説明

オペレータのレベルに応じた操作を可能とする数値制御装置

【課題】オペレータのレベルに応じた操作を可能とする数値制御装置を提供すること。
【解決手段】加工プログラムに基づいて工作機械を駆動してワークに指令通りの加工を施す数値制御装置1において、前記加工プログラムの取り扱いに関するオペレータの機密保護度を指定するセキュリティレベル指定手段12aと、前記加工プログラム毎に、前記セキュリティレベル指定手段により指定されたセキュリティレベルに応じた操作の可否を設定・記憶する操作可否情報設定・記憶手段14と、前記セキュリティレベル指定手段により指定されたオペレータのセキュリティレベルと、前記操作可否情報設定・記憶手段により記憶された操作可否情報とから、操作内容が実施可能であるか判断する操作可否判断手段13aとを備えた数値制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特に、オペレータのレベルに応じた操作を可能とする数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置において、各加工プログラム単位、あるいは、一定の範囲のプログラムに対し、編集禁止や表示禁止の属性を設定することは従来から行われている。しかし、オペレータの機密保護度(セキュリティレベル)に応じた各種操作の可否を判断する手段はなく、必要に応じて属性を変更しなければならない手間が生じていた。また、属性の変更間違いにより本来編集作業を許可されていないオペレータが、加工プログラムの改ざんなどを実行する危険性も存在した。
【0003】
また、NC操作に関しては、工具オフセット量やパラメータなどの変更について、選択信号により変更の可否を判断することが可能であった。しかし、NC操作にはデータ入力・表示・変更以外にも、非常停止や運転停止などの安全操作、画面の切り替え、加工プログラムの選択および起動など様々なものがある。さらにこれら操作を一定の単位にグループ化してそのグループ単位での可否をオペレータの作業習熟度(オペレータレベル)に応じて変えることができないため、実際にNCを操作するオペレータの注意に依存していた。このため、NC操作に不慣れなオペレータによる誤操作により、加工ワークや機械を損傷する危険性があった。
セキュリティレベルに基づいては、データの図面表示/非表示または表示/入力の切り換えを可能とする生産組立てシステムにおけるモニタ技術が開示されている。
このモニタ技術は、ロボットや数値制御装置の状況を外部モニタ装置において監視するための手段であり、数値制御装置の操作に直接関与するものではない。さらに、セキュリティレベルに応じて加工プログラム毎に運転/表示/編集/外部機器への出力の可否を制御するものではない。また、単に表示/入力の操作に特化したものであり、数値制御装置に存在する様々な操作に対してグループ化し、そのグループ単位で操作の可否を制御できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−312013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NC加工プログラムには、軍事産業用途やユーザーの加工ノウハウが蓄積されたものなど、機密度の高いものがある。一方、NCを操作するオペレータには、加工プログラムの作成・管理を行う管理者レベルもいれば、NCプログラムの内容を詳細に知る必要がなく実加工のみを行えばよい作業者レベルなど、加工プログラムの取り扱いに関して様々な機密保護度のレベルが存在する。
これらの加工プログラムに対しては、運転・表示・編集・外部機器への出力に関して、オペレータのレベルに応じた制限を設定しないと、加工プログラムの改ざんや、機密事項の外部への流出などの危険性がある。さらに、加工プログラムごとに機密度も異なるため、これらの制限は加工プログラムごとに設定する必要がある。
【0006】
また、NCを操作するオペレータには、熟練者もいれば初心者もおり、NC操作の習熟レベルにバラツキがあるため、不慣れなオペレータの誤操作に起因する機械の誤動作もありうる。例えば、ある加工プログラムを実行するために、単に起動するだけで済むものもあれば、起動前に所定のオフセット量やパラメータ、変数値などの変更を必要とするものもある。これらの必要なデータ設定のし忘れや、誤ったデータ設定を行って起動した場合、NC加工プログラムの誤動作を引き起こす可能性があり、ワークや機械の損傷につながる危険性もある。
そこで、本発明は、加工プログラムの取り扱いに関するオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)の指定や、NC操作に関するオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を指定できる数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、加工プログラムに基づいて工作機械を駆動してワークに指令通りの加工を施す数値制御装置において、前記加工プログラムの取り扱いに関するオペレータの機密保護度を指定するセキュリティレベル指定手段と、前記加工プログラム毎に、前記セキュリティレベル指定手段により指定されたセキュリティレベルに応じた操作の可否を設定・記憶する操作可否情報設定・記憶手段と、前記セキュリティレベル指定手段により指定されたオペレータのセキュリティレベルと、前記操作可否情報設定・記憶手段により記憶された操作可否情報とから、操作内容が実施可能であるか判断する操作可否判断手段とを備えた数値制御装置である。
請求項2に係る発明は、前記セキュリティレベルに応じた操作は、前記加工プログラムの運転、表示、編集、および外部機器への出力であることを特徴とする請求項1記載の数値制御装置である。
請求項3に係る発明は、加工プログラムに基づいて工作機械を駆動してワークに指令通りの加工を施す数値制御装置において、前記数値制御装置を操作するオペレータの操作習熟度を指定するオペレータレベル指定手段と、該数値制御装置の操作を一定の単位にグループ化する操作グループ化・記憶手段と、前記操作グループ化手段によりグループ化された操作の単位で、操作可能なオペレータレベルを記憶する操作可能オペレータレベル記憶手段と、前記オペレータレベル指定手段により指定されたオペレータの操作習熟度と、前記操作可能オペレータレベル記憶手段により記憶された操作可能レベルとから、操作内容が実施可能であるかを判断する操作可否判断手段とを備えた数値制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、加工プログラムに対しては、運転・表示・編集・外部機器への出力に関して、オペレータの機密保護度(セキュリティレベル)に応じた制限を設定することが可能となり、加工プログラムの改ざんや、機密事項の外部への流出などを防止できる。また、この制限の設定を加工プログラム毎に機密度に合わせて実施できる。
また、本発明により、NCを操作するオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)に応じて操作を行える権限を制限することができ、NC操作に不慣れなオペレータの誤操作に起因する機械の誤動作を防止することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)を指定する実施形態、および、オペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を指定する実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本発明のオペレータのレベルに応じた操作を可能とする数値制御装置の一例である。CPU30は数値制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU30はROM31に格納されたシステムプログラムをバス39を介して読み出し、該システムプログラムにしたがって数値制御装置全体を制御する。RAM32には、一時的に計算データや表示データ、および、液晶表示装置などで構成される表示器2に表示されるソフトキー(MDI(マニュアルデータインプット)3)やキーボードなどで構成される入出力手段(操作盤4)を介してオペレータが入力した各種データが格納される。操作盤4には後述するレベル選択スイッチ21(図2参照)が設けられている。
【0010】
SRAM(スタティックRAM)33は図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。SRAM中には、インタフェース34を介して読み込まれた、または、MDI/操作盤3,4を介して入力された加工プログラムなどが記憶される。また、ROM31には、加工プログラムの作成および編集のために必要とされる編集機能や各種システムプログラムがあらかじめ格納されている。
【0011】
インタフェース34は数値制御装置1と外部機器との接続を可能とするものである。PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)35は、数値制御装置1に内蔵されたシーケンスプログラムで制御対象物の工作機械の補助装置(例えば、工具交換用のロボットハンドといったアクチュエータ)にI/Oユニット36を介して信号を出力し制御する。また、数値制御装置1で制御される制御対象物である工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチなどの信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU30に渡す。
【0012】
各軸の軸制御回路10x、10y、10zはCPU30からの各軸の移動指令を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40x、40y、40zに出力する。サーボアンプ40x、40y、40zはこの指令を受けて、機械(制御対象物)の各軸のサーボモータ50x、50y、50zを駆動する。各軸のサーボモータ50x、50y、50zは位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置、速度のフィードバック信号を軸制御回路10x、10y、10zにフィードバックし、位置・速度のフィードバック制御を行う。図1では、位置・速度フィードバックについて省略されている。また、スピンドル制御回路38は主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61はスピンドル速度信号を受けて、主軸モータSM62を指令された回転速度で回転させる。ポジションコーダ63は主軸モータSM62の回転に同期して帰還パルスをスピンドル制御回路38にフィードバックし、速度制御を行う。
上述した、数値制御装置1の構成は、従来の数値制御装置の構成と概略変わりない。相違する点は、後述するように、数値制御装置において、オペレータの機密保護(セキュリティレベル)、または、操作習熟度レベル(オペレータレベル)に応じた指定が可能となる構成を付加した点である。
【0013】
図2は本発明の管理者およびオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)、または、操作習熟度(オペレータレベル)の指定例を示す図である。レベル選択スイッチ21は機密保護度(セキュリティレベル)、または、操作習熟度(オペレータレベル)の指定を実行するための一入力形態であるである。レベル選択スイッチ21は操作盤4(図1、図3、図4参照)に設けられている。管理者および各オペレータA〜Dは自分のレベルに応じた専用のキーを所持している。管理者は後述するように、操作盤4上のレベル選択スイッチ21にレベル5専用キーを挿入しレベル5を選択し、オペレータの機密保護度(セキュリティレベル)のための各々の加工プログラムへ操作可否情報の設定作業や、操作グループへの操作可能なオペレータレベルの設定作業を行う。また、オペレータA〜Dは数値制御装置1の操作盤4上のレベル選択スイッチ21に挿入し、自分の操作レベルを指定することができる。しかしながら、各自のオペレータのレベル以上の操作の指定をすることはできない。
【0014】
オペレータAはレベル1のオペレータであるから、レベル1の専用キーを所持している。オペレータAはレベル1専用キーをレベル選択スイッチ21に挿入し、レベル1で規制されている操作のみを実行できる。オペレータBはレベル2のオペレータであるから、レベル2の専用キーを所持している。オペレータBはレベル2専用キーをレベル選択スイッチ21に挿入し、レベル1で規制されている操作とレベル2で規制されている操作のみを実行できる。オペレータCはレベル3のオペレータであるから、レベル3の専用キーを所持している。オペレータCはレベル3専用キーをレベル選択スイッチ21に挿入し、レベル1で規制されている操作、レベル2で規制されている操作、および、レベル3で規制されている操作のみを実行できる。オペレータDはレベル4専用キーをレベル選択スイッチ21に挿入し、レベル1で規制されている操作、レベル2で規制されている操作、レベル3で規制されている操作、および、レベル4で規制されている操作のみを実行できる。
通常、上位レベルは下位レベルの規制を包含する形式で設定されていることから、上位のレベルにあるオペレータは各自の下位レベルの操作を全て実行できる。管理者も最上位のオペレータとしてすべてのレベルの操作を実行できる。
【0015】
図3は本発明の第1の実施形態であるオペレータの機密保護度を設定する数値制御装置の機能ブロックの概略図である。表示器2、MDI(マニュアルデータインプット)3、操作盤4は図1で説明したとおりの機能を有する。プログラム解析部8は加工プログラム16を解析し、補間制御部9で補間処理を行い、移動指令を軸制御部10に送る。軸制御部10は工作機械11のサーボモータを制御する。記憶手段5は図1のSRAM33に対応する。記憶手段5には加工プログラム16が図1で説明した方法によりあらかじめ記憶されている。操作盤4には図2に示されるレベル選択スイッチ21が設けられている。数値制御装置1の使用者は、このレベル選択スイッチ21を用いてセキュリティレベル指定手段12aにより管理者、または、オペレータA〜Dがどのレベルであるかを指定する。
【0016】
次に、加工プログラム16への操作可否情報15の対応付けについて説明する。図2に示される管理者(レベル5)は、レベル5専用キーを操作盤4に設けられているレベル選択スイッチ21(図4参照)に挿入しレベル5を指定する。そして、操作盤4からセキュリティレベル指定手段12aにオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)の設定作業を実行するよう指令する。この指令はMDI3を用いて行う構成としてもよい。
レベル選択スイッチ21のレベル5の指定および操作盤4からの指令に基づきセキュリティレベル指定手段12aは、操作可否情報設定・記憶手段14に対して、記憶手段5に前もって格納されている加工プログラム16の各々に対応した操作可否情報15を設定するよう指令する。表1、表2には操作可否情報15の例が示されている。表1、表2に例として示される操作可否情報15は記憶手段5に記憶されている。前述のとおり記憶手段5は図1のSRAM33に対応することから、操作可否情報15はSRAM33(図1参照)に記憶されている。
【0017】
表1はセキュリティレベルの高い加工プログラムに設定される操作可否情報15の例である。この例では、セキュリティレベル1のオペレータは、運転、表示、編集、外部機器への出力のすべてについて不可で権限を有しない。セキュリティレベル2のオペレータは、運転は可、表示、編集、外部機器への出力は不可である。セキュリティレベル3のオペレータは、運転、表示は可、編集、外部機器への出力は不可である。セキュリティレベル4のオペレータは、運転、表示、編集、外部機器への出力のすべてが可である。
【0018】
【表1】

【0019】
表2はセキュリティレベルの低い加工プログラムに設定される操作可否情報15の例である。この例では、セキュリティレベル1〜4のオペレータは、運転、表示、編集、外部機器への出力の全てが可で権限を有している。
【0020】
【表2】

【0021】
管理者は、記憶手段5に格納されている各々の加工プログラム16に対して操作可否情報15を設定する。この設定は、操作可否情報設定・記憶手段14により表示器2にプログラム番号(例えば、O0001)を表示しMDI3や操作盤4を用いて対話形式で、各加工プログラムのセキュリティレベルに対応した操作可否情報を選択して記憶手段5に記憶させる。これにより、各々の加工プログラム16に、セキュリティレベルに応じた運転・表示・編集・外部出力の可否属性である操作可否情報15を設定することができ、数値制御装置1に、加工プログラムの取り扱いに関するオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)を確保することが可能となる。
表3はプログラム番号O0001にセキュリティ高の操作可否情報を対応させた例を示している。
【0022】
【表3】

【0023】
このO0001の加工プログラムの例では、セキュリティが高く要求されている。
レベル1〜レベル4のセキュリティレベルのオペレータは、加工プログラムO0001に対して、表1に示される操作について権限を有する。セキュリティレベル1のオペレータは、加工プログラムO0001に関して、運転、表示、編集、外部機器への出力のすべてについて不可で権限を有しない。セキュリティレベル2のオペレータは、加工プログラムO0001に関して、運転は可、表示、編集、外部機器への出力は不可である。セキュリティレベル3のオペレータは、加工プログラムO0001に関して、運転、表示は可、編集、外部機器への出力は不可である。セキュリティレベル4のオペレータは、加工プログラムO0001に関して、運転、表示、編集、外部機器への出力のすべてが可である。
表4はプログラム番号O1000にセキュリティ低の操作可否情報を対応させた例を示している。
【0024】
【表4】

【0025】
このO1000の加工プログラムの例では、セキュリティが低く要求されている。
この加工プログラムO1000に対して、セキュリティレベル1〜4のオペレータは、運転、表示、編集、外部機器への出力の全てが可で権限を有している。
【0026】
次に、機密保護度(セキュリティレベル)1〜4のオペレータ(図2参照)による、数値制御装置1の操作について説明する。オペレータが操作盤4に設けられたレベル選択スイッチ21に各自のレベル専用キーを挿入すると、セキュリティレベル指定手段12aは、操作可否判断手段13aにオペレータのセキュリティレベルを通知する。また、セキュリティレベル指定手段12aは、操作対象となる加工プログラム16に対応した操作可否情報15から、セキュリティレベル指定手段により指定されたオペレータのセキュリティレベルに対応した情報を操作可否判断手段13aに通知するよう記憶手段5に指令する。
図3のMDI3または操作盤4から操作対象となる加工プログラム16に対して各操作が入力された場合、その入力情報は操作可否判断手段13aに送られる(MDI3,操作盤4から操作可否判断手段13aへの実線矢印参照)。操作可否判断手段13aは、指定されたセキュリティレベルにより、その操作の可否を判断する。可と判断された場合は操作を実行し、否と判断された場合はその操作を実行せず、かつ、レベルを満たしていない旨の警告メッセージを表示器2に表示する。
なお、MDI3や操作盤4に対して前記指定されたセキュリティレベルに応じて入力を禁止する操作を行う構成としてもよい(操作可否判断手段13aからMDI3,操作盤4への破線矢印参照)。
【0027】
図4は本発明の第2の実施形態であるオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を設定する数値制御装置1の機能ブロックの概略図である。表示器2、MDI(マニュアルデータインプット)3、操作盤4は図1で説明したとおりの機能を有する。プログラム解析部8は加工プログラム16を解析し、補間制御部9で補間処理を行い、移動指令を軸制御部10に送る。軸制御部10は工作機械11のサーボモータを制御する。記憶手段5は図1のSRAM33に対応する。記憶手段5には加工プログラム16が図1で説明した方法によりあらかじめ記憶されている。操作盤4には図2に示されるレベル選択スイッチ21が設けられている。数値制御装置1の使用者は、このレベル選択スイッチ21を用いてオペレータレベル指定手段12bにより管理者、または、オペレータA〜Dがどのレベルであるかを指定する。
【0028】
まず、記憶手段5へのグループ化された操作情報19および操作可能レベル情報20の読み込みについて説明する。図2に示される管理者(レベル5)は、レベル5専用キーを操作盤4に設けられているレベル選択スイッチ21(図2参照)に挿入しレベル5を指定する。そして、操作盤4からオペレータレベル指定手段12bにオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)の設定作業を実行するよう指令する。この指令はMDI3など他の入力手段を用いて行う構成としてもよい。
【0029】
レベル選択スイッチ21のレベル5の指定および操作盤4からの指令に基づきオペレータレベル指定手段12bは、操作グループ化・記憶手段17および操作可能オペレータレベル記憶手段18に対して、表5に例示される数値制御装置の操作に関するグループ化情報と表6に例示される操作可能なオペレータレベル情報とを対応づけて、記憶手段5に格納するよう指令する。表5に例示される数値制御装置の操作に関するグループ化情報および表6に例示される操作可能なオペレータレベル情報は、記憶手段5に記憶されている。前述のとおり記憶手段5はSRAM33(図1参照)に対応するから、オペレータレベル情報はSRAM33に記憶される。
【0030】
表5は数値制御装置の操作に関するグループ化情報の記憶例である。グループ1には、安全操作(非常停止、運転停止)が属している。グループ2には、画面切り換えが属している。グループ3には、加工プログラムの選択、起動が属している。グループ4には、各種データ入力、編集、およびその他の操作が属している。
【0031】
【表5】

【0032】
表6は操作可能なオペレータレベル情報の記憶例である。グループ1にはオペレータレベル1以上のオペレータが権限を有する。グループ2にはレベル2以上、グループ3にはレベル3以上、グループ4にはレベル4以上のオペレータが操作の権限を有する。
【0033】
【表6】

【0034】
表7は記憶手段5に読み込まれた数値制御装置の操作に関するグループ化情報と操作可能なオペレータレベルの情報とを対応付けた記憶例である。オペレータレベル1のオペレータは、グループ1に属する安全操作(非常停止、運転停止)のみ実施可能である。オペレータレベル2のオペレータは、グループ1に属する安全操作(非常停止、運転停止)と、グループ2に属する画面切り換えを実施可能である。オペレータレベル3のオペレータは、グループ1に属する安全操作(非常停止、運転停止)と、グループ2に属する画面切り換えと、グループ3に属する加工プログラムの選択・起動を実施可能である。オペレータ4のオペレータは、グループ4に属する各種データ入力、編集、その他を含む、全ての操作を実施可能である。
【0035】
【表7】

【0036】
次に、操作習熟度(オペレータレベル)1〜4のオペレータ(図2参照)による、数値制御装置1の操作について説明する。操作盤4に設けられたレベル選択スイッチ21にオペレータが各自のレベル専用キーを挿入すると、オペレータレベル指定手段12bは、操作可否判断手段13bにオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を通知する。
【0037】
また、オペレータレベル指定手段12bは、オペレータレベル指定手段12bにより指定されたオペレータの操作可能レベル情報20と対応づけられたグループ化された操作情報19を、操作可否判断手段13bに通知するよう記憶手段5に指令する。
図4のMDI3または操作盤4から操作対象となる加工プログラム16に対して各操作が入力された場合、その入力情報は操作可否判断手段13bに送られる(MDI3,操作盤4から操作可否判断手段13bへの実線矢印参照)。操作可否判断手段13bは、指定されたオペレータレベルにより、その操作の可否を判断する。可と判断された場合は操作を実行し、否と判断された場合はその操作を実行せず、かつ、レベルを満たしていない旨の警告メッセージを表示器2に表示する。
なお、MDI3や操作盤4に対して前記指定されたオペレータレベルに応じて入力を禁止する操作を行う構成としてもよい(操作可否判断手段13bからMDI3,操作盤4への破線矢印参照)。
また、上記説明では、第1の実施形態と第2の実施形態とを選択する構成となっているが、どちらか一方の機能を実現する実施形態である場合には、操作盤4から機密保護度(セキュリティレベル)または操作習熟度(オペレータレベル)の設定を行うための構成などを省略してもよい。
また、繰り返しになるが、第1の実施形態と第2の実施形態において、記憶手段5の具体的手段としては、図1に示されるSRAM(スタティックRAM)33(図1参照)が対応する。
【0038】
図5は本発明のオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)を決定するアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、オペレータのセキュリティレベルを決定する(ステップA1)。ステップA1で決定されたオペレータのセキュリティレベルが、対象となるプログラムに関し、オペレータは操作(運転/表示/編集/外部機器への出力)が可能なセキュリティレベルであるか否かを判断する(ステップA2)。ステップ2で対象となるプログラムに関しセキュリティレベルに達しているオペレータ、つまり、YESと判断されるとステップA3に進み、操作(運転/表示/編集/外部機器への出力)を実行し終了する(ステップA3)。また、ステップ2で対象となるプログラムに関しセキュリティレベルが達していないオペレータ、つまり、NOと判断されるとステップA4に進み、警告メッセージを表示し終了する(ステップA4)。
【0039】
図6は本発明のオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を決定するアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、オペレータの操作習熟度のレベルを決定する(ステップB1)。施された操作のグループを決定する(ステップB2)。ステップB2で決定されたグループは、ステップB1で決定されたオペレータの操作可能なレベルであるか否かを判断する(ステップB3)。ステップB3で操作可能なレベルと判断されると、つまり、YESと判断されると、ステップB4に進み操作を実行し終了する(ステップB4)。また、ステップB3で操作可能なレベルでないと判断されると、つまり、NOと判断されると、ステップB5に進み警告メッセージを表示し終了する(ステップB5)。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のオペレータのレベルに応じた操作を可能とする数値制御装置の一例である。
【図2】本発明の管理者およびオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)、または、操作習熟度(オペレータレベル)の指定例を表す図である。
【図3】本発明の実施形態であるオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)に応じた操作を可能とする数値制御装置の機能ブロックの概略図である。
【図4】本発明の実施形態であるオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)に応じた操作を可能とする数値制御装置の機能ブロックの概略図である。
【図5】本発明のオペレータの機密保護度(セキュリティレベル)を決定するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図6】本発明のオペレータの操作習熟度(オペレータレベル)を決定するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 数値制御装置
2 表示器
3 MDI(マニュアルデータインプット)
4 操作盤
5 記憶手段
6 入出力インタフェース
7 外部出力機器(メモリカード,FDDなど)
8 プログラム解析部
9 補間制御部
10 軸制御部
10x,10y,10z 軸制御回路
11 工作機械
12a セキュリティレベル指定手段
12b オペレータレベル指定手段
13a,13b 操作可否判断手段
14 操作可否情報設定・記憶手段
15 操作可否情報
16 加工プログラム
17 操作グループ化・記憶手段
18 操作可能オペレータレベル記憶手段
19 グループ化された操作情報
20 操作可能レベル情報
21 レベル選択スイッチ
30 CPU
31 ROM
32 RAM
33 SRAM
34 INT(インタフェース)
35 PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)
36 I/Oユニット
37 INT(インタフェース)
38 スピンドル制御回路
39 バス
40x,40y,40z サーボアンプ
50x,50y,50z サーボモータ
61 スピンドルアンプ
62 主軸モータSM
63 ポジションコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに基づいて工作機械を駆動してワークに指令通りの加工を施す数値制御装置において、
前記加工プログラムの取り扱いに関するオペレータの機密保護度を指定するセキュリティレベル指定手段と、
前記加工プログラム毎に、前記セキュリティレベル指定手段により指定されたセキュリティレベルに応じた操作の可否を設定・記憶する操作可否情報設定・記憶手段と、
前記セキュリティレベル指定手段により指定されたオペレータのセキュリティレベルと、前記操作可否情報設定・記憶手段により記憶された操作可否情報とから、操作内容が実施可能であるか判断する操作可否判断手段と、
を備えた数値制御装置。
【請求項2】
前記セキュリティレベルに応じた操作は、前記加工プログラムの運転、表示、編集、および外部機器への出力であることを特徴とする請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
加工プログラムに基づいて工作機械を駆動してワークに指令通りの加工を施す数値制御装置において、
前記数値制御装置を操作するオペレータの操作習熟度を指定するオペレータレベル指定手段と、
該数値制御装置の操作を一定の単位にグループ化する操作グループ化・記憶手段と、
前記操作グループ化手段によりグループ化された操作の単位で、操作可能なオペレータレベルを記憶する操作可能オペレータレベル記憶手段と、
前記オペレータレベル指定手段により指定されたオペレータの操作習熟度と、前記操作可能オペレータレベル記憶手段により記憶された操作可能レベルとから、操作内容が実施可能であるかを判断する操作可否判断手段と、
を備えた数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−86964(P2009−86964A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255106(P2007−255106)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】