説明

オレフィン共重合体、その製造方法およびその共重合体の変性方法

【課題】大量の有機アルミニウムを使用せず、水酸基含有オレフィン共重合体へ変性可能なプロピレン又は/及びエチレンと嵩高い置換基を持つシリロキシ基含有ビニルモノマーとの共重合体、その製造方法、およびその変性方法の提供。
【解決手段】α−オレフィンと下記式で表されるシリロキシ基を有するモノマーとを重合させたオレフィン共重合体、及び、中心金属が4族のメタロセン化合物(A)と、アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物若しくはルイス酸およびイオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれる(B)を含む触媒を使用してα−オレフィンと該ビニルモノマーとを共重合、あるいはそのオレフィン共重合体脱シリル化により水酸基含有オレフィン共重合体を製造することを特徴とする変性方法により提供した。CH2CH−Q−OSiR1R2R3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン共重合体およびその製造方法、さらにそのオレフィン共重合体の変性方法に関し、詳しくは、プロピレンおよび/またはエチレンと特定のシリロキシ基を含有するビニルモノマーにより得られる新規な極性基を有する共重合体、その製造方法、およびその共重合体の変性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、機械的物性、成形性、軽量性、化学的安定性に優れ、コストパフォーマンス上も非常に優秀であることから、最も重要なプラスチック材料の一つとして多くの分野で使用されている。しかし、化学的に安定である反面、無極性のため接着性や染色性に劣ることや他のプラスチック材料との混和性が悪い等の問題がある。この問題を解決するために極性基を導入したオレフィン共重合体を製造しようと多くの試みがなされている。
【0003】
例えば、三塩化チタンとジエチルアルミニウムクロリドを組み合わせた三塩化チタン系触媒を用いて、プロピレンと10−ウンデセン−1−オールを共重合させて得られる水酸基含有プロピレン共重合体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら三塩化チタン系触媒で製造されたポリマーは組成分布及び分子量分布が広く、スラリー重合やバルク重合を行った場合、低分子量、低立体規則性成分が溶出してしまう、あるいは気相重合を行った場合、粒子同士が凝集してしまうことにより、反応器壁面への付着や抜き出し配管の閉塞のため、安定運転が不可能になるという問題がある。
【0004】
また、その改良策としてMgCl担持型触媒やメタロセン触媒といった高立体規則性触媒を使用したプロピレンと水酸基含有コモノマーを共重合する方法も公知である(例えば、特許文献2〜6参照。)。しかし、これら触媒も酸素等のルイス塩基との親和性が非常に高くこれらと反応して失活してしまうために、有機アルミニウムをはじめとするルイス酸で極性基を保護して重合に用いる必要があり、極端に多くのルイス酸を必要とすることや極性モノマーの共重合取り込み率が低いため、多くのコモノマー供給が必要となる等の問題があった。
【0005】
有機アルミによる極性基保護以外の手法として、非共役ジエンを共重合後に変性する手法が提案されている(例えば、特許文献7、及び非特許文献1参照。)。これは、一方のオレフィン部分で付加重合を行い、側鎖に残存するもう一方のオレフィン部分を後変性する手法である。この方法は、ジエンの両方のオレフィン部分が分子内や分子間で重合を起こしてしまい、環化や架橋によるゲル化を引き起こし所望のプロピレン系共重合体が得られないといった問題がある。
【0006】
ところで、近年、酸素親和性の低い後周期の遷移金属錯体を用いることでビニル系極性モノマーを保護基なしで直接重合しようとする試みがなされ、パラジウム錯体でオレフィンとアルキルアクリレートの共重合体を得ている(例えば、非特許文献2参照。)。ただし、これらの重合活性および得られるポリエチレン共重合体の分子量は低く、かつ、プロピレンをはじめとするα−オレフィンの系では、共重合性能や立体規則性の観点から極性モノマーの直接共重合は極めて難しい状況にある。現在、極性基を含有する分子量が高いポリエチレン共重合体や立体規則性プロピレン共重合体を安価で簡便に製造する方法が求められている。
【特許文献1】特開昭55−98209号公報
【特許文献2】特開平8−53516号公報
【特許文献3】特開2003−246820号公報
【特許文献4】特開2000−319332号公報
【特許文献5】特開2002−145944号公報
【特許文献6】特開2002−145947号公報
【特許文献7】特開昭55−165907号公報
【非特許文献1】Kim,I.;Shin,Y.S;Lee,J.K.J.Polym.Sci.,PartA:Polym.Chem.2000,38,159
【非特許文献2】Brookhart,M.J.Chem.Soc.1996,118,267−268
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下、大量の有機アルミニウムを使用することなく、少量のコモノマーで効率的に共重合体中にコモノマーを取り込むことが可能であり、水酸基含有オレフィン共重合体へ簡便に変性可能なプロピレンまたは/およびエチレンと嵩高い置換基を持つシリロキシ基含有ビニルモノマーとの共重合体および製造方法、さらに、その変性方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、α−オレフィンと特定の構造を有するシリロキシ基含有ビニルモノマーとの特定の重量平均分子量を有する共重合体が大量の有機アルミニウムを使用することなく、少量のコモノマーで効率的に共重合体中にコモノマーを取り込むことが可能な共重合体となりうること、さらにその共重合体を変性することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であり、α−オレフィンと下記一般式(I)で表されるシリロキシ基を有するモノマーとを重合させたオレフィン共重合体が提供される。
【0010】
【化1】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記一般式(I)で表されるシリロキシ基を有するモノマー構造単位が0.1〜10mol%含まれることを特徴とするオレフィン共重合体が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記一般式(I)中のQが脂肪族炭化水素基であることを特徴とするオレフィン共重合体が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の関係が、Q値(Mw/Mn)として、5以下であることを特徴とするオレフィン共重合体が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記一般式(I)中のQの炭素数が2〜10であることを特徴とするオレフィン共重合体が提供される。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、α−オレフィンがプロピレンであることを特徴とするオレフィン共重合体が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、少なくとも下記成分(A)、(B)を含む触媒を使用して、α−オレフィンと下記一般式(I)で表されるシリロキシ基を含むビニルモノマーとを共重合させることを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法が提供される。
成分(A):中心金属が4族のメタロセン化合物
成分(B):アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれるもの
【0017】
【化2】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、触媒が更に下記成分(C)を含むことを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法が提供される。
成分(C):微粒子担体
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第7又は8の発明において、触媒が更に下記成分(D)を含むことを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法が提供される。
成分(D):有機アルミニウム化合物
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第7〜9のいずれかの発明において、α−オレフィンがプロピレンであることを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜6の発明のオレフィン共重合体を酸、含フッ素化合物から選択される一種以上の化合物と反応させて脱シリル化により水酸基含有オレフィン共重合体を製造することを特徴とする変性方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のオレフィン共重合体は、大量の有機アルミニウムを使用することなく、少量のコモノマーで効率的に共重合体中にコモノマーを取り込んだシリロキシ基含有オレフィン共重合体であり、この共重合体は、簡便な手法で水酸基への変性が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、α−オレフィンとシリロキシ基含有モノマーとのオレフィン共重合体およびその製造方法、さらに、その共重合体の水酸基含有オレフィン共重合体への変性方法である。以下、詳細に発明を説明する。
【0024】
1.オレフィン共重合体
本発明のオレフィン共重合体は、α−オレフィンと下記一般式(I)で示されるシリロキシ基を含むビニルモノマーとを重合させたオレフィン共重合体である。
【0025】
【化3】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、Q中に二重結合を含んでいてもよく、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【0026】
本発明に用いられるα−オレフィンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン等に代表される炭素数2以上の末端に二重結合を有するアルケン類である。α−オレフィンは、単独でも2種またはそれ以上併用しても良い。α−オレフィンを単独で用いる場合、エチレンまたはプロピレンが好ましい。また、α−オレフィンを併用する場合、重合体中の割合(mol%)として、50%以上はエチレンまたはプロピレンであることが好ましい。
さらに好ましい共重合体のモノマー組成としては、プロピレンモノマーの割合が80モル%以上であるプロピレン系共重合体、エチレンモノマーの割合が80モル%以上であるエチレン系共重合体である。特に好ましくは、プロピレンモノマーの割合が90モル%以上であるプロピレン系共重合体、エチレンモノマーの割合が90モル%以上であるエチレン系共重合体である。
【0027】
また、一般式(I)で表されるモノマーの割合は、好ましくは0.5〜20モル%、更に好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは1〜5モル%である。
【0028】
共重合体成分としてプロピレン及びエチレン以外のものを併用する場合、用いられるα−オレフィンとしては、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。これらエチレン、プロピレン以外の共重合体中の割合は好ましくは2モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。
【0029】
上記一般式(I)において、Qは、分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブテン、1,5−ペンテン、1,6−ヘキセン、1,9−ノネン等の直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
また、先に挙げた直鎖状の脂肪族炭化水素基の水素が、一つ以上、環状構造を含んでもよいアルキル基で置換された分岐状構造でもよく、例えば、2−メチル−1,3−プロピレン、3−メチル−1,4−ブテン、4−メチル−1,5−ペンテン、5−メチル−1,6−ヘキセン、5−シクロヘキシル−1,5−ペンテン、5−シクロプロピル−1,6−ヘキセン等の分岐状の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これらの中で特に好ましくは炭素数2〜10の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基、とりわけ炭素数4〜6の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0030】
上記一般式(I)において、R〜Rは前述の要件を満たせばよく、少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。2級炭素としては、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、sec−ペンチル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロプロピル等のアルキル基、フェニル、トルイル等のアリール基、メチルフェニルカルビル、ジフェニルカルビル等のアリールアルキル基が使用可能であり、特に好ましくはアルキル基が選択される。3級炭素としては、例えば、t−ブチル、t−ペンチル等のアルキル基、ジメチルフェニルカルビル、メチルジフェニルカルビル等のアリールアルキル基が使用可能であり、特に好ましくはアルキル基が選択される。R〜Rの組み合わせとして、好ましいシリロキシ基としては、トリイソプロピルシリロキシ基、トリ−sec−ブチルシリロキシ基、トリ−sec−ペンチルシリロキシ基、トリシクロヘキシルシリロキシ基、ジフェニルメチルシリロキシ基、ジフェニル−sec−ブチルシリロキシ基、t−ブチルジメチルシリロキシ基、t−ブチルジエチルシリロキシ基、t−ブチルプロピルシリロキシ基、t−ブチル−ジイソプロピルシリロキシ基であり、特に好ましくは、トリイソプロピルシリロキシ基、t−ブチルジメチルシリロキシ基、t−ブチルジエチルシリロキシ基である。
【0031】
Qは、分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブテン、1,5−ペンテン、1,6−ヘキセン、1,9−ノネン等の直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
また、先に挙げた直鎖状の脂肪族炭化水素基の水素が、一つ以上、環状構造を含んでもよいアルキル基で置換された分岐状構造でもよく、例えば、2−メチル−1,3−プロピレン、3−メチル−1,4−ブテン、4−メチル−1,5−ペンテン、5−メチル−1,6−ヘキセン、5−シクロヘキシル−1,5−ペンテン、5−シクロプロピル−1,6−ヘキセン等の分岐状の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これらの中で特に好ましくは炭素数2〜10の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基、とりわけ炭素数4〜6の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0032】
なお、上記一般式(I)で表されるモノマーの合成例を以下に合成例1および合成例2として示すが、これらの合成方法に限られるものではない。
合成例1:水酸基を分子内に持つ1−アルケンとトリアルキルヒドロシランを銅触媒存在下に反応させる方法(Org.Lett.2005,Vol.7,No.9,1869−1871)
合成例2:水酸基を分子内に持つ1−アルケンとトリアルキルシリルクロリドをイミダゾール存在下に反応させる方法(J.Org.Chem.2006,Vol.71,No.9,3599−3607)
【0033】
本発明のオレフィン共重合体の分子量は、その重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であり、好ましくは20,000〜700,000、さらに好ましくは40,000〜400,000である。Mwが10,000未満では耐衝撃強度の低下等、材料物性が低下し、また、溶融粘弾性が低下するためフィルム、射出成型が困難となる。一方、1,000,000を超えると溶融粘弾性が高すぎて成型出来ない、しにくい等の課題が生じる。
【0034】
本発明のオレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の関係が、Q値(Mw/Mn)として、5以下が好ましく、より好ましくは2.0以上、4.5以下である。Q値が5以下であることが発煙性やべたつき性低減に効果がある。
【0035】
ここで、一般式(I)で表されるモノマーならびにプロピレン、エチレンの共重合体中の含量は、13C−NMR、H−NMR等の分析手法を用いて決定できる。13C−NMRを用いて決定する場合、例えば、シリロキシの酸素に結合する炭素がメチレンの場合は、マクロモレキュルズ(Macromolecules)35卷,6760頁(2002年)に記載されたケミカルシフト値と構造との関係を参考にして、ピークの帰属を行い、各単位の存在割合を算出できる。プロピレンとエチレンの三元共重合体の場合には、例えば、Macromolecules,15巻 1150頁 (1982年)を参考にして、ピークの帰属を行い、各単位の存在割合を算出できる。具体的な測定条件は以下の通りである。
使用装置:日本電子社製GSX−400
測定温度:130℃
溶媒の種類:o−ジクロロベンゼン80容量%+全重水素化ベンゼン20容量%
デカップリング:プロトン完全デカップリング
サンプル量:375mg
積算回数:10000回
パルス角:90°
パルス間隔:10秒
試料管:10mmφ
溶媒の使用量:2.5ml
【0036】
また、本発明において、Mw及びMnは、ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)により求められる。その具体的な測定条件は下記の通りである。
使用機種:ウォーターズ社製150C
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex 80M/S 2本
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
分子量の算出:標準ポリスチレン法
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム :昭和電工社製AD806M/S(3本)
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間の一例を、図1に示した。
【0037】
本発明のオレフィン共重合体においてプロピレンモノマーの割合が多いプロピレン系共重合体の場合には、頭−尾結合からなるプロピレンを中心とするモノマー3連鎖部(但し、エチレンは除く)のトリアッドタクティシティー(mm分率)が93.0%以上が好ましく、より好ましくは95.0%以上、更に好ましくは97.0%以上である。mm分率が上記未満ではプロピレン部分の結晶性が不足して弾性率、耐熱性等に問題がある。
【0038】
尚、mm分率の測定は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。スペクトルの帰属は前記した文献に加え、Macromolecules,8巻,687頁(1975年)、Polymer,30巻 1350頁(1989年)を参考に行った。
【0039】
2.オレフィン共重合体の製造触媒
本発明のオレフィン共重合体を製造する触媒は、本発明のオレフィン共重合体を満たすものであれば特に限定しないが、以下に示す触媒が好ましい。
すなわち、少なくとも下記成分(A)、(B)、必要に応じ、成分(C)、(D)を含む触媒を使用して、プロピレン、エチレンあるいはその混合物と一般式(I)で示されるシリロキシ基を含むビニルモノマーとを共重合させる。
【0040】
成分(A):中心金属が4族のメタロセン化合物
成分(B):アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれるもの
成分(C):微粒子担体
成分(D):有機アルミニウム化合物
【0041】
(1)成分(A)
触媒の成分(A)としては、下記の一般式(II)、(III)、(IV)、(V)で示される中心金属が4族のメタロセン化合物を使用する。
【0042】
【化4】

【0043】
一般式(II)〜(V)中、AおよびA’ は置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’ は同一でも異なっていてもよい)を示し、Tは二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは窒素原子、酸素原子、珪素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子を示し、T’ は共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは周期律表4族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びYは同一でも異なっていてもよい)を示す。
【0044】
AおよびA’は共役五員環配位子であり、これらは同一化合物内において同一でも異なってもよいことは前記した通りである。この共役五員環配位子(AおよびA’)の具体例としては、共役炭素五員環配位子、即ちシクロペンタジエニル基を挙げることができる。シクロペンタジエニル基は、水素原子を五個有するもの[C]であってもよく、また、その誘導体、即ちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。この置換基の例としては、炭素数1〜40、好ましくは1〜30、の炭化水素基である。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。後者の例としては、2個の置換基がそれぞれω−端で結合して該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、即ち、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、および縮合七員環を形成していているもの、即ち、アズレニル基、テトラヒドロアズレニル基が挙げられる。
【0045】
AおよびA’で示される共役五員環配位子の具体的例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基等が挙げられる。この中で、好ましいものは、インデニル基、アズレニル基である。
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜40、好ましくは1〜30、の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば、−Si(R)(R)(R)で示される炭素数1〜24の珪素含有炭化水素基、−P(R)(R)で示される炭素数1〜18のリン含有炭化水素基、または、−B(R)(R)で示される炭素数1〜18のホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。上述のR〜Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素原子1〜20のアルキル基を示す。
【0046】
Tは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、T’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
TおよびT’の具体例としては、
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類、
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、9,9−シラフルオレニル基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基、
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素あるいはホウ素を含む炭化水素基、さらに具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)Bで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類、シリレン基類およびゲルミレン基である。
【0047】
Mは、周期律表4第族から選ばれる遷移金属原子、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。特には、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。好ましいものの具体例としては、酸素原子、イオウ原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素、臭素、炭素数1〜20の炭化水素基である。
XおよびYは、各々水素、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12のケイ素含有炭化水素基である。XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭化水素基、特に炭素数1〜8のもの、およびアミノ基が好ましい。
【0048】
一般式(II)で表される化合物としては、例えば、
ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−エチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−i−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−t−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビスインデニルジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0049】
一般式(III)で表される化合物としては、例えば、
ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロ−2−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−ジメチルボラノ−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−フェニルインデニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルゲルミレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビスインデニルジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0050】
一般式(IV)で表される化合物としては、例えば、
(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ジ−t−ブチルアミド)ジクロリド、(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ジイソプロピルアミド)ジクロリド、(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ジシクロドデシルアミド)ジクロリド、(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ジ−2,6−i−プロピルフェノキシ)ジクロリド、(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ジ−2,6−i−プロピルフェノキシ)ジクロリド等が挙げられる。
【0051】
一般式(V)で表される化合物としては、例えば、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(トリメチルシリルアミド)チタニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジメチル、ジメチルシランジイル(2−メチルインデニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(3,6−ジイソプロピルフルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド等が挙げられる。
【0052】
一般式(II)ないし(V)で示される化合物中のA部分は、同一の一般式で示される化合物および/または異なる一般式で表される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
【0053】
一般式(II)ないし(V)で示される中で、一般式(III)、(V)を用いることが好ましく、特に(III)を用いることが特に好ましい。
【0054】
(2)成分(B)
成分(B)としては、アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれるものを使用する。
【0055】
アルミニウムオキシ化合物は、具体的には次の一般式(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化5】

【0057】
上記の一般式(VI)〜(VIII)中、Rは、水素原子または炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基を示す。また、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0058】
一般式(VI)及び(VII)で表される化合物は、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる。具体的には、(a)一種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られる、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、(b)二種類のトリアルキルアルミニウムと水から得られる、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。これらの中では、メチルアルモキサン又はメチルイソブチルアルモキサンが好ましい。
【0059】
上記のアルモキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルモキサンは、公知の様々な条件下に調製することが出来る。具体的には以下の様な方法が例示できる。
(a)トルエン、ベンゼン、エーテル等の適当な有機溶剤の存在下、トリアルキルアルミニウムを直接水と反応させる方法。
(b)トリアルキルアルミニウムと結晶水を有する塩水和物、例えば、硫酸銅、硫酸アルミニウムの水和物とを反応させる方法。
(c)トリアルキルアルミニウムとシリカゲル等に含浸させた水分とを反応させる方法。
(d)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを混合した後、トルエン、ベンゼン、エーテル等の適当な有機溶剤の存在下、直接水と反応させる方法。
(e)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとの混合物と結晶水を有する塩水和物、例えば、硫酸銅、硫酸アルミニウムとの水和物とを加熱反応させる方法。
(f)シリカゲル等に水分を含浸させ、トリイソブチルアルミニウムで処理した後、トリメチルアルミニウムで追加処理する方法。
(g)メチルアルモキサン及びイソブチルアルモキサンを公知の方法で合成し、これら二成分を所定量混合して加熱反応させる方法。
(h)ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒中に硫酸銅5水塩などの結晶水を有する塩とトリメチルアルミニウムとを添加して約−40〜40℃の温度条件下に反応させる方法。
【0060】
反応に使用する水の量は、トリメチルアルミニウムに対するモル比で通常0.5〜1.5である。上記の方法で得られたメチルアルモキサンは、線状または環状の有機アルミニウムの重合体である。
【0061】
一般式(VIII)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと次の一般式(IX)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることが出来る。一般式(IX)中、Rは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン化炭化水素基を示す。
B(OH) (IX)
【0062】
具体的には以下の様な反応生成物が例示できる。
(a)トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物
(b)トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物
(c)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物
(d)トリメチルアルミニウムとエチルボロン酸の2:1反応物
(e)トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物
【0063】
また、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としては、一般式(X)で表される化合物が挙げられる。
〔K〕e+〔P〕e− (X)
【0064】
一般式(X)中、Kはカチオン成分であって、例えば、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。上記のカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N, N−ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。
【0065】
上記の一般式(X)中、Pは、アニオン成分であり、成分(A)が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の成分)である。Pとしては、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられ、具体的には次のアニオンが挙げられる。
【0066】
(a)テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ホウ素、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素など
(b)テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム等
(c)テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ガリウム、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム等
(d)テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン等
(e)テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素等
(f)テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン等
(g)デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等
【0067】
また、ルイス酸、特に成分(A)をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物、固体酸などが例示され、その具体的例としては次の化合物が挙げられる。
(a)トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物
(b)塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化臭化マグネシウム、塩化ヨウ化マグネシウム、臭化ヨウ化マグネシウム、塩化マグネシウムハイドライド、塩化マグネシウムハイドロオキシド、臭化マグネシウムハイドロオキシド、塩化マグネシウムアルコキシド、臭化マグネシウムアルコキシド等の金属ハロゲン化合物
(c)アルミナ、シリカ−アルミナ等の固体酸
【0068】
さらに、次に説明するイオン交換性層状珪酸塩についても成分(B)として使用することが可能である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出され、水中に分散/膨潤させ、沈降速度等の違いにより精製することが一般的であるが、完全に除去することが困難であることがあり、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)を含んでいることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、成分(B)に含まれる。
尚、本発明の原料とは、後述する本発明の化学処理を行う前段階の珪酸塩をさす。また、本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0069】
また、本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩も、イオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0070】
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1988年)等に記載される1:1型構造や2:1型構造をもつ層状珪酸塩が挙げられる。
1:1型構造とは、前記「粘土鉱物学」等に記載されているような1層の四面体シートと1層の八面体シートが組み合わさっている1:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示し、2:1型構造とは、2層の四面体シートが1層の八面体シートを挟み込んでいる2:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示す。
【0071】
1:1層が主要な構成層であるイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族珪酸塩、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族珪酸塩等が挙げられる。
【0072】
2:1層が主要な構成層であるイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0073】
これらの中では、主成分が2:1型構造を有するイオン交換性層状珪酸塩であるものが好ましい。より好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
【0074】
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の造粒
前記イオン交換性層状珪酸塩は、乾燥状態で用いてもよく、液体にスラリー化した状態で用いてもよい。また、イオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。このうち造粒されたイオン交換性層状珪酸塩を用いると、該イオン交換性層状珪酸塩を触媒成分として用いた場合に、良好なポリマー粒子性状を与えるため特に好ましい。
【0075】
造粒、粉砕、分級などのイオン交換性層状珪酸塩の形状の加工は、化学処理の前に行ってもよい(すなわち、あらかじめ形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩に下記の化学処理を行ってもよい)し、化学処理を行った後に形状を加工してもよい。
【0076】
ここで用いられる造粒法としては、例えば、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられるが、特に限定されない。好ましくは、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、流動造粒法が挙げられ、特に好ましくは撹拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられる。
【0077】
造粒において、粒子強度の高い担体を得るため、及び、オレフィン重合活性を向上させるためには、珪酸塩を必要に応じ微細化する。珪酸塩は、如何なる方法において微細化してもよい。微細化する方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕いずれの方法でも可能である。好ましくは、水を分散媒として使用し珪酸塩の膨潤性を利用した湿式粉砕であり、例えばポリトロン等を使用した強制撹拌による方法やダイノーミル、パールミル等による方法がある。造粒する前の平均粒径は、0.01〜3μm、好ましくは0.05〜1μmである。
【0078】
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉発生を抑制するためには、0.2MPa以上の圧縮破壊強度を有することが好ましい。また、造粒されたイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmの範囲である。粉砕法についても特に制限はなく、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれでもよい。
【0079】
(iii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に係る触媒成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を行なうことが望ましく、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、酸類、塩類、アルカリ類、有機物等とイオン交換性層状珪酸塩とを接触させることをいう。
【0080】
化学処理による共通の影響として、層間陽イオンの交換を行うことが挙げられるが、それ以外に各種化学処理は、次のような種々の効果がある。例えば、酸類による酸処理によれば、珪酸塩表面の不純物が取り除かれる他、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって、表面積を増大させることができる。これは、珪酸塩の酸強度を増大させ、また、単位重量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。
【0081】
アルカリ類によるアルカリ処理では、粘土鉱物の結晶構造が破壊され、粘土鉱物の構造の変化をもたらす。
以下に、処理剤の具体例を示す。
【0082】
(イ)酸類
酸処理は、表面の不純物を除く、あるいは層間に存在する陽イオンの交換を行うほか、結晶構造の中に取り込まれているAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピオン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、などが挙げられる。中でも硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸が好ましく、硫酸が特に好ましい。
【0083】
(ロ)塩類
塩類としては、有機陽イオン、無機陽イオン、金属イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、無機陰イオン、ハロゲン化物イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期律表第1〜14族から選択される少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。さらに好ましくは、陰イオンが無機ブレンステッド酸やハロゲンからなり、陽イオンがLi、Mg、Znからなる化合物である。そのような塩類で特に好ましい化合物は、具体的にはLiCl、LiSO、MgCl、MgSO、ZnCl、ZnSO、Zn(NO、Zn(POある。
【0084】
(ハ)その他の処理剤
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される
【0085】
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
【0086】
(ニ)化学処理条件
上述した各種処理剤は、適当な溶剤に溶解させて処理剤溶液として用いてもよいし、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。使用できる溶剤としては、特に制限はないが、水、アルコール類が一般的であり、特に水が好ましい。例えば、化学処理として酸処理を行う場合、酸処理剤濃度、イオン交換性層状珪酸塩と処理剤との比率、処理時間、処理温度等の酸処理条件を制御することによって、イオン層状珪酸塩化合物を所定の組成、構造へと変化させ制御することが可能である。
【0087】
イオン交換性層状珪酸塩と処理剤との比率に関しては、特に限定されないが、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩[g]:処理剤[酸の価数×mol数]=1:0.001〜1:0.1程度である。
また、酸処理温度は、室温〜処理剤溶液の沸点の範囲が好ましく、処理時間は5分〜24時間の条件を選択し、イオン交換性層状珪酸塩を構成している物質の少なくとも一部が除去又は交換される条件で行うことが好ましい。酸処理条件は、特には制限されないが、上記化学処理として硫酸を用いた場合、処理温度は80℃から、処理剤溶媒沸点以下で、処理時間は0.5時間以上5時間未満にすることが好ましい。
【0088】
(ホ)イオン交換性層状珪酸塩の乾燥
上記化学処理を実施した後に、過剰の処理剤及び処理により溶出したイオンの除去をすることが可能であり、好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。脱水後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は、100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能である。800℃を超えると、珪酸塩の構造破壊を生じるおそれがあるので好ましくない。
【0089】
(ヘ)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理後の組成
イオン交換性層状珪酸塩中のアルミニウム及びケイ素は、JIS法による化学分析による方法で検量線を作成し、蛍光X線で定量するという方法で測定される。
なお、化学処理されたイオン交換性層状ケイ酸塩を本発明の成分[A]として使用する場合の酸点の量は、該化学処理後に乾燥処理を施したイオン交換性層状珪酸塩において測定する。本発明においては、pKaが−8.2以下の酸点を、その酸点を中和するに要する2,6ジメチルピリジン量がイオン交換性層状珪酸塩1グラム当たり、0.05ミリモル以上となる量、好ましくは0.07ミリモル/g以上有するように、イオン交換性層状珪酸塩を上記の如き各種の処理法を適宜に組合せ、酸点の強度及び量を制御することが肝要である。各種処理を実施した後のアルミニウム、ケイ素の組成は、Al/Siの原子比として、0.05〜0.4、好ましくは0.05〜0.25のもの、さらには0.07〜0.23の範囲のものがよい。Al/Si原子比は粘土部分の酸処理の指標となるものとみられる。
【0090】
(3)成分(C)
本発明のオレフィン共重合体の製造に使用する触媒では、上記成分(A)および(B)に加えて、必要に応じて、成分(C)微粒子担体を用いることができる。成分(C)として、使用することができる微粒子担体は、無機または有機の化合物から成り、通常5μm〜5mm、好ましくは10μm〜2mmの粒径を有する微粒子状の担体である。
【0091】
上記の無機担体としては、例えば、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、ZnO等の酸化物、SiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−Cr、SiO−Al−MgO等の複合酸化物などが挙げられる。
【0092】
上記の有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの(共)重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素の(共)重合体などから成る多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。これらの比表面積は、通常20〜1000m/g、好ましくは50〜700m/gであり、細孔容積は、通常0.1cm/g以上、好ましくは0.3cm/g、更に好ましくは0.8cm/g以上である。
上記微粒子担体は使用する前に、後述の成分(D)有機アルミニウム化合物で予め処理することも可能である。
【0093】
(4)成分(D)
本発明のオレフィン共重合体の製造に使用する触媒では、さらに、必要に応じて、成分(D)有機アルミニウム化合物を用いることができる。本発明のポリオレフィン共重合体製造に使用する触媒の成分(D)として、必要に応じ使用することができる有機アルミニウム化合物は、一般式:AlR3−mで示される化合物が適当である。
【0094】
本発明では上記一般式で表される有機アルミニウム化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることは言うまでもない。この式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Sは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。mは0より大きくかつ3までの数である。Rとしてはアルキル基が好ましく、またSは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
【0095】
したがって、好ましい化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、m=3のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0096】
(5)触媒の形成/予備重合
本発明で使用する触媒は、任意に、成分(A)、(B)、必要に応じ(C)、(D)を組み合わせた触媒を使用することができる。例えば、アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸は、成分(B)として、それぞれ単独使用される他、これらの3成分を適宜組み合わせて使用することが出来る。さらに、1種または2種以上の成分(D)と併用して触媒として使用することも可能である。
【0097】
また、本発明で使用する触媒は、重合槽の内外において、重合させるべきモノマーの存在下または不存在下、使用することも可能である。
【0098】
上記の各成分の接触は、窒素などの不活性ガス中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。接触温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲の温度、特に、室温から溶媒の沸点の範囲の温度が好ましい。この様にして調製された触媒は、調製後に洗浄せずに使用してもよく、また、洗浄した後に使用してもよい。更には、調製後に必要に応じて新たに成分を組み合わせて使用してもよい。
【0099】
また、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を予め接触させる際、重合させるモノマーを存在させてα−オレフィンの一部を重合する、いわゆる予備重合を行うことも出来る。すなわち、重合の前に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等のオレフィンの予備重合を行い、必要に応じて洗浄した予備重合生成物を触媒として使用することも出来る。この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒1g当たり、通常0.01〜1000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成する様に行うのが好ましい。
【0100】
成分(A)及び(B)の使用量は任意である。例えば、溶媒重合の場合、成分(A)の使用量は、遷移金属原子として、通常10−7〜10mmol/L 、好ましくは10−4〜1mmol/Lの範囲とされる。アルミニウムオキシ化合物の場合、Al/遷移金属のモル比は、通常10〜10、好ましくは100〜2×10、更に好ましくは100〜10の範囲とされる。一方、成分(B)としてイオン性化合物またはルイス酸を使用した場合、遷移金属に対するこれらのモル比は、通常0.1〜1000、好ましくは0.5〜100、更に好ましくは1〜50の範囲とされる。さらに、成分(B)としてイオン交換性層状珪酸塩を使用した場合は、成分(B)1g当たり、成分(A)は、通常10−4〜10mmol、好ましくは10−3〜1mmolの範囲とされる。成分(D)は、成分(D)/成分(A)のモル比として、通常0〜10、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは10〜10の範囲とされる。成分(C)1g当たり、成分(A)は通常10−4〜10mmol、好ましくは10−3〜1mmolの範囲とされる。
【0101】
3.オレフィン共重合体の製造方法
本発明のオレフィン共重合体を製造する方法は、本発明のオレフィン共重合体を満たすものであれば特に限定しないが、以下に示す方法が好ましい。
すなわち、少なくとも上記成分(A)、(B)、必要に応じ、成分(C)、(D)を含む触媒を使用して、プロピレン、エチレンあるいはその混合物と下記一般式(I)で示されるシリロキシ基を含むビニルモノマーとを共重合させる方法である。
【0102】
【化6】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【0103】
本発明の共重合は、溶媒を使用する溶媒重合に適用される他、実質的に溶媒を使用しない液相無溶媒重合、気相重合、溶融重合にも適用される。また、重合方式は、連続重合および回分式重合の何れであってもよい。
【0104】
溶媒重合における溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性な飽和脂肪族または芳香族炭化水素の単独あるいは混合物が使用される。重合温度は、通常−78〜150℃、好ましくは−20〜100℃とされる。反応系のオレフィン圧は、特に制限されないが、好ましくは常圧から200MPa、更に好ましくは常圧から5MPaの範囲とされる。また、例えば、温度や圧力の選定または水素の導入などの公知の手段により分子量調節を行なうことも出来る。
【0105】
モノマーとして、プロピレン、エチレン、シリロキシ基を含むビニルモノマー以外に、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンをポリマー物性に大きな影響を与えない範囲で使用してもよい。
【0106】
4.変性方法
本発明で得られた共重合体は、後処理で容易にシリロキシ基を水酸基に変換する変性を行うことが可能である。具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等の溶媒中で、場合により少量水を添加してもよく、酸、および/または、含フッ素化合物を共存させることにより、シリロキシ基を水酸基に変換することが可能である。
変性反応に使用する酸は、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸や、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等の有機カルボン酸、スルホン酸、テトラブチルアンモニウムフルオライドやトリフルオロメタンスルホン酸等の含フッ素化合物等が使用出来る。シリロキシ基を水酸基に変換することが可能であれば使用する酸は特に限定されないが、特にドデシルスルホン酸等の有機カルボン酸、スルホン酸や含フッ素化合物が好ましい。反応温度も特に限定されないが、通常室温から150℃の範囲、好ましくは40℃〜100℃の範囲である。
【0107】
この水酸基含有オレフィン共重合体の用途としては、フィルム、及び成型品の用途での使用に於いて、他の成型品との接着性、印刷性に優れた性質や積層体での使用においてエチレン−ビニルアルコール共重合体、飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂との良好な接着性能を有する効果、さらに、繊維、並びに、布、織物、不織布等の繊維製品で要求される染色性、親水性を満足する性能、その他、自動車、家電などの産業、工業用部品を満足する性能を有し、かつ、ポリプロピレン系樹脂としての性能(剛性、耐熱性、耐衝撃性、加工性等)を維持する効果が得られる。また、フィラー分散親和性の効果等が期待できる。
【実施例】
【0108】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の方法に従ったものである。
【0109】
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
前述した手法、すなわち以下の装置及び条件で測定を実施した。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
(2)コモノマー含量
前述した13CNMR測定により、シリロキシ基含有モノマー、プロピレン、エチレンの含量を決定した。
(3)融点(Tm)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として求めた。
【0110】
(実施例1)
(1)成分(A)の製造
特開平8−208733号公報の実施例2に記載の方法に従って、(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを合成した。
(2)共重合
(1)で合成した(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドをフラスコに採取/秤量し、トルエンに溶解させ2μmol/mlの溶液を調製した。
続いて、加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させ、室温に維持した3Lオートクレーブに、n−ヘプタンを1500ml、東ソーファインケム社製MMAO(ヘキサン希釈品、2.0mmol/ml−Al換算)を5.0ml、さらに、信越化学社製5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン8.81ml(26.5mmol)を添加し、内温を70℃まで昇温させた後に、プロピレンを供給し、内圧が0.50MPaまで昇圧、維持した。
次に、窒素置換したフラスコで東ソーファインケム社製MMAO(ヘキサン希釈品、2.0mmol/ml−Al換算)を5.0mlと先に希釈した(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液1.0ml(2.0μmol)の反応物(反応時間:10分)をアルゴンで圧入し重合を開始させた。重合開始後は内部圧力、温度が一定となるように維持し、1時間重合を実施した。重合終了後、残モノマーのパージを行い、ヘプタンスラリーを回収し、さらにエタノールを3L添加/撹拌後に、固体成分を減圧ろ過によりろ別し、90℃で減圧乾燥を実施した。
その結果、12.6gのプロピレン−5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン共重合体が得られた。触媒活性は、6300(kg−PP/mol−メタロセン.hr)、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、292,000、Mw/Mnは2.59、融点(Tm)は140.2℃、5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシランの含量は0.70mol%であった。重合データを表1に纏めた。図2に、13CNMRのスペクトルを示す。
5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン含量の算出方法は、ポリマーの主鎖部分のメチレン炭素のピーク強度の和を分母として、共重合している5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシランの酸素に結合した1つの炭素(64ppm)のピーク強度を分子として求めた値を採用した。
【0111】
(実施例2)
5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン8.88ml(26.5mmol)の代わりに信越化学社製5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシラン7.42ml(26.5mmol)を使用する以外は実施例1と同様に実施した。その結果、14.5gのプロピレン−5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン共重合体が得られた。触媒活性は、7250(kg−PP/mol−メタロセン.hr)、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、333,000、Mw/Mnは2.11、融点(Tm)は141.1℃、5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシランの含量は0.70mol%であった。重合データを表1に纏めた。
【0112】
(比較例1)
5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン8.88ml(26.5mmol)の代わりに信越化学社製5−ヘキセニロキシトリメチルシラン5.96ml(26.5mmol)を使用する以外は実施例1と同様に実施した。その結果、全くポリマーが得られなかった。
【0113】
(比較例2)
5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン8.88ml(26.5mmol)の代わりに、5−ヘキセン−1−オール3.12ml(26.5mmol)とヘプタン希釈したトリイソブチルアルミニウム(26.5mmol、37.5ml)の反応物を使用する以外は実施例1と同様に実施した。その結果、35.2gのプロピレン−5−ヘキセン−1−オール共重合体が得られた。GPCによる重量平均分子量(Mw)は、356,000、Mw/Mnは2.34、融点(Tm)は150.8℃、5−ヘキセン−1−オールの含量は0.28mol%であった。重合データを表1に纏めた。
【0114】
(実施例3)
(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液1.0ml(2.0μmol)を4.0ml(8.0μmol)に、5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン8.88ml(26.5mmol)を26.4ml(79.5mmol)に、プロピレンの分圧を0.5MPaから0.4MPaに変更する以外は実施例1と同様に実施した。その結果、59.9gのプロピレン−5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン共重合体が得られた。触媒活性は、7490(kg−PP/mol−メタロセン.hr)、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、112,000、Mw/Mnは2.26、融点(Tm)は126.2℃、5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシランの含量は1.63mol%であった。重合データを表1に纏めた。
【0115】
(実施例4)
(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液1.0ml(2.0μmol)を4.0ml(8.0μmol)に、5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシラン7.42ml(26.5mmol)を22.3ml(79.5mmol)に、プロピレンの分圧を0.5MPaから0.4MPaに変更する以外は実施例2と同様に実施した。その結果、59.0gのプロピレン−5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシラン共重合体が得られた。触媒活性は、7380(kg−PP/mol−メタロセン.hr)、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、117,000、Mw/Mnは2.03、融点(Tm)は124.1℃、5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシランの含量は1.68mol%であった。重合データを表1に纏めた。
【0116】
(実施例5)
witco社製(r)−エチレンビスインデニルジルコニウムジクロリドをフラスコに採取/秤量し、トルエンに溶解させ1μmol/mlの溶液を調製した。
続いて、加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させ、室温に維持した1Lオートクレーブに、トルエンを500ml、トリイソブチルアルミニウム−ヘプタン溶液1.4ml(1.0mmol)、さらに、信越化学社製5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン4.02ml(12.1mmol)を添加し、内温を30℃に制御した。その後、窒素置換したフラスコで東ソーファインケム社製MMAO(ヘキサン希釈品、2.0mmol/ml−Al換算)を4.5mlと先に希釈した(r)−エチレンビスインデニルジルコニウムジクロリドのトルエン溶液3.3ml(3.3μmol)の反応物(反応時間:5分)を添加し、直ぐにエチレンを供給し、内圧が0.20MPaまで昇圧、維持して重合をスタートさせた。重合開始後は内部圧力、温度が一定となるように維持し、1時間重合を実施した。重合終了後、残モノマーのパージを行い、トルエンスラリーを回収し、さらにエタノールを1L添加/撹拌後に、固体成分を減圧ろ過によりろ別し、90℃で減圧乾燥を実施した。その結果、13.5gのエチレン−5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン共重合体が得られた。触媒活性は、4090(kg−PE/mol−メタロセン.hr)、GPCによる重量平均分子量(Mw)は、136,000、Mw/Mnは2.56、融点(Tm)は125.9℃、5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシランの含量は0.40mol%であった。
【0117】
(実施例6)
100mlのガラスフラスコに実施例4で製造したシリロキシ基含有プロピレン共重合体を2.5g、続いてトルエン50mlを加えた。室温下、ドデシルスルホン酸を3.28g(13.1ミリモル)とトルエン50mlの混合物を加えた。その後、90℃に昇温し3時間反応させた。反応終了後、温度を室温に戻してろ過を実施した。濾過後、トルエン、続いてアセトンで洗浄し、90℃で減圧乾燥を3時間実施し、2.2gのポリマーを回収した。そのポリマーをHNMR測定した結果、0.04ppmに現れるケイ素に結合したメチル基のピークが消失していた。従って、ほぼ100%でシリル化が進行しており、モノマー換算で約1.7モル%の水酸基を含有したプロピレン共重合体が得られた。GPCによる重量平均分子量(Mw)は、115,000、Mw/Mnは2.05、融点(Tm)は134.2℃であった。
【0118】
(実施例7)
100mlのガラスフラスコに実施例4で製造したシリロキシ基含有プロピレン共重合体を2.5g、続いてテトラヒドロフラン(THF)20mlを加えた。フラスコを氷水に浸けて10分後にテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド−THF溶液(1.0M)を3.93ml滴下した。室温で5時間反応を行った。反応後、塩化ナトリウム水溶液を加え、水層側を除き、吸引ろ過により固体分を回収した。ポリマーをアセトンで洗浄後、90℃で減圧乾燥を3時間実施し、2.3gのポリマー反応物を得た。得られたポリマーを、以下の条件でHNMR測定を行った。図3に、HNMRのスペクトルを示す。その結果、モノマー換算で0.42モル%の水酸基と1.26モル%のシリロキシ基を含有したプロピレン共重合体であることを確認した。
装置:日本電子(株)GSX−400 FT−NMR
積算回数:128回
パルス間隔:8秒
パルス角:90度
試料濃度:15wt/vol%
溶媒:重水素化オルトジクロロベンゼン
測定温度:100℃
【0119】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のオレフィン共重合体の製造方法は、高価な有機アルミニウムオキシ化合物や有機ホウ素化合物を使用しなくても高いオレフィン重合活性を発現し、かつ、さらに実用的な重合温度で高い分子量で高コモノマー含量を有するオレフィン共重合体の製造が可能になるので、産業上優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】分子量分布の測定におけるクロマトグラムのベースラインと区間の一例を示す図である。
【図2】実施例1で得られたプロピレン−5−ヘキセニロキシトリイソプロピルシラン共重合体の13CNMRのスペクトルである。
【図3】実施例7で得られたプロピレン−5−ヘキセニロキシ−t−ブチルジメチルシラン共重合体のシリロキシ基の25%が水酸基に変換したHNMRのスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が10,000〜1,000,000であり、α−オレフィンと下記一般式(I)で表されるシリロキシ基を有するモノマーとを重合させたオレフィン共重合体。
【化1】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるシリロキシ基を有するモノマー構造単位が0.1〜10mol%含まれることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン共重合体。
【請求項3】
前記一般式(I)中のQが脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン共重合体。
【請求項4】
オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の関係が、Q値(Mw/Mn)として、5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン共重合体。
【請求項5】
前記一般式(I)中のQの炭素数が2〜10であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン共重合体。
【請求項6】
α−オレフィンがプロピレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン共重合体。
【請求項7】
少なくとも下記成分(A)、(B)を含む触媒を使用して、α−オレフィンと下記一般式(I)で表されるシリロキシ基を含むビニルモノマーとを共重合させることを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法。
成分(A):中心金属が4族のメタロセン化合物
成分(B):アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれるもの
【化2】

(式(I)中、Qは分岐を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の炭化水素基、ケイ素又はハロゲン含有炭化水素基を示し、これらの置換基のうちの2個以上が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R〜Rの少なくとも一つは、ケイ素に結合する炭素が2級又は3級炭素である。)
【請求項8】
触媒が更に下記成分(C)を含むことを特徴とする請求項7に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
成分(C):微粒子担体
【請求項9】
触媒が更に下記成分(D)を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
成分(D):有機アルミニウム化合物
【請求項10】
α−オレフィンがプロピレンであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6に記載のオレフィン共重合体を酸、含フッ素化合物から選択される一種以上の化合物と反応させて脱シリル化により水酸基含有オレフィン共重合体を製造することを特徴とする変性方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−179794(P2008−179794A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329846(P2007−329846)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】