オリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデート:合成および化合物;ハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ耐性特性
【課題】本発明の目的は、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法を提供することである。詳細には、ホスホジエステラーゼ消化に対する著しく高められた抵抗性を有する改変されたオリゴヌクレオチド、3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを固体支持体上で合成することである。
【解決手段】ヌクレオシドサブユニットであって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてBzはベンゾイル基である、ヌクレオシドサブユニット。
【解決手段】ヌクレオシドサブユニットであって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてBzはベンゾイル基である、ヌクレオシドサブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは強力な診断化合物および新規の合理的に設計された治療剤として提唱されてきた(Uhlman、1990;Helenら、1990;Helen、1991)。これらの化合物の作用機構は、目的のRNAまたはDNA領域との特異的な相互作用に基づく。
【0003】
天然のホスホジエステルのヌクレオシド間結合の種々の改変物{ホスホモノ−(Ecksteinら、1985;Cohen、1993)またはジチオエート(Marshallら、1993)メチルホスホネート(Miller、1991)、ホスホジエステルアミデート(Letsingerら、1988;Froeflerら、1988)}が導入され、(i)生物学的媒体におけるオリゴマーの安定性および(ii)オリゴマーのハイブリダイゼーション特性を改良している。
【0004】
しかし、これらのアナログの大多数は、2重鎖または3重鎖の形成を介する標的RNAまたはDNA鎖との結合を減少することが示されている(Kibler−Herzogら、1991)。さらに、これらのアナログのいくつかのリンにおける立体異性体の存在により、相補的な核酸との結合パターンが複雑になる可能性がある(LaPlaucheら、1986;Bowerら、1987;Tiddら、1988)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法を提供することである。詳細には、ホスホジエステラーゼ消化に対する著しく高められた抵抗性を有する改変されたオリゴヌクレオチド、3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを固体支持体上で合成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の式を含むヌクレオシドサブユニット:
【0007】
【化2】
【0008】
であって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてBzはベンゾイル基である、ヌクレオシドサブユニットである。
【0009】
本発明はまた、以下の式を含むヌクレオシドサブユニット:
【0010】
【化3】
【0011】
であって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてIBUはイソブチリル基である、ヌクレオシドサブユニット。
【0012】
本発明はまた、5’−DMT−N6−ベンゾイル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシアデノシンまたは5’−DMT−N2−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成方法であって、以下の工程を包含する方法:
Xの5’ベンゾイル化、
3’ヒドロキシ基の反転、
トリチル化、
3’の脱ベンゾイル化、
3’トレオアジド基の3’エリトロアジド基への転換、および
3’エリトロアジド基の還元、
ここで、Xは5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンまたはN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシンである、方法である。
【0013】
本発明はまた、以下の式のサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを包含する、オリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0014】
【化4】
【0015】
であって、
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、Rには10個より多い炭素の炭素鎖は含まれず、サブユニット間結合は少なくとも6から100塩基の長さのオリゴヌクレオチド内に散在し、nは4から100であり、そしてBは塩基である、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0016】
好適な実施形態においては、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドが、N3’→P5’ホスホルアミデート結合によって連結している少なくとも3個の連続するサブユニットを有する。
【0017】
さらに好適な実施形態においては、5’および3’末端にOH基を有し、そして上記連続する結合が3’末端のヌクレオシドサブユニットで始まる。
【0018】
好適な実施形態においては、サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0019】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2の結合とを交互に連結する。
【0020】
さらに好適な実施形態においては、サブユニット間結合の少なくとも50%がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0021】
さらに好適な実施形態においては、上記第2の結合がホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’およびホスホロチオエートからなる群から選択される。
【0022】
さらに好適な実施形態においては、上記第2の結合がホスホジエステル結合である。
【0023】
本発明はまた、2重鎖の核酸分子の生成方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0024】
【化5】
【0025】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、オリゴデオキシリボヌクレチドは標的核酸分子との2重鎖の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的核酸分子との間の2重鎖の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的核酸分子とを接触させる工程を包含する、方法である。
【0026】
本発明はまた、タンパク質とポリヌクレオチドとの相互作用を阻止する方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、以下に示される、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0027】
【化6】
【0028】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、オリゴデオキシリボヌクレオチドはポリヌクレオチドとの複合体の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドとポリヌクレオチドとの間の複合体の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとポリヌクレオチドを接触させる工程を包含する、方法である。
【0029】
本発明はまた、3重鎖分子の生成方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、以下に示される、少なくとも2個の連続するサブユニットがAN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0030】
【化7】
【0031】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなるより選択され、オリゴデオキシリボヌクレチドは標的2重鎖DNAとの3重らせん構造の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖の標的DNAとの間の3重鎖の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖DNAとを接触させる工程を包含する、方法である。
【0032】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合の50%またはそれよりも多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0033】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2のサブユニット間結合とを交互に連結する。
【0034】
好適な実施形態においては、上記残存サブユニット間結合が、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’、およびホスホロチオエートからなる群より選択される。
【0035】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0036】
好適な実施形態においては、上記接触が細胞内で行われる。
【0037】
本発明はまた、3本の核酸ストランドを有する3重鎖分子であって:
2本の相補的ストランドを有する2重鎖DNA分子、および2重鎖と結合するサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有する第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であるオリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0038】
【化8】
【0039】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される、3重鎖分子である。
【0040】
好適な実施形態において、上記第3のストランドのサブユニット間結合の50%またはそれよりも多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0041】
好適な実施形態において、上記第3のストランドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0042】
本発明はまた、オリゴデオキシリボヌクレオチドのヌクレアーゼ切断に対する抵抗性を増強する方法であって、
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0043】
【化9】
【0044】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される工程、および
オリゴデオキシリボヌクレオチドをヌクレアーゼに曝露される工程であって、
ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドが、ホスホジエステルサブユニット間結合のみを有する対応するオリゴデオキシリボヌクレオチドより、ヌクレアーゼ切断に対して抵抗性である工程を包含する、方法である。
【0045】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合の50%またはそれより多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0046】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0047】
好適な実施形態において、上記曝露が細胞内で行われる。
【0048】
本発明はまた、以下を含む、サンプルから標的核酸を単離するためのキットであって:
(i)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドであって、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である、オリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0049】
【化10】
【0050】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、
(ii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが標的核酸配列に対してハイブリダイズするに効果的であり、そして
(iii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが固体支持体に接着される、
キットである。
【0051】
本発明はまた、サンプル中の標的配列を有する核酸の検出方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0052】
【化11】
【0053】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが標的配列とのハイブリッド複合体の形成に効果的である、工程、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体を形成し得るに効果的な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとサンプルとを接触させる工程、および
ハイブリッド複合体の存在を検出する工程を包含する、方法である。
【0054】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドがリポーター部分を有し、そして上記検出がリポーター部分の検出を包含する。
【0055】
好適な実施形態において、上記リポーター部分が、放射性標識、ビオチン標識、および蛍光標識からなる群より選択される。
【0056】
好適な実施形態において、上記接触が細胞内で行われる。
【0057】
好適な実施形態において、上記核酸が1本鎖である。
【0058】
本発明はまた、サンプル中の標的配列を有する2重鎖DNAの検出方法であって:
連続するヌクレオシドサブユニットおよびサブユニット間結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、
(i)少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または、全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0059】
【化12】
【0060】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが標的配列とのハイブリッド複合体の形成に効果的である、工程、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体を形成し得るに効果的な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとサンプルとを接触させる工程、および
ハイブリッド複合体の存在を検出する工程を包含する、方法である。
【0061】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドがリポーター部分を保有し、そして上記検出がリポーター部分の検出を包含する。
【0062】
好適な実施形態において、上記ハイブリッド複合体がゲルバンドシフトにより同定される。
【0063】
好適な実施形態において、上記接触が細胞内で行われる。
【0064】
本発明はまた、2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであって、2本の相補的なストランドを有し、そして(ii)少なくとも1本のストランドがサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有し、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットはN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結するか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0065】
【化13】
【0066】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される、2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0067】
好適な実施形態において、少なくとも1本のストランドの上記サブユニット間結合の50%またはそれより多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0068】
好適な実施形態において、少なくとも1本のストランドの上記サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0069】
好適な実施形態において、上記相補的なストランドがフレキシブルなヒンジ領域によって連結される。
【0070】
本発明はまた、それぞれの相補的なストランドが5’および3’末端を有し、そして上記フレキシブルなヒンジ領域が相補的なストランド末端と、5’から3’、3’から5’、3’から3’、および5’から5’からなる群より選択される方向のうち1つで連結する、2重鎖分子である。
【0071】
本発明はまた、薬学的組成物であって、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、(i)少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0072】
【化14】
【0073】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そして(ii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが、標的2重鎖DNAを伴う3重鎖および薬学的に受容可能なキャリアの形成に有効なヌクレオシドサブユニットの配列を有する、薬学的組成物である。
【0074】
本発明はまた、薬学的組成物であって、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドが、RNAと2重鎖を形成し得、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0075】
【化15】
【0076】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが、RNA標的を伴う2重鎖構造、および治療的に受容可能なキャリアの形成に有効なヌクレオシドサブユニットの配列を有する、薬学的組成物である。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
(発明の要旨)
本発明の方法、化合物および組成物は、連続するヌクレオシドサブユニットがサブユニット間結合により連結したサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドに関する。本オリゴヌクレオチドにおいて、少なくとも2個の連続するサブユニットはN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、あるいは全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である。
【0079】
N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の例は:
【0080】
【化16】
【0081】
であり、Xは−O−、−OR、または−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される。
【0082】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの例は:
【0083】
【化17】
【0084】
式1
であり、
ここで、Xは−O−、−OR、または−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、nは4から100であり、そしてBは塩基である。通常、5’位の酸素には1個の水素またはオリゴヌクレオチド中の別のヌクレオチドのいずれかが結合し、そして3’位の酸素にはオリゴヌクレオチド中の別のヌクレオチドが結合する。これらの例示の置換基の定義については、後述の定義の節を参照のこと。
【0085】
本発明のオリゴデオキシリボヌクレオチドを構成しているヌクレオシドサブユニットは、定義された配列内にあるように選択し得る。例えば、1本鎖核酸の標的配列に対して相補的な塩基の配列あるいはオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的2重鎖との間の3重鎖の形成を可能にする配列である。
【0086】
1つの実施態様において、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデート結合により連結される少なくとも3個の連続するサブユニットを有する。この群の結合は、例えば、オリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端に存在し得る。この位置におけるN3’→P5’ホスホルアミデート結合はオリゴデオキシリボヌクレオチドに対してヌクレアーゼ抵抗性を付与する。
【0087】
本発明の別の実施態様において、サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0088】
本発明は、オリゴデオキシリボヌクレオチドを合成するために用いられる中間体およびそのような中間体の合成方法を含む。中間体としては、以下の式で表される:
【0089】
【化18】
【0090】
および
【0091】
【化19】
【0092】
本発明は、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドの形成による2重鎖の核酸分子の生成方法を包含する。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは式1のサブユニット間結合または本明細書中で考察する他の結合と組合わさせたそのような結合を含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、2重鎖の効果的な形成を可能とする条件下で標的核酸分子と接触する場合、標的核酸分子と2重鎖を形成する一連のヌクレオシドサブユニットを有する。
【0093】
本発明はまた、オリゴデオキシリボヌクレオチドの形成によるポリヌクレオチドとの蛋白質の相互作用をブロックする方法も含む。本オリゴデオキシリボヌクレオチドは、式1のサブユニット間結合または本明細書中で考察する他の結合と組合わせたそのような結合により連結した連続するヌクレオシドサブユニットを含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、2重鎖または3重鎖の効果的な形成を可能とする条件下で標的核酸と接触する場合、標的核酸分子と2重鎖または3重鎖を形成する一連のヌクレオシドサブユニットを有する。この方法は細胞内で用い得る。
【0094】
また、本発明には、サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2の結合とを交互に連結するオリゴデオキシリボヌクレオチドも含まれる。第2の結合は、1つまたはそれ以上の異なる型の結合から選択され得る。例えば、ホスホジエステル結合またはホスホジエステルおよびホスホロチオエート結合である。第2の結合は、例えば、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’およびホスホロチオエートからなる群より選択される。1つの実施態様において、サブユニット間結合の少なくとも50%がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0095】
本発明は、上記のようなオリゴデオキシリボヌクレオチドの形成による、3重鎖DNA分子の生成方法を包含する。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは標的2重鎖DNAを伴う3重鎖らせん構造の形成に有効な一連のヌクレオシドサブユニットを有する。次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖の標的DNA間の3重鎖の形成を可能にするのに効果的な条件下で2重鎖DNAと接触する。この方法は、種々の条件下で、例えば、細胞内または溶液内で行われ得る。
【0096】
本発明はまた、以下の3本のDNAストランドを有する3重鎖のDNA分子も含む:(i)2本の相補的なストランドを有する2重鎖のDNA分子および(ii)2重鎖と結合した、上記のN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドである。1つの実施態様において、第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合の50%またはそれ以上がN3’→P5’ホスホルアミデート結合であり、十分に改変されたオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0097】
さらに、本発明は、ヌクレアーゼ切断に対するオリゴデオキシリボヌクレオチドの抵抗性を増強する方法を包含する。本方法において、オリゴデオキシリボヌクレオチドが形成され、これは上記のN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する。オリゴデオキシリボヌクレオチドはヌクレアーゼに曝される。そのようなオリゴデオキシリボヌクレオチドは、ホスホジエステルのサブユニット間結合のみを有する対応するオリゴデオキシリボヌクレオチドよりもヌクレアーゼ切断に対してより抵抗性である。ヌクレアーゼの抵抗性は細胞内でも同様に観察される。
【0098】
N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドは、上記のように、優れたハイブリダイゼーション特性を有する。本発明はまた、RNAの標的配列に対する最初のオリゴデオキシリボヌクレオチドのハイブリダイゼーションを増強する方法を包含する。ここで、本オリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有する。本方法において、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有する第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドが形成され、これは第1のオリゴデオキシリボヌクレオチドと同様な連続するヌクレオシドサブユニット配列を有する。第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、該標的RNA配列に対するハイブリダイゼーションに効果的である。第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドとRNAとの間での複合体の形成を可能とする効率的な条件下でRNAと接触する。そのような接触は、細胞内を含め、種々の条件下で行われ得る。
【0099】
本発明はまた、サンプルからの標的RNAの単離方法およびキットを含む。キットには、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する上記のようなオリゴデオキシリボヌクレオチドが含まれる。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、標的RNA配列に対するハイブリダイゼーションに効果的である。典型的に、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、磁気ビーズのような固体支持体に付着され、単離を容易にする。
【0100】
別の実施態様において、本発明は、選択された標的配列を有するRNAのサンプル中の存在を検出するための診断的方法を包含する。本方法において、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドが作製され、これは標的配列とのハイブリダイゼーション複合体の形成に効果的である。次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体の形成を可能とする効率的な条件下において、サンプルと接触される。次いで、ハイブリッド複合体の存在が検出される。ハイブリッド複合体の検出は、リポーター部分を伴うオリゴデオキシリボヌクレオチドを標識することによって達成され得る。ここで、検出はリポーター部分の検出を包含する。多くのリポーター部分が利用され得、放射性標識、ビオチン標識、および蛍光標識を包含するが、これらに限定されない。本検出方法は、細胞内を含む、種々の条件下で行われ得る。
【0101】
同様の診断方法が、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いて行われ得る。ここで、標的配列は2重鎖のDNAまたは1本鎖DNAである。2重鎖DNAの検出の場合、ハイブリダイゼーション複合体の検出はゲルバンドシフトアッセイを用いて達成され得る。1本鎖DNAの検出には、一般的にオリゴデオキシリボヌクレオチドは全サブユニット間結合の50%より多くをN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合として含む。
【0102】
本発明はまた、以下を有する2重鎖のオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む:(i)2本の相補的なストランドおよび(ii)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットであって、ここで少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である(上記)。1つの実施態様において、少なくとも1つのストランドのサブユニット間結合の50%またはそれ以上がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。別の実施態様において、少なくとも1つのストランドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。そのような2重鎖のDNA分子はまた、相補的なストランドに連結しているフレキシブルなヒンジ領域も含み得る。ヒンジ領域は任意の所望の極性でストランドを連結し得る。例えば、5’から3’へ、3’から5’へ、3’から3’へ、および5’から5’へである。
【0103】
さらに、本発明は、標的領域を含む2本の相補的なDNAストランドおよび1本のRNAストランドを有する3重鎖の核酸複合体の形成方法およびそれらの組成物を含む。本方法において、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドが形成される。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、以下を有する2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドを形成し得る:(i)5’および3’を有する2本の相補的なストランド、(ii)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットであって、ここで少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合で連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり(上記)、(iii)ここで、フレキシブルなヒンジ領域によって1つのストランドの末端から他方のストランドの末端までストランドが連結され、そして(iv)RNA標的を伴う3重らせん構造の形成に効果的な一連のヌクレオシドサブユニットを有する相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドのストランド。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドとRNAとの間の3重鎖の形成を可能とする効率的な条件下でRNA標的と接触される。本方法は、細胞内を含め、種々の条件下で行われ得る。
【0104】
本発明はまた、上記のように、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドの薬学的組成物を含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、抗原およびアンチセンスの適応のようなハイブリダイゼーションに基づく治療適応に有用である。
【0105】
本発明のこれらのおよび他の目的ならびに特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むと、より十分に理解し得る。
【0106】
(参考文献)
【0107】
【表1】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
「アルキル基」は、1から20個の炭素原子を有するアルキル基または置換されたアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)をいう。低級アルキルは、典型的に、C1からC5をいう。中級アルキルは、典型的に、C6からC10をいう。同様に、「シクロアルキル基」は、アルキル、アリール、アラルキル置換基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど、)を有し得る飽和炭素環式環基、またはそれらの置換形態をいう。
【0112】
「アルケニル基」は、炭素−炭素の2重結合を含む炭化水素基(例えば、ビニル、アリル、シクロペンテニルなど)をいう。「アルケニル基」はまた、置換されたアルケニルも含む。低級アルケニルは、典型的に、C1からC5をいう。中級アルケニルは、一般的に、C6からC10をいう。
【0113】
「アリール基」は、5〜20個の炭素原子を有する芳香族環基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、または置換されたアリール基で、トリル、エチルフェニル、ビフェニルなどのようなアルキル置換基またはアリール置換基)をいう。環内に1個またはそれ以上の窒素原子、酸素原子またはイオウ原子を有する複素環式芳香環基も含まれる。
【0114】
「アラルキル基」は、アリール置換基のような置換されたアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルなど)をいう。アルキルは上記のように定義される。
【0115】
「置換される」は、一般に前記の基が1個またはそれ以上の小さな化学部分(例えば、メトキシ、エトキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、アミド、アミノ、およびエチレンオキシド)で誘導体化されることを意味する。上記で定義される基のいずれも置換され得る。例えば、(−CF3)。
【0116】
「オリゴヌクレオチド」は、典型的に、ヌクレオシドサブユニットのポリマーをいい、約4から約50個の連続するサブユニットを有する。ヌクレオシドサブユニットは、種々のサブユニット間結合により連結され得、図2Aから2Eに示されるサブユニットを含むが、これらには限定されない。さらに、「オリゴヌクレオチド」は、糖骨格(例えば、リボースまたはデオキシリボースサブユニット)、糖(例えば、2’置換体)、塩基および、3’および5’末端に対する当業者に公知の改変を含む。「オリゴデオキシリボヌクレオチド」は、そのような改変(例えば、2’がフッ素の糖置換体)を含む。式1において、nは、典型的に、4から100または5〜100であり、好ましくは6から60、より好ましくは6から40、そして最も好ましくは6から30である。一般的に、オリゴヌクレオチドの全長は、6から100ヌクレオチドまで変化し、好ましくは6から50ヌクレオチド、そしてより好ましくは10から30ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドにおいて、一般的に、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットによって連結され、好ましくは少なくとも3個の連続するサブユニットであり、より好ましくは少なくとも4個の連続するサブユニットであり、最も好ましくは少なくとも5個の連続するユニットである。一般的に、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列に対するミスマッチを有さない。オリゴヌクレオチドが約20から30ヌクレオチドより長い場合、1または2または3塩基のミスマッチは許容される。
【0117】
「ヌクレオシド」は、本明細書においてペントース糖(リボース、デオキシリボース、またはそれらの改変物)として定義される。これらの糖は、水素結合を形成し得る塩基(典型的に、プリンまたはピリミジン)に結合する。
【0118】
「塩基」は、本明細書において、(i)典型的なDNAおよびRNA塩基(ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、およびシトシン)、および(ii)改変された塩基または塩基アナログ(例えば、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、またはイノシン)を包含して定義される。塩基アナログは、その構造が典型的なDNAまたはRNA塩基の構造に類似する化学物質である。
【0119】
「3重鎖」は、3本の核酸ストランドを有する。典型的に、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列に対するミスマッチを有さない。オリゴヌクレオチドが約20から30ヌクレオチドより長い場合、1または2または3塩基のミスマッチは許容される。
【0120】
(II.本発明)
本発明の支持において実施された実施例は、アキラルなヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を含むオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ切断に対してより抵抗性であり、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含まないオリゴヌクレオチドと比較してRNAおよびdsDNAのハイブリダイゼーション特性を改善している。N3’→P5’結合を含むオリゴヌクレオチドは、インビトロの細胞の生長阻害アッセイにおいて相補的なmRNA標的に対して優れたアンチセンス活性を有する。さらに、オリゴヌクレオチドは低い細胞傷害性を示す。
【0121】
(A.ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドの合成および特徴付け)
1つのN3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドを、本質的には、Shabarova(1988)に記載のように水性媒体中で化学的連結により合成した。あるいは、2つのサブユニット間のN3’→P5’結合を有し、隣接のサブユニット間結合が少なくとも1つのホスホジエステル結合を有するオリゴヌクレオチドを、先に形成されたホスホルアミデートダイマーブロックのカップリングを介して固体支持体上で合成した(Gryaznovら、1992;Magら、1992)。ランダムなサイズのリボオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを、ダイマーブロックの自己重合を介して得た(Zielinskiら、1987)。Azhayerらは所定の配列のオリゴリボヌクレオチドの合成を記載している。
【0122】
本発明は、オリゴデオキシリボヌクレオチドの生成のための固体支持体合成方法を包含し、このオリゴデオキシリボヌクレオチドは、連続するヌクレオシドサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合(np)で連結されている(実施例1、図1)。オリゴデオキシリボヌクレオチドの連続合成において、5’−ジメトキシトリチル−3’−アミノ−デオキシリボヌクレオチドサブユニットが利用される。これらのサブユニットのそれぞれの調製を実施例1に示し(例えば、図20参照)、以下に概略を示す:
【0123】
【化20】
【0124】
N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合で連結されている連続するサブユニットを有するオリゴヌクレオチド(例えば、一様に改変されている)を、実施例1に概略を示し、かつ以下に示すような段階的伸長手順を用いて固体支持体上で合成した:
【0125】
【化21】
【0126】
1つのアミノヌクレオシドの付加についての合成サイクルは、本質的には以下の操作からなる:脱トリチル化(図1、工程i);5’−ヒドロキシル基のホスフィチル化による、5’−H−リン酸ジエステルを支持するポリマーの生成(図1、工程ii、iii);四塩化炭素存在下での5’−ジメトキシトリチル−3’−アミノ−ヌクレオシド(Glinskiら、1970)と5’−H−リン酸塩とのAtherton−Todd型カップリング(Athertonら、1945;Gryaznovら、1992;Gryaznovら、1986;Gryaznovら、1990)(図1、工程iv)。このサイクルを数回繰り返すことによって、アンモニアでの脱保護後、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを生じ得る(図1、工程v、vi)。平均カップリング収率は、ジメトキシトリチル(DMT)カチオンアッセイによる判定で1工程当たり94〜96%であった。
【0127】
N3’→P5’ホスホルアミデート結合(「np」)を含む例示的なオリゴデオキシリボヌクレオチドを図3および本明細書中に示す。
【0128】
本発明のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合(例えば、5’−T−np−G−np−A−3’)で連結される少なくとも2個の連続するサブユニット、または3個より多いすべてのN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を含む。1つの実施態様では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、十分に改変されたN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を含んでいる(例えば、図3、実験13、オリゴヌクレオチド6)。別の実施態様では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、サブユニット間交互のN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有し、代表的には、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合が交互である(例示的な結合については、以下および図2を参照)。交互の結合を有するこのようなオリゴデオキシリボヌクレオチドの例を、図3、実験3、オリゴヌクレオチド2に示す。オリゴヌクレオチド2の合成は実施例1に記載されている。
【0129】
オリゴヌクレオチドをイオン交換高速液体クロマトグラフィーによって単離した(IE HPLC;実施例2、図4A)。単離したオリゴヌクレオチド調製物の純度を、キャピラリー電気泳動およびスラブゲル電気泳動分析により評価した(実施例2、図4B)。
【0130】
精製したオリゴヌクレオチドのホスホルアミデート結合の存在を、31P−NMR(実施例2、図4C)およびホスホルアミデート結合の選択的な酸触媒による加水分解(実施例2)によって確認した。
【0131】
図1(工程i、iii)のシアノエステル基は、他のペンダント基と置き換えられ得、これにはアルキル基(通常、低級または中級アルキル基)、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基(または前述の基の任意の置換体)が含まれる。代表的には、そのようなペンダント基は、オリゴヌクレオチドの合成またはオリゴヌクレオチドが標的とハイブリダイズする能力を妨害しない。ペンダント基の一例は、−CH3(Gryaznovら、1992)である。代表的な繰り返しユニットを図2Aに示す。ここで、「X」は、「−O−」、「−OR」または「−R」であり、そして「R」は、例えば、以下のペンダント基群またはそれらの置換体の任意のものである:アルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキル。
【0132】
ホスホルアミデートアナログおよびキメラのホスホルアミデート/ホスホジエステルアナログ(図2C)に加え、ヌクレオシド間N3’→P5’ホスホルアミデート結合は、1つまたはそれ以上の他の改変されたサブユニット間結合を有するオリゴヌクレオチドに組み込まれ得(Goodchild、1990により総説されている)、そのようなものとして、ホスホトリエステル(図2D)、メチルホスホネート(図2B)、ホスホルアミデート(図2F)、ホスホルアミデートP3’→N5’、およびホスホロチオエート(図2E)が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
(B.アキラルなヌクレオシド間3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ抵抗性)
ヘビ毒液のホスホジエステラーゼによる加水分解に対するオリゴヌクレオチドホスホルアミデートの安定性を、天然のホスホジエステル化合物との比較によって評価した(材料および方法の節参照)。ホスホジエステルデカマーのオリゴヌクレオチド1(図3)をヘビ毒液のホスホジエステラーゼで処理した。このオリゴヌクレオチド1は10分後には完全に加水分解され、これは逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって判断した。
【0134】
これとは対照的に、ホスホルアミデートアナログのオリゴヌクレオチド3は、ヘビ毒液のホスホジエステラーゼでの処理の50分後でも本質的にそのままであった。4.5時間後、約50%のオリゴヌクレオチド3を、末端の3’−アミノ基を有する推定9マーの(TnpT)4TNH2に変換した。末端の3’−アミノ基の存在はこのオリゴマーのさらなる切断を遅らせた。22時間の加水分解後、最初の10マーのオリゴヌクレオチド3は、完全に3’−アミノ末端の9マー{(Tnp)8TNH2}に変換された。この{(Tnp)8TNH2}化合物の約20%だけのさらなる切断が観測された。
【0135】
これらの結果は、標準のホスホジエステル骨格を有するオリゴヌクレオチドと比較して、N3’→P5’ホスホルアミデート結合(「np」)を含むオリゴヌクレオチドの増大したヌクレアーゼ抵抗性を示す。本発明の1つの実施態様によれば、オリゴデオキシリボヌクレオチドのヌクレアーゼ抵抗性は、このオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端にN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結され約3つの連続するサブユニットを配置することにより生成する。
【0136】
(C.N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性)
ホスホルアミデートアナログのハイブリダイゼーション特性を、標準のホスホジエステルのサブユニット間結合を有する相補的なDNAまたはRNAストランドに関して評価した。ホスホルアミデートアナログおよびホスホジエステルオリゴマーから生成する2重鎖の熱安定性データを図3に要約する(実施例1)。
【0137】
ホスホジエステルおよびホスホルアミデートアナログオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線データの例(実施例4A)を図5Aおよび5Bに示す。この図において、曲線(A)、(C)、(B)、および(D)は、それぞれ、図3における実験8、9、13および14に対応する。
【0138】
ヌクレオシド間のホスホジエステルのN3’→P5’ホスホルアミデート結合についての置換は、このオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を劇的に変化させた。完全に改変された10マーのオリゴヌクレオチド3とポリDa(すなわち、DNA)およびポリA(すなわち、RNA)とにより形成される2重鎖の融解温度(Tm)は、それぞれ、36.0℃および51.5℃であった(図3、実験5および6)。これらのTmは、ホスホジエステルの相対物のオリゴヌクレオチド1とポリDaおよびポリAとにより形成される2重鎖よりも、6.3℃および24.5℃高い(図3、実験1および2)。
【0139】
同じ傾向が混合塩基のウンデカヌクレオチド6についても当てはまり(図3)、この場合、相補的なDNAストランドおよびRNAストランドとの2重鎖のTmは、それぞれ、49.2℃および72.4℃であった(図3、実験13、14)。これらの値は、親のホスホジエステル化合物のオリゴデオキシリボヌクレオチド4についての値よりも11.7℃および22.9℃高い(図3、実験8および9)。また、ホスホルアミデートの11マーのオリゴデオキシリボヌクレオチド6により形成される同一RNA標的との2重鎖は、相同なRNAオリゴマー5により形成される2重鎖よりも(18.0℃)安定である(図3、実験11)。
【0140】
オリゴデオキシリボヌクレオチド2はまた、ホスホジエステル−ホスホルアミデート結合が交互になっており、対応するホスホジエステル化合物(オリゴデオキシリボヌクレオチド1、図3、実験2)より、RNAストランドと一層堅く結合し、そのTmは33.7℃である(図3、実験4)。しかし、オリゴデオキシリボヌクレオチド2は、そのホスホジエステルの相対物(オリゴデオキシリボヌクレオチド1、図3、実験1)と比較して、DNAテンプレートに対してはあまり強く結合せず、Tmは25.8℃である(図3、実施例3)。相補的な核酸とのホスホルアミデートオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、配列特異的であり、適切なワトソン−クリック型塩基対形成により決定される。ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド6と1つのミスマッチのRNA標的とにより形成される2重鎖(図3、実験15)は、完全な相補的RNAオリゴマーとともに形成される2重鎖より実質的に安定でない(−12.2℃のΔTm)(図3、実験13)。ほぼ同様のミスマッチの相違がホスホジエステルのデオキシリボ−オリゴヌクレオチドおよびリボ−オリゴヌクレオチドで測定され、その場合のΔTmは、それぞれ−14.4℃および−12.4℃であった(図3、実験10、12)。
【0141】
ホスホルアミデートアナログを用いた以前の研究において、3つのN3’→P5’ホスホルアミデート結合の導入により、このような2個の結合と比較して、不安定化傾向になることが示され、それはデオキシリボ−オリゴヌクレオチド標的とともに形成されるヘテロ2重鎖によるものであった(Gryaznovら、1992)。先行技術の傾向とは対照的に、上記の結果は、ホスホルアミデート結合としての50%までのサブユニット間結合を有する場合、代表的にはDNA/DNAヘテロ2重鎖の安定性が低下することを示す。しかし、DNA2重鎖の1本のストランドの50%より多いホスホルアミデートサブユニット間結合は、この2重鎖関連物の安定性を向上させ始める。
【0142】
DNA2重鎖が、正常なホスホジエステルオリゴヌクレオチドとN3’→P5’ホスホルアミデート結合で十分に改変されているオリゴヌクレオチドとの間で形成される場合、この2重鎖の熱安定性は、両方のストランドにホスホジエステル結合のみを有する対応する2重鎖よりさらに高い(図3、比較実験1および5)。
【0143】
Gryaznovら(1992)は、一方のストランドが3つまでのN3’→P5’ホスホルアミデート結合(連続していない)を含むDNA/DNA2重鎖のハイブリダイゼーション特性に関するデータを含むだけである。DNA標的に関する先行技術の教示との明確な対比により、本発明の支持のために実施された実験は、オリゴデオキシリボヌクレオチドに存在しているホスホルアミデートアナログの結合の数の増加により、DNA/RNAヘテロ2重鎖の安定性が増大することを示す。DNA/RNAヘテロ2重鎖の安定化を成し遂げるために、本発明の好ましい実施態様は、少なくとも2つの連続する中間サブユニット、または3つより多いすべてのサブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するように改変されているオリゴデオキシリボヌクレオチドを包含する。さらに好ましいオリゴヌクレオチドは、 N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する少なくとも5つの連続する中間サブユニットを有する。
【0144】
実験はまた、両方の相補的なストランドにおけるホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドにより形成される2重鎖の安定性を評価するために実施された。チミジンを含むヒンジ部(T4、図6)を有する幾つかのキメラホスホルアミデート−ホスホジエステルのヘアピンオリゴマー(図6)を合成した(図6、実施例4B)。これらの化合物に対して得られた融解曲線は、最も安定な2重鎖がオリゴヌクレオチド9および12のヘアピンにより形成されたことを示し、その場合、両方のストランドは相対する位置にホスホルアミデート結合を含む(図6、実験3、6)。
【0145】
また、単鎖のDNA分子から形成される2重鎖(すなわち、ヘアピン)は、一方のストランドが交互するホスホルアミデート−ホスホジエステル結合を含み、ここでその相補鎖がホスホジエステル結合のみを有し、それらの単なるホスホジエステルの相対物よりも安定である(図6、実験1、4)。
【0146】
これらの結果は、DNA/DNA2重鎖の両方のストランドがホスホルアミデートアナログ結合を含む場合、この2重鎖がそれぞれのストランドのN3’→P5’ホスホルアミデート結合の存在により安定化されることを示唆する。安定な2重鎖はそれぞれのストランドの1つのホスホルアミデート結合で形成され得る。すなわち、1つの実施態様では、ホスホルアミデート結合はそれぞれのストランドの同一の位置にある。
【0147】
DNA/DNA2重鎖の安定化を成し遂げるために、代表的には、オリゴヌクレオチドを形成する2重鎖のそれぞれのDNAストランドにおける2つまたはそれ以上のサブユニット間結合は、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するように改変される。1つの実施態様では、DNAオリゴヌクレオチドを形成するヘアピンの一方のストランドは、約50から100%のN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有するように改変され得る。
【0148】
(D.ホスホルアミデートアナログを用いる3重鎖の形成)
2本鎖DNAと3重鎖を形成するホスホルアミデートアナログの能力もまた、評価した(実施例4)。融解曲線を、デカチミジンホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド6とヘアピンDNA標的のd(A10C4T10)のdA10:dT10の2重鎖領域とにより形成される3重鎖について得た(図3、実験7)。この3重鎖は生理学的条件の近くで32℃のTmを有した。さらに安定な3重鎖(42.2℃のTm)がマグネシウム含有緩衝液中で観測された(図3、実験7)。
【0149】
同じTm値が、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3とポリdA:ポリdT2重鎖とにより形成される3重鎖について得られた。この3重鎖の熱解離を、260nm(図7Aおよび7C)、および284nm(図7Bおよび7D)における吸光度の変化によりモニターした。これはT:AT3重鎖に特徴的である(Rileyら、1966)。
【0150】
未変性条件下でのゲルシフト実験の結果はまた、ホスホルアミデートデカマー3およびdsdna標的による安定な3重鎖の形成(図8)、ならびにオリゴヌクレオチド6による安定な3重鎖形成(図9)示す。
【0151】
同じハイブリダイゼーション条件下で、ホスホジエステルデカチミジン酸のオリゴヌクレオチド1またはオリゴヌクレオチド4のいずれも同じ2本鎖DNA標的との3重鎖を形成しなかった。これは、融解曲線およびゲルシフト実験により判断した(図8)。すなわち、対応する3重鎖はホスホジエステルサブユニット間結合を有するオリゴヌクレオチドにより形成されなかった。このことは、ホスホルアミデートアナログが、相対物を含むそれらのホスホジエステルよりも容易に3重鎖を形成し得ることを示唆する。
【0152】
同様の結果が、オリゴヌクレオチド6およびオリゴヌクレオチド1が、2重鎖DNA標的との3重鎖構造を形成する能力を評価する場合に得られた(実施例5、図9)。
【0153】
上記の結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、標準のホスホジエステルオリゴヌクレオチドよりも、2重鎖基質との3重鎖形成についてより効果的であることを示唆する。
【0154】
(III. 中間ヌクレオシド3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドの適用)
オリゴヌクレオチド3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを合成した。これらの化合物はヌクレアーゼ耐性であり、ssRNAおよびDNA標的と、驚くほどに安定な複合体を形成する。N3’→P5’ホスホルアミデートアナログは、アンチセンスおよび抗遺伝子診断/治療の適用に対して大いなる可能性を有する。本発明の好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0155】
(A.アンチセンス適用)
アンチセンス治療は、細胞内に存在する標的核酸、代表的にはRNA分子に結合する外因性オリゴヌクレオチドの投与を包含する。用語「アンチセンス」は、オリゴヌクレオチドが、代表的には、細胞産生物をコードするmRNA分子(「センス鎖」)に相補的であるのでそう示される。
【0156】
本明細書に記載のホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、遺伝子発現のアンチセンス阻害に有用である(Matsukuraら、1989; Agrawalら、1989;Zamecnikら、1986; RittnerおよびSczakiel,1991; SteinおよびCheng,1993)。N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドは、限定されないが、ガン細胞増殖および感染性ウイルスによる干渉の阻害を包含する、医学上重要な多くの標的に対する治療の適用性を有する。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、家畜およびヒトへの適用の両方に有用である。これらの化合物の低細胞毒性、およびアンチセンス分子としての低濃度での有効な作用能力(下記を参照のこと)は、これらのオリゴヌクレオチドを、治療用アンチセンス薬剤として高度に望ましくする。
【0157】
アンチセンス薬剤は代表的には、それらを不活性化するか、あるいは内因性リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性に対する基質を提供するように、全標的RNA分子に連続的に結合することを必要とする本発明の方法により生成されるRNA/オリゴヌクレオチド複合体のRNaseHに対する感受性は、標準的な方法により評価され得る(Doniaら、1993; Kawasakiら、1993)。
【0158】
本発明の方法は、より多くの従来のアンチセンス薬剤を超える数個の利点を提供する。第一に、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、対応のホスホジエステルオリゴヌクレオチドよりも、RNA標的に強く結合する。第二に、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、細胞ヌクレアーゼによる分解に対してより耐性である。
【0159】
さらに、RNAが、2重鎖標的配列のほとんどのプリン鎖によってコードされるときは、その2重鎖に標的づけられるホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドはまた、DNAを不活性化する可能性、すなわち、1本鎖および2本鎖両形態の病原体を不活性化する能力を有する(下記の抗遺伝子治療の考察を参照のこと)。
【0160】
配列特異的ホスホルアミデートアナログ結合分子は、何らかの点でRNAに関連する本質的ないかなる疾患または症状に対する、潜在的に有力な治療法である。このような配列が、治療適用のために標的づけられ得る実施様式は、下記の(a)から(d)を包含する:
(a)細菌、ウイルス、酵母、およびその他の真菌類のような、感染因子の増殖および/または維持に関連する産生物を発現するRNA配列、例えば、感染因子によってコードされる特異mRNAの標的付け;
(b)RNA切断(例えば、RNA/DNAハイブリッド2重鎖分子のRNase切断)を結果として誘導する2重鎖分子の形成;
(c) RNA配列とのタンパク質の相互作用(例えば、TATとTARとの相互作用、下記を参照のこと)のブロック;および
(d)細胞遺伝子の不適切な発現あるいは増殖を引き起こす配列の標的付け:例えば、細胞サイクル調節;炎症過程;平滑筋細胞(SMC)増殖、移動およびマトリックス形成(Liuら、1989);ある種の遺伝子疾患;およびガン(ガン原遺伝子)に関連する遺伝子。ある実施態様において、不適切に発現された細胞性遺伝子の翻訳またはRNAプロセシングがブロックされる。
【0161】
典型的な潜在標的配列は、以下のものに限定されないが、c−myc、c−myb、c−fos、c−kit、ras、およびBCR/ABLを含むガン原遺伝子(例えば、Wickstrom; Zalewskiら、1993; Calabrettaら、1992,1993;)、ガン遺伝子/腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、p53, Bayeverら)、転写因子(例えば、NFκB、Cogswellら、1993)、およびウイルス遺伝子(例えば、パピローマウイルス、Cowsertら;単純ヘルペスウイルス、Kulkaら)である。さらに説明すると、本発明の方法によって標的され得るHIV−1タンパク質の2つのRNA領域は、REVタンパク質応答エレメント(RRE)およびTATタンパク質トランス活性化応答エレメント(TAR)である。REV活性は、HIVエンベロープ遺伝子中に位置される、REV応答エレメント(RRE; 配列番号23)の存在を必要とする(Malimら、1989a, 1989b)。
【0162】
RREは、4つのステム−ループ構造および1つの分枝ステム−ループ構造を形成すると考えられている、234ヌクレオチド領域にマッピングされる(Malimら、1989a)。フットプリント法から得られるデータ(Hollandら、1990; Kjemsら、1991)は、REVが、RREの1つのステム構造中の6つの塩基対および隣接するステム−ループ構造中の3つのヌクレオチドに結合することを示唆している。ステム−ループII中の約40ヌクレオチドの最小REV結合領域は、Cookらによって同定された(1991; 配列番号24)。この結合領域は、本発明の方法に従い、1つ以上のオリゴヌクレオチドを使用して、RNA/DNA2重鎖(例えば、Liら、1993)を形成するために標的され得る。
【0163】
HIV−1 TATは、ウイルス複製に不可欠であり、そして長い末端繰り返し(LTR)に特異的なウイルスの遺伝子発現の強力なトランス活性化因子である(Daytonら、1986; Fisherら、1986)。TATタンパク質に誘導されるトランス活性化は、ウイルスのmRNAエレメントの非翻訳5’末端に存在する、TARエレメント(配列番号25)の存在を必要とする。
【0164】
TARエレメントは、安定なステム−ループ構造を形成し得る(Muesingら、1987)。TARのステムの完全なステムおよび3ヌクレオチド(nt)のバルジ(bulge)は、TARエレメントへのTATタンパク質の特異的および高親和性の結合に不可欠であることが実証された(Royら、1990;
Cordingleyら、1990;Dingwallら、1989; Weeksら、1990)。この領域は、以下の本発明の方法に従ってアンチセンス治療用に標的され得る。
【0165】
REV、RRE、およびTATタンパク質のRNA結合部位を標的化することに加えて、REVおよびTATタンパク質自身に関するRNAコーディング配列は、タンパク質の発現をブロックするために標的され得る。
【0166】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、限定されないが、RREのステム−ループ構造のような、自己アニールし、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域に対して特有の標的化能力を与える。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、RNA/RNAハイブリッドの1つの鎖に対するN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの高親和性結合によって、RNA/RNAハイブリッドを取り外す(displace)。RNA/RNAハイブリッドへの第1のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合が、RNA/DNA2重鎖(1つの鎖がRNAであり、1つの鎖がN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドである)の形成をもたらし、RNA/RNAハイブリッドの再会合を阻み、そして、タンパク質によるRNA/RNAハイブリッドの結合あるいは認識を阻害し得る。第1のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合はまた、RNaseによるRNAの切断を増大する。RNA/RNAハイブリッドと比較して、RNA/N3’→P5’ホスホルアミデート2重鎖のより高度な安定性は、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNAの再アニーリングの機会を最小限にする。あるいは、RNA/RNAハイブリッドの1つの鎖へのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合は、RNA/RNAハイブリッドを開裂し、それによって、第2のオリゴヌクレオチドが結合するための第2のRNA部位を曝露させる。自己アニールし、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが公知のRNA結合タンパク質を取り外すことを実証することにより、経験的に同定され得る。ステムループ構造のような、RNA/RNAハイブリッドを有するRNA領域はまた、RNA二次構造のコンピュータ補助予測により同定され得る。Sixou, S.ら、Nucleic Acid Res. 22:662−668 (1994)(この方法は本明細書に参考として援用されている)のようなプログラムは、少なくとも3〜7塩基対によって分離されるパリンドローム配列のような、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域を同定するのに、特に有用である。
【0167】
潜在的なアンチセンス標的部位への結合に特異な、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの最初のスクリーニングは、代表的には、得られるRNA/DNA2重鎖の熱安定性を試験することを包含する。選択されたRNA標的配列に結合するホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドが同定されると、このアナログは、インビトロにおけるRNA機能の阻害についてさらに試験される。細胞培養アッセイシステムは、このようなインビトロ分析に使用される(例えば、単純ヘルペスウイルス、Kulkaら;HIV−1, Liら、Vickersら;再狭窄における冠平滑筋細胞増殖、Zalewskiら;IL−2R, Grigorievら;c−myb、Baerら;c−fos, Cutryら;BCR/ABL, Szczylikら、1991)。
【0168】
実施例5は、このような細胞培養系の1つにおける、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの試験の結果を示す。このアッセイは、BCR−ABLアンチセンスオリゴヌクレオチドによる白血病細胞増殖の選択的阻害を測定する(Szczylikら、1991)。BCR−ABL転写物は、慢性骨髄性白血病(CML)患者、およびPh+急性リンパ球性白血病患者の大多数に認められ、白血病の表現型の維持に必要であると考えられる(Galeら;Collinsら、1984; Daleyら)。BCR−ABL転写物は、ガン原遺伝子ABL(第9染色体)のブレークポイントクラスター(breakpoint cluster)領域(BCR)(第22染色体)へのトランスロケーションの結果であり、BCR−ABLハイブリッド遺伝子形成を生じる。
【0169】
同定されたBCR−ABL接合部B2A2(細胞株BV173)に相補的な、完全に改変したN3’→P5’ホスホルアミデートアンチセンスオリゴヌクレオチド11マー(配列番号6)を、合成および精製した。(i)上記の11マー配列を有し、(ii)完全に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有する、対応するオリゴヌクレオチド16マー(配列番号26)もまた調製した。このオリゴヌクレオチドを、図10から15、16、および18に示されている濃度で、3日間(0日、1日、および2日)24時間間隔で細胞に投与した。図中の濃度は、以下のように示されている:40/20/20は、細胞培養物に添加されたオリゴヌクレオチドのμg/ml濃度に対応する(実施例5)。
【0170】
図17および18は、完全に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有し、BV173 BCR/ABLスプライス接合部に対してミスマッチな配列を有する16マーを用いて実施された実験の結果を示す。
【0171】
図10、12、および14に示されている結果は、オリゴヌクレオチドが投与されたときの濃度に関係なく、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、BV173白血病細胞の増殖を阻害することにおいて、非常に有効的であったことを示す。
【0172】
図11、13、および15に示されている結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが無視できるほどの細胞毒性を有することを示す。これらの実験では、細胞株は、BCR/ABLブレークポイントを有さないHL60か、あるいはB3A2 BCR/ABLブレークポイント(部分的にB2A2 BCR/ABLブレークポイントに対して非相同である)を有するK562のいずれかである。
【0173】
一方で、ホスホロチオエート16マーを用いて同様の実験を実施した場合、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドと比較し得る濃度で投与されたときには、このオリゴヌクレオチドは、BV173白血病細胞増殖を阻害することにおいて有効ではなかった(図16および18)。詳細には、白血病細胞は、0.0196/0.0098/0.0098のホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを使用したときに認められる同様の阻害の解放に比較して、約1.25/0.625/0.625の濃度でホスホロチオエート16マーによる阻害から解放され始めるようである。従って、この結果は、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドが、広く使用されているホスホロチオエートオリゴヌクレオチドよりもかなり低濃度で、有効なアンチセンス薬剤であることを示す。
【0174】
さらに、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチド処置で認められる阻害曲線は、阻害の部分的な解放後でさえ、より遅い時点で下向きの変化を有する(図14)。一方では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド処置で認められる阻害曲線は、阻害の部分的な解放後に、より遅い時点で急勾配の上向きの変化を有する(図18)。これらの結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドに比較した場合、阻害からの解放が、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドについてはより劇的であることを示唆する。
【0175】
ホスホロチオエート16マーに関する細胞毒性の非存在性を、同じ濃度で適用されたホルホルアミデートオリゴヌクレオチドに関して認められる細胞毒性と比較した。
【0176】
上記に示されている結果により、上記のハイブリダイゼーション調査によって示されたN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの優れた性質が細胞培養物中で確認される。これらの結果は、インビボでのアンチセンスおよび抗遺伝子治療におけるN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの有用性および有効性を支持する。
【0177】
さらに、この結果は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドより、インビトロで優れたアンチセンス機能を提供することを示す。今日まで、オリゴヌクレオチドにおけるホスホロチオエート骨格の改変が、アンチセンス適用に関して標準的になっており、1993年には約2500のアンチセンス定期刊行物中の95%を超える中に、目的アナログが示されている。
【0178】
多くのmRNA標的を含む多種のアッセイシステムにおいて、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、実質的な阻害効果を達成するために、1−15μM濃度で必要とされた。それにもかかわらず、そのレベルでの阻害活性は、3つの異なるmRNAを標的化する3つの疾患においてUS FAD承認の臨床試験を開始するに十分であった:CML(慢性骨髄性白血病),IND #42974、およびAML(急性骨髄性白血病),IND #40453(Antiviral Agents Bulletin, Vol.5, No.6. pp161−162 (1992), ISSN 0897−9871,
Biotechnology Information Institute);およびB型肝炎ウイルス(HBV)。
【0179】
実施例5に示されているデータは、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、相当するホスホロチオエートより非常に低濃度で有効なアンチセンス薬剤であることを示す。さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、アンチセンス活性に要求される濃度を十分に超える、用いられる最高濃度においてさえ、明らかな細胞毒性を有さない。この結果は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、治療適用に優れた薬剤であることを示す。
【0180】
選択されたホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドのインビトロ効果は、インビボ系で確認され得る。このようなインビボ系は、限定されないが、下記を包含する(標的ーモデルシステム):肝炎ウイルスーチンパンジーまたはサルモデル;c−myb、c−myc、bcr−abl−SCIDマウスモデル(例えば、Ratajczakら);NF−κB−マウス(Higginsら):およびp120−マウス(Perlakeyら)。
【0181】
(B.抗遺伝子適用)
3重鎖形成を介しての遺伝子発現阻害は、以前に示されている(Cooneyら、1989; Orsonら、1991; Postelら、1991)。第3鎖のホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドを用いて形成された3重鎖構造の増大された安定性は、家畜およびヒトの治療適用を含む、抗遺伝子適用のより強力な手段を提供する。
【0182】
最良の標的領域は、3重鎖形成に関する標準的な規則によって、既知配列に基づいて選択される(HeleneおよびToulme, 1990)。代表的には、ホスホルアミデートアナログ核酸配列は、1つの鎖が優先的にプリンを含有し、もう1つの鎖が優先的にピリミジンを含有する2本鎖遺伝子配列に対して標的づけられる。
【0183】
本発明のホスホルアミデートアナログオルゴヌクレオチドを、バンドシフトアッセイを用いて、選択2重鎖標的配列に対しての3重鎖形成について試験する(実施例4)。代表的には、高パーセンテージポリアクリルアミドゲルをバンドシフト分析用に使用し、変性条件レベル(Ausubelら; Sauerら; Sambrookら)を、あらゆる非特異バックグラウンド結合を減じるように調整する。
【0184】
2重鎖標的を(例えば、放射活性ヌクレオチドを使用して)標識し、第3鎖のオリゴヌクレオチドと混合して、標的の2重鎖と3重鎖構造を形成する能力について試験する。標識2重鎖オリゴヌクレオチドの移動度のシフトは、オリゴヌクレオチドが3重鎖構造を形成する能力を示す。
【0185】
3重鎖の形成は、バンドシフトアッセイにおいて標識2重鎖構造と比較して、ゲルでの標識3重鎖構造の移動度が減少することにより示される。
【0186】
長さおよび複雑さの異なるDNA配列の全範囲から選択される標的部位を含む多くの潜在的な標的部位が、この方法により評価され得る。配列特異的ホスホルアミデートアナログ結合分子は、なんらかの点でDNAに関与する本質的に任意の疾患または症状に対する潜在的に強力な治療薬である。このような治療薬のための典型的な標的配列は、(a)細菌、ウイルス、酵母、およびその他の真菌類のような感染性因子の増殖および/または維持に関与する(例えば、感染性因子の代謝を中断させる)DNA配列;および(b)ガン遺伝子のような細胞遺伝子の不適切な発現あるいは増殖を引き起こす配列、例えば、不適切に発現された細胞遺伝子(例えば、特定の遺伝疾患に関連する遺伝子)の転写をブロックまたは減少させる配列を包含する。
【0187】
遺伝子発現または複製は、必要な調節タンパク質(または分子)が結合することが知られている領域(例えば、HIV転写関連因子は、プロモーター開始部位およびSP1結合部位を好む、McShanら)において、3重鎖構造を生成することによりブロックされ得る。あるいは、遺伝子(例えば、ガン遺伝子)のタンパク質コーディング領域内の特異配列も同じように標的され得る。
【0188】
ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、選択された2重鎖標的配列試験体を結合することが、例えば上記のゲルバンドシフト移動度アッセイによって同定される場合、そのアナログはさらに、インビトロにおいて安定な3重鎖構造を形成する能力について試験される。上記の「アンチセンス適用」に記載されているような、細胞培養およびインビボアッセイシステムが使用される。
【0189】
標的部位は、遺伝子の制御領域(例えば、調節タンパク質の転写開始部位または結合領域)において選択され得る(HeleneおよびToulme, 1990; Birgら、1990; Postelら、1991; Cooneyら、1988)。さらに、標的部位は、その標的がmRNA配列(すなわち、転写された配列)中にも存在するように選択され得、その部位に対するオリゴヌクレオチドがアンチセンスメディエーターとしても同様に機能し得る(上記を参照のこと)。
【0190】
さらに、ホスホルアミデート改変DNA分子は、第3鎖標的(すなわち、1本鎖核酸)と3重鎖分子を生成するために使用され得る。例えば、選択標的の第3鎖分子と3重鎖構造を形成し得る2つの領域を有するDNA分子が合成され得る。代表的には、2つの領域は、その2つの領域が第3鎖と会合して3重鎖を形成し得る可動部により連結される。このようなDNA分子の1例は、T10(全てホスホルアミデート改変)−C4(ヒンジ部)−T10(ホスホジエステル結合)である。この分子は、ポリA RNA標的と3重鎖構造を形成する。T10(ホスホジエステル結合)−C4(ヒンジ部)−T10(ホスホジエステル結合)を有する対応のDNA分子は、ポリA RNA標的と3重鎖を形成しない。
【0191】
ヒンジ部は、2つの3重鎖形成領域を一緒に維持し、この領域と第3鎖とを会合させて3重鎖を形成し得る任意の可動性の結合を含有し得る。第3鎖標的は、3重鎖分子を形成し得る適切なプリン/ピリミジン含量を有するように選択される。
【0192】
可動性の結合は、2つの3重鎖形成領域(典型的には、相補的なDNA鎖)を、標的の塩基配列の特性に依存して任意の選択された方向で連結し得る。例えば、2つの3重鎖形成領域の各々は、5’末端および3’末端を有し、これらの末端は、以下の方向で可動性ヒンジ部によって連結され得る:5’から3’、3’から5’、3’から3’、5’から5’。
【0193】
さらに、各鎖に少なくとも1つのホスホルアミデート結合を有する2重鎖DNA分子は、転写因子あるいはDNA結合タンパク質(例えば、c−myb)に対するおとり分子として使用され得る。
【0194】
1本鎖DNAはまた、例えば、ホスホルアミデートサブユニット間結合を含有するヘアピン構造(例えば、図6)を用いて本発明のオリゴヌクレオチドに対する標的核酸として使用され得る。2つのホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、1本鎖DNAの標的特異的結合により選択され得る。2つのホスホルアミデートアナログ鎖と1本鎖DNA標的との結合により、3重鎖の形成がもたらされる。
【0195】
(C.薬学的組成物)
本発明は、アンチセンス治療および抗遺伝子治療に有用な薬学的組成物を包含する。組成物は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの有効量を、薬学的に受容可能なキャリアとともに含有する。1種以上の(異なる塩基配列を有する)N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、任意の所定の処方剤に含有され得る。
【0196】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、治療適用に使用される場合、純粋なままで処方され得るか、または薬学的キャリアが添加されて処方され得る。薬学的キャリアは、固体または液体であり得る。次いで、処方剤は、必要に応じて治療に有効な投与量で被験体に投与される。
【0197】
液体キャリアは、溶液、エマルジョン、懸濁液、および加圧組成物の調製に使用され得る。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、水、有機溶媒、その両方の混合物、あるいは薬学的に受容される油または脂質のような薬学的に受容可能な液体キャリア中に、溶解あるいは懸濁される。液体キャリアは、以下のものを包含するがそれに限定されない他の適切な薬学的添加物を含有し得る:溶解補助剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝液、肥厚(thickeninig)剤、着色剤、粘度調節剤、保存剤、安定剤、および浸透圧調節剤。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド調製物の非経口投与用の液体キャリアの適切な例は、水(部分的に添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含む)、アルコール(1価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)、およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナッツ油およびピーナッツ油)を包含する。
【0198】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの非経口投与用には、キャリアはまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルのような油性エステルであり得る。滅菌キャリアは、非経口投与用の滅菌液体型組成物において有用である。
【0199】
滅菌液体薬学的組成物、溶液、または懸濁液は、例えば、腹腔内注射、皮下注射、静脈あるいは局所投与により利用され得る。例えば、網膜サイトメガロウイルス感染に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、点眼により局所投与され得る。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドはまた、脈管内に、またはミコフェノール酸を充満させた脈管ステントを通して、例えば、損傷直後に局所的な抗再狭窄効果を提供するためのバルーンカテーテル法の間に投与され得る。
【0200】
加圧組成物用の液体キャリアは、ハロゲン化炭化水素またはその他の薬学的に受容可能な高圧ガスであり得る。このような加圧組成物はまた、吸入法による送達用に脂質カプセル化され得る。鼻腔内あるいは気管支内の吸入法またはガス注入法による投与用に、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、水溶液あるいは部分的に水性の溶液に処方され得、次いで、これは、例えば、Pneumocystis carniiのような肺の感染症を処置するためにエアロゾル形態で利用され得る。
【0201】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、活性な化合物を含有する薬学的に受容可能なビヒクルとの処方により、溶液、クリーム、あるいはローションとして局所投与され得る。例えば、性器疣の処置用である。
【0202】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、リポソームキャリア中で投与され得る。細胞への取り込みを促進するためのリポソームの使用は、例えば、米国特許第4,897,355号(1990年1月30日発行、Eppstein,D.ら)および同第4,394,448号(1983年7月19日発行、Szoka,F.ら)に記載されている。多数の刊行物に、リポソームの処方および調製法が記載されている。
【0203】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドでの治療のために必要な投与量は、使用される特定の組成物、投与経路、現れている症状の重篤度、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの形態、および処置される特定の被験体により変化する。
【0204】
一般に、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、いかなる有害あるいは危険な副作用も伴わずに有効な結果をもたらす濃度(例えば、有効な量)で投与される。このような濃度は、単回単位用量での投与、あるいは一日を通して適切な間隔で、都合のよいサブユニットに分割した用量での投与のいずれかにより達成され得る。
【0205】
(D.診断適用)
ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドはまた、所定の標的配列を有するRNAまたはDNAの検出のための診断アッセイに有用である。1つの一般的な適用では、ホスホルアミデートアナログは標識され(例えば、アイソトープ性のまたは他の検出可能なレポーター基)、そして固体支持体(例えば、ナイロンメンブレン)に結合されたDNAあるいはRNAサンプルのためのプローブとして使用される。
【0206】
あるいは、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、固体支持体(例えば、磁気ビーズ)に結合され得、そして固定化ホスホルアミデートアナログへのハイブリダイゼーションに基づいて、サンプルの他の成分からサンプル中の相同RNAまたはDNA分子が分離される。ホスホルアミデートアナログの固体支持体への結合は、従来法により行われ得る。結合RNAまたは結合DNAの存在は、標準的な方法(例えば、第2標識レポーターまたはポリメラーゼ連鎖反応(Mullis; Mullis,ら)の使用)により検出され得る。
【0207】
診断アッセイは、ホスホルアミデートアナログの標的領域へのハイブリダイゼーションを可能にするようにハイブリダイゼーション条件を適切に調整して標準的な手順に従って行われ得る。また、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドが上昇した温度で結合する能力は、ホスホルアミデートアナログプローブと、診断サンプル中に存在する任意の対応する1本鎖ホスホジエステルオリゴヌクレオチドとの間の、標的配列への結合についての競合を最小にする助けとなり得る。
【0208】
(E.その他の適用)
1つの局面では、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、サンプルからのRNAまたはDNAの単離を増強する方法に使用され得る。例えば、上記で論じているように、ホスホルアミデートアナログは、固体支持体に固定され、そして相補的な核酸配列の単離(例えば、ポリA画分からの特定mRNAの精製)に使用され得る(Goldbergら)。ホスホルアミデートアナログは、標準的なホスホジエステルオリゴヌクレオチドとよりもRNAおよび2重鎖DNAと、より安定な相互作用を形成し得るので、このような適用に有利である。
【0209】
レポーター標識ホスホルアミデートアナログについて、特にサンプル中のRNA検出について、分子生物学における多数の適用が見いだされ得る。ホスホルアミデートアナログは、放射活性レポーター(3H、14C、32P、または35Sヌクレオシド)、ビオチン、または蛍光標識で標識され得る(Gryaznovら)。標識ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、例えば、RNAハイブリダイゼーション反応において、効率の良いプローブとして使用され得る(Ausubelら、Sambrookら)。
【0210】
さらに、各鎖が少なくとも1つのホスホルアミデート結合を有する2本鎖DNA分子は、DNA2重鎖結合タンパク質の単離に使用され得る。この実施態様では、ホスホルアミデートサブユニット間結合を含有する2重鎖を、代表的には固体支持体に付着させる。次いで、予測される結合タンパク質を含有するサンプルを、タンパク質のDNA標的への結合を促進する緩衝条件下で、その支持体を通過させる。タンパク質は代表的に、緩衝条件を変えることによりカラムから溶出される。
【0211】
ホスホルアミデート改変結合を有する上記の3重鎖形成DNA分子は、例えば、サンプル中のRNA分子の存在を検出するための診断薬としても同様に使用され得る。
【0212】
さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む複合体は、有用な低分子または有用な結合タンパク質をスクリーニングするために使用され得る:例えば、2重鎖DNAを有するN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド複合体が、3重鎖構造をさらに安定化し得る低分子をスクリーニングするために使用され得る。同様のスクリーニングが、1本鎖DNAとRNA分子により形成されるN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド複合体についても有用である。
【0213】
(F.変形物)
本発明の方法に使用されるホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドの変形物は、細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込みを促進するための改変(例えば、コレステロール部分の付加(Letsinger, 1990));他のサブユニット間結合を用いてのキメラオリゴヌクレオチドの生成(Goodchild);挿入剤による改変(例えば、3重鎖安定化挿入剤、Wilsonら、1993);およびデオキシリボースサブユニットに代えてのリボースの使用;を包含する。
【0214】
さらなる改変は、オリゴヌクレオチドに対する5’および3’末端の改変(例えば、−OH、−OR、−NHR、NH2、およびコレステロール)を包含する。さらに、リボース2’位は、ハロゲン化(例えば、−F)を含むがそれに限定されない多くの改変の部位であり得る。
【0215】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドはまた、特定の細胞に取り込まれるポリペプチドとの結合により改変され得る。このような有用なポリペチドは、ペプチドホルモン、抗原、および抗体を包含する。例えば、ポリペプチドは、腫瘍性細胞により特異的に取り込まれ、その細胞タイプへのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの特異的な送達を生じるように選択され得る。ポリペプチドおよびオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知の方法により結合され得る(例えば、Ramachandr,K.らによる、1989年12月14日に公開されたPCT公開番号第PCT/US89/02363号、第WO8912110号を参照のこと)。
【0216】
このような改変ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドの特性は、本発明の方法に適用される場合、本明細書に記載の方法により決定され得る。
【0217】
本発明の実施の好ましい実施態様、使用、および方法を、詳細に記載してきたが、本明細書に示されているような、種々の他の使用、処方、および実施方法は、本発明の範囲内にあることが認識される。
【0218】
(材料および方法)
メチルホスホルアミデートおよびシアノエチルホスホルアミデートおよびH−リン酸ヌクレオシド試薬を、Glen Research(Sterling,
VA)およびApplied Biosystems Inc.,(Foster City, CA)から購入した。ヌクレオシドメチルホスホノアミダイト試薬をGlen Researchから購入し、そしてDMT−dT−LCAA CPG, 500 Åは、Applied Biosystems Inc.から購入した。
【0219】
オリゴヌクレオチドの酵素による加水分解では、0.2 A260単位の選択オリゴヌクレオチドと、Crotalus durissus(Boehringer−Mannheim, Indianapolis, IN)から入手した0.22 Uのホスホジエステラーゼとを、100μlの10mM Tris・HClおよび10mM MgCl2中でインキュベートした。サンプルを、ホスホジエステラーゼを添加後の0分、10分、40分、4.5時間、および22時間に、分析用に取り出した。生成物は、本質的には実施例2Dに記載のように、RP HPLCにより分析した。
【0220】
核酸の化学合成を含む、標準的な核酸化学は、Miller(1990)により概説されている。
【0221】
化学薬品は、Aldrich(Milwaukee, WI)、Sigma(St. Louis, MO)、およびCalbiochem(San Diego, CA)から購入した。
【0222】
HPLCは代表的に、Dionexクロマトグラフ(Sunnyvale, CA)を使用して実施した。「HYPERSIL ODS」カラム(4.6×200mm、粒子の大きさ 5μ;Hewlett Packard, Palo
Alto, CA)、および0.05M TEAH緩衝液(pH 7.0)中のCH3CNの0.5%/分のグラジエントを、RP HPLCに使用した。イオン交換クロマトグラフィーでは、Dionex「OMNI PAK」NA 100カラム(4×250mm)を、水中の1.5M NaClの1%/分グラジエントで使用した。Pharmacia(Uppsala, Sweden)から入手した「NAP 5」カラムを、オリゴヌクレオチドの脱塩に使用した。キャピラリー電気泳動(CE)分析を、35mM Tris−ホウ酸塩緩衝液(pH 9.0)中で、10% MICROGELTMキャピラリー(0.1×500mm)を用いてABI 270Aシステムで実施した。熱解離実験を、Varian IE分光光度計および温度調節機で行った。260nmまたは284nmでの吸光値を、1.0℃/分の加熱速度で1分間隔で得た。
【実施例】
【0223】
(実施例1)
(オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを含有するオリゴヌクレオチドの合成)
(A.一般的方法)
ホスホルアミデートアナログの合成を、シリンジ中手動で、あるいはABI 384合成機(ABI、Foster City、CA)で自動的に行った。
【0224】
段階的伸長手順を用いる固体支持体上での一定に改変されたオリゴヌクレオチドの合成のスキーム表示を以下に示す:
【0225】
【化22】
【0226】
ここでRは、スクシニルCPG(制御細孔ガラス)であり、Bは塩基であり、nは4〜100であり、そしてCEOはβ−シアノエチル基である。
【0227】
所定のサイクルについての化学工程、試薬、および反応時間は、(i)脱トリチル化、ジクロロメタン中の3%ジクロロ酢酸、1.5分(図1、工程i);(ii)ホスファイト化、ジクロロメタン中の0.2M 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフィンおよび0.2M ジイソプロピルエチルアミン、10分(図1、工程ii);(iii)加水分解、アセトニトリル/水(9/1 v/v)中の0.4M テトラゾール、5分(図1、工程iii);(iv)カップリング、四塩化炭素/アセトニトリル(1/1、v/v)中の0.2M 5’−DMT−3’−アミノヌクレオシドおよび0.2M トリエチルアミン、20分(図1、工程iv)であった。
【0228】
ホスホジエステルサブユニット間結合を有する標準オリゴヌクレオチドを、標準の方法(ABI 384合成器)により合成した。
【0229】
キメラオリゴマーを構築するために、3’−NHP(O)(OCE)O−5’ホスホルアミデートヌクレオシド間結合基を有する5’−DMT−N−保護3’−ホスホルアミデートダイマービルディングブロックを、通常のホスホルアミデート法(本質的にGryaznovらにより前述された通り、本明細書中に参考として援用される)を用いて合成に使用した。
【0230】
本発明の方法により合成される典型的なオリゴヌクレオチドを図3に示す。合成のさらなる詳細を以下に続ける。
【0231】
(B.オリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートの手動合成)
1μmolの5’−DMT−N−保護ヌクレオシドを含む制御細孔ガラス(CPG)ポリマー支持体を、底部にガラスウールのプラグを備えた1mlのHamilton気密シリンジ(Hamilton gas tight syringe)に配置した。
【0232】
所定の合成のサイクルについて、試薬をシリンジに吸い込み、そして以下のプロトコルに従ってシリンジから押し出した:
1.脱トリチル化−−ジクロロメタン中の3%ジクロロ酢酸、5×0.5ml:1.5分。
2.洗浄−−アセトニトリル、6×0.5ml。
3.ホスファイト化−−ジクロロメタン中の0.2M 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフィンおよび0.2M ジイソプロピルエチルアミン、0.5ml、周期的な振とうで10分。
4.加水分解−−アセトニトリル/水(9/1 v/v)中の0.4M テトラゾール、周期的な振とうで5分。
5.洗浄−−無水アセトニトリル、10×0.5ml。
6.カップリング−−四塩化炭素/アセトニトリル(1/1、v/v)中の0.2M 5’−DMT−3’−アミノヌクレオシドおよび0.2M トリエチルアミン、振とうしながら20分。カップリング後、溶液を集めて未反応ヌクレオシドを回収した。
7.洗浄−−アセトニトリル、6×0.5ml。
【0233】
所望のオリゴヌクレオチドを調製するまで、工程1〜7を繰返した。平均カップリング収率は、DMT−カチオンアッセイにより判断して、94%〜96%であった。サイクルの完了の際に、支持体結合オリゴマーを脱トリチル化した。濃水酸化アンモニウムを用いて支持体から切断およびN−脱保護して、粗オリゴヌクレオチドを得、これをイオン交換HPLCにより精製した。
【0234】
(C.交互にN3’→P5’ホスホルアミデートO3’→P5’ホスホジエステル結合を含むオリゴヌクレオチド2の手動合成)
5’−DMT−3’−アミノチミジンおよび5’−DMT−チミジン−3’−ホスホルアミデートサブユニットを用いて、交互にN3’→P5’ホスホルアミデートとO3’→P5’ホスホジエステル結合とを有するオリゴヌクレオチドを合成した。
【0235】
オリゴヌクレオチド2(配列番号2)の合成のために、1マイクロモルのT−CPG(チミジン結合CPG)を1mlのHamilton気密シリンジに入れた。上述の通りに5’−DMT−3’−アミノチミジンサブユニットを添加した。5’−DMT−チミジン−3’−ホスホルアミデートサブユニットの添加を、標準の合成手順(Applied Biosystems、Foster City CA)により行った。
【0236】
9回目のカップリング反応の後、ポリマー支持体を濃水酸化アンモニウムで処理して、粗オリゴマーを遊離させた。オリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCにより精製した(例えば、実施例2)。オリゴヌクレオチド2をCEおよび31P NMRにより分析した(例えば、実施例2)。
【0237】
(D.5’−DMT−N−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成)
以下の工程は、アデノシンサブユニットについて本明細書中に記載される方法に類似した、5’−DMT−N−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成方法を記載する。
【0238】
1.5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを、生成物を以下のように精製した以外は、Nishinoら(1986)の方法(この方法は本明細書中に参考として援用される)に本質的に従って、N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンから調製した:CH2Cl2と水との間に分配し、減圧下でCH2Cl2層を濃縮し、そして生成物をエーテルで結晶化した。濾過により回収した後、生成物を新たなエーテル中で一晩撹拌し、そして濾過により再び集めた。5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンの全収率は、50%〜80%であった。
【0239】
2.5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンを、Herdewijnおよびvan Aerschot(1989)の方法(この方法は本明細書中に参考として援用される)に本質的に従って、5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンから調製した。生成物を、減圧下で粗混合物を乾燥することにより精製し、次いでCH2Cl2に溶解した。3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン生成物が自然に沈澱し、そして濾過により得た。
【0240】
3.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン。乾燥3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン(7.3g)および7.9gの塩化4,4’−ジメトキシトリチルを、150mLの無水ピリジンに溶解した。24時間後、1mLの水を混合物に加えた。次いで、混合物を5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン生成物を含有するフォームまで減圧下で濃縮した。フォームを300mLのCH2Cl2に溶解し、250mLの水で洗浄し、そして減圧下で再び濃縮した。
【0241】
4.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン。粗5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンを、1.2Lの5:4:1 ジオキサン:メタノール:水に溶解し、そして氷浴で冷却した。この混合物に120mLの2N NaOHを加えた。得られた混合物を、0℃で25分間撹拌し、そしてピリジニウムH+型Dowex 50イオン交換樹脂で中性化した。2〜3分後、樹脂を濾過により除去し、そして生成物を減圧下でスラリーまで濃縮した。スラリー中の白色沈殿物(5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン)を濾過により除去し、水で洗浄し、空気乾燥し、そして減圧下、P2O5で乾燥した。
【0242】
5.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−アミノ−N−イソブチリル−2’,3’−ジデオキシグアノシン。粗5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンに、7.9gのトリフェニルホスフィンおよび4.8gのLiN3を加えた。混合物を、減圧下、P2O5で3時間さらに乾燥した。これらの乾燥化合物を、450mLの無水ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液に、5.3mLのジエチルアゾジカルボキシレートを加えた。混合物を一晩撹拌し、1mLの水を加え、そして溶媒を減圧下で除去した。
【0243】
1リットルのCH2Cl2を乾燥した混合物に加え、そして得られた混合物を毎回1Lの水で2回洗浄した。CH2Cl2層を減圧下で淡褐色オイルまで濃縮し、次いでこのオイルを600mLのピリジン中の10%トリエチルアミンに溶解した。この混合物を氷浴で冷却し、そしてH2Sを通気により加えた。30分後、氷浴を除去し、そしてH2S流動をさらに3時間続けた。溶液を減圧下で淡褐色オイルまで濃縮した。
【0244】
CH2Cl2中の0.5%ピリジンで前処理したシリカゲルカラムでオイルをフラッシュクロマトグラフィーにかけ、次いでCH2Cl2中の0%〜5%メタノールの勾配で溶出して、3.5gの5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3−アミノ−N−イソブチリル−2’,3’−ジデオキシグアノシン(図1C)を得た。
【0245】
(E.5’−DMT−N−ベンゾイル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシアデノシンの合成)
3’−アミノ−N6−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシンの合成の工程を以下に示す:
【0246】
【化23】
【0247】
1.N6 5’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシンの調製。塩化ベンゾイル(2.45mL、21mmol)のピリジン(150mL)溶液を、室温で約1時間かけてN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン(化合物1、図20)(5g、14mmmol)のピリジン(45mL)溶液に滴下した。反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した。反応混合物をメタノール(5mL)でクエンチし、そしてエバポレートして乾固させた。
【0248】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびH2Oで洗浄した。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させた。この残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、200g)にかけて5%CH3OH/CH2Cl2で溶出し、そして溶媒をエバポレートして除去し、6g(93%)の所望のN65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシン生成物(化合物2、図20)を得た。
【0249】
2.N6−ベンゾイル−9−(3’−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニンの調製。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.2mL、25mmol)を、0℃でN65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシン(7.5g、16.3mmol)の10%ピリジン/CH2Cl2(150ML)懸濁液に加えた。反応物を0℃で30分撹拌し、続いてH2O(26mL)を加えた。次いで、反応混合物を室温で一晩撹拌し、そしてエバポレートして乾固させた。
【0250】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO2水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機層をエバポレートして乾固させ、N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニン生成物(化合物3、図20)を含有する褐色オイルを得、これをさらなる精製なしに使用した。
【0251】
3.N6−ベンゾイル−9−(3’−O−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニンの調製。N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニンを、ピリジン(60mL)に溶解した。次いで、塩化ジメトキシトリチルを室温で一晩撹拌した。反応物をCH3OHでクエンチした。混合物をエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートした。残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、400g)にかけて4%CH3OH/CH2Cl2で溶出した。N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−5−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン生成物(化合物4、図20)を含有する所望の画分を集め、そしてエバポレートして乾固させた。生成物の収量は7g(N65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシンから56%)であった。
【0252】
4.N6−ベンゾイル−9−(5’−O−ジメトキシトリチル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニンの調製。NaOH水溶液(2M、40mL)を、0℃で、N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−5−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン(7g、9.2mmol)のp−ジオキサン(200mL)、CH3OH(160ML)およびH2O(40mL)の混合物溶液に加えた。反応混合物を0℃で25分間撹拌した。反応をDowex 50×2−100イオン交換樹脂(ピリジニウム型)を加えることにより停止して、溶液をpH7まで中性化した。固形物を濾過により除去し、そして溶媒をエバポレートして乾固させた。
【0253】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させ、N6−ベンゾイル−9−(5−O−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン生成物(化合物5、図20)を含有する淡黄色の固体を得た。この生成物をさらに精製せずに使用した。前工程からの生成物の収量は6g(99%)であった。
【0254】
5.3’−アミノ−N6−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシンの調製。ジエチルアゾジカルボキシレート(1.42mL、9mmol)を、N6−ベンゾイル−9−(5−O−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン(2g、3mmol)のDMF(40mL)懸濁液(この懸濁液はトリフェニルホスフィン(2.4g、9mmol)およびLiN3(4.1g、83.8mmol)をさらに含有する)に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、そしてエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして褐色オイルを得た。褐色オイルをCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、100g)にかけて3%CH3OH/CH2Cl2で溶出して、化合物6(図20)を淡褐色オイルとして得た。
【0255】
このオイルを15%トリエチルアミン/ピリジン(36mL)に溶解した。次いで、硫化水素を0℃で30分間溶液に通気した。溶液を室温で30分以上撹拌した。溶媒をエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO2水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、100g)にかけて5%CH3OH/CH2Cl2で溶出して、最終生成物3’−アミノ−N6−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシン(化合物7、図20;図1e)を得た。前工程からの生成物の収量は1.6g(80%)であった。あるいは、還元はPt/炭素触媒上でH2を用いて達成され得る。
【0256】
(F.他のDMT−サブユニットの合成)
Glinskiら(1970)に従って、5’−DMT−3’アミノチミジンおよび5’−DMT−N−ベンゾイル−3’−アミノシチジンの合成を行った。
【0257】
(実施例2)
(N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドの
キャラクタリゼーション)
実施例1に記載したように合成したオリゴヌクレオチドを、以下の方法により評価した。
【0258】
(A.イオン交換クロマトグラフィーによる精製)
オリゴヌクレオチドを、イオン交換(IE)HPLCにより過剰の反応成分から精製した。IE HPLC分析をDionex(Sunnyvale、CA)クロマトグラフで行った。Dionex「OMNIPAC NA100」、4×250mmカラムを、0.03M TEAA緩衝液(pH7.0)中の1.0M
NaClの1%/分または2%/分の勾配;流速、1.0ml/分で使用した。
【0259】
図4Aは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3(図3)の合成後の反応混合物の代表的なHPLCクロマトグラムを示す。図の最大ピークはオリゴヌクレオチド3生成物に対応する。IE HPLCカラムでの3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートの保持時間は、対応するホスホジエステル化合物の保持時間より1.0〜1.5分短かった。次いで、生成物をエタノールを用いた沈澱により濃縮し、そして水に再懸濁した。
【0260】
(B.オリゴヌクレオチドの純度)
合成したオリゴヌクレオチドの純度を、代表的にはキャピラリーゲル電気泳動により評価した。キャピラリー電気泳動を、Applied Biosystems Incorporated Model 270A機を用い、「MICKROGEL」キャピラリーチューブで、本質的に製造者の指示に従って行った。
【0261】
図4Bは、ウンデカホスホルアミデート6(図3)の合成後の反応混合物の典型的なキャピラリーゲル電気泳動プロフィルを示す。
【0262】
あるいは、単離したオリゴヌクレオチドの純度を、高いパーセントのポリアクリルアミドゲル(例えば、20%アクリルアミド、5%ビス−アクリルアミド)中のサンプルの電気泳動分離により評価する(Ausubelら;Maniatisら)。オリゴヌクレオチドを臭化エチジウムで染色し、そしてUV光に曝すことにより可視化した。3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートの電気泳動分離の際のポリアクリルアミドゲルにおける相対的移動度は、対応するホスホジエステル化合物に対する移動度よりも10〜15%低かった。
【0263】
(C.核磁気共鳴分析)
NMRスペクトルを、外部標準としてD2O中の85%リン酸を用いる31Pスペクトルについて162MHzで、そして外部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いる1Hスペクトルについて400MHzでVarian XL−400(Varian Associates、Palo Alto、CA)分光器で記録した。
【0264】
典型的な結果を図4Cに示す。図4Cは精製されたデカホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3(図3)の31P−NMRスペクトルを示す。スペクトルはホスホルアミデート基に特徴的なδ7.12ppmのピークを示す。
【0265】
(D.加水分解生成物の逆相高性能液体クロマトグラフィー分析)
精製したホスホルアミデート10マーオリゴヌクレオチド3(図3)を、25℃で48時間80%酢酸で処理することにより加水分解した。加水分解生成物を逆相(RP)HPLCにより評価した。RP HPLC分析をHewlett Packard(Palo Alto、CA)製の「HYPERSIL ODS」5μ、4.6×200mmカラムのDionexクロマトグラフで、0.03M TEAA緩衝液(pH7.0)中のアセトニトリルの1%/分の勾配;流速、1ml/分を用いて行った。加水分解生成物は、3’アミノ−5’−チミジル酸、5’−チミジル酸、および3’−アミノチミジンとして同定された。さらに、加水分解生成物(合計ピーク)の約7%は少量の副生成物であった。これらの結果により、オリゴヌクレオチド中のN3’→P5’ホスホルアミデート結合の存在が確認される。
【0266】
(実施例3)
(熱解離)
(A.2重鎖溶融)
熱解離曲線を、温度制御器(Varian)を備えたCarry 1E分光光度計(Varian、Palo Alto、CA)を用いて得た。反応溶液は、pH7.05の15mMリン酸緩衝液中に等濃度のオリゴマーおよび補体(オリゴマー鎖中に約6μM)を含んでおり、そして全Na+濃度が100mMになるようにNaClが加えられた。
【0267】
オリゴ(dT)、ポリ(dA)およびポリ(A)について用いられたモル吸光係数は、それぞれ8.2A260×103、8.4A260×103、および10.2A260×103であった。109A260ユニット/μMの吸光係数は、混合ベースオリゴマーについて用いられた。吸光係数は、P.N.Borer(1975)により編集された表から計算した。
【0268】
反応溶液を0℃で平衡化し、そしてその後260nmでの吸光度を、温度が5分当たり3℃の増加量で増加するようにして調べた。所定の温度での結合状態(α)におけるオリゴマーの画分を、Abergoら(1981)により記載されるように、上部基準線および下部基準線(upper and lower base lines)の使用により決定した。Tm値を、α=0.5での温度として定義した。Ink(Markyら、1987)対1/Tのプロットは、これらの化合物に関して直線であった。
【0269】
熱変性研究の結果もまた、260nmでの標準化吸光度 対 温度(℃)としてプロットした。図5Aおよび5Bは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成した2重鎖に関する典型的な溶融曲線を示す。図において:(A)、(C)および(B)、(D)は、それぞれ、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド4)を用いる図3、実験8、9;およびホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6)を用いる図3、実験13、14に対応する。
【0270】
熱安定性データを図3{Tm(℃)}に要約する。表において、Tmは溶融曲線の中点での温度であり;npは3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合についての略語である。
【0271】
オリゴヌクレオチドの濃度は、代表的には5μMオリゴマー鎖であった。緩衝液A(10mM Tris HCl、150mM NaCl、pH7.02)を、2重鎖熱安定性研究に使用した。
【0272】
(B.オリゴヌクレオチドヘアピン)
相補的な鎖の両方にホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドにより形成された2重鎖の安定性を、本質的に上述のように評価した。図6に示すキメラホスホルアミデート−ホスホジエステルヘアピンオリゴマーを合成した。
【0273】
図6の全ての分子を、2’−デオキシリボヌクレオチドを用いて構築した。
【0274】
熱解離実験を、本質的に上述のように行ったが、以下の反応条件であった:オリゴヌクレオチド濃度2.5μMで10mM Tris HCl緩衝液、pH7.02。
【0275】
これらの実験から得られたTm値を図6に要約する。
【0276】
(C.3重鎖溶融)
3重鎖熱安定性を、本質的には2重鎖について上述したように評価した。緩衝液条件は、上記(緩衝液A)または第2の緩衝液である緩衝液B(10mM Tris HCl、150mM NaCl、10mM MgCl2、pH7.02)のいずれかを用いた。
【0277】
図7A〜7Dは、典型的な3重鎖溶融曲線を示す。図7Aおよび7Cは、温度に対してプロットした260nmでの標準化した吸光度を示す。図7Bおよび7Dは、温度に対してプロットした284nmでの標準化した吸光度を示す。図において:2重鎖DNAとホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3とにより形成した3重鎖は黒丸線に対応し;ホスホジエステルオリゴヌクレオチド1を用いて形成した3重鎖は開いた白四角線に対応する。
【0278】
データは図3、実験7に対応し、ここで曲線(A)および(C)は、260nmでモニターした濃色性を用いて、それぞれ緩衝液AおよびBを用いて行った熱安定性研究であった。曲線(B)および(D)は、それぞれ、濃色性を284nmでモニターした(A)および(C)である。
【0279】
図7A〜7Dに示すデータは、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド1が、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3が形成するのと同様の2重鎖DNA標的を有する3重鎖を形成しないことを示す。
【0280】
(実施例4)
(ゲルバンド移動度シフトアッセイ)
3重鎖構造を、ゲルバンド移動度シフトアッセイを用いてさらに評価した。
【0281】
(A.ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3)
ゲルバンド移動度シフトアッセイ条件は、以下の通りであった:10mM MgCl2、80mM Tris−ホウ酸緩衝液(pH8.2)中の20%アクリルアミド、5%ビスアクリルアミド、10℃。ゲルを、代表的にはネイティブ(非変性)条件下で移動させた。このようなゲルバンド移動度シフトアッセイの典型的な結果を、図8に示す。図において、レーンは以下の通りである:1−10マーホスホジエステルオリゴヌクレオチド1;2−10マーホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3;3−24マーヘアピン標的d(A10C4T10)(図3、実験7)。レーン3において、遅く移動する薄いバンドは、d(A10C4T10)の2分子2重鎖に対応すると思われる;4−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド1;5−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド3。
【0282】
ゲルを、STAINS−ALLTM(Kodak、Rochester NY)で染色し、そしてMolecular Dynamics(Sunnyvale、CA)デンシトメーターで映像化した。ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3染色の効率は、ホスホジエステル化合物(オリゴヌクレオチド1および2重鎖)とは異なる。
【0283】
図において、3重鎖構造の移動度を矢印で示す。図に示した結果から分かり得るように、ゲルバンド移動度シフトアッセイの結果は、熱変性研究から得られた結果を確認する。すなわち、オリゴヌクレオチド1は、オリゴヌクレオチド3と同様の標的を有する3重鎖を形成しない。
【0284】
(B.ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6)
2本鎖DNA標的を有するホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6アナログの3重鎖形成もまた、ゲルバンド移動度シフトアッセイにより確認した。
【0285】
ゲルバンド移動性シフトアッセイの条件は、本質的に上述の通りであった。分析の結果を図9に示す。図において、レーンは以下の通りであった:1−11マーのホスホジエステルオリゴヌクレオチド4;2−11マーのホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6;3−26マーのヘアピン標的(配列番号22);4−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド4;5−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド6。
【0286】
図において、3重鎖構造の移動度を矢印で示す。上記で分かるように、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド4は、オリゴヌクレオチド6と同様の標的を有する3重鎖を形成しない。
【0287】
(実施例5)
(ホスホルアミデートアナログのインビトロでの評価)
N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成した。これは白血病細胞株BV173におけるBCR/ABL融合接合部(B2A2)に相補的であった。以下のアッセイは、白血病細胞増殖を測定し、そして本質的にAnfossiら(1989)により記載された通りに行う。
【0288】
簡潔には、図10は、B2A2型ブレークポイントを有するBV173細胞の白血病細胞増殖に対するBCR−ABLオリゴマーの効果を示す。BV173は、B2A2 BCR/ABL融合接合部を有する白血病細胞株である(Pegoraroら、1983)。HL60は、正常なc−abl座を有する前骨髄細胞白血病細胞株である(Collinsら、1977)。K562は、B3A2 BCR/ABL融合接合部を有する白血病細胞株である(Seeligら、1993)。
【0289】
細胞(5×104個)を0.2mlの液体懸濁液培地(2%ヒトAB血清を有するIscove改変Dullbecco改変培地−−Life Technologies、Gaitherburg、MD)に置いた。
【0290】
オリゴヌクレオチドを24時間間隔で3日間(0日、1日および2日目)培地に与え、図10〜19の凡例(全てμg/mlの濃度である)に示す増加濃度、例えば、図10−−40/20/20;20/10/10;10/5/5;および5/2.5/2.5を達成した。例えば、40/20/20は、最後のオリゴヌクレオチド添加後の細胞培養培地における最終全濃度が80μg/mlであることを反映することに注意されたい。細胞数計測を標準の方法により行った。
【0291】
図10は、図の凡例に示す濃度で、十分に改変したN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6(配列番号6)を用いたアッセイの結果を示す。標的細胞はBV173であった。結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、白血病細胞の増殖の阻害に(使用した最低濃度でも)極めて有効であることを示す。
【0292】
図11は、HL60細胞、非BRC−ABL発現細胞株とオリゴヌクレオチド6との処理の結果を示す。結果は、全ての濃度のオリゴヌクレオチドに対して細胞は十分に耐性があったことを示す。明らかな細胞障害性はなかった。
【0293】
図12および13は、それぞれ図10および11に示した結果と同様の実験の結果を示す。最低濃度(0.3125/0.15625/0.15625)でも、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6は、白血病細胞増殖の阻害(図12)に極めて有効であったが、無視し得る程度の毒性しか保持していなかった(図13)。
【0294】
図14および15は、それぞれ図10および11に示した結果と同様の実験の結果を示す。しかし、図15に示したデータに対応する実験において、標的細胞は、B3A2 BCR/ABL融合接合部を含むK562であった。図14に示した実験からのデータに、培地中のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6の効果に対する移行濃度を示す。特に、0.0198/0.0098/0.0098の濃度で、増殖の阻害がいくぶん解除されることがオリゴヌクレオチド6により見られ得る。
【0295】
さらに、図15に示すデータは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6が、B3A2融合接合部を有するK562細胞の増殖に対して本質的に影響しなかったことを示す。これらの結果は、抗増殖効果が、特にB2A2 BCR/ABL融合接合部に関連することを示し、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6は、この融合接合部に相補的である。
【0296】
対照的に、図16〜19は、十分に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有する16マー(配列番号26)についての同様のデータを示す。図16は、図の凡例に示す濃度で、十分に改変したホスホロチオエート16マー(配列番号26)を用いたアッセイの結果を示す。ここで標的細胞株はBV173であった。結果はオリゴヌクレオチド6で見られた結果(図10)と同様であるが、データは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが白血病細胞の増殖の阻害にオリゴヌクレオチド6ほど効果的ではないことを示す。
【0297】
図17は、B3A2 BCR/ABL融合接合部に相補的な配列を有する16マーのホスホロチオエート(配列番号27)を有するBV173 BRC/ABL細胞株の処理の結果を示す:B3A2は、B2A2 BCR/ABL融合接合部にミスマッチな2つの塩基対配列を有する。結果は、全ての濃度のオリゴヌクレオチドに対して細胞は耐性があったことを示す。
【0298】
図18および19は、それぞれ図16および17に示した結果と同様の実験の結果を示す。これらの実験からのデータにおいて、細胞増殖の阻害の解除が、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6に対して見られた濃度よりも、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに対してより低い濃度で見られる。
【0299】
これらの結果は、インビトロでのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、低濃度で有効なアンチセンス化合物であることを示す。さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドよりも良好なアンチセンス剤である。
【0300】
(実施例6)
(c−mycを用いるアンチセンス阻害)
ヒトc−myc mRNAに相補的なN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを、c−myc遺伝子発現を阻害するためにも使用し、そしてN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの効果をホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較した。HL60細胞を以下のc−mycオリゴヌクレオチドの1つとインキュベートした:
配列番号28 TTTCATTGTT TTCCA (アンチセンス)
配列番号29 TTTCTATTGT TTCCA (ネガティブコントロール;ミスマッチ)
配列番号30 AACGTTGAGG GGCAT (アンチセンス;第2エクソン)
配列番号31 AACGAGTTGG GGCAT (ネガティブコントロール;ミスマッチ)
配列番号32 UUUCAUUGUU UUCCA (アンチセンス;TをUで置換した)
c−mycオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチド間結合は、他に示さない限り、N3’→P5’ホスホルアミデート結合であった。各タイプのc−mycオリゴヌクレオチドを、指示した濃度で72時間、培地中でHL−60細胞を用いて個別にインキュベートした後、細胞を、当該分野で公知の顕微鏡技術により増殖についてか、またはHoltら、Mol. and Gen Bio. 8:963−973(1988)に記載されているウエスタンブロットによりc−myc発現についていずれかをアッセイした。これらの方法は、本明細書中に参考として援用される。結果を表3に示す:
(表3)
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを用いる、HL60細胞におけるc−myc発現の、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較して改善された阻害
【0301】
【表2】
【0302】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド配列番号29はまた、0.1μM、0.5μM、および1μMで、累進的にH60細胞増殖のより大きな阻害(ここで増殖は各濃度で、0日、3日および6日目に測定された)を、0.1μM、0.5μM、および1μMでのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド31(ネガティブコントロール;ミスマッチ)と比較して示した。このネガティブコントロールはDNAを有さないコントロールに匹敵する増殖レベルを示した。0日目で、各培地は約10,000個の細胞を有した。6日目までに、両方のコントロール培地は、培地当たり約50,000個の細胞を有し、そしてN3’→P5’ホスホルアミデート1μM培地は、培地当たり約25,000個の細胞を有した。
【0303】
この結果は、用量および配列に依存する方法における細胞増殖を阻害するc−myc N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの能力、およびc−myc発現の阻害においてホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較してN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドがより大きな効果を有することを示す。このデータは、ウエスタンブロットにより示されるc−myc阻害と相関する。
【0304】
本発明を特定の方法および実施態様に関して記述してきたが、本発明から逸脱することなく種々の改変および変化がなされ得ることが理解される。
【0305】
改変されたオリゴヌクレオチド、3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを固体支持体上で合成した。該ホスホルアミデートアナログは、ホスホジエステラーゼ消化に対する著しく高められた抵抗性を有することを見出した。熱解離の実験により、これらの化合物は相補的DNAおよび特定のRNAストランドを有するホスホジエステルよりさらに安定な2重鎖を形成することが示された。さらに、ホスホルアミデートアナログはまた、2本鎖DNA標的を伴う安定な3重鎖を形成し得るが、類似の条件下で元のホスホジエステル化合物は3重鎖を形成し得なかった。
【0306】
[配列表]
【化24】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【図面の簡単な説明】
【0321】
【図1A】図1Aは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1B】図1Bは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1C】図1Cは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1D】図1Dは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1E】図1Eは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図2A】図2A、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2B】図2Bは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2C】図2Cは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2D】図2Dは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2E】図2Eは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2F】図2Fは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図3】図3は、オリゴヌクレオチドの例および2重鎖および3重鎖のTm値を示す。図において、a=緩衝液A中の複合体のTm値。b=緩衝液中のTm値;ヘアピン2重鎖のTm値は緩衝液AおよびBで、それぞれ55.7℃および61.5℃であった。c=ミスマッチのヌクレオチドには下線で付す。
【図4A】図4Aは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3の合成後の反応混合物のIE HPLCプロファイルを示す。
【図4B】図4Bは、ウンデカホスホルアミデート6の合成後の反応混合物のキャピラリーゲル電気泳動のプロファイルを示す。
【図4C】図4Cは、デカホスホルアミデート3の31P−NMRの結果を示す。
【図5A】図5Aは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線を示す。
【図5B】図5Bは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線を示す。
【図6】図6は、オリゴヌクレオチドのヘアピンの例およびそれらのTm値を示す。
【図7A】図7Aは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7B】図7Bは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7C】図7Cは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7D】図7Dは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図8】図8は、オリゴヌクレオチド3重鎖形成物の未変性条件下におけるゲル電気泳動分析を示す。
【図9】図9は、オリゴヌクレオチド3重鎖形成物の未変性条件下におけるゲル電気泳動分析を示す。
【図10】図10は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図11】図11は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図12】図12は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図13】図13は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図14】図14は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図15】図15は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図16】図16は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図17】図17は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図18】図18は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図19】図19は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図20】図20は、3’−アミノ−N6−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシアデノシンの調製を概略的に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは強力な診断化合物および新規の合理的に設計された治療剤として提唱されてきた(Uhlman、1990;Helenら、1990;Helen、1991)。これらの化合物の作用機構は、目的のRNAまたはDNA領域との特異的な相互作用に基づく。
【0003】
天然のホスホジエステルのヌクレオシド間結合の種々の改変物{ホスホモノ−(Ecksteinら、1985;Cohen、1993)またはジチオエート(Marshallら、1993)メチルホスホネート(Miller、1991)、ホスホジエステルアミデート(Letsingerら、1988;Froeflerら、1988)}が導入され、(i)生物学的媒体におけるオリゴマーの安定性および(ii)オリゴマーのハイブリダイゼーション特性を改良している。
【0004】
しかし、これらのアナログの大多数は、2重鎖または3重鎖の形成を介する標的RNAまたはDNA鎖との結合を減少することが示されている(Kibler−Herzogら、1991)。さらに、これらのアナログのいくつかのリンにおける立体異性体の存在により、相補的な核酸との結合パターンが複雑になる可能性がある(LaPlaucheら、1986;Bowerら、1987;Tiddら、1988)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法を提供することである。詳細には、ホスホジエステラーゼ消化に対する著しく高められた抵抗性を有する改変されたオリゴヌクレオチド、3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを固体支持体上で合成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の式を含むヌクレオシドサブユニット:
【0007】
【化2】
【0008】
であって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてBzはベンゾイル基である、ヌクレオシドサブユニットである。
【0009】
本発明はまた、以下の式を含むヌクレオシドサブユニット:
【0010】
【化3】
【0011】
であって、ここで、DMTはジメトキシトリチル基であり、そしてIBUはイソブチリル基である、ヌクレオシドサブユニット。
【0012】
本発明はまた、5’−DMT−N6−ベンゾイル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシアデノシンまたは5’−DMT−N2−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成方法であって、以下の工程を包含する方法:
Xの5’ベンゾイル化、
3’ヒドロキシ基の反転、
トリチル化、
3’の脱ベンゾイル化、
3’トレオアジド基の3’エリトロアジド基への転換、および
3’エリトロアジド基の還元、
ここで、Xは5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンまたはN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシンである、方法である。
【0013】
本発明はまた、以下の式のサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを包含する、オリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0014】
【化4】
【0015】
であって、
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、Rには10個より多い炭素の炭素鎖は含まれず、サブユニット間結合は少なくとも6から100塩基の長さのオリゴヌクレオチド内に散在し、nは4から100であり、そしてBは塩基である、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0016】
好適な実施形態においては、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドが、N3’→P5’ホスホルアミデート結合によって連結している少なくとも3個の連続するサブユニットを有する。
【0017】
さらに好適な実施形態においては、5’および3’末端にOH基を有し、そして上記連続する結合が3’末端のヌクレオシドサブユニットで始まる。
【0018】
好適な実施形態においては、サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0019】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2の結合とを交互に連結する。
【0020】
さらに好適な実施形態においては、サブユニット間結合の少なくとも50%がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0021】
さらに好適な実施形態においては、上記第2の結合がホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’およびホスホロチオエートからなる群から選択される。
【0022】
さらに好適な実施形態においては、上記第2の結合がホスホジエステル結合である。
【0023】
本発明はまた、2重鎖の核酸分子の生成方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0024】
【化5】
【0025】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、オリゴデオキシリボヌクレチドは標的核酸分子との2重鎖の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的核酸分子との間の2重鎖の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的核酸分子とを接触させる工程を包含する、方法である。
【0026】
本発明はまた、タンパク質とポリヌクレオチドとの相互作用を阻止する方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、以下に示される、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0027】
【化6】
【0028】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、オリゴデオキシリボヌクレオチドはポリヌクレオチドとの複合体の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドとポリヌクレオチドとの間の複合体の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとポリヌクレオチドを接触させる工程を包含する、方法である。
【0029】
本発明はまた、3重鎖分子の生成方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、以下に示される、少なくとも2個の連続するサブユニットがAN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0030】
【化7】
【0031】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなるより選択され、オリゴデオキシリボヌクレチドは標的2重鎖DNAとの3重らせん構造の形成に効果的なヌクレオシドサブユニットの配列を有する工程、およびオリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖の標的DNAとの間の3重鎖の形成が可能な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖DNAとを接触させる工程を包含する、方法である。
【0032】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合の50%またはそれよりも多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0033】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2のサブユニット間結合とを交互に連結する。
【0034】
好適な実施形態においては、上記残存サブユニット間結合が、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’、およびホスホロチオエートからなる群より選択される。
【0035】
好適な実施形態においては、上記サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0036】
好適な実施形態においては、上記接触が細胞内で行われる。
【0037】
本発明はまた、3本の核酸ストランドを有する3重鎖分子であって:
2本の相補的ストランドを有する2重鎖DNA分子、および2重鎖と結合するサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有する第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であるオリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0038】
【化8】
【0039】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される、3重鎖分子である。
【0040】
好適な実施形態において、上記第3のストランドのサブユニット間結合の50%またはそれよりも多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0041】
好適な実施形態において、上記第3のストランドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0042】
本発明はまた、オリゴデオキシリボヌクレオチドのヌクレアーゼ切断に対する抵抗性を増強する方法であって、
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0043】
【化9】
【0044】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される工程、および
オリゴデオキシリボヌクレオチドをヌクレアーゼに曝露される工程であって、
ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドが、ホスホジエステルサブユニット間結合のみを有する対応するオリゴデオキシリボヌクレオチドより、ヌクレアーゼ切断に対して抵抗性である工程を包含する、方法である。
【0045】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合の50%またはそれより多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0046】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0047】
好適な実施形態において、上記曝露が細胞内で行われる。
【0048】
本発明はまた、以下を含む、サンプルから標的核酸を単離するためのキットであって:
(i)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドであって、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である、オリゴデオキシリボヌクレオチド:
【0049】
【化10】
【0050】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、
(ii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが標的核酸配列に対してハイブリダイズするに効果的であり、そして
(iii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが固体支持体に接着される、
キットである。
【0051】
本発明はまた、サンプル中の標的配列を有する核酸の検出方法であって:
サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0052】
【化11】
【0053】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが標的配列とのハイブリッド複合体の形成に効果的である、工程、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体を形成し得るに効果的な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとサンプルとを接触させる工程、および
ハイブリッド複合体の存在を検出する工程を包含する、方法である。
【0054】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドがリポーター部分を有し、そして上記検出がリポーター部分の検出を包含する。
【0055】
好適な実施形態において、上記リポーター部分が、放射性標識、ビオチン標識、および蛍光標識からなる群より選択される。
【0056】
好適な実施形態において、上記接触が細胞内で行われる。
【0057】
好適な実施形態において、上記核酸が1本鎖である。
【0058】
本発明はまた、サンプル中の標的配列を有する2重鎖DNAの検出方法であって:
連続するヌクレオシドサブユニットおよびサブユニット間結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを形成する工程であって、ここで、
(i)少なくとも3個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または、全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり、
【0059】
【化12】
【0060】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが標的配列とのハイブリッド複合体の形成に効果的である、工程、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体を形成し得るに効果的な条件下でオリゴデオキシリボヌクレオチドとサンプルとを接触させる工程、および
ハイブリッド複合体の存在を検出する工程を包含する、方法である。
【0061】
好適な実施形態において、上記オリゴデオキシリボヌクレオチドがリポーター部分を保有し、そして上記検出がリポーター部分の検出を包含する。
【0062】
好適な実施形態において、上記ハイブリッド複合体がゲルバンドシフトにより同定される。
【0063】
好適な実施形態において、上記接触が細胞内で行われる。
【0064】
本発明はまた、2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであって、2本の相補的なストランドを有し、そして(ii)少なくとも1本のストランドがサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有し、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットはN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結するか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0065】
【化13】
【0066】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される、2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0067】
好適な実施形態において、少なくとも1本のストランドの上記サブユニット間結合の50%またはそれより多くがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0068】
好適な実施形態において、少なくとも1本のストランドの上記サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0069】
好適な実施形態において、上記相補的なストランドがフレキシブルなヒンジ領域によって連結される。
【0070】
本発明はまた、それぞれの相補的なストランドが5’および3’末端を有し、そして上記フレキシブルなヒンジ領域が相補的なストランド末端と、5’から3’、3’から5’、3’から3’、および5’から5’からなる群より選択される方向のうち1つで連結する、2重鎖分子である。
【0071】
本発明はまた、薬学的組成物であって、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、(i)少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0072】
【化14】
【0073】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そして(ii)オリゴデオキシリボヌクレオチドが、標的2重鎖DNAを伴う3重鎖および薬学的に受容可能なキャリアの形成に有効なヌクレオシドサブユニットの配列を有する、薬学的組成物である。
【0074】
本発明はまた、薬学的組成物であって、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドが、RNAと2重鎖を形成し得、ここで、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くが以下のようなN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり:
【0075】
【化15】
【0076】
ここで、Xは−O−、−ORまたは−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、そしてオリゴデオキシリボヌクレオチドが、RNA標的を伴う2重鎖構造、および治療的に受容可能なキャリアの形成に有効なヌクレオシドサブユニットの配列を有する、薬学的組成物である。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、N3’→P5’ホスホルアミデートの化合物および組成物、合成法ならびにオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを用いるハイブリダイゼーションおよびヌクレアーゼ抵抗性方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
(発明の要旨)
本発明の方法、化合物および組成物は、連続するヌクレオシドサブユニットがサブユニット間結合により連結したサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドに関する。本オリゴヌクレオチドにおいて、少なくとも2個の連続するサブユニットはN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットにより連結されるか、あるいは全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である。
【0079】
N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の例は:
【0080】
【化16】
【0081】
であり、Xは−O−、−OR、または−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択される。
【0082】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの例は:
【0083】
【化17】
【0084】
式1
であり、
ここで、Xは−O−、−OR、または−Rであり、Rはアルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキルからなる群より選択され、nは4から100であり、そしてBは塩基である。通常、5’位の酸素には1個の水素またはオリゴヌクレオチド中の別のヌクレオチドのいずれかが結合し、そして3’位の酸素にはオリゴヌクレオチド中の別のヌクレオチドが結合する。これらの例示の置換基の定義については、後述の定義の節を参照のこと。
【0085】
本発明のオリゴデオキシリボヌクレオチドを構成しているヌクレオシドサブユニットは、定義された配列内にあるように選択し得る。例えば、1本鎖核酸の標的配列に対して相補的な塩基の配列あるいはオリゴデオキシリボヌクレオチドと標的2重鎖との間の3重鎖の形成を可能にする配列である。
【0086】
1つの実施態様において、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデート結合により連結される少なくとも3個の連続するサブユニットを有する。この群の結合は、例えば、オリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端に存在し得る。この位置におけるN3’→P5’ホスホルアミデート結合はオリゴデオキシリボヌクレオチドに対してヌクレアーゼ抵抗性を付与する。
【0087】
本発明の別の実施態様において、サブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0088】
本発明は、オリゴデオキシリボヌクレオチドを合成するために用いられる中間体およびそのような中間体の合成方法を含む。中間体としては、以下の式で表される:
【0089】
【化18】
【0090】
および
【0091】
【化19】
【0092】
本発明は、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドの形成による2重鎖の核酸分子の生成方法を包含する。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは式1のサブユニット間結合または本明細書中で考察する他の結合と組合わさせたそのような結合を含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、2重鎖の効果的な形成を可能とする条件下で標的核酸分子と接触する場合、標的核酸分子と2重鎖を形成する一連のヌクレオシドサブユニットを有する。
【0093】
本発明はまた、オリゴデオキシリボヌクレオチドの形成によるポリヌクレオチドとの蛋白質の相互作用をブロックする方法も含む。本オリゴデオキシリボヌクレオチドは、式1のサブユニット間結合または本明細書中で考察する他の結合と組合わせたそのような結合により連結した連続するヌクレオシドサブユニットを含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、2重鎖または3重鎖の効果的な形成を可能とする条件下で標的核酸と接触する場合、標的核酸分子と2重鎖または3重鎖を形成する一連のヌクレオシドサブユニットを有する。この方法は細胞内で用い得る。
【0094】
また、本発明には、サブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合と第2の結合とを交互に連結するオリゴデオキシリボヌクレオチドも含まれる。第2の結合は、1つまたはそれ以上の異なる型の結合から選択され得る。例えば、ホスホジエステル結合またはホスホジエステルおよびホスホロチオエート結合である。第2の結合は、例えば、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミデートP3’→N5’およびホスホロチオエートからなる群より選択される。1つの実施態様において、サブユニット間結合の少なくとも50%がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。
【0095】
本発明は、上記のようなオリゴデオキシリボヌクレオチドの形成による、3重鎖DNA分子の生成方法を包含する。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは標的2重鎖DNAを伴う3重鎖らせん構造の形成に有効な一連のヌクレオシドサブユニットを有する。次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドと2重鎖の標的DNA間の3重鎖の形成を可能にするのに効果的な条件下で2重鎖DNAと接触する。この方法は、種々の条件下で、例えば、細胞内または溶液内で行われ得る。
【0096】
本発明はまた、以下の3本のDNAストランドを有する3重鎖のDNA分子も含む:(i)2本の相補的なストランドを有する2重鎖のDNA分子および(ii)2重鎖と結合した、上記のN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドである。1つの実施態様において、第3のストランドオリゴデオキシリボヌクレオチドのサブユニット間結合の50%またはそれ以上がN3’→P5’ホスホルアミデート結合であり、十分に改変されたオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0097】
さらに、本発明は、ヌクレアーゼ切断に対するオリゴデオキシリボヌクレオチドの抵抗性を増強する方法を包含する。本方法において、オリゴデオキシリボヌクレオチドが形成され、これは上記のN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する。オリゴデオキシリボヌクレオチドはヌクレアーゼに曝される。そのようなオリゴデオキシリボヌクレオチドは、ホスホジエステルのサブユニット間結合のみを有する対応するオリゴデオキシリボヌクレオチドよりもヌクレアーゼ切断に対してより抵抗性である。ヌクレアーゼの抵抗性は細胞内でも同様に観察される。
【0098】
N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドは、上記のように、優れたハイブリダイゼーション特性を有する。本発明はまた、RNAの標的配列に対する最初のオリゴデオキシリボヌクレオチドのハイブリダイゼーションを増強する方法を包含する。ここで、本オリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有する。本方法において、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有する第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドが形成され、これは第1のオリゴデオキシリボヌクレオチドと同様な連続するヌクレオシドサブユニット配列を有する。第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、該標的RNA配列に対するハイブリダイゼーションに効果的である。第2のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドとRNAとの間での複合体の形成を可能とする効率的な条件下でRNAと接触する。そのような接触は、細胞内を含め、種々の条件下で行われ得る。
【0099】
本発明はまた、サンプルからの標的RNAの単離方法およびキットを含む。キットには、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する上記のようなオリゴデオキシリボヌクレオチドが含まれる。ここで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、標的RNA配列に対するハイブリダイゼーションに効果的である。典型的に、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、磁気ビーズのような固体支持体に付着され、単離を容易にする。
【0100】
別の実施態様において、本発明は、選択された標的配列を有するRNAのサンプル中の存在を検出するための診断的方法を包含する。本方法において、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドが作製され、これは標的配列とのハイブリダイゼーション複合体の形成に効果的である。次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドと標的配列との間のハイブリッド複合体の形成を可能とする効率的な条件下において、サンプルと接触される。次いで、ハイブリッド複合体の存在が検出される。ハイブリッド複合体の検出は、リポーター部分を伴うオリゴデオキシリボヌクレオチドを標識することによって達成され得る。ここで、検出はリポーター部分の検出を包含する。多くのリポーター部分が利用され得、放射性標識、ビオチン標識、および蛍光標識を包含するが、これらに限定されない。本検出方法は、細胞内を含む、種々の条件下で行われ得る。
【0101】
同様の診断方法が、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを用いて行われ得る。ここで、標的配列は2重鎖のDNAまたは1本鎖DNAである。2重鎖DNAの検出の場合、ハイブリダイゼーション複合体の検出はゲルバンドシフトアッセイを用いて達成され得る。1本鎖DNAの検出には、一般的にオリゴデオキシリボヌクレオチドは全サブユニット間結合の50%より多くをN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合として含む。
【0102】
本発明はまた、以下を有する2重鎖のオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む:(i)2本の相補的なストランドおよび(ii)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットであって、ここで少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合である(上記)。1つの実施態様において、少なくとも1つのストランドのサブユニット間結合の50%またはそれ以上がN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。別の実施態様において、少なくとも1つのストランドのサブユニット間結合のすべてがN3’→P5’ホスホルアミデート結合である。そのような2重鎖のDNA分子はまた、相補的なストランドに連結しているフレキシブルなヒンジ領域も含み得る。ヒンジ領域は任意の所望の極性でストランドを連結し得る。例えば、5’から3’へ、3’から5’へ、3’から3’へ、および5’から5’へである。
【0103】
さらに、本発明は、標的領域を含む2本の相補的なDNAストランドおよび1本のRNAストランドを有する3重鎖の核酸複合体の形成方法およびそれらの組成物を含む。本方法において、サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチドが形成される。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、以下を有する2重鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドを形成し得る:(i)5’および3’を有する2本の相補的なストランド、(ii)サブユニット間結合により連結される連続するヌクレオシドサブユニットであって、ここで少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合で連結されるか、または全サブユニット間結合の3個より多くがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合であり(上記)、(iii)ここで、フレキシブルなヒンジ領域によって1つのストランドの末端から他方のストランドの末端までストランドが連結され、そして(iv)RNA標的を伴う3重らせん構造の形成に効果的な一連のヌクレオシドサブユニットを有する相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチドのストランド。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、次いで、オリゴデオキシリボヌクレオチドとRNAとの間の3重鎖の形成を可能とする効率的な条件下でRNA標的と接触される。本方法は、細胞内を含め、種々の条件下で行われ得る。
【0104】
本発明はまた、上記のように、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドの薬学的組成物を含む。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、抗原およびアンチセンスの適応のようなハイブリダイゼーションに基づく治療適応に有用である。
【0105】
本発明のこれらのおよび他の目的ならびに特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むと、より十分に理解し得る。
【0106】
(参考文献)
【0107】
【表1】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
「アルキル基」は、1から20個の炭素原子を有するアルキル基または置換されたアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)をいう。低級アルキルは、典型的に、C1からC5をいう。中級アルキルは、典型的に、C6からC10をいう。同様に、「シクロアルキル基」は、アルキル、アリール、アラルキル置換基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど、)を有し得る飽和炭素環式環基、またはそれらの置換形態をいう。
【0112】
「アルケニル基」は、炭素−炭素の2重結合を含む炭化水素基(例えば、ビニル、アリル、シクロペンテニルなど)をいう。「アルケニル基」はまた、置換されたアルケニルも含む。低級アルケニルは、典型的に、C1からC5をいう。中級アルケニルは、一般的に、C6からC10をいう。
【0113】
「アリール基」は、5〜20個の炭素原子を有する芳香族環基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、または置換されたアリール基で、トリル、エチルフェニル、ビフェニルなどのようなアルキル置換基またはアリール置換基)をいう。環内に1個またはそれ以上の窒素原子、酸素原子またはイオウ原子を有する複素環式芳香環基も含まれる。
【0114】
「アラルキル基」は、アリール置換基のような置換されたアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルなど)をいう。アルキルは上記のように定義される。
【0115】
「置換される」は、一般に前記の基が1個またはそれ以上の小さな化学部分(例えば、メトキシ、エトキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、アミド、アミノ、およびエチレンオキシド)で誘導体化されることを意味する。上記で定義される基のいずれも置換され得る。例えば、(−CF3)。
【0116】
「オリゴヌクレオチド」は、典型的に、ヌクレオシドサブユニットのポリマーをいい、約4から約50個の連続するサブユニットを有する。ヌクレオシドサブユニットは、種々のサブユニット間結合により連結され得、図2Aから2Eに示されるサブユニットを含むが、これらには限定されない。さらに、「オリゴヌクレオチド」は、糖骨格(例えば、リボースまたはデオキシリボースサブユニット)、糖(例えば、2’置換体)、塩基および、3’および5’末端に対する当業者に公知の改変を含む。「オリゴデオキシリボヌクレオチド」は、そのような改変(例えば、2’がフッ素の糖置換体)を含む。式1において、nは、典型的に、4から100または5〜100であり、好ましくは6から60、より好ましくは6から40、そして最も好ましくは6から30である。一般的に、オリゴヌクレオチドの全長は、6から100ヌクレオチドまで変化し、好ましくは6から50ヌクレオチド、そしてより好ましくは10から30ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドにおいて、一般的に、少なくとも2個の連続するサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデート中間サブユニットによって連結され、好ましくは少なくとも3個の連続するサブユニットであり、より好ましくは少なくとも4個の連続するサブユニットであり、最も好ましくは少なくとも5個の連続するユニットである。一般的に、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列に対するミスマッチを有さない。オリゴヌクレオチドが約20から30ヌクレオチドより長い場合、1または2または3塩基のミスマッチは許容される。
【0117】
「ヌクレオシド」は、本明細書においてペントース糖(リボース、デオキシリボース、またはそれらの改変物)として定義される。これらの糖は、水素結合を形成し得る塩基(典型的に、プリンまたはピリミジン)に結合する。
【0118】
「塩基」は、本明細書において、(i)典型的なDNAおよびRNA塩基(ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、およびシトシン)、および(ii)改変された塩基または塩基アナログ(例えば、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、またはイノシン)を包含して定義される。塩基アナログは、その構造が典型的なDNAまたはRNA塩基の構造に類似する化学物質である。
【0119】
「3重鎖」は、3本の核酸ストランドを有する。典型的に、本発明のオリゴヌクレオチドは標的配列に対するミスマッチを有さない。オリゴヌクレオチドが約20から30ヌクレオチドより長い場合、1または2または3塩基のミスマッチは許容される。
【0120】
(II.本発明)
本発明の支持において実施された実施例は、アキラルなヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を含むオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ切断に対してより抵抗性であり、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含まないオリゴヌクレオチドと比較してRNAおよびdsDNAのハイブリダイゼーション特性を改善している。N3’→P5’結合を含むオリゴヌクレオチドは、インビトロの細胞の生長阻害アッセイにおいて相補的なmRNA標的に対して優れたアンチセンス活性を有する。さらに、オリゴヌクレオチドは低い細胞傷害性を示す。
【0121】
(A.ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドの合成および特徴付け)
1つのN3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドを、本質的には、Shabarova(1988)に記載のように水性媒体中で化学的連結により合成した。あるいは、2つのサブユニット間のN3’→P5’結合を有し、隣接のサブユニット間結合が少なくとも1つのホスホジエステル結合を有するオリゴヌクレオチドを、先に形成されたホスホルアミデートダイマーブロックのカップリングを介して固体支持体上で合成した(Gryaznovら、1992;Magら、1992)。ランダムなサイズのリボオリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを、ダイマーブロックの自己重合を介して得た(Zielinskiら、1987)。Azhayerらは所定の配列のオリゴリボヌクレオチドの合成を記載している。
【0122】
本発明は、オリゴデオキシリボヌクレオチドの生成のための固体支持体合成方法を包含し、このオリゴデオキシリボヌクレオチドは、連続するヌクレオシドサブユニットがN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合(np)で連結されている(実施例1、図1)。オリゴデオキシリボヌクレオチドの連続合成において、5’−ジメトキシトリチル−3’−アミノ−デオキシリボヌクレオチドサブユニットが利用される。これらのサブユニットのそれぞれの調製を実施例1に示し(例えば、図20参照)、以下に概略を示す:
【0123】
【化20】
【0124】
N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合で連結されている連続するサブユニットを有するオリゴヌクレオチド(例えば、一様に改変されている)を、実施例1に概略を示し、かつ以下に示すような段階的伸長手順を用いて固体支持体上で合成した:
【0125】
【化21】
【0126】
1つのアミノヌクレオシドの付加についての合成サイクルは、本質的には以下の操作からなる:脱トリチル化(図1、工程i);5’−ヒドロキシル基のホスフィチル化による、5’−H−リン酸ジエステルを支持するポリマーの生成(図1、工程ii、iii);四塩化炭素存在下での5’−ジメトキシトリチル−3’−アミノ−ヌクレオシド(Glinskiら、1970)と5’−H−リン酸塩とのAtherton−Todd型カップリング(Athertonら、1945;Gryaznovら、1992;Gryaznovら、1986;Gryaznovら、1990)(図1、工程iv)。このサイクルを数回繰り返すことによって、アンモニアでの脱保護後、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを生じ得る(図1、工程v、vi)。平均カップリング収率は、ジメトキシトリチル(DMT)カチオンアッセイによる判定で1工程当たり94〜96%であった。
【0127】
N3’→P5’ホスホルアミデート結合(「np」)を含む例示的なオリゴデオキシリボヌクレオチドを図3および本明細書中に示す。
【0128】
本発明のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合(例えば、5’−T−np−G−np−A−3’)で連結される少なくとも2個の連続するサブユニット、または3個より多いすべてのN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を含む。1つの実施態様では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、十分に改変されたN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を含んでいる(例えば、図3、実験13、オリゴヌクレオチド6)。別の実施態様では、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、サブユニット間交互のN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有し、代表的には、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合が交互である(例示的な結合については、以下および図2を参照)。交互の結合を有するこのようなオリゴデオキシリボヌクレオチドの例を、図3、実験3、オリゴヌクレオチド2に示す。オリゴヌクレオチド2の合成は実施例1に記載されている。
【0129】
オリゴヌクレオチドをイオン交換高速液体クロマトグラフィーによって単離した(IE HPLC;実施例2、図4A)。単離したオリゴヌクレオチド調製物の純度を、キャピラリー電気泳動およびスラブゲル電気泳動分析により評価した(実施例2、図4B)。
【0130】
精製したオリゴヌクレオチドのホスホルアミデート結合の存在を、31P−NMR(実施例2、図4C)およびホスホルアミデート結合の選択的な酸触媒による加水分解(実施例2)によって確認した。
【0131】
図1(工程i、iii)のシアノエステル基は、他のペンダント基と置き換えられ得、これにはアルキル基(通常、低級または中級アルキル基)、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基(または前述の基の任意の置換体)が含まれる。代表的には、そのようなペンダント基は、オリゴヌクレオチドの合成またはオリゴヌクレオチドが標的とハイブリダイズする能力を妨害しない。ペンダント基の一例は、−CH3(Gryaznovら、1992)である。代表的な繰り返しユニットを図2Aに示す。ここで、「X」は、「−O−」、「−OR」または「−R」であり、そして「R」は、例えば、以下のペンダント基群またはそれらの置換体の任意のものである:アルキル、アルケニル、アリール、およびアラルキル。
【0132】
ホスホルアミデートアナログおよびキメラのホスホルアミデート/ホスホジエステルアナログ(図2C)に加え、ヌクレオシド間N3’→P5’ホスホルアミデート結合は、1つまたはそれ以上の他の改変されたサブユニット間結合を有するオリゴヌクレオチドに組み込まれ得(Goodchild、1990により総説されている)、そのようなものとして、ホスホトリエステル(図2D)、メチルホスホネート(図2B)、ホスホルアミデート(図2F)、ホスホルアミデートP3’→N5’、およびホスホロチオエート(図2E)が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
(B.アキラルなヌクレオシド間3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ抵抗性)
ヘビ毒液のホスホジエステラーゼによる加水分解に対するオリゴヌクレオチドホスホルアミデートの安定性を、天然のホスホジエステル化合物との比較によって評価した(材料および方法の節参照)。ホスホジエステルデカマーのオリゴヌクレオチド1(図3)をヘビ毒液のホスホジエステラーゼで処理した。このオリゴヌクレオチド1は10分後には完全に加水分解され、これは逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって判断した。
【0134】
これとは対照的に、ホスホルアミデートアナログのオリゴヌクレオチド3は、ヘビ毒液のホスホジエステラーゼでの処理の50分後でも本質的にそのままであった。4.5時間後、約50%のオリゴヌクレオチド3を、末端の3’−アミノ基を有する推定9マーの(TnpT)4TNH2に変換した。末端の3’−アミノ基の存在はこのオリゴマーのさらなる切断を遅らせた。22時間の加水分解後、最初の10マーのオリゴヌクレオチド3は、完全に3’−アミノ末端の9マー{(Tnp)8TNH2}に変換された。この{(Tnp)8TNH2}化合物の約20%だけのさらなる切断が観測された。
【0135】
これらの結果は、標準のホスホジエステル骨格を有するオリゴヌクレオチドと比較して、N3’→P5’ホスホルアミデート結合(「np」)を含むオリゴヌクレオチドの増大したヌクレアーゼ抵抗性を示す。本発明の1つの実施態様によれば、オリゴデオキシリボヌクレオチドのヌクレアーゼ抵抗性は、このオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’末端にN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合により連結され約3つの連続するサブユニットを配置することにより生成する。
【0136】
(C.N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性)
ホスホルアミデートアナログのハイブリダイゼーション特性を、標準のホスホジエステルのサブユニット間結合を有する相補的なDNAまたはRNAストランドに関して評価した。ホスホルアミデートアナログおよびホスホジエステルオリゴマーから生成する2重鎖の熱安定性データを図3に要約する(実施例1)。
【0137】
ホスホジエステルおよびホスホルアミデートアナログオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線データの例(実施例4A)を図5Aおよび5Bに示す。この図において、曲線(A)、(C)、(B)、および(D)は、それぞれ、図3における実験8、9、13および14に対応する。
【0138】
ヌクレオシド間のホスホジエステルのN3’→P5’ホスホルアミデート結合についての置換は、このオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を劇的に変化させた。完全に改変された10マーのオリゴヌクレオチド3とポリDa(すなわち、DNA)およびポリA(すなわち、RNA)とにより形成される2重鎖の融解温度(Tm)は、それぞれ、36.0℃および51.5℃であった(図3、実験5および6)。これらのTmは、ホスホジエステルの相対物のオリゴヌクレオチド1とポリDaおよびポリAとにより形成される2重鎖よりも、6.3℃および24.5℃高い(図3、実験1および2)。
【0139】
同じ傾向が混合塩基のウンデカヌクレオチド6についても当てはまり(図3)、この場合、相補的なDNAストランドおよびRNAストランドとの2重鎖のTmは、それぞれ、49.2℃および72.4℃であった(図3、実験13、14)。これらの値は、親のホスホジエステル化合物のオリゴデオキシリボヌクレオチド4についての値よりも11.7℃および22.9℃高い(図3、実験8および9)。また、ホスホルアミデートの11マーのオリゴデオキシリボヌクレオチド6により形成される同一RNA標的との2重鎖は、相同なRNAオリゴマー5により形成される2重鎖よりも(18.0℃)安定である(図3、実験11)。
【0140】
オリゴデオキシリボヌクレオチド2はまた、ホスホジエステル−ホスホルアミデート結合が交互になっており、対応するホスホジエステル化合物(オリゴデオキシリボヌクレオチド1、図3、実験2)より、RNAストランドと一層堅く結合し、そのTmは33.7℃である(図3、実験4)。しかし、オリゴデオキシリボヌクレオチド2は、そのホスホジエステルの相対物(オリゴデオキシリボヌクレオチド1、図3、実験1)と比較して、DNAテンプレートに対してはあまり強く結合せず、Tmは25.8℃である(図3、実施例3)。相補的な核酸とのホスホルアミデートオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、配列特異的であり、適切なワトソン−クリック型塩基対形成により決定される。ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド6と1つのミスマッチのRNA標的とにより形成される2重鎖(図3、実験15)は、完全な相補的RNAオリゴマーとともに形成される2重鎖より実質的に安定でない(−12.2℃のΔTm)(図3、実験13)。ほぼ同様のミスマッチの相違がホスホジエステルのデオキシリボ−オリゴヌクレオチドおよびリボ−オリゴヌクレオチドで測定され、その場合のΔTmは、それぞれ−14.4℃および−12.4℃であった(図3、実験10、12)。
【0141】
ホスホルアミデートアナログを用いた以前の研究において、3つのN3’→P5’ホスホルアミデート結合の導入により、このような2個の結合と比較して、不安定化傾向になることが示され、それはデオキシリボ−オリゴヌクレオチド標的とともに形成されるヘテロ2重鎖によるものであった(Gryaznovら、1992)。先行技術の傾向とは対照的に、上記の結果は、ホスホルアミデート結合としての50%までのサブユニット間結合を有する場合、代表的にはDNA/DNAヘテロ2重鎖の安定性が低下することを示す。しかし、DNA2重鎖の1本のストランドの50%より多いホスホルアミデートサブユニット間結合は、この2重鎖関連物の安定性を向上させ始める。
【0142】
DNA2重鎖が、正常なホスホジエステルオリゴヌクレオチドとN3’→P5’ホスホルアミデート結合で十分に改変されているオリゴヌクレオチドとの間で形成される場合、この2重鎖の熱安定性は、両方のストランドにホスホジエステル結合のみを有する対応する2重鎖よりさらに高い(図3、比較実験1および5)。
【0143】
Gryaznovら(1992)は、一方のストランドが3つまでのN3’→P5’ホスホルアミデート結合(連続していない)を含むDNA/DNA2重鎖のハイブリダイゼーション特性に関するデータを含むだけである。DNA標的に関する先行技術の教示との明確な対比により、本発明の支持のために実施された実験は、オリゴデオキシリボヌクレオチドに存在しているホスホルアミデートアナログの結合の数の増加により、DNA/RNAヘテロ2重鎖の安定性が増大することを示す。DNA/RNAヘテロ2重鎖の安定化を成し遂げるために、本発明の好ましい実施態様は、少なくとも2つの連続する中間サブユニット、または3つより多いすべてのサブユニット間結合がN3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するように改変されているオリゴデオキシリボヌクレオチドを包含する。さらに好ましいオリゴヌクレオチドは、 N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有する少なくとも5つの連続する中間サブユニットを有する。
【0144】
実験はまた、両方の相補的なストランドにおけるホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドにより形成される2重鎖の安定性を評価するために実施された。チミジンを含むヒンジ部(T4、図6)を有する幾つかのキメラホスホルアミデート−ホスホジエステルのヘアピンオリゴマー(図6)を合成した(図6、実施例4B)。これらの化合物に対して得られた融解曲線は、最も安定な2重鎖がオリゴヌクレオチド9および12のヘアピンにより形成されたことを示し、その場合、両方のストランドは相対する位置にホスホルアミデート結合を含む(図6、実験3、6)。
【0145】
また、単鎖のDNA分子から形成される2重鎖(すなわち、ヘアピン)は、一方のストランドが交互するホスホルアミデート−ホスホジエステル結合を含み、ここでその相補鎖がホスホジエステル結合のみを有し、それらの単なるホスホジエステルの相対物よりも安定である(図6、実験1、4)。
【0146】
これらの結果は、DNA/DNA2重鎖の両方のストランドがホスホルアミデートアナログ結合を含む場合、この2重鎖がそれぞれのストランドのN3’→P5’ホスホルアミデート結合の存在により安定化されることを示唆する。安定な2重鎖はそれぞれのストランドの1つのホスホルアミデート結合で形成され得る。すなわち、1つの実施態様では、ホスホルアミデート結合はそれぞれのストランドの同一の位置にある。
【0147】
DNA/DNA2重鎖の安定化を成し遂げるために、代表的には、オリゴヌクレオチドを形成する2重鎖のそれぞれのDNAストランドにおける2つまたはそれ以上のサブユニット間結合は、N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するように改変される。1つの実施態様では、DNAオリゴヌクレオチドを形成するヘアピンの一方のストランドは、約50から100%のN3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有するように改変され得る。
【0148】
(D.ホスホルアミデートアナログを用いる3重鎖の形成)
2本鎖DNAと3重鎖を形成するホスホルアミデートアナログの能力もまた、評価した(実施例4)。融解曲線を、デカチミジンホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド6とヘアピンDNA標的のd(A10C4T10)のdA10:dT10の2重鎖領域とにより形成される3重鎖について得た(図3、実験7)。この3重鎖は生理学的条件の近くで32℃のTmを有した。さらに安定な3重鎖(42.2℃のTm)がマグネシウム含有緩衝液中で観測された(図3、実験7)。
【0149】
同じTm値が、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3とポリdA:ポリdT2重鎖とにより形成される3重鎖について得られた。この3重鎖の熱解離を、260nm(図7Aおよび7C)、および284nm(図7Bおよび7D)における吸光度の変化によりモニターした。これはT:AT3重鎖に特徴的である(Rileyら、1966)。
【0150】
未変性条件下でのゲルシフト実験の結果はまた、ホスホルアミデートデカマー3およびdsdna標的による安定な3重鎖の形成(図8)、ならびにオリゴヌクレオチド6による安定な3重鎖形成(図9)示す。
【0151】
同じハイブリダイゼーション条件下で、ホスホジエステルデカチミジン酸のオリゴヌクレオチド1またはオリゴヌクレオチド4のいずれも同じ2本鎖DNA標的との3重鎖を形成しなかった。これは、融解曲線およびゲルシフト実験により判断した(図8)。すなわち、対応する3重鎖はホスホジエステルサブユニット間結合を有するオリゴヌクレオチドにより形成されなかった。このことは、ホスホルアミデートアナログが、相対物を含むそれらのホスホジエステルよりも容易に3重鎖を形成し得ることを示唆する。
【0152】
同様の結果が、オリゴヌクレオチド6およびオリゴヌクレオチド1が、2重鎖DNA標的との3重鎖構造を形成する能力を評価する場合に得られた(実施例5、図9)。
【0153】
上記の結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、標準のホスホジエステルオリゴヌクレオチドよりも、2重鎖基質との3重鎖形成についてより効果的であることを示唆する。
【0154】
(III. 中間ヌクレオシド3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドの適用)
オリゴヌクレオチド3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを合成した。これらの化合物はヌクレアーゼ耐性であり、ssRNAおよびDNA標的と、驚くほどに安定な複合体を形成する。N3’→P5’ホスホルアミデートアナログは、アンチセンスおよび抗遺伝子診断/治療の適用に対して大いなる可能性を有する。本発明の好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。
【0155】
(A.アンチセンス適用)
アンチセンス治療は、細胞内に存在する標的核酸、代表的にはRNA分子に結合する外因性オリゴヌクレオチドの投与を包含する。用語「アンチセンス」は、オリゴヌクレオチドが、代表的には、細胞産生物をコードするmRNA分子(「センス鎖」)に相補的であるのでそう示される。
【0156】
本明細書に記載のホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、遺伝子発現のアンチセンス阻害に有用である(Matsukuraら、1989; Agrawalら、1989;Zamecnikら、1986; RittnerおよびSczakiel,1991; SteinおよびCheng,1993)。N3’→P5’ホスホルアミデート結合を有するオリゴヌクレオチドは、限定されないが、ガン細胞増殖および感染性ウイルスによる干渉の阻害を包含する、医学上重要な多くの標的に対する治療の適用性を有する。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、家畜およびヒトへの適用の両方に有用である。これらの化合物の低細胞毒性、およびアンチセンス分子としての低濃度での有効な作用能力(下記を参照のこと)は、これらのオリゴヌクレオチドを、治療用アンチセンス薬剤として高度に望ましくする。
【0157】
アンチセンス薬剤は代表的には、それらを不活性化するか、あるいは内因性リボヌクレアーゼH(RNaseH)活性に対する基質を提供するように、全標的RNA分子に連続的に結合することを必要とする本発明の方法により生成されるRNA/オリゴヌクレオチド複合体のRNaseHに対する感受性は、標準的な方法により評価され得る(Doniaら、1993; Kawasakiら、1993)。
【0158】
本発明の方法は、より多くの従来のアンチセンス薬剤を超える数個の利点を提供する。第一に、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、対応のホスホジエステルオリゴヌクレオチドよりも、RNA標的に強く結合する。第二に、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、細胞ヌクレアーゼによる分解に対してより耐性である。
【0159】
さらに、RNAが、2重鎖標的配列のほとんどのプリン鎖によってコードされるときは、その2重鎖に標的づけられるホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドはまた、DNAを不活性化する可能性、すなわち、1本鎖および2本鎖両形態の病原体を不活性化する能力を有する(下記の抗遺伝子治療の考察を参照のこと)。
【0160】
配列特異的ホスホルアミデートアナログ結合分子は、何らかの点でRNAに関連する本質的ないかなる疾患または症状に対する、潜在的に有力な治療法である。このような配列が、治療適用のために標的づけられ得る実施様式は、下記の(a)から(d)を包含する:
(a)細菌、ウイルス、酵母、およびその他の真菌類のような、感染因子の増殖および/または維持に関連する産生物を発現するRNA配列、例えば、感染因子によってコードされる特異mRNAの標的付け;
(b)RNA切断(例えば、RNA/DNAハイブリッド2重鎖分子のRNase切断)を結果として誘導する2重鎖分子の形成;
(c) RNA配列とのタンパク質の相互作用(例えば、TATとTARとの相互作用、下記を参照のこと)のブロック;および
(d)細胞遺伝子の不適切な発現あるいは増殖を引き起こす配列の標的付け:例えば、細胞サイクル調節;炎症過程;平滑筋細胞(SMC)増殖、移動およびマトリックス形成(Liuら、1989);ある種の遺伝子疾患;およびガン(ガン原遺伝子)に関連する遺伝子。ある実施態様において、不適切に発現された細胞性遺伝子の翻訳またはRNAプロセシングがブロックされる。
【0161】
典型的な潜在標的配列は、以下のものに限定されないが、c−myc、c−myb、c−fos、c−kit、ras、およびBCR/ABLを含むガン原遺伝子(例えば、Wickstrom; Zalewskiら、1993; Calabrettaら、1992,1993;)、ガン遺伝子/腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、p53, Bayeverら)、転写因子(例えば、NFκB、Cogswellら、1993)、およびウイルス遺伝子(例えば、パピローマウイルス、Cowsertら;単純ヘルペスウイルス、Kulkaら)である。さらに説明すると、本発明の方法によって標的され得るHIV−1タンパク質の2つのRNA領域は、REVタンパク質応答エレメント(RRE)およびTATタンパク質トランス活性化応答エレメント(TAR)である。REV活性は、HIVエンベロープ遺伝子中に位置される、REV応答エレメント(RRE; 配列番号23)の存在を必要とする(Malimら、1989a, 1989b)。
【0162】
RREは、4つのステム−ループ構造および1つの分枝ステム−ループ構造を形成すると考えられている、234ヌクレオチド領域にマッピングされる(Malimら、1989a)。フットプリント法から得られるデータ(Hollandら、1990; Kjemsら、1991)は、REVが、RREの1つのステム構造中の6つの塩基対および隣接するステム−ループ構造中の3つのヌクレオチドに結合することを示唆している。ステム−ループII中の約40ヌクレオチドの最小REV結合領域は、Cookらによって同定された(1991; 配列番号24)。この結合領域は、本発明の方法に従い、1つ以上のオリゴヌクレオチドを使用して、RNA/DNA2重鎖(例えば、Liら、1993)を形成するために標的され得る。
【0163】
HIV−1 TATは、ウイルス複製に不可欠であり、そして長い末端繰り返し(LTR)に特異的なウイルスの遺伝子発現の強力なトランス活性化因子である(Daytonら、1986; Fisherら、1986)。TATタンパク質に誘導されるトランス活性化は、ウイルスのmRNAエレメントの非翻訳5’末端に存在する、TARエレメント(配列番号25)の存在を必要とする。
【0164】
TARエレメントは、安定なステム−ループ構造を形成し得る(Muesingら、1987)。TARのステムの完全なステムおよび3ヌクレオチド(nt)のバルジ(bulge)は、TARエレメントへのTATタンパク質の特異的および高親和性の結合に不可欠であることが実証された(Royら、1990;
Cordingleyら、1990;Dingwallら、1989; Weeksら、1990)。この領域は、以下の本発明の方法に従ってアンチセンス治療用に標的され得る。
【0165】
REV、RRE、およびTATタンパク質のRNA結合部位を標的化することに加えて、REVおよびTATタンパク質自身に関するRNAコーディング配列は、タンパク質の発現をブロックするために標的され得る。
【0166】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、限定されないが、RREのステム−ループ構造のような、自己アニールし、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域に対して特有の標的化能力を与える。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、RNA/RNAハイブリッドの1つの鎖に対するN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの高親和性結合によって、RNA/RNAハイブリッドを取り外す(displace)。RNA/RNAハイブリッドへの第1のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合が、RNA/DNA2重鎖(1つの鎖がRNAであり、1つの鎖がN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドである)の形成をもたらし、RNA/RNAハイブリッドの再会合を阻み、そして、タンパク質によるRNA/RNAハイブリッドの結合あるいは認識を阻害し得る。第1のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合はまた、RNaseによるRNAの切断を増大する。RNA/RNAハイブリッドと比較して、RNA/N3’→P5’ホスホルアミデート2重鎖のより高度な安定性は、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNAの再アニーリングの機会を最小限にする。あるいは、RNA/RNAハイブリッドの1つの鎖へのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの結合は、RNA/RNAハイブリッドを開裂し、それによって、第2のオリゴヌクレオチドが結合するための第2のRNA部位を曝露させる。自己アニールし、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが公知のRNA結合タンパク質を取り外すことを実証することにより、経験的に同定され得る。ステムループ構造のような、RNA/RNAハイブリッドを有するRNA領域はまた、RNA二次構造のコンピュータ補助予測により同定され得る。Sixou, S.ら、Nucleic Acid Res. 22:662−668 (1994)(この方法は本明細書に参考として援用されている)のようなプログラムは、少なくとも3〜7塩基対によって分離されるパリンドローム配列のような、RNA/RNAハイブリッドを形成するRNA領域を同定するのに、特に有用である。
【0167】
潜在的なアンチセンス標的部位への結合に特異な、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの最初のスクリーニングは、代表的には、得られるRNA/DNA2重鎖の熱安定性を試験することを包含する。選択されたRNA標的配列に結合するホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドが同定されると、このアナログは、インビトロにおけるRNA機能の阻害についてさらに試験される。細胞培養アッセイシステムは、このようなインビトロ分析に使用される(例えば、単純ヘルペスウイルス、Kulkaら;HIV−1, Liら、Vickersら;再狭窄における冠平滑筋細胞増殖、Zalewskiら;IL−2R, Grigorievら;c−myb、Baerら;c−fos, Cutryら;BCR/ABL, Szczylikら、1991)。
【0168】
実施例5は、このような細胞培養系の1つにおける、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの試験の結果を示す。このアッセイは、BCR−ABLアンチセンスオリゴヌクレオチドによる白血病細胞増殖の選択的阻害を測定する(Szczylikら、1991)。BCR−ABL転写物は、慢性骨髄性白血病(CML)患者、およびPh+急性リンパ球性白血病患者の大多数に認められ、白血病の表現型の維持に必要であると考えられる(Galeら;Collinsら、1984; Daleyら)。BCR−ABL転写物は、ガン原遺伝子ABL(第9染色体)のブレークポイントクラスター(breakpoint cluster)領域(BCR)(第22染色体)へのトランスロケーションの結果であり、BCR−ABLハイブリッド遺伝子形成を生じる。
【0169】
同定されたBCR−ABL接合部B2A2(細胞株BV173)に相補的な、完全に改変したN3’→P5’ホスホルアミデートアンチセンスオリゴヌクレオチド11マー(配列番号6)を、合成および精製した。(i)上記の11マー配列を有し、(ii)完全に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有する、対応するオリゴヌクレオチド16マー(配列番号26)もまた調製した。このオリゴヌクレオチドを、図10から15、16、および18に示されている濃度で、3日間(0日、1日、および2日)24時間間隔で細胞に投与した。図中の濃度は、以下のように示されている:40/20/20は、細胞培養物に添加されたオリゴヌクレオチドのμg/ml濃度に対応する(実施例5)。
【0170】
図17および18は、完全に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有し、BV173 BCR/ABLスプライス接合部に対してミスマッチな配列を有する16マーを用いて実施された実験の結果を示す。
【0171】
図10、12、および14に示されている結果は、オリゴヌクレオチドが投与されたときの濃度に関係なく、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、BV173白血病細胞の増殖を阻害することにおいて、非常に有効的であったことを示す。
【0172】
図11、13、および15に示されている結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが無視できるほどの細胞毒性を有することを示す。これらの実験では、細胞株は、BCR/ABLブレークポイントを有さないHL60か、あるいはB3A2 BCR/ABLブレークポイント(部分的にB2A2 BCR/ABLブレークポイントに対して非相同である)を有するK562のいずれかである。
【0173】
一方で、ホスホロチオエート16マーを用いて同様の実験を実施した場合、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドと比較し得る濃度で投与されたときには、このオリゴヌクレオチドは、BV173白血病細胞増殖を阻害することにおいて有効ではなかった(図16および18)。詳細には、白血病細胞は、0.0196/0.0098/0.0098のホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを使用したときに認められる同様の阻害の解放に比較して、約1.25/0.625/0.625の濃度でホスホロチオエート16マーによる阻害から解放され始めるようである。従って、この結果は、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチドが、広く使用されているホスホロチオエートオリゴヌクレオチドよりもかなり低濃度で、有効なアンチセンス薬剤であることを示す。
【0174】
さらに、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチド処置で認められる阻害曲線は、阻害の部分的な解放後でさえ、より遅い時点で下向きの変化を有する(図14)。一方では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド処置で認められる阻害曲線は、阻害の部分的な解放後に、より遅い時点で急勾配の上向きの変化を有する(図18)。これらの結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドに比較した場合、阻害からの解放が、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドについてはより劇的であることを示唆する。
【0175】
ホスホロチオエート16マーに関する細胞毒性の非存在性を、同じ濃度で適用されたホルホルアミデートオリゴヌクレオチドに関して認められる細胞毒性と比較した。
【0176】
上記に示されている結果により、上記のハイブリダイゼーション調査によって示されたN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの優れた性質が細胞培養物中で確認される。これらの結果は、インビボでのアンチセンスおよび抗遺伝子治療におけるN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの有用性および有効性を支持する。
【0177】
さらに、この結果は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドより、インビトロで優れたアンチセンス機能を提供することを示す。今日まで、オリゴヌクレオチドにおけるホスホロチオエート骨格の改変が、アンチセンス適用に関して標準的になっており、1993年には約2500のアンチセンス定期刊行物中の95%を超える中に、目的アナログが示されている。
【0178】
多くのmRNA標的を含む多種のアッセイシステムにおいて、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、実質的な阻害効果を達成するために、1−15μM濃度で必要とされた。それにもかかわらず、そのレベルでの阻害活性は、3つの異なるmRNAを標的化する3つの疾患においてUS FAD承認の臨床試験を開始するに十分であった:CML(慢性骨髄性白血病),IND #42974、およびAML(急性骨髄性白血病),IND #40453(Antiviral Agents Bulletin, Vol.5, No.6. pp161−162 (1992), ISSN 0897−9871,
Biotechnology Information Institute);およびB型肝炎ウイルス(HBV)。
【0179】
実施例5に示されているデータは、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、相当するホスホロチオエートより非常に低濃度で有効なアンチセンス薬剤であることを示す。さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、アンチセンス活性に要求される濃度を十分に超える、用いられる最高濃度においてさえ、明らかな細胞毒性を有さない。この結果は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、治療適用に優れた薬剤であることを示す。
【0180】
選択されたホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドのインビトロ効果は、インビボ系で確認され得る。このようなインビボ系は、限定されないが、下記を包含する(標的ーモデルシステム):肝炎ウイルスーチンパンジーまたはサルモデル;c−myb、c−myc、bcr−abl−SCIDマウスモデル(例えば、Ratajczakら);NF−κB−マウス(Higginsら):およびp120−マウス(Perlakeyら)。
【0181】
(B.抗遺伝子適用)
3重鎖形成を介しての遺伝子発現阻害は、以前に示されている(Cooneyら、1989; Orsonら、1991; Postelら、1991)。第3鎖のホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドを用いて形成された3重鎖構造の増大された安定性は、家畜およびヒトの治療適用を含む、抗遺伝子適用のより強力な手段を提供する。
【0182】
最良の標的領域は、3重鎖形成に関する標準的な規則によって、既知配列に基づいて選択される(HeleneおよびToulme, 1990)。代表的には、ホスホルアミデートアナログ核酸配列は、1つの鎖が優先的にプリンを含有し、もう1つの鎖が優先的にピリミジンを含有する2本鎖遺伝子配列に対して標的づけられる。
【0183】
本発明のホスホルアミデートアナログオルゴヌクレオチドを、バンドシフトアッセイを用いて、選択2重鎖標的配列に対しての3重鎖形成について試験する(実施例4)。代表的には、高パーセンテージポリアクリルアミドゲルをバンドシフト分析用に使用し、変性条件レベル(Ausubelら; Sauerら; Sambrookら)を、あらゆる非特異バックグラウンド結合を減じるように調整する。
【0184】
2重鎖標的を(例えば、放射活性ヌクレオチドを使用して)標識し、第3鎖のオリゴヌクレオチドと混合して、標的の2重鎖と3重鎖構造を形成する能力について試験する。標識2重鎖オリゴヌクレオチドの移動度のシフトは、オリゴヌクレオチドが3重鎖構造を形成する能力を示す。
【0185】
3重鎖の形成は、バンドシフトアッセイにおいて標識2重鎖構造と比較して、ゲルでの標識3重鎖構造の移動度が減少することにより示される。
【0186】
長さおよび複雑さの異なるDNA配列の全範囲から選択される標的部位を含む多くの潜在的な標的部位が、この方法により評価され得る。配列特異的ホスホルアミデートアナログ結合分子は、なんらかの点でDNAに関与する本質的に任意の疾患または症状に対する潜在的に強力な治療薬である。このような治療薬のための典型的な標的配列は、(a)細菌、ウイルス、酵母、およびその他の真菌類のような感染性因子の増殖および/または維持に関与する(例えば、感染性因子の代謝を中断させる)DNA配列;および(b)ガン遺伝子のような細胞遺伝子の不適切な発現あるいは増殖を引き起こす配列、例えば、不適切に発現された細胞遺伝子(例えば、特定の遺伝疾患に関連する遺伝子)の転写をブロックまたは減少させる配列を包含する。
【0187】
遺伝子発現または複製は、必要な調節タンパク質(または分子)が結合することが知られている領域(例えば、HIV転写関連因子は、プロモーター開始部位およびSP1結合部位を好む、McShanら)において、3重鎖構造を生成することによりブロックされ得る。あるいは、遺伝子(例えば、ガン遺伝子)のタンパク質コーディング領域内の特異配列も同じように標的され得る。
【0188】
ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、選択された2重鎖標的配列試験体を結合することが、例えば上記のゲルバンドシフト移動度アッセイによって同定される場合、そのアナログはさらに、インビトロにおいて安定な3重鎖構造を形成する能力について試験される。上記の「アンチセンス適用」に記載されているような、細胞培養およびインビボアッセイシステムが使用される。
【0189】
標的部位は、遺伝子の制御領域(例えば、調節タンパク質の転写開始部位または結合領域)において選択され得る(HeleneおよびToulme, 1990; Birgら、1990; Postelら、1991; Cooneyら、1988)。さらに、標的部位は、その標的がmRNA配列(すなわち、転写された配列)中にも存在するように選択され得、その部位に対するオリゴヌクレオチドがアンチセンスメディエーターとしても同様に機能し得る(上記を参照のこと)。
【0190】
さらに、ホスホルアミデート改変DNA分子は、第3鎖標的(すなわち、1本鎖核酸)と3重鎖分子を生成するために使用され得る。例えば、選択標的の第3鎖分子と3重鎖構造を形成し得る2つの領域を有するDNA分子が合成され得る。代表的には、2つの領域は、その2つの領域が第3鎖と会合して3重鎖を形成し得る可動部により連結される。このようなDNA分子の1例は、T10(全てホスホルアミデート改変)−C4(ヒンジ部)−T10(ホスホジエステル結合)である。この分子は、ポリA RNA標的と3重鎖構造を形成する。T10(ホスホジエステル結合)−C4(ヒンジ部)−T10(ホスホジエステル結合)を有する対応のDNA分子は、ポリA RNA標的と3重鎖を形成しない。
【0191】
ヒンジ部は、2つの3重鎖形成領域を一緒に維持し、この領域と第3鎖とを会合させて3重鎖を形成し得る任意の可動性の結合を含有し得る。第3鎖標的は、3重鎖分子を形成し得る適切なプリン/ピリミジン含量を有するように選択される。
【0192】
可動性の結合は、2つの3重鎖形成領域(典型的には、相補的なDNA鎖)を、標的の塩基配列の特性に依存して任意の選択された方向で連結し得る。例えば、2つの3重鎖形成領域の各々は、5’末端および3’末端を有し、これらの末端は、以下の方向で可動性ヒンジ部によって連結され得る:5’から3’、3’から5’、3’から3’、5’から5’。
【0193】
さらに、各鎖に少なくとも1つのホスホルアミデート結合を有する2重鎖DNA分子は、転写因子あるいはDNA結合タンパク質(例えば、c−myb)に対するおとり分子として使用され得る。
【0194】
1本鎖DNAはまた、例えば、ホスホルアミデートサブユニット間結合を含有するヘアピン構造(例えば、図6)を用いて本発明のオリゴヌクレオチドに対する標的核酸として使用され得る。2つのホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、1本鎖DNAの標的特異的結合により選択され得る。2つのホスホルアミデートアナログ鎖と1本鎖DNA標的との結合により、3重鎖の形成がもたらされる。
【0195】
(C.薬学的組成物)
本発明は、アンチセンス治療および抗遺伝子治療に有用な薬学的組成物を包含する。組成物は、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの有効量を、薬学的に受容可能なキャリアとともに含有する。1種以上の(異なる塩基配列を有する)N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、任意の所定の処方剤に含有され得る。
【0196】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、治療適用に使用される場合、純粋なままで処方され得るか、または薬学的キャリアが添加されて処方され得る。薬学的キャリアは、固体または液体であり得る。次いで、処方剤は、必要に応じて治療に有効な投与量で被験体に投与される。
【0197】
液体キャリアは、溶液、エマルジョン、懸濁液、および加圧組成物の調製に使用され得る。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、水、有機溶媒、その両方の混合物、あるいは薬学的に受容される油または脂質のような薬学的に受容可能な液体キャリア中に、溶解あるいは懸濁される。液体キャリアは、以下のものを包含するがそれに限定されない他の適切な薬学的添加物を含有し得る:溶解補助剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝液、肥厚(thickeninig)剤、着色剤、粘度調節剤、保存剤、安定剤、および浸透圧調節剤。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド調製物の非経口投与用の液体キャリアの適切な例は、水(部分的に添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含む)、アルコール(1価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)、およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナッツ油およびピーナッツ油)を包含する。
【0198】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの非経口投与用には、キャリアはまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルのような油性エステルであり得る。滅菌キャリアは、非経口投与用の滅菌液体型組成物において有用である。
【0199】
滅菌液体薬学的組成物、溶液、または懸濁液は、例えば、腹腔内注射、皮下注射、静脈あるいは局所投与により利用され得る。例えば、網膜サイトメガロウイルス感染に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、点眼により局所投与され得る。N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドはまた、脈管内に、またはミコフェノール酸を充満させた脈管ステントを通して、例えば、損傷直後に局所的な抗再狭窄効果を提供するためのバルーンカテーテル法の間に投与され得る。
【0200】
加圧組成物用の液体キャリアは、ハロゲン化炭化水素またはその他の薬学的に受容可能な高圧ガスであり得る。このような加圧組成物はまた、吸入法による送達用に脂質カプセル化され得る。鼻腔内あるいは気管支内の吸入法またはガス注入法による投与用に、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、水溶液あるいは部分的に水性の溶液に処方され得、次いで、これは、例えば、Pneumocystis carniiのような肺の感染症を処置するためにエアロゾル形態で利用され得る。
【0201】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、活性な化合物を含有する薬学的に受容可能なビヒクルとの処方により、溶液、クリーム、あるいはローションとして局所投与され得る。例えば、性器疣の処置用である。
【0202】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、リポソームキャリア中で投与され得る。細胞への取り込みを促進するためのリポソームの使用は、例えば、米国特許第4,897,355号(1990年1月30日発行、Eppstein,D.ら)および同第4,394,448号(1983年7月19日発行、Szoka,F.ら)に記載されている。多数の刊行物に、リポソームの処方および調製法が記載されている。
【0203】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドでの治療のために必要な投与量は、使用される特定の組成物、投与経路、現れている症状の重篤度、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの形態、および処置される特定の被験体により変化する。
【0204】
一般に、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、いかなる有害あるいは危険な副作用も伴わずに有効な結果をもたらす濃度(例えば、有効な量)で投与される。このような濃度は、単回単位用量での投与、あるいは一日を通して適切な間隔で、都合のよいサブユニットに分割した用量での投与のいずれかにより達成され得る。
【0205】
(D.診断適用)
ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドはまた、所定の標的配列を有するRNAまたはDNAの検出のための診断アッセイに有用である。1つの一般的な適用では、ホスホルアミデートアナログは標識され(例えば、アイソトープ性のまたは他の検出可能なレポーター基)、そして固体支持体(例えば、ナイロンメンブレン)に結合されたDNAあるいはRNAサンプルのためのプローブとして使用される。
【0206】
あるいは、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、固体支持体(例えば、磁気ビーズ)に結合され得、そして固定化ホスホルアミデートアナログへのハイブリダイゼーションに基づいて、サンプルの他の成分からサンプル中の相同RNAまたはDNA分子が分離される。ホスホルアミデートアナログの固体支持体への結合は、従来法により行われ得る。結合RNAまたは結合DNAの存在は、標準的な方法(例えば、第2標識レポーターまたはポリメラーゼ連鎖反応(Mullis; Mullis,ら)の使用)により検出され得る。
【0207】
診断アッセイは、ホスホルアミデートアナログの標的領域へのハイブリダイゼーションを可能にするようにハイブリダイゼーション条件を適切に調整して標準的な手順に従って行われ得る。また、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドが上昇した温度で結合する能力は、ホスホルアミデートアナログプローブと、診断サンプル中に存在する任意の対応する1本鎖ホスホジエステルオリゴヌクレオチドとの間の、標的配列への結合についての競合を最小にする助けとなり得る。
【0208】
(E.その他の適用)
1つの局面では、ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、サンプルからのRNAまたはDNAの単離を増強する方法に使用され得る。例えば、上記で論じているように、ホスホルアミデートアナログは、固体支持体に固定され、そして相補的な核酸配列の単離(例えば、ポリA画分からの特定mRNAの精製)に使用され得る(Goldbergら)。ホスホルアミデートアナログは、標準的なホスホジエステルオリゴヌクレオチドとよりもRNAおよび2重鎖DNAと、より安定な相互作用を形成し得るので、このような適用に有利である。
【0209】
レポーター標識ホスホルアミデートアナログについて、特にサンプル中のRNA検出について、分子生物学における多数の適用が見いだされ得る。ホスホルアミデートアナログは、放射活性レポーター(3H、14C、32P、または35Sヌクレオシド)、ビオチン、または蛍光標識で標識され得る(Gryaznovら)。標識ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドは、例えば、RNAハイブリダイゼーション反応において、効率の良いプローブとして使用され得る(Ausubelら、Sambrookら)。
【0210】
さらに、各鎖が少なくとも1つのホスホルアミデート結合を有する2本鎖DNA分子は、DNA2重鎖結合タンパク質の単離に使用され得る。この実施態様では、ホスホルアミデートサブユニット間結合を含有する2重鎖を、代表的には固体支持体に付着させる。次いで、予測される結合タンパク質を含有するサンプルを、タンパク質のDNA標的への結合を促進する緩衝条件下で、その支持体を通過させる。タンパク質は代表的に、緩衝条件を変えることによりカラムから溶出される。
【0211】
ホスホルアミデート改変結合を有する上記の3重鎖形成DNA分子は、例えば、サンプル中のRNA分子の存在を検出するための診断薬としても同様に使用され得る。
【0212】
さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートサブユニット間結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む複合体は、有用な低分子または有用な結合タンパク質をスクリーニングするために使用され得る:例えば、2重鎖DNAを有するN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド複合体が、3重鎖構造をさらに安定化し得る低分子をスクリーニングするために使用され得る。同様のスクリーニングが、1本鎖DNAとRNA分子により形成されるN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴデオキシリボヌクレオチド複合体についても有用である。
【0213】
(F.変形物)
本発明の方法に使用されるホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドの変形物は、細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込みを促進するための改変(例えば、コレステロール部分の付加(Letsinger, 1990));他のサブユニット間結合を用いてのキメラオリゴヌクレオチドの生成(Goodchild);挿入剤による改変(例えば、3重鎖安定化挿入剤、Wilsonら、1993);およびデオキシリボースサブユニットに代えてのリボースの使用;を包含する。
【0214】
さらなる改変は、オリゴヌクレオチドに対する5’および3’末端の改変(例えば、−OH、−OR、−NHR、NH2、およびコレステロール)を包含する。さらに、リボース2’位は、ハロゲン化(例えば、−F)を含むがそれに限定されない多くの改変の部位であり得る。
【0215】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドはまた、特定の細胞に取り込まれるポリペプチドとの結合により改変され得る。このような有用なポリペチドは、ペプチドホルモン、抗原、および抗体を包含する。例えば、ポリペプチドは、腫瘍性細胞により特異的に取り込まれ、その細胞タイプへのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの特異的な送達を生じるように選択され得る。ポリペプチドおよびオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知の方法により結合され得る(例えば、Ramachandr,K.らによる、1989年12月14日に公開されたPCT公開番号第PCT/US89/02363号、第WO8912110号を参照のこと)。
【0216】
このような改変ホスホルアミデートアナログオリゴヌクレオチドの特性は、本発明の方法に適用される場合、本明細書に記載の方法により決定され得る。
【0217】
本発明の実施の好ましい実施態様、使用、および方法を、詳細に記載してきたが、本明細書に示されているような、種々の他の使用、処方、および実施方法は、本発明の範囲内にあることが認識される。
【0218】
(材料および方法)
メチルホスホルアミデートおよびシアノエチルホスホルアミデートおよびH−リン酸ヌクレオシド試薬を、Glen Research(Sterling,
VA)およびApplied Biosystems Inc.,(Foster City, CA)から購入した。ヌクレオシドメチルホスホノアミダイト試薬をGlen Researchから購入し、そしてDMT−dT−LCAA CPG, 500 Åは、Applied Biosystems Inc.から購入した。
【0219】
オリゴヌクレオチドの酵素による加水分解では、0.2 A260単位の選択オリゴヌクレオチドと、Crotalus durissus(Boehringer−Mannheim, Indianapolis, IN)から入手した0.22 Uのホスホジエステラーゼとを、100μlの10mM Tris・HClおよび10mM MgCl2中でインキュベートした。サンプルを、ホスホジエステラーゼを添加後の0分、10分、40分、4.5時間、および22時間に、分析用に取り出した。生成物は、本質的には実施例2Dに記載のように、RP HPLCにより分析した。
【0220】
核酸の化学合成を含む、標準的な核酸化学は、Miller(1990)により概説されている。
【0221】
化学薬品は、Aldrich(Milwaukee, WI)、Sigma(St. Louis, MO)、およびCalbiochem(San Diego, CA)から購入した。
【0222】
HPLCは代表的に、Dionexクロマトグラフ(Sunnyvale, CA)を使用して実施した。「HYPERSIL ODS」カラム(4.6×200mm、粒子の大きさ 5μ;Hewlett Packard, Palo
Alto, CA)、および0.05M TEAH緩衝液(pH 7.0)中のCH3CNの0.5%/分のグラジエントを、RP HPLCに使用した。イオン交換クロマトグラフィーでは、Dionex「OMNI PAK」NA 100カラム(4×250mm)を、水中の1.5M NaClの1%/分グラジエントで使用した。Pharmacia(Uppsala, Sweden)から入手した「NAP 5」カラムを、オリゴヌクレオチドの脱塩に使用した。キャピラリー電気泳動(CE)分析を、35mM Tris−ホウ酸塩緩衝液(pH 9.0)中で、10% MICROGELTMキャピラリー(0.1×500mm)を用いてABI 270Aシステムで実施した。熱解離実験を、Varian IE分光光度計および温度調節機で行った。260nmまたは284nmでの吸光値を、1.0℃/分の加熱速度で1分間隔で得た。
【実施例】
【0223】
(実施例1)
(オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートを含有するオリゴヌクレオチドの合成)
(A.一般的方法)
ホスホルアミデートアナログの合成を、シリンジ中手動で、あるいはABI 384合成機(ABI、Foster City、CA)で自動的に行った。
【0224】
段階的伸長手順を用いる固体支持体上での一定に改変されたオリゴヌクレオチドの合成のスキーム表示を以下に示す:
【0225】
【化22】
【0226】
ここでRは、スクシニルCPG(制御細孔ガラス)であり、Bは塩基であり、nは4〜100であり、そしてCEOはβ−シアノエチル基である。
【0227】
所定のサイクルについての化学工程、試薬、および反応時間は、(i)脱トリチル化、ジクロロメタン中の3%ジクロロ酢酸、1.5分(図1、工程i);(ii)ホスファイト化、ジクロロメタン中の0.2M 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフィンおよび0.2M ジイソプロピルエチルアミン、10分(図1、工程ii);(iii)加水分解、アセトニトリル/水(9/1 v/v)中の0.4M テトラゾール、5分(図1、工程iii);(iv)カップリング、四塩化炭素/アセトニトリル(1/1、v/v)中の0.2M 5’−DMT−3’−アミノヌクレオシドおよび0.2M トリエチルアミン、20分(図1、工程iv)であった。
【0228】
ホスホジエステルサブユニット間結合を有する標準オリゴヌクレオチドを、標準の方法(ABI 384合成器)により合成した。
【0229】
キメラオリゴマーを構築するために、3’−NHP(O)(OCE)O−5’ホスホルアミデートヌクレオシド間結合基を有する5’−DMT−N−保護3’−ホスホルアミデートダイマービルディングブロックを、通常のホスホルアミデート法(本質的にGryaznovらにより前述された通り、本明細書中に参考として援用される)を用いて合成に使用した。
【0230】
本発明の方法により合成される典型的なオリゴヌクレオチドを図3に示す。合成のさらなる詳細を以下に続ける。
【0231】
(B.オリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホルアミデートの手動合成)
1μmolの5’−DMT−N−保護ヌクレオシドを含む制御細孔ガラス(CPG)ポリマー支持体を、底部にガラスウールのプラグを備えた1mlのHamilton気密シリンジ(Hamilton gas tight syringe)に配置した。
【0232】
所定の合成のサイクルについて、試薬をシリンジに吸い込み、そして以下のプロトコルに従ってシリンジから押し出した:
1.脱トリチル化−−ジクロロメタン中の3%ジクロロ酢酸、5×0.5ml:1.5分。
2.洗浄−−アセトニトリル、6×0.5ml。
3.ホスファイト化−−ジクロロメタン中の0.2M 2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスフィンおよび0.2M ジイソプロピルエチルアミン、0.5ml、周期的な振とうで10分。
4.加水分解−−アセトニトリル/水(9/1 v/v)中の0.4M テトラゾール、周期的な振とうで5分。
5.洗浄−−無水アセトニトリル、10×0.5ml。
6.カップリング−−四塩化炭素/アセトニトリル(1/1、v/v)中の0.2M 5’−DMT−3’−アミノヌクレオシドおよび0.2M トリエチルアミン、振とうしながら20分。カップリング後、溶液を集めて未反応ヌクレオシドを回収した。
7.洗浄−−アセトニトリル、6×0.5ml。
【0233】
所望のオリゴヌクレオチドを調製するまで、工程1〜7を繰返した。平均カップリング収率は、DMT−カチオンアッセイにより判断して、94%〜96%であった。サイクルの完了の際に、支持体結合オリゴマーを脱トリチル化した。濃水酸化アンモニウムを用いて支持体から切断およびN−脱保護して、粗オリゴヌクレオチドを得、これをイオン交換HPLCにより精製した。
【0234】
(C.交互にN3’→P5’ホスホルアミデートO3’→P5’ホスホジエステル結合を含むオリゴヌクレオチド2の手動合成)
5’−DMT−3’−アミノチミジンおよび5’−DMT−チミジン−3’−ホスホルアミデートサブユニットを用いて、交互にN3’→P5’ホスホルアミデートとO3’→P5’ホスホジエステル結合とを有するオリゴヌクレオチドを合成した。
【0235】
オリゴヌクレオチド2(配列番号2)の合成のために、1マイクロモルのT−CPG(チミジン結合CPG)を1mlのHamilton気密シリンジに入れた。上述の通りに5’−DMT−3’−アミノチミジンサブユニットを添加した。5’−DMT−チミジン−3’−ホスホルアミデートサブユニットの添加を、標準の合成手順(Applied Biosystems、Foster City CA)により行った。
【0236】
9回目のカップリング反応の後、ポリマー支持体を濃水酸化アンモニウムで処理して、粗オリゴマーを遊離させた。オリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCにより精製した(例えば、実施例2)。オリゴヌクレオチド2をCEおよび31P NMRにより分析した(例えば、実施例2)。
【0237】
(D.5’−DMT−N−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成)
以下の工程は、アデノシンサブユニットについて本明細書中に記載される方法に類似した、5’−DMT−N−イソブチリル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシグアノシンの合成方法を記載する。
【0238】
1.5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンを、生成物を以下のように精製した以外は、Nishinoら(1986)の方法(この方法は本明細書中に参考として援用される)に本質的に従って、N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンから調製した:CH2Cl2と水との間に分配し、減圧下でCH2Cl2層を濃縮し、そして生成物をエーテルで結晶化した。濾過により回収した後、生成物を新たなエーテル中で一晩撹拌し、そして濾過により再び集めた。5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンの全収率は、50%〜80%であった。
【0239】
2.5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンを、Herdewijnおよびvan Aerschot(1989)の方法(この方法は本明細書中に参考として援用される)に本質的に従って、5’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシグアノシンから調製した。生成物を、減圧下で粗混合物を乾燥することにより精製し、次いでCH2Cl2に溶解した。3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン生成物が自然に沈澱し、そして濾過により得た。
【0240】
3.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン。乾燥3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン(7.3g)および7.9gの塩化4,4’−ジメトキシトリチルを、150mLの無水ピリジンに溶解した。24時間後、1mLの水を混合物に加えた。次いで、混合物を5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン生成物を含有するフォームまで減圧下で濃縮した。フォームを300mLのCH2Cl2に溶解し、250mLの水で洗浄し、そして減圧下で再び濃縮した。
【0241】
4.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン。粗5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−O−ベンゾイル−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンを、1.2Lの5:4:1 ジオキサン:メタノール:水に溶解し、そして氷浴で冷却した。この混合物に120mLの2N NaOHを加えた。得られた混合物を、0℃で25分間撹拌し、そしてピリジニウムH+型Dowex 50イオン交換樹脂で中性化した。2〜3分後、樹脂を濾過により除去し、そして生成物を減圧下でスラリーまで濃縮した。スラリー中の白色沈殿物(5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシン)を濾過により除去し、水で洗浄し、空気乾燥し、そして減圧下、P2O5で乾燥した。
【0242】
5.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3’−アミノ−N−イソブチリル−2’,3’−ジデオキシグアノシン。粗5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N−イソブチリル−2’−デオキシキシログアノシンに、7.9gのトリフェニルホスフィンおよび4.8gのLiN3を加えた。混合物を、減圧下、P2O5で3時間さらに乾燥した。これらの乾燥化合物を、450mLの無水ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液に、5.3mLのジエチルアゾジカルボキシレートを加えた。混合物を一晩撹拌し、1mLの水を加え、そして溶媒を減圧下で除去した。
【0243】
1リットルのCH2Cl2を乾燥した混合物に加え、そして得られた混合物を毎回1Lの水で2回洗浄した。CH2Cl2層を減圧下で淡褐色オイルまで濃縮し、次いでこのオイルを600mLのピリジン中の10%トリエチルアミンに溶解した。この混合物を氷浴で冷却し、そしてH2Sを通気により加えた。30分後、氷浴を除去し、そしてH2S流動をさらに3時間続けた。溶液を減圧下で淡褐色オイルまで濃縮した。
【0244】
CH2Cl2中の0.5%ピリジンで前処理したシリカゲルカラムでオイルをフラッシュクロマトグラフィーにかけ、次いでCH2Cl2中の0%〜5%メタノールの勾配で溶出して、3.5gの5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3−アミノ−N−イソブチリル−2’,3’−ジデオキシグアノシン(図1C)を得た。
【0245】
(E.5’−DMT−N−ベンゾイル−3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシアデノシンの合成)
3’−アミノ−N6−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシンの合成の工程を以下に示す:
【0246】
【化23】
【0247】
1.N6 5’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシンの調製。塩化ベンゾイル(2.45mL、21mmol)のピリジン(150mL)溶液を、室温で約1時間かけてN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン(化合物1、図20)(5g、14mmmol)のピリジン(45mL)溶液に滴下した。反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した。反応混合物をメタノール(5mL)でクエンチし、そしてエバポレートして乾固させた。
【0248】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびH2Oで洗浄した。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させた。この残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、200g)にかけて5%CH3OH/CH2Cl2で溶出し、そして溶媒をエバポレートして除去し、6g(93%)の所望のN65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシン生成物(化合物2、図20)を得た。
【0249】
2.N6−ベンゾイル−9−(3’−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニンの調製。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.2mL、25mmol)を、0℃でN65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシン(7.5g、16.3mmol)の10%ピリジン/CH2Cl2(150ML)懸濁液に加えた。反応物を0℃で30分撹拌し、続いてH2O(26mL)を加えた。次いで、反応混合物を室温で一晩撹拌し、そしてエバポレートして乾固させた。
【0250】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO2水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。有機層をエバポレートして乾固させ、N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニン生成物(化合物3、図20)を含有する褐色オイルを得、これをさらなる精製なしに使用した。
【0251】
3.N6−ベンゾイル−9−(3’−O−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニンの調製。N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペンテオフラノシル)アデニンを、ピリジン(60mL)に溶解した。次いで、塩化ジメトキシトリチルを室温で一晩撹拌した。反応物をCH3OHでクエンチした。混合物をエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートした。残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、400g)にかけて4%CH3OH/CH2Cl2で溶出した。N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−5−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン生成物(化合物4、図20)を含有する所望の画分を集め、そしてエバポレートして乾固させた。生成物の収量は7g(N65’−ジベンゾイル−2’−デオキシアデノシンから56%)であった。
【0252】
4.N6−ベンゾイル−9−(5’−O−ジメトキシトリチル−2’−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニンの調製。NaOH水溶液(2M、40mL)を、0℃で、N6−ベンゾイル−9−(3−O−ベンゾイル−5−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン(7g、9.2mmol)のp−ジオキサン(200mL)、CH3OH(160ML)およびH2O(40mL)の混合物溶液に加えた。反応混合物を0℃で25分間撹拌した。反応をDowex 50×2−100イオン交換樹脂(ピリジニウム型)を加えることにより停止して、溶液をpH7まで中性化した。固形物を濾過により除去し、そして溶媒をエバポレートして乾固させた。
【0253】
残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させ、N6−ベンゾイル−9−(5−O−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン生成物(化合物5、図20)を含有する淡黄色の固体を得た。この生成物をさらに精製せずに使用した。前工程からの生成物の収量は6g(99%)であった。
【0254】
5.3’−アミノ−N6−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシンの調製。ジエチルアゾジカルボキシレート(1.42mL、9mmol)を、N6−ベンゾイル−9−(5−O−ジメトキシトリチル−2−デオキシ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン(2g、3mmol)のDMF(40mL)懸濁液(この懸濁液はトリフェニルホスフィン(2.4g、9mmol)およびLiN3(4.1g、83.8mmol)をさらに含有する)に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、そしてエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO3水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして褐色オイルを得た。褐色オイルをCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、100g)にかけて3%CH3OH/CH2Cl2で溶出して、化合物6(図20)を淡褐色オイルとして得た。
【0255】
このオイルを15%トリエチルアミン/ピリジン(36mL)に溶解した。次いで、硫化水素を0℃で30分間溶液に通気した。溶液を室温で30分以上撹拌した。溶媒をエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、飽和NaHCO2水溶液、H2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そしてエバポレートして乾固させた。残渣をCH2Cl2に溶解し、そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、70〜230メッシュ、100g)にかけて5%CH3OH/CH2Cl2で溶出して、最終生成物3’−アミノ−N6−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシ−アデノシン(化合物7、図20;図1e)を得た。前工程からの生成物の収量は1.6g(80%)であった。あるいは、還元はPt/炭素触媒上でH2を用いて達成され得る。
【0256】
(F.他のDMT−サブユニットの合成)
Glinskiら(1970)に従って、5’−DMT−3’アミノチミジンおよび5’−DMT−N−ベンゾイル−3’−アミノシチジンの合成を行った。
【0257】
(実施例2)
(N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドの
キャラクタリゼーション)
実施例1に記載したように合成したオリゴヌクレオチドを、以下の方法により評価した。
【0258】
(A.イオン交換クロマトグラフィーによる精製)
オリゴヌクレオチドを、イオン交換(IE)HPLCにより過剰の反応成分から精製した。IE HPLC分析をDionex(Sunnyvale、CA)クロマトグラフで行った。Dionex「OMNIPAC NA100」、4×250mmカラムを、0.03M TEAA緩衝液(pH7.0)中の1.0M
NaClの1%/分または2%/分の勾配;流速、1.0ml/分で使用した。
【0259】
図4Aは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3(図3)の合成後の反応混合物の代表的なHPLCクロマトグラムを示す。図の最大ピークはオリゴヌクレオチド3生成物に対応する。IE HPLCカラムでの3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートの保持時間は、対応するホスホジエステル化合物の保持時間より1.0〜1.5分短かった。次いで、生成物をエタノールを用いた沈澱により濃縮し、そして水に再懸濁した。
【0260】
(B.オリゴヌクレオチドの純度)
合成したオリゴヌクレオチドの純度を、代表的にはキャピラリーゲル電気泳動により評価した。キャピラリー電気泳動を、Applied Biosystems Incorporated Model 270A機を用い、「MICKROGEL」キャピラリーチューブで、本質的に製造者の指示に従って行った。
【0261】
図4Bは、ウンデカホスホルアミデート6(図3)の合成後の反応混合物の典型的なキャピラリーゲル電気泳動プロフィルを示す。
【0262】
あるいは、単離したオリゴヌクレオチドの純度を、高いパーセントのポリアクリルアミドゲル(例えば、20%アクリルアミド、5%ビス−アクリルアミド)中のサンプルの電気泳動分離により評価する(Ausubelら;Maniatisら)。オリゴヌクレオチドを臭化エチジウムで染色し、そしてUV光に曝すことにより可視化した。3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートの電気泳動分離の際のポリアクリルアミドゲルにおける相対的移動度は、対応するホスホジエステル化合物に対する移動度よりも10〜15%低かった。
【0263】
(C.核磁気共鳴分析)
NMRスペクトルを、外部標準としてD2O中の85%リン酸を用いる31Pスペクトルについて162MHzで、そして外部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いる1Hスペクトルについて400MHzでVarian XL−400(Varian Associates、Palo Alto、CA)分光器で記録した。
【0264】
典型的な結果を図4Cに示す。図4Cは精製されたデカホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3(図3)の31P−NMRスペクトルを示す。スペクトルはホスホルアミデート基に特徴的なδ7.12ppmのピークを示す。
【0265】
(D.加水分解生成物の逆相高性能液体クロマトグラフィー分析)
精製したホスホルアミデート10マーオリゴヌクレオチド3(図3)を、25℃で48時間80%酢酸で処理することにより加水分解した。加水分解生成物を逆相(RP)HPLCにより評価した。RP HPLC分析をHewlett Packard(Palo Alto、CA)製の「HYPERSIL ODS」5μ、4.6×200mmカラムのDionexクロマトグラフで、0.03M TEAA緩衝液(pH7.0)中のアセトニトリルの1%/分の勾配;流速、1ml/分を用いて行った。加水分解生成物は、3’アミノ−5’−チミジル酸、5’−チミジル酸、および3’−アミノチミジンとして同定された。さらに、加水分解生成物(合計ピーク)の約7%は少量の副生成物であった。これらの結果により、オリゴヌクレオチド中のN3’→P5’ホスホルアミデート結合の存在が確認される。
【0266】
(実施例3)
(熱解離)
(A.2重鎖溶融)
熱解離曲線を、温度制御器(Varian)を備えたCarry 1E分光光度計(Varian、Palo Alto、CA)を用いて得た。反応溶液は、pH7.05の15mMリン酸緩衝液中に等濃度のオリゴマーおよび補体(オリゴマー鎖中に約6μM)を含んでおり、そして全Na+濃度が100mMになるようにNaClが加えられた。
【0267】
オリゴ(dT)、ポリ(dA)およびポリ(A)について用いられたモル吸光係数は、それぞれ8.2A260×103、8.4A260×103、および10.2A260×103であった。109A260ユニット/μMの吸光係数は、混合ベースオリゴマーについて用いられた。吸光係数は、P.N.Borer(1975)により編集された表から計算した。
【0268】
反応溶液を0℃で平衡化し、そしてその後260nmでの吸光度を、温度が5分当たり3℃の増加量で増加するようにして調べた。所定の温度での結合状態(α)におけるオリゴマーの画分を、Abergoら(1981)により記載されるように、上部基準線および下部基準線(upper and lower base lines)の使用により決定した。Tm値を、α=0.5での温度として定義した。Ink(Markyら、1987)対1/Tのプロットは、これらの化合物に関して直線であった。
【0269】
熱変性研究の結果もまた、260nmでの標準化吸光度 対 温度(℃)としてプロットした。図5Aおよび5Bは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成した2重鎖に関する典型的な溶融曲線を示す。図において:(A)、(C)および(B)、(D)は、それぞれ、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド4)を用いる図3、実験8、9;およびホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6)を用いる図3、実験13、14に対応する。
【0270】
熱安定性データを図3{Tm(℃)}に要約する。表において、Tmは溶融曲線の中点での温度であり;npは3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合についての略語である。
【0271】
オリゴヌクレオチドの濃度は、代表的には5μMオリゴマー鎖であった。緩衝液A(10mM Tris HCl、150mM NaCl、pH7.02)を、2重鎖熱安定性研究に使用した。
【0272】
(B.オリゴヌクレオチドヘアピン)
相補的な鎖の両方にホスホルアミデート結合を含むオリゴヌクレオチドにより形成された2重鎖の安定性を、本質的に上述のように評価した。図6に示すキメラホスホルアミデート−ホスホジエステルヘアピンオリゴマーを合成した。
【0273】
図6の全ての分子を、2’−デオキシリボヌクレオチドを用いて構築した。
【0274】
熱解離実験を、本質的に上述のように行ったが、以下の反応条件であった:オリゴヌクレオチド濃度2.5μMで10mM Tris HCl緩衝液、pH7.02。
【0275】
これらの実験から得られたTm値を図6に要約する。
【0276】
(C.3重鎖溶融)
3重鎖熱安定性を、本質的には2重鎖について上述したように評価した。緩衝液条件は、上記(緩衝液A)または第2の緩衝液である緩衝液B(10mM Tris HCl、150mM NaCl、10mM MgCl2、pH7.02)のいずれかを用いた。
【0277】
図7A〜7Dは、典型的な3重鎖溶融曲線を示す。図7Aおよび7Cは、温度に対してプロットした260nmでの標準化した吸光度を示す。図7Bおよび7Dは、温度に対してプロットした284nmでの標準化した吸光度を示す。図において:2重鎖DNAとホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3とにより形成した3重鎖は黒丸線に対応し;ホスホジエステルオリゴヌクレオチド1を用いて形成した3重鎖は開いた白四角線に対応する。
【0278】
データは図3、実験7に対応し、ここで曲線(A)および(C)は、260nmでモニターした濃色性を用いて、それぞれ緩衝液AおよびBを用いて行った熱安定性研究であった。曲線(B)および(D)は、それぞれ、濃色性を284nmでモニターした(A)および(C)である。
【0279】
図7A〜7Dに示すデータは、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド1が、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3が形成するのと同様の2重鎖DNA標的を有する3重鎖を形成しないことを示す。
【0280】
(実施例4)
(ゲルバンド移動度シフトアッセイ)
3重鎖構造を、ゲルバンド移動度シフトアッセイを用いてさらに評価した。
【0281】
(A.ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3)
ゲルバンド移動度シフトアッセイ条件は、以下の通りであった:10mM MgCl2、80mM Tris−ホウ酸緩衝液(pH8.2)中の20%アクリルアミド、5%ビスアクリルアミド、10℃。ゲルを、代表的にはネイティブ(非変性)条件下で移動させた。このようなゲルバンド移動度シフトアッセイの典型的な結果を、図8に示す。図において、レーンは以下の通りである:1−10マーホスホジエステルオリゴヌクレオチド1;2−10マーホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3;3−24マーヘアピン標的d(A10C4T10)(図3、実験7)。レーン3において、遅く移動する薄いバンドは、d(A10C4T10)の2分子2重鎖に対応すると思われる;4−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド1;5−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド3。
【0282】
ゲルを、STAINS−ALLTM(Kodak、Rochester NY)で染色し、そしてMolecular Dynamics(Sunnyvale、CA)デンシトメーターで映像化した。ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3染色の効率は、ホスホジエステル化合物(オリゴヌクレオチド1および2重鎖)とは異なる。
【0283】
図において、3重鎖構造の移動度を矢印で示す。図に示した結果から分かり得るように、ゲルバンド移動度シフトアッセイの結果は、熱変性研究から得られた結果を確認する。すなわち、オリゴヌクレオチド1は、オリゴヌクレオチド3と同様の標的を有する3重鎖を形成しない。
【0284】
(B.ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6)
2本鎖DNA標的を有するホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6アナログの3重鎖形成もまた、ゲルバンド移動度シフトアッセイにより確認した。
【0285】
ゲルバンド移動性シフトアッセイの条件は、本質的に上述の通りであった。分析の結果を図9に示す。図において、レーンは以下の通りであった:1−11マーのホスホジエステルオリゴヌクレオチド4;2−11マーのホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6;3−26マーのヘアピン標的(配列番号22);4−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド4;5−ヘアピン標的およびオリゴヌクレオチド6。
【0286】
図において、3重鎖構造の移動度を矢印で示す。上記で分かるように、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド4は、オリゴヌクレオチド6と同様の標的を有する3重鎖を形成しない。
【0287】
(実施例5)
(ホスホルアミデートアナログのインビトロでの評価)
N3’→P5’ホスホルアミデート結合を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成した。これは白血病細胞株BV173におけるBCR/ABL融合接合部(B2A2)に相補的であった。以下のアッセイは、白血病細胞増殖を測定し、そして本質的にAnfossiら(1989)により記載された通りに行う。
【0288】
簡潔には、図10は、B2A2型ブレークポイントを有するBV173細胞の白血病細胞増殖に対するBCR−ABLオリゴマーの効果を示す。BV173は、B2A2 BCR/ABL融合接合部を有する白血病細胞株である(Pegoraroら、1983)。HL60は、正常なc−abl座を有する前骨髄細胞白血病細胞株である(Collinsら、1977)。K562は、B3A2 BCR/ABL融合接合部を有する白血病細胞株である(Seeligら、1993)。
【0289】
細胞(5×104個)を0.2mlの液体懸濁液培地(2%ヒトAB血清を有するIscove改変Dullbecco改変培地−−Life Technologies、Gaitherburg、MD)に置いた。
【0290】
オリゴヌクレオチドを24時間間隔で3日間(0日、1日および2日目)培地に与え、図10〜19の凡例(全てμg/mlの濃度である)に示す増加濃度、例えば、図10−−40/20/20;20/10/10;10/5/5;および5/2.5/2.5を達成した。例えば、40/20/20は、最後のオリゴヌクレオチド添加後の細胞培養培地における最終全濃度が80μg/mlであることを反映することに注意されたい。細胞数計測を標準の方法により行った。
【0291】
図10は、図の凡例に示す濃度で、十分に改変したN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6(配列番号6)を用いたアッセイの結果を示す。標的細胞はBV173であった。結果は、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、白血病細胞の増殖の阻害に(使用した最低濃度でも)極めて有効であることを示す。
【0292】
図11は、HL60細胞、非BRC−ABL発現細胞株とオリゴヌクレオチド6との処理の結果を示す。結果は、全ての濃度のオリゴヌクレオチドに対して細胞は十分に耐性があったことを示す。明らかな細胞障害性はなかった。
【0293】
図12および13は、それぞれ図10および11に示した結果と同様の実験の結果を示す。最低濃度(0.3125/0.15625/0.15625)でも、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6は、白血病細胞増殖の阻害(図12)に極めて有効であったが、無視し得る程度の毒性しか保持していなかった(図13)。
【0294】
図14および15は、それぞれ図10および11に示した結果と同様の実験の結果を示す。しかし、図15に示したデータに対応する実験において、標的細胞は、B3A2 BCR/ABL融合接合部を含むK562であった。図14に示した実験からのデータに、培地中のN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6の効果に対する移行濃度を示す。特に、0.0198/0.0098/0.0098の濃度で、増殖の阻害がいくぶん解除されることがオリゴヌクレオチド6により見られ得る。
【0295】
さらに、図15に示すデータは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6が、B3A2融合接合部を有するK562細胞の増殖に対して本質的に影響しなかったことを示す。これらの結果は、抗増殖効果が、特にB2A2 BCR/ABL融合接合部に関連することを示し、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6は、この融合接合部に相補的である。
【0296】
対照的に、図16〜19は、十分に改変したホスホロチオエートサブユニット間結合を有する16マー(配列番号26)についての同様のデータを示す。図16は、図の凡例に示す濃度で、十分に改変したホスホロチオエート16マー(配列番号26)を用いたアッセイの結果を示す。ここで標的細胞株はBV173であった。結果はオリゴヌクレオチド6で見られた結果(図10)と同様であるが、データは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが白血病細胞の増殖の阻害にオリゴヌクレオチド6ほど効果的ではないことを示す。
【0297】
図17は、B3A2 BCR/ABL融合接合部に相補的な配列を有する16マーのホスホロチオエート(配列番号27)を有するBV173 BRC/ABL細胞株の処理の結果を示す:B3A2は、B2A2 BCR/ABL融合接合部にミスマッチな2つの塩基対配列を有する。結果は、全ての濃度のオリゴヌクレオチドに対して細胞は耐性があったことを示す。
【0298】
図18および19は、それぞれ図16および17に示した結果と同様の実験の結果を示す。これらの実験からのデータにおいて、細胞増殖の阻害の解除が、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド6に対して見られた濃度よりも、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに対してより低い濃度で見られる。
【0299】
これらの結果は、インビトロでのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドが、低濃度で有効なアンチセンス化合物であることを示す。さらに、N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドよりも良好なアンチセンス剤である。
【0300】
(実施例6)
(c−mycを用いるアンチセンス阻害)
ヒトc−myc mRNAに相補的なN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを、c−myc遺伝子発現を阻害するためにも使用し、そしてN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの効果をホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較した。HL60細胞を以下のc−mycオリゴヌクレオチドの1つとインキュベートした:
配列番号28 TTTCATTGTT TTCCA (アンチセンス)
配列番号29 TTTCTATTGT TTCCA (ネガティブコントロール;ミスマッチ)
配列番号30 AACGTTGAGG GGCAT (アンチセンス;第2エクソン)
配列番号31 AACGAGTTGG GGCAT (ネガティブコントロール;ミスマッチ)
配列番号32 UUUCAUUGUU UUCCA (アンチセンス;TをUで置換した)
c−mycオリゴヌクレオチドの全てのヌクレオチド間結合は、他に示さない限り、N3’→P5’ホスホルアミデート結合であった。各タイプのc−mycオリゴヌクレオチドを、指示した濃度で72時間、培地中でHL−60細胞を用いて個別にインキュベートした後、細胞を、当該分野で公知の顕微鏡技術により増殖についてか、またはHoltら、Mol. and Gen Bio. 8:963−973(1988)に記載されているウエスタンブロットによりc−myc発現についていずれかをアッセイした。これらの方法は、本明細書中に参考として援用される。結果を表3に示す:
(表3)
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドを用いる、HL60細胞におけるc−myc発現の、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較して改善された阻害
【0301】
【表2】
【0302】
N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド配列番号29はまた、0.1μM、0.5μM、および1μMで、累進的にH60細胞増殖のより大きな阻害(ここで増殖は各濃度で、0日、3日および6日目に測定された)を、0.1μM、0.5μM、および1μMでのN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド31(ネガティブコントロール;ミスマッチ)と比較して示した。このネガティブコントロールはDNAを有さないコントロールに匹敵する増殖レベルを示した。0日目で、各培地は約10,000個の細胞を有した。6日目までに、両方のコントロール培地は、培地当たり約50,000個の細胞を有し、そしてN3’→P5’ホスホルアミデート1μM培地は、培地当たり約25,000個の細胞を有した。
【0303】
この結果は、用量および配列に依存する方法における細胞増殖を阻害するc−myc N3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの能力、およびc−myc発現の阻害においてホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較してN3’→P5’ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドがより大きな効果を有することを示す。このデータは、ウエスタンブロットにより示されるc−myc阻害と相関する。
【0304】
本発明を特定の方法および実施態様に関して記述してきたが、本発明から逸脱することなく種々の改変および変化がなされ得ることが理解される。
【0305】
改変されたオリゴヌクレオチド、3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートを固体支持体上で合成した。該ホスホルアミデートアナログは、ホスホジエステラーゼ消化に対する著しく高められた抵抗性を有することを見出した。熱解離の実験により、これらの化合物は相補的DNAおよび特定のRNAストランドを有するホスホジエステルよりさらに安定な2重鎖を形成することが示された。さらに、ホスホルアミデートアナログはまた、2本鎖DNA標的を伴う安定な3重鎖を形成し得るが、類似の条件下で元のホスホジエステル化合物は3重鎖を形成し得なかった。
【0306】
[配列表]
【化24】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【図面の簡単な説明】
【0321】
【図1A】図1Aは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1B】図1Bは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1C】図1Cは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1D】図1Dは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図1E】図1Eは、ヌクレオシド間の3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデート結合(N3’→P5’)を有するオリゴヌクレオチドの合成に有用なサブユニットの構造を示す。図1Eは、一様に改変されたオリゴヌクレオチドの段階的合成の概略図を示す。図中、CEはシアノエチルを、CPGは制御されたポアガラス(controlled pore glass)である。
【図2A】図2A、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2B】図2Bは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2C】図2Cは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2D】図2Dは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2E】図2Eは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図2F】図2Fは、他の、交互の結合を有する3’−NHP(O)(O−)O−5’ホスホルアミデートサブユニット間結合の組合わせ例を示す。図2Dおよび2Fにおいて、例えば、R’は低級アルキル基であり、Goodchild(1990)により記載されるように、他の置換基も可能である。
【図3】図3は、オリゴヌクレオチドの例および2重鎖および3重鎖のTm値を示す。図において、a=緩衝液A中の複合体のTm値。b=緩衝液中のTm値;ヘアピン2重鎖のTm値は緩衝液AおよびBで、それぞれ55.7℃および61.5℃であった。c=ミスマッチのヌクレオチドには下線で付す。
【図4A】図4Aは、ホスホルアミデートオリゴヌクレオチド3の合成後の反応混合物のIE HPLCプロファイルを示す。
【図4B】図4Bは、ウンデカホスホルアミデート6の合成後の反応混合物のキャピラリーゲル電気泳動のプロファイルを示す。
【図4C】図4Cは、デカホスホルアミデート3の31P−NMRの結果を示す。
【図5A】図5Aは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線を示す。
【図5B】図5Bは、ホスホジエステルおよびホスホルアミデートオリゴマーにより形成される2重鎖の融解曲線を示す。
【図6】図6は、オリゴヌクレオチドのヘアピンの例およびそれらのTm値を示す。
【図7A】図7Aは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7B】図7Bは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7C】図7Cは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図7D】図7Dは、3重鎖の融解曲線を示す。
【図8】図8は、オリゴヌクレオチド3重鎖形成物の未変性条件下におけるゲル電気泳動分析を示す。
【図9】図9は、オリゴヌクレオチド3重鎖形成物の未変性条件下におけるゲル電気泳動分析を示す。
【図10】図10は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図11】図11は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図12】図12は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図13】図13は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図14】図14は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図15】図15は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図16】図16は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図17】図17は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図18】図18は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図19】図19は、ホスホルアミデート(N3’→P5’)(図10〜15)またはホスホロチオエート(図16〜19)サブユニット間結合のいずれかを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの、種々のBCR−ABL白血病細胞株および対照細胞株についての白血病細胞の増殖に関する結果を示す。
【図20】図20は、3’−アミノ−N6−ベンゾイル−5’−ジメトキシトリチル−2’,3’−ジデオキシアデノシンの調製を概略的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−108095(P2009−108095A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323004(P2008−323004)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【分割の表示】特願2002−171743(P2002−171743)の分割
【原出願日】平成7年3月20日(1995.3.20)
【出願人】(595161223)ジェロン・コーポレーション (32)
【氏名又は名称原語表記】GERON CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【分割の表示】特願2002−171743(P2002−171743)の分割
【原出願日】平成7年3月20日(1995.3.20)
【出願人】(595161223)ジェロン・コーポレーション (32)
【氏名又は名称原語表記】GERON CORPORATION
【Fターム(参考)】
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