説明

オイル分離器

【課題】オイルミストの分離性能を向上させることができるとともに、圧力損失の上昇を抑制することができるオイル分離器を提供する。
【解決手段】ケース13内にオイルミストを含むガスの流路16を形成し、そのケース13内にオイルミスト捕捉用のフィルタ17を設ける。フィルタ17により、ガスの流路16を上流室16aと下流室16bとに区画する。フィルタ17には、フィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなったときに、その圧力によって開かれて圧力を下流室16bに逃がすためのリリーフ部25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブローバイガス等のオイル含有ガスに含まれるオイルミストを分離することに適したオイル分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスに含まれる処理液等のミストを分離するミスト分離器としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、箱型のケースの一側面にガス入口が形成されるとともに、反対側の他側面にガス出口が形成されている。ケース内においてガス入口とガス出口との間には、複数枚の合成樹脂等の非通気性板材よりなる波板が並列状態で配置されている。各波板間には、ガス入口及びガス出口に連通する複数のガス流路が区画形成されている。各ガス流路内に位置するように、各波板の両面には複数の邪魔板や棒状部材による凹凸部が設けられている。そして、ガス入口からケース内に導入されるガスが波板間の各ガス流路に沿って流れるとき、ガスに含まれる処理液等のミストが邪魔板や凹凸部に接触することにより、ガスから分離され、分離されたミストは邪魔板や凹凸部上で凝集されて、重力により滴下される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−252100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来構成においては、波板が合成樹脂等の非通気性板材により構成されているため、波板のミスト分離機能は高くない。このため、分離機能を高めるために、波板に前記邪魔板や凹凸部が設けられている。しかしながら、邪魔板や凹凸部を設けたとしても、ガス流を邪魔板や凹凸部に衝突させて、ミストがそれらの面に付着することによってミスト分離を行うものである。従って、ミストがガス流路の中心付近を通り抜けるガス流とともに流れて、邪魔板や凹凸部に接触しない割合が多いため、依然として高い分離機能を得ることができず、特に細かなミストについては分離が困難であった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、オイルミストの分離性能を向上させることができるオイル分離器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、内部をオイルミスト含有ガスが流れるケース内にオイルミスト捕捉用のフィルタを設けたオイル分離器において、前記フィルタを形成するフィルタシートを蛇行状に配置して、前記ガスの流路を上流室と下流室とに区画し、そのフィルタには、フィルタの上流側の流路内の圧力が高くなったときに、その圧力によって開かれて圧力を下流側の流路に逃がすためのリリーフ部を設けたことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明のオイル分離器においては、通常時にはガスがフィルタを通してガスの流路の上流室から下流室に流れて、そのガスに含まれるオイルミストがフィルタにより分離される。よって、オイルミストの分離性能を向上させることができる。また、フィルタに目詰まり等が生じて、フィルタの上流側の流路内の圧力が高くなったときには、その圧力によってリリーフ部が開かれて、上流室の流路内の圧力が下流室の流路に逃がされる。よって、フィルタの目詰まり等にともなって、ガス流路の圧力損失が上昇するおそれを抑制することができる。
【0008】
前記の構成において、前記フィルタは、複数枚のフィルタシートをガスの流路方向に沿って延長することにより全体として蛇行状に形成するとともに、隣接するフィルタシート間に先窄まりの導入空間を形成するとよい。
【0009】
前記の構成において、前記フィルタシートの下流側端部間に前記リリーフ部を設けることが好ましい。
前記の構成において、前記各フィルタシートは、ガスの流路方向に沿って凹凸が形成された波形をなすことが好ましい。
【0010】
前記の構成において、導入空間を介して対向する一対のフィルタシートは、少なくとも下流側の端部の波形部の位相が合っていることが好ましい。
前記の構成において、前記各フィルタシートは、その波形部のピッチを下流側が狭くなるようにするとよい。
【0011】
前記の構成において、前記各フィルタシートは、その波形部の高さを下流側が低くなるようにするとよい。
前記の構成において、前記フィルタは、フィルタシートを蛇行状に折り曲げることにより、複数の導入空間を形成し、その導入空間の上流側端部に面するフィルタシートの一部に前記リリーフ部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、オイルミストの分離性能を向上させることができるとともに、圧力損失の上昇を抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態のオイル分離器を示す断面図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】図2のフィルタにおける1枚のフィルタシートを拡大して示す断面図。
【図4】図2のフィルタの動作状態を示す部分断面図。
【図5】第2実施形態のオイル分離器におけるフィルタ部を拡大して示す部分断面図。
【図6】第3実施形態のオイル分離器におけるフィルタ部を拡大して示す部分断面図。
【図7】変更例を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したオイル分離器の第1実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
【0015】
図1に示すように、この実施形態のオイル分離器11は、エンジンの合成樹脂製のシリンダヘッドカバー12上に配置されている。オイル分離器11のケース13は、シリンダヘッドカバー12と一体に形成され、ほぼ四角箱形状をなしている。ケース13の底壁13aの一側寄りの部分には、図示しない経路を介してエンジンのクランク室に連通するガス流入口14が形成されている。ケース13の上壁13bの他側寄りの部分には、エンジンの吸気通路に連通するガス流出口15が形成されている。そして、ガス流入口14とガス流出口15との間において、ケース13内には、オイルミスト含有ガスとしてのブローバイガス(以下、単にガスという)の流路16が形成されている。このブローバイガスは、エンジンの吸気圧を利用して、前記クランク室から前記流路16を経てエンジンの吸気側に導かれる。
【0016】
前記ケース13内には、オイルミスト捕捉用のフィルタ17がガスの流路16を遮断するように配置されている。このフィルタ17により、ケース13内のガスの流路16が上流室16aと下流室16bとに区画されている。そして、ガスが上流室16aからフィルタ17を通して下流室16bに流れることにより、ガスに含まれるオイルミストがフィルタ17よって捕捉される。
【0017】
前記フィルタ17の下流側に位置するように、ケース13の底壁13aにはオイル排出口18が形成されている。また、前記フィルタ17と前記オイル排出口18との間において、ケース13の底壁13aには複数のオイル案内溝19が形成されている。そして、フィルタ17で捕捉されてケース13の底壁13a上に流れ落ちるオイルが、オイル案内溝19によりオイル排出口18に案内されるとともに、そのオイル排出口18からシリンダヘッドカバー12の内部に回収される。さらに、回収されたオイルは、図示しないカム軸等の可動部の潤滑に供される。
【0018】
次に、前記フィルタ17の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、フィルタ17は、複数枚のフィルタシート21をガスの流路16の方向に沿って間隔をおいて延長状態で、かつ全体として蛇行するように配置することにより構成されている。各フィルタシート21は、不織布よりなる濾材シートにより形成されている。各フィルタシート21は、ガスの流路16の方向に沿って凹凸を連続させた波形部21aを有し、従って、全体として波形状に形成されている。そして、上方から見た場合、2種類のフィルタシート21A,21Bが互いの逆方向に傾斜した状態で交互に配置され、この状態で各フィルタシート21A,21Bの上下両端縁がケース13の上壁13b及び底壁13aの内面に接合固定されている。
【0019】
各フィルタシート21A,21Bの上流側端部は、ケース13の側壁13cの内面または一側に隣接する他のフィルタシート21A,21Bの上流側端部に接着されている。各フィルタシート21A,21Bの下流側端部は、他側に隣接するフィルタシート21A,21Bの下流側端部に開放可能に弾性接触されている。このため、一対のフィルタシート21A,21B間には、ガスの流路16に沿って下流側ほど先窄まりとなった導入空間22が形成されている。その導入空間22と隣り合うように、フィルタシート21A,21Bとケース13の側壁13cとの間及びフィルタシート21B,21A間には、ガスの流路16に沿って上流側ほど先窄まりとなった導出空間23が形成されている。
【0020】
そして、前記導入空間22の上流側端部が同空間22内にガスを導入するためのガス導入部24になっており、導入空間22の下流側端部が相互に弾性力により接触し,この部分がリリーフ部25になっている。そして、通常時には、図2に示すように、このリリーフ部25が閉じられた状態に保持されている。それに対して、フィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなったときには、その圧力により、図3に示すように、リリーフ部25が弾性に抗して開かれて、圧力が下流室16bに逃がされる。
【0021】
図2及び図4に示すように、前記複数枚のフィルタシート21において、ガス導入部24を介して対向する一対のフィルタシート21A,21Bは、下流側のほぼ半分の部分の波形部21aの位相が合うように、かつその波形部21aの波の高さHが下流側ほど次第に低くなるように構成されている。この構成により、両フィルタシート21A,21B間の導入空間22が下流側ほど先窄まりになっていても、両フィルタシート21A,21Bの波形部21aが互いに接触しないようになっているとともに、導入空間22が下流側の流路が蛇行されている。
【0022】
前記各フィルタシート21は、その波形部21aの波配列ピッチPが下流側ほど次第に狭くなるように構成されている。
次に、前記のように構成されたオイル分離器の作用を説明する。
【0023】
さて、エンジンが運転されると、その運転にともなって発生する吸気系の負圧によりガスが図1に示すガス流入口14からケース13内に導入され、ガスの流路16に沿ってガス流出口15側に流れる。このとき、ケース13内においてガスの流路16を遮断するようにフィルタ17が配置されているため、ガスが上流室16aからフィルタ17を通して下流室16bに流れるときに、ガスに含まれるオイルミストがフィルタ17よって捕捉される。
【0024】
すなわち、このオイル分離器11においては、図2に示すように、ガスが、隣接する一対のフィルタシート21A,21Bの上流側端部間のガス導入部24から、導入空間22内に導入されて下流側に流れる。この場合、フィルタシート21A,21Bが波形に形成されているため、広い濾過面積を得ることができる。また、導入空間22が下流側ほど先窄まりとなるように形成され、しかも、各フィルタシート21の波形部21aのピッチPが下流側ほど次第に狭くなるとともに、波形部21aの高さHが下流側ほど次第に低くなるように構成され、しかもフィルタシート21の下流側の波形部21aの位相が合っている。このため、ガスが導入空間22の下流側に進行するに従って、導入空間22の容積が小さくなる。このため、ガスは、導入空間22のガス導入部24付近ではその流路断面積が広いためにゆっくり流れ、導入空間22の下流側に行くに従って速く流れるとともに蛇行される。従って、ガスはフィルタシート21の全体を透過して導出空間23へ円滑に放出され、そのガスに含まれるオイルミストがフィルタシート21全体によって捕捉されて分離される。分離されたオイルは、フィルタシート21上を流れ落ちて、オイル案内溝19を経てオイル排出口18からシリンダヘッドカバー12の内部に回収される。
【0025】
そして、フィルタ17によってオイルミストが除去されたブローバイガスは、図1に示すケース13上のガス流出口15からエンジンの吸気系に供給される。
このように、フィルタ17によるオイルミストの捕捉が継続されて、フィルタ17のフィルタシート21に目詰まりが生じた場合には、フィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなる。すると、その上流室16a内の圧力により、隣接するフィルタシート21A,21Bの下流側端部間に設けられたリリーフ部25が開放され、上流室16a内の圧力がリリーフ部25を介して下流室16bに逃がされる。このため、フィルタシート21の目詰まりにともなって、圧力損失が上昇することが抑制され、クランク室内の圧力の高騰が防止される。
【0026】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態においては、不織布よりなる各フィルタシート21が、ガスの流路16の方向に沿って凹凸の波形部21aを有する形状に形成されている。このため、各フィルタシート21の濾過面積を広く確保することができて、フィルタ17全体のオイル分離機能を向上させることができる。
【0027】
(2) この実施形態においては、フィルタ17が複数枚のフィルタシート21をガスの流路16の方向に沿って延長することにより構成されている。そして、隣接する各一対のフィルタシート21A,21B間に先窄まりの導入空間22が形成されている。このため、前記と同様にフィルタ17として広い濾過面積を有するように構成することができ、高い濾過性能を得ることができる。
【0028】
(3) この実施形態においては、ガス導入部24を介して対向する一対のフィルタシート21A,21Bにおいて、下流側の波形部21aの位相が合うように構成されている。このため、一対のフィルタシート21A,21Bの波形部21aが互いに接触することを防止することができて、そのフィルタシート21A,21B間に先窄まりの導入空間22を適切に形成することができる。また、フィルタシート21A,21B間の導入空間22を蛇行させて、ガスの導入経路を実質的に延長できる。このため、オイルの捕捉能力を高めることができる。
【0029】
(4) この実施形態においては、各フィルタシート21の波形部21aのピッチPが下流側ほど狭くなるとともに、波形部21aの高さHが下流側ほど低くなるように構成されている。このため、ガスの蛇行通路を確保できるとともに、一対のフィルタシート21A,21Bの波形部21aが互いに接触することを一層有効に防止することができる。
【0030】
(5) この実施形態においては、フィルタ17に、そのフィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなったときに、その圧力によって開かれて圧力を下流室16bに逃がすためのリリーフ部25が設けられている。そして、このリリーフ部25はフィルタシート21A,21Bの弾性力により通常は閉鎖されている。このため、通常時にはガスがリリーフ部25を通り抜けることなく、フィルタ17を透過して上流室16aから下流室16bに流れて、そのガスに含まれるオイルミストをフィルタ17により効率よく除去することができる。また、フィルタ17に目詰まり等が生じて、フィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなったときには、リリーフ部25の開放により、上流室16a内の圧力が下流室16bに逃がされるので、ガスの流路16の圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0031】
(6) この実施形態においては、フィルタシート21A,21Bの下流側端部を接触させることにより、前記リリーフ部25が構成されている。このため、リリーフ部25としての部品を増やす必要がなく、簡単な構成にすることができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したオイル分離器の第2実施形態を、図5に基づいて前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
さて、この第2実施形態においては、フィルタ17が前記第1実施形態と同様に構成されている。フィルタ17上の各リリーフ部25の下流側に近接対向するように、ケース13内には板材よりなるオイルミスト捕捉用の捕捉部材31が配置されている。そして、フィルタ17の目詰まりにともない、フィルタ17の上流室16a内の圧力が高くなって、リリーフ部25が開放されたとき、そのリリーフ部25を介して上流室16aから下流室16bに流れるガスに含まれるオイルミストが、捕捉部材31との衝突によりガス流から分離されるようになっている。分離されたオイルは捕捉部材31の表面を流れ落ちて、オイル案内溝19に至る。
【0034】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(6)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7) この実施形態においては、リリーフ部25の下流側にオイルミスト捕捉用の捕捉部材31が近接して対向配置されている。このため、リリーフ部25の開放時に、そのリリーフ部25を介して上流室16aから下流室16bに流れるガスに含まれるオイルミストを、捕捉部材31よって捕捉することができ、オイルの捕捉機能を高めることができる。
【0035】
(8) この実施形態においては、ガスが狭いリリーフ部25を通ることによって増速されるため、捕捉部材31に勢いよく衝突する。このため、捕捉部材31によるオイルミストの捕捉がより確実に実行される。
【0036】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したオイル分離器の第3実施形態を、図6に基づいて前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
さて、この第3実施形態においては、フィルタ17が1枚のフィルタシート32を蛇行状に折り曲げることにより、ガスの流路16の方向に沿って延びる複数の捕捉シート部33を有するように構成されている。隣接する各一対の捕捉シート部33A,33Bの上流側端部間にはガス導入部24が形成されるとともに、その捕捉シート部33A,33Bの下流側端部間が閉塞されている。この構成により、隣接する捕捉シート部33A,33B間には、導入空間22が形成されている。また、捕捉シート部33A,33Bを介して導入空間22と隣り合うように、捕捉シート部33A,33Bとケース13の側壁13cとの間及び捕捉シート部33B,33A間には、導出空間23が形成されている。
【0038】
そして、この実施形態においては、前記導入空間22と導出空間23との間に位置するように、捕捉シート部33の上流側の端部にリリーフ部25が設けられている。このリリーフ部25は、フィルタシート32の弾力により常時は閉鎖されるスリットにより形成されている。そして、フィルタ17の捕捉シート部33に目詰まりが生じて、上流室16a内の圧力が高くなったとき、その圧力を受けてスリットであるリリーフ部25が閉鎖状態から開放されるようになっている。
【0039】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(9) この実施形態においては、フィルタ17が1枚のフィルタシート32を蛇行状に折り曲げることにより、ガスの流路16の方向に沿って延びる複数の捕捉シート部33を有するように構成されている。このため、フィルタ17を1枚のフィルタシート32によって、広い濾過面積を有するように簡単に構成することができて、フィルタ17の構造を簡略化することができる。
【0040】
(10) この実施形態においては、1枚のフィルタシート32を蛇行状に形成したため、導入空間22の通路断面積が上流側から下流側にかけて等しくなりやすい。従って、導入空間22内に導かれたガスが導入空間22の先端側から導出空間23に抜ける傾向にある。このため、導入空間22の先端側から目詰まりが生じやすい。この場合、この実施形態においては、リリーフ部25が導入空間22の上流側端部に位置しているため、捕捉シート部33に捕捉されたオイル等がリリーフ部25から流出されることを抑制できる。
【0041】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記第1及び第2実施形態においては、フィルタシート21がケース13の底壁13aと上壁13bとの間に張設されている。これに対し、図7に示すように、フィルタシート21をケース13の側壁13c間に張設すること。この構成の場合、下部側のフィルタシート21として、上部側のものより目の粗いものを用いるとよい。ガス流中のオイルミストは、粒径の大きなものほど下部側を流れる傾向があり、このように下部側のフィルタシート21として目の粗いものを用いれば、捕捉機能を確保しつつ目詰まりを少なくすることが可能となる。
【0042】
・ 第3実施形態において、フィルタシート32を図7の構成と同様にケース13の側壁13c間に張設すること。
・ フィルタ17として、ハニカム状のフィルタを使用し、その各小室がガス流の方向を指向するようにするとともに、各小室の両端部のうちの一方の端部を、隣接する他の小室の各端部と交互に閉鎖されるように構成すること。このようにすれば、ガスの導入空間と導出空間とが交互に配置される。
【0043】
・ 前記各実施形態において、フィルタシート21,32として、ガス流の上流側ほど厚く形成されたものを用いること。このようにすれば、フィルタシート21,32の目詰まりを遅らせることができる。
【0044】
・ 第2実施形態において、リリーフ部25として狭い隙間が常時開放された構成とすること。
・ 前記第1,第2実施形態及び図7の実施形態において、フィルタシート21として波形ではなく、第3実施形態のようなフラットなものを用いること。
【0045】
・ 前記第1,第2実施形態及び図7の実施形態において、フィルタシート21の波のピッチを変更すること。例えば、波のピッチを等ピッチにしたり、ガス流の上流側ほど波のピッチが小さくなるようにしたりすること。
【0046】
・ 前記第1,第2実施形態及び図7の実施形態においては、フィルタシート21A,21Bの波形部21aの位相を下流側において合わせるように構成したが、フィルタシート21A,21Bの全体わたって波形部21aの位相を合わせるように構成すること。
【0047】
・ 前記第1,第2実施形態及び図7の実施形態において、フィルタシート21の波の高さを変更すること。例えば、波の高さを上流側から下流側まで等しくしたり、下流側の波の高さを零にしてフラットにしたりすること。
【0048】
・ 前記第3実施形態において、フィルタシート32として波形状のシートを用いること。
・ 前記第3実施形態において、導入空間22を下流側ほど先窄まりとなるように形成すること。あるいは導入空間22の下流側端を半円弧状に形成すること。
【符号の説明】
【0049】
11…オイル分離器、13…ケース、14…ガス流入口、15…ガス流出口、16…ガスの流路、16a…上流室、16b…下流室、17…フィルタ、21…フィルタシート、21A,21B…隣接するフィルタシート、21a…波形部、22…導入空間、24…ガス導入部、25…リリーフ部、31…捕捉部材、32…フィルタシート、33…捕捉シート部、33A,33B…隣接する捕捉シート部、P…波形部のピッチ、H…波形部の高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をオイルミスト含有ガスが流れるケース内にオイルミスト捕捉用のフィルタを設けたオイル分離器において、
前記フィルタを形成するフィルタシートを蛇行状に配置して、前記ガスの流路を上流室と下流室とに区画し、そのフィルタには、フィルタの上流側の流路内の圧力が高くなったときに、その圧力によって開かれて圧力を下流側の流路に逃がすためのリリーフ部を設けたことを特徴とするオイル分離器。
【請求項2】
前記フィルタは、複数枚のフィルタシートをガスの流路方向に沿って延長することにより全体として蛇行状に形成するとともに、隣接するフィルタシート間に先窄まりの導入空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載のオイル分離器。
【請求項3】
前記フィルタシートの下流側端部間に前記リリーフ部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のオイル分離器。
【請求項4】
前記各フィルタシートは、ガスの流路方向に沿って凹凸が形成された波形をなすことを特徴とする請求項2または3に記載のオイル分離器。
【請求項5】
導入空間を介して対向する一対のフィルタシートは、少なくとも下流側の端部の波形部の位相が合っていることを特徴とする請求項4に記載のオイル分離器。
【請求項6】
前記各フィルタシートは、その波形部のピッチを下流側が狭くなるようにしたことを特徴とする請求項4または5に記載のオイル分離器。
【請求項7】
前記各フィルタシートは、その波形部の高さを下流側が低くなるようにしたことを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれか一項に記載のオイル分離器。
【請求項8】
前記フィルタは、フィルタシートを蛇行状に折り曲げることにより、複数の導入空間を形成し、その導入空間の上流側端部に面するフィルタシートの一部に前記リリーフ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のオイル分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−80434(P2011−80434A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234407(P2009−234407)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】