説明

オイルクーラバイパスバルブ

【課題】油圧脈動が発生する場合に、油圧脈動を受けて弁体が主油路に衝突するのを防止することができ、異音が発生するのを防止することができるオイルクーラバイパスバルブを提供すること。
【解決手段】CVB16は、冷却油路27に連通する入力ポート31aおよび排出油路34に連通する排出ポート31cを有する本体31と、本体31に収容され、入力ポート31aおよび排出ポート31cを介して冷却油路27と排出油路34との連通を遮断する第1の位置と、冷却油路27を流れる作動油圧が所定油圧以上となったとき、入力ポート31aおよび排出ポート31cを介して冷却油路27と排出油路34とを連通する第2の位置との間で移動自在な弁体32とを備え、弁体32が、本体31に対して冷却油路27を流れる作動油の流れ方向と略同方向に移動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルクーラバイパスバルブに関し、特に、車両に搭載されるロックアップクラッチ付流体伝動装置の油圧制御回路に設けられて好適なオイルクーラバイパスバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアップクラッチ付トルクコンバータやロックアップクラッチ付フルードカップリング等のようなロックアップクラッチ付流体伝動装置を備えた車両において、ロックアップクラッチをON/OFFするためのロックアップコントロールバルブが設けられている。
【0003】
このロックアップコントロールバルブは、自動変速機の油圧制御を行う油圧制御系の油圧(ライン圧)を元圧として、ロックアップクラッチに作用させる油圧を制御することによって、ロックアップクラッチの係合および解放を制御している。
【0004】
具体的には、ロックアップコントロールバルブは、ライン圧を元圧とするロックアップコントロールバルブによって、トルクコンバータの係合側油室と解放側油室との間の差圧(ロックアップ差圧)を制御することによって、ロックアップクラッチの係合・解放制御を行っている。
【0005】
このロックアップコントロールバルブは、ロックアップクラッチの係合側油室と解放側油室に連通する係合側ポートおよび解放側ポートと、デューティソレノイドバルブが出力する制御油圧をパイロット圧として、係合側ポートと解放側ポートの切換えを行うように摺動自在なスプールとを備え、デューティソレノイドバルブの出力油圧が最大圧とされることにより、係合側ポートに供給される油圧を最大にしてロックアップクラッチを最大係合トルクで完全係合するようになっている。
【0006】
また、ロックアップコントロールバルブは、ロックアップクラッチを係合・解放制御する際に、デューティソレノイドバルブがデューティ制御されることにより、係合側ポートと解放側ポートから出力される油圧を所定の変化パターンに従って変化させることにより、ロックアップクラッチを滑らかに係合または解放するようになっている。
【0007】
一方、ロックアップクラッチの解放時においては、トルクコンバータ内の作動油がトルクコンバータのポンプ翼車およびタービン翼車によって攪拌されるため、作動油の温度が上昇させられる。このため、油圧制御回路には、この上昇させられた作動油の温度を冷却するためのオイルクーラが設けられている。
【0008】
一般に、オイルクーラ内のクーラホースが不純物等によって塞がれることで、その油路内の油圧が上昇しオイルクーラが損傷される等の不具合を回避するため、オイルクーラ内の油圧が所定の圧力以上になると開弁して、余剰油をオイルパンに排出することにより、オイルクーラに所定の圧力以上の油圧を流入させないように構成されたオイルクーラバイパスバルブが設けられている。
【0009】
従来のこの種のオイルクーラバイパスバルブとしては、図6に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図6において、オイルクーラバイパスバルブ1は、図示しないトルクコンバータに連通する主油路2上に設けられており、主油路2に接続される入力ポート1aと、オイルクーラ3に接続される排出ポート1b、図示しないオイルパンに接続される排出ポート1cと、弁体1dと、この弁体1dが着座可能な弁座1eと、弁体1dを弁座1eに着座させる方向に常時付勢するスプリング1fとから構成されている。
【0010】
このオイルクーラバイパスバルブ1は、主油路2を流れる作動油圧が高くなり、弁体1dが第1の設定油圧の作動油圧を受けると、弁体1dがスプリング1fの付勢力に抗して下降することにより、排出ポート1bを解放して作動油をオイルクーラ3に供給する。
【0011】
また、主油路2を流れる作動油圧がさらに高くなり、弁体1dが第1の設定油圧よりも高い第2の設定油圧の作動油圧を受けると、弁体1dがスプリング1fの付勢力に抗してさらに下降することにより、排出ポート1cを解放して作動油をオイルパンに排出するようになっている。
【0012】
また、ロックアップコントロールバルブは、入力ポート1aに連通する出力ポートを備えており、ロックアップクラッチは、デューティソレノイドバルブが出力する制御油圧に応じてスプール(弁体)が出力ポートを解放・遮断することにより、入力ポート1aに作動油を供給および停止するようになっている。
【0013】
具体的には、出力ポートは、ロックアップクラッチの締結時にスプールによって閉塞されるため、入力ポート1aに作動油が供給されないようになっている。また、出力ポートは、ロックアップクラッチの解放時には、解放されるため、入力ポート1aに作動油が供給されるようになっている。このため、ロックアップクラッチの解放時にトルクコンバータ内の作動油がトルクコンバータのポンプ翼車およびタービン翼車によって攪拌されて高温になる場合には、作動油をオイルクーラによって冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−267115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような従来のオイルクーラバイパスバルブ1にあっては、主油路2を流れる作動油の流れ方向a1に対して弁体1d側に流れる作動油の流れ方向a2が異なる方向、すなわち、主油路2の作動油の流れ方向a1と同方向に入力ポート1aが開口しているため、オイルクーラバイパスバルブ1に供給される油圧の脈動が発生した場合に、弁体1dが弁座1eに繰り返し衝突してしまい、異音が発生してしまうという問題があった。
【0016】
具体的には、ロックアップコントロールバルブは、ロックアップクラッチの解放・締結時に、ロックアップコントロールバルブに供給されるパイロット圧をデューティ制御することにより、スプールを摺動させることで出力ポートからオイルクーラバイパスバルブに作動油を供給するようになっている。
【0017】
このとき、デューティソレノイドバルブから出力されるパイロット圧が、例えば、60Hz程度でデューティ制御されている場合に、パイロット圧は、60Hzで振動する。このとき、ロックアップコントロールバルブに供給されるパイロット圧の振動振幅が大きく、ロックアップコントロールバルブのスプールが振動する。
【0018】
このため、出力ポートは、スプールの振動に伴って開口面積の増減を交互に繰り返してしまい、ロックアップコントロールバルブからオイルクーラバイパスバルブ1に供給される作動油には油圧脈動が発生することになる。
【0019】
そして、この油圧脈動の圧力が第1の設定油圧の範囲内にある場合には、弁体1dが上下方向に振動して弁体1dが入力ポート1aの開閉を繰り返してしまい、弁体1dが弁座1eに繰り返し衝突して異音が発生してしまうのである。
【0020】
特に、車両の燃費を向上させるために、低車速でロックアップクラッチが締結される場合には、ロックアップコントロールバルブからオイルクーラバイパスバルブ1に供給される排気脈動の圧力が第1の設定油圧を含んだ範囲となると、「ジー」という、不快な音が発生し易くなる。
【0021】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、弁体に油圧脈動が作用して弁体が振動した場合であっても、弁体が本体に衝突するのを防止することができ、異音が発生するのを防止することができるオイルクーラバイパスバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るオイルクーラバイパスバルブは、上記目的を達成するため、(1)オイルクーラに作動油を供給する主油路と、前記主油路に供給される作動油を排出する排出油路との間に設けられたオイルクーラバイパスバルブであって、前記主油路に連通する入力ポートおよび前記排出油路に連通する排出ポートを有する本体と、前記本体に収容され、前記入力ポートおよび前記排出ポートを介して前記主油路と前記排出油路との連通を遮断する第1の位置と、前記主油路を流れる作動油圧が所定油圧以上となったとき、前記入力ポートおよび前記排出ポートを介して前記主油路と前記排出油路とを連通する第2の位置との間で移動自在な弁体とを備え、前記弁体が、前記本体に対して前記主油路を流れる作動油の流れ方向と略同方向に移動するように構成されている。
【0023】
このオイルクーラバイパスバルブは、弁体が、本体に対して主油路を流れる作動油の流れ方向と略同方向に移動するので、入力ポートを介して本体内に導入される油圧脈動の方向に対して弁体の移動方向を略直交する方向にすることができるため、弁体に油圧脈動が作用して弁体が振動した場合であっても、弁体が本体に衝突するのを防止することができる。この結果、オイルクーラバイパスバルブから異音が発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、弁体に油圧脈動が作用して弁体が振動した場合であっても、弁体が本体に衝突するのを防止することができ、異音が発生するのを防止することができるオイルクーラバイパスバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図であり、油圧制御回路の構成図である。
【図2】本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図であり、閉弁状態にあるオイルクーラバイパスバルブの構成図である。
【図3】本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図であり、開弁状態にあるオイルクーラバイパスバルブの構成図である。
【図4】本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図であり、閉弁状態にある他の構成のオイルクーラバイパスバルブの構成図である。
【図5】本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図であり、開弁状態にある他の構成のオイルクーラバイパスバルブの構成図である。
【図6】従来のオイルクーラバイパスバルブの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図5は、本発明に係るオイルクーラバイパスバルブの一実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、ロックアップクラッチを油圧制御する油圧制御回路としてのロックアップ制御回路11は、ロックアップコントロールバルブ12、第2調圧弁13、ロックアップ差圧制御用ソレノイドバルブ(以下、単にDSUという)14、ロックアップソレノイドバルブ(以下、単にSLという)15およびオイルクーラバイパスバルブ(以下、単にCVBという)16を含んで構成されている。
【0027】
ロックアップコントロールバルブ12には、一対の第1ライン圧ポート17、第2ライン圧ポート18、係合側ポート19、解放側ポート20および信号圧ポート21が設けられている。
【0028】
第1ライン圧ポート17および第2ライン圧ポート18には、第2調圧弁13からの元圧PL2が供給されるようになっており、第2調圧弁13は、ロックアップ制御回路11を含んだ車両のトランスアクスルを制御する図示しない油圧制御回路内の制御圧(ライン圧)を調圧してロックアップコントロールバルブ12に供給する。このため、ロックアップコントロールバルブ12の元圧PL2はライン圧に依存し、ライン圧変動の影響を受ける。
【0029】
ロックアップコントロールバルブ12の係合側ポート19および解放側ポート20は、トルクコンバータ41の係合側油室42および解放側油室43に接続されており、ロックアップコントロールバルブ12にはロックアップ係合油圧PLUが供給されるフィードバック油室22が設けられている。
【0030】
DSU14は、リニアソレノイドバルブであって、励磁状態のときに制御信号圧PDSUを出力し、非励磁状態のときに制御信号圧PDSUの出力を停止する。
DSU14は、図示しないECUから出力されるロックアップ差圧指示値PDに従って励磁電流がデューティ制御されるようになっており、出力制御信号圧PDSUが連続的に変化する。
【0031】
DSU14から出力される制御信号圧PDSUは、ロックアップコントロールバルブ12の信号圧ポート21に供給される。
【0032】
このロックアップ制御回路11において、ECUから出力されるロックアップ差圧指示値PDに従ってDSU14が励磁状態となり、その制御信号圧PDSUがロックアップコントロールバルブ12の信号圧ポート21に供給されると、図1の中心線より右側半分に示すように、ロックアップコントロールバルブ12のスプール23が圧縮コイルバネ24の付勢力に抗して下方に移動した状態(ON状態)となって、第1ライン圧ポート17と係合側ポート19とが連通する。
【0033】
これによってロックアップ係合油圧PLUが係合側油室42に供給されるとともに、解放側ポート20がドレーンポート25に連通することにより、解放側油室43内の作動油がドレーンポート25からドレーンされ、ロックアップクラッチ44が係合(ON)する。
【0034】
また、ロックアップコントロールバルブ12のフィードバック油室22には、ロックアップ係合油圧PLUが供給されるので、ロックアップ係合油圧PLUが制御信号圧PDSUと釣り合うようにスプール23が移動する。
【0035】
このため、制御信号圧PDSU、すなわち、ロックアップ差圧指示値PDに応じてロックアップクラッチ44の係合側油室42内の油圧PONと解放側油室43内の油圧POFFとの差圧ΔP(ロックアップ差圧ΔP)を連続的に制御することができ、ロックアップ差圧ΔPに応じてロックアップクラッチ44の係合トルク、すなわち、係合力を連続的に変化させることができる。
【0036】
一方、DSU14のデューティ制御パターンを変更することにより、DSU14からの制御信号圧PDSUの出力パターンを変更すると、ロックアップコントロールバルブ12は、図1の中心線より左側半分に示すように、圧縮コイルバネ24の付勢力によってスプール23が徐々に上方の原位置に向かって移動する。
そして、DSU14が励磁状態にして制御信号圧PDSUの出力を停止すると、スプール23が上方の原位置に復帰した状態(OFF状態)となる。
【0037】
このOFF状態では、第2ライン圧ポート18と解放側ポート20とが連通し、元圧PL2がロックアップクラッチ44の解放側油室43に供給されるとともに、係合側ポート19が排出ポート26に連通する。
【0038】
また、スプール23の右側半分が最も下方に移動した状態にあるときには、ロックアップクラッチ44は、完全係合状態となり、このときに排出ポート26は、スプール23によって完全に閉止された状態となる。
【0039】
また、ロックアップクラッチ44の解放時には、スプール23の右側半分の状態から左側半分の状態となるようにスプール23が上方に移動するに従って、排出ポート26を徐々に解放するようになっており、スプール23の左側半分が最も上方に移動した状態では、排出ポート26は、完全開放される。
【0040】
このように、ロックアップコントロールバルブ12は、ロックアップクラッチ44を係合・解放制御する際には、DSU14がデューティ制御されることにより、係合側ポート19と解放側ポート20から出力される油圧を所定の変化パターンに従って変化させることにより、ロックアップクラッチ44を滑らかに係合または解放するようになっている。
【0041】
また、ロックアップクラッチ44が完全係合された状態から解放される状態に移行する間に、係合側油室42内から排出ポート26を介して排出される作動油量が徐々に増大し、ロックアップクラッチ44が解放(OFF)状態となるときには、排出ポート26から排出される作動油量が最大となる。
この排出ポート26から排出された作動油は、冷却油路27を通してオイルクーラ28に供給され、オイルクーラ28を通過した作動油は、オイルパン29に排出される。
【0042】
CVB16は、ドレーンポート25に連通する冷却油路27上に設けられており、オイルクーラ28に供給される作動油圧が所定油圧となった場合に、余剰な作動油をオイルパン29に排出するようになっている。
【0043】
図2に示すように、CVB16は、冷却油路27に連通する入力ポート31aを有し、内部に油室31bが画成される本体31と、本体31内に移動自在に収容された弁体32と、弁体32を図2中、左方向に付勢する圧縮コイルバネ33とを含んで構成されている。
【0044】
また、本体31には排出ポート31cが形成されており、この排出ポート31cは、排出油路34に連通している。この排出油路34は、オイルパン29に連通しており、油室31bに導入された作動油をオイルパン29に排出されるようになっている。
また、弁体32は、冷却油路27を流れる作動油(排気脈動A)の流れ方向A0と略同方向に移動するようになっており、左端部が左下方に向かって傾斜するテーパ32aを有している。
【0045】
このように弁体32の左端部に、左下方に向かって傾斜するテーパ32aが形成されているため、弁体32の下面32cが排出ポート31cを閉塞した状態のときには、弁体32の上面32bが入力ポート31aの一部を閉塞し、テーパ32aが入力ポート31aの一部を通して冷却油路27を流れる作動油を受けるようになっている。
【0046】
また、圧縮コイルバネ33は、本体31の油室31bに導入される作動油圧が所定油圧未満のときに、弁体32が排出ポート31cを閉塞する位置(図2参照)に付勢する付勢力(バネ定数)に設定されている。
【0047】
このため、本体31の油室31bに導入される作動油圧が所定油圧以上のときに、本体31は、圧縮コイルバネ33の付勢力に抗して右方に移動して排出ポート31cを解放することにより、入力ポート31aおよび排出ポート31cを介して冷却油路27および排出油路34を連通するようになっている(図3参照)。
【0048】
すなわち、本実施の形態の弁体32は、入力ポート31aおよび排出ポート31cを介して冷却油路27と排出油路34との連通を遮断する第1の位置と、冷却油路27を流れる作動油圧が所定油圧以上となったとき、入力ポート31aおよび排出ポート31cを介して冷却油路27と排出油路34とを連通する第2の位置との間で移動自在となっており、弁体32が、本体31に対して冷却油路27を流れる作動油の流れ方向A0と略同方向に移動するように構成されている。
【0049】
図1において、ロックアップコントロールバルブ12にはバックアップポート36が設けられており、このバックアップポート36にはSL15の出力油圧PSLが供給されるようになっている。
【0050】
バックアップポート36にSL15からの油圧PSLが供給されると、ロックアップコントロールバルブ12の信号圧ポート21への制御信号圧PDSUの供給に関わらず、ロックアップコントロールバルブ12をOFF状態に維持してロックアップクラッチ44を強制的に解放する。
【0051】
SL15は、ソレノイドバルブであって、例えば発進停止時等の低車速時に油圧PSLを出力することにより、DSU14のONフェール等により、ロックアップクラッチ44が係合してエンジンストールが発生することを防止できる。
【0052】
次に、作用を説明する。
上述したように、ロックアップクラッチ44を解放状態から締結状態に切換える場合には、ECUから出力されるロックアップ差圧指示値PDに従って励磁電流のデューティ制御が行われ、DSU14から出力される出力制御信号圧PDSUが連続的に変化する。
【0053】
DSU14から出力される制御信号圧PDSUは、パイロット圧としてロックアップコントロールバルブ12の信号圧ポート21に供給され、スプール23は、図1の中心線より左側半分に示す原位置から圧縮コイルバネ24の付勢力に抗して徐々に下方に向かって移動する。このため、上述したようにロックアップクラッチ44が、滑らかに締結される。
【0054】
また、スプール23が下方に移動するに従って排出ポート26の開口面積が徐々に小さくなり、最終的にはスプール23によって排出ポート26が閉止されるので、排出ポート26から排出された作動油は、冷却油路27を通してオイルクーラ28に供給されなくなる。
【0055】
一方、ロックアップクラッチ44を締結状態から解放状態に切換える場合には、ECUから出力されるロックアップ差圧指示値PDに従って励磁電流がデューティ制御され、DSU14から出力される出力制御信号圧PDSUが連続的に変化する。
【0056】
DSU14から出力される制御信号圧PDSUは、パイロット圧としてロックアップコントロールバルブ12の信号圧ポート21に供給され、スプール23は、図1の中心線より左側半分に示す状態から圧縮コイルバネ24の付勢力によって徐々に上方の原位置に向かって移動する。このため、ロックアップクラッチ44は、上述したように滑らかに解放される。
【0057】
また、スプール23が上方に移動するに従って排出ポート26の開口面積が徐々に大きくなり、ドレーンポート25から排出された作動油は、冷却油路27を通してオイルクーラ28に供給される。このため、オイルクーラ28を通過した作動油は、オイルパン29に排出される。
【0058】
ここで、オイルクーラ28内のクーラホースが不純物等によって塞がれることで、その油路内の油圧が上昇しオイルクーラ28が損傷される等の不具合を回避する必要がある。
【0059】
本実施の形態では、弁体32のテーパ32aに入力ポート31aから冷却油路27内を流れる作動油が常時作用し、油室31bには冷却油路27から作動油が導入される。
【0060】
冷却油路27を流れる作動油圧が所定の作動油圧以上になり、弁体32のテーパ32aに作用する作動油圧が所定油圧以上になると、弁体32が圧縮コイルバネ33の付勢力に抗して図2中、右方に移動する。テーパ32aの下端は、テーパ32aの上端に対して左側に突出しているため、弁体32が右側に移動すると、排出ポート31cを解放する。
このため、冷却油路27から入力ポート31aを介して油室31bに導入された作動油が排出ポート31cからオイルパン29に排出される。
【0061】
一方、上述したように、ロックアップクラッチ44を締結状態と解放状態との間で切換えるときには、DSU14から出力される制御信号圧PDSU(パイロット圧)が所定のデューティ値(Hz)でデューティ制御されるため、制御信号圧PDSUは、所定のデューティ値で振動する。このとき、DSU14から信号圧ポート21に供給されるパイロット圧の振動振幅が大きいと、ロックアップコントロールバルブ12のスプール23が振動することがある。
【0062】
本実施の形態では、ロックアップクラッチ44を締結状態と解放状態との間で切換えるときに、排出ポート26がスプール23によって開閉されるため、スプール23の振動により、排出ポート26の開口面積の増減を交互に繰り返してしまい、排出ポート26から冷却油路27に排出される作動油には油圧脈動が発生することがある。
【0063】
具体的には、ロックアップクラッチ44が係合状態にあるときには、スプール23が図1中、右側半分に示すように、最下位に位置しているため、排出ポート26が閉止された状態になる。
【0064】
この状態からロックアップクラッチ44の解放が開始されると、スプール23が上方に徐々に移動して排出ポート26の開口面積を徐々に大きくし、最終的には排出ポート26を完全解放する。そして、排出ポート26が解放されると、排出ポート26から冷却油路27を介してオイルクーラ28に作動油が供給される。
【0065】
また、排出ポート26の開口面積が大きくなるに従って、排出ポート26から冷却油路27を介してCVB16に供給される作動油圧が大きくなり、この作動油圧が所定の作動油圧になると、弁体32が排出ポート31cを解放することにより、作動油をオイルパン29に排出する。
【0066】
そして、ロックアップクラッチ44を締結状態から解放状態に切換えるときに、スプール23が振動すると、スプール23により排出ポート26の開口面積の増減が交互に繰り返されてしまい、排出ポート26から冷却油路27に排出される作動油には油圧脈動が発生してしまう。
【0067】
また、ロックアップクラッチ44が解放状態から締結状態に切換えるときには、スプール23が図1中、左側半分に示すように、最上位に位置した状態からスプール23が下方に徐々に移動して排出ポート26の開口面積を徐々に小さくし、最終的には排出ポート26を完全閉止する。
【0068】
そして、ロックアップクラッチ44を解放状態から締結状態に切換えるときに、スプール23が振動すると、スプール23により排出ポート26の開口面積の増減が交互に繰り返されてしまい、排出ポート26から冷却油路27に排出される作動油には油圧脈動が発生してしまう。
【0069】
このようにロックアップクラッチ44を解放状態と係合状態との間で切換えるときに、排出ポート26からCVB16に供給される作動油に油圧脈動が発生した場合に、この油圧脈動が所定の作動油圧の範囲に入ると、CVB16の弁体32が振動してしまう。
【0070】
本実施の形態では、図3に示すように、CVB16の弁体32を、本体31に対して冷却油路27を流れる作動油の流れ方向、すなわち、作動油(排気脈動A)の流れ方向A0と略同方向(矢印C)に移動させるように構成したので、入力ポート31aを介して本体31内に導入される油圧脈動Bの方向に対して弁体32の移動方向Cを略直交する方向にすることができる。
【0071】
このため、ロックアップクラッチ44の締結状態から解放状態への切換え時、あるいは、ロックアップクラッチ44の解放状態から締結状態への切換え時に、排出ポート26から冷却油路27に排出された油圧脈動が所定の作動油圧の範囲に入った場合に、弁体32がこの油圧脈動に反応して振動した場合であっても、弁体32が本体31に衝突してしまうのを防止することができる。この結果、CVB16から異音が発生するのを防止することができる。
【0072】
特に、燃費の向上の観点からロックアップクラッチ44の締結・解放のタイミングが車両の低車速にあることを条件としている場合には、車両の低速走行時に「ジー」という不快な音が発生するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、本体31の左端部にテーパ32aを形成しているが、このような形状に限らず、図4、図5に示すような構成にしてもよい。
【0073】
図4、図5において、CVB51は、冷却油路27に連通する第1の入力ポート52aおよび第2の入力ポート52bを有し、内部に油室52cが画成される本体52と、本体52内に移動自在に収容された弁体53と、弁体53を図4中、右方向に付勢する圧縮コイルバネ54とを含んで構成されている。
【0074】
また、本体52には排出ポート52dが形成されており、この排出ポート52dは、排出油路34に連通している。また、弁体53の右端部は、鉛直軸と同一面となる平面状に形成されている。
【0075】
また、第1の入力ポート52aは、請求項の入力ポートに相当するものであり、入力ポート52bは、排出ポート52dを解放するように弁体53を作動させるための油圧を発生させるためのポートである。また、弁体53は、冷却油路27を流れる作動油の流れ方向と略同方向に移動するように構成されている。
【0076】
このように構成されたCVB51にあっては、冷却油路27を流れる作動油圧が所定の作動油圧未満の場合には、圧縮コイルバネ54に弁体53が付勢されることにより、弁体53が第1の入力ポート52aを閉塞する(図4参照)。
【0077】
次いで、冷却油路27を流れる作動油圧が所定の作動油圧以上になり、入力ポート52bを通して弁体53の右端部に作用する作動油圧が所定油圧以上(図3、図4に矢印Dで示す)になると、弁体53が圧縮コイルバネ54の付勢力に抗して図4中、左方に移動し、排出ポート52dを解放する。
このため、冷却油路27から入力ポート52aを介して油室52cに導入された作動油が排出ポート52dからオイルパン29に排出される。
【0078】
また、本実施の形態では、図5に示すようにCVB51の弁体53を、本体52に対して冷却油路27を流れる作動油の流れ方向、すなわち、作動油(排気脈動A)の流れ方向A0と同方向(矢印C1)に移動させるように構成したので、入力ポート52aを介して本体52内に導入される油圧脈動B1の方向に対して弁体53の移動方向C1を略直交する方向にすることができる。このため、弁体53に油圧脈動B1が作用して弁体53が振動した場合であっても、弁体53が本体52に衝突するのを防止することができる。この結果、CVB51から異音が発生するのを防止することができる。
【0079】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0080】
以上のように、本発明に係るオイルクーラバイパスバルブは、油圧脈動が発生する場合に、油圧脈動を受けて弁体が主油路に衝突するのを防止することができ、異音が発生するのを防止することができるという効果を有し、車両に搭載されるロックアップクラッチ付流体伝動装置の油圧制御回路に設けられて好適なオイルクーラバイパスバルブ等として有用である。
【符号の説明】
【0081】
16、51 オイルクーラバイパスバルブ
27 冷却油路(主油路)
28 オイルクーラ
31、52 本体
31a 入力ポート
31c、52d 排出ポート
32、53 弁体
34 排出油路
52a 第1の入力ポート(入力ポート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルクーラに作動油を供給する主油路と、前記主油路に供給される作動油を排出する排出油路との間に設けられたオイルクーラバイパスバルブであって、
前記主油路に連通する入力ポートおよび前記排出油路に連通する排出ポートを有する本体と、前記本体に収容され、前記入力ポートおよび前記排出ポートを介して前記主油路と前記排出油路との連通を遮断する第1の位置と、前記主油路を流れる作動油圧が所定油圧以上となったとき、前記入力ポートおよび前記排出ポートを介して前記主油路と前記排出油路とを連通する第2の位置との間で移動自在な弁体とを備え、
前記弁体が、前記本体に対して前記主油路を流れる作動油の流れ方向と略同方向に移動するように構成されることを特徴とするオイルクーラバイパスバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185324(P2011−185324A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49132(P2010−49132)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】