エンジン制御システム、燃料噴射装置及び噴射駆動装置
【課題】エンジン制御システムにおけるエンジン制御ユニットの低コスト化と開発効率の改善を図る。
【解決手段】エンジン制御システム10では、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ、噴射口を開くためのアクチュエータ25の駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令値が送信される。そして、各インジェクタIJ1〜IJ4には、燃料圧力(インレット圧)を検出するセンサ27と共に、マイコン51、AD変換器55及び駆動回路57が設けられており、マイコン51は、センサ27からの信号を一定時間毎にAD変換して実際の噴射特性を検出すると共に、その噴射特性検出値に基づき算出した補正値により、エンジンECU11からの噴射指令値を補正して、その補正後の噴射指令値によりアクチュエータ25を駆動する。このため、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができる。
【解決手段】エンジン制御システム10では、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ、噴射口を開くためのアクチュエータ25の駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令値が送信される。そして、各インジェクタIJ1〜IJ4には、燃料圧力(インレット圧)を検出するセンサ27と共に、マイコン51、AD変換器55及び駆動回路57が設けられており、マイコン51は、センサ27からの信号を一定時間毎にAD変換して実際の噴射特性を検出すると共に、その噴射特性検出値に基づき算出した補正値により、エンジンECU11からの噴射指令値を補正して、その補正後の噴射指令値によりアクチュエータ25を駆動する。このため、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)への燃料噴射を制御するエンジン制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載されるディーゼルエンジンの制御分野においては、燃料ポンプによって圧送される高圧の燃料を蓄える蓄圧容器であるコモンレールの燃料出口から燃料噴射装置(いわゆるインジェクタ)の噴射口までの燃料通路における所定位置に、燃料圧力センサを設け、その燃料圧力センサから出力されるセンサ信号の電圧値を一定時間毎にAD変換して読み取ることで、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する燃料圧力を逐次検出すると共に、その検出結果から燃料噴射装置の実際の噴射特性を検出して、その噴射特性の検出結果を燃料噴射制御にフィードバックして用いる、といったことが考えられている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、検出する噴射特性としては、燃料の噴射開始時刻や噴射終了時刻や噴射量等があり、エンジンを制御する電子制御ユニットでは、その検出した噴射特性に基づいて、燃料噴射装置の駆動(詳しくは、燃料噴射装置の噴射口を開くためのアクチュエータの駆動)を開始するタイミングや駆動継続時間を補正する。また、ある気筒に関する噴射特性を検出するためには、その気筒の燃料噴射期間を含む期間において、上記燃料圧力センサからのセンサ信号(以下、燃料圧力信号ともいう)を、波形をトレースするような非常に短い一定の時間間隔(例えば数十μs毎)でAD変換することとなる。
【0004】
ここで、上記の技術思想が適用されたエンジン制御システムの構成例を図12に示す。
図12に例示するエンジン制御システムは、エンジンを制御するための処理を行う電子制御ユニットであるエンジン制御ユニット(以下、エンジンECUともいう)1と、エンジンの気筒毎に設けられた燃料噴射装置としてのインジェクタIJn(nは1〜4の何れか)とからなる。尚、この例において、エンジンの気筒数は4つである。
【0005】
そして、各インジェクタIJnには、上記燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧の燃料圧力信号を出力する燃料圧力センサSn(nは1〜4の何れか)と、駆動されることで当該インジェクタIJnの噴射口を開くアクチュエータAn(nは1〜4の何れか)とが備えられている。
【0006】
また、エンジンECU1には、マイコン(マイクロコンピュータ)2と、各インジェクタIJnの燃料圧力センサSnからの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器3と、マイコン2からの駆動信号に応じて各インジェクタIJnのアクチュエータAnを駆動する駆動回路4とが備えられている。
【0007】
そして、エンジンECU1のマイコン2は、図示しない各種センサからの信号に基づいて、エンジン回転数やアクセルペダルの操作量等のエンジンの運転状態を検出する処理と、その検出された運転状態に基づいて各インジェクタIJnのアクチュエータAnの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を示す噴射指令値を算出する処理と、各インジェクタIJnからの燃料圧力信号をAD変換器3に一定時間毎にAD変換させて、その各AD変換値を取り込み、その時系列のAD変換値とエンジンの運転状態から各インジェクタIJnの噴射特性を検出する処理と、各インジェクタIJnについての噴射指令値を補正するための補正値を、そのインジェクタIJnについて検出した噴射特性に基づき算出する処理と、各インジェクタIJnについての噴射指令値を、そのインジェクタIJnについて算出した補正値に従い補正する処理と、その処理で補正した後の噴射指令値に基づいて、駆動回路4に各インジェクタIJnのアクチュエータAnを駆動させる処理と、を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−144749号公報
【特許文献2】特開2009−57928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
噴射特性を検出して噴射指令値を補正しインジェクタのアクチュエータを駆動する処理(以下、噴射特性検出値による補正制御処理という)を実施するためには、例えば数十μsといった非常に短い一定時間毎に燃料圧力信号をAD変換すると共に、その各AD変換値を逐次取り込んで演算処理を行う必要があるため、高性能なマイコンが必要となる。特に、上記従来のエンジン制御システムにおけるエンジンECU1では、複数の各気筒のインジェクタIJnについて噴射特性検出値による補正制御処理を実施するため、マイコン2として一層高性能なものが必要となる。そして、一般に高性能なマイコンは高価である。
【0010】
また、エンジン制御システムとしては、制御対象のエンジンの種類によって、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものと、しないものとがある。
このため、エンジンECUは、噴射特性検出値による補正制御処理の有無により、異なる性能のマイコンを用いて別々に製作することとなっていた。例えば、噴射特性検出値による補正制御処理が不要であっても、その処理を実施可能な高性能なマイコンをエンジンECUに用いると共に、その噴射特性検出値による補正制御処理の機能を組み込んでおいて無効化しておくことにより、部品及び構成の共通化によるコストダウンを狙うことも考えられるが、その共通化によるコストダウン効果よりも、過剰性能による無駄なコストの方が大きくなってしまうからである。
【0011】
こうしたことから、従来のエンジン制御システムでは、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関してエンジンECUを共通化できず、エンジンECUの低コスト化には限度があった。また、エンジンECUの開発効率も悪かった。
【0012】
そこで、本発明は、エンジン制御ユニットの低コスト化と開発効率の改善を図ることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のエンジン制御システムは、燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される燃料噴射装置であって、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、その噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、前記指令算出手段により算出された噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された補正値に従い補正する補正手段と、その補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、を備えている。
【0014】
そして特に、このエンジン制御システムでは、前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段が、前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられており、その別体の装置へ前記エンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されるようになっている。
【0015】
つまり、噴射特性検出値による補正制御処理を実施する部分(噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段)が、指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられていて、その別体の装置は、エンジン制御ユニットの指令算出手段により算出された噴射指令情報を、検出した噴射特性に基づく補正値に従い補正して、燃料噴射装置のアクチュエータを駆動するようになっている。
【0016】
このため、請求項1のエンジン制御システムによれば、噴射特性検出値による補正制御処理の有無にかかわらず、エンジン制御ユニットは、同じロジックで噴射指令情報を出力すれば良い。尚、噴射特性検出値による補正制御処理を実施しないシステムに適用する場合には、上記別体の装置として、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものではなく、例えば、エンジン制御ユニットからの噴射指令情報を、補正することなく、その噴射指令情報に基づき上記アクチュエータを駆動するものを用いたり、エンジン制御ユニットからの噴射指令情報を、固定の補正値で補正し、その補正した噴射指令情報に基づき上記アクチュエータを駆動するものを用いたりすれば良い。
【0017】
よって、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジン制御ユニットを共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジン制御ユニットの低コスト化を達成することができるようになる。特に、エンジン制御ユニットは、噴射特性検出値による補正制御処理を行わなくて良いため、性能が低くて安価なマイコンを用いて構成することができるようになる。更に、エンジン制御ユニットを、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジン制御ユニットの開発効率も向上させることができる。
【0018】
次に、請求項2のエンジン制御システムでは、請求項1のエンジン制御システムにおいて、前記別体の装置が、前記燃料噴射装置であることを特徴としている。つまり、燃料噴射装置に、噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段を設けている。
【0019】
この構成によれば、従来のエンジン制御システムと比較すると、性能が低くて安価なマイコンを用いてシステムを構成することができる。
前述したように、従来のエンジン制御システムでは、エンジン制御ユニット(エンジンECU)に設けられたマイコンが、複数の各気筒の燃料噴射装置(インジェクタ)について、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するため、マイコンとして高性能なものが必要であった。特に、2つの気筒の噴射期間が重複する場合には、その2つの気筒に対応する各燃料噴射装置の噴射特性を同時に検出しなければならないからである。
【0020】
これに対して、請求項2の構成によれば、燃料噴射装置の各々が、自身について、噴射特性検出値による補正制御処理を行えば良いため、複数の気筒の噴射期間が重複してもしなくても、各燃料噴射装置での処理負荷は1気筒分の処理負荷であって変わらない。よって、従来よりも性能が低くて安価なマイコンを用いて、噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段を実現することができるようになる。
【0021】
また、各気筒の燃料噴射装置についての噴射特性検出値による補正制御処理をエンジン制御ユニットにて行う従来のシステムでは、各気筒について、噴射特性の検出結果を、次の噴射サイクル(720°CA後)における噴射指令情報の補正に用いるように構成せざるを得なかったが、請求項2の構成によれば、噴射特性の検出結果を噴射指令情報の補正に反映させるまでの応答性を上げることができる。例えば、同じ噴射サイクル中に複数回の燃料噴射を行う多段噴射の場合に、前段の燃料噴射時に検出した噴射特性を、次段の燃料噴射の噴射指令情報を補正するのに用いる、というように構成することが可能となる。尚、「CA」とは、クランク角(クランクアングル)の略号である。
【0022】
次に、請求項3のエンジン制御システムでは、請求項2のエンジン制御システムにおいて、前記燃料噴射装置は、更に前記燃料圧力検出手段を備えている。
この構成によれば、燃料圧力検出手段と噴射特性検出手段とが同じ装置内に設けられることとなる。このため、燃料圧力検出手段から噴射特性検出手段へのセンサ信号にノイズが乗ってしまうことを抑制することができ、延いては、噴射特性を精度良く検出することができるようになる。
【0023】
従来のエンジン制御システムでは、燃料圧力検出手段に相当する燃料圧力センサからのセンサ信号をエンジン制御ユニットへ車両内の信号線(アナログ信号線)を介して伝達させていたため、その信号線上でセンサ信号にノイズが乗りやすかった。そして特に、噴射特性を精度良く検出するためには、センサ信号の感度(即ち、燃料圧力の変動に対するセンサ信号の電圧変動の比率)を高くすることとなるが、その感度を高くするほど、センサ信号にノイズが乗った場合に、燃料圧力の検出誤差が大きくなってしまい、延いては、噴射特性の検出精度が悪化することとなる。しかし、請求項3の構成によれば、こうしたノイズによる影響の問題を解決することができる。
【0024】
一方、請求項1のエンジン制御システムにおいて、前記別体の装置は、請求項4に記載のように、前記燃料噴射装置とも別の装置であっても良い。
また、請求項5の燃料噴射装置によれば、請求項3のエンジン制御システムにおける燃料噴射装置として用いることができる。
【0025】
また、請求項6の噴射駆動装置によれば、請求項4のエンジン制御システムにおける前記別体の装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のエンジン制御システムを、制御対象のエンジンと共に表す構成図である。
【図2】第1実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図3】第1実施形態のエンジンECUのマイコンが行う運転状態検出処理と噴射指令値送信処理とを表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射指令値受信処理を表すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射制御処理を表すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射特性検出処理を表すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う補正値算出処理を表すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図9】第2実施形態の各インジェクタのマイコンが行う圧力値送信処理を表すフローチャートである。
【図10】第2実施形態のエンジンECUのマイコンが行う圧力値受信処理を表すフローチャートである。
【図11】第3実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図12】従来のエンジン制御システムを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明が適用された実施形態のエンジン制御システムについて説明する。尚、本実施形態のエンジン制御システムは、自動車のディーゼルエンジンへの燃料噴射を制御するものである。
【0028】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のエンジン制御システム10は、車載ディーゼルエンジン13の各気筒(本実施形態では4つの気筒)#1〜#4に設けられた燃料噴射装置としてのインジェクタIJ1〜IJ4と、インジェクタIJ1〜IJ4を制御することで、エンジン13への燃料噴射を制御するエンジンECU(エンジン制御ユニット)11とを備えている。
【0029】
各インジェクタIJ1〜IJ4には、燃料の蓄圧容器であるコモンレール15の燃料出口から伸びた燃料供給用配管(燃料通路)17がそれぞれ接続されている。また、コモンレール15には、車両の燃料タンク19に貯留された燃料が、燃料ポンプ21によって圧送される。そして、各インジェクタIJ1〜IJ4は、コモンレール15に蓄えられた高圧の燃料が上記燃料供給用配管17を介して供給される。
【0030】
また、各インジェクタIJ1〜IJ4は、上記供給された燃料をエンジン13の気筒へ噴射する噴射口23と、駆動されることで噴射口23を開くアクチュエータ25とを備えている。このため、各インジェクタIJ1〜IJ4では、アクチュエータ25が駆動されることで、噴射口23が開き、その噴射口23から気筒#1〜#4へ燃料を噴射する。
【0031】
尚、本実施形態において、燃料ポンプ21は、例えば、エンジン13のクランク軸の回転により駆動されてポンプ動作を行う機関駆動式の高圧ポンプである。また、インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25は、例えば、コイルへの通電によって噴射口23を開く電磁ソレノイドであるが、ピエゾアクチュエータでも良い。
【0032】
更に、各インジェクタIJ1〜IJ4において、燃料供給用配管17との接続部(即ち、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口)には、その位置の燃料圧力(いわゆるインレット圧)を検出して該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号(以下、燃料圧力信号という)を出力する燃料圧力センサ27がそれぞれ設けられている。このため、燃料圧力センサ27によって検出される燃料圧力は、その燃料圧力センサ27が設けられているインジェクタIJ1〜IJ4の燃料噴射動作によって変動する。尚、以下の説明において、燃料圧力とは、特に断らなければ、燃料圧力センサ27によって検出される燃料圧力のことであり、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口の燃料圧力のことである。
【0033】
そして、各インジェクタIJ1〜IJ4は、個別の通信線L1〜L4を介して、ECU11と通信可能に接続されている。
一方、エンジンECU11には、エンジン13の運転状態を検出するための様々なセンサからの信号も入力される。その運転状態検出用センサとしては、例えば、周知のクランク角センサ29や、エンジン13への吸入空気量を検出する吸気量センサや、エンジン13の冷却水温を検出する水温センサや、アクセル踏み込み量センサや、コモンレール15内の燃料圧力であるコモンレール圧を検出するコモンレール圧センサや、コモンレール15内の燃料温度を検出する燃料温度センサ等がある。
【0034】
そして、エンジンECU11は、インジェクタIJ1〜IJ4に燃料を噴射させるための処理を行うマイコン31と、マイコン31がインジェクタIJ1〜IJ4と通信するための通信回路33とを備えている。
【0035】
次に、エンジンECU11と各インジェクタIJ1〜IJ4との更に詳しい構成について、図2を用い説明する。
図2に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、プログラムを実行するCPU41と、CPU41により実行されるプログラムが格納されたROM42と、CPU41による演算結果等を記憶するRAM43とを備えている。そして、CPU41がROM42内のプログラムを実行することで、運転状態検出部45と噴射指令値算出部47との機能が実現される。
【0036】
ここで、運転状態検出部45は、前述した運転状態検出用センサからの信号を読み取って、エンジン回転数や、吸入空気量や、冷却水温や、アクセル踏み込み量や、コモンレール圧や、燃料温度等のエンジン13の運転状態を検出する。尚、これらの運転状態は、燃料噴射制御のための制御パラメータである。
【0037】
そして、噴射指令値算出部47は、運転状態検出部45により検出された運転状態に基づいて、各インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間を示す噴射指令値を算出する。また、算出されたインジェクタIJ1〜IJ4毎の噴射指令値は、運転状態検出部45によって検出された運転状態の一部又は全部と共に、通信回路33から、その噴射指令値に対応するインジェクタへ送信される。
【0038】
一方、各インジェクタIJ1〜IJ4は、前述のアクチュエータ25及び燃料圧力センサ27に加えて、エンジンECU11からの噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するための処理を行うマイコン51と、マイコン51がエンジンECU11と通信するための通信回路53と、燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器55と、マイコン51からの駆動信号に応じてアクチュエータ25を駆動する駆動回路57と、を備えている。
【0039】
また、マイコン51は、プログラムを実行するCPU61と、CPU61により実行されるプログラムが格納されたROM62と、CPU61による演算結果等を記憶するRAM63と、データの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリやEEPROM)64とを備えている。そして、CPU61がROM62内のプログラムを実行することで、噴射特性検出部65と、補正値算出部66と、噴射指令値補正部67との機能が実現される。
【0040】
ここで、噴射特性検出部65は、AD変換器55に燃料圧力信号を、波形をトレースするような非常に短い一定時間Ta(本実施形態では例えば10μs)毎にAD変換させると共に、その各AD変換値を読み取り、その時系列のAD変換値(即ち、燃料圧力の検出値)に基づき、エンジンECU11から受信した運転状態も加味して、当該インジェクタの噴射特性を検出する。
【0041】
そして、補正値算出部66は、エンジンECU11から当該インジェクタへ送信される噴射指令値を補正するための補正値を、噴射特性検出部65により検出された噴射特性に基づいて算出し、その算出した補正値を不揮発性メモリ64に保存する。
【0042】
また、噴射指令値補正部67は、エンジンECU11から受信した当該インジェクタに対する噴射指令値を、補正値算出部66により算出された補正値に従い補正し、補正後の噴射指令値に基づいて、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。
【0043】
次に、エンジンECU11のマイコン31と、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51とが行う処理について、図3〜図7を用い更に詳しく説明する。
まず図3は、エンジンECU11のマイコン31が行う処理を表すフローチャートであり、(A)は、運転状態検出部45の機能を実現する運転状態検出処理を表し、(B)は、噴射指令値算出部47の機能を実現する噴射指令値送信処理を表している。尚、図3(A)の運転状態検出処理は、例えば一定時間毎に実行される。また、図3(B)の噴射指令値送信処理は、各気筒についてそれぞれ実行される処理であり、例えば、該当する気筒への燃料噴射を実施する行程(吸入行程又は圧縮行程)よりも前の所定クランク角のタイミングで実行される。
【0044】
図3(A)に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、運転状態検出処理を開始すると、まずS110にて、前述したように、運転状態検出用センサからの信号を読み取って、エンジン13の運転状態(例えば、エンジン回転数や、吸入空気量や、冷却水温や、アクセル踏み込み量や、コモンレール圧や、燃料温度等)を検出する。
【0045】
そして、続くS120にて、上記S110で検出した運転状態をRAM43の運転状態記憶領域に記憶(保存)し、その後、当該運転状態検出処理を終了する。
また、図3(B)に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、ある気筒(ここでは#nとする:nは1〜4の何れか)についての噴射指令値送信処理を開始すると、まずS150にて、RAM43の運転状態記憶領域から、現在検出しているエンジン13の運転状態を読み出す。
【0046】
そして、次のS160にて、上記S150で読み出した運転状態をROM42に記憶されているマップや数式にあてはめることにより、気筒#nの噴射パターンを設定する。
噴射パターンは、例えば噴射段数(噴射回数)、噴射開始タイミング、噴射開始タイミングからの噴射継続時間(噴射量に相当)、噴射インターバル(多段噴射の場合の噴射間隔)等のパラメータによって定められるものである。また例えば、噴射継続時間は、エンジン回転数やアクセル踏み込み量等に基づき決定した目標の噴射量を、コモンレール圧や燃料温度等に基づき所定の変換規則で時間に変換したものである。
【0047】
そして、続くS170にて、上記S160で設定した噴射パターンに基づいて、その噴射パターンに合った噴射指令値を算出する。
この噴射指令値は、気筒#nのインジェクタIJnに設けられているアクチュエータ25の駆動開始タイミング(本実施形態では駆動開始時刻)と該駆動開始タイミングからの駆動継続時間をインジェクタIJnに指示する情報である。そして、例えば、S160で設定された噴射パターンの上記パラメータのうち、噴射開始タイミングが、噴射指令値が示す情報のうちの駆動開始タイミングとして設定され、噴射継続時間が、噴射指令値が示す情報のうちの駆動継続時間として設定される。また、多段噴射の場合には、その噴射指令値が何段目の噴射のための噴射指令値であるかを示す情報も付加されても良い。
【0048】
そして、次のS180にて、S170で算出した噴射指令値を、通信回路33を介して気筒#nのインジェクタIJnへ送信する。尚、多段噴射の場合には、各段の噴射指令値を送信する。更に、S180では、上記S120でRAM43の運転状態記憶領域に記憶された運転状態の一部又は全部も、インジェクタIJnへ送信する。例えば、本実施形態では、少なくとも燃料温度が送信される。そして、このS180での送信処理が終わると、当該噴射指令値送信処理が終了する。
【0049】
次に、図4は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射指令値受信処理を表すフローチャートである。尚、この噴射指令値受信処理は、例えば一定時間毎に実行される。
【0050】
図4に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここではIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射指令値取得処理を開始すると、まずS210にて、エンジンECU11から当該インジェクタIJnへの噴射指令値が通信回路53によって受信されたか否かを判定し、噴射指令値が受信されていなければ、そのまま当該噴射指令値取得処理を終了する。一方、噴射指令値が受信されたなら、S220に進む。
【0051】
そして、S220では、受信された噴射指令値をRAM63の噴射指令値記憶領域に記憶(保存)し、更に、その噴射指令値と共にエンジンECU11から送られてきた運転状態を、RAM63の運転状態記憶領域に記憶(保存)する。そして、その後、当該噴射指令値受信処理を終了する。尚、エンジンECU11から、運転状態が噴射指令値とは別に送られてくるのであれば、その運転状態の受信確認及び記憶の処理は、当該噴射指令値受信処理とは別に行えば良い。
【0052】
次に、図5は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射制御処理を表すフローチャートである。尚、この噴射制御処理は、噴射指令値補正部67の機能を実現する処理であり、例えば一定時間毎に実行される。
【0053】
図5に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射制御処理を開始すると、まずS310にて、前述したRAM63の噴射指令値記憶領域に、未処理の噴射指令値(即ち、未だ読み出しておらず、燃料噴射の実施に使用していない噴射指令値)があるか否かを判定する。そして、未処理の噴射指令値がなければ、そのまま当該噴射制御処理を終了するが、未処理の噴射指令値があれば、S320に進んで、その未処理の噴射指令値を読み出す。
【0054】
次にS330にて、不揮発性メモリ64から噴射指令値に対する補正値を読み出す。そして、続くS340にて、S320で読み出した噴射指令値を、S330で読み出した補正値に従い補正する。
【0055】
尚、S330で読み出す不揮発性メモリ64内の補正値は、後述する図7の補正値算出処理により逐次算出されて更新されている。また、その補正値は、噴射指令値が示す駆動開始タイミングと駆動継続時間との各々に対する補正値であり、具体的には、駆動開始タイミングをどれだけ前後にずらすかを示すタイミング補正値と、駆動継続時間をどれだけ増減させるかを示す時間補正値とを含んでいる。このため、S340で補正された後の噴射指令値は、駆動開始タイミングとして、補正前の噴射指令値が示す駆動開始タイミングをタイミング補正値の分だけずらしたタイミングを示し、駆動継続時間として、補正前の噴射指令値が示す駆動継続時間を時間補正値の分だけ増減させた時間を示すものとなる。
【0056】
そして、次のS350にて、S340で補正した後の噴射指令値に基づいて、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。具体的には、補正後の噴射指令値が示す駆動開始タイミングから、補正後の噴射指令値が示す駆動継続時間が経過するまでの間、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。そして、その後、当該噴射制御処理を終了する。
【0057】
次に、図6は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射特性検出処理を表すフローチャートである。尚、この噴射特性検出処理は、噴射特性検出部65の機能を実現する処理であり、前述の一定時間Ta(例えば10μs)毎に実行される。
【0058】
図6に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射特性検出処理を開始すると、まずS410にて、所定の実行条件が成立しているか否かを判定する。そして、実行条件が成立していなければ、そのまま当該噴射特性検出処理を終了するが、実行条件が成立してれば、S420に進む。尚、S410で判定する実行条件としては、例えば、燃料圧力センサ27が正常であることなど、任意に設定可能である。
【0059】
そして、S420では、燃料圧力を検出する。具体的には、燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換器55にAD変換させて、そのAD変換器55によるAD変換値(即ち、燃料圧力信号の電圧値)を、燃料圧力検出値として読み取ってRAM63の燃料圧力記憶領域に記憶(保存)する。尚、このS420でAD変換器55を毎回起動することに代えて、一定時間Ta毎にAD変換器55がAD変換を行うように設定しておき、S420では、AD変換器55から、その時点での最新のAD変換値を読み取るようにしても良い。
【0060】
次にS430では、今回及び過去のS420でRAM63の燃料圧力記憶領域に記憶された時系列の燃料圧力検出値に基づき、エンジンECU11から受信した運転状態も加味して、当該インジェクタIJnの噴射特性を検出する処理を行う。そして、噴射特性を検出したなら、その検出した噴射特性を、その噴射特性に対応する噴射指令値(即ち、その噴射特性が得られることとなった噴射指令値であり、今回の燃料噴射(アクチュエータ25の駆動)に用いられた噴射指令値)と対応付けて、RAM63の噴射特性記憶領域に記憶(保存)する。そして、このS430の後、当該噴射特性検出処理を終了する。
【0061】
例えば、S430で検出する噴射特性(検出対象の噴射特性)の種類としては、燃料の噴射開始時刻や噴射終了時刻や噴射量などがある。そして、噴射開始時刻は、燃料圧力検出値が所定の噴射開始閾値を下回った時刻として検出することができ、噴射終了時刻は、燃料圧力検出値が所定の噴射終了閾値を上回った時刻として検出することができる。また、燃料を噴射していない時の燃料圧力検出値(例えば、噴射開始時刻の燃料圧力検出値)を基準圧力値として、その基準圧力値と、噴射開始時刻から噴射終了時刻までの各燃料圧力検出値との差分を積分し、その積分値とエンジンECU11から受信した燃料温度とから、噴射量を検出(推定)することができる。
【0062】
次に、図7は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う補正値算出処理を表すフローチャートである。尚、この補正値算出処理は、補正値算出部66の機能を実現する処理であり、例えば、図6の噴射特性検出処理が終了する毎に実行される。
【0063】
図7に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、補正値算出処理を開始すると、まずS510にて、所定の実行条件が成立しているか否かを判定する。そして、実行条件が成立していなければ、そのまま当該補正値算出処理を終了するが、実行条件が成立してれば、S520に進む。尚、S510で判定する実行条件としては、例えば、図6の噴射特性検出処理によって1回の燃料噴射について検出すべき全種類の噴射特性の検出が完了しているということであるが、他にも任意に設定可能である。
【0064】
そして、S520では、RAM63の噴射特性記憶領域から、噴射特性検出処理で検出された噴射特性と、その噴射特性に対応する噴射指令値とを読み出す。
次にS530にて、上記S520で読み出した噴射特性と噴射指令値を用いて、エンジンECU11から通信で供給される噴射指令値を補正するための補正値を算出し、その算出した補正値を不揮発性メモリ64に記憶(保存)する。そして、その後、当該補正値算出処理を終了する。
【0065】
例えば、S520で読み出した噴射特性のうち、噴射開始時刻を「ts」とし、噴射終了時刻を「te」とし、噴射量を「Q」とし、また、S520で読み出した噴射指令値が示す情報のうち、駆動開始タイミングを「Ts」とし、駆動継続時間を「Tq」とすると、S530では、tsとTsの差分(ts−Ts)を、補正値のうちのタイミング補正値として算出する。また、S530では、エンジンECU11から受信したコモンレール圧や燃料温度等に基づいて、Tqを、エンジンECU11側で用いられる前述の変換規則とは逆の規則で噴射量qに変換し、更に、その変換した噴射量qとQとの差分(q−Q)を上記変換規則で時間に変換した値を、補正値のうちの時間補正値として算出する。このため、前述した図5の噴射制御処理におけるS340では、S320で読み出した噴射指令値が示す情報のうち、駆動開始タイミングについては、タイミング補正値の分だけ早める補正を行い、駆動継続時間については、時間補正値を加算する補正を行うこととなる。
【0066】
以上のような第1実施形態のエンジン制御システム10では、エンジンECU11とは別体の各インジェクタIJ1〜IJ4に、図6の噴射特性検出処理、図7の補正値算出処理及び図5の噴射制御処理を行うマイコン51と、AD変換器55及び駆動回路57とが備えられており、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ、噴射特性に基づき補正される前の噴射指令値が通信線L1〜L4を介して供給されるようになっている。つまり、噴射特性検出値による補正制御処理(噴射特性を検出して噴射指令値を補正しアクチュエータ25を駆動する処理)を実施する部分が、インジェクタIJ1〜IJ4の方に備えられている。
【0067】
このようなエンジン制御システム10によれば、噴射特性検出値による補正制御処理の有無にかかわらず、エンジンECU11は、同じロジックで噴射指令値を出力すれば良い。例えば、噴射特性検出値による補正制御処理を実施しないシステムに適用する場合には、インジェクタIJ1〜IJ4として、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものではなく、エンジンECU11からの噴射指令情値を補正せずに、その噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するものを用いたり、エンジンECU11からの噴射指令値を、ROM62又は不揮発性メモリ64に予め記憶された固定の補正値で補正し、その補正した噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するものを用いたりすれば良い。
【0068】
よって、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジンECU11の低コスト化を達成することができるようになる。特に、エンジンECU11は、噴射特性検出値による補正制御処理を行わなくて良いため、マイコン31として、性能が低くて安価なマイコンを用いることができるようになる。更に、エンジンECU11を、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジンECU11の開発効率も向上させることができる。
【0069】
また、システム全体としても、性能が低くて安価なマイコンを用いて構成することができる。なぜなら、インジェクタIJ1〜IJ4の各々が、自身について、噴射特性検出値による補正制御処理を行えば良いため、複数の気筒の噴射期間が重複したとしても、各インジェクタIJ1〜IJ4におけるマイコン51の処理負荷は1気筒分の処理負荷であって変わらないからである。よって、従来よりも性能が低くて安価なマイコンを用いて、エンジン制御システムを構成することができるようになる。
【0070】
また、本実施形態によれば、各インジェクタIJ1〜IJ4の側で噴射特性検出値による補正制御処理を行うため、噴射特性の検出結果を噴射指令値の補正に反映させるまでの応答性を上げることができる。このため、本実施形態では、多段噴射の場合であっても、前段の燃料噴射時に検出した噴射特性に基づく補正値を、次段の燃料噴射の噴射指令値を補正するのに用いることができるようにしている。尚、もちろん、多段噴射の場合には、各段について検出した噴射特性から各段専用の補正値を算出し、その各段の補正値を、次の噴射サイクルにおける同じ段の噴射指令値の補正に用いるようしても良い。
【0071】
更に、本実施形態では、燃料圧力センサ27もインジェクタIJ1〜IJ4に設けているため、その燃料圧力センサ27からAD変換器55への燃料圧信号(センサ信号)にノイズが乗ってしまうことを抑制することができ、延いては、噴射特性を精度良く検出することができるようになる。
【0072】
尚、例えば、図12に例示した従来のエンジン制御システムにおいて、インジェクタIJ1〜IJ4側で燃料圧信号を逐次AD変換し、その各AD変換値をエンジンECU1へ通信によって伝達させることにより、ノイズの影響を抑制することも考えられるが、そのように構成した場合、例えば、AD変換値のビット数が10ビットとすると、「10ビット/10μs」といった高速な通信が必要となってしまう。しかし、本実施形態によれば、そのような10μs毎の高速通信は不要である。
【0073】
一方、本実施形態では、燃料圧力センサ27が燃料圧力検出手段に相当している。また、エンジン制御ユニットとしてのエンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4に送信される噴射指令値が、噴射指令情報に相当し、インジェクタIJ1〜IJ4は、エンジン制御ユニットとは別体の装置に相当している。
【0074】
そして、エンジンECU11においては、図3(B)の噴射指令値送信処理により、指令算出手段としての機能が実現されている。また、インジェクタIJ1〜IJ4においては、AD変換器55と図6の噴射特性検出処理により、噴射特性検出手段としての機能が実現されており、図7の補正値算出処理により、補正値算出手段としての機能が実現されており、図5の噴射制御処理におけるS310〜S340の処理により、補正手段としての機能が実現されている。そして、図5の噴射制御処理におけるS350の処理と駆動回路57により、駆動手段としての機能が実現されている。
【0075】
[第2実施形態]
第1実施形態のエンジン制御システム10において、エンジンECU11のマイコン31は、噴射指令値を算出するための情報(運転状態)の1つとして、コモンレール圧センサ(図示省略)からの信号によりコモンレール圧を検出し、そのコモンレール圧に基づいて噴射指令値を算出していた。コモンレール圧(インジェクタIJ1〜IJ4に供給される燃料の圧力)によって、噴射継続時間(駆動継続時間)と噴射量との関係が変わるからである。
【0076】
ここで、コモンレール圧センサが無い場合には、以下に説明する第2実施形態のように構成することができる。
図8に示すように、第2実施形態のエンジン制御システム70は、第1実施形態と比較すると、コモンレール圧センサが無いため、インジェクタIJ1〜IJ4の少なくとも1つ(ここではIJ1とする)からエンジンECU11へ、燃料圧力検出値(燃料圧信号のAD変換値)が送信されるようになっている。
【0077】
具体的に説明すると、インジェクタIJ1のマイコン51は、アクチュエータ25を駆動していない非噴射時(例えば、燃料噴射が終了してから検出対象の燃料圧力が安定すると考えられる時間が経過した時)に、図9の圧力値送信処理を行う。
【0078】
そして、その圧力値送信処理では、まずS610にて、AD変換器55に燃料圧力信号をAD変換させて、そのAD変換値を燃料圧力検出値として読み取る。尚、図6のS420で非噴射時の燃料圧力を検出しているのであれば、その検出されている燃料圧力検出値をRAM63から読み取っても良い。
【0079】
そして、次のS620にて、上記S610で取得した燃料圧力検出値をエンジンECU11へ送信し、その後、当該圧力値送信処理を終了する。
一方、エンジンECU11のマイコン31は、図10に示す圧力値受信処理を例えば一定時間毎に実行する。
【0080】
そして、図10に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、圧力値受信処理を開始すると、まずS710にて、インジェクタIJ1からの燃料圧力検出値が通信回路33によって受信されたか否かを判定し、燃料圧力検出値が受信されていなければ、そのまま当該圧力値受信処理を終了するが、燃料圧力検出値が受信されていれば、S720に進む。そのS720では、今回受信された燃料圧力検出値をRAM43の運転状態記憶領域に記憶(保存)し、その後、当該圧力値受信処理を終了する。
【0081】
そして、エンジンECU11のマイコン31は、図3(B)の噴射指令値送信処理では、インジェクタIJ1から受信した燃料圧力検出値を用いて、噴射指令値を算出する。つまり、コモンレール圧の代わりに、燃料噴射を実施していないときのインジェクタIJ1のインレット圧を用いて、噴射指令値を算出する。
【0082】
このような第2実施形態によれば、コモンレール圧センサが不要になるという利点がある。
また、本第2実施形態において、インジェクタIJ1からエンジンECU11へ送信される燃料圧力検出値は、噴射特性を検出するためのものではなく、コモンレール圧の代わりに用いられるものであるため、インジェクタIJ1からエンジンECU11への通信としては、例えば「10bit/1ms」といった速度の通信で良く、前述した「10ビット/10μs」といった高速な通信は勿論必要である。
【0083】
[第3実施形態]
図11に示す第3実施形態のエンジン制御システム72は、第1実施形態と比較すると、下記の点が異なっている。
【0084】
まず、インジェクタIJ1〜IJ4には、マイコン51、通信回路53、AD変換器55及び駆動回路57が備えられていない。
そして、エンジンECU11とインジェクタIJ1〜IJ4との間には、エンジンECU11からの気筒毎の噴射指令値に基づいてインジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25を駆動することにより該インジェクタIJ1〜IJ4に燃料を噴射させる噴射駆動装置としての電子駆動ユニット(以下、EDUという)75が設けられている。
【0085】
そのEDU75は、マイコン81と、マイコン81がエンジンECU11と通信するための通信回路83と、各インジェクタIJ1〜IJ4の燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器85と、マイコン81からの駆動信号に応じて各インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25を駆動する駆動回路87と、を備えている。
【0086】
また、マイコン81は、プログラムを実行するCPU91と、CPU91により実行されるプログラムが格納されたROM92と、CPU91による演算結果等を記憶するRAM93と、データの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリやEEPROM)94とを備えている。
【0087】
そして、このエンジン制御システム72では、第1実施形態のエンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ送信されるのと同じ情報であって、気筒毎(インジェクタIJ1〜IJ4毎)の噴射指令値とエンジン13の運転状態とが、エンジンECU11からEDU75へ送信される。
【0088】
そして、EDU75のマイコン81は、第1実施形態のインジェクタIJ1〜IJ4におけるマイコン51が実行する処理と同じ処理を、各インジェクタIJ1〜IJ4について行う。具体的に説明すると、前述した図4〜図7の処理のうち、図4の噴射指令値受信処理は、各インジェクタIJ1〜IJ4に関して共通に行うが、図5の噴射制御処理、図6の噴射特性検出処理及び図7の補正値算出処理は、インジェクタIJ1〜IJ4の各々について行う。
【0089】
つまり、第3実施形態のエンジン制御システム72では、各インジェクタIJ1〜IJ4について噴射特性検出値による補正制御処理を実施する部分が、エンジンECU11とは別体の装置であるEDU75に備えられている。
【0090】
このため、前述した他の実施形態と同様に、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジンECU11の低コスト化を達成することができ、また、エンジンECU11を、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジンECU11の開発効率も向上させることができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0092】
例えば、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4あるいはEDU75へは、噴射指令値(噴射指令情報)として、噴射角(噴射を開始すべきクランク角)と噴射量とを示す情報を送信し、各インジェクタIJ1〜IJ4あるいはEDU75にて、その情報を、アクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間に変換して前述の処理を行うように構成しても良い。つまり、エンジンECU11から送信される噴射指令値(噴射指令情報)としては、それの送信相手に対して、アクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間を指示するものであれば良く、直接的に指示する形態と間接的に指示する形態との何れでも良い。
【0093】
一方、燃料圧力センサ27が設けられる位置は、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口に限らず、コモンレール15の燃料出口(燃料供給用配管17のコモンレール15側の端)からインジェクタIJ1〜IJ4の噴射口までの燃料通路における何れかの位置で良い。
【0094】
また、燃料噴射制御の対象は、ガソリンエンジンであっても良い。また、エンジンの気筒数は4以外であっても良い。
【符号の説明】
【0095】
10,70,72…エンジン制御システム
11…エンジンECU(エンジン制御ユニット)、L1〜L4…通信線
13…エンジン(車載ディーゼルエンジン)、15…コモンレール
17…燃料供給用配管、19…燃料タンク、21…燃料ポンプ
IJ1〜IJ4…インジェクタ(燃料噴射装置)、23…噴射口
25…アクチュエータ、27…燃料圧力センサ、29…クランク角センサ
31,51,81…マイコン、33,53,83…通信回路
41,61,91…CPU、42,62,92…ROM
43,63,93…RAM、45…運転状態検出部、47…噴射指令値算出部
55,85…AD変換器、57,87…駆動回路、64,94…不揮発性メモリ
65…噴射特性検出部、66…補正値算出部、67…噴射指令値補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)への燃料噴射を制御するエンジン制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載されるディーゼルエンジンの制御分野においては、燃料ポンプによって圧送される高圧の燃料を蓄える蓄圧容器であるコモンレールの燃料出口から燃料噴射装置(いわゆるインジェクタ)の噴射口までの燃料通路における所定位置に、燃料圧力センサを設け、その燃料圧力センサから出力されるセンサ信号の電圧値を一定時間毎にAD変換して読み取ることで、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する燃料圧力を逐次検出すると共に、その検出結果から燃料噴射装置の実際の噴射特性を検出して、その噴射特性の検出結果を燃料噴射制御にフィードバックして用いる、といったことが考えられている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、検出する噴射特性としては、燃料の噴射開始時刻や噴射終了時刻や噴射量等があり、エンジンを制御する電子制御ユニットでは、その検出した噴射特性に基づいて、燃料噴射装置の駆動(詳しくは、燃料噴射装置の噴射口を開くためのアクチュエータの駆動)を開始するタイミングや駆動継続時間を補正する。また、ある気筒に関する噴射特性を検出するためには、その気筒の燃料噴射期間を含む期間において、上記燃料圧力センサからのセンサ信号(以下、燃料圧力信号ともいう)を、波形をトレースするような非常に短い一定の時間間隔(例えば数十μs毎)でAD変換することとなる。
【0004】
ここで、上記の技術思想が適用されたエンジン制御システムの構成例を図12に示す。
図12に例示するエンジン制御システムは、エンジンを制御するための処理を行う電子制御ユニットであるエンジン制御ユニット(以下、エンジンECUともいう)1と、エンジンの気筒毎に設けられた燃料噴射装置としてのインジェクタIJn(nは1〜4の何れか)とからなる。尚、この例において、エンジンの気筒数は4つである。
【0005】
そして、各インジェクタIJnには、上記燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧の燃料圧力信号を出力する燃料圧力センサSn(nは1〜4の何れか)と、駆動されることで当該インジェクタIJnの噴射口を開くアクチュエータAn(nは1〜4の何れか)とが備えられている。
【0006】
また、エンジンECU1には、マイコン(マイクロコンピュータ)2と、各インジェクタIJnの燃料圧力センサSnからの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器3と、マイコン2からの駆動信号に応じて各インジェクタIJnのアクチュエータAnを駆動する駆動回路4とが備えられている。
【0007】
そして、エンジンECU1のマイコン2は、図示しない各種センサからの信号に基づいて、エンジン回転数やアクセルペダルの操作量等のエンジンの運転状態を検出する処理と、その検出された運転状態に基づいて各インジェクタIJnのアクチュエータAnの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を示す噴射指令値を算出する処理と、各インジェクタIJnからの燃料圧力信号をAD変換器3に一定時間毎にAD変換させて、その各AD変換値を取り込み、その時系列のAD変換値とエンジンの運転状態から各インジェクタIJnの噴射特性を検出する処理と、各インジェクタIJnについての噴射指令値を補正するための補正値を、そのインジェクタIJnについて検出した噴射特性に基づき算出する処理と、各インジェクタIJnについての噴射指令値を、そのインジェクタIJnについて算出した補正値に従い補正する処理と、その処理で補正した後の噴射指令値に基づいて、駆動回路4に各インジェクタIJnのアクチュエータAnを駆動させる処理と、を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−144749号公報
【特許文献2】特開2009−57928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
噴射特性を検出して噴射指令値を補正しインジェクタのアクチュエータを駆動する処理(以下、噴射特性検出値による補正制御処理という)を実施するためには、例えば数十μsといった非常に短い一定時間毎に燃料圧力信号をAD変換すると共に、その各AD変換値を逐次取り込んで演算処理を行う必要があるため、高性能なマイコンが必要となる。特に、上記従来のエンジン制御システムにおけるエンジンECU1では、複数の各気筒のインジェクタIJnについて噴射特性検出値による補正制御処理を実施するため、マイコン2として一層高性能なものが必要となる。そして、一般に高性能なマイコンは高価である。
【0010】
また、エンジン制御システムとしては、制御対象のエンジンの種類によって、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものと、しないものとがある。
このため、エンジンECUは、噴射特性検出値による補正制御処理の有無により、異なる性能のマイコンを用いて別々に製作することとなっていた。例えば、噴射特性検出値による補正制御処理が不要であっても、その処理を実施可能な高性能なマイコンをエンジンECUに用いると共に、その噴射特性検出値による補正制御処理の機能を組み込んでおいて無効化しておくことにより、部品及び構成の共通化によるコストダウンを狙うことも考えられるが、その共通化によるコストダウン効果よりも、過剰性能による無駄なコストの方が大きくなってしまうからである。
【0011】
こうしたことから、従来のエンジン制御システムでは、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関してエンジンECUを共通化できず、エンジンECUの低コスト化には限度があった。また、エンジンECUの開発効率も悪かった。
【0012】
そこで、本発明は、エンジン制御ユニットの低コスト化と開発効率の改善を図ることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のエンジン制御システムは、燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される燃料噴射装置であって、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、その噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、前記指令算出手段により算出された噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された補正値に従い補正する補正手段と、その補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、を備えている。
【0014】
そして特に、このエンジン制御システムでは、前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段が、前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられており、その別体の装置へ前記エンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されるようになっている。
【0015】
つまり、噴射特性検出値による補正制御処理を実施する部分(噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段)が、指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられていて、その別体の装置は、エンジン制御ユニットの指令算出手段により算出された噴射指令情報を、検出した噴射特性に基づく補正値に従い補正して、燃料噴射装置のアクチュエータを駆動するようになっている。
【0016】
このため、請求項1のエンジン制御システムによれば、噴射特性検出値による補正制御処理の有無にかかわらず、エンジン制御ユニットは、同じロジックで噴射指令情報を出力すれば良い。尚、噴射特性検出値による補正制御処理を実施しないシステムに適用する場合には、上記別体の装置として、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものではなく、例えば、エンジン制御ユニットからの噴射指令情報を、補正することなく、その噴射指令情報に基づき上記アクチュエータを駆動するものを用いたり、エンジン制御ユニットからの噴射指令情報を、固定の補正値で補正し、その補正した噴射指令情報に基づき上記アクチュエータを駆動するものを用いたりすれば良い。
【0017】
よって、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジン制御ユニットを共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジン制御ユニットの低コスト化を達成することができるようになる。特に、エンジン制御ユニットは、噴射特性検出値による補正制御処理を行わなくて良いため、性能が低くて安価なマイコンを用いて構成することができるようになる。更に、エンジン制御ユニットを、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジン制御ユニットの開発効率も向上させることができる。
【0018】
次に、請求項2のエンジン制御システムでは、請求項1のエンジン制御システムにおいて、前記別体の装置が、前記燃料噴射装置であることを特徴としている。つまり、燃料噴射装置に、噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段を設けている。
【0019】
この構成によれば、従来のエンジン制御システムと比較すると、性能が低くて安価なマイコンを用いてシステムを構成することができる。
前述したように、従来のエンジン制御システムでは、エンジン制御ユニット(エンジンECU)に設けられたマイコンが、複数の各気筒の燃料噴射装置(インジェクタ)について、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するため、マイコンとして高性能なものが必要であった。特に、2つの気筒の噴射期間が重複する場合には、その2つの気筒に対応する各燃料噴射装置の噴射特性を同時に検出しなければならないからである。
【0020】
これに対して、請求項2の構成によれば、燃料噴射装置の各々が、自身について、噴射特性検出値による補正制御処理を行えば良いため、複数の気筒の噴射期間が重複してもしなくても、各燃料噴射装置での処理負荷は1気筒分の処理負荷であって変わらない。よって、従来よりも性能が低くて安価なマイコンを用いて、噴射特性検出手段、補正値算出手段、補正手段及び駆動手段を実現することができるようになる。
【0021】
また、各気筒の燃料噴射装置についての噴射特性検出値による補正制御処理をエンジン制御ユニットにて行う従来のシステムでは、各気筒について、噴射特性の検出結果を、次の噴射サイクル(720°CA後)における噴射指令情報の補正に用いるように構成せざるを得なかったが、請求項2の構成によれば、噴射特性の検出結果を噴射指令情報の補正に反映させるまでの応答性を上げることができる。例えば、同じ噴射サイクル中に複数回の燃料噴射を行う多段噴射の場合に、前段の燃料噴射時に検出した噴射特性を、次段の燃料噴射の噴射指令情報を補正するのに用いる、というように構成することが可能となる。尚、「CA」とは、クランク角(クランクアングル)の略号である。
【0022】
次に、請求項3のエンジン制御システムでは、請求項2のエンジン制御システムにおいて、前記燃料噴射装置は、更に前記燃料圧力検出手段を備えている。
この構成によれば、燃料圧力検出手段と噴射特性検出手段とが同じ装置内に設けられることとなる。このため、燃料圧力検出手段から噴射特性検出手段へのセンサ信号にノイズが乗ってしまうことを抑制することができ、延いては、噴射特性を精度良く検出することができるようになる。
【0023】
従来のエンジン制御システムでは、燃料圧力検出手段に相当する燃料圧力センサからのセンサ信号をエンジン制御ユニットへ車両内の信号線(アナログ信号線)を介して伝達させていたため、その信号線上でセンサ信号にノイズが乗りやすかった。そして特に、噴射特性を精度良く検出するためには、センサ信号の感度(即ち、燃料圧力の変動に対するセンサ信号の電圧変動の比率)を高くすることとなるが、その感度を高くするほど、センサ信号にノイズが乗った場合に、燃料圧力の検出誤差が大きくなってしまい、延いては、噴射特性の検出精度が悪化することとなる。しかし、請求項3の構成によれば、こうしたノイズによる影響の問題を解決することができる。
【0024】
一方、請求項1のエンジン制御システムにおいて、前記別体の装置は、請求項4に記載のように、前記燃料噴射装置とも別の装置であっても良い。
また、請求項5の燃料噴射装置によれば、請求項3のエンジン制御システムにおける燃料噴射装置として用いることができる。
【0025】
また、請求項6の噴射駆動装置によれば、請求項4のエンジン制御システムにおける前記別体の装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のエンジン制御システムを、制御対象のエンジンと共に表す構成図である。
【図2】第1実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図3】第1実施形態のエンジンECUのマイコンが行う運転状態検出処理と噴射指令値送信処理とを表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射指令値受信処理を表すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射制御処理を表すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う噴射特性検出処理を表すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の各インジェクタのマイコンが行う補正値算出処理を表すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図9】第2実施形態の各インジェクタのマイコンが行う圧力値送信処理を表すフローチャートである。
【図10】第2実施形態のエンジンECUのマイコンが行う圧力値受信処理を表すフローチャートである。
【図11】第3実施形態のエンジン制御システムを表す構成図である。
【図12】従来のエンジン制御システムを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明が適用された実施形態のエンジン制御システムについて説明する。尚、本実施形態のエンジン制御システムは、自動車のディーゼルエンジンへの燃料噴射を制御するものである。
【0028】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のエンジン制御システム10は、車載ディーゼルエンジン13の各気筒(本実施形態では4つの気筒)#1〜#4に設けられた燃料噴射装置としてのインジェクタIJ1〜IJ4と、インジェクタIJ1〜IJ4を制御することで、エンジン13への燃料噴射を制御するエンジンECU(エンジン制御ユニット)11とを備えている。
【0029】
各インジェクタIJ1〜IJ4には、燃料の蓄圧容器であるコモンレール15の燃料出口から伸びた燃料供給用配管(燃料通路)17がそれぞれ接続されている。また、コモンレール15には、車両の燃料タンク19に貯留された燃料が、燃料ポンプ21によって圧送される。そして、各インジェクタIJ1〜IJ4は、コモンレール15に蓄えられた高圧の燃料が上記燃料供給用配管17を介して供給される。
【0030】
また、各インジェクタIJ1〜IJ4は、上記供給された燃料をエンジン13の気筒へ噴射する噴射口23と、駆動されることで噴射口23を開くアクチュエータ25とを備えている。このため、各インジェクタIJ1〜IJ4では、アクチュエータ25が駆動されることで、噴射口23が開き、その噴射口23から気筒#1〜#4へ燃料を噴射する。
【0031】
尚、本実施形態において、燃料ポンプ21は、例えば、エンジン13のクランク軸の回転により駆動されてポンプ動作を行う機関駆動式の高圧ポンプである。また、インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25は、例えば、コイルへの通電によって噴射口23を開く電磁ソレノイドであるが、ピエゾアクチュエータでも良い。
【0032】
更に、各インジェクタIJ1〜IJ4において、燃料供給用配管17との接続部(即ち、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口)には、その位置の燃料圧力(いわゆるインレット圧)を検出して該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号(以下、燃料圧力信号という)を出力する燃料圧力センサ27がそれぞれ設けられている。このため、燃料圧力センサ27によって検出される燃料圧力は、その燃料圧力センサ27が設けられているインジェクタIJ1〜IJ4の燃料噴射動作によって変動する。尚、以下の説明において、燃料圧力とは、特に断らなければ、燃料圧力センサ27によって検出される燃料圧力のことであり、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口の燃料圧力のことである。
【0033】
そして、各インジェクタIJ1〜IJ4は、個別の通信線L1〜L4を介して、ECU11と通信可能に接続されている。
一方、エンジンECU11には、エンジン13の運転状態を検出するための様々なセンサからの信号も入力される。その運転状態検出用センサとしては、例えば、周知のクランク角センサ29や、エンジン13への吸入空気量を検出する吸気量センサや、エンジン13の冷却水温を検出する水温センサや、アクセル踏み込み量センサや、コモンレール15内の燃料圧力であるコモンレール圧を検出するコモンレール圧センサや、コモンレール15内の燃料温度を検出する燃料温度センサ等がある。
【0034】
そして、エンジンECU11は、インジェクタIJ1〜IJ4に燃料を噴射させるための処理を行うマイコン31と、マイコン31がインジェクタIJ1〜IJ4と通信するための通信回路33とを備えている。
【0035】
次に、エンジンECU11と各インジェクタIJ1〜IJ4との更に詳しい構成について、図2を用い説明する。
図2に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、プログラムを実行するCPU41と、CPU41により実行されるプログラムが格納されたROM42と、CPU41による演算結果等を記憶するRAM43とを備えている。そして、CPU41がROM42内のプログラムを実行することで、運転状態検出部45と噴射指令値算出部47との機能が実現される。
【0036】
ここで、運転状態検出部45は、前述した運転状態検出用センサからの信号を読み取って、エンジン回転数や、吸入空気量や、冷却水温や、アクセル踏み込み量や、コモンレール圧や、燃料温度等のエンジン13の運転状態を検出する。尚、これらの運転状態は、燃料噴射制御のための制御パラメータである。
【0037】
そして、噴射指令値算出部47は、運転状態検出部45により検出された運転状態に基づいて、各インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間を示す噴射指令値を算出する。また、算出されたインジェクタIJ1〜IJ4毎の噴射指令値は、運転状態検出部45によって検出された運転状態の一部又は全部と共に、通信回路33から、その噴射指令値に対応するインジェクタへ送信される。
【0038】
一方、各インジェクタIJ1〜IJ4は、前述のアクチュエータ25及び燃料圧力センサ27に加えて、エンジンECU11からの噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するための処理を行うマイコン51と、マイコン51がエンジンECU11と通信するための通信回路53と、燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器55と、マイコン51からの駆動信号に応じてアクチュエータ25を駆動する駆動回路57と、を備えている。
【0039】
また、マイコン51は、プログラムを実行するCPU61と、CPU61により実行されるプログラムが格納されたROM62と、CPU61による演算結果等を記憶するRAM63と、データの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリやEEPROM)64とを備えている。そして、CPU61がROM62内のプログラムを実行することで、噴射特性検出部65と、補正値算出部66と、噴射指令値補正部67との機能が実現される。
【0040】
ここで、噴射特性検出部65は、AD変換器55に燃料圧力信号を、波形をトレースするような非常に短い一定時間Ta(本実施形態では例えば10μs)毎にAD変換させると共に、その各AD変換値を読み取り、その時系列のAD変換値(即ち、燃料圧力の検出値)に基づき、エンジンECU11から受信した運転状態も加味して、当該インジェクタの噴射特性を検出する。
【0041】
そして、補正値算出部66は、エンジンECU11から当該インジェクタへ送信される噴射指令値を補正するための補正値を、噴射特性検出部65により検出された噴射特性に基づいて算出し、その算出した補正値を不揮発性メモリ64に保存する。
【0042】
また、噴射指令値補正部67は、エンジンECU11から受信した当該インジェクタに対する噴射指令値を、補正値算出部66により算出された補正値に従い補正し、補正後の噴射指令値に基づいて、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。
【0043】
次に、エンジンECU11のマイコン31と、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51とが行う処理について、図3〜図7を用い更に詳しく説明する。
まず図3は、エンジンECU11のマイコン31が行う処理を表すフローチャートであり、(A)は、運転状態検出部45の機能を実現する運転状態検出処理を表し、(B)は、噴射指令値算出部47の機能を実現する噴射指令値送信処理を表している。尚、図3(A)の運転状態検出処理は、例えば一定時間毎に実行される。また、図3(B)の噴射指令値送信処理は、各気筒についてそれぞれ実行される処理であり、例えば、該当する気筒への燃料噴射を実施する行程(吸入行程又は圧縮行程)よりも前の所定クランク角のタイミングで実行される。
【0044】
図3(A)に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、運転状態検出処理を開始すると、まずS110にて、前述したように、運転状態検出用センサからの信号を読み取って、エンジン13の運転状態(例えば、エンジン回転数や、吸入空気量や、冷却水温や、アクセル踏み込み量や、コモンレール圧や、燃料温度等)を検出する。
【0045】
そして、続くS120にて、上記S110で検出した運転状態をRAM43の運転状態記憶領域に記憶(保存)し、その後、当該運転状態検出処理を終了する。
また、図3(B)に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、ある気筒(ここでは#nとする:nは1〜4の何れか)についての噴射指令値送信処理を開始すると、まずS150にて、RAM43の運転状態記憶領域から、現在検出しているエンジン13の運転状態を読み出す。
【0046】
そして、次のS160にて、上記S150で読み出した運転状態をROM42に記憶されているマップや数式にあてはめることにより、気筒#nの噴射パターンを設定する。
噴射パターンは、例えば噴射段数(噴射回数)、噴射開始タイミング、噴射開始タイミングからの噴射継続時間(噴射量に相当)、噴射インターバル(多段噴射の場合の噴射間隔)等のパラメータによって定められるものである。また例えば、噴射継続時間は、エンジン回転数やアクセル踏み込み量等に基づき決定した目標の噴射量を、コモンレール圧や燃料温度等に基づき所定の変換規則で時間に変換したものである。
【0047】
そして、続くS170にて、上記S160で設定した噴射パターンに基づいて、その噴射パターンに合った噴射指令値を算出する。
この噴射指令値は、気筒#nのインジェクタIJnに設けられているアクチュエータ25の駆動開始タイミング(本実施形態では駆動開始時刻)と該駆動開始タイミングからの駆動継続時間をインジェクタIJnに指示する情報である。そして、例えば、S160で設定された噴射パターンの上記パラメータのうち、噴射開始タイミングが、噴射指令値が示す情報のうちの駆動開始タイミングとして設定され、噴射継続時間が、噴射指令値が示す情報のうちの駆動継続時間として設定される。また、多段噴射の場合には、その噴射指令値が何段目の噴射のための噴射指令値であるかを示す情報も付加されても良い。
【0048】
そして、次のS180にて、S170で算出した噴射指令値を、通信回路33を介して気筒#nのインジェクタIJnへ送信する。尚、多段噴射の場合には、各段の噴射指令値を送信する。更に、S180では、上記S120でRAM43の運転状態記憶領域に記憶された運転状態の一部又は全部も、インジェクタIJnへ送信する。例えば、本実施形態では、少なくとも燃料温度が送信される。そして、このS180での送信処理が終わると、当該噴射指令値送信処理が終了する。
【0049】
次に、図4は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射指令値受信処理を表すフローチャートである。尚、この噴射指令値受信処理は、例えば一定時間毎に実行される。
【0050】
図4に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここではIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射指令値取得処理を開始すると、まずS210にて、エンジンECU11から当該インジェクタIJnへの噴射指令値が通信回路53によって受信されたか否かを判定し、噴射指令値が受信されていなければ、そのまま当該噴射指令値取得処理を終了する。一方、噴射指令値が受信されたなら、S220に進む。
【0051】
そして、S220では、受信された噴射指令値をRAM63の噴射指令値記憶領域に記憶(保存)し、更に、その噴射指令値と共にエンジンECU11から送られてきた運転状態を、RAM63の運転状態記憶領域に記憶(保存)する。そして、その後、当該噴射指令値受信処理を終了する。尚、エンジンECU11から、運転状態が噴射指令値とは別に送られてくるのであれば、その運転状態の受信確認及び記憶の処理は、当該噴射指令値受信処理とは別に行えば良い。
【0052】
次に、図5は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射制御処理を表すフローチャートである。尚、この噴射制御処理は、噴射指令値補正部67の機能を実現する処理であり、例えば一定時間毎に実行される。
【0053】
図5に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射制御処理を開始すると、まずS310にて、前述したRAM63の噴射指令値記憶領域に、未処理の噴射指令値(即ち、未だ読み出しておらず、燃料噴射の実施に使用していない噴射指令値)があるか否かを判定する。そして、未処理の噴射指令値がなければ、そのまま当該噴射制御処理を終了するが、未処理の噴射指令値があれば、S320に進んで、その未処理の噴射指令値を読み出す。
【0054】
次にS330にて、不揮発性メモリ64から噴射指令値に対する補正値を読み出す。そして、続くS340にて、S320で読み出した噴射指令値を、S330で読み出した補正値に従い補正する。
【0055】
尚、S330で読み出す不揮発性メモリ64内の補正値は、後述する図7の補正値算出処理により逐次算出されて更新されている。また、その補正値は、噴射指令値が示す駆動開始タイミングと駆動継続時間との各々に対する補正値であり、具体的には、駆動開始タイミングをどれだけ前後にずらすかを示すタイミング補正値と、駆動継続時間をどれだけ増減させるかを示す時間補正値とを含んでいる。このため、S340で補正された後の噴射指令値は、駆動開始タイミングとして、補正前の噴射指令値が示す駆動開始タイミングをタイミング補正値の分だけずらしたタイミングを示し、駆動継続時間として、補正前の噴射指令値が示す駆動継続時間を時間補正値の分だけ増減させた時間を示すものとなる。
【0056】
そして、次のS350にて、S340で補正した後の噴射指令値に基づいて、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。具体的には、補正後の噴射指令値が示す駆動開始タイミングから、補正後の噴射指令値が示す駆動継続時間が経過するまでの間、駆動回路57にアクチュエータ25を駆動させる。そして、その後、当該噴射制御処理を終了する。
【0057】
次に、図6は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う噴射特性検出処理を表すフローチャートである。尚、この噴射特性検出処理は、噴射特性検出部65の機能を実現する処理であり、前述の一定時間Ta(例えば10μs)毎に実行される。
【0058】
図6に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、噴射特性検出処理を開始すると、まずS410にて、所定の実行条件が成立しているか否かを判定する。そして、実行条件が成立していなければ、そのまま当該噴射特性検出処理を終了するが、実行条件が成立してれば、S420に進む。尚、S410で判定する実行条件としては、例えば、燃料圧力センサ27が正常であることなど、任意に設定可能である。
【0059】
そして、S420では、燃料圧力を検出する。具体的には、燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換器55にAD変換させて、そのAD変換器55によるAD変換値(即ち、燃料圧力信号の電圧値)を、燃料圧力検出値として読み取ってRAM63の燃料圧力記憶領域に記憶(保存)する。尚、このS420でAD変換器55を毎回起動することに代えて、一定時間Ta毎にAD変換器55がAD変換を行うように設定しておき、S420では、AD変換器55から、その時点での最新のAD変換値を読み取るようにしても良い。
【0060】
次にS430では、今回及び過去のS420でRAM63の燃料圧力記憶領域に記憶された時系列の燃料圧力検出値に基づき、エンジンECU11から受信した運転状態も加味して、当該インジェクタIJnの噴射特性を検出する処理を行う。そして、噴射特性を検出したなら、その検出した噴射特性を、その噴射特性に対応する噴射指令値(即ち、その噴射特性が得られることとなった噴射指令値であり、今回の燃料噴射(アクチュエータ25の駆動)に用いられた噴射指令値)と対応付けて、RAM63の噴射特性記憶領域に記憶(保存)する。そして、このS430の後、当該噴射特性検出処理を終了する。
【0061】
例えば、S430で検出する噴射特性(検出対象の噴射特性)の種類としては、燃料の噴射開始時刻や噴射終了時刻や噴射量などがある。そして、噴射開始時刻は、燃料圧力検出値が所定の噴射開始閾値を下回った時刻として検出することができ、噴射終了時刻は、燃料圧力検出値が所定の噴射終了閾値を上回った時刻として検出することができる。また、燃料を噴射していない時の燃料圧力検出値(例えば、噴射開始時刻の燃料圧力検出値)を基準圧力値として、その基準圧力値と、噴射開始時刻から噴射終了時刻までの各燃料圧力検出値との差分を積分し、その積分値とエンジンECU11から受信した燃料温度とから、噴射量を検出(推定)することができる。
【0062】
次に、図7は、各インジェクタIJ1〜IJ4のマイコン51が行う補正値算出処理を表すフローチャートである。尚、この補正値算出処理は、補正値算出部66の機能を実現する処理であり、例えば、図6の噴射特性検出処理が終了する毎に実行される。
【0063】
図7に示すように、各インジェクタIJ1〜IJ4(尚、ここでもIJnとする:nは1〜4の何れか)のマイコン51は、補正値算出処理を開始すると、まずS510にて、所定の実行条件が成立しているか否かを判定する。そして、実行条件が成立していなければ、そのまま当該補正値算出処理を終了するが、実行条件が成立してれば、S520に進む。尚、S510で判定する実行条件としては、例えば、図6の噴射特性検出処理によって1回の燃料噴射について検出すべき全種類の噴射特性の検出が完了しているということであるが、他にも任意に設定可能である。
【0064】
そして、S520では、RAM63の噴射特性記憶領域から、噴射特性検出処理で検出された噴射特性と、その噴射特性に対応する噴射指令値とを読み出す。
次にS530にて、上記S520で読み出した噴射特性と噴射指令値を用いて、エンジンECU11から通信で供給される噴射指令値を補正するための補正値を算出し、その算出した補正値を不揮発性メモリ64に記憶(保存)する。そして、その後、当該補正値算出処理を終了する。
【0065】
例えば、S520で読み出した噴射特性のうち、噴射開始時刻を「ts」とし、噴射終了時刻を「te」とし、噴射量を「Q」とし、また、S520で読み出した噴射指令値が示す情報のうち、駆動開始タイミングを「Ts」とし、駆動継続時間を「Tq」とすると、S530では、tsとTsの差分(ts−Ts)を、補正値のうちのタイミング補正値として算出する。また、S530では、エンジンECU11から受信したコモンレール圧や燃料温度等に基づいて、Tqを、エンジンECU11側で用いられる前述の変換規則とは逆の規則で噴射量qに変換し、更に、その変換した噴射量qとQとの差分(q−Q)を上記変換規則で時間に変換した値を、補正値のうちの時間補正値として算出する。このため、前述した図5の噴射制御処理におけるS340では、S320で読み出した噴射指令値が示す情報のうち、駆動開始タイミングについては、タイミング補正値の分だけ早める補正を行い、駆動継続時間については、時間補正値を加算する補正を行うこととなる。
【0066】
以上のような第1実施形態のエンジン制御システム10では、エンジンECU11とは別体の各インジェクタIJ1〜IJ4に、図6の噴射特性検出処理、図7の補正値算出処理及び図5の噴射制御処理を行うマイコン51と、AD変換器55及び駆動回路57とが備えられており、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ、噴射特性に基づき補正される前の噴射指令値が通信線L1〜L4を介して供給されるようになっている。つまり、噴射特性検出値による補正制御処理(噴射特性を検出して噴射指令値を補正しアクチュエータ25を駆動する処理)を実施する部分が、インジェクタIJ1〜IJ4の方に備えられている。
【0067】
このようなエンジン制御システム10によれば、噴射特性検出値による補正制御処理の有無にかかわらず、エンジンECU11は、同じロジックで噴射指令値を出力すれば良い。例えば、噴射特性検出値による補正制御処理を実施しないシステムに適用する場合には、インジェクタIJ1〜IJ4として、噴射特性検出値による補正制御処理を実施するものではなく、エンジンECU11からの噴射指令情値を補正せずに、その噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するものを用いたり、エンジンECU11からの噴射指令値を、ROM62又は不揮発性メモリ64に予め記憶された固定の補正値で補正し、その補正した噴射指令値に基づきアクチュエータ25を駆動するものを用いたりすれば良い。
【0068】
よって、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジンECU11の低コスト化を達成することができるようになる。特に、エンジンECU11は、噴射特性検出値による補正制御処理を行わなくて良いため、マイコン31として、性能が低くて安価なマイコンを用いることができるようになる。更に、エンジンECU11を、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジンECU11の開発効率も向上させることができる。
【0069】
また、システム全体としても、性能が低くて安価なマイコンを用いて構成することができる。なぜなら、インジェクタIJ1〜IJ4の各々が、自身について、噴射特性検出値による補正制御処理を行えば良いため、複数の気筒の噴射期間が重複したとしても、各インジェクタIJ1〜IJ4におけるマイコン51の処理負荷は1気筒分の処理負荷であって変わらないからである。よって、従来よりも性能が低くて安価なマイコンを用いて、エンジン制御システムを構成することができるようになる。
【0070】
また、本実施形態によれば、各インジェクタIJ1〜IJ4の側で噴射特性検出値による補正制御処理を行うため、噴射特性の検出結果を噴射指令値の補正に反映させるまでの応答性を上げることができる。このため、本実施形態では、多段噴射の場合であっても、前段の燃料噴射時に検出した噴射特性に基づく補正値を、次段の燃料噴射の噴射指令値を補正するのに用いることができるようにしている。尚、もちろん、多段噴射の場合には、各段について検出した噴射特性から各段専用の補正値を算出し、その各段の補正値を、次の噴射サイクルにおける同じ段の噴射指令値の補正に用いるようしても良い。
【0071】
更に、本実施形態では、燃料圧力センサ27もインジェクタIJ1〜IJ4に設けているため、その燃料圧力センサ27からAD変換器55への燃料圧信号(センサ信号)にノイズが乗ってしまうことを抑制することができ、延いては、噴射特性を精度良く検出することができるようになる。
【0072】
尚、例えば、図12に例示した従来のエンジン制御システムにおいて、インジェクタIJ1〜IJ4側で燃料圧信号を逐次AD変換し、その各AD変換値をエンジンECU1へ通信によって伝達させることにより、ノイズの影響を抑制することも考えられるが、そのように構成した場合、例えば、AD変換値のビット数が10ビットとすると、「10ビット/10μs」といった高速な通信が必要となってしまう。しかし、本実施形態によれば、そのような10μs毎の高速通信は不要である。
【0073】
一方、本実施形態では、燃料圧力センサ27が燃料圧力検出手段に相当している。また、エンジン制御ユニットとしてのエンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4に送信される噴射指令値が、噴射指令情報に相当し、インジェクタIJ1〜IJ4は、エンジン制御ユニットとは別体の装置に相当している。
【0074】
そして、エンジンECU11においては、図3(B)の噴射指令値送信処理により、指令算出手段としての機能が実現されている。また、インジェクタIJ1〜IJ4においては、AD変換器55と図6の噴射特性検出処理により、噴射特性検出手段としての機能が実現されており、図7の補正値算出処理により、補正値算出手段としての機能が実現されており、図5の噴射制御処理におけるS310〜S340の処理により、補正手段としての機能が実現されている。そして、図5の噴射制御処理におけるS350の処理と駆動回路57により、駆動手段としての機能が実現されている。
【0075】
[第2実施形態]
第1実施形態のエンジン制御システム10において、エンジンECU11のマイコン31は、噴射指令値を算出するための情報(運転状態)の1つとして、コモンレール圧センサ(図示省略)からの信号によりコモンレール圧を検出し、そのコモンレール圧に基づいて噴射指令値を算出していた。コモンレール圧(インジェクタIJ1〜IJ4に供給される燃料の圧力)によって、噴射継続時間(駆動継続時間)と噴射量との関係が変わるからである。
【0076】
ここで、コモンレール圧センサが無い場合には、以下に説明する第2実施形態のように構成することができる。
図8に示すように、第2実施形態のエンジン制御システム70は、第1実施形態と比較すると、コモンレール圧センサが無いため、インジェクタIJ1〜IJ4の少なくとも1つ(ここではIJ1とする)からエンジンECU11へ、燃料圧力検出値(燃料圧信号のAD変換値)が送信されるようになっている。
【0077】
具体的に説明すると、インジェクタIJ1のマイコン51は、アクチュエータ25を駆動していない非噴射時(例えば、燃料噴射が終了してから検出対象の燃料圧力が安定すると考えられる時間が経過した時)に、図9の圧力値送信処理を行う。
【0078】
そして、その圧力値送信処理では、まずS610にて、AD変換器55に燃料圧力信号をAD変換させて、そのAD変換値を燃料圧力検出値として読み取る。尚、図6のS420で非噴射時の燃料圧力を検出しているのであれば、その検出されている燃料圧力検出値をRAM63から読み取っても良い。
【0079】
そして、次のS620にて、上記S610で取得した燃料圧力検出値をエンジンECU11へ送信し、その後、当該圧力値送信処理を終了する。
一方、エンジンECU11のマイコン31は、図10に示す圧力値受信処理を例えば一定時間毎に実行する。
【0080】
そして、図10に示すように、エンジンECU11のマイコン31は、圧力値受信処理を開始すると、まずS710にて、インジェクタIJ1からの燃料圧力検出値が通信回路33によって受信されたか否かを判定し、燃料圧力検出値が受信されていなければ、そのまま当該圧力値受信処理を終了するが、燃料圧力検出値が受信されていれば、S720に進む。そのS720では、今回受信された燃料圧力検出値をRAM43の運転状態記憶領域に記憶(保存)し、その後、当該圧力値受信処理を終了する。
【0081】
そして、エンジンECU11のマイコン31は、図3(B)の噴射指令値送信処理では、インジェクタIJ1から受信した燃料圧力検出値を用いて、噴射指令値を算出する。つまり、コモンレール圧の代わりに、燃料噴射を実施していないときのインジェクタIJ1のインレット圧を用いて、噴射指令値を算出する。
【0082】
このような第2実施形態によれば、コモンレール圧センサが不要になるという利点がある。
また、本第2実施形態において、インジェクタIJ1からエンジンECU11へ送信される燃料圧力検出値は、噴射特性を検出するためのものではなく、コモンレール圧の代わりに用いられるものであるため、インジェクタIJ1からエンジンECU11への通信としては、例えば「10bit/1ms」といった速度の通信で良く、前述した「10ビット/10μs」といった高速な通信は勿論必要である。
【0083】
[第3実施形態]
図11に示す第3実施形態のエンジン制御システム72は、第1実施形態と比較すると、下記の点が異なっている。
【0084】
まず、インジェクタIJ1〜IJ4には、マイコン51、通信回路53、AD変換器55及び駆動回路57が備えられていない。
そして、エンジンECU11とインジェクタIJ1〜IJ4との間には、エンジンECU11からの気筒毎の噴射指令値に基づいてインジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25を駆動することにより該インジェクタIJ1〜IJ4に燃料を噴射させる噴射駆動装置としての電子駆動ユニット(以下、EDUという)75が設けられている。
【0085】
そのEDU75は、マイコン81と、マイコン81がエンジンECU11と通信するための通信回路83と、各インジェクタIJ1〜IJ4の燃料圧力センサ27からの燃料圧力信号をAD変換するAD変換器85と、マイコン81からの駆動信号に応じて各インジェクタIJ1〜IJ4のアクチュエータ25を駆動する駆動回路87と、を備えている。
【0086】
また、マイコン81は、プログラムを実行するCPU91と、CPU91により実行されるプログラムが格納されたROM92と、CPU91による演算結果等を記憶するRAM93と、データの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリやEEPROM)94とを備えている。
【0087】
そして、このエンジン制御システム72では、第1実施形態のエンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4へ送信されるのと同じ情報であって、気筒毎(インジェクタIJ1〜IJ4毎)の噴射指令値とエンジン13の運転状態とが、エンジンECU11からEDU75へ送信される。
【0088】
そして、EDU75のマイコン81は、第1実施形態のインジェクタIJ1〜IJ4におけるマイコン51が実行する処理と同じ処理を、各インジェクタIJ1〜IJ4について行う。具体的に説明すると、前述した図4〜図7の処理のうち、図4の噴射指令値受信処理は、各インジェクタIJ1〜IJ4に関して共通に行うが、図5の噴射制御処理、図6の噴射特性検出処理及び図7の補正値算出処理は、インジェクタIJ1〜IJ4の各々について行う。
【0089】
つまり、第3実施形態のエンジン制御システム72では、各インジェクタIJ1〜IJ4について噴射特性検出値による補正制御処理を実施する部分が、エンジンECU11とは別体の装置であるEDU75に備えられている。
【0090】
このため、前述した他の実施形態と同様に、噴射特性検出値による補正制御処理の有無に関して、エンジンECU11を共通化することができるようになり、部品及び構成の共通化によるエンジンECU11の低コスト化を達成することができ、また、エンジンECU11を、噴射特性検出値による補正制御処理の内容とは独立して開発することができるようになるため、エンジンECU11の開発効率も向上させることができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0092】
例えば、エンジンECU11から各インジェクタIJ1〜IJ4あるいはEDU75へは、噴射指令値(噴射指令情報)として、噴射角(噴射を開始すべきクランク角)と噴射量とを示す情報を送信し、各インジェクタIJ1〜IJ4あるいはEDU75にて、その情報を、アクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間に変換して前述の処理を行うように構成しても良い。つまり、エンジンECU11から送信される噴射指令値(噴射指令情報)としては、それの送信相手に対して、アクチュエータ25の駆動開始タイミングと駆動継続時間を指示するものであれば良く、直接的に指示する形態と間接的に指示する形態との何れでも良い。
【0093】
一方、燃料圧力センサ27が設けられる位置は、インジェクタIJ1〜IJ4の燃料取込口に限らず、コモンレール15の燃料出口(燃料供給用配管17のコモンレール15側の端)からインジェクタIJ1〜IJ4の噴射口までの燃料通路における何れかの位置で良い。
【0094】
また、燃料噴射制御の対象は、ガソリンエンジンであっても良い。また、エンジンの気筒数は4以外であっても良い。
【符号の説明】
【0095】
10,70,72…エンジン制御システム
11…エンジンECU(エンジン制御ユニット)、L1〜L4…通信線
13…エンジン(車載ディーゼルエンジン)、15…コモンレール
17…燃料供給用配管、19…燃料タンク、21…燃料ポンプ
IJ1〜IJ4…インジェクタ(燃料噴射装置)、23…噴射口
25…アクチュエータ、27…燃料圧力センサ、29…クランク角センサ
31,51,81…マイコン、33,53,83…通信回路
41,61,91…CPU、42,62,92…ROM
43,63,93…RAM、45…運転状態検出部、47…噴射指令値算出部
55,85…AD変換器、57,87…駆動回路、64,94…不揮発性メモリ
65…噴射特性検出部、66…補正値算出部、67…噴射指令値補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおいて、
前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段が、前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられており、該別体の装置へ前記エンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記別体の装置は、前記燃料噴射装置であること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記燃料噴射装置は、前記燃料圧力検出手段を備えていること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記別体の装置は、
前記燃料噴射装置とも別の装置であること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項5】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおける前記燃料噴射装置であって、
前記燃料圧力検出手段、前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段を備えており、
前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおいて、前記燃料噴射装置の前記アクチュエータを駆動することにより該燃料噴射装置に前記燃料を噴射させる噴射駆動装置であって、
前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段を備えており、
前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とする噴射駆動装置。
【請求項1】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおいて、
前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段が、前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットとは別体の装置に備えられており、該別体の装置へ前記エンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記別体の装置は、前記燃料噴射装置であること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記燃料噴射装置は、前記燃料圧力検出手段を備えていること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジン制御システムにおいて、
前記別体の装置は、
前記燃料噴射装置とも別の装置であること、
を特徴とするエンジン制御システム。
【請求項5】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおける前記燃料噴射装置であって、
前記燃料圧力検出手段、前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段を備えており、
前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
燃料ポンプによって圧送される燃料を蓄える蓄圧容器から前記燃料が供給される共に、開かれることで該燃料をエンジンの気筒へ噴射する噴射口と、駆動されることで前記噴射口を開くアクチュエータと、を有した燃料噴射装置と、
前記蓄圧容器の燃料出口から前記燃料噴射装置の噴射口までの燃料通路における所定位置に設けられ、前記噴射口からの燃料噴射に伴い変動する該燃料通路の燃料圧力を検出して、該燃料圧力に応じた電圧のセンサ信号を出力する燃料圧力検出手段と、
前記エンジンの運転状態に基づいて、前記アクチュエータの駆動開始タイミング及び駆動継続時間を指示する噴射指令情報を算出する指令算出手段と、
前記センサ信号の電圧値を一定時間毎に読み取り、その読み取り結果から、前記燃料噴射装置の噴射特性を検出する噴射特性検出手段と、
前記噴射特性検出手段により検出された噴射特性に基づいて、前記噴射指令情報を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記指令算出手段により算出された前記噴射指令情報を、前記補正値算出手段により算出された前記補正値に従い補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の噴射指令情報に基づいて前記アクチュエータを駆動する駆動手段と、
を備えたエンジン制御システムにおいて、前記燃料噴射装置の前記アクチュエータを駆動することにより該燃料噴射装置に前記燃料を噴射させる噴射駆動装置であって、
前記噴射特性検出手段、前記補正値算出手段、前記補正手段及び前記駆動手段を備えており、
前記指令算出手段を備えたエンジン制御ユニットから前記噴射指令情報が供給されること、
を特徴とする噴射駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−11231(P2013−11231A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144414(P2011−144414)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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