説明

エンジンの制御装置および制御方法

【課題】エンジンとフライホイールとの共振による振動を精度よく低減する。
【解決手段】ECUは、クランクシャフトがクランク角で10度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフトの第1回転数10NEを算出するステップ(S100)と、クランクシャフトが180度だけ回転するために要する時間から、第2回転数180NEを算出するステップ(S102)と、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第1しきい値より大きい場合(S110にてYES)、スロットルバルブを閉じるステップ(S112)と、差ΔNEが第2しきい値より大きい場合(S120にてYES)、燃料噴射量を低減するステップ(S134)と、差ΔNEが第3しきい値より大きい場合(S130にてYES)、燃料噴射を停止するステップ(S132)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置および制御方法に関し、特に、エンジンの振動を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力軸には、フライホイールが連結されている。エンジンはフライホイールを介して変速機に連結される。変速機に伝達されるエンジンの振動を低減するため、デュアルマスフライホイール(DMF: Dual Mass Flywheel)が用いられる車両がある。デュアルマスフライホイールは、エンジンの出力軸に連結される1次マスと、バネ(ダンパ)を介して1次マスに連結される2次マスとから構成される。デュアルマスフライホイールにより、エンジンの出力軸の回転変動が吸収される。そのため、たとえばアイドル時における振動が低減される。
【0003】
ところが、デュアルマスフライホイールはバネを有するため、デュアルマスフライホイール自体が振動し得る。たとえば、ディーゼルエンジンの出力軸回転数の低下時において、デュアルマスフライホイールの共振点付近でISC(Idle Speed Control system)により燃料の噴射量が増量されると、ディーゼルエンジンとデュアルマスフライホイールとが共振し得る。このような振動を低減するため、デュアルマスフライホイールの角速度に応じてエンジンの出力を制御する技術がある。
【0004】
特開平2−233828号公報(特許文献1)は、フライホイールの1次および2次質量の角速度差に相当する信号を出力する機構を設け、この速度差信号を燃料供給量制御部に入力し、内燃機関の出力に生じる不要な振動を抑制する振動抑制装置を開示する。
【特許文献1】特開平2−233828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デュアルマスフライホイールは、1次マスと2次マスとの間に設けられたバネの弾性により振動を吸収するものである。すなわち、デュアルマスフライホイールは、1次マスと2次マスとの角速度差により振動を吸収するものである。したがって、エンジンとデュアルマスフライホイールとが共振していなくても、1次マスと2次マスとの角速度差が生じ得る。そのため、角速度差では、エンジンとデュアルマスフライホイールとが共振しているか否かを区別し難い。よって、特開平2−233828号公報に記載の振動抑制装置では、エンジンの出力が誤って低減されたり増大されたりし得る。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、振動を精度よく低減することができるエンジンの制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るエンジンの制御装置は、フライホイールが出力軸に連結されるエンジンの制御装置である。この制御装置は、エンジンの出力軸がクランク角についての第1の間隔分だけ回転するために要する時間から、出力軸の第1の回転数を算出するための第1の算出手段と、エンジンの出力軸が、第1の間隔よりも長い第2の間隔分だけ回転するために要する時間から、出力軸の第2の回転数を算出するための第2の算出手段と、第1の回転数と第2の回転数との差がしきい値よりも大きい場合、エンジンの出力が低下するように制御するための制御手段とを備える。第4の発明に係るエンジンの制御方法は、第1の発明に係るエンジンの制御装置と同様の要件を備える。
【0008】
この構成によると、エンジンの出力軸がクランク角についての第1の間隔分だけ回転するために要する時間から、出力軸の第1の回転数が算出される。エンジンの出力軸が、第1の間隔よりも長い第2の間隔分だけ回転するために要する時間から、出力軸の第2の回転数が算出される。これにより、エンジンの出力軸回転数が安定している場合には略同じになり、エンジンの出力軸回転数が不安定である場合には異なり得る第1の回転数および第2の回転数を得ることができる。そのため、第1の回転数および第2の回転数を比較することにより、エンジンとフライホイールとが共振しているか否かを判定し易くすることができる。第1の回転数と第2の回転数との差がしきい値よりも大きい場合、エンジンとフライホイールとが共振しているといえる。そのため、エンジンの出力が低下するように制御される。これにより、振動を低減することができる。その結果、振動を精度よく低減することができるエンジンの制御装置もしくは制御方法を提供することである。
【0009】
第2の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御手段は、出力軸の回転数の低下速度が大きいほど、エンジンにおいて噴射される燃料をより低減することにより、エンジンの出力が低下するように制御するための手段を含む。第5の発明に係るエンジンの制御方法は、第2の発明に係るエンジンの制御装置と同様の要件を備える。
【0010】
この構成によると、出力軸の回転数の低下速度が大きいほど、エンジンにおいて噴射される燃料がより低減される。これにより、振動をより確実に低減することができる。
【0011】
第3の発明に係るエンジンの制御装置においては、第1または第2の発明の構成に加え、フライホイールは、出力軸に連結される第1の部材と、弾性部材を介して第1の部材に連結される第2の部材とを含む。第6の発明に係るエンジンの制御方法は、第3の発明に係るエンジンの制御装置と同様の要件を備える。
【0012】
この構成によると、弾性部材を介して第1の部材に連結される第2の部材とを含むデュアルマスフライホイールが連結されるエンジンにおいて発生する振動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、エンジン100で発生した駆動力が、クラッチ200、変速機300、デファレンシャルギヤ400およびドライブシャフト402を介して車輪404に伝達されることにより走行する。エンジン100、クラッチ200および変速機300は、ECU(Electronic Control Unit)500により制御される。
【0015】
エンジン100は、ディーゼルエンジンである。なお、ディーゼルエンジンの代わりに、ガソリンエンジンを用いるようにしてもよい。クラッチ200は、エンジン100のクランクシャフト600に連結されている。クラッチ出力軸202は、スプライン310を介して変速機300の入力軸302に連結されている。
【0016】
変速機300は、常時噛合い式のギヤトレーンから構成されている。変速機300におけるギヤ段の選択は、アクチュエータ304によりシフトフォークシャフトを摺動させることにより行なわれる。アクチュエータ304は、油圧により作動するものであってもよく、電力により作動するものであってもよい。なお、ダイレクトシリンダを用いたアクチュエータによりギヤ段の選択を行なってもよい。また、手動変速機を用いるようにしてもよい。
【0017】
ECU500には、アクセル開度センサ502、ポジションセンサ504、車速センサ506、タイミングロータ508の外周に対向して設けられたクランクポジションセンサ510、入力軸回転数センサ512および出力軸回転数センサ514から信号が送信される。
【0018】
アクセル開度センサ502は、アクセルペダルのアクセル開度を検出する。ポジションセンサ504は、シフトレバーのシフトポジションを検出する。車速センサ506は、車速を検出する。クランクポジションセンサ510はエンジン100の出力軸回転数(エンジン回転数)NEを検出する。入力軸回転数センサ512は、変速機300の入力軸302の回転数NIを検出する。出力軸回転数センサ514は、変速機300の出力軸306の回転数NOを検出する。
【0019】
ECU500は、これらのセンサから送信された信号、メモリ(図示せず)に記憶されたプログラムおよびマップなどに基づいて演算処理を行なう。これにより、ECU500は、エンジン100、クラッチ200および変速機300を制御する。
【0020】
図2を参照して、エンジン100についてさらに説明する。エンジン100に吸入される空気は、エアクリーナ102によりろ過され、ターボチャージャのコンプレッサ104により圧縮される。圧縮された空気は、インタークーラ106により外気との間で熱交換させられて冷却され、吸気管108およびインテークマニホールド110を通り、燃焼室内に導入される。燃焼室内に導入される空気のうち、新気の量は、スロットルバルブ112により制御される。スロットルバルブ112は、アクチュエータにより作動する電子スロットルバルブである。スロットルバルブ112の開度は、ECU500により制御される。
【0021】
燃焼室には、サプライポンプ114により加圧され、コモンレール116に蓄えられた燃料が、インジェクタ118により噴射される。燃焼室内で、空気と燃料との混合気が燃焼することにより、エンジン100は駆動力を発生する。
【0022】
燃焼後の混合気、すなわち排気ガスは、エギゾーストマニホールド120に導かれ、ターボチャージャのタービン122を通り抜けた後、触媒124により浄化され、車外に排出される。
【0023】
排気ガスの一部は、エギゾーストマニホールド120に連結されたEGRパイプ126を介して再循環させられる。EGRパイプ126を流れる排気ガスは、酸化触媒128を通り抜け、EGRクーラ130により冷却水との間で熱交換させられて冷却される。冷却された排気ガスは、EGRバルブ132を介して、スロットルバルブ112よりも下流で、吸気側に再循環させられる。
【0024】
再循環させられる排気ガスの量(EGR量)は、EGRバルブ132の開度により調整される。EGRバルブ開度は、EGRバルブリニアソレノイド134により制御される。通常時、EGRバルブ開度は、エンジン100のトルクが高いほどEGRバルブ132を閉じるように、すなわちEGR量が少なくなるように制御される。具体的には、EGRにより変化する吸気酸素濃度が、エンジン100の状態(エンジン回転数NE、過給圧、各部温度、負荷、吸入空気量)に応じた目標値になるように、EGRバルブリフトセンサ136を用いて検出されたEGRバルブ開度がECU500に入力されて、EGRバルブ開度がフィードバック制御される。なお、EGRバルブ132の作動方式は、EGRバルブリニアソレノイド134によるもの以外に、負圧式やモータ式であってもよい。
【0025】
図3を参照して、クラッチ200についてさらに説明する。クラッチ200は、乾式単板式の摩擦クラッチである。図3に示すように、クラッチ200は、クラッチ出力軸202と、クラッチ出力軸202に配設されたクラッチディスク204と、クラッチハウジング206と、クラッチハウジング206に配設されたプレッシャプレート208と、ダイヤフラムスプリング210と、クラッチレリーズシリンダ212と、レリーズフォーク214と、レリーズスリーブ216とを含む。
【0026】
ダイヤフラムスプリング210が、プレッシャプレート208を図3において右方向に付勢することにより、クラッチディスク204が、エンジン100のクランクシャフト600に取り付けられたフライホイール602に押付けられ、クラッチが係合される。
【0027】
クラッチレリーズシリンダ212が、レリーズフォーク214を介して図3において右方向へ、レリーズスリーブ216を移動させることにより、ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動する。ダイヤフラムスプリング210の内端部が図3において右方向へ移動すると、プレッシャプレート208が図3において左方向に移動し、クラッチディスク204とフライホイール602とが離れてクラッチが解放される。
【0028】
クラッチレリーズシリンダ212は、リザーバ218から油圧ポンプ220により汲み上げられた作動油の油圧が、クラッチソレノイドバルブ222を介して供給されることにより作動する。クラッチソレノイドバルブ222は、クラッチレリーズシリンダ212に対する油圧の供給および排出を切換える。クラッチソレノイドバルブ222は、ECU500により制御される。
【0029】
クラッチレリーズシリンダ212に油圧が供給されると、クラッチレリーズシリンダ212のピストンが図3において左方向に移動し、レリーズスリーブ216が図3において右方向へ移動してクラッチが解放される。クラッチレリーズシリンダ212のピストンの位置(クラッチストローク)は、クラッチストロークセンサ516により検出される。クラッチストロークセンサ516の検出結果を表す信号は、ECU500に送信される。
【0030】
ECU500は、クラッチストロークセンサ516から送信された信号に基づいて、クラッチ200が解放状態にあるか、係合状態にあるか、半係合状態にあるかを検出する。なお、クラッチ200を電力により作動するようにしてもよい。また、クラッチペダルを運転者が操作することによりクラッチ200を係合したり解放したりするようにしてもよい。
【0031】
ECU500には、クラッチストロークセンサ516に加えて、ブレーキスイッチ518から信号が入力される。ECU500は、ブレーキスイッチ518から入力される信号に基づいて、ブレーキペダル520が踏まれているか否かを判定する。
【0032】
フライホイール602は、1次マス611と2次マス612とを備えるデュアルマスフライホイールである。1次マス611は、クランクシャフト600に連結される。2次マス612は、バネ(ダンパ)614を介して1次マス611に連結される。
【0033】
図4を参照して、本実施の形態におけるECU500に機能について説明する。なお、以下に説明するECU500の機能は、ソフトウエアにより実現するようにしてもよく、ハードウエアにより実現するようにしてもよい。
【0034】
ECU500は、第1回転数算出部701と、第2回転数算出部702と、スロットルバルブ制御部710と、噴射量低減部712と、噴射停止部714とを備える。
【0035】
第1回転数算出部701は、図5に示すように、クランクシャフト600がクランク角で10度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第1回転数10NE[rpm]を算出する。なお、10度以外のクランク角の間隔を用いるようにしてもよい。
【0036】
第2回転数算出部702は、図5に示すように、クランクシャフト600がクランク角で180度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第2回転数180NE[rpm]を算出する。たとえば、クランクシャフト600が60度だけ回転するために要する時間を3回分合計した時間から、第2回転数180NEが算出される。なお、180度以外のクランク角の間隔を用いるようにしてもよい。
【0037】
スロットルバルブ制御部710は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差(|180NE−10NE|)ΔNEが第1しきい値より大きい場合、スロットルバルブ112を閉じることによりエンジン100の出力トルクが低減するように制御する。
【0038】
噴射量低減部712は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第2しきい値(第2しきい値>第1しきい値)より大きい場合、インジェクタ118からの燃料噴射量を低減することによりエンジン100の出力トルクが低減するように制御する。
【0039】
燃料噴射量の低減量は、エンジンの出力軸回転数NEの低下速度(低下率)dmfnespd[rpm/s]に応じて定められる。低下速度は、下記の式1により算出される。式1中、NE1は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第1しきい値より大きくなった際の出力軸回転数NEである。NE2は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第2しきい値より大きくなった際の出力軸回転数NEである。ΔTは、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第1しきい値より大きくなってから、第2しきい値より大きくなるまでの時間である。
【0040】
dmfnespd=(NE1−NE2)/ΔT…(1)
なお、「NE1」および「NE2」に用いられる出力軸回転数NEは、通常用いられる方法により検出される。すなわち、「NE1」および「NE2」に用いられる出力軸回転数NEは、クランクシャフト600が、設計者により予め設定された角度(たとえば10度)だけ回転するために要する時間から算出される。
【0041】
インジェクタ118からの燃料噴射量は、下記の式2により算出される。なお、式2中、「qfulldmf」は燃料噴射量の今回値、「qfulldmfol」は燃料噴射量の前回値、「QFLDMF」は噴射量減少係数である。
【0042】
qfulldmf=qfulldmfol−dmfnespd×QFLDMF…(2)
式1および式2から明らかなように、エンジン100の出力軸回転数NEの低下速度が大きいほど、燃料の低減量がより大きくなる。すなわち、エンジン100の出力軸回転数NEの低下速度が大きいほど、燃料がより低減される。
【0043】
噴射停止部714は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが第3しきい値(第3しきい値>第2しきい値)より大きい場合、インジェクタ118からの燃料噴射を停止することによりエンジン100の出力トルクが低減するように制御する。
【0044】
図6を参照して、本実施の形態においてECU500が実行するプログラムの制御構造について説明する。以下に説明するプログラムは予め定められた周期で繰り返し実行される。なお、ECU500により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
【0045】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU500は、クランクシャフト600がクランク角で10度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第1回転数10NEを算出する。
【0046】
S102にて、ECU500は、クランクシャフト600がクランク角で180度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第2回転数180NEを算出する。S104にて、ECU500は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEを算出する。
【0047】
S106にて、ECU500は、前提条件が満たされているか否かを判定する。エンジンの出力軸回転数NEがしきい値以下である条件が満たされており、かつ、ブレーキペダル520が踏まれているという条件、車速がしきい値以下であるという条件、エンジンの出力軸回転数NEがしきい値以下であって、かつクラッチ200が係合しているという条件、車両が登坂中であるという条件のうちの少なくともいずれか一つの条件が満たされている場合、前提条件が満たされていると判定される。なお、車両が登坂中であるか否かは周知の技術を利用すればよいためここではその詳細な説明は繰り返さない。前提条件が満たされていると(S106にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S106にてNO)、この処理は終了する。
【0048】
S110にて、ECU500は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第1しきい値より大きいか否かを判定する。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第1しきい値より大きい場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第1しきい値以下であると(S110にてNO)、処理はS120に移される。S112にて、ECU500は、スロットルバルブ112を閉じる。
【0049】
S120にて、ECU500は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第2しきい値より大きいか否かを判定する。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第2しきい値より大きい場合(S120にてYES)、処理はS122に移される。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第2しきい値以下であると(S120にてNO)、この処理は終了する。S122にて、ECU500は、エンジン100の出力軸回転数NEの低下速度を算出する。
【0050】
S130にて、ECU500は、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第3しきい値より大きいか否かを判定する。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第3しきい値より大きい場合(S130にてYES)、処理はS132に移される。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第3しきい値以下であると(S130にてNO)、処理はS134に移される。
【0051】
S132にて、ECU500は、インジェクタ118からの燃料噴射を停止する。S134にて、ECU500は、インジェクタ118からの燃料噴射量を低減する。
【0052】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置の動作について説明する。
【0053】
エンジン100の運転中、クランクシャフト600がクランク角で10度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第1回転数10NEが算出される(S100)。さらに、クランクシャフト600がクランク角で180度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフト600の第2回転数180NEが算出される(S102)。これにより、エンジン100の出力軸回転数NEが安定している場合には略同じになり、エンジン100の出力軸回転数NEが不安定である場合には異なり得る第1回転数10NEおよび第2回転数180NEを得ることができる。
【0054】
第1回転数10NEおよび第2回転数180NEを比較するために、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが算出される(S104)。
【0055】
ところで、フライホイール602として用いられるデュアルマスフライホイールは、1次マス611と2次マス612との間に設けられたバネ614の弾性により振動を吸収する。すなわち、デュアルマスフライホイールは、1次マス611と2次マス612との角速度差により振動を吸収する。したがって、エンジン100とデュアルマスフライホイールとが共振していなくても、図7に示すように、1次マス611と2次マス612との角速度差が生じ得る。そのため、角速度差では、エンジン100とデュアルマスフライホイールとが共振しているか否かを区別し難い。
【0056】
一方、第1回転数10NEおよび第2回転数180NEは、エンジン100の出力軸回転数NEが安定している場合には略同じになり、エンジン100の出力軸回転数NEが不安定である場合には異なり得る。そのため、図7に示すように、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEは、エンジン100とデュアルマスフライホイールとが共振した場合に特に大きくなり得る。よって、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEを用いる場合、角速度差を用いる場合に比べて、エンジン100とデュアルマスフライホイールとが共振したか否かを判定し易い。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEに応じて、エンジン100とデュアルマスフライホイールとの共振を抑制するための制御が実行される。
【0058】
前提条件が満たされている場合(S106にてYES)、第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第1しきい値より大きいか否かが判定される(S110)。
【0059】
第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第1しきい値より大きい場合(S110にてYES)、図8において実線で示すように、時間T1においてスロットルバルブ112が閉じられる(S112)。
【0060】
第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第2しきい値より大きい場合(S120にてYES)、エンジン100の出力軸回転数NEの低下速度が算出される(S122)。
【0061】
第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第3しきい値以下であると(S130にてNO)、図8において実線で示すように、時間T2においてインジェクタ118からの燃料噴射量が低減される(S134)。
【0062】
第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEが、第3しきい値より大きい場合(S130にてYES)、図8において実線で示すように、時間T3においてインジェクタ118からの燃料噴射が停止される(S132)。
【0063】
これにより、エンジン100の出力トルクを低減することができる。そのため、図9において実線で示すように、エンジン100とデュアルマスフライホイールとの共振による振動を低減することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、クランクシャフトがクランク角で10度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフトの第1回転数10NEが算出される。クランクシャフトがクランク角で180度だけ回転するために要する時間から、クランクシャフトの第2回転数180NEが算出される。第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEがしきい値より大きい場合、エンジンの出力が低下される。これにより、エンジンとデュアルマスフライホイールとの共振による振動を低減することができる。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のエンジンを示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のクラッチを示す概略構成図である。
【図4】ECUの機能ブロック図である。
【図5】クランク角を示す図である。
【図6】ECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】第1回転数10NEと第2回転数180NEとの差ΔNEおよび角速度差を示す図である。
【図8】スロットル開度および燃料噴射量の推移を示す図である。
【図9】エンジンの出力軸回転数の推移を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100 エンジン、118 インジェクタ、200 クラッチ、300 変速機、502 アクセル開度センサ、504 ポジションセンサ、506 車速センサ、508 タイミングロータ、510 クランクポジションセンサ、512 入力軸回転数センサ、514 出力軸回転数センサ、602 フライホイール、611 1次マス、612 2次マス、614 バネ、701 第1回転数算出部、702 第2回転数算出部、710 スロットルバルブ制御部、712 噴射量低減部、714 噴射停止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールが出力軸に連結されるエンジンの制御装置であって、
前記エンジンの出力軸がクランク角についての第1の間隔分だけ回転するために要する時間から、前記出力軸の第1の回転数を算出するための第1の算出手段と、
前記エンジンの出力軸が、前記第1の間隔よりも長い第2の間隔分だけ回転するために要する時間から、前記出力軸の第2の回転数を算出するための第2の算出手段と、
前記第1の回転数と前記第2の回転数との差がしきい値よりも大きい場合、前記エンジンの出力が低下するように制御するための制御手段とを備える、エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記出力軸の回転数の低下速度が大きいほど、前記エンジンにおいて噴射される燃料をより低減することにより、前記エンジンの出力が低下するように制御するための手段を含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記フライホイールは、
前記出力軸に連結される第1の部材と、
弾性部材を介して前記第1の部材に連結される第2の部材とを含む、請求項1または2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
フライホイールが出力軸に連結されるエンジンの制御装置であって、
前記エンジンの出力軸がクランク角についての第1の間隔分だけ回転するために要する時間から、前記出力軸の第1の回転数を算出するステップと、
前記エンジンの出力軸が、前記第1の間隔よりも長い第2の間隔分だけ回転するために要する時間から、前記出力軸の第2の回転数を算出するステップと、
前記第1の回転数と前記第2の回転数との差がしきい値よりも大きい場合、前記エンジンの出力が低下するように制御するステップとを備える、エンジンの制御方法。
【請求項5】
前記エンジンの出力が低下するように制御するステップは、前記出力軸の回転数の低下速度が大きいほど、前記エンジンにおいて噴射される燃料をより低減することにより、前記エンジンの出力が低下するように制御するステップを含む、請求項4に記載のエンジンの制御方法。
【請求項6】
前記フライホイールは、
前記出力軸に連結される第1の部材と、
弾性部材を介して前記第1の部材に連結される第2の部材とを含む、請求項4または5に記載のエンジンの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−144584(P2009−144584A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321955(P2007−321955)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】