説明

エーロフォイル、圧縮機、ベーン、ガスタービンエンジン、およびステータの列

【課題】 非軸対称の内径および外径端壁輪郭を成形したステータベーンエーロフォイルを提供する。
【解決手段】 エーロフォイルが、前縁から後縁へと軸方向に延在するとともに基部から先端部へと径方向に延在する、正圧面と、負圧面と、を有し、基部および先端部が、それらの間に平均翼幅を画定する。内側端壁が基部から軸方向かつ周方向に延在して、内側端壁輪郭を画定し、外側端壁が先端部から軸方向かつ周方向に延在して、外側端壁輪郭を画定する。内側端壁輪郭および外側端壁輪郭は、周方向に一定の公称内側および外側半径からの径方向偏差を変化させることによって定義され、それらの径方向偏差のうちの一つは、軸方向かつ周方向にエーロフォイルの平均翼幅の少なくとも3%変動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ねターボ機械に関し、特にガスタービンエンジンの圧縮機、タービン、またはファンセクションのステータベーンに関する。特に本発明は、軸方向および周方向端壁輪郭(contour)を成形したステータベーンエーロフォイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは航空機や産業用発電を含む広範囲の応用例に信頼性の高い高効率の動力を提供する。現代の設計は、通常、上流のインレットと下流の排気口とともに流れに対して直列に配置された、圧縮機と、燃焼器と、タービンセクションとからなる出力コアを中核として作られる。
【0003】
圧縮機セクションがインレットからの空気を圧縮し、燃焼器内で燃料と混合し、点火して、高温燃焼ガスを発生させる。タービンセクションは、膨張する燃焼ガスからエネルギーを抽出し、共通のシャフトを通して圧縮機を駆動する。シャフトにおける回転エネルギーの形態、排気からの反応スラストの形態、又はその両方の形態でエネルギーが伝えられる。
【0004】
小規模のガスタービンエンジンは概ね同時回転する圧縮機セクションとタービンセクションとを有する1スプール設計を利用する。より大規模の燃焼タービン、ジェットエンジン、および産業用ガスタービン(IGT)は通常、異なる圧力および温度で作動し、異なるスピードで回転する複数の同軸状に入れ子にされたスプールに配置される。
【0005】
各スプール内の個別の圧縮機セクションおよびタービンセクションは、ロータブレードとステータベーンエーロフォイルとの交互の列を形成する複数の段に更に分割される。エーロフォイルは作動流体の流れを回転させ、タービン内の回転エネルギーに変換するように揚力を発生させる形状をなす。
【0006】
航空応用例はターボジェット、ターボファン、ターボプロップ、およびターボシャフト形態を有する。ターボジェットは古い設計であり、主に排気から推力を発生する。現代の固定翼航空機は通常ターボファンおよびターボプロップエンジンを利用し、低圧スプールが推力ファンまたはプロペラに連結される。ターボシャフトエンジンはヘリコプタを含む回転翼航空機で用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの異なるガスタービン応用例を通じて、エンジン性能はステータベーンエーロフォイルに亘る正確な流れ制御に大きく依存する。同様に、流れ制御はエーロフォイル設計だけに依存するのではなく、エーロフォイル表面に隣接する、フローダクトの内側端壁と外側端壁に沿って画定された、隣接する流路の構造にも依存する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はステータまたはベーンエーロフォイルに関する。エーロフォイルは、前縁から後縁へと軸方向に延在するとともに基部から先端部へと径方向に延在する、正圧面と、負圧面と、を有する。基部および先端部が、それらの間に平均翼幅(mean span)を画定する。
【0009】
内側端壁がエーロフォイルの基部から軸方向かつ周方向に延在して、内側端壁輪郭を画定する。外側端壁が先端部から軸方向かつ周方向に延在して、外側端壁輪郭を画定する。
【0010】
内側端壁輪郭および外側端壁輪郭のうち少なくとも一つが非軸対称である。特に、その輪郭は、公称端壁半径からの非軸対称の径方向偏差によって定義され、公称半径は、周方向に一定であり、径方向偏差は、公称半径に関して軸方向と周方向の両方において、平均翼幅の少なくとも3%変動する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンエンジンの断面図。
【図2】端壁領域における二次流れの影響を示す、ステータ段の半径方向図。
【図3A】軸対称の内径および外径端壁輪郭を有するエーロフォイルの側面図。
【図3B】非軸対称の内径および外径端壁輪郭を有するエーロフォイルの側面図。
【図4A】輪郭が成形された内径端壁を有するステータ段の半径方向図。
【図4B】輪郭が成形された外径端壁を有するステータ段の半径方向図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は航空機の推進機関として用いられる2スプールターボファンの形態の、ガスタービンエンジン10の断面図である。図に示すように、低スプール12は、低圧シャフト18を介して回転するように連結された低圧圧縮機(LPC)14と、低圧タービン(LPT)16と、を含む。高スプール20は、高圧シャフト26を介して回転するように連結された高圧圧縮機(HPC)22と、高圧タービン(HPT)24と、を含む。高スプール20は、エンジン中心線(すなわちタービン軸)CLに沿って、燃焼器28が高圧圧縮機22と高圧タービン24との間に流れに対して直列に配置されるように、低スプール12の周りに同軸に配置される。
【0013】
ナセル30が、ガスタービンエンジン10の前端の周りに配置され、その径方向内側表面にファンケース31が推進ファン32からファン出口案内翼(FEGV)33へと延在する。ファン32にファンシャフト34が回転するように連結され、ファンダクト(すなわちバイパスダクト)35を通して推進流れFを発生させる。高性能のエンジン設計では、ファンドライブギアシステム36がファンシャフト34を低スプール12に連結して、騒音を低減し運転効率を向上させるための独立したファンスピードコントロールを提供する。
【0014】
図1に示すように、ガスタービンエンジン10は、低スプール12、高スプール20、低圧タービン16、高圧タービン24、およびファン出口案内翼33全体に亘って分散されたステータベーン段すなわちステータベーンの列を含む。これらのベーンの列は、これに限定しないが、ファンロータ32のファン出口案内翼33、低圧圧縮機14および高圧圧縮機22の圧縮機出口案内翼37,38、および低圧タービン16または高圧タービン24のタービンベーンの列39を含む。一方、ガスタービンエンジン10は、上述のように、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の同時回転するまたは二重反転するスプールを有するターボファン、ターボプロップ、ターボジェット、またはターボシャフトエンジンとして、または、多軸の産業用ガスタービンとして構成され、それに応じて個々のベーンの列33,37,38,39の数、位置、および構成は異なる。
【0015】
各ベーンの列は、複数の個々のベーンエーロフォイルを、タービン軸CLを中心として周方向に配置することによって画定される。内側および外側端壁は低圧圧縮機14、低圧タービン16、高圧圧縮機22、高圧タービン24、およびターボファン形態では、バイパスダクト(またはファンダクト)35を通してフローダクトを画定する。追加のベーンの列が個々の圧縮機とタービンセクションとの間に配置された移行ダクトに配置される。
【0016】
効率およびスラスト性能を向上させるように、一つ以上のこれらのベーンの列に非軸対称の端壁輪郭(non axis−symmetric endwall contouring)が設けられる。この技術では、流体の剥離の一因となる二次流れおよび端壁のロールアップの影響を低減するように、内側端壁および外側端壁の輪郭がタービン軸CLを中心として軸方向に異なるだけでなく、周方向にも異なる。このアプローチはまた、以下に記載するように全体的な拡散性能(diffusion capability)を向上させる。
【0017】
図2は、二次流れ場を示す、ステータの列(ベーンの列またはベーンの段)40の周方向の図である。ステータの列40は、タービン軸CLを中心として周方向に配置された複数の個々のステータベーンエーロフォイル42の形状をなす。流脈線(streakline)Sは径方向外径(OD)端壁または径方向内径(ID)端壁44,43に沿った二次流れを表す。
【0018】
流れは、図2の左側から右側へと進み、ガスタービン軸CLに沿った概ね下流軸方向(矢印F)に、個々のエーロフォイルセクション42の前縁45から後縁46へと進む。流脈線Sは、例えば染料注入によって示される、特定の空間点を通流した流体成分の位置を表す。一方、瞬間的な流れの方向を表す、流れの方向の接線である、流線(streamline)が用いられてもよく、あるいは、特定の流体粒子が続く軌跡に沿って指向された流跡線(pathline)によって流れ場が表される、あるいは、一組の流体粒子をマーキングし、時間が経つに従ってのその変位を追跡することにより形成されるタイムライン(time line)を用いてもよい。
【0019】
エーロフォイルセクション(すなわちエーロフォイル部)42を径方向外側に見た図を示し、(±x軸に沿った)タービン軸CLから径方向(+z軸)に端壁44に向かって見ているところを示す。個々のエーロフォイル部42は凸面(負圧面)47と凹面(正圧面)48との間に画定され、前縁45から後縁46へと軸方向に延在する。端壁44はエーロフォイル部の間に画定され、隣り合う負圧面47と正圧面48との間に(±y軸に沿って)周方向に延在する。
【0020】
一般的な設計では、端壁44は、ベーンエーロフォイル部またはブレードエーロフォイル部を形成するようにエーロフォイル部42に取り付けられた、隣り合うプラットフォーム面に沿って形成される。代替例として、エーロフォイル部42はプラットフォーム面を有さず、独立して形成され、端壁44に取り付けられる。したがって、ここで定義したように、表面44はエーロフォイル部42の基部または先端部から軸方向および周方向に延在する内側または外側プラットフォームに沿って形成される内側または外側端壁表面であり、エーロフォイル部42の基部または先端部から軸方向および周方向に延在する内側または外側端壁を形成する内側または外側プラットフォーム面である。
【0021】
翼形中心線Cは、負圧面47と正圧面48との間の中間点である、エーロフォイルプロファイルの平均線を画定する。周方向流路幅Wは、隣り合うエーロフォイル42の翼形中心線Cの間に画定され、タービン軸CLを中心として内径または外径端壁44に沿って周方向に測定される。
【0022】
図2に示すように、ベーンエーロフォイル42は流れ場における渦流を低減するように成形される。特に、エーロフォイル42は、主に軸方向下流の流脈線S´を、ベーンの列40の右側に生じさせるように、上流流脈線Sの周方向成分をベーンの列40の左側に向ける。
【0023】
ある一定の拡散係数または流れの旋回レベル以上では、境界流層の肥厚化や剥れ、およびその他の損失効果により非効率な旋回を呈しうる。付加的な端壁境界層の流れや関連する二次流れの影響により、損失効果が内径および外径端壁の付近で合成される。ベーンエーロフォイル42によって生成される流路横断(cross−passage)圧力勾配および低流れ方向速度もまた隣り合うエーロフォイル42の間に流路を横断する流れを生じさせ、渦巻運動状態(vorticity)と端壁のロールアップ(roll−up)を生じさせる。これらの影響により、後縁46で始まりエーロフォイル42の負圧面47に沿って上流に進む、内径および外径端壁における隅部の剥離の一因となる。
【0024】
これらの影響に対処するように、ベーンの列40に非軸対称の端壁輪郭(endwall contouring)が設けられる。特に、端壁44の輪郭はエンジン中心線CL(±x軸)に沿った軸方向と、中心線CLを中心として±y軸に沿って回転する周方向と、の両方における径方向の偏差(variation)によって画定される。一方、以下に述べるように、非軸対称の輪郭が内側端壁、または内側および外側端壁の両方に適用され、輪郭が形成されていない軸対称の形状と比較してステータ性能を向上させる。
【0025】
図3Aは、輪郭が形成されていないすなわち軸対称の径方向内径および径方向外径端壁53,54を有するエーロフォイル52の側面図である。流れは前縁55の流脈線Sに沿ってエーロフォイル52の方に向けられ、主に軸方向(矢印F)である。負の軸流速度の領域Rは、後縁56に沿った隅部の剥離および端壁のロールアップに起因し、負圧面57の下流領域へと延在する。
【0026】
図3Aに示すように、エーロフォイル52は、周方向(±y軸)に沿って均一な一定の公称内側および外側半径を有する、軸対称の内径および外径端壁(すなわちプラットフォーム)53,54を有する。この設計は、後縁56と、内径および外径端壁53,54と、の間の隅部の接合部分で、特に重負荷下で、実質的な流体の剥離を受けやすい。境界層のロールアップは逆軸流の広範な領域Rを生み出し、負圧面57に沿った流動的損失(flow dynamic loss)を増大させる。
【0027】
エーロフォイル52に湾曲(bow)を加えることにより隅部の剥離の進行を遅らせうるが、これは翼幅の間の負荷性能(loading capability)を犠牲にして成り立つ。一方、非軸対称の端壁輪郭では、端壁に沿った二次流れの影響を緩和し、負荷時の実質的な負の影響を受けることなく全体的な拡散性能を向上させることが可能である。
【0028】
図3Bは、ある一定の形状が付けられた内径および外径端壁(すなわちプラットフォーム)43,44を有するエーロフォイル42の側面図である。流れはまた流脈線Sに沿って前縁45から後縁46へとエーロフォイル42の方に向けられ、主に軸方向(矢印F)である。しかしながら、図3Bに示すように、負の軸流速度の領域Rは、図3Aの輪郭が形成されていない(すなわち軸対称の)設計に比べて実質的に減少している。また内径および外径端壁43,44に沿った隅部の剥離が減少しており、端壁43,44から負圧面47にかけての境界層ロールアップが減少している。
【0029】
エーロフォイル42を周方向から見た図で示し、負圧面47に向かって−y軸に沿って見下ろしている。軸方向の翼弦長Lは前縁45と後縁46との間でエンジン中心線(x軸)に沿って画定される。
【0030】
概ね、軸方向翼弦長Lは、エーロフォイル42の基部49と先端部50との間で径方向(+z軸)に沿って変化する。平均軸方向翼弦は内径および外径における翼弦の値の平均によって与えられる。
【0031】
【数1】

【0032】
翼幅高さ(span height)Hは、内径端壁(すなわち径方向内径プラットフォーム)43に隣接する基部49から、外径端壁(すなわち径方向外径プラットフォーム)44に隣接する先端部50へと、径方向(+z軸)に沿って画定される。翼幅高さHは軸方向(±x軸)に沿って変化し、平均翼幅(mean span)は前縁45における高さと後縁46における高さとの平均によって与えられる。
【0033】
【数2】

【0034】
一方、平均翼幅および平均軸方向翼弦長は、例えば、エーロフォイル42の基部49と先端部50との中間に位置する平均ブレードセクションを用いることにより、すなわち内径端壁43と外径端壁44との平均翼幅の半分における平均ブレードセクションを用いることにより、同時に画定される。
【0035】
ステータの列40およびエーロフォイル42の形態は応用分野に応じて異なる。一部のエーロフォイル42では、平均翼幅は約0.4インチ(1.0cm)〜1.2インチ(3.0cm)もしくはそれ以上、例えば0.60±0.05インチ、すなわち1.50±0.10cmである。対応するベーンの列40は約5インチ(12cm)〜15インチ(38cm)もしくはそれ以上の範囲の周方向に一定の公称内側半径(RID)を有し、例えば7.5±0.5インチ、すなわち19±1cmである。周方向に一定の公称外側半径(ROD)は約6インチ(15cm)〜18インチ(45cm)もしくはそれ以上の範囲に亘り、例えば8.0±0.5インチ、すなわち20±1cmである。エーロフォイル42の翼幅の中間(midspan)、またはフローダクトの中心すなわち内側半径RIDと外側半径RODとの中間に定義される平均フローダクト半径(RM)もまた異なる。
【0036】
内径端壁43の輪郭は、エンジン中心線(またはタービン軸)から測定した、一定の公称内側端壁半径RIDの周りの周方向の偏差(variation)によって定義される。同様に、外径端壁44の輪郭は、一定の公称外側端壁半径RODの周りの周方向の偏差によって定義される。径方向の偏差は±Z軸に沿って、流路の中心に向かってまたは流路の中心から離れる方向に測定され、それに応じて流量範囲が減少もしくは増加する。流路の中心は翼幅の中心(平均翼幅の半分)で定義され、平均半径RMは内径端壁43と外径端壁44との中間に位置する。
【0037】
図3Bに示すように、±x軸に沿った軸方向位置の関数として、および±y軸に沿った周方向位置の関数として、内径端壁43および外径端壁44のうちの一つまたは両方の輪郭が変化する。その結果、エーロフォイル42はエンジン軸CLを中心とした回転に関して非対称な内径端壁輪郭または外径端壁輪郭のうちの少なくとも一つを有する。
【0038】
この設計により、エーロフォイル42の負圧面47に亘る逆軸流の領域Rを減少させる。後縁46と、内径/外径端壁43,44と、の間の隅部の接合部分で、特にエーロフォイル42の高負荷下において、流体の剥離が低減される。特に基部49と先端部50との間の翼幅の中間部分における端壁のロールアップもまた後縁46に沿って低減される。
【0039】
図4A,4Bは、非軸対称の輪郭を示す、ベーンの列40の内径端壁43および外径端壁44の輪郭のプロットを示す。ベーンの列40をそれぞれ±Z軸に沿った径方向内側および径方向外側の図で示す。翼形中心線Cが図4Aの内径端壁43に隣接するエーロフォイル基部49、および図4Bの外径端壁44に隣接するエーロフォイル先端部50に定義される。
【0040】
負圧面47および正圧面48がガスタービン中心線に沿って、前縁45の軸方向翼弦L0%から後縁46の軸方向翼弦L100%へと軸方向に延在する。内径端壁43が隣り合うエーロフォイル42の基部49の間に周方向に延在し、ベーン間の流路幅Wが翼形中心線C(流路幅0%)から定義されるとともに、+y軸方向に負圧面47から隣接する正圧面48へと増大する。
【0041】
留意すべきは、流路幅Wは湾曲した翼形中心線Cの間で定義されるため、図4Aおよび図4Bの座標系は必ずしも直交座標すなわちデカルト座標である必要は無い。内径端壁43または外径端壁44に点を配置すべく、前縁45(軸方向翼弦L0%)と後縁46(軸方向翼弦L100%)との間に相対的な軸方向翼弦Lが識別され、翼形中心線Cに対して周方向(エンジン軸に対して垂直方向)に延在する。次いで、隣り合う翼形中心線Cの間で周方向流路幅Wが測定され、このとき50%流路幅Wが常に、その隣り合った翼形中心線Cの曲線に従う隣り合ったエーロフォイル42の間の中間点となるように測定される。従って、50%流路幅地点(および流路幅Wのその他の値)は、軸方向翼弦寸法Lに沿った翼形中心線Cの曲率により定義される、エーロフォイル部42の形状に基づいて軸方向に変化する。
【0042】
図4A,4Bの端壁輪郭は、内径端壁43の表1に記載され、外径端壁44の表2に記載されているように定められた離散的な制御点数に基づく。制御点は、平均エーロフォイル翼幅高さの割合として、および、相対的な軸方向翼弦L(または割合)と相対的なベーン間の流路幅W(または割合)との関数として与えられ、周方向に一定の公称内径半径または外径半径からの端壁輪郭の偏差を決定する。
【0043】
図4Aの表1では、軸方向翼弦長Lおよび翼形中心線Cはそれぞれ内径端壁43に隣接するエーロフォイル42の基部49に沿って画定される。周方向流路幅Wは、隣り合う翼形中心線Cの間に画定され、内径端壁43に沿って測定されるとともに負圧面47から正圧面48に向かって増加する。負の値(−)が大きくなるほど、エンジン中心線またはガスタービン軸に向かって、周方向に一定の内径公称半径より下に(エーロフォイル42の翼幅の中間における)流路の中間から離れる方向に逸脱した径方向特徴部を表す。正の値(+)が大きくなるほど、ガスタービン軸から離れる方向に翼幅の中間に向かって、周方向に一定の内径公称半径上または内径公称半径より上にある、径方向特徴部を表す。
【0044】
図4Bの表2では、軸方向翼弦長Lおよび翼形中心線Cは先端部50に沿って画定され、周方向流路幅Wは外径端壁44に沿って周方向に測定される。また負の値(−)が大きくなるほど、翼幅の中間における流路の中間から離れる方向、すなわち外径公称半径よりも上にガスタービン軸から離れる方向に逸脱する特徴部を示す。正の値(+)が大きくなるほど、外径公称半径上または外径公称半径より下、すなわちガスタービン軸および翼幅の中間に向かう方向に逸脱する特徴部を示す。
【0045】
したがって、負の値は、表1および表2の両方において、翼幅の中間から離れる方向に延在する径方向特徴部を示し、内径端壁43と外径端壁44との間の流量範囲を増加させる傾向がある。一方、正の値が大きくなるほど、径方向に翼幅の中間に向かって延在する特徴部を示し、流量範囲を減少させる。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1,2に示すように、内径端壁43および外径端壁44の両方の端壁輪郭は、隣り合うエーロフォイル42の負圧面47と正圧面48との間に配置された物理的な点の、軸方向と周方向の両方における、平均翼幅の少なくとも3%の径方向偏差で定義される。ある地点では、径方向偏差は平均翼幅の5または6%以上である。
【0049】
一部のベーン22では、内径および外径の輪郭はそれぞれ実質的に表1および表2に示された一組の径方向偏差の値に対応する。内径および外径端壁の輪郭の両方とも、高温または低温、あるいはコーティングされたまたはコーティングされていない表面で表されてもよい。
【0050】
一方、一部のベーン22は、概して一連の特徴部に対してスプラインフィットまたは多項式フィッティングを採用するのではなく、内径または外径輪郭の1つ以上の個々の特徴部を組み込む。例えば、内径端壁43に沿って、軸方向翼弦Lの25%〜50%の間と、周方向流路幅Wの25%〜75%の間とに位置する、平均翼幅の5%を上回る径方向偏差を有する特徴部が存在する。さらに具体的には、この特徴部は、軸方向翼弦Lの約30±10%と周方向流路幅Wの約50±10%に中心がある最大偏位(deflection)を有する。
【0051】
外径端壁44に沿って、軸方向翼弦Lの50%〜75%の間と、周方向流路幅Wの75%〜100%の間とに位置する、平均翼幅の5%を上回る径方向偏差を有する特徴部が存在する。さらに具体的には、この特徴部は、軸方向翼弦Lの約70±10%と周方向流路幅Wの約85±10%とに中心がある最大偏位を有する。別の外径特徴部は、軸方向翼弦Lの約25±10%と周方向流路幅Wの約20±10%に中心がある、平均翼幅の5%を上回る最大偏位を有する。
【0052】
留意すべきは、負圧面47および正圧面48に沿って異なる輪郭を形成する非軸対称のフィットを組み込むように、流路幅Wの0%および100%の制御点は必ずしも等しいまたは断続的である必要はない。さらに、周方向流路幅Wの0%および100%の制御点は、両方とも翼形中心線上にあり、これはエーロフォイル部42内部にある。一方、物理的な端壁面は、隣り合うエーロフォイル部42の間の負圧面47から正圧面48へと延在する。
【0053】
したがって、実質的な対応は、ここで用いるように、隣り合うエーロフォイル42の負圧面47と正圧面48との間に配置された、表1,2における実際の(物理的な)制御点との実質的な対応を意味する。また実質的な対応は、例えば制御点に固定(anchored)した三次スプラインを用いることによる、制御点の一式への多項式フィットまたはスプラインフィットを含む。これらの応用例では、端壁の輪郭は実質的に一つのエーロフォイル42の負圧面47と、隣接するエーロフォイル42の正圧面48との間のフィッティング関数(fitting function)に対応するが、必ずしもエーロフォイル自体の断面内にある必要はない。
【0054】
さらに、実質的な対応は、実際の(物理的な)制御点およびフィット関数に関する、例えば平均翼幅の1または2%の公称公差を含む。もう一つの選択肢として、公差は例えば2,5〜10mil、すなわち、0.002、0.005または0.010インチ以内、または約0.05、0.10、または0.25mm以内のように絶対的である。
【0055】
実施例を参照しながら本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更がなされ、本発明の要素と同等のものに置き換えられうることが当業者にとって理解されるであろう。さらに、本発明の真の範囲を逸脱することなく特定の状況もしくは材料に適合するように、種々の変更が本発明の教示に対してなされうる。したがって、本発明は開示の特定の実施例に限定されるものではなく、付記の特許請求の範囲に含まれる全ての実施例を包含することを意図するものである。
【符号の説明】
【0056】
42…エーロフォイル部
43…径方向内径端壁
44…径方向外径端壁
45…前縁
46…後縁
47…負圧面
49…基部
50…先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前縁から後縁へと軸方向に延在するとともに基部から先端部へと径方向に延在する正圧面および負圧面であって、前記基部および前記先端部がそれらの間に平均翼幅を画定する、正圧面および負圧面と、
前記基部から周方向に延在し、かつ、周方向に一定の内側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される、内側端壁輪郭を画定する内側プラットフォームと、
前記先端部から軸方向かつ周方向に延在し、かつ、周方向に一定の外側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される、外側端壁輪郭を画定する外側プラットフォームと、
を備え、
前記内側および外側端壁輪郭のうち少なくとも一つの前記径方向偏差は、軸方向および周方向に前記平均翼幅の少なくとも3%変動することを特徴とするエーロフォイル。
【請求項2】
前記内側端壁輪郭の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表1)に記載の数値に対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記基部から周方向に延在しており、前記偏差は、前記平均翼幅の2%の公差以内の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【表1】

【請求項3】
前記内側端壁輪郭の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表1)に記載の数値間のスプライン補間に対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記先端部から周方向に延在しており、前記偏差は、前記平均翼幅の2%の公差以内の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【表1】

【請求項4】
前記平均翼幅は、0.4インチ〜1.2インチ、すなわち1.0cm〜3.0cmの間であることを特徴とする請求項3に記載のエーロフォイル。
【請求項5】
前記外側端壁輪郭の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表2)に記載の数値に対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記基部から周方向に延在しており、前記偏差は、前記平均翼幅の2%の公差以内の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【表2】

【請求項6】
前記外側端壁輪郭の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表2)に記載の数値間のスプライン補間に対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記基部から周方向に延在しており、前記偏差は、前記平均翼幅の2%の公差以内の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【表2】

【請求項7】
前記平均翼幅は、0.4インチ〜1.2インチ、すなわち1.0cm〜3.0cmの間であることを特徴とする請求項6に記載のエーロフォイル。
【請求項8】
前記内側端壁輪郭は前記平均翼幅の少なくとも5%の最大径方向偏差を画定し、前記最大径方向偏差は、前記前縁から延在する軸方向翼弦における軸方向の25%〜50%に位置し、かつ、前記エーロフォイルの平均翼形中心線から前記内側端壁輪郭に沿って前記負圧面から増加するように定義された周方向流路における周方向の25%〜75%に位置することを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【請求項9】
前記外側端壁輪郭は前記平均翼幅の少なくとも5%の最大径方向偏差を画定し、前記最大径方向偏差は、前記前縁から延在する軸方向翼弦における軸方向の50%〜75%に位置し、かつ、前記エーロフォイルの平均翼形中心線から前記外側端壁輪郭に沿って前記正圧面に向かって増加するように定義された周方向流路における周方向の75%〜100%に位置することを特徴とする請求項1に記載のエーロフォイル。
【請求項10】
請求項1に記載の複数のエーロフォイルを備えた圧縮機であって、前記複数のエーロフォイルが、前記内側端壁輪郭と前記外側端壁輪郭との間にフローダクトを画定するように軸を中心として周方向に配置された圧縮機。
【請求項11】
前記複数のエーロフォイルが、高圧セクションのベーンの列を画定することを特徴とする請求項10に記載の圧縮機。
【請求項12】
前縁から後縁へと軸方向に延在し、かつ、基部から先端部へと径方向に延在するとともにそれらの間に平均翼幅を画定する、正圧面と負圧面とを有するエーロフォイル部と、
前記エーロフォイル部の前記基部に隣接して軸方向および周方向に延在する内側端壁であって、周方向に一定の公称内側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される非軸対称の輪郭を有する内側端壁と、
前記エーロフォイル部の前記先端部に隣接して軸方向および周方向に延在する外側端壁であって、周方向に一定の公称外側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される非軸対称の輪郭を有する外側端壁と、
を備え、
前記内側端壁および前記外側端壁の前記径方向偏差は、前記軸方向および周方向に沿って前記平均翼幅の少なくとも3%変動することを特徴とするベーン。
【請求項13】
前記内側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表1)に記載の数値に対応し、前記外側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表2)に記載の数値に対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記正圧面および前記負圧面から周方向に延在しており、前記径方向偏差は、前記平均翼幅の2%の公差の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項12に記載のベーン。
【表1】

【表2】

【請求項14】
前記内側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表1)に記載の数値へのスプラインフィットに対応し、前記外側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表2)に記載の数値へのスプラインフィットに対応し、前記数値は前記前縁から軸方向に延在するとともに前記正圧面および前記負圧面から周方向に延在しており、前記径方向偏差は、前記平均翼幅の2%の公差の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項12に記載のベーン。
【表1】

【表2】

【請求項15】
前記平均翼幅は、0.4インチ〜1.2インチ、すなわち1.0cm〜3.0cmの間であることを特徴とする請求項14に記載のベーン。
【請求項16】
請求項15に記載の複数のベーンを備えたガスタービンエンジンであって、前記複数のベーンが、前記内側端壁と前記外側端壁との間にフローダクトを画定するように、軸を中心として周方向に配置されたガスタービンエンジン。
【請求項17】
前記複数のベーンが、高圧圧縮機セクションの出口ガイドベーンの列を画定することを特徴とする請求項16に記載のガスタービンエンジン。
【請求項18】
前記内側端壁は前記平均翼幅の少なくとも5%の径方向偏差を含み、前記少なくとも5%の径方向偏差は、前記前縁から延在する軸方向翼弦における軸方向の25%〜50%に位置し、かつ、前記エーロフォイルの平均翼形中心線から前記内側端壁に沿って前記負圧面から増加するように定義された周方向流路における周方向の25%〜75%に位置することを特徴とする請求項12に記載のベーン。
【請求項19】
前記外側端壁は前記平均翼幅の少なくとも5%の径方向偏差を含み、前記少なくとも5%の径方向偏差は、前記前縁から延在する軸方向翼弦における軸方向の50%〜75%に位置し、かつ、前記エーロフォイルの平均翼形中心線から前記外側端壁輪郭に沿って前記正圧面に向かって増加するように定義された周方向流路における周方向の75%〜100%に位置することを特徴とする請求項12に記載のベーン。
【請求項20】
軸を中心として周方向に配置された複数のエーロフォイルであって、その各々が、前縁から後縁へと軸方向に延在し、かつ、基部から先端部へと径方向に延在するとともにそれらの間に平均翼幅を画定する、正圧面と負圧面とを有する、複数のエーロフォイルと、
前記基部に隣接して前記エーロフォイルの間に軸方向かつ周方向に延在する内側端壁であって、周方向に一定の公称内側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される非軸対称の輪郭を有する内側端壁と、
前記先端部に隣接して前記エーロフォイルの間に軸方向かつ周方向に延在する外側端壁であって、周方向に一定の公称外側半径からの径方向偏差を変化させることによって画定される非軸対称の輪郭を有する外側端壁と、
を備え、
前記内側端壁および前記外側端壁の前記径方向偏差は、各々、前記軸方向かつ周方向に前記平均翼幅の少なくとも3%変動することを特徴とするステータの列。
【請求項21】
前記内側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表1)に記載の数値間のスプライン補間に対応し、前記数値は、前記前縁から軸方向に延在するとともに前記エーロフォイルから前記基部に隣接して周方向に延在しており、前記径方向偏差は、前記平均翼幅の2%の公差の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項20に記載のステータの列。
【表1】

【請求項22】
前記外側端壁の前記径方向偏差は、実質的に以下の(表2)に記載の数値間のスプライン補間に対応し、前記数値は、前記前縁から軸方向に延在するとともに前記エーロフォイルから前記先端部に隣接して周方向に延在しており、前記径方向偏差は、前記平均翼幅の2%の公差の、前記平均翼幅との比率として表されることを特徴とする請求項20に記載のステータの列。
【表2】

【請求項23】
請求項20に記載のステータの列を備えた圧縮機。
【請求項24】
前記ステータの列が、高圧セクション内部に含まれることを特徴とする請求項23に記載の圧縮機。
【請求項25】
前記ステータの列が、出口ガイドベーンの列を画定することを特徴とする請求項23に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2013−96411(P2013−96411A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236241(P2012−236241)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】