説明

エンジン作業機

【課題】
製品寸法およびエンジン出力を従来と同等に維持しながら排気音を低減させ、マフラー側面が振動することによる振動音も低減させたエンジン作業機を提供する。
【解決手段】
エンジン36の駆動軸方向(Y方向)、排気口の開口方向(Z方向)、ピストンの動作方向(X方向)がそれぞれ略直交するよう構成されたエンジン36であって、マフラー4がエンジン36の排気口24近傍に締結され、マフラー4は上下方向に長い形状として、シリンダ下端部を通る鉛直面72よりも下方向に延ばし、更にエンジン36の中心方向に突出させる突出部32を設けて空間64の分の容積を確保した。マフラー4の形状を下方向に大きく延ばしたために、燃料タンク22を左側(−Z方向)にオフセットして配置し、左側端部を矢印80のように上に伸ばして空間68の部分を容積を確保した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主にエンジン作業機の動力源に用いられるエンジンの改良に関し、特に改良したマフラーを有するエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機、送風機、ヘッジトリマ、チェンソー、カッタなどの携帯型のエンジン作業機は屋外で使用されることが多い。そのため、特に市街地等の人口密集地域においては、騒音の抑制が課題となることが多く、ユーザから低騒音化への要求が高い。しかしながら、同時にエンジン作業機であるがゆえ小型化の要求も高い。エンジン作業機の動力源に用いられるエンジンは、駆動軸(クランク軸)に先端工具、冷却用のファン、手動始動装置などの被駆動装置が設置され、エンジンに多数の部品が隣接する高密度設計とされるのが一般的である。そのため、小型と低騒音を両立すべく、例えば特許文献1ではマフラーにおいて内部構造や排気ガスの排出口の構造上の工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−156802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1については、排気ガスの排出口を複数設けて、所定距離以上離隔して設けることで排気音の低減を図っている。しかしながら、マフラーにおいてはエンジンから高温・高圧ガスがマフラーに瞬時に噴出されることによる排気音の他に、高温・高圧ガスの噴出による圧力脈動でマフラー側面が振動することによる振動音が発生するため、従来よりも更なる排気音の低減を得ることが難しかった。さらに、エンジンの出力を従来と同等にするためには、排気ガスの背圧増加を防ぐ必要があるので、排出口の開口面積を一定以上に確保しなければならない。通常、マフラーにおいては排気音の騒音源は排出口となるので、この排出口の開口面積を小さくすることが排気音低減には望ましいが、上記の理由から、排出口の開口面積を小さくすることが難しく、更なる排気音低減効果を得ることが難しかった。
【0005】
この課題に対してエンジン作業機としては、小さな製品寸法、及び、十分なエンジン出力を維持しながら排気音を低減させることができるマフラーが望まれている。また、マフラーの壁面が振動することによる振動音の低減も望まれている。これらの課題をマフラー容積の拡大のみで対応しようとすると、例えば1dBの騒音低減をするにはマフラー容積を2倍以上にする必要があり、小型化が求められるエンジン作業機においては、設計難易度の上昇に対する効果が小さいという問題があった。また、尾管面積を縮小することで対応するには、例えば1dBの騒音低減を図るには尾管面積を半分以下にする必要があり、エンジン出力との両立が困難であった。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、マフラーから発生する騒音を更に低減することができるエンジン作業機を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、大全体の大きさをコンパクトに構成しつつマフラーの大型化を図ったエンジン作業機を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、エンジンの高出力化と低騒音化を両立するために、マフラーの容積と尾管面積の関係を最適に構成したエンジン作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、エンジンと、エンジンに供給される燃料を貯蔵する燃料タンクと、エンジンから排出される排気音を抑制するマフラーを有し、エンジンの駆動軸方向、排気口の開口方向、ピストンの動作方向がそれぞれ略直交するよう構成されたエンジン作業機であって、マフラーは、内部の膨張室の一つがエンジンの排気口に連結されるようにエンジンの排出口に締結され、締結位置においてピストンの移動方向と平行な締結平面よりもエンジン側に延在する突出部を有し、突出部がエンジンのピストンの移動方向において点火プラグから遠い側の端部近傍に配置され、排気口と対向するマフラー側面が締結平面と略平行となるように配置した。また、燃料タンクは、エンジンのクランクケースの下部であってマフラーの突出部の側方になるようにオフセットして設けるようにした。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、マフラーの容積がエンジンの排気量に対して17倍以上であり、マフラーの排出口に形成される尾管の開口面積が、排気量に対して0.3倍以上0.8倍以下とした。このエンジンは、ピストンが鉛直方向に往復移動するように配置され、エンジンの排気口の断面は略鉛直になるように位置し、マフラーの寸法は、厚さ方向<横方向<縦方向のように縦長の形状とした。マフラーの寸法の縦方向/横方向の比は1.5以上とすると好ましい。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、マフラーは、締結手段によりエンジンに締結され、エンジンから離れた側のマフラー側面およびエンジン排気口と対向するマフラー側面において、締結手段からピストンの移動方向において離間した位置にマフラー側面の剛性を高める手段を配置した。剛性を高める手段はネジとネジを貫通させる管であって、管はエンジンから離れた側のマフラー側面とエンジン排気口と対向するマフラー側面に固定される。マフラーの内部にはエンジン排気口と連通する第一膨張室と、排気ガスを大気中に排出するための排出口を有する第二膨張室を有し、第一膨張室と第二膨張室を接続する第三膨張室を設け、第三膨張室に排気ガス成分を浄化するための触媒を配置した。この第三膨張室は突出部の内部空間を含むように配置すると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1によれば、マフラーの一部にエンジン側に延在する突出部を設け、燃料タンクをエンジンのクランクケースの下部であってマフラーの突出部の側方にオフセットして設けるようにしたので、駆動軸の両端の各部に影響を与えることが少なく、点火プラグの交換作業等の妨げとなることが少なく、排気口の開口方向へのエンジン全長を大きくすることなくマフラー容積を効果的に増加させることができる。従って、コンパクトな構成で背圧低減および出力向上をし易くなり、更に、排気音の低減効果を得ることができる。
【0014】
請求項2によれば、マフラーの容積がエンジンの排気量に対して17倍以上であり、マフラーの排出口に形成される尾管の開口面積が、排気量に対して0.3倍以上0.8倍以下であるので、エンジンの出力を低下させることなく確実に騒音低減が可能となる。また、限られたスペース内でマフラーを大型化するという設計難易度の上昇に対して、大幅な低騒音効果と出力の維持という難易度に見合う効果が得られる。
【0015】
請求項3によれば、マフラーの寸法は、厚さ方向<横方向<縦方向のように縦長の形状としたので、エンジンの全長増加に直結する厚さ方向の増加を防止でき、エンジンの全長を最小とすることでコンパクトにできる。
【0016】
請求項4によればマフラーの縦方向/横方向の比は1.5以上であるので、一般的にピストン動作方向に最も長くなり易いエンジンとマフラーのレイアウトを合わせることで、エンジン作業機の更なるコンパクト化が実現できる。
【0017】
請求項5によれば、エンジンから離れた側のマフラー側面およびエンジン排気口と対向するマフラー側面において、締結手段からピストンの移動方向において離間した位置にマフラー側面の剛性を高める手段を配置したので、より広範囲に渡ってマフラー側面の剛性を高めることができるので、より一層マフラー側面の膜振動の振幅を抑制し、振動音を低減することができる。
【0018】
請求項6によれば、剛性を高める手段はネジとネジを貫通させる管であって、その管はエンジンから離れた側のマフラー側面とエンジン排気口と対向するマフラー側面に固定されるので、より効果的にマフラー側面の剛性を高めることができるので、より一層マフラー側面の膜振動の振幅を抑制し、振動音を低減することができる。さらに、マフラーをエンジン排気口近傍のみで締結する場合、マフラーが片持ち状態となってマフラーの振動が増大する懸念があるが、本構成ではこれを抑制することができ、振動による金属疲労を抑制し、耐久性を高めることができる。
【0019】
請求項7によれば、エンジン排気口と連通する第一膨張室と、排気ガスを大気中に排出するための排出口を有する第二膨張室を有し、第一膨張室と第二膨張室を接続する第三膨張室を設け、第三膨張室に排気ガス成分を浄化するための触媒を配置したので、触媒にて排気ガス成分を燃焼させることにより排気ガスのクリーン化を達成できる。
【0020】
請求項8によれば、第三膨張室は突出部の内部空間を含むように配置されるので、大きな容積が確保し易い突出部に触媒を配置することで、触媒を大きくする変更の場合でも対応できる。また、触媒を大型化した場合でも、マフラー側面との隙間を確保し易いため、触媒の熱がマフラー側面に伝わることを抑制できる。
【0021】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るエンジン作業機の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るエンジン作業機の右側面図である。
【図3】図2のA−A部の断面図である。
【図4】本発明の実施例に係るエンジン作業機の上面図であって、一部に図2のB−B部の断面を示す。
【図5】図2のC−C部の断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るエンジン作業機1のマフラー4と燃料タンク22の大きさと配置関係を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例に係るエンジン作業機1のマフラー4とエンジン36の大きさを説明するための側面図である。
【図8】マフラー容積一定の場合の、単位排気量あたりの尾管面積とエンジン出力の関係を示す図である。
【図9】尾管面積一定の場合の、単位排気量あたりのマフラー容積と騒音の関係を示す図である。
【図10】マフラー容積一定の場合の、単位排気量あたりの尾管面積と騒音の関係を示す図である。
【図11】単位排気量あたりのマフラー容積と尾管面積との関係を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係る断面図である(断面位置は図2のA−A部に相当する)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)は各図に示す方向であるとして説明する。また、マフラー単体で見た際の方向は、幅方向をY方向とし、厚さ方向をX方向とし、縦方向をZ方向であるとして説明する。
【0024】
図1は本発明の実施例に係るエンジン作業機1を刈払機に適用した例の外観を示す斜視図である。エンジン作業機1は、樹脂製のシリンダカバー3にエンジンが収容され、エンジンの左側(−Z方向)には、側部には気化器をカバーすると共に吸入する空気を濾過するエアクリーナー2が設けられ、エンジンの右側(+Z方向)にはマフラー4が設けられる。収容されるエンジンはいわゆる縦置きに配置され、後述するピストンの往復動方向がX方向となり、プラグキャップ34がエンジンの上部に位置する。エンジン作業機1の前方の出力軸側には、出力伝達機構をカバーする第二ボリュートケース9が取り付けられる。第二ボリュートケース9の先端(+Y方向)側には、装着される駆動軸(図示せず)を保持する挿入部39が設けられる。第二ボリュートケース9の下側にはエンジン作業機1を床等に置く際の支えとなる脚部9Aが設けられる。エンジン本体と第二ボリュートケース9の間には第一ボリュートケース8が設けられる。
【0025】
本実施例のマフラー4は、略直方体の基本形状をしており、その長手方向が縦方向(X方向)になるように配置される。これは限られたスペースにおいて効果的な排気音低減を行うため、マフラー4を縦方向に大きくしてその容積をできるだけ大きく確保したためである。マフラー4は、マフラー締結ボルト5A、5Bとマフラー締結ボルト6の3本のボルトによってエンジンに直接固定される。マフラー4の側部には、後述する冷却ファンを収容する第一ボリュートケース8の空気取入口29から空気を導入するための管路、つまり空気導入通路7が設けられる。略鉛直方向に配置されるマフラー外側面(エンジンから離れた側のマフラー側面)27には、広範囲に渡って剛性を高めるとともに、壁面の膜振動による振動音を低減するためのリブが設けられる。
【0026】
図2はエンジン作業機1を右側方から見た側面図である。マフラー4の縦方向(X方向)においてマフラー締結ボルト5A、5Bは、エンジンのクランク軸(B−B断面上に位置する)よりもプラグキャップ34に接続された点火プラグに近い側(B−B断面の上側)に配置される。マフラー締結ボルト6は、マフラー外側面27においてマフラー締結ボルト5A、5Bと点火プラグ12から遠い側のマフラーの下端部4Bを略2等分し、かつ、ピストンの移動方向Xと直交する駆動軸方向Y(マフラー単体の横方向)に関して、マフラーを略2等分する位置に配置される。本実施例ではマフラー締結ボルト6は、縦方向において駆動軸の軸線(駆動軸線)とほぼ同じ位置に配置される。このような配置により、広範囲に渡ってマフラー外側面27の剛性を高めることができるので、効果的にマフラー側面の膜振動の振幅を抑制し、振動音を低減することができる。
【0027】
エンジンの後方には、牽引ひもを巻回するリールをクラッチを介してエンジンの駆動軸に連結し、スターターノブ11によって牽引ひもを引くことによってエンジンを始動する手動式のスターター10が取り付けられる。図2ではその内部構造の記載を省略しているが、スターター10としては手動式のスターターだけでなく、リコイルスターターを用いるもの、バッテリによって電動モーターを駆動するもの等、公知の始動装置を使用することができる。
【0028】
本実施例では、ピストンの移動方向(±X方向)に関して、マフラー締結ボルト5A、5Bとマフラー締結ボルト6の距離L1、マフラー締結ボルト6と下端部4Bの距離L2を、およそL1:L2=4:6とした。また、駆動軸方向(Y方向)に関して、マフラー締結ボルト6とマフラーの前後両端部からの距離L3、L4は、およそL3:L4=4:6とした。このような構成とすることにより、マフラー外側面27において、マフラー締結ボルト6により広範囲に渡って剛性を高めることができ、マフラー外側面27の膜振動による振動音を低減することができる。また、マフラー4をシリンダ30に強く締め付けて固定できるため、マフラー4全体の振動を低減することができ、振動による締結部分の金属疲労を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【0029】
マフラー4からの排気ガスを排出させる尾管17は、X方向で見ると、B−B断面(エンジンの駆動軸を通る水平な面)より点火プラグ12に近い側に配置され、排気ガスの流出方向はEX1のごとく尾管17において駆動軸と同じ方向(B−B断面と平行)になるように構成される。尾管17によって大気へ開口する開口面積が形成される。本実施例のマフラー4において開口部は1つである。本実施例は尾管17の開口面積、言い換えればマフラー4の排出口の開口面積は、シリンダボアの面積の3%以下に設定した。このようにシリンダボアの面積に対して尾管17の開口面積を十分取ることで、出力低下を招くことなく、排気音抑制効果を得ることができる。
【0030】
エンジンを始動する場合には、通常、エンジン作業機1を地面に置いてスターター10のスターターノブ11を引くことによって始動操作を行う。本実施例では尾管17の位置がピストンの移動方向Xにおいて地面から所定の高さを確保できるので、地面上の石や草等の障害物よりも重力方向において上方の位置を確保し易く、自ずとマフラー排出口の近傍に石や草等の障害物となるものがないような構成となるため、スムーズに始動操作を行うことが可能となる。また、エンジン作業機1を地面に置いて暖機等のためにエンジンの回転数を上げた場合においても、地面上の塵や埃などを排気ガスによって舞い上げることが少ないので、作業者にとって塵や埃が周囲に舞い上がる煩わしさを緩和することができる。さらに、舞い上がった塵や埃がエンジンに吸引されエアクリーナー2に内包されたエアフィルタの目詰まりを進行させることを抑制することもできる。
【0031】
エンジン作業機1は作業者が手で扱う作業機であるため、作業中は重力方向においてエンジン作業機1が作業者の耳より下方に位置していることが多い。そのため、エンジン36のピストンの移動方向と重力方向が略一致する場合、尾管17から発生する排気音を少なくとも作業者の耳が位置する重力方向上方に向かって放出しないことで、作業者が感ずる排気音を低減することができる。好適には、マフラー排出口において、排気ガス流出方向と駆動軸の平行線の交差角が0°〜60°に設定されれば、排気ガスの流出方向EX1が少なくとも重力方向において作業者の耳に近付く方向である重力方向の上方に向かうことを抑制できるので、作業者が感ずる排気音を低減することができる。
【0032】
尚、上述した各比率や廃棄方向は上述したものに限られるわけではない。例えば、L1:L2は好適には4:6ないし6:4の範囲、L3:L4は好適には4:6ないし6:4の範囲に設定されるが良い。また、尾管17において、排気ガス流出方向EX2のごとく点火プラグ12から遠ざかる方向に向かうよう、即ちB−B断面と交差するように尾管17の向きを斜めにしても良く、EX1とEX2交差角θが0°〜60°に設定されるのが良い。
【0033】
図3は図2のA−A部の断面図である。エンジン36は、排気量21ccの2サイクル小型単気筒エンジンである。駆動軸20にはコンロッドを介してピストン19が連結され、ピストン19がシリンダ30の内部で上下に往復運動する。ピストン19の動作方向X、駆動軸方向Y、排気口の開口方向Zは互いに略直交している。シリンダ30には排気ガスをエンジン36の外部に排出するための排気口24が形成される。エンジンの吸入−圧縮−爆発−排気の行程は、公知の2サイクルエンジンと同じであるので、詳細な説明は省略する。本実施例では、シリンダ30は、シリンダ本体部、ヘッド部分、放熱フィンが、例えばアルミニウム合金で一体鋳造で形成され、シリンダ30の上部には点火プラグ12が取り付けられる。点火プラグ12への図示しない点火装置から所定のタイミングにてプラグキャップ34を介して高圧電流が供給される。
【0034】
シリンダカバー3は、例えばプラスチック製の覆いであり、運転時に高温になるシリンダ30を覆い、作業者がそれらに直接触れないようにしている。そのため、シリンダカバー3には多数の通風口が形成される。エンジン36には気化器23が設けられ、気化器23の左側(−Z方向)には、エアクリーナー2が設けられる。
【0035】
クランクケース21の下側(−Z方向)には燃料タンク22が配置される。エンジン36とマフラー4の間、及び、燃料タンク22とマフラー4の間には遮熱板38が介在させて、マフラー4の熱がエンジン36の冷却に影響しないように、また、マフラー4の輻射熱を遮断して燃料タンク22の温度上昇を抑制している。遮熱板38は、例えば薄いアルミニウムの板に断熱材を貼付けて構成される。従来のエンジン作業機においては、燃料タンク22はクランクケース21に下側であって、エンジン36の左右中心面を基準にすると左右対称になるように配置されることが多かった。これは燃料タンク22に貯蔵される混合ガソリン等の燃料の重さにより、エンジン作業機1の左右の重量バランスが崩れるのを防ぐためである。しかしながら、本実施例では、マフラー4を従来のエンジン作業機のマフラーに比べて上下方向に大きくして、従来の燃料タンクが位置している部分まで延びるように突出部をも設けるように構成された。そこで、本実施例では燃料タンク22の位置を左側(−Z方向)にオフセットさせることによって、下側に延びるマフラー4の占める空間を確保するとともにこれら重量バランスを調整するようにした。このマフラー4と燃料タンク22との配置関係については後述する。
【0036】
エンジン36の右側にはマフラー4が配置される。マフラー4には排気口24との連通部31が設けられ、連通部31の近傍に配置されたマフラー締結ボルト5A、5Bによって、シール性を確保するための遮熱板38を介在させて、シリンダ30の排気口24近傍に締結される。マフラー4はマフラー締結ボルト6によってクランクケース21に締結される。マフラー4はさらに円筒状のカラー16を貫通するマフラー締結ボルト6によってクランクケース21に固定される。カラー16及びマフラー締結ボルト6はエンジン36の排気口24と対向するマフラー外側面27の剛性を高める手段として機能する。
【0037】
シリンダ30およびクランクケース21からなるエンジン36と対向するマフラー内側面26は、排気口24とマフラー4の締結位置においてピストンの移動方向Xに平行な締結平面Mよりエンジン36側に延在する突出部32を有している。突出部32はピストンの移動方向Xに関して点火プラグ12から遠い下端部4B近傍に配置される。また、排気口24と対向するマフラー外側面27は締結平面Mと略平行であるよう構成される。なお、マフラー外側面27と締結平面Mの距離(マフラー4の厚さ方向距離)の最小値LAと最大値LBは、おおよそLA/LB=0.75の関係となっているが、LA/LB=0.7〜1.0の範囲に設定すると良い。
【0038】
マフラー4の内部には仕切り板37が設けられ、連通部31を有する第一膨張室13A、排気ガスの尾管17を有する第二膨張室13Bを隔てている。第一膨張室13A、第二膨張室13Bの間には、突出部32近傍に配置された追加膨張室である第三膨張室13Cが配置される。第三膨張室13Cは、板金で成型され、仕切り板37に溶接にて固定される鉄製の膨張室ケース15A、15Bによって形成される。第三膨張室13Cの内部には、排気ガス成分を燃焼によって浄化する触媒14が設けられ、膨張室ケース15A、15Bにはそれぞれ第一膨張室13A、第二膨張室13Bと連通する膨張室開口部25A、25Bが設けられる。ここで、触媒14は突出部32の近傍になるように配置される。このように第三膨張室13Cを配置することによって排気音の低減効果を高めることができる。また、第三膨張室13Cに触媒14を内包したことで、マフラー4の側壁に対する触媒14の露出面積を効果的に低減することができるので、触媒14を入れた場合でもマフラー4の壁面の温度上昇を効果的に抑制することができる。尚、触媒14は、それぞれステンレス製の円筒の内部にパラジウム、ロジウム等を蒸着させたハニカム状のステンレス箔を挿入して固定したHC、CO等を酸化させる酸化触媒としている。触媒14は、突出部32の内部空間に配置され、ピストン19の駆動軸Y方向において、クランクケース21の側方下部に位置している。このように、触媒14を熱源であるシリンダ30から離間して設けたことで、熱源が一ヶ所に集中することを避けることができるので、エンジン作業機1全体の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
第一膨張室13Aにおいては、空気導入通路7と連通する空気導入口18が設けられる。この空気を導入する手段たる空気導入口18は、図1及び図2で示した空気導入通路7のマフラー4側の開口部となるものである。尾管17の開口面積は、シリンダ30のボアDの面積に対して約3%となるように設定され、さらに、膨張室開口部25A 、25Bの開口面積は、尾管17の開口面積に対して5倍以下、例えば約4倍となるよう設定される。たとえば、シリンダボアDが31mmの場合、開口面積は約755mmであるから、尾管17は直径φ5.5の円に相当する開口面積24mm程度、膨張室開口部25A、25Bは直径φ11の円に相当する開口面積97mm程度となる。このように連通部(膨張室開口部25A 、25B)における開口面積をマフラー排出口の開口面積に対して所定以上確保しつつ、所定以下に制限することで、連通部における排気抵抗が過剰とならず、かつ、排気音の低減効果を得ることができる。この構成において、エンジン作業機1はエアクリーナー2、気化器23を介してエンジン36内部に燃料と空気を吸入し、燃料と空気を燃焼させた後に排気ガスとして排気口24より排出する。このとき、ピストン19の往復運動が駆動軸20の回転運動に変化される。
【0040】
排気ガスは空気導入口18より第一膨張室13Aに流入する空気の流れAIR2と共に排気ガスの流れEXのごとく、膨張室開口部25Aを通過して第三膨張室13Cに流入する。その後、触媒14、膨張室開口部25Bを通過した後、尾管17より大気中に排出される。ここで、マフラー4はマフラー外側面27が締結平面Mと略平行になるように形成される。さらに、下端部4Bの近傍において、マフラー内側面26が締結平面Mよりも−Z方向に突出する突出部32が形成されるので、排気口の開口方向Zの全長を長くすることなく、マフラー容積を大幅に増加させることができる。これにより、マフラー4の背圧が低減されるのでエンジン36の出力を向上し易くなると同時に、排気音の低減効果を得ることが可能となる。従って、マフラー4における排気音の騒音源である尾管17の開口面積を、従来よりも比較的小さく設定しても出力が低下しにくいため、出力を維持しながら排気音を効果的に低減することが可能となる。
【0041】
本実施例ではさらに突出部32の近傍に第三膨張室13Cを配置したので、第三膨張室13Cの容積を他の位置に設置するよりも大きくすることができるので、第三膨張室13Cの膨張室開口部25A、25Bの開口面積を比較的小さく設定しても出力が低下しにくい。これらから、第一膨張室13Aから第三膨張室13Cに放出される排気音は、第三膨張室13Cにとっての騒音源である膨張室開口部25Aの開口面積を従来より比較的小さくすることで低減され、同様に第三膨張室13Cから第二膨張室13Bに放出される排気音も膨張室開口部25Bを従来より比較的小さくすることで低減される。
【0042】
さらに、触媒14をより大型化する設計変更を行う場合においても、突出部32によって第三膨張室13Cの容積が十分確保されており、寸法に余裕があるため、大きな変更を行うことなく、容易に設計変更に対応することが可能となる。また、空気導入口18より空気を第一膨張室13Aに導入することによって、触媒14で排気ガス成分を燃焼させる際に必要な酸素を供給することができるので、触媒の浄化性能を向上させることができる。さらに、突出部32により第一膨張室13Aの容積が大きく形成されており、第一膨張室13Aにおける背圧が低減されるので、空気導入に必要なポンプ能力を低減することができることから、容易に第一膨張室13Aに空気を導入することが可能となる。
【0043】
図4はエンジン作業機1の上面図であって、一部に図2のB−B部の断面を示す。エンジン作業機1において、駆動軸20の一端にはスターター10およびスターターノブ11が配置され、他端には冷却ファン28が配置される。冷却ファン28はシリンダ30への冷却用の空気流を発生させるものであるが、併せてフライホイールとしての役割を果たすものである。さらに、冷却ファン28の周方向の所定位置には、点火プラグ12への高圧電流の供給を行うタイミングを決定して点火装置(図示せず)に伝達するためのマグネット(図示せず)が配置される。冷却ファン28はクランクケース21の一部である第一ボリュートケース8および第二ボリュートケース9の内側に配置される。第一ボリュートケース8には空気導入通路7の空気取入口29が配置される。空気取入口29には第一膨張室13Aからの排気ガスの逆流を防ぐ逆止弁35が設けられる。
【0044】
以上説明したようにエンジン36が始動することにより駆動軸20が回転するので、冷却ファン28はAIR1の方向に空気を吸入し、エンジン36のシリンダ30付近に送出することによってエンジン36の冷却を行う。このとき、冷却ファン28で発生した風の一部を空気取入口29においてAIR2のごとく取り出すことで、空気導入通路7を介して空気をマフラー4の第一膨張室13A内に導入することができる。
【0045】
このように空気取入口29を第一ボリュートケース8に配置したことで、第一膨張室13Aから空気導入通路7を介して空気取入口29に至る伝熱経路を長くすることができ、空気取入口29にマフラーの熱が伝わって温度上昇することを抑制でき、空気取入口29付近に配置される逆止弁35の耐久性を向上させることができる。また、空気取入口29を配置するために別途に追加部品や形状変更を行う必要がなく、空気取入口29をコンパクトに配置することができる。さらに、第一ボリュートケース8、第二ボリュートケース9の内部には冷却ファン28によって常に風が発生しているため、空気取入口29および逆止弁35はこの風によって十分冷却される。以上のように、エンジン36の冷却用に配置される冷却ファン28の風の一部をマフラー4に空気を導入する構造としたので、マフラー4に空気を送出するための別のポンプや送風ファン等を配置する必要がない。従って、コスト、重量、製品寸法の増加を最小限としながら、マフラー4に空気を導入する手段を低コストかつコンパクトに実現でき触媒の排気ガス成分の浄化性能を向上させることができる。
【0046】
図5は図2のC−C部の断面図である。冷却ファン28の外周部を覆う第一ボリュートケース8の内周側の壁部において、冷却ファン28の中心Nからの距離がほぼ最小となる位置に空気取入口29が配置される。第一ボリュートケース8は、中心Nに関して冷却ファン28の回転方向Hに合わせて反時計周りに中心Nから内周壁への距離が除除に大きくなるよう形成されており、距離が最大となる付近で吐出部33とシリンダカバー3が滑らかにつながるよう形成される。このような構成において、冷却ファン28が回転すると、AIR3のごとく第一ボリュートケース8の内周側の壁面を沿って風が流れ、吐出部33から流出した風はシリンダカバー3によってシリンダ30の各部に導かれ、シリンダ30を冷却する。一方、AIR2のごとく風の一部が空気取入口29から空気導入通路7を介して第一膨張室13Aの空気導入口18に到達し、第一膨張室13A内に導入される。
【0047】
このように既存の第一ボリュートケース8を利用して空気導入手段を配置することにより、空気取入口29の配置のために別途の部品、形状を構成する必要がない。従って、空気取入口をコンパクトに配置することが可能となる。さらに、空気取入口29が形成される内壁部分は第一ボリュートケース8において中心Nからの距離がほぼ最小の位置に配置されるので、吐出部33からシリンダカバー3に導かれる風量の低下を最小限に抑制することができる。従って、冷却や送風等の目的に使用される吐出部33の風量低下を最小限に抑制しながら、マフラー4の第一膨張室13Aに導入するための空気を取り出すことができる。更に本実施例では、マフラー4において容積が従来より比較的大きくなるように形成されるので、第一膨張室13Aに空気を導入するためのポンプ能力が低減されるので、効率よく空気を第一膨張室13Aに導入することができる。さらに第一ボリュートケース8内部は冷却ファン28による風が常に流れているため、マフラー4と空気導入通路7の接続部からマフラー4の熱が伝わってきた場合でも、空気取入口29の温度上昇を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0048】
図6は、本発明の実施例に係るエンジン作業機1のマフラー4の大きさを説明するための側面図である。図6から理解できるように、マフラー4はエンジン36の右側(+Z側)に取り付けられる。従来のマフラーにおいては、連通部31がエンジン36の排気口24に接続されるため、マフラーの上端部はX方向において矢印41付近に位置する。従来のエンジン作業機におけるマフラーは、主に空間61と空間62だけの大きさにより構成されていた。しかしながら本実施例では、マフラー4の容積を増やすために、マフラー4をシリンダ室下端面72よりも下側(−X方向)まで矢印76の方向に延ばして空間63の部分を確保した。さらに、この確保した空間63をさらに拡大するために空間63から左側(−Z方向)まで矢印77の方向にマフラー4の側壁面を突出させるように拡大して空間64の部分を確保した。この空間64が位置する部分が、排気口24の開口を通る面である締結平面Mよりも左側にまで突出させた突出部32である。このようにマフラー4の形状を工夫することによって、従来例に比べて十分大きなマフラー容積を確保できた。
【0049】
一方、マフラー4を大型化すると従来マフラーの下側に配置されていた燃料タンクの設置スペースが削減されることになる。本実施例ではマフラー4がシリンダ室下端面72よりも下方向に、及び、締結平面Mよりも左方向に延びたことによって、燃料タンク22のシリンダ中心面75bよりも右側の空間65が矢印78のように圧縮されて小さくなってしまった。このことは収容可能な燃料の減少を意味し好ましいことではない。そこで、本実施例では燃料タンク22の左端を矢印79のようにシリンダカバー左端面75aよりも左方向(−Z方向)に延ばして空間67を確保し、さらに矢印80のように上方向(+X方向)にも延ばし、その上端面22Aがシリンダ室下端面72とほぼ同じ位置まで到達するように構成した。このように空間67及び68を確保することによって従来と同じ程度のタンク容量を確保した。また、このように燃料タンク22の形状を変えても、空間67及び空間68と左右中心面74と面対称になる付近にはマフラー4が位置することになるので、重量的には良好な左右バランスを確保することができる。尚、エンジン36及び燃料タンク22とマフラー4の間には遮熱板として機能する遮熱板38が設けられるので、マフラー4の高温が燃料タンク22に伝わるのを大きく低減させることができる。尚、燃料タンク22の空間65を矢印78のように圧縮したとしても、その右端がシリンダ中心面75bよりも右側あるように配置することが好ましい。
【0050】
図7は、本発明の実施例に係るエンジン作業機1のマフラー4の大きさを説明するための側面図である。図7ではマフラー4とエンジン36の大きさが比較できるように、エンジン36を点線で示している。マフラー4の各寸法比は、縦方向:横方向:厚さ方向=2.4:1.2:1.0となるように設定した。ここでマフラー4のマフラー容積(cc)が、エンジン36の排気量(cc)に対して略17倍以上であり、かつ、尾管面積(mm2)が排気量(cc)に対して略0.8倍以下に、特に好ましくは0.3倍以上0.8倍以下になるように設定した。このように設定することによりエンジン36の出力をある程度確保しながら、大幅な騒音低減が可能となる。
【0051】
また図7のマフラー4は、ピストンの移動方向をマフラーの縦方向、駆動軸方向をマフラーの横方向、排気開口方向をマフラーの厚さ方向とした時に、厚さ<横<縦となるよう設定され、且つ、縦/横比が1.5以上に設定される。マフラー4の横方向(エンジン作業機で見ると前後方向)はエンジン36の全長増加に直結するため、これを最小とすることでコンパクトにできる。また、エンジン36は一般的にピストン19の移動方向に最も長くなり易いため、これとマフラー4のレイアウトを合わせることで、更にコンパクトにできる。
【0052】
次に図8から図11を用いてマフラー4の容積、尾管面積、騒音の関係を説明する。ここでは、エンジンの排気量が21ccの2サイクルエンジンを用いている。図8は排気量あたりの尾管面積と、エンジンの出力(Kw)との関係を示したものである。ここではマフラー容積は一定の388.5ccであり、マフラー容積/排気量が18.5となる。この状況下において尾管面積を替えた5つのマフラーを準備して測定したところ、尾管面積/排気量が略1.3以上でエンジン36の最大出力0.75Kwが得られ、尾管面積/排気量が0.9になると、最大出力よりも5%程度出力が低下するとことが判明した。通常尾管面積を小さくすると騒音レベルが減少するが、同時にエンジンの出力も低下するので、少なくとも尾管面積/排気量が略0.9以上になるようにマフラーの容積を設定すれば、騒音エンジンのほぼ最大出力を得ることができる。
【0053】
図9は、排気量あたりのマフラー容積と、騒音(dBA)との関係を示したものである。ここでは尾管面積は9.45cmであり、尾管面積/排気量が0.45の関係となる。この実験からわかるように、通常マフラー容積を大きくすると騒音レベルも低下する。
【0054】
図10は、排気量あたりの尾管面積と、騒音(dBA)との関係を示したものである。ここではマフラー容積は一定の388.5ccであり、マフラー容積/排気量が18.5となる。この実験からわかるように、通常尾管面積/排気量を大きくすると騒音レベルも増大する。このエンジンの実用的な最小騒音値を70dBAとすると、尾管面積が0.9以下で1dB以上の騒音低減効果があることが理解できる。
【0055】
図11は、単位排気量あたりのマフラー容積と尾管面積との関係を示す図である。エンジンの出力として0.7Kwを保つ際の関係を調べたところ、尾管面積を小さくしてもマフラー容積を大きくすれば良いことがわかった。また、同様のマフラー容積のまま尾管面積を小さくすると、エンジン出力が20〜30%程度低下することが理解できる。図10の結果により、騒音レベルを低く抑える為には、尾管面積/排気量を0.9以下にするのが好ましい。一方、エンジンの出力を大きくするには、マフラー容積を大きくすれば良く、本実験の結果、マフラー容積(cc)が排気量(cc)に対して略17倍以上であり、かつ、尾管面積(mm)が排気量(cc)に対して略0.8倍以下に設定されれば良いことが理解できる。尚、尾管面積(mm)を小さくしすぎるとエンジンの出力が小さくなりすぎるので、出力が20〜30%低下する尾管面積/排気量が略0.3倍以上であると良い。
【0056】
以上説明したように、本実施例においては、マフラー4を大型化すると共に燃料タンク22の配置を変更したので、エンジン作業機1の外観形状をほぼ同等のままで、大幅な低騒音効果と出力の維持を図るマフラー構造を実現できた。
【実施例2】
【0057】
次に図12を用いて第2の実施例によるエンジン作業機を説明する。図12は図2のA−A断面位置に相当する断面図である。マフラー84のマフラー外側面89の剛性を高める手段としてカラー87の内部にマフラー締結ボルト86が内包されるよう形成される。カラー87はマフラー内側面88ないしマフラー外側面89のいずれかの接触面において溶接にて接合される。このようにマフラー締結ボルト86を短くした構成においても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。なお、マフラー締結ボルト5A、5Bも同様にカラーの内部に収容されるように、短く形成しても同様の効果が得られる。
【0058】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本明細書では本発明をピストン19の移動方向が地面に対して垂直に構成される刈払機に適用した例について説明したが、上述のエンジン作業機1のレイアウトを維持したまま、ピストン19の移動方向を水平とした配置となる作業機(例えばヘッジトリマ、カルチベータ等)に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン作業機 2 エアクリーナー 3 シリンダカバー
4 マフラー 4A 上端部 4B 下端部
5A、5B、6 マフラー締結ボルト 7 空気導入通路
8 第一ボリュートケース 9 第二ボリュートケース
9A 脚部 10 スターター 11 スターターノブ
12 点火プラグ 13A 第一膨張室 13B 第二膨張室
13C 第三膨張室 14 触媒 15A 膨張室ケース
15B 膨張室ケース 16 カラー 17 尾管
18 空気導入口 19 ピストン 20 駆動軸
21 クランクケース 22 燃料タンク 23 気化器
24 排気口 25A 膨張室開口部 25B 膨張室開口部
26 マフラー内側面 27 マフラー外側面 28 冷却ファン
29 空気取入口 30 シリンダ 31 連通部
32 突出部 33 吐出部 34 プラグキャップ
35 逆止弁 36 エンジン 37 仕切り板
38 遮熱板 39 挿入部
61、62、63、64、67、68 空間
71 排気口面 72 シリンダ室下端面 74 左右中心面
75a シリンダカバー左端面 75b シリンダ中心面
76〜80 矢印 84 マフラー
86 マフラー締結ボルト 87 カラー
88 マフラー内側面 89 マフラー外側面
D ボア内径 M 締結平面 N 冷却ファンの中心
H 冷却ファンの回転方向 AIR1 冷却風 AIR2 導入空気
AIR3 冷却風 EX 排気ガス
EX1 排気ガス流出方向 EX2 排気ガス流出方向
LA 締結平面からマフラー側面の距離の最小値
LB 締結平面からマフラー側面の距離の最大値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯蔵する燃料タンクと、前記エンジンから排出される排気音を抑制するマフラーを有し、前記エンジンの駆動軸方向、排気口の開口方向、ピストンの動作方向がそれぞれ略直交するよう構成されたエンジン作業機であって、
前記マフラーは、
内部の膨張室の一つが前記エンジンの排気口に連結されるように前記エンジンの排出口に締結され、
前記締結位置においてピストンの移動方向と平行な締結平面よりもエンジン側に延在する突出部を有し、前記突出部がエンジンのピストンの移動方向において点火プラグから遠い側の端部近傍に配置され、
前記排気口と対向するマフラー側面が前記締結平面と略平行であり、
前記燃料タンクは、前記エンジンのクランクケースの下部であって前記マフラーの突出部の側方に設けられることを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記マフラーの容積が前記エンジンの排気量に対して17倍以上であり、前記マフラーの排出口に形成される尾管の開口面積が、前記排気量に対して0.3倍以上0.8倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記エンジンは、ピストンが鉛直方向に往復移動するように配置され、
前記エンジンの排気口の断面は略鉛直になるように位置し、
前記マフラーの寸法は、厚さ方向<横方向<縦方向のように縦長の形状とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記マフラーの寸法の縦方向/横方向の比は1.5以上であることを特徴とする請求項3に記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記マフラーは、締結手段により前記エンジンに締結され、前記エンジンから離れた側のマフラー側面およびエンジン排気口と対向するマフラー側面において、前記締結手段からピストンの移動方向において離間した位置にマフラー側面の剛性を高める手段を配置したことを特徴とする請求項4に記載のエンジン作業機。
【請求項6】
前記剛性を高める手段はネジと前記ネジを貫通させる管であって、
前記管は前記エンジンから離れた側のマフラー側面と前記エンジン排気口と対向する前記マフラー側面に固定されることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のエンジン作業機。
【請求項7】
前記マフラーの内部には、前記エンジン排気口と連通する第一膨張室と、排気ガスを大気中に排出するための排出口を有する第二膨張室を有し、
前記第一膨張室と前記第二膨張室を接続する第三膨張室を設け、
前記第三膨張室に排気ガス成分を浄化するための触媒を配置したことを特徴とする請求項6に記載のエンジン作業機。
【請求項8】
前記第三膨張室は前記突出部の内部空間を含むように配置されることを特徴とする請求項7に記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−7317(P2013−7317A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140152(P2011−140152)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】