とを有している。各階には、昇降路1内と乗場24とを連通する乗場出入口25(図2)がそれぞれ設けられている。各乗場出入口25には、乗場出入口25を開閉可能な乗場ドア装置26がそれぞれ設けられている。
【0018】
昇降路1内には、各乗場出入口25にそれぞれ対応する複数のドア開閉可能区間が設定されている。上かご2及び下かご3は、各階の乗場に正常に着床することにより、着床階に対応するドア開閉可能区間内に停止される。上かご2又は下かご3がドア開閉可能区間内にあるときには、対応する乗場ドア装置26にかごドア装置23が機械的に係合されることで、乗場出入口25及びかご出入口21が開閉可能になっている。
【0019】
図3は、図1のかごドア装置23の上部を示す正面図である。また、図4は、図3のかごドア装置23が戸開動作を行っているときの状態を示す正面図である。なお、図3及び図4では、乗場24側から上かご2又は下かご3を見たときのかごドア装置23の上部を示している。また、上かご2及び下かご3のそれぞれに設けられたかごドア装置23は、同一の構成とされている。図において、かご本体22には、かご出入口21の上部に配置された桁枠31が固定されている。桁枠31には、かご側ドアレール32が水平に固定されている。
【0020】
かご側ドアレール32には、かご出入口21を開閉する一対のかごの戸33が吊り下げられている。各かごの戸33は、ドアパネル34と、ドアパネル34の上部に設けられ、かご側ドアレール32に掛けられたドアハンガ35とを有している。ドアハンガ35は、ドアパネル34の上部に固定されたハンガ本体36と、ハンガ本体36に設けられ、かご側ドアレール32上を転動される複数のハンガローラ37とを有している。各かごの戸33は、各ハンガローラ37をかご側ドアレール32上で転動させながらかご側ドアレール32に沿って変位される。
【0021】
桁枠31の水平方向一端部にはドア駆動装置38が設けられ、桁枠31の水平方向他端部には従動プーリ39が設けられている。ドア駆動装置38は、ドアモータ40と、ドアモータ40に設けられ、ドアモータ40の駆動力により回転される駆動プーリ41とを有している。駆動プーリ41及び従動プーリ39間には、無端状の伝動ベルト42が巻き掛けられている。伝動ベルト42は、駆動プーリ41の回転に応じて周回移動される。
【0022】
各かごの戸33は、第1及び第2の連結部材43,44を介して伝動ベルト42に連結されている。各かごの戸33は、伝動ベルト42の周回移動により互いに反対方向へ変位される。かご出入口21は、各かごの戸33がかご側ドアレール32に沿って互いに反対方向へ変位されることにより開閉される。
【0023】
桁枠31の中間部には、かご出入口21を閉じる戸閉位置に各かごの戸33があるか否かを個別に検出する一対のかごドアスイッチ45が設けられている。各かごドアスイッチ45は、かごの戸33が戸閉位置にあるとき(図3)と、かごの戸33が戸閉位置から外れたとき(図4)とで、導通状態(ON状態)と非導通状態(OFF状態)とが切り替わる。この例では、各かごドアスイッチ45は、かごの戸33が戸閉位置にあるときに導通状態となり、かごの戸33が戸閉位置から外れると非導通状態となる。
【0024】
かごドアスイッチ45は、開閉可能な接点を含むスイッチ本体46と、スイッチ本体46に回動可能に設けられ、スイッチ本体46に対する回動によりスイッチ本体46の接点を開閉する作動片47とを有している。スイッチ本体46の接点は、戸閉位置にあるときのかごの戸33のドアハンガ35に作動片47が押された状態で閉じており、かごの戸33が戸閉位置から戸開方向へ変位されて作動片47が回動されることにより開く。かごドアスイッチ45は、スイッチ本体46の接点が閉じることにより導通状態となり、スイッチ本体46の接点が開くことにより非導通状態となる。
【0025】
各かごの戸33のうち、一方のかごの戸33には、乗場ドア装置26と係合するための一対のブレード(かご側係合部)48が上下方向に沿って設けられている。各ブレード48は、かご出入口21の間口方向(水平方向)について互いに対向している。
【0026】
図5は、図1の乗場ドア装置26の上部を示す正面図である。また、図6は、図5の乗場ドア装置26が戸開動作を行っているときの状態を示す正面図である。なお、図5及び図6では、昇降路1内から乗場24側を見たときの乗場ドア装置26の上部を示している。また、各乗場出入口25にそれぞれ設けられた乗場ドア装置26は、同一の構成とされている。図において、昇降路1の内壁面には、乗場出入口25の上部に配置されたハンガケース51が固定されている。ハンガケース51には、乗場側ドアレール52が水平に固定されている。
【0027】
乗場側ドアレール52には、乗場出入口25を開閉する一対の乗場の戸53が吊り下げられている。各乗場の戸53は、ドアパネル54と、ドアパネル54の上部に設けられ、乗場側ドアレール52に掛けられたドアハンガ55とを有している。ドアハンガ55は、ドアパネル54の上部に固定されたハンガ本体56と、ハンガ本体56に設けられ、乗場側ドアレール52上を転動される複数のハンガローラ57とを有している。各乗場の戸53は、各ハンガローラ57を乗場側ドアレール52上で転動させながら乗場側ドアレール52に沿って変位される。
【0028】
ハンガケース51には、水平方向について互いに離して配置された一対の乗場側プーリ58,59が設けられている。一方の乗場側プーリ58には、第1の伝動ベルト60が巻き掛けられ、他方の乗場側プーリ59には第2の伝動ベルト61が巻き掛けられている。一方の乗場の戸53のハンガ本体56には、第1の伝動ベルト60の一端部及び第2の伝動ベルト61の他端部が接続された第1の連結部材62が固定されている。他方の乗場の戸53のハンガ本体56には、第1の伝動ベルト60の他端部及び第2の伝動ベルト61の一端部が接続された第2の連結部材63が固定されている。これにより、各乗場の戸53は、乗場側ドアレール52に沿って互いに反対方向へ変位可能になっている。乗場出入口25は、各乗場の戸53が乗場側ドアレール52に沿って互いに反対方向へ変位されることにより開閉される。
【0029】
ハンガケース51の中間部には、乗場出入口25を閉じる戸閉位置に各乗場の戸53があるか否かを検出する乗場ドアスイッチ64が設けられている。乗場ドアスイッチ64は、各乗場の戸53が戸閉位置にあるとき(図5)と、各乗場の戸53が戸閉位置から外れたとき(図6)とで、導通状態(ON状態)と非導通状態(OFF状態)とが切り替わる。この例では、乗場ドアスイッチ64は、各乗場の戸53が戸閉位置にあるときに導通状態となり、各乗場の戸53が戸閉位置から外れると非導通状態となる。
【0030】
乗場ドアスイッチ64は、開閉可能な接点を含むスイッチ本体65と、スイッチ本体65に回動可能に設けられ、スイッチ本体65に対する回動によりスイッチ本体65の接点を開閉する作動片66とを有している。一方の乗場の戸53には、ハンガ本体56の側面から水平に突出する突出部67が設けられている。スイッチ本体65の接点は、戸閉位置にあるときの乗場の戸53の突出部67に作動片66が押された状態で閉じており、乗場の戸53が戸閉位置から戸開方向へ変位されて作動片66が回動されることにより開く。乗場ドアスイッチ64は、スイッチ本体65の接点が閉じることにより導通状態となり、スイッチ本体65の接点が開くことにより非導通状態となる。
【0031】
各乗場の戸53のうち、一方の乗場の戸53のハンガ本体56には、かごの戸33の一対のブレード48と係合するための係合ローラ(乗場側係合部)68が設けられている。係合ローラ68は、ドア開閉可能区間内に上かご2又は下かご3が進入することにより一対のブレード48間に配置される。係合ローラ68が一対のブレード48間に配置されている状態では、水平方向についてブレード48が係合ローラ68に係合可能になっている。従って、ドア開閉可能区間内に上かご2又は下かご3があるときには、かごの戸33の水平方向への変位により、ブレード48及び係合ローラ68を介してかごの戸33が乗場の戸53に係合可能になっている。乗場の戸53は、かごの戸33に係合されながらかごの戸33とともに変位され、乗場出入口25を開閉する。
【0032】
係合ローラ68は、乗場の戸53の厚さ方向に沿った支持軸69を中心に回転自在になっている。支持軸69には、係合ローラ68とは別個に支持軸69を中心に回動される回動体70が設けられている。
【0033】
図7は図5の乗場の戸53の上部を示す拡大図、図8は図6の乗場の戸53の上部を示す拡大図である。回動体70は、ブレード48に押されながら回動される回動レバー71と、回動レバー71の回動により回動レバー71と反対方向へ回動されるスイッチ用作動片72と、回動レバー71の回動により上下方向へ回動されるラッチ73とを有している。回動レバー71、スイッチ用作動片72及びラッチ73は、支持軸69を中心に一体に回動される。ドア開閉可能区間内に上かご2又は下かご3があるときには、係合ローラ68、回動レバー71及びスイッチ用作動片72が一対のブレード48間に配置される。
【0034】
回動レバー71の先端部には、可動ローラ74が設けられている。回動レバー71は、可動ローラ74が係合ローラ68よりも戸閉側へずれた前進位置(図7)と、前進位置よりも可動ローラ74が戸開側に位置し、可動ローラ74と係合ローラ68とが上下に並ぶ後退位置(図8)との間で支持軸69を中心に回動可能になっている。ドア開閉可能区間内に上かご2又は下かご3があるときには、かごの戸33が戸閉位置から戸開方向へ変位されて可動ローラ74がブレード48に押されることにより、回動レバー71が前進位置から後退位置へ回動される。また、係合ローラ68は、可動ローラ74がブレード48に押されながら後退位置に達したときにブレード48と係合される。乗場の戸53は、係合ローラ68とブレード48とが互いに係合された状態で、かごの戸33とともに変位される。
【0035】
ハンガケース51の中間部には、掛金75が固定されている。ラッチ73は、乗場の戸53が乗場出入口25を閉じているときに、掛金75に係合される施錠位置(図7)と、掛金75との係合が外れる解錠位置(図8)との間で支持軸69を中心に回動可能になっている。ラッチ73は、回動レバー71の前進位置への変位により施錠位置に変位され、回動レバー71の後退位置への変位により解錠位置に変位される。乗場ドア装置26は、ラッチ73が掛金75に係合されることにより施錠され、ラッチ73の掛金75に対する係合が外れることにより解錠される。乗場ドア装置26が施錠されると乗場の戸53の戸開方向への変位が阻止され、乗場ドア装置26が解錠されると乗場の戸53が戸開方向へ変位可能になる。
【0036】
かごの戸33の各ブレード48のうち、戸閉側に位置するブレード48には、かご側導体片(かご側接点要素)81が設けられている。かご側導体片81は、一方のブレード48を介してかごの戸33に設けられている。また、かご側導体片81は、ブレード48の長さ方向についての所定の範囲に設けられている。
【0037】
スイッチ用作動片72の先端部には、乗場側端子装置82が設けられている。乗場側端子装置82は、スイッチ用作動片72を介して乗場の戸53に設けられている。乗場側端子装置82には、導線を含む移動ケーブル83が接続されている。移動ケーブル83は、ハンガケース51に支持されており、乗場の戸53が変位されるときに曲がりながら乗場の戸53に追従する。
【0038】
スイッチ用作動片72は、戸閉位置から戸開方向(乗場の戸53に係合される方向)へ変位されるかごの戸33のブレード48に押されて回動レバー71が回動されることにより乗場側端子装置82がかご側導体片81に接触する方向へ回動され(図8)、戸閉方向(乗場の戸53との係合が外れる方向)へ変位されるかごの戸33のブレード48に接触しながら回動レバー71が回動されることにより乗場側端子装置82がかご側導体片81から離れる方向へ回動される(図7)。乗場側端子装置82は、ブレード48が係合ローラ68に係合すると(即ち、かごの戸33が乗場の戸53に係合すると)かご側導体片81に接触し、係合ローラ68に対するブレード48の係合(即ち、乗場の戸53に対するかごの戸33の係合)が外れるとかご側導体片81から離れる。
【0039】
図9は図7のスイッチ用作動片72を示す拡大図、図10は図8のスイッチ用作動片72を示す拡大図である。乗場側端子装置82は、互いに離して配置された一対の乗場側導体片(乗場側接点要素)84を有している。乗場側端子装置82がかご側導体片81に接触している状態では、一対の乗場側導体片84のそれぞれが共通のかご側導体片81に接触している。従って、乗場側端子装置82は、各乗場側導体片84がかご側導体片81に接触することによりかご側導体片81を通して導通状態(ON状態)となり、かご側導体片81から離れることにより非導通状態(OFF状態)となる。
【0040】
乗場側端子装置82は、各乗場ドア装置26の乗場の戸53にそれぞれ設けられている。また、かご側導体片81は、各かごドア装置23のかごの戸33にそれぞれ設けられている。従って、各乗場側端子装置82のそれぞれに対するかご側導体片81の接触の有無により、各乗場ドア装置26のそれぞれに対するかごドア装置23の係合の有無が検出される。即ち、各乗場ドア装置26のそれぞれでは、乗場側端子装置82が導通状態となることによりかごドア装置23との係合が検出され、乗場側端子装置82が非導通状態となることによりかごドア装置23との係合の解除が検出される。なお、各乗場ドア装置26のそれぞれに対するかごドア装置23の係合の有無を検出する係合スイッチは、各乗場ドア装置26にそれぞれ設けられた複数の乗場側端子装置82と、各かごドア装置23のそれぞれに設けられた複数のかご側導体片81とを有している。
【0041】
制御装置14は、各乗場ドアスイッチ64及び各乗場側端子装置82のそれぞれの導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出する。この例では、係合スイッチ及び各乗場ドアスイッチ64を含むエレベータの安全回路が制御装置14に電気的に接続されている。制御装置14は、安全回路の動作に基づいて、エレベータの異常の有無を検出し、エレベータの運転を制御する。
【0042】
図11は、図1の制御装置14に電気的に接続された安全回路を示す回路図である。また、図12は、図11の各乗場ドアスイッチ64のいずれかが非導通状態となっているときの安全回路を示す回路図である。安全回路91は、共通の乗場ドア装置26に設けられた乗場ドアスイッチ64及び乗場側端子装置82を一組として個別に含む複数の並列回路部92を有している。各並列回路部92では、乗場ドアスイッチ64に対して乗場側端子装置82が移動ケーブル83に含まれる導線により並列に接続されている。各並列回路部92は、互いに直列に接続されている。
【0043】
各並列回路部92では、乗場側端子装置82が導通状態になることにより、乗場側端子装置82を通って乗場ドアスイッチ64を迂回する迂回路が形成され(図12)、乗場ドアスイッチ64が導通状態になることにより、乗場ドアスイッチ64を通って乗場側端子装置82を迂回する迂回路が形成される。従って、並列回路部92は、乗場ドアスイッチ64及び乗場側端子装置82のうち少なくともいずれかが導通状態となっているときに、導通状態となる。また、各並列回路部92は、乗場ドアスイッチ64及び乗場側端子装置82がいずれも非導通状態になると迂回路が形成されず、非導通状態となる。
【0044】
安全回路91は、各並列回路部92がいずれも導通状態であるときに導通状態となり、各並列回路部92の少なくともいずれかが非導通状態となっているときに非導通状態となる。
【0045】
制御装置14は、安全回路91の導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出する。即ち、制御装置14は、安全回路91が導通状態であるときにエレベータの異常の検出を回避し、安全回路91が非導通状態になるとエレベータの異常を検出する。また、制御装置14は、エレベータの異常を検出すると、すべてのかご2,3(この例では、上かご2及び下かご3の両方)の移動を停止させる。
【0046】
次に、かごドア装置23及び乗場ドア装置26の動作について説明する。例えば上かご2がドア開閉可能区間内に進入して上かご2が乗場24に正常に着床すると、上かご2のかごの戸33が着床階の乗場の戸53と水平方向について係合可能な位置に配置される。この後、上かご2のドア駆動装置38の駆動力により伝動ベルト42が移動し、各かごの戸33が戸閉位置から戸開方向への変位を開始する。
【0047】
かごの戸33が戸閉位置から戸開方向へ変位されると、まず、かごの戸33のブレード48が可動ローラ74に接触する。この後、ブレード48で可動ローラ74を押して回動レバー71を回動させながらかごの戸33が戸開方向へさらに変位され、ブレード48が係合ローラ68に係合する。これにより、回動レバー71と一体にスイッチ用作動片72及びラッチ73が回動され、乗場側端子装置82がかご側導体片81に接触して非導通状態から導通状態となるとともに、ラッチ73の掛金75に対する係合が外れて乗場ドア装置26の施錠が解除される。
【0048】
この後、ブレード48を係合ローラ68に係合させたまま、かごの戸33が乗場の戸53とともに戸開方向へさらに変位される。乗場の戸53が戸閉位置から外れると、乗場ドアスイッチ64が導通状態から非導通状態となる。この後、かごの戸33が乗場の戸53とともに戸開方向へさらに変位されることにより戸開動作が完了する。
【0049】
戸閉動作時には、ドア駆動装置38の駆動力により伝動ベルト42が逆方向へ移動され、ブレード48が係合ローラ68に係合したまま、かごの戸33が乗場の戸53とともに戸閉方向へ変位される。この後、各乗場の戸53が先に乗場出入口25を閉じると、乗場ドアスイッチ64が非導通状態から導通状態となる。
【0050】
この後、かごの戸33が戸閉方向へさらに変位され、係合ローラ68とブレード48との係合が外れると、かご側導体片81と乗場側端子装置82とが互いに離れて乗場側端子装置82が導通状態から非導通状態となるとともに、ラッチ73が掛金75に係合されて乗場ドア装置26が施錠される。この後、かごの戸33が戸閉方向へさらに変位されることによりブレード48が可動ローラ74から離れ、戸閉動作が完了する。
【0051】
次に、安全回路91の動作について説明する。すべての乗場ドア装置26の乗場の戸53が乗場出入口25を閉じている状態では、図11に示すように、各乗場ドアスイッチ64が導通状態となっているので、安全回路91の導通状態が維持されている。この状態では、制御装置14は、エレベータの異常を検出せず、エレベータの通常運転を行う。
【0052】
また、上かご2又は下かご3が乗場24に着床してかごの戸33が乗場の戸53に係合した状態で乗場の戸53が乗場出入口25を開いたときには、乗場ドアスイッチ64が非導通状態となるが、図12に示すように、着床階の乗場ドア装置26に設けられた乗場側端子装置82がかごの戸33と乗場の戸53との係合により導通状態となるので、非導通状態の乗場ドアスイッチ64を迂回する迂回路が形成され、安全回路91の導通状態が維持される。この場合にも、制御装置14はエレベータの異常を検出しない。従って、上かご2及び下かご3のうち、いずれかが乗場24に着床しているときであっても、他のかごの移動が制限されることはない。
【0053】
一方、上かご2及び下かご3がいずれも着床していない乗場24の乗場出入口25が開いたときには、その乗場24に設けられた乗場ドア装置26の乗場ドアスイッチ64及び乗場側端子装置82がいずれも非導通状態となる。この場合には、共通の並列回路部92に迂回路が形成されず、安全回路91は非導通状態となる。制御装置14は、安全回路91が非導通状態となると、エレベータの異常を検出し、すべてのかご2,3の移動を停止する。
【0054】
このようなエレベータでは、乗場の戸53が戸閉位置にあるときと、乗場の戸53が戸閉位置から外れたときとで、導通状態と非導通状態とが切り替わる乗場ドアスイッチ64が各乗場ドア装置26に設けられ、かごの戸33のかご側導体片81に接触することにより導通状態となりかご側導体片81から離れることにより非導通状態となる乗場側端子装置82が各乗場ドア装置26の乗場の戸53に設けられているので、各乗場ドアスイッチ64及び各乗場側端子装置82のそれぞれの状態を検出することによって、乗場出入口25の閉状態の有無と、かごの戸33との係合の有無とを各乗場ドア装置26について個別に検出することができる。これにより、乗場出入口25が開いた場合であっても、乗場出入口25を開いた乗場の戸53に対するかごの戸33の係合の有無によって、エレベータの異常の有無を判断することができる。従って、上かご2及び下かご3の一方のかごが乗場24に着床している場合に、他方のかごの移動が制限されることを防止することができ、エレベータの輸送能力の向上を図ることができる。一方、上かご2及び下かご3がいずれも着床していない乗場24の乗場出入口25が開いた場合には、エレベータの異常を検出してすべてのかご2,3の移動を停止することができる。
【0055】
また、かご側導体片81がかごの戸33に設けられ、乗場側端子装置82が乗場の戸53に設けられているので、かご側導体片81と乗場側端子装置82とが溶着した場合であっても、かご2,3の移動によって強制的に溶着が外れることとなる。従って、スイッチの接点溶着に対する対策が不要となり、エレベータの構造の簡素化を図ることができる。
【0056】
また、安全回路91は、複数の並列回路部92を有し、各並列回路部92は、共通の乗場ドア装置26に設けられた乗場ドアスイッチ64及び乗場側端子装置82を互いに並列に接続して構成されているので、安全回路91の導通状態の有無によりエレベータの異常の有無を検出することができ、エレベータの異常の有無の検出を簡単な構成で容易に行うことができる。
【0057】
また、乗場の戸53に係合される方向へ変位されるかごの戸33に押されながら、乗場側端子装置82をかご側導体片81に接触させる方向へ回動される回動体70が乗場の戸53に設けられているので、かごの戸33が乗場の戸53に対して係合されたときにかご側導体片81に乗場側端子装置82をより確実に接触させることができ、乗場の戸53に対するかごの戸33の係合が外れたときにかご側導体片81から乗場側端子装置82をより確実に離すことができる。
【0058】
なお、上記の例では、共通の経路を移動されるかごの数が上かご2及び下かご3の2台となっているが、共通の経路を移動されるかごの数を3台以上としてもよい。この場合、各かごに設けられたかごドア装置23のそれぞれのかごの戸33にかご側導体片81が設けられる。
【0059】
また、上記の例では、支持軸69を中心に回動されるスイッチ用作動片72を介して乗場側端子装置82が乗場の戸53に設けられているが、乗場の戸53に固定された固定部材を介して乗場側端子装置82を乗場の戸53に設けてもよい。
【0060】
また、上記の例では、乗場ドアスイッチ64が接触式のスイッチとされているが、非接触式のスイッチ(例えば近接スイッチ等)を乗場ドアスイッチ64としてもよい。
【0061】
また、上記の例では、乗場ドアスイッチ64が、乗場の戸53が戸閉位置にあるときに導通状態となり、乗場の戸53が戸閉位置から外れると非導通状態となるように構成されているが、乗場ドアスイッチ64が、乗場の戸53が戸閉位置にあるときに非導通状態となり、乗場の戸53が戸閉位置から外れると導通状態となるように構成されていてもよい。この場合、図11及び図12のような安全回路91は構成せず、各乗場側端子装置82及び各乗場ドアスイッチ64のそれぞれ状態の情報が制御装置14へ送られ、制御装置14の処理により、各乗場ドア装置26のそれぞれに対してかごの戸33が係合しているか否かの判断と、各乗場ドア装置26の乗場の戸53が戸閉位置にあるか否かの判断とが行われる。
【符号の説明】
【0062】
1 昇降路、2 上かご、3 下かご、14 制御装置、21 かご出入口、22 かご本体、23 かごドア装置、25 乗場出入口、26 乗場ドア装置、33 かごの戸、64 乗場ドアスイッチ、70 回動体、81 かご側導体片(かご側接点要素)、82 乗場側端子装置、84 乗場側導体片(乗場側接点要素)、91 安全回路、92 並列回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご出入口が設けられたかご本体と、上記かご出入口を開閉するかごの戸を含むかごドア装置とを有し、昇降路内の共通の経路を昇降する複数のかご、
各階の乗場出入口に設けられ、上記乗場出入口に対応するドア開閉可能区間内に上記かごがあるときに上記かごの戸に係合されながら上記乗場出入口を開閉可能な乗場の戸を有する複数の乗場ドア装置、
各上記乗場ドア装置に設けられ、上記乗場の戸が戸閉位置にあるときと、上記乗場の戸が戸閉位置から外れたときとで、導通状態と非導通状態とが切り替わる複数の乗場ドアスイッチ、
各上記かごの戸に設けられた複数のかご側接点要素と、一対の乗場側接点要素を含み、各上記乗場ドア装置の上記乗場の戸に設けられ、上記かご側接点要素に接触することにより上記かご側接点要素を通して導通状態となり上記かご側接点要素から離れると非導通状態となる複数の乗場側端子装置とを有し、互いに係合しているときの上記かごの戸及び上記乗場の戸に設けられた上記かご側接点要素及び上記乗場側端子装置が互いに接触する係合スイッチ、及び
各上記乗場ドアスイッチ及び各上記乗場側端子装置のそれぞれの導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出する制御装置
を備えていることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
各上記乗場ドアスイッチ及び上記係合スイッチは、エレベータの安全回路に含まれ、
上記安全回路は、共通の上記乗場ドア装置に設けられた上記乗場ドアスイッチ及び上記乗場側端子装置が並列に接続されて構成された複数の並列回路部を有しており、
各上記乗場ドアスイッチは、上記乗場の戸が戸閉位置にあるときに導通状態となり、上記乗場の戸が戸閉位置から外れると非導通状態となるように構成され、
上記安全回路は、共通の上記並列回路部での上記乗場ドアスイッチ及び上記乗場側端子装置のうち、少なくともいずれかが導通状態となっているときに導通状態となり、いずれも非導通状態になると非導通状態となるように構成されており、
上記制御装置は、上記安全回路の導通状態の有無に基づいて、エレベータの異常の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
上記乗場の戸には、上記乗場の戸に係合される方向へ変位される上記かごの戸に押されながら、上記乗場側端子装置を上記かご側接点要素に接触させる方向へ回動される回動体が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−254845(P2012−254845A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128295(P2011−128295)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】