説明

オレフィン系熱可塑性エラストマー積層体

本発明は、成形性、部品加工性に優れ、かつ耐傷つき性に優れる成形体を提案するものである。 本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)と、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)とが積層された構造を有する二層以上の多層積層体を提供する。前記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)は、[1]特定のシンジオタクティックポリプロピレン共重合体(c)と[2]ポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)から選ばれる少なくとも1種を含有する組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装部品、外装部品には塩化ビニル樹脂が広く用いられている。塩化ビニル樹脂は、部品への成形加工性に優れる上に、比較的安価であるため、インストゥルメンタルパネル、ドア、天井などの内装表皮材、ハンドル材、レバーのノブ、各種グリップ、及びグラスラン、ウエザーストリップ、ウィンドウモール、ルーフモール、サイドモールなどの各種モール類の多数使用されている。しかしながら近年、塩化ビニル樹脂は焼却時に塩素系ガスの発生原因になる可能性が指摘されており、上記部品については塩化ビニル樹脂以外の材料へ置き換える検討がなされている。
特に自動車内装部品において、塩化ビニル樹脂の代替として最も広く用いられているのがオレフィン系熱可塑性エラストマーである。オレフィン系熱可塑性エラストマー材料は、軽量であり、成形性、部品加工性に優れ、リサイクル性し易く、燃焼時に有害なガスを発生しない等の点で優れた材料である反面、耐傷つき性に劣るという欠点を有している。
このため、耐傷つき性を要求される部品にはオレフィン系熱可塑性エラストマーそのままでは殆ど用いられておらず、表面処理をするなどして表面の耐傷つき性を改良したものが用いられているのが実状である。(例えば特許文献1)
【特許文献1】特公平3−070742号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の様な従来技術に伴う問題点を解決するものであって、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーに耐傷つき性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーを積層することで、成形性、部品加工性に優れ、かつ耐傷つき性に優れる成形体を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)とが積層された構造を有する二層以上の多層積層体である。
(ここで、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)はオレフィン系樹脂(a)とエチレン系共重合体ゴム(b)とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であり、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)は、下記[1]と[2]とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であり、
[1]は、
(c−1)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、
(c−2)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位とを、
(c−1)単位と(c−2)単位との合計量を100モル%としたとき(c−1)単位を99〜50モル%、(c−2)単位を1〜50モル%の量で含み、
さらに所望により
(c−1)単位と(c−2)単位との合計量100モル%に対して
(c−3)ポリエンから導かれる繰り返し単位を、0〜30モル%の量で含み、X線回折から得られる結晶化度が20%未満であり、かつ実質的にシンジオタクティック構造であるシンジオタクティックポリプロピレン共重合体(c)であり、
[2]は、X線回折から得られる結晶化度が20%以上のポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)から選ばれる少なくとも1種である。)
更に、本発明に係る多層積層体は、シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)の少なくとも一部が架橋されてなるものであることが好ましい。
【0005】
また、本発明では前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)が、架橋する以前の状態で、135℃のデカリン中で測定した極限粘度が0.01〜10dl/gの範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度が30℃以下であることが好ましい。
【0006】
また、前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)は、
(A)下記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体と、
(B)(B−1)前記(A)中の遷移金属と反応しイオン性の錯体を形成する化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなる少なくとも1つの触媒系の存在下に得られたものであることが好ましい。
【0007】

【0008】
(式(I)、(II)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基を示し、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子を示し、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子または硫黄原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子またはこれらの原子を含有する基を示す。)
【0009】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、ポリプロピレン樹脂(d)が実質的にシンジオタクティック構造であることが好ましい。
また、本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、エチレン系共重合体ゴム(b)が架橋されていることが好ましい。
また本発明の積層体は、層(I)が基材層であり、層(II)が表面層であることが好ましい。
【0010】
本発明では、層(I)がオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)であることが好ましい。
また本発明では、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)の[2]がX線回折から得られる結晶化度が20%以上のポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)であることが好ましい。
また本発明では、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)100重量部に対し更にシリコーンオイル0.1〜5重量部を含むことが好ましい。
上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、成形性、耐熱性、耐摩耗性および柔軟性バランスに優れている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーに耐傷つき性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーを積層することで、成形性、部品加工性に優れ、かつ耐傷つき性に優れる成形体を提案することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体について具体的に説明する。本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー積層体は、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)とを積層して得られる。
尚、本発明においてエラストマーとは、JIS K7171で測定した曲げ弾性率が500MPa以下のものをいう。
【0013】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)はオレフィン系樹脂(a)とエチレン系共重合体ゴム(b)と含有する。
<オレフィン系樹脂(a)>
本発明で用いられるオレフィン系樹脂(a)は、高圧法または低圧法の何れかによる1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られるの高分子量固体生成物からなる。このような樹脂としては、たとえばアイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂が挙げられる。これらの代表的な樹脂は商業的に入手できる。
上記オレフィン系樹脂(a)の適当な原料オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。これらのオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
これらのオレフィン系樹脂(a)の中でも、プロピレン系重合体、具体的には、プロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレン、または、プロピレン・エチレン・ブテンランダムコポリマーなどが特に好ましい。
また、重合形態はアイソタクティック、シンジオタクティックのどちらでも構わないが、特にアイソタクティックの方が、耐熱性の点で優れる。
本発明で用いられるオレフィン系樹脂(a)は、MFR(ASTM D 1238−65T、230℃)が通常0.01〜100g/10分、特に0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0015】
上記オレフィン系樹脂(a)は、組成物の流動性および耐熱性を向上させる役割を持っている。本発明においては、オレフィン系樹脂(a)は、オレフィン系樹脂およびエチレン系共重合体ゴム(b)の合計量100重量部に対して、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは15〜60重量部の割合で用いられる。
上記のような割合でオレフィン系樹脂(a)を用いると、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)が得られる。
【0016】
<エチレン系共重合体ゴム(b)>
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(b)は、エチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンからなる無定型ランダムな弾性共重合体ゴム、或いはエチレンと炭素原子数が3〜20のα−
オレフィンと非共役ポリエンとからなる無定形ランダムな弾性共重合体ゴムである。
このようなエチレン系共重合体(b)のエチレンとα−オレフィンのモル比は通常55/45〜85/15であり、その中でも60/40〜83/17の範囲にある物が好ましい。
【0017】
非共役ポリエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体ゴムが好ましく、特にエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、中でもエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ビニルノルボルネン共重合体ゴムが、適度な架橋構造を有する熱可塑性エラストマーが得られる点で特に好ましい。
【0018】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(b)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、好ましくは50〜300、より好ましくは100〜200の範囲内にあることが好ましい。
また、このエチレン系共重合体ゴム(b)のヨウ素価は、3〜30であることが好ましく、5〜25の範囲にあることが特に好ましい。エチレン系共重合体ゴム(b)のヨウ素価がこのような範囲にあると、バランスよく架橋され、成形性とゴム弾性に優れた熱可塑性エラストマー組成物(A)が得られる。
【0019】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(b)は、軟化剤を含んだいわゆる油展品でも構わない。油展品を用いることでより柔軟性に優れるエラストマー組成物が得られる。油展品に用いることの出来る軟化剤は、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。
【0020】
具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;
トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;
石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;
その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
これらの軟化剤の中でも、パラフィン系のプロセスオイルが特に好ましく、更に、揮発しやすい低分子量成分の含有量が少ない高粘度タイプのパラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。ここで高粘度タイプとは、40℃における動粘度が100〜1000センチストークスの範囲にあるものを言う。
【0021】
本発明においては、軟化剤は、エチレン系共重合体ゴム(b)100重量部に対し、150重量部以下、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜60重量部の割合で用いられる。
【0022】
上記のような必要に応じて油展されていても良いエチレン系共重合体ゴム(b)は、オレフィン系樹脂(a)とエチレン系共重合体ゴム(b)との合計量100重量部に対して、90〜20重量部、好ましくは85〜40重量部の割合で用いられる。
【0023】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン系共重合体ゴム(b)の他に、エチレン系共重合体ゴム(b)以外のゴムとエチレン系共重合体ゴム(b)とを組合わせて用いることもできる。このようなエチレン系共重合体ゴム(b)以外のゴムとしては、たとえばスチレン・ブタジエンゴムおよびその水添品、スチレン・イソプレンゴム及びその水添品、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0024】
<その他の成分>
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)には、オレフィン系樹脂(a)及びエチレン系共重合体ゴム(b)に加えて、軟化剤および/または無機充填剤をブレンドすることができる。
【0025】
軟化剤は、先に述べた様に、エチレン系共重合体ゴム(b)に油展しても良いし、油展せずに後から加えても良い。エチレン系共重合体ゴム(b)に油展せずに後から加える場合も先に述べたのと同様な軟化剤を用いることが出来る。
油展せずに後から加える場合には、軟化剤の量は、油展分と併せて、オレフィン系樹脂(a)及びエチレン系共重合体ゴム(b)の合計量100重量部に対し、100重量部以下、好ましくは3〜80重量部、さらに好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。
軟化剤を上記のような割合で用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物は成形時の流動性に優れ、その成形体の機械的物性・耐熱性が良好である。
【0026】
また、本発明で用いられる無機充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーなどが挙げられる。
本発明においては、無機充填剤は、オレフィン系樹脂(a)及びエチレン系共重合体ゴム(b)の合計量100重量部に対して、100重量部以下、好ましくは2〜30重量部の割合で用いられる。本発明において、無機充填剤の使用量が100重量部を超えると、得られる耐熱性熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性、成形加工性は低下する傾向にある。
【0027】
さらに、本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中に、従来公知の耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、結晶核剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0028】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)は、上述したオレフィン系樹脂(a)とエチレン系共重合体ゴム(b)と、必要に応じて配合される軟化剤および/または無機充填剤等とを混合した後、動的に熱処理することによって得られる。ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
また、動的な熱処理を架橋剤の存在下で行うことによって、架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)を得ることが出来る。
【0029】
その際の用いられる架橋剤は、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート等、熱硬化型ゴムで一般に使用される架橋剤が挙げられる。これら架橋剤の中でも有機過酸化物が特に好ましい。
【0030】
本発明で用いられる有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0031】
これらの内では、反応性、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等の2官能の有機過酸化物が特に好ましい。更にそのなかでも、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンが最も好ましい。
【0032】
このような有機過酸化物は、被処理物全体100重量部に対して、好ましくは0.02〜3重量部、より好ましくは0.05〜1重量部となるような量で用いられる。有機過酸化物の配合量が0.02重量部以上であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、耐熱性、引張特性、ゴム弾性が十分である。また、この配合量が3重量部以下であると、成形性の良好な熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0033】
本発明においては、上記有機過酸化物による架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0034】
上記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分である結晶性ポリオレフィン樹脂(a)およびエチレン系共重合体ゴム(b)との相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0035】
上記のような架橋助剤あるいは多官能性ビニルモノマーなどの化合物は、上記被処理物全体100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは0.2〜3重量部となるような量で用いられる。
【0036】
また、有機過酸化物の分解を促進するために、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノ)フェノール等の三級アミンや、アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等のナフテン酸塩などの分解促進剤を用いてもよい。
【0037】
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。熱処理の温度は、結晶性ポリオレフィン樹脂(a)の融点から300℃の範囲であり、通常140〜290℃、好ましくは170℃〜270℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度で通常10〜10,000sec−1、好ましくは100〜5,000sec−1の範囲である。
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましく、その中でも二軸押出機が特に好ましい。
【0038】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、上記のような動的熱処理の後に熱風中で静的に熱処理されることが望ましい。熱処理は80〜130℃で0.5〜10時間程度行われることが好ましい。この熱処理によって、架橋剤の残査などを除去することができ、得られた製品の臭気を低減する、或いはフォギング性の良好な製品を得ることが出来る。
【0039】
オレフィン系樹脂(B)
本発明で用いられるオレフィン系樹脂(B)としては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの原料であるオレフィン系樹脂(a)の項目で例示したものを挙げることができる。また、その特性を損なわない範囲で、上述した無機充填剤や各種添加剤、安定剤を添加してもかまわない。
【0040】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)は、
[1]シンジオタクティックポリプロピレン共重合体(c)と、
[2]ポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)から選ばれる少なくとも1種とを含有している。
【0041】
<シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)>
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、
(c−1)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、
(c−2)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位と、
必要に応じて
(c−3)ポリエンから導かれる繰り返し単位とからなる。
【0042】
前記(c−2)単位は、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラドデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィンなどのプロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位である。
【0043】
本発明では(c−2)単位は、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび1−デセンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位であることが好ましく、特にエチレンまたはブテンから導かれる繰り返し単位であることが好ましい。(c−2)単位は、オレフィンが2種以上含まれていてもよい。
【0044】
前記(c−3)単位は、下記共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンから導かれる繰り返し単位である。
【0045】
共役ポリエンとして具体的には、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−2,4−ペンタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−ペンチル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエンなどの共役トリエンなどが挙げられる。これらのうちでは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが共重合性に優れる点で特に好ましい。
【0046】
非共役ポリエンとして具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどの非共役ジエン;
6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、6,9−ジメチル−1,5,8−デカトリエン、6,8,9−トリメチル−1,5,8−デカトリエン、6−エチル−10−メチル−1,5,9−ウンデカトリエン、4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、7−エチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、4−エチリデン−1,6−デカジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−デカジエン、7−メチル−6−プロピル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−1,7−ノナジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエンなどの非共役トリエンなどが挙げられる。
このような非共役ポリエンは、架橋した場合に耐磨耗性に優れるなどの点で好ましい。
【0047】
これらのなかでは5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン(EMND)が望ましい。(c−3)単位は、2種以上のポリエンが含まれていてもよい。
【0048】
シンジオタクティックプロピレン共重合体は、(c−1)単位と(c−2)単位との合計量を100モル%としたとき(c−1)単位を通常99〜50モル%の量、好ましくは98〜60モル%の量、特に好ましくは90〜65モル%の量で含み、(c−2)単位を通常1〜50モル%の量、好ましくは2〜40モル%の量、さらに好ましくは10〜35モル%の量で含んでいる。
【0049】
このような量で(c−1)単位および(c−2)単位を含有するシンジオタクティックプロピレン共重合体は、耐傷付き性に優れる。またこのようなシンジオタクティックプロピレン共重合体は、熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、得られる熱可塑性樹脂組成物は、充分な柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性を発揮する傾向がある。
【0050】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、所望により前記(c−1)単位と(c−2)単位との合計量100モル%に対して前記(c−3)単位を好ましくは0.01〜30モル%の量、好ましくは0.1〜30モル%の量、さらに好ましくは0.3〜20モル%の量で含んでも良い。
シンジオタクティックプロピレン共重合体を架橋させる際には(c−3)単位を含むことで、架橋効率が高まり、耐熱性の向上に寄与する。
また、本発明のシンジオタクティックポリプロピレン共重合体(c)X線回折から得られる結晶化度が20%未満である。
【0051】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、実質的にシンジオタクティック構造であり、シンジオタクティシティーパラメーターは0.6以上、好ましくは0.7以上であり、シンジオタクティシティーがこのような範囲にあると結晶化速度が速く、加工性に優れる。なお、本明細書において実質的にシンジオタクティック構造であるとは、シンジオタクティシティーパラメーターが0.6以上であることを意味する。
【0052】
ここでシンジオタクティシティーパラメーターについて説明する。
このシンジオタクティックプロピレン共重合体のシンジオタクティシティーパラメーター(以下「SP値」ということがある。)は、シンジオタクティックプロピレン共重合体の13C−NMRスペクトルおよび下記式(1)により、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の強度(面積)比として求められる。
【0053】
SP値=第三領域(19.5〜20.3ppm)のシグナル面積/{第一領域(21.0=21.9ppm)のシグナル面積+第二領域(20.3=21.0ppm)のシグナル面積+第三領域(19.5〜20.3ppm)のシグナル面積}…(1)
第1領域はPPP(mm)、第二領域はPPP(mr)、第三領域はPPP(rr)で示され、これらはそれぞれ下記構造の頭−尾結合したプロピレン3単位連鎖を示す。
【0054】

【0055】
なおメチル炭素領域内(19〜23ppm)では、上記のような頭−尾結合プロピレン3連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基以外にも、下記のような他の連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基ピークが観測される。SP値を求める際には、このようなプロピレン単位3連鎖に基づかないメチル基のピーク面積を下記のように補正する。なお、Pはプロピレンから導かれる繰返し単位を示し、Eはエチレンから導かれる繰返し単位を示す。
【0056】
(1)第2領域内では、プロピレン同士が頭−尾結合したPPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
このメチル基ピークの面積は、PPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(30.6ppm付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
【0057】
(2)第3領域内では、EPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
このメチル基ピーク面積は、EPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(32.9ppm付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
【0058】
(3)第2領域および第3領域内では、プロピレン・エチレンランダム共重合体中に少量含まれる、下記部分構造(i)、(ii)および(iii)で示されるような位置不規則単位中のメチル基C〜E’に由来するピークが観察される。
【0059】
第2領域では、メチル基Cピーク、メチル基Dピークおよびメチル基D’ピークが観測され、第3領域では、メチル基Eピークおよびメチル基E’ピークが観測される。
なお位置不規則単位(i)〜(iii)中のメチル基中、メチル基Aピークおよびメチル基Bピークは、それぞれ17.3ppm、17.0ppmで観測され、第1〜3領域内では観測されない。
【0060】

【0061】
メチル基Cのピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
メチル基Dのピーク面積は、構造(ii)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm付近および34.5ppm付近)のピーク面積の和の1/2より求めることができる。
メチル基D’のピーク面積は、構造(iii)のメチル基E’に隣接するメチン基に基づくピーク(33.3ppm付近)の面積より求めることができる。
メチル基Eのピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm付近)のピーク面積より求めることができる。
メチル基E’のピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm付近)のピーク面積より求めることができる。
【0062】
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖中の第2プロピレン単位の側鎖メチル基のピーク面積を求めることができる。
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989))を参考にして帰属することができる。
【0063】
なお、このシンジオタクティック構造は、具体的には以下のようにして測定される。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0064】
本発明の好ましい態様においては、(c−2)単位がエチレン単位であり、かつエチレン単位の含有量が(c−1)単位と(c−2)単位との合計量を100モル%としたときに1〜40モル%の範囲にあり、SP値が0.6以上、好ましくは0.7以上である。
【0065】
このようなシンジオタクティックプロピレン共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。シンジオタクティックプロピレン共重合体の極限粘度[η]が前記範囲内にあると、該シンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物は、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れる。
【0066】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、ヨウ素価が通常0〜50、好ましくは1〜40、さらに好ましくは3〜30の範囲内にあることが望ましい。
さらにシンジオタクティックプロピレン共重合体は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常30℃以下、好ましくは20℃以下の範囲にあることが望ましい。シンジオタクティックプロピレン共重合体のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内にあるシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物は、制振性、耐寒性、低温特性に優れる。
【0067】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、DSCの吸熱曲線における最大ピーク位置の温度(Tm)が、110℃未満、好ましくはTmが存在しないことが好ましい。Tmの測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求める。
【0068】
シンジオタクティックプロピレン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましい。
【0069】
シンジオタクティックプロピレン共重合体の製法
このようなシンジオタクティックプロピレン共重合体を製造するに際し、触媒として後述するようなメタロセン系触媒が好ましく用いられる。
【0070】
また、シンジオタクティックプロピレン共重合体の製造の際には、上記触媒系に代えて特開平2−41303号公報、特開平41305号公報、特開平2−274703号公報、特開平2−274704号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平4−69394号公報、特開平5−17589号公報または特開平8−120127号公報に記載の触媒系を用いることもできる。
【0071】
具体的には、J.A.Ewenらの文献「J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255−6256」に記載の触媒系を用いることもでき、また該文献に記載された化合物と異なる構造のものであっても、プロピレンの単独重合体を製造したときに、得られる重合体のシンジオタックティックtriad分率(A.ZambelliらMacromolecules vol.6 687(1973).同vol 8 925(1975))が例えば、0.5以上程度の比較的タクティシティーが高い重合体を与える触媒系であれば利用でき、このような触媒系としては例えば、互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物と有機アルミニウムなどの助触媒とからなる触媒系が挙げられる。
【0072】
このような触媒系を構成する互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物としては、例えば上記文献に記載されたジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0073】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、例えば上記のような触媒の存在下に、プロピレンと、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンとを、最終的に上記のような特性を有するように重合させることにより製造することができる。
重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
【0074】
液相重合法では、重合媒体としてプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などの不活性炭化水素溶媒を用いることができ、またプロピレンを溶媒として用いることもできる。
【0075】
重合は、懸濁重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で行われることが望ましく、溶液重合法を実施する際には、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度で行われることが望ましい。また、気相重合法を実施する際には、重合は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の温度で行われることが望ましい。重合は、通常常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaの圧力下で行われる。
【0076】
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるシンジオタクティックプロピレン共重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
【0077】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、より具体的には、例えば
(A)下記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体と、
(B)(B−1)前記(A)中の遷移金属Mと反応しイオン性の錯体を形成する化合物(以下「イオン化イオン性化合物」ということがある。)
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなる少なくとも1つの触媒系の存在下に、プロピレンと、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンとを共重合させて得られる。
【0078】
(A)遷移金属錯体
メタロセン系触媒を形成する遷移金属錯体は、下記一般式(I)または(II)で表される。
【0079】

【0080】
式(I)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、好ましくはTi、ZrまたはHfである。
【0081】
CpおよびCpは、互いに同一でも異なっていてもよく、Mとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基である。さらに詳説すると、CpおよびCpは遷移金属Mに配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0082】
およびXは、互いに同一でも異なっていてもよく、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子である。具体的には、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO、ただし、Rはアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)、ハロゲン原子、水素原子などが挙げられる。
【0083】
Yは窒素原子、リン原子、酸素原子またはイオウ原子を含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成してもよい。
【0084】
ZはC、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子、またはこれらの原子を含有する基を示す。これらの原子は、アルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよく、Zの置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。結合基Zとしては、例えば炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−CO−、−SO−、−SO−、−BR−(ただしRは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)などが挙げられ、好ましくは1個のO、SiまたはCを含有する基である。
【0085】
以下に、上記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体の一例を示す。
【0086】
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドなど。
【0087】
また、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属錯体を例示することもでき、ハフニウム金属を、ジルコニウム金属、チタニウム金属に置き換えた遷移金属錯体を例示することもできる。
上記のような遷移金属錯体は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0088】
粒子状担体
また上記のような遷移金属錯体(A)は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。このような粒子状担体としては、SiO、Al、B、MgO、ZrO、CaO、TiO、ZnO、SnO、BaO、ThOなどの無機担体;ポリα−オレフィン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0089】
(B−1)イオン化イオン性化合物
イオン化イオン性化合物は、遷移金属錯体(A)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物であり、このようなイオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0090】
ルイス酸としては、BR(式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0091】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0092】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0093】
カルボラン化合物としては、4−カルバノナボラン(14)、1,3−ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
上記のようなイオン化イオン性化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0094】
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
従来公知のアルミノキサン(アルモキサン)は、具体的には、下記一般式で表される。
【0095】

【0096】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
mは2以上の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
【0097】
ここで、アルミノキサンは式(OAl(R))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、RおよびRはRと同様の炭化水素基であり、RおよびRは相異なる基を示す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0098】
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0099】
前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0100】
また触媒を形成するに際しては、イオン化イオン性化合物(B−1)または有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)とともに以下のような有機アルミニウム化合物(B−3)を用いてもよい。
【0101】
(B−3)有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、例えば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0102】
(RAl(O(R))
(式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
【0103】
本発明においては、上記シンジオタクティックプロピレン共重合体製造用の触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の(1)固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、(2)可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
【0104】
本発明では、上記のようなメタロセン系触媒の存在下に、プロピレン、プロピレン以外のオレフィン、ポリエンを通常液相で共重合させる。この際、一般に上述したような不活性炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0105】
メタロセン系触媒を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内の遷移金属錯体(A)の濃度は、重合容積1リットル当たり、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルの量で用いられる。
イオン化イオン性化合物(B−1)は、遷移金属錯体(A)に対するイオン化イオン性化合物のモル比(B−1/A)で、通常0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)は、遷移金属錯体(A)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、通常1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、重合容積1リットル当たり、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0106】
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて〜8MPa、好ましくは0を超えて〜5MPaの範囲の条件下に行われる。
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
上記のようにしてプロピレン、オレフィンおよびポリエンを共重合させると、シンジオタクティックプロピレン共重合体は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、シンジオタクティックプロピレン共重合体が得られる。
【0107】
<ポリプロピレン樹脂(d)>
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(d)は、X線回折から得られる結晶化度が20%以上であり、市販のホモタイプ、ブロックタイプ、ランダムタイプの何れのタイプも用いることが出来、更にアイソタクティック、シンジオタクティックの何れも用いることが出来る。この中でも特にシンジオタクティックのポリプロピレン樹脂が好ましい。その際、上述したシンジオタクティシティーパラメーターは好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上である。また、ポリプロピレン樹脂(d)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、0.01〜100g/10分であることがさらに好ましい。
【0108】
<オレフィン系熱可塑性エラストマー(e)>
本発明で用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)の項目で例示したのと同様のエラストマーを挙げることができる。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と同一であっても構わないし、同一でなくとも構わない。
【0109】
本発明における、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)におけるシンジオタクティックプロピレン系共重合体(c)は、シンジオタクティックプロピレン系共重合体(c)、ポリプロピレン樹脂(d)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)の合計量100重量部に対して好ましくは10〜90重量部、より好ましくは20〜70重量部の割合で用いられる。
【0110】
また、ポリプロピレン樹脂(d)とオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)との合計量が100重量部である場合、(d)/(e)は0〜100/100〜0(重量部)、好ましくは5〜50/95〜50(重量部)で用いられる。
【0111】
<その他の成分>
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)には、[1]シンジオタクティックプロピレン系共重合体(c)と[2]ポリプロピレン樹脂(d)および/またはオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)に加えて、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)で例示したのと同様の軟化剤および/または無機充填剤をブレンドすることができる。
【0112】
またシリコーンオイルを添加すると、耐傷付性が更に良好となる。本発明において用いるシリコーンオイルとしては、具体的にはジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、変性シリコーン油などが挙げられる。これらの中ではジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイルが好ましく用いられる。
このシリコーンオイルの動粘度〔JIS K 2283、25℃〕は10〜30,000cSt、好ましくは50〜10,000cSt、さらに好ましくは100〜5,000cStの範囲である。本発明においてシリコーンオイルを用いる場合にはその添加量は、オレフィン系熱可塑性組成物(C)100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0113】
さらに、本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)中に、従来公知の耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0114】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)は、上述したシンジオタクティックプロピレン系共重合体(C)、ポリプロピレン樹脂(d)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(e)と、必要に応じて配合される軟化剤および/または無機充填剤等とを混合した後、動的に熱処理することによって得られる。ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
更に、動的熱処理を、架橋剤の存在下で行うことによって架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマー(C)を得ることもできる。架橋することで、耐熱性が向上する。オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)の架橋には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の項目で例示した架橋剤、架橋助剤、分解促進剤を用いることが出来る。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)の動的な熱処理には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と同様の方法で行うことが出来る。
【0115】
また、架橋方法として、電子線を照射する方法を採用する場合は、上述の動的熱処理により均一な組成物を得た後に、押出成形機、射出成形機、中空成形機、カレンダーロールまたはプレス等により意図する形状に成形し、電子線を照射することにより架橋物が得られる。電子線の照射は、0.1〜10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が0.5〜35Mrad(メガラッド)、好ましくは0.5〜10Mradになるように行うことが望ましい。
【0116】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)は、耐傷つき性、耐摩耗性、柔軟性バランスに優れている。
【0117】
積層体
本発明の多層積層体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)が積層されてなる多層積層体であり、層(I)が基材層、層(II)が表面層であることがより好ましい。
また層(I)がオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)である場合には積層体全体として柔軟性、ゴム弾性を有するので好ましく、層(II)のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)の[2]が、X線回折から得られる結晶化度が20%以上のポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)の双方を含む場合には、耐傷付性、剛性、ゴム弾性、意匠性(低光沢性)等のバランスに優れるので好ましい。この表面層は必要に応じエンボス加工等を施してもよい。
本発明の多層積層体は、層(I)、層(II)以外の層(例えば発泡層、ガスバリヤー樹脂層等)をさらに有していてもよい。
層(I)と層(II)とは、接着剤を用いることなしに熱融着により接着積層化することが出来る。
本発明の係る多層積層体の形状は特に限定されるものではなく、例えばシート状、管状、円柱状、角柱状、異形等が挙げられる。
層(I)、層(II)の厚みは特に限定されるものではないが、層(I)の厚みは0.1〜50mmであることが好ましく、層(II)の厚みは5μm〜10mmであることが好ましい。
【0118】
積層体の製造方法としては、
i)予め成形された一方の層に、カレンダー成形またはTダイ押出成形により他方の層を積層する逐次法、
ii)押出成形により、層(I)と層(II)とを同時多層押出成形する方法、
iii)逐次射出成形、或いは同時射出成形により層(I)と層(II)とを積層する方法、
(より詳しくは、一方の層を射出した後に他方の層を射出し、金型内で積層する逐次射出成形、または、いわゆるサンドウィッチ成形により基材層と表面層を同時に射出し積層部品を成形する同時法)、
iv)多層の押出ブロー成形により層(I)と層(II)とを積層する方法、
等を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の多層積層体の好適な用途例を以下に述べる。
自動車外装部品(サイドモール、バンパーモール、ルーフモール、ウィンドウモール。ベルトモール、ドアモールなどの各種モール部品、グラスランチャンネル、ウエザーストリップなどのシール部品)、自動車内装部品(ハンドル、ピラー、インストルメントパネル、ドアトリム、天井、ホイルハウスカバー、コンソールボックスの蓋、各種レバー、グリップ類。自動車内装表皮材に用いる場合には、オレフィン系またはウレタン系の発泡材と更に積層することも出来、また、表面をエンボス加工しても良い。)、土木建築用部材、家庭用電気製品のハウジング、スポーツ用品、日用品、雑貨。
【実施例】
【0120】
(重合例1;シンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを750ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)装入し、昇温を開始し30℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.5kg/cmGとなるように加圧し、公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液(0.0002mM/ml)を3.75ml、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.002mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが0.001ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.004ミリモル/リットルであった。
【0121】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.5kg/cmGに保持した。重合を開始して30分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強撹拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0122】
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.4dl/gであり、SP値は0.94であり、ガラス転移温度は−28℃であり、エチレン含量は24モル%であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.9であった。
[実施例1]
【0123】
重合例1で得られた、プロピレン・エチレン共重合体70重量部とシンジオタクティックポリプロピレン(ホモポリマー、MFR=8.3g/10分)30重量部、カーボンブラックマスターバッチ1重量部(黒に着色するため)とを230℃に設定した2軸押出機で混練し、熱可塑性エラストマー組成物(C−1)を得た。次いで、2台の1軸押出機と一つの積層ダイスからなる2層積層押出装置でオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)と熱可塑性エラストマー組成物(C−1)の積層体を得た。尚、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)には、熱可塑性エラストマーC−11(油展されたエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム[エチレンから導かれる単位とプロピレンから導かれる単位とのモル比(エチレン/プロピレン)81/19、ENBに基づくヨウ素価13、ムーニ−粘度ML1+4(100℃)140のポリマー100重量部にパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製PW−380)を40部油展したもの]80重量部、プロピレンホモポリマー[MFR(230℃、2.16kg)5(g/10分)]20重量部、有機過酸化物[2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン]0.3重量部、およびジビニルベンゼン(DVB)0.5重量部をヘンシェルミキサー中で充分混合した後、220℃に設定したスクリュー径53mmの2軸押出機に50kg/hの割合でフィードして動的熱処理を行うことで得た、熱可塑性エラストマー)を用いた。積層押出成形品はベルト状で、幅が5cm、熱可塑性エラストマーC−11の厚みが1.5mm、組成物−1の厚みが0.5mmであった。
【0124】
東洋精機製、学振摩耗試験機を用いて、厚さ2mmの試験片を用いて、45R、SUS製の摩耗圧子470gの先端を綿帆布#10に覆い、これを23℃、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmで試料を摩耗させ、その前後のグロス変化率ΔGlossを以下のようにして求め、耐傷付き性を評価した。
【0125】
ΔGloss=100×(摩耗前のGloss−摩耗後のGloss)/摩耗前のGloss
上記条件によるΔGlossは、8%であった。
[実施例2]
【0126】
実施例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物(C−1)と、プロピレンホモポリマー(B−1、MFR=25g/10分)とから、インサート式射出成形により、プロピレンホモポリマー(B−1)(基材、厚み3mm)、熱可塑性エラストマー組成物(C−1)(表皮材厚み1.5mm)の順で逐次射出成形を行って、積層射出成形角板(12cmx20cm)を得た。次いで実施例1と同様に学振磨耗試験を行い、グロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、7%であった。
[実施例3]
【0127】
重合例1で得られた、プロピレン・エチレン共重合体70重量部と実施例1で用いた熱可塑性エラストマーC−11、カーボンブラックマスターバッチ1重量部(黒に着色するため)とを230℃に設定した2軸押出機で混練し、熱可塑性エラストマー組成物(C−2)を得た。
次いで、熱可塑性エラストマーC−12(油展されたエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム[エチレンから導かれる単位とプロピレンから導かれる単位とのモル比(エチレン/プロピレン)81/19、ENBに基づくヨウ素価13、ムーニ−粘度ML1+4(100℃)140のポリマー100重量部にパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製PW−380)を40部油展したもの]65重量部、プロピレンホモポリマー[MFR(230℃、2.16kg)1.0(g/10分)]35重量部、有機過酸化物[2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3]0.2重量部、およびジビニルベンゼン(DVB)0.3重量部をヘンシェルミキサー中で充分混合した後、220℃に設定したスクリュー径53mmの2軸押出機に40kg/hの割合でフィードして動的熱処理を行うことで得た、熱可塑性エラストマー)をカレンダー成形により厚さ0.5mmのシートを成形し、熱可塑性エラストマー組成物(C−2)の厚み0.2mmのシートを同様にカレンダー成形機でシート成形しながら熱ラミネーションにより積層し、積層シート成形体を得た。
実施例1と同様に学振磨耗試験を行い、グロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、11%であった。
[実施例4]
【0128】
実施例3において、熱可塑性エラストマー組成物(C−2)の代わりに、重合例1で得られた、プロピレン・エチレン共重合体70重量部と実施例1で用いた熱可塑性エラストマーC−11を30重量部、カーボンブラックマスターバッチ1重量部(黒に着色するため)とシリコーンオイル(東レダウコーニングシリコーン社製、SH200(商標)、動粘度3000cSt)1.5重量部を230℃に設定した2軸押出機で混練し、熱可塑性エラストマー組成物(C−3)を得た。
次いで、熱可塑性エラストマーC−12をカレンダー成形により厚さ0.5mmのシートを成形し、熱可塑性エラストマー組成物(C−3)の厚み0.2mmのシートを同様にカレンダー成形機でシート成形しながら熱ラミネーションにより積層し、積層シート成形体を得た。実施例1と同様に学振磨耗試験を行い、グロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、5%であった。
【0129】
(比較例1)
実施例1において、重合例1で得られたプロピレン・エチレン共重合体の代わりに、主にアイソタクティック構造を有するプロピレン・エチレン共重合体(エチレン含量24モル%、[η]=2.5dl/g)を用い熱可塑性エラストマー組成物(C−4)を得た。実施例1と同様に積層押出成形し、学振磨耗試験によってグロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、76%であった。
【0130】
(比較例2)
実施例2において、重合例1で得られたプロピレン・エチレン共重合体の代わりに、主にアイソタクティック構造を有するプロピレン・エチレン共重合体(エチレン含量24モル%、[η]=2.5dl/g)を用い熱可塑性エラストマー組成物(C−4)を得た。実施例2と同様に逐次射出成形し、学振磨耗試験によってグロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、71%であった。
[実施例5]
【0131】
(重合例2:シンジオタクティックプロピレン・エチレン・DCPD共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを610.5ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が1.0ミリモルとなるように1.0ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)、ジシクロペンタジエン(DCPD)を6.5ml装入し、昇温を開始し50℃に到達させた。その後、系内をエチレンで7.5kg/cmGとなるように加圧し、合成例1と同様な操作を行った。
【0132】
得られたプロピレン・エチレン・DCPD共重合体の極限粘度[η]は1.3dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−36℃であり、エチレン含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して34モル%であり、DCPD含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して1.6モル%であり、ヨウ素価は10.3g/100gであり、SP値は0.92であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であり、Tmは観測されなかった。
【0133】
重合例2で得られた、プロピレン・エチレン・DCPD共重合体60重量部とシンジオタクティックポリプロピレン(ホモポリマー、MFR=5.5g/10分)40重量部、カーボンブラックマスターバッチ1重量部(黒に着色するため)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.2重量部(架橋剤として)、ジビニルベンゼン0.4重量部(架橋助剤として)とを高速ミキサーで十分混合した後、200℃に設定した2軸押出機で動的架橋し、熱可塑性エラストマー組成物(C−5)を得た。次いで、実施例1と同様に、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)と熱可塑性エラストマー組成物(C−5)の積層体を得た。
実施例1と同様に学振磨耗試験によってグロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、5%であった。
【0134】
(比較例3)
実施例5において重合例2で得られた、プロピレン・エチレン・DCPD共重合体の代わりに、主にアイソタクティック構造を有するプロピレン・エチレン・DCPD共重合体(エチレン含量35モル%、DCPD含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して1.6モル%であり、ヨウ素価は10.0g/100g、分子量分布(Mw/Mn)は2.4)を用いて、実施例5と同様に熱可塑性エラストマー組成物(C−6)を得た。次いで、実施例1と同様に、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)と熱可塑性エラストマー組成物(C−6)の積層体を得た。
実施例1と同様に学振磨耗試験によってグロス変化率ΔGlossを求めた。ΔGlossは、66%であった。
【0135】
前記実施例、比較例において、学振磨耗試験は、各試料の熱可塑性エラストマー組成物(C−1)〜(C−6)層側を磨耗させて耐傷付き性を評価した。
またプロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体のMFRは、230℃、2.16kg荷重で測定した値であり、[η]は135℃、デカリンで測定した極限粘度である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)と、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)とが積層された構造を有する二層以上の多層積層体。
(ここで、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)はオレフィン系樹脂(a)とエチレン系共重合体ゴム(b)とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であり、
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)は、下記[1]と[2]とを含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であり、
[1]は、
(c−1)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、
(c−2)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位とを、
(c−1)単位と(c−2)単位との合計量を100モル%としたとき(c−1)単位を99〜50モル%、(c−2)単位を1〜50モル%の量で含み、
さらに所望により
(c−1)単位と(c−2)単位との合計量100モル%に対して
(c−3)ポリエンから導かれる繰り返し単位を0〜30モル%の量で含み、
X線回折から得られる結晶化度が20%未満であり、かつ実質的にシンジオタクティック構造であるシンジオタクティックポリプロピレン共重合体(c)であり、
[2]は、X線回折から得られる結晶化度が20%以上のポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)から選ばれる少なくとも1種である。)
【請求項2】
シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)の少なくとも一部が架橋されている請求項1に記載の多層積層体。
【請求項3】
前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)が、架橋する以前の状態で、135℃のデカリン中で測定した極限粘度が0.1〜10dl/gの範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度が30℃以下である請求項1または2に記載の多層積層体。
【請求項4】
前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(c)が、
(A)下記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体と、
(B)(B−1)前記(A)中の遷移金属と反応しイオン性の錯体を形成する化合物、
(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなる少なくとも1つの触媒系の存在下に得られたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の多層積層体;

(式(I)、(II)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基を示し、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子を示し、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子またはイオウ原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子またはこれらの原子を含有する基を示す。)。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂(d)が実質的にシンジオタクティック構造であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項6】
エチレン系共重合体ゴム(b)が架橋されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項7】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)及びオレフィン系樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種を含有する層(I)が基材層であり、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)を含有する層(II)が表面層である請求項1ないし6のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項8】
層(I)がオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A)である請求項1ないし7のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項9】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)の[2]が、X線回折から得られる結晶化度が20%以上のポリプロピレン樹脂(d)及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(e)である請求項1ないし8のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項10】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(C)100重量部に対し、更にシリコーンオイル0.1〜5重量部を含む請求項1ないし9のいずれかに記載の多層積層体。

【国際公開番号】WO2005/053951
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515885(P2005−515885)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016142
【国際出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】