説明

カウル部仕切り構造

【課題】カウル部の空気流路への仕切り部材の組み付け性に優れたカウル部仕切り構造を得る。
【解決手段】カウル部16の空気流路26を区画する遮蔽板32は、薄肉ヒンジ38によって、上部板32Uを下部板32Lに対して屈曲可能とされる。屈曲状態で上部板32Uの保持クリップが下部板32Lの被係合片46に係合しこの状態を維持できる。車体への組付前のカウルパネル20に、屈曲状態の遮蔽板32を取付クリップ44によって取り付け、このカウルパネル20を、車体に組み付けた後、上部板32Uを薄肉ヒンジ38周りに矢印S方向に回動させ、下部板32Lと上部板32Uとを平面状にする。保持クリップ48が被係合片46に係合してこの状態を維持できる。最後に、カウルルーバー22を車体に組み付ける。遮蔽板32をカウルパネル20に取り付けた状態で上部板32Uを回動させるだけで所望の位置に立設することができ、作業性が向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のカウル部の空気流路を仕切るためのカウル部仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドウの下部には、カウルパネルとダッシュパネルとによって、空気流路となる閉断面が構成されることがある。例えば特許文献1には、カウルパネルに設けた開口を通じて外気に連通する室を、仕切り部材によって車幅方向に分割する自動車の空気取り入れ口構造が記載されている。
【0003】
ところで、実際の車両では、仕切り部材の配設位置が車両の内側の場合があるため、組み付け時の組み付け作業性が悪かった。
【特許文献1】実開昭63−147319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、カウル部の空気流路への仕切り部材の組み付け性に優れたカウル部仕切り構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車両のカウル部の空気流路を仕切る仕切り部材と、前記仕切り部材に設けられ仕切り部材を少なくとも中間部で折れ曲がり可能とする折れ曲がり手段と、前記折れ曲がり手段による前記仕切り部材の折れ曲がりを阻止して仕切り部材の形状を維持する形状維持手段と、前記仕切り部材に設けられ車体への取り付け用とされる取付部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
このカウル部仕切り構造において、仕切り部材をカウル部の空気流路に組み付けるには、折れ曲がり手段によって仕切り板を折り曲げた状態で、取付部材を用いて仕切り部材を車体(空気流路内)に取り付ける。この状態で、折れ曲がり手段による仕切り板本体の折れ曲がりを解除し、形状維持手段によって、仕切り部材の折れ曲がりが阻止された形状を維持する。このように、本発明では組み付け作業が簡単であり、たとえば車両の内部等、作業者の手が届きにくい部位であっても容易に仕切り部材と組み付けできる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記折れ曲がり手段が、前記仕切り部材を屈曲させる屈曲手段、であること特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1の「折れ曲がり手段」には、仕切り部材を少なくとも中間部で折れ曲がり可能とすればその構成は特に限定されず、この「折れ曲がり」には、仕切り部材を屈曲させるもののほか、湾曲されるものも含み、さらに、折れ曲がりの箇所は、1箇所に限定されないが、特に、折れ曲がり手段を請求項2に記載のような屈曲手段とすることで、簡単な構造で仕切り部材を中間部で折り曲げる(屈曲させる)ことができる。1つの屈曲手段で仕切り部材を折り曲げることも可能となる。たとえば請求項3に記載のように、前記屈曲手段がヒンジである構成とすれば、さらに折れ曲がり手段の構造が簡単になる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記形状維持手段が、前記仕切り部材の上部板と下部板を平面状に維持するように係合するクリップ、であることを特徴とする。
【0010】
すなわち、仕切り部材は上部板と下部板とを含んで構成され、形状維持手段は、仕切り部材の上部板と下部板を平面状に維持するように係合するクリップとされる。このように、クリップが係合して仕切り部材の形状を平面状に維持できるようになるので、組み付け作業の作業性がさらに優れる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記形状維持手段が、前記仕切り部材に作用した衝撃で仕切り部材の形状維持を解除可能とされていることを特徴とする。
【0012】
カウル部に外部から衝撃が作用した場合に、形状維持手段は、仕切り部材の形状維持を解除するので、仕切り部材が折れ曲がり可能となり、この折れ曲がりにより衝撃を吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、カウル部の空気流路への仕切り部材の組み付け性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には、本発明の一実施形態のカウル部仕切り構造12が適用された車体14のカウル部16が、車体14の略右半分として示されている(左半分も対称に表れる)。また、図2及び図3には、このカウル部仕切り構造12に用いられる遮蔽板32が示されている。各図面において適宜、車両前方を矢印FRで、車両上方を矢印UPで、車両幅方向外側を矢印OUTでそれぞれ示す。
【0015】
本発明に係る車体14は、左右のフロントフェンダー18を有しており、これらフロントフェンダー18間に掛け渡すようにして、車幅方向に延在するカウルパネル20が配置されている。また、車体14のフロントガラス24の下前方には、車幅方向に延在するカウルルーバー22が配置されている。そして、カウルパネル20とカウルルーバー22とで閉断面が構成されており、この閉断面が空気流路26となっている。
【0016】
カウルルーバー22には、複数のスリット状の空気取り入れ口28が形成されており、この空気取り入れ口28から、空気流路26内に空気を導入することができるようになっている。また、カウルパネル20には、必要に応じて複数の図示しない空気供給口が形成されている。空気供給口は、空気流路26内の空気を、たとえばエンジンユニットや、車室内を空調する空調装置等に送る。
【0017】
空気流路26内には、車幅方向の所定位置に遮蔽板32が配置されており、空気流路26内が、車幅方向の複数の空気室30に区画されている。これにより、空気流路26内で不用意に空気が混じりあわないようになっている。なお、図1では、車体14の車幅方向中央近傍に配置された遮蔽板32のみを示しているが、必要に応じて、他の部位、たとえばフロントフェンダー18の近傍等に、空気流路26の形状に合わせた遮蔽板が配置される。
【0018】
図2(A)及び(B)にも詳細に示すように遮蔽板32は、空気流路26を区画可能な形状の略板状に形成されており、周囲に設けられたフランジ片34によって補強されている。フランジ片34の外側には、必要に応じてシール材36(図1及び図3参照)が配設されており、空気流路26内に遮蔽板32を配置したときに遮蔽板32とカウルパネル20又はカウルルーバー22との隙間を埋めてシールするようになっている。
【0019】
遮蔽板32の上下方向(空気流路26内に配置された姿勢での上下方向)の中間部には、遮蔽板32を屈曲可能とする薄肉ヒンジ38が形成されている。すなわち、図3(A)及び(B)にも示すように、遮蔽板32は薄肉ヒンジ38によって、上部板32Uを下部板32Lに対して矢印B方向に屈曲させることが可能とされている。
【0020】
遮蔽板32の上部板32Uには、1又は複数(本実施形態では2つ)のリブ40が突設されている。このリブ40は、上部板32Uを下部板32Lに対して矢印B方向に屈曲させたときに下部板32Lに当たって、屈曲角度を所定範囲(本実施形態では略90度)に制限する。
【0021】
遮蔽板32の下部板32Lには、カウルパネル20の取付孔42(図3(A)参照)に係合する取付クリップ44が設けられている。この取付クリップ44を取付孔42に押し当てて図3(B)に示すように係合させるだけで、遮蔽板32をカウルパネル20に取り付けることができる。
【0022】
図2(A)及び(B)に示すように、遮蔽板32の薄肉ヒンジ38の近傍には、下部板32Lに被係合片46が設けられ、上部板32Uには、上部板32Uと下部板32Lとを平面状にした状態(薄肉ヒンジ38によって折り曲げない状態)で被係合片46に係合する保持クリップ48が形成されている。上部板32Uを薄肉ヒンジ38周りに回動させて下部板32Lと平面状にするだけで、図2(B)に示すように、保持クリップ48が被係合片46に係合して、この状態を維持することができる。
【0023】
保持クリップ48の被係合片46に対する係合力は、通常状態では係合解除されることはないが、たとえば上部板32Uに衝撃が作用した場合には、この係合を解除して、薄肉ヒンジ38による折れ曲がりを可能とするように、所定の係合力に設定されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る遮蔽板32を用いてカウル部仕切り構造12を構成する方法、および本実施形態の作用を説明する。
【0025】
本実施形態に係るカウル部仕切り構造12を構成するには、まず、図4に示すように、車体に組み付けられる前(したがって、カウルルーバー22も組み付けられていない)のカウルパネル20を用意し、このカウルパネル20に遮蔽板32を取り付ける。このとき、取り付け前に、図2(A)及び図3(A)に示すように、薄肉ヒンジ38により、上部板32Uを下部板32Lに対して屈曲させた状態としておく。そして、図3(B)にも示すように、遮蔽板32をカウルパネル20に取り付ける。取り付けは、遮蔽板32の取付クリップ44をカウルパネル20の取付孔42に当てがって押し込むだけなので、容易に行うことができる。
【0026】
次に、遮蔽板32が取り付けられたカウルパネル20を、図1に示すように車体14に組み付ける。そして、図3(C)に示すように、上部板32Uを薄肉ヒンジ38周りに矢印S方向に回動させ、下部板32Lと上部板32Uとで平面状になるように起こす。このときには、図2(B)に示すように保持クリップ48が被係合片46に係合するので、上部板32Uと下部板32Lとが平面状になった状態を維持できる。
【0027】
そして、最後に、図3(D)に示すように、上方からカウルルーバー22を車体に組み付ける。これにより、カウルルーバー22とカウルパネル20とで空気流路26が構成されると共に、この空気流路26が遮蔽板32によって複数の空気室30に区画される。
【0028】
このように、本実施形態に係るカウル部仕切り構造12では、遮蔽板32をカウルパネル20に取り付けた状態で上部板32Uを回動させるだけで、所望の位置に立設することができる。たとえば、作業者の手の届きにくい位置であっても容易に組み付けることができ、作業性が向上している。
【0029】
組み付け状態で、図5(A)に示すように、カウルルーバー22に対し外側から衝突体90等により衝撃が作用する場合を想定すると、この衝撃は遮蔽板32にも及ぶ。ここで、保持クリップ48の被係合片46に対する係合力は、上部板32Uに作用した衝撃によって係合解除し、薄肉ヒンジ38による折れ曲がりを可能とするように設定されている。このため、図5(B)に示すように、遮蔽板32は薄肉ヒンジ38周りに回動可能となるので、衝撃に対して不用意に突っ張るように作用することはなく、衝撃を吸収する効果が得られる。
【0030】
なお、上記では、本発明の折れ曲がり手段として薄肉ヒンジ38を挙げたが、要するに、遮蔽板32を少なくとも中間部で折れ曲がるようにすれば、折れ曲がり手段は薄肉ヒンジに限定されない。たとえば、薄肉ヒンジ38に代えて、別体で構成された上部板32Uと下部板32Lとにシャフトを挿通し、このシャフト回りに回動可能とする構成(一般的なヒンジ構造)でもよい。上記実施形態のように薄肉ヒンジ38とすると、部品点数が増大することもなく、簡単な構造で折れ曲がり手段を構成できるので、好ましい。折れ曲がり手段の数も上記では1つとしたが、複数でもよい。さらにたとえば、薄肉部分を上下方向に広げて構成し(薄肉部分が線状ではなく面状に広がっている)、この薄肉部分で遮蔽板32が湾曲するような構成でもよい。
【0031】
本発明の形状維持手段、すなわち、仕切り部材(遮蔽板32)の折れ曲がりを阻止してその形状を維持するための手段も、上記の保持クリップ48や被係合片46に限定されない。たとえば、遮蔽板32とは別体で構成されたクリップを嵌めて遮蔽板32の平面的な形状を維持するようにしてもよい。上記実施形態のように保持クリップ48を被係合片46とで構成すると、部品点数が増大することもなく、簡単な構造で形状維持手段を構成できる。しかも上部板32Uを回動させる動作(折れ曲がりを解消する動作)のみで遮蔽板32の形状維持が可能になるので、組み付け作業の作業性に優れることとなり好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るカウル部仕切り構造の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカウル部仕切り構造を構成する遮蔽板を示す斜視図であり、(A)は折れ曲げた状態、(B)は略平面状とした状態である。
【図3】(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係るカウル部仕切り構造を構成する工程を順に示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカウル部仕切り構造を構成する途中の工程を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るカウル部仕切り構造に外部から衝撃が作用した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
12 カウル部仕切り構造
14 車体
16 カウル部
18 フロントフェンダー
20 カウルパネル
22 カウルルーバー
24 フロントガラス
26 空気流路
28 空気取り入れ口
30 空気室
32 遮蔽板
32U 上部板
32L 下部板
34 フランジ片
36 シール材
38 薄肉ヒンジ
40 リブ
42 取付孔
44 取付クリップ
46 被係合片
48 保持クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のカウル部の空気流路を仕切る仕切り部材と、
前記仕切り部材に設けられ仕切り部材を少なくとも中間部で折れ曲がり可能とする折れ曲がり手段と、
前記折れ曲がり手段による前記仕切り部材の折れ曲がりを阻止して仕切り部材の形状を維持する形状維持手段と、
前記仕切り部材に設けられ車体への取り付け用とされる取付部材と、
を有することを特徴とするカウル部仕切り構造。
【請求項2】
前記折れ曲がり手段が、前記仕切り部材を屈曲させる屈曲手段、
であること特徴とする請求項1に記載のカウル部仕切り構造。
【請求項3】
前記屈曲手段がヒンジであることを特徴とする請求項2に記載のカウル部仕切り構造。
【請求項4】
前記形状維持手段が、前記仕切り部材の上部板と下部板を平面状に維持するように係合するクリップ、
であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカウル部仕切り構造。
【請求項5】
前記形状維持手段が、前記仕切り部材に作用した衝撃で仕切り部材の形状維持を解除可能とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のカウル部仕切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245748(P2007−245748A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67667(P2006−67667)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】