説明

エンドリシンPlyP40

本発明は、SEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。本発明はさらに、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、および前記ポリペプチドの発現のための宿主細胞に関する。加えて、本発明は、ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、もしくは診断用物質としての、食物、化粧料における抗菌物質としての、消毒剤としての、または環境分野においての前記ポリペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。本発明はさらに、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、核酸分子を含むベクター、およびポリペプチドの発現のための宿主細胞に関する。さらに、本発明は、ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、もしくは診断用物質としての、食物、化粧料における抗菌剤としての、消毒剤としての、または環境分野においてのポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リステリアは、リステリア症の疾患パターンを誘発する、食糧の領域におけるヒトおよび動物の病原性細菌である。魚、肉、および乳製品などの食物製品は、しばしばリステリアで汚染される。リステリア(Listeria)属は、16種類の異なる血清型を有する6種類の別個の種を含む。詳細には、これらは、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes);血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア(L. innocua)、血清型5を有するL.イバノビイ(L. ivanovii);血清型1/2a、1/2b、1/2c、4b、4c、4d、6bを有するL.ゼーリゲリ(L. seeligeri);血清型1/2a、4c、6a、6b、U/Sを有するL.ウェルシメリ(L. welshimeri);および血清型グレイ(Grayi)を有するL.グレイ(L. grayi)である。L.モノサイトゲネスおよびL.イバノビイの2つの種が病原性と考えられている。第3の種であるL.ゼーリゲリは非病原性とみなされているが、L.ゼーリゲリがヒトにおいて髄膜炎を引き起こした公知の1つの症例が存在する。残りの種は非病原性と考えられている。リステリア症の約90%が、L.モノサイトゲネス血清型1/2a、1/2b、および4bに起因する(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Diseases 185 (Suppl 1): S18-S24(非特許文献1))。
【0003】
実際のところ、リステリア症は稀有な疾患であるが、疾患の重症度および高い死亡率のために、非常に重大に取り扱われなければならない。食物に関連した疾患のうち最小のパーセンテージのみしかリステリアにより誘導されない(米国において約1%)が、食物病原体により引き起こされる致死的転帰を伴う年間の疾病のほぼ30%が、この病原体によるとされている。影響を受けるのは、主として免疫反応が抑制されている人、例えば、高齢の人々、糖尿病患者、ならびに癌および/またはエイズを患う人である。妊婦および胎児が、リステリア症患者のすべての症例の約25%を構成する。血液脳関門または胎盤関門を通過する能力により、リステリアは髄膜炎、脳炎、流産、および死産を引き起こす可能性がある(Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Deseases 185 (Suppl 1): S18-S24(非特許文献1);Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001(非特許文献2))。
【0004】
リステリアは、食物生産における環境で生存するのに非常によく適合している。それらは弱酸に耐性であり、ならびに比較的高い塩濃度および1℃〜45℃の温度で繁殖することができる。主要な感染源は食料品、特に、多くの乳製品、燻製魚、塩蔵魚、冷凍海産物、肉製品、サラダ、およびまたその割合が増加しているコンビニエンス製品(「出来合いの(ready-to-eat)」製品、特に肉製品)などの、消費の前に熱処理をされないものである。リステリアによる汚染は、食物の加工(調理容器からの取り出し、スライス、装飾、包装など)中に起こることが多い。スターター培養物の助けを借りて生産され、かつ熱処理されない食物製品(例えば、生乳チーズ、サラミ)においては、スターター培養物を通して、または原料自体、または熟成および貯蔵の間にもまた汚染が起こり得る。米国では出来合いの食品におけるL.モノサイトゲネスについて許容度はゼロであるが、多くの欧州の国では、またはカナダでも、食物1gあたり最大100 CFU(コロニー形成単位)のリステリアによる汚染が特定の食物製品について許可されている。それでもやはり、食物製品はすべての状況においてリステリアによる汚染について試験されなければならない。これらの食物製品の多くは、例えば、海産物、スモークサーモン、乳製品、またはあらかじめ作られた生の食物製品までもが、限られた保存期限しか有しない。この結果、リステリア汚染および許容限度を超える汚染がそれぞれこれらの製品において配送後に検出された場合に、高コストの製品リコールになることが多い。
【0005】
この理由のため、リステリアの検出および除染のための方法を提供することには大きな関心がある。さらに、抗菌物質の使用は、一方ではリステリアの増殖を予防するために、および他方では既に存在するリステリアを殺すために重要である。
【0006】
EP0781349(特許文献1)は、とりわけ、上述の適用のために使用され得る、ファージA511由来のリステリアファージリシンPly511を記載している。多数のリステリア血清型に対する広範な宿主域に基づくと、Ply511は非常によく適しているが、比較的低い安定性を示し、それが特に食物製品における適用において障害となる。したがって、Turnerら(2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67(非特許文献3))は、食物製品において可能性のある使用のための乳酸桿菌でのPly511の発現におけるタンパク質分解の問題を指摘している。
【0007】
EP 1 531 692 B1(特許文献2)は、リステリアファージP100およびそれによりコードされるリステリアファージリシンPlyP100を記載している。
【0008】
Ply511およびPlyP100が両方とも弱アルカリ性のpHで最適活性を有するのに対して、中性および弱酸性のpH範囲における最適活性が、多くの適用において重要になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP0781349
【特許文献2】EP 1 531 692 B1
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Wing EJ & Gregory SH, 2002, Listeria monocytogenes: Clinical and Experimental Update, J Infect Diseases 185 (Suppl 1): S18-S24
【非特許文献2】Doyle ME, 2001, Virulence Characteristics of Listeria monocytogenes, Food Research Institute, October 2001
【非特許文献3】Turner et al., 2007, Syst. And Appl. Microbiol., 30, 58-67
【発明の概要】
【0011】
そのため、弱酸性範囲においてより高い活性を有するのみならず、より高い安定性を有する、リステリアに対するエンドリシンを提供することが、本発明の目的である。
【0012】
本目的は、添付の特許請求の範囲において定義される主題により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
下記の図面は本発明を例証するものである。
【図1】本発明に係るエンドリシンPlyP40のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。
【図2】本発明に係るエンドリシンPlyP40をコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図3】本発明に係るエンドリシンPlyP40のL.イノキュアS1147(SV 6b)に対する溶解活性の濃度依存性をグラフにおいて示す。1分あたりの吸光度における変化(A)を、μg/ml単位でのPlyP40の濃度(B)の関数として測定した。
【図4】本発明に係るエンドリシンPlyP40のL.イノキュアS1147(SV 6b)に対する溶解活性のpH依存性をグラフにおいて示す。1分あたりの吸光度における変化(A)をpH値(B)の関数として、5〜9のpH範囲(▲)では1×PBST中の12.8μgのエンドリシンPlyP40について、および4.5〜9.5のpH範囲(□)では50 mMクエン酸塩、50 mM NaH2PO4、50 mMホウ酸塩中の12.8μgのエンドリシンPlyP40について測定した。
【図5】本発明のエンドリシンPlyP40の様々なリステリア株に対する活性をグラフにおいて示す。リステリア株の基質細胞であるL.モノサイトゲネス1442 SV1/2a(■)、L.モノサイトゲネス1042 SV 4b(□)、L.モノサイトゲネス1019 SV 4c(●)、L.モノサイトゲネス1001 SV 1/2c(▲)、L.イノキュア2011 SV 6a(+)、およびL.ウェルシメリ50146 SV 6a(×)を1.0の初期OD600に標準化した。標準化したOD600(A)を、30℃の温度で1×PBS、pH8.0において200 ピコモル/mlの初期PlyP40濃度で、秒単位での時間(B)の関数として追跡した。
【図6】エンドリシンPlyP40およびPly511の熱安定性試験の解析をグラフにおいて示す。PlyP40(■)およびPly511(▲)のエンドリシン溶液を光度計において加熱した。本過程において、360 nmの波長での吸光度(A)の増加に対応するタンパク質凝集における増加を、摂氏度単位での温度(B)の関数として追跡した。
【図7】本発明に係るエンドリシンPlyP40のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。1〜200位の太字のN末端アミノ酸は、酵素活性を有するドメイン(EAD)を表す。PlyP40の細胞結合ドメイン(CBD)は、C末端に位置する227〜344のアミノ酸を含む。下線を引いたアミノ酸配列は201〜226位の26アミノ酸のリンカーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において使用される「リステリア」という用語は、リステリア属に属するすべての細菌を指す。特に、リステリアという用語は、血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7を有するL.モノサイトゲネス;血清型3、6a、6b、4ab、U/Sを有するL.イノキュア;血清型5を有するL.イバノビイ;血清型1/2a、1/2b、1/2c、4b、4c、4d、6bを有するL.ゼーリゲリ;血清型1/2a、4c、6a、6b、U/Sを有するL.ウェルシメリ、および血清型グレイを有するL.グレイの種を包含する。
【0015】
本明細書において使用される「エンドリシン」という用語は、バクテリオファージにより天然にコードされており、かつ宿主細胞を溶解し、それによって子孫のファージを放出するように、宿主サイクルの終わりにバクテリオファージにより産生される酵素を指す。エンドリシンは、少なくとも1つの酵素活性を有するドメイン(EAD)および酵素活性のない細胞結合ドメイン(CBD)から構成される。EADは、例えば、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニンアミダーゼ(アミダーゼ、例えば、Ami_2、Ami_5)、(エンド)-ペプチダーゼ(例えば、CHAP)、トランスグリコシラーゼ、グリコシルヒドロラーゼ、(N-アセチル)-ムラミダーゼ(リゾチーム)、N-アセチル-グルコサミニダーゼのような様々な酵素活性を示し得る。
【0016】
本明細書において使用される細菌の「細胞壁」という用語は、細菌の外側の細胞の囲いを形成し、したがってその完全性を保証するすべての成分を指す。特に、これはペプチドグリカン、リポ多糖類を伴うグラム陰性菌の外膜、細菌細胞膜を指すが、莢膜、粘液、またはタンパク質外層のようなペプチドグリカン上に配置された追加的な層もまた指す。
【0017】
本明細書において使用される「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」という用語は、特定の機能的および/または構造的特性のいずれかを有するアミノ酸配列の一部分を指す。アミノ酸配列の相同性に基づいて、公知のドメインを有する自由に利用可能なデータベース、例えば、NCBIのConserved Domain Database(CDD)(Marchler-Bauer et al., 2005, Nucleic Acids Res. 33, D192-6)、Pfam(Finn et al., 2006, Nucleic Acids Research 34, D247-D251)、またはSMART(Schultz et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 5857-5864、Letunic et al., 2006, Nucleic Acids Res 34, D257-D260)においてアミノ酸配列を比較する適切なコンピュータープログラムを使用することにより、ドメインを往々にして予測することができる。
【0018】
本明細書において使用される「ドメインリンカー」という用語は、単一のタンパク質ドメインを互いに連結するように機能するアミノ酸配列を指す。通常、ドメインリンカーはα-へリックスまたはβ-シートのような規則的な二次構造を全く形成しないか、またはほとんど形成せず、それぞれの構造状況において異なるコンホメーションを占有することができる。リンカー配列の特性およびそれらを検出するための方法は、先行技術において記載されている(George & Heringa, 2003, Protein Engineering, 15, 871-879、Bae et al., 2005, Bioinformatics, 21, 2264-2270)。
【0019】
本明細書において使用される「CBD」という用語は、それぞれのアミノ酸配列がエンドリシン中の一部分に対応するポリペプチド断片に関する。該部分はリステリア細胞壁へのエンドリシンの結合を担当する。該ポリペプチド断片は酵素活性を有さない。CBDはまた、親和性タグ(Hisタグ、Strepタグ、Aviタグ、ビオチン化ドメイン)を有するおよび有さないスペーサー分子(GFP、MBP、ビオチン化ドメイン)との遺伝子融合物として存在してもよく、または、親和性タグ(Hisタグ、Strepタグ、Aviタグ、ビオチン化ドメイン)のみとの遺伝子融合物として存在してもよい。
【0020】
本明細書において使用される「EAD」という用語は、細菌のペプチドグリカンの加水分解を担当するペプチドグリカン溶解酵素の酵素活性を有するドメインを指す。それはペプチドグリカン溶解酵素について記載される酵素活性の少なくとも1つを含有する。本明細書において使用されるEADという用語は、天然に存在するペプチドグリカン溶解酵素に由来するポリペプチド鎖内のセグメントを記載する。
【0021】
本明細書において使用される「野生型」または「wt」という用語は、SEQ ID NO:1に明記されているようなファージP40由来のエンドリシンPlyP40のアミノ酸配列を指す。用語はまた、SEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列も指す。エンドリシンPlyP40をコードし、およびファージP40から単離された核酸配列がSEQ ID NO:2に明記されている。用語はまた、単一アミノ酸についてSEQ ID NO:2に明記されたものとは異なるコドンを含有するが、縮重コードにより同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列も包含する。
【0022】
本明細書において使用される「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、少なくとも8アミノ酸からなるペプチドを指す。ポリペプチドは、薬理学的もしくは免疫学的に活性なポリペプチド、診断目的のために使用されるポリペプチド、または抗菌剤として使用されるポリペプチドであり得る。
【0023】
本明細書において使用される「プロテアーゼ」という用語は、タンパク質および/またはペプチドのペプチド結合を加水分解により切断することができる酵素を指す。用語は、単一アミノ酸をアミノ末端またはカルボキシ末端から切断するプロテアーゼ、およびタンパク質またはポリペプチド内部で切断するプロテイナーゼを包含する。
【0024】
本明細書において使用される「バリアント」という用語は、ポリペプチドが、野生型配列と比較して変化したアミノ酸配列を有することを意味する。変化は、修飾、置換、変異、欠失、付加、および挿入を含み得る。
【0025】
本明細書において使用される「変異」という用語は、当初のアミノ酸配列における変化を意味する。この場合、個々のもしくはいくつかの隣接して連続しているアミノ酸または非修飾アミノ酸により分断されているアミノ酸を、欠失させたり(欠失)、付加したり(挿入もしくは付加)、または他のアミノ酸により置換したり(置換)することができる。用語はまた、個々の言及された変化の組み合わせも包含する。用語はまた、タンパク質またはペプチドタグのN末端またはC末端融合物も包含する。
【0026】
本明細書において使用される「修飾」という用語は、「変異」と同義的に使用され得る。しかしながら、本明細書において使用される「修飾」という用語はまた、アミノ酸の化学修飾、例えば、ビオチン化、アセチル化、アミノ基の、SH基の、またはカルボキシル基の化学修飾も包含する。
【0027】
本明細書において使用される「欠失」という用語は、それぞれの当初の配列からの1、2、またはそれ以上のアミノ酸の除去を意味する。
【0028】
本明細書において使用される「挿入」または「付加」という用語は、それぞれの当初の配列からの1、2、またはそれ以上のアミノ酸の除去を意味する。
【0029】
本明細書において使用される「置換」という用語は、ある特定の位置に配置されているアミノ酸の、異なるアミノ酸との交換を意味する。
【0030】
したがって、本発明はSEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
【0031】
エンドリシンPlyP40はその野生型形態において344アミノ酸の長さを有する。それは、他の公知のエンドリシンとは最小限の相同性しか有さない2つの機能ドメインを有する。1〜200位のN末端アミノ酸は、酵素活性を有するドメイン(EAD)を表す。PlyP40の細胞結合ドメイン(CBD)は、C末端に位置する227〜344のアミノ酸を含む。2つのドメインは201〜226位の26アミノ酸のリンカーにより連結される。
【0032】
本発明はさらに、修飾を含む本発明に係るポリペプチドに関する。本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に関する。修飾されたポリペプチドはWt-PlyP40エンドリシンの溶解活性を示し、活性はより高くても、同一でも、またはより低くてもよいが完全には失われていない。活性は、当業者に公知のアッセイ、例えば、プレート溶解アッセイまたは液体溶解アッセイを用いて測定される。
【0033】
修飾は、変異、特に欠失、挿入もしくは付加、置換、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0034】
好ましくは、天然に存在するエンドリシンPlyP40のSEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列中に導入された欠失は、タンパク質の活性が失われないようにアミノ酸配列を短縮することができる。例えば、導入された欠失によりプロテアーゼ切断部位を除去することができる。
【0035】
欠失は、1つまたはいくつかのアミノ酸に影響を与え得る。いくつかのアミノ酸を欠失させる際には、その時欠失されるアミノ酸は互いに直接隣接していてもよい。さらに、単一の欠失アミノ酸またはいくつかの欠失アミノ酸を有する領域は、1つまたはいくつかの欠失していないアミノ酸により互いに分離されていてもよい。そのため、1つまたはいくつかの欠失を、SEQ ID NO:1記載のエンドリシンPlyP40の当初の配列の中に挿入することができる。
【0036】
好ましくは、天然に存在するエンドリシンPlyP40のSEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列中に導入された置換は、タンパク質の活性が失われないようにアミノ酸配列を変えることができる。例えば、切断部位に特異的であるプロテアーゼがもはやエンドリシンを切断しないような方法で、導入された置換によりプロテアーゼ切断部位を変化させ得る。
【0037】
置換は、1つまたはいくつかのアミノ酸を含み得る。いくつかのアミノ酸を置換する際には、その時置換されるアミノ酸は互いに直接隣接していてもよい。さらに、単一の置換アミノ酸またはいくつかの置換アミノ酸を有する領域は、1つまたはいくつかの置換されていないアミノ酸により互いに分離されていてもよい。そのため、1つまたはいくつかの置換を、SEQ ID NO:1記載のエンドリシンPlyP40の当初の配列の中に挿入することができる。
【0038】
N末端もしくはC末端タグなどの修飾または単一アミノ酸の化学修飾を、タンパク質の産生を促進するために(例えば、より容易な精製のためのHisタグまたはStrepタグ)、その利用を改善するために(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジンを有する表面上への固定化のためのStrepタグ、Aviタグ、JSタグ、または化学的ビオチン化)、または、溶解性もしくは安定性を増強するために(例えば、PEG化)付加し得る。さらに、修飾は、N末端またはC末端のHAタグ、Mycタグ、またはGSTタグを含み得る。すべての上述したタグ配列は当業者に周知である。配列は文献または市販されているベクターから取得することができる。
【0039】
本発明に係る修飾されたPlyP40エンドリシンのすべては、天然に存在するPlyP40エンドリシンと同一であるかまたは匹敵する溶解活性を示す。さらに、上述した修飾はエンドリシンの商業的適用に有益であるプラスの効果を示す。そのようなプラスの効果は、増強されたプロテアーゼ安定性、熱安定性、または化学的変性剤に対する安定性を含み得る。加えて、安定化は、より高い発現率、溶解性、またはより長い保存期限につながり得る。プラスの効果はまた、増強された活性によっても出現し得る。
【0040】
本発明はさらに、リステリアの細胞壁に結合する特性を有するエンドリシンPlyP40のポリペプチド断片であって、もはやいずれの酵素活性細胞壁加水分解領域をも示さないポリペプチド断片に関する。さらに、本発明は、本発明に係るポリペプチド断片をコードする核酸配列に関する。本発明に係るポリペプチド断片は、以下で「細胞壁結合ドメイン」(CBD)とも称される。
【0041】
好ましくは、本発明に係るポリペプチド断片は、SEQ ID NO:4において示されるような約227〜344位のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1記載の完全長配列を参照して)を示す。好ましくは、本発明はさらに、記載した好ましいポリペプチド断片をコードする核酸分子に関する。
【0042】
特に、CBDは低分子物質、例えばビオチンに結合され得る。ビオチンはCBD中へ化学的に導入されてもよいし、または、インビボまたはインビトロで別のタンパク質を用いてビオチンが導入されているポリペプチドとCBDとの融合により化学的に導入されてもよい。そのようなポリペプチドは、例えばビオチン化ドメイン、すなわちビオチン化された天然に存在するポリペプチド中の領域である。そのようなビオチン化ドメインは、例えば、クレブシエラ属(Klebsiella)のオキサル酢酸デカルボキシラーゼ(US 5,252,466およびEP 0511747)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のオキサル酢酸デカルボキシラーゼ、プロピオニバクテリウム・シェルマニ(Propionibacterium shermanii)のトランスカルボキシラーゼサブユニット、大腸菌(Escherichia coli)アセチル-CoAカルボキシラーゼのビオチンカルボキシルキャリアタンパク質、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のピルビン酸カルボキシラーゼ、またはサッカロミセス・セレビシエのアセチル-CoAカルボキシラーゼにより示される。しかしながら、そのようなポリペプチドはまた、Aviタグであってもよい(結合活性の特許US 5,932,433、US 5,874,239、およびUS 5,723,584)。さらに、ビオチンは、タンパク質に存在しないか、またはまれに存在するがほとんど接触不可能である基を保有するポリペプチド(例えば、システイン)との融合によって、化学的に特異的に基に結合されてもよい。さらに、ビオチンの代わりに、短いアミノ酸配列であり、かつストレプトアビジンに結合するいわゆるStrepタグ(Skerra, A. & Schmidt, T. G. M. Biomolecular Engineering 16 (1999), 79-86、US 5,506,121)が使用され得る。さらに、Hisタグが使用され得る。異なるタグを組み合わせることも可能であり、および異なるタグの異なる結合親和性を使用するような方法で、例えば、StrepタグおよびHisタグ、またはビオチン化ドメインおよびHisタグを組み合わせることも可能である。ビオチン化ドメインおよびAviタグ、StrepタグおよびHisタグは、好ましくはDNA組み換え技術を用いてCBDに結合される。好ましくは、融合タンパク質は、C末端でCBDのN末端に結合するクレブシエラ属由来のオキサル酢酸デカルボキシラーゼのビオチン化ドメインまたはAviタグ、StrepタグまたはHisタグからなる。しかしながら、そのような融合物はまた、「スペーサー分子」の一種として使用される別のタンパク質、例えば、GFPまたはマルトース結合タンパク質のN末端と結合しているC末端を有する上述したタグの1つであってもよい。この場合、CBDは、そのN末端を介して他のタンパク質のC末端に結合されてもよい。
【0043】
本発明に係るCBDは、最先端の当技術分野において記載されているような、リステリアの濃縮、除去、および検出のための方法に使用され得る。
【0044】
本発明はさらに、リステリアの細胞壁を酵素的に加水分解する特性を有するエンドリシンPlyP40のポリペプチド断片に関する。さらに、本発明は、本発明に係るポリペプチド断片をコードする核酸配列に関する。本発明に係るポリペプチド断片は、以下で「酵素活性を有するドメイン」(EAD)とも称される。
【0045】
好ましくは、本発明に係るポリペプチド断片は、SEQ ID NO:3において示されるような約1〜200位のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1記載の完全長配列を参照して)を示す。好ましくは、本発明はさらに、記載した好ましいポリペプチド断片をコードする核酸分子に関する。
【0046】
好ましくは、本発明はさらに、本発明に係る記載した修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。好ましくは、本発明に係る核酸分子は、SEQ ID NO:2記載のヌクレオチド配列を含む。
【0047】
本発明はさらに、本発明に係る核酸分子を含むベクターに関する。
【0048】
本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドの発現のための適切な宿主細胞に関する。好ましくは、本発明に係るポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、本発明に係る核酸分子または本発明に係るベクターを含む。好ましくは、本発明に係るポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、本発明に係る核酸分子で形質転換されている。
【0049】
本発明はさらに、ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、もしくは診断用物質としての、食物もしくは化粧料における抗菌剤としての、または消毒剤としての本発明に係るタンパク質の使用に関する。
【0050】
本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドを含む薬剤に関する。本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドを含む薬学的組成物に関する。好ましくは、本発明に係る薬学的組成物は、薬学的に許容される緩衝液、薬学的に許容される希釈剤、または薬学的に許容される担体を追加的に含み得る。さらに、本発明に係る薬学的組成物は、適切な安定化剤、着香料、または他の適切な試薬を含有し得る。
【0051】
本発明のさらなる局面は、リステリアにより引き起こされる疾患の治療および/もしくは予防、またはリステリア汚染の診断を目的とした、ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、または診断用物質としての使用のための本発明に係るポリペプチドに関する。
【0052】
リステリアにより引き起こされる疾患は、とりわけ、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症、スメア(smear)感染に起因した局所創傷感染、ならびに結膜および角膜の炎症を含む。
【0053】
本発明のさらなる局面において、本発明に係るポリペプチドは、感染、特にリステリアにより引き起こされる感染の処置および/または予防のための方法において使用される。特に、このリステリア感染は、L.モノサイトゲネス、好ましくは血清型1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4ab、4b、4c、4d、4e、7のL.モノサイトゲネス、特にL.モノサイトゲネス1442 SV1/2a、L.モノサイトゲネス1042 SV 4b、L.モノサイトゲネス1019 SV 4c、および/またはL.モノサイトゲネス1001 SV 1/2 cにより引き起こされる感染であり得る。加えて、この感染は、L.イノキュア、好ましくは血清型3、6a、6b、4ab、U/SのL.イノキュア、特にL.イノキュア2011 SV 6aにより引き起こされるリステリア感染であり得る。患者は、ヒト患者または動物、特に、反芻動物(例えば、ウシ、雌ウシ、ヒツジ、もしくはヤギ)、ブタ、ウマ、家禽、捕獲野鳥、ウサギ、もしくは捕食動物などの畜産および/もしくは酪農において使用される動物であり得る。方法は、感染の部位または感染に対して予防的に処置される部位での適切な量における本発明のポリペプチドの適用を含む。
【0054】
さらなる好ましい態様において、本発明に係るポリペプチドは、胃腸炎、特にリステリアにより引き起こされる胃腸炎の処置および/または予防のための方法において使用される。
【0055】
さらなる好ましい態様において、本発明に係るポリペプチドは、リステリア症、髄膜炎、脳炎、敗血症、ならびにスメア感染に起因した局所創傷感染、ならびに結膜および角膜の炎症、特にリステリアにより引き起こされるものの処置ならびに/または予防のための方法において使用される。
【0056】
さらなる好ましい態様において、本発明に係るポリペプチドは、出産前管理の期間中、上述した疾患の処置および/または予防のための方法において使用される。
【0057】
特に好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、処置または予防される感染が、耐性リステリア株により引き起こされている場合に、医療処置のために使用される。さらに、本発明のポリペプチドは、抗生物質、他の酵素、例えばエンドリシンなどのような従来の抗菌性活性物質と組み合わせて投与することにより、感染の処置のための方法において使用され得る。
【0058】
前述した疾患の処置および/または予防の方法において使用される投与量および投与のタイプは、特定の疾患に依存し、かつ処置される感染の部位にも依存する。例えば、本発明の特定の態様において、投与のタイプは、経口的、局所的、非経口的、静脈内、直腸内、または任意の他の投与のタイプであり得る。感染の部位(または感染のリスクがある部位)での本発明のポリペプチドの適用のために、本発明のポリペプチドは、プロテアーゼ、酸化、または免疫応答などのような環境の影響からポリペプチドが保護されるような様式において製剤化され得る。
【0059】
したがって、本発明のポリペプチドは、カプセル、糖衣丸、丸剤、坐剤、注射可能な溶液、または任意の他の医学的に適切な生薬(galenic)製剤の中に存在し得る。本発明のいくつかの態様において、この生薬製剤は、適切な担体、安定化剤、着香料、緩衝液、または他の適切な試薬を追加的に含有し得る。
【0060】
例えば、局所的適用のために、本発明のポリペプチドはローションまたは硬膏剤の形態において投与することができる。
【0061】
坐薬製剤は腸の処置のために提供され得る。代替的に、経口投与が考慮され得る。この場合、本発明のポリペプチドは、感染の部位に到達するまで胃腸環境の影響から保護されなければならない。例えば、これは、胃における消化の最初の段階を生き延び、および後に腸環境において本発明のポリペプチドを分泌する細菌を担体として使用することにより達成することができる。
【0062】
すべての医薬的使用は、リステリア細菌と接触した際に特異的にかつ直ちに細菌を溶解する本発明のポリペプチドの効果に基づく。これは、病原性細菌および細菌負荷量を減少させ、かつ免疫系を同時に支持することにより、処置される患者の健康状態に即時的な影響を与える。この目的のために、これらの適用に向けた従来の薬物療法において使用されるものと同じ生薬製剤を使用することができる。
【0063】
さらなる局面において、本発明のポリペプチドは化粧料組成物の構成要素である。例えば、本発明に係る化粧料組成物を、リステリア細菌による皮膚の感染を通して引き起こされる刺激を阻害または予防するために使用することができる。本発明に係る化粧料組成物は、好ましくは、既に存在しているおよび/または新しくコロニーを形成しているリステリア細菌を溶解するために十分な量の本発明に係るポリペプチドを含有する。
【0064】
本発明のさらなる局面は、乳製品、燻製魚、塩蔵魚、冷凍海産物、肉製品、サラダ、およびコンビニエンス製品(「出来合いの」製品、特に肉製品および既製の生の食物製品)などの食物における抗菌物質としての、本発明に係るポリペプチドおよび/または宿主細胞の使用に関する。
【0065】
本発明のさらなる局面は、食物加工装置、食物加工施設、棚などの食物と接触する表面領域、食物の貯蔵または加工のために使用される容器および施設、ならびにリステリア細菌が潜在的な食物材料に蔓延する可能性があるすべての他の状況における、抗菌物質としての本発明に係るポリペプチドの使用に関する。この文脈において、本発明に係るポリペプチドは、単独で使用してもよく、または消毒剤、抗生物質、もしくは酵素、例えば別のエンドリシンといった、別の抗菌物質と組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本発明に係るポリペプチドは、例えば、本発明に係るポリペプチドを食物製品に混合することによる、本発明に係るポリペプチドを施設装置に噴霧することによる、および/または本発明に係るポリペプチドを施設装置上に直接適用することによるなどの多数の手段を通して、食物製品に、および/または食物加工施設内の種々の技術的場所に導入したり、または適用したりすることができる。
【0067】
本発明のさらなる局面は、医学、食品産業および食品分析、家畜育種、ならびに飲料水分析または環境分析におけるリステリア汚染の、診断および検出それぞれにおける本発明に係るポリペプチドの使用に関する。
【0068】
リステリア汚染は、例えば、水溶液、および水と有機溶媒の混合物、食物、培地、血液、血液製剤、血漿、血清、尿、便試料、タンパク質溶液、水/エタノール混合物、ならびに、それぞれアッセイされたりまたは単離されたりする非水性固体物質、例えば、タンパク質、DNA、RNA、糖、塩、食物、食物-培地ホモジネート、薬剤、ワクチン、有機および無機化学物質(例えば、NaCl、MgCl2、プリン、ピリミジンなど)などが溶解されている溶液などの種々雑多な試料において、本発明のポリペプチドの助けを借りて検出することができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は本発明を例証するものであって、本発明の範囲を限定するようには考慮されない。別途記述のない限り、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkにより記載されたような分子生物学の標準的な方法を使用した。
【0070】
実施例1:L.イノキュアS1147(SV 6b)に対するエンドリシンPlyP40の溶解活性の濃度依存性
エンドリシンPlyP40の溶解活性の濃度依存性を測定するために、測光法溶解アッセイにおいてL.イノキュアS1147(SV 6b)細胞を基質として使用した。この目的のために、L.イノキュア細胞をpH 8.0で0.05% Tween 20を含むPBS緩衝液(1×TBST)に懸濁し、かつ解凍した。PlyP40濃度に依存した溶解活性の指標として1分あたりの吸光度における変化を、1 mlの総体積中に1 mM DNaseおよび種々の量のエンドリシンPlyP40を添加することにより測定した。結果として、0.0294の直線範囲においてタンパク質の1μgあたりの吸光度における変化dabs/分が測定され、それによりエンドリシンPlyP40の明確な活性を示すことができた。
【0071】
実施例2:L.イノキュアS1147(SV 6b)に対するエンドリシンPlyP40の溶解活性のpH依存性
エンドリシンPlyP40の溶解活性のpH依存性を検討するために、測光法溶解アッセイにおいてL.イノキュアS1147(SV 6b)細胞を基質として使用した。この目的のために、凍結したL.イノキュア細胞を1×PBS緩衝液(pH5〜9)または50 mM クエン酸塩、50 mM NaH2PO4、50 mM ホウ酸緩衝液(pH 4.5〜9.5)のいずれかに懸濁し、かつ解凍した。続いて、基質細胞懸濁液をそれぞれ12.8μgのエンドリシンPlyP40と混合した。溶解活性の指標として1分あたりの吸光度における変化を光度計で測定した。最大の溶解活性が、両方の緩衝液溶液において、検討したなかで最も低いpH値で常に見出されることが判明した。増加するpH値と共に着実に減少する溶解活性が観察され、8より大きいpHでは非常に低い溶解活性しか観察されないか、または全く溶解活性が観察されなかった。そのため、エンドリシンPlyP40の溶解の最適条件は明らかに酸性範囲にあり、およびしたがって、エンドリシンPly511およびPlyP100の溶解の最適条件とは異なっている。
【0072】
実施例3:種々のリステリア株に対するエンドリシンPlyP40の溶解活性
リステリア株L.モノサイトゲネス1442 SV1/2a、L.モノサイトゲネス1042 SV4b、L.モノサイトゲネス1019 SV 4c、L.モノサイトゲネス1001 SV 1/2 c、L.イノキュア2011 SV 6a、およびL.ウェルシメリ50146 SV 6aに対するエンドリシンPlyP40の溶解活性を測光法溶解アッセイにおいて評価した。個々のリステリア株の基質細胞を、1 mlの総体積中にpH 8の1×PBS緩衝液において1.0〜1.5の間の初期OD600(1.0に標準化した)で出発材料として添加した。PlyP40を時間t=0の点で200pmol/mlの濃度で添加し、およびエンドリシンPlyP40の溶解活性の指標として光学密度における変化を数分の間追跡した。アッセイは30℃で行った。エンドリシンPlyP40の高い溶解活性を、異なる血清型群由来のすべてのL.モノサイトゲネス株およびL.イノキュアについて測定したが、L.ウェルシメリに対する溶解活性があまり顕著ではないことは明らかだった。
【0073】
実施例4:2種類のエンドリシンPlyP40およびPly511の熱安定性の比較
熱安定性の試験のために、25 mM リン酸ナトリウム、100 mM NaCl、pH8.0中のエンドリシンPlyP40およびPly511の各100μgを撹拌可能な石英キュベット(体積1 ml)に入れた。タンパク質の凝集により引き起こされる光散乱の変化が原因で温度上昇中に生じる光学密度の増加を、20から90℃へ加熱する間、追跡した。1℃/分の加熱速度を加熱のために使用し、および光学密度の測定は光度計において360 nmの波長で実施した。エンドリシンPlyP40について80℃、およびエンドリシンPly511について68℃の融点を、熱安定性アッセイの手段により測定した。
【0074】
実施例5:異なるリステリアの細胞壁に対する、異なるリステリアエンドリシン由来のGFPタグ付きCBDの結合
いくつかのリステリア株の対数期後期の細胞をPBST(50 mM NaH2PO4、120 mM NaCl、PH 8,0、0,01% Tween 20)中に懸濁し、ならびに、当技術分野において公知であり、かつKorndorferら(2006: The Crystal Structure of the Bacteriophage PSA Endolysin Reveals a Unique Fold Responsible for Specific Recognition of Listeria Cell Walls. J. Mol. Bio. 364: 678-689)およびLoessnerら(2002, Mol Microbiol. 44, 335-349)に記載されている別のリステリア結合タンパク質のCBDと、緑色蛍光タンパク質(HGFP)との融合タンパク質の過剰量とともに、インキュベーションした。それぞれの融合タンパク質を5分間室温でインキュベーションした。TBST緩衝液で2回洗浄した後、Axioplan顕微鏡(Carl Zeiss)を用いた蛍光顕微鏡法のために細胞を調製した。緑色で標識された細胞の写真を、励起450〜490 nm、ビームスプリッター510 nm、および発光520 nmのフィルターセットを用いて取得した。SEQ ID NO:1由来のアミノ酸201〜344を含有するHGFP-CBD-P40は、Loessner et al., 2002, Mol Microbiol. 44, 335-349に記載されているようにC末端でHGFPに融合させた。結合アッセイの結果を下記の表1に示す。
【0075】
(表1)異なる種および血清型のリステリア細胞の細胞壁に対する、異なるリステリアファージエンドリシン由来のGFPタグ付きCBDの結合(++強い、+弱い、(+)非常に弱い、−結合しない)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのバリアント。
【請求項2】
バリアントが、SEQ ID NO:1記載のアミノ酸配列において、欠失、付加、挿入、および/または置換を有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項4】
請求項3記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項5】
請求項3記載の核酸分子または請求項4記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、もしくは診断用物質としての、食物もしくは化粧料における抗菌剤としての、消毒剤としての、または環境分野においての使用のための、請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
食物が、乳製品、燻製魚、塩蔵魚、冷凍海産物、肉製品、サラダ、またはコンビニエンス製品である、請求項6記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項8】
リステリアにより引き起こされる疾患の治療および/もしくは予防、またはリステリア汚染の診断を目的とした、ヒトに対する医療用物質、獣医学的医療用物質、または診断用物質としての適用のための、請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
リステリアにより引き起こされる疾患が、リステリア症、胃腸炎、髄膜炎、脳炎、敗血症、スメア(smear)感染に起因した局所創傷感染、ならびに結膜および角膜の炎症を含む、請求項8記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項10】
出産前管理の期間における請求項8または9のいずれか一項記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項11】
医学における、食品産業および食品分析における、家畜育種における、飲料水分析または環境分析におけるリステリア汚染の検出のための、請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項12】
食物または化粧料における抗菌物質としての、消毒剤としての、または環境分野においての、請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項13】
食物加工装置における、食物加工施設における、食物と接触する表面領域における、および食物の貯蔵または加工のために使用される施設における抗菌物質としての、請求項1または2のいずれか一項記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
抗菌剤が、他の消毒剤、抗生物質、および/または酵素と組み合わせて使用される、請求項13記載の使用。
【請求項15】
SEQ ID NO:3または4記載の配列を有するポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−528898(P2011−528898A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519190(P2011−519190)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059606
【国際公開番号】WO2010/010192
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(309037974)バイオメリュー エス.エー. (4)
【出願人】(510046402)ヒグロス インベスト ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】