エンジン自動停止再始動装置
【課題】始動装置による再始動を確実に行い、再始動時間を短くすることができるエンジン自動停止再始動装置を得る。
【解決手段】停止したエンジンの再始動条件が成立したとき、燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、エンジンの始動が未完了であれば、スタータモータへの通電を行い、エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ変速機のインプットシャフトの回転数がエンジン回転数以上であり且つインプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前進クラッチの結合度を制御してエンジンの回転数を制御し、エンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、ピニオンギアとリングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、ソレノイドへ通電させ、ピニオンギアとリングギアとが噛み合った後は、前進クラッチを開放するように構成した。
【解決手段】停止したエンジンの再始動条件が成立したとき、燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、エンジンの始動が未完了であれば、スタータモータへの通電を行い、エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ変速機のインプットシャフトの回転数がエンジン回転数以上であり且つインプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前進クラッチの結合度を制御してエンジンの回転数を制御し、エンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、ピニオンギアとリングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、ソレノイドへ通電させ、ピニオンギアとリングギアとが噛み合った後は、前進クラッチを開放するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車等の車両の燃費の改善や環境負荷の低減等を目的として、運転者の操作によりエンジンを停止するための所定の条件、例えば、車両が所定車速以下で、ブレーキペダルの踏み込み操作が行なわれること、が満たされると、自動で燃料をカットしてエンジンを自動的に停止させ、その後、運転者の操作によりエンジンを再始動するための所定の条件、例えば、ブレーキペダルの解除操作、及びアクセルペダルの踏み込み操作等、が満たされると、燃料噴射を再開してエンジンを自動的に再始動させるようにした、エンジン自動停止再始動装置が開発されている。
【0003】
従来、このようなエンジン自働停止再始動装置として、アイドルストップ後にエンジンの再始動要求が発生したとき、スタータモータへの調速通電を開始し、スタータモータ回転数がエンジンの予測回転数に近づいた時点でピニオンギアとリングギアとの連結を開始し、モータ回転数(ここではピニオンギア回転数と同義。以下同様)とエンジン回転数が同期した時点でピニオンギアとリングギアとの連結を完了し、その連結完了後にスタータモータに全力通電を行ってステータモータによりエンジンを駆動してエンジンの再始動を完了させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された従来の装置の場合、エンジンの回転が完全に停止した状態になるのを待たずに、ピニオンギアとリングギアとの噛み合い状態が実現されるので、迅速なエンジンの再始動が可能となる。
【0005】
又、従来、このようなエンジン自働停止再始動装置として、エンジンのクランク軸と車軸とをロックアップクラッチによって連結してエンジンの回転数を維持し、再始動要求が発生した時の回転数が所定回転数以下の場合は、スタータモータに通電を行ないステータモータによりエンジンを駆動してエンジンの再始動を完了させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された従来の装置の場合、エンジンが燃料噴射のみで再始動できない場合であっても、エンジンのクランク軸と車軸とをロックアップクラッチによって連結することでエンジンの回転数を維持しているため、迅速なエンジンの再始動が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4214401号公報
【特許文献1】特開2009−63001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された従来の装置に於いては、ピニオンギアとリングギアが当接する際のエンジン回転数を予測してピニオンギアとリングギアの同期を開始させるようにしているが、エンジン回転数を正確に予測するには、エンジンを制御するエンジン制御装置によりエンジンの負荷状態や経年変化などを加味して予測値を演算する必要があるため、大きな演算負荷がかかるという課題があった。又、エンジン回転数の予測が実際の回転数に
対してずれていると、ピニオンギアとリングギアが当接する際に大きな騒音が発生したり、噛み合いに失敗し、再始動が出来ないという課題があった。そのため、ピニオンギアをリングギアとの噛み合い直前で待機させる方法も提案されているが、ピニオンギアをリングギアとの噛み合い直前で待機させるためにはピニオンギアを押し出すソレノイドを予めデューティ駆動で通電できるようにする必要があり、高価な部品や電子回路を使用しなければならないという課題もあった。
【0009】
一方、特許文献2に開示された従来の装置に於いては、エンジン自動停止後もエンジン回転数を維持するために、車軸と直結状態となるようロックアップクラッチと前進クラッチを結合状態としている。その後、エンジン再始動要求に基づきエンジン停止要求がクリアされ、エンジンの再始動を始めると、エンジン再始動のためにロックアップクラッチと、前進クラッチを開放し、車輪とエンジンとの直結状態を開放したことにより、急激にエンジン回転数が低下するエンジンの場合、再開した燃料噴射による燃料が点火され燃焼する前にエンジンが停止する場合がある。このような場合に備え、スタータも駆動するが、ピニオンギア回転数とリングギア回転数が同期した後に、ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、再始動するような始動装置の場合、エンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると、噛み合いに失敗し、再始動が出来ない。このため、スタータモータを一旦停止し、エンジン回転数とスタータ回転数が共に停止後、再度ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、スタータモータを駆動して始動をやり直す必要があり、始動時間が長くなるという課題があった。
【0010】
この発明は、前記のような従来の装置に於ける課題を解決するためになされたものであり、車輌が減速中にエンジン自動停止後、エンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、再始動時間を短くすることができるエンジン自動停止再始動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、通電されることにより付勢されるソレノイドと、前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、自動停止した前記エンジンを再始動するとき、前記燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
又、この発明に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、前記エンジンの自動停止の後に再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させる制御装置を備えたエンジン自動停止再始動装置であって、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、通電されることにより付勢されるソレノイドと、前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチとを備え、前記制御装置は、前記エンジンの自動停止条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を停止させて前記エンジンを停止させ、前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエンジン自動停止再始動装置によれば、第1の駆動信号により、電源とスタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源とソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、自動停止したエンジンを再始動するとき、燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置とを備えたので、車輌が減速中にエンジン自動停止後、車輌停止前にエンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、始動時間も短くすることができる。
【0014】
又、この発明に係るエンジン自動停止再始動装置によれば、制御装置は、エンジンの自動停止条件が成立したとき、燃料噴射装置による燃料の噴射を停止させて前記エンジンを停止させ、前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合
った後は、前記前進クラッチを開放する、ように構成されているので、車輌が減速中にエンジン自動停止後、車輌停止前にエンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、始動時間も短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の始動装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の制御ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン自動停止ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン回転数制御実施判定ルーチンを示すフローチャートである。
【0016】
【図7】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、自動停止中クラッチ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、再始動後のエンジンの動作を示すタイミングチャートである。
【図11】従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、この発明のエンジン自動停止再始動装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の始動装置の詳細な構成を示すブロック図である。図1および図2に於いて、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、エンジン10と、始動装置20と、自動変速機30と、ECU(Electric Control Unit)内に設けられたエンジン自動変速機制御
装置50を備えている。エンジン10に設けられた燃料噴射装置11は、エンジン10へ燃料を供給する。エンジン10に連結された始動装置20は、ソレノイド21と、プランジャ22と、スタータモータ23と、ピニオンギア24と、ピニオンギア回転数センサ7とを備えている。
【0018】
エンジン自動変速機制御装置50は、燃料を噴射する燃料供給装置11を制御すると共に、自動停止条件あるいは再始動条件を判定して、車載バッテリー等の電源(図示せず)とスタータモータ23を接続してスタータモータ23へ通電し、又、電源とソレノイド21を接続してソレノイド21へ通電する。
【0019】
エンジン自動変速機制御装置50には、エンジン10の回転数を検出してエンジン回転
信号を出力するエンジン回転数センサ1と、トルクコンバータ31のタービン回転数を検出してタービン回転数を出力するタービン回転数センサ2と、変速機構部35へのインプットシャフト回転数を検出してインプットシャフト回転数を出力するインプットシャフト回転数センサ3と、車両の速度を検出して車速信号を出力する車速センサ4と、ペダルの動作状態を示すブレーキ信号を出力するブレーキペダル5と、アクセル開度を検出してアクセル開度信号を出力するアクセル開度センサ6と、ピニオンギア回転数センサ7と、が接続されている。
【0020】
エンジン10の回転出力は、自動変速機30内に設けられたトルクコンバータ31又は直結伝動手段であるロックアップクラッチ32と、前進クラッチ33と、インプットシャフト34とを介して、変速機構部35へと入力される。自動変速機30に設けられた機械式オイルポンプ37は、エンジン10により回転駆動され、油圧制御回路36へ油圧を供給する。油圧制御回路36は、トルクコンバータ31と、前進クラッチ33と、変速機構部35の油圧を制御する。
【0021】
エンジン自動変速機制御装置50は、車速センサ4からの車速信号と、ブレーキペダル5からのブレーキ信号と、アクセル開度センサ6からのアクセル開度信号とが入力され、これ等の信号に基づいて燃料供給装置11を制御する。又、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数検出センサ1からのエンジン回転信号と、タービン回転数検出センサ2からのタービン回転数信号と、インプットシャフト回転数検出センサ3からのインプットシャフト回転数信号とが入力され、これ等の信号に基づいて自動変速機30を制御する。
【0022】
エンジン自動変速機制御装置50は、各種のI/F回路(図示せず)と、マイクロコンピュータ(図示せず)とから構成されている。又、マイクロコンピュータは、前述の各種のセンサの検出信号などのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)と、エンジン自動停止再始動制御プログラムなどの各種の制御プログラムを実行するCPU(図示せず)と、エンジン自動停止再始動制御プログラムと、各種の制御プログラムや制御定数と、各種のテーブル等を記憶するROM(図示せず)と、各種の制御プログラムを実行した際の変数等を記憶するRAM(図示せず)等から構成されている。
【0023】
又、図2に示すように、始動装置20は、通電されることにより回転するスタータモータ23と、スタータモータ23の回転子軸に設けられたピニオンギア24と、ピニオンギア24をその軸心の方向へ押し出してエンジンのクランク軸に設けられたリングギア12と噛み合わせるためのプランジャ22と、通電されることによりプランジャ22を移動させてピニオンギア23をその軸心の方向に押し出させるソレノイド21とが設けられている。
【0024】
図3は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の制御ブロック図であり、各処理ルーチンの構成を表している。図3に於いて、エンジン自動変速機制御装置50に設けられたエンジン自動停止ルーチン51は、先ず、車速センサ4(図1参照)、ブレーキペダル5、アクセル開度センサ6等からの情報を用いてエンジンの自動停止を判定し、燃料供給装置11を停止する。エンジン自動停止ルーチン51は、エンジンの自動停止の判定に基づく自動停止要求の有無を、自動停止要求フラグF1としてエンジン回転数制御実施判定ルーチン53およびエンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54に与える。
【0025】
次に、エンジン自働停止ルーチン51は、ブレーキペダル5、アクセル開度センサ6等からの情報を用いてエンジンの再始動条件が成立したことを判定すると、エンジン再始動制御ルーチン52により始動装置20のソレノイド21とスタータモータ23への通電お
よび制御を行なわせ、エンジンを再始動させる。エンジン自働停止ルーチン51は、この発明の第1の制御装置および第2の制御装置に対応する。
【0026】
次に、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53は、エンジン回転数センサ1とインプットシャフト回転数センサ2からの情報と、エンジン自働停止ルーチン51により出されたエンジン自動停止中フラグの情報と、エンジン再始動制御ルーチン52により通電されたソレノイド21のソレノイド通電時間の情報とから、エンジン回転数制御の実施可否を判定する。又、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53は、油圧制御回路36内に設けられたロックアップクラッチ油圧制御回路361を動作させ、ロックアップクラッチ32の油圧を制御する。
【0027】
又、エンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54は、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53によるエンジン回転数制御実施の可否の判定に応じたエンジン回転数制御フラグF3の情報と、エンジン回転数センサ1とインプットシャフト回転数センサ2の情報を用いて、エンジン回転数フィードバック制御ルーチン55により、油圧制御回路36内に設けられた前進クラッチ油圧制御回路362を動作させ、前進クラッチ33の油圧をフィードバック制御する。エンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54は、この発明の第3の制御装置に対応する。
【0028】
次に、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作について、図4乃至図7を参照しながら説明する。これらの図に示す処理は、例えば、5[msec]の一定周期で実行される。図4乃至図7に於いて、ステップS101〜S108、ステップS201〜S208、ステップS301〜S308、およびステップS401〜S404の処理は、エンジン制御装置50のROM内に格納されているエンジン自動停止再始動制御プログラムによって実行される。
【0029】
エンジン自動変速機制御装置50は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、車載バッテリから電源が供給されて動作を開始し、エンジン自動変速機制御装置50内に設けられたマイクロコンピュータにより構成されたCPUが、ROM内に格納されているエンジン自動停止再始動制御プログラムを、以下の通り実行する。
【0030】
まず、エンジン自動停止ルーチンについて説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン自動停止ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン自動停止ルーチン51の詳細を示す。図4に於いて、ステップS101にてエンジン自動変速機制御装置50のマイクロコンピュータ(以下、単に、エンジン自動変速機制御装置50と称する)は、自動停止条件が成立しているか否かを判定する。
【0031】
この自動停止条件は、例えば、車速が10[km/h]以下で、かつ運転者がブレーキペダル5を踏んでいる動作状態であるときに成立する。車速は、車速センサ4から出力された車速信号に基づき検出され、ブレーキペダル5が踏まれている状態は、ブレーキペダル5からのブレーキ信号がON状態にあることで検出される。これらの信号に基づき自動停止条件が成立していれば、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」にセットされている。従って、ステップS101では、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」であるか否かの判定を行なう。
【0032】
ステップS101での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」でありエンジンの自動停止条件が成立していれば(YES)、ステップS102に進み、一方、エンジン自動停止要求フラグFが「1」でなくエンジンの自動停止条件が成立していなければ(NO)、ステップS107へ進む。
【0033】
ステップS102に進むと、エンジン自動変速機制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、エンジン10への燃料供給を停止させる。
【0034】
次に、ステップ103に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2を「1」にセットする。
【0035】
次に、ステップ104に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジンの再始動条件が成立しているか否かを判定する。この再始動条件は、例えば、運転者がブレーキペダルを解放している動作状態で、かつ運転者がアクセルペダルを踏んでいる動作状態であるときに成立する。ブレーキペダル6が解放されている動作状態は、ブレーキペダル5から出力されたブレーキ信号のOFF状態に基づくものであり、又、アクセルペダルが踏まれている動作状態は、アクセル開度センサ6から出力されたアクセル開度信号に基づくものである。再始動条件が成立していれば、エンジン自動停止要求フラグF1は「0」にクリアされている。そこでステップS104では、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」にクリアされているか否かを判定する。
【0036】
ステップS104での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」であり再始動条件が成立していると判定すれば(YES)、次のステップ105へ進み、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」ではなく再始動条件が成立していないと判定した場合(NO)には、エンジン自動停止ルーチンを終了する。
【0037】
ステップS105に進むと、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン10が回転中か否かを判定する。エンジン10が回転中の場合(YES)には、次のステップ106へ進み、エンジン20が回転していない、つまり完全に停止している場合(NO)には、エンジン自動停止ルーチンの処理を終了する。
【0038】
次に、ステップ106に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、後述する図5に示す再始動制御ルーチンを実行する。
【0039】
前述のステップS101での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」ではなくエンジンの自動停止条件が成立していないと判定して(NO)、ステップ107に進んだ場合には、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF2が「1」である場合(YES)には、エンジン10が自動停止中であると判断し、再始動条件の成立を判定すべくステップ104へ進む。一方、自動停止中フラグF1が「0」である場合(NO)には、エンジン10が自動停止中ではないと判断し、エンジン自動停止ルーチンの実行を終了する。
【0040】
次に、ステップS106に於いて実行されるエンジンの再始動制御ルーチンの実行について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン再始動制御ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン再始動制御ルーチンの52の詳細を示す。即ち、図5に於いて、ステップ201にてエンジン自動変速機制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、エンジン20へ始動用燃料を噴射させる。
【0041】
ここで、エンジン20の再始動時の燃料噴射について説明する。図9は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。図9はエンジン10が4気筒の場合を示し、図中の矢印は点火タイミングを表している。自動停止中は点火が中断され、再始動開始後所定のタイミング(ここでは、圧縮行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で点火が再開される。又、図中の斜線
記入部は燃料噴射タイミングを表している。自動停止中は燃料噴射が中断されるが、再始要求のあった時刻t1に於いて、ほぼ同時に所定の複数気筒、図9では、吸気行程にある♯1気筒と排気行程にある♯3気筒、に燃料噴射が再開され、それ以後は所定のタイミング(燃焼行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で燃料噴射が再開される。再始動開始後、ほぼ同時に♯1気筒と♯3気筒に噴射されていた燃料は、図9の時刻t2で再開された点火により、♯1気筒に於いて燃焼を開始する。
【0042】
図5に戻り、ステップ202に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数により、エンジン10が始動したか否かを判定する。エンジン10が始動していない場合、すなわち、エンジン回転数が所定値未満の場合(YES)には、次のステップ203へ進む。一方、エンジン10が始動した場合、すなわち、エンジン回転数が所定値以上の場合(NO)には、エンジン10が燃焼により始動したと判断し、ステップ206へ進む。ここで、エンジンの始動を判定するエンジン回転数の所定値は、たとえば600[rpm]である。
【0043】
次に、ステップ203に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、スタータモータ12へ通電して、ピニオンギア24を回転させる。
【0044】
次に、ステップ204に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数Nrとピニオンギア回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth未満か否かを判定する。その絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth未満の場合(YES)には、次のステップS205へ進み、絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth以上の場合(NO)には、ステップ208へ進む。ここで、回転数差閾値Ndiffthは、ピニオンギア24とリングギア22が噛み合い可能な値で、例えば、50[rpm]である。
【0045】
なお、通常、ピニオンギア24はリングギア12に比して歯数が少なく、混乱を避けるため、エンジン回転数Nr及びピニオンギア回転数Nstは、ピニオンギア24とリングギア12の歯数比を考慮して、リングギア12に於ける回転数に換算した値を用いる。
【0046】
次に、ステップ205に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ソレノイド21の通電をONにさせる。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を開始し、エンジン再始動制御ルーチンの実行を終了する。
【0047】
一方、ステップS202によりエンジン始動完了と判定(NO)してステップ206に進んだ場合、ステップS206に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジンの再始動が完了しであるため自動停止中フラグF2を「0」にリセットする。
【0048】
次に、ステップ207に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、始動装置20のスタータモータ23の通電をOFFにさせる。
【0049】
次に、ステップ208に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、始動装置12のソレノイド21の通電をOFFにさせる。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を終了し、リセットする。この場合、ソレノイド21とプランジャ22の間には吸引力が発生しないので、プランジャ22はスタータモータ23の回転軸の軸方向に移動せず、ピニオンギア24をその軸方向へ押し出すことは行われずに、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合わない状態となる。
【0050】
次に、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行について説明する。図6はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン回転数制御実施判定
ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン回転数制御実施判定ルーチンの詳細を示す。図6に於いて、ステップ301では、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF2が「1」である場合(YES)には、エンジン10が自動停止中であると判断し、再始動中か否かを判定すべくステップ302へ進む。一方、自動停止中フラグF2が「0」である場合(NO)には、エンジン10が自動停止中ではないと判断し、ステップ307へ進む。
【0051】
次に、ステップ302に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン再始動条件が成立しているか否かを判定するため、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」であるか否かを判定する。エンジン自動停止要求フラグF1が「0」の場合(YES)、再始動中と判断し、ステップ303へ進む。エンジン自動停止要求フラグF1が「1」の場合(NO)、再始動中でないと判断し、ステップ307へ進む。
【0052】
次に、ステップ303に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが予め設定された所定回転数Nss未満かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nss未満の場合(YES)、再始動時に始動装置により再始動する必要があると判断し、ステップ304へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nss以上の場合(NO)、再始動時に燃料噴射だけで自立回転し、再始動すると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定された所定回転数Nssは、燃料噴射のみでエンジンが自立回転し、再始動する回転数であり、例えば600[rpm]である。
【0053】
次に、ステップ304に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが予め設定された所定回転数Nsm以上かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nsm以上の場合(YES)、前進クラッチ33を制御することによりエンジン回転数を所定回転数Nsm以上に維持することが可能であると判断し、ステップS305へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nsm未満の場合(NO)、前進クラッチ33を制御することによりエンジン回転数を所定回転数Nsm以上に維持することが不可能であると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定された所定回転数Nsmは、スタータモータNstの最大回転数であり、例えば300[rpm]である。
【0054】
次に、ステップ305に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ソレノイド通電時間T1が予め設定した所定値未満か否かを判定する。ソレノイド通電時間T1が予め設定した設定値未満の場合(YES)、ピニオンギア24はリングギア12に噛み合っていないと判断し、ステップ306へ進む。一方、ソレノイド通電時間T1が予め設定した設定値以上の場合(NO)、ピニオンギア24はリングギア12に噛み合っていると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定した所定値はソレノイド通電開始から、ピニオンギア24が噛み合うまでに要する時間、例えば、50[ms]である。
【0055】
次に、ステップ306に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3に「1」をセットし、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行を終了する。
【0056】
前述のステップ307に進んだ場合に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3に「0」をセットし、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行を終了する。
【0057】
次に、自動停止中クラッチ制御ルーチンについて説明する。図7は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける自動停止中クラッチ制御ルーチンを示
すフローチャートであり、図3に示すエンジン自動停止中クラッチ制御ルーチンの詳細を示す。図7に於いて、ステップ401では、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止要求フラグF1が「1」か否かを判定する。自動停止要求フラグF1が「1」の場合(YES)、すなわち、エンジン自動停止中の場合、ステップ402へ進む。自動停止要求フラグF1が「0」の場合(NO)、すなわち、エンジンが再始動する場合、ステップ405へ進む。
【0058】
次に、ステップ402に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm以上か否かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm以上の場合(YES)、ステップ403へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm未満の場合(NO)、ステップ405へ進む。ここで、所定回転数Nmmは、車軸とエンジンを直結しても共振等により不快な振動が発生しない回転数であり、たとえば200[rpm]である。
【0059】
次に、ステップ403に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を結合し、ステップ404へ進む。
【0060】
次に、ステップ404に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、前進クラッチ34を結合し、自動停止中クラッチ制御ルーチンの実行を終了する。
【0061】
前述のステップS401又はステップS402からステップS405に進んだ場合、ステップ405に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3が「1」か否かを判定する。エンジン回転数制御フラグF3が「1」の場合(YES)、すなわち、エンジン回転数制御を実施する場合、ステップ406へ進む。エンジン回転数制御フラグF3が「0」の場合(NO)、すなわち、エンジン回転数制御を実施しない場合、ステップ408へ進む。
【0062】
次に、ステップ406に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を結合し、ステップ407へ進む。
【0063】
次に、ステップ407に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数Nrが予め設定した所定回転数Nsmとなるよう、エンジン回転数Nrと目標とするエンジン回転数である所定回転数Nsmを用いて、図8のブロック図で示すエンジン回転数フィードバックルーチンにより、油圧制御回路36に於ける前進クラッチ油圧制御回路362により前進クラッチ33を制御する油圧制御指示値を演算する。図8のエンジン回転数フィードバックルーチンの詳細は後述する。
【0064】
次に、ステップS405からステップ408に進んだ場合、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を開放し、ステップ409へ進む。
【0065】
ステップ409に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、前進クラッチ34を開放し、自動変速機の制御を通常制御へ移行させ、自動停止中クラッチ制御ルーチンの実行を終了する。
【0066】
次に、前述のステップS407によるエンジン回転数フィードバックルーチンについて説明する。図8は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すブロック図であり、ステップS407でのエンジン回転数フィードバック制御を示している。図8のブロック図についても、エンジン制御装置50のROM内のエンジン自動停止再始動制御プログラムによってプログラム実行される。
【0067】
エンジン回転数フィードバックルーチンは、エンジン回転数Nrと所定回転数Nsmの偏差を用いてPID制御器により制御出力値を演算するフィードバック制御部801と、所定回転数Nsmにゲインを乗じて制御出力値を演算するフィードフォワード制御部802からなる。前進クラッチ33を制御する油圧制御回路36の前進クラッチ油圧制御回路362への最終指示値は、フィードバック制御部801の出力とフィードフォワード制御部802の出力との和から求められる。
【0068】
ここで、フィードバック制御部801について詳細に説明する。フィードバック制御部801は、エンジン回転数Nrと第2の所定回転数Nsmの偏差a1と、その偏差a1の積分値にゲインCKiを乗じた値a2と、偏差a1の微分値にゲインCKdを乗じた値a3との総和a0に、ゲインCKpを乗じた値Aを算出して出力する。ゲインCKi、ゲインCKd、ゲインCKpは、予め車輌実験などにより求めた値である。
【0069】
次に、フィードフォワード制御部802について詳細に説明する。フィードフォワード制御部802は、所定回転数NsmにゲインCKffを乗じた値Bを出力する。ゲインCKffは、予め車輌実験などにより求めた値である。前進クラッチ33を制御する前進クラッチ油圧制御回路362への指示値Cは、フィードバック制御部801の出力Aとフィードフォワード制御部802の出力Bとの和として算出される。
【0070】
次に、タイミングチャートの時刻に沿って、エンジン自動停止再始動装置の動作を説明する。図10は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、再始動後のエンジンの動作を示すタイミングチャートであり、車両走行状態からエンジン自動停止を実施し、エンジン回転中にピニオンギア24とリングギア12を噛みわせ、スタータモータ23のクランキングによりエンジン再始動を行った場合の動作を示す。
【0071】
図10に於いて、(a)はエンジン回転数Nrと、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア回転数Nstと、変速機のインプットシャフト回転数Nisの時間的推移を示す。(b)は自動停止要求フラグF1の状態を示し、自動停止条件が成立した場合は「1」にセットされ、再始動条件が成立した場合には「0」にリセットされる。(c)は自動停止中フラグF2の状態を示し、エンジン10が自動停止中である場合は「1」にセットされ、エンジン10が始動完了した場合には「0」にリセットされる。
【0072】
(d)はエンジン回転数制御フラグF3の時間的推移を示し、(e)は自動変速機のロックアップクラッチの結合、解放状態の時間的推移を示す。(f)は、自動変速機の前進クラッチの結合トルクの時間的推移を示す。(g)は燃料噴射の噴射、停止状態の時間的推移を示す。(h)はスタータモータ23の通電状態の時間的推移を示す。(i)はソレノイド21の通電状態すなわちピニオンの駆動状態の時間的推移を示す。
【0073】
図10に於いて、最初に、車両走行中に時刻t1に於いて自動停止条件が成立したとすると、(b)に示す自動停止要求フラグF1に「1」がセットされ、燃料噴射停止後、(c)に示す自動停止中フラグF2が「1」にセットされる(図4のステップ101〜103)。このとき、ロックアップクラッチ32と前進クラッチ33はエンジン回転数Nrを維持するため、車軸と直結状態となるよう、結合状態となっている(図7のステップ401〜404)。
【0074】
次に、エンジンが燃料噴射のみでの自立回転が可能な所定回転数Nss(600[rpm])を下回っている時刻t2に於いて再始動条件が成立することにより、(c)に示す自動停止要求フラグF1が「0」となり、燃料噴射を再開すると同時に、エンジン10がまだ始動完了していないため、スタータモータ41が通電されて回転を開始する(図5のステップ201−203)。又、時刻t2に於いて再始動条件成立時、インプットシャフ
ト回転数Nisが所定回転数Nsm(300[rpm])以上であるため、エンジン回転数制御フラグF3に「1」がセットされ、自動停止中クラッチ制御ルーチンにより、エンジン回転数を所定回転数Nsmとなるよう前進クラッチの結合トルクを調整する(図7のステップ401、ステップ405〜407)。
【0075】
次に、エンジン回転数Nrとピニオンギア回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiffが、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合い可能な回転数差閾値Ndiffthより小さくなる時刻t3に於いて、ソレノイド21に通電されて、ピニオンギア24を押し出し、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合いを開始する(図5のステップ205)。
【0076】
次に、時刻t4に於いて、エンジン回転数Nrと、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア回転数Nstが同期し、ピニオンギア24とリングギア12が完全に噛み合う。ここで明らかなように、時刻t3でピニオンギア24とリングギア12の噛み合わせを開始するためにピニオンギア24が軸方向に移動を開始してから、ピニオンギア24がリングギア12に完全に噛み合いピニオンギア24の移動を完了させるまでには、時刻t3から時刻t4までのタイムラグが生じることになる。又、ピニオンギア24とリングギア12が完全に噛み合うと車軸からの逆トルクをエンジンに伝達しないよう、エンジン回転数制御フラグF3が「0」となり(図6のステップ305−307)、ロックアップクラッチ32と前進クラッチ33を開放し、通常制御へ移行する(図7のステップ408〜409)。
【0077】
次に、時刻t5に於いて、燃料の燃焼によりエンジン回転数がエンジン始動完了判定回転数600[rpm]以上となり、エンジン再始動が完了し、スタータモータ23およびソレノイド21は消勢される。
【0078】
図11は従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートであり、前述の特許文献1に開示された従来の装置の場合を示している。特許文献1に示された従来の装置の場合、図11に示すように、ピニオンギアとリングギアが当接する際のエンジン回転数を予測してピニオンギアとリングギアの同期を開始させるようにしているが、エンジン回転数を正確に予測するには、エンジンを制御するエンジン制御装置によりエンジンの負荷状態や経年変化などを加味して予測値を演算する必要があるため、大きな演算負荷がかかるという課題があった。又、エンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると(図11の時刻t4)、ピニオンギアとリングギアが当接する際に大きな騒音が発生したり、噛み合いに失敗し、再始動が出来ないという課題があった。そのため、ピニオンギアを噛み合い直前で待機させる方法も提案されているが、待機させるためにはピニオンギアを押し出すソレノイドを予めデューティ駆動で通電できるようにする必要があり、高価な部品や電子回路を使用しなければならないという課題もあった。これに対して、この発明の実施の形態1によるエンジン自動停止再始動装置によれば、このような従来の装置の課題は解消される。
【0079】
図12は従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートであり、前述の特許文献2に開示された従来の装置の場合を示している。特許文献2に示された従来の装置の場合、図12に示すように、エンジン自動停止後もエンジン回転数を維持するために、車軸と直結状態となるようロックアップクラッチと前進クラッチを結合状態としている。その後、エンジン再始動要求に基づきエンジン停止要求がクリアされ、エンジンの再始動を始めると、エンジン再始動のためにロックアップクラッチと、前進クラッチを開放し、車輪とエンジンとの直結状態を開放したことにより、急激にエンジン回転数が低下するエンジンの場合、再開した燃料噴射による燃料が点火され燃焼する前にエンジンが停止する場合がある。このような場合に備え、スタータも駆動するが、ピニオンギア回転
数とリングギア回転数が同期した後に、ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、再始動するような始動装置の場合、図11と同様にエンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると(図12の時刻t4)、噛み合いに失敗し、再始動が出来ない。このため、スタータモータを一度停止し(図12の時刻t5)、エンジン回転数とスタータ回転数が共に停止後(図12の時刻t6)、再度ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、スタータモータを駆動して始動をやり直す必要があり、始動時間が長くなるという課題があった。これに対して、この発明の実施の形態1によるエンジン自動停止再始動装置によれば、このような従来の装置の課題は解消される。
【0080】
以上のように、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌減速中にエンジンを自動停止し、再始動する場合に、前進クラッチ33の締結力を制御することによりエンジン回転数が所定回転数となるように制御されているため、リングギア12の回転数変動が小さく、噛み合いが確実に実施でき、再始動時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジン回転数センサ 2 タービン回転数センサ
3 インプットシャフト回転数センサ 4 車速センサ
5 ブレーキペダル 6 アクセル開度センサ
10 エンジン 11 燃料噴射装置
12 リングギア 20 始動装置
21 ソレノイド 22 プランジャ
23 スタータモータ 24 ピニオンギア
50 エンジン自動変速機制御装置 36 油圧制御回路
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車等の車両の燃費の改善や環境負荷の低減等を目的として、運転者の操作によりエンジンを停止するための所定の条件、例えば、車両が所定車速以下で、ブレーキペダルの踏み込み操作が行なわれること、が満たされると、自動で燃料をカットしてエンジンを自動的に停止させ、その後、運転者の操作によりエンジンを再始動するための所定の条件、例えば、ブレーキペダルの解除操作、及びアクセルペダルの踏み込み操作等、が満たされると、燃料噴射を再開してエンジンを自動的に再始動させるようにした、エンジン自動停止再始動装置が開発されている。
【0003】
従来、このようなエンジン自働停止再始動装置として、アイドルストップ後にエンジンの再始動要求が発生したとき、スタータモータへの調速通電を開始し、スタータモータ回転数がエンジンの予測回転数に近づいた時点でピニオンギアとリングギアとの連結を開始し、モータ回転数(ここではピニオンギア回転数と同義。以下同様)とエンジン回転数が同期した時点でピニオンギアとリングギアとの連結を完了し、その連結完了後にスタータモータに全力通電を行ってステータモータによりエンジンを駆動してエンジンの再始動を完了させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された従来の装置の場合、エンジンの回転が完全に停止した状態になるのを待たずに、ピニオンギアとリングギアとの噛み合い状態が実現されるので、迅速なエンジンの再始動が可能となる。
【0005】
又、従来、このようなエンジン自働停止再始動装置として、エンジンのクランク軸と車軸とをロックアップクラッチによって連結してエンジンの回転数を維持し、再始動要求が発生した時の回転数が所定回転数以下の場合は、スタータモータに通電を行ないステータモータによりエンジンを駆動してエンジンの再始動を完了させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された従来の装置の場合、エンジンが燃料噴射のみで再始動できない場合であっても、エンジンのクランク軸と車軸とをロックアップクラッチによって連結することでエンジンの回転数を維持しているため、迅速なエンジンの再始動が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4214401号公報
【特許文献1】特開2009−63001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された従来の装置に於いては、ピニオンギアとリングギアが当接する際のエンジン回転数を予測してピニオンギアとリングギアの同期を開始させるようにしているが、エンジン回転数を正確に予測するには、エンジンを制御するエンジン制御装置によりエンジンの負荷状態や経年変化などを加味して予測値を演算する必要があるため、大きな演算負荷がかかるという課題があった。又、エンジン回転数の予測が実際の回転数に
対してずれていると、ピニオンギアとリングギアが当接する際に大きな騒音が発生したり、噛み合いに失敗し、再始動が出来ないという課題があった。そのため、ピニオンギアをリングギアとの噛み合い直前で待機させる方法も提案されているが、ピニオンギアをリングギアとの噛み合い直前で待機させるためにはピニオンギアを押し出すソレノイドを予めデューティ駆動で通電できるようにする必要があり、高価な部品や電子回路を使用しなければならないという課題もあった。
【0009】
一方、特許文献2に開示された従来の装置に於いては、エンジン自動停止後もエンジン回転数を維持するために、車軸と直結状態となるようロックアップクラッチと前進クラッチを結合状態としている。その後、エンジン再始動要求に基づきエンジン停止要求がクリアされ、エンジンの再始動を始めると、エンジン再始動のためにロックアップクラッチと、前進クラッチを開放し、車輪とエンジンとの直結状態を開放したことにより、急激にエンジン回転数が低下するエンジンの場合、再開した燃料噴射による燃料が点火され燃焼する前にエンジンが停止する場合がある。このような場合に備え、スタータも駆動するが、ピニオンギア回転数とリングギア回転数が同期した後に、ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、再始動するような始動装置の場合、エンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると、噛み合いに失敗し、再始動が出来ない。このため、スタータモータを一旦停止し、エンジン回転数とスタータ回転数が共に停止後、再度ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、スタータモータを駆動して始動をやり直す必要があり、始動時間が長くなるという課題があった。
【0010】
この発明は、前記のような従来の装置に於ける課題を解決するためになされたものであり、車輌が減速中にエンジン自動停止後、エンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、再始動時間を短くすることができるエンジン自動停止再始動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、通電されることにより付勢されるソレノイドと、前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、自動停止した前記エンジンを再始動するとき、前記燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
又、この発明に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、前記エンジンの自動停止の後に再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させる制御装置を備えたエンジン自動停止再始動装置であって、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、通電されることにより付勢されるソレノイドと、前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチとを備え、前記制御装置は、前記エンジンの自動停止条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を停止させて前記エンジンを停止させ、前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエンジン自動停止再始動装置によれば、第1の駆動信号により、電源とスタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源とソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、自動停止したエンジンを再始動するとき、燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置とを備えたので、車輌が減速中にエンジン自動停止後、車輌停止前にエンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、始動時間も短くすることができる。
【0014】
又、この発明に係るエンジン自動停止再始動装置によれば、制御装置は、エンジンの自動停止条件が成立したとき、燃料噴射装置による燃料の噴射を停止させて前記エンジンを停止させ、前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合
った後は、前記前進クラッチを開放する、ように構成されているので、車輌が減速中にエンジン自動停止後、車輌停止前にエンジンを再始動する場合に、始動装置による再始動を確実に行い、始動時間も短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の始動装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の制御ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン自動停止ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン回転数制御実施判定ルーチンを示すフローチャートである。
【0016】
【図7】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、自動停止中クラッチ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、再始動後のエンジンの動作を示すタイミングチャートである。
【図11】従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、この発明のエンジン自動停止再始動装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の始動装置の詳細な構成を示すブロック図である。図1および図2に於いて、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、エンジン10と、始動装置20と、自動変速機30と、ECU(Electric Control Unit)内に設けられたエンジン自動変速機制御
装置50を備えている。エンジン10に設けられた燃料噴射装置11は、エンジン10へ燃料を供給する。エンジン10に連結された始動装置20は、ソレノイド21と、プランジャ22と、スタータモータ23と、ピニオンギア24と、ピニオンギア回転数センサ7とを備えている。
【0018】
エンジン自動変速機制御装置50は、燃料を噴射する燃料供給装置11を制御すると共に、自動停止条件あるいは再始動条件を判定して、車載バッテリー等の電源(図示せず)とスタータモータ23を接続してスタータモータ23へ通電し、又、電源とソレノイド21を接続してソレノイド21へ通電する。
【0019】
エンジン自動変速機制御装置50には、エンジン10の回転数を検出してエンジン回転
信号を出力するエンジン回転数センサ1と、トルクコンバータ31のタービン回転数を検出してタービン回転数を出力するタービン回転数センサ2と、変速機構部35へのインプットシャフト回転数を検出してインプットシャフト回転数を出力するインプットシャフト回転数センサ3と、車両の速度を検出して車速信号を出力する車速センサ4と、ペダルの動作状態を示すブレーキ信号を出力するブレーキペダル5と、アクセル開度を検出してアクセル開度信号を出力するアクセル開度センサ6と、ピニオンギア回転数センサ7と、が接続されている。
【0020】
エンジン10の回転出力は、自動変速機30内に設けられたトルクコンバータ31又は直結伝動手段であるロックアップクラッチ32と、前進クラッチ33と、インプットシャフト34とを介して、変速機構部35へと入力される。自動変速機30に設けられた機械式オイルポンプ37は、エンジン10により回転駆動され、油圧制御回路36へ油圧を供給する。油圧制御回路36は、トルクコンバータ31と、前進クラッチ33と、変速機構部35の油圧を制御する。
【0021】
エンジン自動変速機制御装置50は、車速センサ4からの車速信号と、ブレーキペダル5からのブレーキ信号と、アクセル開度センサ6からのアクセル開度信号とが入力され、これ等の信号に基づいて燃料供給装置11を制御する。又、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数検出センサ1からのエンジン回転信号と、タービン回転数検出センサ2からのタービン回転数信号と、インプットシャフト回転数検出センサ3からのインプットシャフト回転数信号とが入力され、これ等の信号に基づいて自動変速機30を制御する。
【0022】
エンジン自動変速機制御装置50は、各種のI/F回路(図示せず)と、マイクロコンピュータ(図示せず)とから構成されている。又、マイクロコンピュータは、前述の各種のセンサの検出信号などのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)と、エンジン自動停止再始動制御プログラムなどの各種の制御プログラムを実行するCPU(図示せず)と、エンジン自動停止再始動制御プログラムと、各種の制御プログラムや制御定数と、各種のテーブル等を記憶するROM(図示せず)と、各種の制御プログラムを実行した際の変数等を記憶するRAM(図示せず)等から構成されている。
【0023】
又、図2に示すように、始動装置20は、通電されることにより回転するスタータモータ23と、スタータモータ23の回転子軸に設けられたピニオンギア24と、ピニオンギア24をその軸心の方向へ押し出してエンジンのクランク軸に設けられたリングギア12と噛み合わせるためのプランジャ22と、通電されることによりプランジャ22を移動させてピニオンギア23をその軸心の方向に押し出させるソレノイド21とが設けられている。
【0024】
図3は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の制御ブロック図であり、各処理ルーチンの構成を表している。図3に於いて、エンジン自動変速機制御装置50に設けられたエンジン自動停止ルーチン51は、先ず、車速センサ4(図1参照)、ブレーキペダル5、アクセル開度センサ6等からの情報を用いてエンジンの自動停止を判定し、燃料供給装置11を停止する。エンジン自動停止ルーチン51は、エンジンの自動停止の判定に基づく自動停止要求の有無を、自動停止要求フラグF1としてエンジン回転数制御実施判定ルーチン53およびエンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54に与える。
【0025】
次に、エンジン自働停止ルーチン51は、ブレーキペダル5、アクセル開度センサ6等からの情報を用いてエンジンの再始動条件が成立したことを判定すると、エンジン再始動制御ルーチン52により始動装置20のソレノイド21とスタータモータ23への通電お
よび制御を行なわせ、エンジンを再始動させる。エンジン自働停止ルーチン51は、この発明の第1の制御装置および第2の制御装置に対応する。
【0026】
次に、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53は、エンジン回転数センサ1とインプットシャフト回転数センサ2からの情報と、エンジン自働停止ルーチン51により出されたエンジン自動停止中フラグの情報と、エンジン再始動制御ルーチン52により通電されたソレノイド21のソレノイド通電時間の情報とから、エンジン回転数制御の実施可否を判定する。又、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53は、油圧制御回路36内に設けられたロックアップクラッチ油圧制御回路361を動作させ、ロックアップクラッチ32の油圧を制御する。
【0027】
又、エンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54は、エンジン回転数制御実施判定ルーチン53によるエンジン回転数制御実施の可否の判定に応じたエンジン回転数制御フラグF3の情報と、エンジン回転数センサ1とインプットシャフト回転数センサ2の情報を用いて、エンジン回転数フィードバック制御ルーチン55により、油圧制御回路36内に設けられた前進クラッチ油圧制御回路362を動作させ、前進クラッチ33の油圧をフィードバック制御する。エンジン自動停止中クラッチ制御ルーチン54は、この発明の第3の制御装置に対応する。
【0028】
次に、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作について、図4乃至図7を参照しながら説明する。これらの図に示す処理は、例えば、5[msec]の一定周期で実行される。図4乃至図7に於いて、ステップS101〜S108、ステップS201〜S208、ステップS301〜S308、およびステップS401〜S404の処理は、エンジン制御装置50のROM内に格納されているエンジン自動停止再始動制御プログラムによって実行される。
【0029】
エンジン自動変速機制御装置50は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、車載バッテリから電源が供給されて動作を開始し、エンジン自動変速機制御装置50内に設けられたマイクロコンピュータにより構成されたCPUが、ROM内に格納されているエンジン自動停止再始動制御プログラムを、以下の通り実行する。
【0030】
まず、エンジン自動停止ルーチンについて説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン自動停止ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン自動停止ルーチン51の詳細を示す。図4に於いて、ステップS101にてエンジン自動変速機制御装置50のマイクロコンピュータ(以下、単に、エンジン自動変速機制御装置50と称する)は、自動停止条件が成立しているか否かを判定する。
【0031】
この自動停止条件は、例えば、車速が10[km/h]以下で、かつ運転者がブレーキペダル5を踏んでいる動作状態であるときに成立する。車速は、車速センサ4から出力された車速信号に基づき検出され、ブレーキペダル5が踏まれている状態は、ブレーキペダル5からのブレーキ信号がON状態にあることで検出される。これらの信号に基づき自動停止条件が成立していれば、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」にセットされている。従って、ステップS101では、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」であるか否かの判定を行なう。
【0032】
ステップS101での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」でありエンジンの自動停止条件が成立していれば(YES)、ステップS102に進み、一方、エンジン自動停止要求フラグFが「1」でなくエンジンの自動停止条件が成立していなければ(NO)、ステップS107へ進む。
【0033】
ステップS102に進むと、エンジン自動変速機制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、エンジン10への燃料供給を停止させる。
【0034】
次に、ステップ103に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2を「1」にセットする。
【0035】
次に、ステップ104に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジンの再始動条件が成立しているか否かを判定する。この再始動条件は、例えば、運転者がブレーキペダルを解放している動作状態で、かつ運転者がアクセルペダルを踏んでいる動作状態であるときに成立する。ブレーキペダル6が解放されている動作状態は、ブレーキペダル5から出力されたブレーキ信号のOFF状態に基づくものであり、又、アクセルペダルが踏まれている動作状態は、アクセル開度センサ6から出力されたアクセル開度信号に基づくものである。再始動条件が成立していれば、エンジン自動停止要求フラグF1は「0」にクリアされている。そこでステップS104では、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」にクリアされているか否かを判定する。
【0036】
ステップS104での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」であり再始動条件が成立していると判定すれば(YES)、次のステップ105へ進み、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」ではなく再始動条件が成立していないと判定した場合(NO)には、エンジン自動停止ルーチンを終了する。
【0037】
ステップS105に進むと、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン10が回転中か否かを判定する。エンジン10が回転中の場合(YES)には、次のステップ106へ進み、エンジン20が回転していない、つまり完全に停止している場合(NO)には、エンジン自動停止ルーチンの処理を終了する。
【0038】
次に、ステップ106に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、後述する図5に示す再始動制御ルーチンを実行する。
【0039】
前述のステップS101での判定の結果、エンジン自動停止要求フラグF1が「1」ではなくエンジンの自動停止条件が成立していないと判定して(NO)、ステップ107に進んだ場合には、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF2が「1」である場合(YES)には、エンジン10が自動停止中であると判断し、再始動条件の成立を判定すべくステップ104へ進む。一方、自動停止中フラグF1が「0」である場合(NO)には、エンジン10が自動停止中ではないと判断し、エンジン自動停止ルーチンの実行を終了する。
【0040】
次に、ステップS106に於いて実行されるエンジンの再始動制御ルーチンの実行について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン再始動制御ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン再始動制御ルーチンの52の詳細を示す。即ち、図5に於いて、ステップ201にてエンジン自動変速機制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、エンジン20へ始動用燃料を噴射させる。
【0041】
ここで、エンジン20の再始動時の燃料噴射について説明する。図9は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、エンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。図9はエンジン10が4気筒の場合を示し、図中の矢印は点火タイミングを表している。自動停止中は点火が中断され、再始動開始後所定のタイミング(ここでは、圧縮行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で点火が再開される。又、図中の斜線
記入部は燃料噴射タイミングを表している。自動停止中は燃料噴射が中断されるが、再始要求のあった時刻t1に於いて、ほぼ同時に所定の複数気筒、図9では、吸気行程にある♯1気筒と排気行程にある♯3気筒、に燃料噴射が再開され、それ以後は所定のタイミング(燃焼行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で燃料噴射が再開される。再始動開始後、ほぼ同時に♯1気筒と♯3気筒に噴射されていた燃料は、図9の時刻t2で再開された点火により、♯1気筒に於いて燃焼を開始する。
【0042】
図5に戻り、ステップ202に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数により、エンジン10が始動したか否かを判定する。エンジン10が始動していない場合、すなわち、エンジン回転数が所定値未満の場合(YES)には、次のステップ203へ進む。一方、エンジン10が始動した場合、すなわち、エンジン回転数が所定値以上の場合(NO)には、エンジン10が燃焼により始動したと判断し、ステップ206へ進む。ここで、エンジンの始動を判定するエンジン回転数の所定値は、たとえば600[rpm]である。
【0043】
次に、ステップ203に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、スタータモータ12へ通電して、ピニオンギア24を回転させる。
【0044】
次に、ステップ204に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数Nrとピニオンギア回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth未満か否かを判定する。その絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth未満の場合(YES)には、次のステップS205へ進み、絶対値Ndiffが回転数差閾値Ndiffth以上の場合(NO)には、ステップ208へ進む。ここで、回転数差閾値Ndiffthは、ピニオンギア24とリングギア22が噛み合い可能な値で、例えば、50[rpm]である。
【0045】
なお、通常、ピニオンギア24はリングギア12に比して歯数が少なく、混乱を避けるため、エンジン回転数Nr及びピニオンギア回転数Nstは、ピニオンギア24とリングギア12の歯数比を考慮して、リングギア12に於ける回転数に換算した値を用いる。
【0046】
次に、ステップ205に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ソレノイド21の通電をONにさせる。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を開始し、エンジン再始動制御ルーチンの実行を終了する。
【0047】
一方、ステップS202によりエンジン始動完了と判定(NO)してステップ206に進んだ場合、ステップS206に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジンの再始動が完了しであるため自動停止中フラグF2を「0」にリセットする。
【0048】
次に、ステップ207に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、始動装置20のスタータモータ23の通電をOFFにさせる。
【0049】
次に、ステップ208に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、始動装置12のソレノイド21の通電をOFFにさせる。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を終了し、リセットする。この場合、ソレノイド21とプランジャ22の間には吸引力が発生しないので、プランジャ22はスタータモータ23の回転軸の軸方向に移動せず、ピニオンギア24をその軸方向へ押し出すことは行われずに、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合わない状態となる。
【0050】
次に、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行について説明する。図6はこの発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於けるエンジン回転数制御実施判定
ルーチンを示すフローチャートであり、図3に示すエンジン回転数制御実施判定ルーチンの詳細を示す。図6に於いて、ステップ301では、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止中フラグF2が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF2が「1」である場合(YES)には、エンジン10が自動停止中であると判断し、再始動中か否かを判定すべくステップ302へ進む。一方、自動停止中フラグF2が「0」である場合(NO)には、エンジン10が自動停止中ではないと判断し、ステップ307へ進む。
【0051】
次に、ステップ302に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン再始動条件が成立しているか否かを判定するため、エンジン自動停止要求フラグF1が「0」であるか否かを判定する。エンジン自動停止要求フラグF1が「0」の場合(YES)、再始動中と判断し、ステップ303へ進む。エンジン自動停止要求フラグF1が「1」の場合(NO)、再始動中でないと判断し、ステップ307へ進む。
【0052】
次に、ステップ303に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが予め設定された所定回転数Nss未満かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nss未満の場合(YES)、再始動時に始動装置により再始動する必要があると判断し、ステップ304へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nss以上の場合(NO)、再始動時に燃料噴射だけで自立回転し、再始動すると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定された所定回転数Nssは、燃料噴射のみでエンジンが自立回転し、再始動する回転数であり、例えば600[rpm]である。
【0053】
次に、ステップ304に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが予め設定された所定回転数Nsm以上かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nsm以上の場合(YES)、前進クラッチ33を制御することによりエンジン回転数を所定回転数Nsm以上に維持することが可能であると判断し、ステップS305へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nsm未満の場合(NO)、前進クラッチ33を制御することによりエンジン回転数を所定回転数Nsm以上に維持することが不可能であると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定された所定回転数Nsmは、スタータモータNstの最大回転数であり、例えば300[rpm]である。
【0054】
次に、ステップ305に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ソレノイド通電時間T1が予め設定した所定値未満か否かを判定する。ソレノイド通電時間T1が予め設定した設定値未満の場合(YES)、ピニオンギア24はリングギア12に噛み合っていないと判断し、ステップ306へ進む。一方、ソレノイド通電時間T1が予め設定した設定値以上の場合(NO)、ピニオンギア24はリングギア12に噛み合っていると判断し、ステップ307へ進む。ここで、予め設定した所定値はソレノイド通電開始から、ピニオンギア24が噛み合うまでに要する時間、例えば、50[ms]である。
【0055】
次に、ステップ306に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3に「1」をセットし、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行を終了する。
【0056】
前述のステップ307に進んだ場合に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3に「0」をセットし、エンジン回転数制御実施判定ルーチンの実行を終了する。
【0057】
次に、自動停止中クラッチ制御ルーチンについて説明する。図7は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける自動停止中クラッチ制御ルーチンを示
すフローチャートであり、図3に示すエンジン自動停止中クラッチ制御ルーチンの詳細を示す。図7に於いて、ステップ401では、エンジン自動変速機制御装置50は、自動停止要求フラグF1が「1」か否かを判定する。自動停止要求フラグF1が「1」の場合(YES)、すなわち、エンジン自動停止中の場合、ステップ402へ進む。自動停止要求フラグF1が「0」の場合(NO)、すなわち、エンジンが再始動する場合、ステップ405へ進む。
【0058】
次に、ステップ402に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm以上か否かを判定する。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm以上の場合(YES)、ステップ403へ進む。インプットシャフト回転数Nisが所定回転数Nmm未満の場合(NO)、ステップ405へ進む。ここで、所定回転数Nmmは、車軸とエンジンを直結しても共振等により不快な振動が発生しない回転数であり、たとえば200[rpm]である。
【0059】
次に、ステップ403に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を結合し、ステップ404へ進む。
【0060】
次に、ステップ404に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、前進クラッチ34を結合し、自動停止中クラッチ制御ルーチンの実行を終了する。
【0061】
前述のステップS401又はステップS402からステップS405に進んだ場合、ステップ405に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数制御フラグF3が「1」か否かを判定する。エンジン回転数制御フラグF3が「1」の場合(YES)、すなわち、エンジン回転数制御を実施する場合、ステップ406へ進む。エンジン回転数制御フラグF3が「0」の場合(NO)、すなわち、エンジン回転数制御を実施しない場合、ステップ408へ進む。
【0062】
次に、ステップ406に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を結合し、ステップ407へ進む。
【0063】
次に、ステップ407に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、エンジン回転数Nrが予め設定した所定回転数Nsmとなるよう、エンジン回転数Nrと目標とするエンジン回転数である所定回転数Nsmを用いて、図8のブロック図で示すエンジン回転数フィードバックルーチンにより、油圧制御回路36に於ける前進クラッチ油圧制御回路362により前進クラッチ33を制御する油圧制御指示値を演算する。図8のエンジン回転数フィードバックルーチンの詳細は後述する。
【0064】
次に、ステップS405からステップ408に進んだ場合、エンジン自動変速機制御装置50は、ロックアップクラッチ32を開放し、ステップ409へ進む。
【0065】
ステップ409に於いて、エンジン自動変速機制御装置50は、前進クラッチ34を開放し、自動変速機の制御を通常制御へ移行させ、自動停止中クラッチ制御ルーチンの実行を終了する。
【0066】
次に、前述のステップS407によるエンジン回転数フィードバックルーチンについて説明する。図8は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すブロック図であり、ステップS407でのエンジン回転数フィードバック制御を示している。図8のブロック図についても、エンジン制御装置50のROM内のエンジン自動停止再始動制御プログラムによってプログラム実行される。
【0067】
エンジン回転数フィードバックルーチンは、エンジン回転数Nrと所定回転数Nsmの偏差を用いてPID制御器により制御出力値を演算するフィードバック制御部801と、所定回転数Nsmにゲインを乗じて制御出力値を演算するフィードフォワード制御部802からなる。前進クラッチ33を制御する油圧制御回路36の前進クラッチ油圧制御回路362への最終指示値は、フィードバック制御部801の出力とフィードフォワード制御部802の出力との和から求められる。
【0068】
ここで、フィードバック制御部801について詳細に説明する。フィードバック制御部801は、エンジン回転数Nrと第2の所定回転数Nsmの偏差a1と、その偏差a1の積分値にゲインCKiを乗じた値a2と、偏差a1の微分値にゲインCKdを乗じた値a3との総和a0に、ゲインCKpを乗じた値Aを算出して出力する。ゲインCKi、ゲインCKd、ゲインCKpは、予め車輌実験などにより求めた値である。
【0069】
次に、フィードフォワード制御部802について詳細に説明する。フィードフォワード制御部802は、所定回転数NsmにゲインCKffを乗じた値Bを出力する。ゲインCKffは、予め車輌実験などにより求めた値である。前進クラッチ33を制御する前進クラッチ油圧制御回路362への指示値Cは、フィードバック制御部801の出力Aとフィードフォワード制御部802の出力Bとの和として算出される。
【0070】
次に、タイミングチャートの時刻に沿って、エンジン自動停止再始動装置の動作を説明する。図10は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置に於ける、再始動後のエンジンの動作を示すタイミングチャートであり、車両走行状態からエンジン自動停止を実施し、エンジン回転中にピニオンギア24とリングギア12を噛みわせ、スタータモータ23のクランキングによりエンジン再始動を行った場合の動作を示す。
【0071】
図10に於いて、(a)はエンジン回転数Nrと、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア回転数Nstと、変速機のインプットシャフト回転数Nisの時間的推移を示す。(b)は自動停止要求フラグF1の状態を示し、自動停止条件が成立した場合は「1」にセットされ、再始動条件が成立した場合には「0」にリセットされる。(c)は自動停止中フラグF2の状態を示し、エンジン10が自動停止中である場合は「1」にセットされ、エンジン10が始動完了した場合には「0」にリセットされる。
【0072】
(d)はエンジン回転数制御フラグF3の時間的推移を示し、(e)は自動変速機のロックアップクラッチの結合、解放状態の時間的推移を示す。(f)は、自動変速機の前進クラッチの結合トルクの時間的推移を示す。(g)は燃料噴射の噴射、停止状態の時間的推移を示す。(h)はスタータモータ23の通電状態の時間的推移を示す。(i)はソレノイド21の通電状態すなわちピニオンの駆動状態の時間的推移を示す。
【0073】
図10に於いて、最初に、車両走行中に時刻t1に於いて自動停止条件が成立したとすると、(b)に示す自動停止要求フラグF1に「1」がセットされ、燃料噴射停止後、(c)に示す自動停止中フラグF2が「1」にセットされる(図4のステップ101〜103)。このとき、ロックアップクラッチ32と前進クラッチ33はエンジン回転数Nrを維持するため、車軸と直結状態となるよう、結合状態となっている(図7のステップ401〜404)。
【0074】
次に、エンジンが燃料噴射のみでの自立回転が可能な所定回転数Nss(600[rpm])を下回っている時刻t2に於いて再始動条件が成立することにより、(c)に示す自動停止要求フラグF1が「0」となり、燃料噴射を再開すると同時に、エンジン10がまだ始動完了していないため、スタータモータ41が通電されて回転を開始する(図5のステップ201−203)。又、時刻t2に於いて再始動条件成立時、インプットシャフ
ト回転数Nisが所定回転数Nsm(300[rpm])以上であるため、エンジン回転数制御フラグF3に「1」がセットされ、自動停止中クラッチ制御ルーチンにより、エンジン回転数を所定回転数Nsmとなるよう前進クラッチの結合トルクを調整する(図7のステップ401、ステップ405〜407)。
【0075】
次に、エンジン回転数Nrとピニオンギア回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiffが、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合い可能な回転数差閾値Ndiffthより小さくなる時刻t3に於いて、ソレノイド21に通電されて、ピニオンギア24を押し出し、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合いを開始する(図5のステップ205)。
【0076】
次に、時刻t4に於いて、エンジン回転数Nrと、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア回転数Nstが同期し、ピニオンギア24とリングギア12が完全に噛み合う。ここで明らかなように、時刻t3でピニオンギア24とリングギア12の噛み合わせを開始するためにピニオンギア24が軸方向に移動を開始してから、ピニオンギア24がリングギア12に完全に噛み合いピニオンギア24の移動を完了させるまでには、時刻t3から時刻t4までのタイムラグが生じることになる。又、ピニオンギア24とリングギア12が完全に噛み合うと車軸からの逆トルクをエンジンに伝達しないよう、エンジン回転数制御フラグF3が「0」となり(図6のステップ305−307)、ロックアップクラッチ32と前進クラッチ33を開放し、通常制御へ移行する(図7のステップ408〜409)。
【0077】
次に、時刻t5に於いて、燃料の燃焼によりエンジン回転数がエンジン始動完了判定回転数600[rpm]以上となり、エンジン再始動が完了し、スタータモータ23およびソレノイド21は消勢される。
【0078】
図11は従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートであり、前述の特許文献1に開示された従来の装置の場合を示している。特許文献1に示された従来の装置の場合、図11に示すように、ピニオンギアとリングギアが当接する際のエンジン回転数を予測してピニオンギアとリングギアの同期を開始させるようにしているが、エンジン回転数を正確に予測するには、エンジンを制御するエンジン制御装置によりエンジンの負荷状態や経年変化などを加味して予測値を演算する必要があるため、大きな演算負荷がかかるという課題があった。又、エンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると(図11の時刻t4)、ピニオンギアとリングギアが当接する際に大きな騒音が発生したり、噛み合いに失敗し、再始動が出来ないという課題があった。そのため、ピニオンギアを噛み合い直前で待機させる方法も提案されているが、待機させるためにはピニオンギアを押し出すソレノイドを予めデューティ駆動で通電できるようにする必要があり、高価な部品や電子回路を使用しなければならないという課題もあった。これに対して、この発明の実施の形態1によるエンジン自動停止再始動装置によれば、このような従来の装置の課題は解消される。
【0079】
図12は従来のエンジン自動停止再始動装置の動作を示すタイミングチャートであり、前述の特許文献2に開示された従来の装置の場合を示している。特許文献2に示された従来の装置の場合、図12に示すように、エンジン自動停止後もエンジン回転数を維持するために、車軸と直結状態となるようロックアップクラッチと前進クラッチを結合状態としている。その後、エンジン再始動要求に基づきエンジン停止要求がクリアされ、エンジンの再始動を始めると、エンジン再始動のためにロックアップクラッチと、前進クラッチを開放し、車輪とエンジンとの直結状態を開放したことにより、急激にエンジン回転数が低下するエンジンの場合、再開した燃料噴射による燃料が点火され燃焼する前にエンジンが停止する場合がある。このような場合に備え、スタータも駆動するが、ピニオンギア回転
数とリングギア回転数が同期した後に、ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、再始動するような始動装置の場合、図11と同様にエンジン回転数の予測が実際の回転数に対してずれていると(図12の時刻t4)、噛み合いに失敗し、再始動が出来ない。このため、スタータモータを一度停止し(図12の時刻t5)、エンジン回転数とスタータ回転数が共に停止後(図12の時刻t6)、再度ピニオンギアとリングギアを噛み合せ、スタータモータを駆動して始動をやり直す必要があり、始動時間が長くなるという課題があった。これに対して、この発明の実施の形態1によるエンジン自動停止再始動装置によれば、このような従来の装置の課題は解消される。
【0080】
以上のように、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、車輌減速中にエンジンを自動停止し、再始動する場合に、前進クラッチ33の締結力を制御することによりエンジン回転数が所定回転数となるように制御されているため、リングギア12の回転数変動が小さく、噛み合いが確実に実施でき、再始動時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジン回転数センサ 2 タービン回転数センサ
3 インプットシャフト回転数センサ 4 車速センサ
5 ブレーキペダル 6 アクセル開度センサ
10 エンジン 11 燃料噴射装置
12 リングギア 20 始動装置
21 ソレノイド 22 プランジャ
23 スタータモータ 24 ピニオンギア
50 エンジン自動変速機制御装置 36 油圧制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、
通電されることにより付勢されるソレノイドと、
前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、
前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、
第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、
自動停止した前記エンジンを再始動するとき、前記燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、
燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置と、
を備えたことを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項2】
前記第3の制御装置は、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間であって、前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチを結合させて車輪からの逆トルクを前記エンジンに伝達して前記エンジンの回転数を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項3】
車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、前記エンジンの自動停止の後に再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させる制御装置、を備えたエンジン自動停止再始動装置であって、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、
通電されることにより付勢されるソレノイドと、
前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、
前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、
を備え、
前記制御装置は、
前記エンジンの自動停止条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射
を停止させて前記エンジンを停止させ、
前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、
前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、
前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する、
ことを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項1】
車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、
通電されることにより付勢されるソレノイドと、
前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、
前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、
第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する第1の制御装置と、
自動停止した前記エンジンを再始動するとき、前記燃料噴射装置を制御して前記エンジンへ燃料を噴射させ、前記エンジンの回転数が所定値未満のとき前記第1の制御装置へ前記第1の駆動信号を出力し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記第1の制御装置へ前記第2の駆動信号を出力して前記ソレノイドへ通電させる第2の制御装置と、
燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にある前記エンジンを再始動するときであって、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間に、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し得るように構成され、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する第3の制御装置と、
を備えたことを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項2】
前記第3の制御装置は、前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上である間であって、前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチを結合させて車輪からの逆トルクを前記エンジンに伝達して前記エンジンの回転数を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項3】
車輌走行中に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、前記エンジンの自動停止の後に再始動条件が成立すると前記エンジンを再始動させる制御装置、を備えたエンジン自動停止再始動装置であって、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記エンジンのクランク軸に設けられリングギアと、
通電されることにより付勢されるソレノイドと、
前記ソレノイドが付勢されたとき、前記ピニオンギアをその軸方向へ押し出して前記リングギアと噛み合わせるプランジャと、
前記エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記エンジンの発生するトルクを変速機に伝達する前進クラッチと、
を備え、
前記制御装置は、
前記エンジンの自動停止条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射
を停止させて前記エンジンを停止させ、
前記停止した前記エンジンの再始動条件が成立したとき、前記燃料噴射装置による前記燃料の噴射を再開させ、
前記燃料の噴射を再開させた後、前記エンジンの始動が未完了であれば、前記スタータモータへの通電を行い、
前記エンジンが燃料供給のみでは自立回転不可能な状態にあり、且つ前記変速機のインプットシャフトの回転数が前記エンジン回転数以上であり且つ前記インプットシャフトの回転数が所定値未満のとき、前記前進クラッチの結合度を制御して前記エンジンの回転数を制御し、前記検出されたクランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と前記ピニオンギアの回転数との回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記ソレノイドへ通電させ、前記ピニオンギアと前記リングギアとが噛み合った後は、前記前進クラッチを開放する、
ことを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−241555(P2012−241555A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110274(P2011−110274)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【特許番号】特許第5052684号(P5052684)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【特許番号】特許第5052684号(P5052684)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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