説明

エンジン制御装置

【課題】従来のエンジン制御装置は、ブレーキ操作がなされており、車速が一定以下という停車条件が成立すれば、わずかな停車時間であってもすべてアイドリングストップ実行可能としてエンジンを停止してしまうという問題があった。そこで本発明は、短い時間に頻繁にエンジン停止と再始動とを繰り返してしまうことを抑制しつつアイドリングストップ制御が可能なエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ブレーキ操作という第一条件と、車速がゼロという第二条件とが成立した後、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるという第三条件が成立するか否かを判断する第三条件判断手段を有し、第一条件および第二条件が成立しても、第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない。これにより、短い時間における頻繁なエンジンの停止、再始動による乗員に煩わしさを感じさせてしまうことが抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両停車時にエンジンを自動停止し、再発進する際にエンジンを自動再始動するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1のように、所定の停止条件に基づいてエンジン(内燃機関)を自動停止させ、また再始動させる内燃機関制御装置において、操舵量の推移に基づき自動停止禁止手段を備える内燃機関制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−112025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエンジン(内燃機関)制御装置では、操舵量の推移や車両の方向変化角に基づいて、自動停止禁止領域を定義し、この領域にあると判断した場合に自動停止を禁止する。
【0005】
しかし、このようなエンジン制御装置では、そもそも所定の停止条件として、ブレーキ操作がなされており、車速が一定速度以下の場合を停車条件としており、この停車条件が成立すればすべてアイドリングストップ実行可能としてエンジンを停止してしまう。つまり、たとえば駐車のための運転操作を開始してから駐車位置に駐車するまでの間に生じるわずかな停車時間も停止条件を満たしたとしてアイドリングストップを実行してしまう装置である。よって、乗員によっては、そのわずかな停車時間に行われるエンジンの停止および再始動を煩わしいと感じる場合があるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、短い時間に頻繁にエンジン停止と再始動とを繰り返してしまうことを抑制しつつアイドリングストップ制御が可能なエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するために請求項1記載の発明は、ブレーキペダルが踏まれているという第一条件と、車速がゼロという第二条件とに基づいてエンジンを停止させるアイドリングストップ制御手段(2)を備えるエンジン制御装置であって、第一条件と第二条件が成立した後、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるという第三条件が成立するか否かを判断する第三条件判断手段(6)を有し、アイドリングストップ制御手段は、第一条件および第二条件が成立しても、第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ブレーキが踏まれており(第一条件成立)、車速がゼロであっても(第二条件成立)、発進予測状態であればエンジンを停止しない。これによって、ブレーキが踏まれており、車速がゼロである状態が極短時間だけであって、すぐに再発進するような状況においてまで、エンジンを停止してしまうことが抑制できる。その結果、頻繁なエンジンの停止、再始動によって乗員に煩わしさを感じさせてしまうことが抑制できる。
【0009】
また、請求項4記載の発明のように、ブレーキペダルが踏まれているという第一条件と、車速がゼロという第二条件とに基づいてエンジンを停止させるアイドリングストップ制御手段(2)を備えるエンジン制御装置であって、車速がゼロとなったとしても、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるという第三条件が成立するか否かを判断する第三条件判断手段(6)を有し、第三条件判断手段は、第1計時期間が経過した時点で計時を終了する第1タイマー(64a)と、その第1計時期間よりも短い第2計時期間が経過した時点で計時を終了する第2タイマー(64b)とを備え、第一条件が成立し、且つ、車速が予め設定された徐行速度範囲となった場合に第1タイマーの計時を開始し、第1タイマーの計時中に、車両の再発進につながる所定の第1種運転操作を示す信号が検出された場合には、第1タイマーをリセットして最初から計時を開始し、第一条件が成立し、且つ、車速が予め設定された徐行速度範囲となっている状態において、車両の再発進につながる運転操作であるが第1種運転操作よりも車両の発進停止の繰り返しが生じる期間が短いと予想される所定の第2種運転操作を示す信号が検出される都度、第2タイマーの計時を開始させ、第1、第2タイマーの少なくとも一方が計時中の場合は発進予測状態であるとして第三条件は成立と判断する一方、第1、第2タイマーがともに計時中でない場合に、発進予測状態でないとして第三条件は不成立と判断し、第一条件および第二条件が成立しても、第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない。
【0010】
この発明では、第一条件が成立し、且つ、車速が予め設定された徐行速度範囲となった場合に第1タイマーの計時を開始している。そして、タイマー計時中は第三条件が成立として、第一条件および第二条件が成立しても、エンジンを停止しない。これはタイマー計時中であれば、仮にその計時中に車速がゼロとなったとしても、速やかな再発進が予測されると判断しているからである。この発明において、車速がゼロとなる前の状態である徐行速度範囲となった状態から第1タイマーの計時を開始させることで、車速ゼロとなる前から第三条件の判断が可能となるので、第一条件、第二条件が成立した時点ですでに第3条件が不成立している場合も想定される。よって、タイマー計時中はエンジンを停止させないことで、頻繁なエンジンの停止、再始動を抑制しつつも、走行再開までの期間が長い状態においては、エンジンが停止するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンジン制御装置1の構成例を示す模式図である。
【図2】車両をバック走行により駐車する場合を想定したイメージ図である。
【図3】エンジン制御装置1が行なう処理を示すフローチャートである。
【図4】発進予測手段6が行なう処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態においてエンジン制御装置1が行なう処理を示すフローチャートである。
【図6】第一タイマーと第二タイマーの作動タイミングを表す図である。
【図7】エンジン制御装置1の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 図1は本実施形態におけるアイドリングストップ制御を実行するエンジン制御装置の構成例を示す模式図である。
【0013】
アイドリングストップは、停止状態の車両のエンジンを停止させることで無駄な燃料消費を防止するエンジンの制御方法である。一般的にアイドリングストップの実行は、ブレーキペダルが踏まれていることと、車速がゼロであることを条件とする。今、ブレーキペダルが踏まれており、車速がゼロであるときに、アイドリングストップを実行する走行モードをエコモードと呼ぶことにする。もし、エコモードがオフになっていれば、ブレーキペダルが踏まれて、車速がゼロであっても、アイドリングストップは実行されない。このエコモードのオン、オフの切り替えは、車両乗員がスイッチ操作により選択することができる。
【0014】
本実施形態におけるエンジン制御装置1は、アイドリングストップの実行を制御するIS制御手段2を備える。IS制御手段2は、車両乗員のスイッチ操作に従って前述のエコモードを設定するエコモード設定手段3、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキ検出手段4、自車両の車速を検出する車速検出手段5、及び、車両の状態が、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるか否かを判断する発進予測手段6とに接続し、アイドリングストップを実行するか否か、つまりエンジンを停止するか否かを決定する。アイドリングストップを実行することが決定したら、接続しているエンジン始動/停止制御手段7に、エンジン8の停止制御を行うように指示する。ここでいうIS制御手段2、発進予測手段6、およびエンジン始動/停止制御手段7は、具体的にはECUがこれらの手段として機能する。
【0015】
ここで図2のように車両をバック走行により駐車する場合を考える。図2では、紙面左側から矢印の方向へ走行してきた車両が、駐車するエリアの前で一旦停止をしたと想定している(1)。(1)の状態の車両は次に、たとえば(2)のように少しだけリア方向へ走行を行って一旦停止することが考えられる。(3)では、車両の走行を再びフロント方向へ戻し、少し前へ走行を行ってまた一旦停止をする。最終的には、(4)のように、リア方向へバック走行を行って駐車(エンジン停止)することになると考えられる。
【0016】
従来のアイドリングストップは、ブレーキペダルが踏まれていること、および、車速がゼロであることの2つの条件が成立したときに車両のエンジンを停止させる。よって、図2のように車両を後退走行で駐車する時には、図2の(1)〜(3)でそれぞれ生じる一旦停止(図2に示すSTOP)および直後の走行再開のたびに、エンジン停止とエンジン再始動が繰り返されることになる。このエンジン停止と再始動による振動で、乗員が不快感を覚えてしまうおそれもある。さらには、頻繁なエンジン再始動によりバッテリー上がりも懸念される。
【0017】
そこで、本実施の形態において、エンジン制御装置1は発進予測手段6を備える。この発進予測手段6は、ブレーキ検出手段4、車速検出手段5に接続されており、ブレーキペダルが踏まれ車速がゼロとなった後に、車両が発進予測状態であるか否かを判断する。この発進予測状態とは、速やかな再発進が予測される状態である。なお、この発進予測手段6が特許請求の範囲の第三条件判断手段に相当する。
【0018】
発進予測手段6は、発進予測状態を判断するために、シフトレバー操作検出手段61、ハンドル操作検出手段62、及び方向指示レバー操作検出手段63、タイマー64を備える。IS制御手段2は、ブレーキペダルが踏まれており、車速がゼロであっても、発進予測手段6において発進予測状態であると判断されている場合にはエンジンを停止させない制御とすることで、不要なアイドリングストップを回避できるようにした。
【0019】
シフトレバー操作検出手段61は、車両のシフトレバーがドライブ入力からリバース入力に変わるなど、シフトレバーの位置が変化する操作が行われたか否かを検出する。たとえば、図2にあるように車両をバック走行により駐車する時には、(1)から(2)の操作の間に、ドライブ位置からリバースにシフトレバーを変更する。また、(2)から(3)の操作の間にはリバースからドライブにシフトレバーの位置を変更することになる。シフトレバー操作検出手段61は、シフトポジションセンサ(図示せず)からの信号に基づいて、シフトレバーの位置が変化したか否かを逐次検出する。
【0020】
また、ハンドル操作検出手段62は、車両のハンドルからの入力があったか否かを検出する。同様に図2の例では、(1)から(2)の間、もしくは(2)の操作中に乗員は、ハンドルを右回りにハンドルを操作している。また、(2)から(3)の間、もしくは(3)の操作中には左回りのハンドル操作を行っていると考えられる。ハンドル操作検出手段62はこのように、乗員がハンドルを操作中であるか否かを検出する。具体的には、操舵角を検出する操舵角センサ(図示せず)から操舵角信号を取得し、その操舵角信号に基づいて操舵角速度を演算し、操舵角速度がゼロである場合にはハンドル操作が行われていないと判断する。一方、操舵角速度がゼロでない場合にはハンドル操作が行われていると判断する。
【0021】
方向指示レバー操作検出手段63は、ウィンカー(方向指示灯)を点滅させるために操作する方向指示レバーの操作があったか否かを検出する。また方向指示レバーが操作状態(右方向指示灯あるいは左方向指示灯が継続的に点滅する位置に方向指示レバーがある状態)であるか否かを検出する。
【0022】
また、発進予測手段6はタイマー64を備える。なお、第1実施形態では1つのタイマー64のみを備える。一方、後述の第2実施形態では、第1タイマー64aと第2タイマー64bとを備える。
【0023】
発進予測手段6は、ブレーキペダルが踏まれているという条件(第一条件)と、車速がゼロという条件(第二条件)とがともに成立した場合に、タイマー64による計時を開始する。そして、タイマー64の計時時間が予め設定された計時期間を経過したら計時を終了する。上記計時期間は、あまりに頻繁なエンジン停止、再始動を抑制する観点で設定される期間であり、たとえば、5〜10秒程度とされる。また、この第1実施形態では、計時中に、シフトレバー操作、ハンドル操作、方向指示レバー操作の何れかを示す信号が検出された場合にも計時を終了する。なお、上記信号を以下では再発進信号と言う。前述の操作は、運転者が車両を走行させようとする意思を示していると考えられるからである。
【0024】
上記再発進信号が検出された場合には、発進予測手段6は、車両は、速やかな再発進が予測される発進予測状態であると判断するとともに、第一条件、第二条件が成立していれば、タイマー64による計時を一旦終了して、計時を最初からやり直す。また、車速検出手段5から逐次取得できる車速を蓄積している。上記第一条件、第二条件が成立した時点の直前の車速履歴に基づいて、上記第一条件、第二条件が成立した時点の直前の走行が、発進と停止を繰り返している状態(たとえば渋滞道路を走行している状態)かどうかも判断する。そして、発進と停止とを繰り返している状態と判断した場合も発進予測状態であると判断するともに、第一条件、第二条件が成立していれば、タイマー64による計時を一旦終了して、計時を最初からやり直す。
【0025】
また、上記再発進信号が検出されておらず、且つ、第一条件、第二条件が成立した時点の直前の走行が発進と停止を繰り返している状態でもない場合であっても、タイマー64の計時中は、速やかな再発進の可能性は否定できないので、再発進予測状態とする。
【0026】
一方、第一条件と第二条件が成立した時点における直前の走行履歴が発進と停止を繰り返している状態でなく、且つ、再発進信号が検出されずにタイマー64の計時が終了した場合には発進予測状態ではないと判断する。
【0027】
図3は、エンジン制御装置1が行なう処理を示すフローチャートである。まず、ステップS301として、アイドリングストップ制御を行なうモードである、エコモードがONであるかを確認し、エコモードがOFFであれば処理を終了する。
【0028】
エコモードがONであれば次にステップS302として、車速検出手段5により車速を検出する。車速検出手段5は、車輪速センサからの信号に基づいて車速を算出する。
【0029】
ステップS303で、ブレーキ検出手段4によりブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する。ブレーキペダルが踏まれているか否かは、図示しないブレーキペダルの踏み込み量に応じて変化するブレーキ油圧から判断する。また、ブレーキペダルが踏まれたときにオンになるブレーキスイッチからの信号に基づいてブレーキペダルが踏まれているか否かを判断してもよい。ブレーキペダルが踏まれていなければブレーキはONしていないとして、ステップ307に進む。ブレーキペダルが踏まれていれば、ブレーキONとしてステップS304に進む。
【0030】
ステップS304では、車速検出手段5により検出した車速がゼロか否かを判定する。ゼロでなければ、ステップS307へ進む。車速がゼロであればステップS305へ進む。
【0031】
ステップS303とステップS304により、ブレーキが踏まれており、且つ車速がゼロである場合に実行するステップS305では、アイドリングストップ実行フラグをONにする。この時点では、実行フラグが記録されるだけで、実際にアイドリングストップは実行されない。
【0032】
次にステップS306として、エンジン停止の制御が禁止中か否かを判断する。エンジン停止中か図4に示す処理にて決定される。この図4の処理は、アイドリングストップフラグがオフからオン似変化したときに開始し、時分割処理等により図3と並列的に実行する。なお、図4の内容は後述する。
【0033】
ステップS306における判断が制御禁止中であればステップS307へ進み、制御禁止中でない(=エンジン停止可)であればステップS308へ進む。
【0034】
ステップS307では、アイドリングストップフラグ実行フラグをオフにする。その後、ステップS308へ進む。
【0035】
ステップS308では、アイドリングストップ実行フラグの判定を行なう。このフラグがONであれば、ステップS309へ進み、アイドリングストップ実行、すなわち、エンジンを停止させる。一方、上記フラグがOFFでれば、ステップS310へ進み、アイドリングストップを実行しない。この場合、エンジン停止状態であればエンジンを再始動させることになる。
【0036】
次に、図4を説明する。なお、この図4の処理は、発進予測手段6が行なう。ステップS401では、タイマー64をスタートさせる。続くステップS402では、エンジン停止の制御を禁止とする。ステップS403では、パーキングブレーキ(PKB)がONされているか否かを判定する。ONであれば、車両はすでに駐車状態であると判断でき、エンジンを停止させてもよいので、ステップS410へ進む。一方、PKBがOFFであればステップS404へ進む。
【0037】
ステップS404では、ハンドル操作検出手段62を用いて、ハンドル操作の有無を判定する。ハンドル操作の有無は、図示しないが、操舵角センサからの信号に基づいて判断する。ハンドル操作が有ればステップS409へ進み、なければステップS405へ進む。
【0038】
ステップS405ではシフトレバー操作検出手段61を用いて、シフトレバー操作の有無を判定する。シフトレバー操作が有ればステップS409へ進み、なければステップS406へ進む。
【0039】
ステップS406では方向指示レバー操作検出手段63を用いて、方向指示レバー操作の有無を判定する。方向指示レバー操作が有ればステップS409へ進み、なければステップS407へ進む。
【0040】
ステップS407では、直前の走行が、発進と停止を繰り返している状態かどうかを判断する。この判断がYESであればステップS409へ進み、NOであればステップ408へ進む。ステップS408は、タイマー64が作動中か否か判定する。作動中であれば、ステップS404へ戻り、タイマー64が作動していなければステップS410へ進む。
【0041】
ステップS409ではエンジン停止の制御を禁止とする。一方、ステップS410では、エンジン停止の制御を許可とする。
【0042】
前述のように、図4の処理は発進予測手段6が行なう。この図4において、制御禁止は、発進予測状態であることを意味し、制御許可は、発進予測状態でないことを意味する。
【0043】
以上、説明した第1実施形態では、ブレーキが踏まれており(第一条件成立)、車速がゼロであっても(第二条件成立)、発進予測状態であればエンジンを停止しない。これによって、ブレーキが踏まれており、車速がゼロである状態が極短時間だけであって、すぐに再発進するような状況においてまでエンジンを停止してしまうことが抑制できる。その結果、頻繁なエンジンの停止、再始動によって乗員に煩わしさを感じさせてしまうことが抑制できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態は、図1のエンジン制御装置1において第1実施形態とは異なり、タイマー64として次の2種類のタイマーを備える。第1計時期間が経過した時点で計時を終了する第1タイマー64aと、その第1計時期間よりも短い第2計時期間が経過した時点で計時を終了する第2タイマー64bとである。また、これら第1タイマー64a、第2タイマー64bの計時開始時点も異なる。具体的には、第1タイマー64aは車速がゼロになる前に計時開始する。そして、この第1タイマー64aの計時開始とともに、車速がゼロになる以前からアイドリングストップの実行可否、つまりエンジンを停止すべき状態かを予測する処理を行う。
【0044】
第2実施形態における処理フローチャートを図5に沿って説明する。 まずステップS501でブレーキがONか否かを判定する。ブレーキペダルが踏まれていなければブレーキはONしていないとして、このステップ501を繰り返す。ブレーキペダルが踏まれていれば、ブレーキONとしてステップS502に進む。
【0045】
のステップS502では、車速が徐行速度範囲、たとえば時速5km以下であって、0kmより高い速度(つまり停止してはいない)であるかを判定する。車速が徐行速度範囲でなければステップS501へ戻る。車速が徐行速度範囲であればステップS503へ進む。
【0046】
ステップS503では、アイドリングストップ実行フラグをONにする。次にステップS504として第1タイマーをスタートさせる。この第1タイマーの計時期間は1分間とする。この第1タイマー64aは、このS504で開始することに加え、第1タイマーは、車両の再発進につながる所定の車両操作A(特許請求の範囲の第1種運転操作に相当)を示す信号が検出された場合にも、計時開始するタイマーである。本実施形態では、ステップS507においても計時を開始(リスタート)する。
【0047】
一方、第2タイマーは、車両の再発進につながる運転操作を示す信号が検出された場合にスタートする点は第1タイマー64aと同じである。また、第2タイマー64bも、ブレーキペダルが踏まれており、且つ、車速が徐行速度範囲となっている状態において計時を行なう。しかし、第2タイマー64bは、車両操作Aよりも車両の発進停止の繰り返しが生じる期間が短いと予想される所定の車両操作B(特許請求の範囲の第2種運転操作に相当)を示す信号が検出される都度、計時を開始する。1タイマーに対し、第2タイマーの計時期間は短くてよく、たとえば20秒間である。
【0048】
ここで、この二つのタイマーの作動タイミングについて、図6を用いて簡単に説明する。
【0049】
まずステップS503へ進んだ時点で、図6のグラフ(1)がブレーキ&車速所定以下の状態となる(t1)。すると、第1タイマーの作動を表すグラフ(2)が作動中になる。このとき、作動中なのは第1タイマーだけであって、第2タイマーは作動していないことがグラフ(3)から分かる。
【0050】
図5に戻る。ステップS505は、PKBのONを確認する。PKBがONであれば、すでに車両は駐車状態である。この場合にはステップS520へ進む。一方、PKBがOFFであればステップS506に進む。
【0051】
ステップS506では、方向指示レバー操作の有無を判定する。方向指示レバー操作がなければステップS510へ進む。一方、方向指示レバー操作が有ればステップS507へ進む。
【0052】
次に、ステップS506で方向指示レバー操作があった場合、ステップS507においてステップS504でスタートさせた第1タイマーをリスタートさせる。
【0053】
第1タイマーのリスタートは、図6では、グラフ(2)から分かる(t2時点)。また、このリスタートの原因となった車両操作はグラフ(4)に示されている。なお、ここでの車両操作が前述の車両操作Bであった場合には、第1タイマー64aのリスタートに代えて、グラフ(3)に示すように、第2タイマー64bが計時を開始する。
【0054】
ステップS508では、アイドリングストップ実行フラグをOFFにする。つまり、タイマーが計時中であることにより、アイドリングストップ実行フラグをOFFにする。
【0055】
ステップS510ではハンドル操作の有無を判定する。ハンドル操作があればステップS512に進み、なければステップS511に進む。操作の確認方法については第1実施形態と同じである。
【0056】
ステップS511では、シフトレバー操作の有無を判定する。シフトレバー操作があればステップS512に進み、なければステップS513に進む。
【0057】
ステップS510あるいはステップS511で操作有りと判定した場合、ステップS512に進んで、第二タイマーをスタートさせる。なお、既に計時中である場合には、計時を最初からやり直す。
【0058】
ステップS510とステップS511でハンドル操作もシフトレバー操作もなかった場合、ステップS513では、方向指示レバー操作の有無を判定する。方向指示レバー操作が有ればステップS515へ進み、なければステップS516に進む。
【0059】
ステップS516では、第1タイマー及び第2タイマーが作動中かどうかを判別する。どちらか一方でも作動中であれば、ステップS510に戻り、どちらも作動していなかった場合のみステップS517へ進む。
【0060】
ステップS510からステップS516を繰り返している間に、操作有りの信号が何も検出されなければ、いずれ、第1タイマー64a、第2タイマー64bとも計時が終了し、それらのタイマーの作動は終了する。この場合にはステップS517へ進む。
【0061】
一方ステップS510、S511、S513において操作有りと判断された場合には、ステップS512あるいはステップS515において、タイマーをリセットして、ステップS510〜S516の判断を繰り返す。
【0062】
ステップS517では、アイドリングストップ実行フラグをONにする。ステップS518では、ブレーキが踏まれているか否かを判定する。踏まれていれば、ステップS519へ進み、踏まれていなければ現在は走行中であるとして、ステップS521へ進む。
【0063】
ステップS519では、車速検出手段5を用いて車速を検出し、車速がゼロであるか否かを判定する。ゼロであればステップS520に進むが、ゼロでなければ、ステップS518と同様に走行中であると想定されるので、ステップS521へ進む。
【0064】
ステップS520ではアイドリングストップ実行、すなわち、エンジンを停止させる。一方、ステップS521では、アイドリングストップを実行しない。この場合、エンジン停止状態であればエンジンを再始動させることになる。ステップS520、S521を実行したら処理を終了する。そして、再度、ステップS501以下を実行する。
【0065】
このように、第2実施形態では、ブレーキONとなり、車速が徐行速度範囲となった時点から第1タイマーをスタートさせている。第2実施形態では、タイマー計時中であれば、第一条件(ブレーキペダルが踏まれていること)および第二条件(車速がゼロであること)が成立しても、エンジン停止をさせないようにしている。これはタイマー計時中であれば、仮にその計時中に車速がゼロとなったとしても、速やかな再発進が予測される(あるいは速やかな再発進の可能性がある)と判断しているからである。なお、タイマー計時中である状態は特許請求の範囲における第三条件が不成立との判断に相当し、タイマー計時終了は第三条件の成立に相当する。
【0066】
この第2実施形態において、車速がゼロとなる前の状態である徐行速度範囲となった状態から第1タイマー64aの計時を開始させることで、車速ゼロとなる前から第三条件の判断が可能となる。したがって、第一条件、第二条件が成立した時点ですでに第1タイマー終了、すなわち第三条件が不成立している場合も想定される。よって、前記第1、第2タイマーがともに計時中の場合は、アイドリングストップ制御を抑制しつつも、走行再開までの期間が長い状態においては、エンジンが停止するようになる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、次の実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0068】
たとえば、前述の第1実施形態においてタイマー64を用いないようにしてもよい。すなわち、図4において、ステップS401、408を削除してもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、タイマー64が計時中であることを乗員には通知していなかった。しかし、これに限らず、図7に示す表示器9および乗員通知手段10を備えてもよい。なお、図7においては、図1に示した構成のうちの一部を省略して示している。
【0070】
乗員通知手段10は、タイマー64が計時中の場合、ブレーキペダルが踏まれ、車速がゼロになっても、即座にはエンジン停止が行われないことを乗員に知らせるための表示を所定の表示器9により行なう。この乗員通知手段10を備えれば、乗員は、ブレーキペダルを踏み、車速がゼロになったときに、即座にエンジンが停止しなかったとしても、表示器9からその理由を知ることができるので、乗員の違和感がなくなる。
【0071】
また、前述の実施形態のIS制御手段2は、第一、第二条件に加えて、必ず第三条件を判断していた。しかし、IS制御手段2は、第一条件および第二条件が成立した場合には第三条件は判断せずにエンジンを停止させる第1モードと、第一条件および第二条件が成立しても、第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない第2モードとを実行可能としてもよい。そして、図7に示すように、IS制御手段2におけるモードを第1モードとするか第2モードとするかを、乗員の操作に基づいて設定するモード設定手段11を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン制御装置、 2 IS制御手段、 3 エコモード設定手段、
4 ブレーキ検出手段 5 車速検出手段 6 実行否検出手段
64 タイマー 7 エンジン始動/停止制御手段 8 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルが踏まれているという第一条件と、車速がゼロという第二条件とに基づいてエンジンを停止させるアイドリングストップ制御手段(2)を備えるエンジン制御装置であって、
前記第一条件と前記第二条件が成立した後、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるという第三条件が成立するか否かを判断する第三条件判断手段(6)を有し、
前記アイドリングストップ制御手段は、前記第一条件および第二条件が成立しても、前記第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない
ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記第三条件判断手段(6)は、
前記第一条件と前記第二条件が成立した場合に計時を開始し、計時期間経過後に計時を終了するタイマー(64)を有し、
前記タイマーが計時中の場合は前記発進予測状態であるとの判断を継続し、
前記タイマーの計時中に、車両の再発進につながる運転操作として予め設定された運転操作を示す信号である再発進信号が検出された場合、および、前記第一条件と前記第二条件が成立した時点における直前の走行履歴が、発進と停止を繰り返している状態である場合の少なくともいずれかであれば前記発進予測状態であるとの判断を確定し、
前記第一条件と前記第二条件が成立した時点における直前の走行履歴が発進と停止を繰り返している状態でなく、且つ、前記再発進信号が検出されずに前記タイマーの計時が終了した場合には、前記発進予測状態ではないと判断する
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記再発進信号は、シフトレバー操作を示す信号、ハンドル操作を示す信号、方向指示レバーの操作を示す信号の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
ブレーキペダルが踏まれているという第一条件と、車速がゼロという第二条件とに基づいてエンジンを停止させるアイドリングストップ制御手段(2)を備えるエンジン制御装置であって、
車速がゼロとなったとしても、速やかな再発進が予測される発進予測状態であるという第三条件が成立するか否かを判断する第三条件判断手段(6)を有し、
前記第三条件判断手段は、
第1計時期間が経過した時点で計時を終了する第1タイマー(64a)と、その第1計時期間よりも短い第2計時期間が経過した時点で計時を終了する第2タイマー(64b)とを備え、
前記第一条件が成立し、且つ、車速が予め設定された徐行速度範囲となった場合に前記第1タイマーの計時を開始し、
前記第1タイマーの計時中に、車両の再発進につながる所定の第1種運転操作を示す信号が検出された場合には、第1タイマーをリセットして最初から計時を開始し、
前記第一条件が成立し、且つ、車速が予め設定された徐行速度範囲となっている状態において、車両の再発進につながる運転操作であるが前記第1種運転操作よりも車両の発進停止の繰り返しが生じる期間が短いと予想される所定の第2種運転操作を示す信号が検出される都度、前記第2タイマーの計時を開始させ、
前記第1、第2タイマーの少なくとも一方が計時中の場合は前記発進予測状態であるとして第三条件は成立と判断する一方、前記第1、第2タイマーがともに計時中でない場合に、前記発進予測状態でないとして前記第三条件は不成立と判断し
前記第一条件および第二条件が成立しても、前記第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない
ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項5】
前記第1種運転操作を示す信号が方向指示レバーの操作を示す信号であり、前記第2種運転操作を示す信号がシフトレバー操作を示す信号およびハンドル操作を示す信号の少なくともいずれか一つである
ことを特徴とする請求項4記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記タイマーが計時中の場合、ブレーキペダルが踏まれ、車速がゼロになっても、即座にはエンジン停止が行われないことを乗員に知らせるための表示を所定の表示器(9)により行なう乗員通知手段(10)を備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記アイドリングストップ制御手段は、前記第一条件および第二条件が成立した場合には前記第三条件は判断せずにエンジンを停止させる第一モードと、前記第一条件および第二条件が成立しても、前記第三条件が成立している場合にはエンジンを停止しない第二モードとを実行可能であり、
前記アイドリングストップ制御手段におけるモードを前記第一モードとするか前記第二モードとするかを、乗員操作に基づいて設定するモード設定手段(11)を備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−104381(P2013−104381A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249908(P2011−249908)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】