説明

オレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを合成するための方法及び装置

アルカン、アルケン、アルキン、ジエン及び芳香族から成る群から選択された反応物質を、塩素、臭素及びヨウ素を含む群から選択されたハロゲン化物と反応させる。第1の反応生成物を固体酸化剤と反応させて、オレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを含む群から選択された生成物及び使用済み酸化剤を形成させる。使用済み酸化剤を酸化させて、元の固体酸化剤及び第2の反応物質を形成させ、これらを再循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、現米国特許第6,472,572号である2001年6月20日付け米国特許出願第09/886,078号の一部継続出願である、現米国特許第6,465,696号である2001年9月11日付け先行米国特許出願第09/951,739号の一部継続出願である、現米国特許第6,486,368号である2002年1月24日付けの先行米国特許出願第10/054,004号の一部継続出願である、放棄された2002年7月29日付け先行米国特許出願第10/208,068号の一部継続出願である、放棄された2002年11月20日付けの先行米国特許出願第10/298,440号の継続出願である、現在係属中の2003年2月12日付けの先行米国特許出願第10/365,346号の一部継続出願に対応する。
【0002】
本発明は一般に、アルカン、アルケン及び芳香族からオレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを合成するための方法及び装置に、より特定的には、本出願で特定された特許及び特許出願の中で開示されている反応の選択性における改良及びその特定的応用に関する。
【背景技術】
【0003】
2002年6月29日付け米国特許出願第10/208,068号は、エタンをジエチルエーテル、エタノール及び酢酸エチルに転換するためのプロセスであって、エタンが塩素、臭素及びヨウ素を含む群の中から選択されたハロゲンと反応するプロセスを開示している。例えば、エタンは臭素と反応してブロモエタンとHBrを形成する。次にブロモエタンは金属酸化物と反応してジエチルエーテル、エタノール、酢酸エチル及び金属臭化物を形成する。金属臭化物は、酸素又は空気と反応して元の金属酸化物を再生させる。このプロセスの中で、臭素及び金属酸化物が再循環される。
【0004】
2003年2月12日付けの米国特許出願第10/365,346号は、アルカン、アルケン又は芳香族を含む反応物質を金属ハロゲン化物と反応して、その反応物質のハロゲン化物及び還元された金属を生成するプロセスを開示している。その還元された金属は空気又は酸素で酸化されて対応する金属酸化物を形成させる。その金属酸化物は、反応物質のハロゲン化物と反応して、アルコール及び/又は、元のアルカン、アルケン又は芳香族に対応するエーテル、並びに再循環される元の金属ハロゲン化物を形成させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、上記に特定した出願において開示された金属酸化物及び金属ハロゲン化物に加えて、固相触媒/反応物質を使用することを含む、オレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを合成するためのプロセスを含んで成る。本出願はさらに、例えば温度制御を含む、以前に提出された出願の中で開示された反応の選択性を改善するための技術を含んで成る。本出願はさらに、開示されたプロセスの特定の利用を含んで成る。
【0006】
本発明は、添付図面と併せて詳細な説明を参照することにより、さらに完全に理解することができるものである。
【0007】
発明の詳細な説明
ここで図面、特にその図1を参照すると、本発明の第1の実施形態を構成するアルコール及び/又はエーテルを合成するための方法及び装置10が示されている。該方法及び装置ならびに以下で記述する本発明のその他の実施形態は、オレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを合成するために使用できる。アルコール及び/又はエーテルがアルケンから合成されている以下の記述は、それらを代表するものである。
【0008】
メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどを含み得る選択されたアルカンが、ライン16を通って適切な供給源14から第1の反応器12の中に収容される。反応器12は同様にライン18を通して金属ハロゲン化物をも受入れる。反応器12内に収容される金属ハロゲン化物を含むハロゲン化物は、塩素、臭素及びヨウ素を含む群から選択される。
【0009】
金属ハロゲン化物とアルカンの反応は、ライン20を通って回収される対応するハロゲン化アルキルを生成する。該反応は同様に、金属水素化物といったような還元された形の金属をも生成し、これはライン22を通して回収され第2の反応器24へと導かれる。第2の反応器24は同様にライン28を通して供給源26から酸素及び/又は空気を受け入れる。
【0010】
第2の反応器24は、ライン22を通して受入れた還元された金属を金属酸化物に転換するように機能し、この金属酸化物は、ライン30を通して回収され、第3の反応器32へと導かれる。第2の反応器24内の反応温度は、第1の反応器12内での反応後に金属上に残った全ての臭素が金属上に残留し、金属上の水素のみが酸素と置換されるように充分低いものである。金属から遊離した水素は水に転換される。
【0011】
第3の反応器32内で、第1の反応器12内で形成したハロゲン化アルキルは、第2の反応器24内で形成した金属酸化物と反応して対応するアルコール及び/又はエーテルを形成し、これは出口34を通して回収される。第3の反応器32内での反応は同様に、金属ハロゲン化物を生成し、これはライン18を通して第1の反応器12に再循環させられる。
【0012】
本発明の特定の適用に従って、第1の反応器12はライン16を通して供給源14からエタンを受け入れ、反応器12内にライン18を通して収容された金属ハロゲン化物は、金属臭化物を含む。反応器12内の反応は臭化エチルを生成し、これはライン20を通って回収され第3の反応器32に導かれる。第3の反応器32内の反応は、以下のように特徴づけされ得る:
4CH3CH2Br+金属酸化物+XH2O→2CH3CH2OH+
CH3CH2OCH2CH3+金属臭化物2
【0013】
従って明白となるように、反応器32内の反応は、反応器内部に存在する水の量に応じてアルコールの生成に向かって又はエーテルの生成に向かって偏向され得る。図1はさらに、ライン36を通して蒸気がライン20内に導かれ、反応器12内で生成された臭化エチル及びHBrと共に反応器32内に入るようにする、本発明の第1の実施形態の作業様式を例示している。上述の化学式から明らかであるように、反応器32内への蒸気の導入により、装置の中での反応は、ジエチルエーテルの生成とは異なり反応器32内でのエタノールの生成に向かって選択的なものとなる。
【0014】
ここで図2を参照すると、本発明の第2の実施形態を構成するオレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを生成する方法及びそのための装置が示されている。本発明の第2の実施形態の構成要素の多くは、図1に例示されそれと併せて以上で記述されてきた通りの本発明の第1の実施形態の構成要素と構造及び機能面で同一である。このような同一の構成要素は、図2でも、本発明の第1の実施形態の記述において利用されたものと同じ参照番号で呼称されている。
【0015】
本発明の第2の実施形態は、ライン20を通して反応器32内に導かれるのではなく、蒸気がライン42を通して直接反応器32内に注入されるという点で、本発明の第1の実施形態とは異なっている。こうして蒸気を反応器内の特定の地点で反応器32に添加することが可能であり、かくして、エーテルの生成から離れアルコールの生成へと向かう、内部で発生する反応の選択性が増大することになる。
【0016】
本発明の第3の実施形態を構成するオレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを生成するための方法及び装置50は、図3内に例示されている。本発明の第3の実施形態の構成要素の多くは、構成及び機能の面で、図1に例示されそれと併せて以上で記述されている本発明の第1の実施形態の構成要素と同一である。このような同一の構成要素は、図3において、本発明の第1の実施形態の記述内で利用されているものと同じ参照番号で設計されている。
【0017】
本発明の第3の実施形態は、その運転中に水がライン52を通して反応器32から除去されるという点において、第1及び第2の実施形態と異なっている。反応器32からの水の除去は、蒸留か又は浸透作用又はその両方によって達成される。以上で設定された反応から明らかであるように、反応器32からの水の除去によって、内部で発生する反応がアルコールの生成とは異なりエーテルの生成に向かって選択的なものとなる。
【0018】
ここで図4を参照すると、本発明の第4の実施形態を構成するオレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを生成するための方法及び装置60が示されている。本発明の第4の実施形態の構成要素の多くは、図1に例示されそれと併せて以上で記述されてきた通りの本発明の第1の実施形態の構成要素と構造及び機能面で同一である。このような同一の構成要素は、図4でも、本発明の第1の実施形態の記述において利用されたものと同じ参照番号で呼称されている。
【0019】
本発明の第4の実施形態に従うと、酸素及び/又は空気は、還元された金属を金属酸化物へと酸化し戻すことに加えて、付加的な酸素が金属酸化物に添加され分子のハロゲン化物が遊離させられるような速度で、第2の反応器24の中に導かれる。第2の反応器34からの反応生成物は分離器62へと導かれる。分離器62は、ライン64を通して金属酸化物を反応器32まで導き、ライン66を通して酸素を供給源26まで戻し、ハロゲン化物をライン70を通してハロゲン化物貯蔵タンク68まで導く。貯蔵タンク68から、ハロゲン化物はライン72及びライン18を通して反応器12まで導かれ、かくして反応器12内のハロゲン化物の最適なレベルが常に確保される。
【0020】
図5を参照すると、本発明の第5の実施形態を構成する、オレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを生成するための方法及び装置80が示されている。本発明の第5の実施形態は、オレフィンの生成において特に有用である。
【0021】
メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブテン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどを含み得る選択されたアルカンが、ライン86を通して適切な供給源84から第1の反応器82内に収容される。反応器82は同様に、ライン90及びライン86を通して貯蔵用コンテナ88からハロゲン化物を受入れる。反応器82内に収容されるハロゲン化物は、塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択される。
【0022】
反応器82の運転の結果もたらされる反応生成物は、ライン94を通して蒸留分離器92に導かれる。未反応のアルカンは、分離器92からライン96及びライン86を通して反応器82まで戻される。ハロゲン化水素は分離器92からライン100を通して第2の反応器98まで導かれる。ハロゲン化モノアルキルは、ライン104を通して分離器92から第3の反応器102まで導かれる。より高いハロゲン化物は、ライン106を通って分離器92から反応器82まで戻される。
【0023】
第2の反応器98内で、ライン100を通して受入れられたハロゲン化水素は、金属酸化物と反応させられ、金属ハロゲン化物と水を生成する。水は第2の反応器98からライン110を通して廃水貯蔵コンテナ108まで導かれる。ライン100を通して反応器98内に受入れられたハロゲン化水素のハロゲン化物成分を含む金属ハロゲン化物は、ライン112を通して第4の反応器114まで導かれる。反応器114は同様に、ライン118を通して適切な供給源116から空気又は酸素を受入れる。反応器114は、再生酸化物を生成し、これはライン120を通って第2の反応器98に戻される。
【0024】
第4の反応器114は同様にハロゲン化物、二酸化炭素及び水を生成し、それら全てがライン124を通して分離器122まで導かれる。分離器122は水及び二酸化炭素からハロゲン化物を除去し、回収されたハロゲン化物をライン126を通してハロゲン化物貯蔵用コンテナ88まで導く。水及び二酸化炭素は、ライン128を通して分離器122から回収される。
【0025】
ライン104を通してハロゲン化モノアルキルを受入れることに加えて、第3の反応器102は、ライン120及びライン130を通して再生された金属酸化物を受入れる。第3の反応器102内の反応は金属ハロゲン化物を生成し、これがライン132及びライン112を通して第4の反応器114まで導かれる。第3の反応器102の運転の結果もたらされる残留反応生成物は、ライン136を通して蒸留分離器134まで導かれる。
【0026】
蒸留分離器134の運転は、ライン138を通して回収される所望のオレフィンを生成する。軽質副生物がライン140を通して回収され、重質副生物はライン142を通して回収される。未反応モノアルキルハロゲン化物は、分離器134からライン144を通して第3の反応器102まで導かれる。分離器134の運転の結果もたらされる水は、ライン146を通して廃水コンテナ108まで導かれる。
【0027】
ここで図6を参照すると、本発明の第6の実施形態を構成するオレフィン、アルコール、エーテル及び/又はアルデヒドを生成する方法及びそのための装置が示されている。本発明の第6の実施形態の構成要素の多くは、図5に例示されそれと併せて以上で記述されてきた通りの本発明の第1の実施形態の構成要素と構造及び機能面で同一である。このような同一の構成要素は、図6でも、本発明の第1の実施形態の記述において利用されたものと同じ参照番号で呼称されている。
【0028】
本発明の第6の実施形態は、金属ハロゲン化物以外の第3の反応器102の運転の結果もたらされる反応生成物が、第2の反応器102の運転の結果もたらされる反応生成物を対応するアルコールに転換させるように機能する第5の反応器152までライン136を通して導かれるという点において、その第5の実施形態と異なっている。第5の反応器152の運転の結果もたらされる反応生成物はライン154を通って蒸留分離器156まで導かれる。所望のアルコールはライン158を通して分離器156から回収される。軽質副生物はライン160を通して回収され、重質副生物はライン162を通して回収される。分離器156の運転の結果もたらされる水は、ライン163を通して廃水貯蔵用コンテナ108に導かれる。
【0029】
本発明の第6の実施形態はさらに、廃水貯蔵用コンテナ108からの廃水がライン166を通して廃水処理システム164に導かれるという点において、本発明の第5の実施形態とは異なっている。システム164の運転の結果もたらされる処理済み廃水は、ライン170を通して分離器168まで導かれる。処理済み廃水はライン171を通して分離器168から回収され、ボイラー補給水はライン172を通して分離器168から回収される。ボイラー補給水は、蒸気を生成するボイラー174まで導かれる。ボイラー174の運転の結果もたらされる蒸気はライン176及びライン130を通して第2の反応器102まで導かれる。
【0030】
本発明の第7の実施形態に従うと、ハロゲン化アルキルを生成物に転換させるためならびにハロゲン化水素の反応性中和における有用な反応物質として開示されてきた金属酸化物及び金属ハロゲン化物に加えて、金属水酸化物もこの目的に有用であるということが見極められた。同様に、金属ハロゲン化物は、金属酸化物反応の結果もたらされる生成物であると考えられているものの、金属酸化物反応の生成物が金属オキシハロゲン化物である可能性もある。
【0031】
本発明の第8の実施形態に従うと、その他の種が触媒/反応物質として有用であることが立証されてきた。例えば、固体反応物質の組成物は、金属オキシハイドライド又はハロゲン化物、スルフィド、カーボネート、ホスフェート、ホスフィド、窒化物、及びニトレートの水和物といった固体水和物の形をとることもできる。
【0032】
本発明の第9の実施形態に従うと、メタン、エタン及びプロパンを超え、パラフィン及びナフテン炭化水素を含む群から選択された炭水化物をプロセスのための供給原料として使用することもできるという判定が下された。この判定は、該プロセスの全体的有用性を、炭素数が最高約16である炭化水素まで拡張し、線状、有枝及び環状アルカンにも当てはまる。
【0033】
本発明の第10の実施形態に従うと、固体金属酸化物の(合成経路によって導かれるような)組成及び形状の意図的な変動によって、反応選択性及び生成物組成に対する制御を特定的に制御することができるということが見極められた。特定的には、(単数又は複数の金属原子から成る)金属酸化物の原子組成物のわずかな変動は、反応性及び/又は選択性をもたらし、同じ組成物の異なる合成経路は、異なる反応性及び/又は選択性を発生させる。
【0034】
反応圧力及び温度も同様に、反応を特定の生成物に向かって調整する上で有用な制御可能なパラメータである。例えば、約250℃の温度で主にアルコールを生成する金属酸化物を、金属酸化物の温度を約350℃〜約400℃の間にまで上昇させることによって、主にオレフィンを生成する方に切替えることができる。温度上昇は、結果として水酸化よりもベーター水素除去反応に有利に作用することになる。しかしながら、オレフィンの生成のためのその他のメカニズムも可能であるということを指摘しておくことが重要である。反応温度を上昇させることのもうひとつの利点は、臭化アルキルの転換速度の加速を実現しその結果反応時間がさらに短かくなり反応器がさらに小さくなるという点にある。
【0035】
指摘した温度効果は、決定的な例外無く広範な材料について見られてきたことから、この効果は、周期表全体にわたり広く適用可能である。模範材料としては、MgO、CaO、FeMoOx、FeWOx、La23、Ca(OH)2、PbO、CuO、Bi23、MgZrOx、ZnOが含まれる。最も有意であったのは、混合型コバルトジルコニウム酸化物(化学量論CoZrOx)である。
【実施例】
【0036】
実験例1−CoZrOx:
硝酸コバルトの0.5M溶液とジルコニウムプロポキシドの0.5M溶液を等量ずつ混合し、その後120℃で乾燥しかつ500℃で一晩焼成することにより、試料を調製する。
【0037】
約10:1のモル比でエタンを臭素と反応させ、臭化エチル及び高級臭化種に対する〜94%の(炭素)選択性を付与する。HBrも同じく存在している。この混合物をCoZrOx上に通すと、温度と共に増加する臭化エチル転換が得られる。175℃、200℃、225℃及び250℃でのそれぞれの臭化エタン転換は、約41%、56%、69%及び82%である。80%少ない酸化物を用いた350℃のランが、90%を上回る転換を提供する。エチレン選択性(エチレンモル数/検出された生成物全てのモル数)は、175℃、200℃、225℃、250℃、350℃で約1%、7%、20%、34%及び90%である。350℃で(未反応臭化エチルを除く)生成物混合物は、およそエチレン90%、二酸化炭素5%、臭化ビニル4%及びその他1%(主としてアセトン)である。
【0038】
実施例2−CoZrOx
臭化エチル(98+%)を350℃で上記の実施例1で記述したCoZrOx上に通した場合、蒸気生成物流中に検出された生成物は約95%がエチレンであり、残りの大部分が二酸化炭素である。
【0039】
プロセスの変形形態として、いずれの金属酸化物(ハロゲン化物又はオキシハロゲン化物)も、臭化エチルをエチレン及びハロゲン化水素へと脱臭化水素するための触媒として機能することができ、ハロゲン化水素はその後中和される。
【0040】
本発明の第11番目の実施形態に従うと、金属水酸化物が、複分解反応において効力を発する種である。金属水酸化物の上でハロゲン化アルキルを通すと、対応するアルコールが生成される。その後、結果として得られた金属ハロゲン化物は、空気/酸素を用いて再生されて金属ハロゲン化物を金属酸化物に転換し、これは次に蒸気と反応させられて金属水酸化物を再生する。第11の実施形態の第2部に従うと、金属酸化物を再生するために使用される空気/酸素流は、全く異なる金属酸化物ステージを通して通す必要がなく金属水酸化物が生成されるような制御された量の蒸気と混合される。
【0041】
本発明の第12の実施形態は、既存のプロセスと比べた場合に、生成物生成を大幅に単純化する多数の炭化水素から成る供給原料を通して一連の酸化生成物を選択的に生成する該プロセスの能力に関する。
【0042】
従来のオレフィン生産設備においては、エタン又は軽質ナフサは、それらを高温まで加熱し供給原料を蒸気と接触させることによって熱により「クラッキング」される。「クラッキング」プロセスは、遊離ラジカルメカニズムを通して機能し、アルカン炭化水素(例えばエタン)、アルケン炭化水素(例えばエチレン)、アルキン炭化水素(例えばアセチレン)、ジエン炭化水素(例えばブタジエン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン)及びコークを含めた数多くの生成物を結果としてもたらす。これらの生成物の生成の後、その他の石油化学製品のための供給原料として使用するべく1つの生成物をもう1つの生成物から分離するために数多くの蒸留工程(その多くは低温で機能する)が必要となる。一例としては、蒸留を通してエタンからエチレンを蒸留することは、これら2つの化合物が互いにきわめて近い沸点を有することから、重要であると同時にエネルギー集約的である。
【0043】
従来のプロセスとは対照的に、本発明は、単一のアルカン補給成分又は複合混合物のいずれかからそのアルカン前駆物質より直接オレフィンを生成する。プロセスを機能させる1つの手段は、以下の通りである。アルカン補給物又は補給混合物をハロゲン化物と接触させて、アルカン補給物又は補給混合物のモノハロゲン化された類似体を形成させる。ハロゲン化反応の後、反応混合物を約105℃〜約150℃の温度で固体金属酸化物全体にわたり通し、こうして、ハロゲン化反応において生成されたハロゲン化水素を水に転換させ、この水を次に残留モノハロゲン化アルキルから除去する。実質的に異なる沸点をもつモノハロゲン化アルキル及び残留アルカンを、その後蒸留を通じて分離させる。各々予め定められた炭素数をもつハロゲン化アルキルを含む単数又は複数の流れがこのとき生成される。このようにして、アルケンからのアルカンの困難な分離(例えばエチレンからのエタンの分離)が回避される。代替的には、ハロゲン化水素から水への転換の前に余剰のアルカンの分離を行なうこともできる。その後、各々のモノハロゲン化アルキルを次に約250℃〜約350℃の温度で金属酸化物上に導き、モノハロゲン化アルキルに対応する炭素数をもつオレフィンを生成することができる。
【0044】
代替的には、ハロゲン化水素の中和及び生成された水の除去の後のハロゲン化反応の生成物を、一群として金属酸化物上に導き対応するオレフィンに転換させることが可能である。オレフィンの生成後、望まれる通りにこのオレフィンを単数又は複数のオレフィン生成物流へと分離することが可能である。
【0045】
特定のアルカンの所望の生成物がアルコール、エーテル又はアルデヒドである場合、本発明は特に有用である。アルコール、エーテル又はアルデヒドの生成においては、モノハロゲン化アルキルが互いに分離される点までは、オレフィンについて上述したものと全く同じ要領でプロセスを機能させることができる。特定のモノハロゲン化アルキルからアルコール、エーテル又はアルデヒドを生成するためには、所望の官能基(すなわちアルコール、エーテル又はアルデヒド)を生成するその選択性に基づいて選択される特定の金属酸化物の上で、特定のモノハロゲン化アルキルを通す。万一所望の生成物選択性が、モノハロゲン化アルキルと金属酸化物の間の反応中に存在する水の量により影響される場合には、適切なレベルまでモノ臭化アルキルに水を添加することができる。例えば、ハロゲン化水素の中和の中で生成される水をこの目的で使用することができる。
【0046】
混合されたアルコール、エーテル又はアルデヒドの流れを生成することが望まれる場合には、本発明はモノハロゲン化アルキルと特定の金属酸化物を接触させる工程に先立ってモノハロゲン化アルキルを互いに分離させる工程を単に削除することによって、それを行なうことができる。混合流を生成するためにはむしろ、組合されたモノハロゲン化アルキルを単純に一群として特定の金属酸化物上に通し、結果として所望の混合流が得られる。この混合流を次にそのままの状態で利用するか、又は、望まれる通り単数又は複数の単離生成物流へと分離させることができる。
【0047】
本発明の第13の実施形態は、容量を増大させ運転コストを削減するよう既存のオレフィン生産設備を改良する方法を構成している。本発明は、アルカンの選択的な部分的酸化を提供するべく米国特許第6,462,243号、第6,472,572号、第6,486,368号及び第6,465,696号で開示されているプロセスを基礎としており、比較的わずかな付加的投資で容量を増大させるような形で、既存のオレフィン工場に対しこれらの特許中で開示されたプロセスをリンクさせることを含む。
【0048】
改良実施形態に対する一般的アプローチとして、ハロゲン化水素を前述の通りに金属酸化物上で中和する。ただし、モノ臭化アルキルを互いに分離させるのではなくむしろ、混合モノ臭化アルキル流全体を金属酸化物上に通し、オレフィンの混合流へと転換させる。次に結果としてのオレフィン流を、工場の熱クラッキング部分から生成された材料と共に工場の既存の分離機器の中に導き、特定のオレフィン流へと分離させる。
【0049】
改良実施形態のさらに特定的な例としては、従来のエチレン設備の中でエタン又はナフサがエチレンへの比較的低い転換及び選択性でクラッキングされる。該プロセスにおいては、かなりのエタン再循環流が生成される。本発明の改良には、炉に通常再循環されるエタンの全て又は一部分を捕捉する工程、及び代りに上記に列挙された特許内に記述されている2工程化学反応を利用したサブプロセスにそれを導く工程が含まれる。該プロセスはエタンをエチレンに選択的に転換する。その利点は数多くある。すなわち、
1. 炉への再循環を低減させることにより、付加的な新鮮な補給物を導入することができ、工場の能力は効果的に増加する。
2. 極めて純粋なエチレン補給物を提供することによって、サブプロセスは、分離システムに対する需要を削減し、ここでも又効果的に工場の能力を増大させる。
3. サブプロセス内で生成されるエチレンの純度は、運転コストを実質的に削減する結果となる。例えば、従来のエチレンプロセスは副生物としてアセチレンを生成し、それを選択的にエチレンに水素化する必要があり、これは困難なプロセスである。本書で記述されているエチレンの生成は、アセチレンの生成を結果としてもたらさず、かくしてエチレン設備内で生成されるアセチレンの量を低減させる。
4. 反応器の付加により、新しい工場に必要とされる多大な投資の必要なく、既存の工場の増設的拡張が可能となる。現行のエチレン技術は、巨大な規模でのみ費用効果性を示し、かくしてわずかな追加の需要がある場合少量の能力の付加を妨げる。既存の場所に付加できる能力は、既存のインフラストラクチャも充分に生かし、拡張コストを低減させる。
【0050】
以上のことに加えて、複分解反応内で使用されるさまざまな金属酸化物が同じく、環境に対するハロゲン化水素又はハロゲン化アルキルの放出を制御するべく吸着剤/反応物質としても役立ち得るということが見極められてきた。工場内部のパージシステム内に金属酸化物を取込むことは、かかる化合物の放出を制御するのみならず、該プロセス内でもう一度使用するべく臭素を回収するための手段としても役立つ。
【0051】
実施例3−アルカンハロゲン化
エタン臭素化反応:
21.0℃に保たれた臭素バブラーにエタン流(2.0ml/分)を通すことにより、モル比3.6:1のエタン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、400℃まで加熱した反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)の中に通した。デューテロクロロホルム(deuterocholoroform)内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を分析した。27.4%のエタン転換を伴って、100%の臭素転換が得られた。臭化エチルに対する選択性は89.9%であった。その他の生成物は、多層臭素化エタンであり、大部分(残りの90%超)がジブロモエタンであった。
【0052】
エタン塩素化反応:
モル比2:1のエタン及び塩素の混合物(合計流速5ml/分)を350℃まで加熱した反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)に通した。塩化エチル選択性90%で、100%の塩素転換と45%のエタン転換が得られる。
【0053】
エタンヨード化反応:
モル比1:4のエタン及びヨウ素の混合物(合計流速5ml/分)を400℃まで加熱した反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)に通す。ヨードエタン選択性85%で、10%のエタン転換が得られる。
【0054】
プロパン臭素化:
21.0℃に保たれた臭素バブラーにプロパン流(2.0ml/分)を通すことにより、モル比3.6:1のプロパン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。この反応器を。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を分析した。27%のプロパン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。2−ブロモプロパンに対する選択性は90%であった。その他の生成物は、2,2−ジブロモプロパン(〜10%)と1−ジブロモプロパン(1%未満)であった。
【0055】
高級アルカン臭素化:
5:1のモル比のアルカン(Cn2n+2 3<n<21)及び臭素の混合物を300℃まで加熱した反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)の中に通す。100%の臭素転換が、18%のアルカン転換及びモノブロモアルカンに対する90%の選択性で得られる。
【0056】
液相高級アルカン臭素化:
加圧されたドデカン液体を10:1のモル比で臭素と混合する。該混合物を250℃に保った管状反応器に通す。臭化ドデシルに対する90%の選択性で100%の臭素転換が得られる。
【0057】
2化合物の再比例化:
400℃に保ったPt/シリカ触媒を含む反応器に対し100mmol/時のエタンと100mmol/時の臭素を補給する。46mmol/時のエタンと50mmol/時の多重臭素化エタンの再循環流を同様に反応器に補給する。100%の臭素転換及びエタン46mmol/時、臭化エチル100mmol/時及び高級臭化物50mmol/時の生成物分布で反応器内に平衡が達成される。100モルのHBrも同様に形成する。生成物を、(1)エタン/HBr、(2)臭化エチル及び(3)高級臭化物という3つの流れに分離させる。流れ(1)を再生可能な金属酸化物上に通し、HBrを中和し水を生成させる。水は、エタンの再循環に先立ち分離させる。流れ(3)も又反応器へと再循環させる。
【0058】
ハロゲン化物添加を伴わないC2化合物の再比例化:
300℃に保ったジルコニア触媒の入った反応器に対して100mmol/時のエタンと10mmol/時のジブロモエタンを補給する。エタン91mmol/時、臭化エチル18mmol/時及びジブロモエタン1mmol/時の生成物分布が得られる。
【0059】
10化合物の再比例化:
300℃に保ったRh/シリカ触媒の入った反応器に対して100mmol/時のデカンと100mmol/時の臭素を補給する。100mmol/時のデカン及び80mmol/時のジブロモデカンそしてより臭素化度の高いデカンの再循環流も反応器に補給する。反応器は、100%の臭素転換及びデカン100mmol/時、臭化デシル100mmol/時及び多重臭素化デカン80mmol/時の生成物分布を達成する。100モルのHBrも同様に形成する。生成物を(1)HBr、(2)デカン、(3)臭化デシル、及び(4)高級臭化物という4つの流れに分離する。流れ(1)を再生可能な金属酸化物上に通し、HBrを中和させ水を生成する。流れ(2)及び(4)は、反応器へと再循環させる。
【0060】
臭素添加を伴わないC10化合物の再比例化:
200℃に保ったRh/シリカ触媒の入った反応器に対して100mmol/時のデカンと10mmol/時のジブロモデカンを補給する。デカン91mmol/時、臭化デシル18mmol/時及びジブロモデカン1mmol/時の生成物分布が得られる。
【0061】
混合型C1−C3化合物の再比例化:
ジブロモメタン(1mmol/時)及びジブロモエタン(2mmol/時)を、250℃に保たれたRu/シリカの入った反応器内でエタン(95mmol/時)、メタン(3mmol/時)及びプロパン(2mmol/時)と組合わせる。反応器の生成物はエタン(96mmol/時)、メタン(4mmol/時)、臭化エチル(1mmol/時)、ジブロモプロパン(2mmol/時)及びその他の臭素化生成物(微量)である。
【0062】
実施例4−金属酸化物及びその他の固体とのハロゲン化アルキルの反応
Zr溶液の調製:
200mlの水中の56.6gのシュウ酸溶液中にZr(OCH2CH2CH34(イソプロパノール中70(w)%、112.6ml)を(攪拌下で)溶解させた。10分間攪拌した後、溶液を水で希釈させて合計体積を500mlにした。0.5MのZr濃度の溶液を得た。
【0063】
M1の調製:
攪拌Zr溶液(0.5M)100mlに対してCo(NO32(0.5M、100.0ml)を添加した。数分間攪拌した後、ゲルを得た。4時間120℃でゲルを乾燥させ、その後4時間500℃で焼成した。乳鉢と乳棒で粉砕した後、M1を得た。
【0064】
M2の調製:
攪拌Zr溶液(0.5M)100mlに対してFe(NO33(0.5M、50.0ml)及びZn(NO32(0.5M、50.0ml)を添加した。数分間攪拌した後、ゲルを得た。4時間120℃でゲルを乾燥させ、その後4時間500℃で焼成した。乳鉢と乳棒で粉砕した後、M2を得た。
【0065】
M3の調製:
攪拌Zr溶液(0.5M)100mlに対してCo(NO32(0.5M、80.0ml)及びホウ酸(0.25M、40.0ml)を添加した。数分間攪拌した後、ゲルを得た。4時間120℃でゲルを乾燥させ、その後4時間500℃で焼成した。乳鉢と乳棒で粉砕した後、M3を得た。
【0066】
M4の調製:
攪拌Zr溶液(0.5M)100mlに対してCo(NO33(0.5M、80.0ml)及びKNO3(0.5M、20.0ml)を添加した。数分間攪拌した後、ゲルを得た。4時間120℃でゲルを乾燥させ、その後4時間500℃で焼成した。乳鉢と乳棒で粉砕した後、M4を得た。
【0067】
M5の調製:
40重質%のCo34の負荷を与えるのに充分なクロマトグラフィシリカと硝酸コバルトのスラリーを作った。該スラリーを2時間400℃で焼成し、M5を得た。
【0068】
エタンの臭素化及びM1との反応:
0℃に保たれた臭素バブラーにエタン流(5cc/分)を通すことにより、モル比10:1のエタン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した第1の反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を予め分析した。9.5%のエタン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。ブロモエタンに対する選択性は94%超であった。第1の反応器の流出物を、(1gのM1を用いた350℃のランの場合を除き)さまざまな温度まで加熱され5gのM1が入っている第2の反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチガラス管)内に通した。175℃、200℃、225℃、250℃及び350℃でのそれぞれの臭素化エタン転換は、それぞれおよそ41%、56%、69%、82%及び90%であった。エチレン選択性(エチレンモル数/検出された全ての生成物のモル数)は、175℃、200℃、225℃、250℃、350℃でおよそ1%、7%、20%、34%及び90%であった。350℃で、生成物の混合物(未反応臭化エチルを除く)は、エチレン90%、二酸化炭素5%、臭化ビニル4%、及びその他1%(主としてアセトン)であった。
【0069】
臭化エチルとM1の反応:
不活性窒素キャリヤガスと組合せることによって、液体臭化エチル(0.6ml/時)を蒸発させた。350℃まで加熱した2gの金属酸化物M1の入った反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)に混合物を通した。GCを用いて生成物を分析した。5時間、100%の臭化エチル転換を得た。96%のエチレン選択性を得た。副生物には二酸化炭素(2%)、エタノール(1%未満)、エタン(0.5%未満)が含まれていた。
【0070】
塩化エチルとM1の反応:
350℃まで加熱されている5gの金属酸化物M1の入った反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)を通して塩化エチル(1ml/分)を通す。100%の塩化エチル転換が得られる。90%のエチレン選択性が得られる。塩素の回収を伴って酸素中で600℃まで加熱することによりM1を再生する。
【0071】
臭化エチルとチタニアの触媒反応:
不活性窒素キャリヤガスと組合わせることによって、液体臭化エチル(0.6ml/時)を蒸発させた。275℃まで加熱した5gのチタニア(TiO2)の入った反応器T(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)に混合物を通した。GC分析に先立って残留HBrを除去するため水酸化ナトリウム水トラップに反応生成物を通した。99%超のエチレン選択性で60%の臭化エチル転換が得られ、100ppm未満の検出限界内ではいかなるエタンも観察されなかった。もう1つの構成では、水酸化ナトリウムの代りに再生可能な酸化銅でHBrをガス洗浄する。
【0072】
固体触媒での臭化アルキルの触媒反応:
250〜350℃の間の臭化コバルト、チタニア、シリカ上白金又はその他の適切な材料から成る固体触媒上に、臭化アルキル(Cn2n+21<n<21)又は臭化アルキル混合物を含有する流れを通す。95%の選択性で臭化アルキルの80%をオレフィンに転換させる。生成された臭化水素を酸化銅と反応させて、臭化銅及び水を生成させる。350℃で上に酸素を流動させることにより臭化銅を再生し、かくして臭素が遊離し、これを回収する。
【0073】
プロパンの臭素化及びその後のM5との反応:
21.0℃に保たれた臭素バブラーにエタン流(5.0ml/分)を通すことにより、モル比3.6:1のプロパン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した第1の反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を予め分析した。27%のプロパン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。2−ブロモプロパンに対する選択性は90%であった。その他の生成物は2.2−ブロモプロパン(〜10%)と1−ブロモプロパン(1%未満)であった。第1の反応器の流出物を、350℃まで加熱され5gのM5が入っている第2の反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチガラス管)内に通した。GCを用いて生成物を分析した。選択性(プロパン転換に基づく)は、プロピレン(90%)、アセトン(5%)、その他(5%)であった。
【0074】
1−ブロモデカンとM3の反応:
液体臭化デシル(0.6ml/分)を(窒素キャリヤガスと共に)、200℃まで加熱した金属酸化物M32gの入った反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)内に通す。使用したM3の試料を5回以上の反応/再生サイクルの中で予め使用した。該反応は2時間、6gの低温CDCl3中で収集した生成物を用いて行なわれた。NMR分析は、100%の転換を実証し、生成物は85%より大きい選択性をもつ主に内部オレフィンであった。
【0075】
1−ブロモペンタンとM3の反応:
室温で1−ブロモペンタンを通して窒素(5ml/分)をバブリングさせ、200℃に加熱した2gの金属酸化物M3の入った反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチのガラス管)に補給した。使用したM3の試料を5回以上の反応/再生サイクルで予め使用した。該反応は2時間、6gの低温CDCl3中で収集した生成物を用いて行なわれた。NMR分析は、100%の転換を実証し、生成物は90%より大きい選択性をもつ主に内部オレフィンであった。
【0076】
混合型臭化アルキルとM1の反応:
90%の臭化アルキル(Cn2n+1Br 1<n<21)、9%のジブロモアルカン(Cn2nBr2 1<n<21)及び1%のより臭素化度の高いアルカンの混合物を含有する流れを250℃でM1上に通す。80%のオレフィン、8%のジオレフィンそして残りが二酸化炭素、アルコール、グリコール及びその他の炭化水素から成る生成物モル組成で100%の転換が得られる。
【0077】
ジプロモドデカンとM1の反応:
ジプロモドデカンの混合型異性体を300℃でM1の床上に通す。ジオレフィンに対する80%の選択性で100%の転換が得られる。
【0078】
臭化ビニルと酸化銅の反応:
10モル%の臭化ビニルを含む流れを350℃で酸化銅上に通す。臭化ビニルの99.9%超が流れから除去される。臭化ビニルは酸化銅と反応して亜酸化銅、臭化銅、二酸化炭素及び水を生成する。反応の後、固体を375℃で酸素内でアニールし、再利用のため臭素を遊離させ、酸化銅を再生する。
【0079】
混合型臭化物と酸化銅の反応:
有機臭化物の混合物を含有する流れを350℃で酸化銅上に通す。99.9%超の臭化物を流れから除去する。臭化物は酸化銅と反応して、亜酸化銅、臭化銅、二酸化炭素及び水を生成する。反応後、固体を375℃で酸素中でアニールし、再利用のため臭素を遊離させ、酸化銅を再生する。
【0080】
エタン反応に対する水の添加:
0℃に保たれた臭素バブラーにエタン流(5ml/分)を通すことにより、モル比10:1のエタン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した第1の反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を予め分析した。9.5%のエタン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。ブロモエタンに対する選択性は94%超であった。第1の反応器の流出物を可変量の余剰の水の添加と組合わせて、5gのM1が入っている第2の反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチガラス管)内に通した。水:臭素のモル比を1対4〜9まで変動させるにつれて、生成されたエタノールはそれぞれ0.07から0.09〜0.14mmol/時まで増大した。対応するエーテル生成速度は、0.21、0.22、及び0.07であった。
【0081】
高級臭化アルキルに対する水の添加:
10:1のモル比の蒸気及びモノ臭化ドデシルの混合物を175℃で金属酸化物M4の床に補給する。モノ臭化ドデシルの100%が、ドデシルアルコールに対して50%そしてドデセン(さまざまな異性体)に対して50%の選択性で転換される。
【0082】
高級臭化アルキルに対する水の添加:
10:1のモル比の蒸気及びモノ臭化ドデシルの混合物を250℃で金属酸化物M1の床に補給する。モノ臭化ドデシルの100%が、ドデセン(さまざまな異性体)に対する90%の選択性で転換される。
【0083】
高級オレフィンの反応後流ストリッピング:
200℃で金属酸化物M3の床に対しモノ臭化ドデシルを補給する。ドデセン(さまざまな異性体)に対する80%の選択性で、モノ臭化ドデシルの100%が転換される。反応の終った時点で、生成物の10%が固体に吸着された状態にとどまり、その95%が、10分間反応物質流速の10倍に等しい流速で反応器を通じて蒸気を通すことによって回収される。
【0084】
高級オレフィンの水和:
200℃で金属酸化物M1の床に対しモノ臭化ドデシルを補給する。ドデセン(さまざまな異性体)に対する90%の選択性で、モノ臭化ドデシルの100%が転換される。生成物の混合物を、175℃に保たれた硫化ジルコニア床に10倍余剰の水と共に補給する。ドデシルアルコール(混合型異性体)へのドデセンの50%転換が達成される。
【0085】
酸化カルシウムを用いた混合流からのHBrの中和及びその後の再生:
臭化水素、臭化エチル、二臭化エチル及び高級臭化エタンを含有する流れを150℃で酸化カルシウム上に通す。臭化水素は酸化物と反応して臭化カルシウムと水を生成する。有機臭化物は、実質的に未反応の状態で反応器内を通過する。臭化カルシウムは、500℃で材料上に空気を通すことでその後酸化させられ、臭素を放出し、酸化カルシウムを再生させる。
【0086】
M1を用いた混合流からのHBrの中和及びその後の再生:
臭化水素、臭化エチル、二臭化エチル及び高級臭化エタンを含有する流れを150℃でM1上に通す。臭化水素は酸化物と反応して臭化コバルトと水を生成する。有機臭化物は、実質的に未反応の状態で反応器内を通過する。臭化コバルトは、350℃で材料上で酸素を通すことでその後酸化させられ、臭素を放出し、M1を再生させる。
【0087】
M1を用いたHBrの中和及びその後の再生:
臭化水素の流れを150℃でM1上に通す。臭化水素は酸化物と反応して臭化コバルトと水を生成する。臭化コバルトは、350℃で材料上に酸素を通すことでその後酸化させられ、臭素を放出し、M1を再生させる。
【0088】
オキシ臭化物との反応:
350℃でオキシ臭化ビスマス上に臭化エチルを通す。臭化エチルの80%が、80%のエチレンに対する選択性で転換される。反応中に、オキシ臭化ビスマスは臭化ビスマスに転換され、これはその後500℃で酸素と反応させられて、固体中の臭素の一部分を放出し、オキシ臭化ビスマスを再生させる。
【0089】
水酸化物及び水和物との反応:
蒸気を200℃でM1上に通し、結果としてジルコニア上に支持された状態で水酸化コバルト及び酸化コバルト水和物を形成させる。臭化エチルを200℃でこの材料上で通す。臭化エチルの50%が、エタノールに対する80%の選択性で転換される。反応後、臭化コバルトは、固体中を通して酸素を通すことによって酸化コバルトへと酸化され、臭素を遊離させる。この酸化物を次に蒸気に露呈して水酸化物及び水和物を再生させる。
【0090】
M1の再生:
7℃に保たれた臭素バブラーに加圧したエタン流を通すことにより、モル比10:1のエタン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した第1の反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を予め分析した。9.5%のエタン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。ブロモエタンに対する選択性は94%超であった。第1の反応器の流出物(およそ4cc/分)を、200℃まで加熱され5gのM1が入っている第2の反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチガラス管)内に通し、GCを用いて生成物を分析した。5時間の反応後、反応器をパージし、臭素の推移が止まるまで、流動する酸素を用いて350℃で固体を再生させた。26回の反応/再生サイクルの後、材料は活性にとどまり、化学的性能(転換、選択性)は実験上の誤差の範囲内で不変のままであった。
【0091】
M2の再生:
0℃に保たれた臭素バブラーにエタン流を通すことにより、モル比10:1のエタン及び臭素の混合物を作り上げた。該混合物を、350℃まで加熱した第1の反応器(内径0.038インチ、加熱ゾーン長4インチ)内に通した。デューテロクロロホルム内に捕獲された生成物のGC及びNMR分析により流出物を予め分析した。9.5%のエタン転換を伴って100%の臭素転換が得られた。ブロモエタンに対する選択性は94%超であった。第1の反応器の流出物(およそ4cc/分)を、200℃まで加熱され5gのM2が入っている第2の反応器(内径0.38インチ、加熱ゾーン長4インチガラス管)内に通した。GCを用いて生成物を分析した。5時間の反応後、反応器をパージし、臭素の推移が止まるまで、流動する酸素を用いて350℃で固体を再生させた。臭素を水酸化ナトリウム水トラップ中で捕獲し、UV/VIS分光法を用いて分析した。4回の逐次的ランの間、臭素回収は、約5%の不確実性で、臭素投入量の94、108、100及び98%であるものと決定された。M2の化学的性能はこれらのラン全体にわたり不変であった。
【0092】
本発明の好ましい実施形態について添付図面中で例示し、以上の詳細な説明の中で記述してきたが、本発明がここで開示された実施形態に制限されず、本発明の精神から逸脱することなく部品及び要素の数多くの再配置、修正及び置換を受けることができるということも理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略的例示である。
【図2】本発明の第2の実施形態の概略的例示である。
【図3】本発明の第3の実施形態の概略的例示である。
【図4】本発明の第4の実施形態の概略的例示である。
【図5】本発明の第5の実施形態の概略的例示である。
【図6】本発明の第6の実施形態の概略的例示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを合成する方法において、
アルカン、アルケン、アルキン、ジエン、及び芳香族から成る群から選択された第1の反応物質を提供する工程;
塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択されたハロゲン化物を含む第2の反応物質を提供する工程;
前記第1の反応物質及び前記第2の反応物質を反応させて第1の反応生成物を形成する工程;
前記第1の反応生成物を固体酸化剤と反応させ、かくしてオレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドから成る群から選択された生成物と使用済み酸化剤を形成する工程;
前記使用済み酸化剤を酸化させて元の固体酸化剤及び元の第2の反応物質を生成する工程;
前記固体酸化剤を再循環させる工程;及び
前記第2の反応物質を再循環させる工程、
を含んで成る、方法。
【請求項2】
前記第1の反応物質が、16以下の炭素数を有するアルカンを含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体酸化剤が金属酸化物を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体酸化剤が金属ハロゲン化物を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固体酸化剤が固体水和物を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固体水和物が金属オキシハイドレートを含むものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体酸化剤が、ハロゲン化物、スルフィド、カーボネート、ホスフェート、ホスフィド、窒化物、及びニトレートの水和物から成る群から選択された固体水和物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記固体酸化剤と前記第1の反応生成物を反応させる工程が約350℃〜約400℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固体酸化剤がMgO、CaO、FeMoOx、FeWOx、La23、Ca(OH)2、PbO、CuO、Bi23、MgZrOx、ZnOから成る群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固体酸化剤がCoZrOxを含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の反応生成物と前記固体酸化剤の間の反応中に水を含み入れる付加的な工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
オレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドを合成する方法において、
アルカン、アルケン、アルキン、ジエン、及び芳香族から成る群から選択された第1の反応物質を提供する工程;
臭素を含む第2の反応物質を提供する工程;
前記第1の反応物質及び前記第2の反応物質を反応させて第1の反応生成物を形成する工程;
前記第1の反応生成物を、CoZrOxを含む固体酸化剤と反応させ、かくしてオレフィン、アルコール、エーテル及びアルデヒドから成る群から選択された生成物と使用済み酸化剤を形成する工程;
前記使用済み酸化剤を酸化させて元の固体酸化剤及び元の第2の反応物質を生成する工程;
前記固体酸化剤を再循環させる工程;及び
前記第2の反応物質を再循環させる工程
を含んで成る、方法。
【請求項13】
前記第1の反応物質が、16以下の炭素数を有するアルカンを含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固体酸化剤と前記第1の反応生成物を反応させる工程が約350℃〜約400℃の温度で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の反応生成物と前記固体酸化剤の間の反応中に水を含み入れる付加的な工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
オレフィンを合成する方法において、
オレフィンの製造の結果として得られる副生物を含むアルカンの流れを提供する工程;
塩素、臭素及びヨウ素から成る群から選択されたハロゲン化物を含む第2の反応物質を提供する工程;
前記アルカン流及び前記第2の反応物質を反応させて第1の反応生成物とハロゲン化水素を形成する工程;
前記ハロゲン化水素から前記第1の反応生成物を分離する工程;
前記第1の反応生成物を固体酸化剤と反応させ、かくしてオレフィンの流れと使用済み酸化剤を形成する工程;
前記第1の反応生成物の酸化の結果として得られる前記使用済み酸化剤を酸化させて元の固体酸化剤及び元の第2の反応物質を生成する工程;
前記固体酸化剤を再循環させる工程;
前記第2の反応物質を再循環させる工程;
前記ハロゲン化水素を固体酸化剤と反応させ、かくして水と使用済み酸化剤を形成する工程;
前記ハロゲン化水素の酸化の結果として得られた前記使用済み酸化剤を酸化させて元の固体酸化剤を生成する工程;及び
前記固体酸化剤を再循環させる工程、
を含んで成る、方法。
【請求項17】
前記アルカン流を含む前記アルカンが16以下の炭素数を有するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記固体酸化剤が金属酸化物を含むものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記固体酸化剤が金属ハロゲン化物を含むものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記固体酸化剤が固体水和物を含むものである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記固体水和物が金属オキシハイドレートを含むものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固体酸化剤が、ハロゲン化物、スルフィド、カーボネート、ホスフェート、ホスフィド、窒化物、及びニトレートの水和物から成る群から選択された固体水和物を含んで成る、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記固体酸化剤と前記第1の反応生成物を反応させる工程が約350℃〜約400℃の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記固体酸化剤が、MgO、CaO、FeMoOx、FeWOx、La23、Ca(OH)2、PbO、CuO、Bi23、MgZrOx、ZnOから成る群から選択されるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記固体酸化剤がCoZrOxを含むものである、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の反応生成物と前記固体酸化剤の間の反応中に水を含み入れる付加的な工程を含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−521235(P2007−521235A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508287(P2005−508287)
【出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/036933
【国際公開番号】WO2005/019143
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506058598)ジーアールティー,インコーポレイティド (7)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】