説明

エンジンのシール構造

【課題】合わせ部に液状ガスケットを確実に充填保持することができるエンジンのシール構造を提供する。
【解決手段】シリンダブロック2と、そのシリンダブロック2に第1シール部材7aを介して組付けられるシリンダヘッド1と、組付けられたシリンダブロック2およびシリンダヘッド1に第2シール部材8aを介して組付けられるチェーンカバー3と、を備え、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との合わせ部11の外面側に、液状ガスケット13を充填保持する保持凹部Aを形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックと、そのシリンダブロックに第1シール部材を介して組付けられるシリンダヘッドと、組付けられた前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドに第2シール部材を介して組付けられるチェーンカバーとを備えたエンジンのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーの組付け方法として以下のようなものがある。
【0003】
シリンダブロックの上向き接合面とシリンダヘッドの下向き接合面との間に第1シール部材としての固体ガスケットを挟んで、シリンダブロックにシリンダヘッドを組付ける。これにより、シリンダブロックとシリンダヘッドとの隙間を塞ぐ。
【0004】
チェーンカバーの横向き接合面に第2シール部材としての液状ガスケットを塗布し、組付けられたシリンダブロックおよびシリンダヘッドにチェーンカバーを組付ける。
【0005】
このとき、チェーンカバーの横向き接合面に塗布された液状ガスケットは、シリンダブロックの横向き接合面およびシリンダヘッドの横向き接合面に接触して、チェーンカバーと、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとの隙間を塞ぐ。このようにして、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーを、シール性を確保しつつ組付けている。
【0006】
しかし、エンジン作動時には、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの壁部が高温の燃焼ガスに曝される。特に、シリンダヘッドはシリンダブロックに較べて高温になり易く、熱膨張し易い。このため、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間でエンジン長手方向の相対変位が生じて、シリンダブロックとシリンダヘッドとチェーンカバーとの合わせ部におけるチェーンカバーの横向き接合面と、シリンダブロックの横向き接合面との間に隙間が生じることがある。このとき、隙間に充填された液状ガスケットが過大な引張変形を受けて、液状ガスケットのシール性が損なわれることがある。
【0007】
さらに、エンジン作動時には、シリンダヘッドやシリンダブロックの材質、或いは、固体ガスケットの形状の違いにより、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの熱膨張の程度に差が生じる。このため、シリンダヘッドの横向き接合面やシリンダブロックの横向き接合面に対して固体ガスケットのチェーンカバーの側の端面が引退して、合わせ部におけるシリンダヘッドの下向き接合面とシリンダブロックの上向き接合面との間に隙間が生じることがある。このとき、隙間に充填された液状ガスケットが過大な引張変形を受けて、液状ガスケットのシール性が損なわれることがある。
【0008】
このような問題を解消すべく、従来のエンジンのシール構造では、シリンダブロックとシリンダヘッドとチェーンカバーとの合わせ部におけるシリンダブロックの内面側の隅角部に、液状ガスケットを充填保持する保持凹部としての切欠部を形成してあるものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−188375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来技術においては、シリンダブロックの上向き接合面とシリンダヘッドの下向き接合面との間に固体ガスケットを挟んで、シリンダブロックにシリンダヘッドを組付け、チェーンカバーの横向き接合面に、チェーンカバーとシリンダブロックおよびシリンダヘッドとの隙間を塞ぐのに必要な量よりも少し多めの液状ガスケットを塗布し、組付けられたシリンダブロックおよびシリンダヘッドにチェーンカバーを組付ける。
【0011】
このとき、チェーンカバーの横向き接合面に塗布された液状ガスケットが、シリンダブロックの横向き接合面およびシリンダヘッドの横向き接合面に接触して、チェーンカバーとシリンダブロックおよびシリンダヘッドとの隙間を塞ぐとともに、チェーンカバーとシリンダブロックおよびシリンダヘッドとの隙間からはみ出た余分な液状ガスケットがシリンダブロックの切欠部に押し込み充填される。
【0012】
エンジン作動時において、合わせ部におけるチェーンカバーの横向き接合面とシリンダブロックの横向き接合面との間やシリンダヘッドの下向き接合面とシリンダブロックの上向き接合面との間に隙間が生じたとしても、切欠部に充填された液状ガスケットがそれら隙間に回り込む。これにより、液状ガスケットのシール性を維持することができる。
【0013】
しかし、チェーンカバーの横向き接合面に液状ガスケットを塗布し、組付けられたシリンダブロックおよびシリンダヘッドにチェーンカバーを組付けるだけでは、液状ガスケットが切欠部に確実に充填されない虞があった。
【0014】
また、シリンダブロックの外面側に切欠部を形成してあるため、実際に液状ガスケットが切欠部に十分に充填されているか否かを確認できなかった。
【0015】
本発明の目的は、合わせ部に液状ガスケットを確実に充填保持することができるエンジンのシール構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のエンジンのシール構造の第1特徴構成は、シリンダブロックと、そのシリンダブロックに第1シール部材を介して組付けられるシリンダヘッドと、組付けられた前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドに第2シール部材を介して組付けられるチェーンカバーと、を備え、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドと前記チェーンカバーとの合わせ部の外面側に、液状ガスケットを充填保持する保持凹部を形成した点にある。
【0017】
本構成によれば、シリンダブロックに第1シール部材を介してシリンダヘッドを組付け、組付けられたシリンダブロックおよびシリンダヘッドに第2シール部材を介してチェーンカバーを組付ける。シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーを組付けた後に、保持凹部に液状ガスケットを充填する。これにより、液状ガスケットを合わせ部に対して確実に充填塗布することができる。
【0018】
さらに、保持凹部を備えていることで、ここに液状ガスケットを充填する際に、液状ガスケットが良好に保持され、液状ガスケットが保持凹部から垂れるのを防止することができる。また、液状ガスケットの塗布範囲を容易に把握できるので、塗布作業が簡単になり、保持凹部に液状ガスケットを充填したことを確認することができる。加えて、必要に応じて保持凹部に液状ガスケットを再充填することも可能である。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、前記保持凹部の形成面が、前記合わせ部を取り囲む状態に連続して形成した点にある。
【0020】
本構成によれば、エンジン作動時等に、合わせ部におけるチェーンカバーとシリンダブロックとの間や、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間のシール性が損なわれることがあったとしても、保持凹部に充填された液状ガスケットが合わせ部の周囲を完全にシールしているから、合わせ部のシール効果を高めることができる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、前記保持凹部が、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドと前記チェーンカバーとの外面から突出する堤部を、前記合わせ部を取り囲む状態に形成して構成した点にある。
【0022】
本構成によれば、シリンダブロックとシリンダヘッドとチェーンカバーとの外面から堤部を突出させて保持凹部を形成すると、これら部材間の突合せ部の対向面積を維持しつつ、さらに各部材の表面上に液状ガスケットによるシール部を形成することができる。よって、合わせ部のシール効果が更に高まる。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、前記堤部を連続して形成してある点にある。
【0024】
本構成のように、堤部を連続して形成することで、例えばスクレーパ等を用いて、合わせ部の隙間に液状ガスケットを押し込む場合でも、液状ガスケットが堤部の外部に漏れ出ることがない。その結果、液状ガスケットが密充填され、合わせ部のシール効果をさらに高めることができる。
【0025】
ここで、堤部が連続して形成されるとは、堤部同士が完全に当接している状態を含むことは勿論のこと、その他にも、上記のごとく、液状ガスケットを押し込み充填する場合に、堤部同士の隙間から液状ガスケットが漏れ出ない程度に堤部同士の間隔が近接している状態をも含む。
【0026】
本発明の第5特徴構成は、前記堤部の上面が、同一平面上に位置する点にある。
【0027】
本構成によれば、堤部の上面が、同一平面上に位置するので、スクレーパ等を堤部の上面に当てつつ滑らせて、液状ガスケットを堤部の上面と同じ高さに均すことによって、合わせ部の隙間に液状ガスケットを容易に押し込むことができる。さらに、堤部が、液状ガスケットを保持する機能を有するだけでなく、液状ガスケットを塗布したり、不要な液状ガスケットを掻き取る際のガイド機能も有するため、所定量の液状ガスケットを充填し易くなる。さらに、液状ガスケットを塗布したり、不要な液状ガスケットを掻き取る際に、第1シール部材を傷つけることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態におけるエンジンの要部を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態における堤部に液状ガスケットを充填した状態を示す側面図である。
【図3】第1実施形態におけるエンジンの組付け手順の各工程を示す図である。
【図4】第2実施形態におけるエンジンの組付け手順の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るエンジンのシール構造について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、エンジンの要部を示す斜視図である。図2は、堤部に液状ガスケットを充填した状態を示す側面図である。図3は、エンジンの組付け手順の各工程を示す図である。
【0030】
(エンジン各部の構成)
図1に示すように、エンジンEは、シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、チェーンカバー3とを設けて構成してある。シリンダヘッド1及びチェーンカバー3の上方には、シリンダヘッドカバー4が取り付けられている。シリンダブロック2及びチェーンカバー3の下方には、オイルパン5が取り付けられている。
【0031】
前記チェーンカバー3は、シリンダヘッド1及びシリンダブロック2に対する所定厚さの接続フランジ6を備えている。当該接続フランジ6には、連結用の取付ボルト座6aを形成してある。シリンダヘッド1及びシリンダブロック2のチェーンカバー3に対する横向き接合面1b,2bには、接続フランジ6の取付ボルト座6aに対向するボルト穴(図示しない)を形成してある。
【0032】
前記シリンダヘッド1、シリンダブロック2、およびチェーンカバー3は、金属のダイカスト鋳造品である。シリンダヘッド1およびチェーンカバー3は、軽量で熱伝導性が高いアルミニウム合金が好ましい。シリンダブロック2は、一般に、強度が大きく耐磨耗性が高い鋳鉄が用いられる。しかし、鋳鉄は、重量で熱伝導性が低いという問題がある。そこで、強度や耐磨耗性を維持しつつ軽量化および熱伝導性の向上を図るために、シリンダブロック2のシリンダ部分を鋳鉄のスリーブで構成し、他の部分をアルミニウム合金で構成したり、シリンダブロック2をアルミニウム合金で構成し、シリンダブロック2のシリンダ部分にめっき処理やプラズマコーティング処理を施してもよい。
【0033】
図1〜図3に示すように、本発明によるエンジンのシール構造は、シリンダヘッド1が固体ガスケット7a(第1シール部材の一例)を挟んでシリンダブロック2の上部に接合された第1接合部7と、チェーンカバー3がFIPG(Formed In Place Gasket)などの液状ガスケット8a(第2シール部材の一例)を挟んでシリンダブロック2およびシリンダヘッド1の側部に接合された第2接合部8とを備えている。
【0034】
前記第1接合部7は、シリンダヘッド1の扁平な下向き接合面1aとシリンダブロック2の扁平な上向き接合面2aとの間に、固体ガスケット7aを挟んで、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とを図示しないボルトで連結してある。
【0035】
前記第2接合部8は、チェーンカバー3が備えている接続フランジ6の扁平な横向き接合面3aと、シリンダヘッド1の扁平な横向き接合面1b及びシリンダブロック2の扁平な横向き接合面2bとの間に、液状ガスケット8aを挟んで、シリンダヘッド1及びシリンダブロック2とチェーンカバー3とを接続フランジ6の取付ボルト座6aに挿通したボルトで連結してある。
【0036】
エンジン作動時には、シリンダヘッド1の壁部等が高温の燃焼ガスに曝される。特に、シリンダヘッド1はシリンダブロック2に較べて高温になり易く、熱膨張し易い。このため、シリンダヘッド1とシリンダブロック2との間でエンジン長手方向の相対変位が生じて、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との合わせ部11におけるチェーンカバー3の横向き接合面3aと、シリンダブロック2の横向き接合面2bとの間に隙間が生じることがある。このとき、隙間に充填された液状ガスケット8aが過大な引張変形を受けて、液状ガスケット8aのシール性が損なわれることがある。
【0037】
(保持凹部)
第1接合部7と第2接合部8とが出合う箇所には、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との合わせ部11が形成されている。図1乃至図3には、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との外面に、合わせ部11を取り囲む環状の堤部12を突出形成して、液状ガスケット13を充填保持する保持凹部Aを構成した例を示す。
【0038】
具体的には、チェーンカバー3の外面には、合わせ部11を中心とする半円状の左側の堤部分12aが形成されている。シリンダヘッド1の外面の隅角部には、合わせ部11を中心とする1/4円状の右上側の堤部分12bが形成されている。シリンダブロック2の外面の隅角部には、合わせ部11を中心とする1/4円状の右下側の堤部分12cが形成されている。
【0039】
フライス加工により、チェーンカバー3の横向き接合面3a、シリンダヘッド1の下向き接合面1aおよび横向き接合面1b、シリンダブロック2の上向き接合面2aおよび横向き接合面2bを面一にする。このため、左側の堤部分12aと右上側の堤部分12bとの間には、チェーンカバー3の横向き接合面3aとシリンダヘッド1の横向き接合面1bとの間隔d1と同じ間隔が開くことになる。また、左側の堤部分12aと右下側の堤部分12cとの間には、チェーンカバー3の横向き接合面3aとシリンダブロック2の横向き接合面2bとの間隔d2と同じ間隔が開くことになる。また、右上側の堤部分12bと右下側の堤部分12cとの間には、シリンダヘッド1の下向き接合面1aとシリンダブロック2の上向き接合面2aとの間隔d3と同じ間隔が開くことになる。
【0040】
このように、隣り合う堤部分12a〜12c同士の間には夫々ある程度の隙間が存在する場合がある。しかし、これら隙間は非常にわずかであり、これら堤部分12a〜12cは実質的に周方向に連続して形成してある。
【0041】
前記堤部12は、リング状の上面14と、円筒状の外周面15と、円筒状の内周面16とを備えている。堤部の上面14が、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との外面と例えば平行な(上下方向に沿う)同一平面上に位置する。これにより、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との外面から堤部12があまり突出しないようにしながら、外部の部品との干渉を抑制することができる。堤部12の内方側には、液状ガスケット13を塗布する円状の塗布面17が形成されている。堤部12の塗布面17および内周面15が、保持凹部Aの形成面を構成する。
【0042】
(エンジンの組付け手順)
図3に示すように、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とは、シリンダブロック2の上向き接合面2aとシリンダヘッド1の下向き接合面1aとの間に固体ガスケット7aを挟んでボルトで連結接合する(図3(a)参照)。
【0043】
チェーンカバー3の横向き接合面3aに液状ガスケット8aを塗布し、シリンダブロック2およびシリンダヘッド1とチェーンカバー3とをボルトで連結して接合する(図3(b)を参照)。
【0044】
このとき、チェーンカバー3の横向き接合面3aに塗布された液状ガスケット8aは、シリンダブロック2の横向き接合面2bおよびシリンダヘッド1の横向き接合面1bに接触する。
【0045】
しかし、工作精度や組付け精度等によって合わせ部11におけるチェーンカバー3とシリンダブロック2との間やシリンダヘッド1とシリンダブロック2との間にわずかな隙間が存在することがある。このとき、液状ガスケット13を十分に充填できないことがある。
【0046】
そこで、シリンダブロック2、シリンダヘッド1、およびチェーンカバー3を組付けた後に、堤部12の内部に液状ガスケット13を充填して、スクレーパ等を堤部12の上面に当てつつ滑らせる(図3(c),(d)を参照)。これにより、合わせ部11の隙間に液状ガスケット13を押込充填することができる。その後、堤部12の内部に充填した液状ガスケット13が固化して、ボタン状のシール部材が合わせ部11を取り囲む状態で形成される。これにより、エンジン作動時において、合わせ部11のシール性が損なわれることがあったとしても、ボタン状のシール部材が合わせ部11を取り囲んでその周囲を完全にシールしているから、合わせ部11のシール効果を維持することができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
図4に、上記堤部とは異なる形態の保持凹部を例示する。この実施形態では、第1実施形態の構成と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明を省略する。
【0048】
(保持凹部)
ここでは、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とチェーンカバー3との外面に、合わせ部11を取り囲む四角錐状の切欠部21を形成し、液状ガスケット13を充填保持する保持凹部Aを構成してある。
【0049】
具体的には、チェーンカバー3の外面には、2つの三角状の傾斜面22a,22bを有する断面形状がV字状の切込部22が形成してある。シリンダヘッド1の外面の隅角部には、1つの三角状の傾斜面23aを有する右上側の面取り部23が形成してある。シリンダブロック2の外面の隅角部には、1つの三角状の傾斜面24aを有する右下側の面取り部24が形成してある。傾斜面22a,22b,23a,24aが四角錐状の切欠部21の側面を構成してある。また、傾斜面22a,22b,23a,24aが液状ガスケット13を塗布する塗布面および保持凹部Aの形成面を構成してある。これら切込部22および面取り部23,24は、周方向に連続している。
隣り合う切込部22および面取り部23,24同士の間には夫々隙間が存在する。しかし、これら隙間は非常にわずかである。
【0050】
(エンジンの組付け手順)
図4に示すように、シリンダブロック2の上向き接合面2aとシリンダヘッド1の下向き接合面1aとの間に固体ガスケット7aを挟んで、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とをボルトで連結して接合する(図4(a)を参照)。
【0051】
チェーンカバー3の横向き接合面3aに液状ガスケット8aを塗布し、シリンダブロック2およびシリンダヘッド1とチェーンカバー3とをボルトで連結して接合する(図4(b)を参照)。
このとき、チェーンカバー3の横向き接合面3aに塗布された液状ガスケット8aは、シリンダブロック2の横向き接合面2bおよびシリンダヘッド1の横向き接合面1bに接触する。
【0052】
シリンダブロック2、シリンダヘッド1、およびチェーンカバー3を組付けた後に、切欠部21の内部に液状ガスケット13を充填する(図4(c),(d)を参照)。
【0053】
〔その他の実施形態〕
(1)上記各実施形態では、第1シール部材が固体ガスケット7aで、第2シール部材が液状ガスケット8aである構成を例示した。しかし、このような構成に限られるものではなく、第1シール部材が液状ガスケットで、第2シール部材が固体ガスケットであってもよく、第1シール部材および第2シール部材が液状ガスケットであってもよく、第1シール部材および第2シール部材が固体ガスケットであってもよい。さらに、液状のシール部材としては液状ガスケットに限られるものではなく、各種液状シール剤が適用可能である。
【0054】
(2)隣り合う堤部分12a〜12cについては、隙間が大きく、堤部分12a〜12cが周方向に断続的に形成してあってもよい。これにより、隣り合う堤部分12a〜12c同士の干渉を防止することができる。このとき、堤部12の塗布面17および堤部分12a〜12cの内方側の面が、保持凹部Aの形成面を構成してある。
【0055】
(3)上記第1実施形態では、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との外面に、環状の堤部12を突出形成する構成を例示した。しかし、堤部12の形状は、環状に限られるものではなく、多角形状に構成してもよく、形状は特に限定されない。
【0056】
(4)上記第2実施形態では、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とチェーンカバー3との外面に、四角錐状の切欠部21を切り欠く構成を例示した。しかし、切欠部21の形状は、四角錐状に限られるものではなく、多角錐体状や円錐状や半球状に構成してもよく、形状は特に限定されない。
【0057】
(5)上記第1実施形態では、堤部の上面14が、上下方向に沿う同一平面上に位置する構成を例示した。しかし、堤部の上面14が、下方に向かうほど堤部の突出量が大きくなるように上下方向から傾斜する同一平面上に位置すれば、液垂れを一層防止し易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、シリンダブロックと、そのシリンダブロックに第1シール部材を介して組付けられるシリンダヘッドと、組付けられた前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドに第2シール部材を介して組付けられるチェーンカバーとを備える各種のエンジンのシール構造に適応可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 シリンダヘッド
2 シリンダブロック
3 チェーンカバー
7a 第1シール部材
8a 第2シール部材
11 合わせ部
12 堤部
13 液状ガスケット
21 切欠部
A 保持凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
そのシリンダブロックに第1シール部材を介して組付けられるシリンダヘッドと、
組付けられた前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドに第2シール部材を介して組付けられるチェーンカバーと、を備え、
前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドと前記チェーンカバーとの合わせ部の外面側に、液状ガスケットを充填保持する保持凹部を形成してあるエンジンのシール構造。
【請求項2】
前記保持凹部の形成面が、前記合わせ部を取り囲む状態に連続して形成してある請求項1に記載のエンジンのシール構造。
【請求項3】
前記保持凹部が、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドと前記チェーンカバーとの外面から突出する堤部を、前記合わせ部を取り囲む状態に形成して構成してある請求項2に記載のエンジンのシール構造。
【請求項4】
前記堤部を連続して形成してある請求項3に記載のエンジンのシール構造。
【請求項5】
前記堤部の上面が、同一平面上に位置する請求項3または4に記載のエンジンのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−169278(P2011−169278A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35155(P2010−35155)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】