説明

オイルチェンジャー

【課題】可搬性を有し且つ十分な吸引力が得られるオイルチェンジャーを提供する。
【解決手段】オイルチェンジャー10は、電動機12と、電動機12の出力軸36を含む平面を基準として一方側に偏在させた状態で電動機12の側方に並べて配置された2つのポンプ14、16と、電動機12の駆動力を2つのポンプ14、16に伝達する動力伝達機構18と、電動機12、2つのポンプ14、16及び動力伝達機構18を収容する箱状のケース20と、2つのポンプ14、16にそれぞれ並列に接続された吸入管及び吐出管とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等のオイルパン内のオイルをオイルレベルゲージ差込口等から抜き取って交換するために使用するオイルチェンジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンドや自動車整備工場などで広く使用されているオイルチェンジャーは、通常、大きな吸引力を備えたオイルポンプと、回収した廃油を溜める廃油タンクとがセットとなるように構成されている。このようなオイルチェンジャーの使用において、装置全体を作業対象の自動車位置まで移動させて、装置の吸引パイプの先端を、エンジンのオイルレベルゲージ差込口を介してオイルパン内に差し込んで、オイルポンプを駆動することにより、廃油を吸い上げて廃油タンクに回収する。
【0003】
また、作業対象の自動車まで装置全体を移動させる煩わしさを低減する観点から、例えば下記特許文献1に開示されるように、流体ポンプを有するタンク本体と、当該タンク本体に対して着脱分離可能な可搬タンクとでオイルチェンジャーを構成することにより、可搬タンクを真空化した後、タンク本体から可搬タンクを分離して、真空化した可搬タンクのみを作業対象自動車へ移動して廃油を吸引することも提案されている。しかしながら、特許文献1の構成では、運搬性は向上する反面、可搬タンクの着脱作業において煩わしさがあるという問題がある。
【0004】
これに対し、専用の廃油タンクを有するのではなく、吸引したオイルを排出パイプで任意の箇所の廃油容器へ排出するようにして、小型軽量化を狙った電動ポンプ式可搬型オイルチェンジャーも提案されている。通常のオイル交換作業は、オイルレベルゲージ差込口を利用してオイルパン内のオイルを吸引することになる都合上、吸引パイプの外径は、オイルレベルゲージ差込口の内径より細くせざるを得ない。しかしながら、電動ポンプ式可搬型オイルチェンジャーは、可搬性を重視して小型のポンプを用いるものが多いため、吸引力が不足して短い時間で廃油の回収ができず、使い勝手が悪いという問題がある。また、吸引力を確保するためにポンプを大型化すると、装置全体が大型化、重量化してしまい、可搬性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3321434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、可搬性を有し且つ十分な吸引力が得られるオイルチェンジャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のオイルチェンジャーは、電動機と、前記電動機の出力軸を含む平面を基準として一方側に偏在させた状態で前記電動機の側方に並べて配置された2つのポンプと、前記電動機の駆動力を前記2つのポンプに伝達する動力伝達機構と、前記電動機、前記2つのポンプ及び前記動力伝達機構を収容する箱状のケースと、前記2つのポンプにそれぞれ並列に接続された吸入管及び吐出管とを備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、2つのポンプを並列接続することで小さなポンプでも十分な吸引流量(換言すれば、吸引力)を確保することができる。また、電動機の出力軸を含む平面を基準として一方側に偏在させた状態で電動機の側方に2つのポンプを並べて配置したので、ケース内に省スペースで配置できる。すなわち、このような配置を採用することで、箱型空間内に1つの大型ポンプと電動機を収容した場合に比して、占有空間を小さくすることができ、これにより全体としてケース外形サイズを小さくして運搬性を高めることができる。
【0009】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記電動機は、前記出力軸が水平方向となるように前記ケース内に配置され、前記2つのポンプは、前記ケース内で、前記出力軸を含む鉛直面を基準として互いに反対側の領域に配置されているとよい。
【0010】
上記のような電動機及びポンプの配置レイアウトを採用すると、装置全体の重量バランスが良く、移動させやすい。
【0011】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記2つのポンプは、いずれもトロコイドポンプであり、かつ、互いに吐出タイミングがずれているとよい。
【0012】
このように2つのトロコイドポンプの吐出タイミングをずらずことで、それぞれの出力脈動が相殺する作用が生じ、結果として、吸入管及び吐出管の流量の脈動を相殺して流路抵抗を低減することができ、また、装置全体としての振動を低減することができる。
【0013】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記電動機の前記出力軸の回転軸線と、前記2つのポンプの回転部の回転軸線とは、互いに平行であるとよい。
【0014】
このように電動機とポンプの回転軸線を互いに平行にすることで、電動機の回転による振動と、ポンプの回転による振動とが相殺され、装置全体として、運転に伴う振動及び騒音を低減できる。
【0015】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記電動機の電装品が、前記ケース内で前記鉛直面を基準とした一方側の領域に配置され、前記吸入管及び前記吐出管は、前記鉛直面を基準とした他方側で、前記ケースの壁部を通して前記ケースの外部に延出しているとよい。
【0016】
これにより、エンジン停止後で十分温度が低下していない状態、例えば60〜80℃のオイル交換作業であっても、オイル熱による電装品への熱的影響を抑制することができ、且つ、ケース内の空間の利用効率を高めることができる。
【0017】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記動力伝達機構は、前記電動機の出力軸に取り付けた駆動プーリと、前記2つのポンプの入力軸にそれぞれ取り付けた従動プーリと、前記駆動プーリ及び前記従動プーリに巻き掛けられたベルトとを有するとよい。
【0018】
このように動力伝達機構が構成されることで、電動機の駆動力が滑らかに伝達され、振動及び騒音の発生を抑制できる。
【0019】
上記のオイルチェンジャーにおいて、前記動力伝達機構が配置された側とは反対側の前記ケースの壁部にのみ、複数の通気孔が設けられ、前記電動機における前記出力軸とは反対側の箇所に、前記通気孔の一部に対向するようにファンが配置され、前記ファンにより前記通気孔の一部を通して外部から空気を吸引して前記動力伝達機構の側に送風し、前記ケース内を循環させて前記通気孔の他の部分から排気するとよい。
【0020】
このように、ファンにより通気孔を通して外部から空気を冷却風として導入するとともにケース内で強制循環して気流を発生させることで、ケース内を効率的に冷却でき、熱がこもることを好適に抑制できる。また、ケースの一側の壁部のみに通気孔を設けてケース内を循環冷却できるため、吸排風方向の配慮が必要な作業環境であっても、配設位置の制約が少ない。
【発明の効果】
【0021】
本発明のオイルチェンジャーによれば、2つのポンプを並列接続することで小さなポンプでも十分な吸引流量(換言すれば、吸引力)を確保することができるとともに、電動機及び2つのポンプをケース内に効率的に配置したことによりケース外形サイズを小さくして持ち運びが容易となり、良好な可搬性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るオイルチェンジャーの斜視図である。
【図2】ケース天板を外した状態のオイルチェンジャーの平面図である。
【図3】2つのポンプと吸入管及び吐出管との接続状態(ライン系統)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るオイルチェンジャーについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るオイルチェンジャー10の構成を示す斜視図であり、図2は、ケース天板28を外した状態のオイルチェンジャー10の平面図である。
【0025】
このオイルチェンジャー10は、エンジン等のオイルパン内のオイルをオイルレベルゲージ差込口等から抜き取って交換するために使用する装置であり、駆動源である電動機12と、オイルを吸引する2つのポンプ14、16と、電動機12からポンプ14、16へと駆動力を伝達する動力伝達機構18と、これらを収容する箱状のケース20と、ポンプ14、16へのオイルの吸入通路である吸入管22と、オイルの排出通路である吐出管24とを備える。
【0026】
ケース20は、略直方体状の箱型であり、図示例のものは、電動機12、ポンプ14、16及び動力伝達機構18を収容するために底部26eと周囲の4つの側壁部26a〜26dとからなり上方が開放したケース本体26と、当該ケース本体26の上方開口部を閉じるケース天板28とを有する。ケース天板28は、平面視で略長方形状であり、その4隅部には締結用部品(ネジ等)30を挿通するための貫通孔32が形成されている。ケース本体26の上面の4隅部には、ネジ穴34が形成されている。ケース本体26の上方開口部をケース天板28で閉じ、締結用部品30を貫通孔32を介してネジ穴34に螺合することで、ケース天板28がケース本体26に締結される。
【0027】
電動機12の構成としては、所望の吸引流量(輸送流量)を確保できるように2つのポンプ14、16を駆動できるものであれば特に限定されないが、例えば、三相交流誘導モータを使用することができる。図1及び図2に示すように、電動機12は、その出力軸36の回転軸線aが水平方向となるようにケース20内に配置されている。図示例に即してより詳細に説明すると、電動機12はケース20の長手方向の略中央位置に配置され、出力軸36の回転軸線aが、平面視(図2)でケース20の短手方向と一致している。
【0028】
電動機12の出力軸36の一端部には、駆動プーリ38が取り付けられ(固定され)ている。また、電動機12の、駆動プーリ38が設けられた側(動力伝達機構18が配置された側)とは反対側には、ファン40が配置されている。このファン40は、中心部を形成するボス部42と、当該ボス部42に連結した複数の羽根44とを有し、ボス部42が出力軸36の他端部に取り付けられ、これにより、出力軸36の回転とともにファン40が回転するようになっている。
【0029】
さらに、電動機12の、駆動プーリ38が設けられた側とは反対側の端部には、ファン40を覆うファンカバー46が設けられている。このファンカバー46の内周部と電動機12の外周部との間には、隙間が設けられており、当該隙間を通してファン40からの空気流が駆動プーリ38側に流れるようになっている。図2において、ハッチング付きの矢印は、ケース20内の空気の流れを示している。
【0030】
図2に示すように、動力伝達機構18が配置された側とは反対側のケース20の側壁部26bには、複数の通気孔48が形成されている。これらの通気孔48の配置は、例えば、千鳥状又はマトリックス状としてよい。上述したファン40は、複数の通気孔48のうちの一部(図示例では、ケース本体26の長手方向中央部近傍に位置するもの)に対向するように配置されている。以下、ファン40に対向する通気孔48を特に「通気孔48a」と呼び、その他の通気孔48を「通気孔48b」と呼ぶ。複数の通気孔48が設けられているのは、側壁部26a〜26dのうち、動力伝達機構18が配置された側とは反対側の側壁部26bのみである。
【0031】
上記のように構成されているため、ファン40が回転すると、通気孔48aを介してケース20外部から空気がケース20内に導入される。ケース20内に導入された空気は、ファン40により冷却風として強制循環されて、電動機12、ポンプ14、16、吸入管22、吐出管24等のケース20内の構成部品を冷却し、通気孔48bを介してケース20の外部に排出される。
【0032】
ポンプ14、16は、電動機12により駆動され、オイルの吸引及び吐出を行う。このようなポンプ14、16は、ある程度の粘性を有するオイルを輸送対象とするため、容積ポンプが好ましく、トロコイドポンプがより好ましい。一般に、トロコイドポンプは、歯車ケース内に、歯数の異なるインナロータとアウタロータが偏心して組み付けられたものであり、インナロータとアウタロータの回転に伴う、当該インナロータとアウタロータとの隙間の容積変化によって吸引及び吐出を行うように構成されている。
【0033】
図1に示すように、2つのポンプ14、16は、電動機12の出力軸36の回転軸線aを含む平面(仮想平面)を基準として一方側(図示例では、下側)に偏在させた状態で電動機12の側方に並べて配置されている。図示例に即してより詳細に説明すると、2つのポンプ14、16は、電動機12の出力軸36の回転軸線aを含む鉛直面を基準として互いに反対側の領域に配置されており、ポンプ14、16の回転部の回転軸線aが、電動機12の出力軸36の回転軸線と平行となっている。すなわち、電動機12の回転軸線a方向からの視点で、2つのポンプ14、16は、一方が電動機12の右下に配置され、他方が電動機12の左下に配置され、且つ、電動機12とポンプ14、16の回転軸線が互いに平行となっている。
【0034】
なお、上述した電動機12及び2つのポンプ14、16は、図示を省略したブラケット(取り付け用支持部材)を介してケース本体26に対してしっかりと固定されている。
【0035】
動力伝達機構18は、図示例では、電動機12の出力軸36に取り付けられた駆動プーリ38と、ポンプ14、16の入力軸56、57に取り付けられた従動プーリ50、51と、駆動プーリ38及び従動プーリ50、51に巻き掛けられたベルト52とを有するベルト機構として構成されている。なお、ベルト52の張力を適切にするために、駆動プーリ38と従動プーリ50、51との間に、ベルト52に張力を付与するアイドルプーリを配置してもよい。
【0036】
動力伝達機構18としては、上述したベルト機構に代えて、歯車機構、チェーン機構等を採用してもよい。歯車機構を採用する場合、電動機12の出力軸36に駆動歯車を取り付け、2つの入力軸56、57に駆動歯車と噛み合う従動歯車をそれぞれ取り付けた構成となる。この場合において、駆動歯車と従動歯車との間に中間歯車を配置してもよい。チェーン機構を採用する場合、電動機12の出力軸36に駆動スプロケットを取り付け、2つの入力軸56、57にそれぞれ従動スプロケットを取り付け、これらの駆動スプロケット及び従動スプロケットにチェーンを巻き掛ける構成となる。チェーンの張力を適切にするため、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間にアイドルスプロケットを配置してもよい。
【0037】
図3は、2つのポンプ14、16と吸入管22及び吐出管24との接続状態(ライン系統)を示す概略図である。なお、図3は、吸入管22及び吐出管24のライン系統を説明するための模式的な図であり、吸入管22及び吐出管24のケース20内のレイアウトを示すものではない。図3に示すように、吸入管22はケース20内にある分岐部60で2つに分岐し、分岐した管部22a、22bの下流端がそれぞれ2つのポンプ14、16の吸入ポート62、63に接続している。吐出管24は、上流側の2つの管部24a、24bが2つのポンプ14、16の吐出ポート64、65にそれぞれ接続され、当該2つの管部24a、24bがケース20内にある合流部67で合流している。
【0038】
図1に示すように、図示した構成例では、電動機12の上部近傍に分岐部60が配置され、当該分岐部60で分岐した2つの管部22a、22bは、電動機12の上方から側方に延在し、一方の管部22aが一方のポンプ14に接続し、他方の管部22bは電動機12の下方を通って他方のポンプ16に接続している。2つのポンプ14、16からそれぞれ延出した吐出管24の2つの管部24a、24bが合流する合流部67(図1では不図示)は電動機12の下方に配置されており、合流部67より下流側の管部24cは、電動機12の側方及び上方を通って、側壁部26d側へと延在している。
【0039】
吸入管22及び吐出管24は、それぞれ、ケース20(ケース本体26)の側壁部26dに設けられた取出し口(取出し孔)69、71(図2も参照)を通してケース20の外部に延出している。ケース20の外部における吸入管22の先端部(上流端部)には、エンジン等のオイルレベルゲージ差込口から挿入してオイルパンに差し込まれるノズル66が設けられている。ケース20の外部における吐出管24の先端部(下流端部)は、オイルの排出口となっている。
【0040】
ケース20において、吸入管22及び吐出管24の取出し口69、71が設けられた側壁部26dに対向する側壁部26cには、電源スイッチ68が配置されている。電源スイッチ68は、本体部70と、ボタン72とを有する。本体部70はケース20内に配置され、ボタン72はケース20の外部に露出するように配置されている。また、電源スイッチ68が設けられた側壁部26cからは、電源ケーブル74が外部に延出している。電源ケーブル74は側壁部26cを貫通し、電源スイッチ68に接続されている。なお、図1及び図2では、電源スイッチ68と電動機12とを接続する配線、及び、電源ケーブル74のうちケース20内にある部分の図示を省略している。
【0041】
このように、本実施形態では、電動機12の電装品(電源スイッチ68、配線等)が、ケース20内で出力軸36の回転軸線aを含む鉛直面を基準とした一方側の領域に配置され、吸入管22及び吐出管24は、上記鉛直面を基準とした他方側で、ケース20の側壁部26dを通してケース20の外部に延出している。
【0042】
本実施形態に係るオイルチェンジャー10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0043】
オイルチェンジャー10の使用に際しては、作業対象の自動車の所までオイルチェンジャー10を移動させる。上述したように本発明のオイルチェンジャー10は、電動機12の出力軸36の回転軸線aを含む平面を基準として一方側に偏在させた状態で電動機12の側方に2つのポンプ14、16を並べて配置したので、ケース20内に電動機12及び2つのポンプ14、16を省スペースで配置できる。このような配置を採用することで、箱型空間内に1つの大型ポンプと電動機12を収容した場合に比して、占有空間を小さくすることができ、これにより全体としてケース外形サイズを小さくし、しかも軽量化できる。よって、作業対象の自動車まで容易に運ぶことができ、使い勝手が良い。
【0044】
しかも、本実施形態において、電動機12は、出力軸36が水平方向となるようにケース20内に配置され、2つのポンプ14、16は、ケース20内で、出力軸36の回転軸線aを含む鉛直面を基準として互いに反対側の領域に配置されているので、装置全体の重量バランスが良く、作業対象の自動車まで運びやすい。
【0045】
作業対象の自動車までオイルチェンジャー10を移動させたら、吸入管22の先端部に設けられたノズル66をエンジンのオイルレベルゲージ差込口に挿入し、オイルパン内に差し込む。また、電源ケーブル74を外部電源に接続する。そして、電源スイッチ68をオンにすると、電動機12が回転駆動し、これにより動力伝達機構18を介して2つのポンプ14、16が駆動される。
【0046】
そうすると、ポンプ14、16の駆動により、オイルパン内に溜められたオイル(廃油)が吸入管22を介して吸入されるとともに、吐出管24を介して排出される。このとき、オイルチェンジャー10は2つのポンプ14、16を並列接続した構成を備えるため、小さなポンプ14、16でも十分な吸引流量(換言すれば、吸引力)を確保することができる。よって、短時間で廃油を回収することができる。
【0047】
本実施形態では動力伝達機構18が駆動プーリ38、従動プーリ50、51及びベルト52で構成されているため、動力伝達機構18の動作に際しては、電動機12の駆動力が滑らかに伝達され、振動及び騒音の発生を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、電動機12の回転軸線aとポンプ14、16の回転軸線とが互いに平行となっているので、電動機12の回転による振動と、ポンプ14、16の回転による振動とが相殺され、装置全体として、運転に伴う振動及び騒音を低減できる。
【0049】
ここで、2つのポンプ14、16がトロコイドポンプである場合、互いに動作の位相(換言すれば、吐出タイミング)をずらしておくと良い。このように互いに動作の位相をずらしておくと、それぞれの出力脈動が相殺する作用が生じ、結果として、吸入管22及び吐出管24の流量の脈動を相殺して流路抵抗を低減することができ、また、装置全体としての振動を低減することができる。
【0050】
2つのトロコイドポンプの動作の位相は、意図的に一致させなければ、偶然が生じない限り一致することはない。よって、2つのポンプ14、16としてトロコイドポンプを採用することにより、意図的に互いの動作の位相を一致させる設定を行うことなく、容易に互いの動作の位相をずらして出力脈動を抑制することができる。もちろん、2つのトロコイドポンプの動作の位相を例えばΠ/2〜Πだけずらすと、出力脈動を効果的に抑制することができるし、2つのトロコイドポンプの動作が互いに逆位相となるようにΠだけずらすと、出力脈動の抑制効果を最大とすることができる。
【0051】
本実施形態では、電動機12の電装品(電源スイッチ68、配線等)が、ケース20内で出力軸36の回転軸線aを含む鉛直面を基準とした一方側の領域に配置され、吸入管22及び吐出管24は、上記鉛直面を基準とした他方側で、ケース20の側壁部26dを通してケース20の外部に延出しているので、エンジン停止後で十分温度が低下していない状態、例えば60〜80℃のオイル交換作業であっても、オイル熱による電装品への熱的影響を抑制することができ、且つ、ケース20内の空間の利用効率を高めることができる。しかも、ケース20の一側の壁部(側壁部26b)のみに通気孔48を設けてケース20内を循環冷却できるため、吸排風方向の配慮が必要な作業環境であっても、配設位置の制約が少ない。
【0052】
さらに、本実施形態では、電動機12の回転に伴ってファン40が回転し、通気孔48を介してケース20外部から空気がケース20内に導入される。ケース20内に導入された空気は、ファン40により冷却風として強制循環されて、電動機12、ポンプ14、16、吸入管22、吐出管24等のケース20内の構成部品を冷却し、ファン40に対向するもの以外の通気孔48を介してケース20の外部に排出される。このように、ファン40により通気孔48を通して外部から空気を冷却風として導入するとともにケース20内で強制循環して気流を発生させることで、ケース20内を効率的に冷却でき、熱がこもることを好適に抑制できる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、電動機12の出力軸36よりも下方側に2つのポンプ14、16を配置したが、これとは上下逆の配置にしてもよい。すなわち、電動機12の出力軸36よりも上方側に2つのポンプ14、16を配置してもよい。
【0054】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10…オイルチェンジャー 12…電動機
14、16…ポンプ 18…動力伝達機構
20…ケース 22…吸入管
24…吐出管 36…出力軸
38…駆動プーリ 40…ファン
46…ファンカバー 48、48a、48b…通気孔
50、51…従動プーリ 52…ベルト
68…電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機の出力軸を含む平面を基準として一方側に偏在させた状態で前記電動機の側方に並べて配置された2つのポンプと、
前記電動機の駆動力を前記2つのポンプに伝達する動力伝達機構と、
前記電動機、前記2つのポンプ及び前記動力伝達機構を収容する箱状のケースと、
前記2つのポンプにそれぞれ並列に接続された吸入管及び吐出管とを備える、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項2】
請求項1記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記電動機は、前記出力軸が水平方向となるように前記ケース内に配置され、
前記2つのポンプは、前記ケース内で、前記出力軸を含む鉛直面を基準として互いに反対側の領域に配置されている、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記2つのポンプは、いずれもトロコイドポンプであり、かつ、互いに吐出タイミングがずれている、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項4】
請求項3記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記電動機の前記出力軸の回転軸線と、前記2つのポンプの回転部の回転軸線とは、互いに平行である、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記電動機の電装品が、前記ケース内で前記鉛直面を基準とした一方側の領域に配置され、
前記吸入管及び前記吐出管は、前記鉛直面を基準とした他方側で、前記ケースの壁部を通して前記ケースの外部に延出している、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記動力伝達機構は、前記電動機の出力軸に取り付けた駆動プーリと、前記2つのポンプの入力軸にそれぞれ取り付けた従動プーリと、前記駆動プーリ及び前記従動プーリに巻き掛けられたベルトとを有する、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のオイルチェンジャーにおいて、
前記動力伝達機構が配置された側とは反対側の前記ケースの壁部にのみ、複数の通気孔が設けられ、
前記電動機における前記出力軸とは反対側の箇所に、前記通気孔の一部に対向するようにファンが配置され、
前記ファンにより前記通気孔の一部を通して外部から空気を吸引して前記動力伝達機構の側に送風し、前記ケース内を循環させて前記通気孔の他の部分から排気する、
ことを特徴とするオイルチェンジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126419(P2012−126419A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278731(P2010−278731)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(391013106)株式会社パーカーコーポレーション (27)
【Fターム(参考)】