説明

エンタルピー交換およびその他の用途向け被腹膜

被覆膜は、透水性ポリマーの薄層で一表面上をコートされている多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材を含む。このような膜は、膜を通してのガス流の混合がほとんどないかまたは全くないガス流間の水分および必要に応じて熱の交換を含むエンタルピー交換器およびその他の用途での使用に特に好適である。このような膜は、有利な熱および湿気移動特性を有し、好適な機械的特性を有し、膜が湿っているか乾燥しているかのどちらかであるときにガスのクロスオーバーに対して抵抗性があり、かつ、一般に低コストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体を参照により本明細書によって援用される、2009年5月18日出願の、「エンタルピー交換およびその他の用途向け被腹膜(”Coated Membranes for Enthalpy Exchange and Other Applications”)」という表題の、米国仮特許出願第61/179,026号に関連し、そしてその優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、透水性ポリマーの薄層で一表面上をコートされている多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材を含む膜に関する。このような膜は、膜を通してのガス流の混合がほとんどないかまたはまったくないガス流間の水分および必要に応じて熱の交換に関与するエンタルピー交換器およびその他の用途での使用に特に好適である。
【背景技術】
【0003】
背景
熱回収換気装置(HRV)は、ビルへの制御された換気を提供するための換気システムとともに熱交換器を組み込んでいる機械装置である。熱交換器は、入ってくる新鮮な空気を、排気を使用して加熱するまたは冷却する。2つの空気流間で水分をまた交換する装置は、エネルギー回収換気装置(ERV)と一般に言われ、時々エンタルピー回収換気装置またはエンタルピー交換器とも言われる。
【0004】
ビルが良好な屋内空気品質を有するために、それらは、新鮮でない屋内空気と新鮮な屋外空気との交換を必要とする。ERVは、この目的のために使用することができ、ビルに持ち込まれつつある気流から過剰の湿気を除去する、または気流に湿気を加えるための方法を組み込んでいる。ビルにおける屋内空気品質を向上させることに加えて、ERVの据え付けは省エネをもたらすであろう。たとえば、暑く湿った気候においては、使用可能なエネルギーが、ビルからの冷却された空気が排出されるときに浪費される。ERVにおいては、この排気を、外部から持ち込まれつつあるより暖かい空気を冷却するために使用し、空調装置へのエネルギー消費負荷およびエアコンに関連したエネルギーを削減することができる。適切なデザインで、空調装置のサイズを小さくすることができる。ビルが余りにも湿っている傾向がある場合、ERVは湿度レベルを低くし、病気、常習欠勤および生産性低下の原因になるカビ、細菌、ウィルス、および真菌類の可能性を低下させることができる。他方では、冷たく乾燥した気候においては、エネルギーは、ビルからの暖かい空気が排出されるときに浪費され、そのうえ入ってくる空気流が余りにも乾燥しているという追加の問題があり得る。排気からの熱を入ってくる空気に移すことだけでなく、ERVは、排気流からの水蒸気をリサイクルし、湿度レベルを上げ、それによって乾燥空気によって引き起こされる皮膚刺激、乾燥肌、および呼吸器症状を低減するために用いることができる。
【0005】
気流間で熱および湿気を移動させるERVシステムにおける重要な構成要素は、EVRコアと呼ばれる。EVRの2つの最も一般的なタイプは、平面膜プレート型装置に基づくものおよび回転エンタルピーホイール装置に基づくものである。平面プレート型ERVコアは、透水性膜の層を含む。2つの気流は、ERVコアの交互層を通して、またはERVコアの反対側に導かれ、熱および湿気は膜を通して移動させられる。(エネルギーホイールとしても知られる)エンタルピーホイールERVは典型的には、吸水剤でコートされている円筒形のまたはディスク形状のハニカムコアを有する。モーターが円筒を回転させ、吸気流と排気流との間で熱および湿気を移動させる。ERVシステムは典型的にはまた、囲い、気流を移動させるためのポンプまたはファン、導管系統ならびにフィルター、制御エレクトロニクスおよびその他の構成要素を含む。
【0006】
空気は、主として新鮮でなく汚染された空気をビルから取り除くために排出されつつあるので、2つの流れがERVを通過するときに、好ましくは排気流が膜の反対側の入ってくる流れと混ざり合う可能性がないようにすべきである。しかし、多くの場合に、ERVにおけるシールまたはジョイントでの漏洩のために、および/または膜材料を通してのガスの通過が原因で、ガスのクロスオーバー汚染(流れ間漏洩)がある。
【0007】
好ましくはERVコアに使用される膜は、流れ間の温度勾配によって推進される、2つの流れ間での熱の十分な交換を可能にするために薄い。膜はまた、2つの流れ間の蒸気圧差または水濃度勾配によって推進された水分がこの材料を通過することを可能にするために、透水性である。より薄い膜は、より高い熱および水分輸送速度を有する傾向があろう。理想的には膜はまた、膜を通しての2つの流れの混合およびクロスオーバーを防ぐために、空気、および汚染物質ガスを通さない。
【0008】
ERV用途向けに使用されてきたまたは提案されてきた膜としては、セルロースフィルム;親水性ポリマーもしくは疎水性ポリマー−吸水剤混合物でコートされているかまたはそれらを含浸しているセルロース繊維もしくはガラス繊維紙または多孔性ポリマーフィルム;界面重合によって製造された薄膜複合材;不織支持層上でブローンフィルムから製造された積層膜;多孔性担体に接合されたアイオノマーフィルムを含む積層膜;ならびにスルホン化およびカルボキシル化アイオノマーフィルムが挙げられる。しかし、これらの材料のすべてが欠点を有する。たとえば、セルロースフィルムは、湿潤条件で機械的におよび寸法的に安定ではなく、凍結/解凍亀裂を受ける傾向があり、典型的にはかなり厚く(たとえば、10ミクロン超)、それはより低い透水性につながる。液体水の存在下で、水溶性成分は、親水性ポリマーおよび/またはポリマー−吸水剤混合物でコートされている紙またはポリマーフィルムから洗い流される傾向がある。吸水剤がコーティングに添加されるとき、これは、ガス輸送を阻止するために吸水剤の高い装着(>80%)および厚いコーティング層を必要とし得る;これは水輸送を低下させ得る。セルロースフィルムおよび被覆紙はまた、可燃性であり、および微生物増殖を受ける傾向がある。界面重合によって製造された薄膜複合材の場合には、コーティング洗い流しの問題を緩和するため、モノマーは、化学結合した透水性コーティングを製造するために多孔性ポリマー基材の表面上で反応させられる。このような膜は高価である傾向があり、それらの製造は、有機溶剤および他の苛酷な化学薬品の使用を伴う。また、組み込むことができる添加剤の種類は、関係する化学によって制限される。キャストされたアイオノマーフィルムを、多孔性担体、または不織布に積層されたブローンフィルム(たとえば、ポリエーテル−ブロックアミド(PEBA))に接合することによって製造された積層膜は、2つの層の異なる寸法特性(たとえば、膨潤および熱膨張)ならびに強い接合をそれらの間に生み出すことの困難さのために層間剥離する傾向がある。また、このような積層膜の水輸送性能は、アイオノマーフィルムまたはブローンフィルムが、連続の、ピンホールを含まないフィルムに加工され、次にラミネートを製造するために取り扱うことができるように十分に厚い(たとえば、5ミクロン超の)ものでなければならないため、制限される傾向がある。Nafion(登録商標)およびスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sPEEK)などのスルホン化およびカルボキシル化アイオノマーフィルムは高価である傾向があり、多くの場合、湿潤条件下に不十分な寸法安定性を有する。さらに、これらのアイオノマーポリマーは、汚染物質がポリマー鎖の反応性イオン部分に結合する可能性のために汚染および毒害を受ける傾向がある。
【0009】
膜を通してのガス流の混合がほとんどないかまたはまったくないガス流間の水分および必要に応じて熱の交換に関与するエンタルピー交換器、およびその他の用途向け膜の望ましい特性としては、一般に下記が挙げられる:
・ 高い透水性(蒸気および液体);
・ 高い吸水率;
・ 低いまたはゼロの空気および汚染物質ガス透過;
・ 不燃性;
・ 微生物増殖に対する抵抗;
・ 膜が、取り扱うのが容易であり、容易には裂けず、そして好ましくはプリーツを受け入れるおよび保持するであろうように、乾燥時または湿潤時に好都合な機械的強度および特性;
・ 液体水の存在下に良好な寸法安定性および、ERVコアの機能性を損傷するまたは危うくすることなく保守目的のためのクリーニングを可能にする洗浄可能性;
・ 膜構成要素の弊害をもたらす浸出または損失なしにおよび水輸送性能の有意な劣化または汚染物質クロスオーバーの増加なしに、所要の運転条件下での長い寿命;
・ 性能の有意な劣化なしに液体水凝縮の存在下での耐凍結/解凍サイクル性;
・ 低コスト;
・ 有機溶剤または苛酷な化学薬品を使用することなく製造できること。
【0010】
多くの場合に上記は相反する要件を表す。たとえば、低い通気性を有する材料は、低い透水性をまた有する傾向があり;ポリマーフィルムは優れた取り扱いを提供するが、かなり可燃性である傾向があり;そしてスペシャルティポリマーおよび高エンジニヤード薄膜複合材および類似材料は非常に高価である傾向がある。
【0011】
本明細書において記載される被覆膜は、上記の分野の幾つかまたはすべてにおいて以前に使用された膜に優る利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
水輸送膜は、コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含み、ここで、基材は吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、コーティングは透水性ポリマーを含む。好ましくは、ポリマーコーティングは非イオン性であり、水を選択的に通す。ポリマーコーティングは架橋することができ;これは、それを水に溶けにくくする傾向がある。好ましい実施形態においては、水輸送膜は実質的に空気を通さない。コーティングは、難燃剤、殺菌剤および/またはその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0013】
水輸送膜の製造方法は、透水性ポリマーを含む溶液を、多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材の一表面に塗布する工程と、被覆基材を乾燥させて透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを基材の一表面上に形成する工程とを含む。好ましくはポリマーコーティングは非イオン性であり、水を選択的に通す。透水性ポリマーは、好ましくはそれが基材に塗布された後に、架橋させて架橋した透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを基材の一表面上に形成することができる。溶液は水溶液であることができる。溶液は、透水性ポリマーを架橋させるための架橋剤、および/または殺菌剤、難燃剤および/またはその他の添加剤をさらに含むことができる。本方法のある実施形態においては、溶液は水溶性ポリマーをさらに含み、本方法は、乾燥した被覆基材を水で処理して水溶性ポリマーをコーティングから少なくとも部分的に溶解させ、除去する工程をさらに含む。
【0014】
透水性ポリマーを含む溶液を、吸水剤−装填ポリマーフィルムを含む多孔性基材の一表面に塗布する工程と、膜が基材の一表面上に形成された透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを含むように基材を乾燥させる工程とによって製造される水輸送膜が提供される。透水性ポリマーは、好ましくはそれが基材に塗布された後に、架橋させて架橋した透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを基材の一表面上に形成することができる。
【0015】
透水性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含む溶液を、吸水剤−装填ポリマーフィルムを含む多孔性基材の一表面に塗布する工程;次に、透水性ポリマーを架橋させ、基材を乾燥させて基材の一表面上に水溶性ポリマーおよび架橋した透水性ポリマーを含むコーティング付きの中間膜を形成する工程によって製造される水輸送膜がまた提供される。この中間膜は、水で処理されて水溶性ポリマーをコーティングから少なくとも部分的に溶解させ、除去し、それによって、水輸送膜は、架橋した透水性ポリマーを含む実質的に連続のコーティングを基材の一表面上に含む。
【0016】
水輸送膜の好ましい実施形態は、架橋した透水性の非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーを含むコーティングがそれの一表面上に形成された多孔性シリカ−装填ポリエチレン基材を含む。このような膜は上記の方法によって製造することができる。ある実施形態においては基材上のコーティングの装着は約0.25g/m〜約15g/mの範囲にある。ある実施形態においては基材上のコーティングの装着は約0.5g/m〜約5g/mの範囲にある。ある実施形態においてはシリカ装着は基材の45重量%〜80重量%の範囲にある。ある実施形態においては基材の厚さは約40ミクロン〜約150ミクロンの範囲にあり、基材は約50%超の間隙率を有する。ある実施形態においては基材の厚さは約40ミクロン〜約110ミクロンの範囲にある。
【0017】
上記の水輸送膜、および上記の方法によって製造された水輸送膜は、エネルギー回収換気装置コアに使用することができる。たとえば、エネルギー回収換気装置コアは、透水性コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含む水輸送膜であって、多孔性基材が吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、コーティングが透水性ポリマーを含む水輸送膜を含む。
【0018】
ビルの吸気流と排気流との間で熱および湿気を移動させる方法は、吸気流および排気流を本発明のエネルギー回収換気装置コアの反対側に導く工程を含む。たとえば、コアは、透水性コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含む水輸送膜であって、基材が吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、コーティングが透水性ポリマーを含む水輸送膜を含むことができる。本方法のある実施形態においては吸気流は、それが水輸送膜の被覆面と接触するように導かれる。
【0019】
本発明の膜は好ましくは、異方性膜を与えるために一つの表面上だけがコートされる。しかし、異なる特性および水輸送特性の膜は、コーティング液を基材の両側に塗布することによって得ることができる。これは、それの両表面上に形成されたコーティングを含む水輸送膜であって、基材が吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、コーティングが透水性ポリマーを含む水輸送膜を提供する。これも、好ましくは、ポリマーコーティングは非イオン性であり、水を選択的に通す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】薄い透水性ポリマーコーティングが塗布される表面を示す、多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材の走査電子顕微鏡画像である。
【図2】直交流ERVコアの簡略化された等角図である。
【図3】ERVシステムの使用を例示する簡略図である。
【図4a】どのように異方性被覆膜をエンタルピー交換器において配向できるかを例示する(原寸に比例していない)簡略図である。
【図4b】どのように異方性被覆膜をエンタルピー交換器において配向できるかを例示する(原寸に比例していない)簡略図である。
【図4c】どのように異方性被覆膜をエンタルピー交換器において配向できるかを例示する(原寸に比例していない)簡略図である。
【図5】水溶性のおよび架橋したポリマーがコーティング中に組み込まれている被覆膜の簡略図であり、コーティングからの水溶性ポリマーの幾らかまたはすべての抽出のコーティング構造物への可能な影響を例示する。
【図6】コーティング装着の関数としての様々な被覆膜サンプルの実測の水流束を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明のアプローチにおいて改良された水輸送膜は、好ましくは架橋している透水性ポリマーの薄層で一表面上をコートされている多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材を含む。このような異方性(または非対称)被覆膜は、膜が湿っているか乾燥しているかのどちらであるときにも空気および汚染物質ガスの輸送を実質的に阻止しながら、高度の水分輸送を提供することが分かった。この膜はまた、それらの取り扱いおよび加工が容易であり、ERV用途などの最終使用用途において丈夫であり、かつ、一般に低コストであるように好適な機械的特性を有する。この膜はまた、耐燃性であり、かつ、微生物抵抗性を有するべく製造することができる。
【0022】
基材、コーティングおよび任意選択の添加剤は、特定の最終使用用途向けに望ましい特性の膜を与えるために選択される。
【0023】
水および水蒸気は膜を通して輸送されるので、膜の各構成要素または層を通しての水輸送に対する抵抗は、全体的な水輸送速度に影響を及ぼすであろう。好ましくは、基材は、水および熱輸送に対するその抵抗を下げるように、好適な機械的特性を有し、そして高い間隙率を持って薄い。好ましくは、透水性コーティングもまた、水輸送に対するその抵抗を下げるように薄く、基材にしっかりと接合されている。基材が大きい孔径の高多孔性材料である場合、コーティングは、乾燥前に細孔に浸透し、ポリマー充填基材(含浸)につながる傾向があろう。これは、含浸されたポリマー(たとえば、細孔の充填)が薄い表面コーティングより水輸送に対して大きい抵抗を有する傾向があろうから望ましくない。したがって、基材は好ましくは、透水性ポリマー溶液が細孔の中へ余りにも深く浸透しないように、高い間隙率を有するが、小さい孔径を有する。
【0024】
基材
本発明のアプローチにおいて多孔性基材は、吸水剤−装填ポリマーフィルムである。このポリマーフィルムは、機械的支持、強度および取り扱い能力を最終膜に提供する。吸水剤は、本明細書において定義されるところでは、(少なくとも膜のための予期される最終使用用途において)実質的に不活性であり、かつ、水に不溶性である、一般に粉末または微粒子形態の、吸湿性材料または親水性材料である。吸水剤は、透水性コーティングを塗布することができる高い表面積を提供する。本発明のアプローチにおいて、コーティングは典型的には架橋させられるが、それは基材と化学的に反応しない。高表面積吸水剤は、基材へのコーティングの機械的付着性を向上させ、そして被覆膜の寿命を向上させることもできる。吸水剤−装填ポリマーフィルムの小さい孔径およびねじれは、コーティングが基材の細孔または厚さ中へ浸透する傾向を低減させる。
【0025】
基材中の吸水剤の存在は、それを水凝縮物および水蒸気に対して吸収性にする。これは、凝縮物を、膜の表面から膜の厚さを通して反対側のより乾燥したガス流に持って行くのを助けると考えられる。また、密なコーティングは、基材を通して液体水をコーティング表面に提供することによって、高い分圧の水と接触したときにより高い水輸送速度を有する傾向があるので、全体的な水透過速度は増加する可能性がある。
【0026】
基材中の吸水剤の存在はまた、吸水剤が存在しない場合より表面が湿潤性である傾向があるので、被覆膜の製造中に透水性ポリマーコーティング液の塗布を容易にすることができる。
【0027】
好ましくは、基材は、これが典型的には最終膜の必要条件であろうように、不燃性である。基材は最終膜の大部分を構成する傾向があるので、基材が耐燃性である場合、膜それ自体もまた耐燃性であろうと予期することができる。好ましくは、基材は、微生物増殖を促進しないおよび/または微生物増殖に対して抵抗性がある。
【0028】
基材は、機械的支持のほとんどを提供し、最終膜の取り扱い特性を大きく決定する。ERV用途向けに、好ましくは、それは、ERVコアに成形されるためにおよびERV装置に統合されるために必要とされる機械的特性を有する。これらには、プリーツまたは折り目を保持する能力、熱成形される能力、耐引裂性、過度の変形なしにリブまたはその他の支持体間にそれ自体を支持するのに十分な剛性、およびある場合には、熱的溶接、振動溶接または超音波溶接される能力などの特性が典型的には含まれる。
【0029】
基材の厚さは一般に約10〜250ミクロンの範囲にある。好ましい実施形態においては基材の厚さは、約20〜180ミクロンの範囲にあり、より好ましくは約40〜150ミクロンの範囲にあり、さらにより好ましくは約40〜110ミクロンの範囲にある。基材の間隙率は一般に約30〜90%の範囲にあり、好ましくは50%超であり、より好ましくは70%超である。平均孔径は、好ましくは0.005〜1ミクロンの範囲に、またはより好ましくは0.005〜0.5ミクロンの範囲にあり、最も好ましくは約0.05〜0.3ミクロンの範囲にある。好ましい実施形態においては基材の吸水剤−装着は、約25〜85重量%の範囲にあり、好ましくは50重量%超、より好ましくは約45〜80重量%の範囲にある。より高い吸水剤装着で基材は低下した機械的強度を有する傾向があるが、より低い装着で基材は親水性が少なく、だから湿潤性が少なく、コートするのがより困難である傾向がある。
【0030】
基材におけるより高い間隙率およびより低い厚さは、膜の基材部分を通しての水および水蒸気輸送に対する抵抗を下げるのに役立つ。高い間隙率および低い厚さは、取り扱いおよび機械的強度の制約付きで望ましい。孔径は好ましくは、ポリマーの連続コーティングが基材の表面上に形成されることを可能にするのにちょうど十分なほどに小さい。
【0031】
基材として使用することができる好適な多孔性の吸水剤−装填ポリマーフィルムの例において、ポリマーは、たとえば、ポリエチレン(PE)もしくはポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、またはポリ塩化ビニル(PVC)であることができる。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ポリマーは、それらが一般により高い強度ならびにより大きい熱耐性および耐久性を有するので好ましい。好適な吸水剤としては、シリカ、チタニア、モレキュラーシーブおよびアルミナが挙げられ、シリカが特に好ましい。異なる形態のシリカを使用することができる。たとえば、沈澱シリカは、微孔性基材において典型的に使用され、シリカ中のマクロ孔およびメソ細孔のために高い表面積を有する。シリカの表面は、それらを水に対して親水性にし、そして水蒸気に対して吸収性にするO−H基を含有する。シリカゲルおよびヒュームド・シリカがまた、ある一定の蒸気圧条件下で基材における増加した吸収を与えるために使用されてもよい。
【0032】
ERV用途向けの被覆膜を製造するために特に好適であることが分かった基材は、微孔性シリカ−充填ポリエチレン材料である。このような材料は、Teslin(登録商標)基材としてPPG Industriesから入手可能である。これらは、寸法安定性のある、高充填の、単層の微孔性フィルムである。Teslin(登録商標)基材は、異なる銘柄で入手可能であり、それらの重量の約60%は細分された微粒子ケイ質の摩耗防止充填剤であり、それらの体積の約65%は空きスペースまたは空気である、ポリオレフィン−ベースのものである。類似の基材はまた、主として超高分子量ポリエチレンとシリカとからなる微孔性ポリマーバッテリーセパレータ材料を提供するDaramic、ENTEKおよびNSGから商業的に入手可能である。Amer-Sil製の微孔性PVC−シリカセパレータも、それらが被腹膜のプリーツ化を必要とする用途向けにはあまり好適でないことが分かったが、使用することができる。
【0033】
微孔性シリカ−充填ポリオレフィン基材は、高温で長期間使用すると幾らかの分解が起こったが、燃料電池加湿器用途向けにも好適であることが分かった。
【0034】
図1は、薄い透水性ポリマーコーティングが塗布される表面を示す、多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。サンプルは、約60〜75重量%シリカ、ならびに約50〜60%間隙率およびl80ミクロンの厚さの商業的に入手可能なシリカ−装填UHMWPE基材である。
【0035】
上に記載された多孔性基材などの、吸水剤−装填ポリマーフィルムは、燃料電池、ERVおよびその他の用途においてポリマーコーティングなしに使用されてきた。それらは十分な水輸送を提供することができるが、特にこの材料が乾燥しているかまたは低湿度にあるときにガスクロスオーバーが問題である傾向がある。多孔性ポリマーフィルムを透水性ポリマーでコートするかまたは多孔性ポリマーフィルムに透水性ポリマーを含浸させることによって製造された水輸送膜の公知の例もある。ある場合には吸水剤および/またはその他の添加剤は、上の背景セクションにおいて議論されたようにポリマー溶液が多孔性ポリマーフィルムに塗布される前にポリマー溶液と混合されている。
【0036】
本明細書において記載されるような多孔性の吸水剤−装填基材を使用することによって、基材材料それ自体が水蒸気輸送に役立つであろうし、透水性ポリマーの薄いコーティングの塗布は、ガスクロスオーバーを低減させるかまたは排除するために使用される。多孔性の吸水剤−装填基材の使用は、吸水剤−装填基材が、水輸送および吸収を同時に向上させながら、機械的支持を提供することを含めて以前のERV膜よりも重要な利益を提供する。さらに、このタイプの基材は、非常に薄い、高透過性ポリマー層での基材の手軽なコーティングを可能にする。
【0037】
コーティング
本発明のアプローチにおいて基材は、透水性ポリマーのコーティングで片側上を表面コートされる。このコーティングは、空気および汚染物質ガス輸送に対する選択的なバリアとして働くが、水および水蒸気の通過を許す非常に薄いが連続の層を形成する。それは、難燃剤、追加の吸水剤、および殺菌剤などの望ましい添加剤を保持するためのマトリックスとしても働くことができる。
【0038】
コーティングポリマーは、水凝縮物および水蒸気を輸送する能力を有するために選択される。水輸送は、膜の湿潤側から膜の乾燥側への濃度勾配によってポリマーを通しての拡散によって推進される。コーティングの厚さは、より厚いコーティングが水輸送のより低い速度を有する傾向があるように、それを通しての水輸送の速度に影響を及ぼす。したがって、ガス混合に対するバリアとして働くその能力を過度に危うくすることなく、水輸送速度を増加させるためにコーティング厚さを減らすことが望ましい。
【0039】
最終コーティングは、被覆膜を取り扱い、プリーツ化し、および加工してERVコアまたはその他のこのような装置を形成することを可能にするために、好ましくは可撓性である。
【0040】
たとえば、セルロースおよびカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのその誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリフェニレンオキシドなどのポリエーテル;ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール;ならびにポリアクリレートおよびポリアクリルアミドなどのアクリル化合物を含む、様々なコーティングポリマーを使用することができる。しかし、これらの材料の幾つかは、ERV用途向けに十分に高い水輸送速度を持たず、幾つかは架橋することが困難であるか、または脆いもしくは壊れやすいコーティングをもたらす傾向があり、幾つかは、水溶液として容易に塗布することができない。
【0041】
非イオン性ポリマーコーティングが本発明の膜に使用される。アイオノマーポリマーと比べると、非イオン性ポリマーは、最終用途装置の空気および水流れ中の汚染物質による毒害または変更を受けにくい。アイオノマーコーティングは、酸性もしくは塩基性環境、金属イオン、塩またはその他の汚染物質に曝される場合、運転中に危うくされる可能性がある。さらに、アイオノマーコーティング液は一般に、ある一定のpH範囲内に維持されなければならず、コーティング液中に含めることができる添加剤を制限する。
【0042】
好ましくは、本ポリマーコーティングは、その他の溶剤にしばしば関連する健康および環境影響を低減するために水溶液として塗布することができる。高い水蒸気輸送速度を有する透水性ポリマー(たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、およびポリビニルアルコール(PVA)、ならびにセルロース)はまた、液体水に溶ける傾向がある。これは、それらが水溶液として基材に塗布することができるが液体水の存在下で溶解するかまたは浸出する傾向があろうことを意味する。本発明のアプローチにおいてポリマーは乾燥され、そして、たとえば、乾燥中かまたは別のポスト−コーティング工程において、基材の表面上で好ましくは架橋される。これは、薄いポリマーコーティングを水に不溶性にすることができ、被覆膜材料についての運転寿命を増加させることができ、そしてまた(ほとんどの現在入手可能な膜ベースのERVコアで可能ではない)材料の洗浄をERVコアの保守中に可能にする。したがって、架橋剤を、ポリマーが基材に塗布されるとそれを不溶性にするために水性ポリマーコーティング液中に使用することができる。架橋したポリウレタン−ポリエーテルコポリマーは、水溶液として塗布することができる好適な可撓性の耐久性のある透水性コーティングである。たとえば、機械的強度のためのポリウレタン主鎖「ハード」セグメントと透水性および水輸送機能性のためのポリエチレンオキシド(PEO)「ソフト」セグメント側鎖とを含有する非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマー(たとえば、名称PERMAX 230でLubrizolから入手可能なものなどの)が好適であることが分かった。これらのコーティングについては、架橋は一般に、ポリマー鎖のポリウレタンセグメント中のカルボキシル基で起こるであろう。架橋は、ポリマーのソフト(PEO)セクションの水輸送特性は十分に保持されながら、ポリマーコーティングを液体水に溶けにくくする。好適な架橋剤としては、アジラジン、メラミン、イソシアネート、カルボジイミド、ホウ酸、およびグルタルアルデヒドが挙げられる。
【0043】
基材がうまく選択される場合、ポリマー溶液は、ブレードまたは類似のデバイスによって基材に直接塗布することができる。厚さは、ブレード圧力および溶液粘度、ならびにコーティング液中の固形分によって制御されてもよい。その他の好適な塗布方法としては、浸漬コーティング、Mayerロッド、ブレード・オーバー・ローラーコーティング、ダイレクトグラビア、オフセットグラビア、キスコーティング、スロットダイおよびスプレー−コーティングが挙げられる。湿った被覆基材は次に、過剰の水を除去し、そしてコーティングを基材表面に付着させるために乾燥機またはオーブンを典型的には通過させられる。乾燥は、たとえば、対流による熱風乾燥によって、赤外線ヒーターの使用によって、または2つの組み合わせによって達成されてもよい。乾燥機中で高められた温度は、ポリマーコーティングの架橋を開始させるまたは促進させる。コーティングポリマーの種類に依存して、その他の架橋技術(たとえば、真空乾燥またはUVへの露光)が用いられてもよい。被覆シリカ−ポリオレフィン基材をベースとするこれらの膜の製造は、高容量、低コスト製造を可能にする、連続プロセスにおけるロール−ロール装置で完了させることができる。
【0044】
好ましくは、基材の細孔中へのまたは基材の厚さを通してのポリマー溶液の有意な浸透はない。コーティングは、薄いが実質的に連続の密なフィルムを形成する表面に実質的に留まる。好ましい実施形態においては、コーティングの厚さは、約0.1〜25ミクロンの範囲にあり、より好ましくは5ミクロン未満である。コーティング装着は、好ましくは約0.1〜15g/mの範囲にあり、より好ましくは約0.5〜5g/mの範囲にある。非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルコーティングの使用は、これらのポリマーが高い水透過を有し、そしてコーティングを(水透過を有意に低下させることなく)架橋することができて膜が運転環境中で不溶性にされ、洗浄可能にされることを可能にすることを含む、重要な利益をこれまでに使用された材料を上回って提供する。これらのコーティングは、毒害、汚染、および性能劣化のリスクが実質的に低下した、長い運転寿命を可能にする。吸水剤−装填基材と組み合わせて、これらのコーティングは、高い水透過および高い選択性を有する薄いコーティング付きの膜を製造するために塗布することができる。非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーは、コーティング混合物へのおよび膜中への望ましい機能特性を持った添加剤の手軽な組み込みを可能にする。
【0045】
添加剤
被覆膜の特性は、添加剤をポリマーコーティング中へ組み込むことによって特定の最終使用用途向けにさらに高めることができる。例としては、
(a)難燃剤の使用による耐燃性の向上;および/または
(b)カビ、細菌および/または真菌類の増殖に抵抗するための殺菌剤の使用による微生物抵抗性の向上;および/または
(c)吸水剤および/またはその他のポリマーの使用による水吸収および透過の向上
が挙げられる。
【0046】
難燃性添加剤は、最終膜の耐燃性を向上させるためにコーティングに添加することができる。これは、基材がそれ自体耐燃性でない場合に特に重要であり、その場合には、コーティングは、最終膜を耐燃性にするのに十分な添加剤を含有することができる。たとえ(本明細書において記載される吸水剤−装填ポリマーフィルムについて、特に吸水剤装着が高い場合、大抵いつもそうであるように)基材が耐燃性であっても、添加剤は、最終膜の耐燃性を向上させるためにコーティングに添加することができる。様々なタイプの添加剤がこの目的のために好適である。これらには、膨張性黒鉛およびホスホン酸塩などの膨張剤;三水和アルミナ;水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの、金属水酸化物;三酸化アンチモン、五酸化アンチモンおよびナトリウムアンチモナイトなどのアンチモン化合物;ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸亜鉛などの、ホウ素化合物;モリブデン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛などの亜鉛化合物などの、その他の金属化合物;赤リンおよびポリリン酸アンモニウムなどのリン化合物;メラミン;ならびにグアニジンが挙げられる。理想的には、難燃性添加剤は、コーティング液に溶けず、溶液に容易に分散させることができる。また、添加剤が非毒性で、低い装着で有効であることが望ましい。FlameStop Inc.製のものなどの、幾つかの製品は、カビおよび細菌増殖の阻害剤を含有する追加の利益を有する。耐燃性添加剤はまた、基材の細孔へ組み込まれてもよい。
【0047】
本明細書において記載される膜の好ましい実施形態において使用される基材およびコーティングは、(セルロースおよびその他の以前に使用された基材およびコーティングとは違って)カビおよび細菌の増殖を一般に促進せず、ある場合には増殖に抵抗する。コーティングへの殺菌剤の添加は、エンタルピー交換器またはその他の装置におけるカビ、真菌類、および細菌の増殖をさらに阻止することができる。空調システムの一部であるエンタルピー交換器については、材料は、カビおよび細菌増殖に好都合である、暗い、湿気の多い、かつ、暖かい環境中で使用されている。これらの添加剤の添加は、たとえ利用される膜材料が分解され得ない場合でも有益であることができる。この目的のための好適な添加剤としては、Microban(登録商標)、Bioban(ブロノポール)、Dowicide(2−フェニルフェノール)、Filmguard(3−ヨードプロピニルブチルカルバメート)、Amical(ジヨードメチル−p−トリルスルホン)、およびCanguard(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン)が挙げられる。
【0048】
たとえ基材が吸水剤を含むとしても、ある場合には材料の水透過を増加させるために追加の吸水剤をコーティングに添加することが望ましいかもしれない。好ましくは、コーティングに添加される吸水剤は、それらが膜を通してのガス透過を不利に増加させず、そして時間とともに水に溶けないように選択され、そのような量で使用される。好適な吸水剤としては、塩化リチウム、シリカ、モレキュラーシーブ、アルミナ、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムが挙げられてもよいが、これらの幾つかは水溶性である傾向があろう。
【0049】
水溶性ポリマーは、コーティングの一貫性を向上させ、および製造の容易さを高めるために、粘度調整剤およびフィルム形成剤としてコーティングに添加することができる。界面活性剤は、基材上でのコーティングの拡散を向上させるか、または処理中のコーティング液における発泡を減らすために、コーティングに添加することができる。
【0050】
水およびコーティング液に溶ける、そして架橋しないであろうポリマーは、コーティング液に添加し、次に、基材がコートされ、乾燥された後にコーティングから抽出することができる。これは、コーティングが空気および汚染物質クロスオーバーを依然として阻止することができるが、低密度であり得、したがってより高い水透過を有し得るようにコーティングに細孔を残す可能性がある。たとえば図5は、架橋性ポリマーおよび水溶性ポリマーの溶液でコートされた、基材500上の拡大された表面コーティングの簡略図を示す。製造後に、コーティングは、架橋したポリマーコーティング510と水溶性ポリマー520との混合物を含む。水での抽出工程550後に、追加の表面細孔530が生じる可能性があり、コーティングの表面積は増加する可能性がある。ある水溶性ポリマー525は、コーティング中に捕捉されたままである可能性がある。架橋した透水性ポリマーコーティング515は、理想的には依然として元のままであり、ガスおよび汚染物質輸送を阻止することができる。しかし抽出されるポリマーが除去された状態で、膜の平均コーティング厚さおよび水透過は、混合コーティング付きの膜についてよりも、または架橋した透水性ポリマーコーティング付きの(水溶性ポリマーの組み込みなしの)膜についてよりも高い可能性がある。コーティングにおける細孔形成はまた、溶液に溶剤を加え、そして乾燥中に抽出することによって、塩、または抽出することができるその他の充填剤を加え、そして抽出することによって達成されてもよい。
【0051】
一態様においては、本発明は、本明細書において記載されるタイプの水輸送膜を組み込んだERVコアおよびERVシステムに関する。ERVは、従来のプレート型ERVまたはプリーツ化膜コアもしくはエンタルピーホイールを持ったERVであることができる。このような装置の幾つかの例は、それらの両方とも全体を参照により本明細書によって援用される米国特許出願第11/905,190号(米国特許出願公開第2008/0085437号として公開された)におよび米国特許出願第12/318,973号(米国特許出願公開第2009/0193974号として公開された)に記載されている。
【0052】
図2は、隣接層間にガスフロー通路を持った膜201の交互層を含むプリーツ化膜を含むERVコア200の実施形態の簡略化された等角図である。フロー通路は、膜の表面上でコアを通して走るチャネルを含むことができ、膜を通しての2つの流れの混合なしに一面から他面へのコアを通してのガスのフローがあるように密封される。ガス流は、各膜層の片側が1つのガス流210に曝され、膜層の反対側が他のガス流220に曝されるようにERVコア200を通して導かれる。例示される実施形態においてはガスは直交流構成にある。向流、並行流、およびその他の相対的フロー構成を、ERVコアおよびマニホルディングの配置に依存して用いることができる。熱および水分の輸送は、2つのガス流間の熱または水分の差のために膜を通して起こる。熱および水分のフローは、ガス流220および210の条件に依存して、膜を通していずれの方向に起こってもよい。流れ210が冷たく乾燥しており、流れ220が暖かく湿っているとき、熱および湿気輸送は膜を通して起こってフロー210を、それが221でコアを出る前に加熱し、加湿するであろう。暖かく湿ったフロー220はしたがって、それがコアを通過し、221で出るときに冷却され、除湿されているであろう。それと同時に、冷たく乾燥した流れ210は、それがコアを通過し、221で出るときに暖められ、加湿されている。
【0053】
プリーツ化膜カートリッジの周囲は、ガスがプリーツ化カートリッジの周囲と(図2には示されていない)ERVハウジングの内側との間で漏洩することを防ぐために密封される。たとえば、一度ERVシステムに入った流れと流れの間でのガスの短絡を防ぐために、シールが入口部と出口部との間に作り出されるように、ガスケットまたはシール202および203をプリーツ化膜カートリッジの縁ならびに上面および底面に沿って配置することができる。
【0054】
図3は、ERVシステム340におけるERVコア300の簡略図である。システム340は、図3において矢印で示される方向にシステムを通して空気を移動させるためのファンおよび制御装置を含有することができる。シールは、コアの周囲周りに作り出される。ERVシステムは、囲まれたビル空間350中の空気と、外部環境との間の境界面となる。シールは、ビル350に入る、入ってくる空気320がコア300中の膜層の片側を通り、そしてビルを出る、出ていく空気310がコア中の膜層の反対側を通るようなやり方で、空気流がERVコア300を通して導かれることを可能にする。出ていく空気311が冷たく乾燥しており、入ってくる空気320が暖かく湿っている場合、熱および水分輸送は、310での排気が熱および水分を獲得しており、321で囲いに入る空気が冷却され除湿されているように、コア中の膜を通して起こるであろう。
【0055】
幾つかの透水性ポリマーの本質のために、コーティングの水透過は、コーティングがより高い湿度に曝されたときに増加すると予期される。幾つかの透水性ポリマーはまた、より高い温度に曝されたときに低下した水透過を示す可能性がある。本発明の膜は(それらが片側上にのみコートされているので)異方性であるため、ある種の用途において膜にとって好ましい配向が存在する可能性がある。たとえば、図4aに示されるように、周囲空気が暖かく湿っているとき(北米における夏季月)のERV用途においては、コーティング401が膜の湿った側にある、すなわち、入ってくる湿った空気420に曝されることが望ましいかもしれない。コーティング401は、より高い湿度条件ではより多くの水を一般に輸送するであろうから、コーティング401を空気流420中の水蒸気と直接接触させると、夏季月においてより高い性能につながり得る。ひとたび水410がコーティング401を通過すると、それはオープンの多孔性基材400を通して膜の反対側の冷たい排気流421中へ拡散するであろう。図4bに示されるように、周囲外気422が冷たく乾燥しているとき、排気流423において、それがエンタルピー交換器を通過するときに凝縮411が存在する傾向があろう。これは、ビルから排出されつつある暖かく湿った空気の急冷のために起こり得る。膜の被覆側が排気流に曝される場合、コーティングは、水凝縮物415で飽和され得る。これは、被覆膜の水透過を増加させ得る。膜の異方性本質は、フロー配向に依存して夏および冬条件においてより高い性能につながり得る。図4cに示されるように、あるより高い温度、凝縮条件においては、膜は、高湿度、高温の流れ425および膜の反対側で同様に高温だが乾燥した流れ424に曝され得る。凝縮は一般に、エンタルピー交換器において高湿度側413で起こる傾向があろう。これらの条件において膜400の基材表面を凝縮中の流れに曝し、吸水剤−装填基材がこの過剰の液体水416を吸収し、膜を通して反対側の薄いポリマーコーティング401に水を分配させるのを助けさせることが有益であり得る。前述の記載は、どのように膜が配向されるべきであるかに関して限定的であることを意図しない。ある特定の装置における異方性膜の(もしあるとすれば)好ましい配向は、最終使用用途におよびそれが曝される具体的な条件に依存するであろう。
【実施例】
【0056】
実験例−膜試験
実施例2〜5および8〜12は、それの一表面上に透水性ポリマーコーティング付きの吸水剤−装填ポリマー基材を含む被覆膜の様々な実施形態の製造を記載する。これらの実施例は、実施例13と一緒に、このような膜で得ることができる特性および結果の幾つかをまた例示する。実施例2〜5、および8〜13に記載される実験は、多孔性基材、コーティングおよび場合による添加剤の本質が最終膜の特性に及ぼし得る影響を探究することを意図するものであった。他のタイプの膜の製造および試験もまた、比較目的のために記載される(実施例1、6〜7を参照されたい)。
【0057】
実施例1−非被覆基材
シリカ充填ポリエチレンシート材料はDaramicから入手した。この材料は、フラットシートバッテリーセパレータとして市販されており、シリカ充填ポリエチレンからなる微孔性材料である。この材料は、2.6対1のシリカ対ポリエチレン比、または約72重量%シリカ、178ミクロンの厚さ、58%の間隙率、および約0.2ミクロンの平均孔径を有した。この基材材料を、下に記載される技法を用いて、水透過、空気透過、排気輸送比(EATR)、および耐燃性について試験した。この非被覆基材について得られた結果を下の表1に示す。この非被覆基材は24.3±1.2kg/m/日の望ましい水流束を有した。しかし、空気クロスオーバー速度はほとんどのERV用途向けに余りにも高く、排気輸送比(EATR)および燃焼速度はほとんどのERV用途向けに好適ではなかった。EATRは、1つの流れから他の流れに材料を通過し得る汚染物質ガスの量の指標を提供し;この値が5%未満であることが望ましく、それが1%未満であることがより望ましい。最適なのは、この材料を通しての汚染物質ガス輸送が0%である。燃焼速度は、この材料がUL−94 HBまたはその他の検定試験によって示されるものなどの燃焼性試験をパスするには余りにも速すぎる。
【0058】
実施例2−PVA被覆基材
水およびポリビニルアルコール(PVA)ポリマー(Sigma Aldrichからの85000〜124000MW)を加熱し、混合して4重量%溶液を形成した。ホウ酸の4%水溶液を、PVAポリマーを架橋させるために1:4の重量比でポリマー溶液に加えた。水性PVA/ホウ酸溶液の薄いコーティングを、Mayerロッド塗布装置を用いて実施例1に使用した同じ基材材料の一表面に塗布した。PVAのコーティング装着は3.6g/mであった。PVA−被覆基材を、実施例1と実質的に同じ方法で、水透過および空気透過について試験した。このPVA−被覆基材についての結果も下の表1に示す。空気クロスオーバーは10cm/分に低下したが、水流束は、実施例1における非被覆基材についてよりもはるかに低い8.8kg/m/日であり、高性能ERV用途向けにはたぶん余りにも低いことが分かった。この被覆基材はかなり脆く、プリーツ化、取り扱い、および圧延が困難であった。これらの結果は、PVAがコーティングのために好ましいポリマーではないことを示唆する。
【0059】
実施例3−ポリウレタン−ポリエーテル被覆基材
名称PERMAX 230で製造されている、ポリウレタン−ポリエーテル(PU/PE)コポリマー混合物をLubrizolから入手した。このポリマーは33%固形分の水溶液で供給される。この溶液を蒸留水で16.5%固形分にさらに希釈した。この溶液を、実施例1および2に使用した同じ基材材料の一表面上に0.08mm直径巻線型Mayerロッド塗布装置を用いて基材上にコートした。この材料を次に乾燥させて透水性ポリウレタン−ポリエーテルの薄い表面コーティングを生成した。コーティング装着は3.0g/mであった。ポリウレタン−ポリエーテル−被覆基材を、実施例1と実質的に同じ方法で、水透過および空気透過について試験した。この被覆基材についての結果も下の表1に示す。空気透過およびEATRは、実施例1の非被覆基材と比較して著しく低下し、この材料は、実施例1の非被覆材料に比べて好都合にも高い水輸送速度を有した。この被覆基材は、取り扱い、プリーツ化、および圧延が容易であった。しかし、膜を約80℃の水中で1時間加熱したとき、コーティングは膜表面から除去され、コーティングがその水溶性を少なくするために好ましくは架橋されるべきであることを示唆した。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例4−架橋ありのポリウレタン−ポリエーテル被覆基材
ポリウレタン−ポリエーテルポリマーの水溶液(Lubrizol PERMAX 230をベースとする)を、ポリマー対架橋剤の様々な重量比で(名称XL−702でPicassian Polymersから入手した)ポリカルボジイミド架橋剤を使って調製した。これらの溶液を使用して、実施例1〜3に使用した同じDaramic基材材料の秤取サンプルをコートした。同じ基材材料の別の秤取サンプルを、架橋剤なしのポリウレタン−ポリエーテルでコートした。コーティングは、Mayerロッド塗布装置を用いて塗布した。
【0062】
膜を100℃で乾燥させ、再秤量し、コーティング装着を表2に報告する。膜を次に約80℃の水中に1時間入れ、次に乾燥させ、再び秤量した。百分率コーティング損失を測定し、下の表2に各サンプルについて示す。結果は、コーティングを架橋させるための架橋剤の使用が、膜の水流束に有意に影響を及ぼすことなく、コーティングを水に溶けにくくすることを示す。これは、より長い運転寿命を被覆膜に与え、長時間にわたって低いクロスオーバーを維持すると予期される。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例5−コーティング装着の影響
異なるコーティング装着の膜を、16〜33重量%のポリマー濃度の(Lubrizol PERMAX 230をベースとする)同じポリウレタン−ポリエーテル混合物と、Picassian Polymers製のポリカルボジイミド架橋剤(XL−702)との水溶液で、実施例1〜4に使用した同じDaramic基材材料のサンプルをコートすることによって、製造した。ポリマー対架橋剤比は、10部ポリマー対1部架橋剤の重量基準で一定に保った。この溶液を、径が0.05から0.3mmまで変わる線で巻いたMayerロッド塗布装置を用いて基材の一表面上にコートした。生じた被覆膜サンプルの水透過を試験し、結果を図6に示す。それらは、より低いコーティング装着でより高い水流束の明白な一次トレンドを実証する。このように、膜における水流束を増加させるためにはコーティング層の厚さまたは重量を減らすかまたは最小限にすることが重要である。しかし、下限が存在するであろう:(特定の基材、コーティングおよびその他の要因に依存して変わるであろう)あるコーティング装着より下で、膜の選択性は危うくされるであろうし、汚染物質クロスオーバーは増加するであろう。約1.1g/mの低いコーティング装着の本実施例における膜は、ゼロの空気クロスオーバーおよびEATRを有し、非被覆基材より4〜8%低いにすぎない、約23kg/m/日の水流束速度を有した。コーティング厚さをさらに減らすと、水流束を増加させるであろうが、汚染物質クロスオーバー。
【0065】
実施例6−基材厚さおよび間隙率の影響
基材厚さおよび間隙率の影響を調べるために、様々な材料を名称Teslin(登録商標)でPPGから入手した。これらの材料は145から356ミクロンまで変わる。表3に示すように、材料密度を空気クロスオーバーおよび水輸送と比べた。材料密度を下げると、クロスオーバーおよび水輸送速度を増加させ;これは、より薄いより多孔性の材料においては水輸送に対する抵抗が少ないであろうために起こる。これは、より薄いおよび密度がより低い(またはより高い間隙率の)基材がより良好な性能を有する傾向があること、および薄い、高間隙率基材がそれ故一般に好ましいことを実証する。より高い間隙率の特注のより薄い基材をPPGから入手した。この材料は、試験されたその他のTeslin(登録商標)材料と類似の組成のものであったが、104ミクロンの厚さを有した。それは、表3に示すように、はるかに向上した水流束速度を有した。この基材を使った選択的な被覆膜の製造および試験に関するさらなる詳細は、実施例8において見いだすことができる。
【0066】
【表3】

【0067】
実施例7−大きい細孔のおよび吸水剤装着なしの基材
名称CU404で販売される、不織ポリマーシート材料をCrane and Co.から入手した。この材料は、21秒/100cmのGurley流量の、高い間隙率および大きい孔径の圧延ポリエチレンテレフタレート(PET)不織材料である。この材料は、厚さが101ミクロンである。3重量%架橋剤(XL−702)とともに30重量%ポリウレタン−ポリエーテル(PERMAX 230)を含有するコーティング液を不織基材の一表面上に塗布し、材料の細孔を充填した。最初のコートの後に、空気クロスオーバーが依然として大きかったために、第2コーティングを同じ表面に塗布した。二重コートした、乾燥させた材料は、ゼロの実測の空気クロスオーバー速度およびEATRを有したが、水流束は3.4kg/m/日にすぎないことが分かった。この不織の高間隙率ポリマー材料をコートしたとき、コーティングは、表面層として留まらず、低い水流束の、高度にまたは完全に充填されたまたは含浸された材料をもたらしたと思われる。これは、孔径限界が存在し、それより上ではコーティングが薄い表面層として保持されないであろうことを示唆する。
【0068】
実施例8−吸水剤装着ありのより高い間隙率、低い孔径、薄い基材
より高い間隙率、低い孔径、および減少した厚さの、特注のシリカ−装填基材をPPGから入手した。この材料は104ミクロンの厚さを有した(実施例6を参照されたい)。この非被覆基材は1420cm/分の空気クロスオーバー速度を有し、水流束は33.8kg/m/日であることが分かった。この基材を、溶液中1.5重量%でPicassian XL−702架橋剤入りの溶液中15重量%ポリマーでのポリウレタン−ポリエーテル(PERMAX 230)でコートした。コーティングをMayerロッド塗布装置で塗布し、乾燥コーティング装着は2.0g/mであることが分かった。被覆基材の空気クロスオーバーはゼロであり、EATRはゼロであった。この膜の水流束は、より厚い、より少ない多孔性の基材が使用された実施例5において試験された材料より、約20%も大きく、28kg/m/日であることが分かった。吸水剤添加剤を含有する、より高い間隙率の、より薄い基材は、低いコーティング装着の、そして低いガスおよび汚染物質クロスオーバー速度ならびに高い水流束を有する膜の製造を可能にする。
【0069】
実施例9−抗菌剤入り被覆基材
16重量%ポリウレタン−ポリエーテル(PERMAX 230)、1.6重量%架橋剤(XL−702)、および抗菌性添加剤(Microban AF)の溶液を調製した。抗菌剤の量は、溶液中で0.25〜5重量%および乾燥コーティング中で1〜20重量%の範囲であった。コーティングを、150ミクロンの基材厚さの、PPG製のシリカ−ポリオレフィン基材の表面上に塗布した。サンプルを、AATCC 30試験においてアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)真菌に対する抵抗についてならびにKirby-Bauer試験において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に対する抵抗について試験した。すべてのサンプルが微生物の域阻止を実証した。コーティング中2.5%抗菌剤重量百分率での被覆材料のサンプルを60℃の水中で2時間洗浄した。サンプルを次に、AATCC 30試験においてアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)真菌に対する抵抗について試験した。サンプルは、この膜が膜上でまたは膜の近くで真菌およびカビの増殖を防ぐのに有効であることを示唆する、真菌の4mm超の増殖なしのゾーンおよび100%表面阻止を実証した。
【0070】
実施例10−難燃剤入りポリウレタン−ポリエーテル被覆基材
各溶液の残りが蒸留水である状態で、ポリウレタン−ポリエーテルの溶液を調製し、様々な百分率の難燃剤と混合した。ポリマー溶液はLubrizolから入手し、難燃性添加剤は、Fire Stop Inc.から入手したFRX Powderであった。これらの混合物を使用して、他の実施例に用いたMayerロッド塗布装置に似た、しかし溶液中に大量の固形分のコーティング液にとってより適切である、ブレード塗布装置を用いて実施例1〜4に使用した同じ基材材料をコートした。結果を下の表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
表4の最後に示されるような難燃剤なしの被覆基材の燃焼速度は0.76cm/秒であり;難燃剤をコーティングに添加すると、表4に示されるように燃焼速度を著しく低下させる。燃焼速度に影響を及ぼすだけでなく、難燃剤は、膜の水流束にもかなりの影響を及ぼす。40%難燃剤で低い燃焼速度が達成されたが、ポリマーの量が低い(たとえば20%)場合に空気クロスオーバー速度およびEATRは高かった。50%ポリマーでコーティング装着はより高く(11.2g/m)、水流束は、おそらくコーティングの厚さのために、12.4kg/m/日に低下した。
【0073】
これらの添加剤を使って、水輸送性能を過度に低下させることなく、低いガスクロスオーバー速度および汚染物質移動比を維持しながら、低い可燃性要件に適合することができる、所与の基材について好ましいコーティング混合比が存在すると結論された。
【0074】
実施例11−その他の添加剤:シリカ
7ミクロンの平均粒径の微粒子シリカゲル吸水剤、Grace Davison製のSyloid AL−1をポリウレタン−ポリエーテル(PERMAX 230)水溶液に加えた。この溶液は、30重量%ポリウレタン−ポリエーテルポリマーおよび3重量%架橋剤、ならびに3重量%シリカ粒子を含有した。シリカ吸水剤を、コーティングの水吸収および透過特性をさらに高める目的でコーティング液に加えた。この溶液を、上の実施例1〜5に使用したものに類似の微孔性シリカ−充填ポリマー基材の表面上にコートした。しかし、コーティング中のシリカの大きい粒径が原因で、より高いコーティング装着がガス透過を十分に阻止するために基材に塗布されなければならなかった。7.5g/mのコーティング装着で、空気クロスオーバー速度はゼロであり、水流束は17.9kg/m/日であった。6.7g/mの類似のコーティング装着の、しかしシリカ添加剤なしのサンプルは、ゼロの空気クロスオーバー速度を有したが、15.6kg/m/日という幾分より低い水流束を有した。このように、相対的なコーティング装着基準で、シリカゲル吸水剤添加剤を含むコーティングは、より高い水蒸気輸送を有した。しかし、選択的な膜を作り出すために必要な高いコーティング装着が原因で、性能は、作り出されたその他の選択的な膜より低かった。たとえば、実施例5におけるより低いコーティング装着(1g/m)の膜は、約23kg/m/日のより高い性能を有した。これは、シリカ添加剤の大きい粒径のためである可能性がある。より小さい粒子シリカ添加剤は、コーティングと膜材料の水輸送性能とをさらに向上させる可能性がある。
【0075】
実施例12−その他の添加物:ポリマー
シリカ−ポリエチレン材料のサンプルを104ミクロンの厚さでPPGから入手した。非被覆サンプルを水輸送について試験し、それは33.8kg/m/日の水流束速度を有し、空気クロスオーバー速度は1420cm/分であり、EATRは50%超であった。15重量%のポリウレタン−ポリエチレン(PERMAX 230)の溶液を、3重量%架橋剤(XL−702)および3重量%ポリビニルピロリドン(PVP)、Luviskol K90と混合した。基材をMayerロッド塗布装置でコートした。乾燥コーティング装着は2.3g/mであり、空気クロスオーバー速度はゼロであり、EATRはゼロであり、水流束は28.6kg/m/日であった。膜を次に、水溶性PVPポリマーの少なくとも幾らかを抽出するために50℃の水浴に浸漬した。抽出した膜を乾燥させ、コーティング重量は1.0g/mであることが分かり、クロスオーバーは依然としてゼロであり、EATRは依然としてゼロであり、抽出した膜の水流束は31.3kg/m/日であった。これは、水溶性の非架橋ポリマーをコーティングに組み込み、次にそれをコーティングから抽出すると、被覆膜の水輸送を高め得ることを実証する。この技法(水溶性ポリマーを架橋性ポリマーおよび架橋剤とともにコーティング液に加え、コートし、膜を乾燥させ、次に水溶性ポリマーをコーティングから抽出すること)を用いると、幾らかの間隙率をコーティングへ導入し、その密度および平均厚さを減らすおよび/またはそのより高い表面積を増加させると思われ、かつ、これは、空気および汚染物質クロスオーバーを不利に増加させることなく膜コーティングの水輸送を向上させる可能性があると思われる。
【0076】
実施例13−方向性
ある種の条件において、膜の被覆面または非被覆面がより乾燥したガス流かより湿ったガス流かのどちらかに面しているときにメリットが得られる可能性がある。2.9g/mコーティング装着の、実施例5からの被覆吸水剤−装填基材をこれらの試験に利用した。膜の一表面はコーティングを有し、他の表面は、吸水剤−装填基材が露出されていた。試験は、被覆面が湿潤流に面し、それから被覆面が乾燥流に面する状態で、表5にリストされた、異なる一式の条件下に完了した。結果を表6に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
(水蒸気のみが存在して湿潤流が低湿度である)条件A下では、水流束は、コーティングが湿潤側に面しているときに7.5%高かった。湿潤流の温度および湿度レベルがより高い運転条件Bでは、湿潤ガス流から凝縮し、膜に達するかなりの量の水が存在するであろう。運転条件B下で、膜は、コーティングが乾燥側(吸水剤−装填基材が湿潤側)にあるときに輸送の38%増加を示した。これは、ある種の条件下では膜の非被覆面が湿潤流に面していることが有益であることを示唆する。最後に運転条件Cにおいて、膜を、一表面上で乾燥した冷たい空気(−10℃)に、そして膜の他の表面上で暖かい湿った空気に曝した。空気が冷却されるときに幾らかの水が湿潤流において凝縮するであろう。これらの条件下では、膜は、膜の被覆面が湿潤側に面しているときにほぼ10%より良好に機能した。ここで、透水性ポリマーコーティングは、凍結温度より下の場合には、乾燥ガス流に曝されたとき、同様にうまく水を輸送しない可能性がある。また凝縮する水の量は、運転条件Bの間に観察された利益を実証するのに十分なほど著しくない可能性がある。膜の非対称性、およびそれが最良に配向されるのはどちらの方向かは、膜が曝されるであろう運転条件に依存して重要な考慮事項であり得る。
【0080】
実施例において用いられた試験方法のまとめ
膜が利用される可能性がある条件に似た条件下で膜を試験するようにデザインされた、動的水蒸気輸送試験手順が開発された。膜によって分離されているガスを材料の両面上に均一に分配するために、膜の両側に流れの場通路を持った試験装置において膜材料のサンプルを密封した。各入口ガス流の流量、温度、および相対湿度を制御することができ、各ガス流の出口温度および相対湿度を測定することができた。ガスを、膜の対向面上に向流で供給し、導いた。試験治具における膜活性面積は33cmであった。典型的な試験において、第1ガス流は、膜の片側上の入口に24℃および0%相対湿度で供給した。第2ガス流は、35℃および50%相対湿度で、ならびに第1ガスと同じ流量で膜の反対側上の入口に供給した。2つの流れの含水率および温度を出口で測定し、記録した。これらの値から、試験サンプルの水輸送速度を、時間当たりの質量の単位(g/h)で測定した。結果はまた、輸送が起こった膜面積で割ることによって水流束として時間当たり面積当たりの質量の単位(g/m/h)で報告されてもよい。試験モジュール内の計算された平均水蒸気圧差で水流束を割ることによって、水透過値を、蒸気圧差当たり時間当たり面積当たりの質量の単位(g/m/h/kPa)で求めることができる。結果のスケールのために水輸送データをkg/m/日の単位での水流束値として報告することが最も好都合であることが分かった。
【0081】
上の実施例において膜材料の空気透過または空気クロスオーバー特性を評価するために、膜材料のサンプルを試験装置中で密封した。加圧空気を膜の片側に適用し、材料を通しての空気フローを記録した。典型的な試験において、加圧空気を3PSIまたは20.7kPaで適用した。試験サンプルを通してのクロスオーバー流量は、分当たりの立方センチメートル単位(cm/分)で記録した。この値は、加えられた圧力および膜面積(典型的な試験では33cm)で割ることによって空気透過値に変換することができる。空気透過は、cm/分/cm/kPa単位で報告することができる。
【0082】
排気移動比(EATR)は、膜材料を通過することができる汚染物質ガスの量の指標を提供する。膜のEATRを測定するための試験を開発した。この試験においては、再び膜サンプルを、独立したガス流を膜の対向側に供給することができるように、膜の2つの側面を分離する試験装置に入れた。膜の片側で実質的に純粋な窒素流を膜の表面上に通した。膜の反対側で空気流を膜表面上に通した。2つの流れ間の差圧を、拡散輸送および対流でない輸送のみが膜を通して起こるようにゼロに維持した。酸素センサを窒素流の出口に置いて酸素濃度を測定した。空気中の酸素の濃度は既知であり、窒素流は入口で酸素を実質的にまったく含有しないので、拡散によって膜を通過する酸素の百分率は、
EATR%={[C(O,1)]/[C(O,2)]}×100
(ここで、Cは、ポイント1が窒素側出口でのもの(センサで測定される)であり、ポイント2が空気側入口でのもの(既知、20.95%)である状態で、ポイント1および2での酸素(O)のパーセント濃度を意味する)
として報告することができる。
【0083】
用いた燃焼試験は、材料の可燃性を測定するためにデザインされているUnderwriters LaboratoriesからのUL−94 HB水平燃焼試験標準に基づくものであった。膜のサンプルを1.25×12.5cmに切断した。このサンプルを水平に支持し、次に水平から45°の角度で縦方向に傾けた。高さ約1センチメートルのプロパン火炎を、傾けた膜サンプルの下方の短い端に適用した。火炎が材料の2.5cmを過ぎて広がるまで火炎をサンプルに保持した。2.5cmが燃えた後、火炎を取り除き、材料を横切って火炎を伝播させた。燃焼時間および燃焼距離を記録し、燃焼速度をcm/秒単位で測定した。材料が10cmマークの前に自己消火し、かつ、材料が0.125cm/秒未満の燃焼速度を有する場合に、材料はHB試験に合格する。
【0084】
ベンチスケールで膜をきちんとおよび一貫してコートするために、Mayerロッド塗布装置を用いた。このタイプの塗布装置はまた、Meyerバー、マイターロッド、Meyerロッド、メーターバー、コーティングロッド、イコライザーバー、ドクターロッド、またはメータリングロッド塗布装置と言われてもよい。これらのタイプのバーにおいて、スチールワイヤがロッドの周りにしっかりと巻きつけられる。ワイヤの隣接ラップ間に作り出されるギャップ間隔は、ロッドをラップするために使用されたワイヤの直径に依存するであろう。上記の実施例に用いられるコーティング装置において、巻線ロッドは、基材のトップ上に実質的に一定の下向き圧力で置かれ、次にポリマー溶液がロッドの前で基材表面上へピペットで沈着させられる。線形アクチュエータは、一定速度で基材表面を横切ってロッドを駆動し、コーティングを基材上に広げる。基材表面上に沈着させられる湿潤コーティングの厚さは、ロッドをラップするために使用されたワイヤの直径に依存するであろう。使用されるワイヤ径は0.05〜0.3mmの範囲であり、約4ミクロン〜約24ミクロンの範囲の制御された湿潤フィルム沈着を可能にする。コーティングは重力によって実質的に一様な湿潤厚さのフィルムへ落ち着き、その後材料は、乾燥され、硬化されて溶剤を除去し、一貫した乾燥コーティング厚さおよびコーティング装着の被覆基材を作り出す。コーティング装着におけるさらなる微調整は、使用される溶液の固形分、粘度、密度、および表面張力特性を変えることによって達成することができる。
【0085】
本発明の膜は、エンタルピー交換器における使用に特に好適であるが、膜を通してのガス流の混合がほとんど、またはまったくなしに、ガス流間で水分および必要に応じて熱の交換を含むその他の用途向けにも好適である可能性がある。このような潜在的な用途としては、ハウスラップ、製材ラップ、燃料電池加湿器、ガス乾燥、除湿、医療ガス加湿、脱塩および飛行機加湿、水濾過、ガス分離、ならびに煙道ガス熱および水回収が挙げられる。
【0086】
本発明の膜は好ましくは、上記のような異方性膜を与えるために透水性ポリマーの薄層で一つの表面上のみをコートされている。しかし、異なる特性および水輸送特性の膜は、上記のコーティングを基材の両側に塗布して、基材の両側上に形成された透水性ポリマーの薄い表面層を提供することによって得ることができる。あるエンタルピーホイール用途向けには、ポリマーコーティングなしの多孔性の吸水剤−装填基材を使用することが十分である可能がある。
【0087】
本発明の特定のカートリッジ、実施形態および用途が示され、記載されてきたが、特に前述の教示を考慮すると、修正が本開示の範囲から逸脱することなく当業者によって行われ得るので、本発明がそれらに限定されないことは、もちろん、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した透水性の非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーを含むコーティングがそれの一表面上に形成された多孔性シリカ−装填ポリエチレン基材を含む水輸送膜。
【請求項2】
前記コーティングの装着が約0.1g/m〜約15g/mの範囲にある請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記コーティングの装着が約0.5g/m〜約5g/mの範囲にある請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記シリカ装着が前記基材の45重量%〜80重量%の範囲にある請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記基材の厚さが約40ミクロン〜約150ミクロンの範囲にあり、前記基材が約50%超の間隙率を有する請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記コーティングの装着が約0.25g/m〜約15g/mの範囲にあり、前記基材の厚さが約40ミクロン〜約150ミクロンの範囲にあり、前記シリカ装着が前記基材の45重量%〜80重量%の範囲にある請求項1に記載の膜。
【請求項7】
コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含む水輸送膜であって、前記基材が吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、前記コーティングが透水性ポリマーを含む膜。
【請求項8】
前記透水性ポリマーが非イオン性であり、そして架橋している請求項7に記載の水輸送膜。
【請求項9】
前記吸水剤がシリカを含む請求項7に記載の水輸送膜。
【請求項10】
前記ポリマーフィルムがポリオレフィンである請求項7に記載の水輸送膜。
【請求項11】
前記透水性ポリマーが、架橋した非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーを含む請求項7に記載の水輸送膜。
【請求項12】
実質的に空気を通さない請求項7に記載の水輸送膜。
【請求項13】
前記基材の一表面上に前記架橋した透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを形成するために、
(a)透水性ポリマーを含む溶液を、多孔性の吸水剤−装填ポリマー基材の一表面に塗布する工程と、
(b)前記透水性ポリマーを架橋させ、前記被覆基材を乾燥させる工程と
を含む水輸送膜の製造方法。
【請求項14】
前記溶液が水溶液である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記吸水剤がシリカを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔性基材が吸水剤−装填ポリオレフィンフィルムである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記透水性ポリマーが、架橋した非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が、前記透水性ポリマーを架橋させるための架橋剤をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液が水溶性ポリマーをさらに含み、前記方法が、工程(b)の後に、前記乾燥した被覆基材を水で処理して前記水溶性ポリマーを前記コーティングから少なくとも部分的に溶解させ、除去する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
(a)透水性ポリマーを含む溶液を、吸水剤−装填ポリマーフィルムを含む多孔性基材の一表面に塗布する工程と、
(b)前記透水性ポリマーを架橋させ、前記基材を乾燥させる工程と
によって製造される水輸送膜であって、
それによって、前記基材の一表面上に前記架橋した透水性ポリマーの実質的に連続のコーティングを含む水輸送膜。
【請求項21】
(a)透水性ポリマーおよび水溶性ポリマーを含む溶液を、吸水剤−装填ポリマーフィルムを含む多孔性基材の一表面に塗布する工程と、
(b)前記透水性ポリマーを架橋させ、前記基材を乾燥させて前記基材の一表面上に前記水溶性ポリマーおよび前記架橋した透水性ポリマーを含むコーティング付きの中間膜を形成する工程と、
(c)前記中間膜を水で処理して前記水溶性ポリマーを前記コーティングから少なくとも部分的に溶解させ、除去する工程と
によって製造される水輸送膜であって、
それによって、前記基材の一表面上に前記架橋した透水性ポリマーを含む実質的に連続のコーティングを含む水輸送膜。
【請求項22】
透水性コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含む水輸送膜を含むエネルギー回収換気装置コアであって、前記基材が吸水剤−装填多孔性ポリマーフィルムを含み、前記コーティングが透水性ポリマーを含む換気装置コア。
【請求項23】
前記多孔性基材がシリカ−装填ポリオレフィンフィルムであり、前記透水性ポリマーが架橋した非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーである請求項22に記載のエネルギー回収換気装置。
【請求項24】
ビルの吸気流と排気流との間で熱および湿気を移動させる方法であって、前記方法が、前記吸気流および排気流をエネルギー回収換気装置コアの反対側に導く工程を含み、前記コアが、透水性コーティングがそれの一表面上に形成された多孔性基材を含む水輸送膜を含み、前記基材が吸水剤−装填ポリマーフィルムを含み、前記コーティングが透水性ポリマーを含む方法。
【請求項25】
前記吸気流が、それが前記水輸送膜の前記被覆面と接触するように導かれる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記多孔性基材がシリカ−装填ポリオレフィンフィルムであり、前記透水性ポリマーが架橋した非イオン性ポリウレタン−ポリエーテルポリマーである請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527336(P2012−527336A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511107(P2012−511107)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000735
【国際公開番号】WO2010/132983
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511265925)ディーポイント テクノロジーズ インコーポレイテッド. (1)
【Fターム(参考)】